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続飼育支部

174 :姉と猫 :2012/06/19(火) 21:32
別々に住んでいた姉とまた同居するようになった。
何年ぶりだろう。私が成人してからだと初めてになるのか。
猫と一緒にやってきた姉は、きれいになっていた。
いや、この間会ったばかりだけど。
それでも、そう思った。
姉は決まった仕事をしてるわけではない。だから、猫の世話を一日中してられる。
私には仕事がある。いってきますと出かけると、いってらっしゃいと返ってくる。
家に帰ってただいまと声をかけると、おかえりと姉が言ってくれる。
安心する。見知った人の存在。
会社はたくさんの新人が右往左往していて、その人間関係に巻き込まれるとこちらも疲弊する。
だからかもしれない。
中堅と言われるようになった自分の地位がほんの少し重い。
部署のリーダーを任されて責任感が芽生えるとともに、不自由が増える。

――夜になると姉がネコになる。
私は自由にネコになった姉を撫でまわす。
はしゃがせ、かわいい声で鳴かせ、ゆっくりと眠りにつかせる。
175 :姉と猫 :2012/06/19(火) 21:32
六月にしては珍しく台風が日本列島に上陸するという予報が出た。
「明日、お姉ちゃんの誕生日だね」
「そやな、ケーキ買うてきて」
「うん、わかった。早く帰れるかもしれないし」
姉は、大阪で仕事していたころに覚えた関西弁を今でも使っている。
元々生まれが西日本の私たちにはちょうどいいのかもしれない。
「さゆ、だいすきやで」
「わたしもおねーちゃんのこと、だぁーいすきだよ」

台風が思ったよりも早いスピードで移動しているとのことで、早めに帰宅する。
閉まりかけているケーキ屋にかけこみ、なんとか買って帰ることができた。
夕飯の支度を二人でして、おかずがいつもより一品増えただけで楽しく思える。
強い風にあおられて小さな雨粒が窓にぶつかる音も聞こえる。
「おねーちゃん、晴れ女なのにね」
「……いつもと違う誕生日も記憶に残るやん」
姉は私に優しくて、気遣ってくれる。
今夜もきっと、姉はネコになる。

夏が来たらいなくなる、そんな予感を胸にネコの姉を抱いた。
新しい相手をいつの間にか捕まえていつの間にか私の前からいなくなってるんだ。
野良猫のようにお腹をふくらませて。

 END.

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