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鏡に映るひとひら

1 :雪ぐま :2005/11/03(木) 00:03
雪板で『続・愛するトメっち』、紫板で『Jewel of love』を連載している雪ぐまと申します。
複数のスレを立てて恐縮なのですが、こちらでは連載とは関係のない短編をいくつか書かせていただきたいと思っています。
更新は不定期、CPもいろいろです。
どうぞよろしくお願いします。
2 :?雪ぐま :2005/11/03(木) 00:03


最初は、さゆえりれいなのお話。

 『鏡に映るひとひら』

3 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:04


ピクニックに行こう。
そんなふうに誘われて、
そんなのつまんないって思わないなんて、
そうとうイカレてると思うの。

「明日、絵里も誘って3人で行こ?」

そんなふうに続けたヒトコトにむかついちゃうなんて、
さゆは、そうとうれいなに、どうにかなっちゃってると思うの。
4 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:05

「んー、どーしよっかなぁ〜」
「なんね、忙しか?」

遊園地でもなく、海でもない。
ショッピングでもないし、おいしいケーキもなさそうで。
それでも、れいなと二人ならいいよピクニックでも。
そう思ってるのに、あーあ。

「遊園地とかなら、まだいいけど」

金曜の放課後。週末の期待にざわめく教室。
いまいち気乗りしない返事をしたさゆに、
れいなは腰に手をあてて、まるっきり勘違い中。

「3人で遊園地やと、いろいろ乗る時、一人余るやろっ」
「そうかも」
「イヤや。絶対れーなが一人で乗るはめになる」

だって、そうしないと絵里とさゆが喧嘩になっちゃう。
なんてねぇ、れいなに言うわけにもいかないし。
5 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:06

絵里とさゆが、先に仲良くなったんだもん。
後かられいながトコトコ近づいてきて、
ちっちゃな花火みたいにパチパチと光を散らしながら笑う。
一つしかないから、ひとりじめできないでしょ?

なんてね。
机の中から手鏡を取り出して、自分の顔を見つめた。

「うん、今日もかわいい」
「あーかわいいかわいい。で、明日!ピクニック!」
「絵里に聞いてよ」

絵里が行くなら行くよ。
唇がそう動いたあと、鏡の中の自分が、さゆだけにそっと呟いた。
だって、二人で行かせたくないんだもの。

「さゆはいっつも、絵里絵里って」

れいなはいつでも勘違い中。
さゆのココロは鏡の中なの。
ひっくり返して映してみてよ、言葉を。

ニコッと微笑んでみる。泣きそうに見えるかも。
だって現実に、さゆにはまず絵里がいて、それかられいながいる。
絵里もきっとそうなの。まずさゆがいて、それかられいなが。
6 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:07

お行儀悪く机の上に座ってたれいなが、
ふいにニヤッと笑って、さゆの顔をのぞきこんできた。

「さゆって、絵里のこと好いとったりして?」

鏡を見つめたまま、答えてみる。

「だったら、どうする?」

案の定、れいなは動揺したみたいにウッと顎をひいた。

「や、どーもせんけど……」
「なんでそんなこと聞くの?」
「や、別に深い意味は……」

ゆすゆすゆす。
困ったみたいにれいなの足が揺れる。
れいなは知りたいのね? さゆが絵里に恋してるかどうか。

「教えない」
「そんなマジにとらんかって」
「マジになんてとってないよ」

とってないから、教えてあげない。
さゆも知りたいことあるけど、訊かない。
れいながそんなふうに無邪気に、
いろんなこと、ごまかそうとするうちはね。
7 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:08

「お待たせー。ごめんね、もーハナシ長くってさぁ」


センパイに呼ばれてた絵里が、バタバタと教室に駆け戻ってきた。
れいながホッとしたように、絵里を見て笑った。

「おー、おかえりー。なんやったの?」
「ナイショナイショー」
「なんね、さゆも絵里も内緒内緒って!」
「なになに? さゆもなんかあったの?」

ううん、なんにもないよ。
鏡から顔をあげて、さゆはいつものさゆに。

「で、絵里、なんて言って断ったの?」
「うわ、やっぱバレバレ?」

絵里が赤くなって、あははっと笑う。
れいなが一人、キョロキョロッとした。
8 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:09

「なんね?なんのハナシ?」
「れいなって鈍感。言われたに決まってるじゃん、好きですとか」
「ちょっ、さゆ、いーよわざわざ言わなくたって!」
「うそ、マジ? すっげー! え、マジで???」

れいなが大興奮して、机をガタガタ揺らす。
絵里がますます真っ赤になって、鞄にむやみに教科書を詰め込みはじめる。
でも、まんざらでもないってふうに緩んでる口元。
それは勇気を出したセンパイのせいじゃないの。
誰かに恋されたことを、れいなに知られたからなの。
あーあ、さゆってなんて気が利いちゃうんだろ……

「やっぱなー。さゆにはバレてると思ったんだぁ」
「だってあの人、いっつも絵里のこと見てたじゃん」
「マジ?マジで? で、なに? フッたの?」
「……ウン」
「えー、なんでなんで?」

絵里は答えなかったけど、チラッと目を上げてれいなを見た。
れいなはまだガタガタと机を揺すってて、
からかうみたいに口元は笑ってたけど、
でも、なんとなく、ぎこちないふうにも見えて。
9 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:10

「ね、なんで?」
「……れーなに関係ないでしょ?」
「えっ、トモダチじゃん」

さゆはガタンと立ち上がって、「帰ろ」って言った。
帰ろう、3人で一緒にね。
だってトモダチだから。
10 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:11

秋晴れの空はとてもとても高くて、
夕暮れが落ちてくるのがもったいないくらい。
ねぇ、あの空の色、なんていう色なのかな?
そう呟きかけて、唇を閉じる。
かすかにピリピリと音をたててる、両隣の気配に。

さりげなく無口な絵里、無口なれいな。
心地よく秋風に吹かれてるふりで、てくてくと歩いてるけど、
気にしてる。気にしすぎてる、さっきのことを。

さゆは小さくため息をついて、
現実的な言葉を口にすることにした。

「れいな、明日どうするの?」
「あ、そーやった。絵里、明日みんなでピクニック」
「ぇ、ピクニックぅ〜〜???」

ほらね。
絵里は、さゆと同じ反応なの。
すごく、気が合うの。嫌になっちゃうくらい。
11 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:12

「つまんなくない? 遊園地とかなら、まだいいけど」
「なんでっ?! 明日も晴れやっちゅーし、外でおべんと食べたら気持ちよかよ〜」
「ワーイ、れーながつくってきてくれるの?」
「アホ! みんなで手分けするっちゃ!」

何色かわからない秋晴れの空に、鏡みたいな白い月が浮かんでる。
だからさゆは、こっそり呟いたの。
ねぇ、消えてあげてもいいよ。

「さゆ、行く?」

絵里が、甘えたように腕をからめてきて。
さゆは、その腕をしっかりとつかんだ。
そして笑う。そう、こんな感じ、かわいく。

「絵里が行くなら行こっかなっ♪」
「だよねー。さゆが行くなら絵里も行こっかなっ♪」

ほんとうの言葉は、いつも鏡の中に。
消えてなんてあげない。絶対に消えてなんてあげない。
二人の気持ち、なんとなくわかってるけど。
さゆ、邪魔かもしれないけれど。
12 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:13

「なんね、二人して!」

れいなが膨れっ面で、ポコンと石を蹴った。
さゆと絵里は、そんなれいなを見て笑う。
笑う。笑う。れーな、れいな、いつものことでしょ?
絵里とさゆは腕をからめたままで。
そのあたたかさを、二人ともが意識したままで。


「さゆ〜、じゃあスーパーに寄ってこっか?」
「そだね。なにつくる〜?」
「………れーなも行く」
「えー、れーなはママにつくってもらえばぁ? あたったらヤじゃん」
「なんばゆーと! もー絵里には食わせん!」
「じゃ、絵里もれーなにはあげなーい」
「む、むかつくー!!!」

消えてほしい? ねぇ、消えてあげようか?
ひらひら揺れて落ちる、鏡の中のひとひら。
舞い落ちる言の葉。降り積もる。どんどん降り積もる。
こんなに笑いながら閉じ込めてるのに、胸が痛いの。
涙さえマスカラに遠慮して落ちてこないのに、どうしても胸だけが痛いの。
13 :鏡に映るひとひら :2005/11/03(木) 00:13

微笑むために、さゆはいつでも鏡を探すんだ。
路地の角に立ってる鏡、ショーウインドー、水たまり。
さゆの顔はすこし歪んで映っちゃうけど、
いいの、泣きそうな顔も、笑って見えるから。


「じゃあ、明日ね。11時、バス停ね」
「おー、バトミントン、持ってくけん」
「じゃあ、れーなが点数つける役ー」
「アホ! 交代じゃ!」

れいな。絵里。さゆはね、いつもいつも鏡を探すんだ。
三人はトモダチ。いつか壊れてしまう。
だからさゆは、いつでも鏡を探してるんだ……


☆終☆
14 :名無飼育さん :2005/11/03(木) 00:46
レスしてもよろしいでしょうか?
幸運にもリアルタイムで読ませて頂きました。
最高です!
良いお話をありがとうございました。
15 :シュン :2005/11/03(木) 01:25
新スレおめでとうございます。
なんかこの3人は妙に教室の風景が合うなぁと思いました。
これからも雪ぐまさんの世界が作るCPを楽しみにしながら毎日チェック
させていただきますよ。頑張ってください!
16 :いちファン :2005/11/03(木) 11:25
歌うような文体がさゆにピッタリ♪
空気感を切りとった感じが素敵で
しばらく浸ってしまいましたよ。
いつもながらうっとりです。
17 :雪ぐま :2005/11/06(日) 17:51
14> 名無飼育さん
新スレなのにリアルタイムで! すごいですね!
さっそくレスをつけていただけて、雪ぐまも嬉しかったです。
初のさゆ視点だったので、けっこうドキドキだったのですw

15> シュンさん
ありがとうございます♪ 三人は教室がよく似合いますね。
女子校というより共学という感じもします。そんななかの
さゆえりれいなの密かな三角関係、妄想が膨らむ感じでした。

16> いちファンさん
物語の雰囲気をいつも敏感に感じ取ってくださって
すごく嬉しいですし、ありがたいなあって思います。
さゆは、いかにも“少女”って感じで、書いてて妙に
不思議な気持ちになりました。なんか入り込んじゃってw

それでは、次のお話にまいります。
18 :?雪ぐま :2005/11/06(日) 17:53


  いしよし、ハッピーライフ♪
 『真夜中のカップヌードル』
19 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 17:55


ずずっ、ずっ、ずずずずーーー。
ずずず、ず、ずーーーー。


うわぁ、なんて色気のない音。
意識の浅いとこで、私は眉を潜める。
だけど、なんだかいい匂いがするんだなぁ……。
なんだか妙に、安心する音なんだなぁ……。
20 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 17:56

ずずずずーーーずずっ、ずーーー。
ず、ずずず、ずーーーー。
ずびー、ず、ずずずずーー。


ウルサイ。てか、匂いがもう。
さすがに無視できなくなって、
重い瞼を片目だけ、ゆっくりと開ける。
ゆるゆると光が差し込んできた視界のなか、
素肌にシャツを羽織っただけのよっちゃんが、
ベッドの上であぐらをかいて、盛大にカップヌードルをすすっていた。
あの定番の、赤色のヤツね。
21 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 17:57

「……いい匂い」
「あ、食う?」
「んー、うー……」

眉をひそめて、うううと唸る。
ああ、なかなか目が覚めない。
お腹はチョー空いてるんだけど、アノ後ってなんか、ね。
深い深い海の底に潜っていって眠るから、だと思うきっと。

だけどそんなのは私だけの現象みたいで、
よっちゃんはちょっと寝たらパッて起きて、
部屋の中をゴソゴソゴソゴソ動き出すの。
なんか腹へっちゃうんだって。わかるけどさ。
22 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 17:58

「食わねーの? 全部食べちゃうよ?」
「うううー」

お腹がぐぅぐぅ騒ぐから、
観念して、のそのそ起きあがった。
起き抜けの目に、やたら眩しく感じるベッドサイドの黄色い明かり。
素っ裸でシーツから抜け出した私を見て、
よっちゃんがわざとらしくニヤッとした。

「丸見え」
「見ないで」
「見えちゃう」
「なんか、とってよぉ」

へいへい。
よっちゃんは長い足を床に伸ばして、
そこに落ちてた銀色のキャミをヒョイと蹴り上げた。
ナイスコントロール。フットサルの成果ね。
23 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 17:59

細いストラップにすとんと腕を通して、カップを受け取る。
それはもうぬるくて、底のほうにちょこっとだけ
伸びきった麺がぐるぐるととぐろを巻いていた。

「もうないじゃん」
「ちょっとあんじゃん」
「むー」

ちぇ。私のなのにな、このカップヌードル。
まったくよっちゃんときたら、
うちのものは勝手に食べていいって思ってるんだから。
ま、いいんだけどね。うん、いいんだけどー。

「私のために、半分残しとくとか」
「だって、むちゃくちゃ寝てんだもん」

だって、それはー。
伸びきった麺をちゅるちゅるすすりながら、
私は赤くなってうつむいた。

それはー、よっちゃんがすごいからじゃん?

なんてね、言ってもいいけど、そんな暴露をしたら
どんだけからかわれるかわかんないからやめとく。
ただでさえ、今日もこんなはずじゃあなかったのに……
24 :?真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 18:00

「お鍋しよって言ってたのにー」

久しぶりに、ふたり揃って夕方から空いてたんだ。
だから、すっごく張り切って私、お買い物してきたんだよ?
なのにうちに帰ったら、よっちゃんがもう部屋の中で待ってて、
あ、はやかったのね、会うの一週間ぶりくらい?……なんて笑ったら、
まともに靴も脱がないうちに、すっごく強く、腕を引かれて。

『遅っせーよ、石川ぁ……』

キッチンの床にドサリと落ちたスーパーの袋。
オレンジが飛び出して、ごろごろって転がったのが見えた。
ちょっと待って、牡蠣が入ってるの、お豆腐も!
待って待って、せめてアイスだけは冷凍庫にしまわせて〜〜〜〜!
なんてね、焦って抵抗したりもしたんだけど、
だめだな、すぐに私、どうでもよくなってしまう。
25 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 18:01

『ちょっと待って、よ……ねぇ、待って……』

なんて言葉は、ふたりの空気を暖めるだけ。
よっちゃんはあの長い腕で、ますますぎゅうぎゅうってしてきて、
痛いよ苦しいって思いながら私、目を閉じてしまう。
なにもかも、どうでもよくなってくるの。
乾いた土に染み込むみたいに、
ずっと待ってた、キスの雨が降り始めると。
26 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 18:01

「なに鍋にする予定だったの?」
「牡蠣の土手鍋。おいしそうでしょ?」
「マジ? 石川、そんなんつくれんの?」
「うるさいな。つくってみようと思ったんだよ、季節だし」

ふと見ると、床に放りっぱなしのはずのスーパーの袋が見当たらない。
そっか、よっちゃん、冷蔵庫にしまってくれたのね。

「アイスは死んでたな。また固まると思うけど」
「あはは。もうおいしくないよそんなの〜」

まったくどーしよう、あの大量の食材たち。
明日は朝から仕事だし、またしばらく一緒にご飯とか無理だしー。

「もう!」

よっちゃんの肩にゴツンと頭突き。
でもね、なんか「ま、いっか」って思ってる自分がいるんだ。
今夜の夕食は、ぬるくてマズーいカップヌードル。
だけど、「ま、いっかぁ〜」ってね。
27 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 18:03

「足りなーい。もっとなんか食べたーい」
「起きてなんかつくるぅ〜?」
「エエエ、めんどくさくない?」
「死ぬほど、めんどくせぇ」

よっちゃんは笑って、それでも私のために台所へ。
そして、すぐに戻ってきた彼女の手には、
やっぱりカップヌードルがホカホカと湯気をあげていた。

「次は、シーフードにしてみました」
「あはは、最高♪」

もーなんか笑っちゃう。
私はなんか楽しくなってきて、
ギシッとベッドを軋ませて座ったよっちゃんに、
やたら甘えてべたべたと絡みついた。
よっちゃんは、アブネーよ汁こぼれる!って慌てて。
28 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 18:04

「お前、ヤケドするよ? 顔とかに」
「たいへん。顔が命なのに」
「いや、どっちかってと腰じゃねーの?」

なによ、それ。
むぅと睨んだ私によっちゃんはまた笑って、眉間にチュッてキス。
皺になっちゃうよ、だってさ。
シーフードヌードルの匂いが充満する中で、
なんだか妙に幸せな気分がひたひたと押し寄せてきた。
そうね、もうヤケドするほど熱くないかもしれないけれど。

「なんか嬉しそーだね」
「うん、なんか嬉しー」
「笑ってると、かわいーよ」
「ちょっと、笑ってるとって何よ!」

危ねぇ!!!って言われながら私はよっちゃんの腕の中にもぐりこみ、
彼女を背もたれにして、おもいっきし寄りかかった。
29 :真夜中のカップヌードル :2005/11/06(日) 18:05

「はい、食べさせて」
「マジで?」

ハロモニのゲームみてぇって、よっちゃんは笑う。二人羽織みたいって。
違うよ、見えてるんだからちゃんと食べさせてよねって言ってるのに、
いじわるな彼女は、わざと鼻のとこにお箸をもってきたりして。

「もう! また、麺が伸びちゃうでしょ〜〜〜!」
「わーったわーった。ほい、どーぞ」
「もぐもぐ。ハイ、次〜」
「なんだよ、全部こうやって食う気かよー」

この夜は、カップヌードルの匂い。
大好きなあなたにくるまれて、ぽかぽかとお腹が満ちてくる。
ヤケドしそうな舌先と、あたたかな背中と、
時々、カチンと歯にあたるお箸の先っぽ、それからそれから。
甘えまくって、すっかりはしゃいでる自分に笑っちゃうな。
私の頭の中の“よっちゃんアルバム”、
またとても幸せな1ページ。


☆おしまい☆
30 :孤独なカウボーイ :2005/11/06(日) 19:09
更新お疲れさまです!
HPの方もこっそりと覗かせて貰っているのですが、この度書き込みさせて頂きました。

あー、なんといいますか、お腹いっぱいです!
ありがとうございましたw
31 :kouhaku :2005/11/06(日) 23:46
確かに。おなかいっぱいです。
なんでもいいんですよね。
私も今日はせっかく逢えたのにマックでした。
32 :名無飼育さん :2005/11/07(月) 00:23
更新お疲れ様です。
自分はカップヌードル食べれないのに
おなかいっぱいになりました。
ん〜〜なんとなく幸せ。
33 :名無飼育さん :2005/11/07(月) 00:45
あぁ。ほっとする。
いしよしの空気って良い意味でガキっぽくて好きだぁ。
見かけあんなんなのにw
34 :名無飼育さん :2005/11/07(月) 04:21
わぁい、雪ぐまさんの新作だー!
素敵ないしよしありがとうございました。
きっと二人っきりでいたらこんな感じなんだろうなーなんて思いつつ、
無性にカップヌードルが食べたい夜更けです。
35 :シュン :2005/11/08(火) 01:21
庶民的なカップラーメンだけど、二人の雰囲気で
凄いご馳走のように見えちゃいました。
思わずカップラーメンに手が・・・(笑)


36 :優海 :2005/11/12(土) 12:44
新作ですねー。
BBS見てこっそり来ました。
…丁度カップラーメン食べてたんですけどw
なんか無性に嬉しくなるのは何故でしょう??w
37 :優海 :2005/11/12(土) 12:44
↑ageちゃってごめんなさい;;
38 :雪ぐま :2005/11/16(水) 20:15
30> 孤独なカウボーイさん
いえいえ、こちらこそw あっちもこっちも
楽しくお読みいただいて本当にありがたいです。

31> kouhakuさん
あららw 好きな人とはなるべくおいしいものが食べたいって
思いますけど、でもマックでも楽しいって時ありますよね〜♪

32> 名無飼育さん
食べれなくても満腹になっていただけたようで良かったです☆
雪ぐまも書いてて幸せな気分でしたよ〜。

33> 名無飼育さん
それは言えますね〜> 良い意味でガキっぽい。
痴話喧嘩とかしまくりそうw 見かけあんなんなのにねw

34> 名無飼育さん
喜んでいただけて嬉しいです♪ 二人っきりのいしよし、
こっそり覗いてみたい気がしつつ書いていた夜更けでしたw
39 :雪ぐま :2005/11/16(水) 20:16
35> シュンさん
二人の夜には、カップラーメンもご馳走なのかもw
雪ぐまも思わずカップラーメンに手が・・・

36> 優海さん
ちょうど食べてたなんて運命的ですね〜w いいなあ、
雪ぐまは食べたいと思いつつ書いてて、まだ食べてないんですw

それでは、次のお話にまいります。

40 :?雪ぐま :2005/11/16(水) 20:17


紺ちゃんの、戸惑いの恋のカタチ。
『キスの方法』


41 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:17


キスというのは、どうやって学ぶものなのでしょう?
夕暮れに浮かぶ雲を見ながら、私は考えます。
まずい、明日かもしれないのに。

「本屋さんに寄ろうかな……」

わりと真剣に、そんなふうに考えます。
だけど、キスの方法なんて本が売っていたとして、
それをレジに差し出すことを考えると憂鬱になり、
私はまた、ため息をついてしまうのでした。
42 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:19

堤防沿いの風は、懐かしい草の匂い。
ひらりとめくれそうになる制服のスカートを鞄で押さえながら、
私は、鉄橋を走る銀色の電車を眺めました。
明日は、あの電車に乗って、また後藤さんに会いに行けるのです。

後藤さんが在学中だった頃、
私はずっと、ろくにあいさつもできませんでした。
目が合ったら、慌てて頭を下げるだけ。
すれ違う時は、真っ赤になって俯いたまま。
2年間ずっとそんな調子で、憧れはあからさまに気づかれていたけど、
後藤さんはいつも戸惑ったようなぎこちない笑みを浮かべるだけで、
どんなに近くにいても、話しかけてきてくれたりはしませんでした。

つまり私は、カゴに盛られたミカンの山みたいな
名も無きファンの一人。遠いヒト。
43 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:19

それでいいと思っていたのに、
卒業式の日に勇気を振り絞ってカードと花束を渡したのは、
せめて、あのタレ目の変な子が“紺野あさ美”という名だと知ってほしかったから。

そして、宝物が欲しかったんです。
一度でいい、「お花、ありがとう」ってメールがもし来たら、
それを高校生活の思い出に一生大切にするんだって、祈るような思いで。
44 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:20

暮れていく空に、憧れの後藤さんの横顔を思い出します。
騒がれてることを知ってて無視してるみたいな、冷めた横顔。
まさか、何度もメールをやりとりできるとは思いませんでした。
私がなにか送信すれば、律義に返してくれる言葉。
思ってたよりもずっと普通に明るくて、絵文字もガンガン入ってて、
そして毎日、少しずつ少しずつ打ち解けていくようだった。

ある日、観たい映画の話題になって。
同じ映画を観にいこうとしてることがわかって。

その話題はしばらく曖昧に私達の間を漂い、
何事もなかったように、さりげなく通りすぎていきそうでした。
あの時、携帯を握りしめながら、ひどく焦ってる自分を感じたんです。
世の中には、そう、特別になるタイミングとかがあって、
今あっけなく、それを逃してしまうのではないかと。
45 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:21


きっと私から誘わないと、一生、誘ってもらえない。
だけど誘えば、来てくれるんじゃないかな?
今なら一緒に、映画を見てくれるんじゃないかな?

46 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:22

『あたしとでよければ』

待ち合わせの駅に現れた後藤さんは、先に来ていた私の姿を見つけると、
やっぱりぎこちない笑みを、その頬に浮かべました。
でも、ちょっと照れくさそうに。

『そういえば、初めて話すね』

そうですね。
ずっと見ていました。あなたに憧れていました。
もっと知りたいと思って、ここにいます。
こんなの変かな? わからない。
すこしでもかわいく思われたいと必死で微笑んでた、あの日。
前の晩から考えてきてた話題を、トランプみたいにあなたの前に並べてた。
楽しんでもらえてるかどうか、まるで自信がありませんでしたが。
47 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:23

『モンブランがおいしいお店があるんです。あの、今度また、行きませんか?』
『いいね』

後藤さんはいつも、おとなしくついてくるという感じでした。
先輩だからもちろん私は死ぬほど緊張してたけど、
後藤さんもなぜかどことなく緊張してる、そんなふうで、
気を抜くとすぐにシンとなってしまう空気を、
私は必死で、もう必死であたためて。

帰り道、私おしゃべりすぎたかなって、毎回がっくり落ち込むんです。
だけど家に着く頃に嬉しいメールが届いて、心はたちまち舞い上がる。

『楽しかった。また誘ってよ』
48 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:23

先週末、初めて指先が触れました。
原宿の雑踏のなかで、人の波に両脇から押されるように
ふいに手と手が触れあい、そしてどちらからだったでしょう、
とうとう指先がさりげなく絡み合った瞬間の
あの胸の奥が張り裂けそうな鼓動!

『紺野、会いたい』

後藤さん後藤さん後藤さん……
ぎゅうっと痛む左胸を押さえます。熱いため息が漏れる。
おととい届いたメール。あなたからの初めての誘い。
涙が出るほど、叫び出したいほど、嬉しかった言葉。

会いたい。後藤さん、会いたい。
明日会えるとわかっているのに、
この一秒がもどかしいほど会いたくてたまらないのです。
ああ、夕陽をせかして、はやく沈めてしまいたい。
そして朝日を起こして、はやく、はやく、あの人のもとへ!
49 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:24

だけど、迷ったりもする。
暮れてゆく空が赤すぎて、地がぐらぐらと揺れるよう。
吹き抜ける風は、肌寒さを残して去ってゆくだけ。

「……こんなの、変かな?」

胸は確かに痛みます。そう、痛みすぎるから不安になる。
もうただの憧れじゃないことが、私を怯えさせてもいるのです。
このまま進んでどこに辿り着くのか、転がり落ちそうな自分。

「……わからない」

キリキリと痛むばかりの心臓にかたく目を閉じ、
深々と苦しい息をついて目を開けた瞬間でした。
私は思わず、我が目を疑いました。
鉄橋の方から歩いてくる人影が、後藤さんのシルエットに見えて。

「え……?」
50 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:25

うそ……。

とうとう幻覚が見え出したと思いました。
だけど、逆光を背負ったその影が、
私を見つけて戸惑ったように立ち止まったから。

「後藤さん……」

私の唇の動きを読み取り、影はかすかに微笑った気配でした。
そして不自然なほどゆっくりと、ふらりゆらりと近づいてきて。

「偶然〜……なわけないかぁ〜」

ははっ。
他人事みたいに言い放って笑う、目を合わせない瞳。
驚きのあまり、言葉を忘れてしまう。
だって、後藤さんが私に会いに来た、なんて、まさか!
51 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:26

「いつもね、紺野、遠回りして堤防から帰るって言ってたから」
「………………」
「なんかねぇ、急にバイトが、キャンセルで」
「………………」
「会えたらラッキー、みたいな?」

ははっ。
爪先が、ザザ…と堤防の土をこする。
そこにいたのは、どこか拗ねたように目を伏せたままの後藤さん。
絹糸のような長い髪が、風のかたちに流れる。
目には見えない風のかたちが、目には見えない心が、
あなたから伝わってくる。伝わってきている………
52 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:26

呆然とその姿を眺めた私は言葉を失い、
視界だけがこの瞬間を記録しようと開き続ける。
そう、まるでスクリーンのなかみたい。
空想の中の人のような後藤さんは、チラと目を上げて。

「じゃあ、明日」
「え、待っ……」

くるりと背を向けたその腕に、慌ててすがりつきました。
待って待って、ごめんなさい、まだ行かないで。
ボーッとしちゃって私、びっくりしちゃって私!

「あああああのっ……!」

思いっきり声が裏返っちゃって死にたくなりました。
振り返った後藤さんの、見たことのないまっすぐな瞳。
射抜かれて、たちまち鼓動がドクンと跳ね上がる。
だけどそれどころじゃなく次の瞬間、
そのまま心臓が弾け飛びそうなことが起こりました。
53 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:27


………………!!!!!!!!!!


54 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:27

ふいに抱きしめられて、強く強く押しつけられた唇。
声にならない悲鳴が、身体中を駆け抜けたのがわかりました。
呼吸を塞がれる、生まれて初めての感覚。
本能はとっさに逃れようともがく。
だけどあなたを求める心が視界を閉ざし、動くな、と叫んだ。

私が初めてと知らないからか後藤さんのキスはわりと容赦なくて、
私は崩れ落ちないように後藤さんにつかまって自分を差し出してる、
なんだかそんな感じでした。
柔らかな舌で口の中を探られ、脳裏にチカチカと明滅する光。
涼しい味のガムを噛んでおけば良かったと、おかしなことを思う。
だって、あなたがとても熱いから、甘いから……
55 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:28

やっと解放された時、ふわぁぁと情けない息をついて、
ぐたりと後藤さんの肩に寄りかかってしまった私。

「びっくり、した?」

耳元でくぐもって聞こえた後藤さんの囁き。
はい、とても。素直にそう答えても良かった。
だけどあなたの腕の中、私はとっさに背伸びをして、こう答えました。

「明日かと、思ってました」

あはっ。
耳元で彼女が笑う。
子供みたいと知ったあの笑顔が、瞼の裏に見えてドキドキする。

「……こんなつもりで、今日来たんじゃないんだけどさ」

じゃあ、どんなつもりで?
拗ねて顔を上げると、照れくさげに細められた瞳。ふにゃふにゃと笑った唇。
ああ、近くで見るとヒトの瞳って、こんなに複雑なグラデーションなんだ。
そしてヒトの唇って、こんなに透き通るような桜色。
それとも後藤さんだから、特別にきれいなの?
56 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:29

私はどうしてももう一度この人とキスしたくてたまらなくなり、
無理やり首を捻って、今度は私から口づけました。

「……好きです………」

どうしたらいいかわからないのに、
どうしてか私の唇はあなたを求めて動く。
知ってしまえばもう、当たり前みたいに欲しくなる。
大好きなお菓子みたいに止まらなくなる。
どうしよう、もう止まれなくなってる。

いつの間にか私たちは草の上に座り込んで腕を絡め、
陽が暮れてしまってるのにずっと、真っ暗になってもずっと、
ただ黙々と何度も首を傾け、数えきれないほどのキスを交わしていました。
やっと止まれたのは、ふいに血の味がしたから。
57 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:29

「あ……」

後藤さんが困ったように指先で唇を押さえ、
切れちゃった、と小さく笑いました。
そして、紺野ってけっこー激しいんだね、なんてからかって。

「……いちおう、初めてだったんですけど」
「ほんとに?」
「ほんとです」

キスの方法を知らない私は大切な人の唇を傷つけて、
どうしていいかわからずに、また唇を寄せました。
後藤さんは目を閉じて、私が傷口を舐めるのを許してくれた。

「ごめんなさい」
「ううん」

風がまたあなたの美しい髪を揺らし、
信じられない、私の頬をくすぐっていく。
こんなに近くにいる今が、幻みたいに思う。
ずっと夢みてたリアル。そう、こんなに幸せなのに、
これまでに知らなかった不安が喉元までせりあがってきて戸惑いました。
58 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:30


後藤さん、私、
どうしたら寂しくなくなるか、知りたい。

59 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:31

「……私たち、つきあってます、か?」
「紺野が、それでよければ」

言葉は泡立つ心を羽のように撫でて、だけど儚く消えていく。
ああ、もっと強い約束が欲しい。
後藤さん、あなたのすべてが欲しい。
あなたの毎日、あなたの瞳、あなたの心、あなたの未来。
約束して。約束をして。永遠に。永遠にこの腕の中にいて!
60 :キスの方法 :2005/11/16(水) 20:32

それは、キスで目覚めた私の欲望。
私でさえ知らなかった、目には見えない私の恋のカタチ。

完全に溺れ始めた私を知らず、
後藤さんは照れくさそうに私の背に腕をまわし、
それっきり何も言わずに夜空を見上げました。
つられて空を仰げば、何万光年も昔からやっと届いた星の光。

「きれいだね」

忘れられない夜の、あたたかな声。
だけどあなたの唇を知った私は、星にさえ嫉妬する。

私はもう、キスの方法なんて知りたくありませんでした。
今、私が知りたいのは、あの星たちのように後藤さんに見つめられ、
何万光年でも光りまたたく方法でした。


☆終☆
61 :シュン :2005/11/17(木) 01:46
更新お疲れです。
欲望が満たされるとさらに大きな欲望が生まれてくる。
人間はなんて欲張りな生きものなんでしょうw
「世の中には特別になるタイミングがある」ですか・・・
それを逃してしまった数年前のことをちょっと思い出しちゃいました(泣)
62 :名無飼育さん :2005/11/17(木) 01:46
好みすぎてゾクゾク来た……。
先日の娘DOKYUを思い出しましたよ。
63 :名無飼育さん :2005/11/17(木) 01:48
ごまこん最高です!!切なくて、でも嬉しい。
こんな気分にさせられました!
64 :名無飼育さん :2005/12/12(月) 04:33
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
65 :雪ぐま :2005/12/18(日) 01:11
61> シュンさん
あらら。。。でも失敗とか後悔をしたからこそ、次はきっと
勇気を出してタイミングを掴めるんじゃないかと思いますよ〜。

62> 名無飼育さん
おっと、雪ぐま見逃したかも。>娘ドキュ。
好みと言っていただけてとても光栄だし、嬉しかったです♪

63> 名無飼育さん
うちのごまこんは、妙に切ない系になるんですよね〜w
また「最高」と言ってもらえるように頑張りますね〜。

64> 名無飼育さん
お疲れさまです。飼育ではたくさんの人がご厚意で
さまざまな企画をされているんですね。頭が下がります。
66 :?雪ぐま :2005/12/18(日) 01:12
それでは、次のお話にまいります。

いしよし、信頼の絆。
『おやすみ、梨華ちゃん。』

67 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:13


ココナツの石鹸みたいな甘い香りがした。
いつか旅した南国の、誰にも内緒で紛れ込んだ
あのリゾートホテルのコテージに置いてあったのみたいな。

「首のうしろ」
「また?」

なにもつけてないのになぁ。
梨華ちゃんはくすくす笑ってそう言って、
それからくすぐったそうにキュッと身をすくめた。
あたしが鼻先をうなじに押しつけたから。
68 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:14

「くすぐったいよ……」
「ジッとして」

おとなしく、ジッとするのがかわいい。
ひとまわり小さなカラダを背中からくるんでるベッドの中。
彼女はこうされるのが好きで、あたしはこうするのが好き。
あたたかな塊。ぴったりと重なった肌から、ココナツの香り。

「いい匂い」

胸の奥まで吸い込んで、あたしはいつも思う。
知ることができた幸福と、知ってしまった不幸について。
梨華ちゃんの首のうしろのココナツの香り。

「香水ならいいのにな」
「んー?」
「したら、部屋中にかけとくんだけど」

それもかなわない、梨華ちゃんだけの香りだ。
はあっとため息をついたあたしの腕を、彼女は優しく撫でた。
69 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:15

「離れるの、やだ?」

ちぇ、バレてるし。
返事の代わりにあたしは、
ますます梨華ちゃんを腕のなかに閉じ込める。
そうだね、今夜は会えたけど、明日からまたしばらく会えそうもない。
次、いつ会える?と呟きかけてやめてみる。
そんなの、わかんないよね。
むっつり黙り込んだあたしを、梨華ちゃんが嬉しげに笑ってからかった。

「昔と逆だねぇ?」

3日も会えないと騒いでたのは私のほうだったのにね。
そんなふうに言うから不安になるんだ。
もう平気なわけ? なんて、ちょっと女々しいかな。

「だってさ、ぜってぇ二週間とか会えないっぽくね?」
「しょーがないじゃん、お仕事だもん」
「わかってるよ、別に行くなってゆってないじゃん」
「なに拗ねてんの、もぉ」

ポンポンとなだめるように腕を叩かれて。
あたしは口を尖らせて、また黙り込む。
たった1コだけ歳上の恋人のこと、すごく大人みたいに感じて。
70 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:15

「そうだ、じゃあなんか交換しよっか?」

ふいに梨華ちゃんが、妙に目をきらきらさせて振り返った。

「交換?」
「うん。そしたら寂しくないし、いつも私のこと思い出すでしょ?」

そんなことしたって寂しいし、
そんなことしなくたっていつも思い出してるよ。
って思ったけど、ナイスアイデアにすっかり夢中になった梨華ちゃんは、
もう止まらない感じで、勝手にあれこれ候補を挙げはじめた。

「時計とか指輪とかぁ。あ、でもバレにくいのがいいね、口紅とか?」
「あー、うん」
「ちょっとぉー、よっちゃんも真剣に考えてよ!」

これだよ。
あたしは苦笑して、ゆっくりと頭を巡らせはじめた。
彼女が微笑んでくれる答えについて。
そして、あたし自身が納得する答えについて。
閃きはほどなく舞い降りて、
胸の奥から転がり落ちてきた言葉をあたしは素直に口にした。
71 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:16

「ネックレス」

あなたの首のうしろのココナツの香り。
大好きだから、いつでも思い出したいよ。
そして一日でもはやく、
またこの香りを胸いっぱいに吸い込めるように願いをこめて。

「いい考えと思うんだけどな」

なのに梨華ちゃんはウーンと唸り、
ネックレスねぇ……と浮かない声をあげた。

「だめ?」
「んー、今日つけてきたの、柴ちゃんとオソロのなんだよね」
「なくさないよ」
「違うよ、そういうことじゃなくて」

 これ渡したら、私がいない間、
 よっちゃんと柴ちゃんがオソロになっちゃうじゃん?
 
いたずらっぽく光る、おしゃべりな梨華ちゃんの瞳。
私じゃない人とオソロなんてヤだな、なんて。
72 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:17

ヤキモチ妬かれてんだと気づいて、あたしは吹き出した。
何言っちゃってんの、もう。

「んだよ、自分は勝手に柴とオソロにしたくせに」
「親友だもーん」
「じゃ、いいでしょ。親友とあたしがしばらくオソロでも」
「えー、なんかそれはイヤー。あっ、でもいいや!」
「へ?」
「よっちゃんもまいちゃんたちとオソロの指輪、持ってたよね? 私、あれ借りる!」
「うええー?」
「へへへ、おあいこだよ」

決まり決まりー。
シーツの中で梨華ちゃんが脚をバタバタした。
ううう、まいちんたちと梨華ちゃんがオソロって、なんかヤなんだけど……。

「よっちゃんが言い出したんだよ?」
「違うじゃん、あたしはネックレス同士を交換しよーって」
「うふふ、もう肌身離さずつけちゃおーっと。まいちゃんたちとお揃い!」
「ちょっと聞いてんの?」
「妬いちゃう?妬いちゃう?」

まったく、この人ときたら。
いつだって自分勝手に回り始めて止まらない。
でもそんなワガママがたまらなくかわいくて、いつもあたしは。
73 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:18

「ちぇ」
「やった、私の勝ち☆」

勝ち負けかよ!えーい、黙らせちゃる!
悔しくなってあたしは、得意げな姫の首筋にがぶりと噛みついた。
不意打ちに彼女はびっくりするほど甘い声を漏らして、
シマッタというように慌てて唇を押さえる。

「ちょっ、な、なによ?」
「むかつくから、もっかいすることにした」
「え? なにそれ、ちょ、ちょっと、もぅダメだよぉぉ〜〜〜」

逃げ出そうとする華奢な肩を、軽々と押さえつける。
鼻をくすぐるのはココナツの香り。ココナツの肌。
舌先に、知ることができた幸福と、知ってしまった不幸の味。
だけど梨華ちゃんもきっと感じてる、あたしにしかない柔らかな舌を。
剥き出しのあたしを。求める想いの激しさを。奪い取るわがままを。
あえなく乱れてく鼓動と息づかいの狭間に、きっと。
74 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:19

「…………もぉぉ」
「やっちゃった♪ やっちゃった♪」
「……次会った時、覚えてろよぉ〜?」

ギク。意外と鬼畜だからなあ、このお姉さん……(汗。
でもちょっとワクドキしてたりもして、変なあたし。
シーツにぐったり沈み込んだまま梨華ちゃんは笑って、
そんなあたしの腕をかじかじと噛んだ。
よっちゃんの腕って噛みたくなるのー、とか言って。

「痛ぇ! 食われるぅー」
「幸せでしょ?」
「ま、ね」

いつだってこれ以上、好きになれないと思うのに、
梨華ちゃん、今日もまた不思議な夜だ。
恋は時間に削り取られて少しずつ疲れてくものだと聞くけれど、
あたしたちはすこし特殊なのかもしれないね。
75 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:20

「……好きだよ」
「どしたの、急に」
「なんだよ」
「ううん。……私も好きだよ」

横たわったまま、互いの目の中を覗き込む。
あなたの世界いっぱいにあたしを映して、
あたしの世界にいっぱいにあなたを映して、
あたしたちはまばたきも惜しんで見つめあう、そして笑ってキスをする。

こんな夜を何度も繰り返してるから、離れても残像は消えないんだ。
約束がなくても、ココナツの香りがまたあたしを包み込むと信じてる。
だからって、寂しくないわけじゃないけれど。

「すごーく幸せ。寝ちゃうの、もったいないなぁ。。。」

なんて言いながら、もうとろりと眠そうな瞼の梨華ちゃん。
ゴソゴソと子犬のように胸の中にもぐりこんでくる、カフェオレ色の恋人。
あなたの指先が痛いほど強くあたしをつかまえてくれるから、
あたしは安心して今日も夢の中へと旅立てる。
76 :おやすみ、梨華ちゃん。 :2005/12/18(日) 01:20

「も、ダメだ、オヤスミナサイ……」

おやすみ、梨華ちゃん、またここで。
彼女をしっかり腕にくるみこんで、あたしも目を閉じた。
明日からまたダッシュで走り出す、それぞれの道。
迷いなく飛べるのは、羽を休めるこの場所を信じてるからだね。

いま、絡めてる腕が離れても、また繋がるよ。
そう、あたしたちはいつだって、
どっかでちゃんと繋がっているんだ。

☆終☆
77 :名無飼育さん :2005/12/18(日) 02:00
雪ぐまさんの描く恋人達の風景は読んでいてあったかくになります
78 :名無し読者79 :2005/12/18(日) 08:30
初めてレスさせて頂きます。
雪ぐまさんの描かれる世界が大好きです。
素敵でした今回の2人も味があって思わず惹きこまれてしまいます。

79 : :2005/12/18(日) 21:08

すごくステキでした。
『ココナツの香り』の使い方も、
『知ることができた幸福と、知ってしまった不幸』
という表現の甘さと切なさも
とてもお上手だな、と感心しました。
また次の更新も楽しみにしています。

80 :シュン :2005/12/19(月) 01:20
世間は暗いニュースが多いけど、雪ぐまさんの小説を読んで
心が暖かくなりました。
次の更新も期待してますよw
81 :愛虎 :2005/12/21(水) 00:56
はじめまして、雪ぐまさんの作品は色々読ませて頂いてますがやっぱり!
『いしよし』が一番好きです。
今回の作品に出てくるネックレスて「うたばん」でよっすぃ〜がしていたものですよね?
次回も楽しみに待ってます。
82 :愛虎 :2005/12/21(水) 01:00
すいません!!ageてしまいました。
ごめんなさい。
83 :雪ぐま :2006/01/19(木) 13:21
77> 名無飼育さん
ありがとうございます。恋っていいなぁって、
雪ぐまはいつも思ってるんですよw

78> 名無し読者79さん
そう言っていただけて、とても幸せです♪
いしよしは長い春って感じの味わいが萌えw やたら張り切って書いてます。

79> Sさん
Sさんって、Sさんですよね? (謎の問いかけw
お褒めいただいて光栄です。日常のなにげない幸福と甘さと切なさ、
Sさんのようにさりげなく描けたらいいなって思っています。

80> シュンさん
あら、それは嬉しいですね〜♪>心が暖かく
世間に暗いニュースが溢れても、いしよしは永遠ですw

81> 愛虎さん
ご愛読ありがとうございます。そうです、そのネックレスです!
やっぱりリアルネタがあると筆もサクサク進みますねw

それでは、次のお話にまいります。
84 :?真っ白な幸福 :2006/01/19(木) 13:22


梨華ちゃん、ハッピーバースデー♪
『?真っ白な幸福』

85 :真っ白な幸福 :2006/01/19(木) 13:23


朝起きて、お天気がいいと、それだけで幸せ。
誕生日なら、なおのことね。
薄いカーテンから差し込む真っ白な光に目を細めて、
私は寝返りをうった。あたたかなお布団のなかで。

「起きて、よっちゃん」
「……………ん?」

もぉ朝かよぉ……、なんて呻く薄いピンクの唇。
かすかに焦れたように寄せられる眉。
ゆっくりとまばたきを繰り返す長い睫毛。
晴れた朝のよっちゃんは、白い光の中、さらに白く光って溶ける。
砂糖菓子みたいなその肌、世界中に自慢しちゃいたいほどきれいで、
だけど、まだぼんやりとした紅茶色の瞳が
ちょっとドキッとするくらい気怠げな甘さに満ちているから、
うん、やっぱり誰にも見せたくないな。
86 :真っ白な幸福 :2006/01/19(木) 13:24

ひょろりと長い腕が、当たり前みたいに私を抱き寄せる。
やわらかな唇がオデコに押しつけられるのがわかる。
寝ぼけ眼のよっちゃんの、いつもの無意識の動き。
腕の中で、ほのかにミルクっぽいよっちゃんの香りを胸いっぱいに吸い込んで、
私は幸せだなって思う。幸せだなぁって、いつも。

ますますご機嫌になった私は、
ほっぺたを肩のあたりにこすりつけながら、
弾んだ声で、とても簡単なクイズを出した。

「ねぇねぇ、今日は何の日?」

んー? って、よっちゃん。
わざとらしく考えるフリ。首を傾げて考えるフリ。
で、いじわるな彼女は、ニヤリと笑って。
87 :真っ白な幸福 :2006/01/19(木) 13:25

「ガッダスの試合でしょ」
「がーーーーん……」
「ははっ。うそうそ、今日は梨華様の誕生日っすー」

はい、よくできました♪
こんなお決まりのね、小さなやりとりが心をくすぐるから、
私は大笑いして、カメラの前でもないのにきっと最高の笑顔。
わかるんだ、あなたがすごく嬉しそうに私を見つめて笑うから。

「かわいい?」
「あーかわいいかわいい」
「ちょっとぉ、なにそれ」
88 :真っ白い幸福 :2006/01/19(木) 13:26

ふざけあう私たちの目の前いっぱいに、
真っ白な光が眩しく降り注いでる。幸福の朝。
その光の中に高く指をかざして、私は目を細めた。
左手の薬指に、よっちゃんが昨夜0時にくれた贈り物。
ちょっと寄り目になっちゃいながら、これすごいなあって、しみじみ思う。
だって、小っちゃいけどダイヤなんて光っちゃってる。
ゆるやかなカーブを描く華奢なプラチナの台に。

「気に入った?」
「うん、すっごく」

気に入らないわけないよ。
すごく特別な感じ、するもの。

「超特別だよ。つーか、高かった!」
「お給料3ヶ月分?」
「えーと、そこまでじゃないけどぉ……」
「がーーーーん……」
「いや、それはまたいつかね。いつか!」
89 :真っ白い幸福 :2006/01/19(木) 13:27

ふうん、いつかね。いつでしょう?
大切な指輪にキスをして、それから私はゆっくりと外して箱にしまった。
つけておけない指輪だけど、存在が、あるとないでは違う。
ほら、あなたの気持ち、薬指に巻きついて消えない。
目には見えなくても、そう強く信じさせてくれるから。

そうね、“いつか”も、あなたならきっと嘘じゃない。

「さて、起きるか!」
「まったく、フットサルの日は張り切ってるよねぇ」
「おう! 勝つよ、今日はマジで勝つ!圧勝で勝つ!」

梨華様のバースデーだからね、なんてウインク。
また私、笑っちゃう。調子いいなーなんて。
でもね、私を喜ばせる大サービスをありがとう。
よっちゃんは冗談の中にいつも本気が見える人。
もう何年も何年も何年もね。
90 :真っ白い幸福 :2006/01/19(木) 13:28

幸福な一日の予感に満ちた朝の光。真っ白な光。
はやく起きろよって振り返った真っ白なあなた。
差し出された手を、嬉しい気持ちでとった。
胸が震える、大らかで、あたたかな光。
私をいつも包み込んでくれる、穏やかな光。

「ねぇ、今日は、なんでも言うこと聞いてくれる?」
「いつも聞いてんじゃん」
「えー、そんなことないよ!どっちかってゆーと私が……」
「メシ、ベーグルとゆで卵でいい?」
「またぁ? って、ねぇ、よっちゃん、今日はなんでも私の言うこと……」
「はいはい……」


☆おしまい☆
91 :名無飼育さん :2006/01/19(木) 15:23
幸せをありがとう……
素敵なお話で頬が自然と緩みました。
92 :名無飼育さん :2006/01/19(木) 17:52
ウマいっ!思わず、レスせずにいられませんでした!
本当にカンペキとしかいいようのない二人の空気感…
雪ぐまさまの(いしよし)は圧倒的なリアル感がありますね♪
93 :名も無き読者 :2006/01/19(木) 22:40
⊂⌒⊃;。Д。)⊃←K.O.
94 :名無飼育さん :2006/01/23(月) 15:36
「あま〜い!」ネタのハロモニで、2回もあったいしよしカメラワーク…
それと前後してこの作品読んでしまったので、もう本当に幸せです。
それこそ、もたれるほどにw
95 :雪ぐま :2006/02/21(火) 01:00
91> 名無飼育さん
こちらこそ、嬉しいレスをありがとうございます。
梨華ちゃんのお誕生日がこんなだといいなあって思いつつw

92> 名無飼育さん
私のいしよしにリアル感があるというか、
いしよしそのものにリアル感が(ry ……なんてねw
お褒めいただいて、とても嬉しかったです♪

93> 名も無き読者さん
格闘家をノックアウトしてしまったw

94> 名無飼育さん
最近、いしよしカメラワーク、多いですよね〜。
これからも、もたれるほどにあるといいですよねw

それでは、次のお話にまいります。
96 :雪ぐま :2006/02/21(火) 01:08


ちょっぴり気難しい愛ちゃんが、ある日出会ったのは……
『水の中の世界』

97 :水の中の世界 :2006/02/21(火) 01:09


学校の裏にあるお寺さんの池をいつも覗いてるから、
あたし、ナルシストやって言われてるの、知ってる。
水仙の花になってしもた、アホな男の子のハナシやろ?

そやね、ナルシスみたいなとこもあるかもしれん。
ほやけど違う。あたしがいつも、水の中を覗いてる理由。
水面に映る樹々の影。
空に鳥が飛べば、水の中にも鳥が飛ぶ。
あたしは思う。水の中が、本当の世界かもしれんよ?

98 :水の中の世界 :2006/02/21(火) 01:10

「だって」

この世界は、地面がぐらぐら揺れるみたいな気がするんや。
毎日毎日、立ってるのも辛いくらい揺れてる。
胸がザワザワと不安になるくらい。
そう、不安になる。妙に落ち着かないキモチに襲われて。

「……アタマおかしいんかな、あたし」

ううん、違う。
みんなのほうがおかしいんや。
歪んだ笑い。さざめき。嘘の言葉。優劣。興味。視線。束縛。自由。自由?

目の前が、ぐらりと揺れる。
ほら、また揺れはじめる。
なにを根拠に、どれを信じるの?
気持ち悪いよ。全部、気持ち悪い。
なぁ、この世界のほうが間違ってる……かもしれんやろ?
99 :水の中の世界 :2006/02/21(火) 01:11

錆くさい柵から身を乗り出して、指先で水面に触れてみる。
たちまち波紋が広がって、水の中の世界は消える。
ああ、今日も失敗や。どうしても入り込めん。
水の中の世界、そっちがほんとかもしれんのに。

「なんてな」

あたしは今日も諦めて、スッと身を起こす。
すいすい泳ぐアメンボを恨めしく見つめながら、いつものように。
だけどどうしたことか、柵に手をついて顔を上げた瞬間、
ふいに視界がチカチカッと白く光った。

「あ……」

しまった、貧血や。
とっさに柵を掴もうとした指先がつるりと滑って、
前のめりにぐらりとカラダが傾いだ。
うわヤバ、どうしよ……
100 :水の中の世界 :2006/02/21(火) 01:12

「危ないっ!」

遠くで誰かの叫び声が聞こえた。
とたんにあたしは、わかってるよ、ってグッと顔を上げる。
へーきやよって、なんとか体勢を立て直そうとする。
ほっといてって、なんでもないような素振りを。

ほやけどあたしのカラダはココロを裏切って崩れ落ち、
あえなくこの地球の引力に引きずられてく。
景色がますますぐにゃりと歪み、なぜかセピアに潤んでくる。

ああ、あかん。
あかんて、立たな、あたし。
グッと歯を食いしばった、その瞬間。

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