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鏡に映るひとひら

1 :雪ぐま :2005/11/03(木) 00:03
雪板で『続・愛するトメっち』、紫板で『Jewel of love』を連載している雪ぐまと申します。
複数のスレを立てて恐縮なのですが、こちらでは連載とは関係のない短編をいくつか書かせていただきたいと思っています。
更新は不定期、CPもいろいろです。
どうぞよろしくお願いします。
387 :ルームナンバー1444 :2011/09/17(土) 01:27
そうか、朝寝坊なカレシを部屋に残して、
さっさと自分だけ朝食を取りにきたのかもしれない。

時々、眩しげに窓の外を見る、
その穏やかな様子からそんな気がした。


まさか恋人がいないはずはない。

そう思わせる人だった。
388 :ルームナンバー1444 :2011/09/17(土) 01:28
ところが予想は裏切られて、
その日のランチにも、彼女はひとりでレストランに現れた。

ふと見ると外は、スコールのような突然の雨。
どうやら出かけるタイミングを失ったらしい。

オープンキッチンではないけれど、
配膳窓から客席の様子をうかがうことはできる。
いつもは気にしないのに、今日は妙に客席が気になった。

ウエイターが、彼女に駆け寄ってメニューの説明をしている。
そんな熱心に説明するほどのメニューじゃないんじゃない?
あたしは肩をすくめて苦笑した。
389 :ルームナンバー1444 :2011/09/17(土) 01:29
台風が近くを通過しているせいか、
雨は時折、強風をともない、音を立てて窓に弾ける。

上陸しないだけラッキーだけれども、
旅行客には残念な天候だろう。

彼女もテーブルに肘をつき、
ため息まじりに外を見ている。


せめて、おいしい郷土料理を食べさせてあげたい。
そう思ったけど、新米がむずかしい料理を任されるわけもなく、
あたしはただうつむいて、エビの殻を剥くばかり。
390 :ルームナンバー1444 :2011/09/17(土) 01:31
ランチタイムを終えると、
ディナータイムまで休憩時間になる。

いつもは原チャリを飛ばして家に帰って昼寝してるけど、
雨だから仕方なく、従業員の休憩室へ向かった。

「あ……」

ロビー脇を通りかかった時、ソファのところで彼女が、
所在なさげに雑誌を読んでいるのが見えた。

ファミリー客は雨にも負けずレンタカーで観光に出たようだけど、
彼女はきっと、レンタサイクルでの観光でも考えていたに違いない。


 なぜ、一人でこんな南の島へ来たんだろう……


そんなことを考えていたからか、
彼女がフッとこっちを見た。
しまった!と思ったけれど、もう遅い。

彼女がニコッと微笑んできて、
あたしはぎこちなく会釈を返した。
391 :ルームナンバー1444 :2011/09/17(土) 01:32
「あの…」
「は、はい」

甘いソプラノで声をかけられ、
柄にもなく緊張してるのがわかった。

でも、案じることもなかった。
彼女の質問は、ごく観光客らしいものだったから。

「岬までタクシーで行くと、いくらくらいかかりますか?」

やれやれ、あたし、なにを期待してるんだか。
「お茶でも飲みませんか?」だなんて、
言われるはずもないのに。

「岬まではけっこうかかりますよ、片道3000円くらいでしょうか」
「そうですかぁ。うーん…」
「バス、運休ですか?」
「そうみたいなんです。午前中は走ってたんですけど」
「風が出てきましたからねぇ」
「あーあ、ぼやぼやしてないで、朝のうちに行っちゃえば良かったな」

かわいらしく唇を尖らせる。
見かけよりもずっと親しみやすい性格みたいだ。
フッと肩の力が抜けて、あたしは笑った。
392 :ルームナンバー1444 :2011/09/17(土) 01:34
「でも、行ったら行ったで、帰って来られなくなってましたよ?」
「あ、そっか。そうですよね」
「夜には晴れるそうですよ。岬は明日にして、今日は近場にしたら?」
「うーん、でもこの雨ですから……」

今日は、お部屋でのんびりします。
しょんぼりと彼女はそう言って、
雑誌をぽそりと棚に戻した。

「教えてくれてありがとう。じゃあ、お部屋に戻ります」

彼女はそう言ってほほえみ、かすかに頭を下げた。
それがとても、なんていうかきちんとして見えて、
立ち去りかけた背中に、思わずあたしは声をかけた。

「あの!」

驚いたように彼女が振り返る。

「はい?」
「えーと、あの〜……、もしよかったら、そのへん案内しましょっか?」

彼女が、目を丸くした。
393 :ルームナンバー1444 :2011/09/17(土) 01:36
「これから?」
「あ、いや今日は雨なんであれですけど、もしよかったら」

なに言ってんだ、あたし。自分でもわけわかんね。
あわてて、言葉をつけ足す。

「えーと、また晴れた時とか?」

こんなわけのわからない提案、嫌がるか、遠慮するだろう。
そう思ったけど、彼女はとてもうれしそうに笑って、
それからかわいらしく首をかしげた。

「ほんとですか? 私、一人旅なんです。だから、ほんとにおつきあいしてもらえるとうれしいんですけど……」

いいっスよ。
あたしは、とっさに嘘をついた。

「明日とか、休みですから」

激怒するマネージャーの顔が浮かんだけど、もちろん無視した。
すべての都合を無視して、彼女を優先すべき。
そんな直感が、あたしを動かしていた。

「えー、ほんとにほんとにいいんですか!?」
「いいっスよ。どうせあたしヒマ人なんで」

彼女がおかしそうに両手を唇にあて、花のように笑った。

394 :雪ぐま :2011/09/17(土) 01:37


本日はここまでといたします。
また、明日^^

395 :いちファン :2011/09/17(土) 01:54


名前: いちファン
E-mail: sage
内容:
雪ぐまさんのいしよし!
ここで読むのが、やはり趣があります…。

ここのホテル、実在するなら是非行きたい。
396 :いちファン :2011/09/17(土) 01:56
変になってしまった…失礼。
慣れない、スマホで板にコメントは難しかったです;
397 :名無飼育さん :2011/09/17(土) 02:06
更新ありがとうございます
ここで読めるのはやっぱり嬉しいです

オムレツ…この時間にやばいw
398 :名無飼育さん :2011/09/17(土) 04:09
雪ぐまさんのお話がまた飼育で読めるなんて…!

>>381の描写だけで誰のことだかわかりました
いや、そんなこと言ったらタイトルの時点で分かっていたんですけど…w
う〜ん、やはりとても綺麗な文章を書かれますね
雪ぐまさんの描く梨華ちゃんの輝きは健在です
更新楽しみにしております
399 :雪ぐま :2011/09/18(日) 00:43
コメントありがとうございました。
ドキドキというか、ハラハラしていたのでうれしかったです^^

>>395,396 いちファンさん
なるほど趣きですか。そうですね。
私も飼育に投下していて、久々にテカりましたw
この話は、石垣島に旅行に行って台風に巻き込まれた時に思いついたのですが、
ホテルの名前は忘れてしまいました……ごめんなさい。

>>397 名無飼育さん
そうですね、飼育はやっぱり特別です^^
そしてオムレツは正義w

>>398 名無飼育さん
たしかにw>タイトル時点で
うれしいコメントありがとうございます。
梨華ヲタでございますから、梨華ちゃんはつねに花のように見えておりますw


では、本日の更新にまいります。

400 :雪ぐま :2011/09/18(日) 00:44
コメントありがとうございました。
ドキドキというか、ハラハラしていたのでうれしかったです^^

>>395,396 いちファンさん
なるほど趣きですか。そうですね。
私も飼育に投下していて、久々にテカりましたw
この話は、石垣島に旅行に行って台風に巻き込まれた時に思いついたのですが、
ホテルの名前は忘れてしまいました……ごめんなさい。

>>397 名無飼育さん
そうですね、飼育はやっぱり特別です^^
そしてオムレツは正義w

>>398 名無飼育さん
たしかにw>タイトル時点で
うれしいコメントありがとうございます。
梨華ヲタでございますから、梨華ちゃんはつねに花のように見えておりますw


では、本日の更新にまいります。
401 :ルームナンバー1444 :2011/09/18(日) 00:47


「これに、乗るの?」

友達に借りてきたバイクを見て、
彼女、石川梨華さんは戸惑ったような笑顔を見せた。

「私、バイクの後ろって乗ったことないんだけど…」
「へーき、へーき!」
「ちょっと怖いなぁ…」
「へーき、へーき!」

そぉ…?
おそるおそるシートにまたがる彼女を乗せて走り出す、
台風一過の青空の中。

長い髪を風に巻き上げられながら、
彼女はひしとあたしの背中にしがみついてきた。

「ねぇー! なんて呼んだらいいー?」
「えー? なにがー?」
「あなたの名前ー!」
「あー……、よっすぃ〜って言われてるけどー?」
「わかったー! よっすぃ〜ねー!」
402 :ルームナンバー1444 :2011/09/18(日) 00:49

彼女はとても食いしん坊で、
行きたいお店がたくさんあった。
どこにそんなに入るわけ?ってくらい、
たくさん食べた。

「おいしー! ちょっとこれ最高じゃない!?」

そのくだけた様子が、あたしを有頂天にさせた。
生まれ育った土地の味を、
彼女が喜んでくれるのがうれしかった。

もっともっと楽しんでほしい。笑ってほしい。
あたしはもうあっちもこっちも連れて行った。

「ここ、あたしの小学校!」
「名所なの?w」
「え、や、違うけど…」

ごめん、なんか見せたかった。

照れて頭を掻くと、彼女もおかしそうに笑った。
403 :ルームナンバー1444 :2011/09/18(日) 00:51



石川サンは順応性が高いようで、
怖がってたバイクにすぐ慣れた。
むしろ、スピードを上げれば上げるほど
はしゃいで大笑いしてるから、
おいおい落ちんなよ〜!って心配になるくらい。

「よっすぃ〜、楽しいね!」
「そぉ?」
「うん、チョー楽しい! もっと飛ばして!」
「やー、捕まるってマジで(汗」

さんざん観光してまわって、
最後にあたしが連れて行ったのは、
彼女が昨日、行きたがってた岬。

今日も最初に行きたがった彼女に、あたしは言ったんだ。


あそこは、夕暮れ時じゃなきゃ意味がない。


「ほんとだー……」

オレンジに染まる海を見て、彼女はたちまち目を潤ませた。
さっきまではしゃいでたのが嘘のように、
おしゃべりな唇が、凪のように黙り込む。

美しい景色に心が震えてるのがわかった。
見た目よりずっと感激屋で泣き虫なのだと、よくわかった。
404 :ルームナンバー1444 :2011/09/18(日) 00:53
膝を抱えて座り込み、
いつまでも動こうとしない彼女にあたしは訊いた。
ずっと不思議に思ってたことを。

「なんで、ひとりで来たの?」

一日、一緒にいて、あたしはますます不思議に思っていた。
花のように笑うこの人に、一人旅は似合わない。
友達とはしゃぎながらか、それか恋人と。
そのほうがずっと自然な気がした。

彼女は、しばらく答えなかった。
目を潤ませたまま、ただぼんやりと夕陽が沈むのを見ていた。

あれ、まずいこと聞いちゃったかな?
あたしも気まずく黙り込む。

もしかして失恋旅行とか? そうかもね……。
405 :ルームナンバー1444 :2011/09/18(日) 00:55

かなりかなり長い沈黙が続いた後、
フッとため息をついて、彼女が呟いた。

「私ねぇ、結婚するの」

え………?

「親が、決めたの」

肩をすくめる。
どうにもならないことを、もう考えないというように。

あたしは混乱していた。
そんな、いまどき親が決めるなんてあるの……?

「すごく…、すごく好きな人がいたんだけどね、別れさせられちゃった」

悲しげに目を伏せる横顔。
どうして?と尋ねると、
彼女は不思議な感じでフフッと笑った。

「よっすぃ〜には、話しちゃおっかなぁ」

406 :ルームナンバー1444 :2011/09/18(日) 00:57

膝を抱えて、いたずらっぽくこっちを見る。
夕陽を吸い込んだみたいな煌めく瞳で。

「恋人ね、女の子だったの」

ギクッとした。
まさかこの人がそんなことを言い出すなんて。

動揺するあたしに、彼女がほほえむ。

「私ね、女の子が好きなの」


……気づかなかった。

そして、どうしてそれを、あたしに……。


その答えを、彼女はとてもシンプルに語った。


「あなたも、そうでしょ?」

407 :ルームナンバー1444 :2011/09/18(日) 00:58



あたしは息をのむ。

なぜ、この人はあたしの秘密を。


408 :ルームナンバー1444 :2011/09/18(日) 00:59

「……どうして?」
「え、だって、わかるよ」

彼女が、くすくすと笑った。
それから風に舞う髪をおさえて、すいっとあたしを見た。

すこし意地悪な、誘うような瞳で。

「だって、そういう目で、私のこと見てるじゃない?」

409 :雪ぐま :2011/09/18(日) 01:01


本日はここまでといたします。
また明日^^
410 :名無飼育さん :2011/09/18(日) 01:07
更新乙です
いいところでオワタ
バイクに乗ってる二人実際に見てみたいなー
411 :名無飼育さん :2011/09/18(日) 01:10
おおおドキドキ…!
大人な事情が切ないですね…
412 :名無飼育さん :2011/09/18(日) 01:46
うぅ。また雪ぐまさんの小説を飼育で読めるなんて幸せです。
1444のあの一見熱くは見えないけど熱く甘い感覚。 懐かしい気もするし、新鮮な気もします。
413 :名無し :2011/09/18(日) 12:12
うわーーー!雪ぐまさんだ!
すごい嬉しいです!!

どうゆー展開になるか楽しみ。
梨華ちゃん鋭いなあ。
なんか情景が浮かぶ描写が素敵です
414 :雪ぐま :2011/09/19(月) 00:33
コメントありがとうございました^^

>>410 名無飼育さん
バイクに乗ってる二人、私も見てみたい!
なんかすっごいバイクがいいと思うんですよねー。
どうかすると死ぬほどダサそうなアメリカーンな感じのとかw
で、よっちゃんはサングラスをしてるんですよ。
どうかすると死ぬほどソリマチみたいな。痺れるーwww 
梨華ちゃん乗せて、荒野をどこまでも走ってーー!(壊。

>>411 名無飼育さん
大人な事情、個人的にはこの21世紀にそんなのあるか!って思いますが、
案外まだあるみたいですねー。いいとこのお嬢さんとか。
駆け落ちしちゃえよっすぃー!と思いますが、
うちのよしこは愚図ですからどうなることやら……。
415 :雪ぐま :2011/09/19(月) 00:33
>>412 名無飼育さん
身勝手放置作者ですのに、そんなふうに言っていただけて、
私の方こそとても幸せです。ありがとうございます^^
1444は真逆なのに恋に落ちてしまう運命の二人。
熱くぶつかり合って、甘く溶けるのでございますw

>>413 名無しさん
こちらこそ、うれしいコメントありがとうございます^^
私の妄想は、いつも頭の中に映像で浮かんできます。
それを文章であらわすのがいつもすごくむずかしいのですが、
そう言っていただけるとホッとします。
ところで、飼育ではコメントはsage推奨ですので、
次からよろしくお願いします^^
( E-mail欄に「sage」と入れればOK。簡単です♪)


さて、雪ぐまのいまだ健在な腐れいしよしヲタぶりを晒したところで、
本日の更新にまいります。
416 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 00:36


ベッドの上の彼女は、まさに乱れ散る花のようだった。
その激しさに、炎のような欲望に、あたしは圧倒される。


髪をつかんでキスを求める手慣れた仕草が、
激しく嫉妬をかき立てた。
だけど、それ以上にあたしは気が狂っていた。
もっともっととせがまれるほどに、
欲望の針がビリビリと振り切れた。

「やだ。帰らないで」

せがまれてあたしは、彼女の部屋で朝を迎えた。
彼女は、当然のようにあたしの腕の中に潜り込んで眠った。
あたしの胸を包み込むように優しくさわって、
時々先っぽにキスしたり、ちょっと噛んでみたりする。

くすぐったくてあたしは身をよじったけど、幸せだった。
腕枕してる腕が軽く痺れたけど、がまんした。
417 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 00:38
彼女の髪から、からだ中から、
どうかしてると思うほど甘い女の子の香りがして、
あたしはただうっとりと目を閉じた。

次の日も休みたかったけどそうもいかず、
寝ている彼女を残して、こっそりと部屋を忍び出た。

廊下で同僚に出くわしてヒヤッとする。
そんなこともドキドキした。

仕事をしてる間中、ふわふわと宙に浮いてるようだった。

昼休み、あたしはダッシュで友達にバイクを返しに行き、
家に寄って母親に「今日も帰らないから」と告げて
ホテルに駆け戻った。

約束したわけじゃないけど、
今夜も彼女の部屋に泊まる気だった。
きっと受け入れてくれるという自信があって、
あたしはほんと有頂天だった。
418 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 00:40
やっと仕事を終えて、
古びたエレベーターにさりげなく飛び乗る。

彼女の部屋がある最上階まで辿りつくのももどかしく、
表示ランプを見上げてあたしは、そわそわと足踏みしていた。

他の従業員に見つからないよう、慎重に廊下を見まわし、
彼女の部屋にすばやく駆け寄ってドアをノックする。

ややあって、「……よっすぃ〜?」と怯えたような声。
そうだよと言うと、魔法のようにドアが開いた。
419 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 00:41
せっかちな妖精があたしの腕を引き入れ、
ガチャンとドアを閉めて、首にすがりついてくる。

「もう、来てくれないかと思った……」
「遅くなってごめん。でも、仕事終わってすぐ来たんだよ?」
「だって、お昼も空いてるって言ってたじゃない」
「えっ…、あ、ごめん、観光とか出かけてると思って」
「バカ、出かけてるわけないじゃない」

待ってたのに……と、
彼女は拗ねたようにあたしの肩を叩いた。

「時間、ないんだよ?」

面食らってあたしは、一瞬よろけて壁にもたれる。
抱きしめた彼女の身体は驚くほど熱くて。

「もしかして、すっごい飲んでる?」
「……飲んでるよォ、朝からずっと」

 よっすぃ〜、行っちゃうし。
 起きたら、いないんだもん。

恨めしげな上目遣い。
潤んだ瞳は酒のせいなのか、それとも……。
420 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 00:42
「……いいの? 観光とかしなくて」

彼女が激しくかぶりを振る。
とうとう涙が飛び散るくらい激しく。


「どこにも行きたくないよ。あなたとこうしてたいの」


そのまっすぐな言葉は、あたしに自信を持たせた。

肩をつかんで押し倒すと、
彼女は両手を広げてあたしの背を強く強く抱きしめた。
421 :雪ぐま :2011/09/19(月) 00:43


本日はここまでといたします。
短いですけど、次でラスト。

また明日^^
422 :名無飼育さん :2011/09/19(月) 01:42
読みたかったいしよし小説ここにありです!
次回を楽しみに待ってます!
423 :雪ぐま :2011/09/19(月) 21:33
>>422 名無飼育さん
うれしいコメントありがとうございます。
がっかりのラストかもしれませんが……、
なにか感じていただけると幸いです^^


では、本日の更新にまいります。最終話です。

424 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 21:33


「バイバイ」


旅行鞄を下げた彼女が、空港でほほ笑む。

あたしは何も答えられなかった。

ただ、涙がとめどなく流れた。

425 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 21:35
「よっすぃ〜」


旅行鞄を床に置いて、
彼女があたしの首に腕をまわす。
華やかな香水の香りが胸の奥に入り込んできて、
あたしをめちゃくちゃに傷つけた。


「大好き。忘れないよ」


0.5秒の最後のキス。
誰かに見られるかもなんて、もうどうでもよかった。
その細い腕をつかんで、帰さないと叫びたかった。

だけど彼女はグズなあたしの衝動よりもすばやく身をひるがえし、
胸元で小さく手を振った。


「バイバイ」


426 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 21:35
ゲートに消えてく彼女を、あたしは呆然と見送った。

一度だけ、たった一度だけ彼女は振り返り、
とても切ない瞳をした。

ありがとう、その唇が小さく動いた。

また来ると、最後まで彼女は言わなかった。
だから怖くて、また来てと言えなかった。

427 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 21:37
どうやって空港からホテルに帰ったか覚えていない。

あたしは花を見たことがなかったんだと思う。

青い空の下、風景はいつも嘘みたいな気がしてた。

誰にも見つからないようにと祈りながら
古ぼけたエレベーターに乗ってるたった今さえ、

あたしはどこか疑っているんだ、この景色を。
428 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 21:38

ルームナンバー1444。
14階の最上階に通されていたゲスト。

こんなホテルでもいいところを見せようと、
フロントは焦ったのかもしれない。
美しい人にせめてすばらしい眺望を、と。

そう、せめて、忘れられない思い出を。
あなたに、あたしの時間と心と体、すべて使って。
429 :ルームナンバー1444 :2011/09/19(月) 21:39

それでいい。それでよかった。


だけど、空っぽになった部屋の中で、
やっぱり涙があふれた。


眩しすぎる真っ赤な花が、瞼の奥から消えなかった。



=終=
430 :雪ぐま :2011/09/19(月) 21:42


お読みいただき、ありがとうございました。
当時は書き込むのをためらってしまったお話です。

コメントいただけると大喜びしますが、
ネタバレにはお気をつけくださいませ。

では、また^^
431 :名無飼育さん :2011/09/19(月) 22:09
美しい花というは、そこに存在するだけで人を惹きつけてしまうものですよね
雪ぐまさんの描く梨華ちゃんほんと好きです
432 :名無飼育さん :2011/09/19(月) 22:36
二人がいる美しい景色をまだまだ見ていたいー
更新お疲れさまそしてありがとうございました
433 :名無飼育さん :2011/09/19(月) 22:59
こういう雰囲気のお話好きですよ

管理人でもない立場で申し訳ないですが
飼育に残していただけて嬉しいです
本当にありがとうございました
434 :名無飼育さん :2011/09/20(火) 00:19
甘美で切ない…
いしよしの醸し出す雰囲気は、なんというか、堪りませんw

「当時」と言われてるということから察するに以前書かれたお話ですよね?
そのせいか今の二人というよりは一時期前の二人ならではの雰囲気だなぁ、と。
素敵な小説をありがとうございました。
435 :名無飼育さん :2011/09/21(水) 00:10
ブログで発表されたときに拝見しておりましたが
やはり飼育で読むとちがう気がします
感慨深いです
436 :xg34OPgdB :2014/03/04(火) 10:55
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