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群青流し

1 :ふわふわ :2014/03/29(土) 08:51
森板からのお引っ越しです。
生田×鞘師コンビのお話です。
「えりぽんが実在の人物ではなく、ヤシの妄想の中の人物だったら」という
狼の生鞘スレに投下したネタを元に書きました。

オリキャラ(男)大量に出てくるので苦手な方は注意してください。
住所、車のナンバー、その他もろもろ当たり前ですが全部フィクションであります。
先にお詫びして、9期10期、さゆれなのあの頃を書いていきたいと思っています。
完結までお付き合い下さいませ。
675 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:00

   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥


676 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:00


尾田沢は、まだ患者を受け入れる前の診察室で、いつもの通り穏やかな顔をしていた。


「鞘師さんには、いつも楽屋に花を贈ってきてくれる、熱心なファンがいました。
 鞘師さんのメンバーカラーをモチーフにした、赤い花束です。
 この間のクリスマス、その人からプレゼントだと言って、大量のポインセチアが届きました。
 事務所に確認しました。事務所は、そんなものを転送なんかしてないそうです」

尾田沢の表情は変わらない。ゆったりと、いつもの覗き込むような目で春菜を見ていた。

「あなたは、鞘師さんの保険証を見て住所を手に入れたんですよね。
 だから今まで事務所に送っていた花を、自宅に送ったんですよね?
 自宅に送っただけじゃない。もしかしたら配達員を装って、部屋の中に入り、エアコンのフィルターにポストカードを貼り付けたかもしれない」

「どうして僕だと?」

春菜は引き伸ばした送り状を出した。
「「ら」の文字を、ずいぶん変わった書き方をしてますよね。
 点を水平にしてるせいで、「ち」か「ら」か迷います。
 あゆみんが、同じ字を書いていた人を思い出したんです。
 尾田沢先生、あなたです」

里保のフォロー用員で病院に連れてこられたとき、亜佑美は机の上のカルテを見ていたのだ。

「あのとき、気まずかったじゃん?
 どーしようかなと思って。
 なんとなく見てたら、この人変な字書くなーと思って…
 それで覚えてたんだけど…」


677 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:02

「今朝、鞘師さんの部屋のごみ箱から拾った配送伝票も、同じくせ字で書いてありました。
 あんなに大きな鉢を運ぶなら、軍手か何かしてたんですか?
 それなら指紋も残りませんね」

尾田沢が、くせ字の件を恥じるように童顔の中の澄んだ目をくるりと回した。

清潔な診察室。
つい先日、里保はここで失った記憶を取り戻したばかりだ。
精神科医とは患者にとって、心身ともにのよりどころであるはずだ。
なのにどうして。

「鞘師さんが事件の前に鍵を落として、
 USSの人が付け替えるまでの一週間。
 部屋に入った人は鞘師さん。遠藤くん。道重さん…
 溝口さん、葛西さんと山本さん。
 それに、この宅配便の人だけです。

 例えばこういうことが出来たんじゃないでしょうか。
 時間指定配送にして宅配便の車を待ち構え、受け取り主をいつわって、業者控えの方にだけサインをして渡す。
 外も暗かったでしょうし、宅配便の人ってそんなところまで見ませんよね。
 これで鞘師さん宛ての無記名の送り状控えが手に入ります。

 そして、今度はあなたが宅配便の人に変装して、鞘師さんの部屋を訪ねる。
 送り状控えの下に新しい伝票を適当に重ねておけばバレません。
 花は大量ですから、部屋の中まで入らないといけません。
 鞘師さんの目を盗んで、エアコンの中に、カードを貼り付ける隙もあったでしょう」

春菜は、ため息をついた。


678 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:03

「わたし、ずっと不思議だったんです。
 どうして犯人が、『生田さん』の存在を知っているのか。
 三通目、「君が夢を見てる10人のモーニング娘。」、
 これって『生田さん』のことですよね?

 たとえ女の子の部屋でマネキンを目にすることがあったとしても、誰がそれを「10人目のメンバー」だなんて思うんですか?」
 
言うまでもなく、モーニング娘。は道重田中、9期の3人、10期の4人で、9人だ。
里保をずっと見ている者なら、そんなことを間違えるわけがない。

「第三者が、鞘師さんの病気を知ってるわけないんです。
 だってつい最近まで、当の鞘師さんにも分からないように皆で隠してたんですから。
 
 ただの書き間違いかな、とも思いました。
 でもこの言い方は…「君が夢を見てるモーニング娘。」、この言い方は…
 病気のことを知ってる人じゃないと、出てこないと思います。

 誰だろう、事務所の中の人だろうかって、ずいぶん疑心暗鬼になりました。
 でもよく考えると、私たち以外にも、ぜんぶ事情を知っている人物がいたんです。
 尾田沢先生、あなたが」


679 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:03

尾田沢は、ふうと息を吐くように笑った。
「それで僕がやったっていう証拠になるのかな?
 君の言ってることは、理論の展開に過ぎない。裏づけがない。
 大体、殴り書きをすれば誰でもこんな字になるだろう。「アップフロントエージェンシーか『ら』転送」……
 ちょっと根拠が薄弱すぎるんじゃないかな?」

春菜はもう一枚の紙を取り出した。

「これは、発注を受けたお花屋さんにあったメモです。
 19日以前にそういう注文があった都内のお花屋さんを、みんなで総出で探しました。
 詳細なアレンジメントの指定が書かれてます。ちなみに「ら」は全部、「ち」。
 これだけの文章量があったら筆跡鑑定、できますね。

 それ以前に、この紙から、先生の指紋が出てくるかもしれませんよね?
 そしたら、先生、どうしますか?」


尾田沢は部屋の中に視線を走らせた。
壁際には弓削と山本が、じっと黙ったままこちらを睨んでいる。
尾田沢は、きいと椅子を回転させ、こちらに向き直った。



680 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:04

   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥


681 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:05


待ち合わせ場所のファミレスは、橋の下の国道沿いにある。
里保とエンドーは土手を下りて、公園の中のジョギングコースを歩いた。
たまに頭上を車が通り過ぎていく音がするが、常緑樹の葉にさえぎられて見えない。

「ちゃんとうさぷにが入ってきたら分かるんだろーな?なんか目印とか」
「うーんと、亀山さんが6年前17歳ってことは…23歳の人でしょ。
 あとは、そう、白い服着てくるって」
「は!?それだけ!?お前なあ!」
エンドーから握りこぶしを作る。
エンドーから体をかばうように、里保は言った。
「私とエンドーの特徴も伝えてあるから、分かるって!
 分かんなかったらメッセージ送ればいいじゃん!」

エンドーはすぐ握りこぶしをしまって、歩いていく。
里保はその後をトテトテとついていく。
どこかで味わったような既視感だった。幻の金木犀の匂い。

もしかしたら。
私は、エンドーが来たから、「えりぽん」に頼りきりにならなくてもよくなったのかもしれないなぁ。


682 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:06

ぼんやりと背中を見る。
揺れる毛の先まで、えりぽんと同じ。
最初の頃はそれがすごく嫌だった。
でもいつの間にか、エンドーが、頭の中で作ったはずの人物と同じ顔をしたエンドーが、
里保の部屋の分厚い壁を壊し、頼んでもないのに里保を引きずり出した。
そして、勝手に私の手を引っ張って、ここまで連れてきた。

あのクリスマスの夜、エンドーがえりぽんと同じに、黙って自分のそばにいてくれたから。
だから里保は壊れずにすんだ。

エンドーがいなければ、わたしはここまで来れなかった。


「何だよ、気持ち悪い」
「何よ! なんにも言ってないじゃん」
「なんか気持ち悪さを感じたから」
「なによ。
 あんたのほうが気持ち悪いですから!」

やいやいと言い合いをしている二人の背中に、
いきなり―――
鋭い、聞き覚えのある声が響き渡った。


「鞘師さん、その人から離れて!!」



683 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:07



里保は振り返った。
今の声は春菜じゃなかったか?

確認を求めようとすると、里保の周りの空気が揺れた。
信じられないものを見るように…里保の目が見開いていく。

エンドーの体がぐらりと傾いて、
里保を素通りし、地面に倒れ伏した。






684 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:08

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685 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:09


「ええ?
 遠藤くんて、事務所の関係者じゃないんですか?」

久しぶりに乗る溝口の車の中で、聖と香音は目を丸くしていた。
ハンドルを握る溝口は、高い鼻に眼鏡を引っかけた横顔を半分向けながら言う。
「私は知らないわよ。USSの見習いの子じゃないの?
 やけに若いなとは思ってたけど」

二人は、顔を見合わせた。


「じゃあ、遠藤くんって、誰…?」



686 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:09

   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥


687 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:10


「み、道重さん、
 腱が切れてたんじゃないんですか?」

「腱?
 腱なんか切れてないわよ。
 腱が切れてたら、あなたたちをここまで追いかけて来られないじゃない」


病院の白い病衣をまとったさゆみが、そこにいた。


もともと色が白いのに、裾から伸びたしなやかなふくらはぎが、病的に青ざめている。
エンドーを抱えた里保を見下ろす目も淀み、黒く濁り、まるで幽鬼のようだった。

「知ってる?
 神経毒。
 2ミリグラムも投与すれば、余裕で死んじゃうの。

 ダイバーちゃんねるってほんと便利。
 架空のナンバーから、余計なことを言わないバイトから…
 お金さえ出せば何だって手に入る。
 アマゾンよりよっぽど便利だよね」

春菜たちが追いついてきた。なぜか尾田沢もいる。
尋常でない様子のさゆみに悲しげに言った。
「さゆみさん、なぜあの時治療に来なくなってしまったんだい?」

さゆみは焦点の合わない黒い瞳で、尾田沢を見上げた。
どろりと粘性のある黒い炎。


688 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:11

「ある日テレビをつけて驚いた。
 君がいた。病院では見せなかった笑顔で、明るく笑ってた。
 君のことが心配で見ているうちに、僕も娘。ファンになった。

 里保さん、事務所にずっと花を贈っていたのは僕だ。
 君が診療に来て、君の現住所を知った。
 我慢できなくて、事務所からの転送と偽って君の家にポインセチアを届けた。
 僕は君の信頼を裏切った。ほんとうにすまない。これは立派な違法行為だ。

 しかし僕は、部屋に入ってはいない。
 カードを貼り付けたのは…道重さゆみさん。あなただ」

遠くからサイレンが聞こえてきた。
土手をばらばらと警察官たちが駆け下りてくる。
菊川は、倒れているエンドーを見て険しい眼差しをさゆみに向けた。

「道重さん。
 あんたぁインターネットで人を雇って、自前の車でカードを投函させましたね。
 あんまり警察を舐めちゃいけませんよ。
 牧野氏を連行したのは、25日当日のあんたの様子を聞くためです。

 壮大な自演だった。
 でもあんまりね、頭の中で考えた計画ってのは、それが入り組んでれば入り組んでるほど、上手くいかないものですよ」

弓削が信じられない眼差しで目の前の青白い女を見た。
こいつか。こいつが殺したのか?
警察官が一歩踏み出そうとすると、さゆみが注射器を自分の首に当てた。


689 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:11

「あんたの行動は全て、存在しない架空の犯人を演出するものだ。
 遺留品やらなにやら、すべて発見されるのを前提でセッティングされていたとしか思えない。
 防犯カメラにバッチリ映り込んでるハイエースのナンバー。
 ご丁寧に車の中に揃えられた証拠一式。
 パソコンのデータを破棄する時に一番確実なのは、ハードディスクをぶっ壊しちまうことだ。
 ハンマーでめためたに叩いて物理的に壊しちまえばいい。
 そうすれば復元の方法はない。
 データなんかいくら初期化しても修復されてしまう。この周到な犯人がそれを知らなかったとは思えない。

 案の定、復元したデータにはトンネル爆破の詳細な方法が記録されてた。
 あんたはこれを警察に発見してほしかったんだよな。
 田中れいなが爆発に巻き込まれる前に、安全に」
「ど、どういう事ですか?」

「ダイバーちゃんねるで雇った男には、顔は隠すよう指示するが、ナンバーには特に注意を払わせなかった。
 防犯カメラをたどってあの車を探し出すはずの警察に、田中れいなの事故を止めさせるためだ。

 逆に考えてみよう。
 牧野氏が郵便物のチェックを怠らず、あの葉書が日時どおりに配達されていたとしたらどうなる?
 警察はもちろん、投函日時と郵便局のチェックを始める。
 そこには犯人がカードを投函する映像と、車のナンバーが映っている。
 ナンバーで捜索をかけるよな。
 するとあの立川の駐車場に行き当たる。
 犯人の計画は露呈し、トンネルの爆破装置は収録日以前に撤去される。

 田中れいながロケをする遅くとも前日までに、このことが分かっているはずなんだ。
 ところが郵便物の配達が遅れ、あんたのとこにはいつまで経ってもこのことが耳に入って来ない。
 どこかで情報が停滞している。このままではロケ当日、田中れいなは計画どおりに爆破に巻き込まれてしまう…

 あんたは焦った。
 そうして牧野氏にイチャモンを付け、行方不明になっている郵便物を探しに行かせた。
 市民プールのきらめきだっけ?
 あんたのアマゾンの履歴をチェックさせてもらったよ。そんな注文はなかった。
 結果的に、どこの馬の骨かも分からんフリージャーナリストがまぐれで車を探し当て、
 ギリギリで現場に伝わり、ガキどもの無鉄砲な行動で田中れいなは間一髪、事なきを得る。
 だがこれは偶然だ。
 一歩間違えば田中れいなは本当に大ケガを負っていたはずだ。
 あんたはそうしたくなかった。
 あんたはただ、鞘師里保がモーニング娘。の活動を思いとどまり、地元に帰ってさえくれれば望みどおりなんだから」

「道重さん、何で。
 何でこんなこと」
「だって、放っといたらりほりほが思い出しちゃうもの。
 りほりほが、私のこと嫌いになっちゃうもの」


690 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:12

「あなたが妙なことを言い出し始めたとき、
 すぐに、記憶を取り戻しかけてるんだって分かった。
 せっかく全部忘れて再会したのに、
 思い出されてしまう前に、何とかしなきゃって思った。
 だから、久しぶりにカードを書いたの」

悔し涙が出た。
エンドーの顔が、どんどん白くなっていく。ぎゅっと腕に力を込めながら、言った。
「止めてくれたのに…
 私が辞めるって言ったとき、道重さん、止めてくれたじゃないですか!」

さゆみは注射器をぴたりと首に当てたまま、ぞっとするような平坦な声で言った。

「私が止めなくても、どうせ他のメンバーから止められるでしょ。
 あなた、それで気が変わってしまうかもしれないじゃない。
 でも、私が大ケガしたら?
 他のメンバーに害が及ぶことを恐れて、素直に言うことを聞いてくれるでしょう?
 でもあなたは私のことを心配しすぎて、逆に犯人を捕まえようなんて思ってしまった」
さゆみは狂気の中に愛おしげな、そして切なげな微笑みを浮かべた。

「いくらなんでも、れいなで終わってくれると思ってた。
 でも、私のmixiまで突き止められた時、ああ、覚悟を決めなきゃって思った。
 あなたはどんどん思い出して、どんどん核心に迫っていってしまう。
 あなたに嫌われるのだけは、どうしても我慢できなかった。
 6年前からずっと好きだから」

「亀山絵美里を殺したのは、お前なんだな!」


691 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:14

「殺した…?
 殺した…
 そう、私が殺したの。
 ショックで頭が真っ白になった…
 一度家に帰って、絵美里のために選んだカードを置いて、写真を撮ったわ。
 そして、絵美里がいっぱい詰まった携帯電話を持って帰った」

「絵美里さんは、あんたのことで、精神的に相当参っていたようだな」
「絵美里と私は双子なの。
 血は繋がってないけど双子。だから、服も靴もおそろいだし、私にお仕事がない時はいつも一緒にいてって頼んだわ。
 でも、絵美里はだんだん暗い顔をするようになって…
 私のお願いすることを、嫌だって言うようになって…
 私に言うの、女の子同士でこんなことをするのは変だって」
 
「だから殺したのか。
 自分の気持ちを拒まれたから!?」

さゆみは夢見るように黒い瞳を潤ませた。
絵美里の母校。二人で行ったファーストフード。
ハイエースに乗って巡った思い出の地が、胸をしめつけた。
あの頃は幸せだった。
隣の絵美里がどんな気持ちでいるかも知らないで。


692 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:15

「欲求不満になって、イライラして、
 私のやってることを知った絵美里は、とてもショックを受けたみたいだった。
 あんなに明るかったのに、初めて会ったときの表情に戻ってた。
 私がこんなになったのは、自分のせいだって。

 初めて会った時、絵美里はあそこで首を吊ろうとしてた。
 両親を事故で亡くして、一人ぼっちなんだって。
 神様はなぜ自分も一緒に殺してくれなかったのかって。
 わたし、必死で止めた。
 その時にはもう絵美里のことが好きだったから。
 大事な人を亡くして誰のために生きていいか分からないなら、私のために生きてって」

その時さゆみは、モーニング娘。、3年目。
繊細な感情の起伏の中をギリギリ綱渡りしているような毎日の中で、絵美里に出会った。

「この子は、私と同じだと思った。
 目の奥に暗い孤独の闇があった。
 東京に来て、初めてできた友達だった。
 女の子が、好きなの。なんでだか分からないの。
 だから死にそうな気分で川を歩いてるときにあの子たちを見つけた時も、まるで天使みたいだと思ったの!」


693 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:16


6年前の10月9日朝、さゆみは、絵美里からのメールを受信していたことに気づいた。
感謝と別れの言葉。
嫌な予感が走り、すぐに初めて出会った多摩川の雑木林に走った。
絵美里はそこで木にぶら下がっていた。さゆみと同じ靴を履いて、さゆみの好きな色の目をもう開かないまま。

「これを女と呼ぶ。
 さゆみにとってすべての「女」は絵美里だった。
 絵美里にラブレターを書くのならこれでって、大事に取っていたカードだった。

 カードを取りに家に戻って、多摩川に行ったとき、死体がなくなってたらいいのにって思った。
 私の勘違いで全部夢だったらって。
 でも、あった。
 縄を切って、木から下ろして…私、もう本当に放心状態で、気持ちが悪くて、歩けなくて。
 絵美里が死んだことを受け入れられなかった。
 このまま私も死んじゃおうかと思った。

 そしたら川原で、あの子たちが遊んでるところを見つけたの」

「何だって。自殺…?」

「奇跡だった。
 本当に、ベラスケスの絵そのままのように見えた。自然に涙が出て、止まらなかった。
 光の中で遊ぶ二人の王女。
 そしてさゆみはそれを影から見ている死神。

 死神は、光の中の二人の王女に憧れているの。
 でも眩しくて近づけないの。
 親友を殺してしまった自分とはまるで別の生き物みたいだから…」


694 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:18

さゆみは、長い睫毛を伏せた。
声がふるえた。

「落とすつもりなんてなかった。
 一緒に遊びたかったの。ただそれだけだったの。

 足がつまずいて、転んで、気づいたら女の子が川に落ちて、あっという間に流されていったの」

何だって。

「ドンケツで落ちただって…?」
「ふ、ふざけないで下さい!」
里保の声が怒りで震えた。
「なんなんですかそれ。
 …一緒に遊ぼうとしたって!?それでえりちゃんが死んだなんて、ふざけないで下さい!!」
「うん。そうだよね。
 本当バカみたい。
 絵美里に続いて、あの天使の片割れまで殺してしまった私は、もう許されない。
 さゆみは6年前のあの頃から、真っ黒のまま。
 真っ黒な醜い死神のまま」

白い病衣を儚げになびかせながら、さゆみは独白した。
さゆみは、危機的状況に陥った者のパニック回避として、一緒に遊ぼうとしたのだろう。
目の前の現実を受け止められなくて、あえていつもの日常に逃げ込み、精神の安定をはかろうとする行為。
人を殺した後にゲームに没頭していた少年の事件が、異常行為として話題になった。
はた目には異常に映る行為も、ぼろぼろと崩れ落ちてしまいそうな心の均衡を必死で保とうとするあがきの行為の結果であるのだ。

さゆみは、天使に救いを求めた。
そして天使の残りの片割れが、里保だった。



695 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:19

里保は、エンドーの頭を地面にそっと置いた。そしてさゆみの前に立ちはだかる。

「道重さん」
長い髪をはらはら風に遊ばせたさゆみは、美しい幽霊のようだった。

「警察に行きましょう、道重さん!」
しっとりと大きな黒目が涙で濡れている。
さゆみは、誰にともなくつぶやいた。
「さゆみが好きになった女の子は、みんな死んじゃう。
 絵美里も、あの女の子も。
 だから、きっと、りほりほも死んじゃうんだわ」
「注射器を離して。観念して下さい、道重さん!!」
「りほりほ、かわいそう」

本気の声音でそう言いながら、
さゆみは、ものすごい力で里保の体を引き寄せた。

首に冷たい注射針があたる気配がする。

「道重!」
「やめて!道重さん」
はるなんの悲鳴がする。
里保の体の中で、怒りが暴れまわっていた。
白い腕を跳ね返したかったが、注射針は無情な正確さで首の皮1ミリのところに沈んでいる。
エンドーがこれに刺された。
よくも、エンドーを!!


「この世界から、自由にしてあげるね。りほりほ」


696 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:20


いきなり、さゆみの頭がぶっ飛んだ。
目にも留まらぬ速さで組み付き、注射器を叩き落す。
もがくように抵抗するさゆみの耳元で、エンドーの低い囁き声が聞こえた。


「あんたは、自分がえりを殺したと思ってるみたいやけど、
 えりはあんたに殺されたわけじゃないけんね。
 あの時川に落ちて、溺れる前に、あそこの先生に助けてもらったっちゃ」

「えっ?…」

「え?
 え?」

何が起こっているか分からずに、さゆみと同様、里保は呆然と声の主を見た。

致死量の毒を直接射ち込まれたエンドーは………エンドー‥?………さゆみを微動だにさせない力で押さえつけ、口調も変わっている。
今何と言ったのだろう。
えり?


697 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:21

「あなた…誰なの。
 …これ……女の子…?」

驚愕したさゆみから力が抜ける。背中に伝わってくる感触でなにか感じ取ったらしい。
いつもだぼだぼの服を着ていた下には…しなやかな鞭のような、それでいて柔らかい曲線が隠されていた。

「ちょっと待って!
 …エンドー? え、えり…?
 えり……ちゃん?」
エンドーは、えりちゃんは、ニカっと笑って、言った。
「里保ちゃん!」


「君はあの時の女の子か。
 驚いたな…!」
尾田沢が息をひとつ吐く。
尾田沢が自分の人生に迷っていたあの日、
いっこうに進まない道重さゆみの治療に疲れ、多摩川のせせらぎを聞きに来ていた日。
医者としての才能に絶望し、自分の手でそれを閉ざしてしまおうかと考えていたとき、
川上から女の子が流されてきた。

無我夢中で助けたときの、あの充実感。
あの日、尾田沢は再び医者として生きていくことを決めた。
あの時の女の子が成長して、こんなところに現れるとは。


698 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:21

「いきてる…
 いきてるの?

 あなた、いきてるの?」

「うん。生きてる。

 「私が好きになった子は、みんな死んじゃう」?
 ざーんねん。えりはあんたに殺されるようなタマじゃないっちゃ。
 あんたが自分を死神に見立てて悲劇ぶるのは勝手だけど、人のことまで決め付けないほうがいいっちゃ。
 厨二病は治した方がいいっちゃよ」

ぐにゃりと、さゆみの体が弛緩した。
黒い髪の隙間から、くすんくすんと泣き声が起こる。
ごめんなさい、ごめんなさい、と小さな声で繰り返すさゆみを抱きとめたまま、エンドーは…生田衣梨奈は…その謝罪を、黙って聞いていた。



699 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:24

「…嘘だ。
 お前が殺したんだろう!?
 お前が殺したんだ!
 お前が亀山絵美里を!」

「亀山は、自殺なんだよ、弓削」

菊川が、声を荒げる弓削にゆっくりと言った。

「事件から数ヶ月後、遺品の整理をしていた親権者がメモを見つけた。
 疲れてしまった、私が両親のところへ行くのを、お父さんとお母さんは怒るだろうかとそういう内容だ。
 伏せていたのはまぁアレだ、自分のとこのタレントが直接関係ないと分かったら、極力噂が伝わるのを避けたいだろうからな。
 特に当時、彼女は売り出し中だったことだし」

なんということだ。
亀山絵美里の叔母に口止めをしていたのは、警察ではなく、アップフロントだったのだ。

「弓削、お前の熱意は新米刑事のそれそっくりだよ。
 自分がああしてたら、こうしてたら被害者は助かったんじゃないか、違う結果だったんじゃないかって、いつまでもクヨクヨ自分を責める。
 でもな、刑事の仕事は起こっちまったことを片付けることだ。
 俺たちにそう簡単に他人の運命に干渉する力なんてない。
 それを無力と考えるのはお前、傲慢ってもんだぜ。

 亀山絵美里が死を選んだのも誰に強要されたのでもない、自分で選んだことだ。
 だからお前が6年も、彼女を助けられなかったことをクヨクヨ悩んでる必要なんてないんだよ」


700 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:24


淡々と、菊川の声が多摩川の風に乗って飛んだ。
弓削の体から、がっくりと力が抜けた。


道重さゆみに警察官が群がるのを見ながら、放心したように弓削は呟いた。

「刑事の仕事は起こったことを片付けることっておっしゃいましたよね。
 じゃあ、これから起こってしまうことからは、誰が守ってくれるんでしょうか?」

里保に手を借りて立ち上がる、少年だと思っていた少女を見ながら、菊川は言った。
「今回の場合はあれだろ、ほら、あいつ。
 全く最近の若いのは男だか女だか分かんねえ格好しやがってよう。
 葛西さんは見分けがつくのかもしれないが、俺には…男にしろ女にしろ、なんとも骨のあるやつだ。まったく、だまされた。大したもんだよ、あいつ」




701 :12月30日 :2014/05/12(月) 22:25

   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥


702 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:25

          12月31日


703 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:26

   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥


704 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:27


朝が来た。
里保はベッドから飛び起きた。

どたどたと服を着替え、顔を洗う。
おかしくないようにちゃんとしていかなきゃ。
アイロンを使って念入りに髪を伸ばす。


昨日は嵐のように過ぎていった。
道重さゆみ逮捕―――
今、事務所が最大限の情報の揉み消しを図っているはずだ。
さゆみがやったことをまとめると自分で階段から落ちたこと、脅迫状による威力業務妨害、里保とエンドー…えりちゃん…への傷害。
でも、最後に関しては訴えないことで二人の意見が一致した。
尾田沢のもとで再び治療を受けることになったさゆみの今後に、少しでも光が射すよう、二人で決めたのだ。
希望はあるはずだ。
だって道重さんは、最後まで自分以外のメンバーを傷つけることを恐れていた。


705 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:28

家宅捜索に踏み込んだ警察が、
まるで絵画のように額縁に飾られた亀山絵美里の遺体写真を発見したらしい。
美しく可哀相な死んだ女の子。
弔いのために、いつまでも自分の目に焼き付けるために、さゆみが現実世界に描いた「これを女とよぶ」。

現役リーダーの脱退と逮捕に、ファン達は衝撃を受けるだろう。
なるべく穏便に、モーニング娘。の活動に支障をきたさないような事後処理が的確に行われることに期待するしかない。
溝口ならやってくれるだろう。

里保にもいろいろと衝撃だった。
悲しいことと、嬉しいことと。
なぜ黙ってたのか、えりちゃん、生田衣梨奈ちゃんに腹が立った。
でもそれは嬉しい腹立ちだ。
思いもかけないご褒美をいきなりもらったような気分だった。
結局あれから病院にも行かずに帰ってしまったが、えりちゃん、大丈夫なのだろうか。
まるでデートに行く前のようにそわそわと、里保はブーツを玄関にそろえた。
これから聞けばいいや。
えりちゃんが川原で待っている。


706 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:29


今日もだぼだぼのファッションで、そのひとは、寒そうに首をすくめていた。
里保の姿を認めると、こっちを向いてニヤっとする。
エンドー。
胸がどきどきして、だいぶ手前で立ち止まってしまった。

話ってなんだろう。
里保のほうこそいっぱい話したいことがあった。
本当のことを隠してたことにも文句を言いたいし、それからお礼と、それから…
この二週間足らずの間に起こった全てのことに対して、思いが膨らんでいた。
えりちゃん、今までどうしてたの?
どこにいたの?
私をずっと守ってくれてたの?

「昨日ね、ひとつだけ嘘をついてたことがあったっちゃ。
 それを言おうと思って」
「嘘?」

今なら分かる。田中さんと同じ、九州の訛りだな。
えりちゃんは、九州の子だったんだな。

「嘘ってなあに?」
えりちゃんがぷっと吹き出した。
「なに、なによ」
「だって里保…いきなりそんな緊張してるから…やばい、つぼった」
「もう! だって黙ってるからじゃん!
 私、エンドーだと思っていっぱいひどい事とか言ったのに…6年ぶりなのに、そりゃあ緊張するよ」

どきんどきんと、心臓が鳴り止まない。
わたし、エンドーが好きだったんだな。
えりちゃんは涙をふいて、そして草ぼうぼうの川原を見た。
「あ、群青流しだ」


707 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:30

厚手の折り紙で作った舟が、また岸辺に転覆している。
元気なやつは、そのままゆらゆらと川を流れていった。
えりちゃんは、あの時と同じように舟をつまみ上げた。
冷たい水が跳ね返ったらしく後ずさり、そして笑った。

「ねえ、えりちゃん、もっとあったかいところ行かない?
 こんなに寒いのに川にいることないじゃん」
「うん。でももう、見られないから」
「え?」
えりちゃんは、笑って里保の手を取った。
そして、いきなり自分の胸におしつけた。

「えっ!?
 え!?」

えりちゃんは静かに里保の顔を見つめている。
そして、今度は手を首筋に押し付けた。
火照った頭が冷静になるにつれて、里保は気づいた。


脈が…… 脈がない。


えりちゃんの心臓も、血管も、脈打ってなどいなかった。


708 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:31

「さゆみのせいで死んだわけじゃないって、言ったちゃろ」

えりちゃんは、言った。

「えりが死んだのは2年後、
 小児白血病っていう病気だっちゃ。
 進行が早くて、パパもママもえりも、なんだか分からないうちに白血球がどんどん増えて、止める手段がなかった。
 血液の癌なんだって。怖いっちゃろ」

「…うそ。

 うそ、だって……
 今…こんなに…えりちゃん動いてるのに……」


「だから、ウソついた。
 生きてるってウソついた。
 さゆみがえりのこと、すっごい気にして、闇に呑み込まれそうになってたから」

「ウソ。
 ウソだ!!」

里保は、呆然と叫んだ。


709 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:32

「ウソじゃないんだ。
 えりはすっごい楽しかったんだよ。
 生きてる間中。
 仕方ないことなんだよ。

 でも、いつの間にかこの川原に戻ってきてた。
 里保と遊んだこの川原に。
 そんで里保がすっごいピンチだった。
 助けなきゃって思った。
 里保が勝手に男と勘違いしたから、えりはあの日からエンドーになって、一緒にいることに決めた」


月の下で見たエンドーの、あの貫くような瞳。

里保は頭が混乱していた。
そうだったっけか。
私が先に間違えた。
でも、あまりにもえりちゃんの目が眩しくて、強かったから…

エンドーはいつもスニーカーで非常階段を登ってきた。
寒そうに顔をしかめて、憎まれ口。
でも、いつも里保のことを助けてくれていた。


非常階段の下に、エンドーの部屋なんてなかった。

私のために、毎日、誰もいない冷たい階段の間から形をとって現れていたのだ。

里保がマンションからいなくなっても、ずっと。



710 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:33

「きっとね、きっと、里保と約束したから。
 里保とまた一緒に遊ぶって、群青流しで言ったから、
 えりは戻ってくることができたんだ。
 里保が呼んでくれたから、えりはここに来れたっちゃよ。
 えりは、里保の望む全てっちゃん。
 だからきっと、里保の中にいた「えりぽん」ていうのは、えりのことなんだっちゃ」


涙が出た。
小さい子みたいな、声が出た。
目の前にいる「えりぽん」が幻で、もうすぐいなくなってしまうことに、里保の全身が悲鳴を上げていた。


「嫌だ。
 嫌だよ。
 行かないで。
 えりぽん」

えりぽんは、だだをこねる小さい子に困ったように笑い、そして言った。

「アイドルになりたかった。
 歌って踊って、テレビに出て、もっといろんなスポーツもやってみたかった。

 でも、里保と、モーニング娘。のみんなと一緒にいれて、楽しかった。
 記憶ってどこへ行くのか分からないけど、きっと忘れない。
 暴れて、推理して、みんなといれた時間がずっと楽しかった。
 えりも、モーニング娘。の一員になった気分だった」


「嫌だ。
 えりぽん。
 嫌だよう」


711 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:34

泣きじゃくっている里保に近寄って、「えりぽん」は、手を広げて見せた。
今の時期に咲くはずのない青い花がそこにあった。

「知ってる?ツユクサの花言葉って、「懐かしい人」って言うんだって
 あの時と同じように、一緒にお願いしよう」


頭が持ち上がらないぐらい泣いている里保の手を引っ張って、岸辺に連れていく。
「ほら、今度は里保がぜんぶお願いしていいから。 
 ほらえり、お姉さんだからさ」

ウソだ。

もう先がないえりぽんには…お願いごとなど無意味だからだ。

束にまとめた茎を握ろうとしない里保に、えりぽんは悲しそうな顔をした。
感覚を失ったような手で茎を握り、里保は、自分の耳にも不明瞭な細い声で、一本渡した。


「ダンスが…ダンスが、上手くなれますように」

えりぽんがそれを受け取る。

「モーニング娘。が…紅白に出られますように…」
また一本。
もう時間がないのに―――声がふるえて言葉にならない。
涙で顔が見られなかった。
お願いごとなんてどうでもよかった。

腹が立って、乱暴に涙をこすった。
お願いごとなんてない。
里保のただ一つのお願いは、えりちゃんが。えりぽんがこの世からいなくなってしまわないことなのに。


712 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:35


最後の一本になった。


震える声を出す里保の横髪を、えりぽんがかき分ける。
のどの奥から溢れてくる嗚咽を殺して、里保はお願いごとを搾り出した。



「えりぽんと……
 えりちゃんと……
 エンドーと……



 また………
 また………



 あえますように………」




713 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:36


二人の額が、前髪ごしにそっと触れあった。
いきなり、唐突に、なにごともなかったように、えりぽんが消えた。
青い花が、ばさりと半円を描いて里保の周りに散らばった。
黄緑色のブレスレットも。



里保は、膝を折り、群青色の花の中にゆっくり崩れ落ちていった。























714 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:36












……














715 :12月31日 :2014/05/12(月) 22:38















……

















716 :群青流し :2014/05/12(月) 22:39


2013年1月末、ハロー!プロジェクト冬 ビバ!ブラボーは一ヶ月予定を繰り下げて開催された。
道重さゆみが捕まって以降、ハロー!プロジェクト狼板と裏のダイバー専用板は荒れに荒れたが、次第に静まっていった。
その間、モーニング娘。エース鞘師里保の顔からは一貫して笑顔がなく、道重事件との関係についてファンの間で憶測が飛び回った。

フリージャーナリスト弓削は、ススム事件に限って最大限の協力をする約束を事務所から取り付け、単独スクープをものにした。
それ以降起こったことには知らぬ存ぜぬを通す条件付きで、だったが。
じゅうぶん過ぎるほど急場をしのいだ彼は、一念発起して外国に渡るそうだ。

モーニング娘。は、リーダーの抜けた穴をサブリーダー二人体制でどうにか保たせている。
もうすぐ卒業するれいなに不安なところは見せられない。
12期が入ってきたら、正式にどちらか一方に決まり、グループの血は連綿と続いていくだろう。

エンドーのことは、みんな忘れてしまったみたいに誰も口にしなかった。
まるで初めからいなかったかのように。
欠落したピースを誰も不思議に思わないまま、事件のことは、みんなの記憶からだんだんと薄れ、忘れられていった。
覚えているのはたった一人。



717 :群青流し :2014/05/12(月) 22:39


里保は…



涙の乾いた里保は、
あれからちょっとだけ
大人になった。










718 :群青流し :2014/05/12(月) 22:40















719 :群青流し :2014/05/12(月) 22:40



   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥      ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥



ε=ε=ε=\ノリ*´-´リ/・・・A A エ ピ ロ ー グ・・・ε=ε=ε=\|||9|‘_ゝ‘) /



   ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥      ‥‥‥‥‥・・‥‥‥‥‥




720 :群青流し :2014/05/12(月) 22:41

「よーし、12期を紹介するぞー。
 れいなと同じ福岡から来た、生田だ!」


|||9|^_ゝ^)<こんにちはー! 12期で入りました、世界一のアイドルを目指している生田衣梨奈でーす!!


|||9|‘_ゝ‘)<みずきって呼んでいい?
ノノ刀e _l‘)<い、いいよ
|||9|‘_ゝ‘) <かのんって呼んでいい?
从*´◇`)<だめなんだろうね
|||9|‘_ゝ‘) <ちっ。じゃあ香音ちゃんて呼ぶね。
あ、ねえねえ
ノリ*´-´リ<…えっ
|||9|‘_ゝ‘) <りほって呼んでいい?
ノリ*´-´リ<い、いいよ…
|||9|^_ゝ^) <仲良くしようね、 里保!

ノリ*´-´リ<…

ノリ* - リ<…


11期で入った小田さくらが、怪訝な顔をした。
「鞘師さん、泣いてる…?」

川; ゚_〉゚)<ぎゃー! ほんとだ! 鞘師さん泣いてるなうー!
|||9|;゚ _ゝ゚)<ななななな何で!? えりなんもしてないよ!!あわわわわわ



>ぎゃーぎゃー…
>ワーワー…




その年、モーニング娘。は紅白に出場を果たしたが、それはまた別の話。







< 群青流し 完 >




721 :ふわふわ :2014/05/12(月) 22:48


以上、群青流しでした。

こんな長い話を読んで下さった皆さま、ほんとにありがとうございました。
最後の最後で、なぜかえりぽんが文字化けするというww |||9|;゚ _ゝ゚)←なんじゃこれ
今までに何度も管理人様にお手間をかけたように
レスを削除していただいて訂正しようかと思いましたが、
私的な都合でしばらく家にネット環境がなくなるので
これで締めることにいたします。

森板から読んで下さった方
最初にスレ立て代行して下さった方
飼育のスレで色々教えてくれた方
そしてクソみたいなケアレスミスで何度も何度も削除の手間をおかけした管理人様。

本当に本当にありがとうございました。


722 :ふわふわ :2014/05/12(月) 22:57

森板にスレが立ったのが1年5ヶ月前。(!!)

当時2012年年末。
小田ちゃんは加入したばかりでまだキャラがよく分からず
(だから出ていません)
れいなはまだ現役バリバリで、
生鞘は2012年春夏の第一次生鞘黄金期を引きずっていました。

だから後から続きを書いている時に
「あれ? 生鞘ってこんなんだったっけ…」
と自分で首をひねることしばしばwww

モーニング娘。自体の世間への露出もだいぶ変わりました。
しゃべくりに出てMステ出てぷっすま出てヘイヘイ出て、
2014年始には本当にドッキリの特番に出るし…オリンピックだし…
あげくの果てにauのCMは2014年5月現在も流れています。
2013年からは本当に夢のようでした。

「とりあえず改行しときゃいいんだろ?」というSSへの勘違い、
途中から襲ってくる明らかに板を間違えたという絶望感(容量ェ…)
夏のPCの熱暴走などを乗りこえ、
デコボコながらやっと完結させることができました。

よかったら、
ヒマでヒマで仕方がない時にでももう一回、
オチを知ってから読み返していただくと新たな発見的なものがあると思うので
ぜひに一度チャレンジしてみて下さい。

「地理が何だかよく分かんねーよ」という方は、ススムのご尊顔のurlを開いてみて下さい。

ではでは
本当に楽しく悩ましい日々を過ごすことができました。
乱筆乱文乱構成、たいへん失礼いたしました。
生鞘よ。
これからも、最強であれ。


ふわふわ

723 :蛇足 :2014/05/12(月) 23:03


   <<名前・人物の由来>>


エンドー→「鞘師りほりほが隣の席の男子としゃべっている」という、
     2012年当時に立っていたスレが元ネタ。
     ヤシが隣の席の男子に「ラジオ聞いてるよ」と言われたとか何とか発言し、
     マジヲタに阿鼻叫喚?を呼んでいた。
     スレは覗いてなかったがやたら伸びてパート化していた覚えが。
     隣の席の男子にはいつの間にか狼住人によって名前が付けられ、
     それが「遠藤剣一」。

弓削→「鞘」と対になる漢字ってなんだろうと考えだして、弓なんじゃねと思って付けた。
   遠藤剣一も「何で剣の字こんな字なんだろう」と思っていたが、
   今思えば同じ理由なのかもしれない。
   数年してこんなところで謎が解けてしまった。。

溝口、葛西、山本、牧野、萩島等→思いつき。

尾田沢→ベリの元マネ、ヲタ沢から。

山田浩二→スマの元マネ「恫喝」山田。

小関美穂→マネティ。

菊川→「アップフロントきくかわ」。

亀山絵美里…字をまるごと借りたとおりあの人。
      亀井さんの現役時代を知らないので、
      本編と同じく自分の中でフワフワした存在になっている。

名探偵あやちょ…このキャラで「和田彩花の猟奇☆美術館」というお話を考えていたが、
        群青流しでいっぱいいっぱいのうちに時期を逃した感ありありでした。
       「乙女の絵画案内」で美術アイドルの座を確立しているあやちょ、カッコイイ。


724 :名無飼育さん :2015/05/25(月) 14:25
素晴らしい作品でした。生鞘最高!

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