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お酒はウイスキーがお好み

1 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 23:50
夢板に少し書かせていただきましたが、これからもちょくちょく更新しそうなため
スレたて致します。

基本愛ガキです。
2 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 23:51
更新します
3 :名無飼育さん :2011/11/07(月) 23:51
「ゆびさき」
4 :ゆびさき :2011/11/07(月) 23:53

ここに立つのは何回目だろう。
付き合い始めて早数年になる彼女の部屋もだいぶ見慣れた景色となり、
最初は照れくさかったその空気も、今となっては心地よいものとなっていた。

私も彼女もあんまり料理はしないけれど、たまにはお互いに簡単なものを
作っておうちごはんをすることもある。外とは違ってのんびりできるし、
一人でやるのとは違って二人並んでする料理は、作ることも後片付けも楽しいものだった。




5 :ゆびさき :2011/11/07(月) 23:56

ある時調子にのった彼女は、私に“付けて”と、あるものを用意してきた。

――だいすきなキャラクターのエプロン――

最初は恥ずかしくて文句を言ったものだけれど、今となっては当たり前に
付けてしまう自分にちょっと呆れてしまう。
単純にキャラクターが可愛かったし、彼女の気持ちが何より嬉しかったから、
今日もそれを付けてキッチンに立つ。


「ねー ナス入れんといてー あたしナス嫌いやん」
「もー文句言わない!美味しいってばさぁ」


舌が“ダコダコ”になるから。と、わけの分からないことを言う彼女を無視して、
私はカレーを作ろうと野菜を切っていた。
玉ねぎも切ったし、ジャガイモの皮剥きはあいちゃんに任せたし、あともう少し。
そう思っていたら。


6 :ゆびさき :2011/11/07(月) 23:57

「痛っ・・・・・・・・・・」

左手の指先に滲む血。うっかりして切ってしまったらしい。

「切ったんか?見せてみ?」

素直に言葉に従って、指を見せると
「こんなん舐めときゃ治る」そう言って、彼女はぺろりと私の指を舐めた。
一瞬何が起きたのか分からなくて、ぼーっとしてしまったのだけれど、
その指先に感じたものを理解した時には、彼女は絆創膏を探しにリビングに
戻っていった後だった。

―――指先がアツい―――

痛みで脈を感じる熱さなのか、それとも彼女が齎した熱なのか。
ぼーっとしたまま自分の指先を見つめていると、リビングから戻ってきた
彼女は可愛らしい柄の絆創膏を付けてくれて。

「しばらくしたら、血ぃ止まるやろ」

そう言って料理を再開した。


7 :ゆびさき :2011/11/07(月) 23:59

ご飯ができたら嬉しいし、美味しいし。二人で囲む食卓はいつだってあったかい。
家族で食べるごはんもいいけれど、愛ちゃんと二人で食べるごはんは私にとって、いつになっても特別だった。

食事を終えて、もう一度キッチンに立つ。
コーヒーを用意してくれる愛ちゃんの隣で私は洗いものをしていたのだけれど。

再び眼に入った自分の指先の絆創膏に、さっきの熱を思い出してしまった。

でも。
どくどくした脈の感覚ではなくて。
明らかに違う熱。



8 :ゆびさき :2011/11/08(火) 00:02

手を止めて、横に立つ愛ちゃんの顔を見つめる。

「どしたぁ??」

私の視線に気づいた彼女は、いつもの可愛らしい声でそう言いながら首を傾けた。

私は返事もしないで、彼女の頬にキスをした。
顔を離せば、驚いたようなまん丸の眼の彼女が立っていた。いつもならその視線に
耐えられくて顔を反らしてしまう私だけれど、今日、さっきから感じる熱のせいで
いつもと同じようにはいかなくて。


9 :ゆびさき :2011/11/08(火) 00:04

「・・・・あいちゃん」

何度呼んでも愛しい名前を呼んで、もう一度キスをする。
今度は唇に。深い深いキス。
自然と私の腕は彼女の首に回り、彼女の腕は私の腰に回る。


「・・・・あいちゃんが、いけないんだからね・・・」


どれくらい経ったのだろう。
やっと離した彼女の唇を見つめながら、私の内側にこもる熱を吐き出すように
言った。

気づいたらお湯が沸くような音が聞こえてきていたのだけれど、
そんなことは気にしない。



愛するひとはあなただけ。
欲しいのも、あなただけ。



10 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 00:04
「ゆびさき」
以上です
11 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 21:59
夢板にて既出ですが、二つほど。
12 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 21:59
「こんや」
13 :こんや :2011/11/08(火) 22:01

―――― 今日、行っていいかな?

珍しく私から愛ちゃんへ「会いたいよ」のメール。
これまでは当たり前に毎日のように顔を合わせていたけれど、彼女が卒業をした今、
メールはまだしも電話をすることすらままならない。

前に会ったのはきっと1週間くらい前。
それでも今、会いたいのだ。

―――― 仕事で遅くなるから、先帰ってて

私が来ることを当たり前のように受け止めてくれる彼女。
一緒に住んでるわけじゃないのに「帰ってて」の言葉が嬉しいし、
ちょっとくすぐったい。

私は彼女のお言葉に甘えて、先に“帰宅”することにした。


14 :こんや :2011/11/08(火) 22:02

合鍵で入った彼女の部屋は、前とさほど変わっていない。
変わらない景色に安心して、せめてものお返しにと温かいスープと
お風呂を用意してソファに横たわる。
そんなつもりは無かったけれど、大好きな人の、いないけれどその存在感と、
慣れ親しんだソファに心地よくなって、いつの間にか私は眠ってしまった。

どれくらい経ったのか、気づいたら彼女の掌が私の頭を撫でていて。


15 :こんや :2011/11/08(火) 22:04

「・・・・・んっっ・・・・あいちゃん?」
「ただいまぁ――」
「ごめっ あたし寝ちゃってた?」

隣にいる彼女の顔を覗き見れば、優しい笑みを携えていて。

「スープ、美味しかった ありがとな?」

その言葉が嬉しくて、ドキドキしながら寝起きのけだるい身体を起こす。

「ママに教えてもらったの、簡単だし美味しいから作ってみた」

そう言いながら穏やかな空気が心地よくて、そして寝起きの身体がやっぱり重たくて、
彼女に抱きつき眼をつぶる。

背中に彼女の温かい手を感じながら、首元にすりよる私。
いつもなら「なんやぁ 甘えん坊やなぁ」なんて、からかいの声が聞こえてくるはずなのに、
今日は何にも言わない。

ただただ私の背中を撫で付ける手。


16 :こんや :2011/11/08(火) 22:05

あぁ、きっと伝わっちゃてるんだ。
私がここに何しに来たかなんて、何にも言わなくても伝わってるんだ。

「・・・やっと出来た」
「・・・何が?」
「りさちゃんほじゅー・・・・」
「・・・そだね・・」

やっぱりね。おんなじ気持ち。私もここへ「あいちゃんほじゅー」に
来たんだもの。
照れくさくてはっきりとは言えないけれど、その気持ちが伝われとばかりに、
抱きしめる腕を私は強めた。






17 :こんや :2011/11/08(火) 22:06

「こんや」おわり
18 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:06
もう一つ既出です
19 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:06
「こんや また別のある夜」
20 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:10

明日の仕事がたまたま二人してオフだったから、
だったらおいでとメールしたらすぐに「行くね」と彼女から返事がきた。

久しぶり二人で外で食事して、お酒も少しに飲んで気持ちよくなって我が家に帰宅。
里沙ちゃんはまだ少し酔っているようだったけれど、眠くなるほどでもないようで、
先にお風呂に入っておいでと促せば、素直に頷きお風呂へ向った。

いつもお仕事の現場で見ていた時とは明らかに違う、のんびりと無防備な歩き方。
後輩たちに囲まれて引っ張っていく背中とは似ても似つかない華奢な肩を見ながら、
愛おしい気持ちがこみ上げる。


21 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:11

やっぱり彼女の隣にいたい。
どんなに一緒の時間が少なくなったって、あたしが彼女の癒しになりたいし、
あたしだって彼女が必要なのだ。

そんなことを酔いが冷めていくのを感じながら考えていたら、
さっぱり顔の彼女がやってきて。

「愛ちゃんも入っておいで?」

笑顔で促された。

いつもならもう少しのんびり入るのだけれど、今日は彼女がいるからと半身浴はそこそこにして、
お風呂を出る。
先に髪を乾かした里沙ちゃんが「やってあげる」と言うもんだから、
そのお言葉に甘えて、髪を乾かしてもらった。




22 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:13

お礼に温かいココアを煎れて、取りとめもないお喋りをソファーに掛けて興じる。
この、なんでもないのんびりとした時間がとても大切で、手放したくは無い。
いつかは一緒にすみたいなぁなんて考えていると、あたしのカップも、彼女のカップも底が見えていて。

「寝よか」
そう声を彼女も立ち上がり、ベッドルームのほうへ身体を向けた。

先に歩き出した彼女の背中はやっぱり華奢だった。
一緒にいたときは、そのリーダーシップで大きく見えていたけれど、
そんな肩書きを一時的にでもそっと下ろしている今のこの場所では、
それはそれは思っていた以上に華奢で。
思わずふわりと抱きしめた。


23 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:14

「なにー 歩きづらいんだけど」
「えーやん、すぐそこまでだし」

くすくす笑いながら返された言葉なんて、抗議ともとれない。
彼女だって嫌ではないことくらいわかっているから、
そのままの状態で後ろから抱きしめながらベッドルームへ向った。

一人では少し大きめなベッドへ身を預け、電気を消す。
いつもうつ伏せの体勢で眠る彼女を暗がりの中で横から眺めていた。
せめて寝つきの悪い彼女の寝息が聞こえるまで起きていよう、そう思いながら。


24 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:17

するとあたしの顎あたりに温かくて柔らかな感触がして。
うつ伏せから突然振り返って、彼女がくれたキスだった。

勿論それを理解する頃にはまた元のうつ伏せの姿に戻っていたのだけれど。
一瞬の出来事だったけれど、その一瞬がとても愛おしくて、あたしは彼女の肩越しに顔を寄せた。

すっかり伸びたさらさらの髪を持ち上げて、彼女のうなじにキスをする。
それから耳と首筋にも「好きだよ」と気持ちを込めながら。

うつ伏せだった彼女はゆっくりと振り返り、あたしの首の後ろへ腕を伸ばした。

どちらも言葉は出さないけれど、目と目がしっかり合うのを感じる。
おでこと鼻がくっつきそうになるくらいに顔を寄せて、あたしは一言発した。



25 :こんや また別のある夜 :2011/11/08(火) 22:18

「もう、ねる?」
「・・・・・ううん、まだ。ねない」

そう彼女の言葉を最後まで聞き取ったあと、その唇にあたしのそれを重ねた。




よるはまだ、ながい。



26 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:19

「こんや また別のある夜」おわりです
27 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:19
更新します
28 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:20
「泣き虫」
29 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:23

――― 今日、きて。

彼女からのメールが突然なのも、それが殺風景な文面であることも、
そんなことは良くあることで、さほど気にはならない。
だけど何故だか今日に限って、それメールを打っているだろう愛ちゃんの姿も顔色も、
それからそのメールのニュアンスも全く読み取れなくて、私はひどく混乱していた。

何かあったんだろうか?
そのメールの前後に残った不在着信がどちらも彼女のものだと分かって、
それが余計に私を不安にさせた。

彼女のメールに温度が感じられない。
いや、感じられるけれど冷たい水に浸っている感覚。
いずれにせよ、急ではあったけれど、今夜はそのまま愛ちゃんちへ向うことにした。
ママには変な心配をさせないように、適当なごまかしをしながら。


30 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:24

―― ピンポーン

インターホンを鳴らすと彼女はすぐに扉を開けてくれた。
けれど何も喋らず、俯いたままの彼女に堪らなくなって声をかけた。

「・・・・・・あいちゃん、、、来たよ?」

なるべく刺激をしないように、優しく声をかけたつもりだったけれど、
私の言葉が終わると同時に彼女は私を抱きしめてきて。

「・・・・あいちゃん?」
「・・・・りさちゃ・・・・」

私の名前を言い終わる前に、彼女は肩を震わせていた。
それが泣いているのだと気づいた私は、ゆっくり頭を撫でてやることしか出来なかった。


31 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:26

床が冷たい。

彼女の涙なんて数え切れないほど見てきたし、大声を上げて子供のように泣く姿なんて慣れたもんだった。
それなのに、今日は声も上げずにさめざめと泣くもんだから、それが余計に私を悲しくさせた。
ただひたすらに静かに流れる涙は、まるで傘も差さずに冷たい雨を浴びてるようで、
身も心もひんやりする。

ああ。
少しでも早く、この愛する人の涙の原因がなくなって欲しい。

今それが知れないのはもどかしいけれど、そう思いながらひたすら頭を撫で続けた。



32 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:27

少し落ち着いたのか、私の肩から顔を上げた彼女は、
黙ったまま私の手を引っ張りリビングへ移動する。
客人であるのは私だけれど、彼女をソファーに座らせて、紅茶でも入れようと
私はキッチンへ向った。

昔、どこかの国ではなにかあったらとりあえず紅茶を飲むと聞いたことがあるから。
身体が温まれば、彼女の心も解れていく気がして、紅茶を煎れてリビングに向う。
するとそこには無防備に眠ってしまっている彼女の姿があった。



33 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:29

――泣きつかれたのかな

まだ涙の原因が分からなくて、心が痛むけれど、今は寝かせてあげたい。
私が来たことで、その悲しみが和らいだのだったら尚更だ。理由を聞くのは明日でいい。
もっともっと先でもいい。
大切な我が子を労わるみたいに、涙の痕をそっとぬぐって、その手を握りながら私もそこで眠ることにした。




34 :泣き虫 :2011/11/08(火) 22:32

翌日。

眼は真っ赤だし、瞼も腫れぼったい愛ちゃんは、
昨日の涙の理由を冷たいタオルで冷やしながら話してくれた。


「うとうとしてたら怖い夢見てぇ、家に帰ったらおっきな虫が出るしぃ・・・・・」
「・・・・・はあ??」


その、あまりにくだらない理由に私はほっとしたと同時に馬鹿ばかしくなって、
目の前にいる彼女に、何か仕返しをしてやりたくなった。

その、いつまでたってもあどけないおでこに盛大にデコピンをかましてやったのは
言うまでもない。





35 :名無飼育さん :2011/11/08(火) 22:33
「泣き虫」おわりです


なんかちょっとごめんなさい
36 :名無飼育さん :2011/11/09(水) 19:52
更新します
37 :名無飼育さん :2011/11/09(水) 19:52
「めまい」
38 :めまい :2011/11/09(水) 19:54

顔を合わせてゆっくり話せたのはどれくらいぶりなのかは分からないけれど、
時間が経てば経つほど愛しい気持ちが溢れてきて、二人の間に漂う空気はまるで
温かい毛布に包まってるみたいだった。
まめに連絡は取るけれど、やはり電話越しの声と目の前から発せられる声は違うし、
何より表情が見れるのは幸せだった。

外から帰ってきて、すぐにお風呂を沸かす。
順番に入って、またまったりとした時間を愉しむ。
いつもならそれはソファで過ごす時間なんだけれど、夜の急な冷え込みに湯冷めしてしまいそうで、
私は彼女より先にベッドに入って雑誌を読みふけっていた。



39 :めまい :2011/11/09(水) 20:11

「―りさちゃんが雑誌買うなんて珍しいな?」
「ほら、ディズニー特集!」

部屋に入ってきた愛ちゃんの言葉に、手元の雑誌を見せながら言う。
また一緒に行きたいね―。そやな―。
軽い会話のあと、まだ髪が乾ききらない彼女は、部屋の鏡に向って座り、
ドライヤーを始めた。

ベッドから眺める、彼女の背中。
一人で歩き始めてまだわずかだけれど、変わらずピンとしていてかっこよかった。
いくらか髪が伸びて色も暗くなったようだけれど、相変わらず猫っ毛なのが可愛らしい。
ドライヤーを持つ手も、うなじも、その行動も。素の姿のあいちゃんは何も変わらなくて、
なんだかほっとした。

ドライヤーの音が止み、こちらへ振り向いた彼女。
手元の雑誌はベッドの下へ置き、私は両手を大きく広げて
「おいで」と呼んだ。

「なんよ―・・・・・」
彼女はいくらか照れたようなそぶりを見せたけど、ベッドに上がると素直に私の腕の中へ収まった。


40 :めまい :2011/11/09(水) 20:13

「あったかいね」
「・・・うん」
「ひさしぶりだね、ちゃんと会うの」

彼女は何も答えないけれど、私の背中に腕を回し、私の肩に頬を寄せた。
そんな仕草一つ一つが愛しくて。この溢れそうになる思いを
どうしたら伝えられるのだろうと思ったのだけれど。

「・・・・・・あの・・・」
「・・ん、なに?」
「・・・りさちゃん・・」

腕を緩めて表情を見れば、眼を潤ませた彼女の顔。
もの欲しそうな、何か言いたげな顔。

―――いっしょだ、あたしとおもってること

久しぶりに会って、お互いの温度を感じて。
欲しくないわけない。相手のこと。抱きしめて、触れて、もっと感じたい。
おそらく私に遠慮して、なんだか躊躇っている彼女。
いつもなら照れくさくて、私からは一切言わないけれど、
眩暈が起きそうなくらいの思いに、そんな余裕は無くて。

「しよ・・・・?」

そう一言だけ告げると、全てを分かり合う私たちはゆっくりベッドへ身体を沈めた。


41 :めまい :2011/11/09(水) 20:13

***********



42 :めまい :2011/11/09(水) 20:16

ひんやりした空気を感じて眼を覚まし、窓のほうへ視線をやる。
カーテンから漏れる光はまだ青みがかっていて、まだ明け方であることが分かる。
視線を横へやると、まだ眠ったままの彼女が素肌のままの背中をさらしていた。

その、いくらかあたしよりも華奢な身体を見つめながら、
昨日の彼女を思い出していた。

どんなに言ってもせっかちで、待ち合わせの場所へは絶対に先に来ていて。
時計を気にしつつきょろきょろする姿。声をかけて気づいた時にあたしに向けてくれる笑顔。
食べているときの、まるで小動物みたいなもぐもぐとしている口元。
母親みたいな腕の中の体温。時にどきっとするほど大胆になる行動。

絶対に、そう、絶対にあたしにしか見せない顔つき。
声。吐息。鼓動。

全て全てが愛しくて、絶対に失いたくないものだった。


43 :めまい :2011/11/09(水) 20:17

彼女は分かっているのだろうか。
その一つ一つにあたしがどきどきしたり、幸せになったり、
熱を持ったり、切なくなったり。それが何かの病だというのなら、
喜んで毒されていたいと思った。

ぼんやり眺めていると、背中を向けた彼女がもぞもぞと動き始めて。

「んんんんんんー・・・・・・・」

盛大に伸びをした後に、こちらへ身体を向けなおす。
そしてあたしの胸元へこてんと、顔を寄せた。

「りさちゃん・・・起きたんか?」
「んーん、まだ寝るー・・・・・・」

眼は閉じたままだけれど、口元は笑っている彼女。
腕を伸ばして、しっかりあたしにしがみ付いてきて。
夕べとは違って、子供みたいだと思った。

そんな、あたしを毒する彼女をしっかりと抱きしめて、
髪を撫でつけその頭にキスをした。

――――ぜったいに、離してなんかやるもんか―――

そう思いながら。



44 :名無飼育さん :2011/11/09(水) 20:18
「めまい」おわりです
45 :名無飼育さん :2011/11/10(木) 13:40
愛ガキ最高ですね。
今後とも良い小説よろしくお願いいたします。
46 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 00:01
45さん
感想ありがとうございます。
これからも愛ガキを提供していきたいと思います
47 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 00:01
更新します
48 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 00:01
「声」
49 : :2011/11/12(土) 00:03

私だけの、その声を聴きたい。そう思った。



**********

マネージャーさんに教えて貰って、iphoneで見た動画。
愛ちゃんが一人になってからの、初めてに近い大きなお仕事がやってくる。
私が見たのはその舞台の記者会見の動画だった。愛ちゃんから話には聞いていたけれど、
その生放送の時間は私も仕事で見れなくて、後から確認した愛ちゃんの様子。
ひどく緊張していたけれど、それでも伝わる嬉しそうな表情に、私も気持ちが浮き立つ。
大好きなミュージカルの舞台に立てるから喜んでいるのは知っていたし、
その劇場に立てることだけでも貴重だと聞かされて、自分のことではないけれど、
私にとっても喜ばしいし誇りに思うことだった。



50 : :2011/11/12(土) 00:05

記者会見の最後に流れたものは、彼女を含むキャストの歌声。その声は久しぶりに聴く様な声色だった。

つい2ヶ月ほど前までは、一人で爽やかに歌い上げたり、がなったり、渋く響かせたり。
彼女は周りから求められる役割を難なくこなしていて、今のそれも同じで。
頂いた役が18歳だというから、それに合わせてキュートな軽めな歌声だった。

思い出すのはまだ私たちが10代の頃の声。元気なポップな歌を沢山歌っていた頃のもの。
気づいたらかっこいい、セクシーな、哀愁のある歌が違和感なく歌えるようになっていて、
久しぶりに聴く声色に少しキュンとした。

いや、本当はそれだけではないのだけれど。



51 : :2011/11/12(土) 00:07

そのキュートな声に艶やかさが加わると、別のものになることを私は知っている。
今はむしろそっちを強く思い出して一人ぞくぞくしていた。

いつもなら私が彼女の下で吐き出すけれど、たまにそれが逆になった時、
私の下から聴こえてくる声。それは私の体温を急激に上げ、心を満たし、
身体のどこかをきゅっとさせて。





――――声が聴きたい

仕事中にも関わらず、それに侵食されてしまった私は
「今日泊まりにいっていいかな?」
そう、iphoneの画面を変えて彼女に送信した。
52 : :2011/11/12(土) 00:09

***********

急なお願いにも関わらず、愛ちゃんは嫌な顔一つせず私を自宅に招き入れてくれて。
二人でソファーにかけて、ゆったりと過ごしていた。

「さっき動画見たよ、記者会見のやつ」
「きんちょーして何話してんのか、わからんかったわ・・」
「うた、良かったね」

ぽつりぽつりを会話を交わす。愛ちゃんの顔を見れば、それはそれは穏やかな笑顔で。
これから何かしようなんて彼女が思っているとは、到底思えない。

でも。
でも。ここへ来る前から私の中でくすぶっている熱は、まだまだ冷める気配なんてなくて
誤魔化すことなんてとてもじゃないけど出来そうには無かった。




53 : :2011/11/12(土) 00:12

隣の彼女の手の上に、そっと私の手を重ねて、その穏やかな顔にゆっくり近づく。
「あいちゃん・・・・・・?」
私も負けないくらいに穏やかな笑みを浮かべれば、何かを悟った彼女は静かに眼を閉じて。
私はその柔らかな唇にそっと口付けを落とす。

一瞬の出来事だけれど、その柔らかな感触はますます私の欲望を加速させ、
今度は角度を変えて唇を押し付ける。もっと深いのがしたくて、強請るように彼女の唇を啄ばめば
そっと開かれる口元。遠慮なく私は彼女の口内を味わう。彼女の吐息までも奪うように、
ただひたすらに彼女の舌を追いかけた。


「ん・・・はぁ・・・・・・・・りさちゃ・・・?」

私のほうから強請るのは珍しいから。
口を離した途端に少し乱れた呼吸を整えながらも、驚いたように少し俯き加減で私の名前を呼ぶ彼女。
もっともっと声が聴きたくて、もっともっと欲しくて、その思いをそのまま言葉にして。


54 : :2011/11/12(土) 00:14

「今日はあたしがしたげる」
「・・りさちゃん・・?」
「だめ・・・・・?」

彼女を抱きしめ、肩に顎を乗せながら甘えるようにおねだりをする私。
すでに眼を潤ませていた彼女に拒否の言葉はなくて、小さく首を振るのを空気の動きで感じ取った。
私は耳元で“ちょーだい”と最大限に甘い声で囁きながら彼女の肌に触れた。


55 : :2011/11/12(土) 00:16

ソファに倒した彼女を、珍しく私が上から見つめている。
同じ女性である私が羨ましくなるくらいに整った顔が、何かを委ねるように眼を伏せている。
真ん丸な瞳に柔らかな頬。子供みたいに吸い付く様な肌。やわらかい胸。腿もおへそも、
彼女の全部全部が愛しくて、「ここも、ここも、ここも。全部だいすきだよ」と
声にならない声を伝えたくてキスを落とし、手を這わす。

私の体温と彼女の体温がどっちがどっちのものなのか分からない位に溶け合って、
呼吸も鼓動もどちらのものか分からないくらいに密着する。

綺麗な鎖骨に舌を這わせて鼻先を肌につければ、いつも以上に甘い甘いあいちゃんの香りが立ち上がってきて。
その香りに酔っ払ったみたいになった私は、もっともっと触れたい思いが心と身体の奥からフツフツと湧き出てくる。
その欲望に抗わず潤った彼女のそこに手を添えれば、次第に乱れていく呼吸と、聴こえてくる甘美な声。
その声で私もくらくらしながら、もっと聴かせて欲しいと思い彼女のナカを味わう。

彼女の表情と呼吸とが、いつもとまるで違う様子に私は酷く興奮した。



56 : :2011/11/12(土) 00:18

「・・・・・・もっと、もっと聴かせて?」
「りさちゃ・・・・りさちゃ・・・っ  んんっっ・・・・・・・あぁっ・・・・!!!」

欲しかった、聴きたかった私だけの声がそこにある。
そのあまい、艶やかな声を知るのは今はきっと私だけ。私の欲望を受けとめ、
悦ぶその表情も私だけしか知らない。

眼をつぶり、私の背中にしがみ付きながら呼吸を整える彼女の耳元で私はそっと囁いた。

「ぜったいに、ぜったいに聞かせちゃだめだよ・・・・・?」
その声を他の人には。

先輩からも後輩からも、お仕事関係でお世話になった人も。みんながみんな彼女を愛し、
彼女は時に憧れの的でもあった。
その彼女が私のためだけに声をだす。それも特別な声を。
独占欲丸出しの私は、私の言葉を聞き取って小さく頷く彼女に優越感を抱く。

いつも彼女が私にそうしてくれるように、乱れた呼吸が落ち着くまで、
私は彼女をそっと抱きしめていた。
今見た、今聴いた全てを絶対に逃すまいと、強く思いながら。




57 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 00:19

「声」終わりです
独占欲の支配されるガキさんでした
58 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 20:25
更新します
59 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 20:26
「ネックレス」
60 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:28

海外から帰ったあたしが真っ先に向ったのは、当然あたしが大好きな人の元。
顔を見て帰国報告がてら話をしたかったし、彼女に買ったお土産が可愛らしくて早く渡したくて気持ちが逸る。

「りさちゃん!!おみやげやよー」
「あー、ありがとう!」
――― 開けてもいい?
そう笑顔で聞く彼女に素直に頷く。買ってきたのは可愛らしいネックレス。
モチーフが違うけれど、あたしとお揃いの。

「あー かわいい!!これリンゴ?黄色いけど」
「そー ほれ!あたしとおそろいやで」

そう言いながら、あたしは自分の首元にかかるネックレスのモチーフをひょいと摘みあげて、
彼女に見せた。

「やっぱ愛ちゃんはいちごだね」
「だってかわいいやん」



61 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:30

ふらり入った雑貨屋さんでいちごとリンゴが仲良くならんでいたのを見つけた。
あたしはいつもの悪い癖で、衝動的に二つとも手にとって買おうとしていた。
「あいちゃん、買いすぎ」
そう言う、彼女の低めの声が頭によぎり一瞬躊躇したけれど、でもやっぱり欲しくて。
だったら彼女のお土産にしようと、そのままレジへ持っていった。

「着けてもいい?」
早速りさちゃんはそれを手に取り、着けようと自分の首元へ翳す。

ネックレスのチェーンが伸びた髪に引っかからないように、耳に髪を掛けると彼女の小ぶりな耳が見えて。
耳元の小さなピアスに太陽の光が当たって、きらりと光った。


62 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:32

子供の頃からお互いを知るあたし達。
ピアスもネックレスも、アクセサリーなんてつけたことが無くて最初は照れくさかったけれど、
今じゃごく普通に身につけるし良く似合うようになった。

このリンゴのモチーフも、よくよく見ると葉っぱのところに小さな石がついていて、
子供ではないけれど、大人の女性とも言い切れないあたし達の歳には返ってぴったりな気がした。


63 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:34

「あれっ・・・・・?」
「うまく着かない?貸してみ?」

首の後ろに手を回してネックレスを着けようとするが、
何度かやっても上手くいかないようであたしが着けてあげようと彼女から受け取る。

「できた!・・・・うん、似合ってる」
「かわいいー ありがとうー」

嬉しそうに笑う彼女。その表情を見てあたしも満足だった。

今までもお揃いはあった。ピンキーリングやポーチ、それに服。
お揃いを持つのは嬉しいし、選んでいるときは楽しい。
プレゼントをする度に彼女が喜んでくれるし、そのお揃いのものたちを見ているだけでも
彼女を感じることが出来て、あたし自身幸せな気分だった。



64 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:35

でも、あたしはずるいんだ。
ネックレスをかけてあげながら、心の中ではほくそ笑んでいて。
ネックレスはゆるいゆるい首輪。
どこかへ行っても、必ずあたしの元へ帰ってくるんだよ?
そんな嫉妬心や独占欲にも似た勝手な思いが頭の中をめぐる。

りさちゃんの首元でネックレスが揺れるたび、あたしの存在がそこに光る。
それはあたしの、りさちゃんを誰にも渡したくない、勝手な主張だった。

だから色も赤ではなくて、黄色にした。あたしの馴染みの色だから。
りさちゃんの鎖骨あたりの黄色いリンゴが揺れるたび、
あたしの気分は高揚していくに違いない。あたしの色に彼女が染まっていく気がして。

すると、あたしの気持ちを何もかも見抜いているらしい彼女がふわり笑いながら言った。



65 :ネックレス :2011/11/12(土) 20:37

「これ、赤にしなかったのわざとでしょ?」
―――――だって、あいちゃん色だもんね

ふふふ、と笑う彼女の前ではやっぱり敵わない。
その小悪魔みたいな笑いに、私は素直に頷くしかなかった。
別に隠しておくつもりもなかったし、それが真実だったから。

黄色いリンゴを手にして、嬉しそうに眺めるりさちゃん。
大好きな彼女にゆるい首輪をかけたつもりだけれど、もしかしたら首輪をかけられてるのは本当はあたしのほうなのかも知れないなと、
そんな彼女を見つめながらあたしはぼんやり思った。



66 :名無飼育さん :2011/11/12(土) 20:37

「ネックレス」おわり
67 :名無飼育さん :2011/11/13(日) 15:59
更新します
68 :名無飼育さん :2011/11/13(日) 16:00
「aphrodisiac or Aphrodite」
69 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:02

「ほれ。できたよ」
「あー ありがとう」

あたしが作るカフェオレは、時々びっくりするほど甘くなる時がある。
単にお砂糖を入れる量を間違えるのだけれど、普段あんまり料理をしないもんだから、
目分量というのが分からない。
その上どれくらいがベストな量なのかを覚えていないもんだから、
毎回味がバラバラ。

「うぉっ 今日、結構お砂糖入れたでしょう?」
「ほーかー?んー・・・・・ちょっと甘いくらいやろ」

普段ブラックを好んで飲むりさちゃんからしたら、今日のはどうやら結構甘い部類に入るらしい。
あたしはあんまり気にならないのだけれど。


70 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:04

「これ、スプーン何杯くらい入れたの」
「多分1杯、2杯・・・?」
「なにそれ、覚えてないんだ」
「んー、あとは惚れ薬!!」
「はぁ・・・・?!」

りさちゃんからのお咎めから上手くすり抜けるためには、これくらいの冗談が必要で。
呆れられているのは分かっているけれど。気にしない。

でも、本当のところは。
惚れ薬が本当にこの世の中にあるならば、本当にりさちゃんに飲ませたかった。
勿論あたしをずっと好きでいて欲しいから。
そんな奇跡的なものがあるならば、だけれど。


71 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:06

今、二人は別々の場所で頑張っている。
新しい環境の中で新しいお仕事が頂けて、新しい世界がそれぞれ広がっている。
それはとてもありがたいことだし、あたしだけでなくて、りさちゃんもそんな環境に身を置いていて、
自分のことではないけれど自分にことのように喜ばしいことだった。

それでもたまに陥る不安。心が離れていったらどうしようか。
考えても仕方の無いことなのに。
前ならば毎日のように顔を合わせていたし、起こりようの無かったものだ。
それが別々に動くようになって、時々ひょっこり顔を出しては、あたしの心を落ち込ませた。



72 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:08

「・・惚れ薬なんてさ、いらないでしょ」

大き目のカップをテーブルに置いて、りさちゃんは顔をこちらに向けながら言った。

「・・うん、わかってる。わかってるんやけど・・・」
「なに、不安なの?」

こくりとあたしは頷いた。
こんなところで嘘をついて、強がってる余裕なんてどこにも無かった。
そんなあたしの反応を見て、りさちゃんがため息ともとれない息をふっと吐くのがわかって。
あたしはなんだか怖くなって眼をつぶった。

「かして・・」

りさちゃんは言い終わる前に、あたしの手からカップをとって、
彼女が置いたその隣に置いた。

手が空になった状態でふと顔を上げたとき、彼女はあたしの目の前に立って少し困ったような顔をしていた。
それからあたしの肩に手を置いて、ゆっくりとあたしの膝の上に跨った。


73 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:11

りさちゃんの顔がゆっくりと近づいてくる。何をされるか分かったあたしは、
目を静かに閉じる。
かすかに感じる彼女の唇。それはおでこと瞼とそしてあたしの口に、
柔らかくて温かい何かを残した。

こつりと感じたおでこ。きっとりさちゃんがあたしのおでこにくっついて来たんだ。

「すき。好きだよ・・・あいちゃん」
「・・・・うん・・」
「ずっとずっと、すきだから」

そっと大切に囁かれた言葉はあたしの心優しく降ってきて。
ゆるりゆるりとあたしの心を包みこんでくれた。
ふと眼を開けると、まだすぐ傍にある彼女の瞳とぶつかって。



74 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:13

「ねぇ、あいちゃん?私の顔いまどうなってる?」
「・・・・真っ赤やね・・」
「・・・・こんなことさ。こんな恥ずかしいことさ。あいちゃんだから出来るし、
 あいちゃんだからするし、あいちゃんだからしたいと思うんだよ」
「・・・・うん」
「だからさ、不安になんてならないで?」

そう言うと、彼女はゆっくりとあたしの頭を抱えるようにしてあたしを抱きしめた。
あたしはあたしで、りさちゃんの言葉が嬉しくて、幸せすぎて心と眼の奥が熱くなって。
彼女の細い背に腕を回しながら、自然と零れそうになる涙を誤魔化すように、
彼女の胸元に顔を押し付けた。


75 :aphrodisiac or Aphrodite :2011/11/13(日) 16:16

惚れ薬は本当にあるのだろうか。

もしあったとしても、それはあたしには全く必要のないものなんだろう。
だって、何より今こうしてあたしを抱きしめてくれる彼女そのものが、
あたしの惚れ薬なのだから。


76 :名無飼育さん :2011/11/13(日) 16:19

「aphrodisiac or Aphrodite」

終わりです。
毎日気持ち悪いくらいに出来ていますが、どうかお付き合いください
77 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 23:13
更新します。
今回は短めです
78 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 23:17
「voice」
79 :voice :2011/11/14(月) 23:19

いつものように浅い眠りにつき、寝ては起きてを何度か繰り返す。
ふと眼を覚ましたとき、目の前には大好きな彼女の背中があった。

衣装を着て歌い踊る姿はかっこよくて、その醸し出す雰囲気のせいか大きく見えていた背中。
それでも素肌のままのそれは、やっぱり女の子で華奢な肩だった。

彼女も私の同じ方向を向いているから顔は見えなかったけれど、
規則正しく動く身体はまだ彼女が夢の中にいることを教えていた。



80 :voice :2011/11/14(月) 23:20

彼女がまだ眠っているのをいいことに、その背中におでこと鼻先をつけて眼を閉じる。
そしてそっと囁いた。

――― すきだよ ―――

素直じゃないし、照れ屋な私は二人でいる時ですら本当の気持ちを伝えることは少なくて。
それでなくても、彼女に抱きしめられて愛されてる時なんて、もっと言えなかった。



81 :voice :2011/11/14(月) 23:21

その一方で、あいちゃんはいつだって私に言葉をくれた。
電話でも、メールでも、直接会って会話しているときも。
そしてお互い求め合って愛し合ってるときだって、言葉と、“言葉にならないことば”をいっぱいくれて。

耳元で囁く声だけじゃなくて、彼女は私にキスを落とす度、心の声を伝えてくれる。
あいちゃんの温かくて柔らかな唇が私の身体に触れるたび、そこを通じて聞こえてくる声。
唇から、耳から、鎖骨から、胸から、おへそから、腿から、膝から・・・・。
頭から脚の先まであいちゃんの「すき」でいっぱいになっていく感じがした。



82 :voice :2011/11/14(月) 23:24

途中までは「すき」の数を数えているんだけれど、いつの間にか私のカウントは振り切れる。
そして心も体もあいちゃんの「すき」で満たされて、あったかくなる気がした。
私も何かを伝えようとするけれど、彼女の愛を受け止めるだけで、言葉にならなかった。

でも。
私も貰っているばかりじゃなくてこの溢れんばかりの言葉を、私も返したい。
だから伝える。

相手は眠っているけれど、顔が見えない背中だけれど。
私は彼女の綺麗な背中をするりと撫でて、大切にたいせつに、ゆっくりキスをした。
最大限の「すき」を込めて。



83 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 23:25

voice
短めですが、おわりです
84 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 00:27
温かい雰囲気でよかったです
ほっこりしました
これからも楽しみにしてます
85 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 21:56
84さん
感想ありがとうございます。励みになります
86 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 21:56
更新します
87 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 21:57
「鼓動」
88 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:01

「なぁ、ちょっとまた痩せたんと違う・・・?」
「そんなに変わってないから。てゆーか重いし!」

何を言ってるんだ、この人は。
そもそも人の脚の上に頭を乗っけて、だらしない顔で言われても全然心配してるように見えないし。

「ホントは全然心配してないでしょ?・・それに、ちょっとなに、そのやらしい手は?」

おっさんみたいにへらへらと笑いながら、さりげなく私の腿を触れる愛ちゃんの手を
軽くひっぱたいてやった。

「ちょっと痛いがーー・・・」
「だってあいちゃん、おっさんみたいなんだもん」
「だってりさちゃんの腿すべすべやし、大体もっと痩せたら寝心地悪いやんか」
「・・はぁ?落とすよ?」


89 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:03

―ごめんって。
そう言っておっさんみたいな彼女は、膝枕の体勢を変えることはせず、
たいそう偉そうな格好のままへらへらと謝った。
全然謝罪されてる気持ちにはなっていないけれど。

「なー 10期どうや?あと、9期も」
「んー、そうねぇー・・・・・」

結局私は愛ちゃんに膝枕をされたまま、会話を続ける。彼女のさらさらな髪を撫で付けながら、
盛大に甘やかして。
お互いの舞台のことや、今のメンバーのこと、愛ちゃんの新しいお仕事のこと。
沢山報告したいことがあったし、愛ちゃんの話しも聞きたかったから夢中になって話しを続ける。

それに次のお休みはどこ行こうかなんて話しにもなったんだけれど。

「でさ、次のお休みあったらさ、行きたいところがあるんだけどさ?」
「・・・ぎゅー・・・」
「・・・あいちゃん・・・?」
「・・・あんな・・?」

今まで私の顔を見上げるようにしていた愛ちゃんは、
私のおなかに顔を寄せて、しがみついたかと思えば突然とっぴょうしも無いことを言い出した。


90 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:04

「・・・あんな、好きな香りがすると人は落ち着くって言うやろ?でもあたしは違うと思うんよ」
「・・・どう言う事?」

彼女と話していて会話の内容が突然変わることも、意味が分からない行動を起こすのもいつものこと。
いつものことだけれど、やっぱり理解に苦しんで言葉に詰まる。
その私の表情を気づいているのかいないのか、彼女は私の手をそっととって、自分の胸元に当てた。
そして感じる、彼女の鼓動。

「あいちゃん・・・?」
「すごいどきどきしとるやろ?やっぱり違うと思うんやよ。りさちゃんの匂い、だいすきやもん」
――― りさちゃんの香りがするとどきどきが強くなるんやよ?

そう言ってまた、下から私を眺めてる顔はほんのり頬が染まっていて。
そしてそんな彼女を上から見ている私もきっと顔が赤くなってるんだ。

「・・・わたしも・・・。わたしもどきどきしてるよ?」

そう言って私はさっきまで彼女の胸にあった手を、同じように自分の胸に当てた。


91 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:06

きっときっと変わらない。
だいすきな人の香りに包まれたときの幸福とときめきは。
眠ろうとする時はちょっとうるさいけれど、そのどきどきが照れくさいけれど。
こんな幸せな鼓動ならば永遠に感じていたいと思った。

と思ったのだけれど。

「ね、あいちゃん・・・?」

――― この野郎。
膝元を見てみると、規則正しい呼吸になって、眼をつぶる愛しい顔。

・・・寝てやがる。なんなのさ。さっきはおっさんみたいににやにやして、私のイライラなんて無視して、話始めたかと思ったらどきどきさせるし、最後には勝手に寝ちゃって。
いい歳して子供みたいじゃんか。


92 :鼓動 :2011/11/15(火) 22:16

――どきどきするって言ってたくせに。

そう悔しさにも似たようなことを思いながらも、愛しい彼女の頭をまたゆっくり優しく撫で付ける。

――しょうがないなぁ・・私はあなたのママじゃないんだけどなぁ・・

そして、いくつになっても勝手気ままな彼女と、そんな彼女に振り回されることを結局は喜んでいる
私自身に呆れつつも、その無防備な頬にそっとキスを落とす。

「・・・・おやすみ?」

そうやってかっこつけては見たけれど、やっぱりだいすきな彼女を目の前に嘘なんてつける訳はなくて。

私のその幸せな鼓動はこれまでも。
そしてきっとこれからも、決して治まることなんてないんだろう。
むしろそんな鼓動ならば永遠に止んでくれるなと、目の前の愛しい寝顔を見つめながら思った。






93 :名無飼育さん :2011/11/15(火) 22:18

「鼓動」終わりです
94 :名無飼育さん :2011/11/16(水) 22:12
キュンキュンする話が多くて、素敵。
愛ガキ、最高!
95 :名無飼育さん :2011/11/17(木) 21:13
94さん
ありがとうございました。頑張ります
96 :名無飼育さん :2011/11/17(木) 21:14
更新します
97 :名無飼育さん :2011/11/17(木) 21:14
「あなた」
98 :あなた :2011/11/17(木) 21:16

「ゆび、治ったんやな。良かった・・・・・」
愛ちゃんはそう言って、私の指を手にとってそっと撫でながら、優しく微笑んだ。

この前料理をしていて、うっかり切ってしまった指先。その時愛ちゃんは
可愛らしい絆創膏を貼ってくれたけれど、あれから数日が過ぎてその傷もすっかり治っていた。
今はもう、舞台のために短く控えめに施したネイルがそこにはあって。

「ありがと・・もう切ったりしないよ?」

ちょっと強がって、でも可愛げに言ってみるけど、返ってきたのは私をからかうような言葉。


99 :あなた :2011/11/17(木) 21:18

「どーやろ?りさちゃん、意外とそそっかしいもんな」
「そんなこと無いってばぁ・・」
「だいじょうぶかぁ?」
「んもう・・大丈夫だって・・」

くすくすと笑いながら交わす会話。でも、途端にまた顔が切り替わったと思ったら。

「でもさ、りさちゃんが怪我するのは嫌だけどさ・・」
――― その時はまたあたしが治してあげるから・・

愛ちゃんは撫でていた私の指先をゆっくり口元へもっていくと、そっと口付けをする。
私の眼をじっと見つめながら。
なんだか恥ずかしくて眼を逸らしたくなるのに、その強い瞳に何かを捕まれたようで、
私は眼を離すことが出来ない。

「なおしてあげるから・・・・」

もう一度そう言って、私の指先を再び撫でる愛ちゃんの睫毛がゆっくり振れるのを、
私はじっと見つめる。
少し上から見える愛ちゃんはやっぱり綺麗で。



100 :あなた :2011/11/17(木) 21:19

とくりとくりと私の中の血が流れ出し、熱が上がってどこかへ向うのを感じる。
次第に強くなるその感覚に抗わずに居れば、私の指を放した愛ちゃんの手が今度は頬を撫でて。

「りさちゃん・・・」
愛しくて甘い声で私の名前を呼ぶけれど、そこでただただ微笑む彼女。
そっと私の髪の束を耳に掛けたかと思えば、さっきと同じようにまた優しく頬を包む手。
私はその手に自分の手を重ねて、呟いた。

「いじわる・・・」

思わず出たことば。その自分の言葉に決まり悪くなって俯いた。


101 :あなた :2011/11/17(木) 21:21

いつもなら、もうキスをくれるのに。
優しく抱きしめてくれるのに。眼は「欲しい」って言ってるのに。
何でいつもとおんなじように笑っていられるのか。

もう一度「いじわる」と口にして顔を上げると、今度は両手で私の顔を包んだかと思えば今日一番の幸せそうな、
でも優しそうな笑みのまま顔を近づけてきて。

眼を閉じて唇に感じる、大好きな人の柔らかくて温かな感触。
それに続く吐息とぬるりとした感触に酔いながら、彼女がゆっくりと体を倒れてくるのに私は素直に従った。


102 :あなた :2011/11/17(木) 21:22

本当は分かっていた。

今日指先に触れられたその瞬間から。この、とくとくと運ぶ血の流れと熱が向う先なんて。
そしてそれが私だけじゃなくて、彼女にとって同じだということも。

最初から分かっていた。

触れたい気持ちも触れて欲しい気持ちも、同じように私と愛ちゃんとの間にはあって、
その理由なんて好きとか愛してるとか、そんな感情はとうに越えているような気がした。

理由はただ一つ。

あなたがそこにいるから。




103 :名無飼育さん :2011/11/17(木) 21:22

「あなた」
終わりです。
104 :名無飼育さん :2011/11/17(木) 21:30

追記:「あなた」レス一作目「ゆびさき」の後日談的なお話でした
105 :名無飼育さん :2011/11/20(日) 01:27

更新します
106 :名無飼育さん :2011/11/20(日) 01:28

「honest」
107 :honest :2011/11/20(日) 01:32

「あいちゃーん?」
「なん、なんか楽しそうやんな?」
「ねぇ、今から行ってもいーい?」
「今からって、あんた今どこにおるん?もう0時過ぎとるやん」

日付が変わって間もなくかかってきた電話。いつもとは違うテンションに、
酔ってるんだとすぐに分かった。
あたしもりさちゃんもそれぞれの舞台が控えていて、今はそのお稽古の真っ最中なんだけれど、
0時過ぎまで外で飲んでるなんてどうしたんだろうか。


108 :honest :2011/11/20(日) 01:33

「今ねぇ、お稽古終わって女子会やってたの」
「だからどこにおるんって」
「んとねぇ・・」

ただでさえあたしの前だと舌っ足らずになる彼女。お酒をどれくらい飲んだかのかは分からないけれど、
その喋り方から予測するにそれなりに飲んだんだと思う。

「なんでもいいから。タクシーでも乗ってはよ来い。気い付けてな」

0時過ぎての訪問なんて、普通に考えて迷惑な話だけれど、酔っ払い相手にそんなこと言っても無駄だし、
何より愛しい彼女がおぼつかない足取りでやってくるんだから、追い返すなんてこと出来るはずもなかった。
それよりも早く彼女の顔を見て安心したかった。


109 :honest :2011/11/20(日) 01:35

―――ピンポーン
ガチャリ

扉を開けると、さっきの電話とはうって変わって少し決まり悪そうに立つ彼女。いくらか酔いも冷めたんだろうか。

「おかえり」
「・・・・ただいま」

ともかくりさちゃんのなんでもない顔を見れてほっとしたあたしは、
リビングに引き入れ彼女をソファーへ座らせた。


110 :honest :2011/11/20(日) 01:36

「どうしたん、急に。びっくりするやんか」
「んー だってさ、楽しかったんだもん」
「楽しかったんならえーやん」

女子会が楽しいなんて、あたしは少し複雑な気分だったけれど、
つまらないギスギスした環境で変に消耗するよりよっぽどいいと思って、
未だ頬が赤いりさちゃんの頭を撫でてやった。

「楽しかったからさ、みんなと別れた後、寂しくなって。会いたくなったの!あいちゃんに・・・」
――― ずっと我慢してたんだもん

そう小声で言うとりさちゃんはすっと腕を伸ばし、あたしの首に絡ませて、
あたしの肩に顔を寄せた。ちょっとひんやりした手に、どきりとして。


111 :honest :2011/11/20(日) 01:38

「あいちゃんもさ、お稽古大変じゃん」
「うん」
「だからさ、あんまり我が儘言っちゃいけないからさ」
「・・・うん」
「・・・でも・・・やっぱさみしい・・」

なんて可愛いことを言うんだろう。さっきまでの複雑な気持ちなんてどこかへ行ってしまって、
あたしは彼女の華奢な腰に腕を回し、強く抱きしめる。
いつも素直に言ってくれればいいのに、酔ってなくても。
お酒が回らないとこんなことを言えないりさちゃんに、やきもきしつつも、その可愛らしさは手放せないなぁとぼんやり思う。

「早くお風呂入っておいで?一緒に寝よ」
そう言うとこくりと頷いて、りさちゃんはお風呂へ行った。


112 :honest :2011/11/20(日) 01:39

彼女がお風呂に入っている間、先にベッドに入ったあたしは、
さっきのりさちゃんの言葉を思い返していた。

――― ずっと我慢してたんだもん  
――― さみしい

あたしだってそうだ。
ストイックにお稽古をこなすけれど、彼女の頑張りも伝わってくるけれど、
会いたくて仕方ない。
結局のところ酔った勢いでりさちゃんが言ってくれただけで、あたしも考えてることなんて一緒だった。

りさちゃんがベッドに来たら、その思いを込めてしっかり抱きしめてやろうと思っていたら。


113 :honest :2011/11/20(日) 01:41

「あいちゃーん!」

お風呂から出てきた彼女は、“ばふっ”と大きな音を立てて
盛大にベッドにダイブしてきた。

「なん、まだ酔ってんかぁ?しゃーないなぁ」

そう言いながらまだ髪が乾ききらない彼女が風邪をひいてしまわないように、
布団をかけてあげようとする。
するとダイブしたままうつ伏せの状態からくるりと身体をこちらへ向けた彼女と視線がかち合う。

明らかにさっきとは違う瞳。
酔いなんかとっくに覚めていて、でも何かを言いたげな瞳。
その瞳にあたしはごくりと唾を飲み込んで。さっきとは違う意味で腕を伸ばしてきた彼女に、
顔を近づけた。そしてその誘いに抗うことなく、美味しそうな唇にキスをした。




唇を離し、こつりとおでこを合わせる。そしてふいに出た彼女のことば。
114 :honest :2011/11/20(日) 01:42

「・・・酔ってなんかないよ・・・酔いなんてとっくに覚めてるって」
「・・・え?」
「気づけばか・・・」

さっきの言葉全部全部が、彼女の本当の言葉とは分かっていたけれど。
酔っていないと言えないなんて、素直じゃなくて、でも可愛いなとは思ったけれど。

でも、本当は真っ直ぐな、それこそ本当に真面目な彼女の思いだった。

「でもりさちゃん、顔赤いで?」
「だって恥ずかしいじゃん・・・んもう!」
――― そんなこと言わせるな、ばか・・・


115 :honest :2011/11/20(日) 01:43

憎まれ口すら愛しくて、あたしは満面の笑みを携えながら、もう一度彼女の唇を奪う。
彼女の思いに負けないくらい、「会いたかった」と気持ちを込めながら。

その溢れんばかりの気持ちを伝えるために、そして絶対にりさちゃんを放すまいと思いを伝えるべく、
しっかりと自分の腕のなかに彼女を抱きしめた。


116 :名無飼育さん :2011/11/20(日) 01:43

「honest」終わりです
117 :名無飼育さん :2011/11/23(水) 22:44

更新します
118 :名無飼育さん :2011/11/23(水) 22:50

「chocolate」
119 :chocolate :2011/11/23(水) 22:52

ずっとずっと誤魔化し続けて、名も付けられずに心の奥深くにしまい込んでいた感情があった。
それをそっとそっとあなたに差し出したとき、あなたはいつも以上に驚いて眼を真ん丸にして、
でも顔を真っ赤にして頷いてくれた。

いつもいつも隣から、そして後ろから見つめていて感じてきたオーラはまるでどこかへ行ってしまって、
本当に初めて出会った頃のあなたみたいに無垢な少女に見えた。

「あたしも・・・あたしも好きだよ?ガキさんのこと・・・・・友達でも同期としてでもなくて・・・・・」

小さく囁かれた言葉は私の涙腺を刺激し、私はついつい俯いてしまって。
心配そうに私の顔を覗く愛ちゃんは、私に釣られたのか、私と同じように眼に涙を溜めて唇を噛んでいた。
私がやっと顔を上げたときには、二人でぽろぽろと涙をこぼしながら、「泣き虫」と笑いあう。
そして、初めてお互いの唇に触れた。


120 :chocolate :2011/11/23(水) 22:53

**************************


121 :chocolate :2011/11/23(水) 22:54

あれから数日が過ぎていた。
それまでも名前がついていないだけで、心地がいい関係だったから、二人きりになったからと言って何かが突然変わるわけではなかった。
それでも、彼女が隣に居て躊躇せずに堂々と手を伸ばして触れていい。その新たな関係を思うだけで、心底幸せに感じられた。

ふとした瞬間に指先が触れ合って、どちらからとも無く顔を近づけて。

「ちゅーしていい・・・?」

今更な言葉が優しい彼女から囁かれる。私は当然とばかりに眼を瞑り、そっと唇を差し出して。
次の瞬間には柔らかくてじんわりと伝わる優しい熱。それが愛しくて、そのまま彼女をそっと抱きしめる。
そしてその華奢な肩に頬を寄せて。


122 :chocolate :2011/11/23(水) 22:56

「・・・あのさ、キスってさ・・やっぱり幸せだね」
「・・・そやな・・・なんか、当たり前なんやけどさ・・」
「うん?」
「あたし、メンバーにもちゅーするやろ?ほっぺだけど」
「うん・・」
「でも、当たり前なんやけどさ、本当に唇にしたいって思うのはさ、りさちゃんだけなんよね・・・・」
「うん・・・あたしも・・・」

そう言ってゆっくりと顔を起こして見つめ合って、もう一度キスを交わす。
二人の思いを交わすように、大切に大切に。

「・・・それにさ・・」

今度はこつりとおでこを合わせて、今にも触れられそうな距離で囁く。
私の、愛ちゃんだけにしか言わない、本当の気持ち。


123 :chocolate :2011/11/23(水) 23:01

「・・・それにさ、あいちゃんのことがだいすきで、あいちゃんだからキスしたくて・・」
「・・・うん」
「あいちゃんだから手繋ぎたいって思うし、ぎゅってしたい・・・」

照れくさくて、何より愛ちゃんのことを思う気持ちで胸が締め付けられるようで、
彼女の肩におでこをつけて眼を瞑る。
彼女の手が私の背中を優しく撫で付ける。それを感じるだけで、さらに思いが溢れていく。
その思いに後押しされるように、私は彼女の背中に腕を回し、強く強く抱きしめて。


124 :chocolate :2011/11/23(水) 23:02

「・・りさちゃん・・顔見せて・・・?」

恥ずかしさを堪えて顔を上げると、私と同じように、顔を真っ赤にして微笑む彼女。

「・・すごい、すごい嬉しい・・・」
「・・うん・・」
「あたしもね、りさちゃんのこともっとぎゅっとしたいよ・・」
「・・うん・・」

恥ずかしいけれど、しっかりとお互いの眼を見つめ合っていると、自然と伝わるお互いの本当の思い。
どうしたって言葉には出来ないけれど、もっともっと触れたい、触れて欲しいと思っているのが嫌というほど伝わって。
そしてお互いが同じ思いなんだということも分かってしまう。



125 :chocolate :2011/11/23(水) 23:04

私がゆっくり彼女の首に腕を回すと、それの応えとばかりに体を寄せてくる彼女。

「・・すき・・だいすき・」
「・・うん・・私もすきだよ」
「・・・なんかさ、すきしか出てこんわ・・」
「・・ほんとだね・・」

耳元で囁かれる、魔法みたいなきらきらした言葉に心がぎゅっと締め付けられるような気がした。
そして次の瞬間には首筋に彼女の柔らかな感触を感じて、私は静かに眼を伏せた。
どことなく慎重に、遠慮がちに背中や腰を撫で回す、女の子にしては大きな手を愛しく思った。




126 :chocolate :2011/11/23(水) 23:05

きっときっと忘れない。今日これからのこと。
大好きな人と交わす、優しくて泣きたくなるくらい愛しい時間を。

あいちゃんの、甘い甘い香りに身体中が包まれ満たされていく。
そしてその愛で全身が溶けて行くのを感じながら強く思った。






127 :名無飼育さん :2011/11/23(水) 23:05

「chocolate」
おわりです。あまいあまい。初々しい愛ガキでした
128 :名無飼育さん :2011/11/25(金) 23:42
129 :名無飼育さん :2011/11/25(金) 23:43

更新します
130 :名無飼育さん :2011/11/25(金) 23:43

「てのひら」
131 :てのひら :2011/11/25(金) 23:44

いつだかりさちゃんは私のことを「お父さん」と例えた。
まだ、あたしが古巣に居たときのことだ。
勿論りさちゃんはお母さんで、きっとさゆとれいなと愛佳はお姉さんで、
9期4人が子供たちだ。

あたしはそこで「一家の大黒柱」であるべきだったけれど、どちらかというと「肝っ玉母さん」の横で子供たちと一緒になって
のんびりしたり甘えたりする「お父さん」だったに違いない。
今でこそその温かい家族から一人離れたあたしだけれど、りさちゃんに甘えることには何の変化もなかった。


132 :てのひら :2011/11/25(金) 23:46

「りさちゃーん、あたしの髪も乾かして?」

鏡に向って念入りにスキンケアをする彼女に、後ろからふわりと抱きつき、
あたしは最大限に甘ったるい声を出す。

“しばらく会えてなかったから”

そんな良く分からない理由を付けて、あたしはいつもの通り、いや、いつも以上にりさちゃんに甘えることにしたのだ。
彼女の異論は認めない、そう思いながら。


133 :てのひら :2011/11/25(金) 23:47

「えー 自分でやればいいでしょー 子供じゃないんだからさぁ・・・・」
「やあだぁー かーわーかーしーてー・・・」
「あーもー うるさいから!!」

今日は甘えるんだと決めたからには、ちょっとやそっとのことじゃ諦めたりはしない。
そもそも彼女は甘えられるのが大好きなのだから、これはいつものことでポーズでの拒否でしかないのだ。
その事を充分に分かっているあたしは、彼女の頬に自分の頬をくっつけて、もう一度甘ったるい声をだす。

「お願いやぁ・・・りさちゃんに乾かしてもらうの気持ちいいんやもん・・・」
「・・・・んもぉ・・分かったから・・」

呆れたような声を出すけれど、あたしの徹底した態度に諦めたらしい彼女はそう言いながら
あたしの頭をぽんぽんと軽く叩いた。


134 :てのひら :2011/11/25(金) 23:49

彼女と位置を入れ替わり、りさちゃんはあたしの髪を乾かし始めた。

「ほんとあいちゃんって甘えん坊だよねぇ・・」
「りさちゃんはホント甘やかしたがり屋さんよな・・・?」
―― うひひっ
わざとそう言うと、それに対抗したかのように盛大にため息をついてりさちゃんも応酬してくる。

「ほんとだよねぇ・・・自分でも呆れちゃうよ・・」

でもその顔は優しく微笑んでいて。

「何かな、9期の前じゃお母さんみたいやったしな、今もあたしのお母さんみたい」
「9期の前は仕方ないけどさぁ、こんなに大きな子供はいやだなぁ」
「えぇ、可愛い子やよ?世話焼けるけど」
「自分で言う?普通・・」


135 :てのひら :2011/11/25(金) 23:50

こんな他愛も無い話をしている間に、髪が乾いたようで、りさちゃんはドライヤーのスイッチを切り片付けを始めた。
そして優しくブラッシングをしてくれて、その感触にさらに甘えたくなったあたしは、
後ろに立つりさちゃんに体重を掛けて下から顔を覗く。

「なぁ、あたしさ、これからもいっぱいいっぱい甘えるつもりなんやけど、怒らんでね?」
「今更なにを怒るのよ?」

そう言って微笑んで、上からあたしのおでこをつつく彼女。

「でもさ、お母さんはやだな・・・」
「んー・・?」
「あいちゃんの前ではさ、やっぱお母さんじゃなくて、“こいびと”がいいな」


136 :てのひら :2011/11/25(金) 23:52

そう言った彼女は少し照れて、頬が桃色に染まる。

長い長い付き合いで、すっかり熟年夫婦みたいに思っていたけれど、
そう言う彼女はやっぱり「お母さん」でも「ママ」でも「奥さん」でもなくて。
最初の頃から変わらない大切な想いが二人の間にはあった。

いつもなら照れると眼を合わせてくれない彼女だけれど、今日は珍しくそのまま視線がかち合う。
嬉しくなったあたしは後ろに振り返り、彼女の腰にしっかりしがみついて、「そやな」と小さく囁いて。

柔らかくて温かな彼女のおなかに頬ずりをすれば、さっきにも増して甘やかす彼女の手がふわりふわりとあたしの頭を撫で付けた。



137 :てのひら :2011/11/25(金) 23:53

その手が嬉しくて、そして愛しくて。
あたしは静かにりさちゃんの手をとり、その甲に優しく口付けをした。

あたしの心も身体も全てを柔らかく優しく包んでくれるこの手。
きっと後輩たちの前ではお母さんみたいな手だろうけれど、
あたしの前では、あたしの前だけではきっと違った温度をくれるんだろう。

とくりとくりと、次第に大きくなる鼓動。
彼女の温度を感じ、その温度に幸せをかみ締めながら、次第に速くなる自分の鼓動に耳を傾ける。

―― この優しい手を放すことなんてずっとずっと出来ないんだろうな

あたしはもう一度彼女の腰に抱きつき、その感触と甘い甘い香りに酔い痴れながらそう思った。






138 :名無飼育さん :2011/11/25(金) 23:54

「てのひら」おわりです
139 :名無飼育さん :2011/11/27(日) 23:01

140 :名無飼育さん :2011/11/27(日) 23:01

更新します
141 :名無飼育さん :2011/11/27(日) 23:02

「I Love You 」
142 :I Love You :2011/11/27(日) 23:04

「舞台女優・歌手」
あたしの肩書きはそんなところだろうか。

一世風靡したアイドルの肩書きを下ろし、独り歩き始めた今。
インタビューでも、演技でも、アイドル時代は出来ないこともあったから、少しずつ何か変わってきていることはあると思う。
それは勿論、外の世界での“高橋愛”として。

しかしその肩書きも、外で求められる“高橋愛”としてのあり方も、あくまでも外の世界だけでのこと。
大好きな大好きな彼女の前では、あたしは何にも変わることなんて無かった。変わるつもりも無いし。



143 :I Love You :2011/11/27(日) 23:05

*************

144 :I Love You :2011/11/27(日) 23:06

「なぁ、一口ちょーだい?」
「いいけど、あいちゃんのもちょーだいね?」
―― はい。あーん

外でご飯を食べて、デザートはおうちで。
二人で食べようと買ってきたプリンと小さめのガトーショコラ。
どちらも食べたくて買ってきて、今更遠慮なんてないあたしたちだから、りさちゃんが選んだプリンを一口貰う。

「んー 甘いなぁ、おいし・・」
眼を瞑って、その甘さに浸る。

「ここのお店のスイーツ、全部甘すぎなくて好きだな」
「りさちゃん、あんまり甘いの好きや無いっけ?」
「少し大人になったのかな?甘さ控えめが好きかも」
「ほーかほーか、大人になったかぁ・・おねーさんは嬉しいやぁ」
「もー なに言っちゃってんのー?」

あたしがからかったって、本当に大人な彼女は怒りやしない。話のなかでの他愛もないやり取りを楽しみながら、デザートを食べ続けるあたしたち。




145 :I Love You :2011/11/27(日) 23:08

彼女曰く甘さ控えめなそれをつつきながら、横に座るりさちゃんがプリンを食べるのを見つめる。
やっぱり小動物みたいで、可愛いなぁと口元に注目していると、「なーに見てるのよぉ」と笑いながら出てきた言葉。
そんなことも気にせず見続けてると、食べ終わったらしい彼女は、口の周りをぺろりと舐めた。

―― ごくり

何にもいやらしいことなんてしてないのに、ただただスイーツを食べていただけなのに。
他の誰かがそんなことをしていたって、何も起きたりしないのに。
大好きな彼女のそれは特別で、気づくとあたしのなかの血と熱が、どこかへ向うのを自覚する。
思わず唾を飲み込んだ。

あたしの反応に気づいていないらしいりさちゃんは、食べ終わったデザートのお皿やスプーンを片付けようと一人でキッチンに向う。

「お茶、おかわりする?」

あたしの方を向いて首を傾け聞いてくる姿もいちいち可愛らしくて、あたしの鼓動は高まるばかり。
声も出せずにふるふると首を横に振ると、手ぶらのままであたしの横にりさちゃんは納まった。


146 :I Love You :2011/11/27(日) 23:09

「ねー あいちゃん・・・?」
「なん・・・・・?」
「なんかさ、あいちゃんが卒業してもさ、こうやって二人でいれて幸せだなぁって・・・」

嬉しいことを言いながらあたしに寄りかかってくる彼女の姿に、あたしは堪らなくなって顔を近づける。
何も言わないけれど、視線と空気であたしのしたいことなんてりさちゃんにはとっくに伝わっていて。
少し顎を上げたりさちゃんの唇に、啄ばむようにキスをする。

その柔らかな感触は、あたしの心の奥をぎゅっと掴むようにして放してはくれない。
何度しても慣れなくて、何度しても愛しさと恋しい思いは溢れるばかり。
もっともっと彼女が欲しくて、さらに唇を重ねながら、そろりと彼女の服の中に手を侵入させた。


147 :I Love You :2011/11/27(日) 23:11

「っっひゃっっ・・・!」

驚いたような彼女に声に、あたしが驚いてしまい、思わず手と唇を離す。

「ごめっ・・・・やだった・・・?」

長い付き合いの中でそんな反応をされることはそんなに多くないから、
不安になって聞くと、目を潤ませた彼女は意外なことを口にして。

「・・ごめ、そうじゃないんだけど・・」
「・・じゃあ・・・?」
「・・・あいちゃん、手ぇ冷たいね・・」

そう言ってりさちゃんは、あたしの手をそっと包むようにして握った。
黙って見ていると、あたしの手に優しく優しくキスを落とす彼女。
唇を離したかと思えば、下から覗くようにあたしを見て微笑んで。


148 :I Love You :2011/11/27(日) 23:12

「あたしが温めてあげる・・・・」

そう言ったかと思えば、ゆっくり近づく彼女の唇。
あたしは鼓動が速まるのを感じながら眼を瞑ると、今度は彼女があたしの唇を啄ばむようにキスをくれた。
何度か交わすうちぺろりと誘われるように唇を舐められて、そのお誘いに応えようと口を開けば、
遠慮なく口内を彼女の舌が這う。

どきどきと鳴る心臓の音が煩い。溢れる思いとともに息も上がる。
どれくらいそうしていたのか分からないくらいに夢中になって、呼吸を整えようと一度顔を離せば、
いつになく余裕らしい彼女はぽそりと言う。



149 :I Love You :2011/11/27(日) 23:14

「あいちゃん・・・・チョコの味・・・・」

は、と呼吸を整えることで精一杯で、そしてそんな言葉に返す余裕も無いあたしは熱が籠りぼんやりとする頭のまま、
彼女をただ見つめるだけ。
その口元はやはりあたしを誘うようにぺろりと赤い舌が動く。

「・・・手、あったかくなった・・・?」

今日はどこまでも余裕らしい彼女に、あたしはただただ白旗を上げて降参するのみ。
彼女の手がゆるりと首に回るのを合図に、あたしはこくりと頷いて。

今度はあたしから深い深いキスをしながら、彼女をソファーに倒してゆく。
そして今度こそ“あたたかくなった”手で、柔らかに彼女の肌に触れていった。


150 :I Love You :2011/11/27(日) 23:15

*************


151 :I Love You :2011/11/27(日) 23:17

りさちゃんは出会った頃に比べても、そして付き合い始めの頃に比べても、綺麗な妖艶な女性になった。
幼かったその頃のまっさらな様子は、すでにおぼろげな記憶の中にしかない。

その一方で、あたしはちっとも変わってなんかいない。
温かな家族みたいな場所を巣立って、少しは大人になったつもりだったけれど。

りさちゃんが大好きで、りさちゃんが愛しくて、りさちゃんがただただ欲しくて。
彼女のちょっとした仕草に気持ちが溢れることも、そんなあたしを彼女は分かっていて、
それに甘え続けていくことも。

ずっとずっと。変わっていくことなんて無いんだ。



152 :I Love You :2011/11/27(日) 23:18

あたしの温かな手で、愛で、唇で。

りさちゃんは、熱と呼吸と鼓動をあたしと同じように上げていき、そして大きく振るえてゆっくりと脱力していった。
浅く続く呼吸のせいで上下する背中。じんわりと滲む汗にあたしは酷く興奮しながら、その華奢な背中にキスをする。

―― ずっとずっと好きだから りさちゃんもずっとずっとあたしを好きでいて

そんな強い強い、いつまでも変らない思いを込めて。



153 :  :2011/11/27(日) 23:19
 
154 :  :2011/11/27(日) 23:19

「I Love You」おわりです
155 :  :2011/11/29(火) 23:39
 
156 :名無飼育さん :2011/11/29(火) 23:39
更新します
157 :名無飼育さん :2011/11/29(火) 23:40
 
「moonlight night」
158 :moonlight night :2011/11/29(火) 23:42

時々、本当に時々。あたしはりさちゃんに変なお願いをすることがあった。

初めてあたしとりさちゃんが肌を重ねた日。
その日はすごくすごく静かな夜で、雲ひとつ無い空だった。
都会だから星が見えるわけでもなく、銀色の月が佇んでいて、その光の強さがやけに印象に残っている。

カーテンを少しめくり、月を眺めているりさちゃんは凄く綺麗な粛々とした表情で、
その月に照らされる彼女の真っ黒なシルエットをあたしは後ろからぼんやり眺めていた。


159 :moonlight :2011/11/29(火) 23:43

だからなのか。
今でもくっきり晴れた日に澄み渡った夜空を見上げると、時折月と彼女の後姿が重なって。
月の光に照らされる彼女の背中を無性に見たくなるのだ。

我ながらおっさんみたいな趣味だと思うけれど、その姿はなんだか絵画みたいに綺麗だから。
心の中でそう言い訳をして彼女に乞う。


160 :moonlight :2011/11/29(火) 23:44

「ねえ、脱いで・・・・?」

もうそれは何度目かのお願いで、彼女もあたしの変な趣味を分かっていた。
呆れ半分に、はぁっとため息をつくけれど、あたしに背を向けるようにしてベッドに腰掛けているりさちゃんは、
着ていたシャツをはらりと落とす。

「・・・あいちゃんってさ、時々おっさんみたいなこと言い出すよね」
「えーやん、綺麗なんだもん・・・」
「・・・風邪ひきそうになるこっちの身にもなってください・・」
「それは心配せんでえーやん。すぐに温かくしたるし・・・」
「・・・えろおやじ」
―― ふぅ・・・・

思わず出る、溜息。目の前の、その光景があまりに綺麗で出る溜息。
彼女に憎まれ口を叩かれるけれど、その程度の言葉なんてあたしは全然怖くは無かった。

それよりも、カーテンのわずかな隙間から差し込む光に照らされる彼女の後姿はやっぱり綺麗で。
当人に見せられないのが惜しいけれど、そこの一画だけを切り取って、どこかの美術館に納めておきたいくらいだった。



161 :moonlight night :2011/11/29(火) 23:46

しっかりその画を眼に焼き付けた後、あたしは彼女をふわりと後ろから抱きしめて、
小ぶりの耳にそっと唇を寄せる。そしてたった一言「すき」とだけ言葉にした。

そのまま首筋にちゅ、ちゅと何度かキスを落としていくうちに、りさちゃんががあたしに凭れ掛かるのを感じて。
そっとその顔を伺い見れば、眼を瞑り緩く口を結ぶ彼女。
あたしに全てを委ねているだろうその表情に堪らなくなって、華奢な肩に甘く噛み付き舌を這わせた。




「んっ・・・・・・」

声にならない声に、酷く興奮したあたしはそのままベッドへ彼女を沈める。そしてその首元に甘く噛み付きながら、晒されたままの胸に手を伸ばした。
162 :moonlight night :2011/11/29(火) 23:46

*************


163 :moonlight night :2011/11/29(火) 23:48

は、は、と途切れ途切れだった彼女の息が穏やかになっていくのを確認したあと、
あたしはりさちゃんの胸元に耳を寄せた。

その行為の後でしっとりとした肌の質感と、甘い甘い香りに酔いながら、彼女の鼓動に耳を澄ませる。
とくり、とくりと規則正しく打つ鼓動はまるで子守唄みたいで、あたしの気持ちを落ち着かせた。

ついさっきまでいやらしいことをしていたのはあたしの方なのに、
りさちゃんはそんなあたしの頭を撫で付けてくれる。愛しい我が子にそうするように。

もっと甘えたくて眼を瞑って頬を摺り寄せれば、頭上から聞こえてくるのはあたしをからかうような言葉。



164 :moonlight night :2011/11/29(火) 23:50

「あいちゃんってさ、なんか狼男とか吸血鬼みたい・・・」
「ふえっ・・?」
「だってさ、いつもじゃないけどさ、月が綺麗な日はなんか変だよ・・?」
 ―― ふふ・・・・
「・・・りさちゃんのせーやもん・・・・」

彼女の胸元で甘えてるくせに、上手い言葉が出てこないあたしは、
最大限に子供っぽいことを言う。それでもりさちゃんはあたしを撫でる手を止めたりせずに
「なに言っちゃってんの・・?」と優しく言うだけ。

そしてさらに決まり悪いことに、やっぱり彼女には全てばれている。
あたしの変な趣味も、それがどんな時に顔を出してくるのかも。

こんな姿、あたしはりさちゃんにしか見せられないし、見せたくない。
それに、こんなあたしに着いてきてくれるのはりさちゃんだけだし、
そんな彼女をあたしは絶対に手放せるわけなんて無かった。



165 :moonlight night :2011/11/29(火) 23:51

―― そういえば吸血鬼って不死身なんだっけ・・・

頭とおでこ辺りに感じる優しい手に心地よく甘えながら、突然そんなことを思い出して、
あたしはふと考えた。

これからあたしが一人ならば。
それなりにお仕事をして、ご飯を食べて眠って。ごく普通の毎日を過ごしていたら、
気づいたらおばあちゃんになっていて、いつかきっと一人でひっそりと死んでいく。

でももし、りさちゃんがずっとあたしの傍に居てくれるならば。
吸血鬼のように永遠の命を手に入れて、二人でずっとずっと生きていくのもアリなのかも知れない。

―― ずっとずっと二人で。二人だけで。

あたしはもっともっとりさちゃんにくっつきたくて、隣に横たわる彼女の腰に手を回し、
ぎゅっと抱き寄せる。
そして彼女の温かな手のぬくもりと、いつまでもいつまでも続くだろう、呼吸と鼓動を感じながら、
あたしはそんなことをぼんやりと思っていた。


166 :moonlight night :2011/11/29(火) 23:52

目線を上げれば、窓の外には銀色の月。
太陽みたいに強烈ではなくて、でもやけに通る光を放つ。その姿はまるであの日の夜と同じ。
これからもその姿を見つけては、あたしはりさちゃんを求め、りさちゃんに乞う。
きっときっといつまでも。

あの日とそして今日と同じ様な夜が来る度に。



167 : :2011/11/29(火) 23:53
168 :名無飼育さん :2011/11/29(火) 23:53

[moonlight night] おわり
169 :名無飼育さん :2011/12/01(木) 21:39
 
170 :名無飼育さん :2011/12/01(木) 21:39
更新します
171 :名無飼育さん :2011/12/01(木) 21:40

「40℃」
172 :40℃ :2011/12/01(木) 21:41

「ふいぃ〜〜〜」

お湯に浸かりながら、やっとOFFモードになった私は、思わず大きく息を吐く。
根っからのせっかちで、尚且つ起きている時間は一秒足りとも無駄にしたくないと思っているから、
どうしたって頭も身体も常にぐるぐる動いているのだ。
それが唯一ストップするのがお風呂だったりする。

好きな入浴剤やら石鹸やら、シャンプーの香りにリラックスしながら、
脚を伸ばして目を瞑る。たまには音楽を聴きながら。


173 :40℃ :2011/12/01(木) 21:41

そういえばまたシャンプー変ったなぁと思いながらゆったりしていると、
突然聞こえてくる物音と、ここの家主の声。

「りさちゃーん、あたしも入っていい?」
「・・・・もう入ってきてるんじゃん・・・いいよ。あいちゃんちだもん」

眼を開けて扉のほうへ顔を向けたときには、もうあいちゃんはそこに立っていて。
すでに着てたもの全てを脱いじゃって、拒否することなんて出来ない格好だった。


174 :40℃ :2011/12/01(木) 21:43

正直、いくら深い関係にあったって、一緒にお風呂に入るのは抵抗があった。
薄暗いけれど電気は点いてるし、理性も普通にあるし。
それにお風呂位一人で入りたいのが本音。それでも私はあいちゃんを拒否することはしない。
いや、出来ない。

それは、こうしてやたらと一緒に居たがるのは、彼女に何かある時だからと私は分かっているから。

いつの頃からかは既に忘れてしまった。でも、あの時のことは今も忘れない。


175 :40℃ :2011/12/01(木) 21:44

その時は一緒に入るだの入らないだの大騒ぎをして、結局私が折れたのだけれど。
さっきまで元気だったはずのあいちゃんは、人が変ったように急に黙りこくっていた。

不思議に思ってその顔を伺うと、眼から零れる何か。
それは間違いなく、汗でもお湯でもないことくらい私には分かっていた。

「泣いてるの・・・?」
「・・・・・・・」

何も答えずふるふると首を横に振るあいちゃんだったけれど、その様子がおかしいのは明確で、
私は逆上せてしまうのを覚悟でずっとお湯に浸かっていた。


176 :40℃ :2011/12/01(木) 21:45

 ―― 今日も何かあるんだろうな

そう思ったから、私は大きな抵抗もせず、がしゃがしゃ頭を洗う彼女をバスタブに浸かりながら眺めていた。

「よいっしょ・・・」
「えっ、ちょっ・・ どこ入る気よ・・・・?」
「んー 後ろっ・・」

確かにここのお宅のバスタブは綺麗なマンションらしくそこそこ広い。
二人で入るのも苦痛にならないくらいだけれど、気づいた時には後ろから抱きすくめられるような体勢。

「ふえーーーーーーー 温かいなぁーーー・・・・」
「あのさ、くっつきすぎじゃない?」
「えーやん、今更。 なん、照れてるの?」

そうじゃない。そうじゃないけど、そんな後ろから抱きつかれるように入られたら顔が見えないじゃないか。
何かあるんだろうけど、言葉にするのが下手っぴなあいちゃんだから、顔を見てれば分かるんじゃないかと思っていたのに。

そう思っていたら、左肩に感じる重み。あいちゃんは私の肩に顎を乗せて、ふわり抱きしめてきて。


177 :40℃ :2011/12/01(木) 21:46

「・・どしたー・・・?」
「なーんかな・・・・」
「んーー・・・?」
「・・・なんかな、んー 一人でいると何か泣きそうになる・・・・・」
「ん・・・」

そういって彼女は私のから顔を外して、おでこを付けた。
私は自分の前に回るあいちゃんの腕をそっととって、そこにキスを落とした。

「ん、そっか・・・・」
「・・・・・・・・・」

多分、孤独に似た何かを感じてるんだと思う。前に進めない不安なのかも知れない。

それはきっと、私とのこと。


178 :40℃ :2011/12/01(木) 21:50

今彼女が一人でこなす仕事は、それなりに順調だし、充実しているのも伝わってきていた。
もともとストイックな性格だし、目の前にあるものに対してものすごく努力をして、自分自身の可能性をどんどん広げていく姿は
傍で見ていて身震いする程かっこよかった。

勿論仕事のことで悩むことも泣くこともあるのは知っているけれど、こうして言葉に出来ないくらいのことは数知れてるところで。

「・・・だいじょうぶだよ・・・」
「・・・うん・・」
「いざとなったらさ、どっか外国行っちゃえばいいよ・・・」
「・・・そやな・・」


179 :40℃ :2011/12/01(木) 21:51

それぞれの道を歩み始めて、そして歳を重ねて。
20代半ばにして次々に突きつけられる現実。私はあいちゃんが大好きだけれど、
そしてあいちゃんも私を心から愛してくれてるけれど、どうにもならないことが事実あるわけで。

何がきっかけになるのかは未だに分からないけれど、時々こうして彼女はその不安を抱えては、
自分では抱えきれずに私にぶつけてきた。
多分普通の涙は見せられるけれど、この涙は見せたくない。そんな矛盾にも似た思いが、彼女をこうさせてるんだと思う。

私は彼女の手をとると、優しくその腕を撫でた。そしてゆっくり彼女に凭れ掛かる。
後ろから鼻をすするような音が聞こえたけれど、敢えて触れないでおこう。


180 :40℃ :2011/12/01(木) 21:52

「あいちゃん、この入浴剤、何の香り?」
「・・・・これな・・、なんやっけ?」

今日はいっぱい甘えさせてあげよう。
あいちゃんのこの不安を一緒に感じて、落ちた気持ちを救い上げて、元気にしてあげられるのは私しかいないから。
本当はお風呂くらい一人で入りたいけど、密着してるのが恥ずかしいけれど。
それよりも今は大切なこの人を存分に甘えさせて、そして私も彼女に甘えて、たくさんたくさんの愛を伝えたいと思った。


181 :40℃ :2011/12/01(木) 21:53

「よっし、逆上せちゃうからもう出よう?」
「えー もうちょっとこうしてちゃあかん・・?」
「ってこらっ!!なにこのやらしい手は!」

するりとさりげなく胸元に伸びてきた手を追い払って。
でもその手をしっかり握ってあげた。

「うーーーーーー・・りさちゃんのいじわる・・・」
「いい子にしてたら頭乾かしてあげるから?ね・・?」

そうして後ろを振り返って眼に入るあいちゃんの顔。
声色と同じようにブスくれて唇を尖らせてるけれど、すっぴんの、それでも可愛らしい顔がそこにはあって。
ぬれた前髪を手でめくり上げて、おでこにキスをする。

“大丈夫だよ”のおまじない。私にしか出来ない、特別なおまじない。


182 :40℃ :2011/12/01(木) 21:54

きっとこれからも、こうやって二人で乗り越えないといけないことは沢山出てくると思う。
その度に二人で悩んで、泣いて、慰めて、笑って。一人だと苦しいけれど、あいちゃんと二人ならきっと大丈夫。

辛くなったら今日みたいに、心もからだも丸裸になって、いっしょに温まって、同じ香りに包まれて癒されていけばいいこと。

私のキスのせいなのか、すっかり温まったせいなのか、あいちゃんの頬は薄く桃色になっていた。
その可愛らしい、愛しい恋人の顔を見ながら、“だいじょうぶ”。そう強く思った。


183 :名無飼育さん :2011/12/01(木) 21:55

40℃ おわり。

場所はここでなくてもいい内容だったりそうじゃなかったり。
184 :名無飼育さん :2011/12/02(金) 19:11
毎日更新されてるかチェックしてます。
作者さんの愛ガキが本当に好きです。
185 :名無飼育さん :2011/12/03(土) 19:32
184さん
ありがとうございます。決してテンポがいい文章ではありませんが、ゆったりと楽しんでいただければ。

186 :名無飼育さん :2011/12/03(土) 19:32
更新します
187 :名無飼育さん :2011/12/03(土) 19:33

「あいを乞うひと」
188 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:34

この気持ちは何て言う名前なんだろう。

俗に言う「よくじょう」ってやつなのかな。

普段は私の中のどこに隠れてるのか、時々それがやってきて、心だけじゃなくてからだであいちゃんが欲しくなる。
独り占めにしたくなる。
それはもう理屈じゃなくて、本能が言ってる気がする。それを考えるとやっぱり「欲情」なんだろうな。


189 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:35

あいちゃんはいつも沢山の笑顔とか言葉とか、そして沢山のキスをくれる。

お母さんが子供にしてあげるような優しいキスとか、飼い主さんがペットにするような可愛らしいキスも好きだけど、
今日はそうじゃない。もっともっと違うのが欲しい。

そうぼんやり思ってあいちゃんの方を見つめていたら、振り返ったあいちゃんとばっちり眼が合った。



190 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:37

「どーしたん・・?」
「・・んとね・・・」
「ふふ・・ちゅーしていい・・?」

何にも言わなくても、眼が合えば相手が考えてることなんて分かるってお互いに思っているけれど。
こんなことも分かっちゃうんだから、凄いよね。

何を言うべきか言葉を選んでいると、近づいてくるのは大好きな人の笑顔。
勿論拒否する理由なんてどこにもなくて、そっと眼を瞑ると柔らかくて温かい唇の感触がした。
ゆっくりと唇が離されて、眼を開けると目の前にある、くりくりの大きな瞳。
その眼をじっと見ていると、彼女の大きめな手が私の顔を優しく包む。


191 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:38

―― こくり

あいちゃんは瞬きを一つして、私を見つめるけれど、もうさっきとは全く違う顔がそこにあって。
その喉の音も、すでに私のものかあいちゃんのものか分からなくなっていた。

ゆっくり近づいてくる顔をぎりぎりまで見つめる。
震える長い睫。見た目にも柔らかな、赤い唇。

あいちゃんの顔を見ていたい。私を欲しいと思っているあいちゃんの顔。
私にしか見せない、私だけの表情。


192 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:39

唇が再び触れた時、もっと深いのが欲しくて薄く口を開けば、遠慮なく侵入してきたあいちゃんの舌。熱くて、あいちゃんの気持ちもダイレクトに伝わってくるみたいで、心の奥がぎゅっと掴まれたみたいになって、私の中の熱も上がり始めて。

―― 愛しいこの人を放すもんか。誰にも渡したくない。

私は伝わってくるあいちゃんの熱を逃がしたくなくて、眼を瞑ったまま彼女の首に腕を回した。


193 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:40

次の瞬間には、首筋に温かいものを感じて。そして背中にも直接触れられる感覚。

―― あ、伝わった・・・・

次第に上がって行く熱のせいで、私の思考も溶けていく気がするけれど、
わずかに働く頭の隅っこで、彼女に私の気持ちが伝わったんだなぁと思った。


194 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:42

―― あいちゃんだいすき・・・さわって・・・?さわらせて・・・?

徐々に感じる彼女の重みと、次々に落とされるキスの雨。
そして彼女の強い甘い香りに身体のどこかがぎゅっとするような感覚がした。

胸の先端の、敏感なところにぬるりと温かい感触がした瞬間、私は彼女の頭を両手で抱えるようにして抱きしめた。
そしてその甘いシャンプーの香りを思いっきり吸い込む。

思考もゆっくりと停止し始めて、私の呼吸も鼓動も乱れ始める。
頭の中に響く心臓の音と、わずかに開いた口から漏れる声。
うまく言葉にすることはもう出来ないけれど、私のからだはあいちゃんを感じて、幸せな感覚に全身で浸っていた。



195 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:43

私は多分周りの同じ歳くらいの子と比較しても、きっと幼かったし、恋愛にも疎かった。
勿論大人がどんなことをしているのかは何となく理解していたけれど、それをして欲しいと思うのはあいちゃんだから。

―― 不思議だな・・・

いくら他の誰かに抱きしめられたって、おふざけのキスをされたって何にも思わないどころか、
場合によっては嫌悪すら感じるのに。

あいちゃんから齎されるのは、全て甘美な感覚で。
キスも温かい手も、全て私を今まで知らなかった感覚に陥れる。でもそれは決して嫌なものではなくて、幸せな熱だった。
くすぐったさの向こうにある、もっともっと素敵な感じ。


196 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:44

とくりとくりと聞こえる鼓動に、浅くなっていく呼吸。
私もあいちゃんも熱を帯びて、どちらがどちらなのか分からないくらいに、心も身体も溶け出し交ざりあう。
あいちゃんが与えてくれる愛、全てを逃がしたくなくて、彼女の肩をしっかり抱きしめて。
その代わりに、私の声をぜんぶ聴かせてあげるから。

いよいよ気を失ってしまいそうになって、うっすら眼を明けると、
今までに見たことも無いような真剣な表情をした愛しい人。
その視線は愛と熱で強く鋭く光っていて、私の全てを見抜いているようで。

最後の最後まで私は言葉に出来ないけれど、私の思いを汲み取った彼女は、今日一番のキスをくれた。



197 :あいを乞うひと :2011/12/03(土) 19:45

―― 愛してる・・

声にならない声が、聞こえた気がした。


198 :名無飼育さん :2011/12/03(土) 19:45
 
199 :名無飼育さん :2011/12/03(土) 19:46

「あいを乞うひと」おわりです。
さてウイスキー飲みますか
200 :名無飼育さん :2011/12/05(月) 21:42
201 :名無飼育さん :2011/12/05(月) 21:43
更新します
202 :名無飼育さん :2011/12/05(月) 21:43

「あと」
203 :あと :2011/12/05(月) 21:45

「痕、つけていい・・・?」

穏やかな呼吸で緩く動く胸元に、ちょんと置かれた彼女の指先。
さっきまで抱き合って、まどろんでいたら目の前の彼女は突然そう言って。
普段は平熱が低めの彼女らしく、少し冷えた指先なのに、今日はさっきまでの行為のせいか、少し熱い。

急な言葉に驚いて、重くなっていたあたしの瞼はしっかりと開いた。

「なん・・どうしたんよ、急に・・・?」
「・・・別に。・・・どうもしないよ」
「でも・・・・」
「・・いい?」

見つめ合うその瞳の奥の、濃い色になんにも言えなくて、あたしは静かに頷いた。


204 :あと :2011/12/05(月) 21:46

そもそも普段のりさちゃんは照れ屋で、“すき”の一言ですらあんまりくれないのに、時々こうして大胆になる。
別に嫌なわけじゃない。むしろ素直じゃない彼女の、愛情表現と分かっているから嬉しさもあるけれど、あまりに急で驚いてしまう。

ゆっくり近づくりさちゃんの顔。
多分仕事に影響が出ないように、気遣ってくれてるんだろう。どんな衣装でも見えない、ぎりぎりのところにそっと口付けを落とす。
確かめるように唇の先で啄ばむようにしたかと思えば、次の瞬間にはぴりりとした痛みを感じて。

「・・・ついた・・」

その痕に触れて、顔を上げたりさちゃん。あたしがその一連の行為を見ていたものだから、
しっかりと視線がぶつかって。
彼女はあたしを真っ直ぐに見たまま、小さく呟く。


205 :あと :2011/12/05(月) 21:47

「あいちゃん・・・どこにも行かないように、私のしるし・・・」

一瞬、眼の色が揺らいだ気がした。

そう言って眼を伏せた彼女だけれど、あたしは決して見逃したりはしない。
強気に言うけれど、表情も変えないけれど、瞳は決して嘘はつかなくて。
彼女が抱えた寂しさに心が痛んだ。


206 :あと :2011/12/05(月) 21:48

二人きりの時間はあまり変らないのだけれど、一緒の空間に居ることがぐっと減った今。
お互いの、お互いを想う気持ちは何にも変らないのに、どこか不安を抱えた彼女。

その事実があたしを寂しくさせた。


207 :あと :2011/12/05(月) 21:49

「りさちゃん、あたしはずっとりさちゃんの隣やから・・」
「・・・・・」
「だめ・・・・?」
「・・・だめじゃない・・・・」

りさちゃんの声が少し涙でかすれたように聞えた。

「なあ、あたしも付けていい?・・・痕・・・」
「・・・うん・・」

彼女の声を聞き届けて、あたしは二人で被っていた布団に潜りこむ。
戸惑って身じろぎする彼女を無視して触れる脚。
細くて、白い脚を何度か撫でて、膝の近くに強く口付ける。

「んっ・・・・あ・・・・」

そのまま、ゆっくりと脚から上がっていきながら、彼女の体に優しく沢山のキスを落としていく。
布団から出て顔を出せば、さっきまでの熱が蘇ってきたのか、りさちゃんの眼は涙ではなく潤っていて。


208 :あと :2011/12/05(月) 21:50

「すき・・・・どこにも行かないで・・・ずっとあたしの隣にいて」

強く、強く告げれば、りさちゃんはこくりと頷いた。
無言のまま顔を上げてどちらからとも無く近づく距離。さっきまでよりも、もっともっと熱い、もっともっと深いキスを交わす。
二人の気持ちも交わすように。


209 :あと :2011/12/05(月) 21:51

あとどれくらいこうして居られるだろう。
あとどれくらいしたら、もっと軽い穏やかな気持ちで愛し合えるだろう。

――――― あとどれくらいしたら。

深く考えても果てしなく続く、いつまでも出ない答えを探すみたいで、
あたしは考えるのを止めた。不安になったらきちんと言葉を交わして、抱きしめあって、温度を感じて。
そして気が済むまでお互いに何かを残せばいい。

それがいつかは消えてしまう痕であっても。


210 :あと :2011/12/05(月) 21:52

考えても仕方ないのだ。
あたしもりさちゃんも、二人の間の気持ちも。ずっとずっと生きて動いているものだから。

でも、出来ることなら、この痕みたいにぴったりと寄り添っていたい。あたしとりさちゃん二人、永遠に。



211 :名無飼育さん :2011/12/05(月) 21:52
 
212 :名無飼育さん :2011/12/05(月) 21:53

「あと」終わりです
213 :名無飼育さん :2011/12/11(日) 20:10
 
214 :名無飼育さん :2011/12/11(日) 20:10
更新します
215 :名無飼育さん :2011/12/11(日) 20:11
「こくはく」
216 :こくはく :2011/12/11(日) 20:14

217 :こくはく :2011/12/11(日) 20:18

―― コンコン
「愛ちゃん入るよ?」

ライブも終わって、ホテルの部屋でのんびりしていたら、いつもの聞きなれた声が聞こえてきた。
明日のことは一通りインフォメーションされたけれど、追加があったらしくガキさんはそれを伝えに来てくれたのだった。

「おー また変更あったん?」
「うん、なんかね、ここがね・・・・」

本当はリーダーであるあたしがメンバーへ伝えるべきなんだけれど、他のメンバーには影響しない変更だったらしく、
わざわざあたしを呼び出すこともせず、ガキさんは伝言してくれた。

「なるほど、了解。」
「まぁ、そういうわけだから、宜しくね?んじゃあたし部屋戻るわ・・」
「ん・・ありがと・・・」

必要事項だけ伝えた彼女は、自分の部屋に戻るために立ち上がって扉のほうへ向ったのだけれど。



218 :こくはく :2011/12/11(日) 20:19

「ガキさん!」

無意識にあたしは口に出していて。
振り向いた彼女はいつもと変らず穏やかな顔なんだけれど、その表情に心音が上がるのを自覚する。

大好きなんだ。彼女の笑顔も穏やかな声トーンも、優しげな空気も。
それはメンバー愛とか友情とか、同期の絆とか。そんなものはとうに越えていた。

あたしは自覚している。彼女に恋していることに。

「・・・・ガキさん・・・・」
「・・・なに・・・・?」

きょとんとした彼女。そしてただただ彼女を見つめるあたし。
心の奥底にしまわれたはずの気持ちが勝手に口に出てきてしまったのだから、当たり前なのだけれど。
でも、その勢いはもう止められなかった。


219 :こくはく :2011/12/11(日) 20:20

ベッドに座っていたあたしは、ガキさんの元へ近づき、華奢な彼女を後ろから抱きしめた。
おふざけで抱きしめあったりすることはよくあるからか、ガキさんは抵抗はしない。
でも不思議そうに声を出す。

「どーしたのー愛ちゃん・・・?」
「・・・ごめん・・・ごめん・・・」
「え・・あたし何か愛ちゃんに謝られるようなことあったっけ・?」
「そうじゃなくて・・そうじゃなくて・・・・」
「えー どうしたー?」

その声が優しくて、優しくて。あたしは崩れるように言葉にして。


220 :こくはく :2011/12/11(日) 20:22

「好き・・・」
「え・・・?」
「・・・好き。同期とか友達とかそんなんじゃない」
「あいちゃん・・・?」
「ガキさん、好きな人居たときあったやろ・・・?」
「・・んまぁ、人並みに・・・・」
「その、好き・・・・・」

あたしの言葉をきちんと理解したらしく、ガキさんは身体が強張った。
顔は見えないけれど、あたしの言葉に酷く驚いているのは明確で。
それを感じたけれど、あたしはもっと力を込めて抱きしめる。

「嫌なら・・・嫌なら、ここから逃げて」
「あいちゃん・・・」
「あたしの腕を解いて逃げて!・・・じゃないと・・・諦められん・・・」

溢れた思いと言葉は止まらなくて。これで彼女が逃げても仕方無い。
それでも伝えなきゃいけないと思った。それでも伝えなくては、あたしは壊れてしまうと思った。

もう、二人の関係がどうなるとか、だめだったとして明日からどう接しようかとか。そんなことを考える余裕なんて、あたしの中にはこれっぽちも無くて。
ただ正直に伝える、自分の本当の気持ち。


221 :こくはく :2011/12/11(日) 20:24

「・・あいちゃん・・あいちゃん、放して・・・」
「・・・・」

―― なに・・・言ってんの・・・・・・

静かに告げられる言葉に、頭から水を浴びせかけられるような感覚を覚える。
いつもの声と同じはずなのに。

彼女の口から放たれた言葉は、まるであたしの気持ちをどこかへ追いやるような強さがあった。
静かに、でも確実に。

覚悟したはずなのに。
どうなっても良いから、と。それでもこの冷たい感じにあたしはどうしたらいいのか分からなくて、
ただただ彼女に言われるがまま腕を緩め、両腕をだらりと下ろした。

あたしの腕から解放されたガキさんは、くるりとこちらへ向き直し、あたしの眼をじっと見たかと思えば、さっきとはまるで違う温度を持ってあたしを抱きしめた。


222 :こくはく :2011/12/11(日) 20:25

「・・・逃げるわけないじゃん・・・」
「え・・・・・?」
「逃げられるわけないよ・・・」
「・・ガキさん・・・?」
「おんなじ。あいちゃんとおんなじだよ・・・」
―― すき・・・・・

初めて聞いた声色。柔らかくて、甘くて、でも切なげで。
間違いなくあたしだけに向けられたその声に、あたしは心が震えて仕方ない。
そして眼に溢れる涙。

「ずっと、ずっと分からなかったの。自分の気持ちが。ずっとずっと親友だと思ってた」
「うん・・・・」
「でも、でもさ。考えちゃうの、愛ちゃんがどこにいるとか、どんな顔してるとか」
「うん・・・・」
「他のメンバーのこと思ってる以上に、愛ちゃんのこと考えちゃうの。それって、愛ちゃんが私に思ってくれてるのと一緒だよね・・・?」
「・・・・一緒やな・・・」
「すき・・・・」


223 :こくはく :2011/12/11(日) 20:26

最後の言葉を聞き終えて、ゆっくり体を放し、彼女の顔を伺えば、そこにはやっぱり今まで見たことの無い彼女がいた。潤んでる眼と、桃色に染まる頬。その表情はあたしの鼓動をさらに速めて。
ほろり、一筋の涙が頬を伝うのを自覚しながら、そっと彼女の唇に触れる。

「りさ・・ちゃん・・・・キスしていい・・・?」

照れているのか、顔を上げてはくれないけれど、静かに頷く彼女にあたしは少しほっとした。
それでも上がる鼓動は隠し切れなくて。

ゆっくりゆっくり顔を近づけて、静かにその柔らかな唇に口付けた。


224 :こくはく :2011/12/11(日) 20:26

さらに零れる涙。
唇を離した瞬間、そこに感じる熱い吐息。甘い香り。

その時感じた全てを放したくなくて、あたしは彼女を腕の中に強く抱きしめた。

これからも見たことない、愛しい彼女の姿を知れると思うと涙が出そうなくらいに胸が熱くなる。
ずっとずっと見ていたい。そう思いながら、あたしはその腕をさらに強めた。


225 :名無飼育さん :2011/12/11(日) 20:27

「こくはく」おわり

226 :名無飼育さん :2011/12/12(月) 22:19
227 :名無飼育さん :2011/12/12(月) 22:19
更新します
228 :名無飼育さん :2011/12/12(月) 22:20
「あめ」
229 :あめ :2011/12/12(月) 22:21

「食べる・・?」

りさちゃんは時々あたしを上手いこと煽る。
本人は意識してない時がほとんどだけれど、時々わざとやる事もあって。
本人が意識してない時もそれはそれでタチが悪いけれど、本当に怖いのはりさちゃん自身がわざとしかける時。

その煽りに負けてあたしが手出しすれば、勿論りさちゃんは受け入れてくれるんだけれど
いつもあたしは「えろおやじ」と認定されてしまう。
どちらにせよ、負けてしまうあたしが悪いのだけれど。




今日だってわざとだろ―― 。
230 :あめ :2011/12/12(月) 22:24

「何食べてんの・・・?」
「んー 飴ちゃん。・・・食べる?」

そう言って彼女は飴が入っている袋を渡すわけでもなく、一つずつ包装されたそれを渡すわけでもなく、
自分の口の中に入ってるのを舌に乗せてぺろりと出してきた。

その眼は真っ直ぐにあたしを見つめているのだけれど、その瞳の奥にちらりと見える妖しいゆらめき。
表情ひとつ変えないくせに、嘘をつかない眼はあたしを追いこんでくる。
あたしは確実に試されているわけだ。

「食べる」

素直に返事したけれど、負けてなるものか。
あたしはテーブルの上にある飴が入っている袋を掴み中を覗く。

「・・・あれ。もう無いやん?」
「これだけだもん・・・・」

口を緩く開けて、そこに指差す彼女。

「なん、りさちゃん誘ってんのか?」
「そーだよって言ったら・・・・?」

優しく微笑む彼女。
言ってることと、やってる表情がここまでミスマッチなのも珍しいもので。
やはり、あたしは試されている。


231 :あめ :2011/12/12(月) 22:26

断れるわけなんてない。断る理由なんて一つもない。
眼の前にいる今すぐにでも欲しい彼女が、素直にあたしを欲しいと言ってくれる。
それならば、喜んで悪者になろうじゃないか。

「・・・ちょーだい」

微笑む彼女にゆっくり近づいて、押し付けるあたしの唇。
優しくて柔らかな感触なのに、明らかにいつもとは違う温度。薄く開かれた口から舌を入れて、彼女の中にあった飴を絡め取ってやった。

甘い。
熱い。
それは間違いなく、二人の間にある何か。
あたしはその熱に抗うことなく、さっきの仕返しとばかりに、りさちゃんに向けて舌を出してやった。


232 :あめ :2011/12/12(月) 22:28

「食べる・・・?」

どんな反応するだろうか。どきどきする心臓がやけに煩く響く。けれど、もともとは彼女が仕掛けてきた罠。
彼女は拒否するわけも無く。

さっきと同じように微笑む彼女は無言であたしに近づいて。
さっきのあたしと同じ様に、あたしの口の中から飴を奪い返す。

―― こくり

さっきと何一つ顔色を変えぬまま、りさちゃんは口に飴を含んでいる様子だったけれど、
小さくなったらしいそれは、彼女の口から喉へ落ちていった。
華奢な彼女の首元が波打つのに釘付けになるあたし。もう上がり始めていた熱は、冷めることなんて知らなくて。


233 :あめ :2011/12/12(月) 22:30

「ちょーだい・・・・・」

そう言って、彼女と眼と眼を合わせたままゆっくり押し倒した。

「なにを・・・?」

飴はどこにもない。欲しいのはりさちゃんに決まってる。
そんなこと分かっているくせに。自分から誘ってきたくせに。最後の最後まであたしは悪者で。
でもそんなりさちゃんに逆らうことなんて、これっぽっちも出来るはずはなかった。

「りさちゃんに決まっとるやろ・・・?」
「・・・いーよ・・・・」

許可を取るなんてばかげた話。
でも、今のあたしにはそれしか選択肢は与えられてない。
りさちゃんの思うままに動くだけ。


234 :あめ :2011/12/12(月) 22:31

彼女の華奢な身体に沢山のキスを落としながら感じる、心地よい温度。
あたしはその熱で甘く柔らかく溶けていくような気がした。そして甘い甘い香りに身体中が包まれていく気がした。

あたしはきっと飴玉といっしょ。
彼女の温かな熱で溶かされ、転がされる。そして甘い香りでいっぱいになる。

―― こんなに満たされるならば、いっそのことずっと飴玉でもいいか。

次第に上がる呼吸に合わせて、彼女の胸元が緩く動いていく。
その酷く緩慢な、それでいて妖艶な姿を見つめながらあたしはぼんやりと思った。


235 :名無飼育さん :2011/12/12(月) 22:32
 
「あめ」おわり
236 :名無飼育さん :2011/12/16(金) 01:10

237 :名無飼育さん :2011/12/16(金) 01:10
更新します
238 :名無飼育さん :2011/12/16(金) 01:10

「まほう」
239 :まほう :2011/12/16(金) 01:12

りさちゃんと出会って10年以上。大切な人となって数年。

一緒に刻んできた時はとても長くて、共有してきたものは沢山ある。
それでもまだまだ知らない何かがあることを思い知らされる時がある。

それは決して悪いものではなくて、知るたびにどきどきしたり、嬉しくなったり、時に切なくなったり。
二人で居るから知れる、沢山のこと。

そう、それは例えば表情とか、さり気無い仕草とか。


240 :まほう :2011/12/16(金) 01:12

***************

241 :まほう :2011/12/16(金) 01:14

「りーさーちゃん」
「なーによー」

二人きりで過ごす時間は、やっぱりどこか今でも照れくさい。
同じ場所からあたしが巣立って、顔を合わせる機会がどうしたって減ってしまう。
そしてそれも照れくささに拍車をかけている気がする。

思いっきり甘えたくて、近くで彼女の温度を感じたくて、あたしはテレビに夢中になる彼女に向けて大きく両手を広げた。
返ってきた言葉は、ちょっぴり照れていて、でも決して嫌がっているわけでもないことがすぐに分かる声色だった。

後輩の前や、それこそ仕事場では決して見せない、柔らかな笑顔であたしの方へ来た彼女は、両手を広げたあたしの前に立った。



242 :まほう :2011/12/16(金) 01:15

「なぁに?」
「うぅー、分かってるくせに、りさちゃん意地悪やぁ・・」
「なぁに、抱っこしてほしいの・・・?」
「んーん」

抱き締めてもらうのも悪くないなぁと思いながらも、あたしは横に首を振る。
広げた両手は一度下げて、自分の膝をぽんぽん叩いた。

「・・・膝の上に座れとおっしゃいますか?」
「えーやん・・・」
「しょうがないなぁ・・・」
―― よいしょ・・・

そう言った声はやっぱり甘い声色で。
りさちゃんはあたしの肩に手を置いて、あたしの膝に跨り向き合うようにして座った。



243 :まほう :2011/12/16(金) 01:17

途端に近くなる距離。強くなる甘い香りと心地よい温度。
それでももっともっと近づきたくて、彼女の腰に腕を回し胸元におでこをつけた。

―― はぁ・・・

近づくことで、とくりとくりと聞こえてくる鼓動。この音はあたしとりさちゃん、どっちのものなんだろう。

「あまえんぼ・・・・・」
「んー・・・・・知らん・・・・」
「ふふっ・・素直じゃないなぁ・・・」

行動とはまるで逆のことを言ったのに、彼女はさっきからずっとあたしを甘やかしたまま。
その温かな手はあたしの髪をやさしく優しく撫で付ける。

顔が見たくておでこを胸元から放せば、優しい眼と視線がかち合って。


244 :まほう :2011/12/16(金) 01:18

りさちゃんはあたしの後頭部を撫でていた手を離すと、その手であたしの前髪をよけ、顔を近づけてきた。

ゆっくりと眼を瞑れば次の瞬間におでこに落とされた、温かくて柔らかな感触。
それはどこまでもあたしを幸せにする感触。

「あったかい・・・・」
「あいちゃん、いい匂いするね・・・」

なんでもないことなのに、前ならばライブ中の一つのスキンシップでもあったのに、彼女がくれるキスはやっぱりどこまでもあたしの温度を上げる。

胸の奥をぎゅっと掴まれたようで、それ以上言葉が出てこない。
このこみ上げてくる思いをどうしたらいいものか、彼女の顔を見つめるとやっぱりそこには優しい笑顔。
やっと出てきた言葉は、彼女の名前だけだった。


245 :まほう :2011/12/16(金) 01:20

「りさちゃん・・・・?」
「なぁに・・・?」
―― すき・・・・・。

あたしの気持ちは音になったのか、それとも眼に映っていたのか。
それを聞き届けたらしい彼女は、その女の子らしい小さめの手であたしの顔を両手で包むようにして触れる。
そしてどこまでも甘いキスを、今度は唇にくれて。

それなのに、一瞬頭をよぎる何か。
なんでこんなに切ないんだろう。
こんなに幸せなのに。こんなに甘いのに。こんなに温かいのに。


246 :まほう :2011/12/16(金) 01:21

どこまでもどこまでも続くだろうこの幸せだけれど、実態はふんわりしていて気づいたらどこかへ行ってしまいそうだからか。
そんなのことが頭をよぎり、眼の奥が熱くなる。
その正体を悟られたくなくて、眼の前の彼女の胸元に顔を押し付け、強く抱きしめた。

「あいちゃん・・・・?」
「んー・・・・」
「どうしたのー・・・・」
「りさちゃん、どっか行ってまわんように・・・・」
「ばか・・・・」

その声色は静かで、優しげで、でもどこか切ない響き。

「あいちゃんのとこ以外、行くとこなんてないよ・・?」
「りさちゃん・・・・」
「あたし、あいちゃん居ないとしんじゃう・・・・」
「あたしもや・・・」
「でもね、あいちゃんが傍に居てくれたら、あいちゃんのこと幸せにしてあげるから」

再び頭に感じる彼女の手。そして広がる甘い香り、柔らかな温度。
その手に誘われるように、彼女の顔を伺い見れば、今までには見たこと無いくらいに温かい笑顔だった。


247 :まほう :2011/12/16(金) 01:23

里沙ちゃん。
ずっとずっと年下だとばかり思ってたのに、気づいたらあたしよりしっかりしていて、
ずっとずっと先を歩いているような気がしていた。

でもそうじゃない、少し会えない位でダメになっちゃうあたしにどこまでも寄り添ってくれる、大切な大切な人。
そしてあたしと同じくらい、本当は寂しがりやな人。

それなりに大人な二人だけれど、お互いのことになると途端にダメになってしまう。
でも一緒なら、ずっと一緒なら毎日幸せで穏やかに過ごして、時にとんでもない力を発揮するんだと思う。

あたしにとってのりさちゃん、そしてりさちゃんにとってのあたし。
きっとそれは何にも変えられない魔法みたいなものなんだろう。

二人の表情と、温度と仕草と。
さり気無く存在する些細なことから与えられる、どきどきと喜びと、たまに切なさと、そして沢山たくさんの幸せ。

それはあたしたちが一緒に居ることで、これからも二人の間に増え続けていくんだと思う。


248 :まほう :2011/12/16(金) 01:24

「あたしも幸せにするから・・・」

やっと言葉にして、さらに腕の力を強める。

これから歳を重ねて、二人の思いを重ねて。

ずっとずっと、幸せになる魔法をかけ続けよう。
二人がおばあちゃんになるその日まで。


249 :名無飼育さん :2011/12/16(金) 01:24
 
250 :名無飼育さん :2011/12/16(金) 01:25

「まほう」終わりです。
なんだかよく分からなくなってしますた・・・・
251 :名無飼育さん :2011/12/17(土) 23:47

252 :名無飼育さん :2011/12/17(土) 23:47

更新します
253 :名無飼育さん :2011/12/17(土) 23:47

「誓い」
254 :誓い :2011/12/17(土) 23:49

「ちょっと早いけど・・・」

そう言って愛ちゃんは、とっても素敵な教会に連れてきてくれた。
教会なんて撮影くらいでしか来た事なくて、良く分からないけれど、素敵なステンドグラスが強く印象に残っていた。

クリスマスはお互いに仕事だから、会えるか分からない。
だから愛ちゃんはクリスマスの準備をし始めている街の教会に連れてきてくれたんだ。


255 :誓い :2011/12/17(土) 23:50

「うわっ・・・すごい、大きなツリー・・」
「綺麗やろ・・・?」
「あれ、なぁに?大きいの」
「パイプオルガンやろ・・・」

クリスマスはサンタさんがプレゼントを持ってきてくれるイメージしかないけれど、
本当はイエス・キリストが産まれた日で厳かにお祝いする日なんだって・・・。
愛ちゃんはどこで調べたんだか、そう教えてくれた。

古い古い教会は、それはそれは静かで街の浮かれたムードとは正反対だった。
静かなのになんだか温かい感じがするし、とても厳かな空気で。その場に二人で居れることだけで感謝したい気持ちだった。



256 :誓い :2011/12/17(土) 23:51

「来て・・・・・?」

沢山並ぶ椅子に掛けていた私たちだけれど、愛ちゃんは私の手を引き十字架の前に立った。

「あいちゃ・・・」
「あの、あのな・・・」

言葉少なげな彼女を見ると、いつもとは違う表情で。
いつも私と二人で居るときの緩い表情ではなくて、強い意志の表れなのか、真っ直ぐにどこかを見ているような瞳。

「・・・すごい、べたやけど。神様の前で誓う・・・」
「・・・え・・・・」

愛ちゃんは私の手を両手でとり、向き合ってじっと見つめてきて。


257 :誓い :2011/12/17(土) 23:52

「・・・りさちゃんを、一生幸せにすることを誓います・・・・」
「・・・あいちゃ・・・」

引っ張られた左手の薬指に、静かにはめられた指輪。そしてそこに落とされた優しい口付け。
じわじわと心が温かくなって、それでいて締め付けられるようで。
気づくと頬に一筋の涙が流れていた。

「・・・あたしも・・・あたしもあいちゃんのこと、幸せにするから・・・・」

溢れる涙のせいで、掠れてしまったけれど、しっかりしっかりあいちゃんに伝えた。



*************


258 :誓い :2011/12/17(土) 23:53

「はい、できたよー」
「おなか空いたー・・・・・」

ゆっくりしたくて、結局愛ちゃんちでご飯を食べることにして。
さっきのプレゼントが嬉しかったから、私が愛情たっぷりのオムライスを作ってあげた。
本当はもっと違うのも作れるけれど、愛ちゃんが一番最初に教えてくれのがオムライスだったから。

覚えてるかな・・・

「あー オムライスー・・! あっし大好きー」
「でしょー 愛情てんこ盛りです!」
「そういやさ、あたしが一番最初の教えてあげたよなぁー オムライス」
「覚えてたんだ・・・でもその時より絶対美味しいから」

オムライスの上には、おっきなハートをケチャップで描いた。
真ん中には“AI”の二文字。
その文字に偽りはない。愛ちゃん、大好きだよのメッセージ。

さっきまでかっこよかったのに、すっかり女の子に戻って口いっぱいにオムライスを頬張る愛ちゃん。
口の端にケチャップがついてしまったから、指で掬ってぺろりと舐めてあげた。


259 :誓い :2011/12/17(土) 23:54

甘い甘いケチャップの味。
私とあいちゃん二人の間にある気持ちと色も香りも味もそっくりな気がした。

幸せで、時々すっぱい気もするけど、美味しい味に二人で顔を緩めた。

食べ終わって洗いものを一人でしているとき、テレビに夢中になっている彼女に見られないようにして。さっきくれた薬指の指輪にそっと口付けを落とす。

―― 一生ついていきます

そんな思いを込めて。


260 :名無飼育さん :2011/12/17(土) 23:55

261 :名無飼育さん :2011/12/17(土) 23:55

「誓い」おわりです。
べたべたも好きです
262 :名無飼育さん :2011/12/18(日) 20:49

263 :名無飼育さん :2011/12/18(日) 20:50
更新します
264 :名無飼育さん :2011/12/18(日) 20:50

「こども」
265 :こども :2011/12/18(日) 20:51

「おかえり」

まるで、一緒に住んでいるかのように、愛ちゃんはそう言って私のことを出迎えてくれた。

―― あぁ、ちゃんと顔見るの久しぶりだな

たった2週間会えないだけで、そんな風に思ってしまうのだから、
どれだけ私が愛ちゃんのことを思っているかを嫌でも実感する。
見慣れた笑顔、聞きなれた声にほっとして、話したいことをどこから話そうか思いめぐらせながら靴を脱いでいたのだけれど。



266 :こども :2011/12/18(日) 20:52

「今日さぁ、これ一緒に食べようと思っ――・・・」

顔を上げて言葉を出した瞬間に、彼女の手が伸びてきて、私の顔を優しく包む。
そして唇に感じた熱い感触。

心臓が止まるかと思った。

キスされていることに気がついたのは、一瞬後のこと。
顔を離すと、愛ちゃんはいつものように笑っているのに、眼が少し違う色で。

「・・あいちゃん・・・・?」
「おみやげさ、後でええやろ?・・・それよりもう・・・無理・・・」

そう、ぼそりと苦しそうに言った愛ちゃんの瞳は、その奥に濃い色を携えていて。
リビングにも通さずに部屋に私を連れていく。抵抗なんてする暇も無かった。


267 :こども :2011/12/18(日) 20:54

バッグもコートも置いてベッドに腰掛けるなり、愛ちゃんはさっきのここへ連れて来るときとはまるで別人のように優しく抱きしめてくれた。
その温度はとても温かくて、素直に私も彼女の背中へ腕を回す。

「すき・・・・ずっとずっとこうしたかった・・・」
「わたしも、会いたかったよ・・・」

次第に掛けられる体重に抗うことなく、抱き合ったままベッドに倒れこむ。
下から彼女の表情を伺うと、外で見る自信に溢れた表情とはまるで違っていて、
それがさっきの言葉が嘘ではないことを教えてくれた。

その余裕の無さは間違いなく私に向けられたもので、別に嫉妬でも不安でも何でもなく、
単純に欠乏しているように見えた。

二人の間に不安になるような要素なんてあるわけが無い。
そう思えるくらいに、信じあって思い合うからこそ、わずかな期間でも会えないとゆとりがまったく無くなってしまうのだろうか。


268 :こども :2011/12/18(日) 20:56

ベッドに身をゆだねた私の顔の横に両の手を置き、それで自分を支えるようにして上から私を見つめる彼女。
どう考えても彼女が主導権を握っているような体勢なのに、その表情があまりに愛しくて私は彼女のぽってりとした唇に手を伸ばした。

「あいちゃん、好きだよ・・・」
「・・・・」
「ちょーだい・・・・・・・・キス・・・・・・」

私の言葉に彼女はにっこりとした。


269 :こども :2011/12/18(日) 20:58

私たちの体勢が意味するところと、その表情とのギャップがあまりに大きすぎて
心の中では苦笑してしまうけれど、そんなことを考える間もなく落とされる沢山のキス。
その感触は熱くて柔らかくて、眼を瞑っていても赤い柔らかな唇の画が思い浮かんでくる。

強請るようにぺろりと唇を舐められて、薄く口を開けば彼女の熱い舌が入ってきて。
行き交う熱に速まる鼓動。その唇が耳や首筋に移動してきて、次第に理性もどこかへいってしまう。

鎖骨辺りに吐息を感じて、さらに上がる体温。
私の着ているチェックのシャツのボタンを一つずつ外しながら、愛ちゃんはそれと同じように一つずつ唇を私の胸に押し付けて。
その姿はまるで、ごはんが出来上がるまで我慢できなくて、横からつまみ食いしている子供みたいで、わずかに働く頭の片隅で可愛いなぁと思っていた。

ふわふわの髪に手を差し込んで、そっと抱き寄せる。その感触に気づいた愛ちゃんは顔を上げて私を見つめる。
その表情はやっぱり可愛らしくて、子供みたいだった。




****************
270 :こども :2011/12/18(日) 20:59

乱れた呼吸を整えながら、愛ちゃんと向き合ったまま、眼を閉じる。

「なん、今日は顔見せてくれんやな・・・・」

いつもはその直後は恥ずかしくて、背中を向けてしまうのだけれど、
今日の愛ちゃんがあまりに可愛くて、それを見ていたくて。
愛ちゃんの声を聞き届けてゆっくり眼を開けた。

「だって、なんか今日のあいちゃん、すっごく可愛いんだもん・・・」

さっきまでやらしいことをされていたのは私のはずなのに、笑顔でそう言いながら彼女の頬に手をやる。
耳に少し伸びてきた髪の一房を掛けてあげた。

「・・・・だってりさちゃんと会えんでさ、あたし死ぬとこやった・・・・」
「あたしもだよ・・・」
「だからさ、りさちゃん来たばっかで部屋つれてって怒られるのも覚悟してたんよ・・」
「・・ふふ・・・ばかだなぁ・・・」

そんなこと言いながらやっぱり子供みたいな表情をする愛ちゃんが愛しくて、
私の胸元に抱き寄せた。


271 :こども :2011/12/18(日) 21:00

怒るわけないじゃん・・・・。怒るわけない。
だって彼女と会えなくて、彼女を欲していたのは私も一緒だから。当たり前にくれるキスに、心臓が止まりそうなくらいきゅんとしたのも、ずっとずっと会いたくて、私も我慢していたから。

「すこし寝よっか・・・お昼寝したら、もってきたやつ食べよ?」
「うん・・・そうする・・・」

そう言って微笑む彼女は、やっぱり甘えんぼうの顔だった。

彼女の頭に鼻を付けて眼を閉じる。鼻をくすぐる甘い香りがゆるい眠りを誘う。
私と愛ちゃんの呼吸と、そして胸の音が次第に揃っていく。

本当はお出かけもしたかったけど、こんなお休みも悪くない。
今日は思いっきり愛ちゃんを感じていよう――。
薄れていく意識のなかでそう思った。


272 :名無飼育さん :2011/12/18(日) 21:01

273 :名無飼育さん :2011/12/18(日) 21:02

「こども」終わりです

今日みたいなあったかな日曜日の午後のイメージ。
カフェには行かないけどさ。

274 :名無飼育さん :2011/12/19(月) 00:37
なんて可愛い…! 最後まで読んでタイトル素晴らしいなと思いました
二人ともきっと安心し切ったいい顔してるんでしょうね
275 :名無飼育さん :2011/12/19(月) 21:59
276 :名無飼育さん :2011/12/19(月) 21:59
更新します
277 :名無飼育さん :2011/12/19(月) 22:00

「その先」
278 :その先 :2011/12/19(月) 22:01

―― どこ見てるんだろう

愛ちゃんの瞳はガラス玉みたいにくりくりしていて、でもどことなく力強い。
微笑みかけているときは優しい眼になるし、仕事に取り組むときや
後輩の指導のときはその色に深みを増している気がした。

でも目の前の彼女は私を見ているのだけれど、私を通りすぎてもっともっと遠くの何かを見つめている気がした。それくらいに、鋭い瞳。優しいのに、力強い。

「あいちゃん・・・・?さっきからどこ見てんの?」
「りさちゃんに決まっとるが」
「えー なんか遠い眼だけど・・・・」
「なんやろ、来年とか再来年も一緒におれたらええなぁ・・・」


279 :その先 :2011/12/19(月) 22:03

たまに、ごくたまに。
あいちゃんは心がゆらりと揺れ動き、不安を抱える時がある。
それは自分でどうにかできる仕事のことよりも、私とのことが多かった。
恋人同士ではあるけれど、決して公にはしない二人の関係。

でも、なんだか今日はちょっと違う気がした。
いつもの、不安を抱えたときの声色ではなかった。彼女の言うことが私とのことを指しているのは間違いないのだけれど、
不安とはかけ離れたもっと違う何か。

希望だろうか。それとも願いか。
ふっと眼が合った彼女の表情は私が知っている中でも、随分と穏やかな部類のそれ。

その言葉の真意を知りたくて、愛ちゃんの顔と同じくらいに私も微笑んで、その続きを待った。


280 :その先 :2011/12/19(月) 22:04

「昨日な、夢みたんよ」
「ゆめ・・・?」
「そう、夢。なんか広いところに立ってた」
「誰が?あいちゃんが?」
「違う。あたしとりさちゃん」

愛ちゃんが言うには。
どこの国かも分からない、ただただ広い草木も無いところに私と愛ちゃん二人が立っていて、
人っ子ひとり居ないのに、何故だか不安でもなく。
どこかへ向って歩いていた。

「え、それどこ行こうとしてんの?」
「分からん。でも何か全然不安じゃないんよな。ずっと先の綺麗な町を目指してるみたいやった。」
「うーん。あのさ、設定が無茶すぎて全然わかんない」
「でもな、多分あたし・・・それ前世やと思うんよ」
「ふぇ・・・?」


281 :その先 :2011/12/19(月) 22:05

突拍子も無いことを言うのは相変わらずで、脈絡無く話が転んでいくのも、いつものことで。でもその瞳はやっぱり真っ直ぐだ。

「どう考えても日本やないんよ。でもさ、あたしとりさちゃんたった二人だけでさ」
「二人だけ?」
「そう、二人で。でもさ全然怖くなくてさ。今と一緒やろ?」

あんまり真面目に言うから、なんだか本当のことに思えてくる。子供だましみたいだけれど、彼女のよく分からない確信を、私も信じてみようか。
そう思えてくる、彼女の瞳。




「前世一緒で、今もりさちゃんと一緒。来世も一緒やとええなぁ・・・」

そう言って彼女は、ふんわりと微笑んだ。
282 :その先 :2011/12/19(月) 22:06

何てこと言うんだろう・・・。
何て嬉しいこと言ってくれるんだろう。そんなこと言われたら、
泣けてくるじゃないか。

「ばか・・・・あいちゃんのばか・・・・」
「んっ・・・・?りさちゃん泣いてるんか・・・?」

私はこみ上げてくるものが堪え切れなくて、眼の前のあいちゃんの肩におでこをつけて、
その涙を誤魔化した。
勿論誤魔化しきれてなんかないのは分かっているけれど。

「・・・来世も隣にいるから。あいちゃんが嫌って言っても隣にいるから」
「あたしだって、もしかしたら全然違う国に住んでても、りさちゃん見つけにいくから」
「あいちゃん、国際派だもんね・・。じゃああたしはのんびり暮らして待ってようかな」
「えぇ!!あたしのこと探してくれんの?!」


283 :その先 :2011/12/19(月) 22:07

子供みたいなやりとりを続けながら、心の中で思っていたことは。

多分お互いがどこに居たとしても、きっと何かに引き寄せられるようにして出会うだろうという、根拠もない自信。
だって、私とあいちゃんが出会ったのは奇跡では無くて、必然だから。
出会う運命だったから。だからきっと来世もそうなるはずだ。

歳が違って住む場所も違って、でも思うものが一緒だったから、今ここに、同じ場所に同じ時を共にする二人がいる。
きっときっと来世だって、そうなる。

ガラス玉みたいな、透き通る綺麗な彼女の瞳を見ながらそう強く思った。


284 :その先 :2011/12/19(月) 22:07
 
285 :名無飼育さん :2011/12/19(月) 22:08

「その先」終わりです

274さん
毎回タイトルは悩むので、そう言って頂けて光栄です
286 :名無飼育さん :2011/12/21(水) 23:59

287 :名無飼育さん :2011/12/22(木) 00:00

更新します。今回は短めです
288 :名無飼育さん :2011/12/22(木) 00:00

「すきだなきみが」
289 :すきだなきみが :2011/12/22(木) 00:01

眠りの浅い私は、今日もやっぱり真夜中に目覚めてしまう。
再び眠ろうとするけれど、そう上手くいってはくれなかった。

でも、今日は隣にあいちゃんがいるから、寂しい思いもない。
暗がりの中でだんだん眼が冴えてきて、隣の彼女に目をやる。

年上だけれど、寝顔は子供みたいなあいちゃん。
彼女の規則正しい呼吸が、一人で目覚めてしまった私に不思議と安心感を与えた。



290 :すきだなきみが :2011/12/22(木) 00:02

―― 好きだな・・・

彼女の体温も、香りも。
長い睫も、女の子のくせに大きい手も。
私より年上なのに、子供みたいなお肌も、ぽってりとした唇も。

全部好き・・・・。

291 :すきだなきみが :2011/12/22(木) 00:03

―― なんでこんなに好きなんだろ

私の心の中であいちゃんの存在はとっても大きい。
勿論家族も友達も、先輩も後輩も。

みんなみんな大切だけれど、やっぱりあいちゃんは特別。
穏やかな気持ちとか、恋する気持ちとか、大切に思う気持ちとか、やきもちとか。
全部全部あいちゃんが教えてくれた。


292 :すきだなきみが :2011/12/22(木) 00:05

あいちゃんの頬に手を伸ばす。
起こさないように、そっと触れる。

じわじわと伝わる温度は、あいちゃんの体温か、それとも私の心の温度か。

ゆっくりと上がっていく温度と鼓動は心地よくて、思わず笑みが零れる。
そのまま手を前髪にもっていき、その瞼を覗き見た。

今は閉じた瞳だけれど、起きているときのそれは私の心を掴んで止まない。

ぼろぼろ泣いちゃうところも、子供みたいに笑うところも、噛むところも。
いじけちゃうところも、嫉妬するところも、自分勝手に動き回るところも。

全部、彼女のすること全部が大切で、私の心はいつもそれで満たされていた。


293 :すきだなきみが :2011/12/22(木) 00:06

そうやってぼんやり彼女を見つめていたら、ごそごそ動き始める彼女。
むにゃむにゃ言いながら、私に近づいてきて私の胸元で納まった。

何でこんなにもあいちゃんが好きなのかは分からない。

もしかしたら何かのきっかけでいつかは二人が離れ離れになってしまうときが来るかも知れない。
でも、もしかしたら来るかも知れないその日まで、間違いなくあいちゃんのこと好きだよ。
好きだから。


294 :すきだなきみが :2011/12/22(木) 00:07

ふわふわの髪の毛に鼻先をつけて、彼女の頭を撫でる。
あいちゃんを可愛がっているようだけれど、結局私はその香りに安心して眼を瞑る。

そして、だんだんと意識が遠くなっていくのを感じながら思った。

―― 好きだよ、きみが


295 :名無飼育さん :2011/12/22(木) 00:08
 
296 :名無飼育さん :2011/12/22(木) 00:08

「すきだなきみが」おわりです
297 :名無飼育さん :2011/12/25(日) 22:41
298 :名無飼育さん :2011/12/25(日) 22:41
更新します
299 :名無飼育さん :2011/12/25(日) 22:42

「if I call your name」
300 :If I call your name :2011/12/25(日) 22:46

「あいちゃん・・」
「ん、なーん・・・?」

ぽろりと無意識に出た言葉に、電話越しの愛ちゃんはきちんと返事してくれる。
でも今の会話の文脈なんて完全に無視した状態で出た言葉。
だから彼女から返された言葉に、こちらから呼びかけておきながら詰まってしまった。

「なんやー・・りさちゃん?」
「なんでもなーい・・・・」
「変なりさちゃんやなぁ・・」

柔らかく笑いながら、そう言う彼女の顔が浮かんでくる。
長い長い付き合いだから、二人だけの空間で会話が無くてもそれはそれで居心地がよくて、
その心地よさは電話でも一緒だった。
例え相手の顔が見えなくとも。


301 :If I call your name :2011/12/25(日) 22:47

「りさちゃーん!」
「なぁにぃ・・?」
「・・・りさちゃん・・・?」
「なに?」
「りーさちゃんっ!!」
「だから、なぁにぃーってば」
「さっきのりさちゃんの真似」
「えー」

くすくす笑いながら返す言葉。なんの意味もないのに、私たちを柔らかく包む温かな空気。
子供みたいなおふざけの会話でこんなにも癒された気持ちになるのは、間違いなく愛ちゃんだからだ。
他の誰と交わしても、こんな気持ちにはなれない。そう思えるのは、やっぱり愛ちゃんに恋してるからなんだろう。

そう自分なりに思い至り、ちょっとにやけながら頬が熱くなるのを自覚する。
でも決して嫌ではない熱さ。


302 :If I call your name :2011/12/25(日) 22:48

そういえば、先日観た愛ちゃんの舞台は素晴らしかった。その舞台の話が聞きたいと思って呼びかける。

「ねぇ、あいちゃん?あのさ・・・」
「あー・・りさちゃん、もっかい!」
「え?なに?」
「もっかい言って?」
「だから何をよ?」

彼女の言わんとしていることが分からなくて、聞き返してしまった。
さっきの自分の言葉を棚にあげておいて、聞き返す私。
愛ちゃんの言葉に脈絡がないなんて、いつものことだけれど。

「もっかい言って?あいちゃんって」

小さく、強請るように甘い声で愛ちゃんはそう言った。



303 :If I call your name :2011/12/25(日) 22:50

やっぱり彼女の言葉には脈絡がない。
でも簡単なことだから応えてあげた。ゆっくり、ひとつ息を吸って声に出す。

「・・・あいちゃん」

勿論、彼女の顔を思い浮かべながら。

「ありがと・・・・なんか照れるなぁ・・」
「えぇー あいちゃんの言うとおり呼んだだけなのに?」
「うん。なんかな、りさちゃんの愛情がたっぷり籠ってる感じ」
「ふふ、伝わった・・?」
「めっちゃ伝わった!」

そんな強気に返しながら、本当はどきどきしていた。
やっぱり言葉にしなくても、私の気持ちが伝わればいいなとは思っている。
そしてそれが本当に声だけで伝わっていることが分かって、嬉しかった。

彼女があまりにも嬉しそうに言うから、呼べるものなら何度でも呼びかけたい。
“あいちゃん”って。

出来ることなら、電話じゃなく彼女の耳元で。


304 :If I call your name :2011/12/25(日) 22:52

「なぁ、明後日仕事は?」
「えとね、午後からリハ」
「じゃ、明日は?」
「明日もリハだけど、子供たちがいるからあんまり遅くはならないよ」
「こどもたち?」
「そう、こどもたち」

そうやって笑って返すと、そっか、と返ってきた彼女の言葉。
何か言いたげな様子に、その内容も察した私は、もう一度呼びかける。

「ねぇ、あいちゃん?」
「なぁに?」
「明日、会いにいっていい・・?」
「来て!」

―― きて・・

静かにそう言った愛ちゃんの顔を思い浮かべて、顔が緩むのを自覚する。

「りさちゃん、あとさ、切る前に最後のお願いなんだけど」
「なに?」
「もっかい言って?もっかい」

愛ちゃんが言いたいことなんて、言われなくても分かってしまうのは、
やはり10年の付き合いだからか。
さっきと同じように、気持ちを込めて囁いた。

「・・・・あいちゃん・・・・」

―― ありがと・・・・

彼女は嬉しそうに小声でそう言った。


305 :If I call your name :2011/12/25(日) 22:53

***********



306 :If I call your name :2011/12/25(日) 22:54

翌日愛ちゃんから言われたこと。
昨日の電話であんなにも彼女が私に名前を呼ぶことを乞うたのは、その声色が特別だから。

彼女は誰彼構わずに自分のことを“愛ちゃん”と呼ばせたがった。
それはスタッフさんも先輩も、入ってきたばかりの後輩ですら同じだった。
その中でも私の呼び方は特別だと。

「りさちゃんの声、歌ってるときも落ち着いた話し方も、楽しそうなのも好きだけど、あたしの名前を呼んでくれるときが一番好き」

そう言って彼女は微笑んだ。そして“幸せな気分になる”と続けた。

彼女がそう言うなら、何度でも何度でも呼んであげよう。
電話でも、直接眼を見ながらでも。
今日だって、何度だって呼んであげるんだ。彼女がもういいよって嫌がるまで。その度に愛ちゃんが幸せな気分になるのとおんなじように、私だって幸せな気分になるから。

私の眼の前で微笑む彼女に近づいて、その耳元でそっと囁いた。

「だいすきだよ・・・・あいちゃん」



307 :名無飼育さん :2011/12/25(日) 22:55
 
308 :名無飼育さん :2011/12/25(日) 22:55
おわり。
309 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 00:08
310 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 00:08

あけましておめでとうございます。
本年もマイペースに更新して参ります。
311 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 00:09

「うみ」
312 :うみ :2012/01/04(水) 00:11

―― 明日うち来れる?

あたしが大好きな仲間たちの元から巣立って早数ヶ月。
いつもならあるはずのリハも無いし、年明けのコンサートだって無い。
グループにいた時だって一人でする仕事はあったし、その環境にも少しずつ慣れてきたけれど、
やっぱりいつも当たり前にあったことが途端に無くなるのは寂しいものだった。

その代わりに年末年始はゆっくり家族と過ごせたし、それはそれでありがたかった。
でも、いつも当たり前に会えていた仲間たちと会えなくなるのは寂しいもので。

やっぱり会いたい。彼女に、会いたい・・・・・。

りさちゃんとはメールも電話もしていたけれど、やっぱり直接顔が見たい。
温かくて柔らかくて、触れていると安心できる温度が欲しい。

会えない期間はたった数週間だった。されど数週間。
その僅かな期間でさえ耐えられないのだから、あたし一体どれだけりさちゃんのこと好きなんだよと思う。


313 :うみ :2012/01/04(水) 00:12

「・・・あーもう無理・・・」

ちょっと格好つけて、彼女の出方を見るのもアリかも知れないと頭の片隅で思ったけれど、
そんな駆け引きが出来るような余裕なんてすでにあたしには無いらしい。

メールや電話で彼女のスケジュールは大体把握していたから、素直にメールを送った。

―― 会いたい



**********


314 :うみ :2012/01/04(水) 00:16

久しぶりに会ったりさちゃんは何にも変っていなかった。
当たり前だけれど、本当に何も。
強いて言うならずっと前から決意していたことを多くの人に伝えて、すがすがしい顔をしているくらいか。

やってきたりさちゃんを部屋に通しソファーにかけるなり、あたしは彼女の腰に抱きついた。
仕事終わりに駆けつけてきてくれたのだろう。寒空の中やってきたからか、少し冷たい肌。
その温度を確かめるように、抱きしめた腰を撫でながら声に出す。

「りさちゃん・・・会いたかった・・・」
「来たよぉ・・・・なんか久しぶりだね」
「あ、そういえば、明けましておめでとう」
「あ、そうだね、明けましておめでと・・・ていうか、そっちが先だよぉ・・・」

やっと顔を上げて覗いた彼女の表情は、前と何一つ変らず穏やかだった。
くすくす笑いながら細めた眼も、柔らかそうなほっぺたも、何にも変らない。






315 :うみ :2012/01/04(水) 00:18

「ねぇ、あいちゃん、新年は甘えんぼでいくの?」
「・・・・前と変らんもん・・・・」

頭上から聴こえてくる、あたしをからかうような言葉。
その言葉もその声も、今のあたしにはただただ幸福なだけ。
あたしを甘やかすように、頭を撫でつける柔らかな手も、ただただあたしの心を満たしていくだけ。

その手が嬉しくて、その温度が愛しくて、胸の奥がぎゅっと掴まれたみたいになる。
嬉しいのに、幸せなのに涙が出てくるのは何でだろう?その涙が気づかれないように、彼女のお腹辺りに擦り寄った。



316 :うみ :2012/01/04(水) 00:19

「ふふ・・・・甘えんぼ」
「えーもん・・・・」

我ながら子供っぽいとは思ったけれど、それしか言葉が見つからない。
今は彼女を感じるだけで満たされる。
髪に感じる彼女の唇も、地肌から伝わる吐息も、甘い香りも。
それだけで胸がいっぱいで、そこから動けない。

――りさちゃんという幸せの海に航海して、そこに錨を降ろすあたし。
大きな大きな幸せの海原で、別にどこへ行き着こうが構わないけれど、今はここ。
ソファーの上、彼女の温度を感じられる場所。
そこに停泊するあたし。

眼を瞑りながら、あたしはそんなことをぼんやり思っていた。


317 :うみ :2012/01/04(水) 00:20

「あいちゃん、こんなとこで寝ちゃだめだよ?」
「んー、寝てないもん・・・」
「風邪ひいちゃうよ?」
「ひかないもん・・・・」
「これは困った、大きな子供だ・・・・」

そうやって呆れたように笑うりさちゃんも、愛しくてたまらない。

「あいちゃん、風邪ひいちゃうからベッドいこ?」
―― ね・・・?

そう言って、彼女は優しく起こしてくれた。
あたしは子供みたいに、まだ冷たい手に引っ張られながら部屋にいく。
そして一人で寝るには少し大きめのベッドに、ふたり潜り込んだ。


318 :うみ :2012/01/04(水) 00:21

向かい合わせの体勢になって、かち合う視線。近づく呼吸と体温。
堪らなくなって顎をあげれば、優しく温かな感触が唇にした。

何でだろう。何度もしてることなのに、今日は苦しい。
幸せで苦しい。鼓動も呼吸も速くなるのが自分でも分かった。心臓の音がやけに煩い。
思わず俯くあたし。

「あいちゃん・・・・?」
「なんか・・・ちゅーするだけで、どきどきする」
「あたしだってしてるよ」
「どきどきしすぎて死ぬかも・・・・」
「それは困るなぁ・・・・」

あたしの顔を包むように、少し温かくなった手が添えられた。
誘われるように顔を上げれば、やっぱり何も変らない彼女は微笑んでいた。


319 :うみ :2012/01/04(水) 00:22

「りさちゃんは死なん?」
「なによ、唐突に?」
「あたし、なんか幸せすぎて死ぬかも・・・」
「うーん、残念だけど。あたしは死なないよ」
「うえっ 幸せじゃないってこと?」
「そうじゃなくて。あいちゃんのこと、眼の前にしてさ。
 それで死んじゃったら勿体無いっていうかさ、うまく言えないけど。
 ずっとずっと一緒に居たいってことだよ」

こつんとおでこが合わさって、さっきよりさらに近づいた彼女の眼は、今日一番優しい眼だった。

「そやな・・・・勿体無いな、こんな可愛い子前にして死ぬのは」
「そやそや・・・・」

そうやって、あたしのまねをする彼女の声色は温かかった。
そしてあたしの頭を撫でつける手は、涙が出そうなほど柔らかかった。


320 :うみ :2012/01/04(水) 00:24

本当は抱きしめるつもりだった。
沢山沢山触れて、触れてもらって、すきって言って、すきだよって言って貰って。
そんな風にしてりさちゃんの気持ちと温度とを、あたしのそれらと重ねあわせようとしていたのだけれど。

今日はそんなことする余裕もないくらいに、気持ちが溢れてきてどうしようもない。
本当にりさちゃんの愛情に溺れているみたいだった。



あたしは泳ぐのが苦手だ。
もし、海や川に落とされたら完全に溺れてしまう。
でも、りさちゃんの愛という名の海ならば、そこに放りだされても怖くは無い。
きっとずっと穏やかな潮に違いないから。そしてその上には温かな太陽があるはずだから。

ちょっと、甘くて温かな風を感じるこの場所に錨を下ろしてみようか。
夢と現との間で遠のく意識のなかで、あたしはぼんやり思った。
そして少し、温かな風のほうへ体を寄せた。

―― おやすみ

優しく、聞きなれた声がずっとずっと遠くで聞こえた気がした。


321 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 00:24
 
322 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 00:25

「うみ」おわり
323 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 23:39
324 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 23:40

更新します。
325 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 23:40

「まっすぐ」
326 :まっすぐ :2012/01/04(水) 23:42

次の打ち合わせで今日のお仕事は終わり。その前にコンビニでも行こうかな。

マネージャーさんに声をかけてエレベーターに乗り込み、ボタンを押す。
扉が閉まっていくのを確認し、エレベーターの奥の鏡のほうへ身体を向けた直後、
もう一度扉が開いていく気配。そして聞きなれた声。

「あ、間に合った」
「あれ?あいちゃん、いたの?」

振り返ると、見慣れた顔がそこにあって、思わず私も顔がほころんだ。

「さっきまで取材だったんだけど、今日はこれで終わり。ガキさんは?」
「ちょっとコンビニまで行ってこようかと思って」

扉が閉まった途端に、愛ちゃんは隣までやってきて、そっと私の手を握った。
私はその優しい温度が嬉しくて、愛ちゃんの肩に体を寄せる。
そして階下への数字の点灯が下りていくのを目で追いながら、私は愛ちゃんの手を握り直した。



327 :まっすぐ :2012/01/04(水) 23:43

「誰か乗ってきたらやばいかな?」
「ま、そん時はそん時やろ」
「そだね・・・」
「りさちゃん、この後どんくらい?」

多分私の仕事のことを言ってるんだろう。そして愛ちゃんがその先に言おうとしてることくらい、
今の私にはお見通しだったりする。

「1時間くらい・・・待てる?」

ちらり横目で伺えば、空いたほうの手で鼻をぽりぽりと掻きながら、
そしてどこか視線を定めないまま愛ちゃんはその答えとはまるで違うことを言い始めた。


328 :まっすぐ :2012/01/04(水) 23:44

「りさちゃん・・・・・・。“姫始め”って知ってる?」
「“ひめはじめ”?」
「・・・ま、いいや。外のカフェで待ってる」

愛ちゃんが言い終えたと同時にエレベーターの扉が開いた。
そっと離れた手を名残惜しく思ったけれど、愛ちゃんが待っててくれるからあともう少し頑張ろう、そう思った。



*********


329 :まっすぐ :2012/01/04(水) 23:45

会社を出て愛ちゃんが待つカフェとは反対方向にあるコンビニでお気に入りのウーロン茶とお菓子を買って、
会社へ戻る道すがら。
さっき愛ちゃんが言っていた“ひめはじめ”が気になって、iphoneで検索した。
すると出てきた幾つかの意味。

「新年を向えて初めての・・・・・・?・・・・・・あんのやろ・・・!」

そのストレートすぎる表現に、私は呆れるやら、愛ちゃんに怒鳴ってやりたいような気もするし。
なんてデリカシー無いんだろう。

ああ、でも。それを望んでるのは愛ちゃんだけじゃなくて、私も同じなのは事実で。
愛ちゃんの傍でそのぬくもりを感じて、甘い香りと声と呼吸をもっともっと強く感じたいと思っているのは、
他でもない私。

さっきちょっと手を握っただけなのに、鼓動が速まっていたことがまぎれも無い証拠だったりして。
・・・・・・認めたくないけど。


330 :まっすぐ :2012/01/04(水) 23:47

今日は愛ちゃんのストレートだけど、ストレートじゃないお誘いを素直に受けることにしよう。

後で顔を合わせたとき、ご飯だけじゃなくて泊まるって言ったら、愛ちゃんはなんて言うだろうか。
勿論、“ひめはじめ”を調べたなんて絶対言わないけど。

きっと愛ちゃんは真ん丸の目を大きくして、はにかみながら「帰ろっか」ってぼそって言うに違いない。

愛ちゃんの見慣れたはにかみ笑顔を心に浮かべながら、私は顔を上げる。あとちょっと頑張ろう。
早く、彼女の元へ行こう。


逸る足取りに、コンビニの袋がカシャりと小気味よく鳴った。


331 :名無飼育さん :2012/01/04(水) 23:47

「まっすぐ」終わりです
年明けですし。
332 :名無飼育さん :2012/01/06(金) 22:12
333 :名無飼育さん :2012/01/06(金) 22:12
更新します
334 :名無飼育さん :2012/01/06(金) 22:13

「ぴょこぴょこなんとか」
335 :ぴょこぴょこなんとか :2012/01/06(金) 22:14

「にーがきさーん!!」

私が昔、大好きな先輩たちに憧れていたのと同じように、後輩たちも私に懐いてくれていた。
それはとても嬉しいことだし、懐いている子はますます構いたくなる性分の私だから、
歳にして優に10歳くらいは離れている彼女たちは、妹というか時にこどもみたいに可愛かった。

そして今日もやたらと写メを撮りたがる子と、変顔やものまねが大好きで
最早芸人さんを目指しているんじゃないかと思うくらいの子が大騒ぎしながら私の元へやってきた。



336 :ぴょこぴょこなんとか :2012/01/06(金) 22:15

「にーがきさーん!!ちょっと新作ものまねが出来たんで見てくださーい!!」
「あー、かのんずるい!!えりなもにいがきさんと話したいー!!!」
「あぁ、もう生田は静かに!後で話し聞いてあげるから。
 ていうか鈴木の新作ってなによ?」
「ぐへへ、えっとぉ・・・・」
「あのぉ、気持ち悪いんでやっぱりいいですかねぇ・・」
「あぁ、そんなこと言わないでくださいよー!!」

こういう本当にくだらないやり取りで楽屋が騒がしい。
その騒がしさは決して嫌なものではなく、落ち込んでてもパワーが貰えるから寧ろ好きだった。

年齢とともにいつの間にか落ち着いていってしまって、大人チームで騒ぐことも減っていたから、
とても新鮮な毎日でもあった。


337 :ぴょこぴょこなんとか :2012/01/06(金) 22:17

次から次へとぽんぽんと変っていく会話。
さっきまでダンスレッスンで真剣な表情だったのに、それでも飽き足らないのか、
無意味に動き回る彼女たちは本当に小動物みたいだと思った。

そして時々着る、動物をモチーフにした衣装はそんな彼女たちに最高に似合ってたりして、
アイドル好きの毒舌な後輩はよく彼女たちの写真をキャーキャー言いながら激写していた。

今回の歌の衣装もそれはそれで直球で、入ってきたばかりの後輩を意味してひよこだった。
そして私は鶏になりかけのもの。
もうすぐこの温かな場所を去ることにかけているのか、私のものだけはひよことは言い難いものだ。
はじめは着ることに戸惑っていたけれど、全力でやれば面白い。
そして何より後輩たちが着ているのはとても可愛くて。


338 :ぴょこぴょこなんとか :2012/01/06(金) 22:18

「にーがきさーん!新曲の衣装の写真ないんですかー?」
「えりぽんってほんっとうに、にいがきさんのこと好きだよねー」
「うん、またショップいって買っちゃった!ほら」
「うわーすごーい!」
「生田あんたさ、貰えばいいのに・・・でもありがとね」
「はいー」
「そーいえば、にーがきさんの衣装って、あれって親鳥ですよね?」
「えー違うでしょ、鶏になりかけのひよこだよ」
「あたしも思ってましたー!にーがきさんは親鳥なんだって」
「ということはやっぱ鶏?」
「にーがきさんが雌鳥でさー、もし高橋さんがいたら雄鶏だよねー」
「あーかのん、いい事言う!!」

・・・雄鶏?

「え、なに、あたし達が親鳥で9期と10期がこどもたち?」
「そーでーす!!」
「だって前はそうでしたよねぇ?にーがきさんがおかーさんで、
 たかはしさんがおとーさん!」
「「ねー!」」


339 :ぴょこぴょこなんとか :2012/01/06(金) 22:19

―― あたしと愛ちゃんは夫婦ってことか・・・・

思わずにやけそうになる頬を懸命に抑えた。

私と愛ちゃんが特別な絆があるのは周知の通りだった。
すぐ下の後輩だって、羨ましいというくらいに、
お互いの言うことなんて言葉にしなくったって分かる事だ。
勿論喧嘩もした。教育方針でぶつかり合ったりもした。
くだらないことで罵り合ったりもした。

でも、でも。
人一倍理解し合って助けあってきた自覚もある。ぎゃーぎゃー騒ぐ後輩を見ながら、
きみたちもそうなれるといいね。そう思っていたら。


340 :ぴょこぴょこなんとか :2012/01/06(金) 22:20

「あの、にーがきさん!!」
「はいはい?」
「ちょっと聞いてもいいですか?」
「うん、なにー?」
「にーがきさんと、たかはしさんって特別な感じするんですけど」
「そーそーえりなも思ったー!」
「えりぽん、ちょっと黙ってて!なんかー同期ってだけじゃないというかぁ」
「そーそー」
「道重さんと田中さんだって同期で仲良いですけど、仲良いんですけど。なんていうかー
 にーがきさんとたかはしさんは特別な気がします」
「えりなもそー思います」
「なんかー夫婦?」
「「ねー!!」」
「で、私たち9期もなれますか?」
「にーがきさんたちみたいに」
「・・・・そうだなぁー」


341 :ぴょこぴょこなんとか :2012/01/06(金) 22:21

私と愛ちゃんは特別な関係だ。同期で親友で、仲間で。
でも何よりそれは恋人だからだと特別なんだと思う。
・・・・まさか後輩には言わないけれど。

今日は帰ったら愛ちゃんにメールしよう。ひよこの衣装を纏った後輩たちの写真と一緒に。
そして「雄鶏はどこですか?」とでも入れてみようか。私がその衣装を纏った写真と共に。

相変わらず騒がしい後輩を前に、一人そんなことを考えていた。



342 :名無飼育さん :2012/01/06(金) 22:22
 
343 :名無飼育さん :2012/01/06(金) 22:22
おわり
344 :名無飼育さん :2012/01/15(日) 00:14
 更新します
345 :名無飼育さん :2012/01/15(日) 00:14
 
346 :名無飼育さん :2012/01/15(日) 00:14

「幸福論」
347 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:16

二人だけの、甘くて愛しくて、熱くてぎゅっとつまった濃い時を過ごす。
上がった息が落ち着いた頃、いつもならば直ぐにそっぽを向かれるか、もしくはシーツを被ってしまうか。
りさちゃんは照れているのか、そうやってあたしに顔を見せてくれることはめったに無かった。

今日もいつものように一度は背中を向けられて、でもやっぱりちょっとそれが寂しくて、
剥き出しなままの、汗でちょっと湿った彼女の背中に遠慮なくおでこをつけた。
同じく、いつものように。

ゆるく上下する肩が、彼女の呼吸が落ち着いてきたことを教えてくれた。
あたしもそのリズムに頬を寄せているうちに、ふわふわとした気分になって、自然と瞼が閉じられていく。
このまま眠ってしまおうかなぁと頭の片隅で思った時、身体を通じて伝わってきた彼女の声。


348 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:20

「そういえばさ、あいちゃん・・・・」

彼女にしては珍しく身体ごとこちらへ向いた。

その声のするほうへ顔をあげて、しっかりと眼を合わす。
りさちゃんの表情はといえば、恥ずかしがるわけではないし、
でも真剣なわけでもなく、なんとなく照れてるようでもなく、ただ、懐かしいような子供みたいだなと思った。

「あのね、私、急に思い出しちゃってさ・・・・」
「なにを?」
「オーディションのこと」
「え、あたしたちの時の?」
「そっ・・・」

こくりと頷く彼女を見ながら、二人して被る毛布を肩まで上げた。
冷たい空気が入って来ないように。
そうすることでさっきより近くに寄ってきたりさちゃんは、どことなく嬉しそうに、あたしの肩に頬を寄せると
ゆっくりとしたトーンで話し始めた。





349 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:21

「私とあいちゃん、バスの中で隣の席だったの、覚えてる?」
「覚えてるよー」
「あいちゃん、訛っててさぁ、私初めてだったから、方言とか聞くの。だからびっくりしちゃってさぁ」
「しょーがないやん。でもあたしはさ、訛ってるなんて思ってなかったんよね、福井だとさ、それが当たり前だからさ」
「でも私はそれ、羨ましくてさぁ。かわいいなって思ってた」
「あたしはりさちゃんのこと、なんかちっちゃいなぁって」

そういえば、本当に子供だった。この眼の前の彼女は。
あたしは中学3年生で、もうやたらと大人っぽくなりたくて、
ファッションとか音楽とか色んなことに興味を持っては大人の真似をしたかった。
でも彼女はきっと小学校からやっと中学校に慣れた頃で、きっとまだまだ甘えん坊だったんだと思う。


350 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:23

毛布の中、りさちゃんの手を探り、優しく握る。その存在を確かめるように。
そして当たり前のように握り返してくれるりさちゃんの手が嬉しかった。

「それでね、私ちょっと思ったんだけど、10年以上でしょ、私たち」
「そうやね、あっという間かどうかはわからんけど、人生の半分くらいかぁ・・・・」
「でしょ、なんか不思議な感じ。まさかあの時隣に座ってた子がさ、
 一緒にモーニング入ってずーっと10年後もモーニングでさ」
「うん・・・」
「それで沢山仲間がいてね、でもあいちゃんは特別になってさ・・・」
――ふふ・・・

照れくさそうに笑う彼女の言葉を待ちながら、空いてるほうの手で流れる髪を耳に掛けてやる。
ほんの少し、耳と頬とが桃色に染まっているように見えるのは気のせいだろうか。


351 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:26

「なんか教えてあげたいな、昔の私に」
「なにを?もしかしてあたしと特別な関係になって大人なことしてるよーって?」
「違うよ、もう・・・・・ほんっとにあいちゃんて、そういうとこ下品だよね」
「なんよ、大人なことって悪いことやないやん」
「だって、10年前の私だよ?今と9期とか10期ってことでしょ?」
「うあー 無理やね・・・」
「でしょ、むりむり!」

二人してくだらないことを言ってくひくひ笑うのも、
直接触れる肌から伝わる体温を感じることも、それはそれは尊くて幸せな時間で、
これからもずっとそうしていたいと思った。


352 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:27

「幸せだよって教えてあげたいな・・・・」
「あたしもやな・・・・」
「きっと10年前の私はダンスも歌も出来なくて、大変だった。泣いてばっかだった気がするし。
 でもさ、仲間が沢山できて、歌もダンスもそれからお芝居もやらせてもらえてさ・・・」
「うん・・・すごいことやね」
「でも、なんだろ?深くは言わないけどさ、隣の子とずっと一緒で、
 凄く幸せになってるんだよって言ってあげたいな」
「隣の子ってあたし?」
「ちょっと、さっきの話し聞いてた?もー あいちゃんに決まってるじゃん!!」
「うそうそ、ごめん、分かってるって。あたしも言ってあげよかな、
 隣の子にすんごく幸せにして貰ってるよって」
「えー分かるかな?」
「あたしは分かると思うよー だってりさちゃんよりは大人やったもん」
「嘘だー そんな変らないくせにぃ!!」


353 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:29

―― 幸せだよ?10年前のあたし、10年後のあたしもさ。
10年前も幸せだーって思ってるかもしれないけど、今のほうがもっと幸せだから。
・・・・・・りさちゃんのおかげでさ。

りさちゃんにさらさらの髪に顔を寄せながらそんなことをぼんやりと思っていたら。
突然彼女が視界から消え、毛布の中にもぐりこんでしまった。

「・・・・ちょっ・・・・りさちゃ・・・・」
―― んっ・・・・

突然感じた柔らかくて温かなもの。
それは臑から膝、腿、おへその近く、お腹、胸、鎖骨・・・・。
次第に上へ上へと上がっていき、それと同じようにあたしの体温も呼吸も鼓動も少しずつ上げていく。
思わず唇を噛んでいたら、あたしを見下ろすようにしてひょこりと顔を出したりさちゃんは、
嬉しそうに、勝ち誇ったような表情をした。


354 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:30

こくりと唾を呑む。

「あいちゃん、顔赤いよ・・・・?眼もなんかうるうるしてるし・・・」
「だって、りさちゃんが・・・」
「言える?あの時のあいちゃんにさ、こんな顔してますって」
「・・・・言えん・・・・」

ますます嬉しそうな彼女の眼は、あの時の彼女とはまるで違うはずなのに、
やっぱりどこか懐かしい気がした。

「しあわせにしてあげる」
「ふぇ・・・?」
「さっき、あいちゃんが私にしてくれたように・・・いいでしょ?」

―― そんな台詞言うようになったんか、りさちゃんは・・・・。
でも、あたしを必要としてくれて、あたしの思いを受け止めてくれて、
あたしの手や唇や温度を彼女が幸せと感じてくれてることが、あたしにとっては何より幸せだ。

りさちゃんが同じように返したいと思ってくれていることも、それもやっぱりあたしの幸せだ。


355 :幸福論 :2012/01/15(日) 00:31

ゆっくり近づくりさちゃんの顔。
鼻先の触れるその時まで、彼女の振れる睫を見つめる。そっと瞼を下ろすと、唇に感じる柔らかくて温かな彼女の唇。
甘くて甘くて愛しくて。ちょっと切なくなるくらいに、幸せな感触。

次第に深くなる口付けに、甘く溶かされながら思う。

―― 10年前のあたし。早く、この幸せ知れるといいね・・・・・







おわり

356 :名無飼育さん :2012/01/15(日) 00:31

357 :名無飼育さん :2012/01/24(火) 00:33
358 :名無飼育さん :2012/01/24(火) 00:33

更新します
359 :名無飼育さん :2012/01/24(火) 00:34

「wild berry」
360 :wild berry :2012/01/24(火) 00:35

「ねぇ、あいちゃーん!!」
「なぁん?」
「あのね、これメイクさんが試してみてってくれたんだけどさ、どれがいい?」

そう言ってりさちゃんは、色鮮やかなルージュをいくつか広げた。
可愛らしいピンクから、深いボルドーみたいな色まで、キラキラした宝石みたいだった。

「でもこれ、りさちゃんにってくれたんやろ?」
「そうだけどさ、でもこういう濃い目の色はあいちゃんの方が似合う気がするし」
「そうかなぁ・・・・ま、でも確かにりさちゃんはこっちのほうが似合うな」
「でしょ?だからさ・・・・」
―― はい・・・・

りさちゃんはあたしに濃い目の赤を差し出してきた。そのルージュを手にとって、
色を眺める。


361 :wild berry :2012/01/24(火) 00:37

「ワイルドベリー・・・・・・これ、ボルドーじゃないんか」
「ワイルドベリーってことはイチゴ?あいちゃんにぴったりじゃない」
「えぇー・・・なんか嬉しいなぁ!!」

あたしはイチゴに眼が無い。イチゴに関するものであれば、雑貨も洋服もアクセサリーも。
勿論本物だって大好きで、なんでもテンションが上がる。
だから、ストロベリーではないけれど、ベリーならその仲間だし、なんとなく嬉しかった。

「ねぇ、ねぇ、付けてみて?あいちゃん似合うと思うな」

彼女の笑顔と言葉を受けて、あたしは素直に付けてみた。

いつもマニキュアやペディキュアには濃い目の赤を付けても、
グロスやルージュをプライベートで付けることは少なくて、
付けたとしても可愛らしいピンクやベージュピンクみたいな柔らかな色味が多かった。
だから、その色は撮影の時みたいで、ちょっとドキドキした。



362 :wild berry :2012/01/24(火) 00:38

鏡を覗く。
よそ行きのあたしが、そこにいる。

「どうかな?」
「よく似合ってる。なんかカッコいいかも」

りさちゃんは笑顔でそう言ってくれた。なんとなく照れくさくて、ちょっぴり顔が熱い気がした。

「これ、撮影じゃなくても、付けてみようかな」
「うん、いいと思うよ、それにさ・・・・・」

りさちゃんはもう一度そのルージュを手にとって、それを見つめながら言った。

「メイクさんが教えてくれたんだけどね。ワイルドベリーって“幸せを運ぶ”って言われてるんだって」
「へぇ、そうなんだ・・・・・」
「なんか素敵じゃない?」
「そうやね・・・・・」


363 :wild berry :2012/01/24(火) 00:39

だったら、りさちゃんだって付ければいいじゃない。りさちゃんにだって幸せになって欲しいし。
その考えと共に、ちょっと出てきた悪戯心。
あたしはその悪戯心のまま、りさちゃんに向って微笑んだ。

「・・・・・りーさちゃん」
「なぁに・・・・?」
「・・・・・ちゅー・・・・・」

あたしはりさちゃんの両頬に手を添えて、ゆっくりと顔を近づける。
そっと寄せる唇に、伝わる彼女の温度と柔らかな感触。
それと同時に、近づいたことで鼻をくすぐるりさちゃんの甘い香りに、
心も体もほんわりとしたものに包まれる。


364 :wild berry :2012/01/24(火) 00:40

「・・・・・ちょっと・・・・・」
「んあぁ、だめやった?」
「・・・・・そうじゃないけどさぁ、せっかくあいちゃんルージュ付けたのに・・・・」
「でもりさちゃんに付いたなぁ」
「・・・・もうあいちゃんってばさ・・・・・」
「これでりさちゃんも幸せやろ・・・・?」
「はぁ、なに言っちゃてんのよ・・・・・」
「しあわせやない・・・・?あたしは幸せやよ」
「・・・・・しあわせ・・・・だよ・・・・・・」

ちょっと照れたみたいに俯いて、小声になった彼女が堪らなく愛しかった。


365 :wild berry :2012/01/24(火) 00:41

きっとこれからも些細なことも二人で話して、笑って、色んなやり取りをしながら一緒に時間を過ごしていくんだと思う。その時間がいつまでもいつまでも幸せであればいい。

りさちゃんの唇に移った、その色を見つめながら思う。

――― ワイルドベリーがくれた、ささやかな幸せ ―――








おわり


366 :名無飼育さん :2012/02/01(水) 00:33
367 :名無飼育さん :2012/02/01(水) 00:34

更新します。
「Honey bee」
368 :Honey bee :2012/02/01(水) 00:36

「りさちゃん、背中焼けたな?」
「・・・・・・んっ・・・・なに・・・・?」
「ビキニの痕・・・・・縞々になっとる」

沢山のキスと思いと熱を交し合った後、息が出来ないほどに高ぶった脈と呼吸をゆっくりと落ち着かせていく。
りさちゃんはいつものようにうつ伏せになって、汗でしっとりとした背中をさらしたまま、心地よい脱力感に身を委ねて、
まどろんでいた。

ベッドの横にある小さな灯りに照らされて、ぼんやり浮かび上がる華奢な背中。
春頃に見たそれは、まっさらだったのに、夏の強い日差しにさらされていつしか点いた痕。
その痕は秋が過ぎて冬になった今でも形をそのままにして、そこに在る。


369 :Honey bee :2012/02/01(水) 00:37

ゆるゆると上下する縞模様に手を伸ばした。

「ここだけ白いな」
「・・・・あぁ・・・・・夏の撮影のときかなぁ・・・・・そういえば日焼け止め塗ったのに、海入っちゃって、すぐとれちゃったみたい」
「アイドルなんだから気をつけんと」
「ほんと、ていうかまだ残ってるの?」
「だいぶ薄くなってるけどね・・・・・」
―― ここだけ・・・

きっとここがビキニで隠れてたんだろう、僅かに浮かぶ数センチの白い帯を人差し指と中指でそっとなぞる。
くすぐったいのか、りさちゃんはうつ伏せのままあたしの方へ顔を向けた。
ふとかち合う視線に、どきりとしたのはあたしの方だった。
・・・・あたしが触れているのに。


370 :Honey bee :2012/02/01(水) 00:39

というよりも、あたしは秘かに興奮していた。その白い帯に触れながら。
だってそこはあたししか見れない場所だから。職業柄人目に肌を晒すことはあるけれど、
それでも隠れているはずのそこ。
もしかしたら彼女の家族ですら気づいていないかもしれない縞模様を、あたしは見て触れている。

それはあたしとりさちゃんとが、心も体も裸になって抱き合うから知り得ることであって、
その事があたしに優越感を与え、酷く興奮した。

「なんか、ハチみたいやね・・・・」
「ハチ・・・・?」
「背中の模様。ミツバチみたい。刺さんでな?」
「なーに言っちゃってんの・・・・・」

邪な思いを悟られないように、あたしはりさちゃんの背中の模様をからかってやった。


371 :Honey bee :2012/02/01(水) 00:41

「ハチはあいちゃんのほうでしょ?あたしはちょうちょです!」
「んあぁ・・・そやな・・・・」

多分衣装のことを言ってるんだろう。確かにあたしは女王蜂で彼女はモンシロチョウだった。
・・・・でもやだな。本当にあたしが蜂でりさちゃんが蝶々だったら、
二人は花の蜜を巡って時に争うかも知れないのに。
だったらあたしは花のほうがいいや。そしたら毎日りさちゃんはあたしを求めてくれるはずだから。

「りさちゃんがちょうちょならさぁ、あたし花になるわ。そしたら毎日一緒やろ?」
「あいちゃんって時々おかしなこと言うよね・・・」

呆れたように言われて、ちょっと悔しくて、でもやっぱり彼女のことは大好きで。

「なぁ、ちゅーしていい?」
「んんー・・・・?」

体勢も変えずに生返事をする彼女を無視して、
やっぱりぼんやりとそこだけ白く浮かび上がる背中の帯に唇を寄せる。


372 :Honey bee :2012/02/01(水) 00:42

その痕をなぞるように幾つもいくつもキスを落としていくと、次第に上がる体温と彼女の呼吸。
口を付ける度に彼女の肌に鼻先が触れて、伝わる熱と彼女の甘い香りにくらくらしそうだった。

りさちゃんのお腹に腕を回し、身体を仰向けにさせた。

「なぁ、もっかいしよ?」
「ちょっ・・・・」
「なぁ、だめ?」
「・・・・・そんなこと聞かないでよ・・・・」
「んじゃあいい?」
「・・・・ていうかさぁ。やっぱりあいちゃんはお花でいいけど、あたしは蜂のほうがいいかもね」

りさちゃんの言わんとすることが分からなくて、あたしは彼女を組み敷いた体勢で目を合わせたまま首を傾げた。


373 :Honey bee :2012/02/01(水) 00:43

「蜂が毎日お花のとこ行って、花粉を付けて実がなるでしょ」
「・・・・あたしはりさちゃんが居ないと生きていけないってことか・・・・」
「そう言うこと・・・・・でも、その代わり・・・・・」
――― ちゃーんと、ちょうだいね、甘い蜜・・・・

大人な笑みを浮かべたりさちゃんはあたしの首に腕を回した。


374 :Honey bee :2012/02/01(水) 00:44

あたしとりさちゃんは、もう立派な大人だ。
でも頼って頼られて、甘えて甘えられて、時に悲しみと怒りを分かち合って生きている。そしてそれ以上に幸せを与え合って今ここにいる。

―― あたしは頑張って花咲かすから、りさちゃんあたしの元へ来てくれる?来てくれたら甘い蜜をあげるから。

ミツバチみたいな彼女の背中を抱きしめながら、今日いちばんのキスをした。
身体が溶けてしまいそうなくらいに幸せなキス。

蜂蜜よりもずっとずっと甘いキスを。










おわり



375 :名無飼育さん :2012/02/01(水) 00:45
某アーティスト様の曲のオマージュで書きました
376 :名無飼育さん :2012/02/06(月) 18:51
作者さんの愛ガキはなんか本当に心温まる話で、大好きです。
377 :名無飼育さん :2012/02/11(土) 02:05
376さん ありがとうございます

更新します。
378 :名無飼育さん :2012/02/11(土) 02:06

「Nude」
379 :Nude :2012/02/11(土) 02:08

「りさちゃん、やっと温かくなったな」

里沙は極端とは言わないものの、冷え性である。冬でなくてもあまり温かくない足先は、一年の中でももっとも寒い季節である2月は痛いくらいに冷たい。
昼間はなるべく集めの靴下を選ぶだけでなく、レッグウォーマーも身につけて防寒対策はかなりしている。お風呂もなるべくゆっくり湯船に浸かるようにして、
身体全体に温かな温度が回るようにしている。

比較的大きな愛の自宅の湯船。里沙は愛に背中から抱きかかえられるようにしながら湯船につかり、愛はそんな里沙の足先を柔らかく握りながら言った。


380 :Nude :2012/02/11(土) 02:09

「うん・・・・なるべく冷えないようにしてるんだけどねぇ・・・・・」
「女の子なんだから、冷やしちゃいかんよな」
「なるべくゆっくりお湯に浸かるようにするよ・・・・・のぼせない程度に」

里沙はそっと眼を伏せながら愛に寄りかかり、首下に頬を寄せた。
それを合図にしたかのように愛は里沙の胸元へ緩く腕を回す。

「そういや、みきちゃんそろそろ産まれるな。ゆきなはまだ新婚生活続行かな」
「あの美貴ちゃんがねぇ・・・・・なんか不思議」
「ま、でものんつぁんも、あいぼんもやろ・・・・・」
「あたしたちも結婚して子供いても可笑しくないってことか・・・・・」


381 :Nude :2012/02/11(土) 02:10

ふと出た里沙の言葉に愛は戸惑った。もちろん里沙からしたら深い意味はないのだけれど。
単に年齢のことを言っただけとはわかっているけれど、それでも愛は少し考えるようにして言葉を詰まらせた。

「・・・・・・りさちゃん、結婚したい?」
「ん・・・・・・」

愛は不安になって思わず口にした。そして口にしてから“しまった”と思ったけれど、
里沙はさほど気にしていない様子である。
二人の間に横たわる、時間では解決出来なさそうな問題。これを里沙はどう考えているのか。

目を瞑って見えないつもりにするのは簡単だけれど、それでは何にも解決はしない。
今まであまり触れられなくて、聞かなかったその質問を、今日は何故だか素直に投げかけた。


382 :Nude :2012/02/11(土) 02:11

「そうね、子供は欲しいかな・・・・・・・・でも」
「・・・・・でも?」
「あたしにとってはあいちゃんの傍にいることが大切だから、結婚とかそういうのは正直いまはピンとこないな・・・・・」
「そっか・・・・・」
「あ、でもさ、もし来世どっちかが男で産まれたら結婚したいな・・・・・」
「りさちゃん・・・・・・・」
「勿論あいちゃんとね・・・・・・」

里沙の声は静かに、低く、でもどこまでも甘かった。
その甘さは愛の心にじわじわと広がり、涙腺を刺激する。
あぁ、来世もこの人の傍にいたい。絶対いるんだ。そう思わせる威力が里沙の言葉にはあった。


383 :Nude :2012/02/11(土) 02:12

「なぁ、里沙ちゃん?」
「なぁに?」

振り向いた里沙は、愛の瞳に滲むしずくをそっとぬぐいながら、決して優しい笑みをやめたりはしない。

「もしもしさ、本当に来世あたしがプロポーズしたら受けてよな?」
「だいじょうぶ、あいちゃんがあいちゃんである限り傍にいたいって思うよ。たとえぶっさいくでもね」
「お、言うたな・・・!!」
「うへへ、ていうかあいちゃんこそ、あたしのこと探し出してよね」

愛は返事をする代わり、里沙の剥き出しのおでこに唇を寄せた。
ぽちゃりと水音がしたけれど、それは愛が動いたからか。それともどちらかの涙なのか。
透明なお湯にとけてしまうから、唇が離れたときにはもう分からないけれど。


384 :Nude :2012/02/11(土) 02:14

「でよか?」
「うん」

すっかり温まった里沙は、幼い頃のように頬がほんのり紅く染まっている。里沙が立ち上がってその表情とは似つかわしくない身体のラインが見えたとき、愛は思わずこくりと喉を鳴らしたけれど里沙は気づいただろうか。その思いに押されるように、愛は先に立ち上がった里沙の手をそっと引き、先ほどと同じように優しく、でも妖艶な口付けをする。本当はもっと欲しいけれど、今はまだ我慢。だってお風呂だから。

唇を離して愛が顔を上げると里沙と眼があった。里沙にはきっと愛の思いはとっくに伝わっているのだろう、なんだか余裕の笑みだった。そして「早くでてぎゅってしよ?」その意図を汲み取ったようなことを言った。

お風呂に二人で浸かって、その温度で身も心も丸裸になる。いつもなら言えないことも素直に口に出来る。それだけじゃなくて、気持ちを穏やかにもさせた。たまにはこうして二人でゆっくり浸かるのもいいかも知れないと愛は思った。



385 :Nude :2012/02/11(土) 02:14

さぁ、早く出て体を拭いてベッドに潜ろう。
二人の間の熱を逃がさないように。どこまでも温かさが続くように。






おわり



386 : :2012/02/25(土) 19:39

更新します
387 :  :2012/02/25(土) 19:39
 
「わたしのすきなもの」
388 :わたしのすきなもの :2012/02/25(土) 19:40

――― ここからの眺め、好きだな ―――


389 :わたしのすきなもの :2012/02/25(土) 19:41

隣に座るあいちゃんの肩に甘えるようにして頭を乗せる。いつもなら「あまえんぼやな」と聞こえてくるはずの声は聞こえてこなくて、伺うようにして視線を上へやると、嬉しそうに微笑むあいちゃんの顔があった。

「嬉しそうだね」
「んー・・・りさちゃんが寄っかかってくるから」
「重たくない?」
「ぜーんぜん」

楽しそうな、嬉しそうな声色に遠慮なく甘えることにしよう。


390 :わたしのすきなもの :2012/02/25(土) 19:41

しばらく会えてなかったから、ただ寄り添うだけで心の奥がゆっくりと満たされていく。なかなか照れくさくて「すき」とは言えないから、傍にある彼女の手に自分にそれをそっと絡ませて。「温かい」と呟いた。温かいのは手だけではなくて、私の心も同じ。“すき”の代わりのことば。

「寒ない?」
「だいじょーぶ」
「あたしは寒い・・・・」

確かに外は寒いけれど、きちんと暖房もつけてるし、何より二人寄り添っているから暖かいはずなのに。不思議に思って再び視線を彼女へやると、少し空気が動いた気がした。


391 :わたしのすきなもの :2012/02/25(土) 19:42

「寒い・・・」

顔が近づいてきて、ああ、そういうことかと理解して。実は私よりも甘えんぼな貴女のためにそっと眼を閉じる。予想していた場所に、予想以上に熱い熱を感じる。唇が離れた瞬間、上唇にかかった生温かい吐息に心臓が素直に反応した。

「あいちゃん・・・・・」
とくりとくりテンポを速めた鼓動を感じながら、それに後押しされるようにあいちゃんの首下に頬を寄せる。絡めていた手を離し、華奢な背中へと回した。あいちゃんの、ここの感触がすきなのだ。温かくて、いい匂いで、昔に比べたらだいぶ短くなって、ふわり揺れる茶色の猫っ毛。時々見える私があげたネックレスに、思わず笑みが零れる。


392 :わたしのすきなもの :2012/02/25(土) 19:42

「なん、笑ってんの?」
「んー・・・・・・ここの場所がお気に入りだから」
「なんや、猫みたいやん・・・」
「だって心地いいもん・・・」

もう一度甘えるようにして擦り寄ると、今度は私の背中に回ってきた彼女の手。抱きしめられる感覚を眼を瞑って味わっていたら、再び動き出した空気。気づいたら背中にはソファーの柔らかな感触がして。眼を開けるとそこには、真面目な顔したあいちゃんがいた。

どうやら私は彼女に押し倒されたらしい。


393 :わたしのすきなもの :2012/02/25(土) 19:43

「なぁ、りさちゃん・・・・」
「なぁに?」
「・・・・ちゅーしていい?」

何で今更そんなこと聞くのか。さっきだって黙ってキスしたし。今の体勢だって、キスだけじゃなくてそれ以上のこと考えてるくせに。それなのにいちいち聞いてくる彼女が愛しくて、返事の代わりに髪の中からちらりと見える耳をそのラインにそって指でなぞる。その動きが耳から顎にたどり着いたとき、あいちゃんは顔を近づけてきた。

鼻の先が触れ合うくらいに近づいて、あいちゃんの睫が震えるのをじっと見る。

「りさちゃん・・・」
「んー・・・・?」
「目ぇつぶってや・・・・」
「やだ」
―― だって好きなんだもん。ここからの眺めが。

組み敷かれているのは私だけれど。形勢不利なのはどう考えたって私だけれど。でも。好きなんだ、この体勢から見るあいちゃんが。間近で見るあいちゃんが。

綺麗な鼻、赤く艶やかな唇、シャープな顎のライン、大きな瞳。それにきらりと光り、首下でやらしく揺れる細いネックレスも。何よりその瞬間しか見れない、余裕がない表情が好きなのだ。


394 :わたしのすきなもの :2012/02/25(土) 19:44

外で見る彼女はいつだってかっこよかった。綺麗だし、可愛かった。でも、今私を組み敷く彼女のは表情は、そんな普段の姿からは想像できないくらいに余裕がない。私が欲しくて仕方ないのだろう、眼の奥には濃い、強い炎の揺らめきが見える。こんな表情は、こんな時にしか見えない。そして私しか見る事が出来ない。その事実を思いながら思わず口元が緩む。

「なんで笑うんよ・・・・」
「笑ってないって・・・・」
「いじわる・・・・」

途端眼には暗闇が訪れ、目元に感じた柔らかな手。彼女の手で目元を押されたと理解したときには口元に温かさを感じた。

眼を瞑り、そこに見えた残像は、やはり大好きなあいちゃんの、切なげな顔だった。







おわり





395 :名無飼育さん :2012/03/04(日) 23:10

更新します
396 :名無飼育さん :2012/03/04(日) 23:12

「ありさ」
397 :ありさ :2012/03/04(日) 23:13

それはあまりに突然で、どうしたらいいのかも分からず、あたしは思わずうぉっと、アイドルらしからぬ声をあげることしか出来なかった。


********



398 :ありさ :2012/03/04(日) 23:14

―― えええっ・・・・ちょっ・・・・なに??????

何故なのか、本当に何故だか分からないけれど、朝起きたら部屋に赤ん坊がいた。正確に言うと、その赤ん坊の泣き声で眼が覚めたというのが実際なのだが。

「うぎゃー! ぎゃー!」
「えっ?なに?」
「ぎゃー ぎゃー」
「え、なになになに・・・・」

あわててベッドを飛び出し、その声がする方へ向う。ご丁寧に可愛らしい籐のゆりかごに入っているその声の主を覗き込むと、そこには間違いなく赤ん坊がいる。人形でも、動物でもなんでもない。正真正銘の赤ん坊。


399 :ありさ :2012/03/04(日) 23:15

「うわっ、なんでなんでなんで??」

意味が分からない。一体どこから来たのか。何故うちにいるのか。大体誰の子なのか。ていうか泣き止ますためにはどうしたらいい?とりあえずあやす?

「いないいないばぁー!べろべろ~~」
「うぎゃー!」
「えぇ?どうしたらいいんよー いないいないばぁー」

あたしのいないいないばぁよりも、きっと必死になってただろうその表情のほうが面白かったのか、その赤ん坊は笑ってくれた。

「えぇ?あんた、どこからきたんよ?」
「うー・・・・」
「いつ来たん?」
「うきゃー」


400 :ありさ :2012/03/04(日) 23:16

赤ん坊に夢中になっていたからすっかり忘れていたけれど、そういえば今日はオフだった。これまた好都合なことで。でもこの子を一体どうすればいいのか。警察に通報する?いやでも起きたら赤ん坊がいました、なんて通用するわけない。誘拐犯に間違われて連行されるのがオチだ。とりあえずミルクあげないとだめなんかな?おむつとかどうする?ていうかお母さんにでも連絡しようか・・・・・

必死で起きたばかりの頭をフル回転させながら、もう一度揺りかごのなかの赤ん坊を見ると、その子が着る可愛らしい動物柄のつなぎの腕の部分にアルファベットの刺繍が見えた。

「・・・・ア・・・・リ・・・サ・・・・あんた、ありさって言うん?」
―― あーりーさ!

声に反応したありさちゃんは、にんまり笑って腕をばたばた動かした。思わず釣られてあたしもにっこりしてしまう。そういえば、前に見た里沙ちゃんの赤ちゃんの時の写真に、なんとなく似てるなと思った。

そう思った瞬間、不思議と気持ちが穏やかになり、女性の本能なのだろうか、その子を抱いてみたくなった。


401 :ありさ :2012/03/04(日) 23:17

「ありさ、ちょっと抱っこしようか?」
―― よいしょ・・・・・

慣れない手つきでまた泣いてしまいやしないかと、一瞬怖くなる。それでもありさは泣かなかった。それどころか、きゃっきゃ言いながら腕を振り上げてるじゃないか。

「んー、どうしようかなぁ。ありさ、あんた本当どっから来たの?ママはどうしたの?」

聞いたって答えが返ってくるわけないのに、ついつい話しかける。そうやって抱き上げながらゆらゆらあやしていると、不思議と愛しさがこみ上げてくるもので。あたしはそのぷにぷになほっぺにちゅーしたいなぁと思った。

「とりあえずテレビでもつけるか・・・・」

柔らかな陽射しを感じながらテレビのリモコンに手を伸ばす。スイッチを押し、ありさちゃんを抱いたままソファーに掛けると、いつの間にかありさちゃんはあたしの腕の中ですやすやと眠り込んでいた。


402 :ありさ :2012/03/04(日) 23:17

「可愛いなぁ・・・・・」

そんなこと思ってる場合じゃないのに、思わずぽつりとこぼす。どうにかしないといけないのに、なんだろうこの気持ちは。愛しくて、可愛くて。ぼんやりその寝姿を見ていたら、テレビの中のキャスターの声がだんだん遠くなって、いつしかあたしは瞼を閉じていた。



*********



「ふわぁ・・・・・・あ、ありさ?!」

いつの間にか眠っていたらしい。気づいたらあたしはベッドにいるのだけれど、ありさはどうしたのか?重たい瞼をゆっくりと開けて、何度か瞬きをすると眼の前にはありさ。じゃなくて里沙ちゃんの顔があった。


403 :ありさ :2012/03/04(日) 23:18

―― ん・・・・?

回らない頭が、瞬きを繰り返すうちに回転し始めて、そういえばと思いなおす。

そうだった。昨日はりさちゃんが遊びにきて、一緒にベッドに入ったんだった。そうか。あの、赤ちゃんは。ありさちゃんは、単なる夢だったのか。

「ふー・・・・・・・」
「ん・・・・・・あ・・・・・・おはよ・・・・・」
「あ、りさちゃん、起きた?」

ちょっとほっとして、思わず零れる溜息。あたしの大きな溜息にりさちゃんは目を覚ましたようで。眠たそうに眼をこする姿は、本当に幼くて、あたしは夢の中のありさちゃんをおぼろげながらも思い出していた。


404 :ありさ :2012/03/04(日) 23:18

あたしは上半身を少し起こして、やっぱりぷくぷくの、りさちゃんの頬にキスをした。

「あいちゃん・・・・・?」
「おはよ、りさちゃん」

あたしはにっこり笑ってそう言った。

何故だかちょっぴり泣きそうになりながら。







おわり






405 :名無飼育さん :2012/03/04(日) 23:19
特に意味はありません


406 :名無飼育さん :2012/03/09(金) 10:01
ありさちゃんは何だったんだろ?
407 :名無飼育さん :2012/03/23(金) 01:08

更新します
408 :名無飼育さん :2012/03/23(金) 01:08

「medicine」
409 :medicine :2012/03/23(金) 01:09

“大丈夫?”
そう声を掛けられ、行く先は。間違いなく。





410 :medicine :2012/03/23(金) 01:10

*********


411 :medicine :2012/03/23(金) 01:10

「来ちゃった」

いくら私と愛ちゃんとの間柄だって、愛ちゃんのおうちにお邪魔するときは電話か、せめてメールくらいはしていたのだけれど、今日は黙ってやってきた。

「どうしたん?」
「どうしても」

不思議そうに問いかける彼女に向って返す言葉はそれだけ。困惑した表情が視界の隅に、かすかに入る。家主の代わりに茶色のちっこいやつが先に歓迎してくれて、私の足元で尻尾を振っている。家主と同じようにくりくりの眼で見つめながら。

「ただいま、おーじ」
「なぁ・・・・・?」
「だめだった?」
「そうじゃないけど・・・・」
ちょっとびっくりしただけ――

そう言って彼女は、まだブーツに片方の足をつっこんだままのあたしの手を引っ張った。それに吊られて顔を上げる。

「ごめんね、驚かせて」
「いや、なんかあったん?」
「なんにも無いよ」
ただ会いたかっただけ――

そう言ってふんわり笑うと、さっきまでの困惑した表情は嘘のように崩れて、いつもの柔らかな愛ちゃんのそれになっていた。



412 :medicine :2012/03/23(金) 01:11

***********



413 :medicine :2012/03/23(金) 01:11

「はい」
「ありがと」

ふかふかのソファーに隣どうし掛けて、温かなココアを飲む。お風呂上り、熱をを逃すまいと温まった体を寄せ合いながら。まだ生乾きの髪に、彼女がそっと触れる。

「髪、美容院いったの?」
「ちょっと暗くした」
「似合ってる」
「撮影だからさ・・・・」
「写真集か」
「うん、だからネイルも」
ほら――

カップをもっていない方の手をかざす。

「可愛い、なんか飴みたい」
「ね、お気に入りなんだ」
「明後日?沖縄」
「午前中には飛行機乗るよ」
「晴れるとええな」
「大丈夫だよ、誰かさん、いないし」

いつものようにからかうと、いつものように膨れっ面をして、いたずらっ子の眼になる彼女。そのほっぺたを突きながら「お土産なにがいい?」と聞く。

「んー、ラー油!と、あとはハイチュー!限定の」
「分かった、買ってくる」

その嬉しそうな顔は子供みたいで、純粋に可愛いなぁと思った。




414 :medicine :2012/03/23(金) 01:12

「寝よか」

そう言って先に立ち上がった彼女は、私の手を引っ張る。それに甘えるようにして、私は立ち上がった。そしてそのまま手を繋ぎながら向う寝室。彼女の好みの雑貨たちは、彼女の服のようにセンスがいい。それらが沢山並べてあるのだけれど、なんとなく統一されたようになっているのは、やはり彼女のセンスに因る所だと思う。

私が来るようになって、いつの間にか枕が増え、いつの間にかベッドも少し大きくなっていた。最初はお客様だった私だけれど、彼女の隣に眠ることが私にとっても、あいちゃんにとっても、ごく当たり前のことになった。そうなって、どれくらい経ったかも忘れてしまったけれど。

一人で眠るには少し大きいベッドの横たわり、ふんわりと布団をかける。いつもならばすぐにうつ伏せになって眼を瞑るけれど、今日はヘッドライトの僅かな光の下、彼女のほうへ顔を向けたまま、少し眺めていた。

“きれいだな”

心の中でそう思った時には、既に腕が伸びていて。少し伸びてきた彼女の髪をさらりと撫でる。その気配に、閉じられていた彼女の瞼は開いた。



415 :medicine :2012/03/23(金) 01:13

お互いに言葉は発さない。
それでも伝わる何か。

彼女の髪を撫でていた手をとられ、頬ずりをされた。嗚呼、なんて幸福な時間なんだろう。見詰め合ったまま、たがいに微笑み合いながら、思うことは一緒だけれど。

このまままどろんで眠ってしまっても、それはそれで幸せ時間だとは思う。それでも、その静寂を破ったのは彼女だった。

「・・・・あしたは?」
「ごごからだよ」

頬ずりしていた私の手にそっとキスをした彼女。その感触は酷く甘く、そして幸せだ。上半身を起こした彼女は、鼻先が付く位の距離まで顔を近づけ、先ほどキスをしたほうの手を絡ませ、そして私に問うた。

「ねぇ、なんで今日来たの?」
「顔色悪いって言われたから」
「・・・え?」
「撮影前なのに顔色悪いなんてよくないじゃん」
「りさちゃんも言うな」

眼を細めてそう言った彼女は、その言葉を最後に、言葉ではなく柔らかな熱を私の唇に寄せた。



416 :medicine :2012/03/23(金) 01:13

分かっていた。その顔色の悪さの原因は。

―― 触れて。キスして。撫でて。舐めて。抱きしめて。そして息を感じて。

分かっていた。その顔色の悪さを治す一番の治療法は。

―― ギュッとして、キュンとなって、はぁっとなって、深く深く満たされて。

しばらく切らしていた“あいちゃん”をしっかり補充すれば、治す事が出来るのだ。この顔色の悪さは。



417 :medicine :2012/03/23(金) 01:13

*********




418 :medicine :2012/03/23(金) 01:14

「大丈夫そうだね、よかった!」

数日前に私に“大丈夫?”と言ったスタッフさんは、私の顔を見て安心したようだった。

「はい、ありがとうございます。ご心配おかけしました」

人一倍元気に私は返事をした。

ちなみに。
あの時頂いたドリンク剤も、今話題の酵素ジュースも、実は一口も手を付けてなかったりする。

―― 元気の素は唯一つ。薬でもなんでもなく。あいちゃん。




おわり


419 :名無飼育さん :2012/03/23(金) 01:15

406 さん
思いつきで書いたため、作者もよく分かっておりませんw
420 :名無飼育さん :2012/03/25(日) 23:30

421 :名無飼育さん :2012/03/25(日) 23:31

更新します。

「スイッチ」
422 :スイッチ :2012/03/25(日) 23:32

スイッチは、ここに、ある。


*******


お風呂上り、お互いにドライヤーを掛け合って髪を乾かす。テレビに映る、なんとか芸人を横目に見ながら、りさちゃんのさらさらの髪をとかす。

「できた」
「ありがと・・・・」

あたしとりさちゃんの身長差はほとんどない。たまに上から見る彼女の髪はいつだかのシャンプーのCMみたいに、天使の輪が見えるくらいに艶やかだ。幾度も髪を染めたりはしているけれど、その分きちんとお手入れもされていて、まるで子供みたいに綺麗な髪だと思った。


423 :スイッチ :2012/03/25(日) 23:32

「りさちゃんの髪って本当に綺麗やな・・・」
「そう?美容室でトリートメントしてるからかなぁ」

上から見える小さなつむじが妙に愛しくて、彼女の頭を抱えるようにして後ろから抱きついた。小さな頭にすりよって、さっきよりも近くなった甘いシャンプーの香りをすんと吸い込んだ。

「あいちゃん、おもーい」
「んー」
「んーじゃない、離れろー」
「やだぁ・・・」
―― もう、子供なんだからなぁ・・・・

そうやって聞こえてきた声は、言葉の意味とはまるで違って、あたしをとことん甘やかす声。

「ねぇ。あいちゃんも座ったら?」

本当はもう少しこうしていたかったけれど、立ったままのあたしを気にする彼女の言葉に、ソファーに腰掛けることにした。


424 :スイッチ :2012/03/25(日) 23:33

「そだ」

ちょっとした思い付きで。

「なぁ、ここに来て?」

ソファーに腰掛け、あたしは自分の膝を叩きながら隣のりさちゃんに向ってそう声を掛けた。

「なによ、座って欲しいの?」
「うん、はよー!」
「しょーがないなぁー」

そう言って笑う彼女はどこまでも優しい。りさちゃんは、あたしの言う通りにあたしの膝の上にちょこんと座った。

膝の上の彼女に後ろから抱きつく。小さな彼女の背中は、女性であるあたしの腕の中にすっぽりと収まった。いい匂い。温かい。そして何より愛しい。茶色のちっこいのを抱くのも、柔らかなクッションを抱くのも良いけれど、それでもやっぱり大好きなりさちゃんを抱きしめてるのが一番ほっこりするなぁと、ぼんやり思った。


425 :スイッチ :2012/03/25(日) 23:33

「ねぇ、あいちゃん?」
「んー?」
「テレビ、変えていい?」
「ええよ」

そんなに見てないし、彼女の体温が感じられればなんでもいい。テレビに視線を送ったままの彼女を抱きながら、なんとなく揺れてみる。子供をあやすお母さんみたいだ。もしかしたら、楽屋では甘えんぼの後輩たちが彼女の膝に座ってるのかも知れない。ちょっと考えて、ちょっと嫉妬しそうな自分に苦笑したりして。

「なぁ、りさちゃん」
「んー?」
「9期とかさぁ、10期てさぁ、楽屋だとどんなん?」
「そうねぇ、うるっさいよー!前とは比べ物にならないくらい」
「前も賑やかだったけどなぁ」
「なんか動物園みたいだよ?まーなんか膝の上乗ってくるしさ」

くすくす笑う彼女はとっても楽しそうだった。そしてとても優しい表情をしている。その場にいることが出来ないのは少し寂しいけれど、まさか後輩たちの前でこんなあたしたちを見せるわけにもいかないし。

「なぁ・・・・・うえっ・・・・?」

次の言葉を発しようとした瞬間、突然の感覚に思わず声が出た。


426 :スイッチ :2012/03/25(日) 23:34

「どしたの、あいちゃん?」
「え、なんか、今、えと・・・・・」
「へんなの・・・・」

もう一度。その感覚はやってきて。

「うあっ・・・・・」
「なに?」
「手・・・・」
「て?」

後ろから抱きしめるあたしの手を、彼女が触れたのだ。そう、ただ触れただけなのだけれど、やってくるあの感覚。

あたしの手の甲をするりと撫でるだけなのに、どうしてこうも息が詰まるのか。なんでこんなに心臓が煩いのか。どうしてぞくりとするのか。

「・・・・あいちゃん、なんかどきどきしてる?」
「うあ、いや、えと・・・・・」
「背中から伝わってくるよ・・・・」

あたしに背を向けたまま、どこか楽しそうに彼女は言って、もう一度するりとあたしの手甲を撫でた。
その感触に、あたしは思わずびくりと身体を揺らしてしまった。


427 :スイッチ :2012/03/25(日) 23:35

「弱かったっけ、そんなに」
「いや、ん・・・・」

次に手の甲に感じたのは、柔らかくて温かくて優しいもの。頭でそれを彼女の口付けと理解したときには、思わず抱きしめる腕を強めていた。

さらに引っ張られる感覚。そして指先に落とされた口付け。「う・・・・」と声にならない声が喉の奥から出てしまった。

「あいちゃん、放してくれる?」

一度あたしの腕から放れた彼女はくるり振り返って、今度は顔を合わせるようにして再びあたしの膝の上に跨った。


428 :スイッチ :2012/03/25(日) 23:36

「りさちゃ・・・・」
「あいちゃん・・・・」

もう一度手をとられ、手の甲に感じたのは温かくぬるりとした感触。そして次々にやってくる彼女の“口撃”

「りさちゃ・・・・・」
「んー・・・・・?」
「も、ちょ・・・・」
「んー・・・・」

りさちゃんは上目使いであたしを見つめながら、あたしの手を隅々まで舐め始めた。手の甲から動く舌は、指と指の間から指先まで自在に動く。いつもの彼女と思えない行動と表情に、もう色々と限界だった。

「きもちいーい?」
「りさちゃ・・・・どーして?」
「ねぇ、きもちいー?」
「・・・・・う・・・・」
「ねぇ、返事しないともっとするよ?」
「りさちゃ、・・・・どーして?」
「・・・・あいちゃん、さっき妬いてたでしょ」
「え?」
「子供たちに。妬いてたでしょ」
ばかだなぁ・・・・

くすくすと笑われて、恥ずかしくて気持ちよくて心臓が痛くて。何がなんだか分からないけれど顔が真っ赤なんだろうとは自分でも思った。


429 :スイッチ :2012/03/25(日) 23:36

「こんな風にするのあいちゃんだけなんだからね」
「うん」
「妬いてる暇あったらさ」
「うん・・・」
「抱きつくだけじゃなくて、ちゅーして」

そう言って彼女はあたしの顔を手で包み込む。近づく顔をぎりぎりまで見つめながら、視界の隅に入る珍しくネイルが施されていない彼女の指先に気づいて。もしかしたらこの後に起こるかもしれない出来事に思いはせながら、あたしはますます顔を赤らめた。






おわり


430 :名無飼育さん :2012/03/25(日) 23:37

あいちゃんのスイッチがりさちゃんのスイッチ。そんなだといいなぁと思ったり思わなかったり。

431 :作者 :2012/04/07(土) 20:58
更新します
432 :名無飼育さん :2012/04/07(土) 20:59

「決意」
433 :決意 :2012/04/07(土) 21:00

貴女がいなくても、きっと私は生きていける。

でも、そんな人生なら。私はいらない。


434 :決意 :2012/04/07(土) 21:00

*******


435 :決意 :2012/04/07(土) 21:01

もう何度も足を運んで馴染みになったカフェの、やっぱり馴染んだ席に着く。

お店に入って笑顔と元気な挨拶で出迎えてくれる店員さん。
店内に響く、お客様からのオーダーを復唱する店員さんの声を背中に感じながら、比較的段差の緩い螺旋階段を上って。

一番奥から二番目の、アンティークのスクエアテーブルに着いてオーダー表を眺める。

“今月のおススメ”の文字に眼が行くけれど、案外冒険することをしない私と愛ちゃんは、
いつもと同じカフェラテと、まるで宝箱みたいにフルーツが沢山載ったタルトを注文した。


436 :決意 :2012/04/07(土) 21:03

「今日もいっぱい買ったなー」
「ほんっと、愛ちゃんって止めなきゃ永遠買いそうな勢いだよね・・・」
「だって、お洋服見てるの楽しいやん?ついつい欲しくなっちゃうんだもん」
「あとでおうちで見返さないと」
「同じのあったりして」

そう言って、眼を細めて笑う愛ちゃんの顔はとっても幼く見えた。

“おまたせしました”

大きなカフェオレボール2つと、タルトが1つ。
沢山のフルーツで彩られたタルト。
上に掛かったシロップが太陽の光でキラキラしてて、綺麗だった。
ランチの後2時間ほどの今、二人で半分こが調度いい。
ちょっとずつナイフで切り分けながらつついていく。


437 :決意 :2012/04/07(土) 21:04

「咲いたね」
「ん?」
「さくら」

彼女と同じ方に顔を向けると、大きな桜の木があった。

「今日はこんなに綺麗なのにさ、きっと明後日くらいにはさ、散っちゃうんだよ?」
「そだね、なんかね、寂しい気もするな」
「でもさ、その代わり若い芽が出て来るんだよなぁ・・・・・」
「うん・・・・」
「なんかさ、不思議じゃない?」
「なにが?桜?」
「こんなに大きく花咲かせてさ、でも風とか雨で一気に散っちゃって、でもその後にはまた緑の沢山の葉っぱが出て来るんやよ」
「うん」

窓の外に見える桜から視線を彼女に移すと、ほとんど同じタイミングで向きなおした彼女。

「なんかさ、“モーニング”みたい」

ぽつりと言った彼女は丸く大きな瞳のまま、真っ直ぐに私を見てそう言った。
その顔は歳相応の、素敵な女性の表情だった。


438 :決意 :2012/04/07(土) 21:05

彼女は時々突拍子も無いことを言ってのけた。
あれはもう7〜8年は前だろうか。まだ私も彼女も10代で、テレビの収録だけれどいつものようにお喋りをしていた私たち。
「足りない!」とお金をせがみにきたと思えば、口を開いたら今度は「聖徳太子になりたい」とまで言った。

あの当時はそれなりに長い付き合いだなぁ、と思っていたけれど、今思えばまだまだ僅かな時間で。
今となったらその突拍子もない発言のその向こうに、彼女が本当に言いたいことなんて言葉にしなくたって分かってしまうのだ。

多分、私が好きなのは、彼女のそういうところで。


439 :決意 :2012/04/07(土) 21:06

「あいちゃん、ここについてる」

私は自分の口の右端を指しながら、彼女に言った。あいちゃんは、えへへと照れ笑いしながらそれを拭った。

「明日さ、お仕事夕方からなんだけどさ」
「え、来れないの?」
「いや、そうじゃなくて、行くねってこと」
「よかった・・・・」
「なんで?」
「ここで言ってもええの?」
「・・・・・ばーか・・・・」

にやにやするその顔の、綺麗なおでこにデコピンをしてやった。


440 :決意 :2012/04/07(土) 21:06

*********

441 :決意 :2012/04/07(土) 21:07

夜、ベッドの中で愛ちゃんに翻弄されながら感じる幸福。
潤む視界の向こうに見えるのは、幸せそうに微笑む彼女の顔と、少し伸びてきた髪の毛。
耳元で囁かれる「だいすき」は今日何回目だろうか。

“私もすきだよ”

思っているけれど、言葉にならない。思わず伸ばした手は絡めとられて、無防備なまま彼女の熱と吐息と唇と舌を甘受する。きちんと言葉で返すことは出来ないけれど、二人一緒に上がっていく呼吸と鼓動で気持ちが重なっているのを感じて。

あいちゃんと居れて、幸せだなと思った。


442 :決意 :2012/04/07(土) 21:07

*******


443 :決意 :2012/04/07(土) 21:09

呼吸が落ち着きを取り戻し、お互いに向き合う。自然と彼女の前髪に手が伸びた。

「伸びたね」
「切ろっかなぁ。りさちゃん、どう思う?」
「どっちも似合うよ、きっと」
「そっかぁー・・・・」

あいちゃんはニヤニヤしながら、私の首元に擦り寄ってきた。
猫みたいなその行動がなんだか愛しくて、髪を優しく梳いてやる。そういえばおーじは元気かしら。

「りさちゃん、ねむーい」
「寝て良いよ」
「うん・・・・・」
「あのさ、明日さ、また来てもいい?」
「なに、そんなによかったか!りさちゃん、えっちやな」

からかう彼女の声が、直接肌に触れて体に響く。

「ちょっと、そう言うんじゃなくてさ」
「じゃ、ヤだった?」
「いや、違うって」
―― 明日もそばに居たいなって

顔が見えないのを良いことに、いつも言えないことを言ってみた。
甘いシャンプーと、あいちゃんの香りを感じながら猫みたいな柔らかな髪の毛に落とす口づけ。
髪の間から見える愛ちゃんの耳は、ゆっくり赤く色づいて。そしてあいちゃんは「ぐふふ」と笑った。


444 :決意 :2012/04/07(土) 21:09

*******


445 :決意 :2012/04/07(土) 21:10

たぶん。いやきっと。間違いなく。
私は貴女が居なくても、生きていける。

でも。
貴女は素敵な女性なのに時々子どもみたいで、時にえろおやじで、
時々言葉が足りなくて、でも心は真っ直ぐで。
私の心と身体を幸福で満たしてくれるから。

たぶん。きっと。いや間違いなく。私は貴女と一緒に居ます。
ずっとずっと。おばあちゃんになる、その日まで。










おわり




446 :  :2012/08/05(日) 00:36
久しぶりに登場。
高橋さんと新垣さんが大人になってからおつきあい始めた、そんな設定です
447 :  :2012/08/05(日) 00:39

color

448 :color :2012/08/05(日) 00:40

こんなにあたしが欲しがりだとは思いもしなかった。
これは、間違いなく。彼女の、せい。


449 :color :2012/08/05(日) 00:41

りさちゃんと想いを交わして数週間。

メールの内容も、かかってくる電話の中身も。以前と変わったことはないけれど、
どこか違った温度を持つようになった。

絶妙な間合い、声の質、そしてトーン。
きっとあたしにしか見せないだろうその色に、密かに満たされる毎日。そ
れは二人の新たな関係から生まれたもので、大切な大切な宝物みたいな色だと思う。

その新しく生まれた幸せに満たされながらも、さらに出てくる欲求。あって然り。

だって好きだもん。りさちゃんが、好き。

でも、どうしたらいいのか分からなかった。

りさちゃんに触れたくて。りさちゃんを抱きしめたくて。
キスは交わしているけれど、その肌に頬を摺り寄せることはまだなかった。
もっともっと、りさちゃんの、薄いけれどきっと柔らかなカラダに触れたかった。


450 :color :2012/08/05(日) 00:42

気づけば、りさちゃんと想いを交わして数週間になる。

そして今宵、お泊りは3回目だ。
二人で作った夕飯を食べ、各々お風呂に入り、少しだけテレビを見た。
「寝よっか」そう声をかけてちょっと狭いけれど一緒にベッドに入った。

隣に横たわる彼女の華奢なカラダ。きっとリラックスしているのだろう。
心地よいゆったりとしたテンポで呼吸し、その肩が上下している。
パジャマ代わりのTシャツは少し大きめで、それが返って彼女の華奢なカラダのラインを目立たせているように思えた。


451 :color :2012/08/05(日) 00:43

ベッドに入って15分。
いつものあたしならとっくに眠りの世界に落ちている頃。それでも今夜はなぜだか眠れそうにもなかった。

大好きな彼女が隣にいるから。触れたい欲求があるから。

せめて彼女の温度を感じたい。
あたしは彼女の項に顔をうずめ、背中からおなかへ腕を伸ばし抱き寄せた。途端鼻をくすぐる彼女の香り。
甘くて、胸がきゅーとなる、優しい香り。

一緒のボディーソープを使ったはずだ。あたしと同じ香りがしそうなものなのに、でもどこか違う香りで、
あたしはそれを酷く気に入っている。

きっとりさちゃんのカラダから薫るものとが混ざっているのだろう。
それを思うと自然と顔が綻んで、思わず、すん、と吸い込んだ。



452 :color :2012/08/05(日) 00:44

「あいちゃん…?」
「…あ、ごめ、起こした?」
「んーん。なんかね、眠れないの」

りさちゃんはあたしの腕を振りほどくわけでもなく、
そっとあたしの手を触れてくれた。
背中越しにぽそりぽそりと続く会話。

「あいちゃんも寝れないの?珍しいね」
「うーん、なんだかなぁ」
「でも明日ゆっくりなんでしょ?」
「だから、ま、いいかと思って」
「…あいちゃんの手、やっぱ大きいね」

そして触れていただけの手を、しっかりと指を絡ませ握ってくれて。

「そ?」
「メンバーとかほかの女の子とかさ、もっとちっちゃいもん」
「いや?」
「んーん。すき」

すると、握られた右手が持ち上がる感覚。そしてその甲に触れる柔らかな感触。
ちゅ、と音がして、それが彼女がくれたキスだったと気づく。




453 :color :2012/08/05(日) 00:44

「なんか守ってもらえてる感じがして、すき」
「ん…」

握られていた右手で、彼女のカラダを引き寄せる。

「…あいちゃん?」
「すき。すっごい好き。」

彼女のカラダに響くように囁いて。
すると里沙ちゃんはあたしの腕を撫でたかと思うと、
それまで向けていた背をくるりと翻した。
暗がりの中、ぼんやり浮かぶ彼女の瞳。大きくゆっくり瞬きをして、
あたしと眼があった。


454 :color :2012/08/05(日) 00:45

「・・・・」
「・・・・」

窓の外はとっても静かで、聴こえるのはお互いの呼吸と自分の鼓動だけ。
彼女の前髪を右手で一束さらりと流してやった。
くすぐったそうにする里沙ちゃんの表情が可愛くて、思わず笑顔になった。
あたしの笑顔につられるように、里沙ちゃんも優しく微笑んでくれた。

嗚呼、こんな無邪気な子をあたしは触れてもいいのか。
でも里沙ちゃんだっていい歳だ。きっとそういう経験もしてる。
きっとあたしが求めても許してくれるはずだ。

でも。それでも彼女の本心は分からない。

「りさちゃん…」

想いが毀れるように、思わず彼女の名前を呼んだ。

「なぁに」

嗚呼、この声は間違いなくあたしにだけに向けられる声。
でも足りないよ。もっと、もっと、聞かせてくれる?


455 :color :2012/08/05(日) 00:46

「・・・・」
「・・・・」

再び訪れた沈黙。思わず天を見上げて、ほ、と息を吐いた。里沙ちゃんはその小さな手であたしの手を握ってくれて、あたしは思わずごくりとつばを飲み込んだ。もう一度見た彼女の目のなかには、何か彩が灯っていた。

再びお互いを見つめ、呼吸を合わせる。あたしはりさちゃんの頬に手を伸ばした。

あったかい…。彼女の想いと体温が溶け合った温度。もっと抱きしめてもいい?
この手で触れても、いい?


456 :color :2012/08/05(日) 00:48

「里沙・・・・」

あたしは彼女の名前を呼んで、おでことおでこが触れ合うまで顔を近づける。

「里沙…」
「…あい……っ」

彼女があたしの名前を呼び終える前に、唇を重ねた。
優しく触れて、啄んで。ちゅ、と音がするように上唇を食む。

向き合っていた身体を起こし、彼女を下に見ると潤んだ瞳と何か言いたげな顔がそこにあった。

「…いい?」
「……」

彼女はゆっくりと2度瞬きをして、「ん…」と優しく微笑んでくれた。



457 :color :2012/08/05(日) 00:48

こくり。
再び鳴る喉。りさちゃんは、あたしの喉に手を伸ばし、柔らかに触れた。

「んっ・・・・」

思わず漏れでた声に、彼女は嬉しそうに目を細めた。
喉からそのまま顎に触れ、唇を確かめるようになぞる。あたしが薄く口を開くと彼女はその細い指を口に入れるから、あたしは逆らわずに咥えてやった。

「…あっ……」
「んっ…」くちゅ…

自分で仕掛けてきたくせに、それに反応し赤くなる彼女。
誘ってくるのも、そんな風に赤く厭らしく潤む瞳を見るのは勿論初めてで、あたしは酷く興奮した。



458 :color :2012/08/05(日) 00:49

* * * * * * * *


459 :color :2012/08/05(日) 00:49

今夜こそ触れたい、そう思っていた。

彼女の唇と手の感触が柔らかで温かで、ただひたすらに恋しかった。
友達として触れていた時は気にしなかったその温度は、今や私の心と体を熱く、ゆっくりと灯していく。目の前にいて触れたくて、触れて欲しくて。だから今宵、私とおんなじ色の瞳を見て、彼女のものになりたいと本気で思った。

「里沙」

呼ばれた名前は私のもの。
いつもは「りさちゃん」なのに、今日彼女に紡がれた音が心と体に深く響く。柔らかに聴こえていたそれは、今夜違うものに聴こえて。私のものだけれど、もっともっと深いトコロに触れられた気がした。


460 :color :2012/08/05(日) 00:50

眼の前に迫る彼女の瞳。その奥に揺らぐ炎。
彼女は再び私の名を呼ぶと、「…いい?」と囁いた。

何を言おうとしているのか、理解するのは容易だった。
嗚呼、今夜。やっとやっと彼女のものになれるのか。心だけでなくて身体も。全部全部貴女の色に染め上げて?

聴こえるか聴こえないかくらいの声で私は返事をして、そっと彼女の喉に触れる。

「んっ・・・・」

聴いたことの無い甘い音に、私はぞくりと波打った。
嬉しくて思わず出る笑み。誘われるままに、彼女の唇に触れた。いつも私の唇に触れるその感触を、今日はもっともっと私に降らせてほしい。頬とかおでこだけじゃなくて。もっともっと全身に。


461 :color :2012/08/05(日) 00:50

そのまま彼女の口に運ばれて、指先を舐めとられる。

ぬるり。

温かくて厭らしくて甘いその感触。ただの指先なのに、体に色と熱を灯されてどくりと心臓が動きだした。

おでこ、瞼、鼻先、頬、唇。
顎、耳、首筋。鎖骨。
胸元、胸のてっぺん、おへそ、脇腹。

「…ん…ぁ…」

愛ちゃんは私にしるしをつけるように、全身に口づけてくれた。
そんなに私のカラダにスイッチがあったっけ?そう思う」くらいに体温が上がっていく。今までの誰よりも優しいキスに、全身が悦んでいる。自分でも驚くくらいに。


462 :color :2012/08/05(日) 00:51

やわやわと触れられるカラダは素直に反応し、次第に弛緩していく。
彼女の腕に抱かれ、自分でも恥ずかしさを忘れるくらいに声が出ていた。

「…あんっ…ひゃ…」
「…はぁ…里沙……すき」
「あぅ…あいちゃ・・・・」
「…里沙…愛してる…」

いままで聞いたことのない、愛ちゃんの声。今まで見たことの無い、彼女の余裕のない表情。
自分自身が余裕ないくせに、頭の片隅でそんなことを思っていた。

― キ  モ  チ  イ  イ

素直に言ったことなんて今までなかったけれど、今日、初めて言葉に出して。
それを聞き届けた彼女の顔が妙に厭らしかった。



463 :color :2012/08/05(日) 00:51

* * * * * *
464 :color :2012/08/05(日) 00:51

初めて抱いた彼女は、思っていた以上に厭らしかった。
「きもちいい…」と虚ろに言ってくれたのは嬉しかったけれど、それを身体に覚えさせた誰かがいたと思うだけで嫉妬でぐちゃぐちゃになりそうになる。

お願い。あたしの色に染まって。
今までのこと、無かったことにしてとは言わないよ?
でもね。今の貴女をあたし色にしたい。髪の先から足の爪まで全部全部。あたし色にしてあげる。

細いりさちゃんの脚を掴んで、脚と脚の間に身体を捻じ込ませる。
やわやわと太腿に触れながら、その中心に舌を這わせた。

「・・・・あぅっ・・・・」

掠れた声が頭上から聴こえる。彼女の手を取り、指を絡ませ、舌を動かし続けた。中心から絶え間なく溢れる蜜。舐めとりながら、飲み下しながら。優越感と、彼女への愛おしさと、それからむちゃくちゃにしたい、獣みたいな欲望がふつふつと湧き出て。


465 :color :2012/08/05(日) 00:52

蜜を吐き出しながら、あたしを誘うその中心。
一瞬その香りを深呼吸し、味わい、すぐに中指と薬指を宛がった。

「…んっ…やぁっ…は…」

― 里沙 りさ RISA risa

お願い。あたしの色に染まって。あたしだけを感じて。あたしでイって。

ただひたすらに指を動かした。

虚ろな彼女の瞳から、涙がこぼれる。うっすら開いた唇がヤラシイ。
もっともっと見せてほしい。夢中になって動かしていると、聞いたことの無いくらいにヤラシイ声で叫んで、指がぎゅっと締め付けられた。

「…りさ…」
「・・・・・・・・・・・・・・あい・・・・・ちゃ・・・・・」

ただ呼ばれた声で、あたしは濡れた。



466 :color :2012/08/05(日) 00:52

* * * * * *




467 :color :2012/08/05(日) 00:53

愛ちゃんに抱かれた。
キモチヨカッタ。
あいちゃんの肌は柔らかかった。あいちゃんのカラダは甘い、いい香りがした。あいちゃんは優しかった。

大きな手と、おいしそうな唇。それから声と吐息と体温で、私は一気に彼女に染め上げられた。

果てて、気づいたら眠ってしまっていたらしい私。
眼を開けたら、目の前には幼い彼女の顔があった。

「…すき…だよ…」

起こさないようにそっと囁き、柔らかな頬にキスをして。

だいすきな、あいする人に愛される悦びを噛みしめがらそっと頬撫でる。

「今度は、私がしてあげるからね」

柄にもなく、そんなことを囁いて。耳たぶにそっとする口づけ。
それから彼女の柔らかな胸にそっと顔を寄せて、私は眠った。

― どうか、どうか。今夜の出来事が夢でありませんように






468 :color :2012/08/05(日) 00:53

469 :color :2012/08/05(日) 00:53
おわり
470 : :2012/10/12(金) 23:15
471 :名無飼育さん :2012/10/12(金) 23:16
こんばんは。
久しぶりに更新します。
短いです。
472 :  :2012/10/12(金) 23:16
「photographer」


473 : photographer :2012/10/12(金) 23:17

「なぁ、こっち向いて」
「ふふ、やだ」

里沙ちゃんが写る写真集を昔のものから見返しながら、可愛いけれどちょっぴりもの足りない。
そんな風に思った。
あたしは写真を撮るのは好きだけれど、妹ほど上手くは撮れない。それでも、彼女だけはプロのカメラマンよりも上手く撮る自信がある。

―― パシャ

ふわり、回る彼女。
薄いブルーのスカートが、優しい日差しのなか煌びやかに動く。

足元の小さな花は、彼女と一緒に揺れた。



474 : photographer :2012/10/12(金) 23:18

「あー、今盗撮したでしょ」
「盗撮も何もないが」

こんな傍にいるんやし。
きっと、誰よりも近くにいるあたし。誰よりも素敵な写真を撮る自信があった。

「ねぇ、見せて?今の」
「はいよー」

彼女にデジカメの画像を見せる。大きな画面を一緒に覗いた。

「あ、これ好きだな」
「うん、可愛い」

コマ送りにしながら、彼女は彼女なりにお気に入りのものを見つけたらしい。
でも。でもね。


475 : photographer :2012/10/12(金) 23:18

あたしは正直あんまり気に入らなかったんだ。

だって、一番可愛く、綺麗に、素敵に、チャーミングに、儚く、美しく、たった一つだけの、世界に一つだけの、魅力的な彼女を写しているのは。

あたしの瞳。ただそれだけだったから。







FIN


476 :名無飼育さん :2012/10/16(火) 01:07
作者様の愛ガキは本当に愛ガキらしい温かさがにじみ出ていて大好きです。
二人とも卒業してしまいましたが、是非これからも書き続けてほしいです。
477 :  :2012/10/27(土) 21:17
476さん

ありがとうございます。
ゆっくり地味に、ぼちぼちと。これからも更新していきたいと思います
478 :  :2012/10/27(土) 21:18

某自サイトにて既出ですが。

「AM 6:47」
479 :AM 6:47 :2012/10/27(土) 21:19
隣で眠る貴女が起きないことをいいことに、私は私だけの大切な時間を満喫する。

耳や瞼にキスしてみたり。
「すきだよ」と囁いてみたり。
伸びてきた前髪を少しだけ割って、そこにハートを書いてみたり。
やっぱりその上に唇を寄せてみたり。

「・・・・ん・・・・」

寝返りを打って私に背中を見せた貴女。
今度は項に鼻を寄せて、シャンプーとそれから貴女の内に秘める何かみたいに、
酷く取りつかれそうになるような香りを嗅いでみたる。
そしてたまに、項に強く唇を押し付けたり。



480 :AM 6:47 :2012/10/27(土) 21:20

すべすべの肌は昔から。
そんな風に眺めたことは無かったけれど、時々そそっかしくて痣を作るくらいで、
それ以外には何一つ傷はない。

昨日のままで、何一つ纏わず眠ってしまった私たち。
むき出しになった腕に柔らかに触れる。



481 :AM 6:47 :2012/10/27(土) 21:21

そういえば、お仕事でハワイに行った時、貴女は私のわがままを嫌な顔一つせずに受け入れてくれたね。
あの時は貴女の存在ですっかり私は安心して、翌朝まで一度だって起きることはなかった。

今もそうだよ?
どんなに暑い日も、寒い日も。外が風で煩くても。

夢を見ることも少なくなって、瞼が開くと大概鳥の鳴き声と太陽の光が朝だと教えてくれる。

夜はいつも私が先に眠りに落ちてしまうから。朝は先に目覚めても貴女を起こしたりはしない。
私しか見ることができない、幼い寝顔を見つめるのが私の至福の時だったりする。



482 :AM 6:47 :2012/10/27(土) 21:22

どうして、あんなに表情が変わるのだろうか。

夜は別人のように強気なのに。

本当は分かってやってるんでしょ?私が貴女のその瞳に憑りつかれてしまっていること。「いい?」って確認は、本当のところ「いいよね」っていう命令だったりすること。
その命令は本当は私には強制力が無いことも、それでも私が望んで従っていることも。

全部全部わかってるんでしょ?
そんな子供みたいな寝顔してるくせにさ。

「・・・・ん・・・・・りさ・・・」

もう一度寝返りを打った貴女は、今度は私と向き合うようになった。

「ん?あいちゃん?」
「りさちゃ・・・・」

それだけ言って今度は貴女が私の首元にすり寄ってきた。

ぴったりパズルみたいにくっつく自分たちを心地よく思いながら。
私はもう一度瞳を閉じた。






終わり
483 :  :2012/10/31(水) 20:53

寒いですね。
皆様ご自愛ください。

更新します
484 :  :2012/10/31(水) 20:53

「いちごみるく」



485 :いちごみるく :2012/10/31(水) 20:55

【いちごみるくの作り方】

@ イチゴを2,3粒用意する
A イチゴに砂糖をかけ、ミルクをかける
B イチゴをつぶして、ピンクになれば出来上がり。



* * * * *


486 :いちごみるく :2012/10/31(水) 20:55

そんなレシピを iphoneの画面をスクロールしながら眺める。
可愛らしいピンクの飲み物。その写真にほっこりしながら。

子供の頃にママと一緒に作ったことを思い出し、そういえばしばらく食べてないなぁとぼんやり思う。

イチゴが好きなあたしは、イチゴミルクも大好きだ。
かき氷もいちごシロップを選ぶし、アイスクリームもいちごフレーバーを選ぶ。


487 :いちごみるく :2012/10/31(水) 20:56

もっていたイチゴ味の飴を口の中で転がしながら、ぼんやり思う。

「あぁ、いちごみるく食べたいなぁ」
「んー?今イチゴの季節じゃないよ?」
「そうなんやけど、ほら、子供の頃に食べたやろ?りさちゃんもさ」
「どうだったけな?」

ふと目線を下にやると、ティーテーブルには都合よくイチゴ飴に混ざって、ミルク味の飴もあった。

だったら。


488 :いちごみるく :2012/10/31(水) 20:56

「な、りさちゃん?」
「ん?あ、あめ?ありがとう」

あたしが手渡したミルク味の飴を、彼女はすんなり口に放り込む。
小さな顔の、ほんのりピンクに染まった頬がもんごり動くのを確認すると。

「な、りさちゃん?」
「ん?」

顔を近づけて、口をふさいでやった。


489 :いちごみるく :2012/10/31(水) 20:57

驚き、大きく瞳を開く彼女をしり目に、想いと香りと柔らかな感触を無理やり彼女の口へ捻じ込めば。

「・・・・っもう・・・・なんなのよっ、急に・・・」
「ん…いちごみるく」

味わいたかったイチゴミルクの味がした。





FIN


490 :名無飼育さん :2012/11/02(金) 01:09
ほほぅ!!!(*゚艸゚*)
491 :  :2012/11/04(日) 19:00

最近新垣さんが素敵で困ります。
さて更新です。

ちょっとディートリッヒの中身を使わせていただきました。ネタバレにはならないと思いますが。


492 :  :2012/11/04(日) 19:00

「くさり」


493 :くさり :2012/11/04(日) 19:01

「よっ…」
「…ちょっ……あいちゃん?」

―― ざぶっ

お風呂場に波立つみたいな大きな音が響き、大量のお湯がバスタブから溢れた。

「ちょっと、こぼれてるじゃん」
「いいやん、もうあたしもガキさんも入ってるんやし」

私がゆっくり一人でお湯に浸かっていたというのに、あいちゃんは当然のような顔をしてお風呂に入ってきた。
ずっと裸の彼女を見るのもアレだし、黙ってシャワーの音を聞きながら天井を見つめていたら、これまた当然のような顔をして私が浸かるバスタブに彼女は足を突っ込んできた。


494 :くさり :2012/11/04(日) 19:02

「ていうか、狭いでしょ」
「寄ってよ、そっちに」
「えぇ、じゃあたし出るね、逆上せるし」
「だめ」

何言ってるの。

私がのぼせる、と言ってるのは大げさなことでもない。
彼女と違ってあまり平熱が高くない私にとって、10分以上お湯に浸かっているのはあまりよろしくない。
彼女がお風呂に入ってきた時から私はバスタブの中にいたし、すでに15分は経っているはずだ。

「もう15分くらい経ってるしさ」
「でも、寒いやろ、今日は。さっきすんごい手ぇ、冷たかった」



495 :くさり :2012/11/04(日) 19:03

確かに。今夜は寒かった。

9月の終わりくらいまで、「秋服着たいのに」、と思うくらいに季節は進むことなく暑くて、誕生日を迎えるころになって急に寒くなった。
季節が2か月くらい進んだように思えた。

きっといつもならとっくにギブアップするころなのに、今夜は身体の心から冷え込んでしまったのだろう。
もう少し入っていても平気な気がした。

遊びにきた私の手に触れるなり、「はよ入り!」とお風呂へ促してくれた彼女。気遣ってくれたその気持ちに感謝して、
彼女の言うことをもう一度聞くことにした。


496 :くさり :2012/11/04(日) 19:04

「じゃ、もう少しだけ」
「うん」

家主に言われるがまま、もう一度バスタブに座り込む。
あいちゃんと二人、横並びになる。そして、さっきと同じように天井を見上げた。

「よっ…」
「…なに?」
「んー…」
「んーじゃない…」

素肌が触れ合うのは初めてではないけれど、いつもと違う空間でそれをされるのはちょっと妙な気分がした。
それでも、横から抱きつく彼女の腕を払うことはしなかった。


497 :くさり :2012/11/04(日) 19:05

「ヤキモチ、妬いちゃった」
「え、なにによ」

心当たり、はあるけれど、そんなこと今更だった。
分かっていて続いていることなのに。それに、お互い様なのに。

「トラヴィスおじさんと、パパ」
「ふふ…」
「ぎゅーって抱きしめられてさ、可愛い顔してたもん、マリアちゃん」
「観に来てくれてありがとうね」
「ね、マリアちゃん?」


498 :くさり :2012/11/04(日) 19:06

横から私を抱きしめる彼女の顔は私の肩に乗せられている。
“マリア”の声が身体に響く。舞台の上では呼ばれたことがないくらいに甘い声色で。

声のする方へ顔を振れば、当然ながら目の前には見慣れた顔がそこにあって。
綺麗な瞳と睫毛がおぼろげに揺れていた。

―― ちゅ…

お互いに吸い込まれるように、近づいて、唇を重ねた。

「ふふ、勝った。パパにもトラヴィスおじさんにも」
「なにそれ」
「よし、でよか」

―― ざばりっ…

先にバスタブから立ち上がった彼女の姿がとても綺麗で、思わず見とれた。


499 :くさり :2012/11/04(日) 19:06

* * * * *

500 :くさり :2012/11/04(日) 19:07

「新しい香水?」
「あ、それ。お誕生日に貰ったの」
「ガキさん私があげたの着てくれないの?」
「あ、あれおうちで着てるよ」

お風呂上り、部屋着に着替え、順番に髪を乾かすとさほど大きくもない一つのベッドに二人で潜る。

「あのさ、変なこと聞いていい?」
「ん?」
「このベッド、彼が眠ったことある?」
「んーん。無いけど。なんで?」
「いや、もしあったらなんか申し訳ないなぁと思って」

ゆっくりと顔だけ向けた彼女は、幼い顔して言った。

「ここはな、このベッドはガキさんだけ」
「そか」
「安心した?」
「別に不安なことはないけど」
「なにそれー、あたしは妬いてるのにぃ」
「でもトラヴィスおじさんでしょ?」
「んー。彼も、かな」


501 :くさり :2012/11/04(日) 19:08

温かかった毛布の中に、一瞬ひんやりとした空気が入ってくる。
電気を消してあんまりよく見えなかったけれど、気配で彼女が動いたのが分かった。

「りさちゃん」
「今日はしないよ」
「なんで?」
「明日会うから。彼に」

私の上に彼女は跨ってきて、何をしようとしているかなんてすぐに分かった。



502 :くさり :2012/11/04(日) 19:08

* * * * *


503 :くさり :2012/11/04(日) 19:10

初めて抱きしめ合い、肌を重ねたのは何年前だったろうか。
同じ境遇で同じ苦楽を味わいながら歩んできた、時間。ある時突然に、その関係は始まった。

地方のホテルで同じ部屋になった時、頬にキスをしてきた彼女。
動揺した私は真っ赤な顔と、潤んだ瞳で彼女を見つめ返した。

―りさちゃん…
―っ…

あの時、急に懐かしい呼び方で呼ばれ、輪をかけて動揺した私は言葉を失い、そして彼女に堕ちた。
好きな人、いたのにな。それでも、彼女の触れる手を許し、変な優越感をもった。


504 :くさり :2012/11/04(日) 19:11

私とあいちゃんの関係に、どんなふうに名前をつけたらいいのか分からなくて一度聞いたことがあった。やっぱり抱き合って、素肌のまま、同じベッドの中で。

「ねぇ、あいちゃん。あたしたちってさ」
「ともだち」
「え?」
「だって恋人やないやろ。ガキさん好きな人いるし。あたしも付き合ってる人いるし」
「でも」

『友達』で割り切るには、深すぎる。

「ともだち。ともだちなら失うことないし」

そう言われて、その時私は少し切ない気分になったのだった。


505 :くさり :2012/11/04(日) 19:11

* * * * *

506 :くさり :2012/11/04(日) 19:12

〜♪〜♪

「ん?」
「メール?」
「あ、うそ。彼明日出張だって・・・・」

相変わらずあいちゃんは私の脚に跨ったまま。私は枕元のiphoneに手を伸ばしその画面を見つめ、メールの内容に落胆した。

「んー、次いつ会えるんだろう…」

思わず投げそうになるiphone。気持ちを抑えてそっと元の場所に戻した。

「ねぇ、りさちゃん」
「………」

空いた手に絡まる、あいちゃんの手。そのまま近づく気配を、今度は何も言わずに受け入れた。


507 :くさり :2012/11/04(日) 19:12

* * * * *

508 :くさり :2012/11/04(日) 19:13

「ねぇ、あたしらってさ」
「ともだちじゃないの?」

背中の方から、いつだか私が尋ねたことを、今度は彼女が言った。

「うん、ともだちやけど」
「うん。失わなくていいって言ったよ、あいちゃん」
「うん。そうやけど」

彼女の鼻先が私の項にぴたりとくっつく。
そして後ろから回される腕。

「来世は夫婦でいよう」
「え?」
「たぶんまた、出会うから」
「ばか」

回される腕にそっと触れる。そして、そこにキスをした。


509 :くさり :2012/11/04(日) 19:13

やっぱり切ない気持ちになった。
私たちの微妙な名前のない関係を、彼女はともだちと言い切った。だからそれに従ったのに。

来世なんて、分かるわけないずっと先のこと言わないでよ。知ることもできないのに。でもそうやって、彼女とずっとつながっているんだろうか。絆と言えば響きは綺麗だけれども。

あいちゃんが望むように、私も望むように。

あいちゃんの言葉に、こみあげてくる滴。絶対にばれてはいけないから。それこそ二人の関係を壊してしまうから。私は眠くもないのに大きく欠伸をして、眼をこする。そして「おやすみ」と一言囁いて眼を閉じた。






FIN




510 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 12:54
切ないですね…
でも、好きです
511 : :2012/11/11(日) 22:13
510さん

ありがとうございます

さてさて上の二人とはだいぶ違うテイストです。
甘く仕上がってればいいのですが
512 :名無飼育さん :2012/11/11(日) 22:13

「そっとふれて」



513 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:14

―― ギッ…

シングルサイズのベッドに二人並んで座り、話し込む、23時41分。

会話が途切れた、その刹那に。寄り添い、左手の指先が里沙ちゃんの右のそれに触れる。
肩を寄せ顔が近づく。

もう何度目かのキスはやっぱり幸福で、もっと欲しくて再び顔を近づけた。


514 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:15

「んっ…」
「もう一回、いい?」
「ん…」

小さな顔を右手で包み、そっと閉じる瞼を見ながら顔を寄せる。
鼻先の小さなほくろがよく見えた。

唇に触れるのもいいけれど、そのほくろがこんなに近くで見れるのも恋人の特権だと気がついて、
嬉しくて思わず鼻先に唇を触れた。
くすぐったそうにする彼女。ゆっくり瞬きをして、困ったようにあたしを見つめてくるから「ごめん」とつぶやく。

あたしの謝罪にふるふると頭を振っている彼女は、ちょっぴり頬が赤くて、それが彼女の気持ちを表しているようで嬉しかった。

「今度こそ」
「………」

もう一度触れた唇は、柔らかくて甘くて。
うっすら開く彼女の上唇を食んだ。


515 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:16

触れるだけのキスはもう何度か重ねている。
初めての深いキスに頭のどこかがぼんやりかすみ始めた。

上唇と下唇。口内の柔らかですべやかな感触。そしてぬるりとした温かな温度。
感じれば感じるほど欲しくて、「おんなのこって、やわらかい」と頭の僅かな片隅で思った。

里沙ちゃんはやわらかい。温かい。いい匂い。
もっともっと触れたくて、そっとシャツの裾に手をいれた。


516 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:17

―― んあっ・・・・!!!

大きく彼女が動いた。
それでも触れたお腹。肌がすべすべできもちいい。
もう一度そっと触れる。壊れてしまわないように、そっと。

―― んっ・・・・!!

あまりに彼女の反応が大きいから、そしてそれに少しの怯えを感じ取ったから。『もしかして』と一つの考えが浮かぶ。
一度身体を離して問う。

「里沙ちゃ、もしかして初めて?」
「うん・・・・」
「でも、彼氏・・・・」
「いたけど、しなかった。できなかった」
「・・・こわい?」

しなかった、より『出来なかった』のならば、ただただ恐怖を与えるだけのような気がして、無理に進めることなんて出来るわけなかった。

彼女がその先に進みたくないならば、無理にいくつもりはない。


517 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:17

「怖くない…かな。あいちゃんなら」
「……」

ゆっくりと里沙ちゃんはあたしの背に腕を回す。
同じようにあたしも腕を回し、柔らかく大切に抱いた。

「だいじょうぶ?無理はせんで?」
「たぶん、大丈夫。だってあいちゃんはしないでしょ?あたしが怖くなるようなこと」
「やめとこか」
「んーん、そうじゃなくて」

里沙ちゃんは身体を離し、あたしの顔を両手で包みながら続けた。


518 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:19

「あいちゃんは、やさしいし、いつだって笑顔でしょ。だからきっと大丈夫」

そう微笑む彼女は美しかった。

「じゃあさ、あたしがする前に里沙ちゃんがして?」
「え?」
「里沙ちゃんがしてくれたこと、あたしがするから。そしたら何されるかわかるから怖くないやろ?」

里沙ちゃんは眼を伏せ、何かを取り込むように「うん」小さく囁いた。
あたしはそれを見届けて、彼女の手を自分の胸元にもってくる。

「どきどきしてるやろ?」
「…うん」
「あたしも緊張してるんやよ。ふふ…」
「あいちゃ…」
「里沙ちゃん、シャツ脱がしてくれる?」

彼女の小さな手をそっとボタンの上にずらすと、里沙ちゃんは両手であたしが着る黒のシャツのボタンを一つひとつ外していく。
黒い生地に小さな里沙ちゃんの白い手。暗がりでもないのに、やけに目立つ。


519 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:19

最後の一つを外し、胸元が完全に肌蹴ると、彼女の手によってシャツがゆっくりとベッドへ落とされる。

「いい?」

一声かけて今度はあたしが彼女のカットソーの裾を掴むと、「まって」と咎める声。
「電気、明るいのやだ…」その声に従い、電気のリモコンに手を伸ばし、照明のトーンを落とした。

彼女の服に手をかけ、脱がす。
白い身体が浮かぶ。淡い黄色の下着が控えめにそこにあって、すぐにでも取ってしまいたい衝動に駆られるけれど、まずは彼女にあたしのを取るように促した。


520 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:20

「あいちゃ、綺麗…」

はらりと落ちた下着に隠れていたその場所に、彼女は頬を赤らめてそう言った。

あたしも彼女にキスをしながら、ブラのホックに手をかける。
上唇を食みながら、ホックをはずし、口内に舌を入れながら肩からブラの紐を外す。

甘い舌を味わいながら身体を倒していくと、やはり僅かに感じられた彼女の緊張。
一度顔を離し、おでことおでことをこつりとぶつけ、見つめ合う。

「・・・・」
「・・・すき・・・すきだよりさちゃん」

柔らかに細められた瞳を見ながら、首筋に唇を落としていく。
彼女の腕があたしの首に回されて。

今日、それ以上に彼女の緊張を感じることはなかった。


521 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:20

* * * * *



522 :そっとふれて :2012/11/11(日) 22:20

頬に柔らかく温かなものを感じ、眼を開けた。
どうやらいつの間にかまどろんでしまっていたらしい。

「あいちゃん」

そう呟き微笑む彼女はとても美しい。
ブランケットからでる、華奢な肩に触れようと手を伸ばすと、そのまま手を取られた。

「すきだよ、あいちゃん」

そう言ってあたしの胸元に顔を寄せる彼女。
小さな頭を抱えながら、あたしは微睡み、「おやすみ」と呟いた。






FIN


523 :名無飼育さん :2012/11/12(月) 02:10
ぬわあああああ可愛いいいいい←
初々しすぎる二人に全力で萌えました…!
524 :  :2012/11/23(金) 18:35

更新します。

「a prank」
525 :a prank :2012/11/23(金) 18:36

笑顔。真顔。寝起きの顔。吹き出した顔。変顔。

手。指先。ネイル。

太腿。足先。今日の靴。

ランチ。飲み物。スイーツ。

空。街路樹。星。地面に写る影。

今日持って行ったバッグ。ハンカチ。リップ。




526 :a prank :2012/11/23(金) 18:37

「なんで返事くれんよー」
駄々をこねるあいちゃん。だって返信、しようがないでしょ?
でもね、あいちゃんが送ってくれる、他愛もない写メ。
どれもどれも好きなんだよ。一緒に居ることが出来なくても、貴女を感じることができるから。

i phoneの中には、ちゃんと「あいちゃんフォルダ」があるよ。
入ってるのはたくさんのツーショット、隠し撮り。それからあいちゃんが送ってくれた写メ。

お仕事の待ち時間はね、いっつもそれを見てるんだ。
なんだか、ほっとして、どきどきして、わくわくして、ほっこりするから。

今度は私が送るね?そうだ、いいこと思いついた。



527 :a prank :2012/11/23(金) 18:38

* * * * *




528 :a prank :2012/11/23(金) 18:38
愛は戸惑っていた。嬉しかったのだけれど。
愛しい里沙からのメール。いつもはデコレーションを施したメッセージと、その内容に沿った写真が送られてくるのだが、今日はどうも様子が違うのだ。

お昼頃から始まったメール。
開けども文章は無くて、それに添付された写真データには必ず里沙の顔があった。
真顔もあったし、笑顔もあった。スタッフさんと一緒に写るものもある。

何本か撮影が入っているのだろう、コロコロ変わる衣装たち。そしてお稽古なんだろう、ジャージ姿もあって見ていて楽しいのだが、いかんせん何を言わんとしているのか測りかねる。

「なんやぁ・・・・・?」

さすがに、5通目のメールが来た時には、戸惑っていた。



529 :a prank :2012/11/23(金) 18:40

とりあえずあたり触りのない返信はしてみるけれど、それに対する里沙の返信は相も変わらず写真データのみ。
もう放っておくか、そう割り切ったときには、本日通算10通目、時間は22時を回る頃だった。

困惑しながらも、今日のメールを見返す。
困惑とは言っても、愛しい人のコロコロ変わる表情はやっぱり見ていて柔らかな気分させた。
愛は特に里沙のほっぺたと、口びるが好きだった。

今日のリップの色、可愛いなぁ。そんなこと思っていたら。

「・・・・あ・・・」

さすがの愛も気が付いた
よくよく見ると里沙の口元が一枚一枚形を変えていて、それが愛に対してのメッセージだということを。

読唇術というものなんだろうか。愛は0時ちょうどの、やはり写真データだけのメールを見終えて、iphoneを胸に握りしめながらにっこりと笑った。



530 :a prank :2012/11/23(金) 18:41

『あ』

『い』

『ちゃ』

『ん』

『だ』

『い』

『す』
『お』

『や』 

『す』

『み』




531 :a prank :2012/11/23(金) 18:42

最後の『み』と併せてもう一枚送られてきた写真は、愛しい人の唇のみ。愛は当然ながら、その画面に唇を寄せた。


532 :a prank :2012/11/23(金) 18:42

* * * * *


533 :a prank :2012/11/23(金) 18:43

数日後、事務所にてたまたま会った二人。それぞれのマネージャーさんが席をたったものだから、二人でカフェにやってきた。

「りさちゃ、なんやのあの写真」
「えぇー、いたずらしたんだよ」

そうやって言う里沙はしてやったりとばかりに微笑んで。愛もまた、嬉しくて笑みで返す。

「あのな、全部保護しといた」
「えぇ?消していいのに」
「もったいない。眠れんくなったら見返すんや」
「そんなことしなくても、電話でおやすみ言ってあげるよ」
「ほんと?」
「ほんと」

嬉しそうに、うきうきしたように言う里沙。それを愛も喜んで受け止める。

「あ、ちょっとお手洗いいってくるね」

里沙が席を立つと、愛はお返しのいたずらを思いったった。




534 :a prank :2012/11/23(金) 18:44

* * * * *


535 :a prank :2012/11/23(金) 18:44

りさちゃんに、お返し。
りさちゃんがあんな、でも嬉しくて楽しいメール攻撃してきたから、あたしもお返しするんや。

あたしは席を立ったりさちゃんのiphone を手に取って、声を吹き込む。そしてそれを勝手にアラームにセットした。

明日、怒られるかな。それとも照れて電話が来るかな。
りさちゃんの行動をいくつか想像して、思わずにんまりした。

「お待たせ、って。あいちゃん、なににやにやしてんの?」
「んふー」
「なにそれ、気持ち悪い」
「ふふ、明日、朝早いんやろ?」
「そうだけど、それがどうかした?」
「きっと早起きできるやよ」
「なにそれ」
「あたしも頑張って起きよー」
「ちょっとー意味わかんないんですけど」


536 :a prank :2012/11/23(金) 18:45

翌朝。ばかーびっくりするじゃんかー、と朝一来た電話ににんまりした。

「でも、すぐ目覚めたやろ?」
「そうだけどさ。もう。」
「あたしにもやってくれる?」
「今度ね。」

どうやらいたずらが上手くいったようで。でもあたしがやり返されたら、きっとほっこりしていい目覚めになるだろうなぁなんて思った。
だってさ、りさちゃんの声で目覚めるならばさ。



537 :a prank :2012/11/23(金) 18:45

* * * * *





538 :a prank :2012/11/23(金) 18:46

数日後、愛のアラームは里沙に声に切り替わっていた。自分が吹き込んだのと同じ内容で。

「んあー、ふわわ・・・・・」

寒い朝だけれど、温かい気持ちでいい目覚めだと思った。
そして眼をこすりながら今日のパワー補充とばかりにもう一度聞いた。里沙の声を。



『あいちゃん、おはよう。今日もだいすきだよ!!!』






FIN



539 :名無飼育さん :2012/11/23(金) 18:47

見返したら脱字が・・・残念。

523さん
ありがとうございます。今回も甘々です。よろしければ

540 :  :2012/11/23(金) 23:38
また別のお話です

「髪」

541 : :2012/11/23(金) 23:39

肩で息をする彼女の肌が、数十分前に比べて朱く染まっている。

「んっ・・・・あいっちゃ・・・・」

その色にしたのは、あたしであって、その肩を見つめながらぼんやり思う。

―― 綺麗

りさちゃんが綺麗。
すべやかな肌が綺麗。潤む眼が綺麗。僅かに開く口と、唇が桃色で綺麗。

首筋を伝う汗ですら、綺麗だと思う。

「んあ・・・・」

その汗を舌で舐る。
急に濃くなった香りに、頭がくらりと酔う。

「りさちゃ、すき」

りさちゃんの耳元でそう囁いて、動かす指。
熱く締め付ける内壁に、挿れた中指と薬指はすでにふやけそうになっていた。

―― やっぱり綺麗

感じる彼女が綺麗。妖しく啼く声が綺麗。流す涙が綺麗。
魅力的な唇を割って吐かれる息は、とても熱かった。



542 : :2012/11/23(金) 23:41

そういえば、なんだか新鮮な眺めだと気づいた。
鎖骨を過ぎ、胸までかかる長い髪が、見たいところを隠す。

役のイメージだからと言って、そこそこ伸びてきていた髪にさらにエクステをつけてきた彼女。
最近大人びてきたような、と思ってはいたものの、やはりそれは歳相応だったようで。
エクステによって、胸までかかるその髪は彼女をやけに妖しく美しく見せている。

空いている左手で、髪のひと房を右耳にかけてやり、そのまま彼女の右頬へ手を滑らす。柔らかな頬は、とても熱い。

重ねる唇はとてもやわらかく、深く味わいたくて舌を捻じ込ませた。

「んっ・・・・」
「ふっ・・・ん」

交わす息と声、そして溢れる唾液。
口の端からこぼれたそれを掬おうと唇から顎そして首筋へ舌を這わせていく。自然と落ちていく目線の先には、長い髪がちらつく。






543 : :2012/11/23(金) 23:42

彼女のものだけれど、彼女のものでない栗色の髪。
それが胸を隠す。先端の赤い実だけを隠し、控えめな丘だけがぼんやり浮かぶ。いつもなら控えめに、でもそのままさらされる場所なのに、今日はいつかの写真集のようにそこだけ髪が隠すものだから、その姿がやたらと厭らしく写った。

彼女と恋人同士になり、抱き合うようになった時、すでに彼女は髪を切っていた。
だからそうやって隠れる胸はなんだか新鮮だ。

でも結局、その先端を口に転がしたくて髪をどけるのだけれど。

彼女の中の右手をさらに動かすと、りさの声と想いと呼応するようにそこが蠢く。

「んっ・・・・・あいちゃ・・・あいちゃ・・・・っ」
「りさちゃ・・・きもちいい?」
「んあっ・・・すき・・すきぃ・・・・」

次の瞬間彼女は震え、脱力し頭が後ろへ擡げる。

肩で息をするその胸元には、荒い呼吸とともに厭らしく揺れる髪があった。





FIN


544 :  :2012/11/23(金) 23:42
545 :  :2012/11/23(金) 23:43

エクステをつけて大人びたガキさんを見て、さっそく厭らしいことを
思いついてしまいました。

ガキさんごめんね!!


546 :  :2013/01/19(土) 22:06
久しぶりに更新します
547 :  :2013/01/19(土) 22:06

「酔っぱらいの戯言」

548 :酔っ払い :2013/01/19(土) 22:08

「あいちゃーん、んへへ」
「なん、あんた酔ってるんかぁ」
「よってまーす」
「どうしたんよ」
「あいちゃーん」

4日振りに来た電話は単なる酔っ払いからの電話だった。それでもきちんと応えてしまうのは、あたしが彼女を好きだから。

「なーに?」
「あのね、あいちゃん、りさね」
「うん」
「りさね、あいちゃのことすきなの。しってた?」
「・・・知ってた」
「あのね、ずーっとまえからすきなんだよ」
「あーしも好きだけど」
「あいちゃ、りさがどれくらいあいちゃんのことすきかしらないでしょー」
「うーん、分からんなぁ」

酔っ払いに真面目に応えるほど馬鹿馬鹿しいことはない。
それでも愛しい彼女の、アルコールの力を借りた告白はすごく嬉しくて、いつも異常にまともに対応してしまった。
いつもより少し上ずった、彼女の声がひどく愛しい。

「あのね、これくらいすきだよ」
「これ位?」
「おおきなきをぎゅーっとするくらい」
「木かぁ…」

酔っぱらった里沙ちゃんの頭の中に描かれた「木」はどれくらいなんだろう。あの、いつしかCMで見たおおきなおおきな木であって欲しい。



549 :酔っ払い :2013/01/19(土) 22:09

「きー!・・・・んへへ・・・」
「りさちゃ、お酒だいぶ飲んだんやから今日ははよ寝るんよ?」
「はーい!!」

そう言う彼女の、甘い甘い声は愛しくて、ずっとずっと聞きたかった。
直接聞くのとはまた違う受話器からの声は、あたしの耳をやわらかにくすぐる。

「あいちゃ、あのね」
「うん」
「りさね、あいちゃのことだいすきなんだよ」
「うん」
「だからね、ずっとずっといっしょにいよう?」

酔っ払いに真面目に応えるほど馬鹿馬鹿しいことはない。
それでもお酒の力を借りないと思ったことを言えない彼女がひどく可愛くて愛しくて。素直な気持ちをにんまり聞いていた。

・・・・・本当は嬉しくて涙がにじんでいたのは内緒の話。



550 : :2013/01/19(土) 22:09

551 :名無飼育さん :2013/01/19(土) 22:10

作者がハイボールを飲みながら、そして酔っ払いながら書きました。
短くてごめんね!!


552 :名無飼育さん :2013/01/21(月) 23:21
甘−い愛ガキ大好きです!
553 :  :2013/01/24(木) 01:29

552さん あざーす
554 :  :2013/01/24(木) 01:29

今回もまたまた短いですが更新します
555 : :2013/01/24(木) 01:29


556 : :2013/01/24(木) 01:30
「すき、やっぱりすき」



557 :すき :2013/01/24(木) 01:31
 
「素敵やったよ、須磨さん」

私の舞台を観に来てくれたあいちゃん。
楽屋に来るなりそう言ってくれた。

「煙草とかさぁ、どうしたら分からなくて、そこら中の人を観察しちゃった」
「自然やったよ。りさちゃんがりさちゃんじゃないみたい」
「それならよかった」


558 :すき :2013/01/24(木) 01:31

同期で仲間で恋人で、そしてライバルの彼女。タイミングこそ少しずれたけれど、同じく女優の道を歩き始めた彼女にそう言われるのは嬉しかった。

「衣装もすごく合ってた」
「メイクさんに感謝だよね」
「りさちゃん、すごく嵌ってたもんなぁ」

ほんの出来心で聞いてみる。


559 :すき :2013/01/24(木) 01:32

「ねぇ、あのさ、今までの私の役でどれが一番すき?」
「そうやなぁ…」

彼女は天を仰いで考えてるようだった。

「みのりちゃんは可愛かったし、真田は迫力あったし、須磨さんも素敵だし。うーん、選べんなぁ」
「えーつまんない」
「だって決められんもん。あ、でもさ」
「ん?」
「一番好きなのはさ」
「うん」

「りさちゃん」

優しい笑顔で彼女はそう言った。


560 :すき :2013/01/24(木) 01:32

なんでこんなにストレートなんだろう。電話やメールや、それこそベッドの中で言われるのとはまた違って。それはそれは照れてしまう私。ほっぺが熱いのは気のせいじゃないはず。

「りさちゃん顔赤い」
「…誰のせいよ」

そう言って握った彼女の手はとても温かかった。






FIN
561 :名無飼育さん :2013/01/25(金) 23:01
きゃー
キャンキュンしますね( ´艸`)
また楽しみにしてます!
562 : :2013/02/03(日) 17:04
561さん

ありがとうございます

更新します
563 :  :2013/02/03(日) 17:05

そこにある幸せ
564 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:06

たまに実家に帰ると、扉を開ければ愛犬おーじは玄関のところにちょこんと座って、あたしを見上げていた。
眼をきらきらさせて、舌をぺろぺろさせて、ちいさなしっぽをぶんぶん振りながら。
朝だろうが、深夜だろうが、夏だろうが冬だろうが。いつだってそこにいてくれた。

ただいま。そう言って靴を脱ぐ前にその場でしゃがみ込んで頭を撫でてやると、心底嬉しそうに眼を細める。
もし、次にあたしが帰ったときにおーじがそこに居なかったとしたら、きっとあたしは寂しいだろう。
くそぅ、ぐれてやる。




565 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:07

犬や猫は飼い主の足音が分かるという。きっとそうだ。だっておーじは扉を空ければ毎回にそこにいるから。

でもそれって動物だけじゃないと思うんだ。だって、あたしだって。





566 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:07

567 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:07
「・・・追いついた」
「ん?お帰り」
「驚かないの?」
「んー、なんとなく里沙ちゃんかと思ったから」

視線の先にある信号が点滅を始めて、あたしは立ち止まり、信号が青になるのを待っていた。
そんなに車通りが激しい道ではないし、聴こえてくる足音が知っている音だと思ったから。


568 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:08

「なんでわかるの?」
「なんとなく」
「なんとなく?」
「なんとなく」
「ふーん」

きっとこれって、例え彼女がパンプスだったりスニーカーだったり、ブーツだったり。
どう考えても音は違うだろうけど、それでもあたしは彼女の足音を聞き分ける自信があった。
根拠は決してない。やっぱりなんとなくだけれど。


569 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:09

「ね、何買ったの?」
「ん?イチゴのお酒」

横に並んだ彼女に、今日初めて視線をやる。

「飲む?」
「んーん。だいじょぶ」
「残ってたっけ、うちになんか」
「あとちょっと焼酎があるから」

最近前髪が伸びてきた里沙ちゃん。こうして見ると、大人っぽくなったなぁと思う。
そういえば、舞台の役柄も素敵だった。



570 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:09

「ね、あいちゃんちにさ、なんかおつまみある?お漬物とか」
「あーピクルスならある」

信号が青になって二人歩き出した。
左手に持っていたコンビニの袋を右手に持ち替えて、彼女の手を握る。

「ピクルスいいねぇ、あ。そういえばさ、私が来たことびっくりしないの?」
「ちょっとだけびっくりしたけど、嬉しいからいい」
「いいの?」
「いいの」

きっと二人して、にんまりしながら歩いているだろう。暗くてよく見えないけど。

残り数百メーターの道のりを、その場で適当に作った鼻歌を歌いながら帰った。
時折、その適当な歌にけらけら笑う彼女の声が、その曲のオブリガード。



571 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:09



572 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:10

お風呂上り、いつもはソファーにかけてテレビを見ながら過ごすのだけれど、
今日はテーブルについてピクルスをつまみにしながら二人で呑んでいた。

少しばかりアルコールが回ってほんのり頬を朱く染めた彼女を見つめていると、ふわりと彼女は笑う。

「なんかさ、バーで飲む人の気持ちわかる気がするな。特にマスターがダンディだったりするバー」
「ん?なんでバー?」
「いやだってさ、今こうしてあいちゃんとお酒飲んでるから」


573 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:11
ここに彼女を迎えいれたとき、あたしも彼女も10代で、飲んでいたのは当時お気に入りだったハーブティーだった。
それがこうしてあたしはカクテル、里沙ちゃんは焼酎を飲んでいるのだから、二人でいる時間が結構長い証拠だよなぁとぼんやり思う。

「ダンディーなマスターもいいけどさ、やっぱり好きな人を眺めながらお酒飲むのって最高」
「最高?」
「最高」

やはり彼女、少し酔っているらしい。
だって素面ならばそんな直球な表現しないもの。



574 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:12

「楽しい?」
「すごーく楽しい。焼酎もおいしいしさ」

ぽつりぽつりと話をしながら、ゆっくりとお酒を飲む。
―― カラり。大きな氷が融けて回った。

「ねよっか」
「うん」

あたしが使っていたグラスと、彼女が使っていたタンブラーをシンクに置いて水を出すと、ふわりと後ろから抱かれる感触。
細い腕が巻き付いて肩にかかる重みが心地よい。




575 :そこにある幸せ :2013/02/03(日) 17:12

「りさちゃん?」
「あいちゃん」
「んー、どうしたん?」
「だいすき」
「・・・・・」

蛇口を閉めて、水を止める。

ゆっくり振り返って今度はあたしが抱きしめた。

「りさちゃん、あったかいな」
「うん」
「だいすき」
「うん」

「ねよか」

黙ってこくりとうなずく彼女の手を引いて、ベッドルームへ歩き出す。

このなんでもない時間を大切にしたい。そんな風に思った。




FIN


576 :  :2013/06/12(水) 23:45
ひさびさ更新。やっつけ気味
577 :  :2013/06/12(水) 23:45
 
578 :  :2013/06/12(水) 23:46

「穴」


579 : :2013/06/12(水) 23:46

「なにこれ」

久しぶりに会ったりさちゃんは、あたしを見た途端に眉間に皺を寄せて、あいさつすることも無く不機嫌そうに呟いた。

「なん…?」
「なん、じゃないでしょ。なにこれ」

そう言って指差す先は、あたしの胸元。あたしのワンピース。

「なんで穴開いてんのよ」
「ええやろ?かわいくて」
「かわいいけどさ」

やっぱり不機嫌そうにして、靴を脱ぐ彼女。
あ、少し痩せたかも。



580 : :2013/06/12(水) 23:47

「かわいいけどさ、それでお仕事行ったわけ?」
「行ったよ。番組もこれで出たし」
「はぁー・・・?!」
「・・・りさちゃん、声でかい。ていうかさ、ご褒美ないの?」
「それさ、おしゃれだし、かわいいけどさ、なんかな」
「なん、気になる?ていうかさ、ご褒美」
「あいちゃん、さっきからなにご褒美ご褒美言ってるの」

リビングに入り、二人してソファーに座り込む。
そして身体を彼女に向き合って、続けた。


581 : :2013/06/12(水) 23:47

「だって、あたし手術成功したし。それに1か月声出さないように我慢してたし。だから」
「だからじゃない。ていうか公の場でそういうの着ないで」
「あ、りさちゃんヤキモチ?」

明らかに不機嫌な彼女の顔が、少し朱く色づき俯いてしまった。
しかし次の瞬間。


582 : :2013/06/12(水) 23:48

「あ」
「ふふ・・・・」

胸に感じる柔らかな感触。

「りさちゃん、なんよ」
「だって欲しいんでしょ?ご褒美」

得意げに笑う彼女はさっきまでとは全然違って、強気である。
思わずそこを、穴の大きさだけ自分でなぞる。



583 : :2013/06/12(水) 23:48

「反対側もしてあげる」

今度は左側に感じた、さっきと同じ柔らかさ。そして続くリップ音。
あたしが恥ずかしいじゃないか、ばか。

「ふふ、あいちゃん顔真っ赤」
「だって!」
「だって?」
「だってこんなの恥ずかしいやんか」
「そう?」

さっきまで恥ずかしそうにしてたくせに、今度はあたしが負かされそうだ。

つい悔しくなって、今度こそ唇を奪ってやったのだった。




584 :  :2013/06/12(水) 23:48
 
585 :  :2013/06/12(水) 23:48
おそまつさまでした
586 :名無飼育さん :2013/06/13(木) 00:31
(* ´Д`)(* ´Д`)(* ´Д`)
ガキさんの方向転換が鮮やかで素敵です
愛ちゃん手術成功おめ!
587 : :2013/06/15(土) 23:27
588 :名無飼育さん :2013/06/15(土) 23:29
作者です。

消しゴム観てきました。
去年とはまた違った薫ちゃん。ガキさんはたくさんの舞台でたくさんのものを吸収したんだね
ガキをたとしては誇らしい限りです

そんなわけで



586さん

ありがとーございます

589 :名無飼育さん :2013/06/15(土) 23:29

memory

590 :memory :2013/06/15(土) 23:30

「ねぇ。あたしのこと忘れない?」
「なぁにそれぇ」
「や、だってさ。薫ちゃんはいろんなこと忘れたけど、こうすけの顔は忘れなかったってことでしょ」
「そうだね」
「だからさ、りさちゃんはあたしのこと忘れないやろ?」
「なにそれ、自意識過剰じゃない?」

二人していただいた、おんなじお仕事。
あたしは、その役、というよりむしろ相手役の気持ちが気になって仕方なかった。

もし。愛する人の記憶がなくなったら。
もし。愛する人との大切の思い出がどこかへ消えてしまったら。
もし。愛する人があたしを忘れてしまったら。

その時あたしはどう思うのだろう。



591 :memory :2013/06/15(土) 23:31

そしてその愛する人は、今眼の前にいる。

「そんなことないやろ、あたしは覚えてる自信あるで」
「なにそれ」
「あいしてるもん」
「えーずいぶん“愛してる”が安っぽく聞こえますぅ」

そう言ってまんざらでもなさそうな彼女は、くすくす笑っていた。


592 :memory :2013/06/15(土) 23:32

「あぁ、でもそうだなぁ」
「ん?思いついた?」
「んー」
「なん、もったいぶらんで」
「えぇ・・?どうしよっかなぁ」

綺麗な、優しい顔で笑う彼女。

「ふふ、たぶんね、もし私が唯一覚えてるとしたらね」
「うん」
「きっとね、あいちゃんだと思うんだ」
「そりゃ当然やろ、愛する人を覚えてるんやから」
「そうじゃなくってね、たぶんね」

嬉しそうに眼を細めて、少し天井を仰ぎながら彼女は続けた。

「きっと、私がいろんな、すべての記憶を失ったとしてね、薫みたいに。そしたらね、それでも覚えてるのはさ」
「うん」
「たぶんね、『あいちゃん』って言葉だと思うんだ」

あたしは彼女の横顔を見ながら、言葉の続きを待った。


593 :memory :2013/06/15(土) 23:33

「いつもね、思うの『あいちゃん』って。お仕事の時とか真剣に取り組まなくちゃいけない時でもさ、顔を思い浮かべなくても、声を思い浮かべなくてもね、『あいちゃん』って思うの」

なんだかこみあげるものがあって、思わず俯いてしまった。
自分で答えを要求したくせに、なに泣いてんの、あたし。

次の瞬間に感じたぬくもりと柔らかさ。きっと彼女には伝わってしまったんだろう、細くて、でも温かな腕の中にあたしはいた。

「ね、なに泣いてんのさ、自分から言ってきたくせにさ」
「や、やって・・・・」
「あいちゃん」

いつものように、いつも以上にあたたかな音だった。

「ね、あいちゃんは?あたしの何を覚えててくれるの?」
「あたしは…」

流れる涙をぬぐいながら、そして鼻水をすすりながら、彼女に細い腰を抱く。

「あたしな、あたしはりさちゃんの顔」
「顔?」
「そう、名前覚えてなくても、りさちゃんの声とか忘れてもさ、りさちゃんの顔は忘れん」
「そ、ありがと」


594 :memory :2013/06/15(土) 23:33

たぶん、きっと。

あたしはよく夢に見るのだけれど。
秋うまれのあなたが、黄色と緑が美しいヒマワリの中で笑っているりさちゃんの夢。
なぜだか見たことも無いその風景を夢に何度も見たから。

だから、きっと。

「りさちゃんの顔とひまわり覚えてる、きっと」
「ヒマワリ?なんでヒマワリ?」
「いーの、あたしが分かってるから」

なにそれ。
続けたあなたはやっぱり優しく笑っている。その笑顔がヒマワリみたいなんだよ。


595 :memory :2013/06/15(土) 23:33

「ね、あいちゃん」
「ん?」
「あいしてる」
「あたしもや」
「こら、ちゃんと覚えてる時に言いなさい」

身体を離し、見つめ合って、二人くすくす笑う。
あぁ、そうだね。薫みたいに記憶をなくしてからは駄目だね。

「りさちゃん」
「はい」
「あいしてる」

嬉しそうに言葉を受け取ってくれた彼女を、やっぱりヒマワリみたいだと思った。


596 :memory :2013/06/15(土) 23:34

たぶん、きっと。
いつかあたしがおばあちゃんになって、記憶をなくしてしまうことがあるならば。おばあちゃんにならなくても、薫とおんなじ病気になってしまったら。
きっと唯一覚えているのは、あなたの顔とヒマワリだから。
だから飾ってね、ヒマワリを。

その代わりもしあなたが薫と同じになってしまったら。必ず伝えるよ、あなたに。

― あいです。あいしてます







597 :memory :2013/06/15(土) 23:34
598 : :2013/06/15(土) 23:34
そんな感じです
599 :  :2013/06/23(日) 21:26
更新します
600 :  :2013/06/24(月) 00:06
601 :  :2013/06/24(月) 00:08
『背中』
602 :背中 :2013/06/24(月) 00:08

「んー」
「なん、甘えんぼ」

久しぶりに会った彼女の背中が愛しくて、わたしは何を言われても構わないからとりあえず抱きついた。
わたしと違って平熱が高い彼女は、とっても温かい。


603 :背中 :2013/06/24(月) 00:09

「んー、いいの。久しぶりだからいいの」
「りさちゃん、少し痩せた?」

彼女は身体の前で組み合わさったわたしの腕に触れながら言う。
そういえば最近ハードだったな。

「体重測ってないから分からないけど、でも最近ハードだった」
「そか、今日はゆっくりしような」
「うん」
「なん、珍しいな、ゆっくりしてもええなんて」

彼女の背中に頬を寄せるだけで、彼女のお気に入りの香水の匂いと体温で心が落ち着いて、眠くなってしまう。


604 :背中 :2013/06/24(月) 00:10

「やばい、寝そう」
「ベッドいく?」
「・・・・・変なことしない?」
「したい?」
「何言ってんの、えろおやじ」
「しないしない」

冗談と分かっているけれど、そんな会話をして、二人ベッドに入る。

久しぶりの温かさに、わたしはすぐに眠りについた。


605 : :2013/06/24(月) 00:10

606 : :2013/06/24(月) 00:10
短いですが以上です
607 : 作者 :2013/09/15(日) 22:36
暑い夏が終わったのか。

ちょっと季節がずれましたがどうぞ。
608 :  :2013/09/15(日) 22:36

a proposal
609 :a proposal :2013/09/15(日) 22:37

そもそもそんなことは想定してなく。
いや、想定の範囲内といえばそうだけれども。

でもさ、やっぱさ、あたしがしたいやん。
だってあたし、年上やし。



610 :a proposal :2013/09/15(日) 22:37
* * * * *


611 :a proposal :2013/09/15(日) 22:38

久しぶりに二人で外食をした。
りさちゃんがお気に入りの、あのお店。
りさちゃんは「なんでもいいよー」と言う割には結構こだわりがあって、
結局のところ彼女のお気に入りの所に行った方が収まるんや。



612 :a proposal :2013/09/15(日) 22:39

その日はいつも通り。
たまに会ういつもと同じように。
食事して、少しほろ酔い気分で自宅までの道をのんびり歩いていた。

煩い蝉の声は、煩いけれど福井を思い出す。
都会で感じられる、故郷の音。
煩い。確かにうるさいけれど、懐かしい音。

眼を閉じて、それに耳傾けるとその奥にある川のせせらぎが聞こえた気がした。


613 :a proposal :2013/09/15(日) 22:39

「ねぇ、あいちゃん?あのさ、ちょっとさ」
「ん?」

いつもはっきりと言う彼女が、今日に限ってうまく言葉が出てこない様子。
何か悩みでもあるんだろうか。

「悩み?なんかあるなら聞くよ?」

もしりさちゃんに悩みがあるならば、少しでも話やすい空気を作ってあげようと、
なるべくいつものトーンを心掛けた。



614 :a proposal :2013/09/15(日) 22:40

「んーん、なんでもない」

そう言って、触れる彼女の手。

柔らかくて、温かくて、少し小さなりさちゃんの手は、昔からあたしの手の中にあった。
いつもそうしていた。楽屋から出るとき、表舞台から帰ってくるとき。
そして恋人同士になって、デートをするとき。

でも、今日は彼女から触れてきた。


615 :a proposal :2013/09/15(日) 22:40

そっと触れて、握られ、指を撫でたかと思ったら今度は絡ませられた。

いつもと違うそのしぐさに、少し胸がきゅんとする。

「りさちゃん、あのさ」

と、ふと気づくいつもと違う感触。

絡まる指に固い感触があった。
彼女がつけている指輪はあたしがあげたやつ。でも、もっともっと華奢だった気がするのに。
今日は少し太め?それとも2連リング?


616 :a proposal :2013/09/15(日) 22:41

ことばを止めて、絡まる手を彼女のそれと一緒に持ち上げ、
その違和感があるところへ視線を落とす。

「あ、みつかったか」
「ん?」
「ゆびわ」

―― ゆ び わ ?

りさちゃんの少し低めの、柔らかな声につられて顔を上げると、お酒のせいなのか少し朱がさした顔。
その見慣れた大好きな顔が、少し顔を傾けて、照れたような表情してる。




617 :a proposal :2013/09/15(日) 22:42

「はい」

彼女は絡ませた指を一度解き、自身の指に少し触れた。

2連リングと思っていたそれは、見たことがないもので、でもよくよく見ると全く同じデザインだったりする。

彼女はその一つをとり、眼の高さのところまでもってくる。
輪の中には、昔から変わらない、彼女の瞳。
その瞳の中の光を見つめていると、その光は彼女の瞼の中に納まった。


618 :a proposal :2013/09/15(日) 22:43

「て、かして?」
「て?」
「ほら」

りさちゃんの小さな左手に引かれた、あたしの左手。
彼女が持っていた輪は、あたしの左手の薬指に納まった。

「はい」
「・・・・」
「ね、何かたまってるのよ」
「やって・・」
「Marry me」
「ぷはっ」
「ちょ、なに人が真剣に言ってるのにさ」
「だって、りさちゃん、英語しゃべれんのに」

笑ってるはずのあたしの頬に伝う涙。
りさちゃんはそれをぬぐいながら、もう一度囁く。

「チョワ キョロネジュセヨ」
「ちょわ?」
「結婚してください」

その一言を言った彼女は、とても優しい顔をしていた。


619 :a proposal :2013/09/15(日) 22:43

なんだよ、あたしが言うつもりだったのに。
かっこよく、素敵なレストランとか行ってさ。
ホテルはベタだし、でも少しはロマンティックにしたいから、
おうちのベランダから見える花火とか夜景とか見ながらさ。

言おうとしていたのに。

そんなに簡単に理解されるなんて思っていないけれど、でもだからこそ、強い決意として伝えようとしていたのに。

貴女は何なく言ってのけた。

「うん」

いつの間にか、強くしなやかになったりさちゃんに、あたしはついていくしかないじゃないか。
・・・・たまには。

いつもは引っ張っていくよ?
年上やし。

あたしの言葉を聞き遂げた彼女は、ほっとしたような表情をして、次の瞬間にはいつものりさちゃんに戻っていた。

「かえろ?」
「ん・・・・」

いつもと同じ道を、いつものように帰る。
でも、少し違って見えたのは気のせいかな?

左手の薬指に、小さな温かな熱を感じながら、いつもの道を二人で帰った。


620 :a proposal :2013/09/15(日) 22:43

621 :名無飼育さん :2013/09/15(日) 22:44

a proposal おわり

べたべたですが
622 :  :2013/10/14(月) 00:04

今日のガキさんはやっぱり可愛かった。
というわけで
623 : 作者 :2013/10/14(月) 00:05

今日のガキさんはとってもかわいかった。
というわけで
624 :  :2013/10/14(月) 00:07

更新します。
625 :  :2013/10/14(月) 00:08

「sweet sweet」
626 :sweet sweet :2013/10/14(月) 00:09

「おかえりー」

楽屋に戻ったら久しぶりに見る、でも見慣れた人がいた。

「え、え。なんでいるのさ?」
「ええ、だめ?会いにきただけやん」
「えぇ、だったら出てきてよー!コメントだけじゃなくてさ」

私が座るべきソファーに勝ってにくつろぐ人。
さも当然かのように、隣を空けてくれかたら遠慮なくそこに収まった。



627 :sweet :2013/10/14(月) 00:10

「りさちゃ、ケーキは?ケーキ」
「なに、私に会いに来たんじゃなくて?」
「だってさ、ケーキ食べたいやん」
「ちょっと待ってて、スタッフさんに言うからさ」

ソファーから立ち上がってスタッフさんに声をかけた。
振り返ると満足そうに微笑む人。

「ちょっとほんとさ、なんで出てくれなかったの?」
「出たかったけどさ、着いた時間ぎりぎりやったし。それにファンの人だってりさちゃんに会いたいやろ。
あたし出んほうがいいって」
「んん。そうかなぁ」
「そうやろ」


628 :sweet :2013/10/14(月) 00:10

―― 失礼します

スタッフさんが切り分けたケーキを持ってきてくれた。紙コップのコーヒー付きで。

「さ、たべよ」
「ちょっと、私が先だからね。主役なんだからさ」

一つのお皿に大きく切り分けたケーキ。
まっしろな生クリームがこれでもかと言うほど乗っていた。

柔らかなスポンジにたっぷりクリームを乗せて、大きく頬張った。


629 :sweet :2013/10/14(月) 00:11

「んー」
「おいし?」
「おいし」
「あたしも食べていい?」
「どーぞ」

機嫌よく返す。

隣の彼女も眼を細めてパクついていた。

「・・・・あ」
「ん?」
「・・・いや」
「なに、りさちゃんどうしたん」

私はあの時のことを思い出していた。


630 :sweet :2013/10/14(月) 00:11
*  * * * * *  *


631 :sweet :2013/10/14(月) 00:12

あいちゃんに告白されたあの日。
何年か前の、やっぱり誕生日。

後輩たちはとっくに帰ってしまって、私とあいちゃん二人だけは他のこともあって残っていた。
二人で今と同じように、その時は椅子だったけれど、なぜか隣同士に座ってケーキを頬張っていた。

綺麗に光るフルーツを口にしたら、頬にあたたかな感触がして。
それが彼女の唇と分かるまでに数秒かかった。


632 :sweet :2013/10/14(月) 00:12

―― ごくり

フルーツを飲み込んだ音がやけに響いた気がした。

右の頬をおさえ、そちらに向くと、やけに真剣な顔を彼女がいた。

「にいがきりさ」
「・・・・あいちゃ、なにしてんの?」
「にいがきりさ」
「ね、なにしちゃったのさ」
「にいがきりさ」
「ね、さっきから何いってんの」
「にいがきりさ。すきだよ」
「・・・・・・・・」
「にいがきりさ、すきだからさ、付き合って」


633 :sweet :2013/10/14(月) 00:13
* * * * * *

634 :sweet :2013/10/14(月) 00:13

あの時、圧倒されてしまって、言葉が見つからなかった。
結局付き合うことになったのだけれど。

「りさちゃ?」

その時のことを思い出していたら、ぼんやりしてしまった。
横にいる不思議そうにする彼女はそのことを覚えているのだろうか。

なんだか試してみたくなったから。

きれいな頬に、キスをする。

あまい、あまい味がした。




FIN


635 :名無飼育さん :2013/10/14(月) 00:13

ガキさん、早いけど誕生日おめでと!!
636 :名無飼育さん :2013/10/14(月) 04:42
生誕イベ行かれたんですね裏山!
愛ちゃんが最後どんな反応したか想像して(*´ω`*)ってなってます(笑)
637 : 作者 :2013/10/14(月) 19:29

636さん

ガキいべのガキさん、とっても可愛かったです。
可愛くって可愛くって可愛かった。

特に必死になってボールにサイン書くガキさん、さいこーでした

638 :  :2013/10/14(月) 19:30

更新します
639 :  :2013/10/14(月) 19:31

「選択肢」
640 :選択肢 :2013/10/14(月) 19:32

「りさちゃん、今日は選んでええよ」
「・・・・は・・?」

唐突に出された言葉。さっぱり意味がわからない。
だってさ、今の今まで音楽の話、してたでしょ?

「あのさ、選ぶってなにを?」
「えーの。1番から3番どれがええ?」
「あの、基準がわからないんですけど」

わたし、その疑問間違ってないよね?
よく分からない選択肢を出されても、そもそも答えもないし。答えようがないじゃない。


641 :選択肢 :2013/10/14(月) 19:34

「ええから、ええから。とりあえず選んでや」
「え?まじ何決めるのさ」
「んー強いて言うなら、りさちゃんが喜ぶ選択肢?」
「なにそれ」
「ねーはよしねま」

出たよ、はよしねま。
あのね、私の前だからいいけどさ、知らない人が聞いたら誤解されるからね?

642 :選択肢 :2013/10/14(月) 19:35

「んーじゃ、2番」
「ええー、二番?」
「なに、なにかご不満でも?」
「んー、ちょっとやだ」
「何よ、じゃもともと3択じゃなくて2択?」
「いや・・・まぁ」
「しょーがないなぁ。じゃ、1番にしとくか」
「1番?1番でええ?」
「いーよ」
「ふぁいなるあんさー?」
「ファイナルアンサー!てか古いし!!」

643 :選択肢 :2013/10/14(月) 19:36

「んーじゃ、2番」
「ええー、二番?」
「なに、なにかご不満でも?」
「んー、ちょっとやだ」
「何よ、じゃもともと3択じゃなくて2択?」
「いや・・・まぁ」
「しょーがないなぁ。じゃ、1番にしとくか」
「1番?1番でええ?」
「いーよ」
「ふぁいなるあんさー?」
「ファイナルアンサー!てか古いし!!」

次の瞬間、なぜだか唇をふさがれた。
彼女の唇に。

「・・・・・」
「・・・・・」

5cmほど顔が離れて、間近に見る見慣れた顔。
嬉しそうに微笑んでる。

「・・・ね、何の1番だったの」
「んふー」
「んふーじゃない、なに?」
「あのな、1番が唇にキス。2番がほっぺにキス。3番がディープキス。あたし的に3番が良かったんだけどな」
「・・おい!!」

何を言ってるのだか、この人は。
でも私もちょっぴり3番でもいいかな、と思ったりして。

絶対に口には出さないけれど。





――― お遊びみたいなそんなやり取りが、ちょっと楽しいと思ったとある休日の昼下がり。


644 : 作者 :2013/10/14(月) 21:11

読み返してみたら同じ文章が重複更新...

あちゃー
645 : 作者 :2013/11/09(土) 00:49
寒くなってきましたね。と言うわけで、いつもの二人にいちゃいちゃさせたいと思いました。

更新します
646 :  :2013/11/09(土) 00:52

「ごほうび」
647 :ごほうび :2013/11/09(土) 00:59

「したい」
「・・・何がしたいのですか」
「しーたーいー」
「なぁにぃ?」
「なんで、りさちゃん、わかるやろ」
「はぁ?なんのこと?」
「・・・・いじわる」
「何言ってんの、私優しいよ?」
「そんなことないもん。いくたとかにも優しいやんか」
「だってあれは後輩じゃない」
「りーさーちゃん」
「はぁーあーい」
「りさちゃん!!」
「だから何よ」
「したい」
「なぁに?」
「・・・・したい」
「何したいの?」
「うー・・・・」
「うーじゃわかりません」
「いじわる」
「いじわるじゃありません」
「・・・・したい」
「だからなにさ」
「・・・・・」


648 :名無し飼育 :2013/11/09(土) 09:24
最近愛ガキの絡みに飢えていた自分にとっては、ありがとうございますの一言ですm(_ _)m
あったまりました( ̄∀ ̄)
649 :ごほうび :2013/11/09(土) 22:35
そこまで焦らして彼女の瞳をじっと見る。
いつもは私が翻弄されるけど、たまには彼女をいじめたくなる。いじわるかな、私。

「ちゅーしたい」
「へぇ」
「ちゅーしたいし、えっちしたい!」

そこまで焦らして彼女の瞳をじっと見る。
いつもは私が翻弄されるけど、たまには彼女をいじめたくなる。いじわるかな、私。

「ちゅーしたい」
「へぇ」
「ちゅーしたいし、えっちしたい!」

私の可愛い年下のこいびとは、言葉とは裏腹に真っ赤な顔をして、しかも上目使いで言うもんだから。

「よくできました」

そう言って、とりあえずのご褒美としてキスしてあげた。



FIN


650 :   :2013/11/09(土) 22:36
 
651 : 作者 :2013/11/09(土) 22:37

あれあれ、昨夜酔って書いたものだから、重複している部分が・・・

648様
ありがとうございます。
酔ってて最後までおとどけできていなかったのにWW
652 : 作者 :2013/11/09(土) 22:38

単にガキさんに「よくできました」
って言って欲しかった。それだけです
653 :名無し飼育 :2013/11/09(土) 23:42
そういうもんなんだと思ってましたww
すみません、早とちってしまってm(_ _)m
654 : 作者 :2013/11/10(日) 23:01

仕事でいらいらしたので更新します。
短いです
655 :名無飼育さん :2013/11/10(日) 23:02

「めざまし」


656 :めざまし :2013/11/10(日) 23:03

夢うつつの中で、唇に感じた柔らかな感触。
王子様が起こしてくれたんだ、そう思った。

「あ、起きた?」

眼を開けると見慣れた顔。王子様ではないけれど、大好きな顔。

「ん、おーじさま?」
「ふふ、寝ぼけてる?」


657 :めざまし :2013/11/10(日) 23:04

ゆっくりと何度か瞬きし、眼の前の柔らかな頬に触れる。
ぼんやりとした中で、いつしかの、王子様を思い出す。

― くりすとふぁー? ―

「ねぼけてなーい」
「あいちゃん、遅くなってごめんね?」
「んーだいじょぶよ」
「ね、お風呂入った?こんなとこで寝ちゃだめ」
「んーいっしょにはいる」

一度は目覚めたけれど、やっぱり眠気には勝てなくて、瞼が勝手に落ちてくる。
それでもあたしのおーじさまがそこに居てくれるから、
首に腕を回してその温度と香りを感じる。



658 :めざまし :2013/11/10(日) 23:04

すん

― いいにおい ―

慣れた、だいすきな香り。
その香りと温かな感触に浸っていると余計に眠たくなってしまう。
でも。

「仕方ないなぁ」

そう言って、あたしのおーじさまは。

「ん」
「んんっ・・・」
「ん・・・はぁ・・・・」
「りさ・・」
「おきた?」

眠い頭には刺激的なキスをくれるものだから。
あたしはすっかり目覚めてしまったのだ。





FIN



659 : 作者 :2013/12/01(日) 02:00

寒くておでんやお鍋が恋しい季節となりました。

だから温かなお話。

660 : 作者 :2013/12/01(日) 02:01
「だっこ」



661 :だっこ :2013/12/01(日) 02:02

きゃしゃな彼女をだっこするのは、あたしのなかで一つのご褒美だったりする。
彼女の細い太腿にひざまくらしてもらうのもご褒美だけれど、
膝に跨がせて向い合せに抱きしめて、彼女の首元に鼻を寄せて一呼吸。

柔らかな香りと、静かな心音、それから慣れた体温を感じると、それはそれは至福の時。
疲れて帰ってきても、何に疲れていたのか、悩んでいたのかすっかり忘れてしまうのだ。


662 :だっこ :2013/12/01(日) 02:02

いつも着けているわけではない、でもあたしのお気に入りのコロンの香りを感じた時には途端に心拍数があがる。
そして、つい伸びてしまう手。

「こら、なにしてんの」
「んー、さわさわしてる」
「・・・あいちゃんの手、あったかい」

こら、と言った割には除ける気がないらしい彼女。
すべすべの肌を味わっていると、頭を抱きしめてキスをくれた。


663 :だっこ :2013/12/01(日) 02:03

伸びたあたし髪を、じゃれるように触れる手が愛しい。
もっともっと触れたくて、腰あたりにあった手を背中まで伸ばしてブラのホックをはずしてやった。

それを合図かのように、彼女は身体を起こす。
小さな彼女の両手があたしの頬を包み込んで。

いいよ、と言わんばかりに、ふと笑み、それから今度は唇にキスをくれた。





FIN


664 : 作者 :2013/12/01(日) 02:03

強気で甘えん坊なにいがきさんが見てみたいです


665 : 作者 :2013/12/21(土) 22:38
更新します
666 : 作者 :2013/12/21(土) 22:38
「覚悟」

667 :覚悟 :2013/12/21(土) 22:39
ずっとずっと苦しいままだったから。
ねぇ。もうさ、やめる?
それとも地獄に堕ちる?
一緒に。



* * * * *


668 :覚悟 :2013/12/21(土) 22:39

隣同士に座っていたはずなのに、気づいたら眼の前に顔があった。
こんなこと、友達同士じゃしないよね?
そんなことが頭の片隅にあった。でも近づく顔。

仕方がないので、眼を閉じる。

―― ・・・何が仕方ない、だろう。心のどこかで望んでいたくせに。

除けることなんて簡単にできたはずなのに、私はそれをしなかった。
触れた唇が、思わず震える。


669 :覚悟 :2013/12/21(土) 22:40
―― 柔らかい。あったかい。

今までの人とは全然違うその感触。

―― ・・・おんなのこって柔らかいんだね。

そして一瞬の甘美と恍惚のあとに訪れる、地獄への招き。

―― ああ、堕ちるんだ。絶対嫌だったのに。

そう思う間もなく、私は押し倒されていた。


670 :覚悟 :2013/12/21(土) 22:40

気づくと見える天井と、陰になる顔。
確かにいつも見ている顔のはずなのに、今日はいつもとは違って見える。

「ねぇ。どうするの。わたしたち」
「ん、いいよね」
「よくないよ。だってわかるじゃん」
「なにが?」
「だって、わたしたち同性だよ?」
「だからって関係ないやろ」
「なに言ってんのさ、さ、早くどいて」
「やだ」
「やだじゃない。どきなさい」
「やだ。りさちゃんはあたしのものになるんよ」
「無理でしょ。・・・・それともなに?一緒にいく?」
「いく?やる気満々やん、りさちゃん。えっちやね」
「じゃなくてさ」


671 :覚悟 :2013/12/21(土) 22:41

見慣れた、だいすきな顔に手を伸ばす。

「一緒に行く?地獄に」
「じごく?」

彼女は私の手に、自らのそれを重ねる。

「地獄。だって、未来ない恋だよ?」
「んなことないよ」
「覚悟できてるの?一緒に地獄に堕ちること」
「ばか」

彼女は触れていた手をそっと取り、口づけをくれる。


672 :覚悟 :2013/12/21(土) 22:41

「地獄なんかやない。覚悟はできてるよ。りさちゃんのこと幸せにする覚悟」
「・・・・・・なに言っちゃってんの」
「真面目やよ。いっしょに幸せになろ?幸せにします。一生大事にする」
「・・・・」
「だから、お願い。あたしのものになって」

彼女の大きな瞳は一気に潤み、滴がこぼれる。
その滴は私の頬にはたはたと落ちてくる。


673 :覚悟 :2013/12/21(土) 22:42
―― あぁ。なんて温かい涙なんだろう

その涙を、瞳、顔を見て私は決心した。
いっしょに行くこと。地獄へではなく、幸せの場所へ。

その想いよ伝われ、とばかりに彼女を抱きしめたのだった。






FIN




674 :作者 :2014/02/02(日) 01:05
生ガキさんを観たら、もりもり妄想が湧き出てきました。
あいちゃんの結婚はめでたいけど、妄想はやめない

675 :作者 :2014/02/02(日) 01:05
更新します
676 :あいしあいされ :2014/02/02(日) 01:06

肩に寄り掛かる頭。香るいつものオードトワレ。くすぐったい髪。腰に巻きつく腕。

本当は甘えるつもりだったんだけどな。そのつもりで来たのに、甘えてくる彼女。
結局その寄り添う重さを心地よく感じてしまう私。


677 :あいしあいされ :2014/02/02(日) 01:07

「ねぇ。ちょっと重いな」
「なん、えーやん。それよりさ、どうだったライブ?」
「あのね!!」

たくさんたくさん聞いて欲しくて、眼の前の黄緑とか、たくさんの笑顔とか、
来てくれたお客様の話をたくさん話した。


678 :あいしあいされ :2014/02/02(日) 01:08

「良かったなぁ」

彼女は自分のことのように嬉しそうに、もう一度寄り添い、回す腕を強める。

「あのね、あたしね、ちょっと癒してもらいにきたんだけど」
「んー。あたしも癒されたい。いやされたーい!いやされたーい!」
「おいおい、後輩をぱくるな!!」

二人でくすくすと笑う。


679 :あいしあいされ :2014/02/02(日) 01:09

「あたしそろそろ眠いな」
「そうやね、明日も早いし」
「一緒にはいろっか、お風呂」
「んあ、背中流しましょうか」
「あはは、そうしてくれる?」
「なんなら、そのあともいろいろサービスするよ?」
「え、あたし眠いから今日はなし」
「何がなし?」
「・・・・なし」
「なにが?」
「うーっさい!」
「えー?!」


680 :あいしあいされ :2014/02/02(日) 01:10

にやにやしながら、抗議する彼女が五月蠅いから。その言葉を静めようと。あたしは美味しそうな唇を奪ってやったのだ。





FIN
681 :作者 :2014/02/02(日) 01:10
LIVE番長ガキさんは可愛かった!!!!
682 :名無飼育さん :2014/02/03(月) 12:42
テンポのいい会話が脳内再生余裕でたまんないです(*´д`*)
いやされたーい!×2とかすごく言ってそうでw

LIVE番長ガキさん、
Twitterにも楽しそうなレポがいっぱい流れててほっこりでした^^
683 :作者 :2016/06/05(日) 22:30
ずっと雲隠れしてましたが、急に書きたくなりまして。
突貫工事ですのでご了承ください
684 :名無飼育さん :2016/06/05(日) 22:31

「セックスしませんか」
685 :名無飼育さん :2016/06/05(日) 22:32
「セックス、しませんか?」

大人になってしまった私たちには、その一言でしか距離を縮める方法が見つからなかった。
もっと純粋なころならば、デートするとかハグするとか、距離を縮める方法なんていくらでもあったはず。

でも歳を重ねて純粋な順序というものをどこかへ忘れてしまった私たちには、それはすごく都合のいい言葉だった。
それがこの有様。


686 :名無飼育さん :2016/06/05(日) 22:33
「いいね」

私の発した言葉に、その人も同意してくれて。
同じようにきっと距離を縮めたかったその人は私の言葉をすんなりと受け入れてくれた。

ついさっきまで友達とか同僚とか、そんな距離だったはずなのに、その人の顔が目の前にある。
ずっと触れてみたいと思っていた唇がそこにある。その薄い唇をひとなでした。

彼女はすっと微笑みながら、それを受け入れてくれて、私のほほに手を添える。
687 :名無飼育さん :2016/06/05(日) 22:33
「上がいい?それとも下がいい?」
―うちはどっちでもいいんだけど・・・

セックスしませんか?と持ち掛けたのは私だけれど、実はそんなに経験はない。
だからその問の正しい答えがわからない。
強いて言うなら、あなたに任せます。そんなところか。
688 :名無飼育さん :2016/06/05(日) 22:34
「あたしは、鞘師さんの思うほうで」
「なにそれ、可愛すぎない?」
「だって」
「誘ってきたのはあゆみちゃんなのに」

そういいながら、彼女は私の口を割り、人差し指を入れてきた。
甘くも辛くもないそれを、目をつぶりながら受け入れて。
抜けてく気配のないそれを存分に舐る。
689 :名無飼育さん :2016/06/05(日) 22:35
いっそのこと呑み込んでしまいたかった。
それくらいに愛おしかった。いつの間にか積もっていた感情が、無意識のうちに体を動かす。
気づけば彼女の手をつかんで、指と指の間の敏感な場所に舌を這わせていた。
690 :名無飼育さん :2016/06/05(日) 22:35
薄く目を開けると溶けそうな瞳と目が合う。

「食べて、くれませんか?」

その瞳を見たら、全身で感じたくなった。

今までには知らないくらい、私を溶かして。
691 :名無飼育さん :2016/06/05(日) 22:35

「セックスしませんか」

終わり

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