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続飼育支部
- 221 :恋の翼 :2013/06/25(火) 23:14
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恋の仕方をどこかに置き忘れてしまいました。
誰か一緒に探してくれませんか。
- 222 :恋の翼 :2013/06/25(火) 23:16
- 図書室で借りた小説に栞が挟まっていた。小花模様で全体的にピンクがかっている幅が広くて短めの栞。
手書きでたった二行だけど一種のラブレターみたいな文章。誰のものだろうか。誰かへと伝わったのだろうか。
吉澤ひとみは考える。読み終えた章の後ろに、その栞を挟んだ。
「吉澤せぇんせー」
プリントを持ってきた久住がそばに立っている。いけない、ボーっとしてた、と吉澤は頭を振る。
「ありがと、持ってきてくれたんだ」
差し出されたプリントを手に取り、にっこり微笑んだ。すると久住はこう答えた。
「せんせー、変なの。持ってきてって言ったのせんせーじゃん」
甘ったれた口調で久住に言われて、吉澤はカチンときた。一つ冷静に抑えようじゃないか。
プリントを決められたファイルへと冷静に差し込む。
「ごめんね。先生、読書に熱中してた」
「なに読んでたんですかぁ? マンガ?」
「マンガじゃないよ。図書室で借りたの」
吉澤の腕に手をかけ、久住はべったりと甘えてきた。
ふーん、と興味なさそうなふりをしながら、久住の手は吉澤の腕を離さない。
「そうだ、小春さ、この字に心当たりない?」
先ほど読んでいた文庫本を開き、栞を動かさないように彼女へ見せる。
「えー、小春ぅ、小説なんか読まないもぉん」
「よく見て、こっちの栞!」
するりと腕からすり抜けた久住の手を吉澤は逃さなかった。
本を開いてる手と反対の左手で、彼女の手首を捕まえ、栞へとお互いの指を導く。 - 223 :恋の翼 :2013/06/25(火) 23:17
- もうっ強引なんだから、と文句を言いながらもその声は弾んでいる。
何年も女子高生を見てきていて、久住小春のような同性を異性の代わりにし、
欲望をまき散らすタイプは多いと感じていた。
周りもそうだから、特に嫌われることもない。罪悪感も持たない。
でも、少しでもホンモノだと知ると彼女らは掌を返す。
――わたしたち、何も知りません。レズなんて気持ち悪い。
この栞を書いた子がホンモノなのかどうか知る気はない。
「小春、もう行っていいですかぁ」
そっか、ありがとう。行っていいよ。体の力を抜き、久住の手を放す。
文庫本を閉じ、バイバイと手を振ろうとする。
と、久住は真顔で唇を開いた。
「その字、道重先輩の字に似てます」
道重さゆみ。隣のクラスの子じゃないか。体育で担当クラスの子だ。
珍しい苗字のうえ、整った顔立ちにストレートの黒髪。
ピンクがかった白い肌に、いじらなくても赤い唇。
大きな黒い瞳と、何をするわけでもないが目立つ。
……ホンモノ、なんて噂も同学年の間では飛び交っている。
男がいれば、道重さゆみに声をかけたがるだろうし、結局は僻みである。
ホンモノかどうかなんて彼女たちには関係ないし、道重さゆみにも関係ないのだろう。
この小説の世界に熱中しよう。
誰かが描いた景色、私が想像の中で描く景色。
違うものなのかもしれない。
私の知らない世界、誰かが救われる世界。私の知らない知識、誰かに教えてもらう知識。
読み終わって、司書室に行けば石川先生に会えるんだから。
また新しい小説を紹介してもらえるんだから。
吉澤の恋心を石川が気づきませんように。
自分の気持ちはこの栞に書いてあることと反対なんだ、と吉澤は気づけなかった。
そして季節は秋に向かう。
END.
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