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時にはそれは風のように

1 :ES(Easestone) :2012/05/19(土) 13:11
CPは「りしゃあいり」です。
視点は梨沙子視点と桃子視点の二つから書きたいと思います。

長くなると思いますがよろしくお願いします。
2 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:13
夏焼雅がその細く伸びやかな白い手をいっぱいに掲げた。
息を呑むような美しさにはっとなる。
会場にゆるやかに流れていた風さえ止まったような気がした。

続いてけたたましい大音響が会場全体を包みこんだ。
あまりの音に雅の姿さえ見えなくなる、
その一瞬の隙をつくように雅が歌い始めた。

その歌声が波状になってファンの歓声とともに駆け抜けていく。
心をかき乱すような音楽が雅の体から次々に放たれて
舞台袖で聞いている嗣永桃子の体をまっすぐに一気に突き抜けていった。
3 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:15
これこそみやの真骨頂だなあと桃子は思う。
雅の歌はまるで人の心を遥かかなたにまで引きずりあげていくみたいだ。
そして魔法でもかけられたようにみんな雅の歌の虜になってしまう。

桃子自身も歌唱力には自信がないわけではない。
でも今の雅の力と比べるとまるで別次元だ。
雅は、神様から与えられた特別な力を持っていると桃子は思った。
 

ふと舞台の対角線上に目を移すと、℃-uteの鈴木愛理が雅の姿を
じっと見ているのが見ているのが桃子の視界に入った。
4 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:16
今日はBerryz工房と℃-uteの対決企画が行われるイベントの日だった。 

桃子が属しているBerryz工房も℃-uteも元々ハロープロジェクトに同時に加入して
ハロプロキッズとして活動を始めたため全員が同期だった。
そのためかBerryz工房と℃-uteはグループとして比較されることも多く、
一緒にライブをやったりゲームで対戦したりということも頻繁にあった。

周囲からもベリーズと℃-uteはライバル関係とよく言われた。
しかし今のところ、夏焼雅という絶対的なエースのいるBerryz工房は
人気という面では℃-uteに先行していた。
5 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:17
ただ桃子にとって℃-uteとの対決ははそれほど興味はないことだった。
Berryz工房が先にブレイクできたのは℃-uteに勝ったからじゃない。
年齢も個性もばらばらなBerryz工房がここぞというときに団結して、
みんなで努力してきた成果だと桃子は思う。

そして℃-uteも一緒にブレイクするときがきたら、
きっとBerryz工房はもっと注目されると桃子は思う。

大きく考えたら同じハロープロジェクトに所属する℃-uteもBerryz工房も
運命は同じなのだ。
6 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:19
それに桃子がリーダーを務めるBuono!は℃-uteの鈴木愛理とBerryz工房の夏焼雅と桃子の
三名のベリキュー混成ユニットだった。

桃子にとってBerryz工房もBuono!もどちらかなんて選べないくらい好きだ。

そのせいで桃子には℃-uteをライバルだという意識はほとんどなかった。
7 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:20
「今回もうちらの圧勝だね」
 
桃子のすぐ傍にいた菅谷梨沙子が目を輝かせて言った。
Berryz工房には夏焼雅以外にもう1枚エース級の歌手がいる。

梨沙子は年齢こそ最年少だが、歌唱力や表情の作り方などのパフォーマンスでは
ハロープロジェクトでもトップクラスの実力を誇った。
 
「これで勝ったら3連勝だし、もう℃-uteには負ける気しない」
 
梨沙子は勝ち誇ったように言う。

梨沙子は桃子とは正反対に℃-uteへのライバル意識は相当なものだ。
8 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:21
「まだ分かんないんじゃない?舞美も結構すごかったと思うけど」
 
桃子はわざと言ってみた。
 
「はあ?みやが℃-uteに負けるわけないじゃん」
 
梨沙子はあからさまに不機嫌そうな顔をする。

予想通りの回答が返ってきて桃子は苦笑した。
梨沙子の℃-uteへの対抗意識はものすごく強い。
とりわけ、雅がステージに立っていたからなおさらみたいだ。
9 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:24
梨沙子が雅に対して強い憧れの気持ちを抱いているのは遥か前の
Berryz工房の結成以前、自分達が最初に出会ったときからずっと変わらない。

Berryz工房はメンバー同士でこんなに一緒にいる時間が長くて、
もう隠し事も何もない家族みたいになっている。

それなのに梨沙子の雅に対する思いはものすごく新鮮でピュアで、
それは雅と一緒にいるときの梨沙子の微妙な表情や仕草の一つ一つから伝わってくる。
10 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:25
「審査員投票と会場投票合わせて3対0、℃-ute矢島舞美対Berryz工房夏焼雅の歌唱力対決は
 雅ちゃんの勝利です」
 
観客席から一斉に歓声が上がった。
 
「やったあ!」
 
梨沙子が雅の元へ一目散に駆け寄っていった。
11 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:26
これでBerryz工房はこのイベント3連勝だった。
Berryz工房の勢いは最近になってさらに増している。

その中心はセンターの夏焼雅だ。

少し前はテレビの出演回数が一番多い桃子がBerryz工房の中では一番知られている存在だった。
しかし今では雅のほうが有名かもしれない。

そろそろ自分もキャラクターだけでなく、さらに目立つ方法も考えようかと桃子は思った。
12 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:27
ふと喜んでいるベリーズのメンバーを横目に℃-uteを見ていると、
また愛理の姿に目が止まった。

愛理がステージ横から物憂げに誰かをじっと見つめている。

愛理の視線の先には雅と抱き合って喜ぶ梨沙子がいた。

それを見て桃子は梨沙子の身に何かが起こるような胸騒ぎを感じた。
13 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:29

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14 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:31
桃子がBuono!の控え室のドアをノックして開けるとまだ愛理も雅も来ていなかった。
今日はテレビ局でBuono!の取材の仕事だった。

桃子はさっきスタッフからもらった紙包みをテーブルの上に置いて丁寧に開け始めた。
ちょうどテレビ局の廊下でベリーズのスタッフさんがいて
Berryz工房のファン感謝特典のメンバーの生写真をもらったのだ。
15 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:32
桃子もファンの人がもらう写真がどんなのか見ておきたかった。
とりあえず自分の写真を取り出したが、それは横に置いておいて、
楽しそうにメンバーの写真を年齢順に並べていく。

まず最初に梨沙子、熊井ちょー、みや、すーちゃん、千奈美、自分にキャプテン。

桃子はみんなの写真を満足そうに眺めた。
そして、みんなで映っている集合写真やペアで映っている写真なども
テーブルいっぱいに並べていく。

そのとき、コンコンと素早く音が鳴ったかと思うとさっとドアが開いた。

ドアの風で写真が少し浮き上がる。
16 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:34
「愛理?びっくりした!」
 
先に愛理の姿を認めて桃子が言った。
 
「あ、桃早いね」
 
そういうと愛理はテーブルいっぱいに広がったベリーズメンバーの写真に目を落とす。
 
「あ、これは、ファンの特典の写真で」
 
桃子はしどろもどろになりながら言った。
そして写真をを封筒の中に収め始めた。
自分ひとりの写真を見つめているときならよかったが、
自分が他のメンバーの写真を見ているのは逆にらしくなくて恥ずかしい。
17 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:35
「いいじゃん。見せてよ」
 
愛理はそう言ってメンバーの写真を一枚抜き取った。
 
「あ、ちょっと勝手にとらないで」
 
桃子はそう言ったが、愛理は取った写真以外の他のメンバーの写真を素早くごちゃごちゃに混ぜて分からなくしてしまった。
 
「さあ、クイズです。誰の写真を取ったでしょう?」
 
愛理がいたずらっぽい目をして言った。
18 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:36
桃子はベリーズで愛理が写真を取りそうなメンバーを思い浮かべた。
最初は何となく愛理と仲がいい熊井ちょーかみやの写真だと思った。

そしてBuono!でいつもじゃれあっている雅と愛理を思い出して雅だと確信した。
 
「みやでしょ?」
 
桃子がそう言うと愛理は笑って言った。
 
「残念。りーちゃんでした」
19 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:38
梨沙子の写真を見て桃子は思わず意表を突かれた気がした。
改めて愛理が見せた梨沙子の写真はほっぺのところにピンクのチークが白い肌に溶け込むように合わさって
人間離れしたような可愛さを放っていた。
 
「めちゃくちゃ可愛いね。この写真」
 
愛理はうらやましそうな顔をして言った。

桃子は愛理からそんな言葉を聞くのは初めてだったので何か意外だった。
梨沙子が可愛いという話題はベリキューのメンバー間でもよくあるけど
そのときの愛理は決まって聞いているだけだ。

それに愛理こそメンバーからもファンからも特に可愛いと大絶賛される存在でもある。
20 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:38
「まあ私には負けるけどね」
桃子は肯定の意味でそう返した。

愛理は梨沙子の写真をじっと見入っている。

桃子はふいにベリキュー対決のときでも愛理が梨沙子を見つめていたのを思い出した。
桃子の中であのときの胸騒ぎは再び蘇ってくる。
 
「確かにりーちゃんて可愛い。けど可愛いすぎるって罪だよね」
 
愛理が言った。
21 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:39
「まさか愛理、この前のイベントでりーちゃんに負けたのまだ根にもってんの?」
 
前のときは大一番の歌唱力対決でBerryz工房の雅が勝ったが、
その前に行われたどっちが可愛い対決では愛理は梨沙子に負けて、
結果Berryz工房の圧勝に終わっている。
 
「さあねー」
 
愛理は人事のように言う。
22 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:41
「でも罪があるってことは何かで償ってもらわないとねー」

わざと軽く言っているような愛理の言い方が、
あまり冗談にも思えない雰囲気があった。
 
「ちょっと愛理、まさか梨沙子に何か仕返しするつもりじゃないよね?」
 
桃子はだんだん不安になってきた。

梨沙子と愛理はハロプロキッズとして活動を始めた時代からの親友同士だ。

梨沙子と雅がその頃からそれこそ姉妹みたいな強い絆で結ばれているとしたら
梨沙子と愛理も絶対に揺るがない固い友情で結ばれてきた。

梨沙子と愛理の仲が今どうなっているのか全く分からないけど、
とにかく愛理にはずっと梨沙子の親友でいてほしいと桃子は思う。
23 :時風 桃子 :2012/05/19(土) 13:42
「いやいや、℃-uteの誰かがそう言ってただけだって」
 
愛理は肯定も否定もせず、そう言って梨沙子の写真を見つめた。

それでも梨沙子を見つめて爛々と輝く愛理の瞳が
きっと何かを企んでいるに違いないということをはっきりと物語っていた。


24 :ES :2012/05/19(土) 13:43


今回の更新を終わります。
久しぶりすぎて慣れませんが、週1更新していきたいと思います。
25 :名無飼育さん :2012/05/20(日) 21:53
これを読んで、ああ夏焼さんがメジャーになる日がきてほしい、と切に感じました。
愛理は色々思うところがあるんでしょうね。穏やかでない雰囲気が似合う子だと
思います。
続きを楽しみにしています。
26 :名無飼育さん :2012/05/21(月) 08:14
お久しぶりすぎる名前を見かけたと思ったら、ベリキューメインの話。
面白そうです。次回更新されるのが楽しみです。
27 :ES :2012/05/26(土) 08:38
>>25
レスありがとうございます。まさに私も同感です。
そんな日がくることを切に願いつつ・・

>>26
レスありがとうございます。覚えていてくださったみたいで
ありがとうございます!いろいろと思うことがありまして
戻ってまいりました。これからもどうぞよろしくお願いします。
28 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:40
雅みたいに℃-uteを寄せ付けない圧倒的な力をもった歌手になりたい。
ベリキュー対決が終わって梨沙子の雅への憧れの気持ちは強くなる一方だった。

雅はめちゃくちゃカッコいいのに全然それを自慢することもないし、
むしろ普段は優しくて女の子っぽいオシャレをしていることばかりが目立つ。

梨沙子はそんな雅を見ていると雅のことが好きすぎていっそ雅になりたいと思ってしまうこともある。
そんなことを考えながら梨沙子はテレビ局の廊下を歩いていた。
29 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:41
そのとき、ふと梨沙子の目の前をどこから入ってきたのか外の風が流れてきた。
雅のことをずっと考えていた梨沙子の意識がさえぎられた。

愛理?

同時に梨沙子は真正面の廊下の角に愛理の後姿を残像のように見かけた気がした。
一瞬追いかけてみようかと思ったが違う可能性だってある。
梨沙子はライバルとして愛理を意識しすぎなのだと思い直した。

でも梨沙子にはまだ愛理に勝って雅のようになれる自信はない。
そんな梨沙子の後ろから桃子がやってきた。
30 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:43
「もも、遅いよ」
 
梨沙子は、口調だけ尖がらせて言った。
それでも梨沙子は桃が相手だと緊張しなくていいので自然と顔が緩む。
 
「今、愛理見たような気がしたんだけど、気のせいかな」
 
梨沙子が周囲をきょろきょろと見渡して言った。
 
「愛理?ああ、今までBuono!の取材の仕事だったからまだその辺にいるのかも。
 で話しって?」
 
「みやのことなんだけど」
 
梨沙子は少し聞きづらそうに言った。
31 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:44
「みやがどうかした?」
 
桃子が少し早口で淡白な調子で言った。
 
「みやってどんな髪形が好きなのかな?」
 
梨沙子は少し恥ずかしそうに言った。
桃子は梨沙子の顔を見てすぐにぴんときたみたいだった。
 
「梨沙子、髪形変えるの?」
 
「うん。ついでに色ももう少し軽くしようかなと思って」
 
梨沙子は素直に言った。
 
「そっか。それでみやの好みにしたいんだ」
 
梨沙子は黙ってうなずいた。
32 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:46
「うーん。みやの好きな髪形かあ・・・。
 てかさあ。みやに直接聞いたほうが早くない?」」
 
桃子が少しすまなそうに言った。
桃子が雅の髪型の好みを特に注目してるはずもないから桃子の答えも当たり前かもしれないとは思った。

それでも梨沙子は納得できなかった。
 
「やだ。直接聞いたら意味ないもん」
 
梨沙子は言った。
 
桃子は頭を抱えて考え始めるた。
梨沙子はその様子を期待しながら見ている。
33 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:49
桃子は梨沙子と二人で話すときだけ普段とは全然違う。
どちらが普段なのかはよく分からない。
けど桃子はみんなでいるときや楽屋では完璧なぶりっ子キャラを通している。

アイドルとして桃子なりの考えはあるんだろうと梨沙子も分かっているつもりだ。
でもそんなときの桃子はそれにしてもうざいと思うこともたびたびだった。
しかし梨沙子と二人きりのときの桃子は全然違う。
34 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:50
梨沙子に接するときの桃子は、冷静で自分なりの考え方をきちんともっていて、
会話のときこそそっけなく聞こえるけど梨沙子に対してかぎりなく優しい。

桃子は梨沙子が相談すると、どんなときでも嫌な顔一つせず相談に乗ってくれた。

それに年上だからと威張って自分の意見を押し付けたりすることも全くない。

だから梨沙子は二人きりのときに桃子に個人的な相談を持ちかけるようになった。
35 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:51
「よくキャプテンの髪形、可愛いって言ってたけど」
 
桃子は困りながらも言った。
 
「キャプテンねえ」
梨沙子は、最近髪を伸ばし始めた佐紀の髪形を思い浮かべた。
でも個性が命のベリーズでキャプテンと同じ髪形はあまりにもおもしろくない。
 
「でもみやって梨沙子がしてる髪形だったら何でも好きって言いそうだけど」
 
桃子は言った。確かに桃子の言うことは一理あった。
36 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:52
「でもそんなんじゃやなの」
 
雅は梨沙子にとって一番近くにいる憧れの存在だった。

オシャレ番長と言われてファッションセンス抜群の雅を見て
梨沙子はメイクをしたり髪形とかいろいろ考えるようになった。

だから自分が一大決心をして髪形を変えたときには一番最初に雅に見せたかったし、
雅に一番可愛いと言って欲しかった。
37 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:54
「そうだなあ」
 
桃子は再び考え出した。
梨沙子の前ではにゃんにゃん言葉を使う嗣永桃子はもうどこにも存在しない。
桃と話すたびにまさに嗣永桃子は二重人格の人工アイドルだと梨沙子は思う。
でも梨沙子はそのことを否定的に考えているわけではなく、
桃なりに自分の個性を出しているのだと思っていた。

しかし梨沙子には何故桃子が自分にだけこんなに普通の態度で接してくるのかは分からなかった。
 
「梨沙子、桃もお昼もう食べるって」
 
雅が顔を覗かせて言った。
 
「二人とも楽屋戻って」
 
雅の明るい声に梨沙子の気持ちが切り替わった。
38 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:55
「ちょっと、まあ、勝手にあたしのケータイにいたずらしないでよね」
 
千奈美の威勢のいい声が聞こえてくる。
今日もBerryz工房の楽屋はずいぶんと騒がしかった。
 
「いいじゃん。こうしたらおもしろいよ」
 
茉麻が千奈美の携帯電話の待ちうけ画面を勝手にいじっている。
 
「てかこれ、あたしのおじいちゃんの眉毛の写真じゃん」
 
メンバーが眉毛がドアップになった千奈美の携帯を回し見して大笑いしている。
 
「おい、須藤」 
 
千奈美が茉麻の頭に軽くチョップした。
39 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:56
それでも昔に比べて随分と静かになったと梨沙子は思う。

昔の梨沙子は楽屋でもメンバーとしょっちゅう喧嘩したり、
キャプテンやみやに怒られたり、反省したり、
また時間がたつと腹が立ったりの繰り返しだった。

そして何より小さいときはみんなにテンションがおかしいって言われるぐらい
自分が一番騒いでいたような気がする。

千奈美の携帯を取り合っていた雅とふいに目が合う。

そんな梨沙子が雅から梨沙子って落ち着いてて大人っぽいと言われた。
梨沙子に最も影響を与える人の言葉で梨沙子はもう自分が昔とは違うんだなと感じた。
40 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:57
「そういえば、梨沙子髪型変えることにしたんだっけ?」
 
雅は誰かから聞いてきたように言った。
梨沙子が雅がそのことを知っていたことに驚いた。
マネージャーさんにはすでに伝えていたが、
まだみんなには言わないように頼んでおいたはずだった。

そして桃子は絶対に雅に漏らさないはずだ。
 
「愛理から聞いたよ」
 
雅は何でもないことみたいに言った。
41 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 08:59
梨沙子は一瞬にして愛理に髪形を変える事をメールしたことを思い出した。
そして愛理に話すんじゃなかったと後悔した。
とりあえず髪形を変えるぐらい大事なことは、
親友の愛理には話さなきゃいけないという梨沙子の律儀すぎる性格が完全に災いした。

そして愛理にこのことはみやにはまだ話さないでほしいなんて
自分の心の中を愛理に見られるようでとても言えなかった。
42 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 09:00
「最近、愛理とどんな髪形が可愛いとか結構メールしてて」
 
雅が話す言葉を聞いて梨沙子は気が遠くなりそうだった。
 
「ボーノだとファッションとか髪形とかまともに話せる相手って愛理しかいないじゃん」
 
雅は梨沙子相手にしゃべり続けた。 
 
「愛理も最近ね。オシャレに目覚めてきたみたいで」
 
聞きながら梨沙子は、愛理にせっかく髪形を変えることにしたとメールをしても
返事が返ってこなかったことを思い出した。

そのせいで愛理に報告したこと自体忘れてしまっていたのだ。

親友のはずの愛理が自分からのメールは無視して雅としょっちゅうメールのやり取りをしていたかと思うと、
梨沙子は寂しいような腹が立つような両方の気持ちが入り混じった。
43 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 09:02
「愛理も結構、私と趣味がかぶっててセンスも合うんだ」

雅が楽しそうに言う。

自分も雅と同じ趣味のファッションとか髪形とか知りたい。
梨沙子は唇をかみ締めて思った。でもそれを素直に言えない。
 
「なになに?ももが可愛いって話?」
 
そこに桃子が突然二人の会話に割り込んできた。
 
「違う。ボーノで誰かさんのおかげですっごい疲れきってるときに、
 愛理の笑顔を見るとほんっとに癒されるって話」
 
雅が思いっきり抑揚をこめて言った。
44 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 09:08
雅は桃子へのあてつけのつもりでそう言ったに違いない。
なのに雅が言った「愛理」という名前だけが梨沙子の脳裏に妙に残る。

今まで感じたことのない愛理への嫉妬の気持ちだった。

 
「そっかあ。みや、やっぱももの笑顔で癒されてんだ」
 
桃子があごに両手をもっていって甲高く甘い声で言った。
 
「違う。愛理の笑顔ね。天使みたいな愛理の笑顔」
 
雅が何度も「愛理」を強調して言った。
 
「まあ、ももの笑顔は気持ち悪いけどね」
 
梨沙子がいつもどおり感情をこめずにストレートに言った。
それを聞いて雅があははと笑う。
 
「ちょっと梨沙子までそんなこと言わない」
 
言われた言葉に反して桃子の顔は笑顔だった。
桃子が会話には入ると梨沙子はもう愛理への感情とか何だかどうでもよくなってきて少しだけ気持ちが楽になる。
45 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 09:09
「ももー、ディレクターさんがももだけ念入りな打ち合わせがあるって」
 
茉麻が桃子を呼びに来た。

今日は久しぶりのテレビ収録だった。
桃子はバラエティにも多数出演がある。
他のメンバーが曲紹介するだけの番組でも桃子だけ結構手の込んだ役回りをやることが多い。
そのせいで桃子だけ特別な打ち合わせがあったり司会者との難しい掛け合いなんかも番組中にやっている。
 
「これだから売れっ子は困るなあ。人気ありすぎてももち困る〜」
 
桃子がわざと手足をばたつかせて言った。
 
「単におもしろいからだけじゃないの?」
 
雅が言った。
46 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 09:10
「やっぱももはベリーズの可愛い担当だからなあ」
 
桃子が雅の言葉を無視して言う。
そしてこれみよがしに「可愛い」を強調してみせた。
 
「はあ?桃はお笑い担当だからだよ」
 
雅がいつもと同じ調子で返した。
 
「桃は芸人さんじゃありませーん」
 
桃子はそう言いながら先に打ち合わせに向かった。
桃がいなくなると、ふと空気の間に隙間ができたように静かで落ち着かなくなる。
47 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 09:12
梨沙子はまたさっきの雅と愛理がいろんなファッションの話をしているということが気になり始めた。
でもそれを確かめるには愛理に聞くほかない。
愛理に聞くと雅への憧れの気持ちみたいなのが、愛理に分かってしまって恥ずかしいし、
愛理へのアドバイスを雅にきくのもおかしい。

愛理は気づくといつも自分と雅の間に割り込むように入ってくる。
 
「ああ、そういえば」
 
雅が思い出したように梨沙子の顔を見た。
 
「愛理が最近、梨沙子と会えてないから寂しいって言ってたよ」
 
雅が言った。
48 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 09:13
「そう」
 
梨沙子は短く反応した。

確かに最近、愛理に会えてない。

イベントの会場などでは一緒にはなっても、℃-uteとは楽屋が別だし
会場でベリキュー対決のときはチームは別だし結局ほとんど話せなかった。

会えないのでメールを梨沙子から送っても愛理は返信するのを忘れていたりする。

もっともそれは今に始まったことではなく、昔から愛理はメールのやり取りなどは
あまり几帳面ではないことは梨沙子もよく分かっていた。
49 :時風 梨沙子 :2012/05/26(土) 09:14
「最近、愛理と会ってないの?」
 
雅が急に真面目な顔になって聞く。
 
「そうでもないけど。なかなか予定合わないし」
 
「そっか」
 
雅が梨沙子をまじまじと見つめてきたので梨沙子は少し恥ずかしくなって視線をずらした。
 
「梨沙子!これ元々梨沙子が送ってきた画像でしょ?」「梨沙子、うまいね。これ」
 
そのとき、千奈美の携帯の画像の話題が一気に梨沙子のところまで波及してきた。
50 :ES :2012/05/26(土) 09:15


今回の更新を終わります。
51 :名無飼育さん :2012/05/27(日) 07:45
復活おめでとうございます!
石さんみたいな実力派が帰ってくるといち住人としても嬉しいです
次回更新も楽しみにしてます
52 :名無飼育さん :2012/06/01(金) 08:43
ライバル関係が強調された世界。
面白くなりそう。期待してます。
53 :ES :2012/06/02(土) 07:44
>>51
ありがとうございます!でもワンフレーズ書くのにも四苦八苦する
私に実力があるとはとても思えませんが、、更新頑張ります!

>>52
レスありがとうございます。ライバル意識もありつつな世界を
しばらく書いていけたらと思います。
54 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:45
桃子の事前打ち合わせが終わると梨沙子達ベリーズメンバーも会場に入った。
Berryz工房の会場入りが一番だったため誰も座っていないひな壇が何個も見えた。
今日の収録はアイドル祭りなだけに相当な人数のゲストが来るんだろうなと梨沙子は思った。
55 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:46
いくら自分達がアイドルでもこれだけいるとグループの名前を覚えてもらうだけでも大変だ。
キャプテンとみやと茉麻が前列で、できるだけ印象に残るベリーズの紹介を懸命に考えていた。

梨沙子自身の席は最後列で、実際テレビの前で話す機会はないだろうなと何となく思った。
ただでさえ梨沙子はテレビに限らずトーク番組が苦手で、いつも話すタイミングを逃してしまうのだ。

これだけ人数が多いと話をふられることもないだろうし、
それはそれで気楽かもしれないと梨沙子は思った。
56 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:47
ひな壇の上から舞台セットを見ながらさっきの雅との会話を思い出した。
愛理に髪形を変えることを伝えたのは本当に失敗だったと思う。

愛理は℃-uteだからベリーズのみやとはとはあまり接点がないというのは
完全に梨沙子の思い込みで、ボーノの存在が何故か梨沙子の中ですっぽりと抜け落ちていた。

心のどこかでボーノのことについてはあまり考えたくないと梨沙子は思っているのかもしれない。
57 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:49
梨沙子はボーノをずっと応援してきたし、今でもファンの一人だ。
だけど桃、みや、愛理という構成メンバーが個別に梨沙子との距離があまりにも近かった。

距離が近いというのは単に仲がいいというだけじゃなく抱いている感情が全く別物なのだ。

桃は一番の相談相手でもあり一番の自分の味方だと思う。
みやは梨沙子が憧れ以上の気持ちを抱いている人だ。
そして愛理は親友でもありライバルでもある。

三人が三人とも梨沙子にとって特別な存在だった。
だからその3人が一同に集まるボーノに対する気持ちは複雑だった。

三人のことはとても好きだけどボーノというベリキューの混成グループがあるせいで、
みやと桃は℃-uteへのライバル意識が全然なくなっていると梨沙子は思う。
58 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:50
℃-uteがBerryz工房の最大のライバルだとしたら、
梨沙子個人にとって一番気になる存在なのはやっぱり愛理だった。

愛理とは何と言っても℃-uteのセンターだし梨沙子もベリーズで何度もセンターで歌ったことがある。

そう考えたら愛理は梨沙子にとって宿命のライバルだ。

この前はたまたま歌唱力対決みたいな形で雅と舞美が勝負したけどいつか、
ダンスや歌で本格的に愛理と本気で勝負するようなときがくるのかもしれないと梨沙子は思った。

梨沙子の中でめらめらと闘志が湧き上がる。

梨沙子個人としてもBerryzのメンバーとしても愛理には絶対に負けたくない。
そのとき、番組の舞台セットに他のゲストが続々と入り始めた。
59 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:52
アイドルグループが何組もゲストとして来ていた。
テレビではよく見かけるけどほとんど話したことがない人たちばかりだったから
梨沙子はだんだん緊張してきた。

ハロープロジェクトから出演するのはBerryz工房とスマイレージだけだったので、
イベントやライブとは全然雰囲気が違った。

何よりもどんなことをしても必ずリアクションを取ってくれるファンの人がここにはいない。
60 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:56
ゲストが全員席についてリハーサルも終わり、いよいよ番組の収録が始まろうとしていた。
前列のキャプテンと雅と茉麻は、司会者からいろんな質問を受けたりするのでその打ち合わせをしている。
ライブではあれだけトークを回せる茉麻でも肩に力が入りすぎているみたいだった。
 
お笑い番組なのにどのグループも緊張感が張り詰めた状態で番組の収録は始まった。
 
「それでは各グループの紹介をしていきたいと思います」
 
司会者が番組を進める。
とにかく最初のグループの紹介だけはみんなでカメラに写るから元気よく合わせようとキャプテンが言った。
61 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:58
「みなさん、こんにちは。ベリーズ工房でーす」
 
梨沙子もここだけはと必死に言った。
続いてキャプテンがベリーズの紹介をしようといい始めようとしたときだった。
 
「はいはーい。みなさーん。私がベリーズ工房で一番可愛いももちこと、嗣永桃子でーす」
 
いきなり桃子がカメラを抜いた。
 
「はい。あなた前に出てこないでください」
 
司会者が止めるのも桃子は振り切る。
 
「ちょっと今、キャプテンがうちらの紹介をしようとしてたところでしょ?」
 
千奈美も出てきて桃子を引き止めた。
62 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 07:59
「でも、ももちのことが見たいっていうお茶の間の声を」
 
千奈美が止めるのも無視して桃子がぶりっとした声でそこまで言った瞬間、
いきなり出演者に横からとび蹴りされた。
小柄な桃子は一気にはじきとばされていった。

梨沙子も驚いたが、女の子の多い会場の空気は凍りついたようになった。
 
桃子は起き上がると全くひるまずあたしがアイドルなの分かってます?と司会者に食いついた。

ああ、その流れか。
梨沙子もようやく理解した。
もちろんベリーズのメンバーはいつものことだと誰も助けには行かない。
63 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 08:00
それから桃子が余計なことから人をイライラさせることまでとにかくよくしゃべった。
出演者には他のアイドルグループもたくさんいたが、
しゃべっているのが桃だったから他のアイドルが思わずドン引きするくらい
ベリーズみんなで桃を容赦なく突っ込みまくった。

他のアイドルはみんなあっけに取られていた。
日本にはアイドルグループはたくさんあるけどここまで徹底的に仲間をこき下ろすのは
Berryz工房だけかもしれないと梨沙子は思った。
64 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 08:01
桃子は、相撲対決のときにカメラの前に出て許してニャンと言ったところで、
ついに張り倒されて、白い粉がついているクッションに叩き落された。

おかげでアイドル桃子の顔面は真っ白になっていた。
さらに会場から引きずられて強制退場させられた。

ハロプロ以外のアイドルグループが何組も来ていたが、
当然そんなめちゃくちゃな扱いを受けるアイドルは一人もいない。

桃子が番組で一番笑いをとったおかげで結果的に7、8組いたアイドルグループの中でBerryz工房が一番目立った。
65 :時風 梨沙子 :2012/06/02(土) 08:02
桃子としてはいつもどおりのキャラクターを出しただけなのかもしれない。

でも他のアイドル達が必死にアピールしようとしたりいつもとは違った一面を出そうとがんばっているなか、
桃子ほど意識して笑いをとっているような人はどこのグループにもいない。

梨沙子は桃子の本当の力を思い知ったような気がした。
66 :時風 桃子 :2012/06/02(土) 08:03


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67 :時風 桃子 :2012/06/02(土) 08:04
桃子はメイク室で化粧をし直してもらっていた。
元来薄いメイクだし桃子にはこれといって外せない化粧のこだわりもない。

桃子は顔についた粉さえ全部落としてもらったら後はすっぴんでいいかとも思った。
それに早く終わらせないとそろそろ桃子を訪ねて人がいる。
 
ノックの音がして桃子の予測したとおりの人がそこに立っていた。
68 :時風 桃子 :2012/06/02(土) 08:05
「もも、大丈夫だった?」
 
梨沙子は桃の様子を伺うように言った。
いくら演出だと分かっていても梨沙子はこうやって心配して真っ先に駆けつけてくる。
桃子は咄嗟に両手で目を覆ってうつむいた。
 
「ももちずっと泣いてた。だって今までお姫様みたいな扱いしか受けたことなかったから」
 
桃子はわざと甲高い声で言った。
 
「はいはい。どや顔見えてますけど」
 
梨沙子が急に低い声になって言った。
桃子はとりあえずうつむいて目を隠したままでいた。
69 :時風 桃子 :2012/06/02(土) 08:06
「それはそうと相談があるの」
 
梨沙子は桃子の様子は気にせずに言った。
 
「みやのことでしょ」
 
桃子はそのままの体勢で言った。
 
「何で分かったの?」
 
梨沙子は本当に驚いた顔をして言った。
 
「分かるよ。それは」
 
桃子は顔を上げて梨沙子の少し驚いた表情を見て言った。
というか梨沙子の相談はほとんど雅に関することだ。
分からないほうが逆におかしい。
70 :時風 桃子 :2012/06/02(土) 08:07
「ねえ、みやって愛理にどんなことアドバイスしてるの?髪形とか」
 
「うーん」
 
それを聞かれると桃子も唸るしかない。
確かにBuono!で雅と愛理は仲良く話しているがいちいち会話の内容までは覚えてはいない。

その中に確かに髪形とかファッションの話もあったとは思う。
でも桃子が会話の中に入ると自然と話題がそれていくし、
雅はきっと桃子をその話題から一番かけ離れた存在だと思っている。
71 :時風 桃子 :2012/06/02(土) 08:08
「ごめん。覚えてない・・・」
 
さすがの桃子も断念して言った。
 
「そっか」
 
梨沙子はため息をつくように言った。
愛理に聞いたらとはあえて桃子は言わなかった。
梨沙子が愛理に聞けるなら最初から聞いているだろうと桃子は思った。

きっと梨沙子にも愛理に対するライバル意識とか対抗心も生まれてきているんだろうし、
こと雅に関してのことならなおさらかもしれない。
72 :時風 桃子 :2012/06/02(土) 08:09
ただ、最近の梨沙子は以前よりももっと雅一辺倒になってきているのが桃子は心配だった。
近頃の梨沙子を見ていると雅の放つ力に引きずられて、
自分の見せ方とか歌い方が何だか不安定になってきているのだ。

でもそれは仕方のないことかもしれない。

ずっと梨沙子に一番近い存在だった雅が今スターとしての魅力を思う存分に伸ばしてBerryz工房の中心にいる。
梨沙子が雅に何も影響されないはずはなかった。
73 :時風 桃子 :2012/06/02(土) 08:10
個性がばらばらなことが一番の特徴のBerryz工房で今の梨沙子がメンバーの中で一番窮屈そうにしている。
梨沙子の姿を見ていると何とか梨沙子の力になりたいと桃子はずっと思っている。
それでも同じグループにいながら何も出来ることが思い浮かばない。
そんな自分に桃子は歯がゆさを感じた。
74 :ES :2012/06/02(土) 08:11


今回の更新を終わります。
75 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:01
空は低く覆いかぶさるように鉛色に曇り、そのせいで窓から流れる車や道路がみんな灰色に同じに見えた。
車の中には梨沙子とマネージャーさんしかいない。
梨沙子は流れる光景をずっとほおづえをついて見ていた。
これからする仕事は℃-uteとモーニング娘。のメンバーとのロケだった。
76 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:04
久しぶりのベリーズメンバーとは一緒じゃない仕事だ。
以前の梨沙子だったらメンバーと一緒じゃないと不安からか
変に緊張して苦手だったが、今ではそんなことはなくなった。

かえって冷静に落ち着いて自分のことを振り返れることができるように思う。

近頃の自分は雅のことで無駄にヒートアップして周りが全然見えていない。
その一番の被害者は間違いなく桃子だ。
桃子は口に出しては何も言わないけど、みやについての無理な相談を繰り返す梨沙子に
相当困ってる違いない。

それでも梨沙子にしてみれば、歌やダンスのことだったら他のメンバーでも相談するけど、
こういう個人的なこと、しかも雅に関することを相談できるのは桃子以外にはいない。

桃子はどんなことでも梨沙子を突き放すことは絶対言わない。
だからいつからか桃に頼りすぎるようになってしまったと梨沙子は反省した。
77 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:05
梨沙子はふと昔のことを思い返した。
以前は、雅に関することでも愛理によく話していたなと思う。
最近の梨沙子は愛理には雅のことを相談しなくなった。

でも愛理と喧嘩したわけでも愛理のことが嫌いになったわけでもない。
そもそも愛理には梨沙子が嫌いになるような要素は何一つもなかった。
きっと今、目の前に愛理が現れたら何のわだかまりもなく仲良くはしゃぐと思う。

でも、たった一つ昔と決定的に変わったのはもう二人とも子供じゃなくなったということだった。
78 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:07
梨沙子にとって愛理はいつもひょうきんで、目を合わせるごとに変顔をしたり
ダジャレを言ったりいつも一緒にふざけあっていた。

今の愛理も基本は同じだけど、時々はっとするくらいきれいだなと思うことがある。
そして昔と同じように愛理にふざけて話しかけるのを躊躇してしまうような時があった。

梨沙子は愛理に対して単に対抗心をもっているというよりは愛理にどう接したらいいのかわからないという気持ちもある。
そして昔に比べて大人っぽくなった愛理の姿を見ていると自分も変わらなきゃいけないと何か焦りを感じてしまうのだ。

愛理がどんどん成長して雅や他のメンバーと交流を深めて先に走っていく中で自分ばかりが昔のままのような気がしていた。
79 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:08
バスは大きくハンドルをきって緑に囲まれた広大な駐車場に入った。

今日はハロー!チャンネルという雑誌の企画で横浜にある公園のコンビニで、
一日店員を体験することになっていた。

人見知りする梨沙子はその企画の中身より、一緒にやるメンバーのことのほうが気になった。
今日は梨沙子のほかにあと二人来ることになっている。
一人は℃-uteの萩原舞、もう一人はモーニング娘。の道重さゆみだった。
80 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:13
舞はハロプロキッズのときから同期で仲はいいけど、
一対一で長い時間話したことはほとんどない。
道重さゆみはモーニング娘。の6期メンバーで、
Berryz工房より1年早く2003年にデビューした。

ただ活動歴としては2002年からキッズとして活動している梨沙子達の方が長く、
少し微妙な関係だった。

モーニング娘。はグループ自体がBerryz工房の先輩にあたるし伝統もある。
さゆみからは先輩じゃないからさゆって呼んでと言われたけど、
ベリーズメンバー誰一人そんな呼び方はしない。
梨沙子は、さゆみのことは年も上だし完全に先輩だと思っていた。
81 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:15
梨沙子は愛理を例外にして ベリーズ以外でそこまで仲がよいメンバーはいなかった。
というよりベリーズメンバーとの絆があまりにも深くて、
ハローの他のメンバーとは仲良くはなれてもそのレベルまで追いつけるような人がいなかったのだ。

だから梨沙子はベリーズ以外のメンバーとはどうしても距離を感じてしまい、
いつも慣れるまでは緊張してしまう。

特に今回は道重さんは年齢も上だし先輩だから気を使わないといけないと思う。
そしてモーニング娘。は何といってもハローの看板グループでもあり、
リーダーの道重さゆみはその中でも一番有名なエース的な存在だった。
82 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:16
バスを降りると二人が横に並んで立っていてこっちに手を振っている。
梨沙子が急いで二人のところに駆け寄る。
舞はベリキュー対決で見慣れていたが久しぶりに見る道重さゆみは、
あまりにきれいすぎてまるで人形みたいだなと梨沙子は思った。
でも二人は気持ち悪いくらいにたにたした顔をして梨沙子を迎えた。
 
「やっぱ本物半端なく可愛いね」
 
さゆみが笑いながら舞を向いて言う。
 
「ですよね。ほんっとに私も可愛いと思います」
 
舞が言った。
 
梨沙子は二人が何を言っているのか分からなくて舞の顔を見た。
83 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:18
「いや、道重さんが梨沙子のことむちゃくちゃ好きで、
 今日も一緒に来る途中、本物に会えるってずっと騒いでて」
 
舞が笑顔で説明する。
二人は同じバスで現場に入ったみたいだ。
 
「梨沙子ちゃんて本当に見れば見るほど可愛い」
 
さゆみが目を細めて梨沙子に言う。
 
「そんなことないですよ」
 
梨沙子は自分のことを褒めてくれていると分かって慌てて否定した。

道重さんはBerryz工房のことをすごく好きで、
なかでも梨沙子を一番押してくれているという話はよく聞いてはいた。

ただ道重さんはバラエティ番組の毒舌キャラのイメージが強くて、
本当にそう思ってくれているのかずっと疑問だった。
84 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:24
「本当ハローの中ではね。梨沙子ちゃんが一番好き。
 今日も朝、梨沙子ちゃんに会えると思ってさゆみ、
 めちゃくちゃテンション上がっちゃって」
 
さゆみは、カメラも回っていないのに声を裏返して話し続けた。
 
「さゆみね、梨沙子ちゃんの小学校時代の画像を携帯の待ちうけにしてたことがあったの。
 まあ今は二十歳を過ぎた女が小学生の女の子の画像待ち受けにしてるのもどうかと思って、
 変えてるんだけど」
 
さゆみは携帯からさっと梨沙子の画像を取り出して見せた。
梨沙子は携帯の画面に自分の写真をが間違いなくそこにあるのを見てまず驚いた。

まだ顔も本当に幼くて本当に小学生のときの自分の写真だった。

そしてさゆみの写真のフォルダの中には梨沙子の画像が、
ものすごい数並んでいるのを見て思わず息を飲んだ。

自分の写真なのに何か見てはいけないものを見てしまったような気がした。
85 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:26
「検索でね。菅谷梨沙子って打ち込んで画像を探すの。
 で気に入った画像があったら落としてくるの。たまにやってる」
 
さゆみが携帯の画面をスクロールさせながら言った。
 
「まじですか?」
 
さゆみの行動は梨沙子の想像以上だった。
さゆみが梨沙子が一番を好きだっていってくれてるのはキャラとかじゃなくて、
全部本当なんだとはっきり分かった。

でも道重さゆみは人気も実力もあってハロープロジェクト全体を引っ張っている人だ。

そんな人が、自分の写真を集めたり自分に会うというだけで朝からテンションが上がるなんて梨沙子には信じられない。
86 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:29
梨沙子はみやに憧れてる。だけどみやの画像を携帯の待ちうけにするなんて、恥ずかしくて絶対にできない。
道重さんはテレビでは毒舌キャラだったり腹黒い人と言われていたけど、案外正直なひとなのかもしれないと思った。
 
梨沙子が道重さんのほうが可愛いですと言うとさゆみはすごく照れて笑った。
裏表のない笑顔を見てさゆみは思っていたよりもずっと話しやすい人だと思った。
87 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:30
三人はコンビニの青いユニフォームに着替えると、一番似合っていたのは舞だった。
 
「本当にバイトの女子高生とかでいそう」
 
「私、舞ちゃん目当てで通うかも」
 
道重さんがにこにこして言って三人は一気に打ち解けていった。

午前中は掃除から商品を並べたりから揚げを作ったり盛りだくさんだった。
元々こういう仕事は梨沙子は得意ではない。
でも三人でやるので梨沙子も何とかこなした。
さすがに一番年上のさゆみがみんなをしきっていろんな仕事をこなしてくれた。
88 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:32
そうこうしている間にお昼の休憩になった。
その頃には梨沙子もすっかり溶け込んで三人での仕事を楽しみながらできるようになっていた。
そして三人はコンビニの休憩室でお弁当を食べることになった。
 
お弁当を食べながら一息つくと話はだんだん歌とかお芝居などの仕事の話になる。
三人ともグループが違うのでお互いどんな感じなのか興味津々だった。
 
「梨沙子ちゃんはベリーズで最年少でしょ。それでほとんどの歌でメイン歌ってるっててすごいよね」
 
さゆみが感心したように言う。
 
「うん。ほんとすごい。舞も梨沙子はすごいと思う」
 
舞も強く同調して言った。
89 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:37
「そんなことないですよ。メンバーにはいつも助けてもらってるんで。
 それより道重さんのほうがテレビとかたくさん出ててすごいんじゃないですか」
 
梨沙子はバラエティ番組で活躍しているさゆみのことを思い出して言った。
 
「テレビは出てるかもしれないけど・・・ね、聞いてくれる?
 私、正直ね。歌割が少ないの」
 
さゆみが深刻そうに言った。
歌割りはグループで一つの歌を歌う時の歌詞の割り当てで、歌割りが少ないとは
自分がメインで歌える場所が少ないということだ。
 「え?そうなんですか?」
 舞が驚いた様子で言った。梨沙子も道重さんはモーニングではあくまでメインの人だと思っていたから意外だった。
90 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:39
「とにかくつんくさんがね。あたしに歌割くれないの 。
 まあ私の歌が下手なのか、まあぶっちゃけ下手だけど」
 
今度は妙にさばさばした感じでさゆみが言う。
 
「ま、私がたくさん歌うことがモーニング娘。全体にとってよくないという大人の判断なんだけどね」
 
さゆみがあまりにはっきり言うから梨沙子は笑ってしまった。
 
「でも道重さん、歌割少ないとはいえあるんですよね?」
 
今度は逆に舞が颯爽と話し始めた。
 
「だって歌割りはあるでしょ?普通に」
 
「いやないですよ。普通に」
 
舞が毅然とそう言って梨沙子とさゆみはびっくりした。
91 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:40
 「道重さん、歌割あるだけいいですって。舞なんてステージのはじで踊ってるだけですから」
 
舞があまりにもはっきり言うからさゆみと梨沙子は思わず噴出した。
 
「うそでしょ。舞ちゃんこれだけ可愛いから人気もあるし、メインで歌ったりするんじゃないの?」
 
さゆみが言った。
 
「だからそれは違うんですって。℃-uteもちゃんと大人の事情ってもんがあるんです」
 
舞がいかにも自信ありげに言った。
92 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:41
「まずとにかく℃-uteで圧倒的に人気があるのは断然に愛理です。
 ライブでも愛理のパフォーマンスのときのファンの人の声の量が全然違うんですよ。
 舞のときと」
 
舞の言い方が悔しいというよりも、自分をわざわざ落として言っているみたいでおもしろかった。
道重さんも楽しそうにくすくす笑っていた。
 
「確かに愛理ちゃん、めちゃくちゃ可愛いもんね。人気あるのは分かる。
 でも、モーニングでもすごいれいなとかは人気があったりするけど。
 あんまり意識はしなくない?
 それに舞ちゃんのファンもいるでしょ?」
93 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:43
「舞のファンの人もいますけどそれがちゃんと数字で出るんですよ。
 ブログで舞がどれだけおもしろいこと考えて書いてもコメント数は
 絶対300はいかないんですよ。
 でも愛理は、全然おもしろくないダジャレを連発したとしても500はいきます。
 え、そのダジャレでこのコメント数?とか正直思いますもん」
 
「すごいね。そういうところまでちゃんと見てるんだ」
 
道重さんはそう言いつつ舞の自虐トークが相当ツボにはまったようで笑い続けていた。
梨沙子も舞がこんなにおもしろいとは思わなかったので、
舞の新しい一面を発見できたと思った。

ただ愛理の人気がすごいということを改めて聞かされたようで少し焦りも感じた。
いくら人気をとられてると言っても舞にとって愛理は同じグループの仲間だ。

だけど梨沙子にとっては℃-uteはライバルグループで愛理はそのセンターにいるのだ。
94 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:45
「愛理ちゃんて、歌めちゃくちゃうまいし、迫力あるけどしゃべると話すとほんわかしてて天然でさあ。
 ギャップがあるのが可愛いよね」
 
さゆみが梨沙子を見て言った。
 
「そうなんですよ。だからうちは天然が多くて本当に困るんです」
 
舞が言った。
 
「あ、そっか。リーダーの矢島ちゃんも結構天然だもんね」
 
「でうちは、愛理と舞美ちゃんが天然で、なっきぃはヘタレだし、千聖はバカじゃないですか。
 だから舞がしっかりしないといけないんです」
 
「そうだね。℃-uteそう考えるとやばいね。だけど楽しそう。℃-ute最近きてるね」
 
道重さんは他のグループの話でも本当に興味津々でハロープロジェクトが本当に好きなんだなと梨沙子は思う。
95 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:48
「梨沙子ちゃんは愛理ちゃんとずっと仲良しだよね?」
 
さゆみが当然のことのように聞いてきた。
 
「はい。キッズのときからの仲なんで」
 
梨沙子は答えた。
 
「でも愛理ちゃんて天然だけど頭もいいでしょ。スマイレージにいた前田憂佳ちゃんとちょっとイメージ似てるよね」
 
「あ、そう言われればそうかもですね」
 
梨沙子は咄嗟に答えたが、考えてみれば梨沙子は憂佳とは直接話したことはあまりなかった。
96 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:50
ただ梨沙子の中では憂佳と愛理のイメージはだいぶ違う。

確かにファンから見れば天然でダジャレ好きで、でも他のメンバーにはちゃんと気を使ったりする部分は似ている。
でも中身が根本的に違うと思う。
ただ何が違うのかと言われるとそれを言葉で表現することはできなかった。
 


コンビニでの1日体験も無事終了し、現地解散となった。
舞とさゆみは東京方面なので、そのまま会社のバスに乗って帰っていった。
 朝、どんよりと曇っていた空はすっかり晴れ渡り、すがすがしい秋の気配がそこらじゅうに立ち込めていた。
97 :時風 梨沙子 :2012/06/09(土) 22:52
梨沙子は舞とさゆみと仲良くなることができて、充実した一日を過ごすことができたと思う。
今日一緒にいて舞とさゆみのイメージはかなり変わった。
特に自虐ネタの舞の話は今思い出しても笑えた。

ただ舞は自虐するほど愛理のことを本当にすごいと思っているんだなと改めて思った。
愛理とは最近連絡をとりあえていないのに、何故か愛理の存在がどんどん大きくなっている。

まるで梨沙子の行く手を邪魔するみたいに、鈴木愛理と言うライバルの存在が大きく立ちふさがっているように思えた。
98 :ES :2012/06/09(土) 22:53



今回の更新を終わります。
かなり読みにくい部分もあり、すいません。。
99 :時風 梨沙子 :2012/06/16(土) 15:30
「すっごい可愛いと思うよ。梨沙子に会うのがどきどきしてすごい楽しみだった!」
 
雅が梨沙子の顔をまじまじと見つめて言った。
 
「愛理から梨沙子が髪の色変えたって聞いてたから」
 
そして次に雅から聞いたのはこの言葉だった。

梨沙子の頭の中で、「愛理」という単語が反芻される。

雅に褒められて単純に嬉しい気持ちもあった。
でも愛理の名前が出てきたのが、どうしてもひっかかって素直に喜べない。

というのも梨沙子が髪の色を変えてから雅に会う前に、愛理とは一度も会っていないのだ。
100 :時風 梨沙子 :2012/06/16(土) 15:32
「えー?愛理とは会ってないんだけど」
「スタジオかどっかで見かけたんじゃないの?」
 
雅は全くそんなことは気にしないみたいに言った。
 
移動中のバスではベリーズメンバーはセクシーとか可愛いとか、
ひとしきり梨沙子の髪の色の話題で盛り上がった。
梨沙子はあんまり人から褒められることが得意ではない。
だから照れてしまって、胸が浮いたような落ち着かない気分でいっぱいだった。

だから梨沙子はさっきから下を向いてずっと携帯をいじっている。
ただベリーズのメンバーに言われることは他の人とは違う温かさがあった。

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