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続飼育支部

285 :恋患いループ :2017/05/31(水) 00:35
「ねぇ、やなみん。ここで女の子が一人で泣いてるより、うちに来るのはどうでしょうか」

こくこくと首を縦に振って大きくリアクションした梁川ちゃんから差しのべられた手はあたたかくて安心を覚えた。
きれいな顔をしたお姉さんは何か楽器をやっているらしく、防音のアパートだからいくらでも泣けるよ、と言ってくれた。
背負っていた楽器を下ろし黒いパーカーを脱ぐと私の頭にかぶせて泣き顔を隠してくれる。
なんだ梁川ちゃんにはちゃんとお付き合いができる相手がいるんじゃないか。
と思うぐらいに冷静さを取り戻していた。

繁華街から住宅地につづく橋を渡り、あの坂の上まで行ってたどり着いた場所は聖地巡礼となっているアパートだった。
以前は社員寮だったが、田中れいなという歌手がヒットを飛ばしてからここに住んでいたのではと噂を呼んでいる。
へへっ、と恥ずかしそうに微笑むお姉さんの名前は宮澤真凜さんという。

「おじゃましまーす!」

二人で開けた扉の向こうは、埃一つなくきれいに掃除されていた。
1LDKというのだろうか。
小さめの玄関から入ってすぐの台所には驚いてしまった。
二人とも実はお嬢様なの? という呟きがボソッと聞こえてしまう。
確かに私は世間知らずかもしれない。
台所から続いたところにあるドアはトイレとお風呂だそうで、残念ながら中は見せてくれなかった。
奥から光が透けるのれんの向こうが部屋になっているそう。
楽器を修理へ出していたので風通しを良くしていたそうだ。
この時期特有のさわやかな風が通り抜けていく。

「ちょっと待っててね」

と台所に私たちを残すとのれんの奥のドアを閉めてしまった。
掃除でもしているんだろうか、こんなきれいなのに。
暗くなった台所で、梁川ちゃんがすっと顔を寄せる。

「まぶたが真っ赤です」

冷やさないと。その声はやはり緊迫感に包まれている。
梁川ちゃんがこんなに熱い、いや、冷静な子だとは気づけなかった。
たぶん、私には道重さんと先生しか見えてなかったのだ。

「さぁ、おいで」

開いたドアの向こうで宮澤さんはにっこりと微笑んでいた。

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