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時にはそれは風のように

1 :ES(Easestone) :2012/05/19(土) 13:11
CPは「りしゃあいり」です。
視点は梨沙子視点と桃子視点の二つから書きたいと思います。

長くなると思いますがよろしくお願いします。
716 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:34
「じゃ千聖は?」
 
舞が司会者みたいになってどんどん回していく。
桃子も雅も自分の名前が出てこないかと他のメンバーの発言に注目する。
 
「やっぱ愛理」
 
千聖も考え込みながらそう言う。
 
「愛理の歌聞いてると、自分このままじゃやばいなって思うし」
 
「じゃ、私も愛理で」
 
きっと思いつかなかった舞美が完全にノリで言った。
 
「鈴木さん、みんなライバルって言われてますが受けて立ちますか?」
 
舞が愛理にふった。
 
「もちろん。受けて立ちます」
 
愛理が力強く言って会場から歓声があがった。
717 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:36
「でも誰かにライバルって言われるとうれしいよね。それって自分を意識してくれてるってことだから」
 
「あたしも雅ちゃんにライバルって言われたらうれしいと思う」
 
愛理と千聖が口々にそう言った。
 
「じゃあ愛理は?」
 
「私は梨沙子」
 
愛理が断言するようにそう言って会場がどよめいた。
梨沙子がびっくりしたようにのけぞっている。
 
「りーちゃんには表情の作り方とか歌い方とかすごい刺激を受けるし、ライバルだなって思います」
 
梨沙子がうれしいようなはにかむような表情をしているのが見えた。
 
「じゃあ愛理、告白しちゃいなよ」
 
千聖がふざけてそう言って会場の歓声が大きくなった。
718 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:37
流れ的にそうなってしまった愛理が梨沙子の前にそっとあゆみ出る。
 
「梨沙子、私のライバルになってください」
 
愛理が頭を下げて右手を差し出した。
 
「ごめんなさい」
 
一瞬間をあけた後、梨沙子が後ずさりしながら頭をさげた。
一気に会場のボルテージがあがる。
 
「やった。愛理ふられてんの」
 
愛理が梨沙子に断られるのを見て千聖と舞がはしゃぐ。
 
「愛理、梨沙子に嫌われてるんじゃないの?」
 
千聖がそう言って笑う。
 
「私、フラレた!」
 
愛理がわざと顔を抑えて泣いてる真似をしてステージの上に倒れ込んだ。
 
「違うの。違うよ」
 
梨沙子はファンに向かって必死に手をふる。
719 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:40
「愛理に負けたくないって気持ちはあるけどそんなでもないんで。
 愛理からはすごい刺激は受けてるし。でもライバルって感じじゃなくて」
 
梨沙子が必死に説明していた。
桃子は梨沙子の気持ちが何となく分かるような気がした。
℃-uteとベリーズがライバル関係っていう一言で済まされるような関係じゃないように、
梨沙子と愛理もたった一言で表現できるような結び付きじゃない。

それにきっと梨沙子が勝負しなきゃいけない相手は今、桃子の隣にいるのだ。
720 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:42
「梨沙子、MCのときはどこにいても変わんないなあ」
あたふたしている梨沙子を見て雅は梨沙子の様子を姉のように見守っていた。
 
「でも℃-uteに負けて正直悔しかったでしょ?」
 
桃子はベリキューのガチンコ勝負を思い出して茶化すように笑って言う。
 
「でも不思議だけど悔しくないんだ。今でも。愛理の歌に負けちゃったけど。
 何かあのときの愛理の歌は宝物みたいに大切に思える。
 だって梨沙子のためでもあるような気がするんだ。愛理の歌って」
 
雅は首を横にふって言った。
 
桃子にはステージを見ている雅の目がきらきらと輝いているように見えた。
721 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:44
次のお題は「梨沙子が加入してどうですか?」だった。
 
「梨沙子が加入して・・・何か妹が一人増えたみたいな感じだよね」
 
「梨沙子って落ち着いているイメージがあったけど、結局キッズのときと同じだったっていうか」
 
「なんにも変わってないね」
 
「もう、イタズラはするし、テンションおかしいぐらい騒ぐし」
 
「でも女子力は高いよね」
 
梨沙子の話題になると℃-uteのメンバーが楽しそうに話している。
 
「ベリキューのときだと、梨沙子の話聞いてもそうなんだって聞いてるだけだったんですけど」
 
愛理が話し始めた。
 
「梨沙子が℃-uteに入ってからは梨沙子がこう言ってたんだけど愛理どうなの?と聞かれたりとか
 こういうとき梨沙子ってどう思うのとか、梨沙子に関する諸問題?が自分に入ってくるのがうれしいんです」
 
愛理がそう言って会場が湧いた。
梨沙子は何だか嬉しそうにはにかんでいた。

桃子がふと横を見ると雅がまるで自分の役割をとられたような表情をしている。
722 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:47
梨沙子は一番年下っていうベリーズでの立場が誰から見ても自然でメンバーも本人もそう思ってきたに違いない。
だけどしっくりとおさまっている℃-uteの梨沙子を見ていると自分も℃-uteだったら梨沙子と同じような居場所を見つけられる気がした。
 
Danceでバコーンが流れ始め、ライブは一気に最高潮の盛り上がりに駆け上がっていく。
梨沙子が中にいる℃-uteを見ていると不思議だった。
桃子は全く違うもうひとりの自分を見ているようだった。
 
「℃-uteってさ。ライバルみたいに言われてたけど違うんだって思う。
 ℃-uteはうちらのBerryzのもう一つの姿っていうか可能性みたいなもんなんじゃない」
 
雅がそう言った。
 
「可能性?」
 
「よく分かんないけど二つで一つみたいな」
 
桃子には雅に言おうとしていることが何となく分かるような気がした。
723 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:48
「分かるよ。何か勇気づけられるよね。今の℃-ute見てると」
 
「そうそう」
 
桃子の言葉に雅が激しく同意してくれる。
 
「何か次のBerryzのライブ、すごいのが出来る気がしてきた」
 
雅がわくわくするような表情を桃子に向けた。
 
「梨沙子も戻ってくるしね」
 
桃子そう言うと雅は嬉しそうにうなずいた。
 
やがてアンコールも終わり、会場が寂しいようなしっとりとした雰囲気に包まれていた。
724 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:50
「楽屋、よってく?」
 
「いい。今梨沙子には会わないほうがいい気がするから」
 
雅は透き通ったような笑みを浮かべて言った。
 
℃-uteの最終公演が次第に近づいてきていた。
梨沙子の気持ちを考えたら寂しいだろうなと思う。
でも今度こそ桃子も梨沙子には絶対帰ってきてもらわなきゃいけないと強く思う。
それこそ梨沙子のいないBerryzのライブなんて考えられないのだ。
ただ千秋楽まで梨沙子にとって最高の仲間と最高のライブが続くことを桃子はひたすら願った。
725 :時風 桃子 :2013/01/27(日) 08:50


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726 :時風 梨沙子 :2013/01/27(日) 08:52
「いよいよ来週の静岡が最終だね」
 
早貴が言った。
 
今日ついに福岡でのライブが終わって残すところが静岡で千秋楽を迎える。
℃-uteとして過ごした三ヶ月は長いようで本当に短かった。
夏の終わりに始まった℃-uteのライブも、気がついたら年の暮になっていた。

梨沙子は最後の最後までライブを大事にしたいと思う。
全力疾走で走ってるせいで自分が成長したかどうかなんて全く分からなかった。
けど自分がやるべきこととワクワクするようなことはこれから山ほどあるような気がしていた。
 
「最終ライブ終わったらみんなでパーティーがあるみたいよ。さっきスタッフさんが企画してくれてるって教えてくれた。
 ケーキ食べ放題らしいよ」
 
千聖が言った
 
「やった!楽しみ」
 
食べ物の話題になると愛理がウキウキした表情を見せる。
727 :時風 梨沙子 :2013/01/27(日) 08:53
「何種類ぐらいあるんだろ?」
 
「まずミルクレープでしょ。モンブランにショートケーキにチーズケーキもあるでしょ」
 
愛理が次々にケーキの名前をあげていくから梨沙子もお腹がすいてきた。
 
「最終か。でも何かあんまりうれしくないな」
 
そのとき、舞美が一人表情を曇らせて言った。
梨沙子もみんなも何でという感じで怪訝な表情を舞美に向ける。
 
「だって最後のライブ。終わったら梨沙子いなくなっちゃうじゃん」
 
舞美がそう言ってみんなははっとしたように黙ってしまった。
舞美の寂しそうな視線に気づいて梨沙子も何も言えなかった。
728 :時風 梨沙子 :2013/01/27(日) 08:55
「梨沙子は確かに℃-uteからはいなくなるけどさ。別に卒業するわけじゃないんだし」
 
早貴がその場を繕うように言う。
 
「普通にベリーズに戻るだけでしょ?」
 
千聖もそう言う。
 
「そうだけど。やっぱ寂しい」
 
舞美が本当に悲しい顔で梨沙子を見た。
梨沙子は舞美の気持ちにどう答えてよいか分からず助けを求めるように愛理を見た。
 
「確かに梨沙子がいなくなるのは寂しいけど。元々一時移籍だって約束だったし、ファンの人も納得してることだしさ」
 
愛理が冷静にそう言ってくれて梨沙子はほっとした。
729 :時風 梨沙子 :2013/01/27(日) 08:56
「ちょっと舞美ちゃん、まさか最終ライブで一人号泣とかやめてよ」
 
舞が少しからかうように言う。
 
「うちらだけ梨沙子行かないでーって泣いてファンの人キョトンみたいな」
 
「それだけは絶対避けたい」
 
梨沙子も思わず言った。
 
「最後はやっぱり笑顔で終わりたいな」
 
梨沙子は言った。
 
℃-uteのライブは、本当に自分の力以外で他の五人のメンバーと応援してくれたファンの人のおかげなんだと梨沙子は思う。
だったら自分がいなくなる涙じゃなく、最後まで笑顔でありがとうと言いたかった。
 
「ほら。梨沙子だってちゃんと笑顔で終わりたいと思ってるんだからね。これは梨沙子との約束だよ」
 
舞が舞美を諭すように言う。
 
「そりゃ分かってるけどさ」
 
舞美は渋々とそう言ったが寂しげな舞美の顔を見ると、
梨沙子は何か複雑な気持ちになった。
730 :ES :2013/01/27(日) 08:57

今回の更新を終わります。
桃子視点は今回で終わりになります。
731 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:02
ライブを終えた梨沙子たちは、会場の楽屋からホテルまで移動した。
 
梨沙子が泊まる部屋の窓からは煌くような夜景が映り、梨沙子は指先にしんと冷えた空気を感じる。
閉めた窓から少しだけ冷たい空気が漏れ入ってくるように感じた。
季節がどんどん移り変わって行く。
 
同じ部屋にはいつものように愛理がいた。
でもそんな当たり前のことだってもうすぐ終わりが来てしまう。
 
「舞美ちゃんがあんな風にあたしのこと思ってくれてるなんて考えてなかった」
 
梨沙子はさっきの舞美の言葉を思い出して言った。
自分のためにあんなに直接の感情をもろに出してくれるメンバーはきっとBerryzにもいない。
732 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:04
「そうだね。やじって」
 
愛理は隣のベッドの上に寝転がって考え込むみたいにじっと天井を見ていた。
 
「りーちゃんがさ。熱出して倒れちゃったとき、病室で℃-uteとして頑張りたいって必死で言ってくれたじゃん。
あれ、よっぽどうれしかったみたいだよ」
 
愛理が言った。
 
「そうなんだ」
 
あの時の梨沙子はベリキュー対決や愛理がみやと勝負しなきゃいけないことなんて何も考えずにただ思ったことを口に出しただけだった。
 
「そうだよ。だってあの後何回も梨沙子が℃-uteにいたいって言ってくれたってすごくうれしそうに言ってたもん。
だからりーちゃんがいなくなるの。すごく寂しいんだと思う」
 
「うん・・・」
 
愛理にそう言われて、梨沙子の脳裏に舞美の優しそうな笑顔が思い浮かぶ。
733 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:05
ただ梨沙子にはBerryzに帰る以外の選択肢は考えられないし、いつまでも℃-uteの菅谷梨沙子のままではいられない。
舞も千聖も早貴もそんなことはもう前提として、梨沙子と接してくれる一方で舞美だけは何か違っていた。

舞美の梨沙子に対する接し方はBerryzの誰とも違った。
Berryzのメンバーは梨沙子の悪い部分も時々腹を立てながら我慢してくれたり、時には怒って喧嘩してここまできた。
みやにいたっては時々見捨てられたって思うぐらい厳しいことだってある。

でも舞美は年齢的には一番上だけど元々兄弟の末っ子だからかもしれない。
梨沙子に対しては完全肯定で、むしろこっちが何かしてあげたくなるような純粋さで梨沙子を見守ってくれた。
734 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:07
「最終公演はやじ泣いちゃうだろうな」
 
愛理が冷静に言った。
梨沙子にはそんな舞美の気持ちを思うのと同時に、このライブの終わりを単に自分のお別れだけにしたくはないという気持ちが交錯した。
 
「でもやっぱり笑顔で終わりたい」
 
梨沙子はぽつりと言った。
あの時、ベリキュー対決で愛理や℃-uteのメンバーが梨沙子のために必死に戦ってくれて、
ファンの人が力を与えてくれたからこそ自分が℃-uteにステージにたつことができる。

このライブはファンの人と一緒にチーム℃-uteみんなの力で勝ち取ったものだ。
梨沙子は最後のライブでは感謝の気持ちをめいいっぱいに表現したいと思った。
そんなライブにふさわしいのはきっと自分がいなくなることへの涙じゃなくて笑顔だと梨沙子は思う。
735 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:08
「分かってる」
 
愛理は少し微笑むと梨沙子をまっすぐに見つめて言った。
 
「分かってるから。それは」
 
愛理は梨沙子を安心させるようにもう一度言った。
それを聞いて梨沙子はほっとした気持ちになった。
 
「何かよかった。愛理が℃-uteにいて」
 
愛理をものすごく頼もしく感じて梨沙子は言った。
 
「何で?」
 
「だって何か安心だもん。愛理がいてくれるだけで」
 
梨沙子は笑って言った。
 
「そんなことないと思うよ」
 
愛理は少しうつむいて言った。
736 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:10
「愛理とは℃-uteだとかBerryzだとか関係なくつきあってきたから。
あたしが℃-uteからいなくなっても何とも思わないでしょ。その点は気楽かな」
 
梨沙子は安心したように愛理を見つめる。
梨沙子が℃-uteだろうとBerryzだろうと愛理との関係は何も変わらない。

きっと愛理もそう思ってくれているに違いないのだ。
すると愛理が立ち上がって梨沙子が座っているベッドの横に腰かけた。

至近距離で見る愛理の顔は黒髪に白い肌が際立ち頬の部分だけが少し赤らんでいて、人形のように可愛かった。
 
「でもこれだけは、はっきり言っておくけど」
 
愛理が急に真剣な表情になってそう言った。
 
「私だって舞美ちゃんと同じだよ」
 
まるで梨沙子を問い詰めるような顔をして愛理が言った。
737 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:11
「え?」
 
梨沙子は一瞬その意味が分からずに愛理を見つめる。
 
「そりゃりーちゃんがベリーズにとって絶対必要な人だってことは分かってる」
 
愛理が梨沙子を見つめて言った。
 
「でも私だってりーちゃんを絶対にBerryzに返したくないって思ってるんだからね」
 
愛理の顔は少し怒っているようにさえ見えた。
 
何て答えていいか分からない。
 
一瞬、梨沙子が愛理に言葉を返す余裕もなく、そのときドアをノックする音が聞こえた。
738 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:12
「梨沙子、愛理、トランプでもやらない?」
 
千聖の明るい声がドアの外から響いた。
 
「うん。行く!」
 
愛理が大きな声で答えた。
 
「りーちゃん、行こうよ」
 
さっきの愛理の真剣な表情は完全に消えている。
愛理に促されて梨沙子も立ち上がった。
先を行く愛理の後ろをついていきながら梨沙子は、自然とさっきの愛理の顔と言葉を頭の中で何度も反芻していた。
739 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:13
「次、梨沙子の番だよ」
 
舞が言った。
 
「うん」
 
梨沙子がトランプを置く。
部屋には千聖と舞がいて、舞美と早貴は二人で買い物に出かけていないようだった。

愛理に促されて来たわりには、愛理との間に気まずい空気を感じた。
愛理の気持ちはうれしかったが、それにどう答えていいか分からない。
そもそも愛理との長い関係の中で愛理の気持ちに答えようとなんて意識したことはなかった。
 
何となく愛理と目を合わせられない。
それでも梨沙子がじっとトランプカードを見つめているこの瞬間にもじっと梨沙子を見つめる愛理の視線を感じた。
740 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:15
「さっきから思うけどさ。二人喧嘩でもしたの?」
 
感の鋭い舞がすぐにそう言った。
 
「え?何で?」
 
梨沙子が焦って言う。
 
「さっきから二人とも全然目を合わそうとしないじゃん」
 
「そうかな?」
 
梨沙子はやっと愛理の顔を見る。
愛理は作ったようなすました顔をしていた。
 
「ちょっとやめてよ。喧嘩とか。最後のライブ近いんだからさ」
 
千聖が茶化すように言う。
 
「そんな。別に喧嘩してないよね?」
 
梨沙子がやっとの思いで愛理に言った。
741 :時風 梨沙子 :2013/02/03(日) 19:16
「うん。してないよ」
 
でも答える愛理の滑舌も悪くてぎこちない。
周囲に微妙な空気が流れる。
これじゃ本当に喧嘩してるみたいだ。
 
「じゃあさ」
 
愛理がトランプを自分の目の前に置くとすっと立ち上がった。
ベッドの上で梨沙子が座っているところまで回り込んでくる。
 
「喧嘩の件か」
 
愛理は愛理が梨沙子の両肩に手を乗せて言った。
その瞬間に愛理のにやけ顔が見えて梨沙子は思わず脱力して倒れ込んだ。
 
「はあ・・・何か心配して損した」
 
舞が呆れてトランプに戻る。
 
「りーちゃん、気絶しないでよ」
 
愛理が梨沙子を助け起こした。
梨沙子の目の前に屈託のない自然な愛理の笑顔が戻ってきていた。
742 :ES :2013/02/03(日) 19:18

今回の更新を終わります。
次回が最終回になります。
743 :名無飼育さん :2013/02/03(日) 21:45
ついに最終回ですか!楽しみだけど寂しいな
744 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:17
最後のライブまでの一週間、愛理は梨沙子を困らせるようなことは一言も言わなかった。
それでも撮影の合間などに愛理と一瞬だけ目が合うとき、梨沙子は愛理の言葉を思い出した。

Berryzに返したくないと言ってくれた愛理の言葉がずしりと心の奥底に響いていた。

「梨沙子が℃-uteで撮影するの。もうこれが最後になるんだね」
 
舞美が何度も名残惜しそうに言って、それを舞や千聖がなだめてくれた。
もうそれは日常のようになっていたけど、愛理はそんな会話に加わらない。

梨沙子がこのまま℃-uteに残ることなんて絶対に出来ない。

愛理はもう十分にそのことは分かっていたんだと梨沙子は思う。
だとしたらきっと愛理は二度と口にしないように思った。
745 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:19
「愛理、どうしたの?元気ないよ」
 
傍でじっと見ているだけの愛理を見て梨沙子は言った。
 
「そんなことないよ」
 
愛理は変顔をして梨沙子に笑いかけた。
 
もう二度と口にしない言葉。
 
愛理は梨沙子をじっと見つめていることが多くなった。
何か言いたいことがたくさんあるのに無理をして何も言わないようにも見えた。
梨沙子も愛理と目が合うたびに出来るだけ優しく笑いかけるだけで何も核心には触れようとしない。
 
それは、冷たい水の中に隠した熱いマグマのように二人の心の中に隠されているみたいだった。
ベリーズと℃-ute。どちらかを選べとい言われても梨沙子には選べない。
ましてや愛理と誰かを比べることも選ぶこともできない。

ただ、愛理に見つめられていることを幸せに感じた。
746 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:28
一週間という本当にあっという間で最終公演の日がやってきた。
梨沙子はステージに立てるというだけですぐにワクワクした気分になれる。
もう℃-uteとしての最後とか感傷的なことは言ってられない。
 
みんなで円陣を組んだとき、これが最後のライブになるなんて梨沙子は全く意識していなかった。

「℃-ute!」
 
早貴がそう言って掛け声が始まる。
 
舞、千聖、愛理、梨沙子、早貴、舞美。
六人揃ってはじけるぞーい。
 
一斉に6人の声が立ち上って気合十分にハイタッチをしていく。
梨沙子も℃-uteの他のみんなも気持ちは同じだった。
本当にはじけるような前向きな姿勢が℃-ute全体にみなぎってきたようだった。
747 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:30
自分が℃-uteであってもBerryzでもあっても関係なく、このステージの上で歌が歌えることが幸せだ。
そう感じながら今日を終えられたら最高だと梨沙子は思った。
 

梨沙子は誰にも追いつけないスピードで走っているような感覚だった。
全力で今までやってきた歌やダンスを踊ったらそう感じた。
会場も全員で一丸になれるこの瞬間。
だから梨沙子はライブが大好きだ。

きっとこのまま最後の最後まで走れる。
そしたら絶対に最後はみんな笑顔になれるはずだ。
無我夢中で歌って踊って、トークしてそして最後の曲になる。

涙なんて見せない。
すでに梨沙子には自分自身に対して確信に近いものがあった。
748 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:32
最後の曲の「青春ソング」が始まる瞬間、会場が一気に静まり返った。
あれほど勢いよく鳴っていた音響もぴたりと音を止めた。
真っ暗な空間に愛理の姿だけが浮かび上がり、愛理の歌声だけが響き始める。

ライブで一番盛り上がる「青春ソング」の歌い始めは愛理のソロパートだ。
ステージで円陣を組みながらその真ん中でアカペラで歌う愛理の姿を見ると梨沙子は鳥肌が立つほど高揚する。
エースだからこそ与えられた愛理の役割の中に自分がいる。
愛理をエースと認めて傍で支えることは、自分が今℃-uteのメンバーであることの何よりの証だと思った。
 
続いて軽快なギターの音が鳴る。
 
749 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:38
「青春ソング」は梨沙子も何度もライブで歌ったことはあった。
ただしそれはいつもBerryz工房として℃-uteの歌を歌ってきた。
でもこの歌を℃-uteとして歌うのは何か特別な意味を梨沙子は感じていた。

例えばそれはBerryzの「一丁目ロック」のようにファンとメンバーがこの歌を歌う時のはじけたような独特の空気がある。
青春ソングにも他のグループじゃ歌えない純粋でまっすぐな特別な意味が込められているように梨沙子は思った。

激しく踊りながら千聖の歌声を聞いた。
千聖は自分のパートを眩しい輝きをもっていても、内面では孤独なアーティストとしてのイメージを力を込めて歌いきった。
続いてまっすぐにしか進めない自分達の不器用な生き方を八方美人にはならないという表現で全員で歌った。
750 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:39
ファンのボルテージは最高潮に高まっていく。
めまぐるしく回転するタオルが色とりどりの光の渦の模様を作る。
梨沙子は最初この歌は不器用だけどまっすぐな舞美のことを歌っている曲だと思っていた。

でも歌っているうちにイメージが変わってきた。
この曲は自分たち℃-uteやファンのことを歌っている。

Berryzが自信をもった個性集団として勢いそのままに一丁目ロックを歌うように℃-uteは、全員団結してまっすぐな青春ソングを歌う。
その意味が今歌詞にのって、湧き上がっていく。
751 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:42
中途半端な優しさでまた私は誰かを傷つけている
そして流させた涙が自分の心に突き刺さる

愛理が歌った時に一瞬愛理と目があった。
いくら優しさを持っていても結局誰かを傷つけてしまう。
少し後悔を含んだような愛理の目が歌詞をそのまま表しているようだった。
まるで愛理自身のことを歌っているように聞こえた。

私は誰かを傷つけた。
私は「梨沙子」を傷つけて泣かせてしまった。

愛理は歌に乗せて梨沙子に対してそう言っているようだった。
752 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:44
名古屋で愛理が体調崩したときに梨沙子が一緒に泣いてしまったこと。
梨沙子が℃-uteに入ってみんなに謝らせてしまったことを後悔してると言った時の愛理の表情が急に思い返されてくる。

違う。

それは愛理が悪いんじゃない。

梨沙子は思わず唇をかんだ。
 
梨沙子を℃-uteにいれてBerryzだけじゃないと分かってもらうなんて手の込んだことをやる愛理も、
よっぽど不器用な優しさの持ち主だ。
愛理は器用で何をやるにも完璧な天才なんてイメージがついてしまってるから、
そんな不器用さなんて理解されないで随分勘違いもされただろうし、自分自身も傷ついてきたはずだった。
753 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:46
そのとき一瞬、梨沙子の横に軽やかな風が吹いた。
フォーメーションチェンジで、愛理が梨沙子の横を駆け抜けていく。

自分たちに慰めなんていらない。
何があっても絶対に℃-uteは走り続ける

そう願いをこめるようにみんなで歌う。

今度は愛理と視線がしっかりと合った。
愛理は笑っていたが何故か少し泣いているようにも見えた。

最後の曲なのに笑わなきゃいけない。
梨沙子は必死に自分に言い聞かせる。
せっかく6人みんなで頑張ってここまできたのだ。
754 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:47
だけど最後のライブまでの道のりは、自分なんか助けられてばっかりだった。
舞美や愛理、早貴、千聖、舞が梨沙子のために必死に頑張ってくれたことを思い出すと何だか泣けてきた。
もう℃-uteとしての時間がなくなる。
そう思うと何だか胸が熱くなる。
そして切なくなって誰と目を合わせても泣いてしまいそうだった。

それでもめいいっぱいに青春ソングを歌いきって梨沙子達は思い切り笑顔を見せながらステージ裏にはけた。
755 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:51
泣き出すのをこらえて梨沙子は会場のモニターを眺めた。
 
「梨沙子、もう一曲だよ」
 
早貴が梨沙子を落ち着かせるためか横に来て言った。
 
「うん」
 
梨沙子が荒い息をしながら応えると、会場に不思議なことが起こっていた。
 
まばらだった梨沙子の紫の色が徐々に増えていると思ったら会場全体が一気に紫色に染まった。
そして「梨沙子」のコールが鳴り響き始めた。
 
「うわ。きれいだね」
 
千聖も傍に来て言った。
 
「愛理がブログで呼びかけたんだよ」
 
舞がそう言って愛理がはにかむように笑った。
 
「ね、ブログもたまには役に立つこともあるでしょ」
 
愛理が自慢げに笑う。
756 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:53
「りーちゃん、最後まで笑顔だよ」
 
愛理が梨沙子に言い聞かせるように言った。
 
舞美は何故か梨沙子と目を合わさないように別の方向を向いている。
 
「舞美ちゃん、梨沙子と目が合うと絶対泣いちゃうからわざとああしてるんだって」
 
舞がそう言った。
舞美の後ろ姿は少し肩が震えていた。
舞美が静かにお別れを言っているように梨沙子には見えた。

梨沙子はそっと舞美に近づくと肩をぽんと叩く。
舞美は泣きはらしたような顔をゆがめると、梨沙子を思い切り力強く抱きしめた。
 
「梨沙子、本当にありがとう」
 
舞美が梨沙子の耳元で言った。
お礼を言うのはこっちのほうで。
そう思った梨沙子の思わず目からも涙がこぼれた。
 
「ごめん。最後は笑顔で終わりたいもんね」
 
舞美が必死な様子でそう言うから梨沙子はもう何も言えなくなった。
757 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:55
「梨沙子の最後のステージ。みんなで楽しもう」
 
早貴がそう言った。
 
「そうだよ。たのばらないとね」
 
愛理の笑顔は最後まで変わらない。
 
梨沙子コールに包まれた会場のアンコールに応えて℃-uteの六人で飛び出した。
一斉に紫色のペンライトが揺れる。

℃-uteとして受け入れてもらえないんじゃないかとずっと不安に感じてきたこと。
その心配がなくなってから℃-uteとしての自分の時間の短さを思い知った。

そしてそれを最後の最後まで引き伸ばしてくれた愛理や舞美、早貴、千聖、早貴と同じステージにいる。
この5人とはまた歌ったり舞台をやることはこれからもあるだろう。
でも℃-uteとして梨沙子がステージに立つことは、きっともうない。

そう思ったら砂時計が最後の時を刻むようにかけがえのない時間が、静かに消えゆくようにサラサラと流れていた。
758 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:57
「菅谷梨沙子は、℃-uteでステージで踊れて、ファンの皆さんと一緒にこの6人でライブをすることができて本当に幸せでした。本当に本当にありがとうございました」
 
コメントが一番最初でよかったと思った。
誰かのコメントを聞いていたら泣き出して話すどころじゃなかったかもしれない。
今までの℃-uteで経験したこと。
仲間のおかげで何より自分が変わることができたこと。
いろんなものが一気にこみ上げてきて、それが次第に嗚咽に変わる。

泣いたらダメだと必死に自分に言い聞かせる。
 
「梨沙子、本当は笑顔で終わらせなきゃいけないんだけどね。ごめんね。笑顔になれないや。でも本当にありがとう」
 
早貴がぶっきらぼうに、それでも涙を押し隠すように言い切った。
 
メンバーが次々と言ってくれるありがとうの言葉にいつか梨沙子は涙が止まらなくなった。
梨沙子にはもうこのライブをどう終わらせたらいいのか分からなくなっていた。

それでも否応なく時間は流れ本当に最後の曲が始まる。
759 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 22:59
季節はめぐる
それでも前向きに私たちは歌う

「めぐる恋の季節」

泣いてるせいで歌えなかったなんて絶対に言い訳したくなかった。
アンコールの曲は「めぐる恋の季節」

歌っているこの一コマ。
踊ってるこの瞬間が梨沙子にとって宝物のように大事な時間だった。

それなのに涙が喉からも溢れ出してくるようで声が詰まる。
最後は完璧に全力に、そして笑顔で終わりたいのに。

梨沙子は何度も自分を再起動させようとするけど自分の感情が強くなればなるほど、涙が止めどもなく流れた。
見たら他のメンバーも全く同じだった。

それは結局のところ全く笑えない光景で気がついたら歌い終わってステージの裏でみんな泣いていた。
760 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 23:03
ライブが終わった後も、外で梨沙子と℃-uteのコールが鳴り響いている。
楽屋に戻ればいいのに、ステージの裏の階段を下りたところで℃-uteは全員、体を寄せ合うように泣いていた。
 
「梨沙子、ごめんね。笑顔で終わる約束守れなかった」
 
舞美が真っ赤な顔で申し訳なさそうに言った。
舞美と抱き合いながら梨沙子は必死で顔を横にふった。
 
「ねえ、もう一回出れないのかな?」
 
舞が小さな声でぽつりと言った。
 
「ダメみたい。スタッフさんが終わりだって言ってる」
 
早貴が残念そうに言う。
 
「くっそ。もう終わりかあ」
 
千聖の声が聞こえた。
周囲でスタッフさんがお疲れ様でしたと言っているのが梨沙子の耳にも入った。
761 :時風 梨沙子 :2013/02/09(土) 23:07
その時隣にいた愛理がすっと立ち上がった。
ゆらりと空気が動いた気がした。
 
「行こうよ。もう一度」
 
最初愛理が何を言っているのか分からなかった。
でも梨沙子の横を風がぴゅっと流れたとき、すでに愛理がステージに向かう階段の途中まで登っていた。
そしてこっちを見下ろしながらまっすぐにステージを指差す。
 
「でもスタッフさん。もう終わりだって言ってるよ」
 
舞が怪訝そうに言った。
 
「無視無視」
 
愛理がそう言ってにっと笑った。
涙なんて吹き飛ばすような爽快な笑顔だ。
とてもさっきまで泣いていた顔には見えなかった。
 
「梨沙子!行こう」
 
愛理がそう言った。
一瞬だけ時間が止まっているような気がした。
 
「梨沙子、みんなも!笑顔で終わろう」
 
そのとき大きな風が、梨沙子の背中を押した。
今まで愛理が起こした風の中で一番温かくて力強い風だった。

梨沙子と同時に全員が立ち上がる。

愛理を先頭に梨沙子も舞美も早貴も千聖も舞もステージへ向かって一気に駆け上がって行った。
762 :ES :2013/02/09(土) 23:16

「時にはそれは風のように」完
763 :ES :2013/02/09(土) 23:19

読んでいただいた皆様、レスをいただいた皆様どうもありがとうございました!
とても励みになりました。

今次作を書いてますのでまた飼育に戻ってこれたらと思ってます。
またCPのネタやら娘。小説のことなど日々のことをブログに書き散らしておりますので
こちらもよろしければのぞいてやってください。

ttp://blog.livedoor.jp/easestone/
764 :名無飼育さん :2013/02/14(木) 10:50
お疲れ様でした!
更新が待ち遠しい素敵なお話をありがとうございます。

次回作も期待しています。
765 :名無飼育さん :2013/03/08(金) 12:59
今全部読みました。あいりしゃこのなんとも言えない絆が堪らなく好きです。また是非あいりしゃこ書いてください。

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