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聖少女

1 :beru :2014/09/30(火) 13:13
この作品は以前書いた物で、外には未発表ですが主役のさゆの卒業を控え、
このさい卒業記念として発表する気になりました。少し修正加筆して
人物設定も変えてあります。ブログに連載していたので、
もし似た作品を読んだという人がおりましたら、それは私の作品です。
ジャンルはミステリーになりますか。
321 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:05
友男とさゆみは、爆発で一階の天井が崩落した時、
ちょうど比較的狭い通路に出た時だったので、
奇跡的に即死を免れた。
二人は、崩落した壁のわずかの隙間にかろうじて
重なり合って横になっていた。

頭の直ぐ上に壁が覆いかぶさり、ほとんど身動き出来ない
程の空間しか無かった。


私は片足が壁の下敷きになっていて、まったく
その足には感覚が無く、重大な損傷を負っているに違いない。
自分の体の下にいるさゆみの様子を見ようとしたが、
夜ということもあり真っ暗闇で何も見えなかった、
手でさゆの顔を触れると確かにその存在を感じるのだが。
322 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:08
ようやく、さゆが意識を取り戻した気配を感じた、
埃が立ち込めていて、さゆは激しく咳き込んだ、
さゆも私の顔に手を触れてその存在を確めた。

「・・・大丈夫?どこか体は痛くない?
すぐに助けが来るからそれまで我慢出来るね」

私の問いかけにさゆは返事をした。
幸いさゆは体のどこも怪我をしていないようだった。

「友男さんは大丈夫なの?」

「僕の方も大丈夫だよ」

まったく感覚が無い片足の事は、心配させない
ために触れなかった。
323 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:10
「必ず助けが来るから、希望を捨てないで。
それまで僕が守っているから」

「何が起こったの?真っ暗で何も見えないわ。
体も身動き出来ないわ・・・」

「またビルが爆発したんだ。今度の爆発は大きくて
ビルが崩れ落ちたんだ。僕たちは奇跡的にまだ命を
つないでいるけど」

それもいつまで保てるかどうかわからない。
何時、ビルが完全に崩壊してしまうかわからない、
そうなれば二人の命は風前の灯にすぎない。
324 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:13
少しでもさゆを楽にさせようと、体を捻って
さゆの上から自分の体をずらそうとした、
とたんに、下敷きになった片足に激痛が走った、
思わずうめき声を上げるほどの激しい痛みだった、

「友男さん!どうしたの!」

さゆに返事も出来ず、しばらく歯を食い縛り痛みを堪えた。

どうやら下敷きの足は骨折とかいう生やさしいものでは
無いようだった、片足は潰れてるようだった。
325 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:16
ようやく声を絞り出して、
「何でもないよ・・・心配無いから安心して」

かなりの失血もしているかもしれない、
そうなると、自分がいつまで命を保てるかわからない、

「本当に大丈夫?」
さゆは心配そうに私の頬に手を当てて言った。

しばらくして、何とか足の痛みも我慢出来るところまで
収まってきた。と言うより足の感覚が無くなってきたのだ。

さゆの体に触れようとして、その柔らかい胸に
直接手を触れてしまい、思わず手を離した。
さゆは私が着せた上着だけで下は裸だという事に
気がついた。

幸い今は7月で寒くはなかった。
そっとさゆの上着の襟を合わせた。
326 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:19
さゆの気を紛らわせるために喋った、

「もうさゆは自由の身だよ。これまでさゆを縛っていた
人間達は、この爆発で残らず死んでしまったに違いない」

「お父さんはどうなったの?」

私は山口、さゆの父親の顔を思い出した、
今思い起こせば、父親としての顔を見せていた部分が
あったかもしれない。

「残念だけど、お父さんも亡くなったと思う。
今はそんな事は忘れて、これからさゆの将来だけを
見据えて、これからの楽しい事だけを考えるんだ」
327 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:21
「そんな事は今は何も考えられないわ」

「考えるんだ、まだ小さかった頃の事でもいい、
やってみたかった事、なりたかった職業とか、
お嫁さんの他に何かあったはずだよ」

しばらく考えていたさゆは、やがて口を開いた。

「自分の将来の事など何も考えられなかったわ、
でもね、もしさゆみが生まれ変わったら、
なりたいものがあったわ。
テレビを観ていて、時々昔の映像が流れるの。
もう40年も50年も昔の映像なのだけど、
その頃はアイドルっていう人達がいたそうよ」
328 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:25
「アイドル?」

「そう、アイドル。さゆみと同じ位の年頃のアイドルと呼ばれる
男の子や女の子達がいたの。その子達は歌ったりダンスしたり
して、皆の憧れの存在だったそうよ」

今では、アイドルという言葉は死語になっていて、そのアイドルの
存在も無くなっていた。

さゆは続けた。
「それで、さゆみが生まれ変わったら、アイドルになりたいと
思った事があるわ・・・・到底かなえられない夢でしかないけど」

「なれるさ。生まれ変わらなくても十分にかなう夢だよ。
さゆはまだ15歳になったばかりなんだ。これから無限の
可能性のある将来が待っているんだよ」
329 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:28
「本当になれると思う?」

「本当になれる。だってさゆはこの世の誰よりも可愛いのだから」

「嬉しいわ。友男さんにそう言ってもらえたら、なによりも
嬉しいわ。でも、こんな丸坊主の頭でアイドルになれるかしら」

私は笑って、さゆの坊主頭を撫でて、
「そんな頭のさゆも可愛いと思うよ。それに、髪の毛は直ぐに
伸びてくるよ。後半年もしたら髪も伸びて、そのアイドルに
なれるよ、必ず」
330 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:31
自分の潰れた片足は、痛みを通り越して痺れ始めていた、
失血のせいか意識も少しずつ薄れはじめていた、
今夜か、明日いっぱい持つかどうか疑わしい。
自分はどうなってもいい。さゆだけは助けたいと思った。

さゆはそれまでの疲れからか、うとうとと眠りはじめた。

私の方は、眠るというより足の負傷の出血のせいで、
意識が遠のいていった。
331 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:33
そして時間が立ち、日の出の時間になって辺りが
明るくなっていき、友男とさゆの閉じ込められた所にも
わずかに陽が差してきた。


外では、昨夜まで警備していた兵士達が放心したように
見守る中、ブリードビルは外から見ただけでは何事も
無いかのように見えるが、

実際は、三階で起きた大爆発で三階より下の内部の
構造物が完全に崩落し、それより上の4階以上の建物も
三階以下が無くなったために、建物全体が完全崩壊の
危機が迫ってきていた。

その証拠に、耳をすませてみれば、ギシギシ、ミリミリと
建物の崩壊する前兆の音が聞こえてくるはずだ。
332 :最後の審判 :2014/11/07(金) 21:35
兵士の一人が、一階の入口から恐る恐る中を覗いた、
3階から下が完全に崩落して、一階には天井や壁などが
うずたかく積もっていて、とても生存者がいるとは思えない、
しかし、友男とさゆはその中でまだ生きていた。

ふと、その兵士はかすかに人の話し声を聞いたような
気がして、思わず耳をすました。
333 :復活 :2014/11/09(日) 19:04
さゆは目を覚まし、わずかに朝の光が差し込み友男の顔が見えて、

「友男さん!起きて!目を開けて〜!」
友男の頬に触ってみると、まだ温もりがあるのでほっとして
声を上げ続けた。

そのさゆの声で、ようやく友男は意識を取り戻し、目を開けた。

「友男さん、朝よ!」

友男は目を開けたが意識は朦朧としていた、
「・・・これはお姫様、お早う」

さゆの頭が丸坊主だと気がついて、
「お姫様ではないな・・・尼さんだったか」

さゆは友男の頬を叩いて、
「何を言ってるのよ!私達は生き埋めになってるのよ!」
334 :復活 :2014/11/09(日) 19:07
友男は辺りを見回して、二人が瓦礫の中に埋もれて身動き
出来ない状態だという事を思い出した。
その時、ギシギシと辺りが揺れ埃と共に瓦礫の破片が
バラバラと落ちてくる、今にもビルが崩壊するかもしれない、

「もう僕らは助からないよ・・・運は尽きたよ」

さゆは強く首を振って、
「そんな事無いわ!昨夜は必ず助けが来るって
言ってたのは友男さんじゃない!
そんな弱気な事は言わないで」
335 :復活 :2014/11/09(日) 19:09
「もうダメだよ・・・最後に思い残した事があるよ、
さゆにまだ返事を貰ってない」

「返事って?」

「僕はさゆにプロポーズしたはずだよ。
その返事をまだ貰ってない。その返事を貰えないうちは
死んでも死に切れない」

さゆは友男の手を探りその手を握りしめた、
その手は、ゾッとするほど冷たかった。


「もう一度言う、僕と結婚してくれないか」

さゆは小さくうなずくと、

「はい。こんな私で良かったら」
336 :復活 :2014/11/09(日) 19:11
「ありがとう。こんな嬉しい事はないよ。
もう思い残す事は無い。いつ死んでもいい」

友男はまた意識が薄れていって、目を閉じた。


さゆは友男の頬を叩きながら声を上げた、
「友男さん!死んじゃいや!目を開けて〜!」

その声は友男には聞こえなくなっていた。


「誰かいませんか〜!誰か助けて下さい〜!!」
さゆは声を張り上げて助けを求めた。
337 :復活 :2014/11/09(日) 19:16
その若い兵士は確かに女の子の声を聞いて、一階の瓦礫の
山の中へ向かって声をかけた、
「誰かいるのか〜!!聞こえたら返事をしろ!」

さゆもその声を聞いて、
「ここにいます〜!!助けてください!」

兵士はその声を聴いて入口から瓦礫の山を覗き込んだ。


「どうかしたのか」
もう一人の兵士が入り口から入ってきて言った。

「生存者がいるようです、声をかけたら返事をしました。
すぐそこみたいです、直ぐに助け出さないと」
338 :復活 :2014/11/09(日) 19:18
その時、ビルの上の方から不気味な震動が伝わってきて
破片がバラバラと落ちてきた、
二人の兵士はあわてて外に出ると、ビルの上を見上げた、
ビルの建物が細かく震動して揺れているのがわかる。

爆発で内部が崩落して半ば残骸と化していたブリードビルは
外壁はかろうじて形を保っていたが、いつ全体が崩壊するか
わからない。


「このビルはまもなく崩れ落ちる、早くこの場を離れるんだ!」

若い兵士はビルを振り返りながら、
「まだ生存者がいるんですよ!あの声は女の子みたいだった、
早く助け出さないと」
339 :復活 :2014/11/09(日) 19:19
もう一人の兵士は首を振った、
「ダメだ、いつビルが崩れ落ちるかわからないし、
あの瓦礫の山の中に埋もれている人を人間の手だけで
助け出すのは到底無理だ。
重機があればともかく、ここにはそんな物は無い、
かわいそうだが、どうにもならない」

若い兵士は辺りを見回し、あるものに目をとめた、
「重機はあります、あそこに・・・」

見ると、戦車が見えた。
「バカな、戦車が何の役に立つと言うんだ」
340 :復活 :2014/11/09(日) 19:23
兵士は戦車に走って行き、側にいた戦車の操縦士に
事情を話していた、
操縦士はうなずくと戦車の中に入り、戦車を動かした。

戻ってきた若い兵士に、
「止めろ!戦車で瓦礫の中に突っ込んで行ったりしたら、
瓦礫が崩れ落ちてかえって危険な事になりかねない!」

若い兵士は、ビルに向かって行く戦車を見ながら、
「危険な事はわかっています、でもこのまま放っておいても
ビルが崩れて助からないのです、やってみる価値はあります」
341 :復活 :2014/11/09(日) 19:28
砲塔を後ろに回した巨大な戦車は、しゃにむに瓦礫の山の
中に突入して行った。

さゆは、突然すぐ側に轟音と共に戦車が突っ込んできて
瓦礫が崩れ落ち、さゆの上になっていた友男の
頭に大きな瓦礫の塊りが落ちてきて直撃したので、

「友男さん!!」
と悲痛な声を上げた、


戦車の後に続いた兵士が、さゆの声でその方向を見て
さゆの姿を確認すると、
ただちに、戦車に向かって操縦士に戦車を止めるようにと叫んだ。
342 :復活 :2014/11/09(日) 19:30
兵士はさゆの体に手をかけて引っ張り出した、
さゆは引きずられながら叫んだ、
「私はいいから友男さんを助けて!怪我をしてるの」

兵士は友男の方を見た、身動きひとつしない。
「・・・その男はもう死んでるよ」

さゆは泣き叫びながら、
「そんなことない!友男さんはまだ生きてます!!
早く助けて上げて!」

兵士は友男の口の辺りに触ってまだ息があるのを
確めると、友男の体を瓦礫の下から引き出そうとしたが
まったく動かない。
重い瓦礫が友男の片足に覆いかぶさっているせいだ、
343 :復活 :2014/11/09(日) 19:32
「早くしろ!今にも上から瓦礫が崩れ落ちてきそうだ!」
戦車の操縦士が叫んだ、

兵士は友男を置き去りにして行こうとした、

さゆは泣き叫びながら友男にすがりながら、
「お願い!友男さんも助けてください!
でないと、私もここに残ります・・・」
344 :復活 :2014/11/09(日) 19:35
そのさゆをじっと見ていた兵士は決断すると、腰の銃剣を
取り出した。その銃剣で瓦礫の外に出ている友男の
膝の上を切り落として引き出すつもりだった。

そしてさゆに、
「これしか助ける方法が無い、わかったね」

さゆはうなずくしかなく、兵士が銃剣を友男の脚目がけて
振り上げると、目を覆った。


兵士と戦車の操縦士は友男を戦車の上に抱え上げ、
さゆも戦車の上にあげ砲塔につかませると、
ただちに操縦士は戦車の中に入り、戦車を発進させた。
345 :復活 :2014/11/09(日) 19:37
戦車が速度を上げてビルから離れた直後に、
ブリードビルは大音響を上げて崩れ落ちていき、
ほんの数十秒後に、巨大な瓦礫の山と化していた。


ようやく安全な場所に戦車はたどり着いて止まった。
戦車の上の兵士は近寄ってきた兵士達に、
すぐに軍医か衛生兵を呼ぶようにと言うと、
友男の切り落とした左足の根元をベルトできつく縛る。

さゆはその友男の頭を強く抱きしめていた。
346 :人魚の娘 :2014/11/11(火) 14:32
ブリードビルが爆発崩壊して約一ヶ月が立っていた。
私は収容されていた病院でようやく意識を取り戻した。
瓦礫の塊りが頭に直撃して脳に障害が起きてずっと
意識不明のままだったのだ。

さっそく医師が質問した、自分の名前、年齢、家族の事などを
覚えているか聞いて記憶傷害の有無を確めた。
私は何とかそれらを答える事が出来た、
しかし、ビルが崩壊する一ヶ月前までの記憶が無かった、
つまり、6月10日から7月13日までの記憶が飛んでいたのだ。

頭をかかえて何とか思い出そうとしたが、どうしても
思い出せない。
6月9日に、明日から一ヶ月の間、ある女性の世話をする
仕事を引き受けた事までは覚えていたが、それ以降の記憶が
まったく飛んでしまって無いのだった。
自分がどうなってこの病院に収容されたのかもわからなかった。
347 :人魚の娘 :2014/11/11(火) 14:34
「頭を強く打ったりするとよくある記憶障害なのよ、
時間がたてば少しずつ思い出してくるから心配ないわ」

看護師がそう言って私をなぐさめた。
二十代半ばの日焼けした人懐っこい感じの看護師だった。

「そうですか・・・なんで思い出せないのだろう」

「そうだとしたら、毎日のようにあなたを見舞いに来てた
女の子の事も覚えてないのかしら、15、6歳の子よ、
妹さんのようにも見えなかったけど」

首を振った、
「そんな女の子は全然覚えていないです、それに僕には
妹はいません」
348 :人魚の娘 :2014/11/11(火) 14:36
友男は、一ヶ月間共に過ごしたさゆみの事をまったく
記憶していなかった。


私はベッドの上に半身を起こした、別に体は痛い所も
無かった。急に足に痒みを覚えて掻こうと手を伸ばした、
不思議な事にいくら手を伸ばしても足が掻けない、

「すみません、足が痒いのですが掻けないのです、
悪いけど掻いてくれますか、左足の足首のあたりです」

看護師は、足元の毛布をめくってチラッと見ると、
「私にも掻けないわ。お気の毒だけど、あなたの左足は
膝の下から無いのよ・・・」
349 :人魚の娘 :2014/11/11(火) 14:39
「はぁああああ〜?!!」
私は驚いて、布団を取り払って自分の左足を見た、
自分の左足は、膝から下が無かった。

ショックで口がきけなくて看護師を見た、

看護師は気の毒そうに言った、
「消失した無いはずの足が痛みや痒みを覚えるのは、
『幻肢痛』といってよくある事なの。
でも今は良い義足があるから大丈夫よ。
自分の足同様に動くのだから、元気を出しなさい」
350 :人魚の娘 :2014/11/11(火) 14:41
私はすっかり落ち込んでベッドに倒れこんだ。
自分の左足を失ったのも大きなショックだったが、
なぜ負傷した事さえ思い出せないのが不安にさせた。

看護師は布団をかけてやりながら、
「毎日あなたを見舞いに来てくれてたあの女の子が
また来てくれれば元気が出ると思うのだけど、
とっても可愛い女の子よ。あなたの事を真剣に
見守ってる姿は、よほどあなたの事が好きなのね。
だけど、あの女の子は3日前から姿が見えないのよ」

その女の子の事を考えたが、まったく心当たりが
無かった、大学のガールフレンドの女の子のひとりを
思い出したが、彼女は20歳過ぎていて年齢的に合わない。
たぶん、記憶が飛んでいた一ヶ月の間に知り合ったのだと
思った。
351 :人魚の娘 :2014/11/11(火) 14:43
翌日、看護師が病室にやって来て、
「あなたに面会よ。とっても可愛い女の子よ。
でも、毎日来てたあの女の子とは違う子よ。あなたって
よほど女の子にもてるのね」

すぐにその女の子が病室に飛び込んできた、
「友男〜!!」

桃子だった。

ももはベッドに駆け寄ると手を握ってきて、

「友男が行方不明になってとっても心配してたんよ!
ようやくこの病院に入院してる事がわかったのよ、
病気は治ったの?元気そうじゃない、本当に良かった」

ももは涙を浮かべながら言った。
352 :人魚の娘 :2014/11/11(火) 14:46
ももはガールフレンドの中では私も気に入っていて、
何度かベッドを共にした事があった。

いつもは、髪の毛を真っ赤に染めていたり、派手な服を
着て化粧も濃かったのだけど、
久しぶりに見るももは、髪の毛も黒く戻しポニーテールに
していて、着ている物もジーパンにTシャツだけだった。

そして素顔のももは何だか子供っぽく見えて、
片足を切断して傷心の私にとって、たまらなく愛着を
覚えて、ももの手を強く握り返した。
353 :人魚の娘 :2014/11/15(土) 18:01
友男の中には、さゆの事はまったく念頭に無かった。
さゆを愛し、プロポーズまでした事は記憶の外だった。

その後、2、3日して郷里から友男の両親がやって来て
友男を退院させて連れて行った。 桃子も一緒だった。


一週間ほどして、病院にさゆみがやって来た。
病室に友男の姿が無いので、ちょうど居合わせた
顔見知りの看護師に聞いてみる。
354 :人魚の娘 :2014/11/15(土) 18:05
看護師は友男が両親に連れられて退院した事を告げた。
そして、若い女の子も一緒だった事もさゆみに言った。

「そうですか・・・」

看護師は、気落ちした様子のさゆみに友男の郷里の
地名を言うと、

「私にはあなた達にどんな事情があるかわからないけど、
あなたが本当に友男さんの事を好きなら、
どこまでも追いかけて行くべきだと思うな。
たとえライバルが居たとしても」
355 :人魚の娘 :2014/11/15(土) 18:10
さゆみは首を振ると、

「もういいんです。友男さんは、私が悪魔に食べられそうに
なった時、救ってくれた王子様なのです。
友男さんの事を生涯感謝して想い続けています。
私は、結局は報われない人魚姫に過ぎないのです」

さゆは看護師に頭を下げると出て行った。
356 :人魚の娘 :2014/11/15(土) 18:11
「人魚姫か」

看護師はおかしな事を言う女の子だなと思ったが、
何となくわかるような気もした。


「徳永さん、こっちを手伝って」
「は〜い!」

看護師は同僚に呼ばれて元気良く返事をした。
357 :人魚の娘 :2014/11/20(木) 14:49
それから約1年ほど立った、2057年の7月のある日、
ある野外の会場でイベントが行われていた。

新しくデビューした女の子三人組のユニットのお披露目の
イベントだった。

358 :人魚の娘 :2014/11/20(木) 14:51
一年前のブリードビルの爆発で独裁者の総統が死んでからは
民主的な政府が誕生して、元のような自由な社会に戻っていた。

独裁政治の原因のひとつだった食糧危機も、各国の二酸化炭素(CO2)削減の
効果が徐々に表れて地球温暖化が徐々に緩和したせいで、
世界的な天候異変も収まり、穀物の生産も順調に伸びていた。

食料を輸入だけに頼っていたこの国もそれを転換して農業に
力を入れるようになり、食糧危機も解消に向かっていた。
エネルギー問題も、石油に代わる動力として水素が
実用化されていた。
359 :人魚の娘 :2014/11/20(木) 14:53
ステージの上がった三人の女の子がMCから紹介される。
「『マーメイド娘』の、さゆみ、みずき、りほです!では三人に
自己紹介をお願いします」


「マーメイド娘のりほで〜す!ダンスが得意です!
よろしくお願いします」

「マーメイド娘のみずきです。大好きなアイドルになれて
幸せです。頑張ります」
360 :人魚の娘 :2014/11/20(木) 14:54
最後に、もうひとりの女の子がマイクを手に持った。

「マーメイド娘のさゆみです。
今日は、私の16歳の誕生日です。そんな良き日に、
夢だったデビューする事が出来てとても幸せなの。
では、デビュー曲の『Little Mermaid』を歌います」

集まったファンの大歓声が沸き上がった。
361 :人魚の娘 :2014/11/24(月) 00:37
ステージの前列に、友男は桃子と一緒に観に来ていた。
友男は、あまり気乗りはしなかったのだが、桃子に誘われて
やって来たのだ。

郷里からまた東京に戻ってきて、新しい生活を始めていた。
左足の義足も慣れてきて、以前と同じように歩けるように
なっていた。それまでリハビリをする友男の手となり足となって
献身的に支えてくれたのは、桃子だった。
362 :人魚の娘 :2014/11/24(月) 00:39
ステージのさゆみは、歌の途中で友男の存在に気がついた、
友男も自分をじっと見つめて歌うさゆみに気がついてた。

ステージの上と下で視線が合ってお互いを見詰め合った。
桃子はそんな二人を不思議そうに見比べていた。
363 :人魚の娘 :2014/11/24(月) 00:40
さゆみは、歌を終えるとステージから降りると友男の側に
近寄った。

「友男さん!やっとまた会えたのね」

「さゆ・・・」

突然、友男の記憶がよみがえっていた。
二人は抱き合った。


そんな二人を桃子は茫然と見ていた。
364 :人魚の娘 :2014/11/24(月) 23:38
さゆみは桃子に頭を下げると、友男との一ヶ月間を話した後、

「私は友男さんと一ヶ月間過ごすうちに友男さんを好きに
なっていきました。友男さんも私を好きになってくれて、
結婚しようと言ってくれたのです」


桃子は黙って聞いていた。
365 :人魚の娘 :2014/11/24(月) 23:39
「今こうしてアイドルとしてデビュー出来たのは友男さんのおかげです。
本当に感謝しています。でも今になって考えると、それと結婚とは別の
ような気がします。あの友男さんと私の一ヶ月間は異常な時間だったのです。
私は生贄になることを運命として受け入れるしか無かったのです。
そんな時現れた友男さんを愛するようになりました。
友男さんもそんな私に同情して、私を愛してると言ってくれたのです」

さゆみをそう言って友男を見た。
友男はうなずいた。
366 :旅立ち :2014/11/26(水) 00:14
「でも、あれから一年経って事情は変わったのです。片脚を失った友男さんが
こうやって元気な姿になれたのも桃子さんのおかげです。
異常な時に愛し合った私達は、正常な時に戻った今は終わりなのです」

友男は首を振ってさゆみの手を取ろうとした、
しかし、さゆみは友男の手を離すと桃子を見て、

「桃子さんに本当に感謝しています。私は友男さんと桃子さんの間に入っていける
立場では無いのです。私は友男さんに会えただけで満足です。
もう二度と友男さんに会うつもりはありません」
367 :旅立ち :2014/11/26(水) 00:16
さゆみはそう言うと桃子と友男に頭を下げると、行こうとした。


「さゆみさん!」

桃子の声にさゆみが振り返ると、
桃子は、友男の手を取るとさゆみの方に引いて行き、その手を取り、
二人の手を握らせた。

そうしてくるりと背中を向けると、去って行った。


終わり
368 :旅立ち :2014/11/26(水) 00:17
道重さゆみさん
369 :旅立ち :2014/11/26(水) 00:17
卒業おめでとう
370 :旅立ち :2014/11/26(水) 00:19
完結しました。


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