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続飼育支部

110 :なごり雪も降る時を知り :2012/03/14(水) 01:25

「おねーちゃんっ!」
さゆみには妹がいる。正確にいうと、本当の妹じゃない。。
公園で写真を撮ってたら、フレームの中に勝手に入ってきた女の子。
いつのまにか仲良くなっていた。とても甘えてくる子なの。
彼女の名前は、譜久村聖。さゆみはフクちゃんと呼んでいる。
やたら無邪気な高校生かと思っていたら、まだ中学生だそう。
現代っ子はとても発育がいいなと、自分の胸を見て思う。
111 :なごり雪も降る時を知り :2012/03/14(水) 01:26

外出先でカメラを持っているさゆみを見かけると、彼女は声をかけてくるようになった。
進路のこと、恋のこと、色々相談された。フクちゃんが言うには、さゆみに話しかけやすいんだって。
中学を卒業したら、遠くの高校に進学しなきゃいけないとは聞いていた。
どれぐらい遠いの? って聞いたら、電車に三十分、新幹線に乗り換えて終点まで。
たぶんフクちゃんはどのぐらい遠いのかわかってない、と思う。

近いですよね、すぐ会えますよね、って何度も確認してきたから。なんで聞いてきたかもわかった。

好きな子ができたから。ショックだったな。そうだよね、そういう年齢だよね。
112 :なごり雪も降る時を知り :2012/03/14(水) 01:26

「どんな子なの?」
「後輩の子なんです、笑顔がちょっとかたいんですけど」

彼女の頬が真っ赤になっていくのが可愛らしい。

「へー、いいじゃん、いいじゃん。告白したの?」

弱々しく首を振ったフクちゃん。

「女の子が女の子と付き合うって変、ですよね?」
113 :なごり雪も降る時を知り :2012/03/14(水) 01:27

びっくりしたけど

「……でも卒業したら」

会えなくなるかもしれないのに。

「いいんです、わかってます。みずきの気持ちなんか押し付けちゃダメだって」
「自信なくしたら可愛くないよ? もう撮ってあげないよ」

驚いた顔になったフクちゃんは、ちょっとした沈黙のあと声を出して笑い出す。
さゆみも大声を出して笑った。
114 :なごり雪も降る時を知り :2012/03/14(水) 01:27
 
115 :なごり雪も降る時を知り :2012/03/14(水) 01:28

受験には合格したけど、告白は結局しなかったフクちゃんを送り出す日。
小さな無人駅のホームに一人電車を待っていた。

「フクちゃん」
「あ、おねーちゃん来てくれたんだ」
「そりゃあ来るよ、心配だもん」

うん、と二人して頷き合う。

もうすぐ電車が来るね。うん、おねーちゃん。なぁに。もう会えないかもしれないの。

唇だけが小さく動く。

声は聞こえなかった。電車がホームにちょうど到着したから。
フクちゃんは大きな荷物を持って電車に乗り込む。背筋がピンとして、大人びた女性になっていた。
116 :なごり雪も降る時を知り :2012/03/14(水) 01:28

目の前を小くて白いものが落ちてくる。雨じゃない……もしかして、雪?
雲一つない青空なのにひらひらと舞い落ちる。白く、白く、さゆみの視界を奪っていく。
ううん、これは桜の花びら。駅舎近くに植えてある、桜並木の花びらたち。
電車がホームを発車すると、フクちゃんが窓から顔を出した。

「おねえちゃん、またね」
「うん、また会おうね」

微笑んだフクちゃんは、とてもきれいになっていた。
ファインダーを覗こうとした時には、遠くに小さくなっていた。

 おわり

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