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やっぱり…平和って良いよね!!

1 :黄忠 :2004/07/31(土) 13:31
初めて投稿します。

RPG(ロールプレイングゲーム)のモンスターがもし、今の世の中に
出現したらという話です。

それを迎え撃つ娘。達が、個々の潜在能力や、銃などの近代武器、
そして、そして科学では証明できないアクセサリー(例)ペンダントが
形を変えて武器になるを駆使してそれに対抗する…そんな感じですね。

現実にそんなモンスターがいたとしたら、普通に対抗できませんよね?
惨殺が行われるわけです。親密な相手とか食われたりしてしまいます。
その時の心境、覚悟、そうして平和の大切さを実感する。

大層な事を書いておりますが自分は初心者です。何かお気づきの点など
御座いましたらお教え、そしてつっこみをかまして下さい。

今の娘+安倍さんをメインにして行きたいと思っています。
今日はこれから仕事の為明日から少しづつUPしていきたいと思って
います。宜しくです。それではっ!!
2 :774 :2004/07/31(土) 20:02
楽しみに待ってます。
頑張って下さい。
3 :なつまり。 :2004/07/31(土) 22:38
面白そうですね。
楽しみにしています。
4 :黄忠 :2004/08/01(日) 10:51
やってしまいました…とほほ
書き込んだのは良いんですが長くなりリロードする事に
千文字ってどうやって確かめるんですか?方法有りましたら
教えてください。
ふう、また頑張って書き込みます。
5 :黄忠 :2004/08/01(日) 11:39
早速のコメント有難う御座います。
自分で言うのも何ですが、すっごく難しそうです。
皆さんの良いアイディアとか有りましたらお教え下さると
ありがたいです。

では、始めさせて頂きます。

とある部屋の一室。真ん中の机を囲む様に四人の女学生が座っている。
机の上には教科書やノートが広げられており、シャーペンがカリカリと
音を立てている。窓の外は夕方特有のオレンジ色で染まっており学校が
終わってそのままここに集まったという感じだ。

『あさ美、ここ教えて』
『うんっ』
『私、ここ教えてくれる?あさ美ちゃん』
『うん、分った』

あさ美と呼ばれた学生は一つも嫌な顔をせずそれに答える。相手に合わ
せて説明の仕方を変えるそのやり方はとっても解り易いのだろう質問を
した二人(愛、麻琴)の晴れ晴れとした表情が物語っていた。

6 :黄忠 :2004/08/01(日) 12:10
『ほんとあさ美の説明は解りやすいなぁ』

少しなまりのかかった喋り方で愛が言う。

『ほんとほんと、さすがは学年トップのあさ美ちゃんだよね!!』

と麻琴がいつもの調子でちゃかす。

『そんなに解りやすいかなぁ、でもそう言ってもらえると嬉しい』

あさ美はほうを赤らめながら笑顔で素直な気持ちを口にした。

『う〜ん。どうやったらそんなに頭良くなるのかな。っああっ!もう!
 ぜんっぜんわかんないっ!!…今回も駄目そうだな私』

一人教科書とにらみあっていた理沙が嘆く。

『もう、おまめちゃん←(理沙のあだ名。顔が丸く豆に似ている為らしい)
 諦めたら駄目だよ頑張ろ!!』
『そうだよ理沙ちゃん』
『理沙ちゃんも補習なんてしたくないでしょ?みんな一緒』

愛、あさ美に続いて麻琴も口を挟む。短い言葉ながら理沙をもう一度や
る気にさせるには十分の力があった。これが友達というものなのだろう。

7 :なつまり。 :2004/08/01(日) 23:10
更新お疲れ様です。
私も最初は同じでしたよ。
長く書きすぎてまた書くはめに・・・。
それから暫くは、それにビビッてしまって1レス3行なんていうのもありましたね。
 千文字についてなんですが、それは1スレの記事数では?
多分、KB数だと思いますよ。ここでは700KBですね。
私は、感覚です。このぐらい書けば良いかなっていうぐらいです。
あんまり当てにしないでくださいね。始めたばっかりなんで・・。

後、理沙の理は里ですよ。念のため・・。
長々すいません。頑張ってください。
8 :黄忠 :2004/08/02(月) 01:20
早速のご指摘有難う御座います。
感覚ですね解りました。頑張ってみます。
何故か文字列も変ですそれも気をつけたいと思いつつ続きです。

…しかし、もう日は落ち時計の針は十九時を回っていた。今日は解散
する事に。

『ほいじゃねー!』
『うん、ばいばいっ!』

あさ美は、笑顔で手を振り愛を送る。

『今日はありがとう。私もうちょっと頑張ってみる』
『里沙ちゃんならきっと大丈夫だよ。わかんない事とかあったら遠慮し
 ないで電話してくれて良いから』
『うんっ、あさ美ちゃん!…何かやる気でてきた!ようし!やるぞー!!』

愛と里沙を見送ったあさ美はトイレに入ってる麻琴待ちの状態だ。

…待つこと約五分。
9 :黄忠 :2004/08/02(月) 01:50
『いや〜さっぱりしたぁ』

ジャーッっと水の流れる音が聞こえ麻琴がトイレから姿を現した。

『何も声に出して言わなくても』
『気にしない、気にしない』

といつもの笑顔。麻琴の発する言葉には相手を(そうゆうものなのかな)
って思わさせる力がある。そんなオーラをまとった女の子だ。

『…ねぇ、あさ美ちゃん…』

靴を履き終わった麻琴は、振り返るとあさ美に話かける。その表情、
声のトーンから先程の明るさが感じ取れない。

(何かあったのかな…それも大変な事が?)

あさ美は一度もみた事のない親友の変わりように戸惑いながらも後に
続くであろう言葉を待った。
10 :黄忠 :2004/08/02(月) 02:21
『…あさ美ちゃん…あのね…』
『…うん』
『…信じて…もらえない…と…思うんだけど…昨日の夜…見ちゃった
 …んだ…人の死ぬ…ううん…たべ、食べ…られる…とこ』
『…えっ』

あさ美には理解し難い話だったが、麻琴の今の状態をみれば嘘、偽り
の無い事実だということはわかる。一度も人の前では涙を見せずに、
他人を励まし元気づけてきたその彼女が今、自分の目の前で涙を流し
小さく震えているのだから。

(だからといって、私に何ができるの?話を聞いてあげることしか)

『…やっぱり信じらんないよね…』

(まこっちゃんは私にどうして欲しいんだろう…わかんないよ)

『もういいよっ!!』

――バアンッ!!

11 :黄忠 :2004/08/02(月) 03:04
玄関の閉まる音があさ美の心の奥深くに突き刺さる。

(ちがう…ちがうんだよ…信じてないわけじゃないよ…信じる…信じて
…そうだ、まこっちゃんはこの言葉を待っていたんだ…それなのにわた
…私は…自分に何ができるかとか考えてて…そんなに凄い人間じゃない
のに…ごめん…ごめんなさい…傷つけちゃったよね)

とめどなく溢れ出してくる涙…それはあさ美の後悔、懺悔の気持ち。
12 :黄忠 :2004/08/02(月) 03:34
大変情けないことですが…。
11スレの前セリフ入れ忘れました。→『あっ!まこっちゃん!!』
13 :なつまり。 :2004/08/02(月) 12:36
少し動き始めた感じですね。楽しみです。

黄忠さん、落ち着いてください。
落ち着いて書けばミスも無くなりますので。
14 :黄忠 :2004/08/02(月) 14:11
なつまり。さんいつも暖かいご指摘有難うございます。
下手なりに思い切ってカキコした甲斐がありました。


あさ美の家を飛び出してきた麻琴はただ走り続けていた。視界を妨げる
涙を拭いながら…。彼女の精神状態がそれを促していた。

…しかし、体力にも限界というものがある。だんだん速度が落ちてきて
徒歩になるのは当然というものだ。自分の駆け足の音が消え周りの静け
さが麻琴の心に恐怖を植え付ける。

『…ここ、どこ?』

今だ止まらない涙を手で拭いながらキョロキョロと辺りを見回す。
どうやら途中で道を間違えたらしかった。見覚えのない景色に、自分の
血の気が引いていくのがわかる。感情で行動した結果だった。人気が無
く暗闇に覆われている状態…まさに絶望。

『…嘘、…そんな…』




15 :なつまり。 :2004/08/02(月) 17:56
カキコして良かったって思えるのが1番良い事だと思います。
私みたいな読者で宜しければいつまでも読ませて頂きたいと思います。
それに黄忠さん。下手なんかじゃないですよ。
上手い、下手なんて元々ないと私は思います。
作者さんの物語を考える頑張りや、やる気。
読者さんの楽しみにしているという気持ちがあればそんなの関係ないと思いますよ。
作者さんにやる気が無ければその物語は読者さんには、つまらなく見えてしまうと思います。
何か偉そうなこと言ってごめんなさい。頑張ってくださいね。
16 :名無し読者 :2004/08/02(月) 21:01
相手へのレスと小説の本文は分けた方が良いと思うよ
17 :黄忠 :2004/08/02(月) 23:47
≫名無し読者さま

確かにその通りですね。ご指摘ありがとうです。
今度からそうしたいと思います。感謝
18 :黄忠 :2004/08/03(火) 01:12

…絶望と言う名の現実。それは、麻琴の思い出したく無い記憶をフラッシュバック
させ始める。やがてそれは鮮明に頭の中に広がり形作る。

(いや…暗い…怖い…怖いよ…誰か…誰か助けて)

『いっ、いやああああああっ!!』

思いはやがて声となり漆黒の世界に響き渡る。

…ガサッ

『…えっ』

麻琴の防衛本能が働いたのだろう。いつの間にか涙は止まり、音のした一点を
見つめていた。

ガサッ、ガサガサガサッ…

『…何…えっ…何なのよ…』

草木のこすれ合う音、掻き分ける音。風は無い…何かがいる。音がだんだん近づい
てくるにつれ自分の心臓の鼓動が早くなるのがわかる。

『いや…来ないで…来ないでよおおおおっ!!』

姿の見えない何者かに恐怖する。暗闇…頭の中を支配している思い出したく無か
った戦慄の記憶。それらが拍車をかけているのだ。

19 :黄忠 :2004/08/03(火) 10:02
急に身体の力が抜け、立っていられなくなる。ドンッと後ろにしりもちをつく。
すぐにでもこの場所から離れたいと思い脳から各部に指令を送る。人間が何か行動
する時などにする事。だが、それを受けつけなくてはどうする事もできない。

(動け…動いてよ…動けえええええっ!!)

『おいっ!!』
『ヒッ!』

首の上だけが後ろを向き、身体全体を引きずるように後退いていた麻琴は突然の声
、肩に感じる温もりに小さな悲鳴を上げた。

『…おいっ!どうしたっ!しっかりしろっ!!』

とても力強く、頼りがいのある大人の男性の声。それは麻琴の心を支配していた
絶望の暗闇に希望の光をさしこませる。ゆっくりと振り返りその姿を確認する。

警官だった。何かを調べにきていたのだろう手には懐中電灯をもっていた。何故こ
んな時間に…とも思ったがそんな事を今気にする必要はない。

『うわああぁぁぁんっ!!』

感極まり止まっていた涙が再び溢れ出す。気づいた時にはその胸に飛び込んでいた。
始めは急の出来事に驚いていた警官だったがその気持ちを理解したのだろう麻琴の
小さな背中を包みこむように大きな腕をまわした。

(…あったかい)







20 :名無飼育さん :2004/08/03(火) 11:14
文章も上手ですし、設定も面白そうですね。
これからも読ませていただきます。
頑張ってくださいm(_ _)m
21 :黄忠 :2004/08/03(火) 11:19
『…もう、大丈夫だ』

…今まで生きてきた人生の中でこれほどこの言葉に安心感、安らぎを
覚える事は無かったであろう、そして人の体温を暖かく感じることも…。

警官は背中に回していた腕を離すと腕時計に目をやり時間を確認する。
そして再び麻琴に視線をやった。

『…さあ、もうこんな時間だ家まで送ろう』

(帰れる…家に帰れる…ここから出られる…)

『家は…どこだい?』

警官は親が幼い子供と話すような口調で優しく問いただす。

『に…ヒック…に…にし…ック…ウゥッ…』

何とか声に出して言おうと思うのだが、ままならない。

『相当怖い目にあったんだな…可哀想に。取り合えず明るいところまで
 行こう。ほら』

警官はそう言いながら麻琴の前に手を差し伸べる。

22 :黄忠 :2004/08/03(火) 13:16

ちいさな手のひらが、大きな手のひらに包み込まれる。それはなるべく
してなったもの。…警官の服装がそうさせた?…いや、今手を握ってく
れている一人の人間の(人間性)が十七歳という年頃の少女に安心感を与
えたのだ。…始めは自分だけだった足音が今は二つ耳に響いてくる。

(…一人じゃない…一人じゃないよ…)

麻琴は人の温もりを今一度実感する為に手に力をこめる。

『…はははっ、大丈夫だ。私はここにいるよ』

と優しい声。暗闇で表情は見えないがきっと笑顔だろう。

…一言で良いからお礼を言いたい。大分気持ちが落ち着いてきた麻琴は
自分にしか聞こえないような声で呟いてみる。

(あ…あり…ありが…とうござ…います…ありがとうございます!!
…言えた…良し!!』

『あっ、あの、ありがとうございます!!』
23 :黄忠 :2004/08/03(火) 14:11

…返事が返ってこない。聞こえるのは何故か、何かが噴出すような音。
それも大量に。…自分の顔に何か液体のようなものが飛びかかってくる
のがわかる。雨ではない。麻琴の一番望まないもの…血のにおい。

…人間の本能というやつは残酷だ。何かをしたい、したくないに限らず
肉体が勝手に行動を起こしてしまう。

(…いやっ…いやぁ…見たく無い…見たくないよぉぉぉ…)

それはスロー再生のように過酷な現実を瞳に映し出す。

『いいっ、いやあああああああああああああああっ!!』

…辺りに響き渡る程の小川麻琴と言う名の少女の魂の悲鳴。目の前の
光景は壮絶だった。噴出すような音の正体。首から上の無い肉の塊。
先程まで自分を暖かく見守り安らぎを与えてくれていた人の変わり
果てた姿。
24 :黄忠 :2004/08/03(火) 14:31
取り合えずはこんな感じで進めてみました。
色々と視点が変わり読みにくいと思いますがご容赦
下さい。ここから始めに予告しておいた潜在能力とかモンスター
とか出していこうと思っています。正直かなり大変だと思いますが
やり遂げたいと思います。
25 :なつまり。 :2004/08/03(火) 16:08
いよいよですね。
ドキドキです。
26 :習志野権兵 :2004/08/04(水) 06:37
始めまして。悪魔でも俺個人の意見として聞いてください。名前の欄に関してですが本文の方はタイトル或はサブタイトルをレスに関しては作者さんの名前って風にしたら、もっと読みやすいと思います。応援させてもらいますんで頑張ってください。
27 :黄忠 :2004/08/04(水) 07:06
≫なつまり。さま

いつも読んで頂きありがとう御座います。
やっとここまで来れたという感じです。未熟な私ですが、
少しでも、登場人物の心境の変化を感じて頂けたら嬉しく思います。

≫習志野権兵さま

こちらこそ始めまして。目にとめて頂きありがとう御座います。
その件なんですが、私も他の作者さんの作品を見させていただいた時、
感じました。取り合えずは今、書かせて頂いている小川麻琴の視点までを
プロローグにしたいと考えております。ははっ、長すぎますが…。
本編が始まりましたらそのようにしますね。
28 :黄忠 :2004/08/04(水) 07:40

人の温もりを与えてくれ、勇気をくれた大きな手のひら。今ではもう…。

『…いやぁ…やぁ…ぁぁ…』

もう涙も涸れはて声を出す事もできなくなっていた。精神崩壊のほんの一歩手前
かもしれない。呆然と立ちつくす麻琴。目が焦点のあわない状態。まさに無気力。

『これじゃ無かったか。全く紛らわしい』

ガリッ、ゴリッ、ガリゴリゴリっ…べチャ…ベチョ

ビシャッ…

誰かが何か言った様な気がした。何かを噛み砕く音がした。何かが飛び散る音がした。
…でもそんな事なんてどうでもいい。早く楽になりたい。
29 :黄忠 :2004/08/04(水) 08:18

(私も…もう死ぬんだ…死ねるんだ…開放されるんだ…やっとこの悪夢
から…いい事…なんだ)

『あれも違うか…でもまあ、ちょっとでも私の力の足しにはなるか…。
 やれっ!!

何者かの号令がかかり、食事をしていた狼のような獣は、頭を上げ麻琴
に視線を向けると足元のコンクリートを蹴った。尋常ではない速さで襲い
かかる。

(…これなら苦しまずに死ねるかも)

麻琴はすっと目を閉じこの世との別れを待つ。死を迎える寸前は過去
の思い出が走馬灯のように流れると言うがまさにその通りだった。
家族との思い出、友達との出会い、遊んだ記憶。それらが次々と脳裏に
浮かんでは消えていく。涸れたはずの涙が頬をつたわり。目の前に気配
を感じ最後の時がきたことを悟る。

30 :黄忠 :2004/08/04(水) 10:07

(…さようなら私の大切な人たち…大切な…思い出)

『やらせないっ!っやああっ!!』

バキィッ

鼻腔をくすぐる様なシャンプーのいい匂い。感じたことのある気配。…そして声。

『あさ美ちゃんっ!!』

麻琴は自分でもわからないうちに叫んでいた。紺野あさ美というかけがえのない
親友の名前を…。

『はぁっ、はぁっ、まこっちゃん大丈夫?』

今、瞳に写っているふくよかな頬の可愛らしい顔。長い付き合いだ見間違う筈は
なかった。

『あさ美ちゃん…どうして』
『…謝りたくて…はあっ…はあっ』

乱れた呼吸をととのえながらあさ美は答えた。

『…えっ』
『はぁっ…うっ…き…傷つけちゃった…から』

あさ美の目に涙が浮かぶ。他人の流す涙がこれほど自分の心を締め付けるとは思
いもしなかった。…それが親しい友達(親友)ならなお更のこと、死を迎える直前
に学ぶ事になろうとは、今までいかに自分以外の人の心のうちを理解しようと思わ
なかったかということだろう。
31 :黄忠 :2004/08/04(水) 16:37
まだもう少し先になるとは思いますが、娘。の能力、武器とか
ですね。八割がた決まりました。…これからお盆に向け深夜の仕事の
が忙しくなるので、一日の更新量が少なくなるかもしれません。

…決してやる気がなくなった訳ではないのでご理解頂けたら幸いです。
32 :黄忠 :2004/08/05(木) 07:58
『…あさ美ちゃん』
『…信じてた。まこっちゃんの話…信じてたんだ…よ。…それだけはわかって欲
 しい』

麻琴は理解した。常に自分の事よりも他人を気遣う優しい心を持った親友。
私の気持ちにこたえられなかった事に心を痛めているんだ。

(…だからきっと、追いかけてきてくれた。…私は何て馬鹿なんだっ!自分の言いた
い事だけ言って、被害者ぶって、あさ美ちゃんの家から飛び出して…あげくの果てに
迷って…そして泣いて…子供だよ。これじゃ…。私がここに来なければあの優しかった
警察の人も死なずに済んだかもしれない…。そして今度はあさ美ちゃんまで危険な目に
遭わしちゃってる。ちきしょうっ!、ちきしょうっ!)

麻琴は自分の中で新たな感情が生まれてくるのを感じた。自分に対する怒り。その
感情の変化を肌で感じ取ったあさ美。麻琴の顔を心配そうに覗き込む。

『…どうしたの、まこっちゃん?』
33 :黄忠 :2004/08/05(木) 15:23
『許せない…私…自分が許せないよっ…』

もう麻琴の脳裏に恐怖、絶望などのマイナスの感情は微塵も無くなっていた。

『くっくっくっくっ、こいつはいい。すぐに殺さなくて正解だったな』

その声に気付き視線を向ける麻琴。暗闇で見えない何者かをキッと睨みつける。
ワンテンポ遅れてあさ美もその姿を確認する。
34 :習志野権兵 :2004/08/05(木) 20:25
レス有難うございました。
わざわざ、俺が言うまでもなかったですね。失礼しました。
更新量についてですが特に気にする事は無いと思います。
自分のペ-スで進めてください。
35 :黄忠 :2004/08/06(金) 07:33
『感じる、感じるぞ。私に対する貴様の憎悪。殺意が』

麻琴の自分に対する怒りと同じ、いやそれ以上の憎悪が心を侵食して行く。

(こいつだ、こいつがあの優しかった警官の人を…ぐ…殺してやるっ!…殺して
やるっ!!)

『くくくっ、だが残念かな。特生変異人←(生まれた時に何かの拍子で常人以上の力
を身に付けている人間のこと)のあさ美とやらと違い貴様は何の能力も持たないただ
の人間にすぎん。我々魔族には対抗できんよ』

確かにその通りだった。喧嘩などもしたことが無く、なにも格闘技を習っていない
麻琴が戦えるはずも無かった。…だが、それでまた逃げ出したりしたらふりだしに
戻ってしまう。弱虫の自分に戻ってしまう。そんな感情が意志を揺らがせなかった
のだろう。…一点の曇りの無い鋭い眼光がそれを示していた。

そんな麻琴の心のうちを知ってか知らずか話を続ける黒い影。
36 :黄忠 :2004/08/06(金) 08:07
『…それに私が追っていたのは特生変異人のそいつだ。…すなわち。
いらん責任感などで貴様を追いかけて来なければそこの人間も、死な
ずに済んだだろう。そして貴様自身もこんな恐怖を味合わずに済んだ
のではないか…?…まあいいどちらにしても貴様には特生変異人の能
力開花の手助けをしてもらう…死によってなっ!!』

黒い影の両脇に何かが息づいていく。狼に似た獣。警官の首をむしり
取ったもの…サイレントだ。それも二匹。麻琴一人に的を絞っている。

(…間違いない私だけを狙ってる)

能力など持ち合わせていない麻琴だったが、人間の本能で殺気を感じ
とる。体中から汗が吹き出し身体が震える。あさ美ちゃんはどうだろう
…同じ気持ちなのだろうか?気になり隣の親友を横目で見る。

…うつむいていた、苛められたように。何かを考えてるようにも考えて
 いるようにも見受けられる。

『やれっ!!』

最後の号令がかかる。
37 :黄忠 :2004/08/06(金) 14:50
『あさ美ちゃん逃げてっ!!…がは…ぐっ…うぅ』

そくざに気を失うほどの見事な膝蹴りが、麻琴の腹部を捕らえる。
…あさ美だった。紺野あさ美という少女は学力優秀、スポーツ万能
の優等生。空手も茶帯の段持ちだ。他にも例を挙げればきりがない
天才だった。

『…あさ美ちゃ…どう…して…くあっ』

麻琴は薄れ行く意識の中で軌道修正してあさ美に襲い掛かる二匹の獣
の気配を感じた。それは勿論あさ美自身にも。見えない相手への対処
の術などを知るはずもない。考える時間も…。

(…なら、これしかっ!)

あさ美は目を閉じる。よく格闘家が気配を察する時に使う方法。限り
なくゼロに近い可能性。…失敗それは即ち死を意味する。

(…チャンスは一度。失敗したら私だけでなくまこっちゃんまで死んで
しまう…そんなのは嫌…守りたいあの笑顔をっ!もし、本当に人以上の
力が私にあるというのならっ)

『…今この場でその可能性にかけるっ!!』
38 :黄忠 :2004/08/07(土) 07:45
カッと見開く両の目。自分の身体が軽くなり、全身にみなぎる様なエネルギーを
感じる。それらはあさ美に勝利を確信させていた。

…一瞬の出来事だった。おそらくは彼女自身も覚えていないだろう。サイレント
の一匹は宙を舞い、もう一匹はアスファルトの上で沈黙を保っていた。

ドサッ

やがて宙を舞っていた物体が地面に叩きつけられる…即死だった。

『…やったの?』

二匹の身体から液体が流れ出る。暗さのせいで色は確認できないが人で言う血液
だろう。…人で成らざる者の死骸。それを静かに眺めているあさ美の心境は複雑
だった。勝つ事はできた。大事な人を守り通すことはできた…でもそれは、自分
が特別な人間の証明。麻琴や愛、里沙とは異なる…存在。

(…私は何者なの?)
39 :黄忠 :2004/08/07(土) 09:24
『…え?…くうっ…』

ふうっと全身の力が抜けるのを感じる。今まで一度も使った事のない
常人離れした動きが身体に大きな負担をかけていたのだ。力のコント
ロールが出来ない今のあさ美にとってはまさに諸刃の剣。片膝をつく。

『…さすがは特生変異人。やるなっと言いたい所だが、もうエネルギー
切れとはな拍子抜けだ。これでは次の攻撃に耐えられるか疑問だが…
サイレントっ!!』

黒い影の声に答えるようにモンスター(怪物)が姿を現す。その数五

『…うそ…ま…た…立ち上がら…なくちゃっ…』

おぼつかない足取りで少女は立ち上がり後ろを振り向き視線を下げると
気を失っている親友の顔をみる。

(…まこっちゃんだけは何とか守りたい…でも、この動かない身体で
どうすれば…)

『…はっ!!』

あさ美が気付いた時にはもう、五匹の獣は獲物(少女)に向かって走り
出していた。

『ぐっ…もうだめ!!』

瞼を閉じ死を覚悟する。

(…あれっ…攻撃が来ない…)
40 :黄忠 :2004/08/07(土) 09:47
物語は、思い浮かんでいるのですが…なかなか話が進まない
ですね。出来ているかどうかはわかりませんが、自分の中で、
どうしても、登場人物達が何故こういう行動にでるのかという
(内面)心の中で考えていることを描きたい気持ちがあって、
気付けばこの長さ(笑い)正直あらしが起きないのが不思議な
くらいです…まあ、仮にあったとしても気にしませんけどね。
一番始めの予告を見て楽しみにしてくれている読者の方には、
申し訳ない気持ちでいっぱいです。
41 :黄忠 :2004/08/07(土) 11:25
…不思議だった。あさ美は何度もその魔物のスピードを目にしていた
人間の目では追うことのできない速さ。もうとっくに自分は攻撃範囲
にいる筈なのだ。しかし音もしなければ気配も感じない。恐る恐る目
をあけ現状を確認してみる。

『…えっ!?』

開いた口が塞がらなかった。あさ美の人生にピリオドを打つはずだっ
た五匹の胴体は、それぞれ宙を浮かぶギロチンに捕われて身動きの出
来ない状態になっていたからだ。首から上を固定され前足や後ろ足をば
たつかせてもがくさまは、とても悲観感が漂う。ギロチン台の上の重量
感の有りそうな刃がサイレント達の行く末を示しているようだった。

『怪物にも恐怖というものがあるんだねぇ、一つ勉強になったよ』

何処からか聞こえる男性の声、まだ若く感じられる。あさ美はきょろ
きょろと辺りを見回しその声の主を探す。
42 :黄忠 :2004/08/07(土) 13:16
『探す必要はないぜ嬢ちゃん、すぐ行くからよ』

この生きるか死ぬかの緊張感張り詰めた空気に合わない陽気な口調。まるで、簡単
な用事を済ますようだった。…自分を助けた所をみるとどうやら敵ではないらしい。更に
誰かはわからないその声にあさ美は何故か安心感を覚え、その場にペタンと座り込む。

(…助かった。でも、何なんだろう一度もあった事ない筈なのに…信じられる…それに
この力…私とは比較にならない…一体何者なの)

『まあ、良くやったか…もうちょっとペ−ス配分を考えるべきだったが、まあ友達
を守る為にしたことか…。このくさった世の中にもそんな奴がいたんだな…。

…おいっ、そこのお前…狼ばっかり出して芸のない奴。他の事は出来ねえのかよ?』

『何だとっ!…ぐっ!…私を馬鹿にするとは…人間風情が死にたいらしいな…』

いつも見下していた人間に、罵られ始めて感情をあらわにする黒い影。

『…よかろう、貴様は私の手で殺してくれるっ!!』
『…ああ、そうかい…取り合えず邪魔な犬達を片付けちゃおうかな!』
43 :黄忠 :2004/08/08(日) 07:18
無慈悲に振り下ろされる五つの刃。ドンッという音と共に獣達の首と胴体が別れ
をつげ、ごろりとアスファルトに転がる

『…ここにこいつ等の死体があると街中が騒ぎになるな…消しとくか』

とめどなく噴出す血の噴水を見つめながら男は呟いた。

ゴオオォォォォッ!!

辺り全体が赤く染まる。それは物凄い熱さなのだろう、サイレント達の焼ける音
や匂いもさせない程の…蒸発と世間では言われている物。その場だけの業火で辺
りに火の粉が飛ばないのは神業としか言いようがない。

『…すごい…』

あさ美はその信じられない光景をめのあたりにして、自然と思った気持ちが口を
通し表に出ていた。…同時に恐怖も。
44 :黄忠 :2004/08/08(日) 07:51
(…今は味方になってくれている様だけど、もし敵に回ってしまったら
…)

そう思うと素直に喜ぶ事が出来ない。

『…あれほどの業火を召喚するとは…特生変異人のそれを越えている』

黒い影は初めて人間というものに脅威を感じていた。

あさ美は目の前に何かの気配を感じ視線を向ける。そこでも信じられな
い光景が繰り広げられていた。景色の一部が縦に割れそこから現れる者
それはゆっくりと自分の方に振り返る。

『よっ!』

片手を上げ陽気な挨拶をする人影。

…この人がさっきから常識では考えられない光景を作り出していた張本人
なのだろうか?とてもそうは見えない。服装は下からシューズ、ジーンズ
、今の季節に良く見かけるポロシャツ(珍しく龍の姿が描かれた)もの、
…そして目にはサングラスをかけている。

『…予想していた姿と違ったかい?』
『…えっ…いやっ…あの…そのっ』

急に声をかけられしどろもどろになるあさ美。

『…ふっ』

その少女の様が面白いのか龍を背負った男は口元を緩める。

『転移能力まで扱うというのか…馬鹿なっ!!』

驚愕する黒い影。三者三様、三人の思惑が交差する。
45 :黄忠 :2004/08/08(日) 14:25
『なあ、今回は退いてもらえねえかな…あんたと俺が戦えばどうなる
かぐらい予想できる筈だがね…ぶっちゃけ死にたくないだろ?』

『…ぐっ』

男は中々理解を示さない黒い影に苛立ちを覚えたのか声にそれが滲み
でる。

『わかんねぇ奴だな…見逃してやるって言ってんだよ…殺すぞっ!!』

自分より強き者に弱き者は恐れを抱く。魔族が人間にという珍しい組
み合わせではあるが…。

『ぐっ…わかった今回は退かせて貰おう…だが、覚えておけ。貴様の
魂は私がもらう…覚悟しているんだなっ!!』

負け犬の遠吠え以外何ものでもない。それだけ力の差を感じたんだろう。

『…俺も一つ忠告しておいてやる。俺に対抗するために他の奴等の魂を
食らうのはお前の勝手だが、次に姿をみた時は容赦なく消えてもらう。
…こっちも何かと急がしいんでね』
46 :黄忠 :2004/08/08(日) 14:38
もし、飽きずにまだ読んでくれている読者の方がいましたらちょっと
質問させて頂きたいですが…娘。以外の人物を大事な役割で登場させる
のは、どうなんですかね?…それも男の。やっぱりこれはモーニング娘。
の小説ですし、気になりましたんでちょっと。
47 :名無飼育さん :2004/08/08(日) 20:55
案内板には目を通しました?
総合質問スレなんかに同じような質問がよく載ってますよ。
48 :黄忠 :2004/08/08(日) 23:29
≫名無飼育さん

お教えいただきありがとう御座います。案内板には目を通したのですが
このようなスレがあるとは知らず質問してしまいました。週に一度はこ
れから目を通したいと思います。
49 :黄忠 :2004/08/09(月) 00:13
消え行く災いの根源を見つめながら、あさ美は男の言った台詞を思い返していた。

(…他の奴等の魂を喰らうのは勝手だが…他の人はどうでも良いってこと?…でも、
次に逢った時は消えてもらう…多分死んでもらうってことだよね…とか、脅してい
たし…味方なの?…)

『…あのっ…』

躊躇する様なか細き声。どうしても気になったのだろう。思いきって背中の龍に
声をかける。振り向く男。月明かりでサングラスが心なしか明かりを帯びていた。

『…何だお礼か?…気にしないでいいぞ。自分がしたくてした事だから』
『…あのっ…あなたは私達の味方…なんですか?』

予想外の質問だったのだろう。男は首をかしげすぐに答えを出せずにいた。やがて
理解したように口を開く。

『…その答えはNOだな。俺は口先だけで結局は自分の事しか考えていない人間っ
て奴が大嫌いなんだよ。お前が友達の事を大事に思う気持ち。自分を犠牲にしてま
で助けようとするその心に動かされただけの事…なんかかっこいい事言ってるけど
…つまり。その気持ちをもたない奴等のためにこの力を使う気はないっ』
50 :名無飼育さん :2004/08/09(月) 01:03
毎回2レス程度の更新ペースなら、sage進行の方が良いのでは…?他の作品が更新ageされてることに
気付きづらいので、正直。
51 :黄忠 :2004/08/09(月) 07:06
≫名無飼育さん

ふむ…そうかもしれませんな。
52 :黄忠 :2004/08/09(月) 08:00
『…そう…ですか』

あさ美はその理由を聞きたい衝動にかられたが、思いとどまる。

(…私はあの人に、敵にまわって欲しくなくて質問したんだ。…あの
強大な力と戦っても勝てる自身がないから…大切な人達を守りたいの
は本当…でも、その為にあの人の力を借りようとするのは…自分の身
勝手…)

そう、頭の中で自分の気持ちを整理してみるとそれをきく事は出来な
かった。

『…うっ…ううん…いっ』

あさ美は、後ろの方で声がするのに気付いた。声の主がいるであろう
場所に視線を下げる…その姿を確認するために。

『まこっちゃんっ!!』

まだ、意識がはっきりしてない親友の上半身、肩を抱く。大事な物を
いたわる様に優しく。守るためとはいえ気絶させたのは自分本人なの
だが…あさ美の性格が現れた瞬間と言えよう。

『あれっ…あさ美ちゃん?』
53 :黄忠 :2004/08/09(月) 09:01
朦朧としていた意識がじょじょにはっきりしてくる。目の前にはよく
知る者の顔。麻琴の脳内で分析が始まる。状況確認だ。

(…勉強会…トイレ…暗闇…警官…首…ぐっ…見えない獣…何者かの声
…黒い影…友達…あさ美ちゃん…衝撃…!!!)

『あさ美ちゃんっ!!怪物はっ!?大丈夫なのっ!!?』

いきなり声を張り上げる親友にあさ美は一瞬驚いたが、持ち前の頭の
回転の速さで麻琴の心のうちを読み取るとわかりやすいように今の現状
を説明する。赤ん坊や小さな子供に聞かせるように。

『大丈夫だよ、まこっちゃん落ち着いて…大丈夫だから』
『…うん』

(何だろう…安心できる…何か、あさ美ちゃんお母さんみたいだな)

『えっと、危機は去りました。…助かったんだよ。私達』
『…えっ…助かった…の?』

一番望んでいた言葉を聞き麻琴は涙腺がゆるくなるのを感じる。
54 :七誌さん :2004/08/10(火) 12:07
はじめまして、一気に読ませていただきました。
黒い影、気になりますね・・・あと男性の方も・・・
続きを首を長くして待ってます。
55 :黄忠 :2004/08/11(水) 09:39
≫七誌さん

娘。以外の人物も認めていただきありがとう御座います。
主人公は娘。なんですが、やはり男性の役割は大きいと思うんです。
女性にとって頼りがいがある。とか怖い、etc、とかですね。


昨日、プロローグ完結の予定でしたが、打ち込んであった携帯を職場
に忘れてしまい、更新できませんでした。本日完結させて頂きます。
56 :黄忠 :2004/08/11(水) 10:13
そして目の前の親友の無事を再確認することができ、いつの間にやら、その親友
(あさ美)に抱きついていた。

『でも、あさ美ちゃんが無事で良かったよぉ、あさ美ちゃんっ!あさ美ちゃんっ!』

麻琴は涙を流し、大切なの人の感触を確かめる。何度もその名前を言いながら…。

『…うん。ありがとう』

暗闇で抱き合う二人の少女がながす涙は、月明かりでキラキラと光を発しダイヤモ
ンドの輝きを連想させていた。

…麻琴はあさ美の肩に廻していた腕をはずすと、いつもの明るい笑顔に戻り感謝の
気持ちを口にする。

[あさ美ちゃんが助けてくれたんだよねっ!ありがとうっ!!…でもすごいなぁ、
あさ美ちゃんっ、あんな怪物倒しちゃうんだもんねっ、すごいっ、すごぉいっ!!』
『…まこっちゃんっ』

捲し立てるように言葉を連鎖させる麻琴。危機を免れた開放感からか、いささか興奮
気味だ。話の切れ目が来た所であさ美が口を挟む。
57 :黄忠 :2004/08/11(水) 10:42
『んっ、何っ、あさ美ちゃん?』
『あのね…私も助けられたんだ。…龍の人に』
『…えっ。龍の人?』
『そう…ほら、あの人っ…えっ』

麻琴はあさ美の指先が指し示す方に視線をやる。

『…えっ!?』

確かにそのような人物はいた。だが謎なのは首の無い警官の横に立って
いる事だった。足元はきっと血だまりが出来ていることだろう。二人の
視線に気配で気付いた男は口を開く。

『おっ、目覚めたみたいだなっ…じゃあ始めるか…ちゃんと見ておけよっ!!』

男はいつもの口調でそう言うと横たわっている警官の亡骸に手をかざす。
ぢりぢりと地面の焼き焦げる音。それはだんだん大きくなり赤い炎となっ
て亡骸のそれを包みこむ。

『…いやっ…いやああああああっ!!』
58 :黄忠 :2004/08/11(水) 11:07
人の肉が焼け爛れる音、骨の焦げる音。内臓や臓器が蒸気になっていく音
…だが麻琴はその事に恐怖したわけでは無かった…自分の身近な人間が
小さくなって目の前から消えていく事に寂しさを覚えたのだ。

『いや…いやぁ…こんな…ひどいよ』

あさ美には親友の心の痛みが良くわかったが正直、男の作り出した炎に
何故か妙な違和感を感じていた。

(何だろう…あの炎を見ているとあったかい気持ちになれる…さっきとは
違う感じ…これが弔うってことなのかな…)

…やがてその姿は完全に消えて無くなる。

『あ…ああ…そんな…』

悲しみに身を震わせ打ちひしがれる麻琴。

…頭の中に聞き覚えのある声が響いてくる。

(悲しむ必要はないよ)
(…えっ!?)

今、目の前で消え、あの世に旅立ったであろう警官の声だった。戸惑い
を覚える麻琴。
59 :黄忠 :2004/08/11(水) 11:35
(心優しきお嬢ちゃん…こんな名前も知らないような私の為に涙を流して
くれてありがとうな)
(えっ…警官のおじさん?)
(肉体が消滅して零体になった事で君の脳へ直接話しかけている)
(えぇっ!?そんな事が出来るんですかぁ?』
(…私にも良くわからないのだが、どうやらそう言うことらしい)
(ははっ、何か不思議ですね)

今の状況を非現実的と言わないで何というのだろうか…今日一日の出来
事が麻琴の中の常識枠に変化を与えたのだろう。このような事を平気で
受け入れられる器のようなものが新たに出来たのだ。

(それは私も同感だ。…話は変わるがあの少年の事は恨まないで欲しい。
私が頼んでしてもらった事だ)
(…えっ)
(…つらい思いをさせて悪かった。だが、君には見ていて欲しかった…
人の死ぬ瞬間を…すまない)
(…どうして…ですか?)
60 :七誌さん :2004/08/11(水) 13:07
うおー・・・!警官のおじちゃん・・・(涙)
あさ美ちゃん!マコちゃん!がんばれ!
作者さんも更新がんばって下さい!
つづきが謎です。
61 :黄忠 :2004/08/11(水) 13:31
(話せば長くなるんだが聞いてもらえるか…?)
(…はい)
(ありがとう。…こう見えても私は署の中じゃ一番の二丁拳銃の使い手
でね、色々な事件を解決してきたもんだよ。)
(…すごい…かっこいい)
(ははっ、ありがとう。…だがある時さっきの魔族が私の前に現れた。同
じようにサイレントという名の獣を引き連れて…確か『お前の魂を頂きに
きた』とか言っていたな。自慢ではないが昔から動体視力の良かった私は
簡単にサイレント達を撃退することが出来たのだが魔族には、弾丸がま
ったく効かなかった。何か見えない壁でもあるように弾丸は止まり地面に
落ちていったんだ。恐怖を覚えた私はその場から逃げ出した。

…一つ聞きたい…君は力を持ちたいかい?怪物と戦える事を望むかい?)

(…えっ…よくわかんない…怪物なんかと戦うなんて怖い…でも、こんな
悲しい思いをするのはもっといやっ!…自分に力があればって思う…)

(それだけで十分だ。君はつよい心をもっている。思った通りだ。先程の
話でわかってくれたと思うが、魔族に対抗するには選ばれた人間でなくて
は駄目だ。私は幸運にも人を越えた動体視力を持っている。…後、武器も
この武器は私を助けてくれた老人がくれた物。二丁拳銃で聖なる弾丸を撃
ち出すことが出来る。名前は邪滅聖魂…私には使いこなす事は出来なかっ
たが、君なら使いこなせる筈だ)
62 :黄忠 :2004/08/11(水) 14:36
(…邪滅聖魂…すごっ、強そう)
(私の持っている動体視力と武器(邪滅聖魂)そして、君の持つ強い意思
で力を持たない他の人間達を守ってやって欲しい。私はもう年をとりす
ぎた。…これで心おきなく引退させてもらうことが出来る)
(おじさんっ!!)
(…私の都合で君に迷惑をかける…許してくれ)
(…そんなっ…きっと期待に答えて見せますよっ、師匠っ!!)

これが小川真琴という少女の強さだろう。自分がどんなに辛く悲しくて
も相手が望む事を受け入れる事が出来る強い意志。そして覚悟。十七歳
の少女にとっては重過ぎるほどのさだめ。それを感じ取った警官の声が
震える。

(はははっ、ありが…とう…ほんとうに…ありがとう…)
(ほらぁ、師匠も泣かないでくださいよぉ)
(あ…ああ…すまない…ごほん…頼んだぞっ!!)
(はいっ!!)

絶望の夜が結んだ師弟の絆、それは忘れられる事はないだろう永遠に。

『…ちゃん…まこっちゃん』

麻琴の頭の中に響く儚くもも優しい声。ゆっくりと視界が開ける。
63 :黄忠 :2004/08/11(水) 15:33
『…あさ美ちゃん?』
『…良かった…いきなり動かなくなるから心配したよ』
『…うん…ごめんね、あさ美ちゃん』
『…あの警官の人の事…とても悲しかったんだね…大切な人だったん
…だ』
『うんっ、師匠だからね!!』

沈んでいると思っていた親友の元気な声にあさ美は驚きを隠せないよう
だ。師匠の意味もわからないようで首をかしげている。無理も無い。麻
琴の中で行われていた会話など知るはずも無いだろう。その様子に気付
いた麻琴は事情を説明するべく口を開く。

『あのね…何ていえばいいのかな…夢?の中で警官のおじさんの思念体
…で良いんだよな…と会話したんだ…信じられないでしょ?』

麻琴は冗談交じりに言う。真面目な顔で返すあさ美

『ううん…信じないわけないよ…まこっちゃん』

その親友の真剣なまなざしを見て自分が恥ずかしく感じる麻琴。説明
を続ける。

『…何か、まこっちゃんらしい…普通は引き受けないと思う…私なら
…絶対無理だなぁ』
64 :黄忠 :2004/08/11(水) 16:02
『そうかなぁ?、でもさぁ、二丁拳銃扱えるなんてかっこよくない?』

目を子供のようにキラキラさせる麻琴の姿を見て黒い影の言っていた
特生変異人である自分の事を気にしていたのが馬鹿馬鹿しくなる。

(ほんと…まこっちゃんのあの笑顔に何度助けられたかわかんないな…
ありがとう、感謝してます)

『どうしたの?』
『…ううん、なんでもないっ』

笑顔で相槌を打つあさ美

『ところでさぁ、さっきの男の人はどうしたの?』
『うん…帰った。これおいて』

麻琴はあさ美の手に乗せられている紙切れを手にとってみる。

『地図?』
『うん、多分ここから街に帰るための道順だと思う』
『ふうん、でもこんな事言っちゃ悪いけどきたないね』
『…うん…読めなくはないけど』

二人は苦笑する。
65 :黄忠 :2004/08/11(水) 16:11
『まっ、いいやあさ美ちゃんかえろっ!!』
『うんっ!!』

悪夢のような時が過ぎ先程まで聞こえなかった虫達の声が辺り一面に
涼しい音色を奏でている。月明かりも相まって幻想的に…。
66 :黄忠 :2004/08/11(水) 16:30
プロローグ終了!!いや〜長かった。読んで下さった皆様本当にありが
とう御座いました。最後の方は駆け足になってしまいましたが、ははっ
ここらでちょいと…。


かけがえのない親友を守る為に内に眠る潜在能力を開放した紺野あさ美
自分以外の人間を救うため警官の男の思い、能力を受け継いだ小川真琴
強大な力を持つ背中に龍を住まわす謎の男…これらは選ばれし少年少女
と魔族の存亡をかけた戦いの幕開けでしかなかった。

次回予告

学校に忍び寄る魔物使い。小さい少女と幼き妖怪の出会い。黒い糸は家族
の絆をも引き裂くっ!!

唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!
67 :なつまり。 :2004/08/11(水) 19:36
お疲れ様です。読ませて頂きました。
警官のおじさん、良いキャラですね。
龍の男は少年なんですか?
ああいう喋り方って根が軽いおっさん、っていうイメージが出来てしまって・・。

男の人達に関して言わせてもらえば、そのままで良いと思いますよ。
私のにも出てますし。主役みたいなもので・・。
次回楽しみにしています。
68 :黄忠 :2004/08/12(木) 07:14
≫七誌さん

レスが遅れましたが、警官のおじさんの気持ちを受け止めていただいて
ありがとう御座います。やはり大人というのは少年少女が大きく成長する為の
キーパ−ソンだと考えております。これからも、登場すると思います。

≫なつまりさま

最後まで読破していただいてありがとう御座いました。
龍の男というのは少年ではありません。警官の目からみて少年だと
いうことなんです。わかりずらくてすいません。ネタバレになって
しまいますので詳しくは言えませんが、あさ美達よりは上です。そして
おじさんと呼ばれる年でもない。若くして色々な経験をしているので大人
びたって言い方が妥当ですね。


今回、誤字脱字が結構ありました。…反省。後はもっと読みやすい文章の立て方
をして行きたいと思っています。後の課題は、次から学校が舞台に入ってくるので
登場人物が一気に増える予定です。心理映写の使い方が難しそうです。
69 :黄忠 :2004/08/12(木) 14:52
20≫名無飼育さん

暖かいご声援ありがとうございました。返事が遅れて申し訳ありませんです。


70 :習志野権兵 :2004/08/12(木) 18:41
更新お疲れ様です。
いよいよ、次回から本編ですね。
仕事が忙しいと思いますが頑張ってください。
71 :七誌さん :2004/08/13(金) 00:07
作者様、更新オツです。
警官のおじさん・・・。やさしいね。やっぱ。
次の舞台、学校ではどんな登場人物が出てくるのか
楽しみです。
紺ちゃんと麻琴ちゃんは見ててほのぼのしてきますなぁ・・・。
本編の更新、がんばってください!
72 :黄忠 :2004/08/15(日) 01:00
応援ありがとう御座います。期待を裏切らないように頑張りますね。
出だしだけですが、更新させて頂きます。
73 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/15(日) 01:36
惨劇は舞台を選ばない。ここ美録高校にも、強い輝きを放つ魂を求め、招かざる客が敷居をまたぐ。

放課後…ここは食堂の一角にあるお菓子クラブ部室。
部員の安倍なつみと矢口真里は今しがた完成したばかりのケーキをそれぞれの器に盛り付ける。
はなうたを歌いながら…。それはとても楽しそうで幸せいっぱいという感じだ。

…盛り付けが終わった二人は、各々の席に着き手を合わす。

『いっただきまーすっ!!』

二人の声がハモリ、試食の開始を告げる。

『うわっ、マジ旨いよっこれっ!』
『ほんとだねっ、今までで一番上手くいったかもっ!』

女生徒二人はお互いの顔を見合わせながら歓喜の声をあげる。
ケーキを約半分食したところで真里が口を開いた。

『…ねえ、なっち』
『んっ、どうしたの矢口?』

ケーキを口に運ぶ動作をやめ、なつみは向かいの真里に視線をやる。
74 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/15(日) 01:49
『…そろそろあいつ等来る時間じゃない?』

なつみは部屋にある壁がけ時計に視線を移し時間を確認すると笑顔で真里に振り返る。

『ふふっ、そうだねっ』
『まり〜っ』
『なっち〜っ』

遠くの方から聞こえてくる聞き覚えのある可愛い二つの声色に真里の顔にも無意識のうちに笑みがこぼれる。

『噂をすれば…』
75 :七誌さん :2004/08/16(月) 00:50
あいつ等とは一体・・・??
誰でしょうね?
76 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/17(火) 23:14
二人の訪問者の姿を思い浮かべながら真里となつみは部屋の出入り口に視線を向ける。

ガラガラガラー

『こんにちはーっ』
『遊びにきたよーっ』

引き戸の開く音と共に元気な声が部屋中に響きわたる。真里の近所に住んでいる二年の辻希美と加護亜衣だ。
この二人はまるで双子のように仲が良く行動する時はいつでも一緒。

…テーブルの上に乗っかっているお菓子に目を奪われ子供のように瞳を輝かせる。とたんに騒がしくなる部室。

『うわぁ、ケーキだぁ』
『う〜ま〜そ〜うっ…じゅる』
『いらっしゃいっ、あいぼん、のの』
『おっ、きたな』

笑顔で向かい入れるなつみと真里。

『今日はケーキ作ったんだぁ』
『ねねっ、食べていい?』

期待で満ちた二人の視線がなつみに向けられる。
77 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/17(火) 23:33
『ふふっ、いいよ食べて』

(かわいいなぁ…もうっ)

『やったーっ!』
『わぁ〜いっ!』

飛び跳ねて喜ぶ二人。空いている椅子に腰掛ける…勿論、隣同士で。

『今、お皿にのせてあげるから、ちょっと待っててねっ』
『はーいっ!!』

なつみは二枚、皿を用意すると嬉しそうにケーキをのせていく。

…可愛い娘達におやつをあげる母親の心境。優しい気持ちで心が満たされるようだった。

『はいっ、あいぼん』カチャッ

『やったっ!』

『はいっ、のの』カチャッ

『わぁっ!』
78 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 01:29
なつみはケーキを二人の前に配り終えると暖かな笑みを浮かべ動向を見守る。

『いっただきま〜すっ』
『いったらきま〜すっ』
『ちょ〜っと、待ったぁっ!!』

なつみ、亜衣、希美の三人は声のした方を一斉に振り向く。真里だ。

『どうしたの、矢口?』
『なっちもだめだよ』
『えっ、なっち何かまずい事したかな…?』
『…辻ぃ、加護ぉ、お前等手ぇ洗ってないだろ?…洗ってきなさい』

真里は、今まさにケーキを目の前にし、幸せの絶頂にいる二人に向かって過ちを指摘する。

面倒見の良い姉御肌な真里の性格が表われた瞬間と言えよう。

『あっ、そういえば洗ってないね…』
『あいぼんっ、洗ってこようよ』
『うんっ、そうしよ』

流し台に向かう妹のような二人の後ろ姿を見送る真里の顔も、なつみと同じように優しさに満ちていた。
79 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 01:48
やがて手を洗うという用事を済ました二人は元いた席に戻ると待ちに待った至福の時に胸を躍らせる。

…始めの一口

『うんま〜いっ!』
と亜衣。

『うう〜ん…幸せ』
と希美だ。

二人ともかなりお気に召したのだろう、ケーキを口に運ぶ動作がどんどん早くなる。

『ふふっ、もう、そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ。誰も取ったりしないからさ』
『そうそう、なっちの言う通り。喉に詰まらせても知らないからな』

その光景は妹達を暖かく見守る二人のお姉ちゃん。という家族絵図を連想させる。

『ごちそう様でしたっ』
『あぁ、おいしかったっ』
80 :黄忠 :2004/08/19(木) 02:10
更新が遅くなり申し訳ないです。しかも少ない。
明日休みなので結構進ませる予定です。…ケーキ食べるシーン一つで、これまた長い。
戦いがなくて退屈だと思いますがご容赦ください。
81 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 11:39
カチャッ

亜衣と希美の二人は使用した皿とフォークをそれぞれ手に持つと流し台へ向かう。
自分の使った食器は自分で洗う。中々しっかりしているようだ。

…まあ、歳から考えれば当たり前のことなのだが、今の世の中にはそれを出来ない若者が多いのが現状。

洗い終わった食器を棚に戻すと、なつみ、真里の二人にお礼を言いそれから部活(バレー部)に向かう。
その後ろ姿を見送った真里は隣にいるなつみに振り向くとおもむろに口を開く。

『あいつ等もだんだんしっかりしてきたよね』
『うんっ、そうだね。なっちもそう思うよ』
『ははっ、でも、子供っぽいのは相変わらずだけど』

亜衣と希美の姿を頭に思い浮かべる真里。ケーキを食べる仕草、幸せいっぱいの愛らしい笑顔。出会ったばかりの頃の二人の姿と照らし合わせてみる。

(ははっ、ほんと変わらないよなぁ…あの二人)
82 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 11:59
『ふふっ、ほんと可愛いよねっ、あの二人』
『そうだね』

そう言うなつみに真里も頷く。

(かわいい…か…性格もそうだけど見た目も可愛いよなあいつ等…近いうちに彼氏が出来るんだろうなきっと…。

…辻も加護も人を疑う事をあまりしないから変な男に引っかからなけりゃいいけど…ちょっと心配だな)

『んっ、どうかした矢口?』
『ううん…ちょっと考えごと』
『ふうん、そうなんだ…でもさ悩み事とかあったらなっちに言ってねっ。誰か他の人に言うと楽になるって言うからさ』
『うんっ、ありがとうなっち』

チャラランッ

真里はテーブルの上においてある自分の携帯電話手にとり、メール受信を確認する。

『あれっ、辻からだ…なになに…え!?』
83 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 16:33
真里の顔からだんだん血の気が引いていくのがわかる。

『血がいっぱいって何だよ…』
『えっ…何それ』

血という言葉になつみも驚きを隠せないようだ。

『ちょっと矢口っ、なっちにも見せてっ』
『うん…はい』

送信の内容はこうだ。

―血がいっぱい、助けてっ―

いつもの辻からは考えられないような短い文章。

(…やばいっ)

真里は何故かとてつもない胸騒ぎを感じる。

『なっち…おいら行かなきゃっ』
『矢口…もう何言ってんのっ、もちろんなっちも行くよっ』
『うん、そうだね、ごめん…なっち行こうっ!』

チャラランッ
84 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 17:02
いつもであれば胸躍るであろうメール通知音だが、今では真里の心の中にある不安感をかき立たせるだけだ。
すぐさまそれを確認する。

『今度は加護からだ…』
『あいぼんから?』
『うん…校舎に入れないとか打ってある』
『えっ…何それ』
『おいらにもよくわからない…』

(おいっ…何があったんだよ。これじゃわからないじゃないかよっ…電話もできない状態なのか一体)

『いやっ、考えてる場合じゃない、行動しないとっ』

真里は独り言のようにそう言って首をふる。

『…場所だけでもわかればいいんだけど…あっそうだっ!矢口メールだよっ。こっちから送ってみたらどうかな?』
『そっか、その手があったかっ!なっちナイスッ!!』

ビッと親指を立てウィンクする。

(でも何でこんな簡単な事にすぐ気付かなかったんだろ…おいら焦ってるな)

ピッピッピッ...
85 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 18:27
慣れた手つきで亜衣のアドレスにメッセージを送る。
…画面に送信完了の文字。

『よしっ、とりあえずは送れた』

ほっと胸を撫で下ろす。

『後は、返信待ちだね』
『うんっ、でも、ここでじっとしててもしょうがないと思う。ねえなっち、体育館に行ってみようよ』
『そうだね、いいかもしれない…のの達部活に行ったんだもんね』
『そうゆうことっ』

チャラランッ


…場所は変わり女子陸上部部室。夏の陸上大会に備え、選抜メンバーと顧問の教師でミーティングを開いている。
その中にはあさ美の姿もあった。出場種目は主に長距離(1500m)で、努力の賜物かその実力は全国大会に出場できるほどだ。
そんなあさ美に対する顧問の教師や他の部員の期待は相当なものだろう。この美録高校女子陸上部には短距離も早い部員がいる。
一年の亀井絵里だ。一年から三年まで全ての部員の(50m走)のタイムを計ったランキングで実に五位につけている。
まだ高校に入ったばかりの小さい体でもの凄い快挙と言えるだろう。あさ美と同じく顧問の教師の期待の程がうかがわれる。
86 :習志野権兵 :2004/08/19(木) 21:01
お疲れ様様です。
更新のペ-スですが、全然、遅くないですよ。
それより『血がいっぱい』って、何があったんだ・・・。
87 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/19(木) 23:37
ミーティングが終わり顧問の教師が部室から出てゆく。今日は自主練の日だ。
荷物を持ち帰宅しようとする者、良い走り方やスタートダッシュを研究する者、部活とは関係ない話をしている者達。部室内では様々な思案が飛び交っている。
あさ美も、今日は帰宅するつもりでいた。それはそうだろう、昨日の夜あんな事があって、精神状態が安定してない今、無理やり練習したとしていい結果がえられない事は明らかだ。
鞄を手に持ち帰宅するべく立ち上がる。

(まこっちゃんは、どうしてるかな…)

同じ境遇の立場である親友のことを考えながら…。

タッタッタッ

足音が近づいてくる。自然とその方向へ視線が向かう。

『紺野せんぱ〜いっ』

舌ったらずな愛らしい喋り方そして声色。一年の絵里だった。

『あれっ、亀ちゃん、どうしたの?』
『紺野先輩帰るんですかぁ?』
『えっ、うん、そのつもりだけど…』
88 :七誌さん :2004/08/19(木) 23:42
おっ・・・あいつ等とはののとあいぼんだったんですね!
ってか自分反応遅っ・・・!!
初登場の二人に一体何が・・・?
次回更新を待ってますです。
89 :唸れっ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/20(金) 00:19
これから日常の光景が映し出されるであろう予定は一人の部員の一言から暗躍の道をたどる事となる。

『あれっ、鍵が掛かってる何で…うそ…動かない』

ガチャッ、ガチャガチャッ

部室の固定されているドアを押したり引いたりする音。異常を感じた他の部員達はその方向に視線を集中させる。

『ちょっと、何してんのよ』
『ド、ドアの鍵が動かないんだよ…くっ』

力み気味の声でドアの鍵を動かそうとする一人の部員。

『そんなばかな…』

呆れたように違う部員がドアの鍵に手をかける。

『…くっ…ほんとだ動かない』
『ねえ、ちょっと、窓も…ぐ、開かない…よ』
『ぐくっ…こっちも開かない』

いつの間にか窓のところに足を運んだ二人の部員が口を揃えて言う。

『うそっ…まさかこれって…』

あさ美の頬を冷たい汗が伝わり表情も険しいものとなる。

『…こわい…』

あさ美の腕にひっしと、つかまり小さな身体を振るわせる絵里。
90 :名無飼育さん :2004/08/20(金) 00:45
多分、作者さんは直で書き込んでますよね?
ワードパットなりメモ帳なりを使って書き溜めておいた方が更新も楽だし早いと思いましすよ。
大きなお世話だったらすみません。
91 :黄忠 :2004/08/20(金) 00:48
本当に毎回読んで頂きただ感謝です。
本編ということでかなり娘。も登場してきました。
ははっ、これから大変だなぁと自分で思いますけど…。
話は変わりますが、今回の敵はかなりやっかいな相手です…いろんな意味で、
前篇、後編に分ける事にします。一人一人の見せ場を作るための処置ですね。
92 :黄忠 :2004/08/20(金) 00:58
≫名無飼育さん

アドバイスありがとうございます。
…当たりです…ははっ、ちなみにその場で物語の続き考えてます。
自分の文列見て思ったんですよ。読みにくいなぁって…。
メモ帳などで書いた場合どう表示されるかわからないから正直怖いんですよね。
93 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! 〜前篇〜 :2004/08/21(土) 00:01
あさ美はそっと小さな肩を抱く。そうする事により若干だが絵里の体の震えが柔らぐ。近くに誰かがいるという安心感だろう。

『…あなたが紺野あさ美。なるほど、確かに素晴らしい力をお持ちのようですね。…まだ成長途上のようですが』

何処からか聞こえてくる美しくも冷ややかな女性の声。

紺野あさ美という何者かの名指しに、他の部員達の視線が自分に注がれている事を肌で感じ…俯く。

あさ美はすぐに察した。この声の主が人成らざるもの、そして人間以上の力を持つ特生変異人である自分の魂を奪いにきたのであろうことを。

(私の事で、他の皆を危険な目にあわせる訳には行かない…でも、この台詞を言ってしまったら、私が普通の人と違う事がばれてしまう…きっと皆、変な目で見るようになるだろうな…でもっ)

あさ美は決心したようにゆっくりと顔を上げ口を開く。瞳には涙が浮き出ていた…でも力強く!。

『用事があるのは私だけなんですよね、他の人達は関係ない筈です…部室から出してあげてもらえませんか?』

『あさ美っ』
『あんた、一体…』
『何言ってんのよ』
『あさ美先輩』

…もはや、あさ美の耳には周りの声など聞こえていなかった。ただ、何者かの声のした一点を見つめ質問の返答を待つ。
94 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!! :2004/08/21(土) 00:24
『申し訳ありませんが、貴方の期待に答える訳には参りません…』

『ぐっ…これ』
『なっ…』
『いや…うっ』
『い…意識が…』

バタバタと倒れていく他の部員達。

『な、何をしたの…?』

驚きの表情のまま固まるあさ美。今、倒れた部員達が起き上がる。
ぴょんっと何か糸のようなもので上から引っ張られたような不自然さで。それから、カクカクと奇怪な動きをする。

…それはまさにマリオネット(操り人形)のように…くるりとそれも一斉にあさ美の方へ振り返る。瞬きもしないで見つめている。まるで魂の抜け殻だ。恐ろしくて声が発せられない。

『…ひっ』
『いやあああああっっ!!』

あさ美のすぐ近くで耳をつんざくような叫び声が響く。視線を下げる。絵里だ。
95 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/22(日) 00:20
『亀…ちゃん?』
『これは…私の術が通じないなどとは…その人間ももしかしたら特生変異人なのかもしれません…しかもかなりの力を秘めた。
生かしておくと我々魔族の脅威になるかもしれませんね…可哀想ですが生かして帰す訳にはまいりません』

マリオネットと化した部員達があさ美達に向かって一斉に動き出す。カクカクと皆。同じ動きで迫り来る。

『こわい…こわい…来ないでっ、こっちに来るなぁっ…ぁ…』

絵里の視線がマリオネットの一体とあう。涙でぼやけて見えるが恐ろしさには何の影響もない。

『いやぁっ!!』

悲痛な叫びが終わりを告げるとあさ美の片腕が重くなる。絵里はあまりの恐ろしさに気絶したのだ。

あさ美はゆっくりと距離を詰めてくる元は部員達だった物の方を向いて考えていた。

(能力を使えば、操られている皆を退ける自身はある…だけど手を上げるなんて出来ない…傷つけることなんて出来る訳ないよ…)
96 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/22(日) 00:57
『どうすれば…』

あさ美の心の内など知らない…いや、わかろうともしない。心なきマリオネット。
その中の一体の腕が無慈悲にあさ美の首に伸ばされる。

ギュッ、ギュウウウウウッ

『…しまっ…く、苦し…』

尋常でない力で締め上げられる。あさ美も力を使い抵抗するが、相手を傷つけないようにセーブしている為、慣れてないのも相まって体力の消耗が激しい。

『…こ…のままじゃ…』

ドオォォンッ!!

何か大きな音とともに外界の光が射し込んでくる。もう夕方なのでそんなに強い光ではなかったが、開放感を感じるには十分であった。
音の原因であろうぽっかりと丸く開いた部室の出入り口であるドアの前には二丁拳銃を携えた女生徒、小川麻琴が立っていた。右手に持つ銃からは硝煙が立ち上っていた。

『まこ…ちゃ…ん』
97 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/23(月) 07:38
首を絞められる力で目のかすむ中。あさ美は親友の名前を力なく呟いた。

『あさ美ちゃんっ!!』

麻琴はあさ美の命が危ないのを即座に感じ取ると、その場所まで走りより、首を絞めているマリオネット(元は同じ人間)をためらう事無く突き飛ばす。…それだけあさ美が麻琴にとって大切な存在だと言う事だろう。

あさ美は苦しみから解放され、突き飛ばされたマリオネットは受身も取らず後頭部を強く強打する。

『がはぁ…げほっ…げほぉっ』

締め付けられる力によって絶たれていた気管が元の状態に戻り始める。

『あさ美ちゃんっ、大丈夫?』

先程とは違い目の前には自分を気遣う。感情をもった麻琴の顔。

『まこっちゃ…んどう…して…けほっ…がはっ…はぁはぁっ』
98 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/23(月) 08:23
『もうっ、一緒に帰るって約束してたでしょ?それで。…待ってたんだけど中々来ないからさ、丁度、陸上部の部室から顧問の先生が出てきたから聞いたんだよ。そしたら今日はミーティングだって言ってて、でも丁度終わった所だって、

じゃあ、もうすぐ来る頃だなぁって思って、また待つ事にしたんだけど、あさ美ちゃんだけでなく他の陸上部の人達も誰一人として部室から出てこないからさ…こうやって様子を見に来たってわけ…まさかこんな事になってるなんて思いもしなかったけどね』

『けほっ、ごめんね…まこっちゃん…昨日の事で何か頭の中がそればっかり考えちゃって…』
『ううん、いいって…私もそうだし。…それより喉、大丈夫?』
『…うん、大分落ち着いてきた。ありがとう』

…とは言うもののあさ美の表情からはかなりの疲労感が見て取れる。あさ美の瞳を一直線に見つめたまま真剣な眼差しで麻琴は言った。

『あさ美ちゃんっ、今なら私が穴を空けたドアから外に出られるから、早くその子も連れて逃げて』

麻琴は視線をおとし気を失っている絵里の姿を捉えると、出入り口の方を示して外に出るように促す。

(あっちゃあ…急な事だったとはいえやり過ぎたかも…)

ぽっかりと空いたドアを眺めながら、この状況でそんな事を考えている麻琴は、やはり大した人物かもしれない。
99 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/23(月) 14:10
『…えっ、まこっちゃんは?』

わかりきっていたあさ美の返答。麻琴はそれに間を空けず答える。

『…私はここに残るよ…あさ美ちゃんお願いっ、何も言わないで言う通りにして欲しいっ…私を親友だと思ってくれているんなら信じて欲しい。

…大丈夫っ、絶対死なないし、操られている他の陸上部の人達も無事に帰らせてみせるっ…それは邪滅聖魂を持つ私にしか出来ない事だからっ!!』
『わかった…まこっちゃんを信じるよ…絶対に死なない。…約束だよ?』

麻琴にあそこまで言われて止められる筈もなかった。あさ美は気を失っている絵里を背中におぶると外界の光に導かれるようにゆっくりと歩を進めた。

…この後、あさ美は自分のとった選択肢を後悔する事になる。だがもう、動きだした歯車を止める事は出来ない…。


…時を同じくして亜衣、希美の行方を捜すべく動きだした真里となつみ。亜衣にメールを送った直後に受信されたそのメッセ―ジを確認して真里は頭を抱えていた。内容はこうだ。

―テストが終わった再来週の日曜日。高橋さんが皆でカラオケに行く予定を立てたんだけど、やぐッちゃんその日空いてる?…あとごめん、なっちにも聞いといてもらえるかな―

『ったく、早川の奴。今こっちはそれどころじゃないってのっ!』
100 :黄忠 :2004/08/23(月) 14:29
唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 のラストと〜後編〜に向けてシナリオを練っているところです。なので、次回更新はちょっと先になるかもしれません。
前回よりもかなり…文章が読みやすくなったと自己満足している黄忠な訳ですが…。何か読んで頂いて思った事とかあったら書き込んどいてもらえるととありがたいです。勉強になりますんで…。
101 :七誌さん :2004/08/23(月) 19:23
まこっちゃ〜ん・・・・・ガンバレ!
生きてほしいです・・・。
102 :習志野権兵 :2004/08/24(火) 05:20
お疲れ様です。
それにしても、紺野の後悔って・・・。
辻加護の様子も気になる。
103 :名無飼育さん :2004/08/25(水) 04:16
おっ?なかなか面白そうなの発見。
遅ればせながら男性キャラは恋愛に発展しなければ良いんでは?
それから加護さんの名前は亜依ですよ。
104 :黄忠 :2004/08/26(木) 14:09
いつも小説を携帯に打ち込んでいるのですが、恐ろしい事に昨日フリーズしました。

…何とか復活したのですが、データが消えていたらと思うとぞっとします。これからは、皆さんと同じようにメモ張か何かに写しておこうと思います。
何分始めての試みなので、また文字列が読みにくくなるやもしれませんご迷惑をおかけします。

≫七誌さん

いつも読んでいただき本当にありがとうございます。まこっちゃんの話の続きは〜後編〜になります。
少し先になりますが、この物語を次のステップに進ませる大事な役割を担っていただく事になります。これ以上は言えませんが…。

≫習志野権兵さま

本当に毎回目を通していただきありがとうございます。お待たせしました。近いうちに辻、加護が登場します。
ちなみに、後ほど外伝みたいな形で辻、加護の視点をやる予定です…今やるとネタバレになってしまうんで。それと次の回のメインは辻、加護です。

≫名無し飼育さん

ご指摘ありがとうございます。恋愛に関してですが、大丈夫、それは無いです。私が描きたいのはそこではないですからね。
105 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/27(金) 22:58
苛立ちよりも呆れの方が先にきて、真里は自分の体から力が抜けるのを感じる。

『…早川君?…あいぼんじゃなかったんだ…』
『うん…そう…はいこれ』

真里は気だるそうに自分の携帯電話を手渡す。それを受け取るなつみ。そしてメッセージを確認する。

…目を通し終わったように見受けられるが、何故か画面を見たまま黙りこんでいる。しばらくしてなつみが閉じていた口を開いた。

『ねえ、矢口。早川君にもあいぼんとのの探すの手伝ってもらったらどうかな?』
『えっ?』

早川のメールに関しての返答を予想していた真里は、その予想外の答えに戸惑いを覚えなつみの顔を見る。

『…やっぱり男の人もいた方が良いと思う。それに二人を探す人数が多いにこした事はないでしょ?』
『そりゃ、そうだけどさ…何も早川じゃなくてもいいんじゃない?』

…だってあいつ、調子ばっかり良くってさ、いつもえっちな話ばっかりしてるじゃんっ。役に立たないってっ!…それに変な要求とかされそうだし』
『…それはないと思うよ…ねぇ矢口、覚えてない?』
『へっ…何を?』
106 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/27(金) 23:43
『矢口がさ…腹痛になった時の事』
『おいらが…腹痛?』

人間が何かを思い出す時によく使う動作をし、真里は頭の中で答えを探す。

『あっ…確かあいつが保健室に付き添ってくれたんだっけ…その時はおいら、お腹がすっごく痛くて何で早川が…とか考える暇なんてなかったけど…優しかった』
『そう…なっちが矢口に付き添ってあげようと自分の席を立った時…

―やぐっちゃんは俺が保健室に連れて行くから、なっちは座ってなよ…女の力じゃ、おぶるの大変だろ?―

席を立ってそう言ったんだよ?…なっちすっごく感動したさ。

…もちろん、クラスの皆からひやかしとかあったよ…でもね早川君、真面目な表情だった。
ちょっと変な言い方かもしれないけど…矢口、気を悪くしたらごめんね。早川君ね女子…矢口だから付き添ったんじゃないと思うよ。
これはなっちの感じた事なんだけど、きっと、それが男子でも同じ事をしたんじゃないかな…本当は早川君すっごく優しい人なんだよ』
『うん…そうかもしれない』

真里はただ頷く事しかできなかった。
107 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/28(土) 00:38
(…てっきり早川が自分の事好きだからだと思ってた。それが当たり前だと思ってた…今まで何人もの男に告白されてきたから…いつの間にかおいら自意識過剰なってたんだな…もしかしたら心の中で見下していたかもしれない…正直うざいと思っていたから

…そういえばいつも、格好いいとかかっこ悪いとか、男を見かけだけで判断してた…本当に大切なのは中身なのにさ…でも、おいら馬鹿だから…同じ過ちをこれからも繰り返すんだろうな…)

『矢口?』
『あっ、うん、ごめん何?』

名前を呼ばれ、真里は思考回路を今の状況に戻しなつみに視線を向ける。

『せっかくだから話しておこうと思って…』
『んっ?』
『…さっきひやかされてたって話はしたよね?』
『うん、聞いた』
108 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/30(月) 01:07
『その時の事なんだけど、高橋君が怒ったんだよ…それもね、机を思いっきり叩いて』
『えっ、高橋が?』
『うん、そうだよ…なっちもびっくりしたんだけど…高橋君、いつも明るくて冗談や面白い事ばっかり言ってるでしょ?

…でも、その時はすっごく怖かった。不良みたいな口調で、声も低くて…

―ったくよぉっ!、お前等さぁ、んなくだらねえ事ばっかり言ってんじゃねぇよっ!、男子がさぁ、体調の悪い女子を保健室に連れて行くのに好きだとかっ、惚れてるからとかそう言う感情がなくちゃいけねぇのかよっ!、えぇっ?馬鹿じゃねえのかっ!!考え方がおかしくねえかそれって、仲間が苦しんでるってのに、よくそんな事がいえんなぁっ!!あぁっ!?

…わりぃ早川君…気にしないで行って来いよ―

―高橋さんありがとう御座います。でも俺、全然気にしてないっすからっ―

『そうなんだ…高橋が…全然知らなかった』
『…なっちね、今ここに早川君や高橋君がいてくれたらなってほんと思うよ』
『なっち…早川…高橋のどっちかの事…』
『えっ?』
109 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/30(月) 01:48
なつみは驚きの表情となる。真里は(…好きなの?)って言いそうになったがやめた。
先ほどのなつみの話ではないが、協力を要請するのにそんな感情は必要ないと自分も考えを改めたからだ。

『…じゃあ、早速早川にメール送ってみんね』
『うん』

真里はまず、早川の質問に対しての答えを打ち込む。

『あっ、そうだ。おいらは行くけど、なっちはどうするカラオケ?』
『テストが終わった再来週の日曜日だよね…特に予定はないし、うんっ、なっちも大丈夫だよ』
『オッケーッ…なっちも大丈夫っと…』

(おいらも早川の事言えないな…こうして呑気にメールなんか打ってるんだから…辻や加護の事も大げさに考えすぎなのかもしれない…)

真里の心の中に物事を良い方向に持っていくという人間の悪い習性が芽生え始める。

そんな中、指先だけは本題を手短にわかり易く記載し、早川に送り返していた。

…少し間をおき、新着メールが届く、早川だ…。それを確認した真里の顔は驚きと喜びに満ちていたが、その後、何故か複雑な表情でなつみに内容を伝える。
110 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/30(月) 22:36
『早川の奴、何か教室にいるみたい…高橋も史(ふひと)も一緒だって』
『えっ、ほんとに?良かったぁっ…あれ、矢口は嬉しくないの?』

なつみは自分とは違い。何故か元気のない矢口に向かって質問を投げかける。

『ううん…そんな事ない…あと早川が、ただやみくもに動き回ってもしょうがないから、先ずは職員室に残っている先生達に報告した方が良いだろうってさ。

…そうすれば協力してくれるだろうし、他の生徒に呼びかけたりするような何らかの処置をとってくれると思うよ…だって』

真里の表情の浮かない理由…それは送り返されてきたその文面にあった。

真里は、早川の一度もあった事のないであろう辻、加護を心底心配する気持ち…そしてこのような状態にありながらも混乱すること無く状況を的確に分析するその判断力に言葉を失ったのだ。

(…なっちのいう通りだ…おいらなんかよりずっと優しくて思いやりがある…おいらよくお姉さんぶってるけど、今回みたいな大変な時に何もできないんじゃしょうがないよな…早川、あんた凄いよ)

『確かに早川君のいう通りだね。矢口、職員室に行こうよ』
『そうだね…うん、丁度、合流場所も職員室の前になってる。早川達もすぐ向かうってさ』
111 :七誌さん :2004/08/30(月) 23:53
ふむ。。。なる。。。(謎
わからんなぁ(何
とりゃーず続きまってますですよ。
112 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/30(月) 23:56
職員室は、今二人がいる食堂とは違う建物にある…とは言っても食堂から出るとすぐ近くにある新校舎と旧校舎を繋ぐ三十メートル程の通路を行けばわけはない。

目的地に向かって歩を進める真里達。校舎が新しい影響か足音がこだまする。

『ねぇ、なっち、おいら達よりあの三人の方が先に職員室に着くんじゃない?』
『うん、そうかもしれないね、教室があるの職員室と同じ旧校舎の方だもんね』

時刻は、今しがた夕方の四時半を回ったばかりだ。しかし辺りからは誰一人の声もしない。(おかしいな…)二人は心の内でそんな疑問を抱いたが特に気に止めず、待ち合わせ場所に急いだ。


…待ち合わせ場所である職員室に着く。知った顔を見つけるべく二人は辺りを見回し、今度はお互い相手に振り返る。

『早川達まだ来てないみたいだね…っていうか廊下に誰もいない』
『うん…何か学校全体が静まりかえってるって感じだね…矢口、とりあえずはなっち達で先に職員室に残ってる先生方にのの達の事を話しておこうよ』
『うん、その方がいいね』

二人はスライド式の出入り口の前に立ち、なつみが代表でノックする。

コンッコンッコンッ…

だが、中から声もしなければ物音一つたたない。今度は真里が少し強めにノックしてみる…やはり返事は返ってこない。
113 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/31(火) 00:27
『すいませ〜んっ三年A組の矢口ですけど〜誰か先生おられますか〜』

…職員室は沈黙を保ったままだ。

『あれっ、鍵開いてる…やっぱり誰か先生いるのかな、入りますよ〜』

真里は中に入るべく出入り口に手をかける。

『ちょっ、矢口、許可なく入るのはまずいよ…テスト前なんだしっ』

名前を呼ばれ振り返る真里。

『そりゃ、そうだけどさ…しょうがないじゃんっ、今は一刻を争うんだから…先生達も許してくれるって』

ガラガラガラー

出入り口がスライドされる音

『失礼しま〜すっ』
114 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/31(火) 00:50
元気良く職員室に足を踏み入れる真里。

『失礼します…』

その後になつみも罪悪感からかおずおずと続く。そして二人はまた辺りを見回す。


…声が出なかった。感情というものは後から一気に込み上げてくる。一呼吸おいて職員室全体に響き渡る程のなつみの悲鳴。

『きゃああああああっ』

そして後ろにしりもちをつく。

『…何だよ…これ』

ぽつりと呟く真里…確かに職員室に人はいた。人数は十人くらいだろう…いや正確にはいたとは言わないかもしれない。

…それらは天井から何か見えない糸のような物で吊るされ、風の無い室内でぶらぶらと…まるで夏の風鈴のように揺れていた。

生気の無い瞳、だらんとした身体、その姿は操られる前の人形のよう。そして今にも動き出しそうな錯覚を二人に思わせ、やがてそれは恐怖心となる。
115 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/31(火) 01:10
≫七誌さん

この脱線しかけている小説を読み続けていただいてありがとう御座います。
今回は学校が舞台ということで矢口達のクラスメイトに、今、あんまりいないような性格付けをした男子生徒を登場させたんですが、いらん所をだらだらと書いてしまって申し訳ないです。
116 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/08/31(火) 23:45
『だっ、大丈夫?な、なっち。は、はい…』

真里は吊るされている(それ)を視界に入れないよう、なつみに恐怖で震える小さい手を差し伸べる。

(一体、何がどうなってんだよ…もうっ、おいらこうゆうの駄目なのにぃ…ほんとにさぁ、まじで夢だったらさめてよぉ)

差し伸べた手になつみの体温、人肌の温もりが伝わり、真里はいくらか落ち着きを取り戻す。

『ありがとう矢口…』

親友である真里の手に引かれゆっくりと立ち上がるなつみ。

『な、なっち、と、とりあえずここからで、出よう』
『うん…』

今、踏み入れたばかりの職員室を二人は後にすべく背中を向ける。

ドンッ

小さな身体に何かぶつかったような衝撃。真里の心臓が飛び上がる。
117 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/01(水) 00:46
『きゃっ、きゃああああああっっ!!!』

そして、耳をつんざくような真里の悲鳴。我慢していたものが一気に放出されたのだろう、それは先ほどのなつみとは比べ物にならない大音量だった。

『のわあぁぁぁぁっ!!、うるせえぇぇえっ!!』
『…へっ?』

聞き覚えのある声に真里の叫びは終わりを迎える。しかし、目には大きな涙をためていた。

『…高橋?』

真里の身長は145センチ、高橋と呼ばれた男子生徒は170センチ。大人と子供ぐらいの差があり、真里は見上げる態勢となる。

『ったく、死ぬかと思ったぜ…』

高橋は両耳を塞いでいた手でを話すとそう言った。

『やぐっちゃん、なっち遅れてごめんっ』
『…早川っ』
『早川くんっ』

早川のすぐ隣にいる。そして、一言も言葉を発しない太った(体重三桁)男子生徒の史(ふひと)。

真里、なつみの待ち人達が目の前にその姿を現した。たった三人、されど三人、性別は違うし、思いも人それぞれ…恋人、家族でもない…ただの友達。

…でも辻希美、加護亜依という名の少女達を救いたいと思う気持ちでここに来たのだ。
118 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/01(水) 23:18
『遅かったじゃないかよっ』

真里は目に溜まっている涙を何気ない動作で拭いとると、それを誤魔化すように高橋につっかかる。

『ははっ、わりぃ、わりぃ…実はさ…』
『何?』
『…矢口が小さくて見えなかったんだよ、いやぁ、探した探した』
『なっ?うっ、うるさいやいっ、ちっちゃいって言うな』

顔を真っ赤にして、ぷりぷりと怒る矢口は低い身長も相まってほんとの子供のようだ。高橋がからかいたくなるのも頷ける。

…が、今回は場を和ませるための配慮だった。

『…まぁ。冗談はさておき、本題に入ろうか…何か、辻と加護が行方不明らしいじゃねえか』

高橋の表情が先ほどとはうって変わって真面目な目つきで真里となつみを交互に見る。

『うん、そうなんだ…血がいっぱいとか、校舎に入れないとか、メールが二人からきて…居場所だけでも分かればと思ってメールを送ったんだけどまだ、返事こないんだよ…』
『先生達にはもう、話した?』

早川が口を挟む。
119 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/01(水) 23:48
『…それがさ…見てもらった方が早いと思うんだけど…』

今度は真里の隣にいるなつみが答える。その声は震えていた。

『高橋さん…』
『…ああっ』

高橋と早川はなつみの姿から何かを察したのだろう、頷きあっている。

もう一人の男子生徒史は、高橋や早川とは違い自分は無関係であるかのように下を向きながら太い指でメールを打っていた。

無言で史を睨みつける高橋。その態度に苛立ちを覚えたのだろう、携帯電話を握っている右手を強くはたいた。

カシャンッ、カッ、カッ

通路に打ちつけられ、数メートルほど転がる銀色の携帯電話。

『何すんだ、お前っ!!』

太い腕を思いっきり振り上げる史。

バッシィーンッ

重量感のある音が通路に響き渡る。まさか反撃されるとは思いもしない高橋はまともにそれを顔にもらう。

『ってえなぁっっ、このデブっ!!』

ブンッ
120 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 02:40
そして反射的に右の足が上がる…まさに突発的にといった感じだ。しかし高橋は何か思う事があったのだろう、自発的に力をセーブしたのか、史の脇腹に到達する前に勢いはなきに等しかった。

バシッ

乾いた音がなる。高橋は小さな声でただ一言。

『…わるかったな…』

高橋という男子生徒は曲がった事が大嫌いで友情に熱い熱血漢だった。困っている者を放っておくことなど出来ないのだ。
しかし、自分の考えを人に押し付ける傾向があり、そんな自分の意向とそぐわない相手にすぐ切れる。短気な性格である。

今回の史の態度に怒りを覚えたのはそのためだ。そして、その短所が表に出でてしまい、自分の感情での行動を抑えたというとこだろう。自分の非を認め謝ったのだ。

『…いいよ…俺もお前のこと殴っちまったし…俺こそ悪かったよ』

高橋の怒りを買った理由は、自分の態度にあった事に気付いた史は頭を下げる。確かに人の生死がかかっている時にする行動では無いだろう。

高橋と違い、史という男子生徒は、何に対してもいい加減で、自己中心的、自分に何かメリットのような物がないと行動を起こさないような性格。
そして自分に自信がなく被害妄想がある…それは惚れっぽく、これまでに何人もの女性にふられ、他の人間達に体格のことを馬鹿にされたりしたからに他ならない。

…史のせいではない。そこまで追い込んだ周りの者達のせいなのだ。
121 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 03:21
史は、一言そう謝ると通路の端に落ちている携帯電話を拾い上げ、そして無言でズボンのポケットへ押し込む。

『史、携帯大丈夫だったか…?』

高橋が心配そうに言う。

『…さぁ…見てねぇから…』

史が答える。

『…そうか…』

気まずい空気が流れる。誰一人として口を開かない…そんな沈黙を早川が破った。

『高橋さんらしくないじゃないですか…今は、辻と加護を探すのが先でしょ?』
『…あ…ああっ、そうだね、わりぃ早川君』
『ほらっ、なっちもやぐっちゃんもっ』
『うん』
『…まったくその通りだね』

ここまで笑顔を作ってきた早川だが史の方に振り返ると眉間にしわをよせる

『…それから史』

自分に対してだけ苛立ちをこめた早川の喋り方に内心、むっとする史。

『何だよ?』
『…お前、協力する気がないんならこなくて良いよ。早く帰んな』
122 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 15:19
あっさり…それはあまりにもあっさりだった。早川からのいきなりの戦力外通告に史は目頭が熱くなるのを感じる…自分がいなくても良いという悔しさや、切なさは被害妄想の強い心に大きなダメージを与えたのだ。そしてそれは、相手に対する怒りに変わる。

『ああ、そうかよっ、!!』

そう、早川を睨みつけて踵を返す史。わざわざ大きな足音をたてながら、そして、反撃をしてこない弱いもの壁を蹴りその場を後にした。それを残った四人は静かに見つめていることしか出来なかった。高橋が静かに口を開く。

『…早川君…』

その声に振り返る早川。そして、なつみ、真里。早川が高橋の言いたい事を察したように言う。

『高橋さん甘いんだから、俺よりも良く、あいつが他力本願だって事を知ってると思いますけどねっ、連れて行っても足手まといになるだけですよ。…史の場違いな態度に頭にきたんですよね?俺にはそんな高橋さんの一直線な気持ちが良くわかります。だから、代わりに言ったまでです。

…ねえ、高橋さん?、相手を思いやる心が取り返しのつかない事になる場合だってあるんですよ、一人のやる気のない人間が周りを危険にさらす…俺はあんな奴の為に自分を犠牲にしたくない』
『…そうだな…俺は、史にも協力して欲しかった友達だから。…だけど、それは俺の理想のレールに乗って欲しかっただけなのかもしれないな…』

そんな高橋の気持ちからでる言葉を頭の中に詰め込むと早川は言う

『…高橋さん、俺が何で高橋さんだけ(さん)付けで呼ぶか知ってます?…生まれも半年しか違わない同い年なのに、それは高橋さんを尊敬しているからですよ…俺のない部分をいっぱい持ってるから、性格も好きですよ?

…かっ、勘違いしないでくださいよ、恋愛って事じゃないですから俺はノーマルなんでっ』
123 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 15:52
ちょっとだけ赤みを帯びる早川の顔。それに高橋は笑いながら答える。

『ははっ、そんな事言わなくてもわかるよ…でも、ありがとうね』

そして高橋は再び真剣な面持ちとなる。

『…話を元に戻そう、安倍さんの態度でわかったんだけど、職員室の先生方って何か見えない物で上から吊るされてたんじゃないのか?』

なつみと真里の顔全体が驚きと困惑の表情に切り替わる。

『えっ、何で知ってんの?』
『なっち、ちょっとびっくりした』
『やっぱりな…実はさ、ここに来る前にこの時間に見合わない静けさが気になって他の教室とかに探りを入れたんだよ。…それで、そんな光景を何度も目にしてたからさ』
『史の奴は信じないで、見もしなかったですけどね』

早川が嫌味ったらしく口を挟む。

『…早川君…もう、いいよ史の事は…』
『…そうですね…高橋さんすいません』

早川は自分の過ちを素直に認めたのかすぐに頭を下げた。そして高橋は話を続ける。
124 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 16:26
『…話を元に戻すけど、辻、加護の二人からメールの返事が来ないっていってたよな?』
『うん、言ったけど』

矢口が頷く。

『でも、早川君からの返事は届いたんだよな?』
『うん、そうだね』

そしてなつみが相槌を打つ。真里、なつみとも真剣な面持ちだ。

『俺達は教室、安倍さん達は食堂にいた。俺、考えたんだよ、辻加護達は外にいるんじゃないかってねっ、…確か二人はバレー部に向かったって言ってたからさ

…あくまでも推測の域はでてなかったんだけど、俺と早川くんでグランドに出て、メールが届くか試してみたんだよ、そうしたら届いて…この意味わかるよな?』

なつみと真里はそれぞれの姿勢で考えている。少し間をおき、なつみが手をぽんっとたたき答えを述べる。

『あっ、そうかっ、そういう事かぁ…矢口、携帯だよ』

なつみは真里に振り向く。

『…携帯?』
『うん、そう、校舎の外に出ればのの達からのメールが届くかもしれないって事っ』
『…当たりだ』

高橋は誰かの物真似をするような声色で格好良くきめた。真里のもの難しそうな表情がぱあっと明るくなる。
125 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 19:25
ここにきて、やっと見えてきた一筋の光明に真里はいても立ってもいられなくなる。なつみも同じ気持ちだろう。

『なっちっ!!』
『うんっ、早く外にでてみようよ』

感情を抑えきれなくなった二人は可愛い後輩たちの無事を心の中で祈り続けながら、踵を返すと校舎とグラウンドを繋ぐ下駄箱の方へと走り出した。

…しかし、運動の得意な真里と苦手ななつみの距離はだんだん開いていく。職員室から距離にすると約、百メートル。真里が下駄箱のある左側に曲がる頃にはもう、三十メートル程の差が開いていた。

(はぁっ、はぁ、矢口、はっやいなぁ、それにしても、頑張って走っているのに、私、なんでこんなに遅いんだろう。フォーム…フォームがいけないの?)

やっとの事で下駄箱に着いたなつみ。乱れた呼吸をゆっくりと整えながら靴に履き替え外に出る。そして、小さい親友の姿を探す…いや、探すまでもなかった。すぐ眼前に真里の姿…携帯電話を握っている。

『あっ、なっち、これ見てっ!!』

なつみに気付いた真里が走りより自分の携帯電話を手渡す。

『…あっ、返信が届いたんだね、よかったぁ』

なつみの安心した表情と対照的な面持ちの真里は言う。
126 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 19:55
『…読んでみて…』

新着メールの件数は、二十件、なつみは今必要な希美、亜依からのメッセージを選んで開く。

―血がいっぱい、助けて―
―校舎に、入れないよ―
―怖いよう、早く―
―みんな死んじゃう―
―バレー部のみんなが風に…早く―
―よっすぃが…死んじゃうよっ―
―もう、やだぁ、お家帰りたいよー―
―なんで来てくれないの…生意気でごめんなさい。助けて―

なつみの目から涙があふれ出る。

『な…っち…ううっ、一番…新しい…更新をみ…て』

隣から覗き込むようにして、自分の携帯に目を通す真里の目にも声が震えてしまう程の涙。

(…のの、あいぼん、ごめん、ごめんね…なっち、側にいてあげられなくて…)

あふれ出る涙を何度も拭い去りながらなつみは最新の更新を開く
127 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 21:59
…辻からだった。

―今、裏庭にいる。出られない助けて、痛い、痛い身体中から赤いもの…―

慌てて、自分の携帯電話を取り出し、時間を確認するなつみ、矢口の携帯電話でも確認できたはずなのだが、それよりも早いと踏んだのだろう…いや、それよりも突発的といった方がこの場合正しい。

…携帯電話の時刻は、五時四十分、真里に送られてきたメールは五時二十分…即ち時間にして、二十分ほど前に送られてきたことになる。

『矢口っ』
『そうだよっ、あいつ等まだ無事なんだ、裏庭に急ごうっ』

なつみ、真里の目にあった涙は、もう綺麗さっぱり無くなっていた。

(あいぼん、のの、待っててっ、なっち達が今いくよっ)

そんな時、高橋と早川が、来ない事に気付く。なつみは、目でそれを矢口に訴える。首を横に振る矢口、ただ一言。

『なっち、行こうっ』
『…うん、そうだね』

なつみは頷く…矢口の気持ちを察したのだ。優先順位を考えると今、危機に陥っている辻、加護達の方が先なのは目に見えている。助けを求めているのだ。

裏庭に向かい早足で歩を進める二人。(助けたいっ)という感情が大きく、それはやがて走るという動作になる。一直線に前を見つめ、先を急ぐ二人の女生徒。やがて。目の前に目的地の裏庭が見えてくる。
128 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 22:44
裏庭に足を踏み入れる。

ビュウウウウウウンッ

『きゃああぁぁぁぁっ!!』

急になつみと真里を襲う強い風、二人は目に埃や砂が入らないように目を閉じる。

…やがてそれは収まり二人は目をゆっくりと開ける。

二人の丁度、視界に入ってきたのはずっと逢いたかった後輩達。辻希美、加護亜依の姿。

愛しい者達が無事でいたことを大喜びする二人、すぐに駆け寄る。さっきは距離があってよくわからなかったのであろう、辻、加護の変わり果てた姿に絶句する。

学生服は所々、何か刃物のような物で切られ、それらから血が滲み出ていたからだ、さらに、可愛かった二人の顔もまた、切り傷から出る血液で赤く染まっていたのだから、女性の命ともいえるものそれを奪われてしまったのだ。

…再び溢れ出してくる涙、真里は希美の手を、なつみは亜依の手をわしっと掴んだ。包み込むように肩を抱いた。そして、優しく声をかける。

『あいぼん、のの、なっちだよ』
『おいらもいるよ…ごめんな、遅くなって』

肩で息をしている希美と亜依、先に希美の方が力なく口を開いた。

『なっ…ち、ま…り…身体中…痛いよ…はぁ、はぁ、…のの…死んじゃう…のかな』
『ばかっ…死ぬわけ…ないだろ、変な事いうなよ』
129 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/02(木) 23:14
真里の目から出る涙が勢いを増す。

『なっち…の手って…あった…かいね…ケーキ…おいしかった』

二人の体から、流れでる血であたりは湿っていた。生きているのが奇跡だった。

『はぁ、はぁっ、安倍…さん…矢…口さん、生意気…でごめん…なさい』
『…ごめんな…さい…はぁはぁっ』

希美と亜依から出た言葉の意味を、すぐに理解する真里となつみの二人。

『のの…の事…嫌いに…ならないで…くらさ…い』
『…やぐ…ち…さん…安倍さ…やさ…しくて大…好きで…した』
『…嫌いに…なんか…なる…かよっ』

辻を強く抱きしめる真里。

『あいぼんっ、ののっ…なっち…ううっ、…だって大好きだよ…』

なつみの最後の言葉は涙によって聞きとりにくいものとなっていた。
130 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/03(金) 00:09
『ああっ、ちょうど良かったよ、もう、その玩具に飽きてきたところだったんだ』

後ろの方から子供の声。あまりの出血で気を失った二人を背に真里は振り返る。なつみは首から上だけを相手に向けた。

二人の視線の先にはつむじ風の大きいのが二つ、小さいのが一つ、竜巻のように旋風を巻き起こしており、その丁度真上に子供が浮かんでいた。

余りにも現実離れしたその光景に真里もなつみも言葉を失う。

『…新しいお姉ちゃん達っ、可愛いなぁ、僕と遊んでくれるの?』
『遊ばねぇよっ!!』

真里達とは違う方向から現れた人影…高橋と早川だった。その姿を見た子供は不機嫌そうな顔になり小さな口を開く。

『僕は人間の男が大嫌いなんだ…死んじゃえっ』

何か危険を感じ取った高橋はすぐ隣にいる早川を思い切り突き飛ばす。

『ぐわああああああっ!!』

真空の刃(かまいたち)が高橋を襲う体中から血が噴出し、さらに十メートルほど吹き飛ばされる。うつ伏せに倒れた肉体から赤いものが止めどなく流れ出る…そして起き上がる事はなかった。

『高橋さあぁぁんっ!!』

早川は絶叫する。そんな様子をつまらなそうに眺めていた子供はまた、口を開く。

『やっぱり…人間の男の声はよくないね…耳障りだよ…やっぱりお姉ちゃんの方がいいやっ』
131 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜前篇〜 :2004/09/03(金) 00:53
口元を緩め真里達の方を振り返る。

『ねぇ、お姉ちゃん達、僕ねこれから、そこの、飽きた玩具を壊そうと思うんだけど巻き込まれないように気をつけてね…ほら、お姉ちゃん達には僕と遊んで貰わなくちゃいけないから』
『…大事な後輩を放り出して逃げ出すなんて事絶対…おいらはしない。救う事が出来ないならあの世までついてってやる』
『なっちもそうだよ…矢口やあいぼん、のの…だけに寂しい思いはさせないよ』
『それにな…おいっ、クソガキっ!!、お前なんかと遊んでやる気もないんだよっ!!』

真里のそんな言葉に怒りを露にする子供

『お前らなんか死んじゃえっ!!!』

子供の下で回っていたつむじ風の勢いが強くなり巨大化していく。校舎の二階ぐらいの大きさになる。

ブオォォォォォォォオオン

それはゆっくりと女生徒四人を死の淵へ誘うべく迫り来る。高橋を死に追いやった真空の刃が辺りを傷つけていく。

『…ぐっ』

真里は死を覚悟する。

『あいぼん、のの…ごめんね』

そしてなつみも気絶している二人を抱きしめこの世との別れをまつ。

ビュンッ

そんな絶望の中、もの凄い速さで、何か小さくて白いものが真里の前に降り立った。
132 :黄忠 :2004/09/03(金) 01:24
とり合えず、これで〜前編〜は終了です。

途中、架空の男子生徒の性格などの説明等により、長々と文面を書いてしまった事をここに深くお詫び申しあげます。

感想なんぞありましたら、書き込んでください。期待外れとか、文章が読みにくいとか、そんな事でも結構ですので…出来ればその理由を教えていただけるとあり難いです。

話は変わりますが〜後編〜は戦いがメインになると思います。小川麻琴・紺野あさ美・矢口真里・安倍なつみ・を引き続き話の中心で使う予定です。
133 :習志野権兵 :2004/09/03(金) 06:26
更新、お疲れ様です。
男キャラの扱いって、難しいっすよね。
架空のキャラは、イメージがしづらいけど、
実際にいる人物を書くと反感をかうかもしれない。

一つだけ、こうして欲しいってことがあったけど、
もしかしたら後々関わって来るかもしれないので、今は止めておきます。
134 :七誌さん :2004/09/03(金) 22:06
ののとあいぼん・・・
白くて小さいものってなんなんですかね?
楽しみにしてます。
135 :なつまり。 :2004/09/04(土) 12:35
お疲れ様です。
男キャラの説明が長くなったのは仕方ないと思いますよ。
そういうオリジナルキャラって説明が無いより、あった方がイメージしやすいと思いますから。

関係無いのですが、125のなっち。
あのフォームはかわいいなぁと思いますね。・・・変ですかね?
長文すいません、次回更新待っています。
136 :黄忠 :2004/09/05(日) 07:07
皆さんレス、本当にどうもありがとうございます。

≫習志野権兵さま

一つだけこうして欲しい事とは何なんでしょう?〜後編〜が終わったらにでも教えて下さいね。

≫七誌さん

近い内に〜後編〜を始める予定です…白くて小さいもの、七誌さんもきっとご存知の筈ですよ?

≫なつまり。様

安倍さんのフォーム…確かに可愛いですよね。一生懸命さが凄く伝わってきます。

…やっぱり、最後の方は急いでしまい、文章の厚みが無くなってしまいました…反省

〜後編〜は最後まで気を抜かずに頑張りたいと思います。
137 :習志野権兵 :2004/09/05(日) 19:54
大したことではないんですけどね。
いつか、必ず言いますので。

>135
俺的には、ありっす。
138 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/06(月) 08:01
真里は何かの気配を感じ目を開く。

…と、そこには手入れされたように綺麗な毛並みの白い獣が、まるで死に直面している自分等を守るかのように存在していた。体長は1メートル程だ。

その謎の獣は、キュオオオォォォォンッ、と小さな身体からは想像もつかないような力強い雄たけびをあげる。

それと同時に辺りに凄まじい勢いの旋風が巻き起こる。

ビュオオオオォォォォォォッ

地面の砂を巻き上げ、枯れ葉を撒き散らし、それは、真里達を死に誘う(いざなう)べく眼前に迫り来る二つの大型の竜巻を食らい尽くすほどの勢いだった。

『すご…』

真里は両の目を丸くし、その光景に魅入られたように視線をそらす事が出来ない。

キュイイン、キュウイイン

そんな時、なつみの頭の中に幼い子供のような声が聞こえてくる。何かを必死に誰かへ訴えかけるような…そんな感じだ。
139 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/06(月) 08:31
…それは、幾多の者を傷付けてきた、非情の子供の声色とは一致しなかった。一度も聞いた事の無い声。

なつみは何とかその言葉を聞き取れるよう、精神を集中する。そして鮮明に頭の中に響く。

《のの、あいぼんは殺させないっ。お父さん、お母さんもうやめてよっ!!》

(のの、あいぼんは…殺させないって…それに、お父さん、お母さん…えっ、誰?)

なつみはその声の主を探すべく顔をあげる。そして、辺りを見回す…視界に映る見覚えの無い白い生き物の姿に目が釘付けになる。

キュイイィィン

また、なつみの頭の中に声が聞こえてくる。

《やめてえぇぇぇ!!》

それと同時で、更に勢いの増す旋風。強大な力で二つの竜巻を弾き飛ばす。

勢いが弱まり、裏庭に打ち付けられるそれらは、やがて一つの姿を形作っていく。

白く美しい毛並み、鎌の様な両手…体長を除けば、目の前にいる謎の獣と同じであった。
140 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/06(月) 09:07
なつみはようやく理解する事ができた。先ほどから頭に響く謎の声。

…それは、目の前の小さな謎の獣であること、そして、地面に倒れているのがその両親。

何故かは分からないが希美、亜依を助ける為にした事なのだと…。

『あ〜あ、もうっ、お父さんとお母さんが子供に負けちゃしょうが無いでしょっ』

魔族の子供はあきれ果てたようにそう呟くと指を動かす。

クンッ、と倒れていた二匹の白い獣が、何かに引っ張られるように空中へ浮かび上がる。そして、宙に浮かぶ子供のもとまで運ばれ、落とされる。

白い獣達の弱った身体が落下の衝撃でビクンッと跳ねる。それは、ゲームセンターにあるクレーンゲームを思い起こさせる。

…なつみはその時、二匹の白い獣の目から流れ出た涙を見逃さなかった。

勿論、自分達が傷つく事に涙したのではない…操られ、我が子に手を上げなくてはならない過酷な運命(さだめ)に涙したのだ。

獣とは、言っても実の子供が大切な事、可愛い事に違いは無い。心優しいなつみは我が事のように胸を痛めていた。
141 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/07(火) 08:52
『よぉしっ、今度は負けないぞぉ、本気出しちゃうかんねっ!!』

魔族の子供はまるで、ゲームでも楽しむかのように、指を動かす。

…そして再び、白い獣は竜巻へと徐々に姿を変えていく。

キュ、キュオオォォンッ
オオッキュオオォオン
キュオン

なつみの頭の中に子を思う親達の声が聞こえてくる。

要領を覚えたのか…いや、そうではない、なつみの相手を気遣う心が精神を集中させた。

《これ以上、耐えられない…このままでは、私達の手であの子を殺めてしまう…あなた…》
《ああ、やむ終えんな…ならば方法は一つしか無い…死だ》
《…はい》

(ちょっと…まさかっ…だめだよっ、そんな悲しいこと…)
142 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/07(火) 09:05
『やめてえぇぇぇっ!!』

なつみの白い獣達を思うが故の心の奥からの叫び。

キュオオオンッ

なつみの思いは届かず、逆に白い獣夫婦最後の、言葉を聞き届けてしまう。

《強く生きるんだ…》
《強く生きなさい…》

重なり合う、我が子を思う父親と母親の声…なつみは一人涙を流す。

それと時を同じくして

ズバババババババッ

愛し合う者同士のお互いを切り刻む音。

飛び交う赤い鮮血。美しい白が赤く染まってゆく…そして絶命。
143 :七誌さん :2004/09/07(火) 20:54
お〜なるほど・・・白くて小さいモノ・・・そうでしたか。
なつみはやさしいんですね。
僕もPCの前で涙してしまいました・・・・。
更新がんばってください。
144 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/08(水) 08:39
『えっ…仲間割れ…た、助かったの?』

なつみとは違い、そこにある深い意味を知らない真里は心なしかほっと胸を撫で下ろす。

そんな真里の心情を読み取るなつみ。

『矢口…』
『なっち、助かったんだよねっ、おいら達っ』

嬉しそうにしている親友を苦々しく思いながらなつみはゆっくりと口を開く。

『…矢口、そんなに嬉しそうにしないで…この子が可哀想だよ…』
『えっ…』

真里の表情が困惑を物語る。なつみは話を続けた。

『…なっちね…何故かはわからないんだけど、人間以外の生き物の言葉もわかるみたい…ううん…気持ちが理解できるっていうのかな…』
『えっ…それ…ほんと?』
『…うん…自分でも信じられないんだけどさ…間違いないと思う…』
『…なっちが嘘つくはずないもんな…おいら信じるよ』
145 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/08(水) 09:15
なつみの表情がパアッと明るくなる。親友とはいえ、余りにも現実離れした話を信じてもらえるか正直の所、不安だったのだろう。

『…信じてくれるんだ。やっぱり優しいね矢口は…』

笑顔を一瞬だけのぞかせるなつみ。すぐに寂しそうな表情に戻り、話を続ける。


『あの男の子の下で命をたった白い獣達ね…この子のお父さん、お母さんだったんだよ…。

…操られて、自分達の大事な子供を傷付けてしまう事に、た…耐えられなく…なって…それでね…自ら死を選んだんだ…』

なつみの目の周りは涙で熱くなっていた。涙もろい真里は溢れそうな涙を隠すように頭を下げる。

『…そんな事情があったなんて…おいら考えもしなかったよ…』
『作戦会議終わったぁ?』

今の二人の感情に気付きもしない、自分勝手な子供特有の高い声が耳に届く。

キッと鋭い目つきで声の主を睨みつける真里。なつみは悲しそうな目で魔族の子供から視線を逸らさない。

『そんなに怖い顔しないでよ…こっちだって玩具(おもちゃ)が壊れちゃってショックなんだからさ…』
146 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/08(水) 09:48
更に二人の気持ちを逆撫でするような台詞を吐くと、魔族の子供はつまらなそうに指を動かす。

『カマイタチって、中々捕まえられないんだよね…くるくる回って面白かったのに…』

そう言ってカマイタチの亡骸を回転させる魔族の子供…メリーゴーランドのように…しかし、力なく回る。

それを眺めていた顔がだんだん苛立ちの表情へと変わっていく。

『もう、いらないやっ!!』

ゴミでも捨てるかのように前方へ放り投げる。

そんな惨い光景を、強く唇を噛み締め、小さい拳をギュッと握り締め、黙って眺めていた真里の中の何かがブツリと音をたてて切れる。

『もう、やめろおおぉぉぉっ!!!』

そして再び、熱い涙が頬をつたう。

キュオォォン…

真里の心に、親を無くした子供の悲痛の叫びが深く突き刺さる。
147 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/09(木) 07:52
…真里はなつみとは違い、人以外の生き物の言葉を理解することは出来ない。

しかし、一人だけ取り残されたカマイタチの哀愁感漂う姿からそのように感じ取ったのだ。

…自分の意思とは関係なく、体が動く異変に気付くのはそれから少し経ってからの事だった。

ボトッ

すぐ近くに何か物の、落ちる音。

自分の脳から出した指令を無視して視線がそれに向かう。

(…白い鎌?…か…カマイタチの手首っ…そんな…)

真里の体がまた、自分の意思に逆らい、切断された余韻(よいん)か血液の赤みをおびた白い鎌へと手を伸ばす。

…声も出せない状態。ここにきてやっと。自分が魔族の子供に操られている事に気付く。

そして手のひらに、何か柔らかくも硬い物の感触。研ぎ澄まされた鋭利な刃物。
148 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/09(木) 08:43
(くそっ、体が…言う事をきかない…あいつ、今度はおいらに辻達を殺させるつもりかよっ、っきしょうっ、動けっ、動けよっ、このっ!!)

最悪の状況を回避する為に、操りの呪縛から一生懸命逃れようとする真里。

ビュオオオォォォォッッ

辺りに物凄い勢いの風が巻き起こる。小さな体の真里が吹き飛ばされないのが不思議なくらいだ。

…その勢いで、手のひらから白い鎌が離れ、それと同時に忌まわしき呪縛から開放される。

そして、条件反射的にこの風を巻き起こしたであろう、カマイタチの子供の方を見る。

…美しい白い毛は天に向かってそそり立ち、小さな身体は淡い水色に発光していた。真里は驚いた表情でそれに魅入っている。なつみも同じだ。

それから白い体が宙にゆっくりと浮かび上がり徐々にその姿を変えていく。…やがてそれは、一振りの剣(つるぎ)となった。

美しいレリーフと長い刀身を持ち合わせるその剣は、旋風渦巻くその中で神々しい光を放っていた。

真里は光に導かれるようにその場所まで歩を進めると無言で風陣剣(ふうじんけん)を手にとる。

と同時に先ほどまで唸りを上げていた強風が収まる。幼い白い獣の気持ちを理解したのか…

『かまちゃん…行くよっ!!』
149 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/09(木) 09:03
真里は力強くそう言うと剣を天に掲げる。

ビュオオォォォッ

真里の小さな体が唸りを上げる風と共に遥か上空へと舞い上がり、あっという間に地上から見えなくなる。

上空で剣を構え直し、標的を数々のかけがえの無い命を奪い取った魔族の子供へと絞り込む。

その目にはもう、一点の迷いも無かった。許す事が出来ない者への怒り。その者の命のともし火消すためだけに剣を構え、一直線に天を駆け下りる。
150 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/10(金) 08:40
後押しする風によって加速度がグングン上がり、あっという間に真里の姿が、魔族の子供の視界に映りこむ。

子供は、焦ったように右手を空に掲げる。また、操るつもりだ。

『ヘヴンズ・ジャッジメントっ!!天罰っ!!』

真里の台詞が終わると同時に、もの凄い数の真空の刃が雨のように、魔族の子供に降りそそぎ、その小さい体を切り刻む。

魔族特有の緑色の血液が辺りに飛び散り地面をぬらす。

『助け…て…』

初めて与えられる痛み、死の恐怖に体が震え出す魔族の子供。

『それは…無理っ!!』

ビュンッ、ズバァッ

居合い切りのように交差する人間と魔族。あまりにも美しくない緑色の噴水が完成する。

そして後方に着地する金色の髪を持つ小さい身体。
151 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/10(金) 09:01
真里の一振りが、生と死をかけた悪魔のゲームに終わりを告げたのだ。

後ろを振り返りもせず、カマイタチの子供の変化した剣(風陣剣)を優しく地面におく。

剣は妖怪カマイタチに姿を戻す。

力を使いすぎた影響か、小さくなったその白い体を、そっと抱きかかえる真里。

『…今日からおいらが、お母さんになってやるからな』

キュウゥゥン

言葉は交わせなくとも、気持ちは通じ合える…ここにあまりにも若すぎる母親の誕生だった。

安心したのか、それから間もなくカマイタチの子供は、真里の小さな腕の中で寝息をたて始めていた。

灰となり消え失せて行く魔族の子供を背に、真里は自分の帰るべき場所に向かう。

(おいらには…お前達の声を聴くことは出来ないけど…かまちゃんは責任を持って面倒見るよ、安心して)
152 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/10(金) 09:16
生きていた頃のカマイタチ夫婦の姿を、頭に思い浮かべながら心の中で呟いた。

ビュオオォォンッ

一陣の風が真里の近くを通り過ぎる。その風の音はまるで…


―ありがとう―

そう言ったように聞こえた。

なつみは親友の小さい勇者を笑顔で迎える。

『おかえり…矢口』
『ただいま…なっち』

そんな時、思いもよらない事がおきた。

『おかえり…なさい…やぐちさん』
『お…かえり…なさい』

もう、目を覚まさないと思われていた希美、亜依の二人が息を吹き返したのだ。

お帰りなさいの意味もわからないであろう、口ずさんでいる。
153 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/11(土) 00:34
なつみ、真里の目から大粒の涙が流れ出る。すぐに二人を優しく、そして強く抱きしめるなつみ。真里は、カマイタチの子供を抱いていた為、そうする事は出来なかったが、気持ちは同じだった。

しかし、最悪の事態は避けられたというものの、希美、亜依の二人の顔は、数ある深い切り傷の影響で所々むくみ、爛れ(ただれ)ていた。

首から下もきっと、同じ状態だろう。…まるで、怪物のような風貌に成り果ててしまっていたのだ。

…改善策などあろうはずも無かった。顔や身体の傷を縫い合わせてもその痕跡は残る。

そして今の、日本の医学ではここまで面影の残っていない二人の顔を可愛らしい元の状態に戻す事は出来ない。

…もしかしたら耐え切れなくなって自殺してしまうかもしれない。

そう思うと、なつみは痛たたまれない気持ちになる。

『ごめんね…ごめんね…こんな時、なっちに治癒魔法のような能力があったら助けられたのにね、

…無理だよね…そんなの…』

しかし、そんななつみの現実離れした思いは実現する。
154 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/11(土) 01:03
二人を抱きしめているなつみの体が白く輝きだす。まるで天使のように神々しく、そして暖かく。

なつみの相手を思う慈愛の心が、ここに奇跡を呼び起こす。

なつみの体から発光される、聖なる光に照らされ、希美、亜依の醜く変わり果てた姿が元の通りに修復されてゆく。

…そして力なく校舎の壁に体を預けていた二人の目に生気が戻る。

真里は、目を疑うような奇跡の光景に目を奪われ、世間では多くの人間に幻想と思われている神というものに、初めて心の底から感謝を捧げていた。

やがて、完全に復元される、辻希美、加護亜依、という名の人間。

『あれっ…どこも痛くない…えっ、嘘…傷が無くなってるっ』

希美は切り傷のせいで、凹凸(おうとつ)だらけだった筈の自分の顔を手で触り、同じく傷だらけだった筈の親友の顔が、元のよく知る姿を取り戻して目の当たりにし、(信じられないっ)っといった驚きの表情となる。

『…あいぼんも、ののも、体中切り傷だらけだったはずなのに…もしかして…夢だったのかな…』

亜依は天を仰ぎ、キョトンとした表情で、誰に尋ねるわけでもなく一人呟いた。

『…残念ながら夢じゃない』
155 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/11(土) 01:20
『…えっ』

その声に、顔を向ける亜依、隣の希美も自然と振り向く。

二人の視線の先には真里がいた。

『奇跡だよ…奇跡が起きたんだ…当の本人は気付いてないみたいだけどね』

泣き疲れたのか、はたまた…人以上の能力に目覚め、それを急に使ってしまったからなのだろうか…。

『この子を頼むよ』
『うん…』

真里は、そう言って亜依にカマイタチの子供を預けると、小さく寝息をたてているなつみの肩をゆっくりと揺すった。

『なっち、起きて…』

ゆさゆさ

『うっう〜ん…あれっ…矢口?』
156 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/11(土) 01:37
寝起きでまだ目の焦点の合わない瞳に真里の姿が映しだされる。

『おはようっ、なっち』

真里は優しい笑顔で、その目覚めを出迎える。

『ふぁ…おはよう…矢口ってぇっ…ええっ…なっち寝てたのぉっ!?』

驚きと後悔で、虚ろな目が大きく見開かれる。だがすぐに、寂しそうな表情で俯いた。

『矢口…ごめん…のの達が大変な時に…寝ちゃったりして…なっち最低だよ…』
『…最低なもんか…最高だよ…なっちはっ』

真里は両目に沢山の涙を溜めて言う。でも顔は笑っていた…。

『…んっ?』

不意になつみの視野に見覚えのある、可愛らしい二人の後輩の姿が入ってくる。

驚きに目を丸くし、体を震わせるなつみ。高ぶる感情が露(あらわ)になる。
157 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/09/11(土) 02:41
『ええぇ!?…あいぼんっ、ののっ、…顔が…あ、あれっ、こ、これは夢?』
『…ううん、違う…夢なんかじゃない。現実…それに、二人を治したのなっちなんだよ』
『えっ…私が?』

真里の言葉の意味が分からないなつみは、希美、亜依の顔や体をもう一度交互に見る。

『…えっ?…あの』

なつみは真里に振り返る。何が何だか分からないといった表情だ。珍しくあたふたするなつみの姿を目にした三人は揃って笑い出す。

聖なる光が導き出したひと時の休息に四人の少女は身を委ね(ゆだね)、胸を躍らせた。
158 :黄忠 :2004/09/11(土) 03:15
:唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!。は、これにて終了とさせて頂きます。ご愛読ありがとうございました。

当初の予定では≪小川麻琴対女妖魔(黒い糸)≫まで、〜後編〜に入れる予定でしたがシナリオを練っている間に物語が長くなってしまい、自分の中で区切りの良いここで切らせていただく事にしました。

始めの方は真里・なつみ・希美・亜依の会話が少しの間続きますが、次回は勿論、小川麻琴・紺野あさ美をメインとさせて頂きます。少しでも良い物にする為、次回更新までは少し、間が開くかもしれません。

いや〜今回は自分の書きたい事が書けました…読者の皆様に伝える事が出来たかは疑問ですが…ははっ。
159 :七誌さん :2004/09/11(土) 22:47
更新乙カリー様です。
>>158
わたしには伝わりました!
次回も楽しみにしてます!
時間、かかってもいいのでがんばってください!
160 :黄忠 :2004/09/13(月) 07:22
≫七誌さん

小説だから描く事ができる、実際には有り得ない愛が生んだ奇跡の光景…わかって頂いてありがとう御座います。

続きはもう少しかかると思います。と、いうことで予告だけでも…。

光と闇の狭間で蠢く黒い影
思いを胸に光の少女は天へと羽ばたく

人とは如何なる者なのか…心優しき少女の涙の意味は?

☆邪を滅せよっ!聖なる魂っ!!
161 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/14(火) 07:05
『あっ、そうだ、加護。かまちゃん預かってくれてありがとなっ』
『あっ…うん、はい』

亜依は抱き抱えていたカマイタチの子供を、真里の腕にのせる。

『サンキュッ』
『…その子の名前、かまちゃんって言うんだ…ほぉ…へぇ…』
『…な、何だよ』
『もしかしてぇ…カマイタチだから…そう付けた?』

亜依が意地悪そうな笑みを浮かべ顔を覗き込む…だんだん赤くなる真里。

『なっ…良いだろ別にっ』
『ってのはじょ〜だん。あいぼんも可愛くてい良い名前だと思う』
『はぁ…何だよそれ…』
『かわいぃっ…寝てるよ』

希美は膨らんで上下しているカマイタチの腹部を人差し指でつつく。

『うわぁ、やわらか〜い』

そして今度は背中を撫でる。
162 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/14(火) 07:28
『…ふかふかしてるぅ』

そう言いながら今度は小さく白い体に頬擦り(ほおずり)をしながら感触を味わっている。

『あっ、こらっ辻っ、かまちゃん起きちゃうだろっ』

それに気付いた真里(母親)は、注意する。

『大丈夫っ、大丈夫っ。ののに任せなさ〜いっ』

…時間に換算してみると、たった三時間ほどの事なのだが、久しぶりに目にすることが出来たような錯覚に陥る。

そんな感覚からか、真里・希美・亜依の日常と変わらぬ光景になつみは大きな幸せを感じていた。

…しかし、何かが心を締め付けて放さない。

(…結果としたら、あいぼんもののも無事だったわけだし…

…かまちゃんのお父さん、お母さんだって…あんな悲しい事になってしまったけど…自分達の子供を殺してしまうよりはきっと…。

…何だろ…何か大切な事を忘れてるような…ええと…何だっけ…ううんと…あっ)

なつみの脳裏にクラスメイトの最後の姿が思い起こされる。
163 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/14(火) 07:51
初めて目にした人の死…大量の血しぶきの中で徐々にその機能を失ってゆく躯(からだ)

『高橋くんっ』

なつみの口が名前を告げ告げる。そして、その亡骸があるであろう場所へと振り返る。

『えっ…?』

なつみは自分の目を疑った。目を凝らして今一度確認する。さらに、その付近にも目を通した。

しかし、高橋の亡骸は忽然とその姿を消していた。そればかりかその痕跡すら残っていなかった。

…無事なはずの早川の姿も見当たらない。

『えぇっ…うそ…何で…』

そんななつみの声の異変に親友の真里がいち早く気付いた。

『なっち…どうしたの?』

自分の名前を呼ばれたなつみの口から滑り出すかのように思っていたことが出る。

『…矢口…高橋くんと早川くんがっ』
『あっ…』
164 :黄忠 :2004/09/14(火) 08:09
何か、平和な光景が一瞬で、終わってしまいました。また長くなりそうです…すいません。
165 :七誌さん :2004/09/14(火) 21:13
うおおっ・・・!!!
高橋くんと早川くんは何処へ・・・。
>>164
いやはや、一瞬でも平和があることはいいことです(謎
続き待ってます。
166 :黄忠 :2004/09/15(水) 07:01
≫七誌さん

本当に毎回読んでいただきただ感謝です。
自分の中で、今回は、前回の物語を越えた物になってると思います。

感動をテーマにこれからも頑張りますねっ…そいでは
167 :黄忠 :2004/09/15(水) 07:06
sageてるのに何で上がるんだろう…まっいっか
168 :黄忠 :2004/09/15(水) 08:06
なつみが起こした奇跡の光景。希美、亜依の元気な姿が脳裏に強く焼きつき、頭の中から消えていた高橋という名前に即座に反応を示す…忘れていた罪悪感に襲われる。

明るかった真里の笑顔に曇りが生じ、それから先ほどのなつみと同じように惨劇が繰り広げられた舞台へと視線を向ける…ひと時の沈黙。

『…えっ…うそ…』

金色の髪をなびかせ、なつみの方へ勢いよく振り返る。

『高橋の姿がっ。なっち!?』
『…なっちにもわかんないよ…』

真里の勢いに押されながら、なつみは困惑気味に首を振る。

『たかはしって…あっくんのこと?』
『あっくんがどうかしたの?』

何も知らされていない希美と亜依のきょとんとした表情が真里の胸を締め付ける。

…やがて心を決めたようにゆっくりと口を開く。

『…うん、そう。高橋もあんた達の事をすっごく心配して探すのを手伝ってくれたんだ…』
『そうだったんだ…じゃ、あっくんにもお礼を言わなきゃっ』
『私もっ』

可愛らしい笑顔で言う二人。
169 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/15(水) 08:23
希美はチャームポイントのおさげ髪を揺らしながら辺りを見回す。亜依も同じようにきょろきょろと視線を移動させる。

『…あれっ、あっくん帰っちゃったの?』

まだ、現状を知らない希美が真里に問いかける。

『…いないね、あっくん…』

亜依はもう一度辺りを見回し、正面を向く。

『うん…やっぱりいない』

そして一人で頷き、納得する。

『…辻…加護…高橋はもう…』

真里の暗く悲しそうな表情から事を察し、嫌な予感が二人の脳裏をよぎる。

『…それって…あっくんが死んだってこと?』

亜依の顔から笑みが消え、悲しさに支配される。
170 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/15(水) 09:05
直球、ストレートな亜依の言葉に自分や亜依にいつも優しくしてくれたお兄ちゃんのような高橋の姿を思い浮かべ、熱い涙が溢れ出す。

『…うそっ…まさかっ…ねぇっ、まりっ、うそだよね…うそっていってよぉ…うわあぁぁぁんっ!!』

返事も返さず、無言で立ち尽くす真里の姿が全てを物語っていた。真里の袖に掴まり泣き崩れる希美。

『うっ、…ううっ…あっくん…』

そんな希美の姿に、亜依の目からも我慢していた物が流れ出る。

二人の悲痛の叫びで、真里の腕の中で夢の世界に旅立っていたカマイタチの子供(かまちゃん)が目を覚ました。

『…矢口、それにののもあいぼんも諦めるのはまだ早いよ…もしかしたら高橋くんにも、さっき矢口がなっちに言ったような奇跡の力みたいのがあって…死んでなかったのかもしれない…もちろん早川くんも』

なつみ自身、未だに自分の能力に半信半疑なのだが、高橋と早川が姿を消したという現実を受け止めるには、そうでもしないと説明がつかなかった。

『…確かになっちの言う通りかも…おいら答えを急ぎすぎた』

そんな時、ぴょんっと真里の腕の中から白い獣が弧(こ)を描いて飛び降りる。

悲しみに押し潰され、泣き疲れて寝てしまっている希美の姿を心配そうに見ている。真里は、希美の頭を一回だけ優しく撫でると話を続けた。
171 :黄忠 :2004/09/15(水) 09:14
ふうっ、次回はやっと小川麻琴の続きになります、今回のメインです。お待たせしました。

気付いた事、感じた事、目に叶いましたら書き込んどいて下さい。
172 :七誌さん :2004/09/15(水) 22:00
高橋君と早川君、僕は奇跡を信じます(涙
小川麻琴編、楽しみに待ってます。
173 :黄忠 :2004/09/16(木) 07:15
≫七誌さん

次回と言っときながら、今日は仕事休みなので、小川麻琴編終わりまで行っちゃいます。

174 :なつまり。 :2004/09/16(木) 07:25
良い事聞きました。
これで帰ってくる楽しみが増えました。
楽しみにしながらいってきます。
175 :黄忠 :2004/09/16(木) 07:59
≫なつまりさま

ありがとうございます。

何処にお出かけになるかは、知りませんが気をつけて行って来てくださいね。…って遅いか…すいません。
176 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/16(木) 08:36
『…でも、仮になっちの言うとおりだとして…なんで…それも二人して姿を消したりしたんだろ…』
『…さすがにそこまではなっちにもわからないよ…けど、きっと出て来れない理由があったんだと思う…』

真里となつみのそんな話を近くで聞いていた亜依の表情も心なしか明るさを取り戻す。

希美と同じように高橋を慕っていた亜依。泣き崩れこそしなかったが、気持ちは同じだった。生きているかもしれない…。

この際、(…かもしれない)で十分だった。死んでしまっていれば…もう二度と会えない。…でも、(…かもしれない)なら、それは絶対ではない。亜依は確率に置き換えて考えていた。

と、同時に体育館であった惨劇が頭をよぎる。

他の部員が気を失っている中でただ一人。自分と希美を逃がすために、その身を呈(てい)してカマイタチの刃をその身に受けたひとみの大きな後姿を思い出す。

亜依は真剣な眼差し(まなざし)でなつみの方に振り返りると、大きな声で慈愛の天使の名前を呼んだ。

…そして場面は舞台を移し、少しだけ時間を遡った(さかのぼった)女子陸上部部室。
177 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/16(木) 09:04
マリオネットに首を絞められ、体力を大幅に消耗したあさ美とその後輩の絵里を逃がした麻琴は、姿の見えない女妖魔と対峙(たいじ)していた。

…いや、当面の敵はマリオネット達だ。麻琴は頭の中で考えを巡らせる。

(まずは、操られている陸上部の人達を何とかしないと…多分相手はこの武器の事を知らないはず…チャンスは一度…警戒されていない今しかないっ

…でも私にそれができる?…いやっ、やってみせるっ!あさ美ちゃんと約束したんだっ!!)

心を揺るぎないものにした麻琴が二丁拳銃をマリオネット達に向かって構える。

その様子を何処かで傍観(ぼうかん)している女妖魔の美しくも冷ややかな声が耳に届く。

『自分の愛する者を守るために、他の者達の命を犠牲にするおつもりですか…貴方達人間も我ら魔族となんら変わりはない』

麻琴はその言葉の真意を素直に受け入れ、不安にかられる、額から冷や汗が流れ、二丁拳銃を握る両手が汗ばむのを感じる。

そんな感情を何とか押し殺し、精神を集中させるべく、両の瞼を閉じ雑念を振り払う。

(…失敗は出来ない…警官のおじちゃん…ううんっ…師匠、私に力を貸してっ!!)
178 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/16(木) 09:39
麻琴の体が徐々にその思いに答えるかのように白く輝きだす。警官の肩身である邪滅聖魂が聖なる光を放ち始める。

(あったかい…落ち着く…これが光の力…そして私の力か…あさ美ちゃん…今度は私があなたを守るよっ!!そして約束を守るっ!!)

光がその輝きを増す。闇で覆われた部屋が希望の光で満たされ、その中から闇に潜んでいた者の姿が浮かび上がる。

麻琴は目を閉じながらも、その光景を頭の中でわかっていた、気配をよんだのだ。警官から授けられたもう一つの力動体視力によって、

二つある銃口をそれぞれ、マリオネット、女妖魔に向ける。

聖なる光によって動きを封じられている人形達(元は人間)を眺めながら女妖魔は口を開く。

『…くっ、光の力を扱うとは貴方を甘く見ていました…マリオネットはもう使い物になりませんか…しかし、勝負はこれからです。貴方に私が捉(とら)えられますか…いきますよっ』

光により公(おおやけ)になった宙を漂う闇の者の移動速度が速くなる。人間には分身して見えるぐらいの速いだ。

(…わかる…感じる…今はあそこだ…次はそっち…よしっ!!)

『…何のためにずっと目を閉じていたかわからない?…これで終わりっ…勝たせてもらう!!』
179 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/16(木) 10:02
麻琴の目が見開かれると同時に一発の銃声。

ドンッ

それから、右に体を転がし膝立ちで二発の銃声。

ドドンッ

左の銃からの弾丸は途中で分裂し、流星のようにマリオネット達に降り注ぎ、その操りの呪縛を断ち切る。

そして、右の銃からの弾丸は二つの彗星のように女妖魔の心臓辺りと腰の辺りを突き抜ける。

ぽっかりと空いたそれらの傷口から流れ出る魔族特有の緑色の液体も、光に浄化されていく。

『…さ…先見の能力も…持って…いるとは…ぐっ、ぐはぁっ…わ、私の完敗…です』

宙に浮かんでいた、人間の美しい女性の姿をした、人在らざる者の細い首が傾き、緑色の液体を撒き散らしながら地に落ちる。

『やったっ…勝ったっ!!あさ美ちゃ…』

ドシュッ
180 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/16(木) 10:30
『ぐっ…な…何…この…痛み』

ドドドドッ…

『がっ、がはっ、がはっ、げほっ、げほぉっ』

(あさ美ちゃん…約束は守ったよ)

麻琴は親友にきっと、そんな歓喜の言葉を言いたかったに違いない。

しかし、体中に無数に突き刺さっている黒き影の刃がそれをさせなかった。麻琴の体が膝からがくりと落ち、体中を駆け巡っていた赤い血液が刃の隙間から滲みでる。

朦朧(もうろう)とする意識の中で麻琴の瞳は、黒い影を映らせていた…警官の命を奪い去った忌まわしい影をっ。

悔しくてたまらなかったであろう…しかし、やがて小川麻琴と言う名の少女の魂はこの世から別れをつげた。

魂の無い幼い肉体から黒いの刃を抜き取る黒い影。刃は漆黒のマントと形をなす。

ズブリッと音を立てて抜き取られた傷跡からは大量の赤い血液が大きな音を立てて噴き出し、部室の床を赤く染めた。
181 :黄忠 :2004/09/16(木) 10:34
取り合えずここまで、もうちょっと続くのですが、これから寝るんで起きられたら書きます。


182 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/16(木) 18:21
『…さて』

黒い影は何事もなかったかのようにそう呟くと、陸上部の屋根をすり抜け、天に召されるように昇る光の姿をその目に捉えた。光の姿…それは麻琴の魂だった。

『…素晴らしい力だ…あれがこれほどまで成長を遂げるとはな。人間とはわからんものだ…ふっ、ふははははっ!!では、いただくとしよう』

歓喜に震える笑い声をあげながら、光の魂を喰らうべく手を伸ばす。

『ぐわあああああっ!!』

魂に触れようとする黒い影の指先から、ぢりぢりと焼け焦げるような音が聞こえ、麻琴の魂から放たれる眩しいばかりの光により浄化されていく。闇の者はたまらず手を引く。

光(聖)と影(闇)はあいそみえぬもの…光が大きいか、影が大きいか、飲み込まれるか、飲み込まれないか、これが掟である。

今回は麻琴の光が影(闇)の力を上回ったのだ。

『くそっ…私の持つ闇の力より、あれの力の方が強いというのかっ!馬鹿なっ!!』
183 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/09/16(木) 18:47
黒い影は忌々しそうに天に昇る魂を見上げ、人の如き分際で我(が)を罵った(ののしった)強大な力を扱う龍の男の姿を頭に思い描いていた。

(くっ…残念だが、あれの魂は諦めるしかあるまい…当初の予定どおり特生変異人の魂をいただくとするか…はははっ待っていろ死神…貴様の魂はこの私が必ず貰い受けるっ!その強大な力と共になっ!!)

狂気と復讐に彩られる(いろどられる)黒い影。そして、次のターゲットである紺野あさ美の気配を探ると景色と同化するようにその漆黒の姿を消した。

その頃、亜依と同じく高橋の事を前向きに考え出した希美。その二人から話を聞いたなつみと真里の四人は自分達と同じく、魔族の子供の遊び(悪魔のゲーム)の犠牲となったバレー部の部員達を助けるべく体育館に足を運んでいた。
184 :黄忠 :2004/09/16(木) 19:06
何とか予定通り、進ませる事が出来ました。

皆様のご期待に答えるべく自分なりに頑張ったつもりですが、いかがだったでしょうか?

次回更新はまじで、今月中に出来そうもありません。(予定びっしり…←遊びじゃないっす)どんな事でも良いので感想お待ちしております。

…ではまた、来月にお会いしましょう。ばいばいっ
185 :なつまり。 :2004/09/16(木) 19:52
来月ですかぁ〜、結構空きますね。
2、3週間といったところでしょうか。
頑張ってくださいね、待ってますので。ばいばいっ!
186 :習志野権兵 :2004/09/17(金) 14:13
更新、お疲れ様です。
今回の学校での出来事で数多くの犠牲者が・・・。う〜ん、気になる。
今後の展開を予想しながら待ってます。
187 :七誌さん :2004/09/17(金) 22:04
お、次回更新は来月ですか。
でも十分です!一ヶ月分の更新をいただきました!
では来月まで・・・(多分)
188 :黄忠 :2004/09/28(火) 22:23
皆様、お久しぶりです、そしてレスありがとう御座います。

当初の予定通り、近々再開いたしますね。
189 :なつまり。 :2004/09/28(火) 23:13
おぉ、黄忠さんおかえりなさい。(?)
もう少しですか、お待ちしてます。
190 :七誌さん :2004/09/29(水) 20:25
おお、近々再開ですか。
楽しみに待ってます。
がんばってくださいね^_^
191 :黄忠 :2004/10/01(金) 22:07
自分では、かなり久しぶりの更新となります。

文章の質が落ちてると思いますが、じきに直ってくると思うので、ははっ
192 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/10/01(金) 22:34
二人が話す通り、女子バレー部キャプテンのひとみ以外は気を失っているだけで、怪我のようなものは無かった。

その傷ついたひとみの身体も、なつみの慈愛の光により、徐々に元の姿を取り戻してゆく。

『これが…なっちの力なの…?』

吉澤ひとみの横たわる体に両手をかざすなつみは、今、初めて目にする自分の能力に驚きを隠せないようだ。

『そう…なっちの優しさが生んだ軌跡の光…辻も加護もこの光によって救われたんだ』
『ほへ〜っ』
『なっち、すごぉいっ』

真里の言葉を聞き、そして、その光景を目の当たりにした希美、亜依の二人は小さい口をあんぐりと開きっぱなしだ。

『…いててて』

ひとみがゆっくりと瞼(まぶた)をあける。目の前にはなつみの優しく可愛らしい笑顔。横たわらせていた上半身を勢いよく起こす。

『あれっ…安倍さんじゃん…どうしてここに』
193 :唸れ風陣剣っ!!悲しみを乗り越えてっ!!〜後編〜 :2004/10/01(金) 22:54
『よっすぃっ!!』

がばぁっ

希美が大量の涙を流しながら、ひとみに勢いよく抱きつく。

『うわっ、何っ』
『よっすぃっ、良かった…』

亜依はその場でぼろぼろと涙をこぼしている。

『何だよ、加護までどうかしたの…あれっ…辻、加護…わたし…あっ…確か変な子供に襲われて…何だっけな…』

そう言って頭を抱えるひとみ。その時にあった出来事を思い出すべく、頭の中の記憶を掘り起こす。

『あっ…ちょっと辻ごめんっ』

泣きついていた希美をはがす様に離れさせると、何かを思い出したのか、忙(せわ)しなく自分の顔や身体を見たり触ったりしている。

…その仕草は希美の時と酷似(こくじ)していた。…何故か、にこにこと笑顔を覗かせている以外は…
194 :習志野権兵 :2004/10/01(金) 23:31
おかえりなさい。
そして更新、お疲れ様です。
小川の安否はどうなのか?
気になるところです。
次回、更新を楽しみに待ってます。
頑張ってください。
195 :七誌さん :2004/10/02(土) 02:22
お、更新ですね。どうも。
私もおがーさんの安否はとーっても気になります。
続きまってます。がんばってください。
196 :黄忠 :2004/10/03(日) 09:39
皆さんありがとう御座います。今日は久しぶりの休みなので少し多めに更新できると思います。

私の物語は皆が主役なので、小川麻琴も勿論主役です。魂を黒い影に喰われなかった…それですね。
197 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/10/03(日) 09:59
『よっすぃ…?』

一番近くでひとみの顔を見ている希美は、疑問をこめて名前を呼んだ。

『ああっ、はいはいっ…そういうことね…くくっ』

一人、笑いながら納得しているひとみ。

『よっすぃ…大丈夫か?』
『大丈夫?…頭でも強くうった?』

真里となつみもたまりかねて、お気の毒な人に尋ねるような口調で声をかけ、心配している。

亜依も驚いた表情でひとみの動向を気にしていた。

『心配かけてごっめ〜んっ』

ひとみは照れ笑いを浮かべながら、顔の前に右手を持っていき御免のポーズをとる。

とても生と死の狭間をさまよっていたとは思えない様な普段と変わりの無い陽気な姿に四人の目は点になり、言葉を失う。
198 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/10/03(日) 10:31
そんな四人に聞かせるようにひとみは言葉を繋いだ。

『…なんかすっげぇ夢みてた…変な子供から辻と加護を逃がすために、わたしが自分を犠牲にすんの…そこまではかっけぇんだけど、でもそのすぐ後に、風みたいなもんに体を切り刻まれてやられちゃうんだよ…

(わたしに力があれば、辻と加護の二人を守ることができたのになぁ…かっこわりぃ、ここで終わりかよ)

…とか、思ってんだよね…ははっ、こんな夢みて、子供かっつうの…んなことあるわけないじゃんっ、ねぇ?』

ひとみが笑いながら、周りの四人の顔を見、同意をもとめる。

『よっすぃ…夢じゃないからっ』

真里は自分の顔の前で、小さな手のひらをぶんぶんっと振り、ひとみに合わせるかのように、笑いながらそう言った。

『ははっ…矢口さん冗談きついっすよっ』
『ほんとっ』
『ほんとだよ』
『よっすぃ…本当だから』

希美、亜依、なつみが順序よく言葉を紡(つむ)いでゆく…ひとみの顔から笑顔が消え、確認するように一言。

『…マジ?』
『うそじゃない』
199 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/10/03(日) 11:05
先ほどとはうって変わった真里の真剣な表情が、ひとみを確信へと導いた。

『…でもさぁ、夢じゃないんだったら、わたしの体は傷だらけのはずなんだよな…でもそんな傷なんてないし…それが夢だったのか』
『それ、夢じゃないと思う…のの達が体育館に着いたとき、よっすぃ血…だらけで倒れてた…もん…

ごめんなさいっ…ごめんなさぃ…うぅ』

希美は自分達を逃がす為に自分の体を盾にしたひとみの事を思いだし、後の方になる言葉ほど再び流れ出す涙で遮(さえぎ)られ、聞き取りずらいものとなっていた。

『だぁ〜っ、もう泣くなって、わたしが自分でやったんだからさ』

ひとみは希美の頭をぽんぽんと優しくたたく。

『…うん』
『…でもまぁ、辻と加護が無事でよかったよ』

夢ではないと理解したひとみは、一番の目的を達成出来たという事に安心を覚える…それもつかの間。

『よっすぃ、ごめん…あはは…あいぼん達も掴まっちゃったんだよね…』

亜依の悪気の無い一言にそれは儚(はかな)くも崩れさり、ひとみは呆(ほう)けたまま言葉が出てこない。

『……。』

(ぐはぁ…かっこわりぃ…わたし、やられただけじゃん…)
200 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/10/03(日) 11:45
『でね、全然体とか動かなくて…ほんとこのままあいぼん達死んじゃうのかなぁって思った…でも、なっちがね、助けてくれたの』
『そうそう、ののも死ぬかと思った。体中から血がどばぁって飛び出して、体中痛くて…それでまり達の声がするまで気を失ってたもん』

亜依と希美が少しだけ興奮気味に言う。

『…でも、そんなやばい状態だったわたしらを安倍さんはどうやって治したの?…すっげぇ気になるんだけど』

ひとみは好奇心旺盛な瞳をなつみ向ける。

『う〜ん…治癒魔法?…ゲームとかであるような…あはは…』

そんな現実離れした話をするなつみの顔は、赤みを帯びていてとても恥ずかしそうだ。

『うぉ〜魔法かっけぇっ、しかも治癒魔法なんて優しい安倍さんにぴったりじゃないっすか!!』
『え、えっ…そ、そうかな?…あ、ありがとう』

ひとみの捲し立てるような言葉に翻弄(ほんろう)されるなつみ。しかし顔は嬉しそうだ。

『あっ…そうだ。わたしや辻、加護を襲ってきた子供はどうしたんすか?』
『あぁ、あの魔族の子供か…それなら、おいらとかまちゃんでやっつけたから心配ない』

真里の回答の中にある、自分のまだ知り得ない言葉にひとみは好奇心を(あお)られる。

『魔族…かっけぇ…矢口さんとかまなんとかでやっつけたってすげぇ…どうやって倒したんすか?』
201 :七誌さん :2004/10/03(日) 15:55
更新乙です。
吉澤さんでもやっぱ壊れてしまうんですね・・・。
でも、矢口さん達のおかげで、良かったですね。
僕も安倍さんの治療魔法、ピッタリだと思います。
でゎ、次回も待ってます!
202 :習志野権兵 :2004/10/03(日) 20:04
お疲れ様です。
紺野の後悔・・・。
そして、魂は食われてない・・・。
ってことは、肉体的には?
うわあ、すげぇ気になる!
203 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/10/04(月) 22:52
『説明すると長くなるんだよな…まっ、いいか…』

真里はひとみに、魔族の子供との戦いの事をジェスチャーを交えながら、できるだけ詳しく説明する。

話し上手な真里の語り口を、ひとみは瞳を子供のようにきらきらと輝かせ興奮気味に身を乗り出しながら聞いていた。

『すっげぇ…カマイタチの剣って…風陣剣…でしたっけ?…なんかRPG(ロールプレイングゲーム)みたいっすね』
『そう言われてみれば…でも、ほんとなんだよな』

真里は、ひとみに紹介しようと妖怪かまいたちの子供。かまちゃんのいるであろう後方を振り返る。

『あれっ…かまちゃん?』

辺りを見回す…しかし、何処にも白い獣の姿は見当たらない。真里の明るかった表情が不安に変わり始める。

『ねぇ、加護、辻かまちゃん知らない?』
『えっ…いないの、かまちゃん?』
『さっきまでいたよ?』

亜依と希美も後ろを振り返る。そして真里も確認するようにもう一度辺りを見回す…やはり姿は無い。
204 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/10/04(月) 23:20
『…かまちゃん』

本当の自分の子を失ったように寂しそうな真里。その心を感じ取ったなつみは慈愛の笑みを浮かべながら言った。

『やぐち…心配しなくても大丈夫。かまちゃんなら外にいるよ』
『…えっ…なっちそれほんとっ?』

歓喜と期待に満ちた声をあげる真里。

『ふふっ、ほんと…かまちゃんね、風がある所でなくちゃ生きていけないんだってさ…それとね、姿を現してる間は、もの凄くエネルギーを消耗するって言ってた…あっ、そうそう』

なつみは何かを思い出したような仕草、そして、口元に優しい笑みを浮かべる。

《おかあさん、僕はいつでも側にいるから…心配しないで》

かまいたちの子供の気持ち、なつみはその変わりにと感情を込めて真里に伝えた。

『やぐち…かまちゃんからだよ』
『えっ…かまちゃんから…うぅ』

真里の目頭が熱くなり、涙腺がまたゆるむ。
205 :七誌さん :2004/10/05(火) 20:16
更新おつかれいな〜^-^
矢口さん、素晴らしいです。
かまちゃんのこと、本当に大好きなんですね。
更新待ってます♪

206 :邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! :2004/10/06(水) 07:37
(…お母さん…おいらの事お母さんって…認めて…くれたんだ…ありがとうかまちゃん…)

『えっ…まりってそうなの?』

亜依が驚いた表情で真里の方を見ている。

『えっ…うぅ…何が?』

真里は溢れそうな涙を必死に堪(こら)えながら亜依の言葉に首を傾(かし)げる。

『ほんとはまり。かまいたちなんでしょ?』
『えぇっ、そうなのぉ?』
『矢口さんまじっすか?』

亜依がそう言うと、同じように驚いた様子で、希美とひとみの二人がテンポよく言葉を繋げる。

『…はぁ?…まったく何言って…そんなわけないだろ…おいらは人間だよ』

そんな亜依の突拍子のない言葉に、感動の涙は止まる…呆れ気味に答える真里。

『変身してるの?』
『まり、すごいっ!』
『変身…かっけぇっ!!』

『…話聞けよ…そこの三人』
『…ふふっ』

なつみの優しい笑い…こんな冗談のような会話を交わす五人のいる体育館、その裏側に気を失っている絵里の膝枕をしながらあさ美はいた。
207 :黄忠 :2004/10/06(水) 08:00
≫七誌さん

毎度のレス、本当にありがとうございます。娘。に関しては、実際の人柄を大事にしています。まだ、勉強中ですけどね


さて、この、邪を滅せよっ!聖なる魂っ!! もクライマックスを迎える事となります。

次回は、紺野あさ美・亀井絵里をメインとして、少しネタバレとなりますが、黒い影との戦いを…

更新の方がまた、間(あいだ)が開くかもしれません。仕事が…
208 :七誌さん :2004/10/06(水) 19:18
更新おつかれいな〜^-^(2度目)
矢口さん・・・我輩、感動であります・・・
PCの前で「かまちゃ〜ん・・・」なんて叫んでみたり・・・
次回のメインは紺亀ですか。楽しみですね。
でゎ待ってます。
209 :マシュー利樹(旧名:習志野権兵) :2004/10/06(水) 20:04
黒い影も気になるところですね。

次回、更新を楽しみに待ってます。
後、お仕事の方も頑張ってください。
210 :黄忠 :2004/10/13(水) 08:49
お待たせしましたっ…と言いたいところなんですが、携帯に打ち込んであった全てを誤って消してしまいました。

かなりいい感じだったのですが…とほほ…次回、大量更新を約束して、またしばらくのお別れです。
211 :黄忠 :2004/10/14(木) 07:03
と、思ったのですが、消してしまった分を今回は簡単なダイジェストに変えて、出来れば後ほど改めて公開したいと思います。
212 :あさ美vs黒い影ダイジェスト+予告 :2004/10/14(木) 07:24
卑劣な黒い影の犠牲となった邪滅の麻琴(小川麻琴)

悲閃拳のあさ美(紺野あさ美)VS黒い影の戦いの最中(さなか)、皆と別れたくないという気持ちが妄想や希望を実物化する能力を絵里に目覚めさせた。

息を止められた絶対絶命の危機を(巨大なタライを相手の頭の上に落とす。というコントのような攻撃)によってからくも逃れる。

それが、黒い影の怒りに触れ、絶望の黒い霧(幻覚の地獄)を出させてしまう。

そして、現場に駆けつけたばかりに学生(麻琴)殺しの罪をきせられ、警察に追われる事となってしまったあさ美は、

大事な親友を失った怒り、深い悲しみから生まれでた圧倒的な力で黒い霧をも打ち破り、撤退にまで追い込んだ仇(かたき)の黒い影を追って夕焼けの空にその姿を消した。
213 :あさ美vs黒い影ダイジェスト+予告 :2004/10/14(木) 07:41
この事件は、能力を持つ真里・なつみ・絵里には平和を取り戻す為には避けて通ることのできない魔族との戦いを覚悟させ

何の能力も持たないひとみ・亜依・希美には大切なものを守る為の力を欲(ほっ)させた。



何十年もの時をこえ、解き放たれる幼き兄弟の怨念!

不良少女の涙が新たな未来を切り開く!!


次回予告

呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント

メイン 藤本美貴 加護亜依 辻希美

11月中旬公開予定!!
214 :七誌さん :2004/10/14(木) 19:25
お、新映画予告・・・?
11月ですか。待ってます。
215 :マシュー利樹 :2004/10/14(木) 21:47
小川は死んでしまったのか・・・?
それとも何らかの形で生き返るのか?

うう、気になる!!!
216 :黄忠 :2004/10/23(土) 22:25
ほんと、お待ちいただいて感謝に耐えません。

映画の予告…ちょっとやってみたかったっす(笑)
呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダントは、11月の上旬より更新いたします。

今回はお待たせした分、今までのキャラクター総登場っ!!(行方不明・死去)の人物の登場はないしょ…娘。かなり増えてます。

悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影…消してしまった約3万5千文字も書き直します。やはり諦めきれませんので…もしかしたら来年になるかも

それでは11月にお会いしましょうっ!!
217 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/02(火) 13:22
一夜明け、日曜日の朝。段差の下に希美、亜衣の二人はいた。赤い鳥居を見上げている。

昨日の夕方に学校を飛び出していったあさ美の無事と、こつ然と姿を消した高橋、一度も会った事も無いのに心配して真里やなつみ達と一緒に自分達を探してくれた早川。

高橋達と同じように消えた麻琴の亡骸。麻琴に関しては、麻琴自身の体から流れ出た血の池にその身を浸らせていた姿を目撃したのだが、極めて絶望的な希望の光にすがり神社にお参り(神頼み)にきていたのだ。

少し長めの石でできた急な階段を二人は踏み外さないよう注意してのぼってゆく。

ふいに希美が、元気のない口調で口を開いた。

『ねぇ、あいぼん…』
『…なに、のの?』

下を向きながら希美と同じように元気なく応対する亜衣…二人の脳裏に昨日目の前で起こった惨劇が強く焼きついて放れないのだ。

『なんで…なんで、こんな事になっちゃったのかな…』

か細く、今にも消えてしまいそうな希美の言葉。昨日のもう動かない麻琴の姿を思い出し、目に涙が溜まる。

『…うん…』  
218 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/02(火) 13:43
亜衣はただ頷(うなず)く事しかできなかった。

最後の階段をのぼりきり、目の前に見える社に向かって足を進める。

足を止める二人。

亜衣はお参りをしようと顔を社の中に祭られている神仏の方へ向けた。横目で希美の様子を確かめる。

希美はまだ俯(うつむ)いていた。

『…のの、お参りしないの?』

希美の自分と同じ気持ちが痛いほど良くわかる亜衣は希美の方を振り返り、優しく声を掛け、返答を待った。

『……。』

無言の希美。

『お参り…しよ?』

亜衣は言葉を変え、今一度尋ねる。
219 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/02(火) 14:06
『…意味ないよ』
『…えっ?』

希美の昂ぶる感情を押し殺したような声色に驚きを隠せない亜衣。

『…意味ないっ、こんなことしたって意味ないっ!!…まこっちゃんは返ってこない…あっくんだって…あさ美ちゃんだってもう死んでるんだっ!!

…神様なんていない…うぅ…うっ』

感情を抑えきれずに言葉を捲し立てる希美。止めどなく涙が溢れ出る。

『…のの…』

その様子を寂しそうに見ている亜衣の目にも涙が溜まる。

『…きっと…まりもなっちも…他のみんなも…それで…それであいぼんも死んじゃうんだ…うう、もうやだ』

立ったまま目をこすって、子供のように泣きじゃくる希美。

(わたし…力が欲しい…大切なものを守るために、そしてののを悲しみから守るために)
220 :マシュー利樹 :2004/11/02(火) 19:10
更新、お疲れっす。
うわぁ、何がなんだか分かんなくなってきた・・・。
221 :黄忠 :2004/11/04(木) 06:54
≫マシュー利樹さま

誤って消してしまったおかげで物語を飛ばす羽目になり、意味が分からなくなってすんません。

気付いた説明不足の点

『…意味ないっ、こんなことしたって意味ないっ!!…まこっちゃんは返ってこない…あっくんだって…あさ美ちゃんだってもう死んでるんだっ!!』←希美の勝手な思い込み(麻琴の死体を目の当たりにしたため)

麻琴の死体←日曜日の朝には何故か消えていた。

あと、他にわかりづらい事があればレスをいただけるとありがたいです。
222 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/04(木) 07:20
亜衣の心の中。自分自身の分からぬうちに力を欲する気持ちが広がる。

『うう…ちから…力だ…ののに戦う力があればみんなを…あいぼんを殺させない…ことができるのにっ』

何かを決意したのだろう。涙を拭い、ゆっくりと顔を社の中へと向ける希美。

『神様お願いします…本当にいるのなら、ののに力をお与えください…大好きなみんなを守れるならののはどうなってもいいです…しんじゃっても…

お願いしますっ!ののに力を下さいっ!!』

以心伝心というのだろうか、亜衣と希美の二人が行き着いた所は力だった。

自分の為でなく、他人を守るための力を強く願った。

『…ののぉ…』
『…あっ!』

希美は何か気になるものを見つけたのか、急に靴をぬぐと早足で神社の奥の方へと進んでゆく。

『…のの?』

亜衣も靴をぬいでその後を追った。
223 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/04(木) 07:39
祭られている神仏の像。そのすぐ目の前に希美はいた。

飾られている二本の刀を凝視している。

まるで刀に魅入られたように微動だにしない。

その二本の刀を囲うように、綱が結ばれており、そこに何やら紙のようなものが何枚もぶら下げられてあった。

『…何だろう…』

亜衣は希美の側に向かいながらも、気になるのか、視線はぶら下がっている紙の方へと向いていた。

『何か書いてあるみたい…あっ!…はっ!!』

亜衣は、紙がよく霊媒師などが何か邪悪なものを封じこめたりする時に使う札だと理解するのと同時に、希美の手がその刀にのびるのを目にした。

嫌な予感のした亜衣は希美に注意を促(うなが)そうと名前をさけんだ。

『ののっ!!』

そして手首を掴む。
224 :マシュー利樹 :2004/11/04(木) 18:25
そういうつもりで言ったんではないんですが、誤解を与えてしまったようですみません。
ただ、説明を入れてくれたおかげで少しホッとした面も・・・。
次回、更新を楽しみに待ってます。
頑張ってください。
225 :七誌さん :2004/11/04(木) 20:56
わーい!新映画だぁ<<笑>>
のの、あいぼん・・・がんばれ・・・。
作者さんも応援してます(^_-)
226 :黄忠 :2004/11/04(木) 23:58
≫マシュー利樹様

全然気にしなくていいですよ。こちらこそ申し訳ないです。また、何かあったらつっこみをかまして下さいね。

≫七誌さん

はいっ、新映画です。長らくお待たせいたしました。
227 :名無飼育さん :2004/11/05(金) 08:16
更新きてますね。嬉しいです。
作者さん、補足しなくとも十分理解できる文章なんで自信もってください。
あと揚げ足とりみたいで申し訳ないのですが、亜衣ではなく亜依ですよ。
続きも楽しみにお待ちしております。
228 :黄忠 :2004/11/06(土) 06:57
≫名無し飼育さん

始めまして、読んでいただきありがとう御座います。
亜依…確か前にも注意されました。ははっ、気をつけますね。
229 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/06(土) 07:19
『…放…せ』

ブンッ

亜依の掴んでいる右手をもの凄い力で振り払う。

『うわっ!?』

ドタッ

小手返しのような技で投げられ、尻を強打する亜依。

『あいたた…』

尻を擦(さす)りながら、ゆっくりと希美を見上げる。

そこには刀を鞘から抜いた希美の姿。切れ味の良さそうな刃を確認するように眺めている。手で刃をなぞり刃こぼれなども調べているようだ。

今度は急に、亜依の方へと振り返り刀を眼前に持ってきた。

『ひっ!?』

小さな悲鳴を上げる亜依。尻もちをついたまま、ズルズルと後ずさりする。

『……。』

希美は無言で亜依との間合いを詰めると手に持った刀を振り下ろす。
230 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/06(土) 07:30
『いやああぁぁぁぁぁっ!!』

社の中に亜依の搾り出したような大きな悲鳴が響き渡る。

ビュンッ

風を切り裂く音。

ズブッ

振り下ろされた刀は、亜依の風でなびいたお気に入りの前髪の先を切り、目の前の畳に突き刺さる。

バタンッ

横に体を倒し、亜依はそのまま気を失った。

希美はその様子を確認すると畳に突き刺さった刀を引き抜き、かかとを返す。

視線は今だ飾られているもう一本の刀に向いていた。
231 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/06(土) 07:55
そしてその前まで歩を進め、正眼の構えで素早く刀を振り下ろす。

ビュッ、バサッ

多くの札がぶら下げられている綱が真っ二つにわかれ、封印していた札が役目を終え、燃えて灰になる。

社の中に妖気が立ち込める。

それに呼応するかのように、不気味な紫色の妖気に包まれたもう一方の刀がじょじょに宙へと浮かび上がる。

希美はその様子を黙って眺めていた。

そんな時、気を失っていた亜依が、ゆっくりと起き上がる。目は虚ろで、足元はおぼつかない。

刀の放つ妖気に導かれるように、一歩一歩進んでゆく。

そしてその刀の場所までいくと、希美と同じように無言で刀に手を伸ばした。

(はっ!!…あれ…わたし…なんでこんな所にいるの?…右手が…うそっ、勝手に…やだっ!ののたすけてっ!!)

意識を取り戻した亜依は自分の体の異常に恐怖を覚え、心の中必死で希美に助けをもとめた。
232 :黄忠 :2004/11/06(土) 07:59
また、ちょびちょびの更新で申し訳ないっす。また携帯で打ったの消しちゃうと元も子もないんで…。
233 :名無飼育さん :2004/11/06(土) 15:13
おー!どうなるんだ!?
234 :マシュー利樹 :2004/11/06(土) 16:20
更新、お疲れ様です。
更新する間隔が、長くないから量は別に良いんじゃないですかね。

それに確かに携帯での更新は大変ですよね。
キーボードとは違って、書き辛いし。
結構、労力がいりますよね。
235 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/07(日) 07:20
チャッ

手に掴んだ刀が亜依の小さな手のひらに重量感を感じさせる。

その瞬間。亜依の意識の中に何者かが入り込む。

(!!っ…なに…いやっ…来ないで…わたしの中に入ってこない…で)

亜依の心(魂)は、その何者かにより、奥の方へと封じこまれ完全に意識を乗っ取られる。

ダダダダッ…バシャッ

左側の襖(ふすま)が勢い良く開かれ、年の頃は六十から七十辺りだろうか、この神社の主らしき老人が駆け込んできた。

見事な薙刀(なぎなた)を手にしている。

その老人の方へ振り返る希美と亜依の二人。手に持った薙刀に視線を通したあと、老人の顔を見据えた。

老人の方は、視線を切られた綱の方へ向けると唇を噛み締め、希美達の方を見た。

老人は二人に確認するように声をかける。
236 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/07(日) 07:43
『…秦(しん)…鷹(よう)…だな?
『…そうだ』
『……。』

頷く希美。愛らしい声は、男のように変わっていた。亜依は黙って老人をいまだ見据えている。

『…やはり…しかし、これほどまでとは…』

希美、亜依の全身から発せられる妖気、怨念を感じ取る老人

『…だが…やるしかあるまい…』

汗ばむ両手で薙刀を構える。

『…神具鳳龍(しんぐほうりゅう)…俺達を再び封印するため、こいつらを犠牲にするのか』

希美(秦)の言葉に少し間をおいて老人は答える。

『…やむをえんよ…お前達兄弟をこのままにしてはおけん…その子らには悪いが多くの命を救うためじゃ』
『昔と何もかわらない…お前ら大人は勝手だ…その多くのために犠牲になる者のことはどうでもいいのかっ!!』

ずっと沈黙を保っていた亜依が口を開いた。激唱
237 :マシュー利樹 :2004/11/07(日) 15:12
更新、お疲れ様です。
謎が益々深くなってきた気が・・・。

凄いスケールのでかい話になって来ましたね。
238 :黄忠 :2004/11/08(月) 07:01
≫マシュー利樹様

レス、ただ感謝です。

これから先は、希美(秦)亜依(鷹)を中心に戦闘シーンが続くので途切れ途切れよりも、『まとめて更新した方が良いかな』と思い、

次回更新は、次の仕事の休み〈11日〉にさせていただきます。楽しみにしていただけると嬉しいっす。
239 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/11(木) 11:20
『…鷹の言うとおりだ…大人が俺達にした仕打ちは忘れない…邪魔をするなら斬るっ!鷹行くぞ!!』
『ああっ』

亜依(鷹)は頷(うなづ)く。

チャッ、カチャッ

希美(秦)と亜依(鷹)は、ほぼ同時に鞘から刀を抜き素早く間を詰めると、老人に向かって希美(秦)は上段の構えで振り下ろし、亜依(鷹)は足元を狙う。

カンッ、カツッ

老人はその同時攻撃を薙刀を上手く扱い防ぐと、薙刀を大きく払い間をとる。

『…な、なんとゆう太刀筋じゃ…まさに魔性の…なにっ?、くっ』

カカンッ

休む間もなく襲い来る兄弟の攻撃を何とかしのぐ。

カカンッ、カッカンキンッ

武術の達人同士の戦いは舞いのように見えるという。
240 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/11(木) 11:40
武器を扱う能力は決して秦鷹の二人に劣っているわけではなかった。しかし歳の差か、やがて老人には疲れが見え始め、

逆に希美・亜依の若い体を乗っ取っている秦鷹の繰り出す攻撃は激しさ、速度を増す。

『ぬぉっ、なんて者達じゃ…ぐくっ、これ以上は受けきれん』
『…終わらせてもらうっ』

一度距離をとった希美(秦)が畳を蹴って飛び上がる、勢いにのった一撃が老人に襲いかかる。

ガイィィィンッ

『ぐぐうっ』

老人は何とか薙刀で受け止めはしたが、あまりの威力に両腕が痺れる。

『はっ』

その隙を見逃さなかった亜依(鷹)が居合いのように薙刀を下から跳ね上げる。

痺れてしまっている両手で薙刀を握っていられる筈もない。

神具鳳龍は老人の手から離れ宙に上がった後、畳に深々と突き刺さった。
241 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/11(木) 11:57
『しまっ…』

ビュッ、ズバァ

『ぐおおっ』

プシャアァァッッ

老人の左上半身に激痛が走る。《間をとるべく後ろに飛びのく》という脳から指令を出す。

その短き合間に鷹のニ撃めによって、左の肩から先を切り落とされていたのだ。

そのか所から血が大量に噴き出し、年老いた老人の意識を奪ってゆく。

『…む…無念…かくなるうえは…』

老人は胸元に忍ばせていた短刀を取り出すと自分の喉笛を

ズブッ

一突きで貫いた。

バタンッ

前のめりに倒れる。

『…自害しただと?』
『……。』
242 :七誌さん :2004/11/11(木) 21:29
更新乙です。
んぁ〜!知らないうちにたくさん更新されてた〜!
ん!?そしてこれはどーなる!?
次回更新待ってます。また見逃すかも・・・。
243 :マシュー利樹 :2004/11/12(金) 01:01
お疲れ様です。
この2人は、これからどうなってしまうのか?
次回更新を楽しみに待っています。
244 :通りすがりの者 :2004/11/15(月) 18:41
なんだかすごいことに…
途中から頭が訳の分からないことになってしまって整理するのに苦労しました。
まこっちゃんと紺ちゃんの安易が心配です。
そして絵里さんも…。
う〜絶対最期まで付き合わせていただきます!!
245 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/17(水) 11:48
秦と鷹の二人は、思いもよらない老人の最後を見届けることとなった。

『鷹いくぞ』
『…ああ』

そして二人は、刀を鞘に納めると社の出口へと向かう。

『うっ』

社の境内。長き間、暗闇の中に封じ込まれていた希美(秦)は眩(まばゆ)い日の光にあてられ目を細める。

隣の亜依(鷹)は右手で日を遮っている。

段差を降りてゆく二人。

少なからず、その途中で参拝者とすれ違った。

皆、決まって始めは、腰に帯びている刀に目がいくが、支配されている希美・亜依の愛らしい姿だ、常識から考えて本物だとは思わないのであろう、特に気にもせず素通りしてゆく。
246 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/17(水) 12:12
秦、鷹とて修羅ではなかった。

仲良く神社に参拝きている親子や、他の者達を無慈悲に斬り捨てるような事はしない。

標的はあくまでも自分達を物のように扱い、用が済んだ後、命を奪った両親を含む大人達だ。

しかし、もうこの世にはいない。

自分達兄弟を封じ込めていた者の子孫を斬り、早くも復讐は終わってしまったのだ。

まだ、心が幼いまま成長しておらず、修羅にとらわれていない秦、鷹の二人は次に何を成すべきか答えを出す事ができず、

終始無言のまま段差を下る。

最後の段差を降りた二人の目前に見たことの無い景色が広がる。

子供の興味本位で辺りを見回した後、車が行き交う車道に足を踏み入れる。

キキィーッ!、ドンッ!!

鈍い音と共に先を歩いていた希美(秦)の小さな体が車体にぶつかった衝撃で数メートルほど跳ね飛ばされ、アスファルトに転がる。
247 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/17(水) 12:31
止まった車のドアが勢いよく開かれ、運転していた若い男が飛び出してくる。

跳ねた希美(秦)の方に目をやり、泣きそうな顔で絶望に打ちひしがれている。

『…やっちまった…飛び出してくるんじゃねえ…よ』

ウゥ〜ウゥ〜ウウ〜。

何かのサイレンがだんだんと近づいてくる。パトカー、まさにタイミングを見計らったかのようだ。

ガチャッ、ババン、バンッ

ドタタタタタッ

素早くドアを開け、五人の警官が駆け出してきた。

『ひぃッ!?』

運転手の男は、頭の中が真っ白になり、早くこの場から離れたい衝動にかられ車へと駆け出した。

バンッ

男は逃げるように車に乗り込むと、左右の安全を素早く確認。
248 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/17(水) 12:51
キキーッ、キッ、ブウゥンッ

荒い運転でUターンし、走り去った。

しかし警官達は、首を傾げるだけで男を追おうとはしない。

それもその筈、神社にお参りにきた参拝者から、神主である老人の死体を発見したということで通報を受けたのだ。

付け加え、刀のような物を腰にぶら下げているだけで何の根拠も無い二人の女の子が怪しいという事も聞いていた。

…正直、今回はその通りなのだが

つまり、警官達が追っていたのは人を跳ねた運転手の男ではなく、希美(秦)、亜依(鷹)の二人だったのだ。

『…質問したいことがある、署までご同行願おう』

ガシッ

警官の一人が亜依(鷹)の腕を強くつかむ。

『…まさかとは思うけど、その刀本物かい?…見せてもらうよ』

他の警官が、亜依(鷹)の腰元の刀に手を伸ばす。

ビュッ、ズバァッ
249 :黄忠 :2004/11/17(水) 13:23
皆さんお久しぶりです。そしてレスありがとうです、仕事が忙しくなかなか更新できずにすいません。

次回はもう一人のメインである藤本美貴の登場。他に二人、初登場の娘。が出ます。

それにしても、邪滅の麻琴との悲閃拳のあさ美。この所出てないのに記憶に残ってるんですね。嬉しいです。

皆さんの期待は裏切りませんよ。…まだ先ですけど
250 :通りすがりの者 :2004/11/17(水) 20:28
いえいえ、更新してくださっただけでうれしいです。
この先長くなってもかまいません。
更新待ってます。
251 :マシュー利樹 :2004/11/20(土) 01:51
更新、お疲れ様です。
もちろん、覚えてますとも。
安否が物凄く気になって・・・。
252 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/24(水) 22:16
プシャアァァッ

赤い鮮血がほとぼしる。

『ぐわあぁぁぁぁっ!!』

刀を手に取り確認しようとした警官が悲痛の叫びをあげ、その場に蹲(うずくま)る。

『うぅぅ…ぐくう』

その警官の手首から先が切られ、アスファルトの上に転がっていた。赤いものが地面を広がる。

『なっ!?』
『…斬った』
『何てことだっ』
『うっ、うわあぁぁぁっ!!』

そんな光景を初めて目の当たりにし、若い新米警官が取り乱す。

震える腕で拳銃を構え、引き金に指をかける。

『馬鹿っ、撃つなっ!!』
『やめるんだっ!!』
『落ち着けっ!!』

それに気付いた他の警官達が注意する。

バンッ、ババンッ

何発かの銃声。
253 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/24(水) 22:39
『ああっ!!』

キンッ、キキンッ

警官達の視線が一人の人間に集まる、無事かを確認する為だ。

視線の先には仲間の手首を斬りおとした少女…希美(秦)がいた。

先ほど車に跳ねられたが無事であった。ぶつかる瞬間とっさの判断で自ら後方に飛びのき衝撃を和らげたのだ。

だがさすがに無傷ではなく、所々に擦り傷や切り傷があった。

『兄ちゃんっ』

亜依(鷹)が声をかける。

『何だ今のは…とっさに刀で弾いたから良かったものの…危なかったぞ』

希美(秦)の顔がみるみる怒りにかわる。

『くそっ鷹っ!、こいつらは俺を、平気でこの女を殺そうとした。俺達の敵だっ、斬り捨てるぞっ!!』
『わかったっ!!』

亜依(鷹)は、目にもとまらぬ速さで刀を鞘から抜くと目の前の警官に斬りかかった。
254 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/24(水) 23:04
場面は変わり、道路を挟んだ神社の向かいにあるコンビ二。

ガガーッ

自動ドアが開き、亀井絵里の友達である、田中れいな・道重さゆみが姿を現した。

れいなは、一つ上の先輩である藤本美貴に頼まれたものを買いにきていたのだ。さゆみはその付き合い。

神社の前にとめられているパトカーの赤いサイレンがれいなの目に止まる。

『なんね?』

れいなは独り言のようにそう言うと、興味本位からその付近を見回した。

刀を持った二人の女の子とその向かいの警官達。違和感のある光景に疑問を抱く。

『…番組の撮影かなんかかな…ねぇ、さゆはどう思う?』

れいなはさゆみの方へ振り向き、声をかける。

『ううっ…さむい』

さゆみは答えのかわりにそう呟き、急に震えだした自分の体を両腕で抱きしめている。

そして顔色もだんだん悪くなる。

『ちょっ、さゆ大丈夫なん!?』

さゆみの異常に気付いたれいなは声を荒げる。
255 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/25(木) 04:18
『れいな…さむい』

さゆみはすがるような目でれいなをみた。

今日の天気は晴れ。半袖でも良いくらいに暖かかった。

そっと、震えているさゆみの手に触れ、体温を測るれいな。

『つめたかっ』

握った手はかじかんだように冷たかった。

トンッ、トンッ

『れいな何してんだよっ』

肩をたたかれ、聞き覚えのある声に、れいなはさゆみの手を握ったまま振り返る。

れいなに買い物を頼んだ藤本美貴が何故かそこにいた。

『藤本さんっ、さゆの様子がおかしいたいっ!!』

鬼気迫る表情のれいな。美貴の顔から笑みが消え、さゆみの側まで歩み寄る。

『いやぁ…いやぁ…恐い』



カラン、カラン…。
256 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/25(木) 04:41
『ばかなっ!!』

希美(秦)の刀が警官の手にもつ対銃弾用の盾を真っ二つに斬りさく。

『ふんっ、そんなもん、俺の刀の前では役に立たない…死ねよっ』
『ぐわああぁぁぁぁっ!!』

警官の断末魔の声が道路を挟んで向かいにいる、美貴、れいな、さゆみの耳まで届く。

『いやあっ…恐いよお、いやああぁぁぁぁっ!!』

ダダダダッ

さゆみは叫び声をあげながらその場から駆け出した…何かに怯え、逃げるように。

『さゆっ!!』

れいなが名前を呼ぶだけで、あまりにも急な出来事に美貴も対処することができなかった。

『…さゆ、どげんしたと…』

れいなは親友の異常ともとれる行動の意味がわからない自分にはがゆさを感じていた。
257 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/11/25(木) 05:22
さゆみの後姿が消えた後、美貴がおもむろに口を開いた。

『ねぇ、れいな…さゆみって確か、降霊師とかいう家系の生まれじゃなかった?』

降霊師とは…自分の身体にこの世を去った者達の霊を降ろし、会話や未練を訴えさせたりする者のこと。

『えっ?…はい…でもさゆにはそんな力はないって…れいなにはよくわかんないっすけど、悲しい思いをさせなくてすむっておばさんよろこんでた』
『そうなんだ…でもさ、さゆみの奴何かに怯えてたよな…その力に目覚め始めたのかもっ、それで霊を感じた〜みたいな』

美貴がこんなことを言うには訳があった。自分も何者かの声に誘われ、気付いたらここにいたのだから。

『…そうなんですかね…さゆ大丈夫かな』

れいなは先ほどまでのさゆみの姿を思い出すと胸が詰まる思いだった。

『ところで、さっきから気になってるんだけどあれ何?』

美貴が神社の方を指差す。

『多分、ドラマの撮影かなんかだと思いますけど』
『へぇ…そうなんだ』

面白く無さそうな美貴の口調。美貴の夢…それはアイドルになることだった。
しかし両親の反対で叶わなくなった。羨ましさから嫉妬心が生まれたのだ。

美貴はその中で見知った顔を見つけ目を丸くした。

『…って、辻加護じゃんっ!!』

嫉妬心を大きな驚きが消し去る。
258 :黄忠 :2004/11/25(木) 05:45
久しぶりの更新となります。間が空いてすいません。

携帯で消してしまった分(悲閃拳のあさ美(紺野あさ美)VS黒い影)もだいぶ復元出来ました。
この物語が終わったら更新出来ればなと思っています。
259 :七誌さん :2004/12/02(木) 22:55
更新乙です。てかお久しぶりです(汗
さゆ・・・はかわいそうな気がしますけど・・・
ミキティ・・・(笑)最後のツッコミGOODです・・・。
260 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/05(日) 10:39
『えっ、藤本さんあの二人しっとるんですか?』
『うん、知ってる。なにやってんだよあいつら』

少し興奮気味の美貴は神社の前に向かって歩み出した。れいなもその後をついてゆく。

銃を構えた警官達を前にして、希美(秦)・亜依(鷹)の二人もそれに気付き、血のりのついた刀を手に持ったまま美貴の方へと歩み寄る。

そして初めて顔を合わす四人。

『…待っていた』

ひと時の沈黙の中、始めに口を開いたのは希美(秦)だった。

『えっ!?』

予想を裏切る男のような声色に驚きを隠せない美貴。そして自分をここまで導いた謎の声と一致したことに更なる驚きを覚えた。

シュンッ

希美(秦)が刀を振り上げ、顔前にその斬り先を持ってくる。刀にこびり付いていたま新しい血液が顔に飛び散る。

『うっ』
『…お前も俺達と同じく親を憎んでいる』

鼻腔を刺激する生臭い血の匂い。
261 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/05(日) 10:59
(…この血、本物だ…)

ある理由から家を飛び出した美貴は、道を外れ不良になってしまっていた。

喧嘩も日常茶飯事の為、血の匂いもよく知っているのである。

『れいな下がってっ、あの刀本物だ!!』

美貴はれいなに向かって叫んだ。

『えっ!?』

その声の勢いに押され、後ろに下がるれいな。震えた声で尋ねる。

『藤本さん、刀がほんもんって』
『刀にこびり付いた赤いものが見えるだろ、あれ本物の血っ…多分警官の』

話を聞いたれいな。顔からみるみる血の気が引いていき吐き気をもよおす。美貴の方も強がって見せてはいるが両膝が震えていた。

『…ぐっ…なに』

急に美貴の頭の中に思い出したくも無い、でも、忘れる事の出来ない過去の忌まわしい映像が鮮明にうかびあがる。
262 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/05(日) 11:28
―父がリストラされた日―

―父に殴られる母―

―父の浮気―

―母の隣の知らない男―

そして、父・母の二人に虐待される幼き頃の自分…藤本美貴の姿。

(…憎い…私の夢を打ち砕き、私に暴力を振るった親が憎いっ…あいつ等はその報いを受けるべきなんだっ)

自分自身でも心の中が憎悪で満たされていくのがわかる。

(…私がこうなったのもあいつ等のせいだっ…許せない…あいつら許せないっ)

『…殺すっ、殺してやる!!』

人の子供として一番してはならない事…親殺し。それに手を染めてしまいそうな感情に駆られる美貴。

『藤本さん!?』

れいなが心配になり声をかける。

パアアァァァァッ
263 :七誌さん :2004/12/06(月) 21:15
更新乙・・・ってミキティ!!?
そんな過去が・・・。どうかそっち方向へ行かないで・・・。
264 :黄忠 :2004/12/11(土) 01:08
≫七誌さん

お久しぶりです…更新の間が空いてすいません…完成はしているんですが。

読み返してみると始めの作品に比べ、だんだん文章の厚みが無くなってきているように思えます。

…ということで心機一転!!。消してしまった悲閃拳のあさ美VS黒い影に力をそそぎ、復元(完成)させました。

今回の話を区切りの良い所まで更新したら、悲閃拳のあさ美VS黒い影を入れさせていただきたいと思います。勝手ですいません。続きはその後に…
265 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/12(日) 23:42
そんな感情を打ち消すかのように美貴の胸元のペンダントが強い輝きを放つ。

美貴の手が無意識のうちに伸びてそれを掴む。

心に侵食していた親に対しての殺意が徐々に和らいでいく。

『…何て暖かい光なんだ』

亜依(鷹)は幸悦な表情でその光に魅入っている。

『鷹っ、騙されるんじゃない、こんな物はまやかしだっ!!』

希美(秦)はそう叫ぶと、魅入られている亜依(鷹)の手を引き、その光の何かを拒絶するかのように足早でその場から離れた。

『…お父さん…お母さん…』

ペンダントを握った瞬間、頭の中に流れ込んできた先ほどとはまた違う過去の記憶。

自分を優く包み込むような笑みを浮かべ、可愛がってくれた両親の姿。家族団らんだった頃の幸せな思い出。

次々と流れ込んでくる懐かしくも、切ない思い出に、美貴の頬を一筋の涙が伝って下に落ちる。

『…藤本さん…泣いてるんですか』
266 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/13(月) 00:15
美貴に言われ後ろに下がっていたれいなが、今まで一度も見たことの無い、尊敬する先輩の寂しそうな背中に耐えかねて声をかける。

美貴の体がびくっと震え、美貴は涙を流したのを隠すように声のトーンを上げる。

『なっ、何言ってんだよ、私が泣くわけないじゃんっ、ゴミが目に入っただけっ!』

震えの混じる声でお決まりの台詞を吐くと、美貴は右腕で急ぎ涙を拭う。

『藤本さ…』
『ごめんれいな、私帰るね』

涙を流した情けない自分の姿を見せたくないのだろう、れいなの言葉を遮ると美貴は一度も後ろに振り返らず歩き出した。

だんだんと、少しずつ小さくなってゆく哀愁感漂う後姿。れいなは声をかけずにいられなくなり走り出す。

『藤本さんっ!!』

声を聞き取った美貴がその場で足を止める。

『…なに?』

いつもと違って元気の無い声。後姿からでも迷惑だということが感じ取られた。

『あのっ…』

れいなが遠慮がちに口を開くと、美貴がゆっくりと振り返る。

『れいなさ…私帰るっていったはずだけど…なんか大事な用なわけ?』
267 :マシュー利樹 :2004/12/13(月) 03:59
更新、お疲れ様です。
果たしてどうなるのやら・・・・。
とにかく皆の無事を祈るばかりです。
268 :七誌さん :2004/12/13(月) 22:26
更新乙。
うおお・・・どうなるのやらで。
次回更新が気になりますな〜。
269 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/19(日) 00:28
輝きを失い疲れきった美貴のつり上がり気味の目が《一人にして欲しい》とれいなに訴えかける。

『…家族の人達、心配してると思う…藤本さんが家に帰ったらきっと喜ぶんじゃ…』
『えっ?』

美貴の目が驚きから大きく見開き、れいなを見据える。

『うっ…』

(おこられるっ)

れいなは喧嘩をしている時の美貴の荒れている姿を思い出し、肩をすくめる。

『いつもの私なら…』
『…えっ?』

予想していたのと違った美貴のやわらかい口調にれいなは安心感よりも驚きを覚えたが、黙って次の言葉を待った。

『いつもの私なら大きなお世話っ、うざいって思うんだろうけど…なんでだろうな…私自身、親達の顔をみたくなっちゃってる』
270 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/19(日) 00:47
美貴は頭の中で一番幸せだった頃の家族の姿を思い浮かべる。

その後、嬉しそうな表情を一瞬覗かせただけで、すぐに元の寂しそうな表情に戻った。

『っ…だったら藤本さん、今から家に行ってみませんかっ』

れいなはそんな美貴に声をかける。

『ええっ、今から!?』

れいなの考え、言葉に驚きを隠せない美貴。心を決める時間も無く、選択をせまられる。

正直、両親に会えるという嬉しさが先にきたが、自分が家を飛び出した時のことや、過去の忌まわしい気憶を思い出すと首を縦に振ることは出来なかった。

『…無理だよ』

美貴のどうすることもできない寂しさ、辛さを感じさせる言葉。

美貴の過去を知らないれいながその深い意味を理解出来るはずもなかった。
271 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/19(日) 01:10
だがそんな事以上に、恐く感じる時もあるが頼り甲斐があって優しい先輩の変わり果てた姿に耐えられなかったのだ。

『…藤本さんの過去にどんなことがあったか、れいなにはわからんけん…でも、結果は行動してからついてくるもんだって…』

満面の笑顔をみせるれいな。

『行ってみましょうよ、藤本さんっ』

グイグイ

そして袖を引っ張る。美貴は閉ざされた氷河期のような心がとけていき、だんだんと温まっていくのを感じた。

(…れいなが自分で言ってたっけ《れいなは落ち込んだりして元気の無い人を楽しくさせることができる》それが特技だって…ほんとかもな。…れいなありがとう)

ひと時の沈黙の後、美貴はれいなに心配かけまいと頑張って笑顔をつくり口をひらいた。

『…れいなの言うとおりかも、うじうじ悩んでるなんて私らしくないな…』
272 :黄忠 :2004/12/19(日) 01:25
皆さんお久しぶりです。

この呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント。もう一度更新したら取りあえずはお休みです。

次は前に誤って消してしまいダイジェストのみだった、悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影をお送りいたします。

呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダントの続きはその後に、長いんです…。勝手でごめんなさい。
273 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント :2004/12/23(木) 07:24
『うん、藤本さんらしくない』

美貴は頭の中で考えを決めると、言葉に決心をあらわした。

『…よしっ、私帰ってみる…れいなはどうする?』

れいなは美貴の言葉から心細さを感じ取ると、すぐに頷いた。

『藤本さんさえ良かなら、れいなも藤本さんの両親に会ってみたい』
『も、もちろんいいにきまってんじゃんっ』

美貴のつくっていた笑顔がパァ〜っと本当の笑顔にかわる。
274 :黄忠 :2004/12/23(木) 07:27
こうして美貴はれいなと共に約一年半ぶりに家に帰ることとなった訳だが…それは後編で

この次は206の後に入る予定だった物語です。
275 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2004/12/23(木) 07:53
力を抑え、辺りに注意を配りながら。さすがは天才のあさ美、力に目覚め一日しか経っていない今の時点で、もうある程度は力をコントロール出来る様になっていた。

しかし黒い影は魂の輝きで、人間を判断する事ができる。いくらあさ美が力をコントロール出来るようになったといえども意味をなさない、逃れる術(すべ)は無いのだ。

『ふははははっ、見つけたぞ』

標的である、あさ美の姿を視界に捉えた黒い影の口元がゆるむ。

黒い影の背中にはためいている漆黒のマントが生き物の様に蠢(うごめ)き、麻琴を死に追いやった複数の鋭利な刃物に変わる。

音を立てず、あさ美の命を奪うべく忍び寄る。

辺りに注意をはらっていたあさ美はその殺気にすぐ気付くことができ、

攻撃に余裕を持って備えるべく立ち上がろうとするが、膝に違和感を覚え、絵里を膝枕していた事に気付いた。

その場から動く事ができないのだ。あさ美の優しさが生んだ悲劇だった。

黒き刃が速度を上げ迫り来る。あさ美は視線を下げ、絵里の顔を見た。
276 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2004/12/23(木) 08:12
(まこっちゃんがせっかく助けてくれたのに、死ぬわけにはいかないっ)

あさ美は即座に機転をきかせ、全ての力を防御に集中させる。

『これはっ…この輝きは…あ奴の生きようという意志か、ふははは、素晴らしい』

目を閉じ、力を集中させたあさ美。自分を信じ、目を開いて黒き刃に備える。

『…えっ』

目前まできていた複数の刃先は、その動きを何故か止めていた。

シュルシュルシュルッ

主の黒い影の元へと黒き刃達が戻ってゆく。

安心したあさ美は身体の力が抜けるのと同時に、絵里の様子が気になり視線をおとした。

防御壁を創りだせたと信じていたあさ美は、力が自身の体を強靭にしただけということに気付き、血の気が引くのを感じた。

(あのまま攻撃されていたら…かめちゃんは死んでた)

『くっ』
277 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2004/12/23(木) 08:23
あさ美は唇を強く噛み締めると、

『かめちゃんっ、かめちゃんっ!起きてっ!!』

必死に絵里の体を強く揺さぶり、

パンパンッ

そして頬を叩いた。

絵里を思うが故の行動だった。

『うう〜んっ』

あさ美の膝の上で軽く寝返りをうつ絵里。瞼をゆっくり開けると、視界にぼんやりとあさ美の顔が映り込む。

『…あれ…紺野せんぱい…?』

普段と変わらない舌っ足らずな喋り方。

『かめちゃんっ!!』
『えっ!?』
278 :黄忠 :2004/12/23(木) 08:30
時間はかかりましたが、消してしまう前よりも完成度が高くなった気がします。

今回、紺野あさ美が大活躍です。戦いです。亀井絵里も?(笑)楽しんでいただけると幸いです。
279 :七誌さん :2004/12/25(土) 01:22
更新乙ナリ。
こんこん大活躍の今回を楽しみにしてます。
美貴ちゃん達うまくいってよかったっすね。
280 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2004/12/26(日) 08:06
いつもの静かなあさ美からは考えられないような大きな声に驚き、絵里は心地よい膝枕から勢い良く上半身を起こす。

そしてあさ美の鬼気迫る表情に朦朧としていた意識もたちまち元に戻る。

黒い影の動向を確認する為、あさ美はそちらに一度視線を向ける。絵里もその視線の先が気になり振り向いた。

『ひっ』

空に浮かぶ黒い影の異様な姿。怪しく光る赤い目に恐怖を覚え、小さな悲鳴をあげる。

ソッ

黒い影から視線を外さず、震える絵里の肩に優しく手をのせたあさ美は、口を開いた。

『…大丈夫、かめちゃんは私が絶対に守るから』

あさ美の優しくも力強さを感じさせる声、横顔に安心感を覚え、

『紺野せんぱい…はい』

絵里は落ち着きを取り戻すと頷いた。

『…ありがとう』

あさ美は一瞬目を伏せ、優しく口元を緩めると真剣な表情に戻り、小さな声でささやいた。

『いい?…私が注意ををひくから、かめちゃんはその隙に全速力で逃げて』

コクリ
281 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2004/12/26(日) 08:30
絵里も真剣な表情をつくりだし、無言で頷いた

あさ美と絵里がその行動に移ろうとしたまさにその時、黒い影の口元が動いた。

『心配するな…私の狙いはあくまで特生変異人である貴様の魂…それに用は無い。待っててやるから早く行けっ』
『!!…ありがとう…さっ、かめちゃん』

あさ美は黒い影に軽く礼を言い絵里を立たせると、真っ直ぐ目を見つめ、逃げるよう合図する。

『…紺野…せんぱい…ひっく…』

絵里の目に涙がうかぶ。

『私なら大丈夫だからっ…』

あさ美は立ち上がり優しく微笑みかけると絵里の頭をなでた。

『…はい』
『うんっ』

そんなあさ美の優しい笑顔を脳裏に焼きつけた絵里は言われたとおりこの場から離れるべく、あさ美に背を向けると全速力で駆け出した。

(紺野せんぱい…ごめんなさい、ごめんなさい…)

心の中で何度もあさ美に謝りながら走り続ける。

そんな絵里の姿を息を潜めながら追う四つの赤い目があった。影の獣サイレントだ。

『ふっ…』

上空から様子を眺めていた黒い影の口元が怪しく緩(ゆる)む。

『はぁ、はぁっ』

ドンッ

『きゃあっ』
282 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2004/12/26(日) 08:52
絵里の華奢な体が何か見えない物にぶつかり、大きくはじかれる。

ドタッ

それから地面にうちつけられた。

『…ぐっ…うぅ』

全身を強打し、すぐに立ち上がることができない絵里。

それを待っていたかのように影の獣が襲いかかる。獲物を前に大量の唾液が飛び散る。

『いやああぁぁぁっ』

絵里の悲鳴がこだまする。

『くくっ…これで怒りから、紺野あさ美の力が解放され、魂の輝きが増す…ふふ、ふははははっ…さて』

黒い影は歓喜の高笑いをすると、影の獣に喰らわれるであろう絵里の方をみた。

ドタンッ、ズドッ

『な、何だと!?』

地べたに叩きつけられ、微動だにしない影の獣サイレント。口から流れ出る血が地面に広がってゆく。

そしてもう一匹の影の獣の体が痙攣(けいれん)し、とまる。

黒い影は以前見た光景を思い出した。

『くっ…あの距離で間に合うわけがないはずだっ…まさか!?』

黒い影の顔から笑みが消える。

『…うぅ』

倒れていた絵里よろよろと体を起こす。

『大丈夫…かめちゃん?』
283 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2004/12/26(日) 09:10
絵里は前方から聞こえる優しい声にひかれ、その方へ顔を向けた。

『…あっ』

そして見覚えのある後姿に声がもれる。

ズルリ…ドサッ

と同時にその者の小さな拳から、影の獣の亡骸がずり落ちた。

『…気付いていたというのかっ?』

黒い影が驚きを隠すような口調で僕(しもべ)影の獣を葬り去った者、あさ美に言葉を投げかける。

『…その質問に答える必要はないです』

それに冷静な口調で答えるあさ美。

『…以前は力を制御できず、立っていることもできなかったはずだ…この短期間でそれができるようになったというのか…早い、早すぎる

…小川麻琴といい、この紺野あさ美といい…甘く見ていると足元をすくわれるかもしれん…それにあ奴は頭もきれる』

黒い影はこちらへの注意を怠らず、絵里に手を差し伸べてあさ美の事を考えていた。
284 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2004/12/26(日) 09:17
絵里はあさ美に手を引かれ起き上がる。

『ありがとうご…うっ、か…は』

笑顔を見せていた絵里の顔が苦しげな表情にかわる。

『どっ、どうしたの大丈夫かめちゃん!?…うっ…な…に』

あさ美の表情も苦しみに歪む。

『紺…野せん…ぱい…息ができ…ないで…す』
『かめ…ちゃん…くっ…これ…は』
285 :黄忠 :2004/12/26(日) 09:28
皆様のおかげで、ここまで続かせることができました。本当に感謝、感謝です。

これが今年最後の更新になると思います。また来年にお会いしましょうっ
286 :七誌さん :2004/12/27(月) 11:19
紺野せんぱ〜い!かめちゃ〜ん!
むう・・・敵もなかなか・・・。
作者さま、今年は良い年になりましたか?
ではまた来年!良いお年を!
287 :マシュー利樹 :2004/12/31(金) 13:30
今年一年、お疲れ様でした。
今後の展開が気になる所ですが、
それは来年への楽しみにとっておきます。

良いお年を!!
288 :黄忠 :2005/01/03(月) 07:08
おめ、おめ〜!!。皆さん明けましておめでとう御座います。

今年始めの更新っす!!テーマ(悲しみ、怒り)
289 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/03(月) 07:32
あさ美は振り返ると、上空の黒い影に視線を向けた。

黒い影が自分達にかざしている手が、災いの元凶だということにすぐに気付くあさ美。

今一度、絵里の様子を窺(うかが)うべく絵里の方へと振り返った。

絵里

(…お父さん、お母さん助けて…苦しいよ…さゆ、れいな…まだ、やりたいこといっぱいあったのに…私死んじゃうよ)

あさ美

(かめちゃんはもう限界…私の意識もだんだん朦朧(もうろう)としてきた…でも、諦めるわけにはいかない…元はといえば私のせいなんだ…かめちゃんは絶対に死なせないっ…でも、どうすれば)

絵里

(…やだ…死にたくないっ、死にたくないよ…そんなのいやあぁぁ!!)

『…何だ!!…この魂の輝きは…紺野あさ美と同等…いや、それ以上だ…あれも特生変異人だったとはな…ふふふっ、ふはははっ…は…』

ガーンッ

『はぶっ!!』

高笑いをしていた黒い影の後頭部に衝撃が走る。

『ぐわああぁぁぁ!!』

バランスを保てず、地面に向かって落ちてゆく黒い影。
290 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/03(月) 08:06
…衝撃の正体。それは全長二メートル程ある巨大なタライだった。今は自然消滅している。

『…かはぁ…はぁっ…はぁっ…なんでタライが…助かっ…たけど…いったい…誰が?』

呼吸を止められていた窮地(きゅうち)から抜け出す事ができたあさ美は辺りを見回す。

『…え?…うそ…』

絵里の声に振り返るあさ美。

『どうしたの、かめちゃん?』
『…今の光景、えりが頭の中で思ったのとおなじ…なんでぇ?』
『えっ…』

絵里のそんな独り言のような言葉に考えをめぐらせ、あさ美は一つの結論をみいだした。

(まさか、かめちゃんも私と同じ特別な…くっ…私最低だ…同じ境遇のかめちゃんに一瞬喜んだ)

あさ美は唇を強く噛み締めながら、そんな自分を恥じた。

『…紺野せんぱいどうしたんですかぁ?』

絵里の舌っ足らずな可愛らしい声が、あさ美の心に突き刺さる。

『…かめちゃんごめんね』
『…え?』

意味の知らない絵里はきょとんとした顔であさ美を見ている。

『!!!…なに?』

その時あさ美は全身の身の毛がよだつほどの恐怖を感じ、素早く上空へと顔をあげた。

『…許さん…この私をあのような無様な目に…もう遊ぶのはやめだ…殺す…殺してくれるっ…魂すらも残らんほどになあっ!絶望の中で苦しむがいいっ!!』
291 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/05(水) 07:09
黒い影がマントを翻(ひるがえ)し、体全体を大きく広げる。胸元の辺りから黒い霧が宙を漂うように次から次へとながれ出す。

『…くっ…何』
『紺野せんぱい…恐い』

黒い霧があさ美と絵里の二人を包み込んでゆく。

『かめちゃんっ!!』

完全に霧に飲み込まれる前に絵里を守るべく手を握ろうと声をかける。

『……。』

しかし、返事はない。そして完全に黒い霧に覆われる。

『くっ…何も見えない。かめちゃんっ、かめちゃんどこなのっ!かめちゃんっ!!』

あさ美は何度も絵里の名前を呼びながら、黒い霧の中を探し回る。

『かめちゃんっ、かめ…ちゃん…かめ…けほっ…かはぁ…くる…しい』

あさ美は自分の身体が何かに侵食され、弱っていくのを感じた。
292 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/05(水) 22:49
『…さすがだな。それだけの毒を吸い込んで歩き回れるとは…普通の人間ならすぐに死ぬものを…ふはははっ、だが、もう限界のようだな』

上空から聞こえる。黒い影の苦しさをあざ笑うかのような口調。

『ど…く…あぁ』

あさ美の体力が黒い影の言うように限界に達し、膝からガクリと崩れる。

(かめちゃん助けられなくて…ごめんね…まこっちゃん…約束守れなかった…ごめん…なさい)

色々な思いがあさ美に涙をながさせた。しかし無情にもその優しい輝きを放つ涙は絶望の黒い霧によって食らわれる。

バタンッ

地面へと完全に崩れ落ちたあさ美の体。宙を漂う黒い霧が手足にまとわりつき起こさせる。

『…くぁ…』

身体全体が毒に侵され、動く事、喋ることもままならなくなったあさ美に黒い影は言葉を投げかける。

『…一応教えておいてやろう…もう一人の特生変異人の方の霧には毒は混じっていない…まぁ、この私をあのような目にあわせた奴だ…更なる苦しみを味あわせてやる為だがなっ』

(…かめちゃんは生きてる…よかった…)

毒で弱りきったあさ美の口元が優しく微笑む。

『ふふふっ…そうだな、もう一つ良い事を教えておいてやろう』

(もう一つ…良いこと?)

『小川麻琴は死んだ…まぁ、魂をいただく事は出来なかったが、私が殺した』

(えっ…まこっちゃんが…死んだ…う…そ)

『私のマントで貫いた体中の穴から血が噴き出て辺りを赤く染めてゆくさまは中々見物だったぞっ、ふははっ、ふははは、はーはっは!!』

(なんで…なんでまこっちゃんが死ななくちゃならないの…何も悪いことしてないのに…ひどいっ)

『すぐに貴様も奴の元に送ってやる…いや、残念だがあの世とやらでも小川麻琴に会うことは出来なかったな…なぜなら』
293 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/05(水) 23:01
ブゥゥンッ

黒い影のかかげた右の手の平に禍々(まがまが)しいレリーフの黒い槍が現れる。

『このブラッドランス(血の槍)によって魂と共に貫いてくれるっ…ふははっ、身近な奴のそんな姿を見たあれの姿が楽しみだ』

(まこっちゃん痛かったよね…苦しかったよね…くっ…)

『…さない…許せないっ、うわああぁぁぁっ!!』

あさ美の体を青白いオーラが覆ってゆく。そしてそのオーラに触れた黒い霧が蒸発するように消滅してゆく。
294 :七誌さん :2005/01/06(木) 12:00
あ、出遅れましたが明けましてオメです。
こんこん・・・?すごい・・・がまこっちゃん・・・。
まさか亀ちゃんまで・・・。
295 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/07(金) 08:25
タンッ

あさ美の両足がゆっくりと地を離れる。

『なっ、浮遊だとっ、ばっ、馬鹿な!!…うっ』

驚きに身を震わせる黒い影を、人が変わったようなあさ美の鋭い眼光が制御させる。

『…許さない…絶対に!!』

ギュンッ

真っ直ぐ黒い影に向かい、物凄いスピ―ドで上空を突き進むあさ美。

『ぐっ、これでもくらうがいいっ!!』

あさ美から感じ取れる強大な力に恐怖し、黒い影は手に持った黒き槍をあさ美に向かって投げる。

あさ美に向かって槍は速度を増してゆく。そしてあさ美の視界に入る。

ブンッ

『こんなものっ』

バキャッ

あさ美は迫り来る黒き槍を素早い動きでかわすと膝蹴りで真っ二つにへし折る。

その一部始終をみた黒き影の体に戦慄(せんりつ)が走る。

『ぐうぅ…なんて奴だ』

黒い影のマントが複数の鋭利な刃物に変わり、あさ美に次々と襲い掛かる。

『死ねっ、死んでしまえぇ!!』

あさ美はその場で一時停止をし、纏(まと)っているオーラと同じ色の気の塊を両手の間に創りだすとそれを放出する。

『はああぁぁぁっ!!』

黒い影のマントの変化した鋭利な刃物が全て焼かれ灰とかす。

『なっ…ばかな…』
296 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/07(金) 08:48
ズンッ

『がっ、がはあっ』

呆然としている黒い影の腹部をあさ美の右拳がめり込み、体をくの字に曲げる。

『許さない…お前だけは…絶対に許さないッ』
『ぐぐ…がはぁっ』

黒い影の口から緑色の血らしきものが溢れ出る。

『やあぁぁっ』

ゴガッ

休む間もなく右の飛び膝蹴りが黒い影の顎(あご)の先端を捉え、粉砕する。

遥か上空へと飛ばされてゆく黒い影。それをも上回る速度であさ美はその頭上まで移動し、右足を高く上げると踵落としを見舞う。

『はあぁぁっ』

ゴッ

『ぐっはあぁぁっ』

地面に向かって落下してゆく黒い影に追い討ちをかけるべく右腕を天にかかげ、拳にエネルギーを集めてゆく。

『くっ…やむをえん』

その気配を肌で感じ取った黒い影は真横に黒い水晶を浮かび上がらせる。

『消えてしまえっ!!』

あさ美が押さえきれない怒りとともに、黒い影に向かってボクシングのストレ−トパンチのように思い切り右腕を振り抜く。

『くっ…』

かなりのダメージを受けた黒い影の手が水晶に伸びる。

シュンッ

黒い影の体が水晶に吸い込まれると水晶自体も消えさった。
297 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/07(金) 09:09
ドシュウゥゥッ

ワンテンポ遅れであさ美の放った一筋の閃光が夕焼けの空を青白く照らし、地面に風穴をあけた。

『くっ…』

黒い影を逃した事に唇を噛み締めながら地面に向かってゆっくりと降下してゆく。

黒い影が撤退した為、絶望の黒い霧から開放された絵里。遠くの方のあさ美の姿を捉える。

『えっ…あれ、紺野せんぱい…えっ…空にうかんでる』

あさ美は地に足をつくと膝からがくりと崩れ落ちた。

『!!…紺野せんぱいっ』

絵里はあさ美の元へとすぐに駆け出した。

絵里との距離が十メートルぐらいになったところで、あさ美はムクリと起き上がるとおぼつかない足取りで歩き出した。

『紺野せんぱい大丈夫ですかぁ?』

タタタッ

駆け寄る絵里。

『…まこっちゃん…死んでなんていないよね…約束したもん…そうだ…まこっちゃん待ってる…早く行かないと』

放心状態のあさ美に絵里の声は届かず、あさ美の声が絵里の耳に悲痛の叫びとなって響いた。

『…あ…紺野せんぱい…うく』

絵里は今は亡き親友の元へと向かう力ないあさ美の後ろ姿を、涙を浮かべながら追うことしか出来なかった。
298 :黄忠 :2005/01/07(金) 10:15
疲れてて全然レス返ししてませんでした。ごめんなさい。

≫通りすがりの者さん

あけましておめでとう御座います。
わかり辛くてごめんなさい…最後まで付き合わせていただきますなんて僕も期待を裏切らないように頑張りますね!!

≫七誌さん

こちらこそ明けましておめでとうです。
多分、コンコン大活躍の言葉に偽り無く出来たのではないかと思います。どうでしたか?ってまだ続くけど(笑)

マシュー利樹さま

明けましておめでとう御座います。
楽しみにしていただいてありがとう御座います。連載から今日まで本当に読んでいただきありがとう御座いました。まこっちゃん…後のお楽しみで。

≫七誌さん
明けましておめでとう御座います。
毎回のレス。本当に嬉しいです。僕の伝えたい事を同調していただきとても感動です。これからもそんな物語を書けるようがんばるっす!!

≫なつまりさま

あけましておめでとう御座います。
長い間読んでいただきありがとう御座いました。ご自分の投稿の方頑張って下さいね。影ながら応援しております。

≫名無し飼育さんの皆様

明けましておめでとう御座います
本当に読んでいただきありがとう御座います。何かありましたらどんどん書き込んでくださいね。

それでは皆様。寒いですので体調には気をつけてくださいね。
299 :なつまり。 :2005/01/07(金) 14:14
明けましておめでとう御座います。お久しぶりです。

レス見たときは感激致しました。
最近は読んでるだけでレスもしてなかったのに・・。

黄忠さんも頑張って下さいね、最後まで読ませて頂きます。
300 :通りすがりの者 :2005/01/07(金) 16:18
少し遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
まこっちゃんは今どうしているんでしょうか?
そして馴染みのメンバーも何処に?
更新待ってます。
301 :七誌さん :2005/01/07(金) 23:10
あさ美・・・なんか人が違うようでしたね。
亀ちゃん・・・紺野先輩を助けてあげて・・・。
毎度の次回更新待ってます。超期待です!
プレッシャーかけちゃってすいません。
302 :黄忠 :2005/01/08(土) 08:08
あっ、皆様お元気そうで何よりです。そしてレスありがとうです。

次は、通りすがりの者様の言う馴染みのメンバー登場です。

麻琴とあさ美の再会…そして別れ。…龍の男

これらは全て復刻版で追加した物語です。ちょっときついかもしれません。色々な意味で…。
              
              近日公開!!
303 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/09(日) 07:49
場所は変わって、ここはすぐ目の前にある体育館。

『ふう…これでよしっと』
『なっちごくろうさまっ…大丈夫、疲れたんじゃない?』

傷ついたバレー部員達を介護する為、治癒能力を使い続けたなつみに向かって真里は優しく言葉を投げかける。

『ありがとうやぐち、なっちなら大丈夫だよ』

なつみは真里に笑顔を見せる。

『安倍さんありがとうございます。おかげで他のバレー部のみんなも助かりました』

ひとみが真面目な顔で頭をさげる。

『ううん…それは違うよ』
『えっ?』
『ふふ…よっすぃが体をはってみんなを守ったからみんな無事なんだよ…それがなかったらなっち多分、力になれなかったと思う』
『…安倍さん…』

ひとみはなつみの優しさに目の奥が熱くなるのを感じた。

『さすがなっち良いこというね…んっ、そういえばさっきの大きな音なんだったんだろう』

真里が思い出したかのように話をきりだした。

『ほんとおおきな音だったよね』
『うん、おおきかった』

希美と亜依はお互いの顔を見合って頷(うなづ)き合っている。
304 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/09(日) 08:07
『もしかしてまた魔族とかだったりして』
『ええ〜もうやだぁっ』

亜依の決してわざとではない言葉に希美が過剰反応する。

『…ありえない話じゃないかも…ね』

真里の表情から笑みが消え、険しくなる。

『やぐち…?』
『なっち…みんな。おいらちょっと見てくるっ』

真里はそう言いながら慌ただしく立ち上がる。

『やぐちさんっ、一人でっすか?わたしも行きますよ』
『大丈夫だって、ちょっと様子を見てくるだけだからさっ』

立ち上がろうとするひとみに真里は笑顔で答える。

『でもっ』
『…よっすぃ…おいら自分の身を守るだけで精いっぱいだから…』
『あ…』

真里は申し訳無さそうにひとみを制す。その一言で全てを理解(自分は足手まとい)したひとみは首を縦に振った。

『…わかりました』
『…ごめん…行ってくる』

体育館の外に向かって駆け出す真里。その小さな後姿を追うひとみの目からながれる涙が頬をつたって落ちる。
305 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/09(日) 08:31
(くそっ…何も力になれないなんて)

『ちっくしょおっ!!』

人一倍正義感の強いひとみは、自分の無力さを悔やみその場へ崩れ落ちた。

真里は耳に残るひとみの悲痛の叫びに心を痛めながら、体育館の外へと足を踏み出した。

そして少し歩き、キョロキョロと辺りを見回した後言葉を投げかけた。

『かまちゃんっ、いる?』

その声に答え小さな旋風の後、小さな白い獣が姿を現す。

『かまちゃんっ』
『キュウンッ』

小さな鳴き声をあげるとかまちゃん(妖怪かまいたちの子供)が真里にゆっくりと歩み寄る。

『おいでっ』

近くまできた白い獣を、真里は両腕を広げ出迎える。

『よいしょっと』

真里は優しくかまを抱き抱えると頭を撫でた。

『キュウゥゥン』

かまは気持ち良さそうに目を細める。

『…かまちゃん、おいらに力をかしてっ』

言葉の通じあえないかまを相手に独り言のように真里は声をかけ気を引き締めと体育館裏に向かって歩き出した。

そして体育館裏。真里は辺りを見回すとすぐに一人の人影に気付いた。

それに呼応するかのように腕の中のかまが飛び降り、眩(まばゆ)い輝きを放ちだす。それから風陣剣へと姿を変えた。
306 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/09(日) 08:54
浮かび上がる剣を手に取る真里。

『…かまちゃん…あいつ敵ってこと?…くっ』

真里はその人影を探るように見る。

自分と同じ魅録高校の学生服を着た女生徒、ネクタイの色から一年生だということが見て取れた。

しかし、どうしても敵(魔族)にはみえない…まったく殺気が感じられないのだ。

風陣剣をぎゅっと握り締め、その人影の方へと向かう。

女生徒が真里の気配に気付いたのか振り向いた。

『いやぁっ、こないでえぇっ』

女生徒が震えた声で叫ぶのと同時に女生徒を守る様に壁らしきものが現れその一部が真里に向かって勢い良く迫り来る。

『くっ…』

真里は風陣剣を前に構え防御態勢をとるが勢いを弱めることは出来ても、止めるまでには到(いた)らず跳ね飛ばされる。

『うわあぁっ』

ドンッ

小さな体が体育館の壁に叩きつけられる。

『…ぐっ…いてて…なんなんだよ』


同時刻。黒い影との戦いで力を消耗しつくしたあさ美は、途中何度も倒れそうになりながらもやっとの事で陸上部部室の前まで辿り着いた。
307 :黄忠 :2005/01/09(日) 08:57
近日公開!!とか言いつつ次の日に更新する俺って…気分屋でごめんなさい。
308 :七誌さん :2005/01/09(日) 12:58
お〜、リアルタイムで更新が見れるとはなんて運の良い♪
女生徒とは一体だれなんでしょう・・・?
そしてあさ美は一体・・・?
309 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/10(月) 08:18
『…はぁ、はぁ』

そして、開きっぱなしのドアから中へと足を踏み入れると顔をあげた。

あさ美は鼻につく、何ともいえない匂いに顔を背けたくなる。

部室の電気をつける事も忘れ、窓から差し込む明かりだけを便りに麻琴の姿を探す。

カツンッ

あさ美の足に何か硬い物がぶつかる。

『…?』

あさ美は気になり、屈(かが)んでそれを拾い上げる。

ぬめりという嫌な感触が全身を駆けめぐる。

『なにっ?』

カシャンッ

驚いたあさ美はそれを放り投げる。

それはくるくると何かの上を回転しながら滑ってゆくと、

コンッ

と小さな音を立てる。何かにぶつかったのだろう。
310 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/10(月) 08:33
『うっ…何これ』

赤くぬめぬめしたもの。あさ美がそれを人間の血と理解するのに、大して時間はかからなかった。

(まさか…まこっちゃん!?)

あさ美の脳裏に麻琴の笑顔がうかびあがる。

『まこっちゃんっ、まこっちゃんっ!!』

冷静さを無くし取り乱したあさ美の両足は忙(せわ)しく動き回る。

ビチャッ、ツルッ

『きゃあぁぁっ』

ビチャンッ

あさ美は何かに足を取られ、後ろに転ぶ。

学生服が液体を吸い取り、赤く染まる…それもまた人間の血だった。

『いやああぁぁぁっ、いやっ、いやっいやああぁぁ!!』

血で出来た赤い池の中でもがくあさ美。

丁度そんな時、あさ美の視界に一人の人影が映った。

『ひっ…』

気持ちを落ち着かせ、人影を確認する。

『…まこっちゃんっ!?』
311 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/10(月) 08:51
眠ったように床に座っている人影。…あさ美の会いたかった親友、小川麻琴に違いなかった。

『…まこっちゃんっ!!』

あさ美は涙をぼろぼろとながしながら、麻琴に抱きつく。

『…まこっちゃんっ…まこっちゃんっ…心配したんだから…うぅ』

あさ美は感激のあまり更に抱く力を強める。

グラリッ

その力に耐え切れなかったのか麻琴の体と共にあさ美も前のめりに倒れ込んだ。

『…いや…いや…あ…いやああぁぁ!!』

…確かにあさ美の腕の中に小川麻琴という人間は存在していた…しかし器のみであった。

肉体の冷たさと、体重の軽さ、体にぽっかりと空いた複数の風穴から流れ出ている血液や混じっている臓器が麻琴の死を物語っていた。

カチッ

スイッチを切り替えるような音と共に部屋全体が明るくなる。

『今の声どうしたの…うっ…き、きゃああぁぁっ!!』

様子を身に来た陸上部顧問の教師が目前に広がる地獄絵図に恐怖をいだく。
312 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/10(月) 08:57
そして逃げるようにその場から離れた。

『…うぅ…あ…あぁ…まこっ…ちゃん…』

だが、悲しみに溺れているあさ美の耳にはそんな顧問の教師の声など届く事はなかった。
313 :黄忠 :2005/01/10(月) 09:00
突っ走ってここまできましたが、明日完結です。そいじゃっ!!
314 :七誌さん :2005/01/10(月) 11:35
おお!!明日完結ですか!ってまたリアルタイムだ。ラッキー♪
あさ美ちゃん・・・知ってしまった・・・。
最終回(?)がどうなるのか楽しみです。そいじゃっ!!(笑
315 :黄忠 :2005/01/11(火) 09:34
七誌さん、レスありがとうです。嬉しいです。今からちょっと出かけてきますので、更新は十三時頃を予定しております。ちゃんと約束どおり完結させますよ!!
316 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/11(火) 16:08
丁度その頃、お互いの誤解がとけた真里と謎の女生徒絵里。なつみ、希美、亜依の三人。

いきさつは簡単なものだった。かまが風陣剣に姿を変えたのはまだ辺りに残っていた黒い影の邪気に反応した為だった。

対する絵里の方はいきなり剣を構え、自分に歩み寄ってきた真里に恐怖を覚えたのだ。黒い影との戦いの後だ無理もない。

そしてなつみ、希美、亜依の三人は真里が絵里の妄想を具現する化能力で体育館の壁に叩きつけられたさいに生じた大きな音に驚き真理の身を案じて駆けつけたのだ。

ひとみは真理にどんな顔をして会えばいいのかわからなく体育館裏には現れなかった。

『それで…そのあんたの言う紺野先輩っていうのが追い返した…と』
『…はい』

真理の言葉に絵里は頷く。
317 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/11(火) 16:20
『なっち達以外にもいたんだ…不思議な能力を持つ人たち…』

なつみが真理の方をみる。

『そうみたいだね…でも今は、そんなことより亀井の言う先輩の方が心配だよ』
『うん』
『やぐちの言うとおりだね』

真理の言葉に亜依となつみもうなずく。

『ん…辻、どうかした?』

真理は先ほどから元気なく俯いている希美に向かって問いかける。

『…えっ』

希美が顔をあげると真理は希美が腹に手を添えているのに気付いた。

『お腹…痛いのか?』

真理が心配そうに声をかける。

『…ううん…うっ』

希美の何かに耐えるような口調。
318 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/11(火) 16:51
『ふう…辻はここで休んでな』
『…えっ…ののなら大丈夫だよ』
『…なっち、辻をお願い』

真理はなつみの方に振り返ると言った。

『わかった。やぐちも気をつけて…のの歩ける?』

なつみは真理と顔をあわせ、頷きあった後、希美に歩み寄り手を差し伸べた。

グゥゥ〜

『…あ』

他の者達の視線が、顔を赤くした希美に集まる。

『……。』

ひと時の沈黙。

恥ずかしさから顔をあげる事の出来ない希美、泣き出しそうになる。

『ふふっ、ののはお腹が空いてたんだ』
『…うぅ』

そんななつみの言葉に希美の顔は更に赤みを帯びる。

『…はぁ、辻らしいっていうかなんて言うか…まぁ、何でもなくてよかったよ…』
『ごめんなさい』

真理の言葉に希美は照れくさそうに頭をさげる。

『あのね、あさ美ちゃん達の様子を見に行ったらみんなでどっか食べに行かない?』

亜依が笑顔を浮かべながら皆をぐるりと見回した。

『さんせー!!』

のぞみが満面の笑みで手をあげる。

『おいっ…ていうかあさ美ちゃんって亀井の言う紺野のこと…加護しってんの?』
『うん知ってる。わたし達二年生の間では有名…えっとねぇ、常に成績はトップで、運動神経も抜群、それに空手が茶帯でトロンボーンが…』

長くなりそうな亜依の話を途中で終わらせるべく真理は口を挟む。

『ありがとう加護よ〜くわかった。でも、そんな凄い奴がうちの学校にいたなんておいら知らなかったな』
『なっちも知らなかった…すごいね』
『うん』
『あの…』
319 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/11(火) 17:04
感心しあう真理となつみの会話に絵里が遠慮気味に介入する。

『亀井どうかした?』
『えりでいいです』
『…わかった…で、なに?』
『…そろそろいきませんか、紺野せんぱいが心配…です』

消えてしまいそうな絵里の言葉。涙声にも聞こえる。

『あっ…ごめん亀井。辻加護、みんなで食べるって話はあと。なっち行こうっ』
『うん』

真理は捲し立てるようにそう言うと、

『…陸上部部室だよね?』

と絵里に付け足すように確認を促した。

『はい』


場所は変わって、陸上部部室。
320 :七誌さん :2005/01/11(火) 21:52
うおお、最終回突入!!!
亀ちゃんたち!紺野先輩をたすけてあげて・・・。
もし仕上げてる途中でしたらごめんなさい。
321 :黄忠 :2005/01/11(火) 22:21
正にリアルタイムですね。ありがとう御座います。最終回やるっすよ!!←(注)この話の、
322 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/11(火) 22:38
親友の死を目の当たりにしたあさ美は虚ろな目をした放心状態でその場に座り込んでいた。

両手には麻琴の形身である血まみれの二丁拳銃(邪滅聖魂)が収まっている。

そんな時、入り口から射し込んでくる光を遮って青い制服を着た五人の警官がドタドタと部室の中へ土足で足を踏み入れる。

『うっ…これは酷い』

その中の一人の警官が部屋の惨状につい、言葉をもらす。

あさ美は無気力のまま目だけは警官達の動向を映しだしていた。

『こっちは息がある大丈夫だ』
『こっちも問題ない』

警官達は気を失っている陸上部の部員達の脈や鼓動を調べ、結果を確認しあっている。

『とりあえずは表に連れて行くんだ…ここは刺激が強すぎる。気付いて落ち着きを取り戻したら話を聞いてみてくれ』
『はい』

長官らしき人物の言葉に警官達は返事をする。
323 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/11(火) 23:01
『では、先生も外に出ていて下さい。危険ですから。後で話をうかがわせて頂きます』
『…はい』

部室に残った長官を合わせた警官達はあさ美の側まで歩み寄ると囲む様に腰をおろした。

『さて、紺野あさ美…学生(小川麻琴)殺害容疑で逮捕する。署までご同行願おうか』
『…さつ…が…い』

あさ美が今にも消えてしまいそうな声量で呟(つぶや)く。

(さつがい…わたし…殺害…おがわ…ま…こと…まこっちゃん…!!)

『…え!?』

死んでいた瞳に生気が戻る。

『ほらっ、立つんだ!!』

もう一人の警官があさ美の腕を荒々しくひっぱる。

『…いたっ』
『まったく何て奴だ。…クラスメートを殺すなんて…苛められたか何かだろうけど』

あさ美の顔を見ながらもう一人の警官が呟く。

『!!…そんなっ、私殺してないっ、私じゃないっ!!』

あさ美は完全に我を取り戻すと、必死に無実を叫ぶ。

『こらっ、暴れるんじゃないっ…話なら署でゆっくりと聞いてやる』

警官はそう言ってあさ美の腕を背中にねじり上げる。

『痛い、私じゃないっ、信じてくださ…ぃ…信じて』
324 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/11(火) 23:26
涙を流しながら、警官の腕の中でもがき続けるあさ美。

『紺野せんぱいっ』

あさ美の耳に絵里の可愛い声が響く。

『かめちゃんっ!…くっ…いた』
『危険だ…下がりなさいっ』

部室に駆けつけた絵里達に向かって長官が声をかける。

『何してるんですかぁっ、紺野せんぱいは殺してないですっ、まこっちゃんせんぱいを心配してっ…うぅ』

絵里なりに一生懸命で必死な叫び。

『…君の先輩を信じたいという気持ちはよくわかる…だが…』
『本当なんですっ!…せんぱいは、黒いマントで赤い目の人、えぇと魔族に殺されたんですっ!!』

長官が話し終える前に絵里は口を挟んだ。

『かめちゃんの言ってることはうそじゃないっ』
『あいぼんたちも襲われたんだよっ』

希美、亜依の二人も絵里に続いて声を荒げる。

『…ふう…』

長官は部室に残っている他の二人の警官の顔を交互に見る。

一人は首をかしげ、もう一人は呆れた顔をしていた。

『なっちも真理も言ってやってよ』

亜依が後ろにいる真理となつみの袖をひっぱる。

『そうだよ、何でだまってんの』

希美の言葉に真理となつみは困った表情でお互いの顔を見合った。

真理となつみの二人にはわかっていたのだ。こんな非常識なことを信じてもらえるわけはないと…、

しかし、諦めるのではなく何か良い方法はないものかと、それぞれ考えを巡らせていた。
325 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/11(火) 23:58
『取りあえずはだ。これ以上、我々の邪魔をするのであれば、公務執行妨害で逮捕しなくてはならなくなる…そこをどいてもらおう』

長官は静かな言葉で絵里達四人を制した。

『公務執行妨害ってそんな…』

なつみの口から言葉がもれる。

『…くっ』

真理は唇を強く噛み締める。

…そして二人は黙って道をあけた。

『…どうしてっ…どうしてです…かぁ』

涙目の絵里の視線が真理となつみの心に痛みを与える。

『そうだよっ…何で道をあけるのさっ』
『あさ美ちゃんがかわいそうじゃないの?』
『…矢口さんも安倍さんも…ひどい』

希美と亜依の、絵里の言葉が二人の心の痛みを更に深める。

『黙れよっ!!』
『…ひっ』
『うわっ』
『きゃあっ』

三人の言葉の攻撃に耐えかねた真理が怒鳴り声をあげる。いつもの明るい真理からは考えられないような純粋な恐さを抱かせる声。

『そんなわけないだろ…おいらだって…なっちだって…そりゃ助けてあげたいさ…でも、魔族なんて言ったって信じてもらえるわけないじゃないかよっ、証拠だってないんだっ…それにここでおいら達まで捕まったら誰が紺野の無実を証明するんだよっ』
『あっ…』
『うっ…』
『…うぅ』
『…そして、それは紺野だけじゃない…命を落としたその子のためにもなるはずだよ』

なつみが優しい声で、真理の言葉に付け加える。

この会話は警官の一人に腕をねじ上げられているあさ美の耳にも届いた。

(…そうだ…あの人に言うとおりだ。私がここで逮捕されたら誰がまこっちゃんの仇をうつの?…私しかいないっ…まこっちゃんの仇をうつために私は…お父さん、お母さんごめんなさい…もう、家に帰れないかもしれない…)

『…はなしてください』
『…なに?』

グググッ

あさ美は捻(ねじ)られている腕の力を更に強める。

『ぐっ、…無駄な抵抗をして罪を増やすんじゃないっ』
326 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/12(水) 00:19
予想だにしなかった少女の力に警官は驚愕しながらも何とか押さえ込もうと力を込める。

『…もう一度だけいいます…はなしてください』

あさ美は静かにトーンをおとして言った。

しかし、警官は一向に放す素振りを見せない。

『一応、警告はしましたからっ』

あさ美はそう言い放つと後ろにいる警官に後頭部頭突きを見舞う。

ゴッ、ミシャッ

警官の胸の辺りの骨が砕ける音。

『がっはぁっ』

ゴバァッ

口から吹き出る血が床に広がる赤い池を更に広げる。

『が…あぁ…ぁ』

胸を押さえうずくまる警官を背に、あさ美は他の警官達に寂しそうな視線をおくるとゆっくりと口を開いた。

『…私はまこっちゃんを殺してなんかいない…でもまだ、私を捕まえようとするなら…』

あさ美の目が殺意に彩られ鋭さを増す。

『容赦はしないっ!!』

あさ美は部屋の入り口に向かって歩き出した。

警官は恐怖からか、蛇に睨まれた蛙状態のまま微動だにできない。

『…紺野せんぱい…』

絵里は震えた声であさ美の名前を呼んだ。

『…かめちゃん』

警官達に向けたものとはまったく別の、普段の優しい目、声。
327 :悲閃拳のあさ美・妄想の絵里VS黒い影(復刻版) :2005/01/12(水) 00:43
『…ごめんね…私行かなくちゃ…』
『紺野せんぱぁい…うわあぁ』

絵里が感情をおさえきれずあさ美の胸に飛び込む。

『……。』

あさ美の無言で絵里の頭を撫でるその姿は母親のような暖かさを感じさせた。

『…皆さんもありがとうございました』

そしてあさ美は真理、なつみ、亜依、希美の四人に頭をさげると泣きじゃくる絵里をゆっくりと離し、外に向かって駆け出した。

地から離れてゆくあさ美の両足。頬を伝う涙の輝きが覚悟を現していた。

それからあさ美はあっという間に夕焼けの空へと姿を消した。

誰一人として、口を開くものはいなかった。ただ、ただ、あさ美の消えた空の一点を眺めていた。各々(おのおの)の心に飛来する気持ち、その答えを求めて…。

『強大な力を感じきてみたが…まさか俺が昨日助けた嬢ちゃんだったとはな…びっくりだぜ』

陸上部の屋根の上、腕組をしながら考え込む一人の男の姿があった。サングラスをかけ、背中に龍の刺繍をせおう。通称…龍の男。

『…だが、あの憎悪の力じゃ、奴はたおせねぇ…利用されるのがおちだ。…黒い影か…目的は俺だしな…俺が殺るか…まぁ、今は用事を済ますのが先だな』

一人納得すると龍の男は自ら作り出した空の狭間にきえた。
328 :黄忠 :2005/01/12(水) 00:58
うわぁ〜長かったぁっ。正にリニューアル、いい感じに出来たのではないかと…。

七誌さん…寝てしまい予定通り更新できずごめんなさい。

皆さん、ダイジェストを直しただけの価値はありましたか?教えていただけると嬉しいです。

次回は呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダントの続きになります。そいでは…
329 :黄忠 :2005/01/12(水) 01:10
おわぁ〜忘れとったぁ…次回更新はちょっと先になります。
330 :七誌さん :2005/01/12(水) 17:13
紺野せんぱい・・・怖・・・。
でもなんか亀ちゃんの気持ちもなっちたちの気持ちもわかるな〜。
次回更新、首を長ーーーくして待ってます^^
331 :マシュー利樹 :2005/01/12(水) 22:23
明けましておめでとうございます。
いつのまにかに、話がかなり進んでいてテンパっています。

首は長くできませんが、待っています。
332 :黄忠 :2005/01/18(火) 21:35
お待ちいただき感謝です。
仕事が大分落ち着いてきたので、近々更新できそうです。

深い悲しみとの引き換えに手にすることができた大切なもの、守らなくてはいけないもの…それは
333 :黄忠 :2005/01/18(火) 21:40
落ち
334 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/01/22(土) 15:44
美貴の家は今二人のいるコンビ二付近から、すぐの所にあった。

横に並んで本当の兄弟のように藤本家に向かう美貴とれいな。会話が弾んだせいもあり、あっという間に家の玄関の前につく。

『…間違いない、ここ私の家だ』

美貴は表札を目で確認した後、家の外見全体をみわたす。

(…なにも変わってない…なんかほっとした)

『藤本さん…ブザー押さないんですか?』

美貴の心中を察してか控えめなれいなの言葉。

『…うん』

れいなに言われ、おぞおずと呼び鈴に指を伸ばす美貴。頭の中を色々な思いが駆けめぐる。

ピンポーンッ

辺りに呼び出し音が響き渡る。美貴の心臓の鼓動が早くなる。

早く両親に会いたい感情と拒絶されたり、忘れられていたらどうしようなどのマイナス感情が激しくぶつかり合う。

ガチャッ

『!!』

ドアの開く音に美貴の心臓が飛び出しそうになる。

顔を上げることができず、下を向いている美貴。無言の時間がとても長く感じられた。
335 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/01/22(土) 16:08
辛抱溜まらずゆっくりと顔をあげる。

美貴の瞳に映し出される人影…この家を飛び出してから、約、一年半ぶりに見た母親の顔は思い出の中と違わなかった。…当たり前だが一年半はかなり長い。

『あなた…美貴なの…?』

久しぶりに聞く事ができた母親の声。美貴の整った顔が涙がでくずれる。

『…お母さん』

目にたまっていた熱い涙が溢れ出す。

『お母さんっ!!』

今もなお、溢れ続ける涙をそのままに感情の赴(おもむ)くまま母親の暖かいであろう胸に飛び込もうとする。

『…帰って』
『えっ…』

飛び込む前に聞こえた言葉に、美貴はその動作を中断する。聞き違いであってほしさから震える声で尋ねる。

『…お母さん…?』
『…帰りなさいって聞こえなかった?…そしてもう二度と私達の前に現れないでっ』

美貴は母親のその言葉を聞いてすぐにそこから逃げ出したくなったが、

『おい、なんだ。なんの騒ぎだよ』

という、母親の後ろから聞こえる声に父親の事を思い出し、それは出来なかった。

『…お父さん?』
336 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/01/22(土) 16:29
母親に拒絶され、心を深くえぐられた美貴は、縋(すが)るような声色でただ一言そう言うと、恐る恐るその声の主の方へ視線を向けた。

『!?』

美貴の顔が寂しさに引きつり、男との視線を逸らした。

自分の思い出の中とは違う、若々しい姿。そして声色。まったく別の人間だった。

『お父さん?…いやそれより、へぇ〜可愛いじゃんっ』

若い男のいやらしい視線が、自分の体全体をなでまわすのを美貴は感じた。

『おっ…そっちの奴もなかなか…まだガキだけどな。美少女ってやつ?』

そう言いながらにたにたとやらしい笑みをうかべ今度はれいなのほうを見る。

そしてれいなが自分を睨みつけているのに気付くと鼻で笑った。

『へっ、まあいいや、お母さんって言ってたけど…へぇ、お前の前の男の子供かぁ?』

若い男は長い髪を持つ、綺麗で年の割に若々しい美貴の母親の肩に腕をまわすと二人に見せびらかすような態度をとり、様子の変化に興味をそそいだ。

『…そう…よ。前の馬鹿のね』

美貴の母はゆっくりと過去を思い出すように言うと忌々しそうに唇を噛み締めた。
337 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/01/22(土) 16:55
『へぇ…俺、こいつの新しい旦那さん。よろしくっ』

―新しい旦那さん
―新しい旦那さん
―新しい旦那さん
―新しい旦那さん
―新しい旦那さん

その言葉が美貴の頭に響き渡り、強く胸を締め付ける。

『…う…うそ…』
『…藤本さん』

れいなは心配そうに名前を呼ぶ。美貴は目頭が熱くなり、涙をながしそうになるのを必死に耐えながら何処へ行く訳でもなく駆け出した。

『藤本さん!!』

走り出した美貴の後姿を目で追いかける。れいなはすぐに追いたい衝動にかられるが、すぐに向き直り密着する二人を睨みつけ言葉をぶつける。

『…こんなこつゆう権利はれいなにはなか…でもっ、あんたらはパパ、ママとして、人として最低たいっ!!』

母に帰ってくるなと言われ、父親に会う事も叶わず、両親の離婚。そして再婚…いくら美貴が打たれ強いとはいっても、あまりにも酷い仕打ちだった。

れいなの大好きな両親は優しい…もしそんなパパ、ママにあんな態度をとられたら、胸が張り裂けんばかりの思いだろう。生きる気力を失ってしまうかもしれない。れいなはそんな気持ちだった。
338 :黄忠 :2005/01/22(土) 16:59
少ないですけど更新しました。次回は近日公開です。
339 :七誌さん :2005/01/23(日) 00:01
美貴ちゃん悲しいね・・・そしてれいなちゃん!よく言った!!!
340 :黄忠 :2005/02/02(水) 00:38
『くっ…』

キッ

れいなは、今一度二人に鋭い睨みをきかすと、

ダダダッ

目の奥を熱くしながら、まだ何とか見える美貴の後姿を全速力で追いかける。

…しかし、その距離がひらくことはあっても、縮まることはなかった。面倒くさがって運動をあまりしなかった事がここにきて大きな後悔に変わるとは考えもしなかった。

『…はぁ、はぁ…ふじもとさん…待って』

体力の限界に達したれいなは、走るのを止めざるをえなくなり、歩きに切り替える。やがて完全に見えなくなる美貴の後姿。

(れいながあんなこといわんければ…しつこくせんかったら…ふじもとさんにあんなつらか思いは…)

れいなは耐え切れぬ罪悪感に悩み、周りを気にせず涙をながした。
341 :黄忠 :2005/02/02(水) 01:00
『…くっ…うっ…うぅ…』
『…どうかしたのか?』
『…ぅ…えぇ?』

真横から聞こえる男の声に反応し、れいなはさっと涙をはらう。だが、顔は下を向いたままだ。

『…何でもなかっ』

声をかけてきた男に何か恨みがあるわけではなかった。しかし、どうしても男は皆同じように思え、美貴の母の新しい旦那と重ねてしまい冷たい口調になってしまうのだ。

『…お前、一年の田中だろ?』
『…そう…ですけど…』

(なに、こいつ…何でれいなのこと知ってると?)

馴れ馴れしい男の口調にれいなは更に不快感な気持ちになり、わざと不機嫌そう迷惑そうな表情をつくり、男の方を見た。

『そんな顔しなくたっていいじゃねえか。…これ、俺のメルアドなんだけど…』
『…はぁ、』

男はおずおずと紙をれいなに手渡す。その男は明らかに典型的な肥満体系だった。暑さからか顔にはびっしりと脂汗が浮かんでいる。
342 :黄忠 :2005/02/02(水) 01:28
『……。』

困った表情のまま、それを無言で受け取るれいな。

メモ書きに軽く目を通す。そこには携帯のアドレスと電話番号、NEME 史(ふひと)と書いてあった。

『じゃっ、連絡くれよ。待ってるからさっ』

史は自分の用事だけをさっさと済ますと、答えから逃げるようにその場を去ろうとれいなに背を向ける。しかし、何かを思い出したように今一度れいなの方を振り返った。

『そうそうっ、俺のメルアド、ミキティとえりにも教えといてくれねぇ?悪いけど頼むよっ、じゃあなっ』

片手をあげて背を向け歩き出す史(ふひと)。あまりの自分勝手さにれいなは唖然となる。胸の奥から込み上げてくる何ともいえぬ怒りに呼応するかのように、手のひらの中のメモ書きを握りつぶしていた。

そして、まだ異性との出会いの少ないれいなは、男に対する見方が今までより、より厳しくなる。

『なんあいつ…最悪…男ってみんなあぁなん?…はぁ、でもまぁ、携帯んこと思い出せたけんよかっ…ふじもとさん…』

れいなは気持ちを切り替えると、自分の携帯電話を取り出し、美貴の番号を押した。クシャクシャになったメモ書きをポケットへ無造作に押し込む。

プルルルルッ…プルルルルッ…プルル…

何度も耳に聞こえる呼び出し音。

ピッ
343 :黄忠 :2005/02/02(水) 01:36
久々に更新するとしでかしますね…黄忠が題名になっとる。
344 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/02/02(水) 08:23
『はぁ…やっぱりでなか…』

れいなはため息を一つつくと、再びとぼとぼと歩き出した。

傷心の美貴の行きそうな場所を頭の中で自分に置き換え、サーチしてみる。

『…うん、やっぱ静かなところだ…ん?』

ブウ、ブウ、ブゥン

右手に持ったままの携帯電話が震える。

『…なんね』

れいなはそれを開き、液晶画面を確認する。

美貴からのメールだった。

―私の親のせいでれいなには嫌な思いをさせたね…ごめん―

『…ふじもとさん』

自分自身の方が深く傷ついてる筈なのに、それでもなお、相手のことを考える美貴にれいなは何としても力になりたいと強く思った。

れいなは再び美貴を見つけるべく歩を早めた。そうする事によって逢える保障はない。しかし、じっとしてはいられなかったのだ。

そして、神様というものがれいなの気持ちに応えたのか、偶然は必然となりて二人は再会をはたす。

『ふじもとさんっ』

見覚えのある後ろ姿にれいなは声をかける。

前を歩く人物が立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
345 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/02/02(水) 08:44
ちょっとつりあがりの目、少し茶色がかったショートカット。美貴に違いなかった。

『…れいなっ…なんで』

タタタッ

れいなは美貴の元へと駆け寄る。

『くっ…』

ダッ

美貴は駆け寄ってこようとするれいなに背を向けると、走って道路の脇へと姿を消した。

『あっ、ふじもとさん待ってっ』

走る速さを上げ、見失わないよう、その後を追いかけるれいな。

美貴の曲がった場所の先は広場だった。

れいなはその奥の方にぽつんと存在する一軒の小屋に何気なく目をやる。

『あっ』

その窓の端の方でこちらを窺う視線と交錯(こうさく)する…美貴だった。

美貴はれいなの視線に気付くとカーテンらしきものでそれを遮断する。

『…ふじもとさん…こんなとこにすんどったと…』
346 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/02/02(水) 09:04
成長をとげた多く茂る草木に囲まれたその小屋の大きさはというと大体、二十坪位はあったが、窓の外にガラスが四散し、所々にひび割れや腐りが見られ、とても人が住んでいるとは思えない惨状だった。

『……。』

れいなは無言で美貴の顔が見えた窓の側まで歩み寄るとその場にしゃがみこみ両膝を抱える。

『…いたっ』

袖からのぞくれいなの手首を風にそよいだ草木が傷付ける。

れいな自身、なんでそんな行動をとったのか自分でもわからなかった。

ただ今は、美貴の側(そば)にいてあげたい。そんな思いだった。

時間の経過と共に辺りが暗くなるにつれ、寒さが増してゆく。

『…もう、春なのにさむか…』

吐く息が白く変わる。れいなは冷えた体を温めるため体を縮める。

『…そうだ、パパとママに遅くなるって連絡しとかんと』
347 :黄忠 :2005/02/02(水) 09:16
次回更新は仕事の休みがあれば…(泣
348 :七誌さん :2005/02/02(水) 18:56
れいな・・・美貴ちゃんを助けたって・・・。
349 :黄忠 :2005/02/05(土) 07:23
そんな窓の外のれいなに気付くこともなく、小屋の中の美貴はぼうっとテレビを眺めていた。

かなりの長い時間泣き崩れていたのだろう美貴の両目は赤く腫れていた。

『…ふぅ』

ズズッ…

ため息をつきながら自販機で買ってきた缶コーヒーをすする。

ピッ、ピッ

無造作にリモコンのボタンを押して、番組を切り替えてゆく。

外見とは違い小屋の中は、カーペットが敷き詰められ、エアコン完備だった。しかも、テレビ、オーディオ機器、キッチン、などが置いてあり、過去、子供会などで良く使われていた集会場を美貴が改良して使っていたのだ。小さめではあるが、それでも一人で暮らすには十分すぎる広さだろう。

『ふぅ…なんか今日は疲れたな。…こんなに泣いたのも久しぶりな気がする…まだ残ってたんだミキの涙…』
350 :黄忠 :2005/02/05(土) 07:38
ポツポツポツ…

『…雨…か』

美貴は耳にかすかに聞こえる雨音に、自然と耳を傾けていた。

『…雨音ってこんなに寂しさを感じさせるものだっけ…なんか…きつい。…!!、今なんか外から声がっ…』

美貴は声のした窓の方に歩み寄ると辺りに注意をはらい、窓を開ける。

ビュウゥゥッ

外をながれる冷たい風が美貴の顔に吹きかかる。小屋の中の暖かさも相まって、寒気が全身を震わせた。

『…うぅ…さっぶぅ』

美貴は開けた窓から顔をだし周囲に耳を傾けると、辺りを見回した。

っくしゃんっ


―ガサッ


美貴は物音のした方に素早く振り向いた。

『誰っ!?』

そして暗闇に見える人影らしきものに向かって叫ぶ。
351 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/02/05(土) 08:20
不思議と美貴の心の中に恐怖心はなかった。始めの可愛らしいくしゃみのおかげで緊張感が解けたのだろう。

小さな人影はゆっくりと立ち上がると、美貴の方へと振り向いた。

美貴のつりあがり気味の目が驚きで大きく見開かれる。

『!!…うそっ…れいな、あんた帰ったんじゃ…なかったの!?』

コクリ…

れいなは弱々しく首を縦に振る。

『っくっしゃんっ!!』

そして大きなくしゃみ。

この寒さの中、急に激しさを増した雨にうたれ、れいなの全身はすでにずぶ濡れになっていた。

美貴は窓を閉めるのも忘れ、弾かれた様にれいなの元へと走り出す。

玄関の鍵を開け、引き戸を勢いよく開くと、窓の付近にいるれいなの名前を叫ぶように呼んだ。その瞳には涙が溜まっていた。

『れいなぁっ!!』

ダダダッ

ガバァッ

そしてれいなの元まで駆け寄ると、小刻みに震える小さな身体を強く抱きしめた。
352 :七誌さん :2005/02/05(土) 21:07
更新乙です。
れいなと美貴ちゃんさいか〜い!!!
がんばれ!!!二人とも!!!
353 :黄忠 :2005/02/11(金) 06:51
七誌さん毎度のレス、ほんとありがとうございます。

仕事の休みが無いので更新できずにすいません。次回は三月の中旬になりそうです。

もうすぐで(希美)秦(亜依)鷹との決戦になります。真里、なつみ、美貴、さゆみ、絵里、が立ち向かいます。れいなももしかしたら…。顔見せで愛、里沙…etc
354 :マコ :2005/02/21(月) 00:40
どもども 初めまして。
月板で これでもかと言うくらいの不定期行進をしているマコです。
全部読みました。
うーん 楽しいです。
自分にもこんな 小説を書く能力があったらなぁと思います。
がんばってください。
れいな 大好きなので 最後の場面がすごく好きでした。

355 :通りすがりの者 :2005/02/23(水) 07:36
まこっちゃん! 涙 まこっちゃんは結局助からなかったんですか? 紺ちゃんも仇打ち、よっすぃーの悔しさ、痛みますね。 ミキティはどんな行動をとるのか。
356 :黄忠 :2005/03/03(木) 22:03
レスありがとうございます。近ぢか、ちょっと多めに公開予定!!
357 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/04(金) 10:52
美貴は本能でれいなの心のうちを理解していた。その震える小さな体をおさめるかのように、抱きしめる力を強める。

ザアアアアァァァッ

美貴自身も打ちつける雨によって徐々にずぶ濡れになってゆく。

『ごめんね…ごめんね…ごめんね…ごめんね…』

美貴は涙をながしながら、何度も同じ言葉を繰り返す。

『・・っくしゃんっ!!』
『…あっ』

れいなの大きなくしゃみにより、美貴は今の自分達の現状を再認識すると、降りしきる雨かられいなを守るような態勢をとり、

『れいな…中に入ろ』

小屋の中へと誘導した。

それから美貴はれいなを玄関に腰掛けさせると、玄関の引き戸を閉め寒気を遮断する。

れいなの体を小屋の中の暖かさが包み込む。それと同時に、雨で濡れた衣服の冷たさを感じさせた。

『ちょっと待ってなよ、今、お風呂わかすからさ』
358 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/04(金) 11:18
靴を脱いで、美貴は奥のほうへとかけて行く。

体力を消耗し、下を向いていたれいなは、顔を上げ虚ろな瞳でそんな美貴の後姿を追った。

そして、目前に広がる予想だにしなかった綺麗な小屋の中に大きな驚きを覚える。

『…えっ、なんこれっ』

目を大きく見開いたまま、周囲を見渡す。

チーンッ

電子レンジの終了音からしばらくして、奥のほうから右手に、湯気が立ち上るコーヒーカップを持った美貴が歩いてくる。

れいなの側までくると腰をおり、手に持ったコーヒーカップを手渡す。

『はい、ココア。あったまるよ』

れいなは、それを火傷(やけど)しない様に注意をはらって受け取る。

『あったか…』

そして冷えきった手の平を温めるようにカップを握る。

『ふじもとさん、いただきます』
『どうぞっ』

と、笑顔の美貴。れいなはカップに口をつけると、ゆっくりココアをすすった。

ズズズッ
359 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/04(金) 11:40
『あつっ…でも、すごくうまか〜』

スッ

そしてすぐまた、カップに口をつける。

『もうすぐお風呂もわくと思うからさ、あったまって帰りな…って何…泣いてんだよ…』

れいなの頬を一筋の涙が連なって光に反射していた。

『…うぅ…うっ…ふじ…もとさん…ごめっ…ごめんなさい…れいなが…れいなが行こうて言わんかったらっ…』

美貴の優しさがれいなの心を締め付け、刺激しされ、涙となってあふれ続ける。

『…れいな』

美貴の涙腺も刺激され、目頭が熱をおびる。

しかし、それは母親に捨てられたことや、新しい旦那のこととは明らかに違っていた。

今、目の前にいる人間が自分の為に涙を流してくれ、心配してくれている。こんな自分を必要としてくれている。それが嬉しかったのだ。

『れいな…ありがとう…』

自然とその言葉が口から出てくる。

『うぅっ…ひっく…ぇ…?』

涙目で美貴の方を見るれいな。

『…何でもない。気にしないでいいってこと』
360 :七誌さん :2005/03/04(金) 20:29
二人の友情がすばらしい・・・
361 :通りすがりの者 :2005/03/05(土) 21:37
良いですねー^^ 更新待ってます。
362 :マコ :2005/03/05(土) 22:32
しぜんと泣けてくる。
そう言えば涙を流すのは 久しぶりかも(お前の現状なんて知るかよ)
はは そうですね。
待ってます ゆっくり待ってます。
363 :黄忠 :2005/03/08(火) 00:58
三月十四日、大量投下予定!!
364 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/14(月) 01:11
『…でも』
『っていうかさぁ…れいなは私を元気づけにきてくれたんでしょ、なら、泣かないでもらいたいんですけど』

美貴は無理につくってはいない本物の笑顔をれいなに向ける。

『あっ…っく…はい…』

れいなは手で涙をぬぐうと美貴に笑顔をかえした。

『そうそう、それでいいんだよ』

ピー、ピー。

『んっ、お風呂が沸いたみたいだ、れいな先に入ってきなよ。その間に濡れた服を乾燥機にかけといてあげるからさっ』
『えっ、はい…でも、ふじもとさんは?…ふじもとさんだってぬれとぉ』

れいなは確かめるように、美貴の袖をつかむ。

『私ならだいじょうぶだって…ふふ、それとも一緒に入る?』

美貴は小悪魔のように意地悪な笑みを向けると、れいなの反応を楽しそうに待った。
365 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/14(月) 01:33
『えっ?…はい。れいなはべつに、そんでもよか』

れいなは驚く様子も見せず、平然とこたえる。

『えっ!?』

(…まじで?…冗談で言ったつもりなんだけど…れいなは人前で裸になんのはずかしくないのかよ…少なくとも私はものすごくはずかしいってのっ)

美貴はそんな自分の気持ちを悟(さと)られないように冷静を装い尋ねる。

『…あのさ…れいなは恥ずかしかったりさぁ…しないの?』
『…そりゃ、はずかしくなかっ、ていえば嘘になるっちゃけど…たぶん、ふじもとさんだから大丈夫なんかも』
『…はは…そうなんだ…』

美貴の無理につくったような乾いた笑い。

(嬉しいんだか…嬉しくないんだか…はぁ、覚悟を決めるしかないな…よしっ)

『…えと…じゃ、さっそくはいろっかれいなっ…後からついてきて』

美貴はぎこちなく言葉をくりだした。

『はいっ』

れいなは湿(しめ)った靴と靴下を脱ぐと、急いで美貴の後をついてゆく。きょろきょろと落ち着かない様子で辺りを見回した。
366 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/14(月) 01:56
『…ふじもとさん、ちょっと聞いてもよかと?』
『んっ何、れいな?』

美貴は軽く後ろに振り向く。

『…こん小屋の中って、ふじもとさんがぜんぶ一人で考えちやったんですか?』

れいなは美貴に少し興奮気味に尋ねる。

『うん、まぁねっ。でも、けっこういいっしょ?』
『はいっ、めっちゃきれいだし…ちゃんとかたづけられとるし…はぁ〜、すごかぁ、れいなの部屋なんかもう、なんこれってかんじでちらかっとうもん』
『あははっ…でもなんか、れいならしいよそれ』
『うわ、ひどっ』

そう言ってはいるが、れいなの顔は笑っていた。

『あははっ、ごめん、ごめん』

(わたし今、心のそこから笑ってる…久しぶりに…これがしあわせ…)

『…あっ、そうだ。今度、えりとさゆもつれてきていいですか?…二人にもこん、ふじもとさんの家みせてあげたかっ』

はしゃぐれいなの言葉におされながらも美貴は頷(うなづ)く

『えっ…あぁ、うん。別にかまわないけど』
367 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/14(月) 02:25
美貴はそう言ってその場に立ち止まると、れいなの方に振り返った。

『れいな、ついたよ。ここが脱衣所…そんで、お風呂は奥になってる』
『はい…ってうわ、ひろっ』

れいなはゆうに六畳(じょう)はあるであろう脱衣所の中を見渡し、驚きと歓喜の声をあげる。

『そんなに驚くことじゃないと思うけど…まぁ、もとはみんなで使っていた集会場だからね。

それよりほら、早くはいっちゃいなよ。あっ、服はそこの乾燥機になげといていいよ
、わたしがかけとくから』

『えっ、そんくらいれいなじぶんでやるっちゃ。ふじもとさんにわるか』
『気にしなくていいって、それより、せっかくわかしたお風呂がさめちゃうじゃん、早くはいりなよ』

美貴は、笑顔を浮かべ言った。

(れいな、気を使わなくていいのに。ほんといいやつだよな…私なんかになんで笑顔をむけてくれるんだろ…)

『あっ、はい、そんじゃ』

れいなは自分の上着に手をかける。

『…あぅ』

れいなは赤みのおびた顔を美貴の方へ向ける。

『…ふじもとさん…あの…』
『んっ、どうかした?』

先ほどかられいなに視線を向けたまま、外さない美貴がこたえる。

『なんで、れいなのことみちょると?めっちゃ、はずかしか』
368 :黄忠 :2005/03/14(月) 02:30
やっと更新できました。明日も休みなのに仕事…です。

続きは近いうちに、皆様レスありがとうです。
369 :通りすがりの者 :2005/03/15(火) 07:05
更新お疲れさまです。 藤本さんとれいなさんこの幸せのままで居てほしいですね。 次回更新待ってます。
370 :七誌さん :2005/03/20(日) 22:24
二人の関係がこのまま幸せな状況で終わりますように・・・。
371 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/24(木) 07:05
『あぁっ、ごめんっっ』

美貴はれいなを見つめていた自分の今の姿に気付き、あたふたと視線をそらした。

(なにやってんだろ私…でもほんとにれいなの笑顔をみていたい…幸せな気持ちになれるから…ずっと一緒にいてほしい…だって楽しいじゃんっ…はなれたくない!!

…ん?、ってうわっ、何、この感情は、これじゃ恋する乙女だよっ)

『やばいってっ』
『ふじもとさん?』

れいなは一人、手を振り回し暴れている美貴に声をかける。

『あっ、いや、なんでもないから、き、気にしないでっ』

…と美貴は言ったものの顔を赤くし、言葉からも焦りがうかがわれるので不自然極まりない。

『ぷっ、あはははっ』

れいなはいつもの美貴からは考えられない、その慌てた様子に笑いが込み上げてきた。

『な、なに笑ってるんだよ、もうっ、いいからお風呂入っちゃいなよっ、ていうか入るよっ』
372 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/24(木) 07:33
『ぷくくっ…はぁい』

顔を赤くしたまま怒る美貴。れいなとは反対の棚に歩いてゆくと、恥ずかしさを通り越したのか、いそいそと服を脱ぎ始めた。

れいなも目の前の棚に脱いだ服を投げ入れる。

バスタオルを身体に巻いた美貴は、着ていた服を乾燥機の中に放り込むとれいなの方を見た。

美貴と同じようにれいなもバスタオルを身体に巻いてはいるのだが、まだ慣れていないため手で押さえていないと落ちてしまうのか、そうならないように注意しているようだ。

それでも何とか自分の脱いだ服を両手に抱えると恥ずかしそうに顔を赤らめ美貴の元へ、ぺたぺたと音を立てて歩いてゆく。

『はい、ごくろうさまっ』

美貴は優しい笑みをうかべながら、すぐ側まできたれいなの腕から服を取り上げると、乾燥機へ同じように投げ入れた。

『すいませんっ…ふぅ、たすかったぁ。ふじもとさんってやっぱやさしか』
『そう、普通じゃない?』

美貴は照れ笑いを隠しながら、れいなを背に浴場へと向かう。

(やさしいか…でも、それはれいな、あんたにだけだよきっと…美貴にとって今、いちばん大切なのはもしかして…)

れいなもバスタオルを落ちないようにぎゅっと握り、その後をついてゆく。
373 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/24(木) 08:04
ガララッ…

スライド式の戸をあけると、湯舟からたちのぼり充満している湯気が二人の視界を覆う。しかしそれは一瞬。

『うわぁっ、ひろかぁ、銭湯みたい』

れいなは目前に姿をあらわした大浴場を見渡しながら歓喜の声をあげる。

…といっても大体、普通の家にある風呂場の約八倍程度の広さなのだが、

『私はさきに身体あらっちゃうけど、れいなはどうする?』

美貴が後ろではしゃいでいるれいなに声をかける。

『んじゃ、れいなもそうします』
『そう、わかった。じゃ、好きな場所つかってっ』
『はいっ』

美貴はすぐ側の洗い場に腰をおろし、れいなは恥ずかしいのか、それとも気を使っているのか、少しはなれて桶に腰掛けた。

二人は各自、身体を洗い始める。距離があるせいか、美貴もれいなも身体に巻いてあったバスタオルを相手の視線を気にする事無くはだいた。だが、すぐ代わりに石鹸から泡立つ泡が身体を覆い隠し、バスタオルの代わりを果たす。

―約、二十分後―

『あ〜、さっぱりした』

洗い終わった美貴は、再度身体に巻き、頭を振り、水分をざっと振り払うと、他の小さめなタオルを頭に巻いて湯舟に身体をうずめる。

『うぅ〜さいっこう』

美貴は幸悦な表情で、中年男のように両手を広げ、背もたれによりかかる。
374 :黄忠 :2005/03/24(木) 08:11
皆様、お久しぶりです。

平和な日常は長くは続かない…んです。
375 :通りすがりの者 :2005/03/24(木) 19:58
更新お疲れさまです。 そっ・・そんな( ̄□ ̄;) でも、どんな事が起きようと次回更新は待たせて頂きます。
376 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/31(木) 07:41
チャポン…ジャブ、ジャブ

れいなは湯舟に小さな波を立てながら、真っ直ぐ美貴の元へと歩み寄ると、その隣に身体をうずめた。

美貴の姿を眺めているとふいに、今日、起きた色々な出来事が頭の中に思い浮かんでくる。

美貴の母親の事、美貴の母親の新しい男、馴れ馴れしい男の事…そして、在りえないような事件。自分と同じ人間の血

…しかし、思い起こされるのは嫌な事ばかりだった。

れいなは笑顔でいることが、だんだんと出来なくなってくる。

『……。』

先ほどまでとはうって変わり、俯(うつむ)いて元気のまるで無いれいな。横目で見ていて心配になった美貴は寄りかかっていた上半身を起こし、声をかける。

『れいな…どうかした?』

その言葉に反応し、れいなはゆっくりと頭をあげると美貴の方へ視線を向け口を開く。

『…なんか、今日、あったいろんなこと思い出して…やなことばっか』
『…そっか、確かにいろいろあったね、今日は…』
『…はい』
377 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/03/31(木) 08:04
『う〜ん』

美貴は再び、湯舟に身を任せながら後ろに寄りかかると、今日あった出来事を思いおこすべく、ゆっくりと目を閉じてゆく。そして、同じようにゆっくりと目をあけ、れいなの方を向くと言った。

『…でも、私はやなことばかりじゃなかった』
『…えっ』

れいなは、美貴の目をみつめたまま言葉の続きを待った。

『…辻加護のことはあまり気分のいいものじゃないし、親のことも確かにショックだった…でもさ、なくしていた大切なものを取り戻すことができた気がするんだ』
『大切なもの…?』
『そう、大切なもの…う〜ん、具体的には説明できないけど、れいな、あんたのおかげということは確かかな』

美貴はれいなに笑顔を向ける。

『…れいな、なんもしてなかっちゃけど』
『そんなことないって…』

美貴は、徐々に意識が朦朧としてくるのを感じた。

『…うぅ、なんかちょっとのぼせてきたかも…ごめんれいな、先にあがってる』
378 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/04/05(火) 08:07
美貴の体が湯舟から徐々に抜け出し、あらわになってゆく。

れいなはその様子をごく自然に眺めていた。

『…ふじもとさんスタイルよか』
『へっ?…』

かあぁぁ

れいなの口から自然と出た言葉に、美貴は不意打ちをうけ顔を赤くしてゆく。

『なっ、なんだよきゅうにっ、変な事いうなよ、はずかしいじゃんっ』

恥ずかしがってる美貴をよそに、れいなはタオル越しの自分の胸と美貴の胸を交互に見比べる。

『…はぁ…いいなぁ…どうやったらそんなにでっかくなると?』
『し、しらないってそんなのっ…ったく、あがるからね。れいなものぼせない程度にしなよっ』

そう言うと美貴は顔を赤らめたまま、脱衣所の方へと早足で進んでいき、充満している湯気の中へとその姿を消した。

美貴の後ろ姿を見送ったれいなは、ゆっくりと湯に身を任せるように背もたれに寄りかかる。再度、自分の胸に視線を向けると小さなため息をついた。
379 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/04/05(火) 08:23
『はぁ…さゆとかどうやって大きくしたんだろな…れいなはなんでなかと…ふぅ、かんがえてもわからんっちゃけん…まぁ、なるようにしかならんと

…それにっ!、ちっちゃくてかわいいじゃん!れいなんむねっ!!…はぁ、むなしっやめっ』

(…でも、ふじもとさんがげんきになったけんよかっ…れいな、ちょっとでもちからんなれたんかな…)

『…ふぅ…それにしてん…いいきもちたい…あぁ』

れいなは目を閉じ首を後ろに傾けた。


―それから五分くらいたち―


『うぅ…そろそろ、あがろっ』

バシャッ

『…っとお』

急に立ち上がったせいか、れいなはたちくらみに襲われる。

ふらふらと湯の中を歩き、脱衣所へと到着する。

ガララッ

スライド式の戸をあけ、乾燥機にかけてある自分の服を取りに向かう。
380 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/04/05(火) 08:50
『あっ、これ、れいなのふくだ』

れいなは乾燥機の側の台にきちんと折りたたんである自分の服をみつける。

『…ふじもとさんがやってくれたんだ…やさしか』

れいなはいちばん最初に着用しなくてはならない下着をかごの中からあさる。

(…うぅ…したぎもたたんでくれたってこっちゃね、はずかしっ)

れいなは体を拭き、ちゃっちゃと着替えをおえて髪をドライヤーである程度乾かすと、これもまた美貴が用意してくれたであろう、小さめのタオルで髪の毛の残りの水分をとりながら脱衣所を後にした。

それからすぐ隣のリビングで、れいなは美貴の後ろ姿をみつけると、人懐っこい笑みをうかべながら歩み寄る。

しかし、美貴は下を向いたまま、小さく体を震わせている。

『…ふじもとさん?』

れいなは声のトーンをさげ、遠慮がちに声をかけると美貴の視線の先、何か用切れのようなものに目をむける。


― 二十二の刻、お前の母親を殺す…それがお前の望みだろう。
  
  興味があるなら来るがいい  秦鷹 ―
381 :黄忠 :2005/04/05(火) 08:59
皆さん、ちょーお久しぶりです。

この、呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編)もやっと、クライマックスに向かいます…まだ、これからが長いんですが。

読んでくれてありがとうございます。次回更新は近い内に
382 :通りすがりの者 :2005/04/06(水) 04:53
更新お疲れさまです。 うぁっ( ̄□ ̄;)!!ついに始まってしまいまうんですね! しかもあまりにも悲しい・・・。 次回更新待ってます。
383 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/04/16(土) 13:03
(…うわっ、これって)

『ふ、ふじもとさんっ!!」

れいなは勢い良く美貴の顔見ると、焦り気味に名前を叫ぶ。

『…れいな、上がったんだ』

美貴は静かな声でつぶやいた。

『は、はいっ、とても気持ちよかっちゃけんっ…てちがっ、ふじもとさんこん手紙は!?』
『ん…あぁ、そこ、足元にきをつけなよ。矢がおちてるから』

感情を殺したような口調で美貴が言う。

『えっ!?』

れいなは、自分の足の付近を見回す。

『…ほんとだ』

れいなはかがみこみ矢を手に取ると、まじまじと全体を眺め、鋭い矢の先端を見た。

『…れいな、いま何時かわかる?』

美貴は、れいなの方を向かず無表情のまま声をかける。
384 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/04/16(土) 13:39
『あっ、は、はい、携帯見れば』

美貴から感じる、見えない圧力のような何かに押され、れいなはあたふたと二つおりの携帯電話をひらく。

『えと、九時二十分です』
『そう…今から行けば間に合うね』
『 !! 』

力の抜けたような美貴の言葉に、れいなは自分の背中に悪寒が走るのを感じた。

『ふじもとさん…まさか!?』
『…なに?』

(…まさかほんとに、ふじもとさんのママが死ぬんを見に行く気なん…ううん、ぜったいちがうっ。ふじもとさんはそんな人じゃなかっ、きっと助けに行くんだ)

『…れいな、どうかした?』
『ふじもとさんっ、れいなもふじもとさんのママたすけるん手伝うたいっ』
『!!…れいな、なんでっ』

美貴は、心底驚いた表情をれいなに向けるが、すぐに悲しさを感じさせる真剣な眼差し(まなざし)に変わる。

『…ありがとう、れいな…でも、それはできない…秦鷹…辻加護だと思うんだけど、あいつらは本物の刀を持ってるんだ…正直、自分で言ってても違和感バリバリなきがするけど…命の保障はない

…れいなには家族、大事にしてくれるパパ、ママがいるじゃん…その人たちから、れいなを奪うなんてできないっしょ』

『…ふじもとさん』

れいなは悲しそうな表情でつぶやく。

『ほ、ほらっ…私の場合、そんな家族なんていないし…悲しむ奴もいない…じゃんっ』

無理に笑顔をつくり、言葉の語尾を上げる美貴の目には涙がたまり、今にもこぼれ落ちそうになっていた。
385 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/04/16(土) 14:07
『…いると』
『え…』
『れいながいる…えりだって、さゆだってきっと泣くとっ、みんな、ふじもとさんのこと大好っきゃもんっ』
『…れいなぁ…うぅ…ありが…と…う』

美貴の頬を大粒の涙がつたって落ちる。

『ふじもとさん、いそごっ』
『うんっ』

笑顔のれいなに、美貴も笑顔で応える…つかの間の幸せ。二人の瞳はすでに明日を見据え輝いていた。

嫌な思い渦巻く、美貴の自宅に向け無言で、ただ闇雲に走り続ける美貴、何とかその後に続くれいなの二人の少女。

何故そうするのか、お互い正しい答えを出せぬまま、目的地である藤本家が二人の視界に映り込む。

(…あれは!!)

『やめろおぉぉぉー!!』

美貴の大きな怒声に、少女達がゆっくりと振り返る。小さな手には、月明かりに反射し、怪しい光を放つ刀を持っている。希美(秦)、亜依(鷹)だった。
386 :黄忠 :2005/04/16(土) 14:10
更新しました。かなり間があいてすいません。
387 :通りすがりの者 :2005/04/16(土) 21:47
更新お疲れさまです、お待ちしておりました。 ついにあの二人と対面・・・この後気になります! 次回更新待ってます。
388 :黄忠 :2005/05/15(日) 12:54
皆さんお久しぶりです。…更新があいてすいません。

パソコンが遠いところに旅立ちました(泣)。今、何とかつなげてる状態。

なので近々、新しいのを買う予定ですので、お待ちいただけたら幸いです。
389 :通りすがりの者 :2005/05/16(月) 15:40
早く帰ってくる事を願いながらいつまでも待ってます。 拝見させて頂いた皆様の作品は絶対最後までお付き合いさせていただくのが自分のモットーです。 だから何年経ってても見ます。
390 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/06/09(木) 07:57
『…なぜ止める?これはお前が望んでいた事のはずだ』

 ゆっくりと振り返った秦は、かも当たり前のように美貴を見据え、言葉を投げかける。

『…確かにあんたの言う通りかも知れない…心のどこかでそれを望んでいる私がいるのかもしれない』
『…美貴』

美貴の母親は、自分の今までしてきた事の罪悪感を感じたのだろう、下を向いたままただ、一言名前を呟く事しかできなかった。

『…そうだろう、ならば…』
『…でもさ』

秦の言葉を遮るように美貴は静かに言葉を続けた。

『…でも、お母さんが生んでくれなければ、私はれいなのようないい奴と知り合うこともなかったんだ』

美貴は目の前の希美(秦)、亜依(鷹)から視線をはずすと母親にできる限りの笑顔を向けた。

『ありがとう、お母さん』
『美貴…』

美貴の母親は涙を溜めながら顔をゆっくりあげ、美貴の顔を恐る恐る見た。美貴の寂く、優しげな笑顔に美貴の母親の頬を涙が伝う。
391 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/06/09(木) 09:14
何か言わなくてはならないと、口を開こうとする美貴の母親だが、

『もう…何もいわないでっ、こいつ等を何とかしたらもう二度とあんたの前に姿を現さないよっ』

そんな美貴の必死な否定の言葉によって遮られ、美貴の母親はその場に泣き崩れるしかなかった。

美貴は母親への未練を断ち切るように視線を希美(秦)達に戻すと、鋭い眼光で睨み付ける。

『…口で言うのは簡単だ…だが、果たして本当に自分の命を犠牲にしてまでそいつを守れるのか?憎いそいつをっ』

希美(秦)は最後の確認をするように、死刑宣告をするかのよう、美貴に問う。

『……。』

無言の美貴。しかし、目に迷いはない。

『…そうか、わかった。覚悟はいいなっ、いくぞっ!!』

希美(秦)は素早く刀を構えると一気に美貴との間合いをつめ、殺意のこもったそれを振り下ろす。実戦経験のない美貴がそれに反応できる筈もない。

『くっ』

カアアァァァッッ

『ぐっ、なにぃっ』

神々しい金色の光が希美(秦)の前に広がる。

カキイイィィィンッ

『…これって』

美貴は広がり続ける光の中で、首から提げていたペンダントを無意識に目の前にかざしていたことに気づく。

《…藤本美貴、よく、頑張りましたね…》
『…えっ…?』

美貴は優しげな女性の声に導かれるように天を見上げる。

《私はあなた方、人間で言う神という存在…》
『ええぇぇぇっ!?』

あまりの出来事に美貴は大きな驚きを覚え、それが声となってあふれ出る。
392 :黄忠 :2005/06/09(木) 09:19
っしゃあ、約束通り帰ってきましたよ!!

通りすがりの者さん。待っていてくれてどうもありがとうです。

他の皆さんもお久しぶりです。よろしくですよ〜。
393 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/06/10(金) 07:54
《驚くのも無理はありません…》
『え…あの』

美貴はあまりの現実離れした出来事に開いた口がふさがらないといった感じで天を見上げ続けていた。そんな様子の美貴を、再び神の声が包み込む。

《…藤本美貴…あなたはどうしたいのですか?》
『…どうしたい…?』

(…死にたくない…違う…私は…どうしたいんだろう…お母さん…れいな…辻加護…)

美貴の意識が徐々にもどっていき、今の状況が脳裏によみがえり昂ぶる気持ちが力強い言葉となる。

『私…守りたいんだ…れいなを、そしてお母さんを…辻加護をっ…理由なんてない…ただ守りたいっ!!』

それが美貴の本当の気持ちだった。力強さ、優しさを感じずにはいられない言葉。

《その気持ち…わかりました。あなたのその強い心を信じて宝具の封印を解きましょう》
『えっ…』
《あなたが手にもっているペンダントのことです。それは私の存在する天上界の神器…》
『…天上界の…神器?』
《それは、その人間の心の強さを武器にかえる…そう、あなたの強い心ならとても強力な武器となるでしょう》
394 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2005/06/10(金) 08:55
『…すごい』
《…秦、鷹》
『…えっ』

美貴は聞いたことのない言葉に反応する。

《…目の前の辻希美、加護亜依の体を支配している者たちの名前です…親に殺(あや)められ、この世を去った可哀想な兄弟』

美貴は神の心が泣いているのを感じ取った。

『そう…だったんだ…可哀想だね』
《そうですね…ですが、このままにしておけば罪のない犠牲者が増えるばかり…それはなんとしても避けなければなりません…》
『…うん』
《…藤本美貴…お願いがあります》
『…えっ?』

果たしてこの世の中に神から頼まれごとをされる人間はいない。

《…あの子らを救い出してほしいのです。怨念という呪縛から…。無理なお願いとはわかっています。ですが、

我々天界の者達は本来であれば、下界に関与してはならないのです。今、こうして時間を一時的に止め、あなたと話しているのも私が独断でやっていること》
『…なんでそこまで…ううん、私には関係ないか…わかった、頑張ってみるよっ』
《…えっ?》

美貴のそんな言葉に今度は神が驚く番だった。無言で頷く美貴。

『…でっ、具体的にはどうすればいい?』
《えっ?…あ、じ、神器を使って、あ、あなたに秦鷹を説得していただきたいのです。あなたのその強い思いで》

驚きをごまかすように神は威厳に満ちた声でたんたんと話を続ける。
395 :名無飼育さん :2005/07/07(木) 22:03
更新おまちしてます
396 :名無飼育さん :2005/09/07(水) 20:46
更新まだかなぁ?
397 :黄忠 :2005/09/12(月) 21:52
名無飼育さん

楽しみにしていただいてありがとうございます。
この所、仕事で忙しく更新できなくてすいません。
ちゃんと続きはできています。今年中には…
398 :通りすがりの者 :2005/09/23(金) 17:26
>396
次からはかならずメール欄にsageとお書きください。

マッタリと待ってますので、帰ってくださることを願っております。
399 :名無飼育さん :2005/12/12(月) 04:26
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
400 :黄忠 :2006/01/15(日) 23:05
約束の期限に帰ってこれなくてすいません…
大変なことが身のまわりでおきてしまって、でも帰ってきます
401 :名無飼育さん :2006/01/16(月) 00:01
何でわざわざ上げるのでしょう?
402 :名無飼育さん :2006/01/17(火) 00:17
お待ちしてますのでがんばってください。
403 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/02/15(水) 01:44
『強い心で…説得する…』

美貴はそう呟くと頭の中で考えを巡らす。

《はい…まずは宝具。あなたの心が生んだ武器を秦鷹の刀と交えるのです…》
『ペンダントのことだよね?』
《ええ、かなりの危険が伴います…ごめんなさい美貴》

美貴は神の震えた声から涙を感じとった

『…あやまらないでいいよ。ただ私は頑張るだけだからさ…で、それから?』

仕事をこなすような口調で天に問いかける美貴。

《美貴…
そのときにあなたの心が秦鷹の魂に伝わるのです》

神は涙をこらえたような声で答える

『…わかった…でももし、失敗して私が死んじゃったりしたら天国にいけるのかな…』
《えっ?》
404 :名無飼育さん :2006/02/15(水) 01:52
リアルタイムだ
405 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/02/15(水) 02:22
威厳に満ちた神の声色が一瞬幼なくなるのを美貴は見逃さなかった。

『えっ、今の声』
《やぁだぁ、きかないでよ…みきちゃんごめんね》

神は恥ずかしがると可愛いらしい声色のまま、泣きながら美貴に謝った。

『みきちゃんて…』
《…ふ、封印を解除します…美貴頼みましたよ…じゃ、じゃあ》

神は焦ったように話を逸らすとそれを最後に、美貴への声が届かなくなった。

『へっ?あのぉ、なんなの…』

パアアアァァァッ

『うっ…』

だが、神がいなくなったことにより止まっていた時が動き出すと、美貴の疑問を消滅させるかのように、再びペンダントが光を放つ。それからその姿を徐々に変えてゆく。

やがて光がおさまると、美貴はペンダントに目をやった。

『すごい…』
406 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/02/15(水) 17:53
美貴は両の手にもった宝具に声をもらした。黄金に光輝く武器は綺麗な装飾を施した斧を二つ鎖でつないでいた。大きさからかなりの重量と推測されるが、美貴の体には重さを感じさせなかった。

『これが私の心が生んだ武器…』
『くっ…』

神々しい光に恐怖を覚えた(希美)秦は反射的に美貴と間をとった。すなわち、時が止まる前の思考がそうさせたのだ。

『またあの光か…なんなんだいったい…なっ?』

(希美)秦は美貴の両手に握られている武器に驚愕した。

『にいちゃん…』

亜依(鷹)は希美(秦)に声をかける。

『……。』

希美(秦)は無言で美貴の動向をみている。そして同じく、真剣な眼差しを向けている美貴と目があった。
407 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/02/15(水) 19:15
美貴の口がゆっくりと開く

『…これってさ…テレビとかでよくやる決闘ってやつだよね…まさか自分がするはめになるなんて考えてもなかった…けどさ、やるっきゃないよなっ』

そう、自分の心に言い聞かせるように言うと、美貴は見よう見まねで素人なりに武器を構える。

『れいな…助けるために私も頑張るけど…死んじゃう可能性もある。もしそうなったらごめんね…』
『ふじもと…さん』

美貴の覚悟を感じさせる静かな言葉にれいなの目には涙がたまる。

『だからその前に確認しておきたいんだ…わたしはれいなのことが…好き…れいなも私のこと…好きでいてくれる?』

美貴は静かな声のまま言葉を続けた。

『うん、れいなはふじもとさんことめっちゃ好き…たい…』

れいなの目からたまっていた涙がとめどなく流れでる。

『れいな…ありがとう…お母さんさよならっ…いくよ!!』

ダダッ

美貴は武器を手に秦に向かって駆け出す

(とにかく武器を交わすことだけ…)

希美(秦)は向かってくる美貴に合わせるように刀を構える。
408 :黄忠 :2006/05/25(木) 19:57
さて…大好きだった娘。たちもめっきり減ってしまった…でもこのサイトのたくさんの娘。たちは今もなお輝いている。俺も頑張るぜ…独り言勘弁ね
409 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/05/25(木) 21:35
『やるしかないんだよ!!』

美貴は気合の入った掛け声とともに一方の黄金の斧を頭上で力いっぱい振り回すと、忍者が使う鎖鎌のような要領でそれを投げつける。

ブウウゥゥゥンッ

黄金の斧は唸りをあげ、神々しい光の粒子を撒き散らしながら、その速度を増し、姿を黄金の彗星へと変える。

『…え』

驚きを隠せない投げた本人の美貴を後目に黄金の斧はさらに速度をあげ、希美(秦)に襲いかかる。

ガギイイィィィンッ

美貴の投げた黄金の斧と希美(秦)の持つ刀がぶつかる。大きな金属音がこだまする。

『ぐっ…ううぅぅぅっ…なっ…なんだと!?』

黄金に輝く彗星は希美(秦)の体ごとふきとばす。

『うわああぁぁぁっ』
『にいちゃんっ』

ドサッ

地に強く叩きつけられる希美(秦)の小さな体。
410 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/05/25(木) 22:37
『ぐうぅぅ…』

刀を地面に差し、ゆっくりとした動作で希美(秦)は起き上がる。

『はぁ…はぁ…くっ、ゆだんした…』
『にいちゃんっ』

状況をいまいち把握できない当の美貴は希美(秦)に駆け寄る亜依(鷹)を無意識のまま眺めている。

『…すごかぁ…』

れいなは自然に声をあげると

『ふじもとさんっ』

大きめな声で美貴の名前を呼んだ。

『…れいな』

美貴は恐怖と興奮で体を震わせたまま、ゆっくりれいなの方をふりかえると確認するように口を開いた。

『れいな…あれ…わたしがやったの…?』

コクリ

れいなは言葉のかわりに首を縦にふった。
411 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/05/26(金) 00:10
れいなの体も小刻みに震えていた。だが、恐怖よりも興奮で打ち震えていた。

(ふじもとさんすごか…かっこよかたい…)

憧れの目指しで美貴をみつめる。

『はっ…な、なに、れいな?』

放心気味だった美貴はれいなの熱い視線により意識を取り戻すと同時に

『そうだ』

希美(秦)亜依(鷹)方へと振り返り、希美(秦)亜依(鷹)の隙をみて投げた黄金の斧を素早く引き寄せるとそれを構えなおす。

亜依(鷹)が負傷した兄の希美(秦)をかばうよう、美貴の前に立ちふさがる。いくら秦が剣の達人とはいえ、憑依している希美の体自体はごく普通の少女だ。あの攻撃を受けて無事で済むはずがなかった。

『兄ちゃん…さがっててくれ…後は俺がやる…』
『鷹…わかったすまない…でも油断だけはするな…』

希美(秦)は胸の辺りをおさえ、その場に座り込む。

『大丈夫…心配ないよ。本気で殺るから…』

その場で希美(秦)にそういうと、今度は美貴の武器を見、美貴の顔を見据える。亜依の愛らしい目が殺意に染まる。

『…さよなら』

その言葉を最後に美貴の視界から亜依(鷹)の姿が消える。

『えっ…消え』
『あぶないっ!!』

美貴の声を遮るように大きな声が夜の空に響く。

ブオオォォォッ

大きなうねり音をあげながら強風が巻き起こる。

『なっ…なんだ!?…ううわああぁぁぁっ』
412 :黄忠 :2006/05/26(金) 00:17
約、三ヶ月ぶりに更新しました。今度はちょくちょく更新できそうです。
413 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/05/26(金) 23:58
横から不意をつかれた亜依(鷹)の小さな身体が強風に運ばれる。

辺りは住宅街、亜依(鷹)は壁への衝撃に備え強風の中、必死に体勢を整えようとする。

『くっ…だめだ、うごけない…』

亜依(鷹)は冷静に頭を切り替え、全身に力をこめる。だが、いくら身体を硬くしてもかなりの風の勢いだ無事ではすまないだろう。

『かまちゃんっ!!』
『キュウウゥゥゥンッ』

高い獣の鳴き声とともに強風はその軌道をかえ、天へとのぼる。そして徐々にその勢いを和らげ、亜依(鷹)の足が地上に優しく到達する。
414 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/05/27(土) 00:39
亜依(鷹)はその場に呆然と立ち尽くす。

『ふぅ…あぶなかった』

小柄な人物は、そうほっと胸をなでおろすと、その場にかがみこみ、目の前の白い獣の頭をなでる。

『よくやったな。かまちゃん』
『キュウウゥゥゥンッ』

白い獣は気持ちよさそうにしている。金髪の小柄な女の子、真理とかまいたちの子、かまだ。

『ほんと、あぶなかったね』

続いて、隣でその一部始終を見ていたなつみも口をひらく。

『れいな〜、ふじもとさん〜』
『さゆ、まって』

そんな中、戦闘中の美貴たちのもとへ駆け出す複数人影あり。さゆみとえりだ。

『ちょっ、おまえら』

真理はそんな二人を止めようと声をかけるが届かない。

自分たちのほうへ駆けてくる二人。それに気づいたれいなが方向を指差し、声をあげる。

『さゆ、えりたい』
『うん…でもなんでここに』

美貴があいずちを打つ。しかし

『おぃ…ってか!…あぶない!!』

すぐさま現状に戻り、声を張り上げ、二人に注意を促す。
415 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/09/16(土) 01:35
美貴は状況を把握し、自分自身や大切なれいな達三人の安全を確保するべく希美(秦)亜依(鷹)へ視線をうつした。

その視線の先にいる、怨念だけを心に抱きし兄弟は今戦っていた自分と新手の真理たちの出現により、注意を分散して動くに動けない状況のようだ。そんな中、絵里とさゆみ、二人の足音だけが闇夜に響き…やがて止んだ。

息を切らせながら美貴のそばに駆け寄り、二人はその勢いで美貴に抱きつく。背の高い美貴を見上げる二人の目には涙が浮かんでいた

『うぅ、ふじもとさんっ…うっ…ひっく』
『ふじもと…さ…ん…うわああぁぁぁんっ』

美貴の服を強く掴み泣きじゃくる絵里とさゆみ。

『…どうしたんだよ…えり、さゆ…』

美貴は二人の後輩に顔を向ける

『おいっ、気を抜くなっ』

かまの変身した風陣剣をその手に強く握り締めた真理が美貴に注意を促す。
416 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/09/18(月) 03:43
『はっ』

真理のちから強い声で自分と大切な後輩たちの身の危険を思い出した美貴は、その元凶である目の前の兄弟に素早く視線をもどした。

『…れいなっていったっけ?…後、亀井、道重、あぶないからお前らは下がってろ…』

真理は諭すような口調で三人に言った。秦鷹兄弟の妖気に気圧されてか真理の額に嫌な汗がうかぶ。

『そうだよ、れいな、えり、さゆ…あんたたちはわたしにとって一番大切なんだ…失いたくない…だから』

美貴は抱きついて涙をながしている二人を優しくはずし、今度は自分のほうからその二人を一度強く抱きしめると守るように一歩前に歩みでた。そして兄弟のほうへ鋭い視線をむける。

『…さっきはあぶないところをありがとう』

美貴は目の前の兄弟から視線をそらさず、そばで自分と同じく剣を構えている真理にお礼にのべる。

『…おいらは矢口真理、藤本と同じ学校の三年だぜ…なんでおいらたちがここにきたかとかそういう詳しい話は後で。今は』

コクリ

真理の言葉に黙って頷く美貴。

『う…うぅ…ひっく…ひ』
『…うぅ…ふじもとさん』
『さゆ、えり、ふじもとさんの邪魔になるけん、れいな達はもっとはなれるたい』

涙のとまらないえりとさゆみにれいなは一人冷静な口調で声をかけると二人の手をゆっくりとひっぱった。
417 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/09/19(火) 00:57
(…れいなにはなんでなんにもなかと…いつもふじもとさんに助けられてばかりなにも力になれない…)

『くっ…』

れいなは強く唇をかみしめた。その悔しさから目には涙を覗かせている。

『………。』

(…どうすればいいんだよ。なんでこんなことになっちまったんだよ。つじ、かご…ちくしょう)

相手の兄弟の魂が希美、亜依の身体を支配しているため、真理はどうにも動くことができない。

『…矢口さん』

美貴がゆっくり口をひらく。

『…なに?』

真理は軽く返事を返す。

『…さっきの風って矢口さんがおこしたんですよね?』
『…おいらの力ってわけじゃないけど、まぁ…そうなる』
『…矢口さん』
『…なに』

美貴は間をおいて、ゆっくりと言葉をはなった

『…辻と加護の…足止めをお願いできますか…?』
『………』

真理は予想だにしない美貴の言葉に詰まりながらも頷いた。

『わかった…』

真理は後ろにさがっているれいな、さゆみ、絵里の三人に視線をうつすと

『あいつらがあそこまで慕ってるんだもんな。藤本、あんたを信じるよ』
418 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/09/19(火) 16:57
『矢口さん…』
『…でも、死ぬことは許さないからな』

真里のその一言が美貴の心の曇りを振り払った。美貴の目に光がもどる

『はいっ、わたしだってこんなとこで死にたくない』

(そうだ、わたしは死なない、せっかく幸せを見つけたんだ。絶対に生きてやるっ、それに辻加護を助けられるのもわたしだけなんだっ)

真里は美貴の表情と力強い答えを聞くと安心したようだ。すぐそばまで歩み寄ってきている一番の親友であるなつみに声をかける。

『なっちっ』

なつみはをそれだけですべてを理解した。真里の言葉に頷くと美貴のほうへと駆け出した。

タタタッ

(なっちたのんだよ)

なつみは美貴のところまでくると戦いにふさわしくないような明るい笑顔で自己紹介を始めた。

『はじめましてだよね?なっちだよ。あっごめんね。こんな紹介じゃじゃわかんないよね。私は安倍なつみ、やぐちと同じでみきちゃんのいっこ上だよ』
『…よろしくお願いします』

いつもの美貴ならば、一度も顔を合わせたことのない相手にみきちゃんとか呼ばれると苛立ちを覚えそうなものだがなつみの場合はそれを感じさせなかった。
419 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/09/19(火) 19:01
『みきちゃん達はなっちが守るよ。安心して』

優しくも頼りありげななつみの言葉は美貴に大きな安心感をあたえた。その様子を目で確認した真里。美貴も兄弟に仕掛けるタイミングをはかりはじめた。

『藤本、お前の指示でおいら達はしかける』
『わかりました』

(何度もなんてわたしの柄じゃない。わたしのできることをするだけだ。矢口さんがあいつらの動きをとめてくれたら全力で接近して武器を交えるだけ。後は説得!!)

そんな美貴と真里の、命すらかけたやり取りを見ている絵里とさゆみ。もう流れていた涙は止まり、その心の中では新たな決意が芽生えようとしていた。

(ふじもとさん、やぐちさん、あべさん、みんな戦ってる…えりだってちからになりたい…でもこわい。こわいよ。死にたくないもん…そうだ、やぐちさんだっていってた。あぶないから下がってろっていってた…でもいいの?それでいいの?…紺野せんぱい…)

絵里の脳裏に陸上部部室での出来事。紺野あさみの姿がうつしだされる。同級生殺しの罪にとわれ、警察すらも敵にまわし、親友、小川麻琴の仇を討つためだけにすべてを捨てた少女。

(…いいわけないよ、いいわけないっ)

『ふじもとさんっ…えりも…えりだってたたかえます…ほんとはこわいです。でもふじもとさんやれいな、さゆ、先輩たちが傷つくほうがもっといやっ…それにえりにはちからがあるんです』

絵里はそういうと両の目をとじる。

『わたしの能力(ちから)…頭で考えた物を形にできるちから…』

コトンッ

絵里の目の前に落ちた物体に皆の視線が集中する。

それは長方形の形をした木の板だった。そこに字が彫られている。

えりを信じて、一緒にたたかわせてください

その彫られていた一言から、絵里の必死の思いと覚悟が感じとられた。硬い板に削るほどの決意のあらわれだった。

絵里は美貴を見上げる。その相手はゆっくりと頷いた。
420 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/09/19(火) 20:23
『…えり…うぅ…え、なに?』

そんな時、さゆみの脳裏に声が響く

『え?…だれ?。こわいよ、いやあ…ぁぁ』
《驚かせたみたいで申しわけないのう》
(いや…こわい…)
《大丈夫じゃ、わしは怨霊ではない…》
(こわいっこわいぃっ)
《こりゃまいったのぅ、これでは手遅れになってしまう…やむおえん》
(はやくでてって!!)
《ええいっきけええぃぃ!!》
(…ひっ)
《きけい、降霊師の娘よ…このままではお前の大切な者たちが命をおとす。それを避けるためにわしはきたのじゃ》
(………)
《わしは神社の神主じゃ…落ち着いて、心で感じてみるがよい》

降霊師の家系で生まれたさゆみは霊能力で霊の正体を見やぶることができる。

(ほんとだ邪気が感じない…でも、秦鷹兄弟に対しての殺意を感じる。後なんだろう、もやっとした優しさ…)
《なんとっ…そこまで見えようとは予想しなんだ…》
(秦鷹の兄弟を殺そうとしてる…つじちゃんとあいちゃんを犠牲にして)
《ぐっ…むうう》
(そんなのだめ…ひどい。かわいそう…つじちゃんもあいちゃんもなにも悪くないのに…)
《ぐむぅぅ…確かにそうかもしれん…だがこのままでは…》

さゆみに諭され、考えを巡らせる老人。しかし、秦鷹がいつ動き出すかわからないこの状況でのんびりなどしてられないのも確かだ。
421 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/09/19(火) 22:33
(…妖怪かまいたち、治癒の能力をもつ娘、脳裏に浮かんだものを現実に具現化できる能力…それにあの者のもつ武器、どう考えても人の手に余るものじゃ…もしや神の…ふむ、そうじゃ、間違いない)

《降霊師の娘よ…身体を借り受けるぞ》
(えっ?)

さゆみの意識は一瞬のもとに消え去る。普通ならば、そのようなことができるはずはないのだが、神社の老人はさゆみ以上のちからを持っていた。更に言うなれば、老人の肉体が無事であれば、戻ることも可能なのだ。

(…すまぬな…)

さゆみの身体に乗り移った老人は一言、さゆみに心からわびた。

『さゆ…大丈夫?』

絵里は先ほどからさゆみに声をかけていた。独り言のように怯えていたのだからそれも無理はない。しかし、そんな絵里のそばをさゆみは無言ではなれてゆくと天に手を掲げた。

『きたれい、神具鳳龍(しんぐほうりゅう)よ!!』

天から舞い降りてきた長い薙刀を手に取るさゆみ。頭の上でその薙刀を一回転させると構えをとった。

あまりの出来事に誰も声をだせない。

『驚かせたようじゃな…わしはこの町の神社の神主じゃ。この娘っこの身体を借りておる。おんしらに助太刀するべくまいった。

さゆみの愛らしい声色のまま話す老人。

『ときにそこのおまえさん』
『あっ、あたしぃ』

美貴はかなりびっくりしたのか素っ頓狂な声をあげる。

『そうじゃ…おんし、その手に持っている武器は誰にもらった?』

少しの間をおいて美貴は口を開いた。

『…信じられないかも知れないけど神様だよ…この武器で辻加護の身体をのっとってる兄弟を説得してくれってたのまれた』
『なんとっ…やはりそうであったか…しかしあやつらを説得…う〜む。神様が選んだのがおんしならあやつら兄弟も救われるかもしれんな』
『え?』
『わしが秦鷹の相手をする…おんしらにはちとにが重いからのう。そこの娘っこ、おんしはかまいたちのちからを使い、治癒の娘と黒い長髪の娘を守るのじゃ』
422 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/09/19(火) 23:01
『わかった。なっちとえりはおいらが絶対に守る』
『それとおんしはあやつのフォローじゃ』

さゆみの姿をした神主の老人は絵里のほうをみた。

『はい』
『それではな…』

さゆみ(老人)は神具を手に秦鷹の前へと歩み出る。

『…おぉ、そうじゃった。忘れとったわい。神器をもったおんしはあやつら兄弟が疲れてくるのを待つのじゃぞ』

コクリ

『うむ』

さゆみ(老人)は美貴が頷いたのを見届けると再び歩みはじめた。
423 :黄忠 :2006/09/19(火) 23:12
お久しぶりです。更新をなかなかせず、応援してくれていた皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいです。これからまた書き始めた頃のように更新していきたいと思います。
424 :黄忠 :2006/09/21(木) 15:13
ohi
425 :名無飼育さん :2006/10/01(日) 23:49
まーたり待ってます♪
426 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/10/23(月) 23:45
美貴は後ろ視線だけれいなに向けると口を開いた。

『れいな…あんたは家にかえってな』
『えっ…』

ただ一人だけ神主の指示がなかったれいな。そして今の美貴の言葉。…身長より長い得物を構えるさゆみ…迷いのないえりの真っ直ぐな瞳…同い年の小さくも大きな背中を見ながら、自分だけが違うことを実感するのだった。

なにも考えることができずただ、涙が頬をつたって落ちる。自分も一緒に…とは言い出すことはできなかった。自分がいると他に迷惑をかけるだけ…それを確信したからだ。

コクリ

れいなは声を発することもせず首を一度だけ縦にふると、両手で涙を拭いながらその場をあとにするのだった。

『れいな…あたしぜったいに死なないから!!…さゆもえりも守って辻加護もぜったいに助けるから!!』

れいなの寂しそうな後ろ姿に最後の安心を与えようとしたのか美貴は噴出すような涙を流し、大きな声で叫んだ。

きっとれいなの耳には届いてはいないだろう、でもそうせずにはいられなかったのだ。

『あの子の退避は無事すんだようじゃな』
『はい』

前方から聞こえる若い老婆といった感じの神主の声に美貴はあいずちをうった。

『うむ…では』
427 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/10/24(火) 00:39
優しかったさゆみ(神主)の瞳が真剣な鋭さをおび、全体の不陰気が変わる。

『かっ、かまちゃん!!』

真里はその道重さゆみという少女の変わりように気圧されながらも、遅れまいとかまいたちの名前を呼んだ。

『キュオオォォォン!!』

かまいたちのかまも、その真里の心に答えるように大きな雄たけびをあげる。

その突如、周りにそよいでいた風が勢いを増し始め、なつみと絵里を包み込むと、二人を守るようにドーム状へと姿を変えた。時間にしてほんの数分程度で風の防御幕はできあがる。

『すごい…』
『うわぁ…』

なつみも絵里も驚きの声色でドームを形づくっている風の流れを上から下へ、右から左へと何度も凝視している。

『かまちゃんよくやったな、これでなっちもえりも安心だぜ』

真里は優しい笑顔でかまの頭を優しくなでようと手を伸ばした。

シュッ

『いたっ』

真里のかまに触れようとした人差し指と中指から鮮血が飛びちり、痛みが襲う。気づいてすぐに手を引っ込めたため殺傷はそれほどでもなかったのが不幸中の幸いだろう。
428 :黄忠 :2006/10/24(火) 00:47
更新が遅れて申し訳ありません。しかもなんか文章の表現に厚みがなくなってきて…なはは。
少しずつですが前の小説っぽいものにに戻していきますのですいません。

なんかあったら遠慮なく書いといてくださいね。僕は嬉いですから。
429 :名無飼育さん :2006/10/26(木) 23:29
更新お疲れ様です。
>文章の表現に厚みがなくなってきて
そんなことないですよ。臨場感が伝わってきます。

失礼を覚悟の上で、1つよろしいでしょうか。
他の作者さん達に合わせて、括弧は『』より「」にした方がいいのでは。

楽しみに待ってますので、マイペースで頑張って下さい。
430 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2006/10/28(土) 00:10
真里は負傷した指先をもう片方の手のひらで押さえながら、かまの方を見やる。

「いてて、かまちゃん…」

視線の先のかまの姿は、まるで青白い炎のようだった。白い体毛は天へと突き上がり、青白く輝いていたのだ。

真里の大切なものたちを必死に守りたいという思いがかまにの伝わったのであろう。

「かまちゃん…おまえ…」

自然と涙腺がゆるむ。言葉にはしなくても、真里の感謝の気持ちでいっぱいだった。

(かまちゃんがこんなに一生懸命頑張ってるのにおいらはなにもできないのか…)

「…いや、ある。おいらがかまちゃんを守ればいいんだ」

真里は言葉とともに想いを抱くとかまの前へと歩み出る。

「かまちゃん、おまえはおいらが守るからな」

優しくも力強い笑みをかまに送る。

少しはなれた場所で向かい合うさゆみ(神主)と秦鷹(希美、亜依)

さゆみがゆっくりと口をひらく。

「久しぶりじゃな秦、鷹よ…」
431 :黄忠 :2006/10/28(土) 00:47
名無飼育さん

ありがとうございます。更新は少なくなりますが丁寧に補完していきますね。
432 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編 :2006/10/30(月) 22:02
「あぁ…神具鳳龍、あんたがまだ生きていたとはな。肉体は滅びても命までは滅びない…か。まあいい…何度でも斬り捨ててやる!!」

そう言い放つと秦は殺意に目を染め、刀を構えなおした。

「そうはいかんよ」

さゆみ(神主)も精神統一を維持しながら、神具鳳龍を両手で持ちなおす。

「鷹は手を出すな。俺一人で十分だ」
「わかった。にいちゃん」

秦鷹のそんな短い会話の後

「いくぞ!!」
「参る!!」

秦とさゆみの二人は力強い掛け合いの後、ほぼ同時に地面をける。

カキイィィィン!!

長刀と刀のぶつかり合う金属音が高く鳴り響く。

キンッ、カキンッ、キンキンッ

そして短い金属音が何度もつながった。

カキイィィンッ

「ぐぐ…っ」

眼前に交差する長刀と刀。秦はさゆみを力で押し斬ろうと力をこめる。

「その程度か秦よ…イヤァッ」

さゆみの可愛らしくも力強い掛け声ののった。気合の一なぎに秦は大きく後ろへと弾きとばされた。

「くぅ…まだだ!!」

秦はなんとかバランスを取りなおし、着地した両足で勢いよく地面をけるとさゆみとの間合いをつめようとする。

「むっ…さすがよのぅ…だが」

さゆみは秦の動きに合わせ長刀を水平に振った。

ブンッ

長刀の刃先が空を切り音を奏でる。
433 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編 :2006/10/30(月) 22:53
秦はわかっていたようにその長刀の攻撃を高く飛び越えると、勝利を確信したようにさゆみの脳天へ向かって刀を振りおろした。

「終わりだ。じいさん」
「それはこちらの台詞じゃっ」

さゆみ(神主)は素早く長刀を手元に戻す

「鳳凰天昇!!」

ズドムッ

「が…がはぁっ」

神具鳳龍の柄が希美の腹部につきささり天高く舞い上がらせた。まるで鳳凰が羽ばたくように。

「にいちゃん!!」
「かごぉ!!」

その様子を傍観していた真里、亜依(鷹)が弾かれたように飛び出す。真里とっては可愛い後輩、鷹にとっては血を分けた兄弟だ。そこには心があるだけ。敵も味方も関係なかった。なつみも飛び出したい衝動に駆られたが、かまの張った防御膜により行く手を遮られたのだ。

「なんじゃと!?くっ」

神主は人の気配を感じ、目で真里の姿を確認すると急ぎ長刀を一振りする。その長刀から放たれる刀圧が真里と希美(鷹)の身体を捕らえる。遠くで地面に転がる二人。

「ふぅ…冷や汗もんじゃわい」

そして天から降ってくる希美の小さな身体を見上げながら受け止めようと借り物のさゆみの小さな腕を広げる。
434 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編 :2006/11/01(水) 01:38
ドサッ

「ふぅ…」

神主はその腕の中に希美(秦)を受け止めると安直の息を吐いた。それからワンテンポ遅れで秦の手に持っていた刀が地面に突き刺さる。

「ふむ…気を失っておる…ひとまずは安心じゃ」

神主はそう言うと、腕の中でぐったりとした様子の秦の額に人差し指と中指の二本を筆のように滑らせる。

「もしこやつがわしを甘くみておらなんだら、こう早く決着はつかなかったはずじゃ…」

希美の額の烙印が神々しい光を放つ。

「ぐわあ…あ…ああぁぁぁっ」

希美の可愛らしい顔が苦痛に表情を変える。神主が指先で描いた封印の印によりもがき苦しんでいるのだ。

「むうぅぅんっ」

神主は最後に希美の額から念を送る。希美の表情が徐々に和らいでいく。

「ふぅ…女子よ目を覚ますがよい」

神主の使う、さゆみの優しい声、それに導かれるように希美の両瞼がゆっくりと開かれる。
435 :名無飼育さん :2006/12/23(土) 00:22
更新待って増す。
436 :黄忠 :2007/04/01(日) 21:25
待っていただいてありがとうございます。
近ぢか復帰します。
437 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編 ) :2007/05/10(木) 21:02
「…あれ…ここ…は…?」

希美は朦朧とした意識で呟く。

「うむ、一時的にじゃが秦めを無事に封印することはできたみたいじゃな…ふう、残るは…」

さゆみの肉体に憑依している神主は、希美の状態を確認すると額の汗をぬぐった。

「…あの…えっと…」

希美はあたりを見回した後、きょとんとした表情で自分を抱きかかえているさゆみ(神主)の顔を見上げた。

「信じられんかもしれんが、おんしは悪霊に操られておったのじゃ」

さゆみ(神主)はそれに気づくと希美の方を向くと真面目な表情で話した。

「あく…りょう…?」

希美は色々と首をかしげている。

「そうじゃ、だから今までのことをおぼえておらんのも無理は…」
「い…いやぁ…やだ…こわい…あ…あぁ…」

さゆみ(神主)の言葉をさえぎるように希美の身体ががくがくと震えだす。

「なっ、なんじゃとまさか…」
438 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編 :2007/05/10(木) 21:47
「…たすけ…て…くるよ…くるよおおぉぉぉっ」

希美は震えた両手でさゆみ(神主)の手を思いっきりつかむ。目は大きく見開き充血し、見るものを恐怖に陥れる。

「くっ、秦めの力がこれほどとは…なに?ぐっ…ううう」

希美の手がさゆみ(神主)の喉元を強く締め付ける。武器がなくても確実に人を殺せる方法…首を絞めることだ。

「こ…このままでは…ぐおおぉぉぉ」

希美(秦)の締め付ける力がさらに強まる。さゆみ(神主)の方も引き離そうと希美の両手を掴むが、締め付けられる力で血が通わなくなっているため力が入らない。

真里にしろ美貴にしろ、亜依(鷹)がいるため動くに動けない状態だ。頭では考えているものの絵里も未熟なため、即座には自分の能力を生かせる方法が見つからない。
439 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編 :2007/05/11(金) 00:52

…希美の精神世界

(くっ…聞こ…える…むすめ…よ…)

「…う、うう〜ん…」

その声に導かれるように希美のまぶたがゆっくりと開かれる。

「…ここは…ひぃっ…なんなの…」

震えだしてしまうような憎悪が炎となって希美の視界の先、まわりをかこっている。

殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる
殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる憎い殺してやる

希美の脳裏に声が響きつづける。

「…いやっ…やめて…やめて…いやぁ…ぁ」

希美はその声を振り払おうと、首を勢いよく振ったり、目をつぶり耳を塞ぐが声は脳裏に入りこんでくる。涙はとめどなくながれ希美の精神は恐怖で支配されそうになる。

(むすめよ…きこえる…むすめ…よ)

「ひっく…ひっく…えっ…」

(聞こえるかむすめよ…返事をするのじゃ)

「ひっく…うぅ…だれ…?」

(おぉ、なんとかなったの。ゆっくり話してる時間はない)

老人の声に少しだけ安心を覚えたのか希美の目の前に広がっていた炎の勢いが収まる。
440 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編 :2007/05/11(金) 01:39
(むすめよよくきけ…まわりの怨念に惑わされてはならぬ。真実を見極めるのじゃ。ここはおぬしの心の中、このままではわしが肉体をかりておるこのむすめの命があぶないのじゃ)

「ひっく…こころの中、あぁっ…なんでののが女の子のくびをしめて…やめて」

本来の肉体の持ち主である希美が目覚めたため、(秦)の支配が弱まりはじめる。

「くそっ、なんだ。急に両手がいうことをきかなくなった…これはまさか…く…きさま」
「うおっほん、げほげほぉ、なんとか…このむすめを救うことができたみたいぃ…じゃな。感謝するぞ」

さゆみ(神主)は希美(秦)の首絞めからその隙をついて逃れると、一瞬で呼吸を整える。

「くっ、ならばこの女の魂を消滅させてやる」
「なんじゃと、いかんっ」


…希美の精神世界

怨念の炎の中からその炎をかきわけ一人の少年が姿をあらわにする。そして一歩一歩希美に歩み寄る。

「おまえか…この肉体の持ち主は…」
「…ひっ…こないで」

希美はがくがくと震えながらずるずると後ずさりする…希美の魂が憎悪と怨念の炎にふれる。

「…あぁ…」
「ふん…炎で焼死するか、俺の刀で斬られるかは撰ばしてやるよ…もともとお前には怨みはないからな」

秦はそういうと右手に妖刀を生み出す

「…そんな、ののは…なにもわるいことしてないのに…」
441 :黄忠 :2007/05/11(金) 01:47
みなさんお久しぶりです。お元気でしたか?

応援してくださってた方々、間が開いてしまい申し訳ないです。またよろしくです。
442 ::呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2007/05/11(金) 23:55
「さぁ…どっちにするんだ?」
443 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2007/05/12(土) 00:57
秦は妖刀の切れ先を希美に向けたままじりじりと詰め寄る。

「ののはただ、だい…すきなあいぼんやまりたちをを守りたかった…だけなのに…」

その目からは涙があふれ出し、何度もこぼれおちては消える。

「…ふん、ぶつぶつとうるさいやつだな。念仏を唱えるなら死んでからにしろよっ」

秦は勢いよく手に持った妖刀を大きく振り上げると、希美の魂を斬り捨てるべく妖刀を構えなおす。

「おまえの肉体は俺がもらう、そして鷹とともに復讐を成す…この時代の大人たちを皆殺しにしてやる!!」

秦の目が憎悪に染まると同時に振り下ろす妖刀が希美にせまる。

バシュッ…かわいたような焼けた音がなる。

「くくくっ…あっはっはっはっ!!」
444 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2007/05/12(土) 01:32
「なんだ、これは…」

秦の顔が驚きに引きつる。秦の視線の先、希美の魂を引き裂いたであろう妖刀は、その希美の小さな右の手のひらに握られていたのだ。

「くくくっ、笑っちゃうよ。大人を皆殺しにするだって?この世界にどれだけいると思ってんの?、あははぁ…ののはねぇ、たしかにどうなってもいいっていったよ…だけどさぁ、力をくれたらって話だったんだ…くく、神様になんて祈った私が悪いんだけどさぁ…」

希美であって希美でないものがそこにいた。希美の魂にあたりに渦巻いていた憎悪、怨念の炎が次々と入りこんで今や希美の魂はそれに支配されてるのだ。

「えへへ…神様なんていないんだ。でももう…そんなことはどうでもいいか…ひとのからだにはいりこんできて、好き勝手やってるおまえが気に入らないんだよおおおぉぉぉっ!!」

希美の手のひらの妖刀が溶け出す。

「くくくっ、もろいおもちゃだね。こんなのにののはこわがってたんだ…くだらない、くだらない!!」

今度は秦が逃げ惑う番だった。唯一の武器をとかされ、憎悪と怨念の塊となった希美。秦はとけかかってる妖刀を手放すと距離を大きくとった。
445 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2007/05/12(土) 02:07
「くっ、自分の怨みの炎に追い込まれるとは…まだ復讐を果たしてないというのに…」


―美貴の自宅前

「なっ、なんじゃ、この憎悪と怨みの交じり合った強大な念の力は。むむぅ、どんどん膨れあがっておる」

さゆみ(神主)は目を閉じると、希美の精神世界に透視を試みる。この方法は声をとばすだけとは違い。精神界を映像としてみるため、かなりのエネルギーを消耗する。

「ぐっ、なんと禍々しい気のながれ…わしの精神も気をぬけば喰らわれてしまいそうじゃ」

神主は防御策で念を強くこめる。

「…ながくはもたんな。早く秦と娘の魂をみつけなくては…むんっ」
446 :value :2007/10/18(木) 23:40
「くっ…くっくっくっ、あはっ、あっはっはっ!!…なんか…ふふっ、ころしても…ころしたゃうよ…ぜんぶ…ぜんぶ殺す…憎い…お前が憎い…憎くて憎くてたまらない」

怨念の赤黒い炎にまかれながら一歩、また一歩と歩み寄る。人を恨んだことなどない希美の純粋な魂に抵抗するすべはなかった。そしてここで始めて産まれた希美の方の憎しみの感情が合わさり、その魂はもう完全に憎悪の炎に支配されてしまっているのだ。

殺す…その感情のおもむくまま…。

「くっ!!」

恐怖を感じ、秦の魂は自然に間合いを保つように後退する。
447 :value :2007/11/21(水) 03:11
「ハァハァ・・・長く・・・そして苦しい戦いだった・・・」

永遠とも思われる死闘の末に秦はなんとか希美を倒した。

「故郷へ帰ってのんびりと過ごそう」

こうして戦いと別れを告げた秦は自身の故郷で終生平和に暮らしたのだった。


       −  完  −     


1ヶ月空いてしまいましたが無事終了です。
読んでくださった皆様今までありがとうございました。
448 :名無飼育さん :2007/11/21(水) 19:10
なんつーか文章が独特で楽しかったよ
また機会があれば何か書いてください
449 :名無飼育さん :2007/11/22(木) 19:17
最後あっけなかったような気もしたけど読んでて楽しかったです
450 :黄忠 :2007/11/27(火) 03:39
携帯で入力していたため、黄忠という名前が入力できませんでしたが、変わりに誰かが書いてくれていたようですね。
更新しないのに読んでくれてありがとうございます。

のんびりすぎる更新ですが,また書きたい気持ちになりました。終わらないです。
451 :名無飼育さん :2007/11/27(火) 11:26
新作ですか!?
452 :黄忠 :2007/11/27(火) 19:53
実は、呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダントの途中から早足の物語になってしまいましてリニューアルしようと考えていたんです。

新作も面白いかもしれませんね。ちょっと悩みます。
453 :名無飼育さん :2007/11/27(火) 19:57
早足だったよ!
個人的にはリニューアルというか外伝的な感じで書いて欲しいな
454 :黄忠 :2007/11/28(水) 19:02
外伝的ですかぁ、誰を出そうか悩みますね…
いっそ娘のみんなを旅行に行かせたりとか面白そうかも。

少々お待ちください。
455 :黄忠 :2007/11/28(水) 19:10
外伝ですかぁ…誰を出そうか悩みますね。

ふむ、娘のみんなを旅行に行かせたりしたら面白いかもしれませんね…

少々お待ちください。
456 :そんなこんなで旅行編 :2007/11/28(水) 20:24
ここはある山奥に存在する美の娘温泉。別名人形温泉ともいわれている…らしい。

…なぜ「らしい」かというと世間では知られてなく、ネット上で話題になり、若い娘しかみつけられない幻の温泉とされていた。本当の名前も謎であり、そして今だ見つけられたものはいない。

天上界の入り口との噂もあった。

だが、もし辿りつけた者があるとするならば、天から仙女がおりてきて、永遠の美しさを与えるとそう言い伝えられてきた。

人形温泉の由来は、宿には若い娘達しかいなく、永遠にその姿のまま年をとらない。そしてその姿は、創られたもののようにとても美しく肌も白いという…。


もうひとつの噂にこういったものがある。皆様もご存じであろう、人形には人の魂がやどりやすいということを…怨念がこもった呪われた人形のことを…


じつは過去にある若い娘達がその温泉をみつけ、入っていった者はいるが、呪い殺され生きて帰ってこなかったという説もあるのだが…

どちらが正しいかは誰も知るよしもない…


ただ、今間違えなく言えることは…若い娘15人がその宿をみつけ、目の前に立っているということである。
457 :黄忠 :2007/11/28(水) 20:38
一応、上記のようにアイデアが浮かんだのですが、どうでしょうか?
458 :名無飼育さん :2007/11/29(木) 20:11
それよりカテキョを読んでみて
459 :名無飼育さん :2007/11/30(金) 22:19
15人ってのは面白いかも
460 :黄忠 :2007/12/04(火) 12:33
ずっと見ていて下さってた皆さまには全く更新をせず、ご心配をおかけしました。

前回の失敗を教訓として、今回はじっくり進ませていただこうと思います。

前作の途中からのリニューアルと、番外編を同時に進めていきたいと思います。

久しぶりなので、以前の小説の感想や意見などと、番外編のアイデアとかありましたら何でも書いといてくれると勉強になります。…ではおち
461 :名無飼育さん :2007/12/09(日) 10:16
おおまかなストーリーは事前に固めていた方がいいよ
462 :名無飼育さん :2008/01/16(水) 23:11
どういう世界で物語が進んでいるのかをもう少し固めた方がいいかも
463 :黄忠 :2008/10/01(水) 08:29
みなさまお久しぶりです。今は小説をもとにしたゲームをつくってます。完成したらなんらかの形で配布できればと思ってます。では…。
464 :願い…私たちに人なみの平穏と幸せを :2008/11/29(土) 03:17
私の名前は紺野あさ美。

ここ、美緑中学の二年生だ。

いつものように学校にきて、最後のチャイムとともに今日もまた退屈な授業が終わりを告げる。

そしてまた。いつものように教室内が騒がしくなる。

開放感…からなのだろうか…。

男子も女子も楽しそうに、話に花を咲かせている。

そんな様子をいつものように眺めながら、私は自分の机の上に頬杖をつく。

いつも考えてる。これからのこと…大人になってからのこと。

私も他の人たちと同じように大人になればどこかの会社に就職するのだろう。

自分より目上の人に頭をさげて、命令されて。毎日がそんな感じで過ぎていくのだろう。
465 :願い…私たちに人なみの平穏と幸せを :2008/11/29(土) 03:38
女だからセクハラとかあるかも知れない。

正直、セクハラってよくわからない。聞いた話では、身体とかをさわられたりするらしいけど。

犯罪だと聞いているから気にしてもいない…。

でも…なにが楽しいんだろう。

働く。それは仕方のないこと。

お金は生活するため、生きていくためには必要なものだから。

男の人と結婚もするかもしれない。そして、子供が生まれて。母親になって家事をしながら子育てするようになるんだろう。

だいたいの人たちがそうだから。きっと世の中の摂理(せつり)なのだろう。

私がそのとき働いているかどうかはわからない…。

人はお金があれば幸せだという。好きな人と一緒にいられれば幸せだという。

けど、それが私にはわからない。私はお金をそんなに欲しいとは思わないし、そもそも欲しいものなんてない。

それに男の人を好きになったことだって一度もない。
466 :願い…私たちに人なみの平穏と幸せを :2008/11/29(土) 15:08
私の両親は私が生まれてからすぐに行方不明になったらしい。長い期間捜索は続いていたが、だいぶ前に打ち切りになった。

私の祖父は警察官で捜索の終わった後もただ一人、捜査を続けていた。

私はその祖父に引き取られ育てられた。

心労がたたったのか、病に犯されてしまったのか、ある日祖父は倒れ、そのままこの世を去った。

だから私は今、祖父の家に一人暮らしだ。

寂しいとも思わない、行方不明になった両親に会いたいとも思わない。

祖父の葬儀のとき、他の人たちは泣いていたが、私はただ一度も涙をながさなかった。

私は感情というものが欠落しているのかもしれない。
467 :黄忠 :2009/05/10(日) 03:53
やっぱり平和っていいよね!!

続き書きます。
468 :名無飼育さん :2009/05/10(日) 08:34
すごい好きなスレなので楽しみにしてます
469 :黄忠 :2009/05/11(月) 22:38
名無し飼育さん

そう言っていただきとても嬉しいです。
長く進展のなかった秦鷹編。最後までですね、まとめて今月中にアップします。では…
470 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2009/05/12(火) 21:42
「ナに…二げテルの?…コロし…コロシちゃウんじゃナカったノ?…オトナ…シちャウよ。ゼンブ…ゼンブ…コロセ、コロセエエェェェェッッ!!!」

強すぎる怨念に希美としての人格は崩壊し魂すらも支配され始める。その小さな女の子の見せる狂気の表情は秦の心底に恐怖を与えた。

「くそ、くそっ、ここで終わりなのか…成すべき復讐をはたさぬまま、消滅するのか…己が生み出した恨みの念によって…」

口元を上方にあげ、子供特有の無邪気で不気味な笑みを浮かべた希美がジリジリと徐々に秦との間合いをつめてゆく。

希美の小さな身体のまわりには青紫色の怨炎がぶつかりあい、渦巻いている。
471 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2009/05/12(火) 21:56
蛇に睨まれた蛙というのだろうか…秦は恐怖で足を動かすこともできず、
再び妖刀を生み出し、抗うこともできない。

「ちく…しょう…ちくしょう!!…なんで…なんで…動かないんだよ。ほんとに
 ここで終わりなのかよ…俺も…鷹も…せっかく今再び、この世に生まれ出でたのに…ぐく」

秦の目にうっすらと涙が浮かぶ。

人々に怖れられる対象とはいえ、その心はまだ弱い子供なのだ。恐怖で、悔しさで自分の感情を
抑えることができなくなり、涙すら流してしまうのは仕方のないことだろう。

「し、シね、シネエエェェェ!!」

「ちきしょうぅぅっ!!」

秦の絶叫が辺りにこだまする。
472 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2009/05/12(火) 22:15

同時刻 藤本家前


亜依の身体を支配した鷹、そして美希、はまだ睨み合いを続けていた…そして真里も。

かまがなつみと絵里の身の安全を守るために防御幕を張っているため、非武装だが、真里はそのかまたちを守るため、
亜依(鷹)の動きを伺っている。

真里の気持ちは、その身をなげうって犠牲にしてでも、その者たちを守ろうという気持ちに満ちていた。

そんなおり、お互い動くタイミングがつかめないことも確かだが、互いの大切な人物のことを心配な気持ちのほうがはるかに大きいのだろう。
その証拠に何度かさゆみ、そして、その腕に抱かれている希美の方へ視線を移している。

そんな状態の中、時間は刻々と過ぎてゆく。
473 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2009/05/12(火) 22:29
ウウゥゥゥッ ウウゥゥゥッ

それから更に時間は流れ、あるその時だった、夜中の静夜を劈くようにサイレンがこだまする。

バンッ バタンッ

バンッ バタンッ

何かのドアが開いて閉めるような音が夜の空に響きわたり、四本の光の粒子が暗闇を照らす。

チャッ、カチャッ

警察だった。八人の警察官が拳銃を構え、その銃口をそれぞれ美貴達に向ける。

それから、その中のリーダー格であろう一人が声を荒げる。

「お前達こんなところで何をしているッ!!」
474 :黄忠 :2009/05/12(火) 22:39
ここまでが、ラストの前半ですね。続きは今月中に。


みてくれている読者の皆様にちょっとアンケート。

ズバリ!! 僕の作品で人気の娘。 他のキャラでもいいです。 は誰?? 

次の章の参考にしたいんで教えてくれるとうれしいです。なにぶん筆者も久しぶりなもので…
475 :名無飼育さん :2009/05/13(水) 07:08
亀井絵里かな
476 :名無飼育さん :2009/07/13(月) 22:31
更新まだでしょゆか
477 :黄忠 :2009/07/17(金) 19:25
「くっ、しまった。これだけの騒ぎが起きれば、警察に通報がいくことなど、当たり前じゃ」

さゆみの額から汗がひたたり落ちる。さゆみの肉体に乗り移ってる神主の心境が冷や汗となったのだ。

真里、なつみ、絵里、亜依(鷹)の視線が自分達に銃口を向けている警官達に集まる。

まさに招かざる者達だった。

亜依の身体から殺意がこもった陰気が膨れあがり、刀の刃先を警官達の方へ向けた。

「君…なにを…」

478 :黄忠 :2009/07/17(金) 19:32
警官の一人が驚いたように呟き、銃口を亜依(鷹)に向けると他の警官達も亜依(鷹)を一番の危険と感じとったのか、。同じように銃口を向けた。


「いっ、いかん。このままではあやつらが危険じゃ…そして更に大事になるぞ」

さゆみ(神主)は警官達の心配をしていた。鷹の刀技の前には銃弾など無意味だということを悟っていたのだ。それにより無益な殺生がまた目の前で繰り広げられることを予測していたのである」


ダッ


亜依(鷹)の爪先が地を蹴る。


「今だっ!!」

479 :黄忠 :2009/07/17(金) 19:36
それとほぼ同時だった。美貴は警察が現れても慌てることなく、逆に鷹の方が隙をつくるタイミングを見計らっていたのだった。

ブンッ ブウゥゥンッ!!」

美貴は素早く手に持ったその黄金の武器を頭の上で勢いよく振り回し始める。光の粒子が飛び散り、軌跡が星を生み出す。

「やぐちさんっ!!」

そして迷うことなく、大きな声で真里に合図を送った。

「っ!!!」

真里は始め驚いた様子だったが、すぐに美貴の考えを察し、先ほど約束した合図ということを理解する。

「かまちゃんっ!!」
480 :黄忠 :2009/07/17(金) 19:41
そして真里も自分の子供。風の妖怪、かまのことを呼ぶ。

「いけえぇぇぇっ!!」

何度も空を切っていた美貴の武器が持ち主の高い声と共に手元から放たれる。

ダダダッ

そんな美貴の横を一つの小さな人影が走りさっていく。

「え?…ちょ、えりっ!!」

美貴はすぐに気づき、大きな声でその人影の名前を呼ぶ。

「刃向かうのか…くっ…」

鷹が始めに斬りかかろうとしていた警官がその自分の身の危険を感じ鷹に向けて何度か拳銃の引き金を引く。

パンパンパパンッ

481 :黄忠 :2009/07/17(金) 19:44
多くの発光とともに夜空には多数の渇いた銃声が響きわたる。

「思ったとおり…んんんんっ」

絵里が確信したように呟いた。

カンカカカンッ

その銃弾は火花を放ち、そそりたつ分厚い鉄の板に全て弾かれる。

「ふぅ…あぶなかった」

絵里の頭でイメージされた光景が具現化されたのである。

「なっ、なんだ今のは?」

警官はその現実ではあり得ない光景に状況把握ができず。唖然としている。

キューンッ

その中を一筋の光の奇跡を描く塊が通りすぎる。美貴の投げた神具であった。

482 :黄忠 :2009/07/17(金) 19:48
真っ直ぐに亜依(鷹)に向かって進む光は彗星のようだ。

「なっ…!?くっ、なんだこの…眩しいっ」

鷹はすぐ後ろから放たれる強烈な光を感じ、後ろを振り向くとその強い光を遮るため、開いた目を右手で被った。

ドォンッ

「がっ…かはぁっ」
足元の死角から迫りきた美貴が投げた神具により、亜依の小さな身体は宙に打ち上げられる。

ビュウウゥゥゥンッ!!
483 :黄忠 :2009/07/17(金) 19:51
それに合わせて風の嵐が唸りを上げて空中に打ち上げられた亜依の肉体を包み込む。あえて言葉で表すならば、相手の動きを封じ込める、嵐のロープといったところだろうか。

「くそ、動けない…」

美貴、真里の絶妙なコンビネーションにより、亜依の身体の自由は今、完全に封じられる。
484 :黄忠 :2009/07/17(金) 19:55
皆さんお久しぶりです。

始めて携帯で記入しましたので見づらかったら申し訳ないです。

今、この設定をもとに完全オリジナルでゲーム制作しているため、更新が遅れてすいません。

長い目でみていただけたら嬉しいです。
485 :名無飼育さん :2009/07/18(土) 23:57
亜依はどうなっちゃうのか
短い目で更新楽しみに待ってます
486 :名無飼育さん :2009/08/02(日) 23:00
ずっと待ってます
487 :黄忠 :2009/08/09(日) 19:54
「ふう、うまくいったな。ナイスかまちゃん」

「きゅうん」

かまが真里の声に答えるように嬉しそうな声をもらす。

「やぐちさん」

美貴が亜依に鋭い視線を向けたまま真里へと声を飛ばすと。
「藤本もタイミングばっちりだったぜ」
真里がウィンクしながら親指を立てる

「ありがとうございます」

488 :黄忠 :2012/04/30(月) 01:46
さて皆様、三年くらい経ちましたかね。まずは更新をせず申し訳ありませんでした。

モーニング娘に対して気持ちがはなれてしまって。私はこの頃の輝いていた娘たち
が大好きで小説を書かせていただいてました。愛がなくばできませんでした…。

でも、なぜか今日この場で続きを書きたい衝動に駆られました。今、どれだけの皆様が 
まだこの場におられ続けているかわかりませんが、願わくばまた、三年前のように多く
の小説で溢れ、読者の皆様が楽しみにしていられるようなスレになってほしい

と切に思います。この多くの小説の娘たちはあの頃のまま輝き続けている。それを感じます。
偉そうで申し訳ありません。だから書きます。同じ気持ちの皆様もいれば是非です。
489 :名無飼育さん :2012/04/30(月) 18:40
期待してます
490 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/01(火) 04:32
「なっ、何がおきてるんだ…?」

亜依に銃を構え発砲した警官が呟く。

「わからん…これはいったい…」

そのすぐ隣にいた警官もその一連の不思議な光景から目をはなすことができない

「…くっ、だが、あんな子供に危険を感じたとはいえ、発砲してしまうとは…」
大きな驚きのあと発砲した警官は深い後悔にかられ、すぐに銃を下ろした。

そんな警官達の様子を絵里はずっと視線を外さず伺っている。
491 :名無飼育さん :2012/05/01(火) 10:18
楽しくドキドキしながら読んでます
492 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/01(火) 12:50
「やぐちも藤本も安心するのはまだはやいよっ」

なつみが声をあげて叫ぶ

「そうだった」
「はいっ」

矢口と藤本がそうあいづちをうつと

「藤本さんっ、矢口さんっ、ここは絵里がちゃんと守ります」

警官の動向をうかがいながら、矢口達に背を向けたままの絵里も叫ぶ

そして絵里は目を閉じるとイメージを浮かべる

「うぅぅ…っ」

(とにかく大きな…みんなを守れるみたいなの…んと)

絵里の前に徐々に物体が形作られる

「くっ…」

イメージとはいえ、元々ないものを形作るということはとてもエネルギーを消耗する

「…だめ…」
493 :黄忠 :2012/05/02(水) 03:29
お二人?の名無し飼育さん、早速のレスありがとうございます。ちょっと、以前の状態
や、自分のキャラの把握まで、時間がかかるとは思いますが、期待にこたえられるよう
に頑張りますね。今回はsageられるかのお試しです。

いつも一番上になっちゃうと他の皆様にに悪いですからね
494 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/02(水) 04:44
絵里はふぅっと体から力が抜けていくような感覚にとらわれる。

それに呼応するかのように、絵里がイメージした物体に乱れが生じ、消えていく。

「うぅ、こんなことで…うぅ、」

イメージを形づくり、物体や物質としてその場に存在させるためには、脳の中でのイメージを
を揺るぎないものとし、物体化できた後もそのものをイメージしなくてはならない。

絵里は皆を守るということが前面に押し出され、責任感から、ただ大きいものをイメージして
しまっていた。形もきまっておらず、大きさも定かではない。

それではきちんとした物体を生み出すことはできないのだ。

「なんでっ、どうしてっ?…きえ…ちゃうの、よぅ」
495 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/02(水) 05:19
自分の責任を果たせず、絵里の目から涙がこぼれおちる。

そんな絵里の様子をその場にいる全員がみていた。特に警官たちに関してはひと時職務を忘れ
絵里が生み出した、大きな不確定な物質の影から視線を外すことができなかった。

「やあぁぁぁっ」

そんな静寂を打ち破るかのように高い声がこだまし、足音が響く。

(えりの頑張りを無駄にできない、そしてくるしめられない…はやく終わらせるっ)

ダッダッダッダッ

片手に黄金色に輝く神器をもった藤本であった。走る。

(加護の武器と私の武器ををあわせる…)

「く…っ」

自分にむかってくる藤本に気づいた亜依(よう)は危険を感じたのか、かまの風で動きを封じられ
ながらも必死に刀で構えをとろうとする。

「かまちゃんっ」
496 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/03(木) 03:16
「きゅうぅん」

かまの赤い目が鋭くつりあがり、小さく鳴き声をあげると同時に、亜依(鷹)の動きを封じこめていた風の締め付ける力が少しづつ
強くなる。その締め付ける力に亜依(鷹)は必死に抗うがそれはかなわない。

「くっ、…力が入らない…ぐぅ」

カララァン ラン

亜依の持っていた刀が音をたて地面に転がる。

「いまだっ!!」

矢口は亜依(鷹)のもとへかけだすと地面に転がっていた鷹の刀を
奪うようにてにとった。

「くっ、おいらの刀が…こうなればもう一度刀にもどって…」
497 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/03(木) 03:47
(鷹、もうその必要はないんだ)

鷹の魂に直接訴えかける声。

「にいちゃんっ」

鷹が驚いたように声をあげる。そしてそのまま声をあらげた。

「どうしてだよっ!!、おいらたちはおとなたちに恨みをはらすんじゃなかったのかよっ」
「話はあとにしてくれないか?」
「なんだよ!?」

一人で怒声をあげているその鷹を藤本が見下ろしていた。

「とりあえずあんたたちいみがわかんないんだよっ」

そういうと藤本は手に持っていた神器を両手に握りなおし、胸の前にたてると
その神器に思いをこめる。目の前の亜依の姿をかりた鷹の力を封じ込めそして
自分の声を伝えられるように…

神器の姿が双頭斧のような武器の姿から元のペンダントの形にもどってゆく。

しかしながら発していた金色の光は大きく広がり続ける。

「またこの光…」

その光は徐々に亜依(鷹)の身体を覆っていく。
498 :黄忠 :2012/05/03(木) 03:59
そっか、sageって今の位置を維持することでしたね。うっかり
499 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/04(金) 01:44
「俺たちは夢でもみているんですかね…」
「いや…ちがうだろう、これは」

警官の一人がぽつりと呟くと八人の警官たちの中で一番の上司であろう人物が眼前に広がっている
全体の光景をみまわす。他の警官たちも再度現状を把握するべく同じように辺りを見渡した。

「ゆめ…ではないな。だが、私たちがどうこうすることもできない事件だ…」
「たしかに…こんな常識ではかんがえられないこと…はっ」
「ですが、このままにしておくというのも」

警官の上司の言葉にその場にいる他の警官達が思い思いに言葉をならべる。

「もしかして…これは亡くなった遠野さんがいっていたあの…」

そしてまた、もう一人の警官が口をひらくと

「あぁ、確かなことはわからんが、そういうことだろう…特性変異人、それにかかわる事件かもしれん」

上司である警官は相づちを打つ。
500 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/04(金) 02:43
「美紀ちゃんっ」

そんなとき、幼くも大きくとおる声が辺りに響いた。そしてその声のするほうへその場にいる全員が視線をむけた。

背が小さく、髪を短めのツインテールで縛っている。希美であった。手には刀を持ってはいるが鞘に納めている。そのすぐ後ろには
目のくりっとした、ちょっとふっくらした顔の道重の姿があった。こちらも神具鳳龍という名の槍を手に持っていた。

「いやはや、この譲ちゃんはたいしたもんじゃわい」

さゆみの姿をかりた住職の声であった。可愛くも威厳に満ちた声である。

「つじぃ」
「ののっ」

真里となつみの二人は希美のもとにかけ出した。そして希美の前まで走ると
立ちどまり、希美に声をかける。

「つじ、大丈夫なのか?」
「のの、ケガはない?」

なつみは希美の左右の腕を掴み腰をおとした。

「うん、大丈夫だよなっち」
「はぁ〜、よかったぁ」

なつみは安心から体から力が抜けるのを感じていた。


そのころ、美紀と亜依の二人の姿は完全に神器が放つ黄金の光にのまれ、現世と隔離された世界にいた。

「これで、相手の霊っていうのと話せるってわけか…えっ」

美紀は体が序々に軽くなっていくのを感じた。不思議に思い後ろを振り向くとやや遠い位置に
自分の姿形があった。世に言う幽体離脱である。

「なっ、わたしまで幽霊になってるのかよ、まっ…こんなもんか」

美紀は初め驚いてはいたが、このところいろいろな非現実的なことに見舞われていたためか
気づけばあまり動じなくなっている自分がいた。

「ミキティっ」
「わたしをその名前でよぶなってっ…え?」

目の前の見知った顔に驚きを隠せない美紀、目の前にはお団子頭の可愛らしい
女の子がいた。

「おまえは加護?」
501 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/05(土) 03:33
「そうだよ」

亜依らしきその人物は美紀に笑顔で答える。その体は透きとおっており、美紀が自分と同じ霊体であることに
気づくまで、時間はまったくかからなかった。美紀は疑問点を亜依になげかける。

「加護は鷹とかうのにからだをのっとられてるんじゃなかったのか?」
「うん、そうだったよ。でもミキティのおかげででられたのかも…ほらあれ」

亜依はそういうと自分の後ろ、やや下方を指差した。美紀はその亜依の指の先に視線を向ける。

そこには使い古した着物をきた、おかっぱの子供が両足をハの字にひろげ腰を落としていた。足には草履を
履きうつむいているようにみえる。よくみると子供の足先と後ろで組んでいる両手には金色の発光物が輝き
をはなっていた。

「もしかして鷹ってやつ?」
「うん、そう、金色の光があいぼんのまわりにふってきて、気づいたらこうなってた」

亜依は鷹よりさらに後方に視線を向けた。美紀もそれにつられるように視線を移動した。

「あいぼんの体」
502 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/05(土) 04:22
亜依と美紀の視線の先、そこには亜依が横たわっていた。目を閉じ胸のあたりで指を組んでいる。

「あのことあいぼんが、あいぼんのからだからとびだしたんや」

亜依のその言葉に少し考えを巡らせ、美紀は答える。

「そっか、よくわからないけどみきは加護をたすけられたってことでいい?」
「うん、ありがとなミキティ」

美紀は亜依の笑顔を見てつぶやいた。

「まずは成功ってことでいいな…あとはあいつの説得か…」

亜依はそんな美紀の様子をただ眺めていた。

「とりあえずはどうやって話を聞き出すかだな」

美紀は思考をめぐらせる。そんな美紀の考えをよそに頭に声が響いてくる。

(とお…ん、か…ちゃん…なん…だよ)

「んっ?、なに…加護、なんかいった?」
「ううん、いってないけど…なんや聞こえん?」

美紀と亜依の二人はその声に耳をむけた。聴覚の機能を活発にするよう脳に
伝達を送った。そのためか今度ははっきりと聞きとることができた。

(にいちゃんと死合いなんてしたくない…なんでだよ)

「男の声…もしかしてこれって鷹?」

美紀はそういうとおかっぱの男の子供に視線をもどした。

「うん、そうかも、いってみよう」

亜依はふわふわと鷹のもとへと降りて行った。
503 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/05(土) 19:53
「まてよかご」

美紀はそう声をあげると、その亜依の後をついていく。隔離された世界の宙を進むその感覚は空を飛ぶのに似ていた。
そして鷹の目の前まで二人は降りると、お互いに目を合わせる。それから耳をすませた。

その声は先ほどと同じように耳をすませるというか、二人の脳に直接響いてくる感じだった。

(なんでとおちゃん、かあちゃん。おいらたちがこんなことをしなくちゃいけないんだよ…すっげぇかなしいよ)

鷹のそのこえは涙交じりで悲観に満ちていた。だが、その言葉だけでは美紀と亜依の二人はまだ状況をよくつかめない。
そんな折、ずっとうつむいていた鷹が頭をあげた。

「うわっ」
「…うぅ」

美紀と亜依の二人ははじめ驚きに身をすくませたが、鷹のあまりにも切なく哀しい、そして涙のたまった目に
視線を奪われた。

鷹はゆっくりと口をひらく。
504 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/05(土) 20:33
「おいらの話…聞いてほしい」

こんどは脳に直接響く声ではなく実際にふたりの聴覚でききとれる声だった。美紀と亜依の二人は自然にうなずいていた。

「わかったよ…もともとそのつもりだったけどなんか、そういうんじゃなくて…」

美紀自身にもわからないだろう、その目にはなぜか涙が浮かんでいた。

「うん、あいぼんも…すっご…つらいことがあったんやろ?」

亜依は鷹の前に腰をおろすと体育座りをした。美紀も亜依のすぐ隣に腰をおちつけた。

「なんでだろう…ここにいると、今までの大人や他のやつらを恨むきもちがどんどん消えていって…たださみしくて
ただつらくて、たまらなくなる…」

鷹は上を仰ぎみると、ふたたび美紀と亜依のほうに視線を戻すと、ゆっくりと語り出した。

「おいらと秦にいちゃんは二人兄弟、それにとおちゃんとかあちゃんの四人家族だ。家には金がいっぱいあって
大きかった。他の友達によくうらやましがられてたんだ。でも、とおちゃんとかあちゃんとおいらたちとの会話
みたいなのはまったくなかった」
505 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/06(日) 02:34
「家族なのに会話がないってなんで?」

美紀の疑問は自然と口に出ていた。だが、その美紀の声がとどいてないように鷹は話をつづけた。

「でも、とおちゃんとは剣のけいこをするときには話してた。いま思うとほんとにかあちゃんとははなしてないな…
剣の稽古のときのとおちゃんは、すごくこわかったんだ。いつもおいらもにいちゃんも竹刀でおもいっきりたたかれてたよ」

…とにかくとおちゃんはいつもいらいらしていたのをおいらはおぼえてる。なんでかはいまもわからない。おいらたちは朝から
夜まで毎日毎日剣の稽古で、楽しみといえば食べ物くらいしかなかったんだ。後はにいちゃんとおなじ部屋だったから二人で
話してたくらいだな。そんな日が何年も続いた。そんなある日のこと。おいらとにいちゃんはとおちゃんによばれた。

そのときはじめて名前で呼ばれたのを覚えてる。その声は暖かくなくてなんかつめたかった」

(てかっ、鷹ってなんかすっごくしっかりしてるんだけど…)

「しっかりしてる?…普通だよ」

どうやら美紀の心の声は鷹に直接とどいたようだった。

「え?…そっか、しっかりしてるってっ、そんなにちいさい子供なのによくそんなに
くわしく状況を説明できるね。かごやわたしじゃまずムリだってっ」

美紀はすぐに、鷹に自分の声が届いたことに気がつくと、その心の声を表に出した。

「うん、たしかにあいぼんじゃむり」

亜依もあいずちをうつ。
506 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/06(日) 03:10
「小さい子供っておいらのことか?…おいら十六だぞ?」
「えっ、うそ?」
「なんやてぇ?」

鷹の言葉に美紀と亜依は声をあげた。

「まぁ、この姿ならまちがえてもしょがないっか。まだ、あのじいさんの封印がとけてないみたいだからな」

自分の姿をマジマジと見つめた鷹はそう答えた。

「でも、なんか楽しい…おいらは学校とかいったことなかったから、きっとクラスの仲間ってこういうのをいうんだろうな…」

鷹は過去のことを思い出し、さみしそうにそうつぶやいた。

「そんなあたりまえのこと…鷹はできてなかったんだね」

美紀がそう口を開いた矢先だった。

「それなら、これから学校いけばいいっ」
「かごっ、おまえなにいって」

そんな亜依の突拍子もない言葉に美紀は眼をまるくする。

「ようちゃん、もうむかしのことなんてええやろ、あいぼんが友達になるよ。ミキティも、ののもやぐちもなっちも
み〜んなで友達になったるっ、もちろんしんちゃんもやで」
「かご…そうだな」

美紀は鷹の方へ、笑顔をむけると

「よろしく」

と手をさし出した。
507 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/06(日) 03:53
鷹の目から涙がとめどなく流れ出た。嬉しくもあり、悲しくもある。そんな感情だった。

「…でも…おいらはもう…いきて、ないから…」

そう、もう鷹はこの世にいない存在だった。

「大丈夫、あいぼんの体をつかえばいい、ののややぐちたちにひどいことしないって約束はしてもらうけど、どや?」
「もういい…」

亜依も美紀も鷹のその言葉の続きを静かに待った。

「…もういいんだ。ありがとう、もう十分だよ。おいらこんな気持ちははじめてだ」

鷹の手足を結んでいた金色の個体が序々に消えていく。鷹がゆっくりとたちあがると
その姿は黄金に輝きだした。人のシルエットが浮びあがる。そのシルエットは大きく
というのか、高くなっていき、やがて黄金の光がはれる。

再び姿を現したその鷹の姿は、先ほどとはちがい、十代の青年のようになっていた。
そして鷹は転がっている刀に右の手のひらをむける。そして消えた刀は鷹の右手に
おさまっていた。

カシイィィィンッ

鷹の手に持っていた刀が鞘におさまる。
508 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/05/06(日) 04:33
鷹は亜依と美紀の方を振り向くとやわらかな笑顔をみせる。

「ありがとう…おいらたち、ほんとみんなにめいわくをかけたね。でも、このまま魂のおいらじゃ、なにも償うこと
ができないとおもう。だからせめて罰をうけたい。そしてできることなら、次に生まれ変わったときにはあいぼんの
いう友達というのをもっと感じてみたい」

鷹は上を仰ぎ見た。

「うん、きっとまた生まれかわれる。もちろんそのとき、ようのとおちゃん、かあちゃんとも
あえるよ。そしてきっと、こんどは仲よくくらせるよ。しんちゃんと四人で。そんな未来
ようちゃんにはきっと待ってるで」
「かご…」

美紀は自分よりずっと子供だと思っていた、加護亜依という少女の新たな一面を垣間見た。
全身が感動にうち震えた。つっぱっていた自分が亜依に比べいかに小さい人間か感じられた。
これからはもう少し大人になろう。そう心に誓った。

「さよなら、おいらの大好きな友達…」

鷹の姿が光の粒子となり消えてゆく。

美紀と亜依の二人はその様子を静かに見守っていた。それからまもなくして二人を強い睡魔がおそう。
二人はその睡魔にみちびかれるように瞼を閉じた。
509 :名無飼育さん :2012/05/08(火) 23:17
復活待ってました!
510 :黄忠 :2012/05/09(水) 10:26
そういっていただけると嬉しいです。次はエピローグなのでちょっとだけ
時間をもらいますね。次の章にむけてです。
511 :呪われし二対の妖刀VS思い出のペンダント(後編) :2012/07/13(金) 18:53
「鷹、いったか…」

秦は光の粒子となって消え行く、鷹の姿を眺めながらそう呟くと

「…さて、俺もいかないとな…」

小さな声で呟くと、秦は希美の方をみた。

そして自分の心を落ちつかせるように首を縦にふるとゆっくりと口を開いた。

「俺も鷹も、大人を恨むことしか頭の中になかった。感情の赴くままに人を斬ってきた。

自分の内に流れる血が黒くなっていくのを感じていた。

だけど、止めることはできなかった…」

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