■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 最新50

アイソパラメトリック

1 :名無飼育さん :2013/11/15(金) 20:32
Juice=Juiceです。
宮本さんと金澤さん中心です。
94 :グッドナイト、スイートハーツ :2013/12/14(土) 22:02
 
95 :名無飼育さん :2013/12/14(土) 22:03
レスありがとうございます。

>>45
そう言ってもらえますと、私としても書いてアップして良かったなあと思います。
嬉しい限りです。嬉しい限りです。
レスをいただいたときの日記のテンションがすごいヤバイことになっております。

>>46
今回のも良い意味で気にとめていただけたら嬉しい限りです。嬉しい限りです。
続きましたが長さがすごいヤバイ。
そしてこのレスをいただいたときも日記のテンションがさ乱れております。
96 :名無飼育さん :2013/12/14(土) 22:04
スレタイの略称はアイパラとかアメトクとかで。

ノリ・ 。・リ<次回に続くよ!
97 :名無飼育さん :2013/12/15(日) 02:29
愛想とかではなくアイソ面白いです!
JJ全員への愛情を感じます。
だーいしの登場を心待ちにしております。
98 :名無飼育さん :2013/12/15(日) 23:23
ちゃんさんの面倒な女っぷりとか、かなともさんのつかませない感じとか、
すごくうまくでてるなぁと思いました。
面白くて、すごい!ヤバイ!です。
99 :名無飼育さん :2013/12/16(月) 00:04
作者さん、他にも何か書かれていますか?
100 :名無飼育さん :2013/12/25(水) 08:03
面白いです!メンバー愛を感じます。
続きが読みたくなります。
101 :名無飼育さん :2014/01/16(木) 21:37
J=Jの話が読めるの幸せです。
どの場面もメンバーの姿が思い描けるようで、とても面白いです。
次回更新楽しみにお待ちしてます。
102 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:16


103 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:17
秋は徐々に深まる。紙コップの中の飲み物が冷めていくのが早くなり、ぬるいココアは底に
甘さがたまってしまう。朋子は自販機の低い唸りを聞きながら緩やかにそれを横に振る。

名前を呼ばれて顔を上げると、由加がこちらを見ていた。対面のベンチに腰掛けているの
は由加だけで、そもそも二人の他にひとけがない。じっと見つめられているのが不思議で
首をかしげてみせたら由加は途端に笑顔になって、その胡散臭さに朋子は嫌な予感がした。

「佳林ちゃん、すっごいとものこと見てるよね」

由加の口調は有無を言わせないもので、確信に満ちている。いつかは指摘されるだろうと
予想していたからか思ったよりも動揺しなかった。周囲の変化に敏感なのはリーダーとし
ての美点ではあるけれど、今の朋子にとってはうざったい。

紙コップを揺らしていた手を止める。悪い笑みを浮かべた由加はいつもの穏やかさからは
ほど遠くて、朋子は警戒を強めながらも気の抜けたふうを装った。

「そう?」

とぼけてみせると由加はきょとんとする。少しだけ顔をしかめて、疑うように朋子に問う。

「気付いてないの?」
「由加ちゃんの勘違いじゃない?」

返答が早口になって朋子は内心で舌打ちする。やはり多少は焦っていて、柄でもないから
それを表に出したくはなかった。視線を宙に向け、考え込む風情を見せてから朋子は言う。

「それか、由加ちゃんのこと見てたか」

先程までの話をしているのなら、由加と朋子は揃って佳林からは離れた場所にいた。
けれど会議室はそう広いわけでもないから、当然のように佳林の目はどちらにも届く。

見られていたのだとしても朋子はここで取り合う気はなかった。下手にいろいろと言えば
藪蛇になりかねないから、嘘ではない言葉でごまかす。

「あの子、人がなに話してるかとか気にするタイプだし」

見てたならそれ気にしてたんじゃないの、と付け足す。
自分の話をされているのではないかと佳林は過剰に気にするきらいがあるのは本当だ。
その考えは年相応とも言えるけれど、全体を見通せばバランスが悪くも感じられる。
佳林は平均的な中学生より大人びていて、それなのにときどき妙に子供っぽい。
104 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:19
大人びているのは小さい頃からの習い性となっているのだろう。大人に囲まれて働いてい
るうちに自然と振る舞いも矯正され、それなりに厳しそうな家庭に育っているからその影
響もあるのかもしれない。

子供らしさは、求められているものを敏感に察しているからだ。期待される通りに子供ぶ
る、というのは歪んでいるし、自然なものではない。傍目には器用な子に見えても、年齢
に似つかわしい経験が少ない分を埋めることなく時が進めば、次第に違和感も出てくる。

聞き分けが良い子としっかり者は手がかからない。優等生であることを求められ、それに
従ううちにどれくらい甘えてもいいのか頼ってもいいのか、他人との距離の取り方が下手
になる。

朋子も距離がわからない。由加が相手でも、どこまで心を許していいのか未だに測りかね
ていた。けれどそれを表情に出さないくらいには器用だし、しっかりしてもいる。

由加の指摘は朋子にとって立ち入られたくないところだった。だから勘違いだと突っぱね
るし、この話題を続ける気もない。由加もそれを悟ったのか深く追求することもなく、軽
い相槌を打つにとどまった。

「そうかなあ」

由加の声は朋子よりも数段とぼけているようで、そこには疑いの色が含まれている。
今度は朋子が眉をひそめ、けれど蒸し返しはしない。そして話題は変わるかと思いきや
近いところに移っただけだった。

「ともは、佳林ちゃんに関しては心配性だよね」
「まあ、骨折されたら困るし」

ひそめた眉はそのままで、朋子は由加の言葉にうなずいた。佳林がメジャーデビュー前に
転んで足を怪我して、本人だけでなく周囲も含めて困らなかったといえば嘘になる。怪我
を責めはしないけれど、今後は気をつけてほしいと思うのは人情だ。

朋子は佳林に同情している。似ている部分があるから憐れんだ。出来の良い子は放って
いてもしっかりやるし、時には人の面倒までみる。それが当然だなんて損な役回りだ。

佳林は頼りになる先輩で、同時に三つも年下の中学生でもある。経験が長いから皆の手本
になるようにとレコーディングの順番を先頭に置かれたり、撮影も佳林から始められたり、
それが続けばプレッシャーがかからないわけがない。

あまりに不憫で気の毒だ。だから朋子は佳林に優しくするし、心配する。
いつ手を差し伸べればいいかを知るために視線を向けるし、目も離さない。
105 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:20
朋子はコップの中身を飲み干して、立ち上がりゴミ箱に投げ捨てる。由加に背を向けたの
は拒絶の意味も込めていた。けれど、振り返れば由加は疑っていたような顔から一転して
また笑みを浮かべていて、朋子も再度、薄ら寒いものを感じる。

「……なに?」

軽くにらみつけながらまたベンチに腰を落ち着ける。朋子とは対照的に、由加は飄々として
なにやら楽しそうにすら見えた。

「気をつけないと、私以外にもばれちゃうよ?」
「なにが」
「言ってもいいの?」
「ダメ」

考えもせずに即答する。由加はどこまで察しているのだろう。朋子が佳林を心配している
ことは事実で、その感情は不自然なものではないはずだ。あからさまになりすぎないよう
佳林に視線を向けているつもりだったけれど、それにはどれほど気付かれているのか。

朋子からの視線も心配も、悟られたところでなんの問題もない。あるとすれば、そこに
含まれた意味を知られたときだ。そしてそれを朋子から由加に教えてやるつもりはない。
それは、存在してはいけないものだから。

不意に由加がにこりと笑う。その目は朋子には向いていない。ぱたぱたと軽い足音が
誰のものか、わかってしまうのだから嫌になる。

「先に戻ってるね」

由加は立ち上がって朋子を見下ろす。置いていくつもりかと非難の視線を投げれば由加は
困ったように笑って、それでも待ってはくれないのだから意地が悪い。

腹の探り合いじみた会話をした後で顔を合わせるのは気が引けた。重い腰を上げれば佳林
がそばに立っていて、朋子は表情を取り繕う。

「なに話してたの?」
「ただの雑談ですよ」

問いには無難な答えを返し、朋子はため息をつきたいのを我慢した。
不安げな顔をした佳林は、どうせまたつまらないことを考えている。

考え込みやすい性格は朋子も同じだった。
佳林がどう過ごしているか、なにを思っているのかを知りたいのはいつものことだ。

それこそ、夜も眠れないくらいには佳林のことを考えてばかりいる。
106 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:20
 
 
   ◆   ◆
 
 
 
107 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:21
取材待ちの楽屋はいつもより静かだった。わずかに眠気を感じながら、朋子はテーブルに
肘をついて鏡の前の佳林とあかりを眺める。真剣な面持ちで向かい合った二人の距離は近
く、目をつぶったあかりの顔を佳林がのぞき込んでいた。

「動いちゃだめだよ」

互いに髪型をつくってやることはしばしばあったけれど、メイクを施すまでのことはめず
らしい。あかりもおとなしく従って、佳林は慎重にそのまぶたに色をのせていく。

「あれ、楽しいのかねえ」

そう言う紗友希も、朋子の隣で同じようにだらりと二人を見守っていた。

「どうなんでしょ」

一緒に鏡をのぞき込む佳林とあかりは楽しそうだ。それを見ていると、頬杖をついたまま
で背筋が曲がってくる。退屈で、つまらない。眉間に皺が寄るのは視力が悪いせいだとい
うことにした。

グループ結成当初のことを思い出す。佳林とあかりは同学年なのにキャリアの差が大きく、
傍目にもぎこちなかった。佳林がしきりに話しかける様子は見ていたけれど、今ほど親し
げになるにはもっと時間がかかるだろうと朋子は思っていた。

あかりが相手だから上手くいくのだろうか。佳林のあかりに対する態度は表面だけを取り
繕っているようには見えなくて、朋子に向けられていたものとは質が違った。

質の違いは年齢差がある故の気後れだったのか、それ以外の理由だったのか。
予想はついていたけれど、朋子は気付いていないふりをしていた。

「佳林ちゃんって」
「ん?」

名前を出して、しかしなにを言おうとしたのかわからなくなる。朋子と佳林が一緒に過ごす
時間が増えて、まだ一年も経っていない。今まで佳林はどうやって人と関わってきたのかを
朋子は知らなかったし、知りたかった。例えば誰かを嫌ったり羨んだり妬んだり、そういう
ことはあったのだろうか。

紗友希に尋ねるかを迷う。佳林と紗友希の付き合いは長いから、訊けば過去のことを話し
てくれるかもしれない。けれど急にそんな質問をするのは不審に思われそうで躊躇われて、
朋子は別の話題を口にする。
108 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:22
「どうしてあんなに楽屋を散らかすんでしょうか……」
「あー。紗友希からも言っとく」

ともがいっつも片付けてるもんねえ、と紗友希が呆れたように言った。遠目に見てもメイク
道具が散乱している。初めはしっかりしているばかりだった佳林の子供らしさが近頃は出て
いて、その自然な立ち振る舞いを朋子は喜んでいる。

佳林はずっと気負っていた。経験が長くて先輩だからと張り切って空回って、仲良くしな
ければいけないから仕方ないと透けて見える態度で朋子に接して、本当は関わりたくもな
いくせに敬語は使うなと、宮本さんと呼ぶなと無理を言う。そうやって肩肘張っていたの
が薄れたのなら嬉しかった。

ディスプレイの向こう側にいて、大した興味を持っていなくとも名前が目に入る。
かつての朋子にとって佳林はそういう位置にいて、同じ側にまわっても距離が遠いのには
変わりがなかった。それでも目が届く範囲にいるのだから、当然のように気になった。

裏ではどういう声で話し方で、どう過ごしているのか。
好奇心に逆らえず、レッスン室で楽屋で、朋子は佳林を見ていた。

今もその習慣は抜けない。変わったのは視線がときどき交わるようになったことくらいで、
佳林はきっと、それを偶然だと思っている。
109 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:23
「楽しそうだね」

ぼんやり考え込んでいた朋子の背中に重みがかかる。気を抜いていたせいでまともに上体
を潰され、息が苦しかった。佳林とあかりに向けていた視線を斜め上に向け、朋子は文句
をつける。

「……由加ちゃん、重いんだけど」
「ええー?」

朋子の頭上で、由加が不満げな声を上げる。楽しそう、という台詞が指しているのは佳林
とあかりのことだ。由加を押しのけようともがいていると視界の中で佳林が立ち上がって、
ちょこちょことこちらへやって来るのが見える。

「なにしてるのー?」
「んー? ともで遊んでるの」

まさに遊ばれていて、朋子が言い返す前に重みが二人分に増す。紗友希は面白がって写真
を撮ろうとするし、あかりがきらきらした目で向かってきて嫌な予感しかしない。

「重いってば」

無理矢理に上半身を起こし、二人を振り落とす。三人目になるのが叶わなかったからか、
あかりはつまらなそうに口を尖らせた。

座っていたら、またいつ遊ばれるかわからない。どこかに逃げようと朋子が立ち上がると、
すぐそばの佳林に見上げられる。不躾なまでにはっきりとした視線を向けられれば、無視
するわけにもいかなかった。

「どうかした?」

問いかけると、佳林は拗ねたように言う。
110 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:25
「最近、私と遊んでくれないよね」
「えぇ?」

唇を尖らせる佳林は実際以上に幼く見えた。いじらしく朋子の服の裾を引いてくる仕草も
かわいらしくて、思わず頭を撫でてやる。由加があかりに捕まって部屋から出て行くのを
視界の端に留めながら、朋子は苦笑してみせた。

「そんなことないでしょ」
「そんなことある」

佳林は不平がましく頬を膨らませる。遠慮なく甘えることを覚えつつあるようで、それは
やはり嬉しかった。

年上の後輩に寄りかかることを佳林はしなかったし、そもそも朋子の存在を面白く思って
いなかっただろう。言われなくともそれくらいの想像はついた。隠しているつもりでも佳林の
言動の端々から察せられるものはあって、けれど責められるわけもない。

懐いていた先輩は研修生から抜けていき、後輩には先を越され、言葉を交わしたこともない
ほどの後輩と同じグループになる。これでひねくれない方がどうかしている。

それでも佳林は健気だったし、嫌いな相手にも親切にするくらいには人間が出来ていた。
それがかわいそうでかわいくて、朋子が佳林に抱く歪んだ気持ちは今も変わらない。

だから、ただの同情だ。寂しそうにしている子供をあやすように優しくして、拗ねるのが
かわいいから時々そっけなくする。その扱いは不満に思われているようだったけれど、
朋子としてはいろいろと一人で抱え込みがちな佳林の負担を減らしたかったし、誰かを
頼ることを覚えてほしかった。

そうでもないと、あまりにかわいそうだから。
111 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:27
頭を撫でていた手をつかまれる。不服げな顔をされるのはいつものことで、それがかわい
いから茶化してしまう。臆せず甘えてくるようになったのは計算通りだ。けれどここまで
懐かれるとは思っていなくて、それは誤算だった。

手を離すタイミングをつかみかねる。近頃、佳林と関わり合いになるのを避けているのは
由加の視線があるからだった。いろいろと勘ぐられて面白がられるのは愉快でない。

だから由加がいないときくらい構ってやりたいけれど、そうもいかない。
手は取られたままで朋子が悩んでいると、つまらなそうな声を投げかけられた。

「紗友希の前でいちゃつかないでくれる?」
「いちゃついてないよ!」

佳林の反応は早すぎて、意識しているのがありありとわかる。手を離されたのが不満なのと
冷やかすのが楽しいから、朋子もつい意地悪をしたくなった。強めに佳林の腕を引いて
抱き留めれば抵抗されて、それをおかしく思いながら朋子は紗友希に言う。

「うらやましいですか?」

べつにぃ、と答えた紗友希は実際に大した興味もなさそうだった。佳林は朋子の腕の中で
暴れていて、しかし本気で抜け出す気はなさそうだからそのままにしておく。

妙に近づいてこない時期もあったけれど、この頃はなにかと理由をつけて追いかけてくる
ことが多くなっていた。それが健気で不器用でいじらしいから、朋子はついつい佳林で遊
んでしまう。

またしても、離れるタイミングがつかめない。形ばかりの抵抗を振りほどくのはもったい
なかった。ずっとこのままでも良かったけれど紗友希の目もあるし、いつ由加とあかりが
戻ってくるかもわからない。名残惜しく思いつつ、朋子は身体を引いて佳林を見下ろした。

「あっち、片付けましょう」

鏡の前は散らかされたままだ。朋子がそちらを指せば、佳林は不満げながらもうなずく。
先を歩けば渋々とついてくるから、その表情がかわいくて笑いが漏れる。

優しくするのは同情しているからだ。
それ以外の理由を朋子は知らないし、誰にも知られたくない。
112 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:27
 
 
   ◆   ◆
 
 
 
113 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:28
ライブハウスツアーも終盤に差しかかっていた。長距離のバス移動にも慣れてはきたけれど、
やはり地方から地方へと夜のうちに移るのはつらいものがある。

移動中にコンビニに寄るのはいつものことで今日も例に漏れなかった。夜風が冷たかった
せいかバスに乗り込んだときには目が冴えていて、おそらく寝たふりをしている佳林にも
冷静に話しかけてしまう。

「そこ、私の席なんですけど」

人数に対し大型バスの席数には余裕があった。窓側と通路側、二つの座席を一人で使うこ
とができたから朋子も当然そうしていて、佳林もそのはずだ。

通路をふさいでしまわないように片側に寄っていると、朋子の横を由加が意味深な笑みを
浮かべながら通る。それには一瞥で返して、人通りがなくなる頃合いを見計らった。

「宮本さん、起きて」

耳元で、わざと名字で呼びかける。まぶたを持ち上げた佳林はいたずらを仕掛けた側なの
に不機嫌そうで、朋子は軽く笑ってしまう。

「まあいいや。佳林ちゃんの席、使うから」
「……隣、座ればいいじゃん」

通路を奥に進もうとしたら上着の裾を引っ張られて、今度は苦笑が漏れた。
朋子は振り返ってその手を払う。

「最初っから一緒に座りたいって言えばいいのに」

一緒に座りたい、と小さな声で復唱され、朋子は佳林を窓際の席に追いやる。点呼の後で
バスのエンジンがかかり緩やかに発進して、どうしたものかと朋子は思案した。後方の座
席では賑やかに騒いでいるメンバーもいるし、眠っている面々も少なくない。

騒ぐか眠るか、バスの中でできることは限られている。車酔いをするから文字を読むのは
難しいし、揺れがあるから細かい作業にも向かない。
114 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:28
黙っている佳林に目を遣る。視線を逸らさないでいたら、佳林は言い訳がましく口を開く。

「ともが最近、話してくれないから」
「そんなことないと思うけど」
「そんなことある」

このやりとりをするのは初めてではなかった。あまりに懐いてくるから、優しくして甘え
させることに同情以外の意味を見いだしそうになる。これ以上に情が移れば互いのために
ならないと朋子は思う。

だから深入りしそうになるのを自制したくて距離を置いていたのだけれど、避けすぎるの
は逆効果のようだった。朋子はそれを反省して、佳林のリクエストに応えようと努める。

「なんか話すことある?」
「……とも、ときどきひどいよね」

朋子の質問が気に入らないようで佳林は声を尖らせた。後ろの席からは笑い声が聞こえる。
それにかき消されないように、けれど佳林には届くように朋子は優しく言う。

「そんなことないよ?」

宥めるために頭を撫でてやる。すでに髪は乱れているから気にならないのか手を払われる
ことはなかった。ぽんぽんと二度叩いて手を離せば、佳林は複雑そうに口を開く。

「話すこと、なんでもあるじゃん」

そう言うわりには、まともな会話が始まりそうにもない。言葉を待たれているようだった
けれどそれには構わず、サイドの髪を耳にかけてやったり戻したり、意味もなく触れると
佳林はくすぐったそうに目を細めた。その瞳を見つめたままで、朋子は水を向けてやる。

「例えば?」

なんでもあると言いながら、佳林は悩んだように間を置く。きっと意地の悪い顔になって
いるのだろうなと思いつつ朋子は静かに返答を待つ。ようやくなにかを考えついたのか佳
林は顔を上げたけれど、続けられた声は歯切れが悪かった。
115 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:29
「猫の話とか」
「うちの子が一番カワイイ。終了」
「ひどっ」

そういう反応をするからからかいたくなる。怒られそうだからそれは黙っておいた。
確かに端から見れば、二人の仕事以外での共通点といえば猫好きなことくらいだろう。

朋子は他にも思いつくけれど、わざわざ佳林に言ってやるつもりもない。年齢に似合わず
しっかりしていても、そのとき褒めそやされるだけで得することなどなかった。そう伝え
たところで佳林が変わるとは思わない。

境遇は違えど自分と同じルートを辿ろうとしている佳林を見ていると不条理さを感じた。
だれも違う道を通れとは言わない。その方が周りは楽だから。手のかからない子は放って
おいても大丈夫だから。

予想がつくから、手を差し伸べたくなった。過去の自分に重ね合わせれば情が湧くのも仕
方ない。大人だねという言葉は子供に向けられるもので、それは自由を奪うためのものだ。

そっけなくしすぎると佳林は落ち込んでしまう。乱してしまった髪を撫でつけてやり、
ここらが引き際かなと思いつつも朋子は意地悪く言う。

「じゃあ、なんか面白い話してよ」
「……無理だと思ってるでしょ」

期待通りに反応してくれるから思わず笑みが漏れた。懐かれているのを自覚してから、
朋子は佳林で遊ぶのが愉しくてたまらない。趣味が悪いことはわかっている。

大事にしたいような嗜虐心を刺激されるような、相反する感情が湧いてそれを抑えきれな
いなんて、気持ちが悪い。そんなものを三つも年下の中学生に抱くなんて、間違っている。

佳林の話は長くてつまらない。朋子はそれを知っている。
仏頂面をした佳林がかわいくて、からかいたくなるのは相変わらずだ。

「無理だとか思ってないよ」

笑っていると肩をぶつけられる。朋子がやり返すと佳林ももたれかかってきて、それを
心地良いと思ってしまうのは、勘違いでしかない。
116 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:31


117 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:31
バスの揺れで目が覚めた。
佳林の精一杯の面白い話を聞いているうちに寝てしまっていたようで、身体の節々が痛い。
いつの間にか朋子の膝には佳林の頭が預けられていた。のぞき込めば目は閉じられていて、
起こしてしまわないように、朋子は指先でそっと佳林の前髪を梳く。

そこに特別な意味はない。白い頬に触れようとして、それはやめた。
寝静まったバスの車内で朋子はため息をつく。行き場を失った指先を引っ込め、座席のリ
クライニングを倒しておけば良かったと思った。

照明は抑えられている。目を横に向ければ車窓にはカーテンが引かれていて、それを捲れ
ば外の景色を確かめられるのはわかっていた。手を伸ばせば身体が動いてしまうから、佳
林を起こしてしまわないために朋子はそれをしなかった。

今夜は月が昇っているのだろうか。一人で見ても意味がないから買い物に出たときには
確認しなかった。カーテンのせいで空は見えない。佳林は眠っているから月がどうあれ
朋子には関係がない。一緒に見ていてこそ、あの台詞には意味がある。

もう一度だけ指先で佳林の前髪に触れた。なにか夢でも見ているのか少しだけ身じろぎさ
れて、それでもくすぐったがる様子はない。

佳林はいつも明るく振る舞って悩みを表には出さない。なのにときどき不安げにするから
心配になった。子供らしく騒いでいるときも大人ぶって澄ましているときも、佳林がなに
を考えているのかを知りたいのに朋子は訊けないでいる。

なんでもできるねと佳林は朋子に言った。悪気なく投げられる台詞には慣れていたはずな
のに、佳林に言われると苛立ってしまうのだから朋子も大人げない。

生まれつきに万能で優等だと思われるのは似たり寄ったりのはずだし、朋子から見れば佳
林の方がよほど優れていた。それなのに佳林は劣等の意識が強すぎるから焦れったい。

器用な人間だと扱われるのは朋子も佳林も似ている。褒められるのが嬉しくて幼さを馬鹿
にしていたのに今となっては誰にも上手く甘えることができない。朋子はもう諦めていた。

佳林はなにも気付いていない。
そのまま大人になるのはかわいそうだから、朋子は佳林に優しくする。

それ以上の理由は、持ってはいけない。
118 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:32
 
 
   ◆   ◆
 
 
 
119 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:32
シングルかツインか、ホテルの部屋割りはたいていこの二種類に分けられる。一人部屋は
快適だ。そして薄暗く静かな室内では、少しの音でもよく響く。

着信を告げる振動音はうるさいくらいで、朋子はベッドの中で顔をしかめた。まだ外が
暗いことはカーテンを開けなくてもわかったし、もう夜半も過ぎているのだから気付か
なかったとでも言えばすむだろう。

無視できなかったのは予感がしたからだ。だるさを感じつつ身体を起こして通話を受け
れば、聞き慣れた声が不安げに尋ねてくる。

「……起きてる?」

潜められた声は同室の誰かに気を遣っているのだろう。佳林から電話をかけてくるのは
めずらしく、しかも真夜中にというのは過去にも例がなかった。

「起きてたけど」

嘘ではない。あくびが出そうになるのを堪えるくらいには眠かったけれど、だんだんと目も
覚めてきた。佳林は電話の向こうで黙っている。朋子がなにも言わないでいると、恐る恐る
といった調子で佳林は言う。

「……今から行ってもいい?」

佳林と同室なのは紗友希だっただろうか。由加だったら断っていたかもしれない。
初めから答えはひとつなのに言い訳じみたことを考えて、朋子はベッドから抜け出す。

「迎え行くから、待ってて」

部屋から出るなと言いつけた。
過保護と誹られるのはこういうところで、しかし心配なのだから仕方ない。
120 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:32
オートロックに閉め出されないよう鍵を持ち出させ、一人の部屋に迎え入れる。明るくす
れば目が冴えてしまいそうだったから枕元のライトだけを点け、朋子はベッドを手で示す。

「座ったら?」

用件はうっすらと予想がついた。佳林はおずおずと腰を落ち着け、立ったままの朋子を
見上げる。その表情は不安げで頼りなかった。

「私、良い子にしてた?」

眠れないなら一緒に寝てやると、条件付きで佳林に約束したことを朋子も忘れてはいない。
ふらふらせずに良い子にしていれば、と朋子は言ったけれど、おそらく佳林には意味が通
じていなかった。

「いや全然」

朋子は首を横に振る。どうせ転ぶなとか、そう解釈されているのだろうと思った。他の誰
かにふらふらするなと言えない朋子が悪いのはわかっている。そう望むことが許される関
係ではないから、朋子はそれ以上のことを佳林には言えなかった。

憂えるような顔をするから、つい優しくしてしまうのだ。
良い子にしていたとは思わないけれど朋子は助け船を出してやる。

「怖い夢でも見た?」

佳林がうなずくから、朋子は肩をすくめてみせた。選択肢はひとつしかないのに白々しい
やりとりをしなければ朋子は佳林を受け入れることができない。大義名分がなければ一緒
に眠ることなど許されない。
121 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:33
「しょうがないですね」

追い払うように手を振り、佳林をベッドの壁際に寄せてから朋子はマットレスに片膝をつく。
布団を掛けてやっていたら寝転んだ佳林に見上げられ、その視線を受け止めて朋子は言う。

「……こういうの、他の人にしたらダメだよ」

この欲の正体を朋子は知りたくなかった。寒くないようにと心配してシーツを整えてやる
のにも特別な理由はない。誰にだってそうする。けれど佳林が他の誰かにそうされるのは
我慢ならない。

「やっぱり、迷惑だよね」
「そういう」

意味じゃない、と続けかける。それならばどういう意味合いなのか、説明できそうにもな
かった。本当に煩わしければ通話を受けてすらいないのに、佳林はまたつまらないことを
気にしている。だから思わず語調が強くなってしまったけれど、不安にさせたいわけでは
なかったから朋子は意識して気を落ち着けた。

「……そういう心配はしなくていいの」

できるだけ柔らかい声で言えば佳林も少しは安心したようで、朋子もほっとする。乱れて
いない前髪を直してやるふりで間を置いた。

「私はダメだったらダメっていうから」

くすぐったそうにする佳林は幼い。頼ることを覚え始めて、その気持ちは朋子にしか向い
ていないようだった。それは佳林のためにならないとわかっているのに、誰かにこの立場
を譲る気にはなれない。
122 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:34
ダメじゃないよ、と繰り返す。心配事があるなら伝えてくれるほうが余程良い。

「だからなんでも言いなさい」

いつも一人で考え込みすぎ、と額を指先で押してやる。そうすれば不満顔になって、子供
扱いを嫌がっているのが透けて見えた。それには気付かなかったふりをして、朋子は佳林
に念を押す。

「高木さんが起きるまでには戻らなきゃですよ」
「……わかってるもん」

拗ねたような表情がかわいかった。朋子がベッドに腰掛けて髪を撫でてやると、佳林は
つまらなそうに唇を尖らせ、不平を訴えるように言う。

「また、子供みたいに」

中学生と高校生において、三つの年の差は絶対的だ。数年が経てば気にならなくなるのか
もしれなかったけれど、今の時点では無視できないほどに違いがある。

月が綺麗だと言っておいて一緒のベッドに入りたがる佳林は無防備で無自覚で、
そこにつけ込みたくなるのを抑えるくらいには朋子は理知的で理性的だ。

「……大人扱いしてほしい?」

間違っている。同情が劣情に変わるのは許されない。笑ってごまかす余裕もないくらいで、
頭を撫でていた手を白い頬に移した。薄暗い中でうなずく佳林は朋子がなにを考えている
のかをきっと知らない。だから、子供扱いすることしかできなかった。

「三年経ったら考えてあげる」

最大限の譲歩をしたのに、長いよと佳林は非難するように言う。三年後に一緒にいられる
かもわからないから、約束はできない。大人扱いしてやろうという気持ちも変わってしまうかも
しれないから、誓えもしなかった。
123 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:36
「……寝ないの?」

いつまでもベッドに入る様子がない朋子を不思議に思ったのか、佳林が言う。ずっと起き
ているわけにもいかないのはわかっていた。そもそも佳林が電話をかけてこなければもう
眠っていたはずなのに、そう尋ねられる謂われはない。

「……寝るよ」

返事にはため息がまざった。
枕元の明かりはそのままに朋子もベッドにもぐりこむ。向かい合えば、少し距離を残して
いるせいで互いの顔がよく見えた。佳林に不満げに袖を引かれ、朋子は瞬きで返す。

「もっとこっち来てよ」

ベッドの縁から落ちるほど離れているわけではない。早く眠ろうとしているのに佳林が邪魔
ばかりしてくるから、そろそろ目を開けているのも億劫になってきていた。

「動くのめんどい」

あくびをかみ殺しながら返事をすると、佳林は頬を膨らませる。近くにいれば佳林のことを
考えも心配もしなくていいから安心できて、いつものように眠れない夜を過ごさずにすみそ
うだった。だからどうしようもなく眠気を覚えているのは本当だ。ふてくされる佳林を朋子が
構わずにいると、物足りなさそうな声が聞こえた。

「とも、今日は優しくない」
「……今から部屋戻る?」

優しくないと言われたから、意地悪に返してやる。葛藤しているのか佳林は黙りこんで
俯いてしまって、その顎を指で持ち上げてやれば拗ねたように目を逸らされた。

「……ヤダ。戻らない」

優しくないって言ったの嘘、と佳林はつぶやき、朋子の指を外させる。ようやく眠るかと
思ったらまた袖を引かれ、うんざりしながら視線を合わせた。
124 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:36
「……眠いんですけど」

話していたいとは思うけれど、明日も公演は控えている。ただでさえ寝不足気味なのだから
夜更かしが過ぎるのは避けたかった。佳林が真剣な表情をしているから、まぶたが落ちそう
になるのをなんとか堪えていたけれど、続けられた言葉のせいで起きている気もなくなってしまう。

「国語の宿題」
「寝ていい?」

かぶせ気味に言ってしまう。それはこの話題を意識しているからに他ならなかった。
佳林は数学と理科ばかり質問にくる。それは朋子の得意科目だからで、それ以外の意味は
ないはずだった。国語の宿題を訊かれたことは一度しかなかったから朋子も忘れてはいな
いし、夜の公園で月が綺麗だと言われたことも覚えている。

見えないものを綺麗だと言う佳林の強引さを思い出した。ここで聞いたら後戻りできなく
なりそうで怖かった。佳林の言葉は遠回りで朋子に逃げ道を残していたけれど、それがい
つまで続くかはわからない。

「まだ寝たらダメ」

ぐいぐい袖を引く佳林は、もはやムキになっている。話の続きは聞きたくなかったけれど
朋子は渋々と折れてやった。どう答えを出したのかを知りたくて尋ねたこともあって、
そのときの佳林は頑なに教えてくれなかった。

なにか心境の変化があったのかもしれない。朋子は気軽に聞いてはいけないことだと思う
ようになっていた。けれど耳をふさぐわけにもいかないから、せめてそっけなく突き放す。

「なに、答え? 教えてくれるの?」

佳林はうなずいて、真っ直ぐな視線を朋子に向ける。視力が悪いせいでよく見えやしない
のに緊張した空気は伝わってきて、もう引き返せないところにまで来てしまったと思った。

宿題の答えなんて今までにも何度も聞いてきたのに、やけに鼓動が速まる。
なにを言われても受け流すつもりでいたけれど、佳林なりの解答は知りたかった。

二人きりの静かな部屋には物音ひとつない。
佳林の声が、張り詰めた空気をとかすように朋子に届く。
125 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:37
「……もっと、とものこと知りたい」

その感情には覚えがある。単純な言葉はやけに美しく響いて耳に残る。
名前を呼ばれてしまってはどうしようもなかった。

けれど佳林の解答は普遍的に使えるものではない。まさかこれで提出したわけではないだ
ろうから、朋子は冷静なふりをして気のない声で言い返した。

「それ、私にしか使えないじゃん」
「……ともだけだから、間違ってない」

朋子の反応が面白くなかったのか、佳林は拗ねたように顔を逸らす。それが愉快でかわい
くて、笑いそうになるのを抑えなければいけなかった。頬に手を添えてこちらを向かせる
と途端に緊張した面持ちになって、それがやはりかわいいから朋子は意地悪く言ってやる。

「知りたいんだ?」

わずかに顔を強ばらせたままで佳林はうなずいた。知りたいから視線を向けて追いかけて、
この一言で今までの行動にもすべて説明がつく。支配欲に近いその感情を朋子も佳林に対
して持っていた。それが美しいものではないことはわかっている。

だからあやふやなままで置いておきたかったのに、佳林は易々とふたを開ける。流してし
まおうにも黙っていては許してくれそうになかったから、朋子は真面目な表情をつくって
佳林の目をのぞき込んだ。

「……今、なに考えてるか教えてあげようか」

恐れているような期待に満ちているような、佳林が複雑そうな顔をするからついに笑いを
漏らしてしまう。大人扱いをしたくなったけれど、無警戒な子供につけいるのは褒められ
たことではないから朋子はまだ教えない。

「眠いなあって思ってるよ」

ちょっと優しくすれば嬉しそうで、からかえば不満そうで、いろいろな表情を知っていく
のが楽しかった。けれどまだそう思っていることは教えないつもりでいる。
126 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:39
「……そんなのばっかり」

佳林はますます拗ねて身体を縮こまらせた。その表情が悲しそうにすら見えて、さすがに
いじめすぎたかと申し訳なくなった。だから今度は朋子から佳林の袖を引いてやる。

「嘘だって。おいで」

意固地になったのか佳林が動かないから、仕方なく朋子から距離を詰めた。嫌がる素振り
をされても気にせず身体を寄せてやれば不満そうに押し返してきて、その弱い力に笑って
しまう。近づくほどあたたかくて心地良くて、子供は体温が高いから尚更に良かった。

ただの同情だけで優しくして心配する。それが嘘なのはわかっている。
佳林を特別に気にかけるための言い訳がほしかっただけで、すべては後付けの理由だ。

初めからずっと知りたかった。
それこそ視線が合わなかった頃から朋子はそう思っていて、佳林がそれに気付いていなさ
そうなのもわかっていた。それでも良かったのに、懐いてくるようになったから戸惑った。

この感情をどう扱ったらいいのか朋子はわからない。距離を縮めるタイミングもつかめず、
ただ気にかけて優しくして心配することしかできないのがもどかしかった。

少しだけ身を引いて薄暗い中で佳林の顔をのぞき込む。
視線を外してくるのがかわいいから、つい意地の悪い性格が出てしまう。

柔らかそうな頬に人差し指を伸ばして触れれば、くすぐったそうに身をよじられた。
指をつかんで離そうとしてくるから仕方なく引っ込めてやると、佳林は息を漏らすように笑う。
127 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:41
それを不満に思って朋子が顔をしかめると、今度は佳林が指を伸ばしてきた。仕返しとばかりに
頬をなぞられるのがこそばゆかったから、その手を捕まえて逃がさないように指を絡めてやる。
振りほどかれるかと思ったらおとなしくされるがままで、今夜の佳林はやけに素直だった。

「……いつもは嫌がるくせに」

そう言った途端に離そうとするから、朋子は愉しくなって笑いながら手に力を込める。
寒くないように繋いだ手は布団の中に仕舞い込んで、佳林が抵抗を諦めるのを待った。
にやついてしまうのを抑えられないでいたら目を逸らされ、朋子は小さく名前を呼ぶ。

拗ねたようにしながら身体を寄せてくるのが、子供みたいでかわいかった。
だから知りたいと伝えるにはまだ早い。今は近くにいてくれればそれでよかった。
大人よりも子供の方があたたかくて柔らかいから、それはそれで悪くない。

もっと佳林のことを知りたいと思う。
それを言わないかわりに手を繋いでいることを、朋子はまだ教えてやらない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
128 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:41


129 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:42


130 :愛について語るときに我々の語ること :2014/02/12(水) 21:42


131 :名無飼育さん :2014/02/12(水) 21:43
レスありがとうございます。

>>97
面白いと言っていただけて嬉しい限りです。
今回は登場しませんでしたが、だーちゃんのブログに上がっていた金澤さんとの
ツーショット写真がとても良いので、別の機会があったら書きたいですね。だーとも。

>>98
面白いと言っていただけて、嬉しい限りです。とても嬉しい限りです。いただいた
レスの一行目の文章で、もやもや考えていたことをまとめてもらえた気がしました。
うまくでてると思っていただけたのなら、こんなに長々と書いたことも報われます。

>>99
名無しにするとか自意識過剰でかっこわるい。ので、貼るつもりなかったんですけど。
夢板 君曜日 ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1197802255/ 

>>100
面白いと言っていただけて嬉しい限りです。嬉しい限りです。ご期待に添えているかは
かなり不安ですが読んでいただけたでしょうか。楽しんでもらえてたら嬉しいです。
メンバーみんな全部ひっくるめてラブ! 

>>101
幸せに思っていただけるなら嬉しい限りです。嬉しい限りです。金澤さんが宮本さんに敬語
を使っていたのが遠い過去のことのようで、数年後に読んだら違和感がすごいやばそう。
面白い、という言葉はめっっっちゃ嬉しいです。本当に嬉しすぎてすごいヤバイんです。
132 :名無飼育さん :2014/02/12(水) 21:45
蛇足。
このお話は「ナルチカ2013秋 Berryz工房×Juice=Juice」が行われていた頃のイメージです。
時期的には、Juice=Juiceの結成から半年ちょっと、メジャーデビュー直後くらいでしょうか。
あと、嬉しい限りですを二回重ねるのは植村さんがブログでやってたんです。やってたんです。
133 :名無飼育さん :2014/02/12(水) 21:45
このスレは今回で更新終了です。
読んでくださって本当にありがとうございました。
134 :名無飼育さん :2014/02/12(水) 21:46



135 :名無飼育さん :2014/02/12(水) 21:46


136 :名無飼育さん :2014/02/12(水) 21:46


137 :名無飼育さん :2014/02/14(金) 08:53
余韻に浸りたくて、ここに感想を書き込むのをためらってしまいますが…すごく好きです。
いつまでも読んでいたかった。
金澤さんが何を思ってたのか、少しずつ(でも全てではなく)見えていくのが、
佳林ちゃんの心もうまく焦らされながら明らかになっていったのがとても心地よかったです。
138 :名無飼育さん :2014/02/14(金) 16:59
そうきたか!と唸ることしきりでした。ここのお話が大好きでした。
また別のどこかで、お目に掛かれるのを待ってます
139 :名無飼育さん :2014/02/14(金) 21:51
金澤さんの視線を通して伝わる佳林ちゃんのかわいさが胸にグっときました。
経歴がばらばらのJuice=Juiceのみんなの距離感が文章から伝わってきて
読んでる間中、読み終えてから思い出してもジーンとしたりくすぐったかったりとても楽しかったです。
140 :名無飼育さん :2014/02/16(日) 09:19
本当にいいものを読ませていただきました。
益々Juice=Juiceが好きになりました。
終わってしまったのが残念です。
ありがとうございました。
141 :ななし :2014/05/04(日) 17:27
一夜漬けで全文読ませていただきました。
とても良いお話でした。
登場人物の複雑な感情を丁寧に表現されていて、ぐっとしました!
終わってしまったのは寂しいですが、ありがとうございました。
ともかりんがどんどん増えていくことを願っています。
142 :名無飼育さん :2015/05/03(日) 00:59
更新お疲れ様です

ポンコツ構成員や謎のれいれいルー大柴口調に笑いましたが続きを読みたくなります
ぜひ続編を…
143 :名無飼育さん :2015/08/06(木) 22:27
硬質な文体に切ない物語がともかりんすぎて最高でした!
今までこの作品に気づかなかった自分を殴ってやりたいです。
いつかどこかでまたこの2人に会えることを祈ってます。

新着レスの表示


掲示板に戻る 全部 次100 最新50

現在のスレッドサイズ:120557 byte

名前:

read.cgi ver5.27 + 0.02 (04/08/03)