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続飼育支部

229 :きつねのいたずら :2014/03/24(月) 01:45
風邪で寝込んでいる妹のさゆみを置いて、買い物に出た。
ちょっとした気分転換も兼ねて、スーパーマーケットへ寄る前に散歩する。
雲の動きを眺めたり風を感じたり鳥の鳴き声を聞きながらゆっくり歩く。
すると、近くに住んでいる梨華ちゃんと会った。
「これから駅まで出て亜弥ちゃんとごっちんと遊ぶから、よっしーも一緒にどう?」
嬉しいお誘いだが。妹が風邪で寝込んでるから、と断る。
「じゃあ三人で妹さんのお見舞いに行く!」

そんなわけで二人で駅へと向かう。
梨華ちゃんは歩きながら、メールを打っている。
テレビでCMも流れている新型の携帯電話に変わっていた。
「いいでしょ、これ」
満面の笑みで私に自慢してくる。
あれもこれもできるようになったよと教えてくれる。
最大の変化は、伸ばすアンテナがなくなったこと。
私の携帯にはついている。電波をキャッチするためのアンテナだそうだ。
梨華ちゃんが持ってる新型はアンテナが内臓されているので、なくなったように見えるとのこと。
へー、ほー、ふーん。
機能の話は興味ない。私のはまだまだ使えるし、買い替える必要にも迫られてない。
話の腰を折るとめんどくさいから、相槌を打ってるだけ。

アーケードのある商店街前に着いて気づく。
あ! 妹に遅くなるって電話しなきゃ!
瞬間、商店街に隣接する小さなお稲荷さんの狛犬が私に視線を合わせたように感じた。
銀杏の大木もそばにある有名な待ち合わせスポットでもある。
梨華ちゃんもごっちんに電話かけるからと足を止めた。
230 :きつねのいたずら :2014/03/24(月) 01:45
プル、プルルルルル、プルルルル。

「あ、もしもしお姉ちゃん?」
「もしもし、さゆ? 私さー、買い物途中で梨華ちゃんと会ってさー」
「別にいいよ。遅くなっても。気にしないで、ちゃんと寝てるから」
「そか、帰りはー」

突然、ザザ、ザザザザザザ、と妹であるさゆみの声が聞こえなくなり、テレビの砂嵐のような音がする。

「もしっ! もっしもーし!」
つかえねぇな、これ、と耳から離し、旧式の携帯電話を眺める。
眉間にしわを寄せた私を訝しく思ったのか。
連絡を終えた梨華ちゃんが心配そうに私を見つめている。
「よっしー、どうしたの? 電話切れちゃった?」
いや、ちょっと……ね、ともう一度耳に当てると女性の声が聞こえた気がして
「もしもし、さゆ、ごめんね、なんかこの辺さ、」
早口で言い訳をまくしたてた。
しかし、言い終わらないうちに知らない女性の声が割り込んでくる。
『誰やねん、あんた。別の人と電話してたんや中澤いうもんやけど、あんた誰?』
「えっと、私も妹と電話してたんですけどもぉ」
どーしたどーしたと梨華ちゃんは私の顔を見る。
『ほうか。ま、しゃーないな。もしかしてあんたも砂嵐みたいな音聞こえた?』
「ハイ! 聞こえましたっ!」
聞き慣れない関西弁に身が縮こまる。なぜか大声で丁寧に接したくなる威圧感があった。
『そか。今、電話してるとこな、よう混線するみたいなんや。人が多くてな。そんで』
相手が説明してる途中で、またザザ、ザザザザザザ、と砂嵐のような音が聞こえはじめた。
「おねーちゃん! おねーちゃん、もしもし?」
「さゆ、ごめんね、この辺、混線してるみたいでさ」
「ふーん、誰と話してたの?」
えっ、と驚いた。だって混線してたから、聞こえないと思ってた。
こっちはさゆの声は全然聞こえなくて、関西弁の女性の声だけはっきりクリアに聞こえたんだけど。
不思議なこともあるもんだな。
231 :きつねのいたずら :2014/03/24(月) 01:45
友達数人がさゆのお見舞いへ向かうよと伝えると、そんなのいいのに、と照れた。
照れた声がまたかわいかった。
妹が元気で遊ぶところを早く見たい。
元気にしてあげなきゃ。

最寄り駅の改札口で梨華ちゃんとともに友達を待つ。
ごっちんと亜弥ちゃんが駆けてくるのが見えた。
私はどうやら狐につままれた顔をしていたらしく心配で走ってきたらしい。
妹の具合がそんなに悪いのかと。

さきほどの混線の話を振ると、どうやらあの場所ではよく混線が起きるスポットらしい。
携帯で話してる時によく砂嵐みたいな音がしたり知らない人の話し声だけが聞こえたりするそうだ。
ただ、さっきみたいな相手と話すというのは聞いたことないという。
黙って神妙な表情をして聞いていたごっちんだけは違った。そんなことはありえないと。

いい? 電話線はかけた相手としかつながらないの。
糸電話で相手が見えてるのに、知らない人の声がしたら怖いでしょ?
それと同じことなんだよ、よっしーわかってる?

わかるようなわからんような。
「お稲荷さんのきまぐれなのかな」
再び、通り過ぎたお稲荷さんの狛犬がさっきよりも優しく笑っていた。
「よっしー、何してんの。早く早くー!」
私は狛犬に軽く会釈すると、コーンと動物の鳴き声が聞こえた。
今度、立ち寄る時は油揚げをお供えしよう。
またお姉さんとおしゃべりしたいから。

   END.

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