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続飼育支部

66 :うえ に ある :2012/02/16(木) 02:17
体が鉛のように重い。
中澤がまぶたを上げ体も起こそうとすると、思うように力が入らないことに気づく。
筋肉や関節が悲鳴をあげている。
「……っち?」
喉が腫れているのか声も出しにくい。
右の人差し指を動かすと、硬くて冷たい物を握っているようだとわかる。携帯電話だ。
こん、こんこん。咳が出る。そして、うすぼんやりと思い出す。
道重の声、風邪なのか体がだるいこと、なっちが家にいないこと。
こめかみがズキンズキンと痛み出し、背筋にゾクゾクと悪寒が走る。
中澤は畳の上に横たわり、布団もかぶっていなかった。
「さむっ」
まだカーディガンをはおっていたから、よかった。体をゆっくりと起こし、携帯電話で時間を確認する。
午前三時。そりゃあ寒いに決まってる。この時期、寒さで目覚めたといっても過言ではない。
携帯電話を開いて確認する。安倍からの着信やメールがあるのではというかすかな期待。
けれど、安倍どころか保田からも道重からも何もなかった。
ためいきをつこうとすると、咳が出る。こんこんこん。止まってから動き始める。

コップに水道水を入れてから、薬箱を探す。
「たしか、この辺にあったはずや」
リビングにある低めのチェストにそれはあった。体温計も風邪薬も入っている。
「これやこれ!」
風邪薬を胃に流し込むと、体温計を脇にはさむ。鳴るまでの時間を長く感じる。
ぐぅーっとお腹が鳴った。中澤はお昼から何も食べてないことを思い出した。
ちょうどよく体温計もピピピと報せてくれる。三十八度ちょうど。
熱が下がらなかったら病院行き。今までだったら安倍が看病してくれた。
カップラーメンの一つや二つあるだろうと推測し、台所の棚を探る。
ない。お菓子もない。冷凍食品もない。なんでや、と愚痴った。
67 :うえ に ある :2012/02/16(木) 02:17
道重が感じていたこと。それは安倍の味付けだった。薄いわけではない。
現にりほもおいしいとおかわりして食べていた。安倍自身は味が薄いかもしれないと気にしていたが。
「明日になれば、もっとおいしくなるよ〜」
そう言って微笑んだ表情はとても悪魔の笑顔とはかけ離れていた。
朝、りほを起こしシチューの鍋に火をかける。こんなに作ったのに、手際がよかったなと道重は思い出す。
炊きたてのご飯をよそい、少し深めの皿にシチューを盛る。
着替えの終わったりほが箸やコップをとりにきた。道重はお盆に二つずつご飯茶碗と皿を乗せた。
「おいしくなってるかなぁ」
「きっとおいしくなってるよ」
「うんっ!」
いただきますと二人で手を合わせてから、食べ始める。
「すっごく甘い!」
シチューから食べたりほはスプーンを何度も口に運ぶ。
「ほんと?」
道重も食べてみると、野菜がシチューに溶け甘さが増しているのがわかる。
「おいしー!」
こんなにおいしいものを中澤は食べていたのか。でも普通だと思って何も言わなかったんだろう。
そういうことが想像できた。確かに中澤にとって安倍は必要な存在なのかもしれない。
でも、その関係になんという名前をつけていいものか道重はわからなかった。

 END.

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