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続飼育支部

93 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:40
1997年11月30日。
インディーズ『愛の種』を手売りで5万枚達成した日。


中学生1人に高校生2人。
大人になろうとする私。裕ちゃんの隣りなら心地よい、と気づいた。

同じホテルで暮らしてるから、プライベートのことも話しやすい。
年頃の女性2人が話すことといったら、やっぱり恋愛っしょ。
ふとした仕草や会話の内容から、彼女が同性に恋したことあるかもと思った。
私が同性と付き合ったことあるからなのかもしれないけど。
異性に対しては妙に世間知らずなのに、同性に対してはやけに詳しい。
でも、間違ってたら嫌だから言い出しにくい。私が追求されるのも怖いし。
慣れない関西弁で怒られたら、怖くて話せなくなるかも。
94 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:40

95 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:40

「なぁ、知っとるか?」
「何を?」
96 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:40

97 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:41

いつの間にか私たちはプライベートではタメ語になっていた。

「ちゃんと仕事できるんやから、こういうときぐらい普通に話そうや」

裕ちゃんがこう言ってくれたとき、すごく嬉しかったのを覚えてる。
さびしいんやもん、なんて甘えてくれて可愛かった。
男性スタッフには絶対甘える仕草とか声とか出さないのに。
楽屋ではなっちに甘えたり、仕事以外の場でも私に甘えたり、不思議な人。
だから、もしかしたら、って考えが頭の中ぐるぐるしてた。
98 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:41

99 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:41

「あんな、うちら2人で一緒にいると付きおうてるみたいに見えるらしいんよ」
「えっ」
「あ、こういう話、気持ち悪かったらごめんな、先に言うとけばよかった」
「いや、全然大丈夫。私、女の子と付き合ったことあるし……」
「え、そうなん? ウチも、まぁ、な……で、なんや事務所が変な噂、立てられんうちに」
100 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:42

恥ずかしがってなかなか視線を合わせないまま、喋り続ける裕ちゃんを見る。
可愛いなぁ。ほんと可愛いなぁ。

「話、聞いとるん?」
「あー、裕ちゃんって可愛いなぁ」
「……アホッ!」

顔真っ赤にして、裕ちゃんはその場を立ち去った。
悪いことしちゃったなぁ。
3日後、私たちはホテルを後にし、事務所が用意した別々のマンションへと移り住んだ。
101 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:42
 
102 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:42

プライベートで話すことは、ない。
だって、裕ちゃん、電話苦手なんだもん。携帯でかけてもなかなか出てくれない。
楽屋で会ったら話すこともあるけど、やっぱりしづらいじゃない。恋愛の話とかさ。
というか、和田さんの前では絶対に無理だと思う。
103 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:42
 
104 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:43

3人の追加メンバー、明日香卒業、そして3期メンバー追加オーディション。
刻々とモーニング娘。も、そのまわりも状況が変化していく。
忙しいながら、男性と恋愛をしていた。気づかれなかった。
……裕ちゃんにも。
3期オーディション中に、和田さんに卒業の意を伝えた。
結婚を前提としたお付き合いをしていて。
切り出すと、そうか、とだけ言われた。それじゃあ卒業の理由にはさせられない、とも言われた。
今はアイドルなんだ。いいか石黒、おまえはアイドルなんだぞ。
迷った末、服飾デザイナーになる、という話で落ち着いた。
105 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:43
 
106 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:44

3期メンバーと会う前に、裕ちゃんには話しておきたい。
彼と打ち合わせもあり、時間は夜中。まだ起きてるかな、電話に出てくれるといいな。

「もしもし」

すごくイラついた声で焦る。

「もしもし、彩です」
「ん、結婚のことやろ」
「ごめん、先に話さなくて」
「ええよ、和田さんからリーダーやから先に話とくな、言われて知っただけやし……」

107 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:44

彼女の声がどんどん小さくなっていく。寂しいんだろうな。
追加メンバーは若い子ばっかりだし。やっとカオリとなっちが18になった。
あ、でも追加メンバーの保田さんとは仲いいんだっけ。
私も保田さんも、裕ちゃんをめぐって遠慮し合ってたからなぁ。

「ありがとう。あのね、父に言われたことがあるの」
「んー?」

幼い頃、父を亡くした裕ちゃんに伝えたいことがある。

「おまえが女の子と付き合ったことも無駄じゃなかったんだな、って」
「ほーか、よかったな」
「お父さん、孫の顔、見れないと思ってたから、って」
「うん、うん」
108 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:44

いつの間にか私の目からは涙が落ちていた。笑って話せることだと思ってたのに。
彼女の声は電話越しに、落ち着いたトーンでとても優しくなっている。

「……裕ちゃん、裕ちゃんが矢口を好きなことも無駄じゃないんだからね」
「ん、ありがとな。明日も早いし寝るわ」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ、また明日な」

彼女が仕事以外で電話に出たことは、その一回だけになった。
卒業してから、テレビで裕ちゃんが矢口にキスしたりふざけあったりしてるところを何度か見た。
ねぇ、矢口と付き合えなくても、その気持ちは無駄じゃないんだよ。

また彼女と夜中に電話したいと思った。

 END.

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