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天然キャンディッド

1 :みおん :2011/09/17(土) 18:41
大学青春

保田・道重・中澤
2 :みおん :2011/09/17(土) 18:41


六回目の春をこの大学で迎えた。うちのサークルに新入生入ってくれるかなぁ。
裕ちゃんとなっちは院生としては在籍してるけど、石川吉澤は今年度卒業見込みだし二人とも真面目だし。
矢口藤本が中退したの痛かった。過去のことだからどうしようもないけど。
来年のこと考えると新垣道重リンリンから会長選出って、ないよねぇ。出席率高いの重ちゃんしかいないし。
悶々と考え事をしていると、いつのまにか重ちゃんがいた。
3 :みおん :2011/09/17(土) 18:42
「おはようございます、保田さん。今年もまた会いましたね」

かわいい顔して、いつもの毒舌!

「おはよう。重ちゃん、今日もツインテールにして可愛いのにキツイこというわねー」
「さゆみは甘いコトばっかり考えてないんで」

くっ。ムカつく! 話題を変えたほうがいいわね。

「新入生どれくらい入ってくれるかなぁ、楽しみよねぇ」

じっ、と見つめられ、嫌な予感のあと

「可愛い女の子鑑賞したいだけですよね、少しはご自分の未来を考えてはいかがです?
 学食混むんでお先に失礼します」

そういうと二つの毛束を揺らしながら、部室を出て行った。
うるさいなぁ、わかってるよそんなこと。……わかってるけど。
4 :みおん :2011/09/17(土) 18:43
ドアが動く音がした。重ちゃん忘れ物でもしたのかな。
隙間から見えたのは金髪ショートカット。な〜んだ。

「裕ちゃん、おはよー!」
「おはようさん。……下に重ちゃんおったけどなんやプリプリしてたでぇ。怖くて声かけられへんかったわ」
「あー……」

やっぱりイラついてたのか。

「どないしたん?」
「んー、たいした話じゃないよ」

さっきの会話を軽く教えた。あと、前年度の冬頃からなんだかイラついてることも。

「おかげで毒舌絶好調。こわいこわい」
「圭坊ですら怖いのん? いややわぁ〜。ウチなんて無理やない? なぁ」
5 :みおん :2011/09/17(土) 18:43
優しい目。柔和な表情。
初めて会ったときの裕ちゃんはこんなんじゃなかった。
社会人から大学入学、同級生はいくつも年の離れた未成年ばかり。
私となっちとかおりんと、そして矢口とサークル作ってしょっちゅうつるむようになった。
それでも金髪とカラコンは変わらなかったしキツイ関西弁に相手が慣れずふてくされてたし。
まさか院に進むなんて思いもせずに。

「なっちのあの笑顔ほど怖くはないよ、重ちゃんの毒舌は」
「うるさいわ、ボケぇ」

二人とも笑いをこらえている。

「私さ、わかってるんだ。裕ちゃんにもなっちにも甘えてること。
 だから重ちゃんの言いたいこともわかるし、それに……」
「ウチのこと心配してくれてるんやろ、なぁ。そろそろ学食空く時間やわ。まだやろ」
6 :みおん :2011/09/17(土) 18:44
名前欄を第一話とかにすればわかりやすかったんだorz
7 :第二話 :2011/09/17(土) 21:10


本日も部室でサボり。なーんて。
週に数コマしか講義はとってない。卒業論文という名の作品集は提出済みだけど。
実習がある講義めんどくさいのよねぇ。

……卒業はしたかった。でも矢口となっちに甘えてた、あの時までは。
ふと棚から一昨年のアルバムを引き抜いた。
まだ三限講義中だし、誰も来ないよね。そう思い、パイプ椅子に腰かける。
イベント毎の写真。ほとんどは私が撮影したものだ。
講義や仕事を離れての撮影は楽しかった。去年からは撮影してない。
撮影は同じ学科の重ちゃん。
何考えてるかよくわからない顔で撮影されるのは今と違う意味で怖かったけど。
去年のアルバムも、持ってこようか。
8 :第二話 :2011/09/17(土) 21:11

「失礼します」
「あ」

重ちゃん。

「なんだ、いるの保田さんでしたか」
「それ、どーゆー意味よ」

不思議そうな顔で手に持っているアルバムを見つめている。

「これ? 一昨年のアルバム。重ちゃん入学前の」
「……見たいです」
「いいけど」

重ちゃんは、パイプ椅子と荷物を適当に置き、私からアルバムを受け取ると真剣なまなざしで一枚一枚の写真を穴があくかと思うほど見つめ始めた。
私は去年のアルバムを棚から引き抜き、パラパラとめくっていた。
9 :第二話 :2011/09/17(土) 21:11
「これ、誰ですか」

ふと顔を上げると、ひときわ小さい女性を指していた。
ああ。

「矢口、って子。二年前の冬に退学したの」
「そう、ですか。今も誰か連絡取ってるんですか?」
「んー、たまに電話するけどすぐ切られちゃうしメール送っても返信はないよ」

ああ。聞きたくはない、けど。
10 :第二話 :2011/09/17(土) 21:12
「そんなに聞いてどうするのよ」
「……あの、言っていいかどうかわからないんですけど、でも」

まくしたてるような早口で

「明らかに中澤さんの表情違いますよね?」

言い切った。

「えー、そうかなぁ……」
「だって。中澤さん、去年は既にこんな表情して、なかった、です」

撮ってたからわかるもん、……かすかに聞こえた。

「重ちゃん、裕ちゃんのこと慕ってるもんねぇ」
「用事思い出したんで……重ちゃんって呼び方、嫌なんでさゆって呼んでください」
11 :みおん :2011/09/17(土) 21:12
第二話 了
12 :名無飼育さん :2011/09/17(土) 21:33
なんだか懐かしい面々が揃っていて嬉しいです
13 :名無飼育さん :2011/09/17(土) 22:12
お、新作発見
次回楽しみに待ってます
14 :名無飼育さん :2011/09/18(日) 13:31
わくわく
15 :第三話 :2011/09/19(月) 00:14

構内を歩いているなっちを捕獲し、この間のアルバムのことを手短に話す。
すると、まくしたてるように思ってることをぶつけてきた。

……シゲさんさぁ、去年の冬頃からイライラしてるよねぇ。
なんでなのかなぁ、家のこととか仕事のこととか、大学以外の理由も考えられるけどさぁ。
それにしたって怖いべ〜! なんでか毒舌もすごいし!
わたしカワイイ☆ て思ってる感じが!
裕ちゃんの表情? そりゃ変わるべさ。だってさぁ、ねぇ……

聞かなくても本当はわかってたんだ。でも否定したかった。
矢口いなくなって裕ちゃんの表情があんなに変わるなんて。
16 :第三話 :2011/09/19(月) 00:15

ゴールデンウィーク前、新入生たちが活発に動いてる。
東京に出てきて初めて帰省する子も多い。
裕ちゃんは帰る気なかったから、講義休みになるとよく宅呑みしてたなぁ。
今日もいつものように部室に入り浸っ……てるわけじゃないのよ! 信じて!

「こんにちは」
「重ちゃん、帰省しないの?」
「なんですか、藪からどじょうに」

荷物をゆっくりと下ろす彼女を見ると、変な感じがする。なんだか、いつもと違う。

「髪切った?」
「切ってませんけど。伸びたからかな」
17 :第三話 :2011/09/19(月) 00:16
うーん、なんだろうこの違和感。パイプ椅子に腰かけた重ちゃんは、ゆっくり頭を抱えた。

「どーした? 頭痛?」
「……ある意味。考えすぎて頭痛いんですよ、誰かさんと違って」

けだるそうに頭を上げて、首をかしげた。
いつものツインテールなのに可愛いだけじゃない気が。
18 :第三話 :2011/09/19(月) 00:16
「保田さんは、誰かのこと、気になって仕方なくなることはありますか」
「……そりゃあ、あるわよ」
「失礼ですけど安倍さんですか」
「否定はしない」
「あ、やっぱり。……でも、構内で見かけたらずっと追いかけて撮影したくなりますか?」
「しないけど」
「もうめんどくさいんですよね、ブログ用でーす! て掛け声ならいいのかな……」
19 :第三話 :2011/09/19(月) 00:16
会話がかみ合ってないし。
重ちゃんは高校生の時から自分で撮りためた写真をブログに掲載している。
業界から注目されて何冊か写真集を出していた。

「仕事用のブログに?」
「そうですね、載せたいです。でも載せたくないんです」

微妙な乙女心、か。誰かに恋してる。あの人じゃなきゃいいな、と思いつつ。
なんで大学入学したんだろ。こんなに注目されて。仕事だってすごいらしいし。

「……なんでわざわざ大学きたのか知りたいって顔してますよね」
20 :みおん :2011/09/19(月) 00:18
ここまで第三話です。

>>12
時代錯誤なんです、たぶん

>>13
楽しんでいただけるように頑張ります

>>14
てかてか
21 :名無飼育さん :2011/09/19(月) 16:16
珍しい組み合わせなのですごい楽しみ
22 :名無飼育さん :2011/09/19(月) 22:15
俺もこの組み合わせはかなりツボ
23 :第四話 :2011/09/23(金) 20:15
「さゆみの写真は感性だけって言われるんです。技術がないって」
「専門学校じゃダメなの?」
「学生時代って青春だってよく言うじゃないですか。専門だと課題に追われそうだし」
「色々楽しんでみたかったんだ。それでサークルに」
「ビラ配ってた安倍さんに引き止められて、そのとき中澤さんも来て怖くて……」
「仕方なく入った、て感じだったんだ。その割には楽しそうだけど」

言葉をじっくりと探しているようだった。
うーんと小さくうなりながら首をかしげると、白いうなじがみえそうで。
ああ、そうか。色っぽくなったんだこの子。そう思うと、声すら悩ましい。

「人見知りなんで、積極的に誘ってくれるのありがたいです」
24 :第四話 :2011/09/23(金) 20:15
安倍さんは自分が一番かわいい☆ て思ってるの気に食わないです、笑顔も怖いです。
飯田さんは目が怖いです。卒業されたのでよかったです。保田さんみたいに残らなくて。
吉澤さんと石川さんの痴話喧嘩には巻き込まれたくないです。
他にもたくさんの仲間ができて、さゆみ、すっごく嬉しいんですよ。こう見えて。
保田さんだってこうやって気にかけてくれてるし。
まぁさゆみが保田さんの単位を心配してるんですけど。
中澤さんは、思ったより怖くなくて優しくて。……でも、どこかさびしそうなんです。
25 :第四話 :2011/09/23(金) 20:15
「裕ちゃん、前は怖かったよ、前はね。さびしがりやなのは前からだけど」
「……そ、ですか。でもやっぱり、矢口さん、て人がいるときと今では……」
「ん、それは……なんとなく気づいてても、ね」
「鈍感すぎるんです。誰かを想ってるからあんな表情するんだ、って気づけなくて」

泣きだしそうな。でも唇を噛んでじっと我慢してるように見えた。

「かわいいじゃないですか、酔ってくると甘えるし。ずるいです」
「重ちゃんは前を知らないからね」
「過去に興味がないわけないじゃないですか。
さゆみがイライラしてる原因、保田さんだって知りたいでしょ」
「まぁ、ね」
26 :第四話 :2011/09/23(金) 20:16
部室内が暗くなっていく。まだ日が落ちる時間ではない。
遠くで雷鳴が聞こえた。雨が屋根にあたる音も。
まだ本降りではないようだ。降る予報じゃなかったのに。

「通り雨だといいんですけどね」

二人で窓の外を見つめる。そう簡単にはやまないかも。
雷の音がだんだん近づいてくる。

「誰かいるん?」

はっと、目を向けると裕ちゃんがドアから覗いていた。
大きな雨粒が屋根に落ちてぶつかっていく。
27 :第五話 :2011/09/23(金) 20:17
不協和音が聞こえる。めんどくさい。逃げたい。
二人して沈黙。休符はいくつも並ばないわけで。
裕ちゃんはニヤリと笑顔になり、適当な椅子に座った。
紫色の傘をたたみながら。傘の先からは大きなしずくが落ちていく。

「雨宿り?」
「そんなわけないやん。暇なのいるんやろ、圭坊より若い子で」
「重ちゃんしかいないけど」
「ええなぁ。講義サボってもええんやったら、な」
「……さゆみは別に」

嫌そうな言い方をしながらも、照れているようにみえる。
回りくどい言い方だけど、指名されたようなもんだし。あなたがいい、と。
28 :第五話 :2011/09/23(金) 20:18

……そういや、あの頃はいつも矢口が話し相手になってたな。
今よりもみんな部室にたまってた。くだらない話しかしてなかったのに。
講義が終わったら誰かの家に押しかけてさ。
そのまま夕飯作って食べたり、お酒買ってきて飲んだり。
居酒屋に行かなくても楽しくやってた。毎日のように。
いつも矢口が裕ちゃんの隣。でもみんなといるのが楽しくて仕方ない感じで。
どんどん移動しちゃうから裕ちゃんの隣はすぐに空く。寂しそうな顔で帰りを待ってた。
何もしない裕ちゃんの隣に私が移動することもあった。
そんなときでも、笑顔で矢口への愚痴。矢口が気にしてたからつい、
『そんなことばっかり言ってると逃げちゃうんじゃない?』
言ってしまった。本当にそのとおりになるなんて思わずに。
まだ裕ちゃんは覚えているのかな。あのときの私の言葉を。
29 :第五話 :2011/09/23(金) 20:18
そのときの裕ちゃんの表情がまぶたの奥に浮かんできた。
悲しい、というより怖い、と思った。
なんだか空っぽになってしまいそうで。何もない、という恐怖。

――ウチには守るものがなにもないんよ――

ハッと我に返る。楽しかったけれど、悲しい思い出。
今の裕ちゃんは、笑顔で重ちゃんと話してた。あのころと同じかもしれない。
……キャッキャッウフフ、か。私がいてもなっちでもかおりんでも埋められなかった。
その隣に重ちゃんがいる。裕ちゃんを想ってる重ちゃんがいる。
30 :第五話 :2011/09/23(金) 20:19
いつの間にか窓の外に青い空が広がっていた。
白い雲も綿菓子のようで美味しそう。

「雨、あがったなぁ」
「さゆみ、久しぶりにサボっちゃいました」
「……あはは、またサボっちゃった……」
「圭坊、次の講義は出よう、な」
「自分から単位を切ってるんですか。自殺行為?」
「単位は最後まであきらめたらあかんで」

憐みの視線を先輩と後輩から……ううう。
素早く荷物をまとめると、今度こそ逃げ出すように部室をあとにした。
31 :みおん :2011/09/23(金) 20:22
第四話&五話の更新完了です。
ドリムス秋の舞前に! だからこそ?

>>21
自分でも読んだことがないと思います
知らないだけかもしれませんが

>>22
ありがとうございます!
完結まで折り返し予定です、今のところ…
32 :名無飼育さん :2011/09/25(日) 01:26
更新きてたー
33 :第六話 :2011/09/26(月) 20:18

   ◇

「保田さん、行っちゃいましたね」
「サボらなきゃえーのになぁ」
ここに彼女がいたら、うるさいっ! と叫んでいただろう。
部室に二人きり。その彼女が見たいと思った二人。

道重は中澤の顔をまっすぐに見つめた。
「……中澤さん……あの……」
口がうまく動かないと道重は思った。言葉もうまく出てこない。
「どしたん? 顔真っ赤にして。重ちゃんの肌、白いからうらやましい」
道重の気持ちなど気づいてない。
矢口の気持ちにも気づけずにいるのだろう。
思い切って直球をぶつける。
34 :第六話 :2011/09/26(月) 20:18
「好きな人はいますか」
読唇術はできないが、答えを逃さぬよう唇を見つめる。
「……おるよ。今は離れ離れやけどな。重ちゃんにもいるんか」
頭をかきながら中澤は答えた。
「いました。……でも今はよくわからないです」
金髪をかきあげるとともに、上を向く。
見つめられたら心の中が読まれそうな気がして、中澤は天井を見つめた。
誰かを思い出したのか。
「恋愛は難しいなぁ」
溜息に似た呟き。
「あの、ですね、さゆみは去年の冬まで女の子と付き合ってたんです」
道重が下を向くと、肩にかかっていた黒髪のツインテールが揺れた。
秘密を聞かされても特に驚くことはない。後輩への優しさからか、それとも。
35 :第六話 :2011/09/26(月) 20:18
二人の視線は交わることなく、会話は続く。
「でもフラれたんです。同じ人の話ばかりしてたらしくて。
『……その人に恋してるんでしょ』、って。一方的に」
「気づいてなかったんか」
「はい。わからなくてイライラしてて。
保田さんと話してたら、そうかなって、最近は思うようになりました」
そう話しながら道重は中澤の横顔を見つめた。
視線に気づいたのか耐え切れなくなったのか、中澤はようやく道重の顔を見た。
「イライラの原因なくなりそうなん?」
「いえ……」
道重は口ごもる。
36 :第六話 :2011/09/26(月) 20:19
「なんでや!」
大声になると関西弁はキツく聞こえて、標準語に慣れている人間には恐怖だ。
道重に視線を合わせているので、余計に怖く感じるだろう。
「恋は難しいです。相手が過去をひきずってることもあるから……」
「そうやな、ほんま難しいな」
「どうしたらいいんでしょうね」
「……うーん、待ってみるのがええと思うで」
「はい、そうしてみます」

会話が止まる。
柔らかな仕草の奥に正直さと芯のある考え方を感じた先輩。
ピンとした空気と威圧感が発せられているように感じた後輩。

「なぁ、重ちゃん、なんで今日、こんなこと話してくれたん?」
「空があまりにも青かったので」
(……いいよね。そしてさようなら、えり……)

   ◇
37 :みおん :2011/09/26(月) 20:20
第六話更新終了。
分量の加減がわからないッス

>>32
レスきてたー
書き込みありがとうございます、励みになります
38 :名無飼育さん :2011/09/26(月) 23:43
おつです
先が楽しみです
39 :第七話 :2011/09/29(木) 00:48
中澤は一人、部室にいた。
講義に出席するため、二人して出たのになぜか戻ってきてしまった。
棚からアルバムを一冊取り出す。
それはほんの少し前、保田と道重が見たものだ。
彼女が知らないこと。

立ったまま、ぱらぱらとめくる。
左手でアルバムを支え、右手は写真の上をなぞっていく。

「なんで遠くにいってもうたん?」
問いかけても答えが返ってくることはない。

「裕子姉さん、寂しいんやで」
そう呟くと、涙が零れ落ちないように上を向く。
40 :第七話 :2011/09/29(木) 00:49
指は、道重が指した写真と同じところで止まっていた。
それも彼女は知らないこと。
金髪の小柄な女性。にかっと大きく口を開き笑っている。
その左隣には安倍、飯田、保田も写っている。
矢口の右隣に写っている自分が、最近鏡で見たのとは違う表情をしている。
子供じみていた、と今なら振り返られる。重ちゃんのおかげで。
でも耐え切れない。アルバムを閉じ、そっと棚に戻す。
41 :第七話 :2011/09/29(木) 00:49
遠くに行ってしまいたい、と思う。矢口を知らない人、風景。
誰かを想う自分に恋する道重がいない場所。
「待っててええんかなぁ……?」
来ないかもしれない人を待ち続けるのは辛いものだ。
矢口はいなくなったが、道重はやってきた。
自分を待つ人がいる。心変わりするかもしれない自分を。
42 :第七話 :2011/09/29(木) 00:49
目を閉じると矢口の顔がうっすら見えた気がする。
でも声は、さっきまで一緒に居た道重になっていた。
顔も少しずつ道重の顔になっていく。

「……最近、重ちゃんの笑顔全然見てへんわ」
なにかに衝き動かされるように一歩踏み出す。
一歩、また一歩と。
そうしてるうちに歩幅は広くなり、ドアを開け、部室を出ていく。
廊下を小走りでぬけて、部室棟を出ると大股で駆けていく音が聞こえた。
43 :第七話 :2011/09/29(木) 00:49

   ◇

空気が爽やかで気持ちいい季節。
ゴールデンウィークも新入生歓迎会という名の飲み会も
あわただしく過ぎ去り、少しずつ通常営業の風景に戻っていく。
梅雨前線はいつごろ来るんだろう。
もうすぐ裕ちゃんの誕生日。今年は日曜日だし。
なっちや後輩にメールして場所と時間おさえなきゃ。
44 :みおん :2011/09/29(木) 00:53
変則的ですが第七話の更新です。
なんだか壮大なプロローグな気がしてきたorz
三人称書くの初めてなので読みにくいかもしれません。
精進します。

>>38
ありがとうございます。頑張ります。
45 :第八話 :2011/09/29(木) 22:18
本日は中澤裕子3×才のお誕生日です。
私の家でやるんだけどね。……なんでみんなの家じゃダメなわけー!?
仕方ない。一番広いのは裕ちゃん家なんだけど。
シンポジウムの手伝いに借り出されるから無理と言われちゃ、ね。
石川と吉澤はなにか作って持ってきてくれると言ってた。
なっちと重ちゃんには期待してない。
お酒のおつまみで簡単にできるもの。なんだろう。
サラダ! チーズ! からあげ! お酒! お菓子少々!

なっち、重ちゃん、石川吉澤。二人が持ってきてくれたおかず。
主賓はまだ来ない。
丸テーブルの台所に一番近いところが私、その左隣になっち。
右隣には吉澤そして石川。その隣が重ちゃん。
なっちと重ちゃんの間が空いている。いつの間にかそんな順で座っていた。
チャイムが鳴る。後輩たちの背筋がのびた。緊張しなくても。
46 :第八話 :2011/09/29(木) 22:18
「おそなったな」
「大丈夫。主役がいなかったら始められないでしょ」
裕ちゃんはいわゆるリクルートスーツでやってきた。
普段そういう服装を見ないから不思議な気分だ。
「みんなー、主役の登場だよー」
「ちょっ、恥ずかしいやん」
大きな拍手とともに「イエーイ!」って石川がはしゃいでるのがわかる。
空いてるところに座って、即カンパイして。
『誕生日おめでとー!』「ございまーす!」
「ありがとさん」

「はい、重ちゃん以外みなさん呑むでしょうから。酔う前にプレゼント渡してあげて」
私がそういう前にみんな用意し始めてる。
「なっちからはこれ!」「私からはお酒!」「わたしたちからは……」
「あの、みなさんみたいに高いものとかじゃないんですけど」
重ちゃんはおずおずと小さなアルバムを差し出した。
「見てええの?」
「はい」
47 :第八話 :2011/09/29(木) 22:19
白い表紙に今風に可愛くデコってあって。
重ちゃんの緊張が伝わってきたのか、なぜかソワソワしてきた。
「去年のやー。なー、懐かしいな」
笑いながら重ちゃんに話しかけると嬉しそうな笑顔で。
携帯が震えてる。メールだ。しかも石川から。
<さゆって中澤さんのこと好きなんじゃ?>
急いで<たぶん>と返信。メールを読むと隣の吉澤に見せている。なるほど。
最後のページまで楽しそうに見て。ん? あれ?
文字を追うかのような目の動き。裕ちゃんの顔が真っ赤になっていく。
素早くアルバムを閉じたかと思うと、カバンのそばに置いた。
「裕ちゃーん、なっちが見ていい?」
「ダメや」
「えー、ケチぃ」
真っ赤なまま、お酒に口をつける。何を書いたの重ちゃん……。

宴が終わった。石川と吉澤は早めに帰宅。あの二人は最近どうなの?
なっちは寝てる。重ちゃんと裕ちゃんはまだいる。私は台所でお片付け。
48 :みおん :2011/09/29(木) 22:20
第八話更新終了。
最終話あたりは今夜か明日。
一旦、関係ない短編をはさみます。
49 :最終話 :2011/09/30(金) 00:46

 
   ◇

「重ちゃん」
「はい」
「プレゼント、うれしかったで」
「……あの」
「なぁ、まだ思い続けてる人がおっても、それでも」
「それでもいいです」
「ん」
道重が見つめると、中澤は視線を外した。
だが、そっと中澤は手を道重へ伸ばす。
お互いの手と手が重なって、体温を感じる。
視線を下に落とすと、ぎゅっと道重の手が握られた。
「うん」
もう一度、はっきりと中澤が返事をする。
二人の頬が赤くなった。

「今日の中澤さん、いつもと違うからすごく素敵です」
「……服装のせいやろ」
50 :最終話 :2011/09/30(金) 00:47
     ***

   大好きなあなたへ

 わたしが 変われる日
 あなたに 会える日

 わたしが 変わるとき
 あなたに 笑ってほしいとき

 ずっとトナリにいたいから
 あなたのために強くなります
     
     ***

アルバムの最後のページに添えられた詩。
道重の言葉が嬉しかった。素直にうれしいと思えた。

   ◇
51 :最終話 :2011/09/30(金) 00:47
梅雨前線がやってきて毎日雨降り。でも今日は久しぶりの太陽。
空も綺麗なぐらいに真っ青で。裕ちゃんと二人、構内を歩きながら。

「圭坊、ウチ告白したで」
「へっ?」
「大丈夫やった、意外と」
「誕生日会のとき?」
「そうや。重ちゃんの隣にいてもええかなー、て」

「……なんで教えてくれたの?」
「空が青かったからや。それだけやで」
理由なんてない。気まぐれに。
誰かが人を好きになるのに理由がないのと同じように。
「あー! 私もいい恋したい!」
「なっちと?」
「うん」
「……無理やと思うで」
52 :最終話 :2011/09/30(金) 00:48

   END.
53 :目次 :2011/09/30(金) 00:58
第一話 >>2-5
第二話 >>7-10
第三話 >>15-19
第四話 >>23-26
第五話 >>27-30
第六話 >>33-36
第七話 >>39-43
第八話 >>45-47
最終話 >>49-52

              To be continued...?
54 :あとがき :2011/09/30(金) 01:08
保田さんが空気ですみませんでした
今後は道重さんと中澤さんがメインにしかなりません
道重さんの詩は創作です

一人称(道重視点or中澤視点)か三人称で迷ってます
今回のような感じでも読みやすいのならまた違いますが……
周辺人物の短編もかけたら面白いかもしれません

本日23時50分ごろから全く関係がない短編なんですが、このスレに投下予定です
連載中に短編四作書くとかバカじゃないの
55 :名無飼育さん :2011/09/30(金) 23:49
   
   全く関係ない短編・リアル                   

                      2011年09月28日 初稿
                      2011年09月30日 改稿
56 :未来の扉 :2011/09/30(金) 23:50
  
   未来の扉
57 :1.モーニング娘。である理由 :2011/09/30(金) 23:50
高橋の卒業か。……十年だって。
五期の新垣、それに六期も二人、成人組がいる。

卒業コンサートの場合、最終日はいつも空けさせる。
けど、今年はドリムス。の仕事が入ってしまった。
それでも武道館には行く。行かせてもらう。

高橋の卒業と十期の発表が同時に行われる。
六期あたりからかな、こういうことになり始めたのは。
自分と関わりが少ないことは思い出しづらくなってきた。
……年だなぁ。
58 :1.モーニング娘。である理由 :2011/09/30(金) 23:50
楽屋に行くと現役メンバーがいる。
半分は九期になった。知らない子たち。
あたしがいないモーニング娘。を見て育った子たち。
「おはようございまーす」
九期の四人も慣れてきて。そんなところで、もう後輩ができる。
教育係はできるのだろうか。新垣が卒業したらリーダー誰になるのか。
不安と期待が胸をかけめぐる。
59 :1.モーニング娘。である理由 :2011/09/30(金) 23:51
高橋がかけ寄ってきた。
「来てくれてありがとうございます。
新メンバーのお母さん、モーニング娘。の大ファンなんですよ!」
そんな時代が来るなんて思ってなかった。
もっと早く解散すると思ってたもん。
「中澤さんたちが『愛の種』をまいてくれたおかげですよね!」
眩しいぐらいの笑顔で言う。
初めて娘。を出て行ったあの子の笑顔と重なった。

キラキラした十期の四人。
愛の種をまきちらせますように。
たくさん花が咲きますように。
60 :未来の扉 :2011/09/30(金) 23:51
あの子を思い出させる高橋がもう卒業で。
誰も頭が上がらないリーダーと言われてきたけれど。
――今度は新垣が背負っていく。
61 :2.変わらない関係 :2011/09/30(金) 23:52
「ブラックって苦くないですか?」
「別に。大人やもん。そういう重ちゃんはなに飲んでるの」
「紅茶。……そういえば『モーニングコーヒー飲もうよ』
って実際に言われたことありますか?」
「はぁ? あるわけないやん」
「えー、大人なのに」
「うっるさいわぁ」
「飲んでどうするんですかね」
「『二人で』飲むのが嬉しいんやないの」
「じゃあ、今がそうですね」
「はぁ? 第一、今あなたが飲んでるのは紅茶でしょ!」
「まぁまぁ。さゆが隣にいてあげますから」
「……今の娘。はどうなの?」
「あー大変ですよぉー。でも育てます」
「重ちゃんが?」
「注意とか苦手だけど、先輩がそういうことしてくれてたから
さゆみがお仕事できるようになりました。だから返していくんです」
「かおりんみたいにならへんようにな」
「さゆが目指してるのは中澤さんですから」
62 :未来の扉 :2011/09/30(金) 23:52
この子がずーっと努力してるのは知っていて。
たぶん近い将来、頭が上がらないと言われるのはこの子なんだと思う。
でも忘れちゃいけないあの子がいる。
――あの子がいなくなってから
63 :3.モーニング娘。を好きな理由 :2011/09/30(金) 23:53
「ねえ、裕ちゃん」
「なんや」
「『Never Forget』の歌詞読んで気づいた?」
「ん?」
「あの頃よりも髪がのびた事 あなた知ってた?」
「ええ?」
「っていう歌詞があるの」
「ふん、それで」
「だからー、『愛の種』で裕ちゃん髪切ったでしょ」
ああ、と納得。
64 :3.モーニング娘。を好きな理由 :2011/09/30(金) 23:54

♪髪を切って 夢をみがく 好きな空を めざすために♪

「で?」
「すごくない? これ裕ちゃんのことだよ、きっと」
笑って、そう言った。
娘。からいなくなったら、芸能活動もやめるって聞いた。
「つんくさんも粋やな」
「私、髪切ってデビューした裕ちゃんのこと忘れない、絶対忘れない」
髪切れへんやんか、そんなん言われたら。
……コンサート前はどうしようかなぁ、思てたのに。
65 :3.モーニング娘。を好きな理由 :2011/09/30(金) 23:55
ずっと笑顔で歌ってた。ウチらが泣いてた。
笑顔で出る人、泣いて残る人。
初めての全国ツアー、八人で最後のステージ。

七人になってから美容院に行った。
もう一度、夢をつかむために。
もう一度、てっぺんを目指すために。

誰かが愛してくれるモーニング娘。のために。
ウチの大好きなモーニング娘。のために。
66 :未来の扉 :2011/09/30(金) 23:56
復帰の噂はたびたび耳にしていたけれど。
本人かどうかなんて関係なくて、歌声が聴ければいいと思う。
――世界中の空 全部つながってる
67 :4.新しいモーニング娘。のこと :2011/09/30(金) 23:57
「ねぇフクちゃん」
「道重さん、どうしました?」

え、と耳を疑った。
なっちがよく「福ちゃん」と呼んでいたのを思い出す。
そういや九、十期メンバーの名字も飯窪、石田……。
それに成人組の三人はあたしがデビューしたころの年齢で。
飯田、石黒、中澤。そしてフクちゃん。
あとの新メンバーは十二才前後。
なっちっぽい名前の子はいなかったような気がする。
けど。けど。
68 :4.新しいモーニング娘。のこと :2011/09/30(金) 23:59
……なんや。
この子らの中から新しいなっちを見つける気ぃかいな。

よっしゃ! あたしもドリームで青春つかんだる!
あの頃の青春の光を忘れんように。

あたし
がんばるーっ!
69 :未来の扉 :2011/10/01(土) 00:00

二〇一一年十月一日、新しい扉が開く。

   未来の扉 1999-2011 END.
70 :∞.小話 :2011/10/01(土) 00:00
从#~∀~#从<重ちゃんはリーダーになれるのかいな

从*・ 。.・)<ヤるんですよ

从#~∀~#从<えっ
71 :みおん :2011/10/01(土) 00:01
次回更新は昔書いたアンリアルこんごまか
本編?です
72 :名無飼育さん :2011/10/02(日) 09:37
こんごまwktkしながら待ってます
73 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:13

 こんごま・アンリアル
74 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:13
「紺野さ、なにしてんの。帰りたいんだけど」
「え、でも先輩の制服のスカーフほつれてますし」
「……校則違反じゃないし」
「ダメですよ、あたし、生徒会の端くれですし」
「こんなことしてるうちによっすぃー部活から戻ってきちゃうよ?」
夕方。オレンジ色に染まった三年生の教室。
部活動に燃える学生達の声が遠くから聞こえる。
「なんでそこで吉澤先輩を出すんですか」
「早く帰りたいから」
むぅと少し怒ってみせる。少しでも気にされたいのに。
75 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:13
出会ったのはいつだっただろうか。
役員の高橋先輩と見回っていた時だったと思う。
全校朝会に遅れてきた学生がいないかと。まだ五月。
めまぐるしい日々を送っていた頃だった。そんな朝の三年生の教室。
お嬢様学校とは言わないけれど、不良学生はいない静かな校風。
全校朝会が始まって十五分は過ぎていた。
とある教室で、パジャマ姿のまま机に座って寝ている学生がいた。
それが後藤先輩だった。……もちろんその後は大変だったけれど。
性格からか、あたしはほっておけなくなり、時間があれば見に行くようになった。
それが始まり。中学時代から親友だった麻琴に言わせると、恋らしい。
女子校にはよくあることだし、と言っていた。
もちろん否定したけど、後藤先輩にべったりな吉澤先輩の存在は気になる。
吉澤先輩からは邪険に扱われているあたしです。
76 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:14
「ごっちん!」
後ろから、不意に明るい声が教室に響く。
その声に怯えた私は、針で自分の指を刺してしまった。
「痛っ」
見ると、指から赤い血が。
「どうした?」
言うが早いか、後藤先輩は指を取って口に含んだ。
後ろからは吉澤先輩の足音が響いてくる。カツン、カツンと。
足音のほうを振り向くと凄い形相で睨まれた。正直、怖い。
後藤先輩は気づかずちゅっちゅっと吸っていた。
……なんでこんなことしてんだろ、あたし。
目をつぶって下を向いた。
温かい口の中からひんやりとした空気に冷やされる指。
「そんなに痛い? だからやんなくていいよって……あ、よっすぃー」
「最近のごっちんは、その後輩に夢中みたいだね」
「そうかな、誰といたって同じだよ」
77 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:14
破壊力のある言葉が心に突き刺さる。
誰といたって……、裁縫道具を早々としまい、退散する事にした。
何も言えなかった。吉澤先輩を怖いと思う自分、後藤先輩の言葉に傷ついた自分。
もう何もかもがわからなかった。教室を出た途端、吉澤先輩の声が聞こえた。
「どう思ってるか知らないけど……あの子がいるのあたしは迷惑」
……迷惑。泣きそうになった。
後藤先輩が言ったわけじゃないけれど。
裁縫道具入れを握り締め、生徒会室に向かった。

「……だから?」
78 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:15
生徒会室には思ったとおり高橋先輩しかいなかった。
きっと目を赤く腫らしていたのだろう。
「……あさ美、どうした?」
「どうもしません」
「どうもしなかったらそんな顔しないし。ちゃんと言ってみ」
どうせ後藤先輩がらみだろうと、困った顔をしている。
「気になっている人に誰といたって同じって言われたらどう思いますか?」

沈黙。原因がわかっているだけに困惑度が増したのだろう。
「あさ美さぁ。多少なりとも好きじゃなきゃそんな言葉でそんな顔しないと思う」
彼女は早足で部屋の扉を閉めた。
そして、ゆっくりと優しくあたしを抱きしめてくれた。
「泣いていいから」
79 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:15
とある日のこと。後藤先輩は保健室にいた。軽い頭痛だという。
その場に級友と見られる人物はいなかった。
グラウンドで怪我人が出たとかで、養護教諭もいない。二人だけの空間。
「先輩、調子はどうですか?」
「あ、紺野〜たいしたことないよ〜、ちょっと目眩がしただけ」
そういう先輩の額には汗が滲んでいた。寝汗だろうか。
ポケットからハンカチを取り出し、軽くふき取った。
「紺野は優しいんだね」
「でもごっちんは優しい人、苦手でしょ」
80 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:16
振り向くと吉澤先輩が立っていた。
「ごっちんはよしざーといたほうが楽しいんだよ」
「後藤先輩はどう思っているんですか」
「誰といたって毎日退屈だけど」
問に間髪入れず答えられた。悔しい。
「……だけど」
あたしは少し首を傾げた。
「ごとーは好きだよ、紺野のこと」
それでいーじゃん、という心の声が聞こえた気がした。
81 :熱と棘 :2011/10/03(月) 20:16
 END.
82 :みおん :2011/10/03(月) 20:16
2008年10月14日に書いたらしいです。
83 :名無飼育さん :2011/10/04(火) 12:23
ごまこんに吉澤で学パロ素晴らしい
84 :みおん :2011/10/07(金) 18:21
レス返しだけです

>>72
こんな感じでよかったでしょうか

>>83
ありがとうございます
学園物は好きですw
85 :みおん :2011/10/09(日) 13:21

 天然キャンディッド続
   中澤視点
86 :1.Storyが始まる :2011/10/09(日) 13:22
あたしにとって七回目の夏がやってきた。
青い空がどこまでも広がってさわやかな季節。
背筋もピンと伸ばしたなるし、どこかに出かけたくもなる。
試験期間中、資料探しに図書館こもったし時間もないし。
こっちもこっちでせわしなったし。そもそも連絡先知らんかったし。
全然会えへんかった。今日はサークルで春期納め!
みんなとも久しぶりに会う。話すで飲むで騒ぐで!

待ち合わせ場所に急ぐ。ほとんど全員おるみたいや。
まとめ役である小川が携帯見つつ、みんなに声をかける。
「保田さん少し遅れるみたいなんで、先に行きましょう」
まーた遅れてるー、なんて声が出て、小川を先頭に歩き始めた。
テンションあがってるからか誰と話しても楽しい。
重ちゃんも梨華ちゃんやよっちゃんと話してて。こっちに気づいてくれへん。
87 :1.Storyが始まる :2011/10/09(日) 13:22
「中澤さぁーん」
「いつまで経っても甘えたやな」
「だぁってぇー。みきたんいないもん」
「藤本おらんようになって半年か。さびしいな」
「そーですよぅ。中澤さんだってさびしいでしょ?」
あの子、おらんようになってどんぐらい経ったんやったろう。
「……忘れたな」
「えー! うそぉ!? ほんとに? どうやって忘れたんですか!?」
忘れたわけではないんやけど。
「秘密」
「えーーー! あ! もしかして恋人でもできましたぁ?」
最近おうてへんし、他の後輩からは落ち込んでるって聞いてたし。
忘れてたけど、この子テンションあがりやすいんやった。うわー、間違えたわ。
88 :1.Storyが始まる :2011/10/09(日) 13:22
飲み会も一時間が経過……。重ちゃんと話したいなぁ。
入れてもらおかな。と、席を立とうとしたら隣に来てくれた。
「こんばんは、久しぶりですね」
「そ、やな」
あかん、うまく喋れへん。……って。重ちゃんが飲んでるの美味しそうやな。
オレンジジュースみたいやけどグラスの底がほんのり赤い
「カシスオレンジやん、それアルコール!」
「裕ちゃん、知らなかったんだー。
シゲさん、この間の誕生日でハタチになったんだよね」
この間、祝ってもろたばっかりやん!
相手のこと知らんくせによう言うたわ。恥ずかしなる。
「あー、おめでとさん」
二人してグラスくっつけてカンパイ。
ビールが渇いた喉を通って、体中うるおしてくれるような気がした。
89 :1.Storyが始まる :2011/10/09(日) 13:23
「あ!」
プレゼント何も考えてへん。これ最大のピンチちゃうの。
落ち着け、目の前にあるビールを飲めばええねん。
「そういえば松浦さんが中澤さんに恋人できたらしいとか言ってたんですけど……」
……あの子はほんとにもう。
「重ちゃんのことはゆうてへんで。心配せんでも」
「はぁ、そうですか」
「そんなことより」
重ちゃんにしか聞こえへんように小声で話しかける。
「プレゼント、何が欲しい?」
「えっ……あ、あの気にしないでください」
「気にするわ!」
「……じゃあデートしてほしいです」
か、かわいい。年下の子にこんなん言わせてええんか、あたし。
「ええよ」
「よかった」
にこっと笑ってグラスに口をつけた。その横顔が妙に色っぽくみえる。
重ちゃんの身体が揺れて、あたしと接触した。
……あ、て思ううちにふわって浮いたかと思った。
すごく気持ちいい。でも、こっちから触るのもなんか変やし。
緊張する。いつの間にこんな重ちゃんのこと、気にしてたっけあたし。
90 :1.Storyが始まる :2011/10/09(日) 13:23
矢口やったらええのに、とは思わへんかった。
思ってる以上に自分のことがわからん。こんな楽しい気持ちいつぶりやろ。
さびしかったんやな、て過去を振り返れた。圭ちゃんとかいてくれたんに。
けど、けどな。隣に誰もおらへんのはやっぱりさびしいで。
さびしかったで矢口。……簡単に忘れて次の恋できればええのになぁ。
91 :1.Storyが始まる :2011/10/09(日) 13:23
一次会終わって、二次会行くのは何人だろ。
松浦は藤本いーひんからか帰った。重ちゃんと小春ちゃんはおってくれて。
カラオケにするか呑み続けるか。それとも二手に分かれるか。
そーいや重ちゃんより下の代の子が残ってくれるって久しぶりやな。
九人、若い子おるしカラオケでええんちゃうかなぁ。
なっちや圭ちゃんも久しぶりに歌いたいみたいやし。
「あの」
重ちゃんが近づいてきた。
「カラオケだったら帰ろうかな、って思ってるんですけど……」
「えー、歌わなくてもええやん。楽しも」
「でもさゆみ音痴みたいなんですよ」
「そうなん? そういうて本当に音痴な人おらんかったで」
「自分ではわからないですけどすごいらしいです」
「聞きたいわぁ」
92 :1.Storyが始まる :2011/10/09(日) 13:24

って無理やり歌わせたら本当にすごかった。
話聞いたら、この間までメロディーがあることすら知らんかったそうな。
はー、こういう人ってほんまにいるんやな。
カラオケ終わって帰ったのは、よっちゃんと梨華ちゃんだけ。小春ちゃんはまだおる。
さすがに居酒屋行くのもどうかという話になり、ウチに全員連れてくことになった。
もしかして……重ちゃんと先にウチに帰ったら、二人っきりになれたんちゃうの。
今日は浮かれすぎて、なんかおかしいわ自分。
93 :みおん :2011/10/09(日) 13:24
今回はここまで
94 :名無飼育さん :2011/10/12(水) 23:45
おおーおつですー
95 :2.この部屋の平和を本気で願ってるんだよ! :2011/10/13(木) 23:00
「裕ちゃん、今夜久しぶりにやらない?」
家に着く前に寄ったコンビニ。各々、お菓子や飲み物を買っている。
圭ちゃんの手には紙パックのワインとやっすいチーズ。
「何を?」
「麻雀」
「えーけど、やる人おんの?」
「なっち重ちゃん小春はやらないとして、他は打てるでしょ」

軽く自室を掃除して、場所を作る。
まこっちゃん、ジュンジュン、圭ちゃん、あたしの四人で麻雀を打ち始める。
重ちゃんと小春ちゃんはなっちと別の部屋でお喋りしてるし。
誰とでもすぐ打ち解けて話せるなっちには感謝や。
お酒もあまり入れずにまったりしてるな。
なっちなら毛布の場所も知ってるし世話好きやし、安心できる。
ガンガン打ったる。徹麻久しぶりやー。
96 :2.この部屋の平和を本気で願ってるんだよ! :2011/10/13(木) 23:00

「試験どやった?」
「私、単位が取れるかどうかは別にしても頑張ったよ」
「そんなんドヤ顔で言うことじゃあないで」
「保田さん相変わらずっスね」
「シュッセキしてノートとるだけ。なのになんでデキナイ?」
「ちょっ! あなたたち後輩でしょ!」
「心配してくれる後輩おるなんて素敵やんかぁ」
そう言い返すと、圭ちゃんの顔が曇ったような気がする。
「うん、そうだよね」
変なこと言うたかなぁ。
97 :2.この部屋の平和を本気で願ってるんだよ! :2011/10/13(木) 23:00
隣の部屋からは相変わらず明るい声が聞こえてくる。
なっちも小春ちゃんもテンション変わらへんなぁ。
重ちゃんの声があんまり聞こえない気ぃはするな。
二つのサイコロがころがるのを見ながら、つい気持ちが言葉になってしもた。
「……なぁ、さびしいときどうしてる?」
酔いがまわってるからか抑えられへん。ストレートに出てまう。
「裕ちゃん酔ってる?」
「みたいや」
「えー、中澤さん大丈夫ッスかぁ? 無理しないでくださいよぉ」
「ジュンジュンはサビシイとき、ダレかとくっつくよ」
「……それ、ええなー。すぐやるわ」
なんで気づかへんかったんやろ。隣の部屋に重ちゃんおるのに。
98 :2.この部屋の平和を本気で願ってるんだよ! :2011/10/13(木) 23:01
「重ちゃーん」
「はーい……なんですか中澤さん」
「うん、ちょいこっち来」
「え、なんで。なんでですか?」
「えーから!」
麻雀牌がぶつかる音が部屋に響く。懐かしい音が耳をくすぐる。
カンだの聞こえて、ドラが一つ増える。
いーからいきなよ、こっちはこっちで大丈夫。なっち、いいお姉さんやなぁ。
「どーしたんですか?」
横を見ると重ちゃんが体育座りでこっち見てる。
「あんな、後ろに回って欲しいねん」
「はぁ」
「えーから、早よ!」
畳と布が擦れた音がして、背中に柔らかい感触がある。
「腕、まわして」
「こーですか?」
右耳にあたたかい息がかかる。うわぁ、ゾクゾクくる。集中できるんかな自分。
99 :2.この部屋の平和を本気で願ってるんだよ! :2011/10/13(木) 23:01
「なっちー! お酒持ってきてー」
「安倍さーん、私にもコップ欲しいです。……保田さん呑みましょう」
「まこっちゃん、呑もう!」
「はいはーい、コップ二つでいい? ジュンジュンは?」
「お茶飲みたいデス」
「はーい。あ、小春もお茶飲むぅ? 裕ちゃんは補給中みたいだねぇ」
ええけど、これってめっちゃ恥ずかしい気がする。素面じゃ絶対でけへんな。
重ちゃんもええ感じに酔ってて。むふーて言いながら、いい感じに体預けてくれてる。
しあわせや。こんな簡単に手に入ってもええのかなぁ。
コップと飲み物を持ってくると、こぼさないように気をつけてねー、と笑顔で釘をさされた。
100 :2.この部屋の平和を本気で願ってるんだよ! :2011/10/13(木) 23:01
「さ、南場はじめるで!」
むにゃむにゃと耳に熱い息がかかる。
「あのー、さゆみ全然麻雀のルールわからないんですけどぉ」
「えーねん! ここにおればえーねん! わからなくてもかまへん!!」
はぁーい、という返事が息とともに耳全体にかかって、体が反応した。
「裕ちゃん、なんなの!?」
「うっさいわ! あたしだってどうにもならんのや!」
虚勢を張ったそばから、眠そうな声が耳元で聞こえる。
もう何言ってるか全然わからんのに、身体だけが素直に反応する。
芯がじわーっと熱くなっていくのも感じる。やばい。これはやばい。
「……重ちゃん、そんな息吹きかけへんでよ」
「ふふふ、中澤さんが反応するの面白いんで、つい」
この子、女王様タイプやんけ! 今ならまだ引き返せるんちゃうかな。
あ、デートせなあかんのかあ。しあわせなんやけどぉ。

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