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さよならディエス・イレ

1 :名無飼育さん :2012/03/31(土) 23:51
初めまして。
新垣さん絡みが多くなる予定です。
お付き合い頂ければ幸いです。
2 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:52

「里沙ちゃん、なぁ、結婚しよ。」

ぽつり。
何でもないことのように愛がそう呟いたのは三月の終わり頃。

「うん。」

それに返す里沙もまた。

3 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:54
 *

六月の空は切れ間無く広がる厚い雲をめいっぱい湛え、梅雨の訪れをひっそりと叫んでいた。
昼下がりでも尚、夜を欺かんばかりに薄暗い愛の部屋に二人。
大きめのソファーに転がる彼女たちを間接照明だけの少々心許ない灯りが柔らかく包み込んでいる。

しとしと。
雨が降っている。
それはまるで彼女の部屋を世界と隔絶するかのように。

「こんな日まで雨なんだね。」

咎めるような言い分とは裏腹に里沙の口調は軽い。
愛の腕の中でくつくつと喉を鳴らし楽しげに肩を揺らしている。
4 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:55

「……これは梅雨のせいやろ。」

対する愛は不機嫌そうに唇をとがらせた。
そんな愛の反応に、庇護欲にも似た愛しさを感じた里沙の笑みはさらに深くなる。
もぞりと小さく身じろぎをして首もとにすり寄った。

「どっちにしてもジューンブライドだよ?素敵じゃん。」
「晴れてたって6月なんやからジューンブライドや。」

そういうことじゃなくてさあ……。ま、いいや。

何年たっても思い通りにならない愛とのキャッチボールも小気味良く胸に響く。
今日の里沙はすこぶる機嫌がいいようだ。

5 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:55
 *

なんか、思ってたより普通なんやな。

ブラックのコーヒーがたっぷり入ったマグカップを手渡しながら普段から大きな瞳を僅かに見開いた愛がそう驚いた風もなくこぼした言葉に、これまたいたって平静なトーン里沙は返した。

「うん?結婚?」
「そう。里沙ちゃんならもうちょっとびっくりするなり身構えるなり悩むなりするんかと。」

愛自身自分の口から「結婚」という単語がするりと滑り出したことに自分でも内心驚いていたしどんな返答が来るのか身構えていた。
だから、結婚しようなんて唐突に言われた里沙が動揺しないはずがないと、そう踏んでいたのだ。
それなのにいつものマグに口を付ける里沙は顔色一つ変えない。
微妙に肩透かしを喰らった気分だった。

「なんで?だって別に何が変わるわけでもないし。」
「そりゃそうやけど……。なんかこう……。」

腑に落ちない。
どうしてそんなに。

「だってさ、あたしたちが結婚するってさ、誰に誓うわけでもないし。それってあたしと愛ちゃんがずっと一緒にいるって改めて約束するみたいなもんでしょ?」

6 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:56
 *

雨は相変わらず一定のリズムで窓を叩く。
強まるでも弱まるでもなくただ、降り続いている。
愛の不機嫌さも形だけとはいえ相変わらずで、里沙は考えを巡らせる。
せっかくの日にこのままではもったいないから。

「ね、愛ちゃん、始めよ?結婚式。」

7 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:56
 *

「だからいまさらびっくりはしないよ。嬉しいけど。」

「嬉しいってそんな風には見えんのやけど。」

「や、なんかさ、こうストンって心に入ってきて結婚するんだってじわ
んわりひろがって、って言わせないでよ。」

「里沙ちゃんにしては抽象的やね。」

「うるさい。うまく言えないくらい嬉しいって、わかってよ。」

「ーーそうか。そうか。んひひ。いや、あたしも嬉しいわ。」

8 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:56
 *

いつも通りの戯れのような、どこか厳粛な儀式のような、日常と非日常が混ざり合った曖昧な沈黙の中でゆっくりとピンキーリングを外す。
二人で選んで購入してからもうすぐ一年になるそれはあの時と変わらず輝いていて。
それでも、分かたれた道の先、お互いの知らないお互いをずっと見守ってきた物だから。
愛は里沙の右手を取って、その小指に自分が先程までつけていたピンキーリングを通す。
そして流れるような仕草でそこに唇を落とした。

「左の薬指に、できたらいいんやけどなあ。」

そっと呟いて、照れたようにはにかみながら顔を上げた。
普段はどこか頼りないくせに、こんな時だけやたらと様になる芝居がかった一連の動きが里沙の鼓動を内側から打ち鳴らす。


「しょうがないじゃん、あんまり目立つようなことできないんだし。」
「それもそうやね。じゃあこれがあたしらの薬指ってことで。」

肯定を沈黙で返して里沙も愛に倣う。
言葉にしなかった想いを唇に込めて。

ー愛ちゃんと結婚できるならなんだっていいよ。

9 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:57
 *

結婚しようと切り出した愛に里沙が望んだ事は一つだけだった。

「なんで6月がええの?」

里沙は両手で支えていたマグをダイニングテーブルに置いて、一つ息を吐く。
マグの中身は半分ほどになっていた。

「その時にはあたしも卒業してるし、何となく。」
「卒業してさ、愛ちゃんみたいに自分の足で立って、モーニング娘。って看板借りずに自分の足で歩いて、さ。」
「何にもない、ただの新垣里沙として愛ちゃんと向き合いたいから、かな。」

ぽつりぽつりとこぼされた言葉たちはともすれば霧散してしまいそうな小さなささやきのようであったけれど、その芯はしっかりと熱を持って愛の鼓膜を震わせる。

「分かった。待っとく。里沙ちゃんがちゃんと卒業するの、待っとくから。」
「……ありがと。でも、それだけじゃないよ?」

マグに口を付けてコーヒーを一口。

「女の子なら憧れるもんでしょ?ジューンブライドって。」
10 :あめふりジューンブライド :2012/03/31(土) 23:57
 *

「あとは?」

「あとは、って?」

「結婚式と言えば?」

「んー?ケーキ入刀?」

「あ、ケーキ用意してないわ。」

「だと思った。」

「あ、もしかして。さすが里沙ちゃん。」

「残念でした。」

「えー、あたしケーキ食べたい。」

「そういう問題?」

「あれ、なんやっけ?」

「もう、結婚式と言えば?」

「ああ、ああ、えと、誓いのキスとか?」

「じゃ、それで。」
11 :名無飼育さん :2012/04/01(日) 00:00
着地点が行方不明になりました。
こんな感じでやってきたいと思います。
よろしくお願いします。
12 :名無飼育さん :2012/05/13(日) 01:13
すごく好きです。
もっと、読みたくなりました。

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