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Dear my ・・・ 〜 Dark × Dark 〜

1 :片霧 カイト :2005/11/11(金) 12:59
前作「Dear my Princess」の続編です。
引き続きアンリアルなファンタジー。
今回の主役は 从 ´ヮ`)<れいなたい!
それでは、またまたよろしくお願いいたします。

前作「Dear my Princess」
ttp://mseek.nendo.net/flower/1073627455.html
「Dear my Princess U」
ttp://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/water/1094798822/
923 :第13話 :2008/04/20(日) 21:59
「コハルは……いつの間にか強くなったな……」
「えっ……?」
「その魔法はおそらく隔世遺伝なのだろうな。似ているよ、母に……。遠い昔、
母に叱られたことを思い出した……」
「お父様……」
「攻撃命令は取り消す。魔女狩りの制度も、廃止の方向で調整していこう」
「本当ですか!?」

皇帝はしっかりと頷いてくれた。
私は思わず隣のあいぼんと顔を見合わせて喜ぶ。
これで全面衝突は回避できるんだ! ついでに魔女狩りの制度も廃止になるかもしれない。
ミカ様もわずかに安堵の表情を浮かべていたけど……。

「ヒトミ、ナイロンをここに呼んでくれ」
「あっ……!」

皇帝が発したその名前に、私たちのあいだで緊張が走った。
ココナッツバレイで覗いた水晶の映像がプレイバックする。
そうだ、そのことをまだ言ってない……!

「お父様、ナイロンは……!」

コハル様も慌てて皇帝にそのことを告げようとしたが……。
924 :第13話 :2008/04/20(日) 21:59
「私なら呼びに行かずとも、すでに来ていますよ、皇帝陛下」

皇帝の間の中に、女性の声が響いた。

「がっ……!?」

そしてその声に続き、くぐもった悲鳴も。
その声のほう、即ち、皇帝のほうを見る。
玉座に座った皇帝の胸から腕が生えていた。
違う! 腕が皇帝の胸を貫いたのだ。だってその腕は真っ赤に濡れている……。

「お父様!」
「残念ですよ、陛下。あなたはもうちょっと利用価値のある人だと思っていたのに」

腕が抜かれるに従い、ゆっくりと玉座の影から人影が現れる。
それは間違いなく、水晶越しに見たスィアンス帝国の軍務卿、ナイロン。

「がっ…あっ……!」

皇帝が玉座から転げ落ちるように倒れた。

「お父様っ!!」

コハル様が倒れた皇帝に駆けよる。

「コハ…ル……」
「お父様、しっかりしてっ!!」
「………を……む…」

何と言ったのかは聞き取れなかった。
ただ、その言葉を最後に皇帝の身体から全ての力が抜けたのは、遠目でもわかった。
925 :第13話 :2008/04/20(日) 22:00
「嫌ぁぁああああっ!!」

コハル様の絶叫が響く。
でもそんなことはお構いなしと言うように、ナイロンが血塗られた手を、今度はコハル様に向けた。

「ナイロンッ!!」

その瞬間、弾かれたように、ヒトミさんの身体が消えた。
私も一瞬の遅れの後に飛び出す。
ヒトミさんの剣がナイロンに振り下ろされる。
ナイロンはシールドを張って防いだが、すぐに私も攻撃に加わり、握った槍を突き出す。
ナイロンはバックステップして攻撃をかわし、私たちと距離をとった。
そして余裕たっぷりに、私たちを見渡す。

「やれやれ、どうやらずいぶんと予定が狂ってしまった……」
「貴様、何が目的だ!? スィアンス帝国を乗っ取るつもりか!?」
「こんな国に興味はない。私の目的は、地の魔剣を手に入れること」
「なんだと!?」

地の魔剣!?
まさか、ナイロンの正体は!

「もっとスマートに目的を達成させるつもりだったんだが、こうなっては仕方ない」

ナイロンの身体から溢れ出す、黒い魔力。
間違いない! こいつは……闇の使徒だ!!
926 :片霧 カイト :2008/04/20(日) 22:13
今回はここまでです。
え〜っと、え〜っと……。
とりあえず今回は12話の別サイドのお話です。

>>911 名無飼育さん 様
>>912 名無飼育さん 様
はい、もういろいろとすいませんでした。
ちょっと鬱展開中ですが、これからちゃんとまとめていきたいです。
927 :名無飼育さん :2008/05/20(火) 18:06
一気に読ませて頂きました!
しっかり作りこまれたストーリーと世界観が素敵すぎです。

続き待ってます!
928 :第13話 :2008/05/24(土) 17:27
溢れ出る闇の魔力がいくつもの魔玉を作り出す。
魔玉はどんどん研ぎ澄まされ、薄く鋭く尖っていく。
魔法に疎い私でも感じる凄まじい魔力。

「力ずく……といきたいけど、さすがにこのメンツを一度に相手にするのは大変なのでね」
「くっ!!」

槍を構えて飛び出そうとしたけど、ナイロンの方が速かった。

「ブラインド・ブレイド!!」

形作られた闇の刃が縦横無尽に走り抜ける。
あわててあいぼんを守るために身を翻す。
ヒトミさんもコハル様をかばったけど。

「えっ!?」

闇の刃は私たちを掠めることもなく走っていった。
外した……?
でもそう思った瞬間、足下がグラッと揺れた。
929 :第13話 :2008/05/24(土) 17:28
「な、なにっ!?」
「フフッ、今のでこの城をバラバラに切り裂いたわ。間もなく跡形もなく崩壊するでしょう」
「なんですって!?」
「下敷きになりたくなければ一刻も早く逃げることね。ま、城に残っている人を見捨てることが
できれば、だけど」

ナイロンの足下が黒く歪む。
あれは闇の転送魔法、ダーク・サークル!

「このっ!!」
「まずは他の魔剣を手に入れてくることにするわ。そのあと残骸の下から地の魔剣を
回収させてもらうわね」

突き出した槍は空しく空を切った。
逃げたかっ!!
その時、さらに大きく足下がぐらついた。

「うわわっ! まずい、本当に崩れるのれす!! ののたちも早く逃げないと!!」
「城の者たちを見捨てて逃げることはできません!!」
「でもっ!」

足下がどんどんバラバラに割れ始めている。
このままじゃ本当にみんな下敷きになる!
でもその時、私たちを魔力の渦が飲み込んだ。
930 :第13話 :2008/05/24(土) 17:29
「えっ?」

発信源を見てみると、そこにはミカ様がいた。
ミカ様から溢れた魔力が巨大な魔法陣を作り上げる。
その魔法陣は私たちどころかこの部屋、いやもしかしたらこの城をも包んでいるようで。

「極魔法、ジオ・グラビティ!!」

魔法陣の表面が淡く輝くとともに、足下の揺れが収まった。
でも城が元通りになったというわけではなく、完全に切り裂かれたまま。
それでも城は元の形を維持している。

「これは……ミカ様?」
「ジオグラビティは魔法陣内の物体にかかる重力を完全にcontrolする結界魔法です。
今、城の破片のみ、重力から解放しています」

だから城が崩れないのか。
しかし……こんな大規模な範囲でそんな緻密なコントロールを可能にするなんて……。

「私が城を支えているうちに早く避難を!!」
「わ、わかりました!!」

私たちは弾かれたように部屋から飛び出した。
城はところどころに裂け目があるだけで、あとは何ら変わりない。

「城に残っている人たちの救助には私が行く。お前たちはコハル様を安全なところへ」
「わかったのれす!」

確かに私とあいぼんは城の内部をほとんど知らない。
だからここはヒトミさんに任せるのが賢明だろう。
931 :第13話 :2008/05/24(土) 17:29
「ヒトミ、頼みましたよ!」
「お任せください!」

そしてヒトミさんと別れる。
私たちの使命はまずコハル様を安全な場所までお連れすること。
そしてもう一つ、ナイロンを止めること。

「コハル様、失礼するのれす」
「キャッ!?」

隣を走るコハル様を抱きかかえる。
そして一気に走るスピードを上げる。
とりあえずこの城の中は安全とは言えない。
まずは城から抜け出さないと。

「あいぼん、やるのれす!」
「よっしゃ!」

あいぼんの手から火球が放たれる。
火球はそのまま正面の窓を粉々に吹き飛ばした。

「えっ、えっ!?」

私たちはそのまま窓を乗り越え、外に飛び出した。
そしてコハル様を抱きかかえたまま、城の中庭に着地する。
少しあとに背後で風が渦巻き、あいぼんも着地に成功したことを知らせる。

「コハル様、大丈夫れすか?」
「は、はい……すごいですね……」

コハル様も無事なようなので、私たちはまた駆け出す。
城の付近も安全とは言い難い。
とりあえず城の中庭を突っ切る。けど……
安全な場所なんて……どこにあるの……?
932 :第13話 :2008/05/24(土) 17:30
「う〜ん、ココナッツバレイまで戻るしかないのれすか……?」
「でも転移魔法は使えないで……」

考えながらも城の門を飛び出した。
その時……

「!! のの、危ない!!」
「へっ? うわっ!!」

急に火球が飛んできた。
あわててかわし、体勢を整える。
でもすぐに第二撃、さらには雷や氷までも飛んでくる。

「わわわっ!?」

魔法!?
なんで魔法が!?
まさか、ナイロンの他にも闇の使徒が!?

「コハルを離せ!!」

最後に特大の火球が飛んできたけど……

「アンチ・シールド!!」

あいぼんがシールドを張って魔法を反らせた。
体勢を整え、改めて襲撃者を確認すると、そこには四人の少女がいた。
コハル様と同じくらいの年齢だろう。みな一様に手に魔力を集めている。
この子たちって、確か……。
最初にコハル様をドラゴンから助けた時、一緒にいた子たちじゃ……。

「ミヤビちゃん! 違うの、辻さんと加護さんはコハルを助けてくれたの!!」
「へっ!?」

コハル様が私の腕から飛び降りる。
やっぱりコハル様の友達だったか。
コハル様の説明によって、ようやくみんな魔法を解除してくれた。

「あいぼん」
「あぁ、安全な場所、案外簡単に見つかったなぁ」
933 :第13話 :2008/05/24(土) 17:31
コハル様のことはきっとこの子たちが守ってくれるだろう。
魔法使いが四人。それにコハル様も魔法が使えるし、そこらの兵隊には負けないだろう。

「コハル様」
「はい」
「ののたちはナイロンを追いかけるのれす」
「はい、どうかこの悲劇をここで止めてください」
「コハル様は安全なところへと避難を」
「大丈夫! コハルのことはアタシたちが守るから!!」

コハル様をまかせ、私たちは駆け出す。
ナイロンはどこに行ったのだろう?
あいつは『他の魔剣を手に入れてくる』と言っていた。
他の魔剣は田中ちゃんが持っている。
そしてその田中ちゃんは国境線にいるはず。
そこに向かったのか、あるいは……。

「どう思うのれすか、あいぼん?」
「あいつがあの状況であれ、わざわざ自分の手の内を明かすとは思えないで」
「同感れす。となるとナイロンの本当の目的は……」
「最初から地の魔剣を狙うつもりや! だからわざと加護たちを遠ざけようとしたんや!」

だとしたら、ナイロンはどこに?
城の様子がわかって、なおかつ城の崩壊に巻き込まれないところ……。
あいぼんと背中合わせになり、辺りを見渡す。
ナイロンのいる場所は……。

「「あそこだ!!」」

城の裏手に広がる小高い丘。
そこなら城を見下ろすことができるし、すぐに城へと向かうこともできる。

「あいぼん、行くのれす!」
「よっしゃ!!」

あいぼんが私の手を握って呪文の詠唱を始める。
影が魔法陣の形になっていく。

「シャドウ・ホール!!」



934 :第13話 :2008/05/24(土) 17:32

◇     ◇     ◇


イングラムを見渡せる小高い丘の上。
そこには一つの背中が今にも崩れそうな城を見ていた。

「ふぅん、なかなかしぶといなぁ」
「こんなところで高みの見物なんて、ずいぶんと余裕れすね?」
「おや?」

くるっと振り向いたのは間違いなくナイロンで。
私はナイロンに槍を突き付ける。

「まさか気付かれるとは思わなかったわ。意外と鋭いじゃない」
「意外とは余計や!」
「でもたった二人で来るなんて、賢くはないみたいだね」

ナイロンの前方の空間が歪む。
そこから長い棒が突き出した。
おそらくナイロンの武器だろう。私と同じ槍使いか……?
ナイロンが棒を掴み引き抜く。

「なっ、その武器は……!?」
「同じ槍だと思った?」

形状は槍に近いが、唯一の違いは先端に付いている斧の刃と鉤爪。
ハルバードと呼ばれる武器。
数あるポール・ウェポンの中でも最も優れていると言われている万能武器だ。
935 :第13話 :2008/05/24(土) 17:33
「さて、それじゃあ城が崩壊するまでの時間つぶしに遊んであげるわ。かかってきなさい」
「なめるな!!」

槍を握って駆け出す。
そしてそのまま真っ直ぐナイロンに向かって突き出す。

「ふん、単純だね」

でも槍がナイロンに届く前に、振られたハルバードによって弾かれた。
さらにそのままハルバードが突き出される。

「くっ!」

なんとか突きをかわす。
そうか、ハルバードは斬ることだけじゃなく突くこともでき、さらに……

「甘いっ!」

突いたハルバードが今度は引かれる。
背後から鉤爪が襲いかかってくる。
こんな攻撃もあるのか!
思い切りしゃがみ込み、攻撃をかわす。
頭の上をハルバードが通りすぎていった。

その形状から繰り出される多彩な攻撃。
これがハルバードが万能武器と呼ばれる所以だ。
936 :第13話 :2008/05/24(土) 17:34
「のの!!」

背後からあいぼんの援護が飛んでくる。
放たれた氷柱をナイロンはハルバードを回転させて弾いた。
その隙に私は体勢を立て直す。

「距離をとれば安全だと思わないでね!」

でもナイロンの前方の空間が黒く歪む。
そこから闇色の棘が無数に突き出した。

「ブラック・ニードル!」
「くっ、アンチ・シールド!!」

あいぼんがシールドを展開して棘を防ぐ。
使いこなすのが難しいと言われるハルバードをあれだけ使いこなし、魔法も操るナイロン。
これは……厳しい戦いになりそうだ。

「のの、大丈夫か?」
「大丈夫れす。それよりあいつ、かなり強いれすよ」
「わかってるわ。でもいつも通り、力を合わせて戦うだけや!」
「そうれすね!」

一度あいぼんと拳をぶつけ合わせ、私はまたナイロンに向かっていく。
突き出した槍はハルバードに止められた。
でも今度はすぐに槍を引き戻し、連続して突きを繰り出していく。
937 :第13話 :2008/05/24(土) 17:35
「なるほど、お前が私を押さえておいて、その間にあの娘が大魔法を紡いで攻撃
しようってことか」

チラッと私の肩越しにあいぼんを見てナイロンが囁く。

「シンプルな……というよりは単純な連携だね。そんな作戦じゃ私は倒せないよ」
「くっ!」

攻撃の合間を縫って振られたハルバードを、私はたまらず槍で受けとめる。
その攻撃の重さに身体がよろめいた瞬間、ナイロンが横を通りすぎていった。
そして真っ直ぐあいぼんへと向かう。

「まずはお前から潰してあげるわ!」

ナイロンがハルバードを振り上げるけど。
あいぼんがニヤッと笑った瞬間、あいぼんの前方の地面に魔法陣が浮かび上がった。

「なにっ!?」

あいぼんが前もって仕掛けていたトラップが炸裂する。

「ガイア・クラッシュ!!」
「うわっ!」

地面が爆発し、ナイロンが砂煙に包まれる。

「甘かったな! 悪いけど加護とのののコンビネーションは」
「そんな簡単なものじゃないのれす!」

ナイロンが怯んだ隙に、私は一瞬でナイロンの背後まで詰め寄る。
938 :第13話 :2008/05/24(土) 17:35
「くらえっ!」
「くぅ……!」

突き出した槍はハルバードで止められたが、私はそのまま槍でハルバードを押さえ、
ナイロンの懐に潜り込む。
そして真っ直ぐな正拳をナイロンのボディに叩き込んだ。

「ぐあっ!」

ナイロンの身体が宙に吹っ飛ぶ。
その無防備な身体にあいぼんの追撃が襲いかかる。

「ゴッド・ブレス!!」

圧縮された竜巻がさらにナイロンを上空に押し上げる。
そう、私が飛び上がって待っている空へ、絶妙のタイミングで。

「堕ちろっ!!」

飛んできたナイロンを空から蹴り落とす。
ナイロンはそのまま真っ直ぐ墜落していった。
地面に激突し、また砂煙が舞い上がる。
939 :第13話 :2008/05/24(土) 17:36
「くっ……やってくれるね……」
「ののはあいぼんのことを誰よりも理解してるし」
「加護はのののことを誰よりも理解してる」
「あんまり舐めてかかると、もっと痛い目見るのれすよ」
「面白い……お前たちのその顔が絶望に染まるのをすごく見てみたくなったわ……」

ゆっくりとナイロンが立ち上がる。
やっぱりこれでノックアウトとはいかないか。

ナイロンの身体から黒い魔力が溢れる。
溢れた魔力は収束し、鋭い刃となっていく。
まずい、あの魔法は……!

「ブラインド・ブレイド!!」
「くっ!」

無差別に放たれる闇の刃をなんとかかわす。
あいぼんはまたシールドを展開し、防いでいる。
その間にも別の魔法を構築しているのがわかる。

「よしっ!」

魔法をかわしながら、私は前に進んでいく。
真っ直ぐ、ナイロンの間合いへと。
940 :第13話 :2008/05/24(土) 17:36
「ちっ、ちょこまかと!」

魔法が止まり、ハルバードが突き出される。
それを槍でいなし、私はまたナイロンの懐に飛び込む。
こんな近距離じゃポール・ウェポンは使えない。そして、ナイロンはそんなに
格闘技は得意じゃないはず。
私も槍を使いづらいけど、このまま間合いを詰めて掻き乱せば!

「はっ!!」
「くっ、うざったい!」

放った拳はガードされたが、ナイロンがハルバードを引き戻す頃には、私はナイロンの
背後に回り込んでいた。
そのままナイロンの足をはらう。
ナイロンの身体がぐらりと傾く。

「潰れろ!」
「くっ!」

体勢を崩したナイロンに向かって拳を振り下ろす。
拳はまた防がれたが、そのまま力で押しきり、再度ナイロンを地面に叩きつける。

「キサマッ!」

トドメにはまだ浅い。
でもナイロンがよろよろと立ち上がった瞬間、ナイロンの足下に紅い魔法陣が展開された。
今度はオーソドックスに私が時間稼ぎ。
私は魔法に巻き込まれないように、魔法陣の上から飛び退く。
ナイロンが弾かれたように背後を睨んだ。

「あいぼん、行けーっ!!」
「これで終わりや! ギガ・フレア!!」

  ドンッ!!!

丘の上に爆音が木霊した。
941 :片霧 カイト :2008/05/24(土) 17:41
今回はここまでです。
いいや、もう、ナイロンオリキャラで……(マテ

>>927 名無飼育さん 様
感想ありがとうございます。
そろそろ最初から読むにはキツイ分量になってきましたが……(汗
さすがにそろそろ収束に向かわせたいので、それまでおつきあいいただければ幸いです。
942 :みゃー017 :2008/06/15(日) 17:56
初めまして、一日でDear my Princessからここまで全部一気に読みました♪w
スリル満点で先を読みたくなる様な書き方、その場にいるかの様に描かれる戦場、そしてたまに入るエロ?シーン、
本当にこの世界に吸い込まれてく様な気がしました!
そして…何と言っても推しであるれいなが主人公と言う(笑
続きを楽しみにしています!!
943 :第13話 :2008/06/28(土) 01:24
炸裂した爆音に、ドサッと、人の倒れる音が続く。
展開されていた魔法陣がスーッと消えていく。

「やれやれ、けっこう危なかったよ」

私は何が起こったのかわからなかった。
わかったのは、あいぼんの魔法が中断されたことと。
そのあいぼんが、倒れたこと。

「あいぼんっ!!」

しっかりと地面に立っているナイロンを睨む。
こいつ、いったい何をしたんだ!?
魔法を使った形跡はない。そもそも魔法を詠唱している時間もなかったはずだ。
だとしたら、どうやって!?

「あっ……」

ナイロンが真っ直ぐ持ち上げた手の先から、細い紫煙が立ち上っていた。
あれは、まさか……!?
私の視線に気付いたナイロンが、そのまま手を私の方に向ける。
その手に握られていたのは……銃!!
944 :第13話 :2008/06/28(土) 01:24
「そんなに驚くこともないでしょう? ここはダウン・フロントなのよ」

そうだ……しっかりとアヤカさんに説明は聞いていたのに……。
そのことを忘れていた。そこまで考えが回らなかった。

「あいぼんーっ!!」

あいぼんの身体は地面にうずくまったまま、ビクビクと震えている。
まずい……どこに当たったのかわからないけど、場所によっては命に関わるって……。

「そんなに心配しなくても大丈夫よ。すぐに後を追わせてあげるから」

あいぼんの元に向かおうとしたけど、ナイロンが引き金に指をかけたことで急停止を
せざるをえなくなる。
わずかな指の動きに続き、また爆発音が響く。

「くっ!!」

何とか弾が撃ち出されるタイミングと、銃口の角度を捉えて弾をかわす。
直撃はしなかったけど、それでもギリギリだったようで、髪が数本千切れ飛んだ。
945 :第13話 :2008/06/28(土) 01:25
「銃だけじゃないよ!」

さらに、ナイロンがハルバードを振り上げて襲いかかってくる。
銃はもう手に持っていない。おそらく袖かどこかにしまって、すぐ取り出せるように
してあるのだろう。
なんとか槍で受け止めるけど、それで動きを止めてしまうとすぐまたナイロンの手に
銃が現れる。

「うわっ!!」

身体をひねって何とか弾をかわす。
でもさらに……

「サタン・ブラスター!!」
「くあぁっ!!」

魔法まで。
多種多様な連続攻撃を、私はなんとかかわすのが精一杯。
946 :第13話 :2008/06/28(土) 01:26
「ほらほら、さっきまでの勢いはどうしたの?」

振り下ろされるハルバードを槍でガードする。

「二人合わせてようやく一人前。魔法も使えないチビ騎士が」

撃ち出された弾丸を槍の柄ではじく。

「私に勝てるとでも思ってるの!?」

放たれる闇の魔玉をなんとかかわす。

「あなたもさっさと後を追ってあげなさい」
「うるさい、黙れっ!!」

突き出した槍はハルバードでいなされる。
そのままハルバードが旋回して襲いかかってきたので、私はなんとか動く方向を
切り替え、ハルバードをかわした。が……。

「かかったわね!」
「何っ!?」

私の足下に暗く輝く魔法陣が現れた。
詠唱なんてしてなかった。つまりあらかじめ仕掛けられていた、トラップ!!
947 :第13話 :2008/06/28(土) 01:26
「さっき引っ掛けてくれたお返しよ! キラー・エッジ!!」
「くっ!!」

魔法陣から無数の刃が飛び出す。
二回連続で急な方向転換を試みるが、さすがに二回目は身体が追いつかなかった。

「くあっ!!」

直撃こそ避けられたが、逃げ遅れた脚に痛みが走った。
そのまま地面に転がる。
見るとすっぱりと腿が切れ、血が零れている。
よりにもよって、脚なんて!!

「これでちょこまか逃げ回れないわね」

ナイロンがハルバードを構え、じりじりと間合いを詰めてくる。
私もなんとか立ち上がるが、そのとき……。
948 :第13話 :2008/06/28(土) 01:27
  ドオオォォォォオン!!

「えっ!?」

辺りに轟音が響き、お互い動きを止めた。
示し合わせたかのように、同時に音のした方を向く。
視線の先では、今までそびえていたはずの城が崩壊して、砂煙を巻き上げていた。

「フフッ……」

ナイロンの顔に邪な笑みが浮かぶ。

「とうとう崩れたわね。地の王は力尽きてくたばったか、それともなんとか全員を逃がしきれたか。
どちらにしてももう戦う力は残ってないでしょう」

そのままナイロンが私の方を向く。

「ならもうあなた達にかまっている暇はないわ。さっさと殺して、次に行かないと」
「くっ!」

痛みを訴える脚に無理矢理力を込め、私は槍を構える。
戦わなきゃ、こいつを倒さなきゃ、殺される。
私たちだけじゃなく、他の多くの人々も。
949 :第13話 :2008/06/28(土) 01:28
「死ねっ!!」

突進してきたナイロンのハルバードを槍で受け止める。
重い攻撃が脚に響く。これは耐えきれない……。
それならばとハルバードを受け流し、そのままナイロンの背後に回り込む。

「甘いね!!」

でもナイロンはそれを読んでいたようで、振り向きざまにハルバードを一閃。
あわてて槍で受け止めるが、その勢いに押されて私は吹き飛ぶ。
まずい、距離を開けると銃が……!!
予想通りナイロンが銃を手にし、私めがけて引き金を引く。

ギリギリでかわすが、この脚で銃弾をかわし続けるのは厳しい。
なんとかまた距離を詰めるために、ナイロンに向かっていく。

「はあっ!!」

槍を突き出すが、それはハルバードで受け止められる。
でもそれは予想通り。
痛みをこらえ、私は脚を振り上げる。

「くらえっ!!」
「ぐっ!?」

ガードの開いた脇腹に回し蹴りがめり込む。
ナイロンの身体がよろめく。
950 :第13話 :2008/06/28(土) 01:29
「ふっ、怪我した脚でよくやるね」
「えっ!?」

でも倒れる前に、ナイロンのハルバードが動いた。
私の軸足にハルバードの鉤爪が引っかかり……。

「きゃっ!!」

そのまま引かれた。
よって、軸を失った私の身体はナイロンと一緒に地面に倒れ込んで……。
まずい、早く立ち上がらないと……。
地面を踏みしめ、力を込めた脚に……

  ダァンッ!!

「!! うわああぁぁあっ!!」

激痛が走り、私は再び地面に倒れた。
そのままなんとかナイロンの方をにらむ。
ナイロンの手に持った銃が紫煙を立ち上らせていた。
951 :第13話 :2008/06/28(土) 01:29
「両脚を潰した。もう本当に逃げられないわ。これで終わりよ!!」

私の前に立ち上がったナイロンがハルバードを突き下ろす。
ガードするために身体を反転させ、槍を構えたけど……。
ハルバードは槍のガードをすり抜け……。

「がっ……!!」

い、痛……!
口の中に鉄の味が広がる。
ナイロンのハルバードが腹部に突き刺さったのだと、数秒かかって理解した。

「ふふっ、所詮虫けらは二人揃ったところで虫けらに変わりはないのよ」

血の味が口内にあふれる。
手が痺れて、感覚が遠くなる。
でも……。

「あなたも、あなたの相棒のように、惨めに死ぬことね」
「だ…まれ……」
「!?」

負けられない……。
こんなヤツには負けられない……。
ここで私が倒れたら……全部が無駄になっちゃう……。
952 :第13話 :2008/06/28(土) 01:30
「あああぁぁああああっ!!」

力を振り絞り、その力を末端までみなぎらせ。
手に持った槍を強く掴みなおし、ナイロンに向けて突き出す。

「ぐあっ!!」

槍はナイロンの左肩を貫いた。
ナイロンの血が槍を伝う。

「くっ、おのれ……死に損ないが、無駄な抵抗を……」
「無駄じゃないのれす……。確かに致命傷は与えられなかったけど……これでいいのれす……」
「何?」
「ののの役目は、魔法の完成まで……敵を引きつけること……。それがののとあいぼんの
コンビネーションの形なのれすよ」
「なんだと!?」
「あいぼぉんっ!!」

私の叫びと同時に、私たちの足下にダークブラウンの魔法陣が輝いた。
ナイロンが思わず後ろを振り返る。
きっとナイロンの瞳には地面に這い蹲りながらも必至で魔法を唱えているあいぼんの
姿が映っているはず。

「貴様……まだ、生きて……」

ナイロンが驚愕に動きを止めている隙に、私は自分の身体からハルバードを引き抜く。
そして槍を手放し、魔法陣の外に転がり出た。
953 :第13話 :2008/06/28(土) 01:31
あいぼん……わかってたよ。あいぼんが必死に大魔法を組み立てていたこと。
私を信じて、魔法を作っておいてくれたんだよね……。
だから私も頑張ったよ……。
ナイロンをなんとかあいぼんの射程範囲まで誘導して、あいぼんのこと気づかれないように、
気を引きつけて……。
あいぼんの信頼に応えられるように……。私もあいぼんを信じて……。
もうちょっとスマートにできればよかったけど、これが私の限界だったみたい……。

「行っけーっ、あいぼん!!」
「デス・イーター!!」

魔法陣がひときわ強く輝く。
その魔法陣が二つに裂けると同時に、魔法陣の円周上から無数の牙が飛び出し、
ナイロンに突き刺さる。

「ぐあああぁぁああっ!!」

ナイロンの身体が牙に切り裂かれ、魔法陣に吸い込まれて、いや、喰われていく。

「くっ、おのれ……私の計画が……こんな…ところで……!」

伸ばしていたナイロンの腕を飲み込んで、魔法陣は消滅した。
954 :第13話 :2008/06/28(土) 01:32
勝った……。
それが理解できた瞬間、私は地面に倒れ込んだ。
なんだか凄くまぶたが重い。脚の感覚が薄い。
でも……私はまだ倒れるわけにはいかない……!

「あい…ぼん……」

無事な両腕を使い、身体を引きずって前に進む。
同じように地面に突っ伏しているあいぼんのもとへ。
普段だったら一瞬で詰められるような距離が、今日は遠い。
でも私は手を伸ばし続ける。

「のの……」

あいぼんも必至に手を伸ばす。
無限とも錯覚しそうな距離を進み、ようやく伸ばした手があいぼんの手に重なった。
あいぼんもぎゅっと手を握り返してくる。
その瞬間、全身から力が抜け、私は再度地面に倒れ込んだ。

「のの……やったなぁ……」
「うん、やったのれす……」

示し合わせたように同じタイミングで、一緒に身体を返す。
眩しいくらい一面の蒼が目の中に降ってくる。
繋いだままの手が、もう一度きゅっと握られた。
955 :第13話 :2008/06/28(土) 01:33
「のの……初めて会ったときのこと覚えてるか……?」
「当たり前れす。王宮騎士団の入団試験の時れすよね。魔法が使えないののと、
魔法しか使えないあいぼん。二人で組んで試験を突破したれすね」
「ほんま、懐かしいなぁ……。最後の試験終わって、合格決まって……そん時も
こんなふうに二人で寝っ転がったなぁ……」

繋いだ手を通してあいぼんの呼吸が伝わり、私の呼吸と重なっていく。
まるでこのまま一つに溶け合ってしまうように。

「思えばあれから、ずっと一緒やったなぁ。一緒に2番隊、矢口さんの下に配属になって……」
「そうれすね」
「お互いカレシの一人も作らんと、色気のない青春やったわぁ……」
「れすねぇ……」
「でも……」

手がぎゅっと、力強く握られる。

「ののに会えたから……それだけで十分や……」
「ののもれすよ」

私もあいぼんの手をぎゅっと握り返す。
あぁ……なんだかすごく眠い……。
ぽかぽか陽気が気持ちいいからかなぁ……?
956 :第13話 :2008/06/28(土) 01:33
「あい…ぼん……?」
「・・・・・・」

呼びかけてもあいぼんは答えてくれなかった。
どうやら先に眠ってしまったらしい。
置いてくなんて酷いのれす……。

でも、すぐに追いつくから……。
夢の中へでも、どこへでも追いかけていくから……。
だからちゃんと待ってるのれすよ……。

過去も、現在も、未来も。
いままでも、今も、そしてこれからも……。

ずっと、いっしょに……。
957 :片霧 カイト :2008/06/28(土) 01:41
今回はここまでです。
いろいろあったココナッツバレイ編、そして13話も次回で最後です。
それでおそらくスレのお引っ越しかなぁ……?
残すは大きく分けて展開が3つほど。さすがに水にたてるほどの残量ではないので、夢か幻になるかと。

>>みゃー017 様
ディアプリからとは……本当にありがとうございます!
いい加減量が量なだけに大変だったと思います。
デモエロシーンイレタッケカナァー?(ぉ
958 :みっくす :2008/06/29(日) 02:10
更新おつかれさまです。

うーー、こういう展開になりましたか。
959 :第13話 :2008/08/25(月) 22:09
〜田中れいな〜

それは見晴らしの良い、小高い丘の上にあった。
命を終えた竜や地の民が眠るココナッツバレイの墓地。
赤い夕陽に照らされて、十字の影が長く伸びている。

今日、そこに新たに多くの十字碑が建てられた。
鎮魂の鐘の音が鳴り響くなか、地の民が思い思いの墓前に並び、深い祈りを捧げている。

あたしたちも一つの十字碑の前に並び、目を閉じる。
そこには高橋さんが眠っている。
あたしたちを前に進ませるために、自ら犠牲になった高橋さん……。
どうか……安らかに……。

「ひっく……ひっく……」

祈りを捧げていると、隣から押し殺した鳴き声が聞こえてきた。
あたしはそっと、隣の絵里の肩を抱き寄せた。



960 :第13話 :2008/08/25(月) 22:10

◇     ◇     ◇


「絵里、落ち着いた?」
「うん……ごめん……」

結局絵里はココナッツバレイの宿泊施設に戻ってくるまで泣きやまず、部屋で慰めてようやく
涙が止まった。
抱きついていたあたしの身体から、ゆっくり絵里が離れる。

「ごめんね……れーなは我慢してるのに、絵里だけ泣いちゃって……」
「かまわないとよ。むしろ今のうちに泣いておいた方がいいと」
「そうだね……これからは、泣く余裕もなくなっちゃうかもだしね……」
「うん……」

今回の戦いでは高橋さんが亡くなっただけでなく、辻さんと加護さんも戦線を離脱した。
ミカ様から聞いた話によると、重傷を負って倒れていた二人を、駆けつけたヒトミさんが
発見したらしい。
二人はすぐさま「病院」と言うところに送られ、なんとか一命は取り留めたものの、
未だに意識が戻らない。
そしてたとえ意識が戻ったとしても、すぐに旅に復帰するのは不可能とのこと。

つまり、これから先は三人で旅を続けなければいけない。
残すところはあと少しだが、目的地に近づけば近づくほど、敵の妨害も強くなることが
予想される。
正直あたしだって不安でたまらないくらいだ……。

でも、あたしたちは……。
それでも前に進まなきゃならない……。
961 :第13話 :2008/08/25(月) 22:11
「れーな……」
「んっ?」

絵里の言葉に振り向く。
絵里は赤い目を擦りながらも、もうしっかりと顔を上げていた。

「絵里はもう大丈夫だから……紺野さんのところに行ってあげて……」
「……うん……」

ポンちゃんは結局今日の葬儀にも出席しなかった。
それどころか、昨日ココナッツバレイに戻ってきてからずっと部屋に閉じこもり、
一歩も外に出ていない。

「じゃあ……ごめん、行くね……」
「うん……れーな、お願いね」
「わかってる」

絵里に促され、あたしは絵里の部屋をあとにする。
あたしの部屋の前を通り越し、あたしはポンちゃんの部屋に通じる扉の前へ。
控えめに軽くドアを二回ノックする。

「ポンちゃん……れいなです……」

中からの反応はない。
でも中にいるのは明白なわけで、悪いと思いつつ、あたしはドアを開ける。
陽はもうかなり落ちていて、辺りは薄暗くなっていたけど、部屋の灯りはまったく
灯ってなかった。
薄暗闇の中、ポンちゃんは一人でベッドに座り、俯いていた。
962 :第13話 :2008/08/25(月) 22:12
「ポンちゃん……」

呼びかけてもまだ反応はない。
あたしは暗い部屋の中を進み、ポンちゃんの隣に腰掛ける。
そこでようやくポンちゃんも反応を示してくれた。
あたしのことを確認するように、ゆっくりと顔を持ち上げる。
その顔には涙の跡が滲んでいた。

「あの……ポンちゃん……大丈夫…です…か……?」

こんなことしか言えない自分にちょっと嫌気がさしたけど。
それでもポンちゃんは小さく反応した。
小さく、首を横に振った。

「ダメ…だよ……」
「えっ、ポンちゃん……?」
「ダメだよ……私…また……守れなかった……」

涙の跡の上を、新しい雫が伝っていく。
ポンちゃんはそのまま両手で顔を覆った。

「強くなるって決めたのに……みんな守るって決めたのに……また…また、また……」
「ぽ、ポンちゃん!?」

思わず伸ばした手が触れたポンちゃんの身体は、大きくガタガタと震えていた。

「里沙ちゃん、愛ちゃん、のんちゃん、加護ちゃん……みんな、私のせいで……」
「そんな! ポンちゃんのせいじゃないですよ!!」
「いや……もう嫌ぁっ!! みんな……みんな、いなくなっちゃう!!」
「ポンちゃん!!」

ポンちゃんはさらに自分の殻に閉じこもるように、頭を抱えてうずくまる。
伸ばした手はポンちゃんに振り払われた。
963 :第13話 :2008/08/25(月) 22:12
「みんな……消えてく……。みんな……いなくなる……!」

そのままポンちゃんはつぶやき続ける。
軽い錯乱状態に陥っているのだろう。
このままじゃ本当にポンちゃんが狂ってしまう!

「ポンちゃん!」

とにかくこのままじゃ声も届かない。
なんとかポンちゃんを正気に戻すために、あたしはポンちゃんの手を解こうとする。

「いやっ……いやぁっ!!」

ポンちゃんは必死の抵抗で、あたしの手をふりほどこうとする。
実はポンちゃんも案外力が強くて、なかなかうまくいかない。
でも、一応あたしは体術のほうが専門だから。
暴れるポンちゃんをベッドに押し倒し、その身体にまたがる。
そして腕をベッドに押さえつけ、なんとか動きを封じた。

「いやっ、離して!! れいなだって、そのうち……!!」
「れいなは消えませんっ!」
「嘘っ!」
「嘘じゃないっ!!」

反射的に叫んでいた。
ポンちゃんの身体がびくっと一瞬固まる。
あたしはゆっくりとポンちゃんに顔を近づけ、正面からポンちゃんの目を見据える。
失うことを何より恐れる、そのおびえた瞳をいつもの優しい瞳に戻してくれるように。
964 :第13話 :2008/08/25(月) 22:13
「れいなはポンちゃんが好きです。だから一緒にいます。ポンちゃんの前からいなくなって、
悲しませることは絶対しません!
「・・・・・・」
「その……ポンちゃんが望んでくれるなら、一生だって……」
「れいな……」

ポンちゃんの強ばった身体から、ゆっくりと力が抜けていく。
でも、錯乱状態からは回復したものの、まだポンちゃんの身体は小刻みに震え、瞳からは
涙がこぼれ続けている。
あたしはさらに身体を密着させ、ポンちゃんを抱きしめた。
あたしが悩んだとき、苦しかったときに抱きしめてくれたポンちゃんと同じように。傷ついた心を
癒してくれたように。

「れいな……!」

すがりつくように、ポンちゃんの腕が背中に回る。
そしてきつく、あたしの身体を締め付ける。
離れないように。離さないように。

「本当に、一緒にいてくれる……?」
「はい、約束します」
「絶対だよ……? れいなまでいなくなったら……私、もう……」
「一緒にいます。れいなが……ポンちゃんのこと守りますから」

ポンちゃんの、あたしを抱きしめる力がさらに強くなる。

「ごめんね、れいな……もう少しだけ、このままで、いさせて……」
「はい……」

じんわりと服の胸元が濡れてくる。
抱きしめている身体の震えが大きくなる。

「う、わああぁぁぁああっ!!」

ポンちゃんはしばらくの間泣き続けた。
ポンちゃんの苦しみが、痛みが、少しでも安らげばいいと。
あたしはポンちゃんを抱きしめ続けていた。



965 :第13話 :2008/08/25(月) 22:14

◇     ◇     ◇


「落ち着きましたか、ポンちゃん?」
「うん……ありがと……」

ひとしきり泣いたあと、ポンちゃんはなんとか泣きやんだ。
涙の跡はまだ残っていたけど、その顔には少しだけど微笑みも戻ってきていた。
あたしも抱きしめる力を少し弱める。

「れいなは……強いね」
「えっ、そんなことないですよ。ポンちゃんに比べたら、れいななんかまだ……」
「ううん、強いよ。こんな状況でもちゃんと一人で立ち上がって、さらに他の人だって
支えちゃうんだから」

ポンちゃんに至近距離からそんなことを言われ、あたしは二の句が告げられなくなる。
好きな人に、そんな風に認めてもらえたら、それは誰だって嬉しいわけで。
顔がちょっと火照るのを感じた。
そういや、力を弱めたとはいえ、まだ抱きしめたままだし。
あたしはなるべく自然に、ゆっくりと体を離す。

「えっと、ポンちゃん、もう大丈夫ですか?」
「うん。心配かけてごめんね……」
「それじゃ、今日はゆっくり休んでください。昨日まともに寝てないでしょ、ポンちゃん?」

ま、それはあたしもなんだけど。
ベッドから起きあがり、腰を浮かせる。
部屋から立ち去ろうとして、あたしは腕を捕まれ、足が止まった。
振り返ると、ベッドの上に起きあがったポンちゃんが、まだ涙が残る瞳であたしを見ていた。
966 :第13話 :2008/08/25(月) 22:15
「行っちゃうの……れいな……?」
「えっ、だって……」
「一緒にいてくれるって言ったのに……」

いや、確かに言ったけど……そういう意味じゃなくて……。
でもこんないつもと違うポンちゃんを放っておくのもちょっと心配な気がする。
あたしと一緒にいることで、ポンちゃんが少しでも気持ちが癒されるなら……。

「服着替えたら、戻ってきますから……」

そういうとポンちゃんは安心したように笑い、手を離してくれた。
あたしはいったん自分の部屋に戻ると、ポンちゃんの涙で濡れた服を脱ぎ、新しい服に袖を通す。
……一応下着も替えたほうが……いやいや、何考えてるんだ、あたしはっ!!
とりあえず枕だけ抱えて、急いで部屋を出る。
逆隣りの絵里の部屋をちょっと窺ってみたけど、どうやら絵里はもう寝てしまったみたい。
ポンちゃんの部屋へと移動し、一応軽くノックをしてから中にはいる。
と……。

「すぅー……」

ポンちゃんはベッドの上に横たわったまま、小さな寝息を立てていた。
この短時間で……。まぁ、それだけ疲れていたってことかな。
あたしは扉に鍵をかけると、部屋の灯りを落としていく。
そしてポンちゃんを起こさないようにまっすぐ寝かせると、身体の上に毛布を掛けた。

「失礼しまーす……」

持ってきた枕を並べ、あたしも毛布の中に潜り込む。
せめて今日はゆっくりと休んでください、ポンちゃん。
枕元に残る灯りを消しながら、あたしは胸の中で祈った。



967 :第13話 :2008/08/25(月) 22:16

◇     ◇     ◇


翌朝。
ゆっくりと目を覚ますと、そこにはポンちゃんの安らかな寝顔があった。
目はちょっと腫れているけど、顔色はよさそう。

「んっ……?」

あたしが目を覚ましたのにつられたのか、軽いうめきとともにポンちゃんの身体がもぞもぞと動く。
そしてゆっくりとポンちゃんの瞳が持ち上がった。
あたしたちの視線がぶつかり合う。

「あっ……れいな、おはよう……」
「おはようございます、ポンちゃん。ゆっくり眠れましたか?」
「うん。こんなに安心して眠れたのは久しぶり」

と、毛布の中にあったあたしの手になにかが触れた。
きっとポンちゃんの手だ。

「きっと、れいなが一緒にいてくれたからだね」

にっこりと笑ったポンちゃんの笑顔は、部屋に入り込んだ朝日を浴びてきらきらと輝いて見えて。
あたしは顔が熱を帯びるのを感じた。

「れいな、昨日はありがとね」
「いや……れいな特別なことはしてないですよ」
「私はもう大丈夫だから……行こう!」

毛布の中で、あたしの手がきゅっと握られる。
その指にはめた指輪ごと、ポンちゃんの手に包み込まれる。

「最後の魔剣のある、雷の王国へ」
「はい!」

ベッドから起きあがり、出立の準備を整えるため、いったん自分の部屋に戻る。
と、部屋に入ったとたん、すぐに部屋の扉が開け放たれた。
968 :第13話 :2008/08/25(月) 22:16
「れーな、起きてる〜!?」

元気いっぱいに飛び込んできたのは、言わずもがな、絵里で。
どうやら絵里もいつもの調子を取り戻したらしい。

「ちゃんと起きてるとよ、絵里。それより勝手に入ってくるなって、何回言えば……」
「あれ〜、珍しく早起きだね、れーな。ベッドメイキングもしてあるし……」
「あ、えっと、それは……」

使ってないだけなんだけどね。
まぁ、そんなことはさすがに言えないけど。

というわけで、絵里にも事情を説明し、あたしたちは出立の準備を整えた。
そして三人でアヤカさんのもとを訪れた。

「れいな、もう大丈夫なの?」
「はい、大丈夫です。それで……」

ポンちゃんと絵里と目を合わせ、意思を確認する。
二人ともしっかりとした目つきで、小さくうなずいてくれた。
今はただ、前に進むのみ。

「れいなたちを、雷の王国に連れて行ってください!」
969 :第13話 :2008/08/25(月) 22:16
   
970 :片霧 カイト :2008/08/25(月) 22:21
今回はここまでです。遅くなって申し訳orz
いろいろあった13話、そしてココナッツバレイ編も終了です。
でもってこのスレッドもそろそろ限界なので、次からは新しいスレに引っ越し予定です。
さすがにもう一枚水を埋める量は残ってないので、夢か幻のどちらかになると思います。

>>958 みっくす 様
とりあえずこんな展開で終わりました。
良いのか悪いのかはおいといて、次からは新しいストーリーです。
971 :みゃー017 :2008/08/26(火) 00:41
おぉ、続きが!w更新お疲れ様です。そして、人数がまた減っちゃいましたか。
…でもその分今後はれいなのワンマンショーならぬワンヲマンショーになる可能性もあるってことでしょうか?(笑
夢と幻、今後はそちらをチェックしておきます。頑張って下さい!
972 :片霧 カイト :2008/10/12(日) 17:44
まずは返レスです

>>971 みゃー017 様
はい、また減ってしまいました……。
その分れいなには頑張ってもらわないとですね。

そして宣言通り、新しいスレに引っ越しです。
今度は夢版にて書かせていただきます。
そちらでまた会えることを祈りつつ。

「Dear my ・・・ 〜 Dark × Dark 〜 U」
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1223800847/

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