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ファーストブレイク 4th period

1 :みや :2008/01/05(土) 22:58
これの続き
ttp://mseek.nendo.net/sky/1099835648.html
ttp://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/water/1136560613/
ttp://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/water/1168701115/

高校生がバスケする話
吉澤とか石川とか藤本がそれぞれの学校で中心ぽくいて、周りにいろいろな人もいます。
更新は基本週一

第六部まで終わって、このスレッドでは第七部からになります。
ここから読んで気に入ったら一つ前のスレッドに戻って、それでも面白かったら最初に戻るくらいでいいと思います。
いきなり最初のスレから読まなくても、ここから読んでもまあ大丈夫だと思うんで。

よろしくお願いします。
936 :第八部 :2009/03/14(土) 16:36
 「でも、まじめな話し頼りにしてるんですよ。市井さんのこと。まじめに言うと嫌がりそうだけど、やっぱり市井さんって先輩なんすよ。そういう意味で吉澤、恵まれてると思いますよ。普通、キャプテンやっててそれより先輩っていないじゃないですか」
 「やりにくいだけだろ」
 「そんなことないですよ。たぶん、キャプテンのきつさとかそういうのいちばん分かってるの市井さんだと思うし。あややや福田みたいなガキとはその辺違うわけで」
 「松浦は知らないけど、明日香は中学の時キャプテンやってただろ確か」
 「やってただけじゃダメなんですよ。福田はバスケはうまいけど、リーダーみたいな感じじゃないし。市井さん、保田さんでさえも頼りきってたリーダーだったっていうじゃないですか。そういう人が後ろで見ててくれるっていうのは吉澤にとっては大きな支えなんですよ」
 「おまえ、かわったよな」

 市井はため息ついて、両手に持ったトーナメント表に目をやる。
 インターハイの組み合わせ。
 そこに自分たちの学校の名前があり、しかもシードまで付いている。
 不思議な光景だ。
 こんなところまで来るつもりはなかったのだ。
 県大会で上位までいけるチームを作り上げたキャプテン、としてお山の大将なり井の中の蛙になりなれればいいだけで、それ以上は望んでいなかった。
 いや、ちょっとは望んだのかもしれない。
 バスケは関係ないけれど、もっと大きなところで大将出来るようになりたくて留学とか分けわかんないことしてみたのかもしれない。
 その結果は、ずっと井戸の中にいれば良かったと思っただけだ。
 自分は、ここまでチームを持ってきた後輩たちの成長についていけてないな、と思う。
937 :第八部 :2009/03/14(土) 16:36
 「キャプテンやるかどうかだけで一ヶ月迷ってた奴が、こんなになるとは思わなかったよ」
 「背中押したの市井さんじゃないですか」
 「私なんかしたっけ?」
 「新チームの初日。いいからランニングって号令掛けろって」
 「それ比喩でもなんでもなくホントに物理的に背中押しただけじゃんか」
 「あれで、新チーム動き出しちゃったから、引っ込みつかなくなって、結局こうやってキャプテンやることになったんですよ」

 あまりはっきり覚えていないけれど、いじいじしてていらついたから本当に背中を押しただけだったような気がしている。

 「だから、頼りにしてるんで、はやく風邪治してくださいよ」
 「知らないってそんなの。風邪治んなくて無理して期末うけて、それで風邪こじらせて入院してやるよ」
 「困りますって。早く戻ってきてもらわないと。市井さんにも辻ちゃんと合わせてもらわないといけないんですから」
 「なんだよそれ。意味わかんねーよ」
 「福田外して辻ちゃん入れるパターン。それ今日あたりからやろうと思ってたのに市井さん休むんですもん」
 「そんな都合知るか」
 「どこに入れるかわかんないですけど、辻ちゃんもう少し長い時間使う感じでいきたいんですよ。上はみんな休みながらって感じで」
 「みんなって、明日香とか?」
 「あいつもそうだし、あやや下げて頭冷やさせたり。市井さんもスリーポイント入らなくなったらリズム代えるためにベンチ下がったり。ていうか、辻ちゃんスタメンでも別にいいんですけど。まあ、その辺は試合直前にならないとわかんないですけど」
938 :第八部 :2009/03/14(土) 16:36
 どこまで本音だか知らないが、戦力外通告しにわざわざうちにまで来たわけじゃないらしい。
 改めてトーナメント表に目をやる。
 二つ勝てば富岡。
 インターハイベスト8
 悪く無い響きだ。
 そのチームを最初に立ち上げたのは自分だ。
 その最初から今まで残っているのは自分しかいない。
 県大会ベスト8で十分だったのに。
 初戦の相手はきついらしいけれど、それを超えればとてつもないところまで手が届くかもしれない。
 そのとき、その場にいたいよな、と思う。

 「つーかさあ、お見舞いってよくわかんない制度だよな」
 「なんですかそれ」
 「病気の人間叩き起こして、眠いって言ってるのにあれこれ話させる制度だろ。病人のためにあるんじゃないんだよな。暇人の暇つぶしのためにあるんだな、お見舞いって」
 「意味わかんないすけど」
 「市井さん、眠いの?」
 「さすがにあやかは察しがいい」

 トーナメント表を渡す。
 あやかが受け取ると、市井はするするとベッドの中にもぐりこんで行く。
 別に眠くないけれど。
939 :第八部 :2009/03/14(土) 16:36
 「じゃあ、市井さんの寝顔見てから帰ろう」
 「私の寝顔高いよ」
 「写メ撮ったら高く売れる?」
 「万単位の値が付くな」
 「無防備に寝てる市井さんって結構かわいいんですよね」
 「吉澤、何言ってるんだお前」
 「合宿とかで見ますもん。寝顔くらい」

 市井は仰向けで、二人はそれを覗き込むような位置関係になっている。
 まだ目を開けていて、それぞれと視線が合う市井は、なんだかテレを感じて布団の中に顔までうずめて丸くなった。

 「帰れ帰れ。風邪移るぞ」
 「寝顔見せてくださいよー」
 「ただじゃ見せない」
 「寝巻きもかわいいですね」
 「ぬいぐるみとかも置いてあってかわいい部屋ですね」
 「帰れ!」

 完全におちょくりモードになってきた二人。
 ただただ本当にうざい。
 布団の中にうずくまっていると、あやかの声がした。
940 :第八部 :2009/03/14(土) 16:37
 「しょうがないなあ。確かにあんまり長くいても邪魔だろうから帰るよ」
 「トーナメント表は置いてきますね」
 「おう」
 「顔くらい出してよ」

 まあ、それはそうだろう、と市井は顔を出す。
 玄関までは行かずとも、さすがにまともに見送り位はしておこうと思う。
 ベッドからずりでて上半身だけ起こした。

 「明日は出来れば来てくださいよ」
 「明日はまだわかんないな。来週は行けると思うけど」
 「はやく風邪治すのよ」
 「子ども扱いかよ」

 すでに立ち上がっているあやかが、高い位置から手を伸ばし市井の頭を撫でる。
 文句言ってみたけれど、あやかならあまり悪い気はしなかった。

 「じゃあ、ゆっくり寝てください」
 「わざわざ悪かったね。心配掛けて」
 「いえいえ。市井さんの寝顔も見れたし」
 「見てないだろ」
 「寝巻きも見れたし」
 「吉澤は余計なこと言わなくていいんだよ」

 行け、行け、と手で追い払う。
 吉澤とあやか、二人は笑っていた。

 「じゃあ、明日」
 「明日は自信ないけどな」
 「じゃあ、また明後日」
 「おう」

 二人は出て行った。
941 :第八部 :2009/03/14(土) 16:37
 市井はもう一度トーナメント表を手に取る。
 二回戦、三回戦、二つ勝てば富岡。
 全体も見てみる。
 去年当たった相手は反対側の山にいて、とてもじゃないが当たりそうに無い。
 矢口涙目だなこれ。
 涙目以前に一回戦勝てるのかしらないけど。
 滝川も反対側だ。

 とにかく初戦だな、と思った。
 そして、そこに立ちたい。
 いまさらしゃかりきに努力、みたいな真似する気にはならないけれど。
 矢口のポジションがうらやましい・・・。

 滝川カップで再会した時に、思わずメアドなんか交換してしまった。
 本格的にコーチやることにしたから、と連絡が来たときには驚いたが、今ではそれは妬みの対象くらいの感じになっている。

 十分くらいトーナメント表を眺めてから、市井は部屋を出た。
 おなかすいた、と親に昼食をねだる。
 あやかじゃないけど、病気の時はまるっきり子供だな、と思った。

 翌日、休んだ理由は風邪だったので、念のため練習を休んで、市井は月曜日から復帰した。
942 :名無し娘。 :2009/03/14(土) 19:26
なんという絶妙なカッコ悪さ!好きっ!!
市井は保田分か後藤分が少ないとダメになる。そう思っています。

組み合わせ予想は外れでした。
そういえば最近主人公(?)吉澤視点の話が少ない。むー。
943 :tama :2009/03/15(日) 01:00
なかなかいい展開。

富岡とまともに戦うためには市井さんがエースの柴田さんと戦わなきゃいけない訳で。
つまり吉澤・市井の伸びが重要ですね。

今後の展開がますます期待ですね。
944 :名無飼育さん :2009/03/20(金) 21:15
あれ?富岡のエースって石川じゃん?
945 :島根っ子 :2009/03/22(日) 00:39
市井さんの気持ちも固まったようですね☆
3枚目な感じがよく似合ってます。
矢口さんとは違う、市井さんらしさでがんばってほしいです☆

よっすぃーもがんばれ〜♪
946 :作者 :2009/03/22(日) 00:42
>名無し娘。さん
そのうち誰かに怒られるんじゃないか、と思いながらも、この人はこんな扱いになっちゃってます

>tamaさん
まあ、まずはそこまでたどり着けるのか、って話ではあるのですが

>>944
モーニング娘。の今のエースは誰ですか? みたいなもんで。 見解はそれぞれあってもいいかと
947 :第八部 :2009/03/22(日) 00:43
 組み合わせの発表は出場チームにとっては当然気になるものである。
 全国各地、それを見ながら会話が弾む。

 「やぐっつぁん、この一回戦どんなとこ?」
 「知るか。これから調べるんだよ」
 「勝てる?」
 「分かるわけないだろ」
 「でも勝とうよ」
 「そうだな。勝って二回戦で一泡くらい吹かせたいよな」

 後藤と矢口。
 二人、去年の冬の選抜は出たが、夏のインターハイは初めての経験である。

 「うちらさあ、いつもこういうの組み合わせ運悪くない? 去年もなんか強いところだったし」
 「運の良い悪いの前に弱いんだよ。弱いの。ぎりぎりでインターハイでてるチームに運の良い組み合わせなんか無いの」
 「でも、二回戦で富岡とあたんなくてもよくない?」
 「それを言う権利があるのは一回戦勝ってから」
 「やぐっつぁん、勝たせてよ」
 「おいらが勝たすんじゃないだろ。ったく」

 東京聖督、一回戦に勝つことが出来れば二回戦は富岡と当たる山に入った。
 ついてないといえばついてないが、偉そうに組み合わせを語る権利のあるチーム力じゃない、というのが矢口の見立てである。
948 :第八部 :2009/03/22(日) 00:43
 「なんか変わったことまたやるんですか?」
 「何、変わったことって、加護ちゃん」
 「去年、なんか変わったことやったって聞いたんですけど、そういうの」
 「ああ、トライアングルツーね。まだわかんない。相手次第だよ。相手調べてからだね」
 「絵里、やりたいです」
 「えりりん、トライアングルツー何か分かってるの?」
 「三角形二つ?」
 「ちげーよ・・・」

 インターハイ予選から一ヶ月。
 矢口も一年生を把握してきた。
 主力はボケばかりかよ、とちょっと頭が痛い。
 後藤って結構しっかりしてるんだな、と逆説的に感じるようになった。

 「とにかく一回戦な一回戦。その先は何も考えなくていいから。そんな偉そうな立場じゃないから」

 全国大会での一勝。
 これが目標だな、と矢口は思った。
949 :第八部 :2009/03/22(日) 00:43
 滝川の寮は、割と文明から隔離されているので情報は直接入らない。
 インターハイの組み合わせなどの公的情報も、学校で先生から配布される。
 その場で感想などを語っている空気はとても無いので、寮に戻って夕食後にでもベッドの上にトーナメント表が広がることになる。

 「久しぶりじゃない? 富岡と当たらない山になるの」
 「久しぶりって言うか初めてでしょ。美貴たち入ってから」

 キャプテン部屋に三年生が群れる。
 いつもの光景だ。

 「逆に言うと決勝まで行かないと当たらないんだよね」
 「行くよ。大丈夫」
 「自信たっぷりだなあ」
 「富岡にも当然負けないけど、それ以外にも負けないし。ていうかさあ、美貴達富岡以外に負けたこと無いでしょ」
 「そういえばそうだよね」

 去年のインターハイ予選はあまりに特殊すぎる理由で負けた。
 藤本たちの頭の中から、それは統計的にはなかったことになっている。
 一年生の時、インターハイ準々決勝、国体準決勝、冬季選抜大会準々決勝、全部富ヶ岡に負けた。
 去年の選抜も三回戦で富ヶ岡に負けた。
 それ以外のチームに負けたことは、実は無い。
950 :第八部 :2009/03/22(日) 00:43
 「これ、去年の準三冠のとこ?」
 「あれだ。ボックスワン」
 「今年もそれなの?」
 「あの、名前なんだっけ? あのエースがいる限りそうなんじゃないの?」
 「まだいるの?」
 「去年二年なんだからいるでしょ」
 「美貴に来ると思う? それともまいに来る?」
 「私の方に来るんじゃない? 身長差あるし、美貴には付かないと思うけど」
 「でも、美貴止めたほうがうちの攻撃力なくなるでしょ」
 「自分で言うかそれ」

 是永美記。
 やはり藤本たちにとっても気になる存在だ。

 「あ、あいつ呼ぼう」
 「なに?」
 「オタガキ呼ぼうオタガキ。こういう話するときは便利だ」

 里田とあさみ、顔を見合わせて苦笑い。
 その呼び方は無いだろ、と思うけれど突っ込みはしない。
 藤本が自分で立ち上がってどこかへ電話を掛けた。
 数分後、新垣がやってきた。
951 :第八部 :2009/03/22(日) 00:44
 「新垣、中村学院ってどんなチーム?」
 「是永さんを中心にした、というか、完全なワンマンチームです」
 「予選とかってどうだったの?」
 「県予選は力の差があったみたいで、是永さんが出ている時間は大分短かったですけど」
 「やっぱり今年もボックスワンなの?」
 「はい。予選ではでだしマンツーだけど後はボックスワンだったそうです」
 「新垣さあ、どこでそういう情報とって来るの?」
 「学校のメディアルームで。昼休みに見てます」
 「引きこもりのネットオタクめ」

 引きこもりの意味が少々おかしいが、藤本はそう言いつつあきれた笑みを見せている。

 「準決勝まで残ってくると思う?」
 「どうでしょう。九州大会は何とか優勝したみたいですけど、うわさだと去年ほどの力は無いって言われてます」
 「で、来るの来ないの?」
 「是永さん次第だと思います」
 「去年ほどの力は無いっていうのは、周りのメンバーがってこと?」
 「はい。特にディフェンスが今ひとつっていう評判です」
 「是永は美貴につくと思う? それともまいにつくと思う?」
 「わかんないですけど、ボックスディフェンスが不安だとすると美貴さんの方に付くんじゃないかと思います」
 「なんで? ゾーンが不安ならまいについたほうが良くない?」
 「もし、是永さんがまいさんを止めたとしても、美貴さんがいる限り他が生きちゃうから、他で点を取られてしまいます。だけど、美貴さんをつぶせば周りを生かしにくくて、後は個人技ってことになっちゃうんで。個人技ももちろん、まいさんとかすごいんですけど、どっちに賭けるかって言ったら、美貴さんつぶしにいった方が確率高いって思うんで」
 「さすが、美貴のがまいより重要人物だってわかってるじゃん」
 「そういうこと言ってるんじゃないでしょ」
952 :第八部 :2009/03/22(日) 00:45
 変なところで張り合って見る藤本と里田。
 部屋に通されて直立不動状態で話しさせられていた新垣だったけど、あさみが、まあすわんなよ、と促す。
 藤本がトーナメント表の前を指差してここに来い、とやると新垣はそれに従って座った。

 「他、なんか怖いとこってある?」
 「三回戦の桜華学院」
 「昔強かったってとこ?」
 「今は三年生の韓国人留学生が柱です。まいさんとその、ソニンさんてので勝負です。まいさんが勝てれば後は全体勝てると思います」
 「中村学院の小型版みたいな感じ?」
 「ボックスワンでもないですし、ちょっと違うような気はしますけど・・・」
 「ディフェンスはマンツーなの?」
 「知ってる限りではそうです」
 「留学生以外は強いの?」
 「それなりのチームだと思います。やっぱり元々強かったチームですから。インターハイでも三回戦、ベスト8くらいのチーム力はいつもそろえてくるみたいで」

 滝川は、順当に行けば三回戦ではこの桜華学院が来ると見込んでいる。
 その先、準決勝で第二シードの中村学院と当たる予定だ。

 「反対側ってどうなの? 富岡が普通に来るの?」
 「関東大会苦戦したらしいんでわかんないですけど。準々決勝が山かもしれません」
 「準々決勝だと、これ。松江? あそこか」
 「松江かもしれないですし、関東大会で苦戦した栃木の青鵬女子か、どっちかだと思います」
 「松江って、この前来たチームだとちょっと力の差なかった?」
 「まい分かってないな。あそこはもう一人ガードがいたんだよ本当は。それがいたら富岡のガードだと負けてると美貴は思う」
 「福田さんですか?」
 「そう」
 「美貴知ってるの?」
 「一つ下だけど、あの子はうまかった。中学の時美貴と五分だなって思ったのはあの子だけだった」
 「美貴が五分って言うってことは、数倍美貴よりうまいってことか」
 「なんでそうなる」

 里田は福田明日香を知らない。
 新垣が解説した。
953 :第八部 :2009/03/22(日) 00:45
 「去年の国体で、松江単独チームじゃないですけど富岡と試合してます。そのとき、富岡の高橋さんを圧倒してたのが福田さんでした」
 「高橋ってあのサル?」
 「サルと言うか、えーと、まあ、あの、そうです」

 ちょっと口ごもったけれど新垣は肯定する。

 「あれがやられたか」
 「手も足も出ないって感じでした」
 「でも、試合は富岡勝ってるんでしょ」
 「その時は松浦さんが出てません」
 「なんで?」
 「映像はっきり見えないんですけど、足にギブスしてベンチに座ってるのがいるので、多分それが松浦さんだったんだと思います」
 「松浦って誰?」
 「あれだよあれ。ワンオンワン優勝した子」
 「ああ、あの子か」

 里田がちょっと話しに付いていけていない。

 「ていうか、国体の映像なんて見れるの?」
 「先生が持ってました。去年の選抜の準備のためにどこかから手に入れたそうです」
 「買ったの?」
 「市販のものじゃないと思います。だれかが手で取ってる感じでした」
 「お前もよくそんなの見る気になるよな」
 「面白いんです。見てると」

 藤本はあきれた顔はして見せるが特にそれ以上否定はしない。
954 :第八部 :2009/03/22(日) 00:46
 「外二枚があるから富岡も松江には苦労すると思うよ」
 「なんかもう一つ強いみたいなこと言ってなかったっけ?」
 「富岡が関東大会苦戦したって?」
 「はい」
 「そこと松江が、これか。二回戦?」
 「どっち勝ちそう?」
 「んー、わかんないです。留学生次第ってところでしょうか」
 「そこも留学生かよ。あっちもこっちも。いつから国際大会になったんだ?」
 「北海道はシベリアだから外国とか言われちゃうんじゃないですか」
 「余計なこといわなくていい」

 新垣が頭をさすっている。
 ちょっとは手加減して叩けばいいのに、とあさみは思う。
 北海道はシベリア、と矢口に言われたことは藤本しか知らない。

 「センターとガードの留学生がいて、オンコートワンだから一人づつしかフロアには出ないんですけど、どっちも富岡のマッチアップより上手だったらしくて」
 「黒人?」
 「中国人です。リンリンとジュンジュンっていう」
 「パンダAとパンダBか」
 「それどっちがAなの?」
 「細かいことは気にしなくていいよ」

 段々話が違う方向へそれて行っている。
 あさみが元へ戻した。
955 :第八部 :2009/03/22(日) 00:46
 「その二人は、松江の子だと誰とマーク付くの?」
 「関東大会は映像見てないんでわかんないですけど・・・」
 「センターは石川ってわけにはいかなかっただろうから、一年だか誰だかが付いたんだろ。それは分かるけど、ガードでサルか、それとも柴田あたりでマッチアップしたのかわかんないけど、どっちにしてもその二人でダメだったってことは結構強いかもな。福田明日香でもてこづるのかも。センターの方はよっちゃんさんかあの南国系美人だっけ、どうかなあ」
 「そこが決勝まで来るってことある?」
 「美貴はいやだな」
 「強いガードがいるチームはイヤ?」
 「そうじゃなくて。留学生がチームの中心ってのが気に入らない。ガードがうまいのはいいよ。その方が面白いから。別にワンマンチームでもいいよ。是永美記? 名前かぶって、相手してやろうじゃないの。でも、留学生連れてきてお手軽に強くなるのは気に入らない」

 藤本がよくしゃべる。
 自分がキャプテンになってから初めての全国大会である。
 組み合わせ表を前にすれば舌もすべる。

 「まあ、人のことより自分のことだよね。まずは桜華のソニンだっけ? それからかな。私も見てみようかな」
 「見ますか? 一緒に」
 「あるの?」
 「桜華なら去年の選抜の映像があります。美貴さんも見ますか?」
 「いいよ、美貴は。映像とかは別に」
 「じゃあ、私一人で行ってくるよ」
 「好きにすれば」

 ここは里田の部屋であるが、主の里田が出て行っても藤本は居座る気でいる。
 里田は新垣と連れ立って出て行った。
 床に座っていた藤本は、里田が出て行って空いたベッドの上へ移動する。
956 :第八部 :2009/03/22(日) 00:46
 「あの子あんなにしゃべれるんだね」
 「オタガキのくせに変に自信付いちゃってるな」
 「自信って?」
 「よそのチームの情報は誰よりも自分が良く知ってるって。まあ、実際そんな感じになってるけど」
 「それを認めてるから美貴呼んだんでしょ」
 「まあね。よく勉強してると思うよ」
 「へー、美貴がそうやって褒めるのって珍しいね」
 「あれは美貴には真似できない。っていうか、真似しようとも思わないけど」

 褒めておいて不機嫌そうな顔を見せる藤本にあさみは苦笑いする。
 美貴らしい、とは思う。

 「あとはコートの上で何が出来るかなんだよね」
 「でも、最近はトップでやってるんでしょ」
 「先生どうする気なんだろう。美貴の控えみたいな感じにしたいのか、美貴と一緒に使いたいのか、よくわかんないんだよね」
 「先生は私たちと違って、来年、とかも考えないといけないから美貴の控えって感じなんじゃないの?」
 「美貴の代わりにするにはまだまだって感じだけど」
 「いきなりそこまで行くのは無理でしょ。よくやってるんじゃないの?」
 「なんか全体的に小さくまとまってるのが気に入らないんだよなあ」
 「小さくまとまってるって?」
 「これ、ってのがないからさ。相手チームの特徴よく知ってます! とかはキャラとしてのこれだけど、プレイヤーとしてのこれ、じゃないんだよね。二号ならスリーポイント、まいなら一対一、みうなはフックシュートって言うか近距離でのシュート力と言うかそういうのあるんだけど、あのオタクはなに?」
 「試合に出るのは厳しいねえ」
 「ひとごとにしないの」
 「うち、人数多すぎるんだよ」
 「美貴も、半分くらいはリストラしたいよ。あの人数の寮長とかやってられない」
957 :第八部 :2009/03/22(日) 00:47
 あさみはいまだにベンチまで後一歩のポジションだ。
 人数が多いと競争は熾烈である。

 「いちばんリストラしたい人の機嫌でもうかがってくるかな」
 「なにそれ?」
 「なつみさんとこ行ってくるよ」
 「じゃあ私はここで寝てるわ」
 「まい戻ってきたらベッド返せって怒られるよ」

 トーナメント表を持って立ち上がる藤本。
 場所が空いたのであさみはベッドへダイブ。
 部屋を出て行く藤本に軽く手を上げて見送った。
 リストラとか何とか言いながら、やっぱ美貴はなつみさんのこと好きだよな、とあさみは思った。
958 :第八部 :2009/03/22(日) 00:47
 富岡のメンバーは組み合わせは早いメンバーは昼休みに知った。
 全員に伝わったのは放課後部室に集まってきた頃である。

 「聖督いらんよ」
 「ははは、聖督が来るとは限らないけどね」

 トーナメント表を見てすぐの高橋のぼやき。
 富岡自身はシードがついて二回戦から。
 相手は、なじみのある東京聖督か、なじみの薄い京都のチームか、どちらかである。

 「是永美記ちゃん反対側か」
 「当たり前でしょ」

 去年準優勝の中村学院は第二シード。
 第一シードの富岡とは何がどうなっても反対側の山になる。
 組み合わせが決まる前から分かりきったこと。

 「ミキティも反対側になっちゃったのかあ」
 「桜華とかいやなとこと同じ山にいるね」
 「うちはベスト8で青鵬? ベスト4で聖和?」
 「松江来るかもよ、青鵬じゃなくて」
 「ジュンリン留学生に勝ってくるかな?」
 「れーな、もう一回青鵬とやりたいです」
 「れいなはその前に、聖督のガードの子に負けないこと、だよね」
 「れーなより絵里の方がたぶんうまい」
 「さゆ、なにいうと」

 トーナメント表を見て考えることはみな様々。
 力量の認識も様々。
959 :第八部 :2009/03/22(日) 00:47
 「高橋はどっちがいい? 松江と青鵬だったら」
 「松江がいいです」
 「松江の方がやりやすい?」
 「それはわからんけど、打倒松浦亜弥です」
 「国体は違うガードの子にやられてなかったっけ?」
 「そ、それは、そうですけど、どうせその子は今度はあたしのマッチアップじゃないだろうし」
 「松浦さんも柴ちゃんマークかもよ」
 「むー。とにかく打倒松浦亜弥なんです」

 よくわからないけれど、となりに立っている高橋の頭を石川が撫でる。
 ちょっと向きになった高橋がかわいかったらしい。

 「聖督、一回戦勝ってくるかなあ?」
 「勝ってくるんじゃない。あの小さい人、コーチになったらしいよ」
 「あの小さい人?」
 「聖督はいらんです」
 「高橋はホントあの小さい人嫌いだなあ」
 「あたしのこと、サル、オラ呼ばわりした人は許さん」

 ぷっ、と田中がふきだして、高橋ににらまれた。
 今の一年生は、矢口の口撃にさらされた経験はないので、その実体はわかっていない。
960 :第八部 :2009/03/22(日) 00:48
 「梨華ちゃんにサインねだった人がコーチじゃあれだけど、あの人がコーチ役やるんだったらちゃんとしたチームになるんだろうね」
 「後半ダメだったけど、滝川とのトライアングルツーはよく考えたなあって思ったもんね」
 「なんかまたやってくるかなあ?」
 「なにやってきてもあたしがつぶす」
 「逆につぶされないようにしなさいよ。ベンチからも声が飛んでくるらしいから」
 「ボール投げつけてやります」
 「それ、相手ボールだし」
 「ていうか、アンスポファウルそれ」

 田中が冷たくからむ。
 高橋と田中の関係はちょっと微妙なものがある。

 「初戦から後藤さんってのもきついんだけどなあ」
 「なんか聖督が来るって決め付けてるけど、それもどうなの?」
 「京都のチーム知らないもん。しらないとこより後藤さんの方がいい」
 「ちょっとなんか変わったディフェンスとかされてみたいよね」

 なんとなく、後藤よりも矢口の色の印象を東京聖督に対して持っている富岡メンバーである。

 「一年生そろそろ着替えて準備しなさいよ」

 放課後、部室に集まったのはこれから練習、というタイミング。
 当然準備があるわけで。
 石川がトーナメント表を囲む輪を解散させる。
 トーナメント表は一年に部室に貼らせて、みんなそれぞれ着替えだした。
961 :名無し娘。 :2009/03/22(日) 01:53
実際『なんとかシフト』が必要な時点でチーム力としては負けてる訳だし
まっとうな監督ならやらないんでしょうね。
イロモノ好きコーチとイロモノコーチの対決は結構楽しみです。

情報を使いこなせば王様になれます。オタさんは良い王様になるでしょう。
あと高橋...こんな面もあったのだね。
962 :tama :2009/03/27(金) 23:52
あっちこっちで面白そうな対戦が組まれてますね。
個人的にはミキティ対決が気になります。

最近、脳内で松江が富岡に勝つにはどうすればいいのか勝手に
シミュレーションしてますが、一向にいいアイディアが出ません。
石川・柴田にやられます。
963 :作者 :2009/03/28(土) 23:50
>名無し娘。さん
さて、この人がまっとうかどうか・・・。

>tamaさん
対戦とは勝ち上がらないと怒らないわけで、果てさて
964 :第八部 :2009/03/28(土) 23:51
 登録メンバーが部員に伝えられたのは組み合わせが決まって少し経った頃だった。
 いつものように練習終了後、唐突にメンバーに伝えられる。
 そろそろかな、とそれぞれ思ってはいるので、驚き自体はないけれど。

 三好はインターハイのメンバーには入っていなかった。
 悔しい、という思いよりも、やっぱりな、という思いが強い。
 今回は無い、と思っていた。
 ターゲットは次、国体である。

 三好のように覚悟と言うか予想と言うか、そういうものがあった部員はメンバーから外れてもそれはそれとして受け止められる。
 そういった予想がなく、自分が外されたことを青天の霹靂のように受け止めてしまう場合衝撃が大きいもの。
 入部以来初めて、小川はベンチ入りメンバーから外れた。
965 :第八部 :2009/03/28(土) 23:51
 小川も驚いたが、高橋も驚いた。
 平静を装っている小川の内心を知ってか知らずか、高橋がやたらと慰める。
 そこまでしつこくすると逆効果なんじゃないか、と柴田あたりは見ていたが、止めに入るわけにも行かずほっとくしかない。

 夏休みに入り、インターハイに向けて詰めの時期に入って小川が練習に姿を見せなくなった。

 体調が悪いので休みます、と連絡があって三日。
 初日の時点で皆少し首をひねっていたのだが、三日来ない段階で、そろそろ様子を見に行った方がいいんじゃないかと思い始める。
 他の部員と違う。
 小川は一人暮らしなのだ。
 何かあった時に、そばには誰もいない。

 「毎日行ってるんですけど、開けてくれんです。風邪移るからとか言って」

 隣人高橋は心配で様子を見に行こうとするが相手にしてもらえていない。

 昼休みの部室。
 夏休み、インターハイまでもう少しというこの時期。
 一旦練習量を増やして負荷をかける追い込み期だ。
 午前練、午後練とあって、その間の昼休み。
 部員たちは校舎のあちこちで好き勝手に過ごしているが、部室にいるメンバーが比較的多い。

 「そろそろ様子見に行った方がいいよね」
 「メンバー外されて、すねて練習出て来なくなる人なんかほっとけばよかです」
 「れいな!」

 ここにいる誰も、小川が風邪で休んでいるとは信じていない。
 だけど、口に出していいことと悪いことがある。
966 :第八部 :2009/03/28(土) 23:52
 「そういうこと言わないの。よそのね、強い学校だとレギュラーメンバー以外はどうでもいいみたいなところもあるみたいだけど。うちは部員全員でチームなの。。だから、唯みたいな、全然下手な子も、ちゃんとね、チームの一員なの。麻琴の気持ちも分かってあげなさい」
 「どーせ、うちは下手ですよ」
 「あ、ゆ、唯。いたの? え、ごめん」

 思わぬ方向から声が飛んできてうろたえる石川。
 部屋の隅に座っていた三好が、手元のボールを石川に軽く投げつけた。

 「サイテー」

 ここにいる誰も、岡田が下手ではないなんて信じてはいない。
 だけど、口に出していいことと悪いことが・・・。

 岡田自身が自分が下手であることをほとんど気にはしていないので、険悪ムードという風にはならないが、微妙な空気くらいは流れる。
 柴田が断ち切って話を戻した。

 「練習終わったら見に行ってみようかな」
 「そうだね。私も行くよ」
 「梨華ちゃんは来ない方が・・・」
 「なんで。キャプテンなんだし、私が行かないで誰が行くの」
 「キャプテンとか関係ないから。いいよ、梨華ちゃんは」

 柴田としては石川は連れて行きたくない。
 絶対に話がややこしくなるのが目に見えている。
 かといって一人で行くのもちょっと不安で、ついでに言えば、絶対その場にいるであろう隣人高橋の存在がさらに不安で、少し考えた末に対案を出した。
967 :第八部 :2009/03/28(土) 23:52
 「絵梨香付き合ってよ」
 「私? 私が行っても・・・。ほとんど接点無いよいままで」
 「いいの。接点無いくらいの方が客観的に話せていいかもしれないし」
 「私より唯のがいいんじゃない? テスト勉強しにとか行ってるんでしょ?」
 「うち、あんまりこういうの役に立たない気がする」
 「絵梨香行こうよ。三年生のがいい気がする」
 「三年生っていっても、あの子から見て私、先輩だと思われてないよたぶん」
 「そんなことないって」
 「じゃあ、私行くよやっぱり」
 「梨華ちゃんはいいから」
 「わかった、しょうがない付き合うよ。でも多分、付き合うだけで役に立たないよ」
 「大丈夫、ありがとう」

 自分が拒否すると石川が行くと言い張りそうなので三好は仕方なく承諾した。
 石川行ったら絶対余計なこと言うもんなあ、という感覚が導いた結果だ。

 午後の練習を終えて柴田と三好は、高橋付きで小川家へ向かった。
 柴田は行ったことがあるので案内はなくても場所は分かるのだが、さあ自分も行くぞ、という雰囲気の高橋を無視して行くわけにも行かず、三人セットで向かうことになる。
 柴田高橋のコート外でのつながりというのも少々微妙だが、高橋三好に至ってはコートの外で半径一メートル以内に近づいたのは初めてみたいな間柄である。
 ほとんど、使う言語も違うくらいのレベルで、三好としては関わりにくい相手だ。
 三人で並んで、ではなくて柴田三好が前を歩いて高橋が一人後ろについて行く形になった。
968 :第八部 :2009/03/28(土) 23:53
 小川家前にたどり着く。
 柴田は、開けてもらえるまでは口を出すなと高橋に釘を刺す。
 のぞき窓から見えない位置に高橋を立たせて、柴田はインターホンを押した。

 「柴田さん、どうしたんですか?」
 「三日も練習来ないとそろそろ心配するってみんな。だから様子見に来たの」

 のぞき窓から確認したらしい。
 女子高生の一人暮らしとしては、いきなり扉を開けた高橋よりは正しい対応だろう。

 少し間があってからゆっくりと扉は開いた。

 「麻琴、大丈夫? どうしたの」
 「愛ちゃん、いたの?」
 「心配したんだからね。もう開けてくれんし。元気? 元気でしょ? 明日から練習出てこれる?」
 「あ、いや」
 「ちょっと落ち着きなさい。ここで高橋が騒ぐと近所から怒られちゃうだろうから上がらせてもらえる?」
 「はあ」

 扉を開けてしまったのだ。
 部屋に上げない法は無い。
 仕方ないという風に小川は中へと促した。
 柴田が入って、いつの間にか前に身を乗り出している高橋が入って、最後に三好が付いて行く。

 「あ、あの、飲み物とか」
 「いいよ、押しかけて来たのこっちなんだし。ああ、そうだ。高橋。あなた買ってきなさい」
 「へ?」
 「お見舞いって手ぶらで来ちゃいけないのよ。忘れてた。高橋何か買ってきなさい。飲み物は適当でいいや。私アイス食べたいから、そうね、レディボーレンのブルーベリーね。絶対よ。他のじゃダメだからね」

 柴田が財布から千円札を出す。
 自分も先輩の立場だし、ちょっとは出すべきなんだろうか、と戸惑い顔の三好。
 さらに戸惑っているのは千円札を突きつけられている高橋。
969 :第八部 :2009/03/28(土) 23:53
 「いいから買ってきなさい」
 「は、はい」

 夏休みに入ったばかりの時期。
 アイスを食べるのにいちばんいい時期かもしれない。
 高橋は、自分のバックは置いて手ぶらで出かけた。
 相手が石川だったならまだしも、距離感微妙な柴田先輩様のお言葉では、かえって逆らいづらい。

 「なんか人の家押しかけて勝手に騒いでごめんね」
 「いえ」
 「まあでもちょっとおちついたね、これで」

 小川も苦笑的笑みを浮かべる。
 高橋が出て行ってほっとしたのは事実だ。

 「座っていいかな」
 「あ、はい」
 「部屋の形高橋のところとまったく同じなんだね」
 「同じ建物の隣ですから」
 「高橋の部屋で鍋パーティーしたことあるのよ」
 「へー」

 少々浮き気味の三好に柴田が解説する。
 小川と三好の間も、これまでコートの上以外で半径一メートル以内に接近するのは初めて、みたいなものだ。
 ただ、高橋と違うのは、コートの上では一緒に試合に出てひどい目にあった、という共通体験がある。
 三好の側から見て小川は普通の子なので、小川の方が大分接しやすい。
970 :第八部 :2009/03/28(土) 23:53
 「外は暑いよ、今日も」
 「そうですか」
 「ずっと家にいたの?」
 「ごはん買いにとか、ちょっとは出ましたけど」
 「それくらいか」
 「はい」
 「そっか」

 しゃべっているのは主に柴田と小川。
 三好は本当に、柴田に付き合ってやってきた、みたいな形になっている。

 「卒業アルバム見せてよ。中学の。あるでしょ?」
 「はあ、いいですけど」

 立ち上がってカラーボックスへ。
 小学校のものもあったので二つ取ってくる。
 冬はコタツだろう、というタイプのテーブルに載せて、三好と並んでページをめくる。
 小川は横の位置に座った。

 「へー、四クラスだったんだ」
 「こっちの方はもっとクラス多いんですか?」
 「うちは七クラスだったかな。絵梨香は?」
 「うちは六クラス」

 他愛も無い話である。
 だからどうした、というレベルの。

 「結構新潟してるね」
 「なにそれどういう意味?」
 「なんとなくそんな感じしない?」
 「ああ、制服の着こなしとかそんな感じだよね」

 顔だけ見ると中学生か高校生かわからなくても、スカートの長さで区別が付く、という説がある。
 スカートを短めにはく三好から見て、この卒業アルバムに映っている子達は、明らかに田舎の中学生なのだ。
 柴田も、それまで標準制服を標準的に、だったのが、三年生になるあたりになって、日一日とスカートの丈が短くなっている。

 「この子かっこいい」
 「えー、そうかなあ」
 「かっこよくない?」
 「悪くは無いけど、でも、そこまで言うほどでも無いでしょ」
 「この子どうしてるの?」
 「さあ・・・。地元の高校行ってると思いますけど」

 めくられているのは自分の卒業アルバムであるが、小川としてはあまり思い出に浸る気分でも無いらしい。
971 :第八部 :2009/03/28(土) 23:54
 「小川は何組? 四組? あ、いた」
 「あー、なんか変わったような変わらないような」
 「焼けてるよね、写真の方が」
 「中学の時のが外にいる時間長かったからですかね」
 「今白いよね。うらやましいくらいに」
 「うん、白い」

 二人に視線を向けられて、小川、ちょっとうつむく。

 「修学旅行は東京? これ」
 「東京でした」
 「東京タワーって私行ったこと無いな」
 「この辺の人って結構そうだよね」

 そんなことを話していると、携帯が鳴った。
 だれの? と自分のじゃないと認識している二人は別の二人を交互に見る。
 鳴っているのは充電器に刺さりっぱなしの小川の携帯だ。

 「愛ちゃんだ」
 「あ、かして」

 小川が通話ボタンを押して柴田に渡す。

 「もしもし」
 「もしもし、あれ? 麻琴?」
 「ううん。柴田。何?」
 「あ、柴田さん。あの。無いです。レディーボーレン。ハーケンナッツでいいですか?」
 「いまどこ?」
 「帰りに通ったコンビニです」
 「ないの?」
 「はい。ハーケンナッツならあるんで、そっちでいいですか?」
 「ダメ。レディボーレンじゃなきゃやだ。他のコンビニも行って探しなさい」
 「え、でも、あるかわからんし」
 「いいから探してきなさい。見つかるまで帰ってきちゃダメだからね」

 柴田は高橋の返事を待たずに電話を切った。

 「そういえば、あの子に携帯番号教えてなかったや」
 「買ってくるまで帰ってきちゃダメって?」
 「うん」
 「意地悪だなあ」
 「というわけで、たぶん高橋はしばらく戻ってきません」

 小川、苦笑。
 三好はバックからペットボトルを取り出した。
 柴田は卒業アルバムをめくる。
972 :第八部 :2009/03/28(土) 23:54
 「これ、小川?」
 「あ、いや、あんまり見ないでくださいよ」
 「文化祭? なにこれ、仮装行列?」
 「演劇ですよ。衣装と化粧でそうなっちゃってるんです」
 「劇って感じじゃないよね」
 「ちょっとお笑い入ってたから」

 なかなかにインパクトも強い、おてもやん風の姿が写真として一生残り、卒業アルバムとして同級生全員に保管されているの図。
 多少恥ずかしそうにしているが、見ないでください、と卒業アルバムを抱え込むようなことまではしない。

 「部活は、キャプテンだったんだね」
 「うちに来るような子ってみんなそうじゃないですか? 柴田さんもそうでしたよね」
 「ん? うーん、まあ、四番つけてたかな」

 ページはめくられ部活動のコーナー。
 小川は四番を付けたユニホームを着て中央最前列で映っている。

 「絵梨香は?」
 「え? ああ、私もうん、キャプテンやってたよ」
 「絵梨香さん、最初からうちに来てたらもっとすごかったんじゃないですか?」
 「あんまり考えてなかったな。大体、バスケで学校選ぶって発想がなかったし。うちが強いのはそれは知ってたけど、だからって受験しようとは思わなかったし、逆にそれを理由に避けたわけでもないし。まあ、うちに最初から来てたら、多分バスケ部入ってないよ、私」
 「それがあっという間にベンチに入っちゃうんですもんねえ」

 小川にそういわれてしまうと三好は返す言葉が無い。
973 :第八部 :2009/03/28(土) 23:54
 「基礎と素質がある人がそれなりの練習積んだ時っていきなりのびるのよ多分」
 「基礎は多少あったかもしれないけど、素質は別に無いと思うよ」
 「ある程度の素質がなかったら、普通高でもキャプテンやってないでしょ」
 「いいですよね、そうやってうまくなれるって」

 談笑風になっている柴田と三好の会話に、小川が小さくとげを射す。
 柴田は卒業アルバムを閉じて横に置き、小川のほうに向き直って言った。

 「ベンチに入れなくて悔しかった?」

 突然真剣な顔。
 真顔で副キャプテンの先輩に問いかけられて、小川は目をそらす。
 閉じられた卒業アルバムの方に視線を向けながら答えた。

 「悔しいっていうより悲しいって感じですよ」
 「悲しい?」
 「ああ、私もここまで落ちたのかって」

 入部当初が絶頂期、後は落ちるだけ。
 高橋とスタメンを争い、そこ追いやられて隣のポジションにスライド、しばらくしてスタメンを外れ、しばらくして六番手でも七番手でもないただの控え選手になり、勝負のまだわからない場面で試合に出るということがなくなり、ここに至ってベンチも外れた。

 「もう落ちるところも無いですもんね」

 ベンチから外れると、後はみな同じである。
 滝川のように部員数が多ければ、CチームDチーム・・・みたいな区分けがなんとなくあって、ベンチ入りに近いところ遠いところと、微妙なヒエラルキーがある。
 富岡は、そこまで区分できるほどの人数はいない。
974 :第八部 :2009/03/28(土) 23:55
 「それで、どうするの?」
 「どうしましょうかねえ」

 小川はあいまいに笑う。
 扉越しの高橋は別として、こうやってまともに人と会話するのは三日ぶりである。
 三日間、いろいろと考えたところもあったのか、小川は堰を切ったようにしゃべりだした。

 「何しに来たんだろう東京までって思いますよ。東京じゃないけど、実家から見たら東京みたいなもんで。わざわざ一人暮らしまでして来たんじゃないですか。それがこれですよ。強いチームに入るんだから苦労しないはずが無いとは思ってましたけど、意外と最初から試合も出られて。調子に乗ってたんですかね。高校入ってからいちばん良い試合したなっていうのが一年の四月の県大会って。意味わかんないですよ。後は落ちるだけ。おちて行く自分。上って行く愛ちゃん。なんですかこの落差。愛ちゃん、スタメンがっちり掴んで放さないで、試合でもしっかり活躍して。となりに立ってたはずなんですけどね。あの子と張り合ってたはずなんですけどね。なんだろうって。あれであの子、人の心配いっぱいして。人がいいっていうかなんて言うか。こっちの気も知らないで。大丈夫すぐベンチ戻れるよ、すぐ試合出られるようになるよとか言って。お前に慰められたくないよサル、とか思うじゃないですか。あの子そういうの全然気づかないんですよね」

 柴田と三好は黙って聞いている。
 柴田は当然入部当初から見ているが、三好は二年生になってからの小川しか知らない。
 高橋と仲がいいのは見ていて分かっているけれど、元々はスタメンレベルで張り合っていたなんてことは今ではイメージできない。
 仲良さそうにしてて、いろいろ感情的にはあるんだな、と思う。
975 :第八部 :2009/03/28(土) 23:55
 「どうすればいいんだろうって思いますよ、ホント。何やってもうまく行かない。成長しないっていうか退化してますもん。そのうち恐竜にでもなっちゃうんじゃないかって思いますよ。それでベンチまで外れて、もう無理って思いました」

 最初から見ていた柴田としては、何か言いたいこともあるのだろうけれど、ただ黙って小川が話す事を聞いている。
 柴田にしても、小川が入ってきた当初はこんな風になるなんてまったく創造してなかったのだ。
 高橋と張り合った結果、ガードポジションは取れないかもしれないけれど、そうなった場合、自分のポジション奪われるかもみたいな危機感をちょっと感じたりもしてたのだ。

 「ありえないじゃないですか。入って最初にスタメン取れそうなとこにいたのにベンチにも入れなくなるなんて。怪我とかなら分かりますけど、私、高校入って一度も怪我なんてしてないし。どうしましょうかね、これから。新潟帰ろうかとも思いましたけど、いまさら帰れないし。かといって部活辞めてうちの高校卒業するのも変ですしね。留学でもしようかと思いますよ。ほら、英語出来るようになったらかっこいいじゃないですか」

 スポーツ推薦とか、特待生とか、そういうことではなく、ちゃんと一般受験して入学しているのだから、部活をやめようが、何部に入ろうが、通学を続けることに支障は無い。
 ただ、それは小川の心情的な問題だ。
 ここまで来て三好が口を挟んだ。

 「なんでそこで辞めるのが前提になるわけ?」

 小川が顔を上げた。
 柴田じゃなくて、三好から声が出たのが意外だった。
976 :第八部 :2009/03/28(土) 23:56
 「私には、わざわざ引越しまでしてバスケしにこんなとこまで来る人の気持ちなんかわかんないけどさ。そこまでしたんでしょ。それをなんで一年半で簡単に捨てるかな」
 「三好さんにはわかんないですよ。それまで全然練習してなかったのに、まともにやって三ヶ月でベンチは入れるようになっちゃう人には」
 「このチームさあ、変に打たれ弱い子多いよね。負けたこと無いからかなあ。負けるのに弱い子多くない? いいじゃない、一回くらいベンチ外されたって。次もう一回入ろうとすれば。多分小さいことよ。誰がベンチに入るとか入らないとか。ベンチ入れて泣いちゃった私が言うことじゃないけど」
 「絵梨香のいうことは分かるけどさ、それはちょっと厳しいとも思うんだよね。階段上ってるっていう意識の時はそれで大丈夫だけど、小川の場合、階段下りてきてるっていういしきだからさ。つらいと思うよ実際」
 「ずっと試合に出てる柴田さんにはわかんないですよ、私の気持ちなんか」
 「私の気持ちもたぶん小川にはわからないけどね。でも、誰も分かってくれなくても仕方ないでしょ。誰も自分じゃないんだし」

 暖かそうに聞こえて、その後繋がれたのが突き放す感じになった柴田の言葉に小川は返す言葉が出てこない。
 柴田がそのまま続けた。

 「留学がしたいっていうなら留学すればいいと思うけど、行き場が無いから留学って意味無いと思うよ。絵梨香はこのチーム、負けるのに弱い子が多いって言うけど、負けても平気じゃダメだと思うから、負けるのに弱いのはちょっと仕方ないとは思うんだよね。それより、負けた子の気持ちがわかんない子が多いって気がするな。梨華ちゃんもちょっとそんな感じだったから今日は来させなかったし。高橋なんか完全にそうだよね。だから追い出したんだけど」
 「愛ちゃん、人のこと見下さないけど見下してるんですよ」
 「悪気は無いんだろうって思うよ。小川も分かってるんだろうけど。でも、横にいられるのはこういう時けっこううざいよね」
 「多分お姫様育ちなんですよ」

 田舎のお嬢様ってみんなあんな感じなのかな、と三好はなんとなく思う。
977 :第八部 :2009/03/28(土) 23:56
 「それで、どうするの?」

 改めて柴田の問いかけ。
 小川は即答できず、柴田が続けた。

 「引きこもってるのはそろそろいいでしょ、もう。親のところ帰りたい? 部活辞めてバイト生活とかしてみる? 本当に留学する? それとも、やっぱり試合に出たい? どうするべき、じゃなくて、どうしたい?」

 やっぱり小川は即答できない。
 今度は柴田も言葉を繋げずに答えが帰ってくるのを待つ。
 小川は柴田の方は見れずに相変わらず卒業アルバムの方へ視線を落としたまま、ようやく答えた。

 「試合、出たいです」
 「じゃあ、練習出てきなよ。うちは別に、ベンチに入れない人は人ではありませんっていうチームじゃないし、ちゃんとみんなで練習できるよ。三日や四日サボったからって追放ってほど厳しくは無いし。試合に出たいなら戻ってきて練習すればいい。ていうか、それしかないしね。たぶん、留学するとか家に帰るとかよりも、本当はいちばん楽な選択肢だと思うよ。今まで通り続けるってことなんだから」
 「そうかもしれないですね」
 「試合に出たくない人がベンチに入れなくて凹むわけないんだよ。ベンチに入れなくて凹んでるんだから、大丈夫でしょ」
 「でも、このまま最後まで行っちゃうんじゃないかって怖いですよやっぱり」
 「あきらめたらそこで試合終了ですよ」
 「それバスケ部員が言うとなんか突っ込みづらいです」
 「でも、いい言葉だと思うよ。あきらめなければ試合は終了しないのかって言われると、それはまた違うけど、あきらめたら終了でしょ」

 あきらめなくたって40分立てば試合終了である。
 そんな物理的な問題か、精神的な比喩か、それはわからないけれど、柴田の言葉に小川は小さくうなづく。

 「明日から練習出てこれる?」

 また、一拍間が空いたけれど小川が答えた。
978 :第八部 :2009/03/28(土) 23:56
 「行かないといけないですよね」
 「いやならいいよ、別に。でも、みんなは待ってる。ベンチに入れるとか戦力かどうかっていうのと、その場にいて欲しいメンバーかって言うのはまた違うから。みんな来て欲しいって待ってるよ。そうじゃなきゃ、私が代表でここには派遣されてません」
 「ダメかもしれないけど、行きますよ。明日から」
 「ネガティブだなあ」
 「今の状況でポジティブになれって言われても無理ですよ」
 「じゃあ、プレイヤーとしての先輩として一つアドバイスをします」
 「はい」
 「もっと集中しなさい」
 「シンプルですね」
 「自分のことにね。たぶん、中学の時とかから全体を見る、視野を広く、みたいなことを意識してきたんじゃない? 視野を広くって言うのか、全部自分でやんなきゃいけなかったから結果として全体見るようになったのかもしれないけど。その上でガードをやろうとしてたのもあって、あっちがどうなってこっちがどうなってとか見ちゃうんじゃない? 性格的に周りの人の様子とかも気になるんだろうけど。そうじゃなくて、自分のことに集中してみな。練習中。チームの気づいたことに口を出すのは大事だし、考えるのも大事だけど、ちょっと横においておいて、自分の練習に集中してみるといいとおもうよ」
 「自分のことですか」
 「そう。あと、ポジティブになれとはいわないけど、ネガティブに考えない。良くても悪くても、それをただの事実として受け止める。いちいち考えない、悩まない」
 「それ難しいですよ」
 「難しいよ。私だって出来てるわけじゃないし。でも、小川は考えすぎなんだと思うよ。相手との力量でこの部分が自分は劣っててだからそこを突かれたら負けちゃうかも、みたいなことは、事実として考えても、だからああどうしようって悩んじゃダメなのよ」

 それが出来ればやってるよ、という顔を小川は見せている。
 柴田はかまわず続けた。
979 :第八部 :2009/03/28(土) 23:57
 「残り七分で十三点負けてます。さあここからどうして行きますか?」
 「なんですか急に」
 「いいから」
 「ファウルの数とかわかんないですけど、七分あるからとりあえずしばらくはオーソドックスにやっていって、五分切っても点差がつまらないようならプレスかなあ。三分切ってもそのままならスリーポイント打ちまくる感じで」
 「うん。それが合ってるかどうかわかんないけどいいんじゃない」
 「合ってるかわかんないんじゃダメじゃないですか」
 「いいの。そこで一番いけないのは、七分で十三点差。負けちゃう負けちゃう、どうしよう、って悩んでる間に一対一で抜かれちゃうことでしょ。実際の試合じゃないから、七分で十三点差ならこうしようって今考えられたんだろうけど、そういう風に他のことも出来ればいいのよ。私だっていつでも出来てるわけじゃないけど」
 「なるほど」

 うまい誘導尋問だ、と横で三好が変に感心している。

 「ここで一日ごろごろしてるのも暇でしょ。明日から出てきなさいよ」
 「そうですね・・・」
 「さて、高橋遅いな」
 「レディボーレンのアイスってコンビニで売ってるもんなんですか?」
 「さあ。無いんじゃない? ハーケンナッツは見かけるけど」
 「確信犯ですか?」
 「さあ? どうでしょう」

 柴田の悪い笑顔に小川も笑みを見せる。
980 :第八部 :2009/03/28(土) 23:57
 「千円札渡すんじゃ無かったかなあ。まあ、仕方ないか」
 「電話します?」
 「んー、いいや、二人で食べな。高橋来てももう相手できるでしょ?」
 「なんか、愛ちゃんが困った子みたいな扱いなんですけど・・・」

 柴田が立ち上がる。
 話すだけ話して帰るらしい。

 「小川の方が大人なんだから、大人の対応してあげなさい」
 「三日間引きこもっちゃうあたりは子どもですけどね」

 自嘲気味に語る小川。
 柴田は苦笑するが、それ以上は突っ込まなかった。
 三好も荷物を持って立ち上がる。
 ミニ廊下兼キッチンを通って玄関まで小川も送りに出た。

 「じゃあ、明日ね」
 「すいません。役に立たない部員のためにわざわざ来てもらって」
 「だから、そういうこと言わないの」
 「冗談ですよ。でも、ホント、ありがとうございます。また愛ちゃんだったらやっぱりドア開けたくなかったし」

 大丈夫かなあ、と柴田は心配な顔を見せるが、小川は微妙な笑みを浮かべている。

 「まあ、明日ね。明日。出てくるんだよ」
 「はい。お疲れ様でした」
 「お疲れ様」

 柴田と三好は帰っていった。
981 :名無し娘。 :2009/03/29(日) 01:36
しばらく拗ね続ける高橋を思い浮かべました。
982 :名無飼育さん :2009/04/01(水) 17:28
富岡編はもう最近、三好三好だね

983 :tama :2009/04/03(金) 22:28
さすが「憧れの先輩」(笑)

でも小川が本当に柴田に憧れる日が来る様な気がします。
少なくとも大人になって「柴田さんはいい先輩だった」とは思われるでしょうね。
984 :島根っ子 :2009/04/05(日) 01:18
小川、ふっ切れそうですね。高橋(・石川)のKYっぷりが(笑)

柴ちゃんと三好さんがだんだんいいコンビになってますね☆

985 :作者 :2009/04/11(土) 17:31
>名無し娘さん
なんとなく目に浮かぶ

>>982
このパラグラフでその感想はどうかと思うけど、第八部がどうやって始まったか考えればまあそうなるかと

>tamaさん
柴田さんはあとからじんわり思い出されるタイプかもしれません

>島根っこさん
吹っ切れてくれればいいんですが


内容的には中途半端なところですが、スレッド終わりまで来てしまったので移転しました。

ファーストブレイク 5th period
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/water/1238858084/

4枚+オーバータイムくらいで終わると思って始まったのですが、5枚目でも終わらなさそうで、5th periodなんてものになってしまいました・・・。



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