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続飼育支部

1 :みおん :2011/12/04(日) 17:18
今回はゆるゆる更新です、たぶん。
またも小ネタ中心になると思います。
2 :お米の話 :2011/12/04(日) 17:19
「なかざーさぁんってぇ、ご飯好きですか?」
「まぁ、そりゃぁ。食べるよ」
「ほんとですか! あのー親が新米持ってきたんですけどぉ」
「新米! 新潟の!」
「はい。ちょっと量が多いんですけど、いりますぅ?」
「いるいる! 欲しい! いやーん、まこっちゃんありがとー」
「あ、でも玄米なんですよ」
「玄米って……?」
「自分で精米しないといけないんですよぅ」
「……はぁ」
「でもおいしいですから! 絶対!」
「わかるよそりゃ! ……マジでさ、ほんとにもらっていいの?」
「はいっ! もらってください!」
「まこっちゃんも欲しいなぁ」
「ほんとですかっ! もらってくださいっ!」
「かわいいねぇ」
「うそなんですか?」

 END.
3 :名無飼育さん :2011/12/04(日) 21:18
期待しています
4 :名無飼育さん :2011/12/05(月) 00:05
続がきたーやったー
5 :おなじきもち :2011/12/05(月) 21:14
「なかざーさぁん」
「なに」
「今夜ヒマですか」
「いっつも唐突やねぇ」
「えへへ」
「……えへへ、じゃないわ!」
「ダメですか?」
「まぁ、ええけど」
「やったぁ! 小春、今夜は一人なんでさびしくってぇ」
「ああ……そう」

その日から。二人の関係は変化した。

とはいっても。
お互い仕事忙しいし、ドリムス。の仕事でおうてもそうそう話する仲でもないし。
むしろなっちやかおりんに懐いてる。
けど。二人っきりの時はそんなん忘れるぐらい、くっついてる。

……指も腕も足も体も絡ませあって。好きな時にはじめて好きな時におわって。
相手を楽しますより、まず自分が一番楽しんでたい。
だから言葉より先に行動する。

互いに男がおっても、関係は変化しない。
一度はじまった関係におわりはない。

「なかざーさぁん」
「なんや」
「男とするのとぉ女とするの! どっちが好きですかぁ。小春はぁ、どっちもなんですけどぉ」
「わざわざ聞くことでもないやろ」
「えー、どっちなんですかぁ」
「どっちでもええやん、気持ちよければ」
「ですよねー」

 END.
6 :みおん :2011/12/05(月) 21:15
>>3
応えられるようになりたいです

>>4
続きってほどでもないとは思いますが
楽しんでもらえてなによりです
7 :スイートルーム :2011/12/06(火) 18:58
仕事終わりにみーよのマンションへ向かう。誕生日だから色々用意してくれてるらしい。
けど、食事会のあとだからお腹はいっぱいかも。チャイムを鳴らして部屋に入る。
「こんばんはー」
「待ってましたよ」
「ごめんね、少し遅くなった。……裕ちゃんの件でさ」
「いいですよね、結婚できて」
心がちくっと痛む。現行法では同性婚は認められてない。
「あ、すみません。コートかけますね」
九月下旬にツアーが始まったときは、まだまだ夜も暑かったのに。もう風は冷たい。
「圭さま、誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「つまみぐらいしか用意しなかったんですけど……」
「いやっ、全然! 全然大丈夫だから!」
小さなテーブルの上には色とりどりのつまみ、一口大のスイーツ、それにワインがのっている。
「カンパイしましょうか」
「うんっ」
たのしいたのしい時間の始まり。けど……。
「今日、報道しなくてもいいじゃんねー」
「そのかわり、こうやって二人で過ごしてもマスコミは知らないんじゃないんですか」
「まぁねぇ……みーよとの仲、知られたら大変よね」
「どうなるかわかりませんもんね。って、誕生日なのに暗い話になっちゃってすみません」
「いいよいいよ。裕ちゃんへの愚痴、吐き出せたし」
「やっぱり怖いんですか」
「ううん、すっごい凹んでて言えなかった」
話は続く。ワインをのむと、お腹いっぱいのはずなのに、つい手に取って食べてしまう。
一口大だから食べやすい。気持ちが緩むと体型に出ちゃうよー。
8 :スイートルーム :2011/12/06(火) 18:59
「……ねぇ、保田さん。知ってます? 美勇伝の『愛〜スイートルーム〜』って歌」
みーよが言った曲名は聞いたことあるようなないような。
「ごめん、わかんないや」
「アルバムにしか入ってないので。でもめちゃくちゃいい歌詞なんですよ!」
「つんくさん、いい歌詞書くよね〜」
「はい! 本当にそう思いますっ!」
「で、その詞がどうかしたの?」
「ちょっと歌います」

♪愛がある 確かに愛だ 表現にルールはない

「って歌詞なんですけど、恋愛だって異性としかしちゃいけないってルールなんて」
「みーよ、いいこと言った!」
恋愛だってルールはない。そのとおりだ。
いや、人として守らなきゃいけないルールはもちろん守ったうえで。
「つんくさんがすごいんですよ」
明るく笑ってるけど、そういうことをちゃんと伝えられるみーよが好き。
「今度、歌ってよ。カラオケでもいいけど。聴きたい」
「えー、恥ずかしいなぁ」
「持ち歌じゃない。みーよの歌が聴きたい」
「……もしかして、さびしい思いさせてますか?」
「ちがっ、ちがうの。ほら、年末近くなってきたからさ……ドリムスでの仕事も多いし、さ」
「私、たぶんドリムスのメンバーに嫉妬してますよ」
「裕ちゃんにも?」
「はい」
「かおりにも?」
「はい」
「矢口にも?」
「はい……って全員言うつもりですか」
「えー、うれしい」
「今、すっごくかわいい顔してます」

みーよがいるこの部屋は私にとってスイートルーム。

 END.
9 :名無飼育さん :2011/12/06(火) 20:04
なんとタイムリーな!!!!
10 :名無飼育さん :2011/12/06(火) 22:55
素晴らしい萌えをありがとう
11 :radar :2011/12/07(水) 19:07
朝から車で移動中。緊張した空気が二種類。
910期に漂う、生放送での歌唱、ダンス。失敗したらどうしようって。
わかるわかる。そんな時代あったなぁ。もう十年も前になるんだ。
もう一つは、先輩の結婚報道でゴロッキがそわそわしてる。
熱愛の時はー、大人だしグループ違うし、ってなんとなく納得したけど。
結婚はちょっと違うじゃない? 男と女ってだけじゃなくて家族とかさぁ。うんうん。
そんな先輩と後輩たちに挟まれて、よけい緊張するかも。
うわー! 緊張したってなんにも始まんないよっ!

「鈴木ー、変顔しよっか」
後ろからさゆの声が聞こえる。
「え、どうしたんですか。え、え、だって」
「いーからいーから」
たまたまだけど、さゆの隣の席は鈴木。
「ブログ見てたんじゃ……」
「いいのいいの。変顔教えてよ」
わりと静かな車内に響く明るい二人の声。
さゆは空き時間さえあれば、先輩や他グループのブログを読んでいる。
写真見るのも好きみたいだし。
誰のブログを読んだかはわかんないけど、だいたい想像つくしこれからやることも想像できる。
「えっ、えっと……」
「ダメかな?」
たぶんダンスのこととかで精一杯で突然言われたことに対応できてない。
おねえさんが助け船を出してあげよう。
「鈴木ー、教えてあげな?」
「あ、はいっ!」
元気な返事が聞こえて、なにやらごにょごにょと相談し始めた。
さゆが好きな先輩のことだもんね。
12 :radar :2011/12/07(水) 19:08
「ガキさん、撮ってもらってもいいですか?」
「いいよー」
ガラケー渡してもらって、赤信号で止まったのを見て動く。
「ほいっ、撮るよー! 三、二、一……ハイしゅうりょー。こんなんでどうかな?」
すぐ見せると、二人の顔が華やいだ。
「すごい、すごいです、新垣さん! 撮るの上手ですね」
「いやー、そんな褒めることじゃないよ。……送るんでしょ?」
「うん。へへっ、いいの撮れたよねー」
「はいっ」

鈴木だけじゃない、他のメンバーたちも顔つきが戻ってる。どうしよう、ってなってない。
落ち着いてきてる。二人ともありがとう。座り直し、一つ大きく息を吐いた。
あー、リーダーなのに助けられちゃってる。でもすごく嬉しい。同期がいなくても仲間がいる。
ふと視線を感じて、隣の席の生田を見る。じーっと見られてた。不思議そうな顔で見つめれてた。
「どうした?」
「久しぶりにいい笑顔見れたなぁって思ったけん、見とれちゃいました」
「そーかなー。けど、うれしいよ。そういう風に思ってくれて嬉しい」
「えへへ、だーいすき」
仕事終わってからすぐなのに、嬉しそうだなぁ。
後輩もたくさん成長してる。がんばろっと。
13 :radar :2011/12/07(水) 19:08
◇◇◇

休憩中に、ブログ更新用の写真撮ろうよ、ってみんなが言い出した。
一名だけぶーぶー文句垂れてたけど、ファンも心配してるし、うちらもちょろっと書くし。
はい、カメラマンやって。私もうつりたいのにー! そう言いながらも撮ってくれた。
我慢しなきゃいけない時もあるんだよ、人生。
誰が言い出したのか、顔わかんなきゃいいんじゃない? って話に。
とりあえずマネージャーにチェックも込めてメールしたら、とおった。
良かった、良かったじゃん! みんなのテンションも上がる。
携帯が光る。メールかな。ま、電話の場合は不用意に出るな、って言われてる。
「もー、バカやん!」
口を大きく開けて笑い出したからびっくりした。
「どうした?」
「もしかして、くだらなくて笑えるメール?」
「圭ちゃん、それ梨華ちゃんがやったべさ」
かおりは交信してる。別の電波を受信してるかも。
差し出された携帯の画面には、後輩の顔が二つ。……ちょっと待てよ! 道重、どーしちゃったの!
オイラも耐え切れなくて笑っちゃった。
「くっだらねー!」
圭ちゃんにも見せる。
「ぶはっ」
「あ、なっちにもメールだ。あら、ガキさんから」
笑いすぎて息切れしそう。笑い声が一つ減ってる。
彼女の顔をよく見ると、目がうるんでる。
「バカ裕子ぉ。なに泣こうとしてんだよぉ」
「ちゃうねん、笑いすぎただけやねん」
「嬉しかったべ? ガキさんにそう返信するよ」
「ん? 道重の提案じゃなくてガキさん提案なの?」
「んーとね」
14 :radar :2011/12/07(水) 19:09
なっちの話をまとめるとこうだ。
不穏な空気の中で道重が後輩を誘って変顔を撮影してたら、いつの間にか空気が変わってた。
ガキさん自身も隣に座ってる後輩に、いい笑顔が久しぶりに見れたと言われる始末。
同期がいなくても素晴らしい仲間がいる。後輩の成長を見るとがんばろうって思える。
そんな感じ。

「うちらもさぁ、頑張りたいって思うよね。そういう話聞くと。だってガキさんなんてさー」
「お豆ちゃんだったもんね」
「なつかしー! そのガキさんが十年目でリーダーなんて誰が想像した?」
「かおり思うの」
「はぁ?」
ぼーっとしてたはずの人が突然発言するとびっくりする。いつものことだけど、やっぱりおかしい。
「つんくさんの歌のとおりだなって」
「はいはい、かおりわかってるよ『I WISH』でしょ」
「矢口、ちゃんと聞いてよ。話終わってない」
「いーじゃん、かおりの話みんなわかってるよ」
「もぉ! すぐそういうこというんだからっ」
「ふふっ」
「裕ちゃん笑わなくてもいいじゃん」
「笑ってへんよ、嬉しいだけ。笑顔は大切にしたいよな、かおり」
「そう、それ! 言おうと思ってた、うん」
「ありがとな……よっしゃ! がんばっていきまっしょい!」
「しょい!」

 END.
15 :みおん :2011/12/07(水) 19:11
なんでZOKU飼育支部にしなかったのか超後悔

>>9
またタイムリーかな

>>10
こちらこそありがとうございます
励みになります
16 :みおん :2011/12/08(木) 23:24
作品投下する前に前回の言い訳を。
ガキさん別の舞台の仕事だったけど途中までの移動は一緒ってことで!
姐さんは長らく東京にいたため若干関西弁を忘れてきてるって設定で!
そんな脳内補完をよろしくお願いします。自分が一番アホ

17 :坂で逢いましょう :2011/12/08(木) 23:27
メール一つ送信すれば、すぐ逢える。
いつでもすぐに逢えるわけではない、そんな二人の平行物語。

ドアをそっと閉じる黒髪の女性。灰色のコートに身をつつみ、アパートの階段を下りていく。
先ほどのドアを見上げて誰も出てこないのを確認する。
大きな溜息を吐き早足で目的地に向かって行った。

静かな住宅地の端に急な坂がある。なのに、途中に小洒落た喫茶店。
赤いレンガに暗緑の蔦が這って、昭和の面影を残したかのような外観である。
坂を下ると土手に出る。川が流れているのだ。反対側の岸は繁華街を含む商業、工業地帯。
その坂に先ほどの女性が上から歩いてくる。誰かを探しているようだ。
「重ちゃん」
「すみません。わざわざ……」
「いつものことやん」
落ち着いた暗い茶色のショートカット。先ほどの女性より少し小柄な女性。
「土手、歩かへん? 時間あるやろ」
「はい、あのでも、安倍さんは」
「なっちは今日でかけてんねん」
「そうですか」
「だから、心配せんでええよ」
冷たい風が二人のあいだを抜けていく。
「寒いですね」
「歩いてればあったかくなるやん……たぶん」
「……そうですね」
18 :坂で逢いましょう :2011/12/08(木) 23:27
土手の上は、風を遮るものがない。
「やっぱり寒くないですか?」
「こういう景色見るのもたまにはええやろ」
「……はい」
「また喧嘩したん?」
答えはない。
「喧嘩の原因なんなん? りほちゃんのこと?」
「それはないです」
「じゃあれいなか」
無言の時間が続く。
「……なぁ、なっちが突然居なくなったら重ちゃんどうする?」
「わかりません」
「りほちゃんってれいなの養子になっとるんよなぁ」
「はい」
「言うてええのかわからんけど、もしかして」
言い終わらないうちに頷く黒髪の女性。
「否定せぇよ」
「すみません」
「なんのためにれいなと一緒におるん? なんのためにりほちゃん引き取ったん?」
「……中澤さんを忘れるため、です」
「あほ。りほちゃん幸せにしぃや。なっちもそれ願っとるし」
二人して一つ溜息をつく。
「わかっとるんやろ? なぁ。返事しぃや、頼むで」
「……はい」
「ん、よろしい」
19 :坂で逢いましょう :2011/12/08(木) 23:28
そういうと手を彼女の手のひらへ滑り込ませた。ハッと目を見開く。
「時間は元に戻らへん、ってあのとき言うたやんか」
「年齢差は変わらないんです、悔しいですけど」
「……すまん。なぁ、れいなのこと甘えさせてやり」
「わかってはいるんですけど」
「小さい子が二人おるようなもんやな。けど、りほちゃんしっかりしてるやん」
「ほんとに大人びた子です」
「ん」
とんとん、ひとさし指で柔らかく手のひらを押す。優しいリズム。
「……愚痴聞くだけならいつでも呼び出してええから」
「はい、ありがとうございます」
「顔色ようなってるわ」
「体もあたたまりました」
「ん。ええ顔しとる」
「りほのことも心配だし、帰ります」
「またな」
手はするりと元の位置に戻る。
お互い手は振らずに、小さく頭を下げるとすぐに別方向に歩き出した。
まったく振り返ることもなく。

「重ちゃん、また坂で逢おうな」

 END.
20 :「いっしょに月をみよう」 :2011/12/11(日) 02:04
みーよからメールが来た。
『月が暗くなるのは23時過ぎみたいですけど、どうしますか?』
明日は大阪でドリムスのコンサートだけど……見たい!
なかなか見れるものじゃないしね。
少しだけ起きてあたたかい格好でベランダで見ればいい話だし。
22時前には月が欠けはじめてきたのは確認済み。
そこからちょいちょいみーよと月蝕についてメールしてた。
『23時過ぎに見始めれば隠れる瞬間見れると思う』
『ベランダで見るんですか? あたたかくしてくださいね』
そんなメールのやりとりをしてると、もう時間だ。
あたたかく着こんで、ベランダに立つ。
と、部屋の中で携帯が鳴っている。あれー? 電話だ。
「はいはい」
「あ、保田さん。あの……電話越しでもいっしょに月を見たいな、と」
「わー、それいいね。あ、ちょっと待って」
急いでベランダに出る。
21 :「いっしょに月をみよう」 :2011/12/11(日) 02:04
「なんだか月の指輪みたいですよね」
「……うん。こんなきれいな指輪もらいたいねぇ」
「え、保田さんもしかしておねだりですか?」
「べっ、別にそういうわけじゃないけどぉ」
「欲しいんですね」
「……みーよの好きな人にあげればいいじゃない」
「じゃあ保田さんにあげます」
「もうっ」
「わー神秘的、きっと日本中で何万人もの人が一緒に見上げてるんでしょうね」
「それもすごい話だよね。あっ! かなり真っ暗にすごーい」
いいこと思いついた。
「ねぇ、暗くなった瞬間、お互いのことだけ考えない?」
「いいですね」
みーよ、いつも私のこときづかってくれてありがとう。
甘えさせてくれるし、それにそれに……あー、月が隠れちゃった。
「隠れちゃいましたね」
「うん、でも月がまた出てくるまで、さ」
「……ずっと起きてるつもりなんですか!?」
「えっ?」
「あのー、何時間もかけてこうなったんですから、そう簡単には明るくなりませんよ」
「うそぉ」
「ほんとです、だから早く寝てください」

 END.
22 :おひとりさま :2011/12/11(日) 18:23
せっかく東京に出てきたんやし、なかなか見られへん月蝕、ええとこでみたいやんか。
で。区内やし、暗いところってそう思いつかんかったんやけど。
電車で行けて一人で迷わず戻ってこれて……ってどこやねん。
あ、緑が多いところはまわりに明かり少ないよなぁ。
ええとこ思いついた。

改札抜けて駅舎から出ると、もう月蝕は始まっててん。
人々らが夜空を見上げてた。あたしも見上げてしまう。
「月が食べられちゃいそう」
通り過ぎるカップルの楽しそうな声。
たしかこの道でええはずや。カップルが歩いてきた道をいく。
車も少なく、明かりも少なくなっていく。都内やのに。
坂がきつい。上りきると、高い木々がビルの谷間から見える。
着いた! 夜空のお月さんは、だいぶ太陽さんに隠されとる。
でも間に合うた。公園内の真ん中に大きな銅像が立ってる。
見上げると、ちょうど銅像のかげに入って都会の光は見えへん。
23 :おひとりさま :2011/12/11(日) 18:23
寒いせいもあって、見上げ続けていると首が痛くなる。
まわりを見渡すと、暗いからようわからんが、おっさんが多い。子連れもおるが。
……一人でみてる女の子おるやん。角度気にしてる感じを装いつつ、近づいてみる。
「なぁ、一人で来たんか?」
「あ、あたしですか!? びっくりさせないでくださいよぉ。おねーさんも一人なんですか」
「そうや。で、一人なんか?」
「まぁ、さびしいですけど」
「この季節になぁ」
「あぁ、これからクリスマスとかお正月とかありますもんねぇ」
「ふーん、それどこのなまり?」
「えー、なまってますぅ? ていうかおねーさんだって関西弁じゃないですかぁ」
「そりゃあ、大阪から出てきたばっかりやもん」
「あたしも出てきたばっかりですよ」
「そうなんや、似た者同士やな」
「てゆーか、おねーさんナンパですか?」
「いや、こんなとこに一人で月見に来てる女の子って興味あるやんか」
「まぁ、あたしもおねーさんのこと気づいてたら声かけてたかもしんない」
「やろ?」
「だいいち、月蝕ってゆっくりですよねぇ」
「寒いよなぁ」
「完全に隠れたらどこか行きますぅ?」
「そっちこそナンパやん。まぁええけど」
「やったぁ、じゃあ静かにしててください」
「えー、なんやのそれ」
「あたし、静かに月を見たいんで」
24 :おひとりさま :2011/12/11(日) 18:23
さっきから月なんか見てへんかった。一度も。
見上げると、都会の喧騒なんか忘れるぐらいに小さな星が輝きを繰り返してた。
月はもう小さな欠片しか残ってへんくて。あたしらにはただそれを眺めるしかできひん。
携帯で時間確認すると、そろそろ全部隠れるっちゅー時間やった。
もう一度夜空に視線をうつす。晴れててよかった、雲が多い夜やなくて。
「完全に隠れちゃいましたねぇ。おねーさん、どーします?」
「ん?」
「いや、明けはじめるまで時間かかるじゃないですかぁ」
「あぁ」
「でもこんなゆっくりなのずっと見るのもあれなんでぇ、ある程度時間置いてから来たいな、って」
「んー、体あっためたいよなぁ。あ、いくつ?」
「成人してますよ、だから居酒屋でも」
「じゃあ運動せぇへん?」
「はぁ?」
「や、ホテル」
「えーーー。運動しなくてもいいなら行きますけどぉ」
「まぁ、それでもええか。名前なんちゅーの?」
「松浦です、松浦亜弥」
「かわえぇなぁ」
「てゆーか、おねーさんあたしに惚れたんですね」
「ちゃうわ」
「おねーさん、おねーさんの名前教えてくださいよぅ」
「ホテルに入ったら教えるわ」
「えー、ずるぅい!」

 END.
25 :恋愛革命2011 :2011/12/12(月) 12:26
「シゲさん、やっほー!」
「あれ、これさゆみの夢ですよね」
「うん、なっちの夢だよ」
「へ? いや、あの寝させてください、疲れてるんで」
「ねぇ、なっちがさぁ一度だけシゲさんの時間を戻してあげるよ、って言ったらいつに戻りたい?」
「九月です」
「去年? 今年?」
「今年です」
「そっかぁ。まだ間に合うんじゃないの? 待つ、つもり?」
「はい、待ちます」
「六年間走ってきてさ」
「きっと今から十年走ってもなんとも思いませんよ」
「ランナーズ・ハイってやつ?」
「違いますけど」
「きっかけは矢口だったわけじゃない? ま、今回も矢口だけどさ」
「なんで安倍さん知ってるんですか」
「だってなっちは天使だもーん」
「はぁ」
「あのとき、二十一人いて二人だけで時が止まってたよね、一瞬」
「……安倍さんの位置からは見えないはずじゃ」
「恋愛革命ってなんだろう、わかんないな、ってなっちはずっと思ってた」
「中澤さんの卒業曲ですよね」
「うん、そう。シゲさんにもきっかけが矢口であったようにさ……って思うと恋愛革命の意味」
「あ……え!? そういうことなんですか?」
「なっちの個人的意見ね。全部をあきらめるのまだ早いんじゃないの」
「たぶん、ためされてるんですよね。だからこそ待っていようかと思うんです」
「そんなこと言ってるうちに、本気で会えなくなっちゃうよー。いいのー」
「すみません、考えたくないんです。寝させてください」
「ワガママ言う相手間違ってるんじゃないのぉ。ね、まだ間に合うよ」

先生も走るという師走の朝。目を開けると、ぼんやりと布団が見える。寒い。
ドラマの撮影やクリスマス、年末の特別番組、正月番組の収録がたくさんあるのに。
なんでこんな夢みたんだろう。……ハチャメチャな恋愛してみたいよ。
ワガママ言っても受け止めてもらえるんですか。

 END.
26 :論考『娘。小説とはなにか』――自分へのいましめ :2011/12/12(月) 20:12
   飼育に投稿しはじめてから数か月しか経ってない暇人が書いてみる。

 娘。小説を読むとき、読者は作品中に出てきた人名を脳内イメージに――例えば中澤(中澤さんもしくは裕ちゃん)だとしたら読者のイメージの中澤裕子に――置換する。そのとき、作者がその人物をどう思っているかどのように認識しているか、ということと関係しない。あくまで読者の脳内イメージに沿って物語が展開されることになる。そこからどう作者のイメージに近づけさせるかは、エピソードや言動、ブログの記述等に頼ることでそこからどう感じたかどのように考えているか表現することになる。

 Mseekwikiを彷徨っていると、「必要性」「交換不可能性」論という言葉に出会った。
――「そのメンバーである必要がある」ことと「そのメンバー以外では成立しない」ことの二つの要素が娘。小説には必須であるという考えをもつ人。
 よくわからない部分もあるが、自作を読み直すとそういう傾向にある。
 草板の脱乙女宣言飼育支部スレでは『打ち上げ花火、どこで見る?』や『おさんぽ』『さゆ得なの』などがそれにあたる。花火の話では新潟県中越地方を話題に据えている。小川と久住ではなく、矢口と石川で新潟の狭い範囲・話題とは考えづらい。『おさんぽ』『さゆ得なの』に至ってはブログ写真とユーストリームの映像(YoutubeにUP済)という誰でも閲覧可能な資料を基に作成したお話である。おさんぽが中澤矢口では成立しない。幻板に立てた続飼育支部スレでは、今のところ『お米の話』『坂で逢いましょう』『恋愛革命2011』しかない。お米はどっちかのブログと水曜夕方生放送のラジオから。坂と恋愛革命はFNS歌謡祭からである。
27 :論考『娘。小説とはなにか』――自分へのいましめ :2011/12/12(月) 20:13
 話を戻す。二〇〇三年ごろまでは作者と読者のあいだに、娘。側から提供される閲覧可能な作品に接する機会や回数にほとんど差はなかった。しかし、二〇一一年現在、娘。を卒業すると同時にハロープロジェクトからも卒業し、ブログもアメーバやグリーなど違いがあり、これら全てを読みこむのは時間がかかる。アメーバブログはUFA系ならアーティストblog一覧にリンクされているのだが、なぜか小川と藤本はそこから外されている。小川は今(十二月現在)もドリーム モーニング娘。として一緒に活動しているのに、である。またハロコンも、〇九年春までのエルダークラブという皿が無くなってしまったために卒業生と現役が関わることもない。かといって、現役とエッグもほぼ関わらないようである。卒業生と現役と言えば、『ハロー!モーニング』(TV東京系)があった。しかし番組が終了してから何年も経っている。その他にも現役がテレビ番組にほとんど出演しなくなったことも挙げられる。ラジオ番組のレギュラーでも、一部地域でしか正式には配信されてない。
 このように作者がどれだけのテクストを読み込んだり映像や音源を繰り返して見たり聴いたりしてその関係性に気づいても、一部の読者にとっては無意味である。その作品をカップリングで読もう、という選択肢がなくなってしまう。作者に残されている道は、もっともらしいアンリアルなお話を書くかリアルに基づいて背景を提示し関係を知らしめるために書くか、しかない。そこがうまく読者に受けいられてはじめて、疎遠を楽しむだのいちゃいちゃを楽しむだの、となる。最近の好例は、やはり『特別なんていらない』。……え? 『天然キャンディッド』? 力量足らずです。
28 :論考『娘。小説とはなにか』――自分へのいましめ :2011/12/12(月) 20:13
 なぜ『天然キャンディッド』はうまくいかなかったか。まず題名に意味はありません。近づける努力はしてたのですが、途中から放棄しました。短編(もしくは極短)の飼育支部スレとフリースレに投下済の作品は意味があります。ナマモノ二次創作なんて作者と読者による共同オ○ニーの掃き溜めであってそもそも意味がない、という皮肉を込めてありそうで全くないつけかたをしています。飼育支部は閲覧数も多く、この考え方は捨てざるを得ない。娘。だからこそ娘。小説であるという意味を見出している読者が多いということでしょうか。
 ところが、萌えCP作品では「必要性」「交換不可能性」論とは別の次元で基本的に描かれている。プロフィールは同じだが全く別の人間、立場のような作品も多々存在する。作者が娘。に与えた設定を一部の読者に非常に合致するが、多数が合わない作品だ。そのとき、置換はうまく行われるのだろうか。何度もこの世界を読ませるための、メンバーに与えてしまった設定が気持ち悪く、自分は流し読みするしかなくなってしまう。技術的に読ませるのは非常にうまいのだが、表現のおかしさが目につき読みにくい。最近の邦楽でもメロディーは良いけど、カラオケで歌うとなると歌いにくい。その状態に近い。余談でしかないが。作者がしたいのは世界観を読み込ませることで、娘。である必要がない、と感じてしまう。これはアンリアルを批判しているのではなく、その人であるがためのエピソードや言動の少なさを指摘している。

 結論、娘。小説とは娘。である必要がありその他のメンバーではこの関係性にならないお話と、作者の世界観を読ませるために娘。の名前を使用する萌えの二種類がある。どちらもCPという概念が存在する。前者には、CPに留まらない関係性も含まれる。
29 :見えない影 :2011/12/12(月) 22:55
何でも入手できて消費する社会になった。
消費される側が入手できないもの、そんな二つのカップルが模索する物語。

静かな住宅地の端に急な坂がある。なのに、途中に小洒落た喫茶店。
赤いレンガに暗緑の蔦が這って、昭和の面影を残したかのような外観である。
その喫茶店は若い女店主が切り盛りしている。笑顔が素敵な二十三歳。
少しおバカなところもあるが、誰の話でも聴いてくれると口コミが広がっている。
店名は『ハニホヘト』。ただ名前のせいで噂だけが独り歩きしているような状態である。
30 :見えない影 :2011/12/12(月) 22:55
十二月、夜になると空気が冷たくなる。
十一年ぶりに皆既月食が見られる日。次に条件が揃うのは七年後。
本日は雲一つない空で天体観測にちょうどいい。

「うー、寒いっ!」
白いダウンジャケットを羽織った店主が出てきて、夜空を眺める。
「おー、ガキさーん」
「あー、どもども。安倍さんも月蝕を見に」
「うん、そう裕ちゃんと」
店主はガキさんと呼ばれ、もう一人は安倍さん。どこかふっくらとした感じがする女性だ。
「ひさしぶりやな」
この間、重ちゃんと呼ぶ女性と土手を歩いていた関西弁の女性。姓は中澤。
「お二人でデートですか」
「散歩」
「は?」
「散歩は散歩やん」
「あのね、照れ屋だから。月蝕見るだけなのにさ」
「ええやん、なっちも外出したいってゆうたやん」
「はいはい」
「いつも仲良しですねぇ、うらやましいですよ」
「それほどでも〜。ね、ガキさんにはいないの?」
「今は話を聞くのが仕事ですから」
にっこりとほほ笑むガキさん。
彼女のすばらしさは、店外でこうやって会話してもついうっかり……という発言がないところだ。
31 :見えない影 :2011/12/12(月) 22:56
「あ」
三人して夜空を眺めてたのだが、一人だけ先に視線を坂の上に向けている。
「裕ちゃん、どうしたの」
安倍がゆっくりと中澤から坂の上へと視線を動かす。
「あら、あらあら。月見にきたのかな」
「あー、そうですねぇ。小さいお子さんの名前なんでしたっけ」
二人は視線を交わす、その間訪れる少しの沈黙。
「りほちゃん、だよ。けど眠たいんじゃないかな、今の時間」
「夜遅いですしね。でも見たいですよねぇ」
「……そうやな」
髪を赤く染めている女性と黒髪で小さな子どもを抱いている女性が仲良く坂をくだってくる。
途中で、黒髪の女性にあたってるのが見える。
「こどもいるのに、あーいうことする人いるんですねぇ」
しみじみとガキさんが呟く。
「噂の喫茶店店主がそういうこと言っていーの」
「今は仕事中じゃないですし。それに安倍さんたちはわざわざ言わないでしょ」
「ふふっ、そうだねぇ。ガキさんのいうとおり」
なぜか安倍は威張っている。ガキさんはそんな安倍を見て、にこにこしている。
「なぁ」
「ん?」
「寒いし、そろそろ帰らへん?」
「あ、私も店の片づけしなきゃいけないんで。またお店来てくださいよ」
二人に手を振ると、店の中へ戻る。
「もー、シゲさんには甘いんだからぁ」
「ちゃうもん」
ぶーっ、と唇をとがらせる中澤。
「あとで、あったかくするなら許すぞ」
「……うん、帰ったらな」
「行こっか」
32 :見えない影 :2011/12/12(月) 22:56
太陽と月のあいだに地球が入る。地球にいるのに、自身のかげで月が見えなくなる。
大切なものもそうだ。自分に原因があって見えなくなる。
小さな子は目をさましていたけれど、慣れているのか泣き出す気配はない。
黒髪の女性は、ただただ隣に居る女性の愚痴を聴いていた。
「わかったから。れーな、帰ろう」
「でも、月ッ……!」
れーなと呼ばれたのは赤髪の女性。
「うん、さゆも見たいよ」
自分自身をさゆと言ったのは黒髪の女性。この間、中澤に重ちゃんと呼ばれ土手を歩いていた。
真面目な表情で、優しい口調でれーなを諭す。
「しーげさんっ」
安倍と中澤が、坂をのぼってきたのだ。
「あ、こんばんは」
「月蝕見にきたんか」
「はい、そうです……えっと」
「ね、りほちゃん、なっちが抱いてもいい?」
「え、あの……」
さゆが悩んだ表情で言葉を濁す。隣にいるれーなは、憮然とした表情で安倍をにらんだ。
だが、そんなことにおかまいなく、りほは差し出された安倍の腕に手を伸ばす。
「あらー、りほちゃん。なっちがいいんだー」
「えへへ」
明確な返事をしたわけではないが、大の大人四人が揃ってホッとした表情になる。

こどもの笑い声とはそういうもの。大切なものは見えない。二人は心からそう思った。
自分のどこに影を持ってしまったのか。光あれば影もある。
影があるから輝き続けられる。
たった一夜の不思議な夜。今夜は楽しい楽しい夜。気にせずに突き進むしかない。
たとえ忘れられない恋の記憶があったとしても。
いま、隣にいる人を信じるしかない。

 END.
33 :定期目次 :2011/12/12(月) 23:00
お米の話(ゆゆマコ)>>2 おなじきもち(ゆゆこは)>>5 スイートルーム(やすみよ)>>7-8 radar>>11-14 
坂で逢いましょう>>17-19 「いっしょに月をみよう」(やすみよ)>>20-21 おひとりさま(ゆゆあや)>>22-24 
恋愛革命2011>>25 論考『娘。小説とはなにか』――自分へのいましめ>>26-28 見えない影>>29-32
34 :月のさびしさ :2011/12/15(木) 22:24
都内で見上げたときは、まだ光り輝いてた月。
群馬の実家に着いた時には、暗い赤銅色になっていた。
それだけのことなのに、少しさびしかった。なんでなのかわかんないけど。

憂佳ちゃんに電話したくなった。でも夜遅いからやめて、メールにしようと思った。
けど最近の憂佳ちゃんは冷たいから送っても返事こないかも。
さびしいなぁ。やっぱりさびしいんだなぁ。

キレイで美しい月だけど、夜に光ってるのも昼間に暗くて見えづらいのも、同じ月。
四人のスマイレージも今のスマイレージも同じスマイレージ。
モーニング娘。さんだって卒業も加入もあるけど、やっぱりモーニング娘。さんだもん。

大好きな憂佳ちゃんがいなくなるのは、やっぱりさびしい。
月を見てたら自分の気持ちを認めてしまった。
さびしい、とあやが言ったところで憂佳ちゃんはやめるわけないんだけど。
やめて欲しくない。でも大好きなスマイレージをやめないためにも、あやが頑張るしかないんだね。
一人じゃないから、まだ一人じゃないから。
冬の夜空にある月はさびしそうだけど、あやも今はさびしいけど、そうならないように頑張らなきゃ。

 END.
35 :Cat and Chocolate :2011/12/19(月) 18:40
久しぶりに二人きりの時間。
「どしたん? 元気ないやん」
「はい。仕事で失敗しちゃって……」
道重の肌荒れがひどい。化粧してても荒れてるのがわかる。
「よしよし」
中澤が手を伸ばして頭を撫でると、ほんのすこし顔が明るくなる。
「よう頑張ったな」
「……ほんとにそう思います?」
「うん」
36 :Cat and Chocolate :2011/12/19(月) 18:41
「さゆみが前に出ることで貢献できればいいんですけど、すぐに結果が出る問題ではないので」
「迷ってたってよう進めへん。仕事したってことは進めてる、ってことやで」
「例えばですけど、猫とチョコでこの難題を解決してください」
「できへんかったら?」
「さゆみを慰めてください」
……なんで猫とチョコなん? 疑問を発する。
役に立ちそうもないアイテムなら何でもいいですよ、と道重の答え。
そんなん浮かばへん。納得させなあかんもん。思いつくわけがないやん。
最初から中澤の敗北は決まっていた。
37 :Cat and Chocolate :2011/12/19(月) 18:41
 
38 :Cat and Chocolate :2011/12/19(月) 18:41
女性の体にそぐわない物をベルトのように腰につけて立っている後輩。
挿れられる側は先輩だとはっきりと自覚させる。嫌が応にも。
今までは甘ったるい行為しかしてない二人。お互い入れたり入れられたりの関係だった。
物体を前にしても、口を開かないから道重は中澤の鼻を優しくつまむ。
徐々に力を入れると、息が出来なくなって口を開くしかなくなる。そこへ物体をゆっくりと挿れる。
味がない、匂いもない、温かさもない、ただの物。液体は出てこない。反応もない。
鼻から手を離すと、戸惑った表情のまま口を大きく開け酸素を取り込もうとする。
物体を涎で汚しながら、顔を汚しながら。その顔を見ながらまた愛おしく感じるのだった。
左手で頭を優しく撫でながら、右手で爪を噛む。先輩が舐めている、その事実だけでも感じる。
満足すると、口からゆっくりと引き抜く。お互いの小さな声が聞こえた。
膝をつき、右手で先輩の髪を撫で、そのまま掌と指はうなじ、右肩、右腕、右手とおりていく。
指先まで丁寧に。愛おしいから触れる、と言いたげな視線。
お互いの唇を軽く重ねる。後輩の指先は先輩の指先から離れてお尻を撫でる。
「こちらから」こくんと頷く。足の裏が冷たい床を踏む音しかしない。
39 :Cat and Chocolate :2011/12/19(月) 18:41
先輩は両手を床につき頭をたらしお尻を上げる。
後輩はそんな先輩の後ろに立ち、膝をついて準備。
指先が茂みを分けて、つぼみに到達する。
小さいけれど確かに甘い吐息が部屋を満たす。
「ものすごく熱いです、なに考えてたんですか」
「ちゃう……ちゃうねん」
触れただけでわかる。触れられただけでわかる。不意に水音をたてて、指が泉にひたる。
「ぅ、あ……あぁっ」
抵抗の言葉もなく、体が異物をすんなりと受けいれる。
「……はよ入れて」
「中澤さんってほんとにみだらなんですね」
「いやや、ちゃう……」
「いれなくていいんですね」
会話を続けながら、指も出たり入ったりを繰り返す。
40 :Cat and Chocolate :2011/12/19(月) 18:41
「……いやや」「どっちですか」
優しい声、穏やかな抑揚。問いかけには答えぬまま、指に合わせて体が応える。ため息が一つ。
「いれて」一旦指を抜くと、それだけで大きく喘ぐ。
大事な部分を両手の指がさわさわと這う。何度も体が呼応する。
そして、泉にゆっくりと物が落とされる。「きもちいっ……」
「こんな物いれられて気持ちいいんだ、中澤さんって獣みたいですね」
ゆっくりと何度も何度も出し入れする。ほんの少しずつ侵入を繰り返し行う。
「だめっ……やぁ」
言葉にならない喘ぎ。中澤は、快楽に耐え切れず目を閉じる。
「こんなに自分から腰振って」
もう否定の声はない。代わりに、イかせて、と消えいるような声でこたえた。
急に動きが早くなる。ガンガンと奥まで突かれる。
「あっ、あっ、イく、イっちゃ……ぅ」
途中でトーンダウン。道重はニヤリと瞳を歪ませて、腰の動きを止めていた。
41 :Cat and Chocolate :2011/12/19(月) 18:42
「いじわるせぇへんで」「お願いですか」「う、うぅん」
冷静な問いかけと熱く悩ましい喘ぎ。道重はゆっくりと腰を動かし始めている。
「どっちですか」「お願い……イかせて」「こんなお願いしないといけないなんて、堕ちましたね」
先輩の叫び声を聞きながら、激しく前後に動かし道重も雄叫びをあげた。
でも二人とも何も聞こえなかったことにした。頭の中が真っ白になったから。
泉から聖なる物体が抜け落ちる。ぬらぬらと光っているようにも見える物体。
荒い呼吸が雰囲気を支配する。中澤の背を優しく何度も何度も撫でた。頬には涙が流れたあと。
なにごともなかったかのように落ち着いて、提案する。
「もう一度しましょうか。前の方から挿入すれば、どれだけいやらしいかわかりますよ」
目を開き手に力が入り、体がこわばっていくのがわかった。
こんなの恋愛やない、と体中に怒りが駆け巡ったかのような唸り声。
「中澤さんが素直になるレッスンです。だから恋じゃありませんよ」
喉が鳴る。「でも愛はあるでしょう」
自信に満ちた声が中澤を猫にする。

 END.
42 :のりあう :2011/12/24(土) 00:35
「つーか、あの道重? とかいうの最悪だよねー」
「おまえなんかうちらのJの足元にも及ばないっつーの」

電車の中で、バッチリ化粧した若い女の子たちの会話。
たぶん、こないだのテレビ番組のこと。

「自称かわいいとか」
「ふざけんなってカンジ」

興奮してても人目を気にしてるのか、小声にしようとは努めてるようだ。
まわりのオジサンたちは眉間をひそめているが。
黒髪ロングで白い肌の女の子も怪訝そうにその子たちを見つめていた。
いや、視線を合わそうとはしてないから、道重のファンなのかも。
私も大人になったなぁ。
こんな会話される女性タレント……大変だ。そのファンも、ね。

「ね、気にしないほうがいいよ」
さりげなく近づいて、黒髪の子に話しかける。
えっ、と驚いた声。でもすごく小さな声。
ん? あらら、もしかしてこの子、道重さん本人かな。
気づいてないほうがいいよね。この子のためにもまわりのためにも。
「あ、いや……あんまり気分のいい話題じゃないし、さ」
「そうですね」
あれ? この声どこかで聞いたことある。そういえば……。
「うん、私はそういうの耐え切れなかったからさ」
彼女の大きな瞳が アナタハダレ? と訴えかけている。

……線乗り換えのお客様は、1番線ホームから××行きが……
車掌の声が電車内に響く。

乗換駅か。ドアが開いたから、もう一声かけることにした。
「あ、私、降りるから、頑張ってね」
「……ありがとうございます」
かわいいなぁ。
「焼き銀杏は元気だよ、って先輩に伝えてね」
そう伝えて電車から降りると、ちょうどよくドアが閉まる。

 END.
43 :生き長らえる橋 :2011/12/26(月) 01:04
小春ブログの写真を見た。
ある意味、故郷だと麻琴は思う。
中学生の頃までしか居なかったからよく覚えてないけど、この橋が象徴だと聞いたことがあった。
この橋を境に駅がある川東と柏崎に近い川西に別れる。
もちろん現代では、この橋のほかに二つの大きな橋がかかっている。
日本一長い川に。
川東の人は川西を川向こうと言い、川西の人は川東を川向こうと言い。
昔は行き来が難しかっただろうから、そう言うのはわかる。
しかし、行き来が簡単になった現代でも同じことを言っているらしい。

この橋はナイアガラと正三尺玉同時打ち上げの会場でもある。
あっちの花火は小さいぞ、こっちの花火は大きいぞ。
そんなことをやっている場所だ。
大スターマイン不死鳥の打ち上げ場所でもあるし。
海は川には負けないといい、川は山には負けないといい。
あれ? 山は海となんか張り合ってたっけ?
寒さには負けないってことにしとこう。

珍しいタイプの橋だから、最近はどう存続させるかが問題になってるらしい。
かなり長い間かかっていて、二度の地震にも耐えたし。
花火の歴史にもロケーションにも関わる問題だけど、安全も問題。
修復し続けても使えるならそれでいいけれど。

橋一つにもドラマがある。
現代に生きているわたしたちにも、この橋にもハッピーエンドが訪れますように。

 END.
44 :カンジんなしごと :2011/12/27(火) 20:45
会社の入口で、ちょうど出会った。
「よっちゃーん、Eテレの仕事って長引く可能性あるんだっけー?」
「忘年会っスか。あー、別にその日でも構わないっスよ」
「ええの? 前も出られへんかったやん」
「姐さんとはいつも飲んでるし……それに矢口さんと飲みたいでしょ」
こんなん言われたらなぁ、肯定するしかないやんかぁ。
「……うん」
ナチュラルに男前やもんなぁ。
「間に合ったら顔出しますよ。来年もときどき二人で飲みましょうか」
「うん、そうやな」
さみしいって言う暇もあらへん。ずるいよなぁ。
あたしだけにこんな優しくしてるわけないんやろうけど。
……仕事の時はあんま話せへん、って言いたかった、けど。
「ありがと、今度飲もうな」
「はい! そのときは誘ってくださいね」
そう言いながら、軽く手を挙げて会社から出て行く。よっちゃん、忙しそやなぁ。
優しすぎる。
よっちゃんのこと心配なんやけど、よっちゃんはあたしのこと心配なんやろな。

と、ケータイが震える。よっちゃんからメール。
……惚れたら危険なんやろな。
肝心なよっちゃんの気持ちは、いつも教えてくれへん。

 END.
45 :憧憬 :2011/12/29(木) 20:08
インターネットをさまよってたら、見つけた。元・あたしの友人。
高校の同窓生で、同じクラスになったことはないけど部室が同じだった。
小さい部活同士、小さな部室に押し込められてた。
ただ辺鄙な場所にあったから、教師でも知らない。
もちろんクラスメイトだって知らない。

あたしの友人、いや、だった人。過去形なの。
その友人は教室にいない時、たいがい部室にいた。
何してたかはよくわかんないけど『しめきりが』ってよく愚痴ってた。
全然関係ない部活なのに、同じ部室だったんだよ。
文化系だからって……ねぇ。
授業ちゃんと出なきゃダメだよ、って顔合わせるたびに言ってた。
あたし、小姑なんだよね。ついつい注意しちゃうの。とめらんないの。
そっけない返事されちゃうと、もっと言いたくなっちゃうの。
全然聞いてくれないんだけど。他の友人に対してもおんなじ調子だったからね。
保健室にもそこそこ行ってたみたい。
だけど運動は好き。体を動かす時はイキイキしてた。
そんな彼女が好きだった。……友人としてだよ。

帰り道、他の友人とよく一緒に歩いた。あたしと二人っきりだと帰ってくんないから。
色々話したな。あたし料理苦手だったのに、そういう話ばっかりだったけど。
一度だけ「そんな可愛いのにもったいないよ」ってアクセサリー屋とか連れて行かれたな。
彼女のセンスとあたしのセンスはだいぶ違ってた。
46 :憧憬 :2011/12/29(木) 20:08
三年生になる前、部室であみだくじを持ってる彼女がいた。
同輩をつかまえては、どれか選んで名前書いといてって話してた。

  なんのあみだくじよ。
  部長決めるための。これ伝統でさー。
  えー! そういうのよくないんじゃない?
  いや、これ仕組まれてんの。
  は?
  もう美貴がなるって決められてんの。
  え? じゃあ、する必要なくない?
  だーかーらー、形式上。
  ええ?
  決められてたわけじゃなく、くじで決まりましたって納得させるため。
  えー、それでいいの?
  ウザい。そういうこと言うために話しかけてんの?

時々、彼女が何考えてるかわからなくて怖かった。
その理由がわかったのは、卒業間近の頃。
授業には出なくてもテストの点数はそこそこ取れてると聞いたから。

  数学だけはダメ、起きてないと絶対無理。でも他の教科はなんとかなるし。
  つーか、教科書読めばそれなりにわかるでしょ。

こういう人も世間にはいるんだなー、って。
あたしは何ごとも一生懸命やれば結果がついてくるって思うから。
結果が出ないときは努力が足りなかったんだ、って思うから。
そーかそーか藤本美貴ってこういう子なんだ。
三年間知らないままだったけど、知れてよかった、ってそのときは思ったの。
47 :憧憬 :2011/12/29(木) 20:09
卒業式の日、このまま友人関係続くと思ってた。だから。
「ねぇ卒業しても時々集まろうよ! 他の子も誘ってさ」
「美貴さぁ、梨華ちゃんみたいな子、大っ嫌いなの。明日から他人だかんね。見かけても声かけんなよ」
目の前が真っ暗になってった。そこで記憶は途切れてる。
あたし、あのあと彼女のこと街で見かけたことがあったのかすら覚えてない。

あ、なんだったっけ。そうそう友人の話。昔話すると話題がどんどんずれてくんだよね。てへへ。
元・あたしの友人、て言ったってあたしが一方的に思ってただけなんだけどね。
友達の間でもたまに話してた。だって美人だし。何やってるかよくわからないミステリアスな人だし。
やる気なさそうに過ごしてるのに、やたらと大人っぽいし。
卒業後は街で見かけなかったと聞いてたし、都会にいるらしいとも聞いてたし。
地元で就職したって聞いてたのに。

いや、なんか活躍してるみたい。素直に嬉しいよ。
あの時、一緒に話したり遊んだりした子がさぁ。あたしが悔しがるぐらい有名になって欲しいなぁ。
よっすぃ〜に言ったら、また呆れられちゃうかも。でも、これが石川梨華なんだよ!
彼女のおかげで今のあたしがあるんだから。

 END.
48 :プロポーズ大作戦 :2012/01/03(火) 14:55
「この間おもしろい話を聞いたんですよ」
「んー?」
「いや、なんか恋愛と胸の話なんですけど」
「はぁ」
「あ、いや……興味ないですか?」
「わかんないから、話してみてよ。つまんなかったら言うしさ」
「はい。あの、友人から聞いた話で」

   理想の恋愛ができてると、女性ホルモンが活性化して、胸が大きくなるらしいです。
   セクシャリティや生き方の問題も含めて、ということで恋愛だけに限らないらしいですけど。

「もしかして……岡田唯ちゃんだっけ?」
「えぇ?」
「ほら、美勇伝で石川に胸の大きさで対抗してた子」
「なんていう覚え方なんですか、それじゃあ私の胸が小さいみたいじゃないですか」
「みたいじゃなくて小さいし。胸なんて小さい子ばっかりだもん」
「アイドルって……踊ったり歌ったり激しいからすごい筋肉じゃないですか」
「だからかと思ってた。けど、ミキティはそれなりにしかないよ」
「そこで矢口さんや加護さんを出さないところはさすがですね」
「二人ともそこそこあるもん。辻だってそうだし」
49 :プロポーズ大作戦 :2012/01/03(火) 14:55
 そんなこと言ったら裕ちゃんとよっちゃんと小春ちゃんはどうなんのよ。
 裕ちゃんは熱愛報道が出たでしょ。矢口のこと好きなのは知ってるけど。
 よっちゃんは恋愛どころかプライベートが謎だし、小春ちゃんもよくわからない子だし。

「中澤さんってまだ矢口さんに片想いしてるんですか」
「いや……本人に直接聞いたわけじゃないけど、たぶん」
「それって熱愛報道後もですか」
「まぁ、そうね」

 なるほどね。実らない片想いじゃ胸はふくらまないね。ストレスで体はふくらむかもだけど。
 どうするんだろう。契約切れた直後に結婚しても印象悪いし。
 
「結婚するんですか。本当に?」
「ドリムスあるからね。ガキさんは卒業しちゃうし」
「あー、それ。それなんですよ」

   娘。の枠ってあるんですね。優遇とか。卒業のせいで仕事激減なんですよ、私。
   私のほうこそ結婚したいですよ。できないんですけどね。保田さんを困らせちゃうだけですし。

「なによー。てか恋愛と胸の話じゃなくない?」

 END.
50 :賽は投げられた :2012/01/13(金) 18:28
「この間、さゆとサイコロ勝負したら負けちゃってぇ」
「どんな勝負したのさ」
「保田さぁん、聞いてくださいよぉ」

2から12で好きな数って言われたから、迷ったんですけど4って言ったんです。そしたら、さゆは7って言いました。
どうするのかと思ったら、順番に2個のサイコロを同時に振って自分が言った数字が先に出たら勝ち。

「負けちゃって、使いっぱしりしてきましたぁ」
「……石川、それ騙されてる」
「えっ!」
「いい? 2個サイコロを振って4が出る確率は12回に1回。7が出る確率は6回に1回。だから、重さんは勝ちやすい状況にあるの」
「えー、もっとわかりやすくお願いしますぅ」
「AのサイコロとBのサイコロがあるとします」

Aのサイコロが1の目、Bのサイコロが3の目を出したときなら4になる。他に2と2、3と1で全部で3通り。
7を出すためには、1と6、2と5、3と4、4と3、5と2、6と1の全部で6通り。

「だから、7が出る確率は高いのよ」
「まー、よくわかりませんけど勝負には負けたってことですよねぇ」
「それがわかれば、いつでも誰とでも生きていけるよ」

 END.
51 :ゆるい放物線を描く :2012/01/14(土) 00:47
――終末がやってくる。金曜夜、三人はいつものように獲物を探しに行く。
この星が終わるなんて誰も知らない昼間と違い、あぶれた少女が街をさまよう。

制服を着たままだと学校が特定されるから、一度誰もいない家へと帰る。
そして、どこの学校のものでもないベストとブラウスを着、スカートと靴下を穿く。靴も変える。
二十一時までに補導されたくなかったら、生きたいなら、そうする必要があった。
愛理は、水飲み場を見つけると皿にたまった水へと舌を伸ばす。
熱くなった体を冷やす。犬がそうしていたと聞く。渇きが癒せるわけではない。
二十二時。高校生はとっくに家に居る時間。補導される時間。
でも、警察は来ない。えんこーしたって、何も言われない。
夜だから。あと一時間も経つと、無法地帯になる東京。

誰もいないと思っていた公園。「寂しいよね」「切ないよね」「遊んでててもね」
幼い少女の声。三人いる。くすくすと笑われているように思う。こわい。
初めて恐怖を感じた。逃げなきゃ。でも足は動かない。夜の寒さが体を凍りつかせていく。
「すごい可愛い子じゃん」「まいは唇舐め回したい!」「ねぇ、喰っちゃおうよ」
いやだ。自分より幼い女の子に襲われるかもしれない。
男の人ならお金をくれる。年上のお姉さんだって美味しいものぐらいは食べさせてくれる。
自覚があるからここにいる。今は、逃げ出したくても体が動かない。
近づいてくる足音が、ただただこわい。
52 :ゆるい放物線を描く :2012/01/14(土) 00:48
「ねー」「おねーさん」「まいとあそぼー」
低い声、可愛い声、幼いのに妖艶な声。
「ひっ」
口から息が吐き出された瞬間、涙が頬を伝う。
「ねぇ! 聞いてんの!?」
低い声の女の子が、一歩近づいた。
「あっ、あっ」
声が出ない、言葉も出ない。ただ涙が目からこぼれていく。
「なに泣いてんの? おもしろーい」
「怯えなくていいのにね、うちら楽しいことしかしないよ?」
「まいもちさともそういうこと言わないの。おねーさん泣くとキレイだね」
プリーツスカートから伸びる膝が尋常じゃないぐらい震えている。

「忘れるぐらいに騒いじゃお」
幼い声の子が言った途端、三人が愛理を取り囲む。
六本の腕が、自分の体を服の上から触っていく。拒めない。怖くて声も発せない。
関係を持った人が頭に浮かんだ。気持ちよくて忘れられなかった人もいる。今夜はどうなるんだろう。
……あ。意外と気持ちいい、と思う。手つきが慣れている。ゆっくり、優しく触ってくれてるのがわかる。
ただ、三人の目的がよくわからなかった。それが反対に怖いとも思う。
体の緊張が解けていくと、快感を吸収して発散したくなる。
小さく吐息が漏れると、それが合図なのか愛理よりも少し背の高い声の女の子が、顔を近づけてきた。
と、唇を舐め回される。温かい熱を帯びた舌が、自身の唇を割り侵入してくる。
いつのまにか自分から応えていた。こんなことは初めてだ。何もケーヤクしてないのに。
冷たいと思い込んでいたのに、肌は汗ばんできている。
「やっぱりおねーさんの唇おいしいね」
舐め回した子は幼い声の子だった。
「なんかケーヤクしないの」
やっと声が出せたから、冷静に問う。
「おねーさんは、そうやって生きてるの? 一緒のグループで活動しない?」
同じ境遇の子たちなのかもしれない。
「いいよ、それがケーヤクなら」

幼い頃、一人で生きるんだとやっていくんだと、強く強く思った。
ここであきらめたわけじゃない。ただ回り道も時には必要だ。
一人じゃ対処しきれないこともある。何があるかわからない世界だからこそ。

 END.
53 :須藤茉麻が痩せた理由 :2012/01/16(月) 02:56
「Berryz工房さんってアレ」後輩グループのリーダーがそんなことを言ってた。
前にも先輩グループの売れっ子さんが「梨沙子ちゃんは殿堂入りしたので」なんてことも言ってた。

このままじゃマズイ! ベリによくないことが起こりそうだ。
誰かが痩せ始めたらまた自分が太ることになる!
ハッ! 自分が痩せればいいじゃない。
でもみんなに気づかれずに少しずつやるにはどうしたら……。

「まぁ、最近痩せてきてない?」
「そんなことないよ。みんなと食べる量変わんないじゃん」
「そーだけど」
「梨沙子と同じ量食べて痩せるわけないでしょ」
「……うん」

夜食やめただけでこんなに効果があるなんて。
夜中のポテチうまいじゃんとかしめのとんこつきてるじゃんとか。
つんくさんが先輩グループに歌わせるのが悪いと思う。
まぁは悪くない!

おわり
54 :みおん :2012/01/16(月) 02:56
須藤茉麻が痩せた理由>>53は狼に書いたのを改変しました。
55 :定期目次 :2012/01/16(月) 03:01
お米の話(ゆゆマコ)>>2 おなじきもち(ゆゆこは)>>5 スイートルーム(やすみよ)>>7-8 radar>>11-14 
坂で逢いましょう>>17-19 「いっしょに月をみよう」(やすみよ)>>20-21 おひとりさま(ゆゆあや)>>22-24 
恋愛革命2011>>25 論考『娘。小説とはなにか』――自分へのいましめ>>26-28 
見えない影(坂で逢いましょうの続き)>>29-32 月のさびしさ(ゆうちょ)>>34 
Cat and Chocolate(ゆゆさゆエロ)>>35-41 のりあう>>42 生き長らえる橋>>43 
カンジんなしごと(なかよし)>>44 憧憬(りかみき)>>45-47 プロポーズ大作戦(やすみよ)>>48-49 
賽は投げられた>>50 ゆるい放物線を描く(℃)>>51-52 須藤茉麻が痩せた理由>>53
56 :夢みるあたし :2012/01/20(金) 19:19
あたしの友人だった藤本美貴。会わないうちに歌手としてデビューしてた。
小さな仕事をコツコツとこなしながら、インディーズで出してると聞いた。
よっすぃ〜から教えてもらって、地元のCD屋にも置いてあるっていうから買いに行った。
けど、聞いてない。というか、……だよ。袋から出してさぁ聞くぞ、と思ったんだけど。
だけどね。なぜか封を切るのすらためらう気持ちがあったの。
あれ、なんで素直に応援できないの。うんうん、不思議。

昨日は無理だけど今日なら、とよっすぃ〜がおうちに来てくれる。
ちゃんと0時ちょうどに『お誕生日おめでとう』ってメールはもらった。
嬉しいな、よっすぃ〜のこういうところ。
時間通りに玄関チャイムが鳴る。ドア開けるとやっぱりよっすぃ〜。
「お誕生日おめでとう」「ありがとう」
声で聞けると嬉しさ倍増だね。
「プレゼントさー、迷ったんだけど」
そう言いながら差し出してくれたのは、見覚えのあるCDジャケット。
「……これ」
「ん。一枚だけ買ってたの見たんだ。でもこっちのほうが評価すごいからさ」
「ありがとう」
この間、買ったその一枚、まだ聞いてないのに。……評価高いんだ。
はぁ……ため息が漏れる。
「えっ、ごめん。やっぱりダメだっかな……嬉しそうに買ってたからいいかな、って」
思ったんだけど。だんだんと彼女の声が小さくなっていく。
「あの、ね。まだ聞いてないんだ」
なんだか可哀想になって、理由を教えた。
と、パッと笑顔になる。かわいいなぁ。
「そういうこと! なーんだ、気にしなくていいよ。いつでも聞けるんだし」
「うん。ね、よっすぃ〜は聞いたことあるんでしょ。どんな感じなの」
「んー、言っていいのかなぁ。なんだろー、顔がちょっとキツイ感じでしょ。でも、声はすごくやわらかいの」
「へぇ。今度、聞いてみよっかな」
「今、聞いちゃえば。イベントの応募券もついてるし」
「は!? イベントぉぉぉぉ!?」
よっすぃ〜がしかめっつらで耳をふさぐ。
「梨華ちゃん、声大きすぎ。びっくりしたぁ」
「あー、ごめん! ごめんねぇ、よっすぃ〜のこと大好きだから」
「うん。てか知らなかったの。ネットで先に有名になって、意外と人気あるんだよ」
イベントで間近に見られるとか、ちょっとあたし夢見てたみたい。

 END.
57 :道のしっぽ :2012/01/24(火) 19:03
格差社会と呼ばれて何年経つだろう。ほんの少し前までは総中流社会と言っていたのに。
どんな社会になろうと少数派と呼ばれる人たちは存在する、そんな二人の交錯物語。

静かな住宅地の端に急な坂がある。坂を下ると土手に出る。川が流れているのだ。
反対側の岸は繁華街を含む商業、工業地帯。キラキラと輝き続ける眠らない街。
こちら岸の坂上は高台になっていて、大きな住宅地がある。
小さな山を切り拓いて造成された。それでも広い土地になる。

今日は雲一つない青空。昨夜は降雪があり、真っ白な屋根との対比が真冬だと告げる。
一ヶ月以上続いた乾燥注意報は解除され、外の空気はしっとりとしている。
歩きづらそうに雪道を歩いている女性二人。
たまたま会ったのだろうか。二人ともエコバッグを片手にさげている。
58 :道のしっぽ :2012/01/24(火) 19:03
「あれ? こっち通るっけ?」
「いえ、りほが友だちとよく遊ぶ公園がこの先にあるので」
「これからお迎え? ね。なっちもついってっていい?」
「あのう、中澤さんが家で待ってるんじゃ」
「いるようでいないから」
「よく出かけるんですか」
「ううん、ずっと在宅の仕事してるよ」
「……さびしいですね」
「知ってた? ガキさん、お店たたんじゃうんだって」
「坂の途中の」
「美味しいコーヒー飲めなくなっちゃうね」
道重は、隣を歩く安倍を見つめた。買い物帰りなのに、下を向きテンションは低くなっていく。
二人とも誰かといる幸せを手に入れた。なのに、不安は解消しない。
「……あべさ」
「ね、どこの公園?」
安倍は眩しい笑顔を道重に向ける。新垣が褒めている天使の笑顔。
しかし、悪魔の笑顔と中澤がぼやくのを聞いたことがあった。これか。たしかに断れない。
「こっちです」
方向を指さしながら、いつのまにか案内している自分にしっかりしてと言い聞かせた。
59 :道のしっぽ :2012/01/24(火) 19:04
落ち着きのない安倍が一方的に話し続け、道重は相槌を打つだけで精一杯。
公園には土混じりの小さな雪だるまがいくつか放置されている。
砂場と思われるところで遊んでいる女の子二人。
「りほー!」
思い切りよく大きな声で呼びかけながら、近づいていく。
「かのんちゃんまたねー」
「うん、またねっ」
「いつも遊んでくれてありがとう。気をつけて帰ってね」
「はいっ、またあした〜」
ポニーテールの女の子が駆けていく。家は公園のすぐそばにある。
裏玄関と思われる扉を開け入っていくのを確認すると、りほと向き合った。
「りほちゃーん。寒いでしょ? 早くおうち帰ろうね」
先に声をかけたのは安倍。なんでいるの? りほは不思議そうな顔を道重に向ける。
かがんで目線を合わせてから、偶然会って一緒に来たことを優しく説明した。
「なっちも戻りたいなぁ……無理なのかな。重さんはどう思う?」
道重は、中澤も安倍も選んだ道を後悔しているのだと気づく。自分もそうだ。
どうにかならないか、いやどうにもならない。進んでしまったから。
少なくとも戻れないように道重は田中と相談してりほを引き取り、中澤は中古の小さな一軒家を買った。
それでも同じ街から動かないのは、何かに期待し続けている証拠でもある。
「重さんち寄ってっていい?」
先ほどよりもさびしそうな笑顔。誰かが安倍を必要とし続けてくれればいいのに。
中澤といながら安倍はさびしかったのだと、道重はようやく気づいた。

 続
60 :道のしっぽ :2012/01/27(金) 02:26
陽は落ち、月と星が紺色の夜空にきらめいている。
安倍が夕飯を作ると言い、買ってきた食材で調理しはじめた。
好意に甘え、りほとお風呂に入ってしまう。
「おねーさんのお料理おいしそうな音がするね」
「なんでそう思うの?」
「だってねー、トントンって音がキレイなの」
れいなも道重も決してうまくはない。だが、ささいなこと一つとっても子どもにもわかるものだ。
道重は味付けが独創的だし、れいなは見た目ばかり気にしていて味は二の次。
一理ある。二人ともリズミカルな音を出したことはない。それでも楽しいから続けられる。

できあがったのはホワイトシチュー。寒い日にはあたたかい料理が一番。
たくさんの野菜とお肉が鍋に浮かんでいる。
口数は少ない。話題も核心に触れることはなかった。子どもが居る手前、出しにくい話題でもある。
れいなが帰ってくる前に、安倍は家に戻ると言い出した。
「寒いからお風呂であたたまってから寝てくださいね」
「うん、ありがと。ごめんね、今日は。突然お邪魔しちゃって」
「いえ……中澤さんにちゃんと伝えたほうがいいですよ」
「ん? 何をかな。どうせ重さんの方が先に裕ちゃんに会うんじゃない? またねっ」
アパートのドアを急に閉めると、大きな音がする。隣から苦情を言われてしまうのではないかと怯える。
いや、一番怯えてるのは安倍だ。道重はそう思う。
61 :道のしっぽ :2012/01/27(金) 02:27
――翌朝。冷え込むとの予報通り、残雪が凍りついている。
アパートから出て行くりほを見届けると、皿洗い、洗濯、掃除とこなしていく。
三人暮らしをはじめてから毎日やっていれば、それなりにできるようになった。
お昼前にはれいなを起こす。そしてお昼ご飯を食べて、ほのぼのと二人だけの時間を過ごす。
「あっ! 昨夜さー、安倍さんが三好ちゃんと一緒に歩いてるの見たんよ」
「……えっ?」
「安倍さんも三好ちゃんもれーなには気づいてなかったっけん、忘れてたっちゃ」
「それ何時ごろのはなし」
「えー、昨日は何時に家に着いたっけー。でもぉ、二十一時は過ぎてたとよ」
二十一時。アパートを出ていた時間。とっくに中澤宅へと、二人の家へとたどりついていい時間。
『どうせ重さんの方が先に裕ちゃんに会うんじゃない?』
安倍の不思議な言葉が、ここにきてしっくりとハマる。家出するつもりでここに来たのか。
いや、あの時はそれでも迷っていたのか。迷いが晴れたからこそ決意したのか。
「あの人、家出でもしたん? なんかぁ、銭湯に三人で入ってくとこだったっちゃ」
「三人?」
「うん、れーなの知らない人」
どれだけ長い間、仕事してるのだろう。先月の月蝕では仲良さそうにしてたのを思い出す。
『いるようでいないから』
ずっとずっと一緒にいても、寂しかったのだ。家出するだけの条件は揃っている。
しかし、中澤から連絡はないままだ。安倍にとっているようでいないもの、中澤にとっても同じなのか。
違うと信じたいが、状況がそうではないことを教えている。
道重の頭には、何度となく安倍の言葉が反復された。

 END.
62 :大雪の話 :2012/02/03(金) 18:32
「大雪のニュース毎日すごいよねぇ新潟大丈夫なのぉ?」
「あー、そうっすねぇ。柏崎もまだ1m近くあるみたいです」
「すっごぉい! 和島は30cmですよぉ」
「新潟県内でそんなに差があるんだねぇ」
「いやいやいや。柏崎は普段、こんなに積もりませんから。むしろ小春のところも積もらないだなって」
「へー。案外積もらないもんなんだね」
「安倍さんってちゃんとニュース見てるんですか?」
「えっ? 見てるよぉ、見てるからこの話題なんでしょ!」

 END.
63 :ドジでノロマなヒヨコです :2012/02/04(土) 15:24
ツアーリハの休憩中。ちょっとした意見の行き違いからか、衣梨奈と里保が喧嘩をはじめた。
かなりうるさいので、十期と上三人、そして香音は少し離れたところで見守っている。
聖は嬉しそうに二人を見つめていた。
「里保もおはガールにしてやろうか? あぁん?」
「ふんだ! そんなのやらなくてもねぇ、仕事があるの」
「まー、里保はー、起きたくても起きられないでしょうからー」
「はぁ? 何言ってんの!?」
「おはガールの仕事なんて無理でしょうけどー」
「かのんちゃーん!」

「……あゆみちゃん、行ってくるわ」
香音が重い腰を上げる。
「いってらっしゃーい」
それでも笑顔で手を振る亜佑美。
「毎日毎日よくやるよねぇ」
ため息混じりの遥。
「九期のみなさんは仲良いいよね」
何を考えているのかわからない優樹。
「今日も平和ですね」
のんびりおっとりの春菜。
「まさに頭の中表現するとこういう感じ? まー、さゆみん頑張りなさいよー」
卒業が決まったニワトリはのんきにしてる。

里保は香音へ一方的に愚痴っているし、衣梨奈は聖に慰められている。
それを眺めてる道重は友情って美しいよね、かわいい、ケータイケータイと呟きながらぼーっとしている。
全てを聞いていた光井は、あかんこれはあかんでぇと決意を新たにした。

 END.
64 :深淵 :2012/02/11(土) 20:12
暗い室内の片隅にあやしい明かり。パソコンのディスプレーが光を放ち続けている。
中澤は、裏で立ち上げてたままの宇宙と海の二つのソフトを見つめた。
小さな画面が横に並ぶ。あれ、と小さな声が漏れた。
カーテンがしまってないことに気づく。真っ暗な部屋に一人。
外も同様に暗い。なぜなら空に太陽はなく月と星がきらめいてるだけだから。
「なっちぃー?」
誰かいるとの前提で、声を出す。どこかにいるなら足音ぐらい聞こえるはずだが、まったくない。
耳の奥が痛くなる、と思うほど無音だった。
腔内につばがたまり、のどを流れていく。ごくん、という音を耳がとらえる。
ここにいるのは自分一人だ。認めたくない感情が心を支配する。
けれど、この状況を告げるようにこめかみのあたりで鈍い痛みが皮膚をつらぬく。
刻一刻と状況が変化する宇宙と海の二つのソフトが中澤を見つめていた。

小さな家の中を探し回ったけれど、やっぱり安倍はいなかった。
どうしたんだろうか。今までにこういう事態はなかった。
携帯には着信も受信メールもない。電話をかけてみたけれど、留守番になってしまう。
坂の途中の喫茶店でおしゃべりでもしているのだろうか。
そんなわけはない。携帯で時間を確認すると二十一時をまわっていたからだ。でも安倍はいない。
もう一つ。メッセージボードには、今夜はシチューにするよ、と書き残されていた。
台所はきれいに片付けられていて、調理をした気配はない。
冷蔵庫の中もきれいに整頓されている。買い物に出かけてから、どこかで遊んでいるのだろうか。
家出? そんな考えも頭に浮かぶ。頭をかけめぐる鈍い痛みで、思考がまとまらない。
なぜか寒気もしてきた。コップに水を入れ、口に流し込む。のどの渇きが少しだけ癒された。
誰か知り合いの家にお邪魔してないだろうか。圭ちゃんの顔が頭に浮かぶ。
独身で面倒見のいい彼女なら、もしかしたら相談の一つや二つ受けてるかもしれない。

65 :深淵 :2012/02/11(土) 20:12
圭ちゃんともつながらない。忙しいだけなのかもしれない。
この時期は確定申告があるからなにかと外出する用事が重なる。
それに真冬でもある。そういえば、テレビのニュースではしきりと全国的な豪雪を報じていた。
関東地方は寒くて乾燥も厳しいと、何度もアナウンサーが危険を呼びかけていた。
そうだ、寒い。暖房がついてない。はっくしゅん。小さなくしゃみが一つ。
鼻の奥がくすぐられている。大きなくしゃみが三つも続いた。
風邪でもひいたんかな。つぶやきが一つ。どこかの誰かが咳をしても一人、と詠ったことを思い出す。
突然、道重の声が聞きたくなった。用件は安倍の行方。情報なんかなくても話ができれば安心できる。
今度はつながるといいな。その願いは叶えられた。道重はワンコールもしないうちに出てくれた。
「もしもし、重ちゃん?」
「……安倍さんのことですよね」
「ああ、うん。なっち、そっちにおるんか?」
「いえ……夕飯は一緒に食べたんですけど」
「おらんのか?」
「でも、れいなが帰り道に安倍さんが三好さんともう一人と一緒に歩いてたのを見たんです」
「……三好?」
聞いたことがある苗字だ。圭ちゃんの恋人。
「れいなに聞いたら三好絵梨香という方だそうです」
なんや、圭ちゃんのところにおったんやないか。心の中で圭ちゃんに文句を言う。
不思議と頭痛がひいてきて、穏やかな気持ちで会話をしていた。
「銭湯に行く途中だったようで」
ひどい眠気が中澤を襲う。
「ありがと、なっち家出したんやな」
「中澤さん」
「なんや」
返事をしたつもりだった。道重が何度も自分を呼びかける声が聞こえるが、口を動かすのもめんどくさい。
体が、ゆっくりと床に沈んでいくように感じる。力が入らないまま、夢の世界へと旅立つ。

 END.
66 :うえ に ある :2012/02/16(木) 02:17
体が鉛のように重い。
中澤がまぶたを上げ体も起こそうとすると、思うように力が入らないことに気づく。
筋肉や関節が悲鳴をあげている。
「……っち?」
喉が腫れているのか声も出しにくい。
右の人差し指を動かすと、硬くて冷たい物を握っているようだとわかる。携帯電話だ。
こん、こんこん。咳が出る。そして、うすぼんやりと思い出す。
道重の声、風邪なのか体がだるいこと、なっちが家にいないこと。
こめかみがズキンズキンと痛み出し、背筋にゾクゾクと悪寒が走る。
中澤は畳の上に横たわり、布団もかぶっていなかった。
「さむっ」
まだカーディガンをはおっていたから、よかった。体をゆっくりと起こし、携帯電話で時間を確認する。
午前三時。そりゃあ寒いに決まってる。この時期、寒さで目覚めたといっても過言ではない。
携帯電話を開いて確認する。安倍からの着信やメールがあるのではというかすかな期待。
けれど、安倍どころか保田からも道重からも何もなかった。
ためいきをつこうとすると、咳が出る。こんこんこん。止まってから動き始める。

コップに水道水を入れてから、薬箱を探す。
「たしか、この辺にあったはずや」
リビングにある低めのチェストにそれはあった。体温計も風邪薬も入っている。
「これやこれ!」
風邪薬を胃に流し込むと、体温計を脇にはさむ。鳴るまでの時間を長く感じる。
ぐぅーっとお腹が鳴った。中澤はお昼から何も食べてないことを思い出した。
ちょうどよく体温計もピピピと報せてくれる。三十八度ちょうど。
熱が下がらなかったら病院行き。今までだったら安倍が看病してくれた。
カップラーメンの一つや二つあるだろうと推測し、台所の棚を探る。
ない。お菓子もない。冷凍食品もない。なんでや、と愚痴った。
67 :うえ に ある :2012/02/16(木) 02:17
道重が感じていたこと。それは安倍の味付けだった。薄いわけではない。
現にりほもおいしいとおかわりして食べていた。安倍自身は味が薄いかもしれないと気にしていたが。
「明日になれば、もっとおいしくなるよ〜」
そう言って微笑んだ表情はとても悪魔の笑顔とはかけ離れていた。
朝、りほを起こしシチューの鍋に火をかける。こんなに作ったのに、手際がよかったなと道重は思い出す。
炊きたてのご飯をよそい、少し深めの皿にシチューを盛る。
着替えの終わったりほが箸やコップをとりにきた。道重はお盆に二つずつご飯茶碗と皿を乗せた。
「おいしくなってるかなぁ」
「きっとおいしくなってるよ」
「うんっ!」
いただきますと二人で手を合わせてから、食べ始める。
「すっごく甘い!」
シチューから食べたりほはスプーンを何度も口に運ぶ。
「ほんと?」
道重も食べてみると、野菜がシチューに溶け甘さが増しているのがわかる。
「おいしー!」
こんなにおいしいものを中澤は食べていたのか。でも普通だと思って何も言わなかったんだろう。
そういうことが想像できた。確かに中澤にとって安倍は必要な存在なのかもしれない。
でも、その関係になんという名前をつけていいものか道重はわからなかった。

 END.
68 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:56
冬という季節は太陽の出ている時間が短い。一般的には昼よりも夜が長い。
それでも冬至はとっくに過ぎているから、日が落ちる時間は遅い。
ついこの間までおやつタイムのあとは、暮れる夕焼けが窓の外に見えていた。
が、最近は午後五時を過ぎてもまだ明るい。
69 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:56
 
70 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:56
白く薄いカーテンだけ閉めると、やはり部屋は暗く感じる。
ぼんやりとした明るさに、少しずつ目が慣れてくる。
彼女の体にそっと手を伸ばした。桃色の肌が妙に艶かしく見える。
肩に自分の顎を乗せると、ぬくもりが伝わってくるような気がした。
「んふふ」
鼻歌のような彼女の笑い方が好き。
「どうしたんですか?」
「……なんでもない」
そう答えるのが精一杯だった。
そのまま後ろからゆっくりと両腕をまわし、静かに抱きしめた。
「今日のゆうこりんはどうしちゃったんですか」
71 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:56
 
72 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:56
   (あったかい)
73 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:57
 
74 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:57
もし、彼女との関係が世間にバレたら、二人とも芸能界を追放されることはわかりきっていた。
仕事ができることの幸せ、好きな仕事をできることの幸せ、収入を得る幸せ。
彼女と無理なく一緒にいられる幸せ。
それ以上のことは望んではいけない。望みを叶えようとしたら、破滅が待っているから。
75 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:57
 
76 :春はまだ先に :2012/02/20(月) 17:57
仲の良さを隠すため、人間関係の質問には「誰とも仲良くない、誰とも話したくない」と答える。
彼女に対しても誰に対しても同じ答え。
見せたくない、弱いあたしをテレビでは見せたくない。
違う。
見せたい相手は決まってるから、それ以外の人にはバラしたくない。
本当の自分はこうなのだと、知られたくない。
あたしは、モーニング娘。初代リーダー中澤裕子でいたい。

 END.
77 :愛されパターン :2012/02/22(水) 22:03
「お人形さんみたい」
幼いころからよくそう言われた。どんな人も優しく接してくれる。
そんなことないよ、私、みんなと同じ人間だよ。文句を言ったけど、やっぱりみんなとは距離がある。
ハロー!プロジェクト・キッズオーディションに合格したあとは特にひどくなった。
「そんなことないよ人間だよ、とか言ってたのにね〜」
友達だと思ってた子の笑い声が学校の廊下に響く。
何もしてないのに、いつも周りが変わっていくの。……私は私のままなのに。

会社に行けば仲間に会えた。ホッとする時間。
でもレッスンは想像以上に大変。きついしつらいし。でも、やめたくない。
モーニング娘。になれるかも! って思えばなんでも頑張れた。
私が合格して半年。モーニング娘。6期オーディションの開催。
どんな人が応募してどんな人が受かるんだろう、って興味津々で見てたの覚えてる。
嬉しかったのに、どこか冷めていた。この仲間以外に誰が必要なの。

化粧を覚えた。駆け足で大人の階段をのぼる。
誰も止めてはくれない。立ち止まったり休憩したりすれば別だけど。
どんなにニキビができても、化粧なら隠せるのが面白かった。
Berryz工房ができて、仲間の半分とは一緒に居られなくなった。すこしだけ、さびしい。
会社で会えば、いつもと同じようにしゃべって笑いあう。
でも、やっぱりさびしい、と思った。どうしてだろう。
78 :愛されパターン :2012/02/22(水) 22:03
 
79 :愛されパターン :2012/02/22(水) 22:03
夏と冬の年2回あるハロープロジェクトのコンサートでいつも話しかけてくれる道重さん。
モーニング娘。6期メンバー。
いつも「かわいい」って言ってくれる。優しく接してくれる。
だから、怖かったの。いつか私を捨ててしまうんじゃないかって。
少しずつ化粧が濃くなっていく。肌荒れがひどくなれば、よけいに化粧も濃くなってしまう。
私、こんなに子供だったっけ? 高校生にもなって?
今まで全力疾走してきた。けして振り返らなかったし立ち止まらなかったし休憩してこなかった
そんな時間はなかったから。走ってればいつか夢をつかめるって信じてきたから。
道重さんはバラエティ番組に出演し始めて、忙しくなった。
それでもたまにメールくれて、コンサートで会えば声をかけてくれる。
道重さんは変わらなかった。でも、気づいてたの。私と接するときも他の誰かと接するときも同じだって。
私だけが特別じゃない。どこか感じてた距離。きっとこれなんだ。また、化粧が濃くなった。
80 :愛されパターン :2012/02/22(水) 22:03
 
81 :愛されパターン :2012/02/22(水) 22:03
道重さんがコンサートのステージで発した言葉。
「私の中では菅谷梨沙子ちゃんは殿堂入り。だからどんなメイクしてても注意しないであげて欲しいの」
願ってたことなのに、なぜかさびしい。冷たいって思う。

桃が道重さんに続いてテレビに呼ばれるようになった。
会社もチラシなんか用意して配ったみたい。これはあとで桃から聞かされた話。
「かわいいのにどうしてそんな濃い化粧をするの」モーニング娘。の先輩たちの声を思い出す。
私は人間だよ、人間だから化粧するんだよ。言いたいことを我慢して、孤独になるのを怖がってた。
周りの人の声はずっと変わってない。変わったのは私。
歌い方、立ち振る舞い、表情の作り方、声、身長、体重、そしてお化粧。

このままじゃダメ、このままでいい。0か1しか考えられなくなっていた。
0から1になるために、大変な努力をしてきたじゃない。
化粧をほんのすこし薄くしてみる。鏡の中の自分がいつもと違うように感じる。
すこしだけ、ありのままの私を愛してみようと思えた。
そうすれば、きっとさびしさも乗り越えられる。

 END.
82 :さゆみは乙女なの :2012/02/24(金) 19:53
 さゆみはいつものように真性野放しスレを眺めている。たまに書き込むこともあった。最近は釣ったり仕事したりで忙しく、時間がない。これだけ他人に面白いと思ってもらえる文章を書けるのだから、気分がいい。性格は悪い、とは自覚していた。カメラのレンズを通して人間観察する。心地よい時間。盗撮じゃないの、あとで表情を見るためなの。確認するためなの。カメラ目線なんていらないの。視線があるってことは作ってる表情なの、そんなのいらないの。そんなの見たいと思わないの。心の中で一人愚痴る。自分では面白いことを言ってる自覚はない。こう言われたら嫌というような相手の情報を調べるだけだ。思ってることと反対のことを言うだけ。簡単なこと。言い訳するぐらいなら努力するさゆみは性格いい、そのまま言ったら面白くない。面白い文章を発表しようと思うなんてある意味変態なの。みんなそれに気づいただけなのに認めたくないんだろう。さゆみを変態扱いして楽しんでるんだろう。スレ住人と一緒に楽しみたいが、写真を撮ったりブログ更新したり仕事したりで忙しい。今回の春ツアー中に二回も武道館がある。リハーサルは入念に行う。まだ体力筋力が整ってないメンバーもいる。さゆみも大変だったと思い出した。大好きな先輩がいる。けれど踏み込みたくないと思うのは、さゆみが邪な好意を持っているから。プライベートも忙しいんだろうと勝手に決めつけて行動を起こさせないようにしている。オーディションに受かってよかったのだろうか。もしかしたらテレビの前で応援し続けたほうがよかったのかもしれない。こんな思いをするぐらいなら、絶対に手の届かない存在として見つめ続けていたほうがよかったのかもしれない。そんなさゆみんの隣で私は本音を聞いてみたい。
83 :僕は彼女の幸福を知りたい :2012/02/24(金) 23:52
 僕が公園に着いたとき、中澤さんは隅のベンチにぼんやりと座っていた。冷たく暗い夜空に、小さくて白い月が浮かんでいる。「裕子さん」「待ったで」「すみません」視線が下に動く、座れといわれているようだ。密着しない程度に近づいて腰を下ろす。木が冷たかった。こんな場所でずっと待っていてくれたのだと思うと、目から汗が流れそうになる。中澤さんはピタッとした白いシャツにかっちりとした黒いジャケットを着ている。白いシャツが肌の色に似合うと思った。そそられる。「話ってなんや」呼び出したのは僕だった。すっかり忘れていた。「質問があるんです」「ふーん」僕のことはもう見ていない。「裕子さんは胸板のしっかりした男性と巨乳の女性、どちらが好きですか」「その質問なんやの」「いいから答えてください」「どうせわかっとんのやろ」やっぱり、と思った。それでも僕は一縷の望みにかけたかった。「重ちゃんはそうでもないで」「そんなことは聞いていません」明らかにムッとした、その横顔がかわいいと思った。でも言わない、教えてあげない。「あんなぁ、あの子の気持ちそっとしてあげて欲しいねん」「裕子さんはどうするんですか」「何かすることあるんか」ない、と思った。してあげられることは何もない。それでも僕は中澤さんの幸福を知りたい。
84 :僕は道重さんを知りたい :2012/02/25(土) 01:54
 公園から自転車に乗って帰ってきた。自宅に戻ったのは、中澤さんを途中まで送った零時過ぎ。誰もいない、と思った自転車置き場に黒髪の少女がいる。少女だと思ったが、よく見ると童顔の成人女性だ。化粧をしている。薄暗い電灯の下、薄紅色のグロスがキラキラと光を発しているように見えて、思わず目をそらしたくなった。「あなたですか」「は?」「中澤さんの男って」「違いますよ」男なんているはずないじゃないか。イライラする。幼い思考のまま成人した女性と話すのはつらいものだ。しかし夜も更けて帰りが遅くなったら、誰かにこの子が襲われてしまうかもしれない。ここは冷静に送り届けよう。それが紳士というものだ。「君、家どこなの。時間遅いし近くまで送るよ」「大丈夫です」「そう言われても心配だよ」「大丈夫ですったら!」「名前も教えてくれない人にそんなふうに拒否られるのは心外だ」ハッと目を開くと「ごめんなさい」と素直に謝ってくれた。案外いい人なのかもしれない。「すみません、突然話しかけたのはこちらなのに」うん、ちょっと勢いでここまできただけなのかもしれない。「私、道重といいます」「えっ」「えっ?」「ああ、いや」そうか、この子か。「今日は遅いから帰ったほうがいい。今度はちゃんど太陽が空にある時間に」「そうですね、何やってんだろ私」「恋してる女性は何をしでかすかわからないと昔から言われてるし」「そうなんですか?」「そうだね、結婚した男はよくそういうことを言うね」笑った、二人して笑った。僕は道重さんの気持ちを知りたいと思った。
85 :定期目次 :2012/02/25(土) 01:59
お米の話(ゆゆマコ)>>2 おなじきもち(ゆゆこは)>>5 スイートルーム(やすみよ)>>7-8 radar>>11-14 
坂で逢いましょう>>17-19 「いっしょに月をみよう」(やすみよ)>>20-21 おひとりさま(ゆゆあや)>>22-24 
恋愛革命2011>>25 論考『娘。小説とはなにか』――自分へのいましめ>>26-28 
見えない影(坂で逢いましょうの続き)>>29-32 月のさびしさ(ゆうちょ)>>34 
Cat and Chocolate(ゆゆさゆエロ)>>35-41 のりあう>>42 生き長らえる橋>>43 
カンジんなしごと(なかよし)>>44 憧憬(りかみき)>>45-47 プロポーズ大作戦(やすみよ)>>48-49 
賽は投げられた>>50 ゆるい放物線を描く(℃)>>51-52 須藤茉麻が痩せた理由>>53
夢みるあたし(憧憬の続き)>>54 道のしっぽ(見えない影の続き)>>57-61 大雪の話>>62
ドジでノロマなヒヨコです>>63 深淵(道のしっぽの続き)>>64-65 うえ に ある(深淵の続き)>>66-67
春はまだ先に>>68-76 愛されパターン>>77-81 さゆみは乙女なの>>82 僕は彼女の幸福を知りたい>>83
僕は道重さんを知りたい>>84
86 :僕はこの場の平和を願わずにはいられない :2012/02/27(月) 19:00
 目が覚めてからすぐに携帯電話を手に取り時間を確認する。午後一時か、寝すぎた。昨夜は色々あったから疲れたのだろう。中澤さんから聞く彼女の呼び方は何通りかあって、重ちゃん、さゆ、さゆみちゃん、道重さん、これらが同じ人物を指していると気づくのにだいぶ時間がかかった。炊飯器には昨日の残りご飯が二人前あった。いや、外にラーメンでも食べに行きたい。カップラーメンも買いにいかなきゃいけない。
 どんよりとした雲が空を覆っている。昼間とは思えない暗さだ。自転車に乗り、駅近くまで出る。ご飯を食べたら久しぶりに古本屋に行ってみよう。予備校の裏にとめ、近くのラーメン屋に入ろうとする。おや、あれは昨日ぶりな道重さんじゃないか。隣に同い年ぐらいの茶髪の女の子もいる。どうせ彼氏がいるんだろうな、やれやれと思いながらラーメン屋の暖簾に手をかけた。「あ! 昨日のお兄さん!」僕は女だ。まあよい、よく男と間違われる風貌だし服装もそうだし、声も低い。ここは男のフリをしてナンパするのもいいかもしれないと近づいていく。「さゆー、この人女性じゃないの?」「いやいや、えり何言ってんの」「いやいや、さゆこそ何言ってんの」「僕は女です」「ほらぁ、さゆが間違ってんじゃん、むふっ」変な笑い方をする女の子だと思った。中澤さんの周りにいる女の子は変な子ばかりだ、保田と三好とか石川と吉澤とか。「君たち、ケーキ食べたくないか?」「はい!」「食べるー」彼女たちのキラキラした瞳と笑顔に騙されてつい「おごるよ?」と言ってしまったので、近くのファミレスへ向かうことにする。
87 :僕はこの場の平和を願わずにはいられない :2012/02/27(月) 19:00
 席に案内されて座ると二人ともぶつぶつ文句を言っていたようだが注文時には「さゆみはレアチーズケーキ」「えりはショートケーキ」「あ、二つともセットでお願いします」元気になっていた。「二人ともミルクティーで」「それときのこのクリームスパゲッティー」店員は注文を繰り返すと、少々お待ちくださいと言って店の奥に消えた。「お兄さん、じゃなくてお姉さんだったんですね」「そうだね」「すみません」「君の人生にそんなに重要なことだったかな」「どっちでもかっこいいです」「あの、この子は親友で」「あはー、亀井っていいますぅー」「さゆとえり?」「はい。中澤さんのことも知ってます」「えー、なんか進展あったの」注文したケーキセットとスパゲティーがきた。皿と皿がぶつかり、ショートケーキの一部がテーブルの上に倒れた。あっ、と言う暇もなく手で支えようとしたが、倒れる方が早くケーキの上に僕の手がむにゅっとのめりこむ。最低だ、僕。僕って最低だ。白いクリームがなんともいえない。指にべっとりとついた白い生クリーム。これを二人が見ている前で拭き取らなきゃいけないなんて、恥ずかしくて死んでしまいそうだ。「あーあ、いけないんだぁ」絵里は笑いながら僕を責める。僕はこの場の平和を願わずにはいられない。
88 :春空を待つダ・カーポ :2012/02/27(月) 20:27
ふと思い出して、よっすぃ〜から貰ったCDのビニールテープを外した。
あたしが買ったCDのも同じように。それで、一枚をノートパソコンにセットする。
この間、先輩の保田さんが教えてくれたパソコンで音楽を聴く方法その一。
歌詞カードを手にとって、ベッドにごろんと横になった。
小さな音楽が聞こえてくる。もう少し音量あげようかな。
怖いんだ。彼女の声が聴こえることへの恐怖。
小さなメロディにのせて、小さな彼女の声が聞こえてくる。
ハッとするような、優しい声。
耳の奥に蘇る、彼女との会話、記憶していた彼女の顔、表情、行動。
高音が優しく頭に響く。
だれかが紡ぐあいのうた、だれかが描くあいのうた、だれかが抱きしめるあいのうた。
そして、今あたしが聴くあいのうた。彼女が歌うあいのうた。
イキイキと動き出す記憶の中の彼女。
それだけじゃなかった、あたしの感情がゆるやかに動き出していくのも感じられる。

――重なり合わなくても孤独じゃない、と知った。

東京で見る星も、ふるさとで見る星も同じだと教えてくれた。
そんな歌詞が、心をじんわりとあたためていくように感じる。
いつのまにか胸の奥底まで音もことばもあたしに沁みていた。

 END.
89 :みおん :2012/02/27(月) 20:30
りかみき(たぶん) 憧憬>>45-47 夢みるあたし>>54 春空を待つダ・カーポ>>88
90 :聖・少女領域 :2012/03/03(土) 17:47
二限目の講義が終わると、二号館の脇をすっと入って図書館脇も通って七号館へ行く。
たまに少人数講義が行われる程度で、小さなサークルのたまり場にもなっている。
でも、ほとんどの学生はこの場所に来ることはない。
さゆみは、階段で三階まであがるとトイレに入り、奥から二番目の個室をノックする。
トントントン。
三回ノックしてまた二回、トントン。
ゆっくりと扉が内側から開く。
「待ってました、道重先輩」
ふたのしまった洋式トイレに座る後輩、譜久村聖ちゃん。
未成年なのに、白い肌とほどよい太さの体が悩ましい。
「お昼ご飯、食べましょう?」
さゆみはこくりと頷くと、彼女に抱きついた。
「フクちゃんの肌、気持ちいい」
「先輩のお肌もおいしいです」
そういうと、いつものようにさゆみの首筋を舐める。
あ、と小さく声が出て身体中に電気が走ったようにビリビリする。
後輩の顔を見ると、真っ赤な舌がふっくらした下唇の端から端へゆっくりと動く。
舌が這うと、濡れて桃色が際立った。
あまりにもおいしそうだから、さゆみの唇を柔らかくおしつける。
隙間から少しだけ舌を出すと、ちろちろと後輩のを舐める。
91 :聖・少女領域 :2012/03/03(土) 17:47
「……あまい」
「みずき、先輩が来るまでアメを舐めてたので」
ふふっ、と笑う。
「欲しいですか」
ジーンズのポケットから飴玉をひとつ取り出すと、自分の口に入れた。
と、さゆみの首をなでおろしてから手を置くとキスをするように唇を押しつける。
器用に口から口へと飴玉を押し込まれた。
「こうするとみずきの味もわかりますよね」
「……うん」
92 :聖・少女領域 :2012/03/03(土) 17:47
「あまり長居すると本当のお昼ご飯、食べ損ねますよ」
「ううん、たぶん食堂空くからちょうどいいと思う」
「じゃ、先輩また」
「またね」
後輩は優しく微笑む。さゆみも微笑んでドアを閉めると、中からガチャっと鍵をかける音がした。

食べたのはどっち? 
……食べられたのはどっち?

空しい疑問は頭痛の種になるだけ。
トイレから出ようとすると、長い黒髪の女子学生とすれ違った。
次の客がいるのね。
ほどなくトントントンと三回ノックし、またトントンと二回ノックする音が小さく聞こえた。
さゆみは振り返らない。

 END.
93 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:40
1997年11月30日。
インディーズ『愛の種』を手売りで5万枚達成した日。


中学生1人に高校生2人。
大人になろうとする私。裕ちゃんの隣りなら心地よい、と気づいた。

同じホテルで暮らしてるから、プライベートのことも話しやすい。
年頃の女性2人が話すことといったら、やっぱり恋愛っしょ。
ふとした仕草や会話の内容から、彼女が同性に恋したことあるかもと思った。
私が同性と付き合ったことあるからなのかもしれないけど。
異性に対しては妙に世間知らずなのに、同性に対してはやけに詳しい。
でも、間違ってたら嫌だから言い出しにくい。私が追求されるのも怖いし。
慣れない関西弁で怒られたら、怖くて話せなくなるかも。
94 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:40

95 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:40

「なぁ、知っとるか?」
「何を?」
96 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:40

97 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:41

いつの間にか私たちはプライベートではタメ語になっていた。

「ちゃんと仕事できるんやから、こういうときぐらい普通に話そうや」

裕ちゃんがこう言ってくれたとき、すごく嬉しかったのを覚えてる。
さびしいんやもん、なんて甘えてくれて可愛かった。
男性スタッフには絶対甘える仕草とか声とか出さないのに。
楽屋ではなっちに甘えたり、仕事以外の場でも私に甘えたり、不思議な人。
だから、もしかしたら、って考えが頭の中ぐるぐるしてた。
98 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:41

99 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:41

「あんな、うちら2人で一緒にいると付きおうてるみたいに見えるらしいんよ」
「えっ」
「あ、こういう話、気持ち悪かったらごめんな、先に言うとけばよかった」
「いや、全然大丈夫。私、女の子と付き合ったことあるし……」
「え、そうなん? ウチも、まぁ、な……で、なんや事務所が変な噂、立てられんうちに」
100 :真夜中の電話 :2012/03/08(木) 16:42

恥ずかしがってなかなか視線を合わせないまま、喋り続ける裕ちゃんを見る。
可愛いなぁ。ほんと可愛いなぁ。

「話、聞いとるん?」
「あー、裕ちゃんって可愛いなぁ」
「……アホッ!」

顔真っ赤にして、裕ちゃんはその場を立ち去った。
悪いことしちゃったなぁ。
3日後、私たちはホテルを後にし、事務所が用意した別々のマンションへと移り住んだ。

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