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企画マン吉澤!

1 :rainbow :2011/05/21(土) 01:18
初めて書かせていただきます、rainbowです。
正直、私なんかが書き込んでもいいものかドキドキですが。。。
更新は亀の歩みになるかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。

一応、メインは娘。で主役はタイトル通りよっすぃ〜です。
CPもちょこちょこ出す予定です。
組み合わせは…、読み進めてのお楽しみということで。
106 :名無飼育さん :2011/06/12(日) 02:48
そうなのか!正直な感想を書くとネタバレしそうなのですが吉澤さんは鈍......いやなんでもない......
107 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:39
翌朝、後藤は吉澤の家のベッドで目を覚ました。
吉澤はソファで寝たが、後藤が部屋を見回しても見当たらない。

(あれぇ?よしこどこ行ったんだろう?)

後藤が眠気まなこをこすってボーっとしていると、玄関のドアが開かれた。

「あ、ごっちん!おはよー!目、覚めた?」

「よしこ……、何してんの?」

玄関から入ってきた吉澤はロードバイクを肩に担いでいた。

「朝のトレーニングに決まってんじゃん!
 ちょっと都内をひとっ走りしてきたんだ!」

朝に弱い後藤には考えられないことだった。
吉澤がバイクを片付け、シャワーを浴び、コーヒーを入れて朝食を用意したころ、
ようやく後藤はベッドから降りてソファへと腰かけた。

「よしこは朝に強いね…。」

「ごっちんは朝に弱いね…。そんなんでよく仕事に遅刻しないねー。」

「あたしはオンとオフは切り替えてるの。」

そんな会話をしながら、二人は朝食のベーグルを頬張る。
108 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:39
「そういえば、ごっちん。
 いよいよごっちんの企画開発した商品が世に出るんでしょ?」

「あれ?中澤部長に聞いたの?」

「いや、部長が新商品開発に関わってたのは知ってたし、
 昨日めっちゃ嬉しそうに仕事してたから、いよいよかなって。」

「そっかぁ。部長、すごい勢いで打ち合わせしてたから、
 もしかしてSEXY BOYと発売日を合わせてくるんじゃないかなぁ?」

「やっぱりそうなんだ!そっか…、部長の新企画も同時期に……。」

そう呟いた吉澤はどこか嬉しそうだった。
一人立ちの緊張感はあるものの、自分でどこまで中澤の領域に近づけるか、
己の力量を知りたいという気持ちが凌駕していた。

「ほーんと、よしこは仕事の話になると目の色変わるよねー。」

後藤はオフのときは徹底して仕事のことは忘れるようにしていた。
それに対し、吉澤は気になったらとことん考えるタイプである。
後藤は仕事に燃える吉澤をよそに、今日の石川との食事に思いを馳せていた。
109 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:40
「ねぇねぇ、よしこ!梨華ちゃんってどんな服装が好きかなぁ?
 どんな話題だと喜ぶと思う??」

「い、いや、好きな服着ていけばいいんじゃない?
 話題って言ってもねぇ…。とりあえず、可愛いものが好きだよ。」

「えー、そんなんじゃ分かんないじゃん!
 じゃあ、あたしの得意な化粧品の話題とかがいいかな??」

「あー、それでもいいんじゃない?あとはエステとか。」

「なるほど!エステのことは詳しくないけど、化粧品ならイケる!
 服装はちょっとかっこいいのがいいかな?」

「いや、いつもみたいにちょっとカジュアルにしてけばいいじゃん。」

恋する乙女の相談に乗るのも大変なものだと吉澤は思い知った。
この後、延々と続く後藤の話に吉澤は優しく付き合ってあげるのだった。
110 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:40
そして、待ち合わせの時間が近づくと、二人は支度をして家を出た。
石川との待ち合わせの駅へ行くと、すでに石川が先に来ていた。

「おーい!梨華ちゃん!!お待たせ!」

吉澤は大手を振って石川にアピールした。

「あ、よっすぃ〜!」

石川も笑顔で手を振り返す。
ふと、吉澤の後ろから後藤が顔を覗かせた。
瞬間、石川の表情に影ができた。

(…え?二人一緒に来たの?待ち合わせ前に二人で会ってたんだ……)

「梨華ちゃん、おはよ!」

石川の思いなど知らない後藤は満面の笑みで挨拶した。

「おはよ!ごっちん!この前に二人で会ってたの?」

石川は思い切って聞いてみた。
しかし、もちろん、その思い切りを後悔することになる。

「うん!よしこん家にね、泊めてもらったんだ!」

「そ、そっかぁ……。」

軽くテンションを下げた石川に、吉澤も後藤も気付かない。
111 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:41
そして、三人は後藤のオススメのイタリアンの店へと出かけた。
『みかん』という看板の掲げられたその店は、店名通りのオレンジ色の配色が
鮮やかなポップな店だった。
三人は思い思いにパスタをオーダーし、談笑した。
後藤はもちろん、吉澤と練った作戦通り、化粧品トーク全開である。
吉澤も企画という立場上、化粧品には詳しいが、ここは後藤を立てるべく、
あえて聞き手に回っていた。

(ごっちんって、こんなにも化粧品の話をするときは楽しそうなんだぁ。)

石川は素直にそう思った。
しかし、相変わらず熱い視線を送り続けている相手は吉澤であった。

(あ……)

ふと、吉澤が席を立った。
単なるお手洗いであったが、それだけでも石川は寂しそうだった。
しかし、これをチャンスとばかりに石川の方から後藤へ話しかけた。

「ねぇ、ごっちん。ちょっと相談してもいいかな?」

こんな問いかけに後藤が乗らないはずはなかった。

「なになに?なんでもごとーに聞いてよ!」

「よかったぁ。なんかよっすぃ〜には相談しにくかったんだけど、
 あたし最近、ちょっと頬骨のあたりがカサついてて。
 でも、ちょっと脂っぽい感じもするし、スキンケアどうしたらいいのかなって。」

後藤は嬉しかった。
吉澤にも相談しにくいことを自分に相談してくれたのだ。
嬉しいに決まっている。
しかし、石川からしてみれば、好きな人に肌荒れの悩みはしにくいというのが本音だ。
112 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:41
「なるほどねー。頬のあたりは乾燥気味で、おでこが脂っぽい感じ?」

「そうそう!まさにそんな感じなのよ!!」

「化粧水や乳液はどんなの使ってるの?」

「やっぱベタつきが気になるから、さっぱりした感じのをよく使うよ?」

「化粧水も乳液も?」

「うん……。」

「それじゃあ乾燥しちゃうよね。
 あのね、ベタつきが気になる人って、つい自分は乾燥肌じゃないって思うんだけど、
 脂性肌も人によっては乾燥肌だったりするんだよ。」

「えっ?!そうなの??!」

「うん。お肌がベタつくってことは、脂が多く分泌されてるわけでしょ?」

「うんうん。」

「脂ってなんのために出るんだと思う?」

「え?なんのためって……。
 ……あ、もしかして、水分を守るため?!」

「そう!ダテに化粧品会社に勤めてないね、梨華ちゃん!
 お肌の水分を保つために、脂は出てるんだ。
 だから、水分が少ないと思うと、一生懸命に脂を出して守ろうとするわけ。」
113 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:42
「すごーい!ごっちんすごい!プロみたい!!」

「一応プロなんだけどね……。
 ま、そんなわけだから、化粧水はとことん保湿力にこだわった潤いタイプにして、
 乳液やクリームは皮脂を抑えるさっぱりタイプとかにしてもいいんじゃないかな?」

「なるほどー!しっとりしたものとさっぱりしたものを組み合わせてもいいんだ!」

「あとは……」

後藤は持っている知識を最大限に活用し、簡単なローションパックの方法や
フェイスマスクの活用法に至るまで、石川に伝授した。
その様子を吉澤はトイレのドアの向こうから聞き耳を立てて見守っていた。
あえての長いトイレも吉澤の優しさだった。
しかし、他の客から不審な目で見られていることに吉澤は気付いていない。

「ごっちん!ありがとう!!
 本当にごっちんに相談してよかったぁ!
 ねぇ、これからもいろいろと相談していい??」

石川は目を輝かせて後藤を見ている。
後藤はその表情を満足気に見ていた。

「もちろん!困ったらいつでも美容のプロ、後藤に相談してちょ!」

(よっし!作戦成功!!
 それにしても、喜んだ梨華ちゃんの顔、かわいいなぁ。)

(ごっちんにいいこと教えてもらっちゃった!
 よぉーし!これで頑張ってきれいな肌になってよっすぃ〜に
 振り向いてもらうんだから!!)

意気投合した二人だが、その思いはチグハグであった。
114 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:42
二人の満足した顔を見ると、吉澤は長いトイレから戻ることにした。

「ちょっとちょっとぉ!楽しそうに話してんじゃん!
 あたしにも聞かせてよー!」

吉澤はニヤニヤしながら二人のもとへ戻った。

「うん、ちょっとね、ごっちんに美容相談してたんだ。」

「なーんだ。じゃ、あたしには関係ないか。」

「こらこら、企画マンがそんなこと言うもんじゃない。」

吉澤の態度に後藤がツッコミを入れる。
吉澤は仕事柄美容に詳しかったが、あくまでも仕事としての話だった。
プライベートで美容トークをして盛り上がるような柄ではなかった。

「そういえば、ごっちん!一昨日ね、よっすぃ〜と飲みに行ったんだけど、
 その時にね、中澤部長と安倍部長を見かけたの!」

石川は話題を変えた。
吉澤同様、あの夜のことが気にかかっているのだ。

(よしこー!そんなん聞いてないぞ!!
 梨華ちゃんと飲みに行くなんて、誘えよーー!)

しかし、後藤の気持ちを知らなかった吉澤には無理な話である。
115 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:43
「部長たちの会話がちょっと聞こえてきたんだけど、
 二人が付き合ってるとか聞いたことある?」

石川は構わず話を続けた。

「んあ?そういや、珍しい組み合わせだよねー。
 でも、二人の噂は聞いたことないけど……。」

後藤もちょっと興味をそそられたようだ。

「でも梨華ちゃん、あの時の様子だと、まさにあの時、口説いてたような
 気がするけどなぁ?」

吉澤も会話に乗ってくる。

「あ、そっかぁ。そんな感じもしたよねー。」

「安倍部長と中澤部長が付き合ってるかどうかは知らないけど、
 中澤部長といえば、昔、営業第一課の矢口課長と付き合ってたって
 噂はあるよね。」

「「………。」」

後藤の爆弾発言に二人は絶句した。
116 :あと一ヶ月! :2011/06/17(金) 16:43
「あれ?どしたの?二人とも……。」

「だだだ、だって、矢口課長ってあの超可愛い系のあの矢口課長でしょ?!!」

「あんな可愛い系の矢口課長とうちの真面目系の安倍部長じゃ全然違うじゃん!」

吉澤と石川の勢いに後藤は圧倒されそうになった。
二人が驚くのも無理はない。
営業第一課の矢口は髪も茶髪で軽いウェーブをかけ、メイクもいつもばっちり、
そしておしゃれには人一倍気を遣う、スーパー営業マンで有名だった。
そのキャラクターも人当たりがよく、話も上手いため、真面目でおしゃれに
興味のない安倍とは正反対だった。

「ま、まぁ、昔の話だけどね。
 安倍部長だってあんな感じだから分かりにくいけど、おしゃれしたら美人だと
 思うよー?」

「そういえば、そんな感じの発言もあったよね。」

「うん、自分の可愛さがどうとか…。」

吉澤と石川の中で安倍と中澤の仲が確信に変わった。

((部長たちが……恋人同士……かぁ……))

「あたし、明日からまともに中澤部長と会話できるかな……。」

「わ、私も、安倍部長の見方が変わっちゃいそう……。」

またしても吉澤と石川は後悔した。
やはり知らない方がよかったと。
後藤はそんな二人の様子を楽しそうに見ていた。
117 :rainbow :2011/06/17(金) 16:45
更新です!
まだまだ変則シフト勤務が続いているので、更新日を定められていません。。。

次回はちょっとオフィスシーンに戻る予定です。
118 :rainbow :2011/06/17(金) 16:48
> 106さん

詳細は固めてませんが、もちろん大筋は考えてますよ。
いろいろと想像するのも楽しいですよね!
想像通りになるか、ならないか、分かりませんが楽しんでいただけるようなストーリー展開できるように頑張りますw
119 :rainbow :2011/06/17(金) 16:51
今回も展開が見えると嫌なので、もっかいレス残します。
M-seekトップの変更のためかスマホでトップを開けなくなったのがちょっと痛い。。。
120 :名無飼育さん :2011/06/18(土) 00:30
応援したくなるメンバーがどんどん変わっていくのです!で、今は梨華ちゃんかな。
次の更新楽しみに待ってます♪
121 :あと一ヶ月! :2011/06/26(日) 01:00
翌朝。
いつも通り出勤した吉澤は、真っ先にメールチェックした。
そう、土曜日のうちにまとめたSEXY BOYのモデル案をメールでまとめて
自分の会社アドレスに送信していたのだ。

「おはよーさん!」

吉澤がメールチェックをしていると、中澤が出勤してきた。
吉澤の脳裏には一昨日の夜の出来事が蘇る。

「お、おはようございます。」

「なんや?元気がないなぁ?」

「あ、い、いえ!そんなことありません!
吉澤はいつも元気です!」

「そうか?ま、ええけど。」

中澤は大して気にする様子もなく、デスクについた。
当然、中澤は安倍との一件を吉澤たちに目撃されていることなど知らない。
吉澤も気を紛らわせるかのように夢中になってパソコンに向かった。

「お、なんか張り切ってんなぁ、吉澤!」

パソコンに集中する吉澤を見て中澤は満足そうにしている。

(もぉ、部長!話しかけないでください!!)

吉澤は心の中で叫んだ。
気にしたくなくても、同じ部屋にいる上司では必然的に関わらなければならない。
吉澤は改めて邪念を振り払うかのごとくパソコンに集中した。
122 :あと一ヶ月! :2011/06/26(日) 01:00
午前中はモデル案と営業課への研修資料のまとめに集中した吉澤は、
ランチ後に意気揚々と制作部を訪れた。
吉澤が入室するなり、辻が駆け寄ってきた。

「よっすぃ〜!やっぱりモデル案まとまってたのれすね?」

「おー、のの!やっぱりってどうして?」

「だってランチの時嬉しそうにしてたから誰にでも分かるのれす。」

辻の言う通り、ランチのときの吉澤は早く飯田にモデル案を告げたくて目を
キラキラさせていた。
それだけ、吉澤には自信があるということである。

「おー、吉澤。やっと来たね。」

辻の様子を見て吉澤に気付いた飯田が奥のデスクからやってくる。
その手には一枚の紙を持っていた。

「はい、コレ。チラシのデザインだよ。
 一応、制作的なチェックは終わってるから、あとは企画視点でチェックしてね。
 問題なければあとはモデルの写真はめて完成だから。」

「ありがとうございます!!」

飯田から渡されたデザインは黒と青を基調にしたシンプルだが力強いイメージが
描かれていた。

「す、すごいです!飯田チーフ!!
 私のイメージの通りですよ!!」

吉澤は目をキラキラと輝かせた。
その様子を見て、飯田はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、その視線を辻へ向けた。
吉澤もその視線に気づく。
123 :あと一ヶ月! :2011/06/26(日) 01:01
「ま、まさか、これって……。」

「ののが作ったのれす!」

「すげーじゃん、のの!!!これめっちゃカッケーよ!!」

「ののもプロなのれす!」

辻は胸を張ってみせた。
吉澤はなんだか嬉しかった。
自分の初の大仕事に自分の同期の力が加わっていると感じることに喜びを覚えたのだ。
それというのも、すべては飯田の仕向けたことだった。
飯田は最初から吉澤の初企画には辻を担当させようと思っていた。
そうすることで吉澤も辻も仕事への思い入れが強くなると考えたのである。

「ところで、吉澤。肝心のモデルはどんな感じ?何か閃いた?」

「あ、はい!いろいろ考えた結果、まずは人目を惹くような力強い目を持っていて、
 かつ今後の販促展開にも結び付けられるようなインパクトが欲しいと思いました。」

吉澤は飯田の目をしっかりと見据えて言った。

「なるほど。大事なことだよね。
 で、誰を起用するの?もったいぶらずに早く言いな。」

「はい!それは……あたしです!!!」

「「……へっ?!」」

辻と飯田は声をシンクロさせて目を丸くした。
二人とも次に続く言葉が出ない。

「……あ、……だから、……あたし……です。
 だ、だめ……でしょうか?」

吉澤はなんだか不安になった。
もしかすると、また考えが浅くて突き返されるのではないかと思った。
飯田も辻も目をパチパチとさせている。
124 :あと一ヶ月! :2011/06/26(日) 01:02
「な、なんでまたあんたがモデルに……?」

「はい。まず有名人の場合、やはり所属事務所の意向などによって100%UFAの意向に
 合ったイメージにならない可能性がありました。
 その点、モデルが私であれば、商品イメージに合わせたイメージ撮影が可能です。
 モデル料もかからないですしね。
 そして、一番大きな理由は…………。」

吉澤は飯田たちに自己起用の理由を語った。
吉澤の語る根拠を聞き、飯田は驚愕した。

(この子が見ているのは“今”じゃない。何ヶ月先を見て企画してるの?)

そう、吉澤は将来の販促展開を見据えてアイデアを練り出してきた。

「いいじゃん、吉澤!!あんた、裕ちゃんにも負けない企画マンになるよ!!」

「よっすぃー、すごいのれす!!
 ののもよっすぃーの企画に貢献できるように頑張るのれす!!!」

太鼓判を押され、吉澤は胸を撫で下ろした。
正直、自分の出せる精一杯のアイデアではあったが、まだまだ自分のような駆け出しの
考えなど世の中では通用しないのではないか不安もあったのだ。

「吉澤、今日のこのあとのスケジュールは?」

突然、飯田が問いかけた。
その表情はいつになく真剣である。

「えっと、営業課への研修準備を入れてます。」

「それって今日じゃないとダメな仕事?」

「いえ、ゴールデンウィーク明けでも問題ありません。」

「そ。じゃあ、ちょっと待ってて。電話するから。」

「は、はぁ…。」

困惑する吉澤の目の前で飯田は電話をかけ始めた。
125 :あと一ヶ月! :2011/06/26(日) 01:02
「あ、もしもし?涯FAの飯田です。
 今日、これから仕事をお願いできますか?
 ええ。できればそちらでお願いしたいです。
 …はい、はい。ありがとうございます!早速向かわせます!
 あ、吉澤と辻という者が二名でお伺いします。
 こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。」

そう言って飯田は電話を切った。
飯田はデスクから一枚の地図を取り出し、吉澤に渡した。

「スタジオプッチ?……スタジオ?!」

「そうよ。今から早速撮影に行ってもらうから。」

「い、今からですか?!」

「当たり前じゃん。私ら制作部だって時間は有効に使いたいの。
 だから素材集めは早々と終わらせたいのよ。」

「は、はい!!!」

こうして、吉澤は辻と二人でスタジオプッチなる場所へ赴くことになった。
普段はデザイナーまで同行はしないが、今回は吉澤のデザインの最初から最後まで
辻に関わらせようという飯田の意向で辻に同行命令が出された。
スタジオプッチはUFAから電車で一駅離れた場所にある小さな雑居ビルの中にあった。
ビルの前に来ると、『スタジオプッチ』と書かれたポップな看板があった。
126 :あと一ヶ月! :2011/06/26(日) 01:03
「ここれすね。」

辻の言葉に頷く吉澤。
吉澤は会社を出る前に飯田の言った言葉を思い出した。

『あんたの企画に最適のカメラマンを用意してあげたからね。
 楽しみにして行きなさい!』

(なんか、意味深な言葉だったよなぁ。
 まさかすっげー野郎系のカメラマンだったりして……)

吉澤を一抹の不安が襲う。
エレベータ前で立ちすくむ吉澤を尻目に、辻は早々とエレベータに乗りこむ。

「どうしたんれすか?」

「あ、い、いや…、なんでもない。」

吉澤は不安を抱えながらもエレベータに乗りこむ。

(あんなポップな看板で野郎系なワケないよね……)

自分に言い聞かせながら目的の階を待つ吉澤。
エレベータは四階で止まった。

「こんにちはー。UFAの吉澤ですが……。」

吉澤は恐る恐るスタジオプッチのドアを開けた。
スタジオはシンプルで木のぬくもりを感じるようなとても温かみのある造りだった。

「よく来たね、吉澤!元気にやってるか?」

スタジオの奥から聞こえた声は吉澤にとって非常に耳になじみのある声だった。
声に続いて現れた女性は美しくもかっこよさの印象的なショートボブの女性だった。

「い、い、い、市井さん!!!??」

「久しぶり。後藤のやつは元気にやってる?」

「え、えぇ。ごっちんは元気ですけど……。」

市井は三ヶ月前までUFAで働いていた。
しかし、ずっと趣味で続けていた写真を本格化するため、カメラマンに転職したのだ。
スタジオは市井の写真に惹かれたビルのオーナーに気前よく次のテナント候補が
出てくるまで自由に使っていいと言われてタダ同然に貸してもらっている。
UFAでは市井は商品開発部にいて、後藤とは先輩後輩関係にあった。
そして、この市井こそが吉澤が企画担当するSEXY BOYの生みの親であった。
127 :あと一ヶ月! :2011/06/26(日) 01:04
「そうか。後藤は元気にやってるんだな。
 あいつ、私のこと怒ってるだろうなぁ…。
 後輩置いて自分勝手に退職したんだから…。」

市井は口元は笑っていたが、眉を八の字にして少し俯いた。
吉澤も後藤からよく市井の話を聞いていただけに複雑な気持ちでいた。
しかし、市井の退職は後藤が入社したときには周知の事実でもあった。

「後藤さんなら大丈夫らと思います!」

市井の内心を知ってか知らずか、辻が微笑んだ。
その様子を見て言葉に窮していた吉澤も元気よく答えた。

「そうですよ、市井さん。
 だって、ごっちんは市井さんの退職までに仕事術をできるだけ
 盗むんだって意気込んでましたから。
 今では立派に商品開発してますよ!」

二人の言葉を聞き、市井の目に少し輝きが戻る。
市井は退職後、UFAと仕事で関わるのが初めてだった。
飯田からの電話を受け、撮影に訪れるのが後藤と仲の良かった吉澤と知り、
後藤が自分の退職をどう受け止めているのか確認がしたかったのだ。
市井には退職への未練はない。
しかし、ただただ残してきた後藤のことだけが気がかりでしかたなかった。

「そうだよな。
 あいつが前向いて頑張ってんのに、私がこんなんじゃダメだよな!
 よし!吉澤!!早速撮るから、メイク落としといで!!」

「はいっ!よろしくお願いします!!」

市井は嬉しかった。
後藤は市井が思っていたより強い人間だったのだ。
正直、後藤に教え込みたいことはまだまだあった。
しかし、自分が教えたいと思っていたことは今後、後藤自らが経験の中で
学びとっていくに違いないと市井は考えた。
市井の指差した洗面台に向かって吉澤は勢いよく駆け出す。
128 :rainbow :2011/06/26(日) 01:09
前回の更新から一週間空いてしまいました。。。
ちょっと切りが悪いですが、今回はここまでです。
スピードは落ちてますが、執筆意欲は落ちてないので今後もよろしくお願いします!
129 :rainbow :2011/06/26(日) 01:14
> 120さん

そう言っていただけて光栄です!
みんなそれぞれ魅力のある人物として描いていきたいので……。
今は梨華ちゃんですかw
これからも梨華ちゃんや他のみんなを応援してあげてください♪
130 :rainbow :2011/06/26(日) 01:15
ドリムス。の秋紺。
千秋楽の大阪は落選してしまいました。。。
131 :名無飼育さん :2011/06/26(日) 23:44
あの人が!吉澤さんは素敵な人たちに恵まれてますね!

大阪公演は落選者続出と聞きました。なんとか頑張って観に行きたいですね。
132 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:19
「市井さん。」

気付くと、辻が市井の目の前に立っていた。

「ん?あ、君は…辻ちゃん…だっけ?」

「はい。飯田チーフの部下の辻れす。
 市井さんは何でカメラマンになりたいと思ったのれすか?」

それは唐突の質問だった。
目の前の小さな幼顔の女性が自分に何を問いかけているのか、市井には一瞬
分からなかった。

「あぁ、なんか写真の魅力ってやつかな?
 流れるような時間の一瞬を残す……、
 その一瞬にすべてを注ぐ、そんなところに惹かれたんだ。」

「素敵…れすね。ののは制作の仕事が大好きなのれす!
 でも、いろんな仕事を経験してみたくて、市井さんのような人生に
 憧れるのれす。」

辻は真剣な眼差しで市井を見つめた。
まだまだ幼さの残る顔立ちの辻の口から出てきた言葉に市井は目を見張った。
そして、見た目で辻という人間を評価していた自分に気付いた。

「そうか。人生についていろいろ考えてるんだな。
 じゃあ、一つアドバイスしておこうかな。
 今はUFAで任される仕事にすべてを注ぐんだ。」

辻は何も言わずに真っ直ぐに市井の目を見ている。
それは市井の口から言葉が出てくるのを待っているかのようだった。

「いろいろなことに興味があると、ついアレもコレもやりたくなる。
 でもな。腰を据えて何かをやり遂げた経験のない奴は何をやっても
 成功なんかできやしないんだ。
 私の場合は、UFA初のメンズコスメ商品を誕生させたことが一つの
 タイミングだったんだ。
 腰を据えて何かに取り組む経験は早いうちに癖にしておくんだぞ。」

市井は一通り語ると、辻の様子を伺った。
辻はというと、目を輝かせて市井に尊敬の眼差しを送っている。
133 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:20
「ののは……、ののはUFAの商品を一冊の本にしたいのれす!!
 ただのカタログなんかじゃなくて、写真集のように芸術的に仕上げたいんれす!!」

辻は珍しく声を大きくした。
その目は真っ直ぐ市井に向けられている。
まるで、同意を求めるかのように。
デザイナーなどの職人にとって、こだわりは非常に重要な要素であるとともに、
非常に邪魔な要素でもある。
自分の作りたいもの=会社の求めるものではないのだ。
しかし、それを分かった上での辻の発言のように市井には感じられた。
市井は黙ってゆっくりと目を閉じながら頷いた。
それは声に出さずとも、辻には肯定的に伝わった。

「ののは飯田チーフの下で夢のブランド本制作を頑張るのれす!
 他のことは夢を叶えてからやろうと思います!!」

辻は初めて仕事に対して熱い感情を抱いた。
職人気質の市井と話すことで、職人としての自覚でも生まれたのであろう。
市井は昔、飯田と話をしたことを思い出した。
そのときの飯田は珍しく悩んでいた。

『ねぇ、紗耶香。あんたさぁ、制作部に来てくんないかなぁ?
 なんていうか、デザイナーって言ってみれば職人でしょ?
 でも、UFAみたいな普通の会社の制作部に入る子って、ビジネス人間でさ。
 なんか熱意をもって作品を仕上げようって気概に欠けるんだよねー。
 そりゃ、組織人として会社の意向に合った作品にはしなきゃなんないけどね。
 泊まり込みで残業してでも完成度を高めようっていう熱意が足りない!
 あんたの職人魂がうちの子たちにも欲しいよぉ。』

(そういえば、圭織ってそういうとこあったよなぁ。
 ……ふふっ。じゃあ、この子なら大丈夫だね)

市井は辻を見て微笑ましく思った。
そして、ぜひとも飯田の期待に応える人財になって欲しいと思った。
134 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:21
そうこうしていると、洗面所からすっぴんの吉澤が戻ってくる。
もともと吉澤は薄いメイクしかしない。
だから、誰もが吉澤はすっぴんになっても美しいだろうと思っていた。
しかし、実際にすっぴんで現れた吉澤は予想を超える美しさだった。
この美しさを表現する言葉があるとすれば『天才的』という言葉だろう。
それだけ吉澤は驚くほど透き通ったキメの細かい肌をしていた。

「よっすぃー!すごくキレイなのれす!!」

「うん、すごいよ吉澤!ていうか、ちょっと腹立つ!!」

「いやぁ、そんなぁ……って、市井さん!!
 ひどいですよ!!!」

吉澤は市井の言葉に敏感に反応した。
しかし、市井は気にも留めない。

「じゃあ、今回は肩のラインまで撮るから、上半身脱いでね。」

市井の言葉に吉澤は目を丸めた。
そして両手を胸に当てて言った。

「え、ぬ、脱ぐんですか?」

「別に下着まで全部脱げとは言ってないでしょ。」

市井と辻が白い目を向ける。
吉澤は恥ずかしそうにシャツを脱ぎ、下着のヒモを外した。
その間に市井はバスタオルと霧吹きを持ってくる。
吉澤がシャツを脱ぐと、バスタオルを渡した。

「それ、巻いて。」

市井に指示されるがままに吉澤はバスタオルを身体に巻きつける。
そして市井は手に持った霧吹きで吉澤の髪を濡らし始めた。
吉澤の髪は市井の手によって無造作にスタイリングされていく。

「辻ちゃん、申し訳ないけど、あっちに置いてある
 青いボトルの霧吹き持ってきてくれる?」

市井に指示され、辻も霧吹きを持ってくる。
髪のスタイリングが終わると、市井は青い霧吹きに持ち変える。
135 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:22
「吉澤。目、閉じて。」

またしても言われるがままに吉澤は目を閉じる。
市井は吉澤の顔めがけて霧吹きを吹きかける。

「市井さん、さっきのボトルとこっちのボトルは何が違うのれすか?」

「さっきのはただの水。こっちはSEXY BOYの化粧水。」

「で、でも、濡れた感じを出すだけなら水でもいいんじゃないれすか?」

「それは違う。あたしは偽りは嫌いなの。すべて本物で勝負する。」

またしても市井の言葉に辻は感動を覚えた。
すでに市井は辻にとって心の師のような存在になっていた。
一通り吉澤を濡らすと、市井はボトルを辻に渡した。

「さて、吉澤。さっそく撮るから、奥のスタジオに行って。」

市井に促され、吉澤はスタジオへと歩を進めた。
スタジオへ入ると、吉澤はバスタオルを外した。
もともとバスタオルは水に濡れないようにするために渡したものである。

「よっすぃー…、なんかエロいのれす。」

上半身下着姿で濡れているのだから無理もない。

「う、うるさいよ、のの……。」

吉澤は思った。
一緒について来たのが辻で良かったと。
もし加護であったらとんでもないことになっていたであろうと。

「吉澤、恥じらいは捨てなよ。
 エロさはすなわちSEXYさなんだからね。
 いい画が撮れるよ!」

「余計に恥ずかしいっす……。」

照れる吉澤なんかには目もくれず、市井はシャッターを切り始めた。
136 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:22
「ほらほら、表情が硬いぞ!!リラックス、リラックス!!」
「もっといろんな角度、いろんな表情出して!!」
「中澤部長に怒られたときの表情は?!」
「経営陣を前にプレゼンしたときはどんな気持ちだった?!」
「レースやってるときの顔見せて!」
「もっとナルシストになりな!!」

市井はたくさんのリクエストを投げかけた。
何十枚、何百枚という写真を撮り続け、ときには乾き始めた髪や顔を濡らして
撮影が続けられた。
不思議なもので、最初は恥ずかしがっていた吉澤も、段々と乗ってくる。
市井にリクエストされなくても角度を変えて笑顔やシリアスな表情を作っていく。

「吉澤!!ゴールは目の前だよ!!
 ラストスパートかけるよ!!」

市井のかけ声とともに吉澤の表情にも気合が入る。
フラッシュの瞬きとともに吉澤の一瞬がカメラに記録されていく。
SEXY BOY開発者の市井には吉澤の思い描くイメージが容易に想像できた。
市井も吉澤も妥協はしたくなかった。
最後まで納得のいく写真を撮ることにこだわったのだ。
この二人の熱い撮影風景を見ていた人物がいる。
他ならぬ辻である。
市井の撮った写真を加工してチラシに落とし込むのは辻の仕事だ。
プロ意識という職人魂に目覚めつつあった辻にとって、
市井と吉澤の熱い撮影風景は衝撃的だった。
そして、二人の思いを最終的に形にすることへの緊張感がみなぎった。
最後のラストスパートに入ってからはずっと激しい緊張感にスタジオが包まれ、
そのまま撮影終了となった。

「よしっ!こんなもんだろ!!
 なかなかいい画が撮れたよ!」

市井の声で撮影は終了した。
市井は吉澤と辻に撮った写真を見せる。
そこには力強い目線を送る吉澤や、クールに流し目を決める吉澤、
シリアスに俯く吉澤など、さまざまな表情が収められていた。
137 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:23
「よっすぃー、かっこいい……。
 どう見ても男の人に見えるのれす!!」

辻の言葉通り、どれも男性顔負けの力強さのある写真だった。
吉澤は自分の写真を見ていて不思議な気持ちになった。
吉澤自身が客観的に見ても、そこには男・吉澤ひとみがいたのだ。
昔から女性に告白されることが多かった吉澤だが、そのことが妙に
納得できてしまった。
要はそれだけ写真の中の吉澤は男前だったのである。

「それじゃ市井さん、データもらっていってもいいれすか?」

「あ、あぁ。いいけど、ある程度こっちでレタッチしてから渡そうか?」

「いいえ。ののにやらせてくらさい。」

市井は辻の表情で悟った。
今、この子から職人魂の火種を消し去ってはいけないと。
燃え始めた火は一度消えてしまったらなかなか再燃しないことを
市井は知っていた。
市井は写真のデータをMOに落とすと、辻に渡した。

「それじゃ、吉澤、後藤によろしくな。」

「あ、はい。それはいいんですけど……。
 メイクとスタイリングだけさせてもらっていいですか?」

吉澤は撮影したままの姿だった。
ノーメイクで、髪も無造作に濡れていた。
確かにこのままではオフィスに戻れない。
市井は時計に目をやる。
時刻は17時15分。
138 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:23
「別にいいけどお前……、そんなことしてたら帰社するころには
 残業時間に入るんじゃないのか?
 だとしたら、中澤部長に一本報告入れとけよ?」

市井の言葉を受け、吉澤の白い肌がさらに白くなる。
いや、生気が抜けたという表現の方が相応しいかもしれない。

「……ぁ、ぁぁぁあああっっ!!」

吉澤は悲鳴とも取れる声をあげた。

「お前、まさか……」

そう。
吉澤は失念していた。
急に外出が決まったことを中澤に報告していなかったのだ。

「い、市井さん!今日はありがとうございました!!
 さっ、のの!帰るぞ!!!」

そう言うと吉澤はスーツをまとい、荷物をまとめ始めた。

「よっすぃー…、かっこ悪いのれす……。」

辻の呆れ顔など気にしてはいられない。
吉澤はそれだけ必死だった。
心なしか、そんな吉澤を市井は微笑ましく見ているようでもあった。
吉澤は改めて市井に深く礼をすると、慌ただしくスタジオを後にした。
139 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:24
オフィスまでの道中、手グシで髪を整えた吉澤だったが、やはり濡れた質感と
ノーメイク、カッターシャツ姿がどことなく男性像を彷彿とさせる。
しかし吉澤はなりふりかまっていられなかった。
足早にオフィス内を移動する吉澤。
そんな吉澤に必死についていく小さな辻。
制作室の前まで来て二人は別れると、吉澤は意を決して隣の企画室に入った。

「申し訳ありません!吉澤、ただいま戻りました!!」

ドアを開けるなり、吉澤はそう言って深々と頭を下げた。
しかし、何の反応もない。
吉澤は恐る恐る企画室内の様子を見た。
そこには淡々とパソコンに向かう中澤が確かにいた。

「部長……。申し訳ありません。
 制作部へチラシの確認に行ったまま、なりゆきでモデル撮影に直行することに
 なり、スタジオまで出向いておりました。」

吉澤は改めて頭を下げた。
しかし、中澤の反応は意外なものであった。

「まぁ、今回はええわ。よぉ反省しとるみたいやからな。」

中澤は表情こそ厳しいが、特別なお咎めはなさそうである。
それはかえって吉澤を不安にさせた。

「ぶ、部長……。なんで怒らないんですか?」

「なんや?怒られたいんか?
 さっきも言うたやろ?ちゃんと反省しとるやつにそれ以上言うことはない。
 まぁ、次同じことやったら話は別やけどな。」

「部長……。今回は本当に申し訳ありませんでした!
 以後、気をつけます。」

「まぁ、その言葉だけで十分や。
 それより吉澤。その格好やけど……。」

中澤は吉澤の全身を、視線を往復させて眺めた。
140 :あと一ヶ月! :2011/07/03(日) 21:24
「あ、これは……。」

吉澤はモデルの件を伝えようとしたが、中澤がそれを遮る。

「やるやないか、吉澤。
 まさか自分をモデルに使おうとはな……。
 いや、女性を起用するってところがええわ!」

ここにきて初めて中澤の表情が和らいだ。
その様子を見て、吉澤も安堵する。
と、そのとき突然、中澤が思い出したように声を上げた。

「あかん!もうこんな時間や!はよ仕事整理して終わらせんと、
 今夜はゴールデンウィークのデートの準備があるんやった!
 あいつ時間にうるさいからなぁ。
 ほな、吉澤!あんたも連休前の仕事整理ちゃんとせぇよ!」

中澤はそれだけ言い放つと、早々と部屋を出て行った。

「な、なんか怒られないとかえって気が抜けるなぁ……。」

しばらく吉澤は呆然と立ち尽くした。
ふと気付くと時間は18時になろうとしていた。
吉澤はデスクにつき、今日の外出で変更が生じたスケジュールの
修正をした。
明日からゴールデンウィークである。
連休前のスケジュール調整は社会人の鉄則であった。
141 :rainbow :2011/07/03(日) 21:27
更新です!
いやー、もっとテンポのいい展開にしたいのですが、なかなか…。
こんな小説にお付き合いいただいている皆様には頭が上がりません。。
142 :rainbow :2011/07/03(日) 21:35
> 131さん

自分もこんな人たちに囲まれて仕事したいですw
厳しくも楽しく仕事ができそうです!
143 :rainbow :2011/07/03(日) 21:36
何のイタズラか。。。
参加予定だったドリムス。紺。
友人の結婚式と被ってしまいました。。。
144 :名無飼育さん :2011/07/04(月) 23:39
イケメンでエロい吉澤さんに惚れてしまいそうなのれす。
145 :あと一ヶ月! :2011/07/07(木) 22:43
翌朝、吉澤はいつも通り目覚めると、いつも通り朝のウォーミングアップに出かけた。
そして、ウォーミングアップから帰ると、念入りに愛車の手入れをした。
メインで使うロードバイクは白のボディにカラフルなレインボーグリップが映え、
ところどころに散りばめられたライトグリーンが鮮やかな配色だ。
もう一台、気分によって乗り換えるバイクは青と黒を基調にした
クールなデザインに赤いグリップが力強さを演出している。
吉澤は自転車乗りを楽しみたいときにはメインバイクに乗り、
仕事などで気合いを入れたいときにはサブバイクに乗る。
いつもの朝のトレーニングではメインに乗り、帰ったらメインの手入れを
するのだが、今日の吉澤は違った。
メインの手入れを終えると、サブも念入りに手入れした。
愛車たちを手入れするときの吉澤はいつも顔がニヤけている。

ピーンポーン

吉澤の自宅でインターホンが鳴り響く。
吉澤はそれを分かっていたかのようにモニターに駆け寄り、
映し出された人物を確認するとオートロックのドアを解除した。
自室の玄関まで行ってやってくる人物を待つ。
やがてエレベータが吉澤の部屋の階まで来ると、中から小柄な女の子が出てきた。
146 :あと一ヶ月! :2011/07/07(木) 22:44
「吉澤さーん!おはようございます!!」

元気よくそう言う女の子は、どこか少しヤンキーっぽい、気の強そうな外見だ。
しかし、服装は軽装でスポーティである。

「よぉ、れいな!おはよー!」

気の強そうな女の子は田中れいな。
吉澤の卒業した大学の同じロードバイクサークルの後輩だ。
現在、大学4年生である。
すると、エレベータからもう一人女の子が降りてきた。
雪のように白い肌にくりっとした大きな目の印象的な美少女だ。

「はじめまして。道重さゆみです。」

道重はそう言って軽く会釈した。
道重も吉澤と同じ大学だが、サークルに入っていなかったため初対面だった。

「なんだよ、れいなの彼女っていうから、ギャル系かと思ったら
 めっちゃ可愛いじゃんか!!」

吉澤はニヤニヤしながら肘で田中の脇をつつく。

「よ、吉澤さん!!」

田中はというと、照れるとか怒るというより少し焦っている。
その表情を感じ取った吉澤は道重の異変に気付いた。

「さすがれいなの先輩ですね、吉澤さん!
 さゆみの可愛さにすぐに気がつくなんて!」

道重はそう言って両手を頬に当てて首を傾けた。
吉澤はあ然とし、田中は額に手を当てて天を仰いでいる。

「あ、でも、逆に言えば、誰でもすぐ気がつくくらい
 さゆみが可愛いってことですよね!」

道重は完全に自分の世界に入ってしまった。
うな垂れる田中。
そんな田中の肩に吉澤はそっと手を添えた。
田中の背中に吉澤の優しさが染みる。
147 :あと一ヶ月! :2011/07/07(木) 22:45
「じゃ、じゃあ、えっと……、道重さんってのもよそよそしいよね。
 なんて呼んだらいいかな?」

吉澤は場を仕切り直すかのように話を切り替えた。

「さゆとかさゆみでいいですよ、吉澤さん。」

田中は好きなように呼んだらいいと言わんばかりだ。
それに良い気がしないのは道重である。

「えー。『さゆ』って呼んでいいのはれいなだけなんだから!」

その一言に田中は完全に肩を落とした。
あまりの後輩の不憫な姿に吉澤は苦笑いだ。

「よし!じゃあ、シゲさんだ!
 うん、それがいい!!我ながらいいセンスしてるぜ!」

吉澤は自分のネーミングセンスの良さに満足そうにどや顔を決めた。
道重は頬を膨らませて不満顔である。

「ええやん、さゆ!
 うちはそのギャップがめっちゃ可愛いと思っとぉよ?」

田中は一生懸命に道重に笑顔を向ける。

「ほんとぉ?」

道重は複雑そうな表情をしている。

「れいなが嘘つくとでも思いよーと?
 さゆはうちの自慢の彼女やけんね!」

田中の言葉に道重はご満悦だ。
その顔を見て田中も胸を撫で下ろした。
148 :あと一ヶ月! :2011/07/07(木) 22:47
「じゃ、玄関先で立ち話ってのも何だから、入りなよ。」

吉澤に促され、二人は吉澤の家に入った。
吉澤邸を訪れる人はまず部屋にどんっとその存在を主張する
2台のロードバイクに目を奪われるが、二人も例外ではなかった。

「吉澤さん!コレ、めっちゃかっこいいですね!!」

田中はメインバイクを指して言った。
メインバイクは吉澤が社会人一年目のときに初ボーナスで買ったのだ。
サブは学生時代から乗っていたため、田中もよく知っている。

「さゆみ、こっちに乗りたい!!」

道重もまたメインを指す。
その言葉に吉澤と田中は硬直する。

「な、何言ぃよぉと?!
 それは新しいやっちゃけん、さゆは青い方に乗らんと!」

このゴールデンウィーク、吉澤たちはツーリングを予定していた。
大学時代、サークルで仲のよかった吉澤、田中、そしてもう一人の
三人でのツーリングだった。
しかし、道重の強い希望で四人で出かけることになったのだ。
目的地は岐阜県にある下呂温泉。
行きは途中で名古屋を、帰りは富士山麓を経由する。
遠征になるため、最初、田中は道重の参加を渋っていたが、
道重も中学、高校とテニスをしていて体力には自信があったので
吉澤たちが快く承諾した。
吉澤に至っては、ロードバイクを持たない道重に自分の愛車を貸すと
名乗り出たのだ。

「いいよ、れいな。シゲさん、好きな方に乗ったらいいよ。」

吉澤は少しも嫌な顔をせず、笑顔でそう言った。

「ほ、本当にいいんですか?」

さすがの道重も遠慮がちである。

「気にしない、気にしない!
 大切に扱ってくれたらいいから。」

吉澤はそう言うとメインバイクの高さを道重のサイズに調整した。
道重は申し訳なさそうな顔をしながらもメインバイクにまたがる。
道重のサイズを再度確認すると、吉澤は微調整をする。

「ぴったりです!吉澤さん、ありがとうございます!」

道重はオシャレなデザインのロードバイクにまたがり、ご満悦だ。
149 :あと一ヶ月! :2011/07/07(木) 22:47
「じゃあ、まいちゃんとの待ち合わせ場所まで練習がてら走ってみよっか。」

吉澤の提案で三人は吉澤のマンションを出た。
吉澤達は近くの公園で待ち合わせをしていた。
公園に着くと、噴水の前にロードバイクを停めている女性がいた。

「まいちゃーん!お待たせー!!」

呼ばれた女性は茶髪のロングヘアにくっきりとした目、
すらっとした身長にひまわりのような笑顔をしていた。
彼女の名前は里田まい。
吉澤とは大学時代の同級生で同じサークルだった。

「よっすぃー、れーな。久しぶり!!」

「里田さん!お久しぶりです!」

大学を卒業してから里田が田中と会うのは今回が初めてだった。
里田は田中の横にバイクを止めた道重に視線を移した。

「あっ、この子がれいなの彼女ね!かわいいー!」

里田の何気ない社交辞令に田中と吉澤が硬直する。

「わぁ〜!やっぱりそう思いますか?
 道重さゆみって言います!よろしくお願いします!」

道重は目を閉じて首をかしげた。
しかし、里田には動じているような節は見られない。

「さゆみちゃんって言うんだぁ!
 うん、ほんとに色白でかわいいー!!
 あたしは里田まい。よろしくね!」

里田は言ってみれば純粋であった。
あまり物事を深く考えないところが長所であり短所でもある。
田中と吉澤は安堵した。

「里田さん、今日はすみません。
 さゆの我がまま聞いてもらっちゃって…。」

田中は道重がツーリングに参加することを詫びた。

「ううん。全然だよー!
 むしろ、さゆみちゃんのお陰で私も旧友に会えるんだし!
 旅は人数が多い方がいいじゃん!」

道重が参加したいと言っていると田中から相談されたとき、
吉澤は石川と後藤に声をかけていた。
二人に各地点で合流するよう、話を持ちかけたのだ。
吉澤としては仲のいい吉澤・田中・里田の三人の中に一人で参加する
道重への気遣いのようなものであった。
まずは里田と高校時代の友人である石川に声をかけ、
石川一人ではいけないと思い、後藤に声をかけたのだった。
バイクには台数に限りがあるだけでなく、素人のロングライドは憚られたので
二人は下呂で直接合流することになっている。
150 :あと一ヶ月! :2011/07/07(木) 22:49
「よーし!じゃあ、メンツは揃ったんだし!
 まずは名古屋に向けてしゅっぱーつ!!」

吉澤の合図で四人はバイクをこぎ出す。
初ライドになる道重への負担を軽減するため、吉澤を先頭に
里田、田中、道重の順に列を作る。
道重のペースと実力をつかむため、吉澤はスロースタートした。

「さゆ!キツくなったられーなに分かるように大きい声出したらいいけんね!」

田中は背中の向こうにいる道重に向かって叫んだ。

「ありがとう、れいな!!さゆみはまだ大丈夫だよ!」

道重も前方を走る田中の背中に向けて叫び返す。
二人のやり取りを前方で聞いていた吉澤と里田は微笑ましく笑っている。
151 :あと一ヶ月! :2011/07/07(木) 22:50
気持ちの良い青空の下、四人は颯爽と走って行く。
前方を走る吉澤の指揮で列を切ることなく駆ける。
東京を抜け、神奈川に出ると海沿いの道を取った。

「シゲさん!結構走ってるけど、大丈夫?!」

最前列の吉澤が叫ぶ。
しかし、最後尾の道重はうまく聞き取れない。
すかさず田中が間をつなぐ。

「さゆ!もう結構走っとぉけど、大丈夫と?!」

「うん!まだもうちょっと大丈夫!!」

道重は声を上げた。
田中と吉澤はその声に安心した。

「でも、よっすぃー!初ライドだし、そろそろ休憩挟んだ方がいいよ!
 次コンビニあったら休憩しよ!」

里田は道重に気を遣った。
吉澤はもう少し先まで走ってから休憩するつもりだったが、
里田の意見ももっともだと思い、コンビニに寄った。
四人はバイクを駐車場の脇に停める。
ふと、田中は道重の顔を覗いた。

「ちょっ、さゆ!すごい汗やん!!
 ちゃんと水分と塩分補給せんといかんよ!!」

田中は慌ててバイクのドリンクホルダーからボトルを取り出した。
道重は静かにそれを受け取り、ゴクゴクとスポーツ飲料を飲む。
道重には田中のその行為が嬉しかった。
152 :rainbow :2011/07/07(木) 22:52
更新です!
そろそろ書き溜め分が尽きてきました。。。
相変わらずの変則シフトのため、更新がまばらで申し訳ないです。
153 :rainbow :2011/07/07(木) 22:55
> 144さん

イメージは単行本版の「Hello!ヨッスィー」の表紙です。
あの肌の美しさは犯罪級ですね、えぇ。
154 :rainbow :2011/07/07(木) 22:58
余談ですが、HANGRY&ANGRY-fの新曲最高ですね!
HANGRYさんがかっこいい!
いや、今回はむしろ可愛い!!
155 :名無飼育さん :2011/07/08(金) 21:46
いいですねぇ!仲間に入れてもらいたいです。楽しい出来事が待ってるのかな?

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