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続飼育支部

278 :恋はパラレルライン :2017/04/03(月) 00:10
「桃子、来てたんだ」
中澤さんと仲良く談笑していた、セミロングの女性が私たちのテーブルまで来てくれる。
パッチリとした睫毛が素敵だけども、目力がすごくて圧をかけられているようにも感じる。
「そりゃ来ますよ、保田さん。例の件、お願いしますよ」
桃子ちゃんは、親しげにその女性と話す。例の件って何だろう。
「道重を説得できればいいよ」
「マジですか! やったぁ、今日は最終兵器連れてきましたから」
道重さん? 最終兵器? いよいよ、話が見えないぞ。
「最終兵器ってその子が?」
「そ、親友のぴょん」
「親友? 恋人じゃなくて?」
嬉しいな、恋人に見られてたらいいな。
話が見えないけれど、嬉しい言葉がポンポンと聞こえてくる。
もー、違いますよー、と桃子ちゃんが否定したときに空気が変わった。
黒髪を触りながらこちらへ歩いてくる道重さんが見えたからだ。
「みっしげさん! 待ってましたよー」
桃子ちゃんは立ち上がって、こちらのテーブルにと姿勢よく手招きする。
その姿が凛としていて見惚れるようだった。
「桃子ちゃん、なぁに?」
道重さんの発する「桃子ちゃん」という単語がほわほわもこもこしていてかわいい。
「あ、山木さん。難しくなかった? 大丈夫?」
ふわーと天国まで上昇していくような幸せを感じる。
今日の目と耳の忙しさは尋常じゃない。
「あ、はい。だ、大丈夫です」
と返事するのが精一杯なくらい緊張した。
「みっしげさん、そーゆーことするからファンが増えるんですよ」
「そういうことって?」
「もー、絶対わかってるでしょ!」
桃子ちゃんはスネているようで、可愛い。
学校じゃ見れない光景にクスリと笑ってしまう。
それにしてもおしゃべりだ。
部活でしか会えない、仕事してる先生にしか会えてなかったんだなぁ。
「それに、山木さんは桃子ちゃんの生徒でしょ?」
道重さんの純粋な質問に、保田さんはなるほど親友ねと短く答え、桃子ちゃんは舌打ちしていた。
「ま、いいんですけどね。ぴょんがこういう学びを道重さんから聞きたいなーって言ってたから。ね。若い子の意見は大切じゃないですかぁ」
桃子ちゃんの意見にこくこくと頷くと、道重さんは深く考え込んでるようだった。
「うーん、その件はまたあとで返事してもいいかな」
「もちろんですよ! みっしげさん、いい返事期待してますから」

三人と店主に見送られ、喫茶店を出ると薄暗く太陽は西へ落ちつつあった。
並んで坂を下る。
日曜の夕方は、人や車の往来が平日より少ないように感じた。
「遅くまでごめんね。家まで送ろうか?」
「大丈夫です。高校生ですから。それに遅くなるかもって言ってあります」
今日、起きたときから先生の様子を見て告白してみようと決心してたのだ。
住宅地と歓楽街をつなぐ橋が見えてきた。
「先生。私、先生が好きです! だから」
言葉を続けようとしたら、先生がぎゅっと体を包むように抱きしめてくる。
良かった、付き合えるんだと思った時、耳に入ってきた先生の言葉はとても衝撃的で両目から涙が溢れてしまった。
高校生にもなって人目を憚らず泣くことになるなんて、思いもしなかった。

ーー山木さん、ありがとう。気持ちは嬉しいよ。でも、先生ね、もうすぐ結婚するの。だから、山木さんの気持ちには応えられない。

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