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空の色

1 :作者 :2009/02/04(水) 00:33

りしゃみやです。シリアスめです。
稚拙な文章ですがよろしければ読んでいってください。
198 :名無飼育さん :2009/12/10(木) 21:33
更新お疲れさまです。
なんとも言い表し難い鋭さにどきどきしています。
199 :11 :2009/12/12(土) 12:20



窓をゆっくりスライドさせて、静かに開ける。
靴も音がしないよう気をつけつつ窓の外に落とす。
ジーパンのポケットに捩込んである携帯と財布と自転車の鍵を落とさないよう
注意しながら窓の枠に両手をかけて、体を乗せる。

片足づつ柔らかく着地。靴を履くと、窓に手を伸ばしきちんと閉めた。

庭に回る。
自転車に寄って行き鍵を空け、慎重に道路まで引いていって、出発。
ここでやっと、安心できる。

200 :11 :2009/12/12(土) 12:20


ずっと住んできたのに、夜の闇に浸っている街並みは全然知らない土地に
迷い込んだと錯覚するくらい雰囲気が違う。不思議な感覚。
女の子は怖がる子も多いと思うけど、うちは結構大丈夫なほう。
むしろ楽しい。それに街の別の顔を見ることが出来て得した気分。
大きく息を吸い込んで、深夜の空気を味わう。


夜に沈む道は車も人もほとんど通らない。
なんにも気にせず思うままに走れて爽快だ。
いつもならゆるいカーブを描く道に沿いハンドルを曲げるところを、
思いっきりラインをはみ出しながら曲がる。直線に入って漕ぐ
スピードを一気に上げる。意味なく蛇行したりもしてみた。


自転車で走ることを満喫していると、大きなマンション
が視界に入ってきた。
目的地到着。
もう辿り慣れた道だからちょっと思考を飛ばしたり、
遊んでいて集中していなくても、体が勝手に連れていってくれる。

いつもの場所に自転車を止め、小走りに入口を抜ける。
梨沙子の家の階のボタンを入力して呼び出しを押す。
201 :11 :2009/12/12(土) 12:21


「はい。」
「雅。」
「すぐあける。」

機械越しの業務連絡的な淡々とした応酬も慣れていた。
言葉通り早速ガチャンという音と共にエントランスホールへの自動ドアが開かれる。

マンション内に入ると奥にあるエレベーターを目指し、乗り込む。
うちはまだスパイだとか工作員とかゲーム勇者とか、何かの役をして
遊んでいる気分で来ていた。

だから、出迎えてくれた彼女に。


「……こんばんは、お姫様。」

こんなふうにふざけて言ったりして。


すると梨沙子も、ぎこちなくだけど乗ってくれた。

「こんばんは、……王子さ、ま?」


一瞬見詰め合って、もちろん吹きだす。玄関先でなにやってんのうちらーって。

笑い止むと梨沙子はやさしく手をとって、部屋へと招き入れてくれた。
202 :11 :2009/12/12(土) 12:21






203 :11 :2009/12/12(土) 12:21



部屋の電気を消し、家のみんなが完全に寝静まったのを見計らって、そっと抜け出す。
玄関を使ったら扉を開ける音でばれるから、窓から出て行く。
ほとんど毎日梨沙子の家に通っていた。

太陽が昇り始めるころに家に戻る。もちろん窓から。
ベッドに倒れこんで少しだけ眠って学校に行く。

こんな生活をしていたら当たり前に疲れるし学校では眠くてしょうがなかった。
元々真面目に授業を聞いていたわけではないけれど、以前と比べて
断然机に伏せて眠っていることが多くなった。授業の内容も
より分からなくなっていった。

204 :11 :2009/12/12(土) 12:22


部活に顔を出す頻度も減った。
ダンスは好きだったけど、それ以上に好きなものを見つけてしまった。
うちは不器用だから、両立させることが出来なかった。
キャプテン−部長だけどみんなキャプテンと呼んでいる−はもっと来なさいと
たまにうちを咎めたけど、適当に笑ってごまかした。

代わりに梨沙子と過ごす時間は増えて、その分うちの頭の中は梨沙子で
いっぱいになっていった。
何をしていても梨沙子のことを考えている。
そして梨沙子に関わる事以外はどうでもよくなった。

最初は守っているつもりでいたけど、一緒にいると自分のほうが離れられなくなって
しまったみたいだ。



205 :11 :2009/12/12(土) 12:22




「みやー、今日ヒマ?」

「んー、ごめん用事ある。」


LHRの後、帰る支度をしていると千奈美が目の前に立っていた。
視線を徐々に上げていくと不満げな顔を見つける。

「最近全然遊んでなくなーい?」

「そだっけ?」


目をそらすと千奈美は、前の席にこっちを向きながら座ってきた。
逃げられないな。あきらめて座りなおし、千奈美に体を向ける。

頬に痛いほど視線を感じる。仕方なく目を合わせて口の端だけ笑ってみる。


「てかみや、なんか授業とかも最近寝てばっかだし、あんま喋んないし。
なんかあった?」


千奈美はまっすぐな子だ。自分がおかしいと思ったこと、違うと思ったことは
有耶無耶にしないで納得がいくまで解ろうとする。
そんなとこ好きだ。
でも。

206 :11 :2009/12/12(土) 12:22


「なんもないよ。帰るから、また明日ね。」


言えなかった。言いたくなかった。
うちだってなんか違うってぼんやりとだけど気づいていたから。
絶対に梨沙子と会うことを控えろと注意されると思って、かわした。

間違ってるって分かってたけど、やめたくなかった。
今はとにかく梨沙子と居たかった。できるだけ傍に。
なによりもただそれだけ望んでいた。
一緒に笑って歩いて触れていたかった。
二人で居られれば他の事なんてどうでもいい。

何かを言いかけた千奈美を置いて立ち上がる。


ごめん、ちー。それから心配してくれて、ありがとう。
でも、うちどうしようもなく、恋に落ちてる。
梨沙子の隣に居るだけで心地よくて幸せで、満たされてる気分になる。
それだけでいいって、思えるんだ。思っちゃうんだ。


207 :11 :2009/12/12(土) 12:23


鞄を持って後ろの戸を引く。昇降口の方に梨沙子が立っていた。
小さく手を振っているのを見ると、心がじんわり熱を持った。

「かえろ。」
「ん。」


横に並ぶ。揃って階段を下りていく。
梨沙子の存在を隣に感じると頬が緩む。


遠くで千奈美が名前を呼んだ気がしたけど、
気のせいだと自分のなかで片付けた。
208 :作者 :2009/12/12(土) 12:27
ストック無くして自分追い詰めてみよう作戦。
更新速度落ちたらすいません。・・・うん、落ちそうw


>>196さん
二人とも血統証付の高級猫って雰囲気ですよね。


>>197さん
二人を描くことでいっぱいいっぱいですw

>>198
そう感じていただけて嬉しいです。
佳境だー。
209 :名無飼育さん :2009/12/12(土) 17:49
出会えた!!
こんな小説を待っていました、ありがとうございます
210 :名無飼育 :2009/12/13(日) 09:23
更新乙です!
この世界観をまんま実写化してほしい…
211 :名無飼育さん :2009/12/13(日) 23:00
ほおぅぅぅぅぅっ
作者さんのおっしゃるとおり。佳境ですね……
更新、おつかれさまです。
212 :12 :2009/12/16(水) 22:26


雨の日は地面が濡れるから抜け出しが出来ないし、自転車も
使えないので会いに行けない。

代わりにベッドに寝転んで、正面に張り付いているいつもの
出入口である窓を眺めながら電話をした。


「落窪姫みたい。」
「落窪姫?」


梨沙子の声の後ろ側から、降り注ぐ雨の音が携帯を通して聞こえて来る。
この部屋を満たしているのと同じBGM。目を閉じれば、隣にいるって
錯覚するほど重なり合う音。

「そう、落窪姫。この間古典でやったんだ。」
「そうなんだー。」
「えーっ。あたしがやってるならみやも去年やったはずじゃん。」
「あー……あははっ。」

213 :12 :2009/12/16(水) 22:26

笑ってとぼける。記憶にない。なんだっけなんだっけ。落窪姫?やったっけ。
古典てどれも似たようなかんじだからなあ。


「んー、思い出せないや。どんな話?」
「えーっとね。」

不遇な姫が偶然王子に見出だされ、結婚の儀が決まる最後の晩。生憎の大雨で
会いに行けない王子と姫の、手紙を通したやり取りの話だと説明してくれた。


「雨の日に会えないっていうので思い出した。」


現代のように舗装もされておらず、街灯もなかった時代。
雨の外出は月もない真っ暗闇をぬかるみの中歩くことになる。
いけなくてもしょうがないだろう、王子は悪くない。

「でも、お姫様に仕えてた女中さんが上手くとりなすんだよね。」

その女中の手紙をきっかけに王子は姫の元へ行くのだそうだ。
ともすれば迷わないこともない真っ暗な道を、危険を冒して
好きな人の為に行く。

214 :12 :2009/12/16(水) 22:27

「ロマンチックな話じゃん。」

「だよね。この時の古典は楽しかったから覚えてるー。」
「王子様すごいね。」

「ね。……みやも会いにきてよ。
なんて、
うそ。じょーだん。」



じょーだんだけど、会いたいのは嘘じゃないよ。

「なんでどんなに一緒にいても、足りないのかなあ……。」


215 :12 :2009/12/16(水) 22:32

12時を回ったところでおやすみ、と告げあって電話を切った後も、
眠る気になれなくて窓を開け、タバコを机から取り出す。

雨は相変わらず降り続けているけど、火を消さないでいられる
範囲くらいは屋根が遮ってくれるから、
ライターを擦って火を着ける。

吐き出す煙が雨で掻き消えるさまを眺めていた。


¨なんでどんなに一緒にいても、足りないのかなあ……¨


耳に留まっている、何気なく零された言葉が頭の中で繰り返される。
ベッドに入ってはみたものの、眠れる気はしなかった。
寝返りを何度も打って、瞼を開けたり開いたり。

それでも、夏の準備をしているかのように降り止まない雨は、
戸惑いも恐れもどこか優しげに、包み込んでくれる気がした。
216 :12 :2009/12/16(水) 22:32



217 :13 :2009/12/16(水) 22:33


梅雨が明けると待ちに待った夏がやってくる。
大好きな夏休み!

だけど、その前に。



「夏焼ー。これ来週期末に出すから起きてろ。」
「……はい。」

お節介な、、じゃなくて優しい先生たちは最近、頻繁に声をかけてくれて
うちは寝る暇がない。
あくびを抑えながら素早く黒板一面を埋める数字の羅列を
書き写す為にシャーペンを握る。どうやら右上に書かれた式の解答らしい。
なにがどうなっているのか全然わかんない。

やばいなー。もう来週期末かあ。こんなの解けるようになるわけないじゃん!
218 :13 :2009/12/16(水) 22:33

うーーわかんない。
投げ出したい。
投げ出したい投げ出したい。
投げ出したい。
シャーペンをノートに走らせながらそんな言葉が頭を過ぎって、
右手に反映される。数式の途中を割り込む文字。
¨投げ出¨まで書いてしまう。すぐに消す。
過ぎるだけならまだいいけど、その気持ちが時間が進む毎に増していくからタチ
が悪い。

現文、古典、日本史、英語……
うわあどれもみんなさっぱりだ。
ちょーやな予感がする。赤点コースすぎる。
こんなことならちゃんと授業聞いとくんだった……
ってこれいつもテスト前思うんだけどなあ。
終わると完全に忘れてる。
だって覚えること、テスト以外に使うとこないし。
219 :13 :2009/12/16(水) 22:33

ああ、とにかくまず授業終われ。これ以上うち堪えらんない!
おーわれ。おーわれ。
祈りながら先生の頭上、時計を見上げる。
一秒が長い。
なかなか動かない時計の針。じれったい。止まってないよね?動かなすぎだし。

呪えるくらいの目つきをしていたと思う。
時計が四時半を指した瞬間、待ち焦がれたチャイムが鳴った。盛大に息を吐きな
がら机に突っ伏す。
超疲れた……。

目を閉じても白い文字が責めて来る感じだ。
顔を起こせないでいると。
220 :13 :2009/12/16(水) 22:34

ばさり。

頭に落ちる重みのある紙の束の感触。


「今日は珍しくちゃんと起きてたね。」
「茉麻!」

女神様は……現実にいます!
御手に持たれているのは私の命綱であるところの授業ノートだ。
両手を掲げて丁寧に受け取る。

「いちお五教科分ね。」
「ありがとうー。女神さまー。」
「ノートだけじゃ意味ないから、ちゃんと勉強すんだよ?」
「が、がんばります。」


有り難いお言葉を戴く。
赤点を取れば補習対象。夏休みを返上して学校に通うことになる。
それだけは避けたい。
マジで勉強しなきゃだ。
しばらくは梨沙子と会うの控えなきゃやばいかも。
寂しがるかなあ。
てかうちも寂しい。

うーん。
あ!一緒に勉強すればいいか。
221 :13 :2009/12/16(水) 22:34

ぱっと思いついて顔を上げると、
半袖から伸びた真っ白な腕を組んで、茉麻が優しげに笑ってた。

眩しいくらい色が白い。
梨沙子も白いけど茉麻も白いなあ。
どっちのが白いんだろう。


「……なに?」
困ったようなまあさの声。
顎で指された方を見ると、うちは目の前の腕を掴んでいた。
柔らかい。って、違う!


「はは、なんでもない。」
ぱっと離してそのまま手の平をひらひらと振ってごまかす。
危ない危ない。無意識に触ってた。

「ノートありがとまあ。明日返すね。」
222 :13 :2009/12/16(水) 22:34

鞄の中に受け取ったノートを納めるとずっしり重くなった。
何かを言いかけ口を開こうとした茉麻を見なかったことにして
背を向けると、肩を掴まれる。


「みや。」

茉麻の声の調子は逆らえない強さを持っていた。
諦めて振り返る。

「ちゃんと寝てる?」

ぶつかったのは声以上に迫力のある目。


「寝てるよ、授業中だってしょっちゅう寝てるじゃん、うち。」

「じゃなくて、家で、夜ちゃんと寝てるの?」

「寝て、る。」

「隈が出来てるよ。疲れてる。」
223 :13 :2009/12/16(水) 22:35

さすが茉麻、鋭いな。
うちを見据えるまあの瞳は揺らがない。
その色は確実に心配を含んでいて、なんだか申し訳なくなった。
何か言おうとしたけど、中途半端な言い訳しか思いつかない。

沈黙になる。


茉麻の真っ黒の長い髪が、夕方になっても衰えない、夏の始まりの光に透けている。
綺麗だな、と思った。
遠くでふざけていた小春とちーも、いつの間にか静かになっていて、
何となくうちらの会話を聞いているんだろうと思った。
もしかしたら知らないところで沢山心配をかけているのかもしれない。

224 :13 :2009/12/16(水) 22:35

でもうちは


「大丈夫だよ。」


梨沙子の傍にいたい。


「ノート、明日返すから。」

さっきと同じことを呟いて、扉へ向かう。
もう目を合わせていられなかった。



225 :作者 :2009/12/16(水) 22:39
ちみちみ更新。
感想頂くと本当テンションあがりますね。
>>209
もったいないお言葉です。嬉しいです。


>>210
こんなへなちょこ小説なんで実写するならだいぶすばらしい監督さんが必要かとw

>>211
ありがとうございます。
ガーっと終着駅まで飛ばしていきたいです。


226 :名無飼育さん :2009/12/17(木) 05:03
ありがとうございます。とゆいたい
素敵すぎてすごく好きです。
227 :名無し飼育 :2009/12/17(木) 13:57
雰囲気が堪らなく好きです
228 :名無飼育さん :2009/12/18(金) 02:05
今後、どう展開するのか予想が尽きません。
229 :通りすがりM :2010/01/30(土) 07:42
この話、大好きです。
Buono!の『OVER THE RAINBOW』が似合うな〜と。

更新、楽しみにしてます。
230 :14 :2010/02/09(火) 23:08


お城の形をした真っ白な入道雲が夏の空を我が物顔に陣取っているのを見ていると、
背中に汗が一筋流れ落ちるのを感じた。
馬鹿みたいに照り付ける太陽。
足元には鉄板みたいなアスファルト。
髪を揺らすのは全然涼しくない湿った生ぬるい風。

真夏の、正午。



231 :14 :2010/02/09(火) 23:09


期末試験は案の定、散々な結果だった。

一応梨沙子と並んで座って、机に教科書を広げてみたりはしていた。
けどまともに勉強した記憶はない。

放課後はろくに時間ないから、なるべく話をしていたかったし
夜中は梨沙子がすぐ眠たいって言い出して、うちの手を引いて毛布に潜るから
つられるし。一緒に布団に入ったらお話したりとかいろいろするしさ。
勉強なんて出来る訳がない。しょうがないしょうがない。

……はい、言い訳デース。



「ぎりぎり低空飛行してたのが、ついに墜落ってかんじ?」


「そー、そんな感じ。」
232 :14 :2010/02/09(火) 23:09

後ろから掛けられた声に調子よく返すと、英語の石川先生がにっこり笑ってた。
目が合うと真顔になる。

こわっ!!!

反射で逃げようとする背中に追い撃ちがかけられる。

「夏休み楽しみだねえー夏焼ちゃん。
成績上がるいい補習メニュー考えとくから」

「あはは、はは」


渇いた声が出た。
じっくり答案用紙を見たくなかったのですぐに半分に折り曲げて、
こそこそと自分の席に逃げ帰った。

毎回補習にはひっかかりはするけどせいぜい二教科位だったはずなのに。
今回はフルコースだ……。

手元に集まった真っ赤なテスト用紙を見て、裏に透ける補習という
罰を想像しげんなりした。

233 :14 :2010/02/09(火) 23:09


五日間の集中補習期間は、想像を上回る地獄だった。
人数が少ないし、成績にばらつきがないので教え易いのか、
どの先生もしっかりみっちり授業をする。

特に石川先生は贔屓してうちをたくさん指名してくれた。



『なんでそこに動詞が入るの?ねえなんで?』


黒板の前に立って空欄を埋めると、最高にうざ、じゃなくて丁寧に細かーく
間違いを指摘してくれた……。


あー!

思い出したくない。忘れよう。
とにかく今日からうちも夏休み!なんだ!サマーホリデーイズカミング!
ずっと前から梨沙子とどこに行きたいとか何をしたいとか話して、
凄くすっごく二人で楽しみにしていたんだ。
234 :14 :2010/02/09(火) 23:10


海もいいね、山も行きたいし花火もしたい。お祭りには行かなきゃ!
そんな具合で迷いに迷って、初日の今日は買い物に行くことに決まった。

こういうデートらしいデートって、うちらには珍しい。
待ち合わせして、お出かけ。
まぶしいお日様の下で、人混みの街中をぶらぶら歩く。
可愛いカフェに入って好きな人と笑って話す。
普通のことなんだけど、夜に会ってインドアなデートっていうのが基本のうちらには
、新鮮で。なんかちょっと恥ずかしい。っていうか照れる。

ゲームでもしようかと携帯を取り出していると、背中をポンと叩かれた。


「みや、おはよー。」

「はよっ。あ、あついねー。」


振り向くと予想外に近い顔。
驚いて豪快に反らしてしまう。
そのせいでちらとしか姿を捉えることができなかった
けど、ばっちり見た。
235 :14 :2010/02/09(火) 23:10


やば、ものすごい可愛い。

珍しい寒色系の、アイスミント色した薄いワンピース。
緩めに巻かれた髪を下ろして普段より大人っぽい雰囲気。

特別おしゃれをしているわけでもないし見慣れているはずなのに
直視できないほど、可愛く見えた。


目的の駅に着くとまさに夏休みって感じの賑わいを見せる街。
行こうか、と梨沙子を振り返って逸れない様にと手を差し出すと、緩んだ笑顔。


「やっと見てくれたね」

みや、全然こっち見てくれないし、あんま喋らないから、
今日、なんか素っ気ないなあ、ってちょっと、寂しかった。


「だって今日の梨沙子、かわいすぎるし……」

喧騒に呑まれて届かなくてもいい、小さな声で呟く。更に誤魔化すように行こ、
と言い放って繋がっている右手を引くと、後ろから抱き着かれた。
しかし振り返る前に離れていった。
隣には嬉しそうな顔。
ちゃんと聞こえてしまっていたようだ。
それが分かると
ただでさえ暑いのに、うちの体の内側は余計に熱を上げた。
236 :14 :2010/02/09(火) 23:11


キャミソールを見て、バックを見て、ネックレスを見て。
立ち並ぶお店を素早く順番に流していく。
趣味は違うけれど、ああ、こういうのが好きなんだ、とか
意外にこんなのも似合うなあとか、
新しい発見を沢山した。

一通り回り切ると、冷房がガチガチに効いているショッピングビルを出る。
ガラス戸を押し開けるとむわっとした暑さがすぐに体に纏わり付いた。
緩やかな坂を下っていく。
ファッションビルが立ち並ぶ街にはたくさんの人が溢れ返っている。
ただでさえ暑いのに人の熱気のせいで余計に暑い。
夏が大好きなうちでもちょっと不快感を覚える。
人ごみを縫うように歩いてもなんとなく流されている。
このままじゃはぐれそうだ、と隣の白い腕をそっと掴んで、そのまま
視線を上に辿っていった。

237 :14 :2010/02/09(火) 23:11



「梨沙子、大丈夫?」

辛そうに眉をひそめて前を見ている梨沙子に声をかけた。



月が似合う梨沙子は、うちみたいには太陽を好きじゃない気がした。
強過ぎる光よりも優しくてふんわりした光を纏って目を閉じている姿が
梨沙子らしい。

「ん、大丈夫だよ」

弱弱しく微笑む彼女は確実に無理をしていると分かった。
このまま真夏の太陽の下にいると彼女が消費されてしまう、
そんな心配をするほど頼りない姿。
思わず立ち止まって見つめる。

うるさい街を背景にして、不安げな瞳で見つめ返す梨沙子が
一瞬揺らいだ気がした。
その輪郭が強い光にゆっくり溶けて消えてしまう様が頭に浮かんで、
振り払うために繋いだ手に力を籠めて引いた。
238 :14 :2010/02/09(火) 23:11




過保護かな。





「大丈夫って言ったのに」

ソファーに凭れて梨沙子が横顔のままぼそりと呟く。
手に持っている麦茶が入ったグラスの中の氷がカラン、と音を立てた。

迷わず駅に直行してそのまま梨沙子の家に帰ってきた。
自分でも馬鹿な妄想だと思ったけれど、不安でしょうがなかった。

夏の太陽はまだ沈まない。
明かりをつけなくても窓から入る夕陽で部屋の中は一面オレンジ色に染められていた。
不満げな梨沙子の声に顔も向けられずにその様子をぼうっと見ている。
やっぱりまだ買い物したかったかな。
そりゃそうだよねえ、夏休み初日だし遊びたいよね……。

結局2時間も居なかった。
しかも、特に何も買ってない。

罪悪感がこみ上げてきて顔を下に向けようとする。
直前に、視界を白い肌が埋めた。
引き寄せられて、抱きしめられてる感触と梨沙子の匂い。

「ありがとう」
239 :14 :2010/02/09(火) 23:14


「心配してくれて、ありがと」

その一言で曇りそうだった心が晴れた。簡単だな、うち。

引き寄せられたまま塊になってソファに倒れこむ。
咄嗟に体重を乗せないようにと腕をついた。

いつの間にかテーブルにおいてあるグラスから、またカランと氷の溶ける
音。
反応して一度そちらを見てから、目の前に視点を定める。

15センチの距離で見下ろした先で、緩やかに唇がカーブを描いた。
約束みたいに近づいていく。太陽が地平線に沈んでいくのと同じ。

唇が触れる寸前本当は、自分は梨沙子に触れたかっただけなんじゃないか、なんて思った。
240 :作者 :2010/02/09(火) 23:19
毎度お待たせしてごめんなさい。
真冬なのにこの話真夏。なんなの。ふほー。
がんばるます
241 :ELS :2010/02/10(水) 16:02
一気によませていただきました。
とてもおもしろいです。
続き期待してます。
242 :名無飼育さん :2010/02/10(水) 23:10
やばい・・・
続き正座で待ってます。
先が読めない。
243 :名無飼育さん :2010/02/22(月) 15:46
同じく正座して待ってます。
244 :名無飼育さん :2010/03/29(月) 23:41
正座しすぎて足が痺れて....
245 :ELS :2010/05/17(月) 20:50
ずっと待ってます。
246 :名無飼育さん :2010/10/25(月) 15:09
更新お待ちしております。
247 :ひかる :2016/05/09(月) 20:22
こんなすごい小説初めてみました。

更新待ってます。

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