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天然キャンディッド

208 :陸で泳ぐうさぎ・第十話 :2017/12/29(金) 19:40
撮影に理由なんていらない。
愛されたい、愛した記憶を残したい。
記録として残したい。
『SAYUMINGLANDOLL』
編集部から提案されたのは、道重さゆみを表現媒体とするコンセプトブックの出版だった。
学業との両立で写真集の出版が年単位で遅れている。
最後に出版してから二年が経過していた。
そして、書店での流通は約三年。
重版出来でもあればよいが、写真集だけでなく書店での売り上げはどこも右肩下がりだ。
被写体としての道重さゆみ、どう撮られたいか、どう表現するか、屋内外問わずテーマや衣装、小物を考えるのも道重さゆみ。
でも、撮影は本人ではない。
話をもらったときは、写真家としての道を断たれたように感じた。
高校生から美少女写真家として顔は出していたから、顔を出すことに抵抗はない。
新しい表現方法に挑戦してみようというのが大きな柱になっている。
ファインダーから覗かれる、そしてレンズを覗きこむ。
被写体も写真家もあまり変わらないのかもしれない。

連絡は取り合うようにしようと思ったけれど、やはりお互い忙しい身で安倍さんと話し合ってからとうに二ヶ月は過ぎていた。
ズルいんだよ、なんて言ってたけど先輩ってやっぱり優しい存在だ。

編集部との話し合いは重ねる毎に厳しさを増し、ケンカのような言い合いになってしまうこともあった。
カワイイ写真家、それもとびきりの。
ポップでキャッチーな表面とは裏腹に、根底にあるのは劇物とそれを中和する耽美さ。
そんな難題は頭を抱えたところで、かわいいを正面に捉えると波のようにはじけて波の花のように解けていく。
動き始めると案外楽なもので撮影での衣装や小物の提案はすんなりと受け入れられた。
幾度となく重ねた話し合いが結果として良い方向へ導いている。
きっとお互いの覚悟が必要だったのだろう。

学業と仕事とを両立しているとついつい連絡を取るのを忘れてしまう。
わざわざ安倍先輩が声をかけにくる事態だったのに、離れていてもお互いが頑張ってればそれでいいと、中澤さんの不安に応えられないまま。
後悔しても仕方ないのだが、サークルに顔を出さずにいると校内でも視界に入ることはなくなり、本当に中澤さんは目の前から消えてしまったのだ。

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