■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 最新50

昆虫とサイダーと

1 :名無飼育さん :2011/09/22(木) 00:05
基本的に9期絡み。
スレタイ通り、りほかの多めになると思います。
情熱大陸な二人が好きなので、そういうお話ばかりになりそうです。
414 :飴をあげましょう :2014/09/28(日) 08:36

----最近うれしかったこととかありますか?

----結構前のことなんですけど…いいですか?

----構いませんよ、ぜひ。

----数年前なんですけど、ある先輩から飴をもらったんです。その時、少しだけ話せたんですけど、
   その先輩が言ってくれた言葉がすごく嬉しかったんです。

----ほぉ。アドバイスしてくれた、と。

----はい。ほんと少ない会話だったんですけど、もう嬉しくて嬉しくて。
   がんばらなきゃって思いました。飴も最初はもったいなくて食べれなかったんですけど、ちょっと溶け始めちゃったので
   食べちゃいましたが、包んであった紙をずっと大事にとってあって。

----それは宝物ですね。でも、どうして今言おうと?

----私、何度もその飴を見て言葉を思い出して、すごく救われて。悩んでた時期でもあったし。
   だから自分に自信が持てるまで誰にも言いたくなくて。
   それで、最近、声をかけてくれたその先輩に恥じない私に少しはなれたかなってやっと思えるようになったんです。
   だから今、なんですけど。
   あの時、ちゃんとお礼を言えなかったので、今度改めてお礼を言いに行こうと思ってます。

----なるほど。それはお礼に行かなきゃですね。

----はい。あとその時、一緒に写真を撮る予定だったんですが、撮る前に帰ってしまわれたので撮れなかったんです。
   その時、呼び止めたんですけど、サッとかっこよく去っていってしまって…。
   なので、今度は勇気を振り絞って、写真もお願いしようと思います。
415 :飴をあげましょう :2014/09/28(日) 08:37
おわり
416 :名無飼育さん :2014/11/04(火) 20:46
いつかなっちと香音ちゃん2人の共演が観てみたいなと思いました。
更新ありがとうございます
いつもここの香音ちゃん楽しませてもらっています。
417 :名無飼育さん :2014/11/04(火) 20:47
いつかなっちと香音ちゃん2人の共演が観てみたいなと思いました。
更新ありがとうございます
いつもここの香音ちゃん楽しませてもらっています。
418 :名無飼育さん :2015/02/01(日) 23:18
>>416
観てみたいですよね
かれこれ二年ぐらい待ってるんですけど…いつかみれるといいなぁ
ありがとうございます嬉しいです
419 :名無飼育さん :2015/02/01(日) 23:20
りほかのいきます
420 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:23


イチとゼロ
 
421 :名無飼育さん :2015/02/01(日) 23:24

始まりは、ただの偶然だった。

ライブのため、地方での宿泊。
たまたま、彼女と同室で。
怖い夢を見て、目が覚めた。
それからものすごい寒気がしてきて、身体を動かそうとしたら、金縛りにあっていて。
なんとか動けるようになっても、怖さはずっとどこにもいってくれなかった。

だから、隣のベッドに潜り込んだ。

それだけの事だった。
422 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:25

部屋には一つの明かりも付いていなかった。
だが、目が開いたまま金縛りにあっていたおかげか、暗闇に目が慣れていて、
隣の白い塊はなんとなく見えた。

早く。怖い。

里保は布団の中にいたにも関わらず冷え切っている身体を無理やり起こし、
手探りでベッドと布団の分け目を探す。

起こしては悪いと思った。
なるべく静かに布団を持ち上げ、足を滑り込ませていく。
それでも、布団と衣服が擦れる音と、重みでベッドが沈んでいく音は思いのほか大きく、
起こしてしまうんではないかと思ったが、それよりも怖さが勝っていて、止めることはできなかった。

ベッドの主は里保が入った方向とは逆を向いていた。
その背中に触れないように、身体を寄せる。
そうまでしても、冷え切った身体が悪い夢と金縛りが恐怖を呼んでいた。

身を縮こませて、その時かすかに触れた服を、指先だけで掴んだ。
423 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:28

「…ん…り、ほちゃん?」

起こしてしまった。
起きてくれた。

確認するように、香音の腕が動いて、肘あたりが里保に肩に当たると、それは止まった。

「もぉ…自分のベッドでねなよぉ…」

一人で寝るのを好む香音からはそう言われるだろうと思っていた。
わかっていたけど…。

里保は掴んでいた彼女の服を握りしめた。

今日だけは。

「……嫌な夢見て…金縛りにあって怖くて…」

ここに居させて。
424 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:29

一時の沈黙の後、香音の身体がゴソゴソと動き始める。
握っていた手を離し、彼女の身体がこちらに向いたかと思うと、そのままやんわりと抱きしめられた。
いや、抱きしめる、と言うには、それは浅すぎる。
身体と身体には十分に隙間がある。しかし、香音の手は里保の二の腕あたりに置かれていて。
普段の二人の身長差とは逆に、里保の目には香音の首元が見えていた。

「もうだいじょうぶ」

頭の上から聞こえてくる小さな声。
とん、とん、とん、と腕に刻まれる他の感触。
彼女に触れられている場所から、温かい水が流れてくるように浸透していくような、そんな感覚。

だいじょうぶ。だいじょうぶだよ。

何度か、彼女は囁くように、そう言った。
穏やかな声だった。もしかしたら、眠たいだけなのかもしれない。
申し訳ないな、と思うものの、リズムを刻まれるたびに、温かな水に満たされていく身体となにかを
感じていたくて、里保は何も言わなかった。

「…まだこわい?」

どれくらいの時間が経ったのだろうか。五分か十分か。それ以上か。
そんなことをぼんやりと思っていた時、声と共に、香音の手が止まった。

もう怖くはなかった。冷え切っていた身体も心も、たいぶ良くなっている。

けれど、里保は知ってしまった。
425 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:30

里保は彼女の腰に手を伸ばす。再び服を指先だけで掴んだ。
同時に、彼女の首元に顔を埋めて、空いていた隙間の一部をなくした。
動いたせいで香音の手がずれていき、その手は自然と背中へ回された。

やりすぎたかなとか本当はもう大丈夫なのにとか申し訳ないなとか一人で寝たいだろうなとか
色んな言葉が頭に浮かんでくる。
言おうか、言わまいか、躊躇していると、背中に回されていた手がそのまま里保の背中を撫ではじめた。

その行動は、里保にとって十分すぎるほどのキッカケだった。

残されていた理性が瞬く間に溶けていく。
身体が、意識が、温かい水にゆっくりと落ちていく。

柔軟剤のいい香りが鼻をかすめる。
隙間のない部分は柔らかく、彼女の体温が伝わってくる。

今までも、じゃれつくことはあった。他のメンバーともたまに一緒に寝た事だってある。
でも、それらとは全く違うこの感覚。


あぁ。もっと。もっと欲しい。


離されないために指先だけで掴んでいた手を広げ、彼女の腰を引き寄せて、埋めた顔も押し付けた。
沈んでいくだけでは足りなくて、子供のように求めて。

身勝手な甘えをぶつけてもなお、香音の手は背中を撫で続けていた。

それはあまりにも。

無防備に差し出された彼女の温かさに溺れていくのは、あまりにも心地よかった。
426 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:32

偶然だった。
同室も、夢も、金縛りも、寒気も。
駆け引きなどなかった。
こわいかと聞かれた時、隙間をなくしたのも、ただ離れたくなかっただけで。
求めるだけだったら、知ることはなかった。
あんなものを知ってしまったら、欲しくなる。

イチはゼロに戻せない。

里保は同室になるたびに、温かい水に、香音に、溺れにいくようになった。

そして、思うようになる。


彼女も溺れてしまえばいいのに、と。
 
427 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:32
 
428 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:33

始まりは、ただの流れだった。

ライブのため、地方での宿泊。
同室は彼女だった。

シャワーを浴びて、出てくると先に済ませていた彼女はすでに寝ていて。
髪の毛を乾かした後、部屋の電気を消して、すぐに横になった。

次に目が開いた時、背中に違和感があって。

声をかけてから、背中からかすかに伝わってくる振動に気付いた。

『……嫌な夢見て…金縛りにあって怖くて…』

泣きそうな声だった。
さすがに放ってはおけなかった。

だから、受け入れた。

それだけの事だった。
429 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:34

里保の腕に手を置いてみると、異様に冷たかった。
いや、そこだけではない。外にいたのかと思ってしまうぐらい、彼女の方から冷気を感じる。
咄嗟に驚きが口から出そうになったが、震えが先程よりも鮮明に伝わってきて、香音はそれを飲み込んだ。

「もうだいじょうぶ」

そう言いながら、小さい頃に母親がよくやってくれたように、腕をなるべくやさしく叩いた。
これぐらいなら、しても大丈夫だろう。そう思った。

しばらく続けていると、震えは消えていってくれた。
身体も徐々に温かくなっていく。
ホッと胸を撫で下ろしたが、それでも少し心配で。

「…まだこわい?」

聞いてみたが、里保はなにも言わなかった。

だが、なにかが脇腹に触れ、それが里保の手だとわかると同時に、遠慮がちに服を掴まれた。
そして、彼女の頭は香音の胸元に沈んでいった。

その行動に安堵した。
抱き寄せるもなく、里保から近付いてきた事への安堵だった。
香音は迷うこともなく、彼女の背中を撫でる。

押しよせてくる。

ゆっくりと、なにかが、押しよせてくる。
430 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:35

彼女は更に顔を埋めて、甘えるようにくっついてきた。
その時、急に腰を引き寄せられ、心臓が大きく跳ね上がった。

それは唐突だった。

突如入り込んできたものに香音は動揺した。
だめだ、と頭のどこかで誰かが言っている。終わりにするのは簡単だ。一言でもいい。突き放せばいい。
そうすれば、彼女はすぐに去っていくだろう。

あぁ。でもそれは。

腕の中からじわりじわりと伝わってくる体温が。服越しからでもわかる他人の感触が。引き寄せられる身体が。
訴えてくる。

それに。
まだ怖がっている里保を傷付けるようなことは、したくはない。

……そうだ。それだ。

香音は背中を撫で続けた。
今日だけは、仕方のないことなんだ、と思いながら、必要以上に優しく長く、撫で続けた。
431 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:36

だが、それはその日だけでは終わらなかった。

次に同室になった時も、里保は香音の布団の中へ潜り込んできた。
香音はなにも言えなかった。
前回と違って、入ってくる時に起きていたのにもかかわらず、言葉が出てこなかった。
無言でいることで、彼女の侵入を許可してしまった。

でも、背中を向けた。向き合うことはしないように。
そうすることで、押しよせてくるモノを必死に抑え込んだ。

だが、それも回数を重ねるうちに、次第に崩れていった。

里保の手は香音の脇腹に置かれていた。
その手に触れたのは何度目だっただろうか。

里保の腕は香音の身体を包むように回されるようになった。
頭の位置が最初の時とは逆になったことに気付いたのは何度目だっただろうか。

その差に気付いて、里保が寝ている間に体勢を変え、彼女の胸元ギリギリにまで顔を近付けた。

彼女が起きてしまう前にまた背中を向けるのは、今日でもう何度目だろうか。

日に日に穴は大きくなっていく。
してはいけないとわかっていても、抑えが効かない。

香音は里保に向けた背中を少し丸めて、小さいため息をついた。
432 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:37

「もういいの?」

その声にビクリ、と身体が揺れた。
寝ていると思っていた里保は起きていた。
その短い問いの意味は、紛れもなく香音の行動に対してのものだとわかる。

「もういいの?」

黙っている香音に、里保はもう一度言った。
里保の問いは、香音を追い詰めていく。

彼女は隣に来た時、一度も話しかけてこなかったのに。
なんで。どうして。そんな言葉が頭を駆け巡った。

「…寝ぼけてた。ごめん」

どうしても誤魔化したくて、口から出たでまかせ。
このまま通り過ぎっていってほしいと思っているくせに、里保の腕の感覚が、背中から伝わってくる彼女の
体温が、やたらと香音を刺激する。

「今までも、全部?うちが気付いてないと思った?」

その言葉に、視界が揺れた。
里保は気付いていた。核心に触れようとしている。

抑えていたもの。押しよせてくるもの。
両手で穴を塞ごうとしても、指の隙間からポタポタと滴り落ちる。
433 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:38

やめて。止めて。お願いだから言わないで。

「…香音ちゃんさ、本当は甘えたいんじゃないの?」

いとも簡単に、あっさりと、彼女は言った。
その言葉に、これでもかと心が揺らされ、香音は愕然とする。思い知る。

「甘えなよ。甘えたいなら」
「そっ!…そんなことしたら、もう我慢できなくなる…」

普通に言ってのける里保に腹が立って、咄嗟に言い返すも、次第に声が小さくなっていった。
そうなってしまったら、自分はどうなってしまうのだろう。

「我慢なんてしなくていいよ」
「だから…一回そうなったらもう耐えらんなくなっちゃうかもしんないじゃん…」

それが、怖い。
怖くてたまらない。独りでも大丈夫だったものが、そうじゃなくなってしまう。
そんなのは、きっと、耐えられない。

「うちに、なら我慢も耐えるのも、しなくていいんだよ。…だから」

甘えたいなら、おいでよ。

耳元で囁かれた。
434 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:39

穴から、どんどん溢れてくる。
押しよせてくるモノに飲み込まれて、塞いでいた両手など、なんの意味も持たなくなった。

身体が、動いてしまう。また、崩れた。
今日はあの日から何度目の侵入なんだろうか。もう、覚えていない。

向き合ったものの、臆病な身体はそこで止まってしまう。
腰に置かれたままの彼女の手は動くことはない。
なんで今、引き寄せてくれないんだろう。
どうして、あの日みたいに…。

「もう知らないからね…」
「うん。いいよ」

頭の上から降り注ぐ声がやたらと優しくて、それでも彼女の手は動かなくて、嫌になった。
抑えきれず、里保の脇腹に手を置く。
そのまま胸元に顔を埋めようしたが、またも抵抗する気持ちが寸での所で留めた。

「里保ちゃんの…里保ちゃんのせいだからね」

彼女にすべての責任を擦り付けて、最後の逃げ場を作った。
それでも彼女は。

「うん。うちのせいだよ」

そう言った。

その言葉は、諦めるほど魅力的で、拒めないほどに誘っていて。
435 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:41

香音は彼女の背中に手を伸ばして、服を握りしめた。
里保はそれに応じるように、香音を抱き寄せる。

身体を押し上げるように引き寄せられ、その瞬間、身体も心も浮遊しているような感覚に陥った。
頭の中がびりびりと痺れる。身体がじりじりと熱い。

ずっと怖かった。
一度外してしまったら抑えられなくなりそうな気がして。なにかを失いそうな気がして。無かったことには出来ない気がして。

それでも。

こうしてほしかった。
もう一度、彼女に引き寄せられたかった。
本当は、あの日からこの感覚を待ち焦がれていた。

甘えたかった。
もう一度、彼女の背中に手を伸ばしたかった。
本当は、隙間のないぐらい、彼女の感触に飲み込まれたかった。
436 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:42


求められて、求める事は。
求めて、求められる事は。


すべてを忘れるぐらい満たされる事を、香音は知ってしまう。

香音はせり上げてくる感情をぶつけるように、里保の胸元に顔を押し付ける。
里保はそれを受け止めるように、香音の頭を鼻先で撫でる。


イチはゼロに戻せない。


二人は暗闇の中で、青い蕾のまま溺れていく。
437 :イチとゼロ :2015/02/01(日) 23:42
おわり
438 :名無飼育さん :2015/02/27(金) 21:26
更新ありがとうこざいます
ここのりほかのが大好きです
439 :名無飼育さん :2015/05/20(水) 23:01
>>438
ありがとうございます
レスがついてるだけで嬉しいのですが好きと言っていただき、
作者とっても嬉しいです
440 :名無飼育さん :2015/05/20(水) 23:06
某ラジオや某回答を聞いてカッとなって書いた
短めですが、りほかのです
441 :そういう日 :2015/05/20(水) 23:07


そういう日
 
442 :そういう日 :2015/05/20(水) 23:09

ある晴れた昼下がり。
お昼に食べた物が少し消化され、お腹も気分もいい感じに落ち着いている。
そして、今は春と夏の間な季節。窓をあけて、半袖で過ごせるこの気持ちよさ。
なかなかに心地よい。あぁ苦しゅうない苦しゅうない。

香音はそんな良い気分に浸りながらソファに座ってダラダラしていた。
ぼんやりと、お昼を共にした里保を見やる。
彼女は座卓に置かれているコップを両手で持ちながら、同じくぼんやりとしていた。

香音はなんとなくテレビのリモコンを手に取り、電源入れた。
ポチポチとチャンネルを変えて、面白そうだと思った番組でそれを止める。
またぼんやりとテレビを見ていると、視界の端に居た里保が立ち上がり、とととと、と近寄ってきて
ソファに腰を下ろした。
ちらりと彼女の顔を見てみる。こっちを見てニコニコと笑っていた。
機嫌良さそうだなぁ、と思いながら、テレビに視線を戻す。

「ねぇねぇ香音ちゃん香音ちゃん」
「んー?」
「テレビ見るの?」
「うん」
「そっかぁ」

そのままテレビを見続けていると、無造作に置いていた腕に感触。
上腕を軽くつままれて、離される。つままれて、離される。その繰り返し。
443 :そういう日 :2015/05/20(水) 23:10

そんな里保の行動に、あーこれは、と思う。
とは思っても、なにかを言うつもりはない。今はダラダラしてるのが心地よいからである。
どうせ、こっちから言わなくても、たぶん、また。

「ねぇ香音ちゃん香音ちゃん香音ちゃん」

ほらね。やっぱり、きた。普段とは違う甘い呼び声。
どうやら、今日はそういう日、らしい。

「テレビ見てるの?」
「うん。見てる」

つままれて、離される。
テレビは思ったよりもおもしろくない。

「筋肉ほぐそっか?」
「今は別にいいかな」
「えーほぐさなくていいのぉ?」

先程よりも速く、つままれて、離される。
どうやらうずうずしているらしい。

「もっと素直に言えばいいと思うよ?」
「二の腕触らせて?」
「めちゃ素直かよ」

その早さと素直さに笑いそうになったけど、あえて堪えてみる。
テレビから彼女に視線を移す。目が合うと、里保が再び口を開いた。

「…だめ?いや?」

最近は触っていいかなんて、聞かずして触ってきていたのに。
というか、今もほとんど触っているのに。少し上にずらすだけだろうに。
今日は人が変わったかのように甘えたな彼女だから、こんな風に聞いてくるのだろうか。
444 :そういう日 :2015/05/20(水) 23:12

聞いてくるのだから、ちょっといじわるしてやろう。

「じゃあ鞘師のすべらない話して」
「…すべらない話?」
「おもしろかったらいいよ」
「…わかった、ちょっと待って…」

香音は腕を見つめ考え始める里保をニヤニヤしながら眺める。
顔を上げた彼女の顔はいつになく真剣だ。
そんなに触りたいものなのだろうか、と彼女の二の腕への執着を疑問に思う。

「えっと…あの、私、ミントを栽培していたらそこになにやら綿らしきものが
 突如出てくるという摩訶不思議な現象を体験したことが」
「はい、それ知ってますー。その綿らしきものはカビでーす。はいダメー」
「そ、そんな!鉄板ネタなのに!これがダメなら私はどうしたらいいんだ…」

香音の想像以上のリアクションで落胆し、また悩み始める里保。
あーやばい。今日の彼女はなかなかおもしろい。

「鞘師のすべらない話はカビしかないのに…他にあったっけ…なんか…すべらない話…」

ブツブツ呟きながらも、つまんで離すスピードは今まで以上にどんどん速くなっていて、
そんな里保に香音はついに耐えきれず吹き出した。

まぁ今日は気分もいいし、おもしろかったし、もういいかな。
悩み続けている彼女に救いの言葉をあげましょう。
445 :そういう日 :2015/05/20(水) 23:13

「里保ちゃん、いいよ。ほぐして」
「ほんと?いいの?すべらない話しなくても?」
「しなくても、いいよぉ?」

わかりやすすぎるぐらいパァっと表情を明るくさせ、香音の腕にひっつく里保。
二の腕を触りはじめると同時に、彼女の表情はみるみるうちに緩んでいった。

うん、これはテレビよりよっぽどおもしろいと思う。

「ねぇねぇ香音ちゃん香音ちゃん」

腕にひっつき、香音を見上げて、ニコニコ。
そんな彼女にこちらも自然と笑顔を返す。

「ほぐれてる?どう?」
「いい感じー」
「ほんと?あっテレビは?いいの?ごめんね、邪魔しちゃったよね…?」

申し訳なさそうな声で聞いてくる里保に、香音は笑いかけながら彼女の頭を撫でた。
それを返事と受け取った里保は嬉しそうな笑い声を漏らす。

テレビの音がほどよいBGMになっている。
お腹も、気分も、半袖も、ほぐれ具合も、甘えてくる彼女も、いい感じだ。

香音は視界に入ってきた里保の右手を手に取り、そのまま頭を彼女の身体に乗せて、ゆっくりと目を閉じた。

「んふふふ。香音ちゃんの、うちの手に当たっちゃってるね」

ふいに聞こえてきた里保の変態発言に、握っていた手を思いっきり叩いてやった香音だった。
446 :そういう日 :2015/05/20(水) 23:13
おわり
447 :名無し飼育さん :2015/05/29(金) 01:42

りほかのーっ!!!!
かわいいいぃぃ!!!
なんだか光景が目に浮かぶようですw
素敵なりほかのありがとうございます
448 :名無飼育さん :2015/10/08(木) 09:52
>>447
嬉しいお言葉にニヤニヤします
反応を頂けると妄想する力にもなってくれるので嬉しいかぎりです
感想レスありがとうございます
449 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 09:53


赤緑群青
 
450 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:07

耳元でなにかが鳴っていた。
はっきりしない意識の中でも、なにか、は大体見当がついている。
だが、それを手に取るのはまだしたくなくて、しばらく無視をしてみたが、なかなか鳴りまないことが
次第に腹立たしくなってきた。
いい加減に止まれ、と頭の中で念じると同時に音は止まったが、いつものアラームとは
違う音だということに里保は今更気が付いた。

……目覚まし、じゃない…着信…着信?!え、やばい仕事!

がばりと起き上がり、携帯を確認する。時刻は10時過ぎ。
まずい。今日の集合時間は何時だった?場所は?
頭がまだ起きていないせいか、思い出せない。
里保は携帯にメモしておいたスケジュールを急いで開こうとしたが、あることに気付き指を止めた。

画面には【着信:香音ちゃん6件】の文字。

マネージャーからではなく、同期からの着信に疑問を覚える。
なぜだ?と思った時、今度は家のチャイムが聞こえてきた。
一度ではなく何度も訪問を告げる音が鳴り響いている。

…嫌な予感がする。

チャイムが止む。その変わりに、再び香音からの着信が始まった。
451 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:09

里保はだるそうに玄関へ向かう。起き上がった勢いはどこへやら。
あまり意味はないだろうが、一応玄関ののぞき穴から訪問者を確認する。
やはり着信の主である香音の姿がそこにあった。

玄関を開ける。
半分ほど扉をあけた所で、香音が顔を出した。

「里保ちゃん、おはよう。海、行こう」

挨拶の後の言葉に少し眩暈がした。

「………」
「って、無言でドアを閉めようとしなーい」
「あぁ、ごめん。つい」

たぶん、すごい不機嫌な顔をしているんだろうな、と里保は自分で思う。
切り替えるために、ふーと深呼吸をしてから、先程より広く扉を開けて
なるべく落ち着いた風を装い対応することにした。

「えっと、約束したっけ?」
「したよ。昨日の夜メールしたじゃん。既読にはなってないけど」
「それ、約束って言わないと思う」
「電話もしたよ。里保ちゃん、うん、うん、って言ってた。めっちゃ眠たそうな声だったけど」
「それ、ほとんど寝てたと思う」

覚えていない。メールは読んでいないのだから、当然だ。
でも、言われてみれば電話には出たような気がしないでもない。
内容はやはり覚えていないが。
452 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:11

「まぁ、とりあえず中入れてくんない?人目も気になるし」
「あー…ん」

追い返す前に先手を取られ、渋々ながら家の中へ通すことに。
先週たまたまだが掃除をしておいて良かったと心の隅で思った里保だった。

里保は来客にお茶を出す、なんてことは考えもせず、どう断ろうかとそればかり考えながら、
自身のベッドに腰を下ろした。
香音はそんなことなど全く気にしない様子で、ベッドの脇にある小さなテーブルの前に座る。

「里保ちゃん、朝ごはん食べてないでしょ?」

座るなりそう聞いてきた彼女に里保は面食らう。
ご飯のことなど全く意識してなかったし、今この場に彼女がいる状況がよくわからない。
いや、約束したかららしいけど。それでもやっぱりおかしかった。

「そりゃさっき起きたから食べてないけど」
「だと思ってね」

香音が鞄の中からをなにかを取り出しテーブルに置いた。
ハンカチに包まれている物体。まさか。これは。

「お弁当作ってきた」

さすがにこれは里保の予想範囲を超えていた。
453 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:12

いきなりの訪問、海へ行こうとの誘い、そしてお弁当。
他のメンバーや学校の友人らにはこういうことをするのかもしれないが、自分達の関係的に今日のすべてが
あり得ないわけで。細かく言えば昨日のメールや電話からおかしいわけで。

一体なにを考えているのだろうか。
わざと眉間にしわを寄せて香音の顔を見やったが、彼女は少しも表情を変えずに口を開いた。

「お弁当、食べる?」
「……」
「中身はおにぎりと軽いおかずで、家に明太子あったから明太子おにぎりにしたよ」

明太子。里保はごくり、と喉が鳴りそうになるのを抑える。
こんなわけのわからない状況だが明太子おにぎりは食べたいな、と素直に思った。

「…ちなみにお弁当を食べたらどうなりますか?」
「お弁当を食べると海へ行くはセットです」
「できれば単品で注文したいんですけど」
「あ、おかずはねぇ、アスパラベーコン巻き、卵焼き、プチトマトに人参のマリネです」

完璧なラインナップに里保は今度こそ喉を鳴らすのを抑えられなかった。
が、欲に負けてしまうのが嫌でなかなか返事が出来ない。
454 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:13

「……」
「じゃあ、食べないなら帰るね」

沈黙を破ったのは香音だった。彼女はお弁当に手を伸ばす。
たぶんなにも言わなければ、香音はこのまま本当に帰るのだろう。
そういう人だということは長年の付き合いでわかっている。
確かに、そんなお弁当で心を動かされてたまるかと思う気持ちはある。
だけど、彼女がここまであり得ないことをしてきた理由を知りたいと思う気持ちもあった。

「ま、まった!」

お弁当が鞄にしまわれてしまう寸前の所で声を出した。
香音が手を止めて、里保に視線を合わす。

「食べるの?食べないの?行くの?行かないの?どっち?」
「…食べ物で釣るなんて、卑怯じゃない?」

もう答えは出てしまったけど、それでも文句は言いたくて。
里保の抵抗に、香音はへらりと笑ってみせた。

「これは卑怯なんじゃなくて、作戦だよ」

見事な作戦に「参りました」と言うしかなかった里保だった。
455 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:15

お弁当を美味しく頂いてしまった里保は香音の言う通りに身支度をして電車に乗り、
近くの海までやってきた。

もうすぐ冬になろうとしている海には人の気配はなく静かなもので。
運がいいのか風はあまりないが、やはり少々寒いと感じる。
砂浜を少し歩くと、香音がおもむろに腰を下ろしたので里保もその隣に座った。

二人は黙って海を眺めている。
というか、電車に降りてから会話はない。それまでも二、三話しただけである。
会話がない事は別にどうでもよかった。隣に居る彼女にとってもそれは同じだろう。
それよりも、なぜここまでして自分を連れ出したのか、が気になっていた。

「海だなー」

ふいに聞こえてきた香音の声は、どことなく嬉しそうで、それにつられて里保も「海だね」と返事をした。
視界の端で香音の顔がこちらに向いたのに気付き、目線を合わせてみると、
やはり彼女はどことなく嬉しそうな表情をしていた。

「香音ちゃん」

海の匂いがする。

「ん?」
「なんかあったの?なんで海にうちを連れてきたの?」

香音以外の誰かだったら、聞かないであろう質問だった。
不思議と香音との間にはそういう遠慮らしきものがない。
だから、ただ気になっていたから聞いてみた、だけのこと。
456 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:16

「別になんもないよ。なんもないけど、よくわかんなくなっちゃってさぁ」

なんだろうなぁ。彼女は海を見ながら呟いた。

「里保ちゃんと私ってさ、お互いにご飯誘っても気分が乗らないと普通に断るじゃん?
 そういうかみ合わないことが多かったりもするけど、細かい事を気にしなくていい存在っていうか、
 難しいこと考えずに自分が自分で居られる存在っていうか…んーなんて言ったらいいかわかんないけど
やっぱりこういう時は里保ちゃんなんだよね。昔も今も」

香音はまっすぐ海を見ている。どこからともなく、波の音が聞こえる。

「そういう里保ちゃんと海を見たかった。それだけだよ」

彼女の返事は独白のようだった。
雰囲気も訪問した時から変わらないフラットなままで。
里保は漠然とわけがわからなくなってしまう時を思い出す。

なにかに戸惑っているのに、それがなにかわからない。
なにかに引っかかっているのに、それがなにかわからない。

そういう時に行き着く先は、香音だった。

あぁ。
だから自分だったのか。

香音の答えは里保の中にすんなりと入ってきた。
457 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:17

「そっか」

里保は短い言葉を口にした。それ以外は要らないと思った。
たぶん彼女は、答えというものを求めていないだろうから。
案の定、彼女はなにも言わなかった。

ふいに風の色が青く変わった気がした。青い風が身体の中を吹き抜けていく。
少し寒いけど、気持ちいいな、と里保は思った。

「本当はさぁ、私の地元の海まで行きたかったけど、遠くて里保ちゃんが
絶対嫌がると思ったからやめた」
「さすがに愛知は遠いなぁ」
「広島よりかは近いよ」
「そこで広島出しちゃう?」
「うん、出しちゃう」

勘弁してよ、と言おうと思ったが、太陽の光がきらきらしている海を見ていたら
なんだかどうでもよくなって、やめた。
ざざん、と音を立てる波が、二人の沈黙を埋めていく。

「明日からまたがんばろうね」
「うん」
「でも、あんまりがんばりすぎんなよぉ、さやしぃ」
「そっちもだよぉ、すずきぃ」

二人はお互いに肩を小突き合って、笑った。
458 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:18

うん。なんか。

やっぱり、里保ちゃんと来てよかったなぁ。
自分が思ったことと同じようなことを彼女が呟いたもんだから、くすぐったい感じがして、
口元が緩んだ。

「ついてきてくれて、ありがとね」
「半分以上強制的だったけどね」
「お弁当作戦大成功」

かっかっかと笑う香音は楽しそうで。そのままにしておこうと思ったが、
思い直して先程よりも強く彼女の肩に体当たりをしておいた。

いやぁ、まぁ、でも。

体当たりを受けても楽しそうに笑う香音を横目に、里保は満足そうな表情を浮かべる。

「そろそろ帰ろっか」
「そうだね」

里保の返事を合図に香音が立ち上がった。
里保はそれを合図にゆっくりと立ち上がる。
里保が立ち上がった頃には香音はすでに歩き出していた。

お互いに歩幅を合わせることはしない。する必要など、ない。
だって。そんなことをしなくても。
459 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:18

里保は三歩先を歩いている香音を呼んだ。

「ねぇ香音ちゃん」
「んー?」

香音は背中を向けたまま返事をする。

変わり続ける中でも、変わらないもの。昔の自分達。今の自分達。

変わっても、変わらなくても、見失いそうになっても、君が居てくれたら、きっと。

「今度は地元の海、連れてってよ」

香音は立ち止まり、振り返った。波の音が聞こえる。

「喜んで」

香音がふやぁと目じりを下げて笑う。
その表情の中に昔のままの彼女が見えて、それが嬉しくて、里保は目を細めた。

460 :赤緑群青 :2015/10/08(木) 10:19
おわり
461 :名無飼育さん :2015/10/13(火) 00:22
更新ありがとうございます
楽しませてもらってますよ
462 :名無飼育さん :2015/11/14(土) 12:56
更新きてたー!
463 :名無飼育さん :2016/06/23(木) 22:33
りほかのいないの今、赤緑群青を読む本当に涙が出る

新着レスの表示


掲示板に戻る 全部 次100 最新50

現在のスレッドサイズ:276065 byte

名前:

read.cgi ver5.27 + 0.02 (04/08/03)