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エターナルクス

1 :名無飼育さん :2007/06/16(土) 22:29
初めまして。
拙い文ではありますが宜しくお願いします。

登場人物は久住、吉澤、藤本の水色一家他です。
かなり痛い表現もありますのでご注意下さい。
952 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:24


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953 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:24
泣き顔が瞼に焼きついた。まだそこに梨沙子が立っているかのようだ。
けれど、確実に雅は一人だった。

サッカー部が声を出している。
雅は俯いて、自分の上履きを見ていた。


自分は何をやっているのだろう?答えをくれるものなどいない。
梨沙子を、小春をただ傷つけたかったわけじゃない。
何故こんなことになってしまったのだろう?
何故自分は、こんなにも子供なんだろう。

今更あんな浅はかな理由で梨沙子を傷つけたなんて。
…言えない。

今は、あいつらが梨沙子に飽きるまで我慢するしかない。 
変に騒ぎが大きくなれば今以上に危険かもしれない。
自分で焚きつけておいて、なんて自分勝手。

そう長くは続かない、だろうから。

だから。
954 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:24
自信がなかった。
もし梨沙子も小春も、今までどおりに接してくれるようになるとして。
…自分が、ちゃんと二人と向き合えるのか。
何もなかったみたいに、またあの時のように3人でバカやって楽しめるのか。
自分が心から楽しめるのか。
梨沙子と小春が心から楽しめるのか。
自信がなかった。

ちゃんと、言わなきゃ。
全て正直に話して、じゃないと友達には戻れない。

…たぶん、言えない。
プライドもあって。
そんなことで雅は梨沙子を傷つけたの?と聞かれて、何を言えばいい?
わからない。

理想も現実も痛いほど突き刺さって、雅を追い詰める。
955 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:25
「あれー雅!何してんのー?もう帰ったと思ってた」
突然に、今雅が行動を共にしているグループのリーダー格と二番手が現れた。
今の心理状態には非常に厳しい。冷や汗が背中を冷やした。
「…あ…そっちこそ、どうしたの?」
「んー?…ちょっと菅谷のことでさぁ、先輩に相談してたんだぁ、ねぇ」
「そうそう。菅谷の話したらさぁ、かなり怒ってたよ。最低な女だって、きゃははっ」

…。
最低な女。
それは、お前らで、あたしだ。
思っても、何も言わない。言えない自分。

「先輩何人かでさぁー、シメてくれるって。調子に乗っちゃったからねー」

けれど確実に何かが迫っている。
彼女の表情はいつにも増してどろどろとしている。


「…菅谷、マジでわからせてあげないとね。菅谷のためにもなるよ」

956 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:25


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957 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:25
時は少し遡る。
梨華は、カフェで一人、人を待っていた。
時間帯は昼と呼べる時間の一時間前ほどで、人はそれほど多くない。
静か過ぎて、色々考え過ぎてしまう。
考えたくない事だらけで、だけど思考を止めるものは一つもない。
小さな置物も、ささやかな話し声も、コーヒーの湯気も何も梨華の心を動かさない。
ただ浮かぶのは、愛しい人。
切なくて唇を噛む。
958 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:25
「梨華先輩」
「…麻琴…」
梨華の名を呼んだのは、かつての部活の後輩。
にこにこと葉を見せて笑うその顔は会わなくなってからも変わりない。
髪の色が明るくなったくらいだろか?
変わらないで懐っこい笑顔を見せる姿につい頬が緩んだ。
「えへへ、梨華先輩相変わらず美人ですね」
「そんなの」
「相変わらず寒いキャラですか?」
「ちょっとぉ…そうだけど」
「あはは」

彼女は変わらない。
例え、歩けなくなっても。
屈託のない笑顔も何もかもを失わずにとどめていた。
どんなにかすごいことだろう。
もし自分が同じ立場になった時、こんな風に笑っていられるだろうか?
自らの不幸を呪い、運命を憎み、…何より親友だったはずの人物を怨むかもしれない。

昔、本当は心のどこかで常にへらへらと笑う彼女を馬鹿にしていたかもしれない。
何も考えていない、悩みのないお気楽な人間だと見下していたのかもしれない。
今は彼女を心から尊敬する。
醜く自己中心的な自分を感じるからこそ、より感情は深くなる。
959 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:25
「でー、ここのケーキにはまっちゃったんですよぉ。
 お勧めは今日出てる三つのベリーのタルトですね!やばいですよ!
 いっつも人気ですぐなくなっちゃうんですけど、今日はありました。ラッキーだぁ」
「そうなんだ…じゃあ、それ食べようかな」
「はいっ、じゃあわたしも!すみませーん」
てきぱきと注文し、麻琴は改めて梨華と向き合った。その表情には毒がない。
人間を憎悪したり、貶めたりする姿が全く想像できない。
だからこそ、心が落ち着いた。

「…本当に久しぶり」
「ですね。いきなり連絡してごめんなさい」
「ううん、いいの。今日は講義午後からだから」
「そうですか、よかったぁ」
「でも、…何かあったの?」
本当は想像ができていた。
多分ごく最近、麻琴は愛と再会して仲直りをしたから。
なんとなく麻琴にも今の状況がつかめているのではないだろうかと感じていた。

「…愛ちゃんが、こないだ家に来てくれて、久しぶりに会って話したんですよ。
 いっぱいごめんねって言って泣いて。本当にしょーもないままでしたよ愛ちゃんは。
 でも仲直りできてよかった。本当に嬉しいです」
そう言って嬉しそうに笑う麻琴。
梨華はただ、ほんの少し胸を痛めて頷いた。
960 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:26
「……その時吉澤先輩が一緒だったんですよ。びっくりしました、いつの間にか二人が仲良くなってて。
 だってあたしが学校にいたときなんか、いつも二人で噂してるような人だったのに」
「うん…そうだね、二人はなんか、急に仲良くなって…」
ふつふつと隠し切れない嫉妬に隠した握りこぶしをさらに強く締め上げて耐える。

「きっと二人は、両思いだと思うんですよ。吉澤先輩のあんなやさしい顔はじめて見ました。
 愛ちゃんのあんな色っぽい顔もはじめて見たんです。…でも…」
「…」
「梨華先輩の気持ち、多分愛ちゃん知ってるんですよね?」
「…」
梨華は唇が開く感じがしなかった。もう二度と開かないような感覚に陥った。
何か言わなければならないと思うほどにますます唇は固く閉じた。

「愛ちゃんは本当にどうしようもないくらいバカで。
 優しさと弱さ甘さの区別もつかないでいつも失敗するし、人間関係に不器用で空回ってて。
 だから今回も、自分が身を引けば吉澤先輩と梨華先輩が幸せになるとか単純に考えてると思うんですよね」
「…」
「でも、現実はそううまくはいかないじゃないですか。現に、うまくいってないし。
 大体愛ちゃんはきっと今頃すごく苦しんでるし。バカですよね、自分さえ我慢すればいいとか思って。
 そんなのでうまくいくほど単純じゃないのに、恋愛なんて」
961 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:26
麻琴の言いたいことが近づいてくる。
後ろへ下がって距離を置きたいのに、後ろは壁なのか一向に距離は離れない。
何度も下がろうとして、それでも近づいてくる。

「…ちゃんと、梨華先輩の口から言ってあげてください。自分の気持ちに正直になってって」

麻琴がじっと梨華を見つめている。
表情には多少の申し訳なさもあり、けれど愛への友情の念が大きかった。

なんで。
いつも。
わたしは。
962 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:26
「……なんでわたしがそんなこと言わなきゃなんないの」
「梨華先輩もわかってるはずです」
「愛ちゃんが、勝手に思って勝手に離れてるんでしょ。わたしにそれをどうこう言う義務はないよね?
 いくら愛ちゃんとよっすぃが両思いでも、ダメになるときはなるんだよ。
 そういう運命だってあるでしょ?両思いならみんな幸せに恋人になれるとか限らないし」
「梨華先輩は、それでいいんですか」
「いいよ。そのほうが、可能性があるもん。
 愛ちゃんを諦めれば、よっすぃだってもっと色んな出会いを求めるだろうし。
 その時に…わたしなんてどう?とか、言って……」
急に声が詰まる。
苦しい。
空しい。

例えひとみが愛を諦めたとして。
梨華を恋人にしてくれる可能性などあるのだろうか?
考えると消えてしまいたくなる。
近くにいれば見てもらえる日が来ると思っていたのに、いつしか待ちすぎて遠ざかってしまった。
いや、初めからどの場所にいたって惹かれあうものは惹かれあう。
梨華とひとみを引き合わせるものがなかっただけの話だった。

友達になれただけ、幸せなの?
話すことも出来ない人に比べたら、幸せなの?
近くにいたら夢も見られない。毎日現実が確率0%と叫ぶ。
それでも、幸せなの?
963 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:27
「わたしは、よっすぃ、が、好き…なんだもん。よっすぃが、誰かと付き合うなんて、やだよ。
 見たくない。っそんなの見たくない!」
叫んで、飛び出した。
これ以上正しいことを言われることに耐えられなかった。
麻琴は正しい。けれど優しさは平等なはずもなく、梨華にはとても厳しかった。

頭ではわかっていても、うまく消化しきれない。
どんなに愛とひとみとが惹かれあっていたとしても、手伝うことなど到底出来そうもない。
想像するだけで、逃げ出してしまうほどなのに。


むしゃくしゃした気持ちを抱えたまま、学校へと足を向ける。
この時ばかりは真面目な性格が呪わしい。気分のままにサボることすら許せなかった。
けれどすぐに来なければよかったと思った。
964 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:27
「梨華ちゃん?」
ひとみの声。
人気のない玄関に少し元気のないひとみが立っていた。
元気がない理由を知っているから、今はもう顔を見ても辛いだけ。
辛いだけだと思っても、それでも好きだと感じた。

何かあった?なんて。優しくて、酷い人。

「…よっすぃは、誰にでも優しいけどさ。それで辛い思いしてる人だっているんだよ」

落ち込んでるのはあなたのせいだと取れる言葉を残して逃げた。
いつだって誰かのせいにしてばかり。
じゃああなたはどうなの?聞かれたら、何と言えるのだろうか?
自分が行動をしてみないとわからない。
ひとみにちゃんと告白をしたこともない。いつだって側にいて、待っていただけ。
965 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:27

…一度動いてみれば、この気持ちは変わるのかな?

どうかはわからないけど。
変わらないといけないから。

「…よしっ」
梨華は泣き出しそうな心を吹き飛ばすように一人大きな声を出して走り出す。
うじうじしてもいいから、その分ちゃんと進みたい。
後先省みず突っ走って失敗して、でもそれがわたしだから。
わたしはわたしらしく、正々堂々とぶつかればいい。
966 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:28

「愛ちゃん、ちょっといい?」
「…はい」
相変わらず彼女は小さくて愛らしくて、かわいい。
どこか元気のない愛を大きな空間から連れ出して、梨華はすっきりとした顔でいた。

「まず、この間はごめんね。わたしの問題なのに、愛ちゃんにいっぱい当たっちゃった」
「いえ、…本当のことでしたから。甘えてることも、全部…」
少し視線を下げた愛に、梨華はそっと口角を上げる。
「麻琴と仲直り出来たんだよね?良かったね」
「はいっ、ほんまに…色んな人に迷惑かけて」
「じゃあもう遠慮しないで良いんだよね?」
「え?」
愛が顔を上げたときのために作っておいた完璧な笑顔。
どうやら上手く笑えていたようだ。愛の表情を見ると何となくわかった。

「わたし、愛ちゃんのライバルになるね。よっすぃとちゃんと向き合ってみる」
「……!」
967 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:28
「わたし、よっすぃのことが好き。愛ちゃんもそうなんでしょ?」
「あーしは、そんなんじゃないです…!」
「そ?ならそれでいいけど。後悔しないでね?わたしはちゃんと言ったから。
 わたしがよっすぃと両想いになれた後に、愛ちゃんが文句言う資格はないよ?」
「っ、文句、なんて」
にこり。
更に笑顔を深めると、愛の眉間に深く皺が刻まれた。

「自分の気持ちなんて、自分が一番よくわかってるんだから。
 自分に嘘なんてつけないよ。わたしがそうだったから…愛ちゃんも、きっとわかる」
じゃあね、と言い、呼び出した愛を置き去りにした。

愛は果たして動くだろうか?
どっちにせよ梨華のすることは変わらないが。
968 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:33


+++++


969 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:33

「よっすぃ!」
「…!梨華ちゃん…!」

後ろ姿でもすぐにわかった。

喉から出る愛しい人の名が、今は嬉しくて仕方がない。
気軽にあだ名を呼べる。振り返ってもらえる。自分を認識して、笑ってもらえる。
改めて幸せなことだと感じた。
自分から手に入れる努力もしないで、不満ばかりは言っていられない。
初めて『梨華ちゃん』と呼ばれた日に感じた喜びを忘れないで、進みたい。

あなたの特別になりたいと思った。
970 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:34
「あのね、よっすぃ。さっきはごめんね」
「ん?ううん、気にすんな」
ひとみの優しい笑顔。
押し付けないで笑える力。
引きずらないで許せる力。

…ああ。
好き。
あなたのそういうところがたまらなく好き。

だから、ちゃんと言おう。
971 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:34


「わたしね、よっすぃが好き」


972 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:34
「え?」
「よっすぃの恋人になりたい。わたしのこと、ちょっとでも、恋愛対象として見て欲しい」
「梨華ちゃん…」
「今すぐ付き合えるなんて思ってない。ちょっとずつでもいいから、考えて欲しいんだ。
 …よっすぃ、大好き!じゃあね、ちゃんと考えてよ!」
自分が今出来る最高の笑顔を向け、ひとみを抜かして走り去った。

もう戻れない。
だからこそ、突っ走る。
ひとみを想う気持ちは誰にも負けない。
自信を持って、ちゃんと伝えた。

未来はやってくるものでも予想して落ち込むものでもなくて、
たぶん自分の手で作り出すことが出来るものだと思った。
見えなかった未来を、今作り出そうとしている。
必ずその未来がやってくるとは限らなくても、やらないよりはずっと良かった。

自分で掴み取る。
自分の望んだ未来なのだから。
973 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:34


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974 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:34

「……」

「ありゃぁ、魂抜けてる?」
「美貴、聞いて…」
「いやこんなとこで言やぁみんな聞いてるし」
「まいも聞いてるよ?」
「これは波乱ですね」
「どうなることやら」

ひとみの目の前で他人事のようにニヤニヤしている二人。
ひとみは意図して不機嫌のような顔をして、二人を置いて歩き出した。

「ちょっとー、なかったことにでもするつもり?」
「そんなことしないよ!ちゃんと考えようって決めたし。でも…」
「ん?」
美貴が、ひとみを覗き込んで微笑む。
どこか母親に似た眼差しに、ついひとみの眉も下がる。
975 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:35
「…やっぱり、いざ真っ向から気持ち伝えられるとこんなに戸惑うんだね。
 今まで、何人かには告白されてきたけど…誰より、あたしと恋人になりたいっていう気持ちを感じた。
 いざその気持ちをぶつけられると、もしかしたらそういう未来もあるかもしれないとか、思っちゃった」

心の弱い自分を情けなく思って、細いため息をついた。
驚いた。
今までありえないと思っていた未来が、自分の限りないほどに枝分かれした未来としてひとつ増えたのだった。

…梨華と恋人になったら。梨華は沢山愛してくれる。
自分も梨華を大切でいる。梨華を嫌いになることは、おそらくない。
心から恋愛感情で梨華を好きになれたらどんなに穏やかだろう?
果たして、梨華が自分を思ってくれるほどに自分が梨華を思う日は来るのだろうか?
わからないけれど。
976 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:35
「逃げないよね?よっちゃん」
美貴が奥に鋭さを秘めた瞳で問いかけてくる。

「…うんっ」
ひとみはひとつの間の後、しっかりと頷いた。
逃げない。
わからないなら、わかるまで探しに行こう。
答えは自分で見つけよう。

「よし、えらいえらい」
「わ、ちょっと!」
まいに頭を乱暴に撫でられて、なぜかくすぐったい気持ちになる。
大切な友人に囲まれて、自分が幸せな存在だと思った。
ただ、甘えてもいられない。誰かが優しくしてくれる分だけ、自分は自分に厳しくいたい。
ひとみはしっかりとした足取りで歩いていく。
977 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:35


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978 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:35
「今日さぁー、梨華ちゃんに告白されたよ」
「リカちゃん?」
「あーっと、石川梨華。うんと…ほら、うちにあった写真立てくれた」
「ん…あ、あーあー!」
小春はすぐに思い出した。あの異質な写真立てならばまだ記憶に新しい方だ。
写真に映っていた人物の顔ははっきりとは思い出せないが、愛らしい美人だった記憶がある。

告白。
…。
え。
小春はがばっと顔を上げる。あまりの勢いにひとみは思わず軽く仰け反った。

「えっ、もしかして先生が気になってた人ってその人なんですか?」
「……え?」
そういえば、小春には戸惑いを素直に話した。
この感情が恋かどうかもわからない、という話。
あの時に考えていた人物。
979 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:35

「…ああ、違うよ」

はっきりと違うと言えた。
小春はきょとんとして、それから意味深に笑う。
「先生は罪な人ですねぇー。こんな美少女までも虜にしちゃってるくせにぃ」
と、自分の頬に手を添えて目をぱちぱちと瞬かせた。
「はいはいいいから手を動かせ」
「先生から話しだしたくせに!」
「やめたやめた。茶化すなら話さないよ」
「茶化しませんよ。なんて答えたんですか?」
小春は笑ってはいるものの目つきは真面目だ。
ひとみは小春をちらりと見た後に、ふう、と息をついてベッドにゆっくりと腰掛けた。

「ちょっとずつでいいから考えてって言われたから、返事はしてない。
 もともと仲良い人だったからこれから考えるんだ」
「…そうですか。大変ですね、先生も」
「いやいや。…本当はちょっと気がついてたんだ、その子の気持ち。
 逃げてたから罰が当たったんだよ。…気になってた子には、なんか避けられちゃうし」
「なんかしたんですか先生」
「…してねー…と、思う…たぶん」
ひとみのどんどん小さくなっていく自信が無さそうな声に、小春はころころと笑う。
980 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:36
「あはは、自信ないんですか」
「ないね。こんなの初めてだよ。いつもは避けられたなら、そっかーってあたしも離れるんだけど…
 なんか今回はそうしたくない、っていうか…」

ひとみは思い出すだけできゅっと胸が痛くなった。
愛と目が合った瞬間、そっと逸らされた時の自分の心。
初めての痛みだった。

ああ。
少しで良いから、声が聞きたい。
なんて、そんな事。
981 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:36
「したくないなら、しなくていいんですよ!」

小春が唐突に声を張って身を乗り出した。
ひとみは困ったように笑って何度か頷いてみせる。

「ありがと。でも、小春はちゃんとその宿題を終わらせてください」
「むう。言われなくてもやりますっ!やるぞー!」
「よし、その意気だ」

小春の弾けるような声に、思わず笑顔になる。
小春の全てに元気をもらえた。愛おしくてたまらない。
だから、明日も頑張れる。
ありがとうと言う代わりに、自分に任せられたこの役目をしっかりと果たそう。
小春がこの先どの道を選ぼうと、学力が不足して選べないことのないように。
982 :4 ただ大切な女の子 :2008/03/22(土) 23:36


+++++


983 :名無飼育さん :2008/03/22(土) 23:38
更新終了です。切りの良いところが見つからず長くなってしまいました。

>>940さん
ありがとうございます。
ここのその人は通常より若干かわいめだと思いますw
984 :名無飼育さん :2008/03/22(土) 23:45
>>958
葉を→歯を
変換ミスを見つけたので訂正いたします。
985 :名無飼育さん :2008/03/25(火) 01:59
ファンになりました
とてもおもしろい
986 :名無飼育さん :2008/04/03(木) 22:05
いつも更新楽しみにしております。
すれ違いって辛いですよね。
自分の気持ちに正直に素直に生きれたらいいのに。
987 :名無飼育さん :2008/04/19(土) 02:26
待っています
988 :名無飼育さん :2008/04/27(日) 22:22
作者です。
諸事情により間が空いてしまいすみません。
近々更新の予定ですので宜しくお願いします。
新スレについても考えなければいけませんね…おそらく引っ越すことになると思います。

>>985さん
ありがとうございます!
面白かった、と言って頂けるよう努力して参りますので宜しくお願いします。

>>986さん
いつも楽しみにしていただけて嬉しいです、ありがとうございます。
人と人とが通じ合うのはタイミングが重要だなあと思います。
互いが好意を持っていてもすれ違って離れてしまったりもよくあります。
もう少し言えばよかった、という経験は作者にもあります。
素直って、実は難しいですよね。

>>987さん
お待たせしてしまいすみません。
そして待っていただきありがとうございます。
近くに更新予定です。
989 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:28
朝のホームルームで進路調査書が配られた。
その灰色でざらざらとした質感が機械的で、小春は好きではなかった。
希望の学校。
具体的な進路。
まだ何も決まっていない。
焦ることはないとひとみも美貴も母も父もさゆみも言う。
けれど、やはりどこかであまりに白すぎる未来に漠然とした不安を感じずにはいられなかった。
安心したい。
何かが見える日が、いつ来るのだろう。

ホームルームが終わり、一時間目との少しの間。
小春は梨沙子の元へ歩み寄り、プリントを持ちながら梨沙子の前の席に腰掛けた。
いつものように梨沙子は小春を柔らかい笑みで迎える。
ほんの少しの、穏やかな時間。
990 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:28
「梨沙子はどこの高校行くか決めてる?」
「うーん、ちょっとだけど、いいなって思ってる所はある」
「本当?どこ?」
「あのね、南高校なんだけど…」
「南?まあ、学力も普通だし制服もそこそこかわいいけど…」
南高校。制服を想像して、それから自分の顔を当てはめてみる。悪くはないと思った。
梨沙子が行きたいならそこにしてもいいかな、などと都合よく考える。

「ううん、そういうんじゃなくって」
梨沙子はほんのり照れを忍ばせた表情で唇をすぼめていた。
「ん?」
梨沙子の様子に何かを感じ取り、少しだけ姿勢を正して小春は聞き直した。

「…あそこの美術部に入りたいんだ」
「美術部…?」
「うん。ここって美術部なくて、こはる知らなかったと思うけど…あたし絵描くの好きなんだ」
「…!」
991 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:29
小春の驚いた様子に梨沙子は一層照れて、早口でまくし立てるように続ける。
「ちっちゃい時から結構好きで。南高校ね、この間コンクールで賞を取った先輩がいるの!
 あたしあの絵みてすごく感動したんだ!だから、あの人と一緒に絵を描いてみたいなって思ったの」

「そう、なんだ…」

急に、梨沙子が遠くに行った気がした。
頬を染めて幸せそうに夢を語る梨沙子は、将来が具体的に見えている梨沙子は、自分よりもずっと大人だ。
ただなんとなく学校に通っているだけの小春とは違う。
ちゃんと梨沙子はなりたいものがあって、そのために生きていた。
知らなかった。
梨沙子が絵を描くことをそんなに好きだったなんて。
992 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:29
梨沙子が何気なくノートの隅に描いていた絵は確かに普通の人よりは上手かったけれど、
小春に絵を見てその先までを見る才能はなかった。
ただ、梨沙子は絵が普通より少し上手なだけだと思っていた。
小春だって落書きくらいはするから、梨沙子も絵に対しての気持ちは小春と同じくらいだと思っていた。
違った。
梨沙子は進路に影響するほどに絵を好きだったのだ。

それが敬遠となるかと思ったら、違う。
自分の中でますます梨沙子が立体的になって、輝きだした。
梨沙子は本当に尊敬できる人だと思う。
小春にない物を持っている、眩しい人。
993 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:29
「…ねえ」
「ん?」
「今も絵とか描いてるの?」
「うん。絵画教室とか通ってるよ」
「梨沙子の絵、見てみたいな」
「…ほんと?じゃあ今度見に来て!生徒の描いた絵は教室に飾ってあるんだけど、
大体いつでも見せてくれるから。…なんか恥ずかしいなぁ…」
ほんのり白い頬をピンクに染めて照れ笑う梨沙子がかわいくて、思わず小春も笑顔になった。

彼女の見る世界って、どんなものなんだろう?
そんな単純な興味が沸く。
いつかひとみと美貴の将来のビジョンを聞いた時、圧倒され、焦りすら覚えた。
もっと自分と立場が近い存在の夢に触れた時、自分はどう思うだろう?
そんな単純な興味が沸く。
994 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:29
「じゃあ、見に行くね。絶対だよ」
「うんっ」
微笑み交わす約束は、口約束だけでは終わらせたくなかった。
今日の放課後にでも誘って了解が出れば、見に行きたい。

心がわくわくする。いてもたってもいられない。
誰かの夢に触れる瞬間を感じたい。
995 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:30


+++++


996 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:36
「おはようよっすぃ」
「あ、おはよ」

梨華が素敵な笑顔で笑うから、ひとみは素敵な笑顔を返そうと思った。
二人は自然に寄り添って歩いていく。
心なしか周囲の視線が気になった。
それは梨華が大勢の前で言い放った言葉が理由だから仕方がなくて、
梨華を応援する人に重圧めいたものをかけられたこともあったりしたが、
ひとみの心を変える要因たるものにはなりえなかった。

誰が何と言おうと、目の前の梨華の言葉や動き全て。
ちゃんと見て、考えるだけ。
997 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:36
「あのね、意外とちゃんと話したことなかったような気がしたんだけど」
なんて、梨華はいつにも増して饒舌で、川のように流れることが当たり前のような話をしている。
好きなこと、好きなもの、楽しい景色、怖い思い出、日々によって様々でカラフル。
梨華という存在を作ってきた沢山の感情や思い出が煌めいていて、眩しかった。
彼女がどんな風に愛されて育ってきたのか、よくわかる。
後ろ向きな性格さえも、梨華は楽しめるような強さを持っている。
だからこんなにも綺麗なんだろう。

梨華の綺麗さには、随分前から惹かれていた気がする。
美貴の友達がまいで、まいの友達が梨華で、いつか四人で遊んだりして、
いつの間にか石川さんを梨華ちゃんと呼ぶようになった。
何気なく友達でいたけれど、多分惹かれる何かがなければ続かなかった。

梨華は魅力的だ。
美しくて強い、尊敬すべき女性だ。
998 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:37
「ねえ、今日バイトないよね?良かったら一緒にご飯食べない?」
梨華が歩きながらひとみをちら、と見て尋ねた。
身長差で、長い睫毛に縁取られた梨華の愛らしい目が上目遣いになる。
いつもそれが何だかくすぐったくて、でもかわいいと思っていた。
「うん、いいよ」
誘いを断る理由はない。

「やったぁ!あのね、行きたいお店があるんだ!」
梨華があんまり嬉しそうだから、なんだかひとみまで楽しみになってくる。
梨華が笑うから、ひとみも笑った。
999 :4 ただ大切な女の子 :2008/04/29(火) 19:37
賑わう街に出て、夕食まで時間を潰す。
よく考えたら、梨華とひとみが二人きりで出かけたことはなかったかもしれない。
けれど違和感はなく、穏やかにスムーズに時は流れていく。
かわいい雑貨を見ていて、そのかわいさに喜ぶ梨華を見ていれば心が和んだし、
ひとみ自身もかわいいものを見て心を潤された。

夕食にはいつもより少し高いイタリアンの店。
共に好きなものを食べて、軽く酔って、尽きない話をする。
十分に意味のある時間だと思ったし、楽しかった。
それでも、完全に梨華のことだけを考える時間とはならなかった。
心のどこかで迷いや戸惑いがあり、申し訳なくて。
梨華にも、伝わっているには違いないのに。
梨華は一度も不満を漏らさずに、幸せそうに食べていた。

ご飯が美味しいだけ、寂しくもなりそうだけれど。
1000 :名無飼育さん :2008/04/29(火) 19:47
新スレにお引越しします。
エターナルクス2
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1209466039/

引き続き楽しんで頂けるよう頑張って行きますのでよろしくお願いします。
1001 :Max :Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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