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Only you ― その笑顔のために【最終章】

1 :雪月花 :2011/12/24(土) 23:16
こんにちは、雪月花と申します。

亀井さん、田中さんが主軸の『Only you―その笑顔のために』のつづきになります。
前スレはこちらです
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/water/1315098208/

本スレは急に最終章の途中から始まっていますので興味のある方は前スレからお読み下さい。
無駄に長いうえに駄文ですが、お付き合いいただけたら幸いです。
2 :Only you :2011/12/24(土) 23:21
ふたりの泊まることになったホテルは駅から徒歩15分ほどの場所にある小さなビジネスホテルだった。
素泊まりでダブルベッド、温泉に入りたいという絵里の願いを叶えることはできなかったが、こんな祝日に観光地で宿泊できることにふたりは感謝した。
夕食を済ませたふたりはホテルへチェックインし、交互にシャワーを浴びた。

彼女の浴衣姿を見るのは、いつだったか、さゆみの予約したビジネスホテルに宿泊したとき以来だ。
女性は、和服を着るとその可愛さが倍増すると言うが、あれは事実らしいとれいなはその身をもって自覚した。
絵里の浴衣姿はよく似合う。ビジネスホテルにあるような浴衣でもそうなのだから、普通の赤やオレンジ、紺色の浴衣はもっと似合うのだろうなとれいなは思った。
来年の夏は、地元の小さな花火大会にでも良いから参加したいなとぼんやり考えた。
来年……いや、来る、絶対にその日は来ると、急に弱気になりそうな自分を奮い立たせてれいなは言った。

「次はもっと良い旅館に泊まるっちゃん」

れいなは絵里の浴衣姿に見とれながらも、そう話を振った。

「れーなオススメの宿?」
「ちょっと奮発して素敵な旅館に泊まるっちゃん。夕食も超豪華にして。海鮮盛り合わせとか」

髪を乾かし終えた絵里は、ベッドに座るれいなの横に座り、「楽しみにしてるね」と微笑んだ。
3 :Only you :2011/12/24(土) 23:21
だが、それきり、会話が途切れてしまった。
急に、なにを言えば良いのか、分からなくなってしまった。
なにを言っても、どう足掻いても、絶望的な結末しか見えなくて、れいなは迷う。
迷うな、止まるな、進め、走れ。いつだって、いつだってれなはそうしてきたじゃないかと思うのに、此処まで来て、れいなは初めて足踏みした。
確かに甘い空気が流れているにもかかわらず、れいなの心は暗かった。

絵里はボンヤリと窓の外を見ていたが、なにかを思い立ったように立ち上がり、部屋のドアの方へと歩いた。

「絵里…?」
「…ちょっと、出てくるね」

れいなが迷ってなにかを言う前に、絵里は廊下へと歩いて行った。
ちょっと出るって、何処に?
こんな夜中に?
こんなに雪が降って寒いのに?
4 :Only you :2011/12/24(土) 23:22
「いやいやいや!」

れいなは思考を戻して慌てて絵里と自分のコート、そしてマフラーとホテルの鍵を掴み、廊下へと出た。
鍵をかけて足早に絵里の背中を追うと、絵里はエレベーターを待っていた。
れいなはそんな絵里の横に並び、そっと肩にコートをかけてやった。絵里は「ありがとう」と言うとマフラーも受け取り、そのままエレベーターに乗り込む。

「雪、見たいの…」

フロントへとエレベーターが降りていく中、絵里はそっと呟いた。
れいなも自分のコートに腕を通しながら絵里を見つめるが、その言葉の真意が掴めなかった。
絵里は曖昧に笑うと、フロントを無視して外へと歩いて行く。れいなはフロントに「ちょっと買い物」と伝えると、支配人は軽く頭を下げ「行ってらっしゃいませ」と呟いた。
5 :Only you :2011/12/24(土) 23:22
---

6 :Only you :2011/12/24(土) 23:23
日光の夜はとても寒かった。
コートの下は1枚の浴衣しか着ていないのだから、当然といえば当然かと思いながられいなは真っ暗な夜空を見上げた。
先ほどよりも強くなった雪が絵里とれいなの上に舞い落ちる。

そういえば、最初に絵里とキスを交わしたあの日も、こんな風に雪が降っていたなとれいなは思い出した。

絵里をちらりと見ると、彼女もまた呆然と、街を白く染める雪をただ見つめていた。

ああ、いま、彼女はなにを想っているのだろう。
7 :Only you :2011/12/24(土) 23:23
雪は不思議だ。
音もなく静かに降り積もり、街の色も空気も変えてしまうのに、手の平の温もりに触れてしまえば、一瞬にして溶けてしまう。
ほんの一瞬の生命を散らすその切なさが、人の心を捉えて離さないのかもしれない。

雪を黙って見つめる絵里は、単純に美しいのだけれど、怖かった。
白い天使として地上に舞い降りてきて、街を美しく染めるのだけれど、地面に落ちれば一瞬で消えてしまうその雪の生命が、瞬間、絵里と重なった。
そんなことはない。絶対にそんなことはないとれいなは言い聞かせるように頭を振る。違う、絵里はそんな儚い存在なんかじゃない!
8 :Only you :2011/12/24(土) 23:24
「絵里もさ、消えちゃうのかな…」

絵里の声が闇夜に響いた。白の吐息とともに空気を震わせた音は、れいなの心を射抜く。

「この雪みたいに、あっさりとさ」

れいなはそこで、唐突に理解した。

ああ、不安なのは絵里も一緒やっちゃん。
そんなの分かってはいたことだけど、直接聞くのが怖かったんだ。
絵里の未来。これからの未知なる道。進む先に見える暗闇は出口までも覆い隠すから、不安で怖くてしょうがない。
心臓に抱えた時限爆弾。いつ破裂するかも分からないそいつがあるから、絵里は生きていくことを怖がってしまったんだ。

だけど、だけどね絵里―――

れいなは横に並んだ絵里の左手をぎゅっと握りしめる。外気にさらされて冷たく悴んでいたけれど、確かな温もりがそこにある。
9 :Only you :2011/12/24(土) 23:24
「雪はさ、確かに落ちて消えるもんっちゃん」

言葉を選ぼうとか、なにか伝えようとか、そういう想いはなかった。ただれいなは、此処にある気持ちを素直に口にした。口下手やけん、どうか、どうか聞いて。

「でも、そんな寒い冬を越えて、温かい風が吹いて春が来るっちゃん」

れいなは知っている。
雪が舞い降りて溶けて、その冬の厳しい寒さを知らないと、春は来ないことを。消えそうになりながらも、小さい蕾は確かに存在していることを。

「春にピンク色の桜が咲き誇って、風に乗って舞い落ちて、そして夏の太陽が輝くっちゃん」

れいなは知っている。
“春の雪”とも呼ばれる桜はその瞬間に輝き、生命を散らしたあと、それを受けて夏の太陽は天井に居座って高く輝くことを。

「そしてギラギラしとぉ太陽を、秋の風が涼しくしていくやん」

れいなは知っている。
夏のあの暑さを忘れさせるような秋風は、人をもの哀しくさせ、それと同時にどうしようもなく優しくさせることを。

「風とともに紅葉が落ちて、また空からは冷たくて綺麗な雪が舞い降りるっちゃん」

れいなは知っている。
赤や黄色く色づいた葉が風に舞い、柔らかい夜は徐々に寒さを増し、雪白の月と星が夜空に輝き、再び雪が世界を覆うことを。
10 :Only you :2011/12/24(土) 23:25
「全部全部、消えるんやなくて、次の季節に逢うための約束っちゃん。そうやって、季節は巡っていくと」

れいなは知っている。
それは変わることのない世界の法則であることを。
ひとつの季節も時間もとどまることはなく、ゆっくりと巡っていく。絶えずそうして世界は巡り、色を変えながら時間は過ぎ去っていく。
瞬間を切り取ることはできても、時間は止まることなく前へと進む。まるい地球はずっと回り続ける。
それがたったひとつの、世界の法則。

小難しいことは言わんよ絵里。
ただ季節は巡るってだけやけん。
だから、だからさ、絵里―――
11 :Only you :2011/12/24(土) 23:25
「消えるとか、消えるとか言わんで……」

お願い、お願いやけん、信じて。
あなたは此処で消えたりなんかしない。
あなたはきっとずっと生きられる。
これから先、なにが起きてもふたりで一緒に生きていけるのだと。
どうか、どうか、信じて―――。

「愛しとぉよ、絵里。ずっと、ずっと愛しとぉ……」

れいなは絵里を正面から抱きしめた。
雪にまみれて冷たくなった体は、一瞬にして温もりに包まれる。
12 :Only you :2011/12/24(土) 23:26
「っ…れーなぁ……れーなぁっ!」

真っ直ぐなんだ、どこまでも。
れいなは迷っても立ち止まっても、ときに挫けてその膝を折ったとしても、必ず立ち上がってまた歩き出す。
自分が強くない子どもだとれいなは知っている。その子どもであるが故の無茶苦茶な自由さも、思い通りにならない不自由さも知っている。
しかし、だからこそ、此処に在る単純な絵里への想いだけを貫こうとしている。
いつだって、いつだってれいなはそうだ。
世界でただひとりの絵里のために、心から想う絵里のその笑顔のために、れいなは走ってくれる。

「絵里……絵里…絵里っ!」

ただ、ただれいなは絵里に生きていてほしかった。
手術成功の確率が40%だとしても、手術をしない場合の生存平均年齢が19才だろうとしても。どんな形でも良い、ただ生きてほしかった。
次の季節も、その次の季節も、またその次も。来年も再来年もその次の年も、ずっとずっとずっと。
春に咲く見事な桜も、夏に輝く暑い太陽も、秋に吹き抜ける優しい風も、冬に輝く雪白の月も、
あの空の色を、あの風の声を、あの鳥の囀りを、あの光の屈折を、
ずっとずっと、あなたとふたりで見て、聞いて、感じていたいから―――。


小さなふたりのささやかな願いは、白い吐息とともに空気に溶けて、消えていった。
13 :Only you :2011/12/24(土) 23:26
---

14 :Only you :2011/12/24(土) 23:27
絵里とれいなは手を繋いだまま、部屋へと戻った。
暖房の利いた部屋は一瞬でふたりを暖め、コートをあっさりと脱がせてしまう。

「れーな…」
「うん?」

コートとマフラーをハンガーにかけ、振り返ったその瞬間、れいなは絵里に右腕を引っ張られ、そのままベッドへとダイブした。ボフっという音とともにベッドが軋む。
れいなが驚いているのも束の間、絵里は両手で頬を包み込んでキスをした。合わせるだけのキスはあっさりと深くなり、ふたりはどちらからともなく舌を絡めて相手を求めた。

「ふっ…んっ…」
「えりっ…絵里ぃ……」
「あっ…れー…なぁ…れーな…」

もう数え切れないほど交わしたキス。なんど口付けを交わしても、あなたにもっと触れたいという欲望はおさまらない。
際限のない欲望を、願いという名前で誤魔化してはいても、結局根底にあるのは、あなたに触れたいという気持ち、ただそれだけだった。
互いの名を呼びあって長いキスが終わると、絵里は照れたような顔をして笑った。
れいなが優しく笑って絵里の髪をそっと撫でると、絵里は一瞬の間を置いて口を開いた。
15 :Only you :2011/12/24(土) 23:28
「手術、受けるよ」

その言葉にれいなは目を見開く。
絵里は真っ直ぐにれいなを見つめ返す。その瞳は、何処までも真っ直ぐで、何処までも強い。大きな瞳はもう、揺れていない。

「ずっと、怖かったの。手術中に目が覚めなくて、死んじゃうことが怖いんじゃなくて…」

絵里はれいなに両腕を伸ばし、れいなの顔を引き寄せて囁いた。

「れーなに逢えなくなることが怖かったの」
「絵里……」
「れーなに触れられなくて、キスできなくなるのが怖かったの」
16 :Only you :2011/12/24(土) 23:28
此処にある確かな温もり。
何物にも代えることが出来ない優しさに、もう逢えなくなってしまうことが怖かった。
このシアワセを手放してしまうことが、不安でしょうがなかった。

「だけど、やっぱりこれからもれーなと生きていきたいの。一緒に笑って、いろんな世界見て、一緒に走ったり、サッカーもしてみたいの」

それは、あの日、空港でワタナベに叫んだ言葉だった。
れいなという人に逢えた奇蹟。好きな人とともに未来を歩んでいきたいという決意。そのために絵里は、未知なる路へ足を踏み出そうとしていた。

「晴れた日には手を繋いで。雨の日には傘をさして。こんな雪の日でも、ずっとれーなと歩きたいの」

絵里は真っ直ぐにれいなを見つめて伝える。
それは最後にして最大の決意。此処へ辿り着くまでにどれだけ遠回りしてきたのだろう。
だけど、絵里は揺るがない気持ちを抱いた。
いつでも真っ直ぐに愛をくれるあなたに、真っ直ぐな想いで応えたかった。

「絵里…」

れいなが不安そうな瞳で絵里を見つめる。生きてほしいという願いは同じだから、れいなは迷う。
だが、絵里はそんなれいなの声を聞いたのか、想いを掬うように軽くキスをして、言葉を紡いだ。
17 :Only you :2011/12/24(土) 23:29
「れーなが絵里に教えてくれたんだよ?」
「え?」
「なにも知らなかった絵里に、れーなは教えてくれたの」

れいなは絵里に教えてくれた。
生きる喜びを、前に進む勇気を、立ち止まらない強さを―――

れいなは絵里に教えてくれた。
朝の光の眩しさも、透き通る風の心地良さも、天に広がる空の青さも、人の心の優しさも、流す涙の痛みも、零れる笑顔の美しさも、この胸を焦がすような恋も。

れいなは絵里に教えてくれた。
交わすキスの切なさも、触れられる愛しさも、確かに此処に存在する、あなたへのどうしようもないほどの想いを。
同性とか異性とか、そんなものを簡単に飛び超えてしまうほどの気持ちを。
それが、愛だってことも。

全部、全部、絵里が知らなかったことを、見ようとしなかったことを、本当に大切なことはなにかを教えてくれた。

だから絵里は迷わない。
またあなたに逢うために、絵里はいま、怖がりながらも歩き出すから。
18 :Only you :2011/12/24(土) 23:29
「絵里、こう見えて嫉妬深いし、我儘だから、手術成功しちゃったられーなのこと振り回しちゃって大変かもだけどね」

れーな。いま、ようやく気づいたよ。

私、こんなにれーなが好きだったの。
れーなに逢うまで、「常識」とか「当然」とか、そういった世間の考えに凝り固まっていたのに、いつの間にか、ただ単純に想いを貫こうとして一歩、踏み出したの。
こんなに人を好きになるなんて思ってもみなかったの。

ねえ、れーな。れーなのおかげだよ。
れーなを好きになって、れーなのことを想って、れーなの温もりを感じることがこんなにもシアワセなことだって、絵里、知らなかったから。
19 :Only you :2011/12/24(土) 23:30
そうして絵里は「うへへ」とだらしなく笑った。
その笑顔が、あまりにも美しくて、だけど切なくて、胸がぎゅうと締め付けられたれいなはなにも言えなくなり、思わず口付けた。
触れるだけのキスは甘く、それなのに何処か、しょっぱかった。

こんなにも真っ直ぐに愛してくれている。その気持ちが痛いほどに伝わる。
生きたいという願いが、ただ隣で笑っていたいという想いが、れいなと絵里をふわりと優しく包み込む。

「…れなの人生も、れなの持ってるもんも、全部、全部、なんもかんも絵里にやる」

れいなはそう言うと、絵里を強く強く抱きしめた。
もう二度と、離さないように、たったひとつの隙間も埋めるように抱きしめる。

「絵里が此処に居てくれるっちゃったら、なんもいらん。だから、だから…」

体も声も、涙で震えてしまっていたけれども、れいなは必死に言葉を紡いだ。

「れなと一緒に生きてほしいと、絵里―――」

涙で滲んだその声はとても小さくて、だけどとても強いもので、絵里は真っ直ぐに受け止めて「うん」と答えた。
絵里のその答えもまた、涙で滲んでいた。

成功の確率とか、生存平均年齢とかどうでも良い。
此処に在る願いを、どうか掬い取ってほしかった。
傲慢な願いか、身勝手な欲望かと言われても構わない。好きな人の人生を祈ることが罪だというのならば、甘んじて罰を受けよう。それだけの覚悟はある。
だから、どうか、どうか彼女を助けて下さい。
れいなは絵里の生きている温もりを確かめるように、彼女を強く抱きしめた。
20 :Only you :2011/12/24(土) 23:30
---

21 :Only you :2011/12/24(土) 23:31
「れーなぁ…」

電気を消し、絵里を抱きしめながら眠るれいなの耳に、絵里の甘い声が入って来た。れいなはもぞもぞと動く絵里を見つめた。

「……引かないでね?」

絵里が弱々しくそう囁くので、れいなは抱きしめた腕の力を弱め、できるだけ優しく「うん?」と返した。

「もし、絵里の手術成功したらさ」
「うん」
「……絵里と、絵里と…えっち、して……くれる?」

最後の方はもう、聞こえるか聞こえないかくらいの声量だった。
絵里の発したその言葉に、れいなは目を丸くして絵里を見つめた。絵里は自分で言って相当恥ずかしいのか、顔を真っ赤に染めて暴れ始めた。

中学生のとき、体育倉庫で襲われかけた絵里が、自らそんなことを言うなんて思ってもみなかった。
それだけ絵里が、れいなを好きでいてくれているということがその言葉から伝わった。
苦しみと痛みの過去を乗り越えてれいなと前に進もうとしているのだというなら、れいなはそれに応えたくなった。
だけど絵里に言われた言葉を噛み砕いたらどう考えたってれいなも恥ずかしい。絵里の姿は愛しいのだけれど、赤面するのをおさえることはできない。

いつだったか、彼女の病室で見た上半身を思い出した。
余計なぜい肉などひとつもついてない真っ白な肌は何処までも綺麗だった。彼女のすべてを明らかにしたいと、唐突に思った。
いやいや、そんなことヘタレな自分にできるわけないと思いながらも、照れ隠しのようにれいなは「ニシシ」と笑った。
22 :Only you :2011/12/24(土) 23:31
「なんならいますぐでも良いっちゃよ?」
「っ…ばかぁ……」

耳元に近づいてれいながそう囁くと、絵里は肩を荒々しく叩いた。
おいおい全然容赦ないんだなとれいなは苦笑しながら、絵里の叩く右腕をつかみ、軽くキスをした。

「手術成功したらするっちゃん」
「……ほんと?」
「ほんと」

そうしてれいなは再びその耳元で「だけん覚悟しちょって」と呟くと、絵里は顔を真っ赤にしながらも、「うへへぇ」と笑った。
もう、ふたりに涙は流れていない。
23 :Only you :2011/12/24(土) 23:32
「れーなぁ…」
「んー?」
「うへへぇ、呼んだだけぇ」

む。なんだその小学生みたいな遊びと思いながらも、れいなは怒ることなく、優しく微笑んで絵里の頭を撫でる。さらさらした絵里の髪からは良い香りがした。

「絵里ぃー」
「うん?」
「呼んだだけっちゃん」
「知ってるぅ」

む。なんだそのリアクションはと思いながらも、れいなはいつものように「ニシシ」と笑う。その笑顔がどうにも愛しくて、絵里も目を細めて笑い、れいなの頬に手を伸ばす。
すべすべで透明感のあるれいなの肌が羨ましくて、絵里はちょんちょんと人差し指で頬を触る。

「なんよぉ」
「んー、なんもぉー」

そうして絵里はクスッと笑い、れいなの首に腕を回しぎゅうと抱きしめた。なんど抱きしめても、なんどキスしても、この胸の高鳴りは消えない。
ああ、絵里、恋してるんだなって感じるよ、れーな。
24 :Only you :2011/12/24(土) 23:32
「れーなぁ」
「んー?」
「好きだよぉ…」

なんの衒いもなく真っ直ぐに出てきた言葉に、れいなはドキッとするが、それでも真っ直ぐに返した。

「れなも、絵里ンこと好いとぉよ」
「うん、絵里も好きぃ」
「ニシシ。れなも好きっちゃん」

照れとか、恥じらいとか、そういうものは一切なかった。
いま、この瞬間にあなたが好きだと伝えることがすべてだと思った。
たった二文字の想いを伝えるために、なんども遠回りをしたけれども、いま、いまこの瞬間、伝えよう。


私は、あなたが、大好きです―――


外の雪は静かに降り続けたが、朝になるまでにはすっかりやんでいた。
朝陽に照らされて雪はキラキラと光った。
それはまるで、ふたりの決意を見守るかのように、何処までも真っ白く輝いた。
25 :Only you :2011/12/24(土) 23:34

26 :Only you :2011/12/24(土) 23:34

27 :雪月花 :2011/12/24(土) 23:36
此処までになります
最終話が近いのでネタバレ防止含めてちょっとだけ隠しました

あと更新も数える程度ですがどうぞ最後までお付き合い下さい。
28 :名無飼育さん :2011/12/25(日) 18:11
あぁ〜結局読みながら泣いてしまいました。T.T
絶対大丈夫、大丈夫だよって信じて
絵里の手術が成功すて二人がもっとシアワセになれるように願います。
そして作者様!エリクリスマス!
29 :名無飼育さん :2011/12/25(日) 21:28
切なく、辛い、胸が痛む状況でありながら、
一方で心が暖まる甘い話にもなっていて、
本当に作者様天才だなって思います!!

れーなの登場シーンがカッコよすぎ!
最後の絵里が可愛すぎo(≧▽≦)o

この話が終わってしまうのは、本当に淋しいですが、
はやく平凡な幸せが2人に訪れますように。
30 :雪月花 :2011/12/26(月) 23:12
年末はホントに忙しいです、雪月花です。
帰省前の最後の更新になりますので、次は年明けです。


>>28 名無飼育さんサマ

いつもコメントありがとうございます!
はわわ、泣いていただいてありがとうございます つД`)・゚・。・゚゚・*:.。
願いも想いも、みんな一緒ですね。ふたりがどうなるか、最後まで見守り下さい。


>>29 名無飼育さんサマ

天才という言葉は勿体なさすぎます…恐縮です、ありがとうございます。
このふたりは作者補正がかかっていますので、ひたすらカッコ良くて可愛いですw
最後まで温かく見守っていて下さい。コメントありがとうございました!


今回の更新は最終話になります。
ふたりの歩んだ軌跡を見守っていて下さい。
31 :Only you :2011/12/26(月) 23:13
12月29日は朝から天に黒い雲が居座り、いまにも泣き出しそうな天候だった。絵里はぼんやりと窓の外を見つめながら、降らないと良いなあと思った。

「亀井さん、そろそろ行きましょうか」

病室に入って来た看護師の言葉に絵里はドキッとしながらも、「はい」と返した。
すぐ傍にいた絵里の両親も心配そうに絵里を見つめるが、絵里は気丈に「だいじょうぶ」と呟いた。
絵里は、看護師たちの持ってきたキャスター付きのベッドに乗せられ、ゆっくりと手術室へと向かった。

「絵里っ…」
「さゆ…」

病室の外には、さゆみや里沙、そして愛が心配そうな顔をして見つめていた。
看護師たちは一礼した後、ゆっくりと絵里を運んでいく。その横に3人は付き添って歩く。

「カメ、絶対だいじょうぶだから、がんばって!」
「うへへぇー、絵里がんばるっ」
「うん。さゆみも信じてる」
「あーしら待ってるからな」

それぞれ励ましの言葉をかけると、手術室に入る直前に「これ以上は…」と看護師に言われ、3人と両親は足を止めた。
最後になにか言葉をかけるべきか悩んでいると、荒々しい音が聞こえてきて思わず振り返った。
32 :Only you :2011/12/26(月) 23:13
「絵里っ!」

そこには、いままさに部活を終えて急行したばかりのれいなが立っていた。
空港に現れたあの日と同じように、息を切らした青いユニフォーム姿のれいなを見て、相変わらず、ヒーローは遅れてくるものだなとさゆみが苦笑していると、彼女は叫んだ。

「れな、れな待っとーけんな!」

手術室の扉が閉められる直前のその言葉は、確かに絵里に届いていたのか、絵里は小さく左腕を上げた。
その指には、れいながあの日にあげたシルバーの指輪が光っていた。

「うん、待っとーとぉ」

絵里の小さくも強い言葉が響いたあと、手術室の扉は閉められた。
ああ、微妙に間違っちょっちゃよ、その博多弁とれいなは一瞬だけ苦笑し、赤く染まった手術中のランプを見つめた。
33 :Only you :2011/12/26(月) 23:14
「緊張、してますか?」

手術台に寝かされた絵里は、ワタナベとT大のアサノに優しく声をかけられた。

「大丈夫ですよ。絶対に」
「…はい」

絵里が精一杯の笑顔を見せると、ゆっくりと麻酔がかかっていき、絵里は瞼を閉じた。
その瞼の裏には、確かにれいなのあの笑顔が浮かんでいた。
34 :Only you :2011/12/26(月) 23:15

ねえ、れーな。

絵里はシアワセだったよ。
れーなに逢ってから、楽しいことばっかりだったから。

絵里はれーなに、何もしてあげられなかったのに、

れーなは絵里に、たくさんのシアワセをくれたね。


れーなはいっつも、絵里の為に走ってくれたね。

れーながボールを追いかける姿、すっごく好きだったよ。



ねえ、れーな。

目が覚めたら。

もう、覚めないかもしれないけど

もう一度、目が覚めたら


35 :Only you :2011/12/26(月) 23:16

12月29日16時33分――― 絵里の手術が、いままさに始まった。


36 :Only you :2011/12/26(月) 23:16
---

37 :Only you :2011/12/26(月) 23:16
「れーな、29日は部活ちゃんと出てね?」

日光から東京へ帰る電車の中、絵里はふとれいなにそう伝えた。
そんなことを言われると思っていなかったのか、れいなは狼狽したが、絵里は気にせずに続ける。

「そんな顔しないで。部活終わってからゆっくり来てくれればいいから」
「で、でもっ…」
「最後の大会もあるんだし、今年こそは優勝して欲しいの。だから、ね?」

れいながなにか言いかけたとき、絵里はその唇を人差し指でそっと塞ぐ。
真っ直ぐな彼女の微笑みに、れいなはなにも言えなくなった。

「そんな寂しそうな顔しないで」

分かっている。自分が此処でこんな顔をすることは、絵里を不安にさせるだけだということが。
なんとか頷いて笑おうとするのだが、どうしても笑うことができなかった。
絵里はれいなの心の声に気づいたのか、ぎゅっと握りしめられている手に、そっと自分の手を重ねた。

「絶対、またお早うって言って。絵里を起こしてね、れーな」

そうして微笑む絵里も、少しだけ瞳に涙が滲んでいた。
ああ、彼女はやっぱり強い。こういうところは、れいなよりもひとつ年上の女の子なんだと実感した。
38 :Only you :2011/12/26(月) 23:17
れいなは強く頷くと、カバンの中から小さな箱を取り出した。
絵里がきょとんとしているのも気にせずに、れいなはその赤い箱を絵里に向ける。

「1日遅れやけん、絵里の、18歳の誕生日に…」

れいなはそっと箱を開けた。
そこには、小さく銀色に輝く指輪がひとつあった。

「誕生日、おめでとう…」

絵里はれいなの言葉に目を見開いたが、直後に細めて嬉しそうに笑った。
れいなは微笑んだ絵里を認めたあと、指輪をそっと、彼女の左手の人差し指に嵌めた。

「薬指には、将来嵌めてやるけん、いまはこれだけな」

れいなが照れながらもそう伝えると、絵里は愛おしそうにその指輪を見つめ、天上にかざした。
全体がシルバーであり、中心に小さな石のついたシンプルなデザイン。そんなに高くもないし、質だって良くはない。
それでも、れいなが絵里のために精一杯の想いを込めてくれたのなら、それ以上のものはなかった。

「ありがとう…れーな…」
「どういたしまして」

そうして微笑む絵里は何処までも綺麗だった。ああ、もう、こんな人の隣いられるなんて、そんなシアワセそうそう落ちてないとれいなは思った。

「なあ、絵里」
「うん?」

だから、何処までも真っ直ぐな言葉を、れいなは渡した。

「生まれてきてくれてありがとう」
39 :Only you :2011/12/26(月) 23:18
その言葉は確かな温もりをもっていて、絵里の心に沁み渡った。
暗くて、寂しくて、なにも楽しくなかったあの日々。れいなに出逢うまで、なんの意味も持っていなかった人生。生まれてこなければとなんども思ったあの日々。
だけどいま、隣に居るれいなのおかげで、絵里の人生は輝き始めた。なんでもない日常の風景が、こんなにもキラキラしているなんて思ってもみなかった。

「れーな…」
「んー?」

だから、何処までも真っ直ぐな言葉を、絵里は返した。

「絵里と出逢ってくれてありがとう」

ずっと陳腐だと思っていた。
あなたに逢うために、なんて、そんなのは幻想で、小説の中の話に過ぎないってずっと思っていた。

でも、いまならハッキリと分かる。
絵里はれいなのために、れいなは絵里のために生まれてきたんだと。
この出逢いは、互いの人生を変えるための、偶然ではなく必然だったのだと。

愛し、愛されるために、此処に居るのだと。
40 :Only you :2011/12/26(月) 23:18
「絵里……」
「れーな……」

愛することは愛されることと同じで、愛されることは愛することと同じだ。
ただそれは、自分の中にある想いを、些細な優しさを、素直な感情を伝えることなんだ。
今日も、明日も、ずっとその先の未来も、あなたが笑っているように願うことが、あなたのシアワセを祈ることが。
この出逢いに感謝することが、あなたの名前を呼ぶことが、あなたをただ信じて生きることが。


人はそれを、“愛”と呼ぶはずだから―――


そしてふたりは笑顔で手を繋いで、藤本総合病院へと向かった。
最後の最後まで、ふたりはその手を離さなかった。
41 :Only you :2011/12/26(月) 23:19
---

42 :Only you :2011/12/26(月) 23:19
19時46分―――
手術開始から3時間以上が経過しているが、大きな動きはなかった。
絵里の両親は黙って椅子に座り、床の一点を見つめていた。母親の方はその両手を合わせ祈っているようにも見えた。
里沙は震えながらも黙って椅子に座り、その肩を愛がそっと抱いていた。さゆみは手術室のランプを見つめ、そっと目を閉じた。
そのとき、廊下をだれかが走ってくる音がし、れいなは思わず立ち上がった。

「亀井さんっ」
「先生…」

その声に両親が立ちあがった。
やって来たのは、朝陽高校の絵里の担任の安倍と元担任のサトウ、そしてOGの美貴であった。
5人はしばらく話したあと、黙って手術中のランプを見つめた。

れいなはふうと息を吐き、椅子に座り直した。

―闘っちょっちゃよな、絵里も…

この扉の向こうで、絵里はたったひとりで闘っている。
絶対に、絶対に逃げてはいけないと、れいなはぎゅっと拳を握り締めた。
43 :Only you :2011/12/26(月) 23:20

なあ、絵里。

絵里はシアワセやったんかなぁ。
れなは絵里を笑顔にできたんかなあ。

絵里に逢ってから楽しいことばっかりやった。

やけんそれは、れなだけやったんかもしれんね。


れなはいっつも、走ってばっかりやったね。

絵里のことを追いかけて、ずーっと走ってばっかり。


だから絵里。

目が覚めたら。

絶対、大丈夫やけん。

もう一度、目が覚めたら


44 :Only you :2011/12/26(月) 23:20
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45 :Only you :2011/12/26(月) 23:21
1時39分―――
手術が始まり、実に9時間が経過していた。
なんどか手術室から看護師が出てきたものの、未だに大きな変化はなく、絵里が出てくることもなかった。
絵里の両親やさゆみたちは、交代で食事を摂ったが、れいなだけはその場から動かず、ただ手術室を睨みつけていた。

「休まないんですか?」

れいなはふと降ってきた声に顔を上げると、そこには絵里の父親が立っていた。
その手にはホットココアが握られており、れいなは素直に「いただきます」と受け取った。

「絵里も、闘ってるんで…」

その言葉に絵里の父親はなんどか頷き、れいなの隣に座った。
プルトップを開け、珈琲を啜ると、父親は「はあ」と深く息を吐いた。
この人もまた、闘っているんだよなと当たり前なことを再認識すると、れいなもホットココアに口をつけた。

「あまり無理はしないでくださいね」
「大丈夫です、れなは」

そう言ったとき、れいなの隣に座って眠っているさゆみの毛布がズレ落ちた。れいなは苦笑しながらも、それを掛け直してやる。
日付はもう12月30日に変わり、手術開始からもうだいぶ時間も経っている。
さゆみをはじめ、里沙と愛、そして美貴も眠りにつき、絵里の母親も疲れた顔で座っている。
安倍とサトウは22時ごろまでいたのだが、年末はなにかと忙しく、どうしても仕事があると、再び学校に戻っていった。
46 :Only you :2011/12/26(月) 23:21
「…少し、良いですか?」

絵里の父親はそう言って立ち上がり、窓の方を指差した。れいなも素直にそれに従う。
そのとき、何処かで雷が鳴った。朝から崩れそうな天気だったが、日を跨いだ直後からとうとう降り始めた。
雪にはなる様子はなく、冷たくて静かな雨がただただ降り続けていた。

「大丈夫ですよ、絵里は」

窓際まで歩くと、父親は唐突に切り出した。

「あの子は強い。いや、強くなったんです。あなたのおかげで」

父親の言葉にれいなは思わず首を振る。

「れなは、なんもしてません…振り回して、迷惑かけて…れなのせいで」

実際、自分が絵里になにをしてやれただろう。
絵里と出逢い、徐々に惹かれていき、付き合うようになって、自分勝手な理由で別れて。
自分の本当の気持ちに気づいて空港で絵里に想いを告げて、また付き合うようになって。
果たして今日の今日まで、自分は絵里になにをしてやれただろう。

「一昨日やって、急に日光に行くなんて…」

ワタナベの言うように、結局は、無理をさせただけなのかもしれない。
体を酷使させて、絵里の生命を削っていただけなのかもしれない。
絵里と一緒にいることで、れいなはいつも笑顔でいられたけど、果たして絵里は、れいなと一緒にいることで、笑顔でいられただろうか?
47 :Only you :2011/12/26(月) 23:21
「あの子はもっと子どもであるべきなんですよ」

れいなの迷った心を見透かしたように、父親はハッキリと言い放った。

「小さい頃から、絵里には制約ばかりさせてきました。
鬼ごっこはダメ。徒競争もダメ。遠足もできればやめてくれ。部活は絶対に禁止。外に遊びに行くにも親の許可が必要でした。あの子は普通の女の子なのに」

窓の外はなにも見えなかった。
それなのに父親は遠くを見つめながらポツリポツリと語る。彼には、いつかの絵里の姿が見えているのかもしれない。

「すべてを諦めてしまったあの子は『大人』でしたが、本来はもっと反抗的な子どもであるべきなんです。逃げたかったら逃げても良いはずなんです」

いつだったか、絵里の家からの帰りの車中で父親に似たようなことを言われたことを思い出す。
それは、絵里を『大人』にしてしまった自分たちへの後悔と、『子ども』に戻してくれたれいなへの感謝の気持ちが入り混じった言葉だった。

「れいなさんが勇気をくれたんですよ。本当の意味で、“生きる”勇気を」

そうして父親はふっと笑った。
その表情は、やっぱり娘の絵里にそっくりだった。
それでも、父親のその拳は握りしめられ震えていたので、れいなは黙って頷きながら窓の外を見つめた。
相変わらず窓を雨が叩く。いつまでも降り続くその様子は、絵里の心そのもののようだった。
48 :Only you :2011/12/26(月) 23:22
3時10分―――
遂に手術開始からもうすぐ12時間を経過しようとしていたが、まだ赤いランプが消えることはなかった。
成功確率が40%以下という時点で難航することは覚悟していたが、此処まで長時間に及ぶとは想像していなかった。
れいなもなんどか、心臓手術に関してインターネットで検索したことがあるので、素人ながらにある程度は理解できている。
あまり時間が長引くことは、決して良いことではない。特に、絵里の心臓は弱っているのだし、長時間になればその体力も危うい。
此処まで来ると、もはや最後は精神力の勝負かもしれない。最後は、絵里の生きたいという想いの強さが成功か失敗かを担っているのかもしれない。

れいなは溜息を吐いて手術室を睨みつける。
既に起きているのは、父親とれいなしかいないが、ふたりとも一言も発しないまま、ただ黙って手術が終わるのを待っていた。
あの赤いランプが消えたとき、絶望じゃなく、必ず希望が見えるはずだと、れいなは信じていた。
49 :Only you :2011/12/26(月) 23:23

れーな。れーなっ。


遠くで絵里の声が聞こえた。
その声は何処かフワフワしていて掴みどころがない感じがした。それもまた、絵里らしいなと思った。


れーなぁ、起きてよぉ。


相変わらず甘くて舌っ足らずな声だと思う。
「れいな」のことを「れーな」なんて発音するのは世界中探したって絵里しかおらんちゃろうな。


絵里を起こすって言ったじゃんかぁ。れーなが寝ちゃって…


そうしてちょっとだけ寂しそうな顔をする絵里。
あれ、れな寝てると?気付かんかったっちゃん。


でも、れーなも眠いんだよね。絵里のために、いっつもがんばってくれてたもんね。うへへぇ、寝顔も可愛いよ


その声は、甘いんだけど、やっぱり寂しそうだった。


おやすみ、れーな。


なあ、おやすみてなんよ、絵里。
待て、待つっちゃ絵里。れな、起こすって約束したっちゃん!絵里、絵里、絵里ぃっ!!
50 :Only you :2011/12/26(月) 23:23
れいなは声にならない声を上げて目を覚ました。
肩で息をし、背中にはイヤな汗がべっとりと張りついていた。

「夢……?」

れいなは思わず時計を見た。

4時38分―――
手術開始から遂に半日が経過していた。いつの間に眠ってしまっていたのだろうとれいなは頭を振った。


―おやすみ、れーな


夢の中で残した絵里の言葉が頭をよぎった。
まさか、まさか、まさか。
最悪の事態ばかりが想定されてうんざりするが、れいなには祈る以外に他なかった。
彼女の笑顔を、あのだらしなくてバカみたいで、だけど世界でいちばんの笑顔を、どうか護って下さいと、信じてもいない神にれいなは祈った。

降り続いていた雨は上がり、暗い空は徐々に紫色を帯びてきていた。
もうすぐ空が赤い色に変わるであろうそのとき、手術中のランプがふっと消えた。
それを認めたれいなと絵里の父親がほぼ同時に立ち上がると、手術室の扉がゆっくりと開く。
手術マスクを外したワタナベやアサノがゆっくりとそこから現れた。背中に一筋の朝の光を受けたその姿は、れいなには、ただただ神々しく見えた。
51 :Only you :2011/12/26(月) 23:24

ねぇ、れーな。

なぁ、絵里。

もう一度、目が覚めたら



―――ふたりで笑って、何処までも走りたい



ささやかな、たったひとつのふたりの想いは、風に運ばれるようにふわりと舞い、朝陽に輝く街へと走っていった。
52 :Only you :2011/12/26(月) 23:24
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53 :Only you :2011/12/26(月) 23:25
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54 :Only you :2011/12/26(月) 23:25
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55 :Only you :2011/12/26(月) 23:26
試合終了のホイッスルが鳴り響くと同時にれいなは天を仰いだ。
OG戦の日は毎年良い天気だなと思いながら、チームメイトとハイタッチを交わしていく。

「先輩たち強すぎですよ…」

青いユニフォームを着た後輩のひとりがそう呟いたので、れいなはその肩を叩いた。

「れなたちやって現役ン頃はそうやったよ。でも、先輩たちに勝たんと優勝はできんよ」

それを聞いて後輩は大袈裟に肩を竦めたが「努力します」と笑った。
すると同じオレンジ色のユニフォームを着た美貴がからかうように話しかけてきた。

「さっすが、全国大会で優勝した先輩は、アドバイスも厳しいねぇー」
「からかわんで下さいよ。あのときは運も良かったんですって」

れいなたちは高校3年生の夏の総体で、見事全国優勝を果たした。
万年、準優勝チームと陰口を叩かれたこともあったが、最後の最後に、れいなは落ち着いてPKを決め、見事に優勝をもぎ取ったのである。
朝陽高校サッカー部としては6年振りの全国制覇に、優勝直後は取材が殺到し、その次の年の入学希望者は僅かながらも増加した。
推薦入試で入学したれいなとしては最後に漸く役目を果たせたなとその肩の荷を下ろした。
ちょっとは強くなれたのかなと、れいなはふうと息を吐いた。
56 :Only you :2011/12/26(月) 23:26
「れいなぁ、エキシビジョンしようぜ!」

そんなとき、オレンジの10番である吉澤ひとみが声を上げたのでれいなは振り返る。
グラウンドには既にボールがセットされており、朝陽高校の絶対的守護神と謳われた紺野あさ美が苦笑しながらキーパーの位置に構えている。
これは勝負しろということなのだろうかと理解すると、客席が再び盛り上がった。
相変わらず、この高校のOG戦はお祭り騒ぎだなとれいなは苦笑しながら、チームメイトに背中を押され、駆け足で向かった。

「れいなって、こんこん相手に1本もシュート決められなかったんだろ?」

挑発するような言い方にれいなはムッとしながらも、事実であるが故になにも言い返すことはしなかった。
そんなれいなの心境を知ってか知らずか、吉澤はニコニコしながらボールをれいなに渡した。

「1本勝負な!」

その声に観客たちはワッと盛り上がった。
相変わらずこの人は観衆を乗せるのがうまいなと思いながら、れいなはボールをセットする。
確かに、全国大会で優勝しながらも、れいなは現役中に、あさ美からゴールを奪うことはできなかった。
最初の推薦入試から、自分がOGとなってこのOG戦に参加する今日の今日まで、悉くシュートを止められてきたのである。
やっぱり、最後くらい勝ちたいとれいなは思い、ふうと息を吐いて天を仰いだ。
57 :Only you :2011/12/26(月) 23:27
目を閉じると、歓声が遠くに聞こえる。
世界には自分とサッカーボールしかないようなそんな錯覚に陥る。

こうやって観客の声援を浴びながらあさ美と対峙するのは何年振りだろう。
最初の推薦入試以来だから…ああ、もう考えるのも億劫っちゃん。

れいなはふと、その推薦入試の日を思い出していた。
確かあの日、彼女はずっと自分のことを屋上から見てくれていたことを思い出し、れいなは屋上を見た。
もう、彼女はそこにはいない。それは当たり前のことなのだけれどそれが無性に哀しかった。

「アホぅ…」

そう呟いて再び目を閉じると、れいなにはハッキリと聞こえた。


―れーなぁっ!


何人もの歓声が飛び交う中、ハッキリと耳に届いていたのだ。
彼女のあの、甘ったるくて舌っ足らずの優しい声が―――

ああ、これはもう重症かもしれないなとふっと笑い、れいなは「っしゃ!」と叫んだ。
それはあの日と全く同じような声であり、いつの間にかあの日にタイムスリップしたかのような錯覚に陥りそうになった。
58 :Only you :2011/12/26(月) 23:27
ホイッスルが鳴ったあと、れいなは軽く助走をつけた。
左脚で踏み込み、右脚インサイドで蹴ったボールは真っ直ぐに飛ぶ。
虚をつかれたあさ美は右膝をぐっと曲げてジャンプした。だが、最後の最後にボールはさらに伸び、精一杯に伸ばした右腕のわずか数センチ上をボールは通過する。
もうそこしかないというような場所にボールは吸い込まれていき、ネットを揺らした。

「っしゃあぁ!」

れいなの雄叫びがグラウンドに響いたあと、観客たちが一気に歓声を上げた。
漸く決められた安堵感と、よく迷わずにあんなど真ん中に蹴り込めたなと自分の度胸を褒めてやりたくなった。
大歓声が巻き起こり、拍手を送る観客たちの中で、れいなはたったひとりの彼女を見つけた。
そう、優しくて可愛くて笑顔が綺麗で、たぶん世界でいちばんの彼女を、れいなは見つけたのだ。

「れーなぁ!」

笑って手を振る絵里に、いつものように「ニシシ」と笑って右腕を突き上げながら歩み寄ると、絵里は嬉しそうに笑ってれいなに飛び込んできた。
まさか抱きつかれると思っていなかったれいなは「うぉ!」と腰を反らす。

「絵里、ちょぉ離れんしゃい!」
「やーだーぁぁ、うへへぇー」
「こ、公共の場やろうが!」

れいなは抱きつかれて嬉しいんだけれども、いかんせん場所が場所であり、恥ずかしかった。
OG戦という、周りはれいなの知り合いばかりのこの状況で抱きつかれるのは…やっぱり耐えがたい。
59 :Only you :2011/12/26(月) 23:28
「こら、カメ!公共の場なんだから離れなさい!」

元生徒会長である里沙が呆れたような声を出して絵里を叱るが、絵里は全く意に介せずにれいなを強く抱きしめる。
ほら見ろ、やっぱりガキさんには怒られたやんとれいなは思うが、そんなこと知ったこっちゃないと言わんばかりに絵里は「うへへぇ、カッコ良かったですよぉ」と笑う。

「まあええやんか、相変わらずのラブラブっぷりで」
「さゆみも藤本さんに抱きつきたいのー」

同じく元生徒会長の愛や、元クラスメートのさゆみがそうやって冷やかしの声を上げていたような気がするが、なんだかれいなにはもうどうでも良くなってきていた。
恥ずかしさとか照れとか、そういった感情は確かに此処にあるんだけれど、なんだかそんなことを飛び越えるくらいの喜びが胸に溢れているのだから。

れいなはそっと、宙ぶらりんになったままの腕を絵里の背中に回し、ぎゅっと抱きしめた。
すると、絵里もそれに気づいたのか、嬉しそうに笑い、れいなの肩に顔を埋めてその感触を確かめていた。
60 :Only you :2011/12/26(月) 23:29

ずっとずっと、この感情はあなただけに向かっていた。


絵里、絵里のためやったら、れなは何処までも走っちゃるけんな。


れーな、れーなはいままで絵里のために走ってくれたけど、これからは絵里も走れるんだよ。


ずっといっしょに走っていこう、これからも。
朝の光を浴びて、綺麗に咲く花を見て、優しい風に吹かれながら、この広い青空の下、未知なる路を、ずっといっしょに歩いていこう。



あなたのその、笑顔のために―――

61 :Only you :2011/12/26(月) 23:30


Only you―その笑顔のために 了


62 :Only you :2011/12/26(月) 23:30
本章構成

Only you―その笑顔のために
>>2-213 第1章
>>219-311 第2章
>>316-553 第3章
>>560-568 田中れいな生誕記念:そんなシアワセ
>>574-782 第4章
>>789-908 第5章
>>860-867 ライサバ1年記念:果てない約束
>>913-982 最終章
>>950-962 亀井絵里生誕記念:思い出とこれからと

Only you―その笑顔のために【最終章】
>>2-61 最終章
63 :Only you :2011/12/26(月) 23:31
作中使用曲
そうだ!We're ALIVE!
SONGS
女が目立ってなぜイケナイ
Only you

登場順 すべてモーニング娘。より


参考BGM
モーニング娘。
KinKi Kids
キリンジ
その他、素晴らしいアーティスト様
64 :Only you :2011/12/26(月) 23:32



読んで下さったすべての方々に感謝をこめて


65 :雪月花 :2011/12/26(月) 23:33
Only you―その笑顔のために 完結でございます。
感想やご批判は受けつけておりますので、コメントを残して下さるとありがたいです。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


2011年12月26日 雪月花
66 :名無飼育さん :2011/12/27(火) 00:27
感動で胸いっぱいです。
最後は、やはり涙が溢れてきました。
本当に素敵な物語をありがとうございました。

絵里もれいなも、その他の登場人物も、
みんな繊細で、、、あー言葉が浮かばない!
ほんと、大好きなお話でした!
ありがとうございます!

とーっても贅沢なこと話ですが、
また作者様のれなえりを読む事ができればなーなんて思います。


ありがとうございました。
67 :名無飼育さん :2011/12/27(火) 02:14

初めてコメントを残させていただきます。

これまでずっと、このお話を追い進める中で、沢山泣きました。時にはこの作品の訴えに、時には我を重ねて、泣きました。

色々なものが、沸き上がって来るようでした。忘れていたとても大事ものを思い出せました。真意の訴えにいっしょになって身震いしました。
生きていくことへ知恵や力も、ただ無垢なる胸の高鳴りも、沢山、このおはなしの内から頂きました。ありがとうごさいました。

なんだか作者さまの力量がせいか、終盤はこれを「れなえり」だとはすっかり忘れおりました。


でも、このおはなしの更新と共に心を浮き彫りにしていくような毎日は、とても快かったです。

ありがとうごさいました。
68 :名無飼育さん :2011/12/27(火) 12:33
最高でした!!!
とても奥深く、作者様のこの作品への思い入れの強さが伝わってきました。
毎日毎日更新されてるかチェックするのが日課でその度にワクワクしてました。
れいなにとっても絵里にとっても、そして自分たちにとっても『ハッピー\(^∇^)/』な終わり方で良かったです。

また作者様の素敵なれなえりが読めることを祈っております。
only you完結おめでとうございます!!
そしてお疲れ様でした!!
69 :名無飼育さん :2011/12/31(土) 18:59
完結、おめでとうございます!
ついに終わったんですね。
約3ヶ月間ニヤニヤしたり泣いたり…この小説のおかげで本当に楽しかったです!
ハッピーエンドーになってよかったんですが、
一方、もうれいなと絵里、さゆ、愛ちゃん、ガキさん、他の皆に会えなくなるのがすごく寂しいですね。
明日からまた初めから読もう。(笑)

上の方々も言った通りいつかまた作者様の新しい「れなえり」を読めばいいなぁ〜と思います。
こんな素敵な小説を書いてくれて本当に本当にありがとうございました!


70 :雪月花 :2012/01/05(木) 15:55
新年明けましておめでとうございます、雪月花です。
ガキさんの卒業の発表は正直ショックでした…
娘。のリーダーであるガキさんの姿を残り少ない期間ですが目に焼き付けておきたいです!


>>66 名無飼育さんサマ

温かいコメントありがとうございます。
この作品の登場人物はみんな好きなので、作者補正がかかり過ぎてることは否めません…w
とにかくれいなと絵里の話をひとつつくることができて、いまはホッとしてます。
次回作については…検討中ですw お付き合いいただきありがとうございました。


>>67 名無飼育さんサマ

初めてのコメントありがとうございます。
設定が高校生でしたので、青春という、恥ずかしくも熱い一瞬の出来事を書きたかったです。
「れなえり」ではあるものの、いろいろな人の物語が書けたらと思っていたので、泣いて笑っていただき本当に嬉しいです。
自分もこの作品を書いていてとても楽しかったです。ありがとうございました。


>>68 名無飼育さんサマ

いつも覗いていただきありがとうございます。
物を書くのは好きなのですが、まさか此処まで長くなるとは思ってなかったですw
れいなと絵里の物語をひとまず区切りをつけられて良かったです。
また何処かで会えることを私も祈っております。ありがとうございました。


>>69 名無飼育さんサマ

コメントありがとうございます。
初投稿から3ヶ月の間、見守って下さった読者の皆さんには本当に感謝しております。
この物語はひとまず区切りになりますが、何回でも読んでいただけるような話になると嬉しいです。
次回作については構想中ではありますので、また逢えたら嬉しいです。ありがとうございました。


Only you―その笑顔のために 最終更新になります
在り来たりなエピローグですが、どうぞお付き合いください。
71 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 15:58
ケータイのアラームが鳴り、絵里は布団からもぞもぞと手を伸ばした。
寝ぼけながらもケータイを止めると、時間は9時を少し過ぎたところ。今日は休日であるのに特に意味もなくアラームをかけてしまったのだなと絵里は苦笑した。
絵里はぐっと伸びをしてカーテンを開けた。朝の光りが優しく室内に入り込んでくる。ああ、今日も良い天気だなぁなんてボンヤリ思った。
窓を開けると春の風が舞い込んできた。温かくて優しい風が頬を撫でるのだけれど、起きぬけの体には少し冷たくて、絵里はくしゃみをしそうになった。


なんだか、本当に理由はないのだけれど、絵里はれいなに逢いたくなった。
暫く逢っていないような、だけどついこの間逢ったようなそんな気がするのだけれど、絵里は逢いたくなった。
72 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 15:58
ケータイを開くと、待ち受けにはれいながいた。
あの心臓の手術に成功した直後、絵里のお見舞いに来てくれたれいなとふたりで撮った写真だった。
れいなは顔をくしゃくしゃにして泣きながら、絵里に抱きついて「お早う」と言ってくれた。だから絵里も涙を堪えた精一杯の笑顔で「おはよ」って返したんだっけ。
またあなたに逢えたその奇蹟に感謝しながら、ずっと抱き合ってたなあって、絵里は顔が自然と綻ぶのを感じていた。
待ち受けに写真撮りたいなんて言ったら、れいなは最初、嫌がっていたんだけれど、絵里がどうしてもって言ったら、渋々ながら撮ってくれた。
少しだけ照れ隠しのように視線は外してるけど、でもしっかりと、絵里のその肩は抱いていてくれた。

絵里はふとそんな出来事を思い出しながら、メール作成画面を開いた。
れいなのことだから、まだ寝てるか、起きていたとしても朝食は絶対に摂らないんだろうなと絵里は苦笑した。
73 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 15:59
軽く朝食を摂って再び部屋に戻ると、ケータイが光っていた。
果たして送信者はれいなであり、その文章はたったの一文「何処か行こうか」というものであった。
絵里は自分の頬が緩んでいることを自覚しながらも、れいなに早速返信を打った。
74 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 15:59
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75 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:00
待ち合わせである駅前に少しだけ駆け足になりながら絵里は向かった。
春の風が前髪を通り過ぎていき、せっかくセットしたのにと絵里は右手でおさえた。
こんな些細なことで揺れる自分が恥ずかしくて、だけどれいなに逢いたくて仕方なくて、絵里は顔が綻ぶのを抑えきれないまま駅へと向かう。

駅のロータリーには既にれいなが待っていた。
いつものように音楽を聴きながら、そして大きめのサングラスをつけて、絵里のあげた水色のピアスをつけて、傍から見たら、ちょっと怖い人。
ホントは優しくて可愛い女の子なんだけど、れーなは見た目で判断されちゃうからなと、絵里は小走りにれいなに近づいた。

「れーなっ」
「お、今日は珍しく遅刻せんかったね」
「むぅ。絵里だってたまにはがんばるんですぅ」

絵里がそう反論すると、れいなはいつものように八重歯を見せて「ニシシ」と笑い、サングラスを外してくれた。
大きめのサングラスの奥からは、やっぱり大きめの瞳が現れて、その真っ黒な輝きがとても綺麗で、絵里はちょっとの間、見とれてしまう。
76 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:00
「なん?」

れいなはそう言って小首を傾げる。
あ、最初に逢ったときも、そうだったね。あのOG戦の日、れーなは絵里に「なん?」って聞いたんだけど、前はいまよりもちょー怖かったんですよ!
今日みたいに小首なんか傾げてくれなかったし、全然怖くて俄然強めな絵里もビビったんですから!

「なんもぉー」

そうして絵里がれいなの手を握って来たので、れいなもそれ以上は追及せずに、絵里の手を優しく握り返した。
その指には、あの手術直前にもらった、シルバーの指輪が輝いていた。
77 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:01
「絵里は何処行きたい?」
「んーとね、れーなの好きな場所」
「いっつもそれやん」

れいなはそう苦笑しながらも当てもなく歩き出す。
デートする時、絵里はいつも「れーなの好きな場所」とか「れーなの行きたい場所」って言うっちゃん。
絵里はそれで楽しいと?なんて聞こうものなら「れーなと一緒だから何処でも楽しいの」なんて可愛いことを口にすると。
そんなこと言われたら……まあ、悪い気はせんっちゃん―――

「だって、れーなと一緒だもん」

ほら、今日もそうやって言い返した。
ああもう、相変わらず可愛いなあなんて思ってしまう自分は、やっぱり絵里に甘いんだろうかなんてれいなは今さら心配になった。
だけど、絵里の笑顔を見ていたら、なんだかそれでも良いかと思ってしまって、自分もいつの間にか笑顔になって、歩き出していた。
78 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:01
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79 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:01
ふたりはそうして歩いていると、いつか来た噴水のある公園にやって来ていた。

「此処、春には桜が咲いて綺麗っちゃん」

れいながそう言うと、絵里は眼を見開いて驚いた。
最初に此処に来たときは、噴水と何本かの木とベンチしかない質素なものだと思っていたのだけれど、いまは桜が満開に咲き誇り寂しくなくなっていた。

「さーくーらー!」

絵里はそう言うと、れいなと手を離し、桜の木へと走った。
満開といっても木は数本しかなかったため、名所とまでは言い難いが、それでも立派に咲き誇る姿は見事であった。
ピンク色の花びらが優しく舞い降り、噴水と光りによって織り成すコントラストは、ひとつの芸術とも言えた。

桜の木の下で、目を細めて桜を見つめる絵里の姿は、やっぱり愛しかった。
彼女にとっては、いま、世界はとても綺麗に見えているんだろうなとれいなは思う。
生まれつきの心臓病というハンディキャップを背負い、決して楽しいとは言えない幼少期を過ごし、中学校ではイジメにさえあった。
残酷な運命しかくれなかった絵里の世界は、れいなが想像する以上に、暗く曲がったものだったのだろう。

だけど、漸く絵里は自分で自分の世界を切り拓いたのだ。
あの、成功率40%以下といわれた難関の手術を乗り越え、絵里はいま、此処で生きている。
れいなの隣で、優しく微笑んで、厳しい寒さの冬を越えて咲いた春の桜を見つめている。
そうだ、彼女もまた、暗く厳しい冬を越えて、人生という名の花を咲かせようとしているのかもしれないなとれいなは思った。
80 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:02
れいなは絵里の隣に並び、絵里と指を絡ませた。
絵里もなにも言わずに優しく微笑んで、その指を絡ませる。

「桜ってさ、綺麗なんだけど、やっぱり散っちゃうのが寂しいよね」

絵里は満開の桜を見ながらそう言った。
繋がれていない左手をそっと開くと、そこに舞い落ちた桜の花びらがそっと乗った。

「桜は散るけん、また来年咲いてくれるっちゃん」

いつだったか、手術直前に日光へ「修学旅行」した時にれいなが絵里に伝えた言葉と近い言葉を再び出した。
雪が溶けないと桜は咲かない。そして桜が散って夏の太陽が輝く。そうして季節はずっと巡るのだと。

「うん。次の季節への約束、だよね?」

絵里がにこやかにそう言うので、れいなは照れながらも頭をかいた。

「咲いて散るのは一瞬やけん、出逢いは永遠なんかも知らんな」

一瞬でも、永遠。
それは、隣で笑っていられるこの時間と同じだと思う。
長い人生で見たら、本当にたった一瞬のこの出来事、今日という日なんて忘れ去られてしまうくらいの刹那の時間。
それでもふたりは此処で生きている。心に刻まれたこの時間は、一瞬でも永遠なんだと思える。
永遠なんて、ずっと陳腐な言葉だと思っていたのに、それすらもいまは愛しく思えてしまう。
81 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:03
「…なんか、れな若いっちゃね」

昔から思っていたのだけれど、れいなは考え方が若い気がする。
まだふたりが高校生の頃、門限のある絵里を送りに行きながら、ずっとこの時間が続けば良いなんて思っていた。
どうしようもないくらいに若くて、絵里のためならなんでもできるとか思っていた、無茶苦茶な17歳だったんだなとれいなはいまさら思う。
しかもそれが数年経ったいまでも変わっていないのだから、なんだか情けなくなった。れいなはやれやれと頭をかいた。

「若くていーじゃん」

すると、そんなれいなの心の声に気づいたのか、絵里は手をぎゅっと握りしめて笑った。

「今日が、これからの人生でいちばん若い日なんだしさ」

絵里の真っ直ぐで柔らかい笑顔にれいなは射抜かれる。
ああ、やっぱりこういう感性は、彼女の方が上なんだろうなと実感した。れいなは「そうやな」と笑ってまた桜を見上げた。
ピンクを身に纏った花びらは、風に吹かれて何処かへと流れていった。
82 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:03
---

83 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:04
「なあ、絵里」
「うん?」
「今日さ、れなン家泊まる?」

公園をあとにして、軽く昼食を摂りながられいなは絵里に聞いた。
絵里はその質問に目を丸くしながらも、返す。

「それは…つまり……?」

絵里が少しだけ頬を赤く染めたので、れいなも慌てて否定した。

「いや、違う。そういう意味やなくて。ほら…あの…」

手術の前日にふたりが交わした小さな約束。
その日からずいぶん時が経っているのだが、いまだに互いにその一歩を踏み出せないでいた。
なんどか家に泊まりに行ったこともあるのだが、それでもなぜか、互いに遠慮をしてしまい、キス以上の関係には至っていない。
れいなが慌てて否定するので、絵里は優しく笑って「泊まるぅ」と答えた。
その回答にれいなは食後の珈琲を噴き出しそうになった。そ、それはOKということデスカ?と考えながら口元を拭う。
84 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:04

だけど、とも思う。

まあ、いっかとも思ってしまう。


別に、今日明日で終わる関係じゃないっちゃし、ゆっくりふたりのペースでやっていけば。


今日、絵里が家に泊まって、なにもなくても、それはそれで良いや。


れいなが優しく微笑むと、絵里も同じように微笑んだ。
桜が優しく舞う、恋深き春の日。隣にいるあなたが笑っている。何物にも代えることが出来ない、かけがえのない一瞬の空気。

それは、何処にでもあるような、当たり前だけど、シアワセの風景。


ああ、もう、好き―――


なんだか無性にそう呟きたくなるような、春の日だった。
85 :春 ビューティフル エブリデイ :2012/01/05(木) 16:05


fin



86 :雪月花 :2012/01/05(木) 16:06
Only you―その笑顔のために 無事に脱稿いたしました。
飼育では初投稿ということでしたが、見切り発車をしてしまったために、だらだらと長くなってしまいました。
娘。にハマったのは『Only you』からだし、絵里は1年前に卒業している、いまさられなえり、
ふたりとも高校生だしでダメだしされる点は満載ですが、ふたりが好きという想いだけで書いてみました。

れなえりは基本的に絵里が病弱でれいなが奔走するって形が多いので、新鮮味がないというのも反省点です。というか素晴らしい過去の作品に影響を受けまくっています…
実際の絵里はもっと元気でアホでPPPだし、れいなだってもっと乙女で可愛いので、今度はそういうふたりが書けたら良いかなと思っています。

一応、次の作品の構想もあるのですが、またスレッドを立てたら此処に告知します。
もし少しでもこの作品を気に入って下さった方がいらっしゃったら、また見に来てやって下さい。
この作品は此処で一応の終わりですが、彼女たちは遠い世界でいまも生きています。どうかまた、必死に青春して、前向きに生きようとしている彼女たちに逢いに来て下さい。
ツラいことも哀しいこともたくさんあった作品ですが、きっと最後は笑顔になれる…はず?ww

本当にありがとうございました!
87 :雪月花 :2012/01/05(木) 16:08
从*´ ヮ`) <絵里ぃ


ノノ*^ー^) <れーなぁ
88 :雪月花 :2012/01/05(木) 16:09
从*´ ヮ`)ノノ*^ー^) <うへへぇ



从*・ 。.・)<…ずっとやってろなの、バカップル
89 :雪月花 :2012/01/05(木) 16:10

ではまた、次回作で逢いましょう!
2012年1月5日 夕陽の射す自宅にて 雪月花
90 :名無飼育さん :2012/01/05(木) 21:29
最終更新乙でした。
久々に読み応えのある作品に出会えたのがうれしかったです。
主役の2人も他の登場人物も巧く生かしてるのが印象に残りました。

次回作の構想もあるようですが、スレの容量がかなり余ってるので
新スレ建てないでここを利用してはどうでしょうか?
91 :名無飼育さん :2012/01/07(土) 23:57
エピローグの更新、ありがとうございます。
もう二人に会えない寂しい気分が少しなくなったんですね。
でもこれが本当の最後って… Y.Y
明日からはまた初めからゆっくり読もう。
あ!そして他のれなえりが好きな仲間にも絶対オススメします。*^^*
今までありがとうございました!

そしていつかまた新しいれなえりに会える日も待ってるよ。



92 :名無飼育さん :2012/01/22(日) 02:22
いま読み終わりました!

単純なれなえりだけでなく、全ての登場人物の想いが伝わってきて、それが切なく泣けました!
痛くもあり、切なくもある心情が、とにかく胸に迫ってきて感動しました

いつかまた、雪月花様の新しい作品に会えたらと思っています
本当にありがとうございました!
93 :雪月花 :2012/01/29(日) 07:57
お久しぶりです、雪月花です。
数学女子学園を見てさゆれな熱が湧き上がっておりますw
あ、全然れなえり熱は冷めてませんので大丈夫ですよw


>>90 名無飼育さんサマ

コメントありがとうございます!
周囲の登場人物も丁寧に描いていきたかったので、そう言っていただけると嬉しいです。
確かに此処のスレかなり残ってますのでこっちに続けて書いていきますね。


>>91 名無飼育さんサマ

本当に温かいコメントをいただき、作者も嬉しいです。この作品を末永く愛してやって下さい。
また新しい長編を構想中ではあるのですが時間が限られているので、細々と短編で繋いでいこうかなと思ってますw
もしよろしければまたお付き合いくださいね


>>92 名無飼育さんサマ

コメントありがとうございます!
恥ずかしくも輝いていた青春の一瞬ってこんな感じなのかなと思いながら書いてました。
病気って制約がなくても、ふたりはたぶんラブラブかと思いますw


生存報告兼ねて短編をひとつ投下します。かなり微妙ですがw
94 :だいじょうぶだよ :2012/01/29(日) 07:58
「もー、そんなに泣かないの」

そう新垣里沙は言うのだが、目の前の彼女、生田衣梨奈はなかなか泣きやまない。
里沙はほとほと困りながら衣梨奈を見つめる。

「だっ、て…新垣さん……」
「生田にはフクちゃんも、鈴木も鞘師もいるでしょ?」

できるだけ優しく言っても、衣梨奈は首を振り、泣くことは収まらない。
里沙は「うーん」と頭をかき、すっと立ち上がった。
その気配に気づいたのか、衣梨奈はようやく里沙と目を合わせる。彼女の瞳には大粒の涙が浮かんでいた。

「ちょっとなんか買ってきてあげるから、ね?」

その言葉を聞き、なにかを言いかけた衣梨奈を振り払うように、里沙は部屋を飛び出した。
扉を閉めたあと、彼女はまた泣き出しただろうかと気になったが、振り返らずに、そのまま廊下を歩く。
95 :だいじょうぶだよ :2012/01/29(日) 07:59
里沙は「はぁ」と息を吐き、簡易休憩所でココアを片手に天井を仰いだ。
自分で決めたこと、自分で決めた道。
11年という長い間、モーニング娘。に在籍し、みんなと一緒に活動をしてきた。

楽しいことばかりではなかった。
加入当初から、覚えることはたくさんあったし、先輩についていくだけでも必死だった。
なんども先輩から怒られ、それでも里沙は、同期である高橋愛や紺野あさ美、小川麻琴らとともに前に進んだ。
その後、後輩である6期メンバー、亀井絵里、道重さゆみ、田中れいなが加入した。
問題児と言われながらも、彼女たちも娘。の一員であることを自覚し、ともに切磋琢磨してきた。
7期メンバーの久住小春、8期として光井愛佳、ジュンジュン、リンリンと加入し、娘。を巡る状況も大きく変わった。
なんども世間の逆風に遭い、このままモーニング娘。として活動していけるのだろうかと悩んだ。

だが、その度に、リーダーである愛と話し合い、中間管理職の絵里に相談し、仲間と笑い、泣き、此処まで走って来た。
なんども挫けそうになったが、決して立ち止まることはしなかった。
メンバーの絆は消えることなく強くなり、史上最強の8人と言わしめるほどのパフォーマンスを誇った。
新メンバーが大勢加入し、新生モーニング娘。が発足し、いままで以上に頑張っていこうと決意した。
96 :だいじょうぶだよ :2012/01/29(日) 07:59
「…そっかぁ……」

里沙はふっとそこで気付いた。
いままで何人もの先輩や後輩の卒業を見てきた。
小春、絵里、ジュンジュン、リンリン、そして、同期である愛。
その度に何度も泣いたし、寂しくなると思ったし、卒業しないでほしいとも思った。

―みんな、居なくなっちゃうんだもん…

最後の同期である愛が卒業したとき、里沙はふいにそう口にした。
置いていかないでと思った。

だけど、寂しいのは、自分だけではなかった。
自分が卒業することを決めて、メンバーに話して、後輩である衣梨奈が泣いている姿を見て気づいた。

「卒業するって発表するのも、寂しいんだね…」

いま分かったよ、愛ちゃん。
愛ちゃんが私に卒業するって言ったとき、私もたくさん泣いた。
置いていかないでって思ったけど、愛ちゃんだって、寂しかったんだね。

置いていかれる方と、置いていく方。
どちらがという問題でもなく、どちらも寂しいのだと、里沙は気付いた。
97 :だいじょうぶだよ :2012/01/29(日) 08:00
「ガキさん…」

ふいに聞こえた声に、里沙は顔を向けた。
そこには6期メンバーであるれいながいる。

「そっち、座っていい?」

れいなの小さな声が休憩所に響き、里沙は断る理由もなく、どうぞと手で示した。
その言葉に素直にれいなも従い、少しだけ距離を置いて隣に座る。
10月に行われたミュージカル以降、急速に話すようになった里沙とれいな。
そこまでも別に仲が悪かったわけではないが、あのミュージカルを契機によく話すことが多くなったふたりだった。

「…生田、泣いとった」

れいなの発した言葉に驚くこともせず、里沙は「そっかぁ」と口にした。
9期メンバーである衣梨奈は本当に里沙を慕っていた。
今年のお正月のメールは「明けましておめでとうございます」ではなく「今年も新垣さん推しでいきますから!」という決意表明だった。
まったく、困った、だけど可愛い後輩だと思い、里沙は自然と笑顔になれる。

「生田には、フクちゃんとかいるから、だいじょうぶだよ」

里沙は持っていたココアに口をつけ、少し先の床を見つめる。
慕ってくれていること、泣いてくれることも本当に嬉しい。だけど、彼女にはこれからも娘。を引っ張っていってほしかった。
10期メンバーの加入でいつまでも後輩ではいられなくなった9期メンバー。
個々人のスキルアップはもちろん、先輩としての自覚を、9期全体で持ってほしかった。
だから里沙は、あまり慰めることもせず、敢えて衣梨奈を置いて此処に来た。
98 :だいじょうぶだよ :2012/01/29(日) 08:00
「…れなには、さゆがおった」

ぽつりと呟かれた言葉に里沙は顔を向ける。
れいなは顔を上げ、里沙を真っ直ぐに見つめる。彼女の大きな瞳が、少しだけ揺れた。

「絵里にも、れなとさゆがおったよ」
「うん」
「愛ちゃんには、ガキさんがおった」

れいなの言葉の真意を掴むことができず、里沙は次の言葉を待った。

「ガキさんやって、泣きたかったら、泣いていいっちゃん」

優しくかけられた言葉に、思わず里沙は目を見開く。
どうして急にそんなことを言うのだろうと口を開きかけるが、その前にれいなは続ける。

「同期は、もう、おらんけど…ガキさんには、れなも、さゆも、9期の生田やっておる」
「………」
「後輩を頼っても、良いっちゃよ?」

れいなの言葉は真っ直ぐに里沙を射抜き、里沙の瞳からは涙が零れ落ちていた。
知らない間に、里沙は自分を追い詰めていた。リーダーだから、最後の5期だから、ひとりでがんばろうと思ってしまっていた。
気丈に泣かずにいようと思い込んでいたけれど、決してそんな必要はなかったのかもしれない。
99 :だいじょうぶだよ :2012/01/29(日) 08:01
「いまのガキさんには、生田が必要っちゃないと?」

先輩としての自覚を持ってほしい。だから里沙は敢えて衣梨奈を必要以上に慰めようとはしなかった。
だけどそれは、自分が甘えてしまうことを恐れたのかもしれない。
衣梨奈の優しさに触れて、情けなく泣いてしまうことを怖がってしまい、衣梨奈を置いてきたのかもしれない。

「…田中っちには、分かっちゃうんだね」
「ん……れなは、経験しとるから」

そうしてれいなは照れくさそうに笑った。
彼女の笑顔を見て、里沙は気付いた。

そっか、田中っちは、カメの卒業を見てきたんだもんね。

最愛の同期である亀井絵里の卒業。
れいなの叶えたかった夢。
行かないでほしいという想い、だけど、それでも、と、れいなは泣きながらも絵里を送りだした。
絵里の想いを、知っていたから―――。

里沙は優しく微笑み、ココアを飲み干した。
そして缶をゴミ箱に捨てると「ありがとう」と呟き、衣梨奈のいる楽屋へと戻った。
れいなはその背中を見つめながら、ふうと息を吐く。

「…れなやって、寂しいっちゃん」

れいなはだれにも聞こえないような声でそう呟く。
当たり前なのだが、だれが相手であっても、卒業は寂しい。
だから、泣いている衣梨奈を見て、どうしても放っておくことができず、珍しくお節介をしてしまったのだ。

れいなはやれやれと立ち上がり、楽屋へと戻る。
ああ、ガキさんにはアホカメもおるっちゃんって言うの忘れてたと思いながら、れいなは頭をかいた。
100 :雪月花 :2012/01/29(日) 08:04
ガキさんの卒業発表という事で「だいじょうぶだよ」でした。
生ガキとれなえりで書きたかったのに微妙になって申し訳ないです。

こういう感じで短編をつらつら書いていきますー
ではまた

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