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無限なんていらない

1 :名無飼育さん :2014/11/16(日) 17:49
アンリアル。
宮崎さんと金澤さんが中心です。
他にもちょこちょこ出てくる予定。
連作短編のようなものになると思います。
252 :名無飼育 :2015/02/07(土) 07:08
これから二人はどうなっていくのかと思うとドキドキします。
自分は友人に失恋後、友達でいようとして結局疎遠になったので
金澤さんたちの関係はどうなるのかとても気になります。
次回の更新も心待ちにしています。
253 :名無飼育さん :2015/02/08(日) 23:00
花屋の彼女の清々しさで心が洗われましたw
宮崎さんを計算高いと評する慧眼の持ち主もさすがで。
食えない人ばかり好きになっちゃって、金澤さん苦労しますなぁw
254 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:34
 
255 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:35
絶対に、邪魔者だ。

向かいに舞美、隣に愛理。最寄りから数駅離れたカフェで、なぜこんな組み合わせで
お茶を飲んでいるのだろう。

それなりに混雑した店内を軽く見渡した。見知らぬ人ばかりの場所だからある程度は
秘密の話をしてもいいだろうと思うけれど、積極的にしたいものでもない。

舞美は次の用事までの時間つぶしに休憩していて、朋子も同じ理由だった。
愛理は舞美に付き合って店に入り、そこで三人が行き会ったという次第である。

「どれ、お姉さんに話してごらん」

先日の恋愛相談を朋子のものとして受けとめたらしい舞美が、興味深そうに
身を乗り出す。その分だけ朋子は身を引いて逃げるけれど、真っ直ぐな視線には
逆らえそうもない。
256 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:36
話すとしても具体的なことは言えないし、名前を出すなどもってのほかだ。
それなのに、愛理と同じ学科の誰かだ、というのは伝わってしまったらしい。
それを知らせてしまった張本人は、隣でのんびりとお茶を飲んでいる。

「……そうですねえ」

内心では愛理に悪態を吐きつつ、朋子は愛想笑いを浮かべる。「どんな人なの?」舞美の
質問は平凡なもので、乗り切るのは簡単なようにも思えた。

「優しくってカワイイ系かなー」

朋子が答える前に、愛理が言う。ちらりと横目で彼女を見ると、わずかに口角が上がって
いた。……もしかしたら、面白がられているのだろうか。

「いい人?」

舞美は優しげな笑みを浮かべて、言った。いい人か悪い人か、訊かれれば答えは
ひとつに決まっている。朋子は小さく息をついた。

「はい」

由加のことを思い出した。最後に会ったのはいつだったか、軽く記憶をたぐり寄せる。
確かそれはバイトのときで、つい数日前のことだった。
257 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:36
 
   ◇ ◇ ◇
 
258 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:37
「宮崎ちゃんとは遊ばないの?」

大学に向かう道すがら、尋ねられた。先日カフェで会ったときには別の友人と遊んで
いた、という話をしただけなのに、愛理はすぐに由加のことを持ち出してくる。

「いま旅行中なんで」
「寂しいねえ」
「そんなことないですよ」

強がっていると、肘で横っ腹をつつかれた。それを払いのけつつ、朋子は空を
見上げる。晴れた冬空はとても澄んでいて、由加が旅行を楽しめていればいいと、
朋子は素直に思う。

土日と授業の都合がつく数日間で、由加は友人たちと出かけていた。その計画を
楽しそうに話すのを聞いていたから寂しいなどとは言えないし、言えるような立場
でもない。そもそも、たったの数日間だ。それくらい会えないのは、よくあること
だった。
259 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:38
隣では愛理が地面に転がる石ころを蹴飛ばしている。てんてんと前進した石は側溝に
落ちて、すぐに姿が見えなくなる。朋子も足元を見下ろしたけれど、都合良く石が
転がっているわけでもない。

「何日か会えないなんて、よくあることだし」

思っていたことを、口に出して反芻する。それは自分に言い聞かせるような行為
だった。そうだねえ、と愛理が相槌を打って、朋子は彼女の方を向く。

「鈴木さんたちって、毎日会ってるんですか?」
「会いたければ、いつでも会えるよ」

お隣さんだからね、と愛理は続けた。それに舞美はよく店先に出ているから、
登下校するときにも自然と目に入るのだろう。それを朋子は羨ましく思うけれど、
愛理からするとそう単純なものではないらしい。
260 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:38
「……やっぱり、言わないんですか」
「言わないよ」

幼馴染みの関係を崩したくないと愛理は言った。だから好きだと伝えることは
できないと、そういう意味だった。

「酔っ払った勢いにしても、好きだって言った時点であたしより一歩リードだよね」

へらりと笑ってはいるけれど、それは自嘲の笑みなのかもしれなかった。声に出す
だけなら簡単なことなのに、とても難しい。朋子もそれは承知していたはずなのに、
勢いで伝えてしまった。考え込みそうになっていると、いや、と愛理が付け加える。

「一歩も二歩もないか」

言うつもりがないのなら、そうなのかもしれない。愛理はまた足元に石を見つけて
蹴り飛ばす。そろそろ坂も終わりに近づいて来た。
261 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:39
「早く会えるといいね」

校舎が見え始めてきた頃にそう言われて、朋子は素直に頷く。いつ、会えるだろうか。
会いたいと言われることはなくとも、バイトはどうするかと連絡が来るかもしれない。
それに少し期待してしまう自分が可笑しくて、笑いそうになる。

友達でいたいと言う由加と、幼馴染みでいたいと望む愛理と。
その願いは似ているのかいないのか、朋子には判らない。
262 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:39
 
   ◇ ◇ ◇
 
263 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:40
由加に会えないアルバイトは味気ない。黙々と作業をして図書館を後にする頃には
日が暮れかけていた。暗くなり始めた空には月が浮かんでいる。それを見上げて、
朋子はマフラーを巻き直した。

今日は由加が旅行から帰ってくるはずの日だった。連絡しようかと少し迷って、
しかしそれではなんだか負けた気がする、とも思った。勝ち負けの問題ではない。
それは判っているけれど、多少は意地も張りたくなる。

好きになってしまったことが、なぜか悔しい。こんなつもりではなかったのにという
思いがあるせいかもしれなかった。

溜息は白く染まり、溶けていく。早く会いたいと思ってしまうことが、悔しかった。
264 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:40
ひとりきりで大学から駅前へと続く坂を下る。帰ったら由加に連絡しようと思った。
旅行中は邪魔をしたくなかったから控えていたけれど、バイトの用事があるふりでも
すれば自然なメールは送れるだろう。

けれど、長旅で疲れているかもしれない。色々な可能性が思いつき、思考は堂々巡りに
入ってしまう。帰ってから決めようという結論に至って、朋子はひとまず家路を急ぐ。

踏切を渡り、閑静な駅前に出た。いつの間にか日は落ちて、街灯が明るく周囲を照ら
している。自分の影を見つめながら歩いていると、後ろから誰かにぶつかられた。

不審に思って振り返ると、そのまま由加が隣にやって来る。がらがらとキャリーケース
を引いている様子から見て、いま帰ってきたらしかった。
265 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:41
「……おかえり」

自然と言葉が出てきた。電話でもなくメールでもなく、直接言えるのが嬉しくて、
思わず顔がほころんでしまう。

会えなかったのは、たったの数日だ。それなのにひどく久しぶりに感じてしまって、
どれだけ心待ちにしていたのだろうかと内心で自分を笑ってしまう。

「ただいま」

朋子の言葉に、照れたように由加は頷く。その笑みを見て浮かぶ感情は、やはり
ただの友達に対してのものとは違っている。

それでもいいと由加は言うけれど、本当にいいのだろうかとも考えてしまう。
けれど、近くにいられるのならそれでもいいと、時々は思ってしまう。

夜道をふたりで歩いた。楽しそうに話す由加を見られるのが嬉しかった。
由加が真にこの関係を望んでいるのならば叶えたいと、少しだけ思った。
 
 
 
 
 
266 :最後から二番目の真実 :2015/02/22(日) 16:41
 
267 :名無飼育さん :2015/02/22(日) 16:42
 
268 :名無飼育さん :2015/02/22(日) 16:43
>>255-265
最後から二番目の真実(後編)
269 :名無飼育さん :2015/02/22(日) 16:44
前回、(前編)をつけるのを忘れておりました。そして後編は短め。
次回で最終回かもしれません。あくまでも予定ですが……。

レスありがとうございます!

>>252
どうなるのかどうもならないのか、といったところですね。
そして関係というのは難しいものですね。ですが、遠のいた縁も
あれば近づいた縁もあるでしょうから。
今回も待っていてもらえたら嬉しい限りです。

>>253
彼女の女神っぷりを文章で書き表せない自分が悔しいです。
まあ、そういう人が好きなのか、たまたま好きになった人が
その手の人ばかりなのかといったところ……。
また読んでもらえていたら嬉しいです。
270 :名無し飼育 :2015/02/23(月) 01:34
いつもサブタイトルに感心させられます
最後から二番目の真実が切ない……
この物語がどう着地するのか最終回を楽しみにしています
ああでも、最終回とかさみしい!
271 :名無飼育さん :2015/02/24(火) 23:47
冒頭のシーン良いですね!情景が見える、見えるぞおお!
押される金澤さん新鮮……でもないなw

由加ちゃんとのやりとりは特別温かで切なく感じますなぁ。
普通っぽい金澤さん良い!
272 :名無飼育さん :2015/03/08(日) 23:50
昨日この小説の存在を知って、一気に読みました。
とっても大好きなゆかともの小説があるのですが、
作者さんの文章はその小説とよく似ていて…同じ作者さんかなあと、
勝手ながら確信に近い気持ちを抱いています。

もしそうだとしたら、再び作者さんの小説に出会えたことが嬉しいですし、
違っていたとしても、この作品に出会えて良かったです。

ゆかにゃんが何を想っているのか、物語がどのような結末を迎えるのか…
気になって気になって仕方がありません。
終わってほしくはないですが、次の更新を心待ちにしております。
273 :名無飼育さん :2015/03/17(火) 08:53
鈴木さんの立ち位置がいいですねー。いやあ、好きだなあ。

コミックス全巻一気読みみたいな感じで夢中になって読みました。だけれども、続きが気になりつつ、大事に読み進めたい気持ちもあって…。お話の世界にずっと浸っていたいなあと思いました。
次回、最終回ですか。寂しいですねー。どうなるのかなあ。関係に一段落がつくのだろうと予想はするのですが、どうなるのかなあ…。ああ、こんな風に想像を巡らせるのも楽しいっ。
終わっちゃうのは寂しいけれど、どんな結末を迎えるのか楽しみにしてます。
274 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:10

275 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:11
知らない道がたくさんある。いつもの路地からひとつ通りを外れると、大きな公園に
出た。マフラーに顔を埋めて、走り回る子どもたちを見ると、小さかった頃のことを
思い出す。

とはいえ、ただ友達と一緒に遊んだという記憶があるくらいで、公園に強い思い出が
あるわけではなかった。溜息は表に出ない。朋子は広場の端のベンチに腰掛けて、
意味もなく空を見上げた。

急いで帰ったところで誰かが待っているわけでもないのだから、しばらくそうして
過ごす。ぼうっとしているつもりでも、次のバイトのことを考えているのだから
内心で自分に苦笑した。

勢いをつけて立ち上がると、もう日が暮れそうになっていて、子どもたちも解散
し始めている。その流れに乗るようにして、朋子も公園を離れた。
276 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:11
通りに戻り、いつもの帰路に着く。ひとけは少なく、立ち並ぶ家々から漏れる
ほのかな明かりが道を照らす。後ろを振り返っても誰もおらず、また前を向いて
歩き出した。

どうして、誰かを好きになってしまうのだろう。
こんな感情さえなければもう少し楽に生きられるだろうにと、朋子は思った。
277 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:11
 
   ◇ ◇ ◇
 
278 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:12
天気の良い午後だ。その日和にも相まって、久しぶりにバイトが一緒になった由加と
帰り道を同じくしているのが嬉しく朋子の足取りは軽い。旅行はどうだったの、なんて
何気ない日常の会話も心を弾ませた。

旅は充実したものだったらしく由加の話も尽きない。にこにことしている彼女を見て
いるだけで朋子の頬は緩んだ。それでも、歩いているうちに帰路は終わりに近づくの
だから残念さもこみ上げる。彼女の下宿先の前に着いたときにそれが頂点を迎えるの
はいつものことだった。

じゃあまた、と手を振る。その後に、由加はなにか思い出したようにぽんと手を打った。

「お土産あるから。ちょっと待ってて」

彼女は朋子の返事を聞く前に玄関に向かう。鍵を取り出そうとしているのか鞄を
探っているのを離れた場所から見ていた。やけに時間がかかっているなと思った。
279 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:13
玄関はくぐらずにとぼとぼと帰ってくる由加に、朋子は首を傾げる。
「どうしたの」尋ねると、彼女は首を横に振った。

「鍵、忘れちゃったみたい」

佳林ちゃんよりも後に出たから、と由加は続ける。家には入れないから土産を
取ってこられない、ということらしかった。

「ごめんね」
「そんなのいつでもいいよ」

謝る由加に苦笑で返す。土産を買ってきてくれたという気持ちが、旅行先でも朋子の
ことを考えてくれたという事実だけでも嬉しいのだ。物をもらえるのはもちろん
ありがたいけれど、それ以上に喜べることだった。
280 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:14
しかし、家には入れないとなるとどうするのだろう。佳林が帰ってくるまでどれほど
の時間がかかるのかは朋子には見当もつかなかった。困った様子の由加になにか
声をかけたいと思って、朋子は考える。

家に来ないかと、誘ってもよかった。冬なのだし、屋外にいるよりはいいだろう。
けれど躊躇ったのは二人の関係が、友達ではあるものの微妙なものだからだった。
それがどんなものかは言うまでもないから、選択肢からは除外する。きっと提案
しても嫌がられはしないだろうが、困らせてはしまうかもしれないからだった。

「……散歩でもする?」

そのかわりに出てきたのは、無難な言葉だ。軽く時間を潰して、それでも佳林が
帰ってこないようなら駅前のカフェで待てばいい。最初から駅前に行く選択肢を
示さないのは、一緒に過ごす時間を長引かせたいからだった。

これもまた、困らせてしまうかもしれない。そう思ったけれど由加は頷いて、
二人はあてどもなく歩き出した。
281 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:15
公園に行くのを思いついたのは、つい先日知ったばかりだという物珍しさがまだ
残っていたせいかもしれない。由加に訊くと彼女はその存在を知っていたようで、
また頷いた。彼女にとってもあまり通る場所ではないらしく、久しぶりに行って
みたいと言った。

晴れた冬の空気を吸い込むと、乾いてはいるけれど快い。ふう、と息を吹くと
白く染まり、宙に溶けた。由加も真似するように息を細く吐いて、子どものよう
に笑う。

園内に入ると、騒がしさがやって来た。今どきボール遊びができるようなところも
珍しいのだと思う。そのせいか公園は賑わっていて、見ているだけでも退屈しそうに
なかった。

隣にいる由加の呼気が白く儚い。その横顔を見ていると、気付かれたのか微笑まれる。
ねえ、と呼びかけられて目で問い返すと、彼女は小さく口を開いた。
282 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:15
「ありがとう」
「なにが?」
「んー。時間潰すのに付き合ってくれて」
「別に。暇だし」

さすがに用事があればここまで付き合いはしない。だから暇だというのは方便では
ない。かさかさと落ち葉が足元をくすぐって、由加はそれを見下ろして笑う。

「ともは優しいね」

そんなことはないと、由加も知っているだろう。下心があるからこうして一緒に
いるだけで、優しさから来ているものではなかった。友達だからという理由で、
並んで歩いているわけではない。
283 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:16
「お礼に」

由加が言葉を切って、少し緊張した面持ちになる。どうしたのだろうかと思った。
礼など必要ないけれど、朋子は目だけで続きを促す。

「由加の秘密、教えてあげる」

その言葉に、強く興味を惹かれる。このタイミングでなんの秘密を告白しようと
いうのだろう。瞬きをして、朋子は聞き返す。

「秘密?」
「うん。……ともになら言ってもいいかなって」

もう由加は笑ってはいなかった。陽が差す冬の公園で、寒風が吹く。その風が
彼女の笑みを流してしまったかのようだった。

「ともには言わなきゃって、ずっと思ってた」

秘することだけれど、朋子には言わなければならないこと。見当もつかずに困惑
していると、深呼吸するように由加は息を吸う。離れた場所から子どもたちの声が
聞こえるけれど、その音は彼女の声を掻き消さなかった。言葉は、白い息と共に
吐き出される。
284 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:17
「今まで、人を好きになったことがないの」

もう二十歳なのにね、と由加は続けた。それが秘密に値することなのかとっさには
判らなかった。

「変だと思う?」
「え……いや、まあ、遅いのかもしれないけど」

初恋を経験する年齢の平均がいくつなのか、朋子は知らない。由加もそれは同じ
だろうと思うけれど、話す様子からして現状をおかしなこととして受けとめている
らしかった。

由加にとっては重い秘密なのだろう。人に話せば馬鹿にされるとでも思っていたの
かもしれなかった。

「小学校でも中学校でも高校でも、できなかった。
だから、これから先好きな人なんてできるのかなって」

由加が早口で話すのが珍しかった。そして、子どもの頃に友達と、『好きな人だれ?』
なんて会話をよくしていたことを思い出した。
285 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:19
大学生になってからは、そんなやり取りは減ったように感じる。それでも生活に
おいて色恋は大きな割合を占めるらしく、相談事はよく聞いた。

なにかないの、と尋ねられても、好きな人いないから、で朋子は通していた。それは
事実だったから心苦しくもなく、秘することでもない。

由加は同じように訊かれたらなんと答えていたのだろう。朋子と同様に返していたの
かもしれない。けれど、今は好きな人はいない、といっても、そんな感情を抱えた
ことがないのなら背景は大きく違うように思えた。

「ともに、友達でいてほしいって言ったのは。ほんとは友達でいてほしかったわけじゃなくて」

矛盾したようなことを言う由加の横顔を見る。少しだけ俯いて、彼女は抱えていた
ものを吐露するように口を開いた。
286 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:20
「好きになれるかもって、思ったから」

だから関係を断ってしまいたくはなかったと、由加は言った。半分は腑に落ちたけれど、
納得いかない部分もある。好きになれるかもしれない相手として朋子をキープして
おきたかったのかもしれないが、適任だとは到底思えなかった。

「すごく打算的。好きでいてくれて、優しくしてくれるから好きになれるかもって」
「……いや待って、うち以外にも由加ちゃんのこと好きな人とかいるでしょ」
「そうかもしれないけど」

否定しない辺り、由加も自覚的なのだと思う。由加のことを好く人なら朋子以外にも
いるはずだ。恋人にするなら、もっと適した人間も。

「ともは、恐くないから」

友達でいようと気を持たせていても安全だというのなら、そうなのかもしれない。
異性に同じようなことをするのは躊躇われたのだろう。突飛だけれど、考えられそうな
ことだ。

「……でもこれって、ともに失礼だよね」

そう言って由加は少し笑う。それは自嘲なのかもしれず、溜息のように吐かれた
呼気はゆっくりと白く染まった。その吐息が消えてしまう頃に、朋子は心の底から
悪態をつく。
287 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:20
「……ずっるいなあ」

最初に出てきた感想はそれだった。秘密の話がどこに繋がるのかと思ったらこれで
ある。由加も罪悪感はあったのか、「ごめん」と小さく謝罪の言葉を口にする。

「……でも」

友達でいてほしいと言われて、少しは嬉しかったのだ。まったくの無関係になるより
ずっといいと思っていたのは、朋子も同じだった。

横からサッカーボールが転がってくる。こちらに走ってくる子どもに蹴り返して、
朋子は大きく息を吐く。由加を見ると彼女もこちらを見ていて、不安そうな顔を
していた。それもそうだろう。こんな告白をされたら、まともな人間なら怒りそう
なものだ。

なぜこんな人を好きになってしまったのだろう。かわいい顔して計算的で、
今まで誰も好きになったことがないという、朋子と真逆の悩みを抱えたような人を。

再度、大きく溜息を吐く。それでも思いは変わらなかった。由加の秘密は朋子の
感情には関係ない。好きになれるかもしれないと思ってくれているのならば、
返事はひとつだ。
288 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:21
「……好きになってくれるまで待つよ」

世の中にはたくさんの人がいて、出会える人は有限だ。
けれど、無限だって今とどう違うのだろう。

もしかしたら、他にもっと好きになれる人が現れるのかもしれない。しかし、
そんな事実があったとして、今の感情は無になるだろうか?

答えは否だ。不安げに揺れる由加の瞳を強く睨むと、木枯らしが吹いて足元を
枯れ葉が駆け抜ける。あの夏の日からこの冬まで、ずっと気持ちは変わらずにいる。

待っていようと、朋子は思った。いつまで待てるかは判らないけれど、待ちたいと
思える間はそうしよう。けれど、受け身でいるのは性に合わない。だから朋子は
強く決心して、乾いた空気を息で揺らした。
289 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:22
「好きにさせてみせるから」

朋子の言葉に、由加は笑った。笑みを浮かべるのは状況にそぐわないのかもしれない
けれど、そんなことは関係ないとでもいいたげだった。

自信があるわけではない。それでも、可能性はあると信じたかった。もし想いが通じ
なかったとしても、朋子の気持ちは変わらないのだから関係もない。

由加は楽しげに笑って空を振り仰いだ。快晴の空は突き抜けるように高くて、遠く
感じる。同じように遠く感じていた由加のことも、秘密を共有したおかげかわずか
だけ近く思えるようになった。

「楽しみにしてるね」

肯定的な返事をして、由加は朋子を見る。好きになれるかもしれない相手として、
不足はないらしい。こんな人を好きになってしまったなんて、馬鹿げていると
朋子は思う。都合良く転がされて、それでも怒れずにいるなんておかしな話だ。

由加が小さくくしゃみをする。冬の散歩は堪えるらしい。それならば、家に誘おう。
一緒に映画でも観て感想を語り合って、日が暮れる頃に送って行けばいい。

てんてんとまたサッカーボールが転がってきた。今度は由加が蹴り返そうとして、
大きく空振りする。それを朋子が笑うと、照れくさそうに彼女は目を細めた。
 
 
 
 
 
290 :天のさだめを誰が知る :2015/03/17(火) 20:23
 
291 :名無飼育さん :2015/03/17(火) 20:23
 
292 :名無飼育さん :2015/03/17(火) 20:24
>>275-289
天のさだめを誰が知る
293 :名無飼育さん :2015/03/17(火) 20:25
>>3-49
出口はどこかへの入口
>>54-78
ジュリエットには早すぎる
>>82-118
割りきれないチョコレート
>>124-143
おかしなことを聞くね
>>150-175
なぜなら雨が降ったから
>>182-190 >>196-209 >>215-227
君にできるあらゆること
>>235-247 >>255-265
最後から二番目の真実
>>275-289
天のさだめを誰が知る
294 :名無飼育さん :2015/03/17(火) 20:26
 
 
 
 
 
295 :名無飼育さん :2015/03/17(火) 20:27
レスありがとうございます!

>>270
お待ちになって! 二番目の真実ってどれ!?
というのは冗談ですが、なにかっていうのは皆様のご想像にお任せいたします。
こんな感じで着地しました。気に入ってもらえればよいのですが。
レスありがとうございました。嬉しい限りです。

>>271
先輩の前では猫を被ってる感じで。
方々から聞こえてくるエピソードは暴君な金澤さんですが、
普通っぽい部分もあるって、信じてる……!
ではでは、また読んでもらえていたら嬉しい限りです。

>>272
このスレに出会ってくれてありがとうございます。
結末を納得してもらえるかはわかりませんが、
最後まで読んでも気に入っていただけたら嬉しい限りです。

>>273
ということは、いきなり最終巻ですね。一段落、はつきましたが、真の結末は
このお話の後、といいますか。そのあたりも想像を巡らせてもらえたらなあと
思います。一気読み、ありがとうございました。嬉しい限りです。
296 :名無飼育さん :2015/03/17(火) 20:28
それでは、これで『無限なんていらない』は完結です。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
297 :名無飼育さん :2015/03/17(火) 21:44
更新キテタ━(゚∀゚)━!
終始にやにやしながら読んじゃいました。くすぐったい。人生、「え、そうだったの!?」と思うことの連続ですよね。仲良くなっていくほどその人の新しい部分にぶつかって、悩んだり、嬉しくなったり……。この物語はそういった所をとても自然に描写してあってしみじみとした気持ちになりました。

読めて良かったです。
298 :名無し飼育 :2015/03/17(火) 21:50
終わってしまった
更新を待つ楽しみがなくなってしまって悲しい限りです
悲しいのでまた最初から読み返してきます
299 :名無飼育さん :2015/03/18(水) 10:04
やられました。

あのゆかともが作者さんの作品だという前提で話しますが、
今回も、予想外の展開でした。
結末で種明かしをされる感覚、そしてその内容が予想の斜め上というか、
その発想は無かったというもので、読んでいてとても心地が良いです。

本当に、やられたなあ。と思うばかりです。

素敵な作品をありがとうございます。
300 :271 :2015/03/19(木) 21:39
最後が一番ドキドキしたw
冷たくも温かくもない、常温のラストが似合う二人でした。
金澤さん、由加ちゃんだなぁw

完結お疲れさまでした!
そして楽しい話をありがとうございました!
301 :名無飼育さん :2015/07/02(木) 01:18
更新お疲れ様です
千奈美のブログが元になってるんですかね?
読んでてなんだか感動しちゃいました

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