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熊井チャンネル

1 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 23:40
「基本に忠実」が合言葉です。

短編。

登場人物は、キッズ、スマイレージが主です。
何卒よろしくお願いいたします。
522 :あなたのためにできること :2015/07/25(土) 00:53

 自由ってなんだろう。10歳も年の離れた子と一緒にアイドルグループとして新たにデビューしてそんなことを初めて考えた。
 Berryz工房の時は自由だった気がする。何かあれば、茉麻がフォローしてくれた。分からなくなったら佐紀ちゃんに聞けばよかった。どうオチを付けて欲しいか説明しなくてもみやが突っ込みを入れてくれたし、困った時はくまいちょーか梨沙子に振れば場を繋ぐことができた。千奈美とは何も考えずにファンの人たちの前でもケンカをしていたし。今思えば、あれが自由だったのかもしれない。

 カントリー・ガールズのセカンドシングル発売が決定した。レコーディングも終え、ダンスレッスンも終えた。これからはプロモーション期間に入り、夏のハロー!プロジェクトコンサートの合間にカントリーの単独ツアーと発売イベントをこなしていく。
 今回の新曲も、ストーリー性の高いもので私にも重要な役が与えられた。少年少女の恋物語の舞台となる学校へ住み着いたおばあちゃん役だ。やってやれないことはない。しかし手応えがイマイチ分からない。分からない時に頼るのは佐紀ちゃんと決まっていた。

 「佐紀ちゃん、どう思う? 」
 ハロー!のコンサートのゲネプロの時にアドバイザーズの一人である元Berryz工房キャプテンの清水佐紀ちゃんに率直な感想を尋ねた。
 「もも、演技上手くなったね」
 満面の笑みで佐紀ちゃんは答えてくれた。褒められれば嬉しくて浮かれそうになったけどそうじゃない。コンサートを見に来てくれた人たちへどんな影響があるのか聞きたかった。
 「良かった? 悪かった? 」
 悪影響があれば、本番までに修正したかった。
 「よかったよー。みんなかわいかったー」
 昭和時代の怪しいプロデューサーみたいなコメントを貰って、疑いたくなるのは自信のない証拠なのだろうか。佐紀ちゃんなら本当のことを言ってくれると信じていた。悪かったら悪いって言ってくれるだろうし。間違っていたら間違っているって教えてくれる。と、思うのに。最近はどうも様子がおかしい。
 褒めちぎるのだ。嘘を言っているとも思えないけれど。褒められ慣れていない所為で調子が狂って仕方がなかった。

 「良かったって言ってるのに」
 不満そうな私の様子を察してか、佐紀ちゃんは呆れたように笑っていた。
 大きいスタジオでゲネプロを行ったけれど、たくさんの人数が集まると居場所を確保するのもままならない。学校の体育館で全校集会が行われた後、みたいにスタジオ内はざわめいていた。
 今までは気が付いたら、Berryz工房7人で固まって何をするでもないけれど待ち時間を過ごしていたっけ。
 「お正月の時よりは、やりやすくなったかな」
 「うん、見てて分かるよ」
 スタッフ用に用意された長机とパイプ椅子に衣装のまま腰を掛けた。佐紀ちゃんはTシャツにジーンズ姿で他のスタッフさんと同じようにスタッフパスを首から提げていた。いたずらをしてストラップを引っ張ってみたけど相手の反応は鈍かった。

 
523 :あなたのためにできること :2015/07/25(土) 00:53

 「ももがカントリーの子たちを信頼してるんだなっていうのがなんか伝わってくる」
 「ふーん」
 見る人が見ると、そう映って見えるんだ。
 「ベリーズの時は自由だったなぁってやっと分かってきた」
 私が言うと、佐紀ちゃんが鋭い視線をこちらに向けた。
 「お蔭で大変だったんだからね」
 あははって笑ってごまかそうとした。高笑いもむなしく、不覚にも溜息が出てしまった。
 キャプテンの苦労はなんとなく想像していた。私だけではなくマイペースなメンバーが揃っていたBerryz工房と大人たちの橋渡し役はさぞ大変だったろう。それを一人で10年以上背負ってきたプレッシャーはきっとまだ私にも分からない。

 「でも、それがももの味だから」
 呟いた佐紀ちゃんの素っ気無い表情の横顔を見つめていた。
 あれ? これは「ハロー!プロジェクト・アドバイザー」様からのアドバイスなのだろうか。メンバーの誰かから視線を貰ったらしく、表情を崩して軽く手を振ったりしている。
 「ももが緊張してるっぽい時は、他のカントリーの子も余計緊張してるみたいだし」
 ももが楽しそうな時は、他の子もリラックスして歌ってるよ。
 
 緊張は滅多にしていないと自覚していた。心配することがなかったから。なんとかなるって根拠なく思っていた。新しいグループ活動を通してして少し分かったのは、みんなだから大丈夫って無自覚に思っていたんだということ。Berryz工房の7人がいればなんとかなってきた経験が自信になっていた。
 新人の子を大丈夫だって思い込もうとしても、当たり前だけど今までとは違う。失敗してしまったり、私がミスをしてしまったり。落ち込んでないかな、とか。出来るようになったかな、とか。私でも心配することが知らず知らずに増えていた。

 「今年の夏もエンジョイしますよ」
 「負けるな嗣永桃子」
 佐紀ちゃんは私の肩を掴んでぐらぐら揺らしてきた。ゲネプロ終えた疲れた体にはちょっと堪えたけれど、アイドルはファンの人たちが帰宅しおやすみなさいをして夢の中に出てきてもアイドルでいなきゃならない。だからこそ、ゆっくり休むことは大切。「重い」と嫌がる佐紀ちゃんの肩にもたれて目を閉じ、私は暫く休憩することにした。

 
524 :_ :2015/07/25(土) 00:54



 
525 :_ :2015/07/25(土) 00:54



 
526 :寺井 :2015/07/25(土) 00:59
以上です。


キャプテンって偉大だなって思います。ももちはももちなのよ!
527 :寺井 :2015/08/03(月) 23:50
更新しまーす
熊井さん視点。
Berryz工房です。
熊井友理奈さん、お誕生日おめでとうございます!!
528 :Overlap :2015/08/03(月) 23:51

 ◇ ◇ ◇


 
529 :Overlap :2015/08/03(月) 23:51

 まるで、毎年こんな風に過ごしていたみたいに何もない夏がすんなりと馴染んでいた。
 去年までは夏休みになる前からコンサートのリハーサルをしていて、気が付くと夏が終わっている。学校の始業式もおぼろげな記憶しか残っていないし。始業式の前は宿題を終わらせるのに必死で夏と言えば焦る気持ちがいまだに心のどこかでひっかかっている。
 リハーサルに追われることなく、舞台の稽古に苦戦することもなくのびのびと毎日過ごしていると、本当に、まだ2、3cm身長が伸びるかもしれない、と真剣に思った。

 
530 :Overlap :2015/08/03(月) 23:51

 * * *


 
531 :Overlap :2015/08/03(月) 23:52

 『ちょっと、熊井ちゃん! 』
 いつだったか忘れたけれど、キャプテンから突然怒られたことを思い出した。
 『私の身長返してよ』
 私はいつものようにキャプテンを20cm以上の高さから見おろしていた。怒られているのに、しょんぼりとした態度が出しにくくて困る。
 『勝手に佐紀から身長取らないでよー』
 と、胸を張って、背伸びをして顎をこちらに向けるように私を睨んでいた。
 背伸びだけじゃ足りずに、ジャンプもしていた。それでも目線は私に届かず、私の腕を支えにして更に飛び上がってきた。キャプテンは身軽だ。運動神経が良くて羨ましい。
 『ダメだ、届かない』
 頑張って、ジャンプを続けていたけれど息切れをし出したキャプテンが私におんぶをせがんできた。確か、イベント前の待ち時間だったと思う。衣装も着て、メイクもばっちり済ませていた。形が崩れてしまうからおんぶすることを少し躊躇ったのだけど。運動神経の良さでキャプテンはするりと私の背中に乗ってしまった。

 
532 :Overlap :2015/08/03(月) 23:52

 『かっる』
 背中に乗ったキャプテンがとても軽かった感じは今でも覚えている。
 『たっか』
 キャプテンは驚いた声を出していた。
 『熊井ちゃんこんな風にお客さん見下ろしてるんだね』
 せっかくなので、キャプテンをおんぶしたままあちこち移動してみた。廊下へ出て、スタッフさんとすれ違ったり、自動販売機と背比べをしてみたり。キャプテンが楽しそうにしてくれたのでおんぶしてよかったな、と思った。
 『会場の上の方の人も、近くに見えるよ』
 お客さんには気が付かれない、ぎりぎりの場所から開演前の会場の様子を見ていた。
 『そこはあんま変わんないでしょ』
 キャプテンは冷静にツッコミを入れたけれど、私は本気でお客さんとの距離が誰より近いと感じていた。
 
 
533 :Overlap :2015/08/03(月) 23:53
 
 遊び疲れたのでそのまま楽屋へ戻ると。
 『ちょっと、私の身長取ったでしょ』
 今度はみやが言い出した。
 『ちょっとはいいよって言っただけなんだけど』
 『私も取られた』
 『私も』
 みやは普段身長で困っているようには見えなかったし。千奈美と茉麻はどちらかと言えば大きい方のはずだ。
 『私は、自分らくまいちょーにあげたんだよね』
 『は?!』
 ももの、上から目線の発言にみや、千奈美、茉麻が一斉にそちらを見た。息がぴったりだったからちょっと面白かった。
 『やっぱり、アイドルっていってもかわいいだけじゃ今の時代厳しいと思うんだ』
 みんなかわいいよ、千奈美も茉麻も、もちろんみやも。みんなかわいいけど、やっぱりももが一番かわいいじゃん。と、ももが言い出したところで三人は集中力を切らしてしまったようだ。
 ももに飽きた三人が私にむかって、身長を返せと取り囲んできた。
 『ほら最後まで、聞きなさい。聞いてください。お願いします』
 そこへももが割って入ってくるからキャプテンを背中から降ろすタイミングを見失ってしまった。
 『Berryz工房から、一人くらいスーパーモデルがいてもいいじゃんって思わない? 』
 歌って、踊れるスーパーモデルなんて、日本にはまだいないよ、とももがドヤ顔で発言していた。
 『だから、ももはくまいちょーに断腸の思いで身長を託したの』
 かわいさだけは譲れなかったらしい。誰もそこまで話を聞いていなかった。かわいさにも種類があるし、ももからかわいさをあげる、と譲られても受け取るか迷ってしまうのが私の本音だと思った。

 
534 :Overlap :2015/08/03(月) 23:53

 『なんかごめんね、みんなの身長とっちゃって』
 私が謝ると、キャプテンが背中で笑っていた。とても軽かったのでおんぶしていることを一瞬忘れていた。
 『そうだね』
 みやが突然何かに賛同した。
 『やっぱり、一人くらいはスーパーモデルがいないと、お笑い芸人がいるアイドルグループって思われたら癪だし』
 『芸人? 芸人? 』
 誰、誰、とももがわざとらしくきょろきょろ辺りを探していた。
 『千奈美、熊井ちゃんに身長あげる!』
 『みやもあげる』
 『まあも』
 『ありがとう。でももういいよ、これ以上いらないよ』
 『熊井ちゃーん』
 キャプテンがまた、背中で笑っていた。身長を、返してあげられるものなら返してあげたい気持ちだった。キャプテンなんて、ホントにちっちゃくて細くて女の子ーって感じがとても羨ましいといつも思っていた。衣装もかわいらしいものが似合うし、一番年上でも若く見られるし。私とは正反対だ。
 『キャプテン私と代わって』
 私も熊井ちゃんにおんぶして欲しい。
 ヘアメイクを終えたばかりの梨沙子が手を挙げていた。
 『順番だよ、順番。千奈美が次だって』
 おんぶしてあげる、なんて誰も許可していない。
 『はーい。ぶっぶー。重量制限がありまーす』
 ももが梨沙子の次に並ぼうとしたらみやが突然、仕切りだした。
 私はおんぶすると、一切言っていない。
 ぽんぽん、と肩を叩かれキャプテンが自分を降ろすよう私に合図を送った。
 私の背中から離れる時、キャプテンはごめんね、と何故か謝って。それから。
 『熊井ちゃんのカッコイイところ、羨ましい』
 と、意外な言葉を伝えてくれた。
 
 『残念だけど、本番が始まるので移動するよ』
 キャプテンがみんなを誘導してくれてなんとか場が収まりそうだった。
 面白がり出すと、ベリーズは面倒なことも多い。ほっとしていた束の間。
 『あとは、本番が終わってからね』
 だから、キャプテン。私は、おんぶするって言ってないよ。

 
535 :_ :2015/08/03(月) 23:54



 
536 :_ :2015/08/03(月) 23:54



 
537 :寺井 :2015/08/03(月) 23:56
以上です。

ほんとに、のびのびしている熊井ちゃんの身長があと1cmくらい伸びるんじゃないかと期待しております!
22歳もENJOY!
 
538 :寺井 :2016/04/12(火) 00:02
更新しまーす
鈴木愛理さん視点。
℃-uteです。
鈴木愛理さん、お誕生日おめでとうございます!!
539 :One_Day :2016/04/12(火) 00:03




540 :One_Day :2016/04/12(火) 00:03

 通い慣れた学校の風景もこの時期だけはいつもと様子が違う。ここで迎える最後の春が訪れた。このまま、無事に卒業できればの話だけど。
 大学に入ってから4回目の春も穏やかな陽気の中で新入生を迎え、にわかに人口密度が濃くなる。彼ら、彼女らがそわそわと落ち着かない空気を纏って過ごすのもしばらくのこと。1週間も過ぎれば空気が混じり合って誰が新入生で誰が先輩かなんて分からなくなる。順応することが悪いとは思わないけど、もったいないと思ってしまう。他人の目なんて気にせず、自分らしく過ごせればいいのに。

 4年目の4月。就職活動の準備をしない私は大学でしなければならない用事は少なく、それも少し寂しいと感じながらも予定通りお仕事の場所へ向かった。
541 :One_Day :2016/04/12(火) 00:04

 ◇ ◇ ◇


542 :One_Day :2016/04/12(火) 00:04

 マネージャーさんと一緒に控室へ入ると、すぐに舞美ちゃんの姿が確認できた。なっきぃがいるかと勝手に思っていたけど彼女は不在で千聖が誰かと電話でおしゃべりしていた。どうやら家族が電話の相手らしく、呆れて、怒って、爆笑して。一人でやたらと騒がしかった。

543 :One_Day :2016/04/12(火) 00:04
 一緒に来たマネージャーさんが舞ちゃんとなっきぃはラジオ番組の収録をしてからこちらへ向かうと教えてくれた。二人がここへ到着するまで待ち時間があるという意味だった。その間にマネージャーさんが差し入れを買ってきてくれるという。聞いてもないのに、千聖は電話をしながら器用に欲しい飲み物をリクエストしていた。これでマネージャーさんは5人分購入することを余儀なくされたワケで、私と舞美ちゃんにも何が欲しいか尋ねてくれた。なっきぃが好きそうなものと自分でも飲みたいものを頼んで、舞美ちゃんはいつもの飲み物を頼んでいた。舞ちゃんには千聖と同じ物を買ってくることにしてマネージャーさんは席を外した。

544 :One_Day :2016/04/12(火) 00:04

 するべきことは身支度を整えること。でも、慌てて済ませる必要もなさそうなので気になる人の側に寄って行った。舞美ちゃんが、珍しく携帯電話で動画を見ているみたいだった。しかも、ずっとにやけた表情で画面を見つめている。イヤホンをしているので音は聞こえてこない。動物の赤ちゃんの動画でも見ているのかと思うほどの嬉しそうな表情は無視できるものではなかった。

 黙って、画面を横から覗こうとしたけれど舞美ちゃんは近寄っていった私にすぐ気が付いた。動物並みの反射神経で自分のテリトリーへ踏み込んだ者に反応する。ぷちぷちとイヤホンを耳から外して、どうかしたのか舞美ちゃんが私に尋ねる。尋ねたいのは私の方だったのに。

 「何見てるの? 」
 素直に質問をした。
 めちゃくちゃにやけているよ、と指摘はしなかった。

545 :One_Day :2016/04/12(火) 00:05

 「愛理、これ見た? 」
 そして、舞美ちゃんは質問に質問で返事をする。覗き込んだ画面に映っていたのはみやだった。
 「みやの新しいグループの子、決まったんだよ」
 「そうなんだ! 」
 思わず声を上げて驚いてしまった。Berryz工房の活動が停止してから夏焼雅新グループ結成のために、オーディションを去年から行っていたことは知っていた。Buono!のライブも夏に決定していたし、どうなったのか気になっていたけど。詳細は知らなかった。
 「どんな子? どんなの子? 」
 一緒に見よう、と舞美ちゃんが携帯電話からイヤホンを外して自分の隣へ座るように促した。千聖も電話を終えてこちらに来た。私の上げた声に「どうしたどうした」とやってきた。そして画面を見た千聖が開口一番に「みやびちゃんかわいい」と興奮していて、私は千聖がみやを大好きだったことを思い出した。

546 :One_Day :2016/04/12(火) 00:05


 ◇ ◇ ◇



547 :One_Day :2016/04/12(火) 00:06

 私にだって思いがある。
 みやとは、一番最初にデビューした仲なんだから。みやとグループが離れた時の思いは私しか経験していない。Berryz工房が結成された時、私は選ばれなかった。

 田中れいなちゃんと、みやと私とで結成されたあぁ!のグループ活動は継続されなかった。今でも残る、くっきりとした傷跡のようなもの。どうして、私はBerryz工房に選ばれなかったんだろうと何度も考えた。幼かった自分を今では愛しく思えるけれど、当時は自分がダメなんだと思うしか選ばれなかった理由を受け入れる方法がなかった。それでも、あの子よりもわたしの方が、と思った。私の方がふさわしいのに。

548 :One_Day :2016/04/12(火) 00:06

 「かわいい仲間が増えたね」
 舞美ちゃんはそれはそれは嬉しそうな様子だった。
 二瓶有加ちゃんと小林ひかるちゃん。厳密に言えば、ハロー!プロジェクトのメンバーではない二人も、舞美ちゃんからすればみやの仲間は自分の仲間、の感覚なのだ。
 「千聖、この子と同い年」
 「めっちゃ初々しい」
 「超、かわいい。超かわいい。ねぇ。ヤバいって。だって、ヤバくない? 」
 と、千聖が連呼してとにかくヤバいということが伝わった。
 大学の後輩たちと同じように、この二人もいつの間にか初々しさが消えてしまうのだろうか。
 「みやと一緒に歌うのかぁ 」
 「ヤバいよね。みやびちゃんが他の子たちと歌ってる姿、想像できないもん」
 私の呟きに、千聖がまたヤバいと伝えてくる。確かに、今はみやがハロー!のメンバー以外の子たちと歌う姿が全然想像できなかった。

 「楽しみー」
 と、舞美ちゃんがこぼれんばかりの笑みで言う。
 「えー、ヤダー。千聖もみやびちゃんと歌いたい」
 「みやが千聖とはイヤだって断るよ」
 女神の微笑みでひどいことを舞美ちゃんが千聖に告げている。彼女に悪気がこれっぽっちもないのだから言われた千聖は真っ向反論しても軽くいなされるだけだった。
 この時ばかりは、私も千聖の意見と同じだった。あぁ!でも、Buono!でもみやと一緒に歌ってきた。子供の私が駄々をこねている。みやと歌うなら、私の方がふさわしいのに。

549 :One_Day :2016/04/12(火) 00:06

 くっきりと残る傷跡に触れたみたいにハッとした。
 痛みはもうないけど、確かに残っている感覚だ。どうして私は選ばれなかったんだろう。理由を教えられたとしても到底納得できそうもないのに考えてしまう。
 けれど、時間は私をちゃんと成長させてくれていた。選ばれなかったのなら、私が選ぶ。その答えはずっと前に見つけていた。ハロー!プロジェクト・キッズオーディションを選んだのが始まりで、私はそれからずっと℃-uteを選び続けている。それが確かな答えだ。

550 :One_Day :2016/04/12(火) 00:07

 「ちっさーには、おすずがいるじゃない」
 んふっと、最後に鼻息が漏れてしまったのはご愛嬌。
 決める時に、どうしてビシっと決められないんだろう。時間が経っても締まりのない性格は成長できていなかった。
 「はいはいありがとう」
 天然なリーダーに散々からかわれて拗ねていたいた千聖。私の思わぬセリフに少し照れたことが分かった。
 「っていうかさー。愛理はBuono!があるじゃん。みやびちゃんとフツーに歌えるし。ずるい」
 「あー。申し訳ない」
 「ちっさー」
 舞美ちゃんが、言う前から笑っちゃって全然決められなかった。きっと、私の真似をして言いたかったんだと思う。
 ちっさーにはまいみーがいるじゃない。
 私にも同じことだ。私には、千聖もいるし、舞美ちゃんもいる。なっきぃも、舞ちゃんも。もう、この4人は誰にも譲れないと思った。

551 :_ :2016/04/12(火) 00:07





552 :_ :2016/04/12(火) 00:07





553 :寺井 :2016/04/12(火) 00:09
以上です。

Buono!の中で、末っ子になれるのが嬉しそうな鈴木さんがかわいいなーって思っております。
鈴木愛理さん、22歳もエンジョーイ♪
 
 
554 :名無飼育さん :2016/04/12(火) 21:06
更新ありがとうございます。
この視点で触れる、ということにハッとしながら読ませて頂きました。
未来を見つめる眼差しの強さを感じて胸がいっぱいです。
555 :寺井 :2016/08/03(水) 01:39
>>554 :名無飼育さん
コメントを頂きありがとうございます!
普段はツッコミどころ満載の鈴木愛理ちゃんだけど
℃-uteに対しては芯の強さを感じずにはいられません!愛理ちゃん素敵!!
556 :寺井 :2016/08/03(水) 01:41
更新しまーす
嗣永桃子さん視点
登場人物は、清水さん、熊井ちゃん、ももち!

熊井友理奈さん、お誕生日おめでとうございます!!

 
557 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:41


 ◇ ◇ ◇


 
558 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:42

 すべてが思い通りになるからつまんないって思っていた。
 ちょっと語弊がある。次の瞬間がどうなるのかだいたい予測がついてその通りに事が運ぶことがつまらないと思っていた。小学校の教室で自分の発言に投げかけられる容赦ない批判と、それを分かっていても止められない自分の言動。
 その後、引き潮のように一斉に引いていく教室の空気。
 なんとなく、分かっていた。大勢対自分一人になることが。どのような落ち度でこんなにも孤独を感じなくてはならないのか原因は分からない。ただ、一人になることを予想はできていた。

559 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:42

 思えば、弟が生まれてからお家でもそうだったかもしれない。いつもつまらなかった。
 嗣永家の一番のお姫様としてずっと暮らしてきたのに。突然世界が一変した。同じお家の中にいるのにパパ、ママ、そして弟の三人は透明の壁の内側、私だけが外側にいるみたいに感じていた。寂しくて自分を主張すればするほど孤独を味わうはめになった。小さい弟を愛おしく思うと同じくらい憎らしかったのに。透明の壁の中に入れてもらうには小さい弟中心の振る舞いをしなくてはならなかった。
 今でも気が強いことに自負はするものの、年齢を重ねただけ処世術も否応なく身についてきた。年下の面倒を見るのは苦にならない。苦どころか、先生の免許を取得するぐらい得手になっていた。
560 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:42

 あんなに小さかったのにいつの間にか身長もとっくに追い越された弟を、憎らしく思う幼い感情はどこにも見当たらない。少しずつ頼れる存在になってきた彼の成長を姉として誇らしかった。

561 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:43

 人生、何が起きるか分からない。そう思わせてくれたのはハロー!プロジェクトキッズオーディションだ。
 まさか、合格するとは思っていなかった。合格して、次の瞬間から自分が、その場が、どうなるのか予測なんてつけられなかった。

562 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:43

◇ ◇ ◇


 
563 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:43

 夏のコンサートのリハーサルで佐紀ちゃんの姿を見かけるのはいつものことだったけど。佐紀ちゃんの隣にいるくまいちょーの来訪は予想外だった。
 「お疲れ〜」
 と、へらへらした表情でこちらに手を振っている。
 「くまいちょー! どうしたの? また身長伸びたんじゃない? 」
 久しぶりに見る彼女はこんなに大きかったのかと改めて驚いてしまうほど、相変わらずの抜群のスタイルだ。
 「そうなの。もうちょっとで東京タワーに勝てる」
 アイドル界のスカイツリーと自称していたのに、まだ東京タワーに勝っていなかったようだ。
 「ももは相変わらず、アイドルしてるじゃん」
 メイクもしてないし、今はレッスン着姿だ。これのどこがアイドルしてるのか理解できなかったけれど、にじみ出るアイドル感は天性のものなんだと思う。
 「メンバーの若いエキスをたくさんもらってるもんね」
 佐紀ちゃんが意地悪を言うので「あなたも同じでしょう」という意味を込めた視線を送った。
 自称、アイドル界のスカイツリーはお土産を持ってきてくれたらしく「フジヤマクッキー」を手渡された。河口湖へ遊びに行ってきたそうだ。くまいちょーと富士山の組み合わせはギャグみたいだけど計算なのか天然なのか14年付き合っていてもくまいちょーの行動は予測できない。
 14年前の6月30日にハロー!プロジェクトキッズになり、それから8人が選抜されてBerryz工房が結成された。Berryz工房に選ばれてからは特に予測できない場面に数多く出くわしてきた気がする。
564 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:44

 「カントリーの子にもあげて」
 くまいちょーは言いながらクッキーを一箱分私に預けた。カントリー・ガールズにはグループのルールでお菓子禁止令が敷かれている。彼女達なりに真面目に取り組んでいるのでプレイング・マネージャーが率先して禁を犯すわけにもいかない。ただ、くまいちょーの厚意を無下ににするのは憚れる。熊井友理奈からの「フジヤマクッキー」なんて有り難い感じがするのは自分だけだろうか。これを食べたらカントリー・ガールズの平均身長も伸びるかもしれないし。
 「ありがとう」
 Berryz工房のメンバーからカントリーの子たちをかわいがって貰える感覚はなんか変だった。自分が褒められたりするよりもっと、むずむずして身の置き場がないような不思議なくすぐったさがある。
 「一人で全部食べちゃダメだよ」
 分かり切ったことを得意げな様子で注意するくまいちょーには懐かしさを感じた。普段、私が赤ちゃん扱いすることを不満に思う彼女がここぞとばかりにやり返してくる時の表情だ。

565 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:44

 「でも、ももちゃん。ほんと痩せた」
 佐紀ちゃんが私のTシャツの袖を引っ張りながら下から上まで舐めるようにまじまじ見てくる。
 「でも」、ってなんだ。「でも」って。カントリーのメンバーで、なんならマネージャーさんにもくまいちょーからの「フジヤマクッキー」はちゃんと渡しますよ。一人で食べると思われたことが心外だ。

566 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:45

 昔からくまいちょーも佐紀ちゃんも、どちらかといえば体型の変動があまりない二人だった。
 佐紀ちゃんの手を払いのけながら「若いメンバーには気苦労が絶えないからね」と反抗してみせた。
 「それ逆じゃない? 」
 若い子の方が大先輩に気遣っていてかわいそうだとずけずけ言ってくる。佐紀ちゃんはにこやかな表情で私を軽く凹ませようとする。なんだろう、Berryz工房時代の逆襲なのか。
 それをいいことに凹んだ振りをして私はくまいちょーの腰に抱き付く。
 「くまいちょー」
 「おお、ホントだ! 」
 驚いた声を上げて、くまいちょーが私を見る。
 「もも、痩せたね」
 何を言うのか少しだけ期待したのは私だけじゃないと思う。だけどがっかりした分だけお腹の底から笑いが込み上げてくるからくまいちょーの癒しの存在感って唯一無二だと思った。
 「気苦労で痩せたんだって」
 くまいちょーもその場にずっと居たのに佐紀ちゃんはわざとらしく説明してくれている。
 都合の悪いことは私の耳には届かない。
 「髪も伸びたし」
 肩よりも伸びた私の毛先をくまいちょーが指先でくるくる遊ぶ。
 「髪、なんで伸ばしてるの? 」
 「Berryz工房再始動まで切らないって願掛けしてるから」
 口から出まかせってよく言ったものだ。頭で考えるよりも早く言葉が出ていた。
 「えー」
 くまいちょーは変わらない調子で笑っているみたいだった。佐紀ちゃんの方を見ることはできなかった。
 「ずっと動いてるのに」

567 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:45

 くまいちょーは、私の髪を大雑把に二つに分けてツインテールもどきを作ってふざけている。
 「この髪の量でツインテールにしたらホントに隣の人の邪魔になるね」
 ねえ、キャプテン、と同意を求めてくまいちょーがくしゃくしゃの表情で笑っている。
 「本当だね」
 佐紀ちゃんが一体何に本当だと答えたのかは分からない。
 手櫛でくまいちょーが私の髪を整えてくれている。
 「ももも、髪の色変えても似合うと思うけどな」
 「ももちゃん、美容院行くのサボるから無理だよ」
 図星だったので言い返すのに言葉がよどんだ。髪がここまで伸びたのも自分の事になるとものぐさな性質が発揮されるからだった。願掛けなんて大仰だ。
568 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:45
 
 「今度ね。カントリー・ガールズで7月の終わりに富士山に登るんだ」
 「そうなの!?」
 くまいちょーも佐紀ちゃんも驚いてくれた。「フジヤマクッキー」はちゃんと頂上に辿り着けるように思いを込めてみんなで食べるのにちょうどよかった。
 「じゃあ、もも」
 真剣な表情でくまいちょーが言った。
 「みんなが頂上に着く頃、富士山に向かって『オーイ』って手、振るからちゃんと振りかえしてね」
 次の瞬間がどうなるのかだいたい予測がついてその通りに事が運ぶことがつまらないと思っていた。それはくまいちょーと出会う前の話だ。
 くまいちょーはつまんないところが面白い。
 佐紀ちゃんと二人でお腹が痛くなるほど笑い合った。

569 :_ :2016/08/03(水) 01:46





 
570 :_ :2016/08/03(水) 01:46





 
571 :寺井 :2016/08/03(水) 01:48
以上です。

熊井ちゃん、大好き。
23歳もENJOY!

 

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