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お酒はウイスキーがお好み
- 1 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 23:50
- 夢板に少し書かせていただきましたが、これからもちょくちょく更新しそうなため
スレたて致します。
基本愛ガキです。 - 2 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 23:51
- 更新します
- 3 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 23:51
- 「ゆびさき」
- 4 :ゆびさき :2011/11/07(月) 23:53
-
ここに立つのは何回目だろう。
付き合い始めて早数年になる彼女の部屋もだいぶ見慣れた景色となり、
最初は照れくさかったその空気も、今となっては心地よいものとなっていた。
私も彼女もあんまり料理はしないけれど、たまにはお互いに簡単なものを
作っておうちごはんをすることもある。外とは違ってのんびりできるし、
一人でやるのとは違って二人並んでする料理は、作ることも後片付けも楽しいものだった。
- 5 :ゆびさき :2011/11/07(月) 23:56
-
ある時調子にのった彼女は、私に“付けて”と、あるものを用意してきた。
――だいすきなキャラクターのエプロン――
最初は恥ずかしくて文句を言ったものだけれど、今となっては当たり前に
付けてしまう自分にちょっと呆れてしまう。
単純にキャラクターが可愛かったし、彼女の気持ちが何より嬉しかったから、
今日もそれを付けてキッチンに立つ。
「ねー ナス入れんといてー あたしナス嫌いやん」
「もー文句言わない!美味しいってばさぁ」
舌が“ダコダコ”になるから。と、わけの分からないことを言う彼女を無視して、
私はカレーを作ろうと野菜を切っていた。
玉ねぎも切ったし、ジャガイモの皮剥きはあいちゃんに任せたし、あともう少し。
そう思っていたら。
- 6 :ゆびさき :2011/11/07(月) 23:57
-
「痛っ・・・・・・・・・・」
左手の指先に滲む血。うっかりして切ってしまったらしい。
「切ったんか?見せてみ?」
素直に言葉に従って、指を見せると
「こんなん舐めときゃ治る」そう言って、彼女はぺろりと私の指を舐めた。
一瞬何が起きたのか分からなくて、ぼーっとしてしまったのだけれど、
その指先に感じたものを理解した時には、彼女は絆創膏を探しにリビングに
戻っていった後だった。
―――指先がアツい―――
痛みで脈を感じる熱さなのか、それとも彼女が齎した熱なのか。
ぼーっとしたまま自分の指先を見つめていると、リビングから戻ってきた
彼女は可愛らしい柄の絆創膏を付けてくれて。
「しばらくしたら、血ぃ止まるやろ」
そう言って料理を再開した。
- 7 :ゆびさき :2011/11/07(月) 23:59
-
ご飯ができたら嬉しいし、美味しいし。二人で囲む食卓はいつだってあったかい。
家族で食べるごはんもいいけれど、愛ちゃんと二人で食べるごはんは私にとって、いつになっても特別だった。
食事を終えて、もう一度キッチンに立つ。
コーヒーを用意してくれる愛ちゃんの隣で私は洗いものをしていたのだけれど。
再び眼に入った自分の指先の絆創膏に、さっきの熱を思い出してしまった。
でも。
どくどくした脈の感覚ではなくて。
明らかに違う熱。
- 8 :ゆびさき :2011/11/08(火) 00:02
-
手を止めて、横に立つ愛ちゃんの顔を見つめる。
「どしたぁ??」
私の視線に気づいた彼女は、いつもの可愛らしい声でそう言いながら首を傾けた。
私は返事もしないで、彼女の頬にキスをした。
顔を離せば、驚いたようなまん丸の眼の彼女が立っていた。いつもならその視線に
耐えられくて顔を反らしてしまう私だけれど、今日、さっきから感じる熱のせいで
いつもと同じようにはいかなくて。
- 9 :ゆびさき :2011/11/08(火) 00:04
-
「・・・・あいちゃん」
何度呼んでも愛しい名前を呼んで、もう一度キスをする。
今度は唇に。深い深いキス。
自然と私の腕は彼女の首に回り、彼女の腕は私の腰に回る。
「・・・・あいちゃんが、いけないんだからね・・・」
どれくらい経ったのだろう。
やっと離した彼女の唇を見つめながら、私の内側にこもる熱を吐き出すように
言った。
気づいたらお湯が沸くような音が聞こえてきていたのだけれど、
そんなことは気にしない。
愛するひとはあなただけ。
欲しいのも、あなただけ。
- 10 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 00:04
- 「ゆびさき」
以上です - 11 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 21:59
- 夢板にて既出ですが、二つほど。
- 12 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 21:59
- 「こんや」
- 13 :こんや :2011/11/08(火) 22:01
-
―――― 今日、行っていいかな?
珍しく私から愛ちゃんへ「会いたいよ」のメール。
これまでは当たり前に毎日のように顔を合わせていたけれど、彼女が卒業をした今、
メールはまだしも電話をすることすらままならない。
前に会ったのはきっと1週間くらい前。
それでも今、会いたいのだ。
―――― 仕事で遅くなるから、先帰ってて
私が来ることを当たり前のように受け止めてくれる彼女。
一緒に住んでるわけじゃないのに「帰ってて」の言葉が嬉しいし、
ちょっとくすぐったい。
私は彼女のお言葉に甘えて、先に“帰宅”することにした。
- 14 :こんや :2011/11/08(火) 22:02
-
合鍵で入った彼女の部屋は、前とさほど変わっていない。
変わらない景色に安心して、せめてものお返しにと温かいスープと
お風呂を用意してソファに横たわる。
そんなつもりは無かったけれど、大好きな人の、いないけれどその存在感と、
慣れ親しんだソファに心地よくなって、いつの間にか私は眠ってしまった。
どれくらい経ったのか、気づいたら彼女の掌が私の頭を撫でていて。
- 15 :こんや :2011/11/08(火) 22:04
-
「・・・・・んっっ・・・・あいちゃん?」
「ただいまぁ――」
「ごめっ あたし寝ちゃってた?」
隣にいる彼女の顔を覗き見れば、優しい笑みを携えていて。
「スープ、美味しかった ありがとな?」
その言葉が嬉しくて、ドキドキしながら寝起きのけだるい身体を起こす。
「ママに教えてもらったの、簡単だし美味しいから作ってみた」
そう言いながら穏やかな空気が心地よくて、そして寝起きの身体がやっぱり重たくて、
彼女に抱きつき眼をつぶる。
背中に彼女の温かい手を感じながら、首元にすりよる私。
いつもなら「なんやぁ 甘えん坊やなぁ」なんて、からかいの声が聞こえてくるはずなのに、
今日は何にも言わない。
ただただ私の背中を撫で付ける手。
- 16 :こんや :2011/11/08(火) 22:05
-
あぁ、きっと伝わっちゃてるんだ。
私がここに何しに来たかなんて、何にも言わなくても伝わってるんだ。
「・・・やっと出来た」
「・・・何が?」
「りさちゃんほじゅー・・・・」
「・・・そだね・・」
やっぱりね。おんなじ気持ち。私もここへ「あいちゃんほじゅー」に
来たんだもの。
照れくさくてはっきりとは言えないけれど、その気持ちが伝われとばかりに、
抱きしめる腕を私は強めた。
- 17 :こんや :2011/11/08(火) 22:06
-
「こんや」おわり - 18 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:06
- もう一つ既出です
- 19 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:06
- 「こんや また別のある夜」
- 20 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:10
-
明日の仕事がたまたま二人してオフだったから、
だったらおいでとメールしたらすぐに「行くね」と彼女から返事がきた。
久しぶり二人で外で食事して、お酒も少しに飲んで気持ちよくなって我が家に帰宅。
里沙ちゃんはまだ少し酔っているようだったけれど、眠くなるほどでもないようで、
先にお風呂に入っておいでと促せば、素直に頷きお風呂へ向った。
いつもお仕事の現場で見ていた時とは明らかに違う、のんびりと無防備な歩き方。
後輩たちに囲まれて引っ張っていく背中とは似ても似つかない華奢な肩を見ながら、
愛おしい気持ちがこみ上げる。
- 21 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:11
-
やっぱり彼女の隣にいたい。
どんなに一緒の時間が少なくなったって、あたしが彼女の癒しになりたいし、
あたしだって彼女が必要なのだ。
そんなことを酔いが冷めていくのを感じながら考えていたら、
さっぱり顔の彼女がやってきて。
「愛ちゃんも入っておいで?」
笑顔で促された。
いつもならもう少しのんびり入るのだけれど、今日は彼女がいるからと半身浴はそこそこにして、
お風呂を出る。
先に髪を乾かした里沙ちゃんが「やってあげる」と言うもんだから、
そのお言葉に甘えて、髪を乾かしてもらった。
- 22 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:13
-
お礼に温かいココアを煎れて、取りとめもないお喋りをソファーに掛けて興じる。
この、なんでもないのんびりとした時間がとても大切で、手放したくは無い。
いつかは一緒にすみたいなぁなんて考えていると、あたしのカップも、彼女のカップも底が見えていて。
「寝よか」
そう声を彼女も立ち上がり、ベッドルームのほうへ身体を向けた。
先に歩き出した彼女の背中はやっぱり華奢だった。
一緒にいたときは、そのリーダーシップで大きく見えていたけれど、
そんな肩書きを一時的にでもそっと下ろしている今のこの場所では、
それはそれは思っていた以上に華奢で。
思わずふわりと抱きしめた。
- 23 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:14
-
「なにー 歩きづらいんだけど」
「えーやん、すぐそこまでだし」
くすくす笑いながら返された言葉なんて、抗議ともとれない。
彼女だって嫌ではないことくらいわかっているから、
そのままの状態で後ろから抱きしめながらベッドルームへ向った。
一人では少し大きめなベッドへ身を預け、電気を消す。
いつもうつ伏せの体勢で眠る彼女を暗がりの中で横から眺めていた。
せめて寝つきの悪い彼女の寝息が聞こえるまで起きていよう、そう思いながら。
- 24 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:17
-
するとあたしの顎あたりに温かくて柔らかな感触がして。
うつ伏せから突然振り返って、彼女がくれたキスだった。
勿論それを理解する頃にはまた元のうつ伏せの姿に戻っていたのだけれど。
一瞬の出来事だったけれど、その一瞬がとても愛おしくて、あたしは彼女の肩越しに顔を寄せた。
すっかり伸びたさらさらの髪を持ち上げて、彼女のうなじにキスをする。
それから耳と首筋にも「好きだよ」と気持ちを込めながら。
うつ伏せだった彼女はゆっくりと振り返り、あたしの首の後ろへ腕を伸ばした。
どちらも言葉は出さないけれど、目と目がしっかり合うのを感じる。
おでこと鼻がくっつきそうになるくらいに顔を寄せて、あたしは一言発した。
- 25 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:18
-
「もう、ねる?」
「・・・・・ううん、まだ。ねない」
そう彼女の言葉を最後まで聞き取ったあと、その唇にあたしのそれを重ねた。
よるはまだ、ながい。
- 26 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:19
-
「こんや また別のある夜」おわりです - 27 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:19
- 更新します
- 28 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:20
- 「泣き虫」
- 29 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:23
-
――― 今日、きて。
彼女からのメールが突然なのも、それが殺風景な文面であることも、
そんなことは良くあることで、さほど気にはならない。
だけど何故だか今日に限って、それメールを打っているだろう愛ちゃんの姿も顔色も、
それからそのメールのニュアンスも全く読み取れなくて、私はひどく混乱していた。
何かあったんだろうか?
そのメールの前後に残った不在着信がどちらも彼女のものだと分かって、
それが余計に私を不安にさせた。
彼女のメールに温度が感じられない。
いや、感じられるけれど冷たい水に浸っている感覚。
いずれにせよ、急ではあったけれど、今夜はそのまま愛ちゃんちへ向うことにした。
ママには変な心配をさせないように、適当なごまかしをしながら。
- 30 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:24
-
―― ピンポーン
インターホンを鳴らすと彼女はすぐに扉を開けてくれた。
けれど何も喋らず、俯いたままの彼女に堪らなくなって声をかけた。
「・・・・・・あいちゃん、、、来たよ?」
なるべく刺激をしないように、優しく声をかけたつもりだったけれど、
私の言葉が終わると同時に彼女は私を抱きしめてきて。
「・・・・あいちゃん?」
「・・・・りさちゃ・・・・」
私の名前を言い終わる前に、彼女は肩を震わせていた。
それが泣いているのだと気づいた私は、ゆっくり頭を撫でてやることしか出来なかった。
- 31 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:26
-
床が冷たい。
彼女の涙なんて数え切れないほど見てきたし、大声を上げて子供のように泣く姿なんて慣れたもんだった。
それなのに、今日は声も上げずにさめざめと泣くもんだから、それが余計に私を悲しくさせた。
ただひたすらに静かに流れる涙は、まるで傘も差さずに冷たい雨を浴びてるようで、
身も心もひんやりする。
ああ。
少しでも早く、この愛する人の涙の原因がなくなって欲しい。
今それが知れないのはもどかしいけれど、そう思いながらひたすら頭を撫で続けた。
- 32 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:27
-
少し落ち着いたのか、私の肩から顔を上げた彼女は、
黙ったまま私の手を引っ張りリビングへ移動する。
客人であるのは私だけれど、彼女をソファーに座らせて、紅茶でも入れようと
私はキッチンへ向った。
昔、どこかの国ではなにかあったらとりあえず紅茶を飲むと聞いたことがあるから。
身体が温まれば、彼女の心も解れていく気がして、紅茶を煎れてリビングに向う。
するとそこには無防備に眠ってしまっている彼女の姿があった。
- 33 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:29
-
――泣きつかれたのかな
まだ涙の原因が分からなくて、心が痛むけれど、今は寝かせてあげたい。
私が来たことで、その悲しみが和らいだのだったら尚更だ。理由を聞くのは明日でいい。
もっともっと先でもいい。
大切な我が子を労わるみたいに、涙の痕をそっとぬぐって、その手を握りながら私もそこで眠ることにした。
- 34 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:32
-
翌日。
眼は真っ赤だし、瞼も腫れぼったい愛ちゃんは、
昨日の涙の理由を冷たいタオルで冷やしながら話してくれた。
「うとうとしてたら怖い夢見てぇ、家に帰ったらおっきな虫が出るしぃ・・・・・」
「・・・・・はあ??」
その、あまりにくだらない理由に私はほっとしたと同時に馬鹿ばかしくなって、
目の前にいる彼女に、何か仕返しをしてやりたくなった。
その、いつまでたってもあどけないおでこに盛大にデコピンをかましてやったのは
言うまでもない。
- 35 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:33
- 「泣き虫」おわりです
なんかちょっとごめんなさい - 36 :名無飼育さん :2011/11/09(水) 19:52
- 更新します
- 37 :名無飼育さん :2011/11/09(水) 19:52
- 「めまい」
- 38 :めまい :2011/11/09(水) 19:54
-
顔を合わせてゆっくり話せたのはどれくらいぶりなのかは分からないけれど、
時間が経てば経つほど愛しい気持ちが溢れてきて、二人の間に漂う空気はまるで
温かい毛布に包まってるみたいだった。
まめに連絡は取るけれど、やはり電話越しの声と目の前から発せられる声は違うし、
何より表情が見れるのは幸せだった。
外から帰ってきて、すぐにお風呂を沸かす。
順番に入って、またまったりとした時間を愉しむ。
いつもならそれはソファで過ごす時間なんだけれど、夜の急な冷え込みに湯冷めしてしまいそうで、
私は彼女より先にベッドに入って雑誌を読みふけっていた。
- 39 :めまい :2011/11/09(水) 20:11
-
「―りさちゃんが雑誌買うなんて珍しいな?」
「ほら、ディズニー特集!」
部屋に入ってきた愛ちゃんの言葉に、手元の雑誌を見せながら言う。
また一緒に行きたいね―。そやな―。
軽い会話のあと、まだ髪が乾ききらない彼女は、部屋の鏡に向って座り、
ドライヤーを始めた。
ベッドから眺める、彼女の背中。
一人で歩き始めてまだわずかだけれど、変わらずピンとしていてかっこよかった。
いくらか髪が伸びて色も暗くなったようだけれど、相変わらず猫っ毛なのが可愛らしい。
ドライヤーを持つ手も、うなじも、その行動も。素の姿のあいちゃんは何も変わらなくて、
なんだかほっとした。
ドライヤーの音が止み、こちらへ振り向いた彼女。
手元の雑誌はベッドの下へ置き、私は両手を大きく広げて
「おいで」と呼んだ。
「なんよ―・・・・・」
彼女はいくらか照れたようなそぶりを見せたけど、ベッドに上がると素直に私の腕の中へ収まった。
- 40 :めまい :2011/11/09(水) 20:13
-
「あったかいね」
「・・・うん」
「ひさしぶりだね、ちゃんと会うの」
彼女は何も答えないけれど、私の背中に腕を回し、私の肩に頬を寄せた。
そんな仕草一つ一つが愛しくて。この溢れそうになる思いを
どうしたら伝えられるのだろうと思ったのだけれど。
「・・・・・・あの・・・」
「・・ん、なに?」
「・・・りさちゃん・・」
腕を緩めて表情を見れば、眼を潤ませた彼女の顔。
もの欲しそうな、何か言いたげな顔。
―――いっしょだ、あたしとおもってること
久しぶりに会って、お互いの温度を感じて。
欲しくないわけない。相手のこと。抱きしめて、触れて、もっと感じたい。
おそらく私に遠慮して、なんだか躊躇っている彼女。
いつもなら照れくさくて、私からは一切言わないけれど、
眩暈が起きそうなくらいの思いに、そんな余裕は無くて。
「しよ・・・・?」
そう一言だけ告げると、全てを分かり合う私たちはゆっくりベッドへ身体を沈めた。
- 41 :めまい :2011/11/09(水) 20:13
-
***********
- 42 :めまい :2011/11/09(水) 20:16
-
ひんやりした空気を感じて眼を覚まし、窓のほうへ視線をやる。
カーテンから漏れる光はまだ青みがかっていて、まだ明け方であることが分かる。
視線を横へやると、まだ眠ったままの彼女が素肌のままの背中をさらしていた。
その、いくらかあたしよりも華奢な身体を見つめながら、
昨日の彼女を思い出していた。
どんなに言ってもせっかちで、待ち合わせの場所へは絶対に先に来ていて。
時計を気にしつつきょろきょろする姿。声をかけて気づいた時にあたしに向けてくれる笑顔。
食べているときの、まるで小動物みたいなもぐもぐとしている口元。
母親みたいな腕の中の体温。時にどきっとするほど大胆になる行動。
絶対に、そう、絶対にあたしにしか見せない顔つき。
声。吐息。鼓動。
全て全てが愛しくて、絶対に失いたくないものだった。
- 43 :めまい :2011/11/09(水) 20:17
-
彼女は分かっているのだろうか。
その一つ一つにあたしがどきどきしたり、幸せになったり、
熱を持ったり、切なくなったり。それが何かの病だというのなら、
喜んで毒されていたいと思った。
ぼんやり眺めていると、背中を向けた彼女がもぞもぞと動き始めて。
「んんんんんんー・・・・・・・」
盛大に伸びをした後に、こちらへ身体を向けなおす。
そしてあたしの胸元へこてんと、顔を寄せた。
「りさちゃん・・・起きたんか?」
「んーん、まだ寝るー・・・・・・」
眼は閉じたままだけれど、口元は笑っている彼女。
腕を伸ばして、しっかりあたしにしがみ付いてきて。
夕べとは違って、子供みたいだと思った。
そんな、あたしを毒する彼女をしっかりと抱きしめて、
髪を撫でつけその頭にキスをした。
――――ぜったいに、離してなんかやるもんか―――
そう思いながら。
- 44 :名無飼育さん :2011/11/09(水) 20:18
- 「めまい」おわりです
- 45 :名無飼育さん :2011/11/10(木) 13:40
- 愛ガキ最高ですね。
今後とも良い小説よろしくお願いいたします。 - 46 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 00:01
- 45さん
感想ありがとうございます。
これからも愛ガキを提供していきたいと思います - 47 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 00:01
- 更新します
- 48 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 00:01
- 「声」
- 49 :声 :2011/11/12(土) 00:03
-
私だけの、その声を聴きたい。そう思った。
**********
マネージャーさんに教えて貰って、iphoneで見た動画。
愛ちゃんが一人になってからの、初めてに近い大きなお仕事がやってくる。
私が見たのはその舞台の記者会見の動画だった。愛ちゃんから話には聞いていたけれど、
その生放送の時間は私も仕事で見れなくて、後から確認した愛ちゃんの様子。
ひどく緊張していたけれど、それでも伝わる嬉しそうな表情に、私も気持ちが浮き立つ。
大好きなミュージカルの舞台に立てるから喜んでいるのは知っていたし、
その劇場に立てることだけでも貴重だと聞かされて、自分のことではないけれど、
私にとっても喜ばしいし誇りに思うことだった。
- 50 :声 :2011/11/12(土) 00:05
-
記者会見の最後に流れたものは、彼女を含むキャストの歌声。その声は久しぶりに聴く様な声色だった。
つい2ヶ月ほど前までは、一人で爽やかに歌い上げたり、がなったり、渋く響かせたり。
彼女は周りから求められる役割を難なくこなしていて、今のそれも同じで。
頂いた役が18歳だというから、それに合わせてキュートな軽めな歌声だった。
思い出すのはまだ私たちが10代の頃の声。元気なポップな歌を沢山歌っていた頃のもの。
気づいたらかっこいい、セクシーな、哀愁のある歌が違和感なく歌えるようになっていて、
久しぶりに聴く声色に少しキュンとした。
いや、本当はそれだけではないのだけれど。
- 51 :声 :2011/11/12(土) 00:07
-
そのキュートな声に艶やかさが加わると、別のものになることを私は知っている。
今はむしろそっちを強く思い出して一人ぞくぞくしていた。
いつもなら私が彼女の下で吐き出すけれど、たまにそれが逆になった時、
私の下から聴こえてくる声。それは私の体温を急激に上げ、心を満たし、
身体のどこかをきゅっとさせて。
――――声が聴きたい
仕事中にも関わらず、それに侵食されてしまった私は
「今日泊まりにいっていいかな?」
そう、iphoneの画面を変えて彼女に送信した。
- 52 :声 :2011/11/12(土) 00:09
-
***********
急なお願いにも関わらず、愛ちゃんは嫌な顔一つせず私を自宅に招き入れてくれて。
二人でソファーにかけて、ゆったりと過ごしていた。
「さっき動画見たよ、記者会見のやつ」
「きんちょーして何話してんのか、わからんかったわ・・」
「うた、良かったね」
ぽつりぽつりを会話を交わす。愛ちゃんの顔を見れば、それはそれは穏やかな笑顔で。
これから何かしようなんて彼女が思っているとは、到底思えない。
でも。
でも。ここへ来る前から私の中でくすぶっている熱は、まだまだ冷める気配なんてなくて
誤魔化すことなんてとてもじゃないけど出来そうには無かった。
- 53 :声 :2011/11/12(土) 00:12
-
隣の彼女の手の上に、そっと私の手を重ねて、その穏やかな顔にゆっくり近づく。
「あいちゃん・・・・・・?」
私も負けないくらいに穏やかな笑みを浮かべれば、何かを悟った彼女は静かに眼を閉じて。
私はその柔らかな唇にそっと口付けを落とす。
一瞬の出来事だけれど、その柔らかな感触はますます私の欲望を加速させ、
今度は角度を変えて唇を押し付ける。もっと深いのがしたくて、強請るように彼女の唇を啄ばめば
そっと開かれる口元。遠慮なく私は彼女の口内を味わう。彼女の吐息までも奪うように、
ただひたすらに彼女の舌を追いかけた。
「ん・・・はぁ・・・・・・・・りさちゃ・・・?」
私のほうから強請るのは珍しいから。
口を離した途端に少し乱れた呼吸を整えながらも、驚いたように少し俯き加減で私の名前を呼ぶ彼女。
もっともっと声が聴きたくて、もっともっと欲しくて、その思いをそのまま言葉にして。
- 54 :声 :2011/11/12(土) 00:14
-
「今日はあたしがしたげる」
「・・りさちゃん・・?」
「だめ・・・・・?」
彼女を抱きしめ、肩に顎を乗せながら甘えるようにおねだりをする私。
すでに眼を潤ませていた彼女に拒否の言葉はなくて、小さく首を振るのを空気の動きで感じ取った。
私は耳元で“ちょーだい”と最大限に甘い声で囁きながら彼女の肌に触れた。
- 55 :声 :2011/11/12(土) 00:16
-
ソファに倒した彼女を、珍しく私が上から見つめている。
同じ女性である私が羨ましくなるくらいに整った顔が、何かを委ねるように眼を伏せている。
真ん丸な瞳に柔らかな頬。子供みたいに吸い付く様な肌。やわらかい胸。腿もおへそも、
彼女の全部全部が愛しくて、「ここも、ここも、ここも。全部だいすきだよ」と
声にならない声を伝えたくてキスを落とし、手を這わす。
私の体温と彼女の体温がどっちがどっちのものなのか分からない位に溶け合って、
呼吸も鼓動もどちらのものか分からないくらいに密着する。
綺麗な鎖骨に舌を這わせて鼻先を肌につければ、いつも以上に甘い甘いあいちゃんの香りが立ち上がってきて。
その香りに酔っ払ったみたいになった私は、もっともっと触れたい思いが心と身体の奥からフツフツと湧き出てくる。
その欲望に抗わず潤った彼女のそこに手を添えれば、次第に乱れていく呼吸と、聴こえてくる甘美な声。
その声で私もくらくらしながら、もっと聴かせて欲しいと思い彼女のナカを味わう。
彼女の表情と呼吸とが、いつもとまるで違う様子に私は酷く興奮した。
- 56 :声 :2011/11/12(土) 00:18
-
「・・・・・・もっと、もっと聴かせて?」
「りさちゃ・・・・りさちゃ・・・っ んんっっ・・・・・・・あぁっ・・・・!!!」
欲しかった、聴きたかった私だけの声がそこにある。
そのあまい、艶やかな声を知るのは今はきっと私だけ。私の欲望を受けとめ、
悦ぶその表情も私だけしか知らない。
眼をつぶり、私の背中にしがみ付きながら呼吸を整える彼女の耳元で私はそっと囁いた。
「ぜったいに、ぜったいに聞かせちゃだめだよ・・・・・?」
その声を他の人には。
先輩からも後輩からも、お仕事関係でお世話になった人も。みんながみんな彼女を愛し、
彼女は時に憧れの的でもあった。
その彼女が私のためだけに声をだす。それも特別な声を。
独占欲丸出しの私は、私の言葉を聞き取って小さく頷く彼女に優越感を抱く。
いつも彼女が私にそうしてくれるように、乱れた呼吸が落ち着くまで、
私は彼女をそっと抱きしめていた。
今見た、今聴いた全てを絶対に逃すまいと、強く思いながら。
- 57 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 00:19
-
「声」終わりです
独占欲の支配されるガキさんでした - 58 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 20:25
- 更新します
- 59 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 20:26
- 「ネックレス」
- 60 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:28
-
海外から帰ったあたしが真っ先に向ったのは、当然あたしが大好きな人の元。
顔を見て帰国報告がてら話をしたかったし、彼女に買ったお土産が可愛らしくて早く渡したくて気持ちが逸る。
「りさちゃん!!おみやげやよー」
「あー、ありがとう!」
――― 開けてもいい?
そう笑顔で聞く彼女に素直に頷く。買ってきたのは可愛らしいネックレス。
モチーフが違うけれど、あたしとお揃いの。
「あー かわいい!!これリンゴ?黄色いけど」
「そー ほれ!あたしとおそろいやで」
そう言いながら、あたしは自分の首元にかかるネックレスのモチーフをひょいと摘みあげて、
彼女に見せた。
「やっぱ愛ちゃんはいちごだね」
「だってかわいいやん」
- 61 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:30
-
ふらり入った雑貨屋さんでいちごとリンゴが仲良くならんでいたのを見つけた。
あたしはいつもの悪い癖で、衝動的に二つとも手にとって買おうとしていた。
「あいちゃん、買いすぎ」
そう言う、彼女の低めの声が頭によぎり一瞬躊躇したけれど、でもやっぱり欲しくて。
だったら彼女のお土産にしようと、そのままレジへ持っていった。
「着けてもいい?」
早速りさちゃんはそれを手に取り、着けようと自分の首元へ翳す。
ネックレスのチェーンが伸びた髪に引っかからないように、耳に髪を掛けると彼女の小ぶりな耳が見えて。
耳元の小さなピアスに太陽の光が当たって、きらりと光った。
- 62 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:32
-
子供の頃からお互いを知るあたし達。
ピアスもネックレスも、アクセサリーなんてつけたことが無くて最初は照れくさかったけれど、
今じゃごく普通に身につけるし良く似合うようになった。
このリンゴのモチーフも、よくよく見ると葉っぱのところに小さな石がついていて、
子供ではないけれど、大人の女性とも言い切れないあたし達の歳には返ってぴったりな気がした。
- 63 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:34
-
「あれっ・・・・・?」
「うまく着かない?貸してみ?」
首の後ろに手を回してネックレスを着けようとするが、
何度かやっても上手くいかないようであたしが着けてあげようと彼女から受け取る。
「できた!・・・・うん、似合ってる」
「かわいいー ありがとうー」
嬉しそうに笑う彼女。その表情を見てあたしも満足だった。
今までもお揃いはあった。ピンキーリングやポーチ、それに服。
お揃いを持つのは嬉しいし、選んでいるときは楽しい。
プレゼントをする度に彼女が喜んでくれるし、そのお揃いのものたちを見ているだけでも
彼女を感じることが出来て、あたし自身幸せな気分だった。
- 64 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:35
-
でも、あたしはずるいんだ。
ネックレスをかけてあげながら、心の中ではほくそ笑んでいて。
ネックレスはゆるいゆるい首輪。
どこかへ行っても、必ずあたしの元へ帰ってくるんだよ?
そんな嫉妬心や独占欲にも似た勝手な思いが頭の中をめぐる。
りさちゃんの首元でネックレスが揺れるたび、あたしの存在がそこに光る。
それはあたしの、りさちゃんを誰にも渡したくない、勝手な主張だった。
だから色も赤ではなくて、黄色にした。あたしの馴染みの色だから。
りさちゃんの鎖骨あたりの黄色いリンゴが揺れるたび、
あたしの気分は高揚していくに違いない。あたしの色に彼女が染まっていく気がして。
すると、あたしの気持ちを何もかも見抜いているらしい彼女がふわり笑いながら言った。
- 65 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:37
-
「これ、赤にしなかったのわざとでしょ?」
―――――だって、あいちゃん色だもんね
ふふふ、と笑う彼女の前ではやっぱり敵わない。
その小悪魔みたいな笑いに、私は素直に頷くしかなかった。
別に隠しておくつもりもなかったし、それが真実だったから。
黄色いリンゴを手にして、嬉しそうに眺めるりさちゃん。
大好きな彼女にゆるい首輪をかけたつもりだけれど、もしかしたら首輪をかけられてるのは本当はあたしのほうなのかも知れないなと、
そんな彼女を見つめながらあたしはぼんやり思った。
- 66 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 20:37
-
「ネックレス」おわり - 67 :名無飼育さん :2011/11/13(日) 15:59
- 更新します
- 68 :名無飼育さん :2011/11/13(日) 16:00
- 「aphrodisiac or Aphrodite」
- 69 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:02
-
「ほれ。できたよ」
「あー ありがとう」
あたしが作るカフェオレは、時々びっくりするほど甘くなる時がある。
単にお砂糖を入れる量を間違えるのだけれど、普段あんまり料理をしないもんだから、
目分量というのが分からない。
その上どれくらいがベストな量なのかを覚えていないもんだから、
毎回味がバラバラ。
「うぉっ 今日、結構お砂糖入れたでしょう?」
「ほーかー?んー・・・・・ちょっと甘いくらいやろ」
普段ブラックを好んで飲むりさちゃんからしたら、今日のはどうやら結構甘い部類に入るらしい。
あたしはあんまり気にならないのだけれど。
- 70 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:04
-
「これ、スプーン何杯くらい入れたの」
「多分1杯、2杯・・・?」
「なにそれ、覚えてないんだ」
「んー、あとは惚れ薬!!」
「はぁ・・・・?!」
りさちゃんからのお咎めから上手くすり抜けるためには、これくらいの冗談が必要で。
呆れられているのは分かっているけれど。気にしない。
でも、本当のところは。
惚れ薬が本当にこの世の中にあるならば、本当にりさちゃんに飲ませたかった。
勿論あたしをずっと好きでいて欲しいから。
そんな奇跡的なものがあるならば、だけれど。
- 71 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:06
-
今、二人は別々の場所で頑張っている。
新しい環境の中で新しいお仕事が頂けて、新しい世界がそれぞれ広がっている。
それはとてもありがたいことだし、あたしだけでなくて、りさちゃんもそんな環境に身を置いていて、
自分のことではないけれど自分にことのように喜ばしいことだった。
それでもたまに陥る不安。心が離れていったらどうしようか。
考えても仕方の無いことなのに。
前ならば毎日のように顔を合わせていたし、起こりようの無かったものだ。
それが別々に動くようになって、時々ひょっこり顔を出しては、あたしの心を落ち込ませた。
- 72 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:08
-
「・・惚れ薬なんてさ、いらないでしょ」
大き目のカップをテーブルに置いて、りさちゃんは顔をこちらに向けながら言った。
「・・うん、わかってる。わかってるんやけど・・・」
「なに、不安なの?」
こくりとあたしは頷いた。
こんなところで嘘をついて、強がってる余裕なんてどこにも無かった。
そんなあたしの反応を見て、りさちゃんがため息ともとれない息をふっと吐くのがわかって。
あたしはなんだか怖くなって眼をつぶった。
「かして・・」
りさちゃんは言い終わる前に、あたしの手からカップをとって、
彼女が置いたその隣に置いた。
手が空になった状態でふと顔を上げたとき、彼女はあたしの目の前に立って少し困ったような顔をしていた。
それからあたしの肩に手を置いて、ゆっくりとあたしの膝の上に跨った。
- 73 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:11
-
りさちゃんの顔がゆっくりと近づいてくる。何をされるか分かったあたしは、
目を静かに閉じる。
かすかに感じる彼女の唇。それはおでこと瞼とそしてあたしの口に、
柔らかくて温かい何かを残した。
こつりと感じたおでこ。きっとりさちゃんがあたしのおでこにくっついて来たんだ。
「すき。好きだよ・・・あいちゃん」
「・・・・うん・・」
「ずっとずっと、すきだから」
そっと大切に囁かれた言葉はあたしの心優しく降ってきて。
ゆるりゆるりとあたしの心を包みこんでくれた。
ふと眼を開けると、まだすぐ傍にある彼女の瞳とぶつかって。
- 74 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:13
-
「ねぇ、あいちゃん?私の顔いまどうなってる?」
「・・・・真っ赤やね・・」
「・・・・こんなことさ。こんな恥ずかしいことさ。あいちゃんだから出来るし、
あいちゃんだからするし、あいちゃんだからしたいと思うんだよ」
「・・・・うん」
「だからさ、不安になんてならないで?」
そう言うと、彼女はゆっくりとあたしの頭を抱えるようにしてあたしを抱きしめた。
あたしはあたしで、りさちゃんの言葉が嬉しくて、幸せすぎて心と眼の奥が熱くなって。
彼女の細い背に腕を回しながら、自然と零れそうになる涙を誤魔化すように、
彼女の胸元に顔を押し付けた。
- 75 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:16
-
惚れ薬は本当にあるのだろうか。
もしあったとしても、それはあたしには全く必要のないものなんだろう。
だって、何より今こうしてあたしを抱きしめてくれる彼女そのものが、
あたしの惚れ薬なのだから。
- 76 :名無飼育さん :2011/11/13(日) 16:19
-
「aphrodisiac or Aphrodite」
終わりです。
毎日気持ち悪いくらいに出来ていますが、どうかお付き合いください - 77 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 23:13
- 更新します。
今回は短めです - 78 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 23:17
- 「voice」
- 79 :voice :2011/11/14(月) 23:19
-
いつものように浅い眠りにつき、寝ては起きてを何度か繰り返す。
ふと眼を覚ましたとき、目の前には大好きな彼女の背中があった。
衣装を着て歌い踊る姿はかっこよくて、その醸し出す雰囲気のせいか大きく見えていた背中。
それでも素肌のままのそれは、やっぱり女の子で華奢な肩だった。
彼女も私の同じ方向を向いているから顔は見えなかったけれど、
規則正しく動く身体はまだ彼女が夢の中にいることを教えていた。
- 80 :voice :2011/11/14(月) 23:20
-
彼女がまだ眠っているのをいいことに、その背中におでこと鼻先をつけて眼を閉じる。
そしてそっと囁いた。
――― すきだよ ―――
素直じゃないし、照れ屋な私は二人でいる時ですら本当の気持ちを伝えることは少なくて。
それでなくても、彼女に抱きしめられて愛されてる時なんて、もっと言えなかった。
- 81 :voice :2011/11/14(月) 23:21
-
その一方で、あいちゃんはいつだって私に言葉をくれた。
電話でも、メールでも、直接会って会話しているときも。
そしてお互い求め合って愛し合ってるときだって、言葉と、“言葉にならないことば”をいっぱいくれて。
耳元で囁く声だけじゃなくて、彼女は私にキスを落とす度、心の声を伝えてくれる。
あいちゃんの温かくて柔らかな唇が私の身体に触れるたび、そこを通じて聞こえてくる声。
唇から、耳から、鎖骨から、胸から、おへそから、腿から、膝から・・・・。
頭から脚の先まであいちゃんの「すき」でいっぱいになっていく感じがした。
- 82 :voice :2011/11/14(月) 23:24
-
途中までは「すき」の数を数えているんだけれど、いつの間にか私のカウントは振り切れる。
そして心も体もあいちゃんの「すき」で満たされて、あったかくなる気がした。
私も何かを伝えようとするけれど、彼女の愛を受け止めるだけで、言葉にならなかった。
でも。
私も貰っているばかりじゃなくてこの溢れんばかりの言葉を、私も返したい。
だから伝える。
相手は眠っているけれど、顔が見えない背中だけれど。
私は彼女の綺麗な背中をするりと撫でて、大切にたいせつに、ゆっくりキスをした。
最大限の「すき」を込めて。
- 83 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 23:25
-
voice
短めですが、おわりです - 84 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 00:27
- 温かい雰囲気でよかったです
ほっこりしました
これからも楽しみにしてます - 85 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 21:56
- 84さん
感想ありがとうございます。励みになります - 86 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 21:56
- 更新します
- 87 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 21:57
- 「鼓動」
- 88 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:01
-
「なぁ、ちょっとまた痩せたんと違う・・・?」
「そんなに変わってないから。てゆーか重いし!」
何を言ってるんだ、この人は。
そもそも人の脚の上に頭を乗っけて、だらしない顔で言われても全然心配してるように見えないし。
「ホントは全然心配してないでしょ?・・それに、ちょっとなに、そのやらしい手は?」
おっさんみたいにへらへらと笑いながら、さりげなく私の腿を触れる愛ちゃんの手を
軽くひっぱたいてやった。
「ちょっと痛いがーー・・・」
「だってあいちゃん、おっさんみたいなんだもん」
「だってりさちゃんの腿すべすべやし、大体もっと痩せたら寝心地悪いやんか」
「・・はぁ?落とすよ?」
- 89 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:03
-
―ごめんって。
そう言っておっさんみたいな彼女は、膝枕の体勢を変えることはせず、
たいそう偉そうな格好のままへらへらと謝った。
全然謝罪されてる気持ちにはなっていないけれど。
「なー 10期どうや?あと、9期も」
「んー、そうねぇー・・・・・」
結局私は愛ちゃんに膝枕をされたまま、会話を続ける。彼女のさらさらな髪を撫で付けながら、
盛大に甘やかして。
お互いの舞台のことや、今のメンバーのこと、愛ちゃんの新しいお仕事のこと。
沢山報告したいことがあったし、愛ちゃんの話しも聞きたかったから夢中になって話しを続ける。
それに次のお休みはどこ行こうかなんて話しにもなったんだけれど。
「でさ、次のお休みあったらさ、行きたいところがあるんだけどさ?」
「・・・ぎゅー・・・」
「・・・あいちゃん・・・?」
「・・・あんな・・?」
今まで私の顔を見上げるようにしていた愛ちゃんは、
私のおなかに顔を寄せて、しがみついたかと思えば突然とっぴょうしも無いことを言い出した。
- 90 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:04
-
「・・・あんな、好きな香りがすると人は落ち着くって言うやろ?でもあたしは違うと思うんよ」
「・・・どう言う事?」
彼女と話していて会話の内容が突然変わることも、意味が分からない行動を起こすのもいつものこと。
いつものことだけれど、やっぱり理解に苦しんで言葉に詰まる。
その私の表情を気づいているのかいないのか、彼女は私の手をそっととって、自分の胸元に当てた。
そして感じる、彼女の鼓動。
「あいちゃん・・・?」
「すごいどきどきしとるやろ?やっぱり違うと思うんやよ。りさちゃんの匂い、だいすきやもん」
――― りさちゃんの香りがするとどきどきが強くなるんやよ?
そう言ってまた、下から私を眺めてる顔はほんのり頬が染まっていて。
そしてそんな彼女を上から見ている私もきっと顔が赤くなってるんだ。
「・・・わたしも・・・。わたしもどきどきしてるよ?」
そう言って私はさっきまで彼女の胸にあった手を、同じように自分の胸に当てた。
- 91 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:06
-
きっときっと変わらない。
だいすきな人の香りに包まれたときの幸福とときめきは。
眠ろうとする時はちょっとうるさいけれど、そのどきどきが照れくさいけれど。
こんな幸せな鼓動ならば永遠に感じていたいと思った。
と思ったのだけれど。
「ね、あいちゃん・・・?」
――― この野郎。
膝元を見てみると、規則正しい呼吸になって、眼をつぶる愛しい顔。
・・・寝てやがる。なんなのさ。さっきはおっさんみたいににやにやして、私のイライラなんて無視して、話始めたかと思ったらどきどきさせるし、最後には勝手に寝ちゃって。
いい歳して子供みたいじゃんか。
- 92 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:16
-
――どきどきするって言ってたくせに。
そう悔しさにも似たようなことを思いながらも、愛しい彼女の頭をまたゆっくり優しく撫で付ける。
――しょうがないなぁ・・私はあなたのママじゃないんだけどなぁ・・
そして、いくつになっても勝手気ままな彼女と、そんな彼女に振り回されることを結局は喜んでいる
私自身に呆れつつも、その無防備な頬にそっとキスを落とす。
「・・・・おやすみ?」
そうやってかっこつけては見たけれど、やっぱりだいすきな彼女を目の前に嘘なんてつける訳はなくて。
私のその幸せな鼓動はこれまでも。
そしてきっとこれからも、決して治まることなんてないんだろう。
むしろそんな鼓動ならば永遠に止んでくれるなと、目の前の愛しい寝顔を見つめながら思った。
- 93 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 22:18
-
「鼓動」終わりです - 94 :名無飼育さん :2011/11/16(水) 22:12
- キュンキュンする話が多くて、素敵。
愛ガキ、最高! - 95 :名無飼育さん :2011/11/17(木) 21:13
- 94さん
ありがとうございました。頑張ります - 96 :名無飼育さん :2011/11/17(木) 21:14
- 更新します
- 97 :名無飼育さん :2011/11/17(木) 21:14
- 「あなた」
- 98 :あなた :2011/11/17(木) 21:16
-
「ゆび、治ったんやな。良かった・・・・・」
愛ちゃんはそう言って、私の指を手にとってそっと撫でながら、優しく微笑んだ。
この前料理をしていて、うっかり切ってしまった指先。その時愛ちゃんは
可愛らしい絆創膏を貼ってくれたけれど、あれから数日が過ぎてその傷もすっかり治っていた。
今はもう、舞台のために短く控えめに施したネイルがそこにはあって。
「ありがと・・もう切ったりしないよ?」
ちょっと強がって、でも可愛げに言ってみるけど、返ってきたのは私をからかうような言葉。
- 99 :あなた :2011/11/17(木) 21:18
-
「どーやろ?りさちゃん、意外とそそっかしいもんな」
「そんなこと無いってばぁ・・」
「だいじょうぶかぁ?」
「んもう・・大丈夫だって・・」
くすくすと笑いながら交わす会話。でも、途端にまた顔が切り替わったと思ったら。
「でもさ、りさちゃんが怪我するのは嫌だけどさ・・」
――― その時はまたあたしが治してあげるから・・
愛ちゃんは撫でていた私の指先をゆっくり口元へもっていくと、そっと口付けをする。
私の眼をじっと見つめながら。
なんだか恥ずかしくて眼を逸らしたくなるのに、その強い瞳に何かを捕まれたようで、
私は眼を離すことが出来ない。
「なおしてあげるから・・・・」
もう一度そう言って、私の指先を再び撫でる愛ちゃんの睫毛がゆっくり振れるのを、
私はじっと見つめる。
少し上から見える愛ちゃんはやっぱり綺麗で。
- 100 :あなた :2011/11/17(木) 21:19
-
とくりとくりと私の中の血が流れ出し、熱が上がってどこかへ向うのを感じる。
次第に強くなるその感覚に抗わずに居れば、私の指を放した愛ちゃんの手が今度は頬を撫でて。
「りさちゃん・・・」
愛しくて甘い声で私の名前を呼ぶけれど、そこでただただ微笑む彼女。
そっと私の髪の束を耳に掛けたかと思えば、さっきと同じようにまた優しく頬を包む手。
私はその手に自分の手を重ねて、呟いた。
「いじわる・・・」
思わず出たことば。その自分の言葉に決まり悪くなって俯いた。
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- レスをつける前に自治FAQに目を通しておくこと。
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