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やっぱり…平和って良いよね!!

1 :黄忠 :2004/07/31(土) 13:31
初めて投稿します。

RPG(ロールプレイングゲーム)のモンスターがもし、今の世の中に
出現したらという話です。

それを迎え撃つ娘。達が、個々の潜在能力や、銃などの近代武器、
そして、そして科学では証明できないアクセサリー(例)ペンダントが
形を変えて武器になるを駆使してそれに対抗する…そんな感じですね。

現実にそんなモンスターがいたとしたら、普通に対抗できませんよね?
惨殺が行われるわけです。親密な相手とか食われたりしてしまいます。
その時の心境、覚悟、そうして平和の大切さを実感する。

大層な事を書いておりますが自分は初心者です。何かお気づきの点など
御座いましたらお教え、そしてつっこみをかまして下さい。

今の娘+安倍さんをメインにして行きたいと思っています。
今日はこれから仕事の為明日から少しづつUPしていきたいと思って
います。宜しくです。それではっ!!
2 :774 :2004/07/31(土) 20:02
楽しみに待ってます。
頑張って下さい。
3 :なつまり。 :2004/07/31(土) 22:38
面白そうですね。
楽しみにしています。
4 :黄忠 :2004/08/01(日) 10:51
やってしまいました…とほほ
書き込んだのは良いんですが長くなりリロードする事に
千文字ってどうやって確かめるんですか?方法有りましたら
教えてください。
ふう、また頑張って書き込みます。
5 :黄忠 :2004/08/01(日) 11:39
早速のコメント有難う御座います。
自分で言うのも何ですが、すっごく難しそうです。
皆さんの良いアイディアとか有りましたらお教え下さると
ありがたいです。

では、始めさせて頂きます。

とある部屋の一室。真ん中の机を囲む様に四人の女学生が座っている。
机の上には教科書やノートが広げられており、シャーペンがカリカリと
音を立てている。窓の外は夕方特有のオレンジ色で染まっており学校が
終わってそのままここに集まったという感じだ。

『あさ美、ここ教えて』
『うんっ』
『私、ここ教えてくれる?あさ美ちゃん』
『うん、分った』

あさ美と呼ばれた学生は一つも嫌な顔をせずそれに答える。相手に合わ
せて説明の仕方を変えるそのやり方はとっても解り易いのだろう質問を
した二人(愛、麻琴)の晴れ晴れとした表情が物語っていた。

6 :黄忠 :2004/08/01(日) 12:10
『ほんとあさ美の説明は解りやすいなぁ』

少しなまりのかかった喋り方で愛が言う。

『ほんとほんと、さすがは学年トップのあさ美ちゃんだよね!!』

と麻琴がいつもの調子でちゃかす。

『そんなに解りやすいかなぁ、でもそう言ってもらえると嬉しい』

あさ美はほうを赤らめながら笑顔で素直な気持ちを口にした。

『う〜ん。どうやったらそんなに頭良くなるのかな。っああっ!もう!
 ぜんっぜんわかんないっ!!…今回も駄目そうだな私』

一人教科書とにらみあっていた理沙が嘆く。

『もう、おまめちゃん←(理沙のあだ名。顔が丸く豆に似ている為らしい)
 諦めたら駄目だよ頑張ろ!!』
『そうだよ理沙ちゃん』
『理沙ちゃんも補習なんてしたくないでしょ?みんな一緒』

愛、あさ美に続いて麻琴も口を挟む。短い言葉ながら理沙をもう一度や
る気にさせるには十分の力があった。これが友達というものなのだろう。

7 :なつまり。 :2004/08/01(日) 23:10
更新お疲れ様です。
私も最初は同じでしたよ。
長く書きすぎてまた書くはめに・・・。
それから暫くは、それにビビッてしまって1レス3行なんていうのもありましたね。
 千文字についてなんですが、それは1スレの記事数では?
多分、KB数だと思いますよ。ここでは700KBですね。
私は、感覚です。このぐらい書けば良いかなっていうぐらいです。
あんまり当てにしないでくださいね。始めたばっかりなんで・・。

後、理沙の理は里ですよ。念のため・・。
長々すいません。頑張ってください。
8 :黄忠 :2004/08/02(月) 01:20
早速のご指摘有難う御座います。
感覚ですね解りました。頑張ってみます。
何故か文字列も変ですそれも気をつけたいと思いつつ続きです。

…しかし、もう日は落ち時計の針は十九時を回っていた。今日は解散
する事に。

『ほいじゃねー!』
『うん、ばいばいっ!』

あさ美は、笑顔で手を振り愛を送る。

『今日はありがとう。私もうちょっと頑張ってみる』
『里沙ちゃんならきっと大丈夫だよ。わかんない事とかあったら遠慮し
 ないで電話してくれて良いから』
『うんっ、あさ美ちゃん!…何かやる気でてきた!ようし!やるぞー!!』

愛と里沙を見送ったあさ美はトイレに入ってる麻琴待ちの状態だ。

…待つこと約五分。
9 :黄忠 :2004/08/02(月) 01:50
『いや〜さっぱりしたぁ』

ジャーッっと水の流れる音が聞こえ麻琴がトイレから姿を現した。

『何も声に出して言わなくても』
『気にしない、気にしない』

といつもの笑顔。麻琴の発する言葉には相手を(そうゆうものなのかな)
って思わさせる力がある。そんなオーラをまとった女の子だ。

『…ねぇ、あさ美ちゃん…』

靴を履き終わった麻琴は、振り返るとあさ美に話かける。その表情、
声のトーンから先程の明るさが感じ取れない。

(何かあったのかな…それも大変な事が?)

あさ美は一度もみた事のない親友の変わりように戸惑いながらも後に
続くであろう言葉を待った。
10 :黄忠 :2004/08/02(月) 02:21
『…あさ美ちゃん…あのね…』
『…うん』
『…信じて…もらえない…と…思うんだけど…昨日の夜…見ちゃった
 …んだ…人の死ぬ…ううん…たべ、食べ…られる…とこ』
『…えっ』

あさ美には理解し難い話だったが、麻琴の今の状態をみれば嘘、偽り
の無い事実だということはわかる。一度も人の前では涙を見せずに、
他人を励まし元気づけてきたその彼女が今、自分の目の前で涙を流し
小さく震えているのだから。

(だからといって、私に何ができるの?話を聞いてあげることしか)

『…やっぱり信じらんないよね…』

(まこっちゃんは私にどうして欲しいんだろう…わかんないよ)

『もういいよっ!!』

――バアンッ!!

11 :黄忠 :2004/08/02(月) 03:04
玄関の閉まる音があさ美の心の奥深くに突き刺さる。

(ちがう…ちがうんだよ…信じてないわけじゃないよ…信じる…信じて
…そうだ、まこっちゃんはこの言葉を待っていたんだ…それなのにわた
…私は…自分に何ができるかとか考えてて…そんなに凄い人間じゃない
のに…ごめん…ごめんなさい…傷つけちゃったよね)

とめどなく溢れ出してくる涙…それはあさ美の後悔、懺悔の気持ち。
12 :黄忠 :2004/08/02(月) 03:34
大変情けないことですが…。
11スレの前セリフ入れ忘れました。→『あっ!まこっちゃん!!』
13 :なつまり。 :2004/08/02(月) 12:36
少し動き始めた感じですね。楽しみです。

黄忠さん、落ち着いてください。
落ち着いて書けばミスも無くなりますので。
14 :黄忠 :2004/08/02(月) 14:11
なつまり。さんいつも暖かいご指摘有難うございます。
下手なりに思い切ってカキコした甲斐がありました。


あさ美の家を飛び出してきた麻琴はただ走り続けていた。視界を妨げる
涙を拭いながら…。彼女の精神状態がそれを促していた。

…しかし、体力にも限界というものがある。だんだん速度が落ちてきて
徒歩になるのは当然というものだ。自分の駆け足の音が消え周りの静け
さが麻琴の心に恐怖を植え付ける。

『…ここ、どこ?』

今だ止まらない涙を手で拭いながらキョロキョロと辺りを見回す。
どうやら途中で道を間違えたらしかった。見覚えのない景色に、自分の
血の気が引いていくのがわかる。感情で行動した結果だった。人気が無
く暗闇に覆われている状態…まさに絶望。

『…嘘、…そんな…』




15 :なつまり。 :2004/08/02(月) 17:56
カキコして良かったって思えるのが1番良い事だと思います。
私みたいな読者で宜しければいつまでも読ませて頂きたいと思います。
それに黄忠さん。下手なんかじゃないですよ。
上手い、下手なんて元々ないと私は思います。
作者さんの物語を考える頑張りや、やる気。
読者さんの楽しみにしているという気持ちがあればそんなの関係ないと思いますよ。
作者さんにやる気が無ければその物語は読者さんには、つまらなく見えてしまうと思います。
何か偉そうなこと言ってごめんなさい。頑張ってくださいね。
16 :名無し読者 :2004/08/02(月) 21:01
相手へのレスと小説の本文は分けた方が良いと思うよ
17 :黄忠 :2004/08/02(月) 23:47
≫名無し読者さま

確かにその通りですね。ご指摘ありがとうです。
今度からそうしたいと思います。感謝
18 :黄忠 :2004/08/03(火) 01:12

…絶望と言う名の現実。それは、麻琴の思い出したく無い記憶をフラッシュバック
させ始める。やがてそれは鮮明に頭の中に広がり形作る。

(いや…暗い…怖い…怖いよ…誰か…誰か助けて)

『いっ、いやああああああっ!!』

思いはやがて声となり漆黒の世界に響き渡る。

…ガサッ

『…えっ』

麻琴の防衛本能が働いたのだろう。いつの間にか涙は止まり、音のした一点を
見つめていた。

ガサッ、ガサガサガサッ…

『…何…えっ…何なのよ…』

草木のこすれ合う音、掻き分ける音。風は無い…何かがいる。音がだんだん近づい
てくるにつれ自分の心臓の鼓動が早くなるのがわかる。

『いや…来ないで…来ないでよおおおおっ!!』

姿の見えない何者かに恐怖する。暗闇…頭の中を支配している思い出したく無か
った戦慄の記憶。それらが拍車をかけているのだ。

19 :黄忠 :2004/08/03(火) 10:02
急に身体の力が抜け、立っていられなくなる。ドンッと後ろにしりもちをつく。
すぐにでもこの場所から離れたいと思い脳から各部に指令を送る。人間が何か行動
する時などにする事。だが、それを受けつけなくてはどうする事もできない。

(動け…動いてよ…動けえええええっ!!)

『おいっ!!』
『ヒッ!』

首の上だけが後ろを向き、身体全体を引きずるように後退いていた麻琴は突然の声
、肩に感じる温もりに小さな悲鳴を上げた。

『…おいっ!どうしたっ!しっかりしろっ!!』

とても力強く、頼りがいのある大人の男性の声。それは麻琴の心を支配していた
絶望の暗闇に希望の光をさしこませる。ゆっくりと振り返りその姿を確認する。

警官だった。何かを調べにきていたのだろう手には懐中電灯をもっていた。何故こ
んな時間に…とも思ったがそんな事を今気にする必要はない。

『うわああぁぁぁんっ!!』

感極まり止まっていた涙が再び溢れ出す。気づいた時にはその胸に飛び込んでいた。
始めは急の出来事に驚いていた警官だったがその気持ちを理解したのだろう麻琴の
小さな背中を包みこむように大きな腕をまわした。

(…あったかい)







20 :名無飼育さん :2004/08/03(火) 11:14
文章も上手ですし、設定も面白そうですね。
これからも読ませていただきます。
頑張ってくださいm(_ _)m
21 :黄忠 :2004/08/03(火) 11:19
『…もう、大丈夫だ』

…今まで生きてきた人生の中でこれほどこの言葉に安心感、安らぎを
覚える事は無かったであろう、そして人の体温を暖かく感じることも…。

警官は背中に回していた腕を離すと腕時計に目をやり時間を確認する。
そして再び麻琴に視線をやった。

『…さあ、もうこんな時間だ家まで送ろう』

(帰れる…家に帰れる…ここから出られる…)

『家は…どこだい?』

警官は親が幼い子供と話すような口調で優しく問いただす。

『に…ヒック…に…にし…ック…ウゥッ…』

何とか声に出して言おうと思うのだが、ままならない。

『相当怖い目にあったんだな…可哀想に。取り合えず明るいところまで
 行こう。ほら』

警官はそう言いながら麻琴の前に手を差し伸べる。

22 :黄忠 :2004/08/03(火) 13:16

ちいさな手のひらが、大きな手のひらに包み込まれる。それはなるべく
してなったもの。…警官の服装がそうさせた?…いや、今手を握ってく
れている一人の人間の(人間性)が十七歳という年頃の少女に安心感を与
えたのだ。…始めは自分だけだった足音が今は二つ耳に響いてくる。

(…一人じゃない…一人じゃないよ…)

麻琴は人の温もりを今一度実感する為に手に力をこめる。

『…はははっ、大丈夫だ。私はここにいるよ』

と優しい声。暗闇で表情は見えないがきっと笑顔だろう。

…一言で良いからお礼を言いたい。大分気持ちが落ち着いてきた麻琴は
自分にしか聞こえないような声で呟いてみる。

(あ…あり…ありが…とうござ…います…ありがとうございます!!
…言えた…良し!!』

『あっ、あの、ありがとうございます!!』
23 :黄忠 :2004/08/03(火) 14:11

…返事が返ってこない。聞こえるのは何故か、何かが噴出すような音。
それも大量に。…自分の顔に何か液体のようなものが飛びかかってくる
のがわかる。雨ではない。麻琴の一番望まないもの…血のにおい。

…人間の本能というやつは残酷だ。何かをしたい、したくないに限らず
肉体が勝手に行動を起こしてしまう。

(…いやっ…いやぁ…見たく無い…見たくないよぉぉぉ…)

それはスロー再生のように過酷な現実を瞳に映し出す。

『いいっ、いやあああああああああああああああっ!!』

…辺りに響き渡る程の小川麻琴と言う名の少女の魂の悲鳴。目の前の
光景は壮絶だった。噴出すような音の正体。首から上の無い肉の塊。
先程まで自分を暖かく見守り安らぎを与えてくれていた人の変わり
果てた姿。
24 :黄忠 :2004/08/03(火) 14:31
取り合えずはこんな感じで進めてみました。
色々と視点が変わり読みにくいと思いますがご容赦
下さい。ここから始めに予告しておいた潜在能力とかモンスター
とか出していこうと思っています。正直かなり大変だと思いますが
やり遂げたいと思います。
25 :なつまり。 :2004/08/03(火) 16:08
いよいよですね。
ドキドキです。
26 :習志野権兵 :2004/08/04(水) 06:37
始めまして。悪魔でも俺個人の意見として聞いてください。名前の欄に関してですが本文の方はタイトル或はサブタイトルをレスに関しては作者さんの名前って風にしたら、もっと読みやすいと思います。応援させてもらいますんで頑張ってください。
27 :黄忠 :2004/08/04(水) 07:06
≫なつまり。さま

いつも読んで頂きありがとう御座います。
やっとここまで来れたという感じです。未熟な私ですが、
少しでも、登場人物の心境の変化を感じて頂けたら嬉しく思います。

≫習志野権兵さま

こちらこそ始めまして。目にとめて頂きありがとう御座います。
その件なんですが、私も他の作者さんの作品を見させていただいた時、
感じました。取り合えずは今、書かせて頂いている小川麻琴の視点までを
プロローグにしたいと考えております。ははっ、長すぎますが…。
本編が始まりましたらそのようにしますね。
28 :黄忠 :2004/08/04(水) 07:40

人の温もりを与えてくれ、勇気をくれた大きな手のひら。今ではもう…。

『…いやぁ…やぁ…ぁぁ…』

もう涙も涸れはて声を出す事もできなくなっていた。精神崩壊のほんの一歩手前
かもしれない。呆然と立ちつくす麻琴。目が焦点のあわない状態。まさに無気力。

『これじゃ無かったか。全く紛らわしい』

ガリッ、ゴリッ、ガリゴリゴリっ…べチャ…ベチョ

ビシャッ…

誰かが何か言った様な気がした。何かを噛み砕く音がした。何かが飛び散る音がした。
…でもそんな事なんてどうでもいい。早く楽になりたい。
29 :黄忠 :2004/08/04(水) 08:18

(私も…もう死ぬんだ…死ねるんだ…開放されるんだ…やっとこの悪夢
から…いい事…なんだ)

『あれも違うか…でもまあ、ちょっとでも私の力の足しにはなるか…。
 やれっ!!

何者かの号令がかかり、食事をしていた狼のような獣は、頭を上げ麻琴
に視線を向けると足元のコンクリートを蹴った。尋常ではない速さで襲い
かかる。

(…これなら苦しまずに死ねるかも)

麻琴はすっと目を閉じこの世との別れを待つ。死を迎える寸前は過去
の思い出が走馬灯のように流れると言うがまさにその通りだった。
家族との思い出、友達との出会い、遊んだ記憶。それらが次々と脳裏に
浮かんでは消えていく。涸れたはずの涙が頬をつたわり。目の前に気配
を感じ最後の時がきたことを悟る。

30 :黄忠 :2004/08/04(水) 10:07

(…さようなら私の大切な人たち…大切な…思い出)

『やらせないっ!っやああっ!!』

バキィッ

鼻腔をくすぐる様なシャンプーのいい匂い。感じたことのある気配。…そして声。

『あさ美ちゃんっ!!』

麻琴は自分でもわからないうちに叫んでいた。紺野あさ美というかけがえのない
親友の名前を…。

『はぁっ、はぁっ、まこっちゃん大丈夫?』

今、瞳に写っているふくよかな頬の可愛らしい顔。長い付き合いだ見間違う筈は
なかった。

『あさ美ちゃん…どうして』
『…謝りたくて…はあっ…はあっ』

乱れた呼吸をととのえながらあさ美は答えた。

『…えっ』
『はぁっ…うっ…き…傷つけちゃった…から』

あさ美の目に涙が浮かぶ。他人の流す涙がこれほど自分の心を締め付けるとは思
いもしなかった。…それが親しい友達(親友)ならなお更のこと、死を迎える直前
に学ぶ事になろうとは、今までいかに自分以外の人の心のうちを理解しようと思わ
なかったかということだろう。
31 :黄忠 :2004/08/04(水) 16:37
まだもう少し先になるとは思いますが、娘。の能力、武器とか
ですね。八割がた決まりました。…これからお盆に向け深夜の仕事の
が忙しくなるので、一日の更新量が少なくなるかもしれません。

…決してやる気がなくなった訳ではないのでご理解頂けたら幸いです。
32 :黄忠 :2004/08/05(木) 07:58
『…あさ美ちゃん』
『…信じてた。まこっちゃんの話…信じてたんだ…よ。…それだけはわかって欲
 しい』

麻琴は理解した。常に自分の事よりも他人を気遣う優しい心を持った親友。
私の気持ちにこたえられなかった事に心を痛めているんだ。

(…だからきっと、追いかけてきてくれた。…私は何て馬鹿なんだっ!自分の言いた
い事だけ言って、被害者ぶって、あさ美ちゃんの家から飛び出して…あげくの果てに
迷って…そして泣いて…子供だよ。これじゃ…。私がここに来なければあの優しかった
警察の人も死なずに済んだかもしれない…。そして今度はあさ美ちゃんまで危険な目に
遭わしちゃってる。ちきしょうっ!、ちきしょうっ!)

麻琴は自分の中で新たな感情が生まれてくるのを感じた。自分に対する怒り。その
感情の変化を肌で感じ取ったあさ美。麻琴の顔を心配そうに覗き込む。

『…どうしたの、まこっちゃん?』
33 :黄忠 :2004/08/05(木) 15:23
『許せない…私…自分が許せないよっ…』

もう麻琴の脳裏に恐怖、絶望などのマイナスの感情は微塵も無くなっていた。

『くっくっくっくっ、こいつはいい。すぐに殺さなくて正解だったな』

その声に気付き視線を向ける麻琴。暗闇で見えない何者かをキッと睨みつける。
ワンテンポ遅れてあさ美もその姿を確認する。
34 :習志野権兵 :2004/08/05(木) 20:25
レス有難うございました。
わざわざ、俺が言うまでもなかったですね。失礼しました。
更新量についてですが特に気にする事は無いと思います。
自分のペ-スで進めてください。
35 :黄忠 :2004/08/06(金) 07:33
『感じる、感じるぞ。私に対する貴様の憎悪。殺意が』

麻琴の自分に対する怒りと同じ、いやそれ以上の憎悪が心を侵食して行く。

(こいつだ、こいつがあの優しかった警官の人を…ぐ…殺してやるっ!…殺して
やるっ!!)

『くくくっ、だが残念かな。特生変異人←(生まれた時に何かの拍子で常人以上の力
を身に付けている人間のこと)のあさ美とやらと違い貴様は何の能力も持たないただ
の人間にすぎん。我々魔族には対抗できんよ』

確かにその通りだった。喧嘩などもしたことが無く、なにも格闘技を習っていない
麻琴が戦えるはずも無かった。…だが、それでまた逃げ出したりしたらふりだしに
戻ってしまう。弱虫の自分に戻ってしまう。そんな感情が意志を揺らがせなかった
のだろう。…一点の曇りの無い鋭い眼光がそれを示していた。

そんな麻琴の心のうちを知ってか知らずか話を続ける黒い影。
36 :黄忠 :2004/08/06(金) 08:07
『…それに私が追っていたのは特生変異人のそいつだ。…すなわち。
いらん責任感などで貴様を追いかけて来なければそこの人間も、死な
ずに済んだだろう。そして貴様自身もこんな恐怖を味合わずに済んだ
のではないか…?…まあいいどちらにしても貴様には特生変異人の能
力開花の手助けをしてもらう…死によってなっ!!』

黒い影の両脇に何かが息づいていく。狼に似た獣。警官の首をむしり
取ったもの…サイレントだ。それも二匹。麻琴一人に的を絞っている。

(…間違いない私だけを狙ってる)

能力など持ち合わせていない麻琴だったが、人間の本能で殺気を感じ
とる。体中から汗が吹き出し身体が震える。あさ美ちゃんはどうだろう
…同じ気持ちなのだろうか?気になり隣の親友を横目で見る。

…うつむいていた、苛められたように。何かを考えてるようにも考えて
 いるようにも見受けられる。

『やれっ!!』

最後の号令がかかる。
37 :黄忠 :2004/08/06(金) 14:50
『あさ美ちゃん逃げてっ!!…がは…ぐっ…うぅ』

そくざに気を失うほどの見事な膝蹴りが、麻琴の腹部を捕らえる。
…あさ美だった。紺野あさ美という少女は学力優秀、スポーツ万能
の優等生。空手も茶帯の段持ちだ。他にも例を挙げればきりがない
天才だった。

『…あさ美ちゃ…どう…して…くあっ』

麻琴は薄れ行く意識の中で軌道修正してあさ美に襲い掛かる二匹の獣
の気配を感じた。それは勿論あさ美自身にも。見えない相手への対処
の術などを知るはずもない。考える時間も…。

(…なら、これしかっ!)

あさ美は目を閉じる。よく格闘家が気配を察する時に使う方法。限り
なくゼロに近い可能性。…失敗それは即ち死を意味する。

(…チャンスは一度。失敗したら私だけでなくまこっちゃんまで死んで
しまう…そんなのは嫌…守りたいあの笑顔をっ!もし、本当に人以上の
力が私にあるというのならっ)

『…今この場でその可能性にかけるっ!!』
38 :黄忠 :2004/08/07(土) 07:45
カッと見開く両の目。自分の身体が軽くなり、全身にみなぎる様なエネルギーを
感じる。それらはあさ美に勝利を確信させていた。

…一瞬の出来事だった。おそらくは彼女自身も覚えていないだろう。サイレント
の一匹は宙を舞い、もう一匹はアスファルトの上で沈黙を保っていた。

ドサッ

やがて宙を舞っていた物体が地面に叩きつけられる…即死だった。

『…やったの?』

二匹の身体から液体が流れ出る。暗さのせいで色は確認できないが人で言う血液
だろう。…人で成らざる者の死骸。それを静かに眺めているあさ美の心境は複雑
だった。勝つ事はできた。大事な人を守り通すことはできた…でもそれは、自分
が特別な人間の証明。麻琴や愛、里沙とは異なる…存在。

(…私は何者なの?)
39 :黄忠 :2004/08/07(土) 09:24
『…え?…くうっ…』

ふうっと全身の力が抜けるのを感じる。今まで一度も使った事のない
常人離れした動きが身体に大きな負担をかけていたのだ。力のコント
ロールが出来ない今のあさ美にとってはまさに諸刃の剣。片膝をつく。

『…さすがは特生変異人。やるなっと言いたい所だが、もうエネルギー
切れとはな拍子抜けだ。これでは次の攻撃に耐えられるか疑問だが…
サイレントっ!!』

黒い影の声に答えるようにモンスター(怪物)が姿を現す。その数五

『…うそ…ま…た…立ち上がら…なくちゃっ…』

おぼつかない足取りで少女は立ち上がり後ろを振り向き視線を下げると
気を失っている親友の顔をみる。

(…まこっちゃんだけは何とか守りたい…でも、この動かない身体で
どうすれば…)

『…はっ!!』

あさ美が気付いた時にはもう、五匹の獣は獲物(少女)に向かって走り
出していた。

『ぐっ…もうだめ!!』

瞼を閉じ死を覚悟する。

(…あれっ…攻撃が来ない…)
40 :黄忠 :2004/08/07(土) 09:47
物語は、思い浮かんでいるのですが…なかなか話が進まない
ですね。出来ているかどうかはわかりませんが、自分の中で、
どうしても、登場人物達が何故こういう行動にでるのかという
(内面)心の中で考えていることを描きたい気持ちがあって、
気付けばこの長さ(笑い)正直あらしが起きないのが不思議な
くらいです…まあ、仮にあったとしても気にしませんけどね。
一番始めの予告を見て楽しみにしてくれている読者の方には、
申し訳ない気持ちでいっぱいです。
41 :黄忠 :2004/08/07(土) 11:25
…不思議だった。あさ美は何度もその魔物のスピードを目にしていた
人間の目では追うことのできない速さ。もうとっくに自分は攻撃範囲
にいる筈なのだ。しかし音もしなければ気配も感じない。恐る恐る目
をあけ現状を確認してみる。

『…えっ!?』

開いた口が塞がらなかった。あさ美の人生にピリオドを打つはずだっ
た五匹の胴体は、それぞれ宙を浮かぶギロチンに捕われて身動きの出
来ない状態になっていたからだ。首から上を固定され前足や後ろ足をば
たつかせてもがくさまは、とても悲観感が漂う。ギロチン台の上の重量
感の有りそうな刃がサイレント達の行く末を示しているようだった。

『怪物にも恐怖というものがあるんだねぇ、一つ勉強になったよ』

何処からか聞こえる男性の声、まだ若く感じられる。あさ美はきょろ
きょろと辺りを見回しその声の主を探す。
42 :黄忠 :2004/08/07(土) 13:16
『探す必要はないぜ嬢ちゃん、すぐ行くからよ』

この生きるか死ぬかの緊張感張り詰めた空気に合わない陽気な口調。まるで、簡単
な用事を済ますようだった。…自分を助けた所をみるとどうやら敵ではないらしい。更に
誰かはわからないその声にあさ美は何故か安心感を覚え、その場にペタンと座り込む。

(…助かった。でも、何なんだろう一度もあった事ない筈なのに…信じられる…それに
この力…私とは比較にならない…一体何者なの)

『まあ、良くやったか…もうちょっとペ−ス配分を考えるべきだったが、まあ友達
を守る為にしたことか…。このくさった世の中にもそんな奴がいたんだな…。

…おいっ、そこのお前…狼ばっかり出して芸のない奴。他の事は出来ねえのかよ?』

『何だとっ!…ぐっ!…私を馬鹿にするとは…人間風情が死にたいらしいな…』

いつも見下していた人間に、罵られ始めて感情をあらわにする黒い影。

『…よかろう、貴様は私の手で殺してくれるっ!!』
『…ああ、そうかい…取り合えず邪魔な犬達を片付けちゃおうかな!』
43 :黄忠 :2004/08/08(日) 07:18
無慈悲に振り下ろされる五つの刃。ドンッという音と共に獣達の首と胴体が別れ
をつげ、ごろりとアスファルトに転がる

『…ここにこいつ等の死体があると街中が騒ぎになるな…消しとくか』

とめどなく噴出す血の噴水を見つめながら男は呟いた。

ゴオオォォォォッ!!

辺り全体が赤く染まる。それは物凄い熱さなのだろう、サイレント達の焼ける音
や匂いもさせない程の…蒸発と世間では言われている物。その場だけの業火で辺
りに火の粉が飛ばないのは神業としか言いようがない。

『…すごい…』

あさ美はその信じられない光景をめのあたりにして、自然と思った気持ちが口を
通し表に出ていた。…同時に恐怖も。
44 :黄忠 :2004/08/08(日) 07:51
(…今は味方になってくれている様だけど、もし敵に回ってしまったら
…)

そう思うと素直に喜ぶ事が出来ない。

『…あれほどの業火を召喚するとは…特生変異人のそれを越えている』

黒い影は初めて人間というものに脅威を感じていた。

あさ美は目の前に何かの気配を感じ視線を向ける。そこでも信じられな
い光景が繰り広げられていた。景色の一部が縦に割れそこから現れる者
それはゆっくりと自分の方に振り返る。

『よっ!』

片手を上げ陽気な挨拶をする人影。

…この人がさっきから常識では考えられない光景を作り出していた張本人
なのだろうか?とてもそうは見えない。服装は下からシューズ、ジーンズ
、今の季節に良く見かけるポロシャツ(珍しく龍の姿が描かれた)もの、
…そして目にはサングラスをかけている。

『…予想していた姿と違ったかい?』
『…えっ…いやっ…あの…そのっ』

急に声をかけられしどろもどろになるあさ美。

『…ふっ』

その少女の様が面白いのか龍を背負った男は口元を緩める。

『転移能力まで扱うというのか…馬鹿なっ!!』

驚愕する黒い影。三者三様、三人の思惑が交差する。
45 :黄忠 :2004/08/08(日) 14:25
『なあ、今回は退いてもらえねえかな…あんたと俺が戦えばどうなる
かぐらい予想できる筈だがね…ぶっちゃけ死にたくないだろ?』

『…ぐっ』

男は中々理解を示さない黒い影に苛立ちを覚えたのか声にそれが滲み
でる。

『わかんねぇ奴だな…見逃してやるって言ってんだよ…殺すぞっ!!』

自分より強き者に弱き者は恐れを抱く。魔族が人間にという珍しい組
み合わせではあるが…。

『ぐっ…わかった今回は退かせて貰おう…だが、覚えておけ。貴様の
魂は私がもらう…覚悟しているんだなっ!!』

負け犬の遠吠え以外何ものでもない。それだけ力の差を感じたんだろう。

『…俺も一つ忠告しておいてやる。俺に対抗するために他の奴等の魂を
食らうのはお前の勝手だが、次に姿をみた時は容赦なく消えてもらう。
…こっちも何かと急がしいんでね』
46 :黄忠 :2004/08/08(日) 14:38
もし、飽きずにまだ読んでくれている読者の方がいましたらちょっと
質問させて頂きたいですが…娘。以外の人物を大事な役割で登場させる
のは、どうなんですかね?…それも男の。やっぱりこれはモーニング娘。
の小説ですし、気になりましたんでちょっと。
47 :名無飼育さん :2004/08/08(日) 20:55
案内板には目を通しました?
総合質問スレなんかに同じような質問がよく載ってますよ。
48 :黄忠 :2004/08/08(日) 23:29
≫名無飼育さん

お教えいただきありがとう御座います。案内板には目を通したのですが
このようなスレがあるとは知らず質問してしまいました。週に一度はこ
れから目を通したいと思います。
49 :黄忠 :2004/08/09(月) 00:13
消え行く災いの根源を見つめながら、あさ美は男の言った台詞を思い返していた。

(…他の奴等の魂を喰らうのは勝手だが…他の人はどうでも良いってこと?…でも、
次に逢った時は消えてもらう…多分死んでもらうってことだよね…とか、脅してい
たし…味方なの?…)

『…あのっ…』

躊躇する様なか細き声。どうしても気になったのだろう。思いきって背中の龍に
声をかける。振り向く男。月明かりでサングラスが心なしか明かりを帯びていた。

『…何だお礼か?…気にしないでいいぞ。自分がしたくてした事だから』
『…あのっ…あなたは私達の味方…なんですか?』

予想外の質問だったのだろう。男は首をかしげすぐに答えを出せずにいた。やがて
理解したように口を開く。

『…その答えはNOだな。俺は口先だけで結局は自分の事しか考えていない人間っ
て奴が大嫌いなんだよ。お前が友達の事を大事に思う気持ち。自分を犠牲にしてま
で助けようとするその心に動かされただけの事…なんかかっこいい事言ってるけど
…つまり。その気持ちをもたない奴等のためにこの力を使う気はないっ』
50 :名無飼育さん :2004/08/09(月) 01:03
毎回2レス程度の更新ペースなら、sage進行の方が良いのでは…?他の作品が更新ageされてることに
気付きづらいので、正直。
51 :黄忠 :2004/08/09(月) 07:06
≫名無飼育さん

ふむ…そうかもしれませんな。
52 :黄忠 :2004/08/09(月) 08:00
『…そう…ですか』

あさ美はその理由を聞きたい衝動にかられたが、思いとどまる。

(…私はあの人に、敵にまわって欲しくなくて質問したんだ。…あの
強大な力と戦っても勝てる自身がないから…大切な人達を守りたいの
は本当…でも、その為にあの人の力を借りようとするのは…自分の身
勝手…)

そう、頭の中で自分の気持ちを整理してみるとそれをきく事は出来な
かった。

『…うっ…ううん…いっ』

あさ美は、後ろの方で声がするのに気付いた。声の主がいるであろう
場所に視線を下げる…その姿を確認するために。

『まこっちゃんっ!!』

まだ、意識がはっきりしてない親友の上半身、肩を抱く。大事な物を
いたわる様に優しく。守るためとはいえ気絶させたのは自分本人なの
だが…あさ美の性格が現れた瞬間と言えよう。

『あれっ…あさ美ちゃん?』
53 :黄忠 :2004/08/09(月) 09:01
朦朧としていた意識がじょじょにはっきりしてくる。目の前にはよく
知る者の顔。麻琴の脳内で分析が始まる。状況確認だ。

(…勉強会…トイレ…暗闇…警官…首…ぐっ…見えない獣…何者かの声
…黒い影…友達…あさ美ちゃん…衝撃…!!!)

『あさ美ちゃんっ!!怪物はっ!?大丈夫なのっ!!?』

いきなり声を張り上げる親友にあさ美は一瞬驚いたが、持ち前の頭の
回転の速さで麻琴の心のうちを読み取るとわかりやすいように今の現状
を説明する。赤ん坊や小さな子供に聞かせるように。

『大丈夫だよ、まこっちゃん落ち着いて…大丈夫だから』
『…うん』

(何だろう…安心できる…何か、あさ美ちゃんお母さんみたいだな)

『えっと、危機は去りました。…助かったんだよ。私達』
『…えっ…助かった…の?』

一番望んでいた言葉を聞き麻琴は涙腺がゆるくなるのを感じる。
54 :七誌さん :2004/08/10(火) 12:07
はじめまして、一気に読ませていただきました。
黒い影、気になりますね・・・あと男性の方も・・・
続きを首を長くして待ってます。
55 :黄忠 :2004/08/11(水) 09:39
≫七誌さん

娘。以外の人物も認めていただきありがとう御座います。
主人公は娘。なんですが、やはり男性の役割は大きいと思うんです。
女性にとって頼りがいがある。とか怖い、etc、とかですね。


昨日、プロローグ完結の予定でしたが、打ち込んであった携帯を職場
に忘れてしまい、更新できませんでした。本日完結させて頂きます。
56 :黄忠 :2004/08/11(水) 10:13
そして目の前の親友の無事を再確認することができ、いつの間にやら、その親友
(あさ美)に抱きついていた。

『でも、あさ美ちゃんが無事で良かったよぉ、あさ美ちゃんっ!あさ美ちゃんっ!』

麻琴は涙を流し、大切なの人の感触を確かめる。何度もその名前を言いながら…。

『…うん。ありがとう』

暗闇で抱き合う二人の少女がながす涙は、月明かりでキラキラと光を発しダイヤモ
ンドの輝きを連想させていた。

…麻琴はあさ美の肩に廻していた腕をはずすと、いつもの明るい笑顔に戻り感謝の
気持ちを口にする。

[あさ美ちゃんが助けてくれたんだよねっ!ありがとうっ!!…でもすごいなぁ、
あさ美ちゃんっ、あんな怪物倒しちゃうんだもんねっ、すごいっ、すごぉいっ!!』
『…まこっちゃんっ』

捲し立てるように言葉を連鎖させる麻琴。危機を免れた開放感からか、いささか興奮
気味だ。話の切れ目が来た所であさ美が口を挟む。
57 :黄忠 :2004/08/11(水) 10:42
『んっ、何っ、あさ美ちゃん?』
『あのね…私も助けられたんだ。…龍の人に』
『…えっ。龍の人?』
『そう…ほら、あの人っ…えっ』

麻琴はあさ美の指先が指し示す方に視線をやる。

『…えっ!?』

確かにそのような人物はいた。だが謎なのは首の無い警官の横に立って
いる事だった。足元はきっと血だまりが出来ていることだろう。二人の
視線に気配で気付いた男は口を開く。

『おっ、目覚めたみたいだなっ…じゃあ始めるか…ちゃんと見ておけよっ!!』

男はいつもの口調でそう言うと横たわっている警官の亡骸に手をかざす。
ぢりぢりと地面の焼き焦げる音。それはだんだん大きくなり赤い炎となっ
て亡骸のそれを包みこむ。

『…いやっ…いやああああああっ!!』
58 :黄忠 :2004/08/11(水) 11:07
人の肉が焼け爛れる音、骨の焦げる音。内臓や臓器が蒸気になっていく音
…だが麻琴はその事に恐怖したわけでは無かった…自分の身近な人間が
小さくなって目の前から消えていく事に寂しさを覚えたのだ。

『いや…いやぁ…こんな…ひどいよ』

あさ美には親友の心の痛みが良くわかったが正直、男の作り出した炎に
何故か妙な違和感を感じていた。

(何だろう…あの炎を見ているとあったかい気持ちになれる…さっきとは
違う感じ…これが弔うってことなのかな…)

…やがてその姿は完全に消えて無くなる。

『あ…ああ…そんな…』

悲しみに身を震わせ打ちひしがれる麻琴。

…頭の中に聞き覚えのある声が響いてくる。

(悲しむ必要はないよ)
(…えっ!?)

今、目の前で消え、あの世に旅立ったであろう警官の声だった。戸惑い
を覚える麻琴。
59 :黄忠 :2004/08/11(水) 11:35
(心優しきお嬢ちゃん…こんな名前も知らないような私の為に涙を流して
くれてありがとうな)
(えっ…警官のおじさん?)
(肉体が消滅して零体になった事で君の脳へ直接話しかけている)
(えぇっ!?そんな事が出来るんですかぁ?』
(…私にも良くわからないのだが、どうやらそう言うことらしい)
(ははっ、何か不思議ですね)

今の状況を非現実的と言わないで何というのだろうか…今日一日の出来
事が麻琴の中の常識枠に変化を与えたのだろう。このような事を平気で
受け入れられる器のようなものが新たに出来たのだ。

(それは私も同感だ。…話は変わるがあの少年の事は恨まないで欲しい。
私が頼んでしてもらった事だ)
(…えっ)
(…つらい思いをさせて悪かった。だが、君には見ていて欲しかった…
人の死ぬ瞬間を…すまない)
(…どうして…ですか?)
60 :七誌さん :2004/08/11(水) 13:07
うおー・・・!警官のおじちゃん・・・(涙)
あさ美ちゃん!マコちゃん!がんばれ!
作者さんも更新がんばって下さい!
つづきが謎です。
61 :黄忠 :2004/08/11(水) 13:31
(話せば長くなるんだが聞いてもらえるか…?)
(…はい)
(ありがとう。…こう見えても私は署の中じゃ一番の二丁拳銃の使い手
でね、色々な事件を解決してきたもんだよ。)
(…すごい…かっこいい)
(ははっ、ありがとう。…だがある時さっきの魔族が私の前に現れた。同
じようにサイレントという名の獣を引き連れて…確か『お前の魂を頂きに
きた』とか言っていたな。自慢ではないが昔から動体視力の良かった私は
簡単にサイレント達を撃退することが出来たのだが魔族には、弾丸がま
ったく効かなかった。何か見えない壁でもあるように弾丸は止まり地面に
落ちていったんだ。恐怖を覚えた私はその場から逃げ出した。

…一つ聞きたい…君は力を持ちたいかい?怪物と戦える事を望むかい?)

(…えっ…よくわかんない…怪物なんかと戦うなんて怖い…でも、こんな
悲しい思いをするのはもっといやっ!…自分に力があればって思う…)

(それだけで十分だ。君はつよい心をもっている。思った通りだ。先程の
話でわかってくれたと思うが、魔族に対抗するには選ばれた人間でなくて
は駄目だ。私は幸運にも人を越えた動体視力を持っている。…後、武器も
この武器は私を助けてくれた老人がくれた物。二丁拳銃で聖なる弾丸を撃
ち出すことが出来る。名前は邪滅聖魂…私には使いこなす事は出来なかっ
たが、君なら使いこなせる筈だ)
62 :黄忠 :2004/08/11(水) 14:36
(…邪滅聖魂…すごっ、強そう)
(私の持っている動体視力と武器(邪滅聖魂)そして、君の持つ強い意思
で力を持たない他の人間達を守ってやって欲しい。私はもう年をとりす
ぎた。…これで心おきなく引退させてもらうことが出来る)
(おじさんっ!!)
(…私の都合で君に迷惑をかける…許してくれ)
(…そんなっ…きっと期待に答えて見せますよっ、師匠っ!!)

これが小川真琴という少女の強さだろう。自分がどんなに辛く悲しくて
も相手が望む事を受け入れる事が出来る強い意志。そして覚悟。十七歳
の少女にとっては重過ぎるほどのさだめ。それを感じ取った警官の声が
震える。

(はははっ、ありが…とう…ほんとうに…ありがとう…)
(ほらぁ、師匠も泣かないでくださいよぉ)
(あ…ああ…すまない…ごほん…頼んだぞっ!!)
(はいっ!!)

絶望の夜が結んだ師弟の絆、それは忘れられる事はないだろう永遠に。

『…ちゃん…まこっちゃん』

麻琴の頭の中に響く儚くもも優しい声。ゆっくりと視界が開ける。
63 :黄忠 :2004/08/11(水) 15:33
『…あさ美ちゃん?』
『…良かった…いきなり動かなくなるから心配したよ』
『…うん…ごめんね、あさ美ちゃん』
『…あの警官の人の事…とても悲しかったんだね…大切な人だったん
…だ』
『うんっ、師匠だからね!!』

沈んでいると思っていた親友の元気な声にあさ美は驚きを隠せないよう
だ。師匠の意味もわからないようで首をかしげている。無理も無い。麻
琴の中で行われていた会話など知るはずも無いだろう。その様子に気付
いた麻琴は事情を説明するべく口を開く。

『あのね…何ていえばいいのかな…夢?の中で警官のおじさんの思念体
…で良いんだよな…と会話したんだ…信じられないでしょ?』

麻琴は冗談交じりに言う。真面目な顔で返すあさ美

『ううん…信じないわけないよ…まこっちゃん』

その親友の真剣なまなざしを見て自分が恥ずかしく感じる麻琴。説明
を続ける。

『…何か、まこっちゃんらしい…普通は引き受けないと思う…私なら
…絶対無理だなぁ』
64 :黄忠 :2004/08/11(水) 16:02
『そうかなぁ?、でもさぁ、二丁拳銃扱えるなんてかっこよくない?』

目を子供のようにキラキラさせる麻琴の姿を見て黒い影の言っていた
特生変異人である自分の事を気にしていたのが馬鹿馬鹿しくなる。

(ほんと…まこっちゃんのあの笑顔に何度助けられたかわかんないな…
ありがとう、感謝してます)

『どうしたの?』
『…ううん、なんでもないっ』

笑顔で相槌を打つあさ美

『ところでさぁ、さっきの男の人はどうしたの?』
『うん…帰った。これおいて』

麻琴はあさ美の手に乗せられている紙切れを手にとってみる。

『地図?』
『うん、多分ここから街に帰るための道順だと思う』
『ふうん、でもこんな事言っちゃ悪いけどきたないね』
『…うん…読めなくはないけど』

二人は苦笑する。
65 :黄忠 :2004/08/11(水) 16:11
『まっ、いいやあさ美ちゃんかえろっ!!』
『うんっ!!』

悪夢のような時が過ぎ先程まで聞こえなかった虫達の声が辺り一面に
涼しい音色を奏でている。月明かりも相まって幻想的に…。
66 :黄忠 :2004/08/11(水) 16:30
プロローグ終了!!いや〜長かった。読んで下さった皆様本当にありが
とう御座いました。最後の方は駆け足になってしまいましたが、ははっ
ここらでちょいと…。


かけがえのない親友を守る為に内に眠る潜在能力を開放した紺野あさ美
自分以外の人間を救うため警官の男の思い、能力を受け継いだ小川真琴
強大な力を持つ背中に龍を住まわす謎の男…これらは選ばれし少年少女
と魔族の存亡をかけた戦いの幕開けでしかなかった。

次回予告

学校に忍び寄る魔物使い。小さい少女と幼き妖怪の出会い。黒い糸は家族
の絆をも引き裂くっ!!

唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!
67 :なつまり。 :2004/08/11(水) 19:36
お疲れ様です。読ませて頂きました。
警官のおじさん、良いキャラですね。
龍の男は少年なんですか?
ああいう喋り方って根が軽いおっさん、っていうイメージが出来てしまって・・。

男の人達に関して言わせてもらえば、そのままで良いと思いますよ。
私のにも出てますし。主役みたいなもので・・。
次回楽しみにしています。
68 :黄忠 :2004/08/12(木) 07:14
≫七誌さん

レスが遅れましたが、警官のおじさんの気持ちを受け止めていただいて
ありがとう御座います。やはり大人というのは少年少女が大きく成長する為の
キーパ−ソンだと考えております。これからも、登場すると思います。

≫なつまりさま

最後まで読破していただいてありがとう御座いました。
龍の男というのは少年ではありません。警官の目からみて少年だと
いうことなんです。わかりずらくてすいません。ネタバレになって
しまいますので詳しくは言えませんが、あさ美達よりは上です。そして
おじさんと呼ばれる年でもない。若くして色々な経験をしているので大人
びたって言い方が妥当ですね。


今回、誤字脱字が結構ありました。…反省。後はもっと読みやすい文章の立て方
をして行きたいと思っています。後の課題は、次から学校が舞台に入ってくるので
登場人物が一気に増える予定です。心理映写の使い方が難しそうです。
69 :黄忠 :2004/08/12(木) 14:52
20≫名無飼育さん

暖かいご声援ありがとうございました。返事が遅れて申し訳ありませんです。


70 :習志野権兵 :2004/08/12(木) 18:41
更新お疲れ様です。
いよいよ、次回から本編ですね。
仕事が忙しいと思いますが頑張ってください。
71 :七誌さん :2004/08/13(金) 00:07
作者様、更新オツです。
警官のおじさん・・・。やさしいね。やっぱ。
次の舞台、学校ではどんな登場人物が出てくるのか
楽しみです。
紺ちゃんと麻琴ちゃんは見ててほのぼのしてきますなぁ・・・。
本編の更新、がんばってください!
72 :黄忠 :2004/08/15(日) 01:00
応援ありがとう御座います。期待を裏切らないように頑張りますね。
出だしだけですが、更新させて頂きます。
73 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/15(日) 01:36
惨劇は舞台を選ばない。ここ美録高校にも、強い輝きを放つ魂を求め、招かざる客が敷居をまたぐ。

放課後…ここは食堂の一角にあるお菓子クラブ部室。
部員の安倍なつみと矢口真里は今しがた完成したばかりのケーキをそれぞれの器に盛り付ける。
はなうたを歌いながら…。それはとても楽しそうで幸せいっぱいという感じだ。

…盛り付けが終わった二人は、各々の席に着き手を合わす。

『いっただきまーすっ!!』

二人の声がハモリ、試食の開始を告げる。

『うわっ、マジ旨いよっこれっ!』
『ほんとだねっ、今までで一番上手くいったかもっ!』

女生徒二人はお互いの顔を見合わせながら歓喜の声をあげる。
ケーキを約半分食したところで真里が口を開いた。

『…ねえ、なっち』
『んっ、どうしたの矢口?』

ケーキを口に運ぶ動作をやめ、なつみは向かいの真里に視線をやる。
74 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/15(日) 01:49
『…そろそろあいつ等来る時間じゃない?』

なつみは部屋にある壁がけ時計に視線を移し時間を確認すると笑顔で真里に振り返る。

『ふふっ、そうだねっ』
『まり〜っ』
『なっち〜っ』

遠くの方から聞こえてくる聞き覚えのある可愛い二つの声色に真里の顔にも無意識のうちに笑みがこぼれる。

『噂をすれば…』
75 :七誌さん :2004/08/16(月) 00:50
あいつ等とは一体・・・??
誰でしょうね?
76 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/17(火) 23:14
二人の訪問者の姿を思い浮かべながら真里となつみは部屋の出入り口に視線を向ける。

ガラガラガラー

『こんにちはーっ』
『遊びにきたよーっ』

引き戸の開く音と共に元気な声が部屋中に響きわたる。真里の近所に住んでいる二年の辻希美と加護亜衣だ。
この二人はまるで双子のように仲が良く行動する時はいつでも一緒。

…テーブルの上に乗っかっているお菓子に目を奪われ子供のように瞳を輝かせる。とたんに騒がしくなる部室。

『うわぁ、ケーキだぁ』
『う〜ま〜そ〜うっ…じゅる』
『いらっしゃいっ、あいぼん、のの』
『おっ、きたな』

笑顔で向かい入れるなつみと真里。

『今日はケーキ作ったんだぁ』
『ねねっ、食べていい?』

期待で満ちた二人の視線がなつみに向けられる。
77 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/17(火) 23:33
『ふふっ、いいよ食べて』

(かわいいなぁ…もうっ)

『やったーっ!』
『わぁ〜いっ!』

飛び跳ねて喜ぶ二人。空いている椅子に腰掛ける…勿論、隣同士で。

『今、お皿にのせてあげるから、ちょっと待っててねっ』
『はーいっ!!』

なつみは二枚、皿を用意すると嬉しそうにケーキをのせていく。

…可愛い娘達におやつをあげる母親の心境。優しい気持ちで心が満たされるようだった。

『はいっ、あいぼん』カチャッ

『やったっ!』

『はいっ、のの』カチャッ

『わぁっ!』
78 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 01:29
なつみはケーキを二人の前に配り終えると暖かな笑みを浮かべ動向を見守る。

『いっただきま〜すっ』
『いったらきま〜すっ』
『ちょ〜っと、待ったぁっ!!』

なつみ、亜衣、希美の三人は声のした方を一斉に振り向く。真里だ。

『どうしたの、矢口?』
『なっちもだめだよ』
『えっ、なっち何かまずい事したかな…?』
『…辻ぃ、加護ぉ、お前等手ぇ洗ってないだろ?…洗ってきなさい』

真里は、今まさにケーキを目の前にし、幸せの絶頂にいる二人に向かって過ちを指摘する。

面倒見の良い姉御肌な真里の性格が表われた瞬間と言えよう。

『あっ、そういえば洗ってないね…』
『あいぼんっ、洗ってこようよ』
『うんっ、そうしよ』

流し台に向かう妹のような二人の後ろ姿を見送る真里の顔も、なつみと同じように優しさに満ちていた。
79 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 01:48
やがて手を洗うという用事を済ました二人は元いた席に戻ると待ちに待った至福の時に胸を躍らせる。

…始めの一口

『うんま〜いっ!』
と亜衣。

『うう〜ん…幸せ』
と希美だ。

二人ともかなりお気に召したのだろう、ケーキを口に運ぶ動作がどんどん早くなる。

『ふふっ、もう、そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ。誰も取ったりしないからさ』
『そうそう、なっちの言う通り。喉に詰まらせても知らないからな』

その光景は妹達を暖かく見守る二人のお姉ちゃん。という家族絵図を連想させる。

『ごちそう様でしたっ』
『あぁ、おいしかったっ』
80 :黄忠 :2004/08/19(木) 02:10
更新が遅くなり申し訳ないです。しかも少ない。
明日休みなので結構進ませる予定です。…ケーキ食べるシーン一つで、これまた長い。
戦いがなくて退屈だと思いますがご容赦ください。
81 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 11:39
カチャッ

亜衣と希美の二人は使用した皿とフォークをそれぞれ手に持つと流し台へ向かう。
自分の使った食器は自分で洗う。中々しっかりしているようだ。

…まあ、歳から考えれば当たり前のことなのだが、今の世の中にはそれを出来ない若者が多いのが現状。

洗い終わった食器を棚に戻すと、なつみ、真里の二人にお礼を言いそれから部活(バレー部)に向かう。
その後ろ姿を見送った真里は隣にいるなつみに振り向くとおもむろに口を開く。

『あいつ等もだんだんしっかりしてきたよね』
『うんっ、そうだね。なっちもそう思うよ』
『ははっ、でも、子供っぽいのは相変わらずだけど』

亜衣と希美の姿を頭に思い浮かべる真里。ケーキを食べる仕草、幸せいっぱいの愛らしい笑顔。出会ったばかりの頃の二人の姿と照らし合わせてみる。

(ははっ、ほんと変わらないよなぁ…あの二人)
82 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 11:59
『ふふっ、ほんと可愛いよねっ、あの二人』
『そうだね』

そう言うなつみに真里も頷く。

(かわいい…か…性格もそうだけど見た目も可愛いよなあいつ等…近いうちに彼氏が出来るんだろうなきっと…。

…辻も加護も人を疑う事をあまりしないから変な男に引っかからなけりゃいいけど…ちょっと心配だな)

『んっ、どうかした矢口?』
『ううん…ちょっと考えごと』
『ふうん、そうなんだ…でもさ悩み事とかあったらなっちに言ってねっ。誰か他の人に言うと楽になるって言うからさ』
『うんっ、ありがとうなっち』

チャラランッ

真里はテーブルの上においてある自分の携帯電話手にとり、メール受信を確認する。

『あれっ、辻からだ…なになに…え!?』
83 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 16:33
真里の顔からだんだん血の気が引いていくのがわかる。

『血がいっぱいって何だよ…』
『えっ…何それ』

血という言葉になつみも驚きを隠せないようだ。

『ちょっと矢口っ、なっちにも見せてっ』
『うん…はい』

送信の内容はこうだ。

―血がいっぱい、助けてっ―

いつもの辻からは考えられないような短い文章。

(…やばいっ)

真里は何故かとてつもない胸騒ぎを感じる。

『なっち…おいら行かなきゃっ』
『矢口…もう何言ってんのっ、もちろんなっちも行くよっ』
『うん、そうだね、ごめん…なっち行こうっ!』

チャラランッ
84 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 17:02
いつもであれば胸躍るであろうメール通知音だが、今では真里の心の中にある不安感をかき立たせるだけだ。
すぐさまそれを確認する。

『今度は加護からだ…』
『あいぼんから?』
『うん…校舎に入れないとか打ってある』
『えっ…何それ』
『おいらにもよくわからない…』

(おいっ…何があったんだよ。これじゃわからないじゃないかよっ…電話もできない状態なのか一体)

『いやっ、考えてる場合じゃない、行動しないとっ』

真里は独り言のようにそう言って首をふる。

『…場所だけでもわかればいいんだけど…あっそうだっ!矢口メールだよっ。こっちから送ってみたらどうかな?』
『そっか、その手があったかっ!なっちナイスッ!!』

ビッと親指を立てウィンクする。

(でも何でこんな簡単な事にすぐ気付かなかったんだろ…おいら焦ってるな)

ピッピッピッ...
85 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 18:27
慣れた手つきで亜衣のアドレスにメッセージを送る。
…画面に送信完了の文字。

『よしっ、とりあえずは送れた』

ほっと胸を撫で下ろす。

『後は、返信待ちだね』
『うんっ、でも、ここでじっとしててもしょうがないと思う。ねえなっち、体育館に行ってみようよ』
『そうだね、いいかもしれない…のの達部活に行ったんだもんね』
『そうゆうことっ』

チャラランッ


…場所は変わり女子陸上部部室。夏の陸上大会に備え、選抜メンバーと顧問の教師でミーティングを開いている。
その中にはあさ美の姿もあった。出場種目は主に長距離(1500m)で、努力の賜物かその実力は全国大会に出場できるほどだ。
そんなあさ美に対する顧問の教師や他の部員の期待は相当なものだろう。この美録高校女子陸上部には短距離も早い部員がいる。
一年の亀井絵里だ。一年から三年まで全ての部員の(50m走)のタイムを計ったランキングで実に五位につけている。
まだ高校に入ったばかりの小さい体でもの凄い快挙と言えるだろう。あさ美と同じく顧問の教師の期待の程がうかがわれる。
86 :習志野権兵 :2004/08/19(木) 21:01
お疲れ様様です。
更新のペ-スですが、全然、遅くないですよ。
それより『血がいっぱい』って、何があったんだ・・・。
87 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 23:37
ミーティングが終わり顧問の教師が部室から出てゆく。今日は自主練の日だ。
荷物を持ち帰宅しようとする者、良い走り方やスタートダッシュを研究する者、部活とは関係ない話をしている者達。部室内では様々な思案が飛び交っている。
あさ美も、今日は帰宅するつもりでいた。それはそうだろう、昨日の夜あんな事があって、精神状態が安定してない今、無理やり練習したとしていい結果がえられない事は明らかだ。
鞄を手に持ち帰宅するべく立ち上がる。

(まこっちゃんは、どうしてるかな…)

同じ境遇の立場である親友のことを考えながら…。

タッタッタッ

足音が近づいてくる。自然とその方向へ視線が向かう。

『紺野せんぱ〜いっ』

舌ったらずな愛らしい喋り方そして声色。一年の絵里だった。

『あれっ、亀ちゃん、どうしたの?』
『紺野先輩帰るんですかぁ?』
『えっ、うん、そのつもりだけど…』
88 :七誌さん :2004/08/19(木) 23:42
おっ・・・あいつ等とはののとあいぼんだったんですね!
ってか自分反応遅っ・・・!!
初登場の二人に一体何が・・・?
次回更新を待ってますです。
89 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/20(金) 00:19
これから日常の光景が映し出されるであろう予定は一人の部員の一言から暗躍の道をたどる事となる。

『あれっ、鍵が掛かってる何で…うそ…動かない』

ガチャッ、ガチャガチャッ

部室の固定されているドアを押したり引いたりする音。異常を感じた他の部員達はその方向に視線を集中させる。

『ちょっと、何してんのよ』
『ド、ドアの鍵が動かないんだよ…くっ』

力み気味の声でドアの鍵を動かそうとする一人の部員。

『そんなばかな…』

呆れたように違う部員がドアの鍵に手をかける。

『…くっ…ほんとだ動かない』
『ねえ、ちょっと、窓も…ぐ、開かない…よ』
『ぐくっ…こっちも開かない』

いつの間にか窓のところに足を運んだ二人の部員が口を揃えて言う。

『うそっ…まさかこれって…』

あさ美の頬を冷たい汗が伝わり表情も険しいものとなる。

『…こわい…』

あさ美の腕にひっしと、つかまり小さな身体を振るわせる絵里。
90 :名無飼育さん :2004/08/20(金) 00:45
多分、作者さんは直で書き込んでますよね?
ワードパットなりメモ帳なりを使って書き溜めておいた方が更新も楽だし早いと思いましすよ。
大きなお世話だったらすみません。
91 :黄忠 :2004/08/20(金) 00:48
本当に毎回読んで頂きただ感謝です。
本編ということでかなり娘。も登場してきました。
ははっ、これから大変だなぁと自分で思いますけど…。
話は変わりますが、今回の敵はかなりやっかいな相手です…いろんな意味で、
前篇、後編に分ける事にします。一人一人の見せ場を作るための処置ですね。
92 :黄忠 :2004/08/20(金) 00:58
≫名無飼育さん

アドバイスありがとうございます。
…当たりです…ははっ、ちなみにその場で物語の続き考えてます。
自分の文列見て思ったんですよ。読みにくいなぁって…。
メモ帳などで書いた場合どう表示されるかわからないから正直怖いんですよね。
93 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! 〜前篇〜 :2004/08/21(土) 00:01
あさ美はそっと小さな肩を抱く。そうする事により若干だが絵里の体の震えが柔らぐ。近くに誰かがいるという安心感だろう。

『…あなたが紺野あさ美。なるほど、確かに素晴らしい力をお持ちのようですね。…まだ成長途上のようですが』

何処からか聞こえてくる美しくも冷ややかな女性の声。

紺野あさ美という何者かの名指しに、他の部員達の視線が自分に注がれている事を肌で感じ…俯く。

あさ美はすぐに察した。この声の主が人成らざるもの、そして人間以上の力を持つ特生変異人である自分の魂を奪いにきたのであろうことを。

(私の事で、他の皆を危険な目にあわせる訳には行かない…でも、この台詞を言ってしまったら、私が普通の人と違う事がばれてしまう…きっと皆、変な目で見るようになるだろうな…でもっ)

あさ美は決心したようにゆっくりと顔を上げ口を開く。瞳には涙が浮き出ていた…でも力強く!。

『用事があるのは私だけなんですよね、他の人達は関係ない筈です…部室から出してあげてもらえませんか?』

『あさ美っ』
『あんた、一体…』
『何言ってんのよ』
『あさ美先輩』

…もはや、あさ美の耳には周りの声など聞こえていなかった。ただ、何者かの声のした一点を見つめ質問の返答を待つ。
94 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/21(土) 00:24
『申し訳ありませんが、貴方の期待に答える訳には参りません…』

『ぐっ…これ』
『なっ…』
『いや…うっ』
『い…意識が…』

バタバタと倒れていく他の部員達。

『な、何をしたの…?』

驚きの表情のまま固まるあさ美。今、倒れた部員達が起き上がる。
ぴょんっと何か糸のようなもので上から引っ張られたような不自然さで。それから、カクカクと奇怪な動きをする。

…それはまさにマリオネット(操り人形)のように…くるりとそれも一斉にあさ美の方へ振り返る。瞬きもしないで見つめている。まるで魂の抜け殻だ。恐ろしくて声が発せられない。

『…ひっ』
『いやあああああっっ!!』

あさ美のすぐ近くで耳をつんざくような叫び声が響く。視線を下げる。絵里だ。
95 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/22(日) 00:20
『亀…ちゃん?』
『これは…私の術が通じないなどとは…その人間ももしかしたら特生変異人なのかもしれません…しかもかなりの力を秘めた。
生かしておくと我々魔族の脅威になるかもしれませんね…可哀想ですが生かして帰す訳にはまいりません』

マリオネットと化した部員達があさ美達に向かって一斉に動き出す。カクカクと皆。同じ動きで迫り来る。

『こわい…こわい…来ないでっ、こっちに来るなぁっ…ぁ…』

絵里の視線がマリオネットの一体とあう。涙でぼやけて見えるが恐ろしさには何の影響もない。

『いやぁっ!!』

悲痛な叫びが終わりを告げるとあさ美の片腕が重くなる。絵里はあまりの恐ろしさに気絶したのだ。

あさ美はゆっくりと距離を詰めてくる元は部員達だった物の方を向いて考えていた。

(能力を使えば、操られている皆を退ける自身はある…だけど手を上げるなんて出来ない…傷つけることなんて出来る訳ないよ…)
96 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/22(日) 00:57
『どうすれば…』

あさ美の心の内など知らない…いや、わかろうともしない。心なきマリオネット。
その中の一体の腕が無慈悲にあさ美の首に伸ばされる。

ギュッ、ギュウウウウウッ

『…しまっ…く、苦し…』

尋常でない力で締め上げられる。あさ美も力を使い抵抗するが、相手を傷つけないようにセーブしている為、慣れてないのも相まって体力の消耗が激しい。

『…こ…のままじゃ…』

ドオォォンッ!!

何か大きな音とともに外界の光が射し込んでくる。もう夕方なのでそんなに強い光ではなかったが、開放感を感じるには十分であった。
音の原因であろうぽっかりと丸く開いた部室の出入り口であるドアの前には二丁拳銃を携えた女生徒、小川麻琴が立っていた。右手に持つ銃からは硝煙が立ち上っていた。

『まこ…ちゃ…ん』
97 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/23(月) 07:38
首を絞められる力で目のかすむ中。あさ美は親友の名前を力なく呟いた。

『あさ美ちゃんっ!!』

麻琴はあさ美の命が危ないのを即座に感じ取ると、その場所まで走りより、首を絞めているマリオネット(元は同じ人間)をためらう事無く突き飛ばす。…それだけあさ美が麻琴にとって大切な存在だと言う事だろう。

あさ美は苦しみから解放され、突き飛ばされたマリオネットは受身も取らず後頭部を強く強打する。

『がはぁ…げほっ…げほぉっ』

締め付けられる力によって絶たれていた気管が元の状態に戻り始める。

『あさ美ちゃんっ、大丈夫?』

先程とは違い目の前には自分を気遣う。感情をもった麻琴の顔。

『まこっちゃ…んどう…して…けほっ…がはっ…はぁはぁっ』
98 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/23(月) 08:23
『もうっ、一緒に帰るって約束してたでしょ?それで。…待ってたんだけど中々来ないからさ、丁度、陸上部の部室から顧問の先生が出てきたから聞いたんだよ。そしたら今日はミーティングだって言ってて、でも丁度終わった所だって、

じゃあ、もうすぐ来る頃だなぁって思って、また待つ事にしたんだけど、あさ美ちゃんだけでなく他の陸上部の人達も誰一人として部室から出てこないからさ…こうやって様子を見に来たってわけ…まさかこんな事になってるなんて思いもしなかったけどね』

『けほっ、ごめんね…まこっちゃん…昨日の事で何か頭の中がそればっかり考えちゃって…』
『ううん、いいって…私もそうだし。…それより喉、大丈夫?』
『…うん、大分落ち着いてきた。ありがとう』

…とは言うもののあさ美の表情からはかなりの疲労感が見て取れる。あさ美の瞳を一直線に見つめたまま真剣な眼差しで麻琴は言った。

『あさ美ちゃんっ、今なら私が穴を空けたドアから外に出られるから、早くその子も連れて逃げて』

麻琴は視線をおとし気を失っている絵里の姿を捉えると、出入り口の方を示して外に出るように促す。

(あっちゃあ…急な事だったとはいえやり過ぎたかも…)

ぽっかりと空いたドアを眺めながら、この状況でそんな事を考えている麻琴は、やはり大した人物かもしれない。
99 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/23(月) 14:10
『…えっ、まこっちゃんは?』

わかりきっていたあさ美の返答。麻琴はそれに間を空けず答える。

『…私はここに残るよ…あさ美ちゃんお願いっ、何も言わないで言う通りにして欲しいっ…私を親友だと思ってくれているんなら信じて欲しい。

…大丈夫っ、絶対死なないし、操られている他の陸上部の人達も無事に帰らせてみせるっ…それは邪滅聖魂を持つ私にしか出来ない事だからっ!!』
『わかった…まこっちゃんを信じるよ…絶対に死なない。…約束だよ?』

麻琴にあそこまで言われて止められる筈もなかった。あさ美は気を失っている絵里を背中におぶると外界の光に導かれるようにゆっくりと歩を進めた。

…この後、あさ美は自分のとった選択肢を後悔する事になる。だがもう、動きだした歯車を止める事は出来ない…。


…時を同じくして亜衣、希美の行方を捜すべく動きだした真里となつみ。亜衣にメールを送った直後に受信されたそのメッセ―ジを確認して真里は頭を抱えていた。内容はこうだ。

―テストが終わった再来週の日曜日。高橋さんが皆でカラオケに行く予定を立てたんだけど、やぐッちゃんその日空いてる?…あとごめん、なっちにも聞いといてもらえるかな―

『ったく、早川の奴。今こっちはそれどころじゃないってのっ!』
100 :黄忠 :2004/08/23(月) 14:29
唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 のラストと〜後編〜に向けてシナリオを練っているところです。なので、次回更新はちょっと先になるかもしれません。
前回よりもかなり…文章が読みやすくなったと自己満足している黄忠な訳ですが…。何か読んで頂いて思った事とかあったら書き込んどいてもらえるととありがたいです。勉強になりますんで…。

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