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Loving you forever

1 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:50

第一話 Loving you forever
2 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:51
「明日からの三連休、天気すごいですね」
「ホントだ。全部晴れマークだね」
やっと涼しくなってきたところへ、ちょっとしたお休みが来た。

「だけど先生明日は仕事、あるんだよね?」
「うん。でも早い時間に終わるし、明後日からは、三連休」
「そしたら、いつもよりちょっと遠くまで行けますよね?」
普段の休日には街へ行くか、サイクリングがせいぜいで、あとは家でゆっくり過ごしていた。
お互い回復の余地がたくさんある今回は、確かに、遠出のチャンス。
3 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:52
「どこ行こっか?」
「人が多そうなところは、別なときの方がいいですもんね」
「うん。となると…」
しばしの沈黙ののち、ハルちゃんが、小さくあっと声をあげる。

「あそこは?先生んち帰る途中に、電車から見えるお寺」
「あー、あの、山の中にポツンって建ってる?」
「うん。ちょっと気になるって、言ってなかった?」
「言ったかわかんないけど、気にはなってた」
「んじゃ、一緒に行きましょうよ。そういうの全部、一緒に行こう」
翌日、私が塾に行っている間に、ハルちゃんは、図書館で行程を調べてきてくれた。
4 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:53
夕食後の議題に、その調査結果があがる。
「まずは、いつも二回目の乗り換えする駅で降りて、バス」
「へー。何番乗り場?」
「10番」
「どこまで乗るの?」
「終点まで。時間は、40分くらい」
「すごい、完璧に調べてくれたんだね」
「まだ話終わってないし」
「はい。すみませんでした」
ハルちゃんが厳しい口調になったので、思わず背筋を伸ばす。

「バスは一日、朝昼夕方の三本だけです。終点からは、二時間ぐらい歩きます」
「はい。お話まだ続きますか?」
「以上です」
「それなら…なんとか、なるでしょ」
だって一緒なら、絶対にどんな苦境も乗り越えられる。

「そですね。とりあえずおにぎりかなんか持って、行きますか」
その日はものすごく早く寝て、翌朝、ものすごく早く起きた。
5 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:54
最寄り駅から、始発列車に乗り。一日三本の、朝のバスをつかまえた。
ほとんど貸し切り状態で、終点まで。降りて、歩き始める。

刈り入れを終えた田んぼ。空の青を切り裂く、飛行機雲。
名も知らぬ花、小川のせせらぎ。音もなく舞う蝶、小鳥のさえずり。
ハルちゃんが道端に何かを探しながら、少し先を歩く。
白いシャツに、小さなリュック。背中が、陽光を照り返す。

右、左、右、左。足を交互に出せば、きっと、地続きのどこへでもたどり着ける。
地元にいたころは学校が遠くて、それなりに歩いていたんだけど。
でも、やっぱり、この頃、体力が、落ちて、いる気は、する。右、左、右、左。
6 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:55
「あそこ、座れるから。もうちょっと行ける?」
「うん。だいじょうぶ。平気」
「おにぎり三個ずつあるから、ちょっと早いけど、ひとつ食べましょ」
ハルちゃんに励まされながら、川辺の東屋に着いて、腰を下ろした。

「もう半分以上来たよ。残りは上り坂だけど」
「うん…ハルちゃんやっぱり若いね」
「そうかもね」
平然と言ったあと、ハルちゃんは、私を見つめた。

「怒んないの?」
「…無駄な体力使いたくない」
「ホントに、だいじょうぶ?」
「うん。山道は得意だもん」
これぐらいの山なら、よく遠足で登った。子どもの頃出来たんだから、今も出来る。はず。

「もう少し休んだら、行きましょっか」
「ごめんね、荷物全部持たせて」
「そんな、水筒とおにぎりだけじゃん」
「ありがとう」
えいっ、と立ち上がり、また歩き始めた。
けれど緩やかな坂を進むうちに、少しずつ差が開いてしまい、やっぱり後を追う形になる。右、左、右、左。
7 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:56
「せんせー!」
ゆるいカーブの途中で、ハルちゃんが振り返って、私を手招きする。
少し歩を早めて追いつくと、眼下にススキの群生が広がっていた。

「きれいだね」
金の絨毯を、しばらく見つめるハルちゃん。
「学校から、ばあちゃんちに帰るときさ」
小さな声で話しながら、ゆっくり歩き始めたハルちゃんについて行く。
「こういうススキの真ん中通るのが、近道でね」
「そっか。まだ、残ってるのかな」
ハルちゃんはそれ以上何も言わなかったけれど、黙って手をつないできた。
歩きながら、その手を両手で包み込む。
そこからはハルちゃんに遅れず、無事に目的地までたどり着けた。
8 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:57
山門をくぐって、本堂へ。
並んでお参りを済ませると、ハルちゃんは後ろに下がった。
ここからはいつも、私をひとりにしてくれる。

仏像と、対峙する。
そのたくさんの御手で、この先もずっと、ハルちゃんをお救い下さい。どうかどうか、お願いします。

背後でハルちゃんが、誰かとあいさつしている気配がした。
どんなに山寺にも、必ず、それを守り継ぐ人がいて。
おかげで私たちはこうして、いつでも仏と相対することが出来る。
穏やかなお顔を気の済むまで見上げてから、ハルちゃんの元に戻った。
9 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:58
「思う存分、話せた?」
「うん。お待たせ」
「お寺のお母さんがバス停まで送ってくれるって」
この短い時間に、何をどう話したのだろう。

「おにぎり、中で食べていいよって」
本当に、何を、どう話したのだろう。

これも一期一会と遠慮なく、お茶と、おさがりのお菓子をごちそうになる。
その上バス停どころか、駅まで送ってもらってしまった。
夕食に名物の幅広いうどんを食べて、家路につく。
10 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 22:59
「ただいまー」
誰もいない家に、元気よく挨拶するハルちゃん。
「おかえりー、ただいま」
「おかえり」
一緒に帰って来たときは、必ずこのやりとりをする。

ハルちゃんをお風呂に送って、空っぽになった水筒を洗った。二人分中身を入れると、結構重い。
ハルちゃんはいつも、さり気なくまわりを気遣って。いつも、私を一番に思いやってくれる。

「朝の準備もうしてくれちゃった?ハルやるつもりだったのにごめんね」
「ううん、ご飯仕掛けるだけだし。冷蔵庫にアイスあるよ」
「ありがとう。先生も、ゆっくり浸かって来て」
もっと、自分のことを考えていいのに。
11 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 23:00
お風呂から上がると、ハルちゃんは床に座って、今日行ったお寺のブックレットを一心に見ていた。
パジャマ代わりのTシャツの裾から、丸めた背中が、少し覗いている。

ふいに素肌に触れたくなって、指先を、その隙間に忍ばせてみた。
ハルちゃんがびくん、と反応する。慌てて、手をひっこめる。

「ごめん、びっくりした?急にさわりたくなったの」
「…いいよ。さわって」
手のひらを差し入れて、白い背中を、そっとそっと撫でる。
向き直って抱きしめてくれたので、肩に届きそうなほど腕を差し入れた。
首筋に、頬をうずめる。私の髪を背中を滑っていく指に、全部を預ける。
12 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 23:00
「次は、どこ行こっか」
胸に凭れたまま、尋ねた。ひとつずつ少しずつ、思い出を重ねていきたい。
「んーと。水族館、とか」
「どこの?」
「どこにあったっけ?どこでもいい」
「そうなの?ここだったらラッコがいるとか、イルカがいるとか、あるでしょ?」
「んー。だって…先生の横顔見たいだけだから」
全力でハルちゃんの肩を押して、体を離した。そっぽを向いて、膝を抱えて座る。
見えないほうの手で、火照った顔を扇ぐ。どうして、いつもこういうこと言うんだろう。
13 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 23:01
「こっち、向いてよ」
「だって、横顔見たいって言ったでしょ」
「今はこっち、向いてよ」
もう少し呼吸を整えたかったのに、ハルちゃんは正面に回ってきた。

「こっち、向いて」
無垢な瞳。ハルちゃんの手のひらが、私の頬を包む。
抗えず、顔を上げる。唇が、近づいて触れあう。

「したい。いい?」
無垢な言葉。心を、静かに掴まれる。小さくひとつ、息を呑む。
14 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 23:02


頷いた私は、雨に、濡れた。



    < 第一話 「Loving you forever」 了 >
15 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 23:02
『そう 私に出来ることはそばにいること』
 モーニング娘。「Loving you forever」(アルバム『10 MY ME』所収)より

https://ja.wikipedia.org/wiki/10_MY_ME

直接に語彙の拝借はないかと思いますが、全般にイメージをお借りしています。
16 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 23:04
干天の慈雨
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/grass/1403091290/

前スレです
17 :名無飼育さん :2017/05/05(金) 23:05
第二話へ続く
18 :名無飼育さん :2017/05/07(日) 11:34
待ってました!
この作風、雰囲気が好きです
ほっこりするし切なくもなる
また読めるのは嬉しいです
19 :名無飼育さん :2017/05/15(月) 22:36
待ち続けてました、

ありがとうございます

20 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:41

第二話  愛さえあればなんにもいらない
21 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:42
「お先に失礼しまーす」
事務室のドアを後ろ手に閉めて、誰にも会わないよう、非常階段を駆け下りた。
さっきはエレベーターの前で捕まってしまったけれど、これできっと大丈夫だろう。

念のため裏口から出て、駅へ急ぐ。すぐに来た電車に飛び乗って、息を整える。
着いたらまた、走らなきゃ。今日は電車が進むの、遅い気がする。
22 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:43
最寄り駅の改札を一目散に駆け抜けて、駐輪場へ。
あまり目の届かないところに置きたくないから、普段は自転車で駅には行かない。
今日は少しでも早く帰りたくて、ちゃんとずっとおじさんがいるところに、預けてきた。

ハルちゃん、待ちくたびれてるだろうな。
大きな月が、薄い雲に霞んでいる。

ハルちゃん、お腹空いてるだろうな。
新しく出来たケーキ屋さん、ここだ。今度一緒に寄ろう。

ハルちゃん、きっと、うたた寝しちゃってるだろうな。
あの青信号、急げば抜けられそう。
23 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:43
急いでいるのは、ハルちゃんのテスト期間が、今日で終わるから。
だから早いシフトにしてもらったのに、急に穴埋めを頼まれて、一コマ分遅くなってしまった。

まだ別々に住んでいたとき、テスト中は会わないって決めていた。
毎日一緒に過ごすようになってからは、また二人で話し合った。

「おかえりー。お風呂、すぐ入れるよ」
閉館まで図書館で勉強して帰ってきたハルちゃんを、家で迎える。

一緒に晩御飯を食べて、少しだけ休憩。
ハルちゃんを部屋に送って、朝まで別々に過ごす。
寝る前に夜食のおにぎりを作って、インスタント味噌汁と一緒に、テーブルに置いておく。
起きたらごはんの支度をして、お昼のお弁当を詰めてから、ハルちゃんを起こす。
駅まで一緒に歩いて、同じ電車に乗って、途中で別れたら、もう家まで会えない。

ほんの短い間だったけれど、ハルちゃんの気配だけを頼りに眠る夜は、少し寂しくて。
24 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:43
「ただいまー」
小さな声で言いながら、鍵を開けて、静かに玄関を抜けた。

ハルちゃんは、やっぱりリビングのラグで眠っていて。
風邪ひくよって、いつも私が注意するから、ちゃんと毛布を全身にかぶっている。

「ただいま」
もう一度つぶやいて、そっと傍らに腰を下ろした。

寝顔を、久しぶりに見る。朝と夜は必ず一緒に食べていたのに、少しやつれている。
眠くなっちゃうからって、少ししか食べないで。夜遅くまで、ずっと勉強して。
きっと成績が落ちたら、私が自分のせいだと思ってしまうから。

長いまつげを、数えてみる。まつげって、何本くらいあるんだろう。
一、二、三、四。寝顔、かわいいな。五、六、七、八。お弁当、美味しかったかな。

百を少し過ぎたところで対象が動いて、どこがいくつかわからなくなった。
ハルちゃんが、寝ぼけた顔で、ゆっくりと起き上がる。
25 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:45
「おかえりなさい」
「ただいま、ごめんね遅くなって。お腹、すいたでしょ?」
「うん」
「今日はゆっくり、ごはん食べようね」
「うん。おかわりする」
「用意、してくるね」
「待って」
立ち上がろうと床に着いた腕を引かれ、抱きしめられた。
刹那、唇が触れ合う。唇が、永遠に求め合う。

早くちゃんとご飯を食べてほしいのに離れたくなくて、少し困ってしまった。
困ったまま離れられずにいると、床に横たえられてしまった。
ハルちゃんを押し戻そうと、肩に手のひらを押し付ける。でも腕に、力が入らない。
どうしよう。もう、いい。このままで、いいか。
26 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:45
諦めて全部預けようとした瞬間に、ハルちゃんのお腹が、結構大きい音を立てた。
思わず吹き出してしまう。顔を見合わせて、クスクス笑う。

「お腹空いてるんでしょう」
「うん、ペコペコ」
「ごはん、食べよ。温めてくるから」
「煮込みハンバーグって、リクエストした」
「須藤さん、張り切ってたんだよ。ハルちゃん食べたいもの言ったの初めてでしょ?」
「うん。ハルも一緒に用意する」
せーので立ち上がって、キッチンに向かった。

焦がさないように、慎重に火を入れる。ごはんをお皿に盛って、冷蔵庫のサラダを取り分ける。
「いただきまーす」
声を揃えて、ナイフとフォークで、ハンバーグを切り崩す。
27 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:46
「あー、もーめっちゃ美味しいですね」
「まだおかわりあるよ。あやの分も食べていいからね」
「うん。あと2個ぐらいなら余裕で行けそう」
結局いつもなら余る量が、全部全部、ハルちゃんの胃におさまった。

「苦しくない?」
「うん」
「よっぽどお腹空いてたんだね」
「そうみたい」
「片づけるから、お風呂入って。明日から当番に戻そう」
「うん。ありがと」
グラスのお茶を飲みほしてシンクに運ぶと、ハルちゃんは素直に支度を始める。
28 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:46
明日のご飯、何時にセットしよう。とりあえずいつも通りでいいか。
ハルちゃん明日も、たくさん食べるかな。ちょっと、多めにしかけておこう。
考えながら食器を洗ったり、お米を研いだり。我ながら、要領がよくなったな、と思う。
お弁当に、毎日ひとつは手作りのおかずを入れることも出来た。

「これでよし、と」
準備万端で炊飯器のスイッチを押して間もなく、ハルちゃんが戻ってきた。
29 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:47
「お茶でいい?」
「うん、ありがと。先生も入ってね」
手渡したグラスを持つ指と、ごくんと動く喉元。
見ているだけで、鼓動が少し早くなる。

「先に、寝てていいよ」
「やだ。いっぱい話したいから待ってる」
「じゃあ、お布団入ってて」
「待ってるからね」
「わかった。急ぐから」
全部済ませて戻ると、ハルちゃんは、寝床に就いてうとうとしていた。
また少し、寝顔を見つめる。起こさなかったら、明日の朝、抗議されちゃうかな。
ちょっと怒られてみたい。でも、私にも、話したいこと、たくさんあるし。
30 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:48
そっと隣に滑り込むと、ハルちゃんは重そうなまぶたを開いた。
ちっちゃい子みたいに抱きついてくるハルちゃんを、両腕で受け止める。
前髪をかき上げて、額に頬をくっつける。ハルちゃんが、首筋にしがみついてくる。

「先生の匂いだ。嬉しい」
「ハルちゃんと同じ柔軟剤で、同じシャンプーだよ」
「でも、先生の匂いがするんだもん」
「そっか、そうだね。目をつぶってもハルちゃんの匂い、わかるもんね」
ハルちゃんが、私の胸に頬を押しつけた。もう一度抱き寄せて、少し伸びてきた髪を撫でる。
31 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:49
「お弁当、毎日ありがと。美味しかった」
「うん。でも、ほとんど、作り置きしてもらったのを詰めただけだよ」
「その気持ちが、嬉しくて美味しかったから。ありがとう」
今まで、お昼は私もハルちゃんも学食を頼りにしていた。
それがテスト期間で休みになるから、出来そうな日には用意しようかなっていう、軽い気持ちだったんだけど。

「これからも、持って行く?ホントに詰めるだけだけど」
「ハルも先生の分作ったりしたい」
「じゃあ、起きられた日は、一緒に二人分作ろうか」
眠い日には無理をしないで、ギリギリまで布団に潜っていよう。
32 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:49
「今日のハルがさ、一番先生を好きじゃん。今までのハルの中で」
「わかるよ、あやも同じ。昨日より今日の方が、ハルちゃんのこと好き」
「今日の時点で目いっぱい好きなのに、寝て起きると、明日もっと好きになってるじゃん」
ハルちゃんの伏せた目が、ゆっくりな瞬きを繰り返す。

「うん」
「その分の好きは、どこから来るんだろうね。今どこに隠れてるんだろ」
確かに不思議だけれど、こうしてハルちゃんに触れていると、答えがわかる気がした。

「きっと、川の水と同じなんじゃない?」
「…川?」
「うん。雨が降って、山に染み込んで、川になって流れていくでしょ」
「そっか。これから流れる水、今は見えないね」
今日のハルちゃんが、私の心に沁みてゆく。明日、泉みたいに、新しく愛しい気持ちが湧いてくる。
ううん、明日じゃない。今もずっと滾々と、あふれ続けている。
33 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:50
「明日、目覚ましかけなくていいよね?」
「うん。でも起きるの、楽しみ。どんぐらい、先生のこと好きになってるかな」
「そうだね。おやすみ」
夢とうつつの狭間から、小さな返事が聞こえた。
トン、トン。穏やかな寝息に合わせて、背中をそっと叩く。

やがて、私も、迫りくる睡魔に、身を任せた。


< 第二話 「愛さえあればなんにもいらない」 了 >
34 :名無飼育さん :2017/06/17(土) 07:54
第三話へ続く

>>18
ありがとうございます
こんな感じしか書けないですが、続けていきます
これからもよろしくお願いします

>>19
ありがとうございます
何があっても続けますので、これからもよろしくお願いします
35 :名無飼育さん :2017/06/18(日) 14:13
お互いにめろめろなふたりがかわいいです

幸せをありがとうございます
36 :名無飼育さん :2017/06/23(金) 01:42
またこの二人に会えるなんて…
思わずリアルに声をあげてしまいました
ありがとうございます
すごくすごく嬉しいです
37 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:11

 第三話 「、、、好きだよ!」
38 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:12
ハルちゃんに合わせて早く寝すぎたからか、翌朝、いつも通りに目が覚めた。
そっと隣を抜け出して、歯を磨いたり、着替えたり、朝ご飯の支度をしたり。
起きるまで、起こさないでおこうか。でも、お腹、すいてきちゃったな。
ひとりで済ませたらきっと拗ねるから、本人に決めてもらうことにする。
39 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:14
「ハルちゃん」
起こした事実は必要だけど、無理には起きないよう、小さく小さく呼びかける。
私を探すように伸びてきた手を握ってしばらく、ハルちゃんが、薄く目を開けた。

「おはようございます」
「おはよう。あやご飯食べるけど、どうする?まだ寝てる?」
「…起きる」
「じゃあカーテン、開けるよ」
差し込む朝の光に、眠そうな目を細めるハルちゃん。
枕を抱いてゴロゴロ寝返ったり、伸びをしたり。

「ゆっくりおいでね」
私が立ち上がった数秒後、せーのっ、と背後で声がして、ハルちゃんがついてくる。
40 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:15
「今日くらい、ずっと寝てたらいいのに」
「ハルだけ寝てんのはやだ」
「わかった。座っててね」
グラスに冷たいお茶を注いでから、お味噌汁に火を入れた。
冷蔵庫からおかずを色々出して、温めたり、盛り付けたり。
少なめにご飯をよそって、まだぼんやりしているハルちゃんの前に並べる。

「すみません。次はハルやりますから」
「明日からでいいよ、今日はあやの当番」
「ありがとうございます。いただきます」
少しずつ目が覚めてきたようで、ハルちゃんは何回かおかわりしていた。
41 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:16
「今日は、どうする?もう一回寝る?」
朝食を終えてお皿を洗いながら、テーブルを拭くハルちゃんに尋ねる。

「出かけたい」
「疲れてるでしょう?だいじょうぶ?」
「ずっと家と学校と図書館の三角形グルグルしてたから、どっか行きたいんです」
「そっか。どこ行こっか」
休んでいてほしい顔色だったけれど、気分転換したい気持ちも、よくわかる。
片づけが終わるまで、ハルちゃんは黙って行き先を考えていた。

「そうだ、映画。前にポスター見かけたやつ、もう始まってますよね?」
きれいになったテーブルで一息ついたところで、ようやくハルちゃんが口を開く。
「うん。ちょっと待ってね、時間載ってる雑誌あったはず」
探し出して確かめると、お昼をまたぐ上映になら、余裕を持って入れそうだった。

「この回見て、どこかでご飯食べて、帰って来よう。今日は無理しないで」
「はい。顔洗って来ます」
洗面所に向かったハルちゃんを、着替えを済ませながら待った。
42 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:17
郊外の大きなショッピングモールまで、電車で移動する。
上階の映画館でパンフレットと飲み物を買って、予約しておいた席に座る。

二時間と少しあと、エスカレーターを降りながら、いろんなお店を冷やかす。
フードコートでお互い好きなものを注文して、交換したりして。
服屋さんで色違いのTシャツを買って、帰路に着く。

「ただいまー」
「おかえり。ただいま」
「おかえり。ハルがお茶淹れますから」
「ありがと」
手を洗い、買ったものを仕舞ってから、並んでテーブルについた。
43 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:17
「ねえあのワンちゃん、かわいかったね」
「…犬?」
「うん。ペットショップにいた、あの子」
「あっ、そっちか」
そっちって、どっち?
映画に、犬は出てこなかったよ。
何を言ってもハルちゃんが困ってしまう気がして、無言で唇を結ぶ。
すごく、微妙な表情になっているはず。その顔のまま、ハルちゃんと目が合う。
44 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:19
素早く私を向いて座ると、ハルちゃんは手を膝にして、頭を下げた。
「ごめんなさい、ハルが映画って言ったのにホントごめんなさい」
「いいよ。きっとまだ、眠り足りなかったんだね」
ハルちゃんは、予告の時から、既にうとうとしていた。
疲れていて、柔らかい椅子に座って、周りが暗くなるんだから、それも仕方ない。

「もうホントにすいません」
「いいって。気づいてたから、あや映画のこと何も言ってないでしょ?」
「たぶん結構、がくんがくん揺れてましたよね?」
確かに、眠いのに頑張って起きようとするから、派手にゆらゆらしていた。

「うん。でも後半は撃沈して、じっとしてたよ」
「ごめんなさい。ハルのせいで、感想とか話したりできないですよね」
そんなの大したことじゃないのに、ハルちゃんは自分を追い詰める。
45 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:20
「事細かに、ストーリー話してあげよっか?」
「…うん」
「えっとね、まず主人こ…ホントに聞きたい?」
「…聞きたい」
「もう一回ふたりで見に行くのと、どっちがいい?」
「…もっかい行きたいです。先生の分、ハルが払うから」
「あったり前じゃない」
間髪入れずに答えると、ハルちゃんはテーブルに突っ伏した。

「あーもうホントにすみません」
小さなかすれ声が、くぐもって聞こえる。
「冗談だよ。面白かったし、何回でも一緒に見に行こう」
静かに肩に触れると、ハルちゃんは起き上がった。
困り顔のまま固まるハルちゃんを、そっと抱きしめる。
46 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:21
「久しぶりのデート、楽しかったよ」
「ハルも。だけど、やり直しさせてください」
「うん。でも、明日は家でゆっくりしようね」
「はい。来週だったら、ちゃんと起きてられると思います」
ごめんなさい、と繰り返すハルちゃんの頭を撫でた。

「怒ってないって。ね、お昼寝、一緒にしよう」
「はい。来週に備えとかないと」
「今から?万全だね」
手をつないで立ち上がり、ハルちゃんのベッドに入る。
抱き寄せると、ハルちゃんは昨日の夜みたいに、私にしがみついた。

「晩ご飯、何がいい?」
トントン、とまた背中を叩きながら、尋ねる。
47 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:22


「んー、焼きそば」
「それだけ?足りないでしょ」
「大盛りにすれば、だいじょうぶ」
「そういう問題じゃなくて栄養…たまには、いっか」
キャベツとニンジンは見た気がするし、お肉も冷凍してあったはず。
残り物も色々あるし、買い物行かなくていいかな。あっ、麺がないか。
ぼんやり冷蔵庫の中身を思い出すうちに、いつしか眠った。


                 < 第三話 「、、、好きだよ!」 了 >
48 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:23
第四話へ続く

表題は娘。の『「、、、好きだよ!」』(3rd -LOVEパラダイス-より)
ttps://mojim.com/twy100746x60x11.htm

スマイレージの『スキちゃん』からもイメージ引用があります
ttps://mojim.com/jpy110565x6x12.htm

>久しぶりのデート
太陽とシスコムーン(Juice=Juiceがカバー)の『Magic of Love』より
ttps://mojim.com/twy114016x7x1.htm
49 :名無飼育さん :2017/08/19(土) 13:25
>>35
ありがとうございます
日常って尊いと、4月29日に改めて思いました

>>36
ありがとうございます
これからも末長いお付き合いをよろしくお願いします

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