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天然キャンディッド

33 :第六話 :2011/09/26(月) 20:18

   ◇

「保田さん、行っちゃいましたね」
「サボらなきゃえーのになぁ」
ここに彼女がいたら、うるさいっ! と叫んでいただろう。
部室に二人きり。その彼女が見たいと思った二人。

道重は中澤の顔をまっすぐに見つめた。
「……中澤さん……あの……」
口がうまく動かないと道重は思った。言葉もうまく出てこない。
「どしたん? 顔真っ赤にして。重ちゃんの肌、白いからうらやましい」
道重の気持ちなど気づいてない。
矢口の気持ちにも気づけずにいるのだろう。
思い切って直球をぶつける。
34 :第六話 :2011/09/26(月) 20:18
「好きな人はいますか」
読唇術はできないが、答えを逃さぬよう唇を見つめる。
「……おるよ。今は離れ離れやけどな。重ちゃんにもいるんか」
頭をかきながら中澤は答えた。
「いました。……でも今はよくわからないです」
金髪をかきあげるとともに、上を向く。
見つめられたら心の中が読まれそうな気がして、中澤は天井を見つめた。
誰かを思い出したのか。
「恋愛は難しいなぁ」
溜息に似た呟き。
「あの、ですね、さゆみは去年の冬まで女の子と付き合ってたんです」
道重が下を向くと、肩にかかっていた黒髪のツインテールが揺れた。
秘密を聞かされても特に驚くことはない。後輩への優しさからか、それとも。
35 :第六話 :2011/09/26(月) 20:18
二人の視線は交わることなく、会話は続く。
「でもフラれたんです。同じ人の話ばかりしてたらしくて。
『……その人に恋してるんでしょ』、って。一方的に」
「気づいてなかったんか」
「はい。わからなくてイライラしてて。
保田さんと話してたら、そうかなって、最近は思うようになりました」
そう話しながら道重は中澤の横顔を見つめた。
視線に気づいたのか耐え切れなくなったのか、中澤はようやく道重の顔を見た。
「イライラの原因なくなりそうなん?」
「いえ……」
道重は口ごもる。
36 :第六話 :2011/09/26(月) 20:19
「なんでや!」
大声になると関西弁はキツく聞こえて、標準語に慣れている人間には恐怖だ。
道重に視線を合わせているので、余計に怖く感じるだろう。
「恋は難しいです。相手が過去をひきずってることもあるから……」
「そうやな、ほんま難しいな」
「どうしたらいいんでしょうね」
「……うーん、待ってみるのがええと思うで」
「はい、そうしてみます」

会話が止まる。
柔らかな仕草の奥に正直さと芯のある考え方を感じた先輩。
ピンとした空気と威圧感が発せられているように感じた後輩。

「なぁ、重ちゃん、なんで今日、こんなこと話してくれたん?」
「空があまりにも青かったので」
(……いいよね。そしてさようなら、えり……)

   ◇

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