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熊井チャンネル

1 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 23:40
「基本に忠実」が合言葉です。

短編。

登場人物は、キッズ、スマイレージが主です。
何卒よろしくお願いいたします。
2 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:44

* * *

 
3 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:45

 憧れの先輩は、特別なんだけどありふれていて。ありふれているはずなのに、やっぱり特別だ。
 花音が私の側を通り過ぎる時、三日月みたいに目を細めてにやりと笑った。その表情に意味はないのかもしれない。私が意識し過ぎている。
 「憂佳、今日あんまりお菓子食べてないね」
 差し入れがまとめて置いてあるテーブルの側から紗季が話し掛けてきた。声がした方へ視線を向けた時には既に紗季はお気に入りの駄菓子を見つけたらしく「これ全部紗季のー」と表情を綻ばせていた。私には興味がなくなったみたいだ。
 今日はお菓子が欲しくないみたい。気が付かなかった。喉がからからに渇いている。そう、気付いた。意味無いけど、コホンと一つ咳をした。
 「だめだよ、紗季ちゃん。今日はうちらだけじゃなくて後から来る人もいるんだって」
 「ぜーんぶ食べちゃったら、ばれないよ」
 せっかく花音が注意したのに、リーダーが唆すようなことを言うから紗季が真に受け、手に持っていた駄菓子の封を一つ切った。
4 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:45

 「食べる? 」
 こちらからの視線にやっと気付いた紗季が言った。首を振ってお誘いを断り、私はミネラルウォーターのペットボトルを手に取った。
 次の瞬間、唇に鈍い痛みが走った。
 「何やってんの、憂佳」
 痛い。
 キャップを開かないまま、ペットボトルに口をつけていた。
 嫌だ。こんな恥ずかしい場面、ブログに載せられた世界的にみっともない。恥ずかしい。慌てたりしたらお菓子に夢中なリーダーがこっちに気付いてしまう。痛かったけど、私は無言のまま下唇で上の唇をぎゅっと引っ張った。

5 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:45

 * * *

 
6 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:46

 今日は、夏のハロー集合コンサートのレッスン日だ。今回のコンサートは覚えることが膨大だった。だって、披露する楽曲が全公演1回1回変わる。泣きそうだ。鬼のような数の課題曲が、歌詞カードになって目の前に積み上げられた瞬間はちょっぴり泣いた。
 歌詞と歌割と大まかな振りを一通り頭に叩き込んだばかりなのに。おさらいする余裕のないまま今日がきてしまった。
 本日は、他の先輩たちと合同レッスンの日。
 レッスンでこんなに緊張しているのに、本番がきたらどうなっちゃうのか自分で自分が一番心配になる。

 後ろでドアが開く音がしたのと、テーブルに突っ伏していた紗季ちゃんが立ち上がったのはほぼ同時だった。
 「おはようございまーす」
 同じく挨拶をしようとしたのに、てんぱり過ぎて振り返った瞬間。思い切りそのまま上唇をそのまま噛んでしまった。
7 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:46

 「憂佳? 」
 「前田、ちゃん」
 「もあおうおあいまぅ」
 「は? 」

 レッスンスタジオに入って来たのは須藤さんと菅谷さんだ。
 なんていうか、お二人とも。めっちゃかわいい。
 何回も一緒にお仕事してきたし、初めて会ったわけじゃない。
 同じ空間にいる。
 それだけで表情が強張る。心臓がまたどきどきしてきてしまった。
 須藤さんも菅谷さんもTシャツにジャージ姿だったけど。スマイレージとは全然違う。違う星の人みたい。日本人じゃないみたい。同じ人間とは思えない。妖精とか、多分そうだ。妖精的な何かだ。

 「血、出てるみたいだけど」
 須藤さんが目を細めてこちらを覗き込んできた。
8 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:46

 ギャーーーーーっっっ

 心の中では叫び声を上げていたけど。体が固まって動けなかった。
 肌白っ。ってか透明? 血管透けてる。毛細血管丸見え。
 あ、そうか。孵化したばかりの妖精さんだからまだ色素がしっかり定着してないんだ。そっかそっか。
 そんなメルヘンが目の前で繰り広げられ、動揺がおさまらなかった。
 「前田ちゃん」
 はらりと、黒髪一筋が目の前を流れた。
 マイナスイオンがそこから放出されているのかもしれない。
 須藤さんが何気ない仕草で髪を脇によけた。一瞬にして脱力感を覚えた。リアルな世界からおとぎの国に迷い込んでしまったみたい。
 自分の髪はまとめて後ろで束ねていた。
 須藤さんの髪が揺れる。いい匂いがした。
 髪っていうか目の前に本人が立っていた。
 意識が遠のきそうになっていたが、あははって、リーダーの声が聞こえて来たのは覚えている。
 「もまもーもまいまーぅ」
 微妙に私をばかにしてモノマネしているのが見えなくても分かった。ヘン顔まで想像できたのにその場から一歩も動けないまま、振り向くこともできなかった。
9 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:47

 「ちょっ。口」
 素肌の毛細血管丸見えだけど。瞳は澄んでいて、充血とは無縁そうな白目だった。黒目が見れない。
 ややもすると俯きがちな私をひんやりした指先が捉えた。
 温度で現実に引き戻された。
 須藤さんと目が合った。
 「痛い? 」
 違うんです。痛いのは痛いんですけど。もっと違うところが痛いんです。
 全然言葉にならなかった。
 どうしよう、今からのレッスン。集中できるかめっちゃ不安だ。
 不安に襲われ情けない気持ちが胸一杯に広がる。声が出せない。
 返事できずにいると、
 「まぁ」
 菅谷さんが同い年とは思えない艶かしい様子で笑った。
 「前田ちゃん、怖がってる」
 「うっそ、ごめん」
 指が離れて、須藤さんは一歩下がる。
 「ごめんね」
 本当に申し明けなさそうに下から覗き込んでを心配してくれている。
 だから、違うんです。怖いんじゃなくて。
 黙ったまんまの自分が悪いのに。誤解されたことが理不尽で余計に泣きたくなった。
 「涙目じゃん、憂佳」
 紗季が後ろから抱き付いてきた。
 「冷した方がいいよ」
 余裕たっぷりって感じだった。菅谷さんが須藤さんのシャツの袖を引っ張り、放っておいてあげな、みたいな態度で部屋の隅へ移動を促した。
 大人の余裕を見せる菅谷さんとは大違い。
 自分は挨拶一つもまともにできなかった。いつもはこんなんじゃないのに。
 唇もじんじんしてるけど。やっぱり違うところが痛かった。
 ミネラルウォーターを入れていた冷蔵庫に冷えピタが入っていたといって、花音がそれを私の口に当ててくれた。保冷箇所を覆っている透明のビニルを剥がしていなかったことには正直ほっとした。
10 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:47

 * * *

 
11 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:48

 嬉しかった。昨日の夜は興奮してなかなか寝付けないくらいわくわくしていた。
 憧れの先輩と一緒にレッスンができるだけで顔がにやける。恰好良いとこみせたくて。エッグのみんな、スマイレージの誰よりも、モノにしてやるって昨日までの練習を頑張った。期末テストもぶっち切った。家でも家族に顰蹙かいながら歌って踊った。必死だったのに。全部上手くいかない。張り切ったら空回る。
 悲しい気持ちだ。だって、まともに挨拶もできなかった。
 ちょっとでもお喋りできたら。幸せ感じるくらい。
 そんなありふれたシチュエーションは実際稀だった。同じハローのメンバーだけど、先輩たちと一緒にお仕事できるのは滅多にない。お正月と、そして夏と。でも集合コンサートは大人数が集まるから、必ず一緒になれるかというと違う。
 だから今日は嬉しかった。
 どきどきしていた倍くらいに、今は情けない気持ち。
 あんなに大人っぽい菅谷さんが側にいたら余計私の子どもっぽさが目立っただろうな。
12 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:49

 二人並んでストレッチをしている須藤さんと菅谷さんを横目でチラリと見てみた。ああ、二人が眩しい。既に夕方近いのに、まるで朝日を浴びているみたいだ、っていうか。私、まともに目も開けられない。チカチカする。なんだろう。

 犯人は和田だ。

 鏡を使いこちらへわざと光を反射させていた。
 よかった、私、リーダーよりは子どもじゃない。
 紗季はまたお菓子を頬張ってるし。
 花音は見た目でアレだし。
 スマイレージがこんなだから、私まで子どもっぽく思われるじゃん。
 八つ当たりだって自覚しててもいらいらが収まらなかった。
 にこにこしていた方がかわいいって思われること。
 分かっているのに、不機嫌な態度が止められない。
 だから、ホントに。自分が一番子どもなんだ。
13 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:49

 * * *

 
14 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:49

 「血、止まった? 」
 リーダーがいつの間にか隣に立っていた。
 「貸して」
 相手が手に持っていた、いたずらの道具を私は返事を待たずに取り上げた。
 鏡でまともに自分の顔を見てみると思った以上にひどい表情だった。
 寝不足気味で薄っすらくまが出来てるし。血は止まったものの、唇は腫れていた。
 あーぁ。せっかくの合同レッスンなのに。
 テンションががっくり落ちて溜め息を吐いてしまった。
 「この鏡、498円だったんだよ」
 聞いてないのに、リーダーが鏡のお値段を教えてくれた。
 「ふーん」
 鏡を借りたついでに、前髪も整えた。
 「お店の人が2円のおつりですってあやに1円玉を2枚返そうとしたんだ」
 前髪ついでに、あほ毛も撫で付けておく。
 「で、それがなんか許せなくて」
 「おつりでしょ? 」
 どこが許せない要素になったのか理解できない。
 「うん。でもその時は2円って嫌だった」
 きっと、10円のおつりだったら普通に受け取ったんだろうな。と勝手に納得してリーダーの話は流して聞くことにした。
15 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:50

 「だから、あや。絶対いりませんって言ったの」
 「言ったんだ」
 お店の人に同情してしまった。
 498円の買い物をして、きっとリーダーは500円を支払ったんだろう。清算して、おつりを返そうとしたら突然いらないって拒否されるなんて。お店の人にとっては青天の霹靂だ。意味が、分からない。
 「お財布の中の小銭が、ちょうどきれいになくなったから。2円返されても困るじゃん」
 「お店の人の方が困るよ」
 「うん」
 リーダーは真顔だった。
 「困りますって言われた」
 「で、彩花ちゃん。どうしたの。2円受け取ったの? 」
 無言でリーダーは首を思い切り横に振った。
 この人、社会のルールを覆したんだ。
 私はそっと、鏡を相手に渡した。
 「だってそこで2円受け取ったら後で絶対なんであの時自分に嘘ついて時代の波に流されて嫌なことまでうんって言っちゃったんだろうって後悔するもん」
 「後悔してない? 」
 恐る恐る聞いてみた。
 リーダーには大人しく2円のおつりを受け取って欲しかった。個人的な財布の小銭問題でお買い物のルールを守らないのは、私はおかしいと思った。後悔している、今では反省しているって本当は言って欲しかったのに。
 「もちろん」
 満面の笑みで答えてくれた。
「ちゃんと自分の気持ち言ってよかった」
 何故か、リーダーが少し頼もしく思えた。
16 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:50

 * * *

 
17 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:50

 花音が紗季の食べ散らかしたお菓子の袋を片付けている。リーダーは498円の鏡を500円で買ったと、紗季に自慢して、紗季は「彩花ちゃん大人だね」と感心していた。
 合同レッスンには須藤さん菅谷さんの他にも先輩達が来る予定だ。
 せっかくの合同レッスンなのに。
 話掛けるチャンスは今しかないのに。
 ちゃんと挨拶したかったし。
 心配掛けちゃったし。でも嬉しかった。
 やっぱり本物はめちゃくちゃかわいい。
 リーダーはたった2円のおつりに対しても自分に正直だった。
 それを見習うつもりはない。
 ただ、自分の気持ちをきちんと伝えられた時って。どんな気分なのか知りたくなった。

 せっかくの、合同レッスン。チャンスは今しかなかった。

 何て言うかなんて決めてなくて。でも、誤解されたままは嫌だった。

 「ご、ごめんなさいっ」

 二人の前に立った途端、私は謝っていた。
 頭を下げたまま、なかなか顔を上げることができない。
 超、どきどきしている。きっと手が震えている。
 「あの、さっきは怖いとかそんなんじゃなくて」
 どうしよう。なんて言っていいのか。どんどんわけ分かんなくなってきた。
18 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:51

 「ちゃんと、挨拶できなくて。ごめんなさい」
 謝りたいんじゃなかった。自分の気持ちを伝えたくて。
 嬉しかったって。それだけで充分なはずなのに。それだけじゃ伝わらない気がして。言葉を選ぼうとするけど。なかなか出てこない。
 「いいよ、全然そんなこと」
 「口切れてたんでしょ」
 大丈夫?
 須藤さんも菅谷さんもちょっと驚いた様子。でも、やっぱり優しかった。
 「あと、あの、ほんとに、あの」
 顔を上げたら、須藤さんと目が合った。
 菅谷さんは笑っていたみたいだけど、目の前の須藤さんは眉尻を下げて心配そうな表情だ。
 「怖くないです」
 「え、あ。うん」
 怖くなんかない。ちょっとでも近付きたくて。側にいると意識しちゃって。ふわふわ気持ちが浮かれてしまうくらい。大好きなのに。
 「怖くないんです、怖いんじゃなくて」
 「分かったから、まぁが怖くないのは分かったから」
 「き、きれいですね」
 「は? 」
 須藤さんの瞳に自分が映ってるのが分かったくらい見つめてしまった。肝心の相手の様子を全然分かっていなかった。
 「あの、いつも、めっちゃきれいだなって思ってて。めちゃくちゃきれいだなって、いつも思ってます。えっと。須藤さん。すごい美人です」
 言って何になるなんて考えてなかった。だって、何を言うかすら決めてなかった。ちょっとでも心の中の言葉を伝えたかった。相手がどんな反応をするか、全然想像してなかった。
 意表を突かれた。
19 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:51

 「まぁ」
 菅谷さんがうけていた。須藤さんの背中をばしばし叩いて笑っている。
 「真っ赤」
 相手を凝視し過ぎていて私は状況がどうなったのか分かっていなかった。
 耳が真っ赤だ。須藤さんは手で口元を覆いながら俯いてしまった。
 その、目を伏せた仕草もめっちゃきれいだと思った。
 「分かった、ありがとう。前田ちゃん」
 「あの」
 にっこり笑った菅谷さんが私の言葉を遮った。
 並んで座っていた距離を縮めて、須藤さんの頭をぐいっと自分の方に引き寄せた。
 「これくらいにしてあげて」
 菅谷さんがそう言った。
 私は茫然としてしまい、その場に立ち尽くした。
 「前田ちゃんもかわいいよ」
 菅谷さんは引き下がれと、私に言っていることがやっと分かった。
 「ありがとうございます」
 須藤さんがどうして真っ赤になってしまったのか分からないまま、私はスマイレージ3人が固まっている当たりに戻った。
20 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:52

 * * *

 
21 :あこがれ寿限無 :2010/07/06(火) 23:52

 「何、ケンカ? 」
 紗季が眉間に皺を寄せて聞いてきた。
 私は首を大袈裟に振って違うと答えた。
 「憂佳が勝ったの? 」
 リーダーって何で言葉を選びを間違えるんだろう。誰も誤解しないから訂正しないけど。人数が増えるこれからは気をつけよう。
 「ほんとだ、なんか憂佳すっきりした顔してるし」
 「須藤さん泣いてるみたいだし」
 「菅谷さん怒ってるじゃん」
 すっきりしたっていうのは間違ってない。全部伝えることができたかっていうとそうじゃないけど。ちょっとでも自分から話し掛けることができたのは、やり遂げた手応えを感じる。

 「違うよ」
 あれ、なんかテンション上がってきた。
 「憂佳、菅谷さんにかわいいって言われちゃった」
 「はぁ? 」
 「何で」
 花音が鋭い目つきに表情を変えた。
 でも全然怖くないし、にやにやが止まらない。

 「おはようございまーす」
 また、先輩がレッスン室に姿を現した。
 途端、花音の。
 「熊井さぁーーんっ」
 と、声にならないピンク色の悲鳴が聞こえた。
 まったく花音は子どもだなぁ。
 「よーし」
 私は一回伸びをして、視線を上げて背筋をピンとした。
 しっかり集中して、カッコいいとこ見てもらおう。
 そして。いっぱいいっぱい須藤さんの恰好いい姿を見てよう。
22 :_ :2010/07/06(火) 23:52


 
23 :_ :2010/07/06(火) 23:53


 
24 :名無飼育さん :2010/07/06(火) 23:53
以上です。

やっつけじゃないです。
25 :名無し飼育さん :2010/07/07(水) 01:26
梨沙子が貫禄ありすぎで惚れそうですw
次回の放送を楽しみにしています
26 :名無飼育さん :2010/07/07(水) 01:36
やっつけじゃないです。
もしやあなたは!?笑
27 :名無飼育さん :2010/08/16(月) 23:02
更新しまーす
登場人物は高橋さん視点、モーニング娘。が中心です。

1レス目に違反してごめんなさい。
28 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:03

 ◇ ◇ ◇

 
29 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:03

 見ていることが癖になっていた。
 「愛ちゃんもやるんだよ」
 ほら早く、と寝る前の歯磨きを急かす母親みたいな当たり前だといわんばかりに里沙ちゃんが私に手を差し伸べる。立ち上がれ、と指図しているのだ。
 「えー」とかなんとか言いながら私は立ち上がることを渋った。
 待ち切れない8期3人が早々と花火に火をつけた。
 花火は目の前にいる彼女が用意したものらしい。
 途端に、れいなが煙に巻き込まれ煙たい煙たいと悲鳴を上げた。状況を理解しているのか雰囲気でだけなのか判断できないけど、絵里がけらけら笑っているのが分かった。
 「れいなが泣いてる」
 さゆがれいなを煙から救出してくれた。泣いている同期を見て、絵里は更に笑いのツボにはまったようだ。
 「なーにやってんの! まだつけちゃダメー」
 里沙ちゃんが大きい声を上げて8期3人を叱ったが、彼女達は火遊びに夢中で聞く耳を持たない。わたしも立ち上がるつもりはなかった。
30 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:03

 ◇ ◇ ◇

 
31 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:04

 花火をやりたいと言い出したのは愛佳で、実行に移したのはガキカメの二人だった。
 今日は9月から始まるツアー関連の撮影があった。私が最後に撮影を終え、楽屋に戻ると全員が部屋に残っていた。メンバーに特別用事があるとは考えにくい。変だなぁと思った。私が帰り支度を済ませてスタジオを出るとぞろぞろと他のメンバーもついてくる。2、3度振り返って彼女達の様子を確認した。それぞれお喋りしていたり携帯電話をいじっていたり音楽を聴いていたりと普段の様子そのもので、企みの一片も感じることはできなかった。ただ、偶然帰宅時間が重なったのだとあっさり了解した。
 しかしそれは間違いだった。
32 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:04
 守衛さんに会釈し、関係者用の出入り口を通り過ぎた瞬間。私は見えない力によって行く手を阻まれた。見えるけど、見えない。
 思うように前へ進めない。ジュンジュンが左からぴったり身体を寄せてきた。力負けするぐらいジュンジュンがくっ付いてくる。反対にはリンリンがくっ付くでも離れるでもなくただにこにこして歩いていた。密着されて暑いし前に進みたいからジュンジュンを避けようとする。今度はれいなと愛佳とさゆが前でおしゃべりしていて前方へ進めない。何が起こったのだろう。きょろきょろと辺りを見回しても誰とも視線が合わなかった。

 
33 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:04

 夕方で終わるはずだった撮影は猛暑の所為か湿度の所為か機材トラブルで押しに押した。外はすっかり日も暮れて街灯が皓々と緑道を照らしている。光に向かって羽虫がぶんぶん飛んでいるけど、気にしないようにした。一秒でも早く虫の飛んでこない安全な場所に避難したいと思うのに、なかなか思うように動けない。
 こんなところでしなくてもいいのにジュンジュンの隣に絵里が現れ、お菓子の交換を始めた。
 「亀井さん、そっちは大きい」
 「こっちの小さい方がいいの? 」
 「ちがう。もう一つください」
 「交換条件を満たしてなかったのね」
 私はいまだにジュンジュンから微妙に肩を押されて真っ直ぐな姿勢を保てない。
 
34 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:05

 「でもさ、値段からいうとさ」
 「亀井さんはお金に汚い」
 「世の中、リンリンみたいな人ばかりだったら平和なのにねー」
 「亀井さんはお金に汚くても心はきれいです」
 リンリンはにこにこ朗らかな様子で絵里を励ました。
 会話に気をとられている内に帰る道から大分外れてしまった。あまり来たことのないスタジオだったから、知らない道に出てしまい不安になる。不安に追い討ちを掛けるようにいまだにメンバーと視線が合わない。どうして、メンバーは私と目を合わせてくれないのか疑問だった。思い切ってさゆに声を掛けようとした時。
 「みんなー」
 緑道と車道を分ける生け垣の先でこちらに手を振っている黒い影があった。もう少し進むと、緑道の幅が広くなり、パブリックアートのスペースになっているみたいだった。
 「こっちこっちー」
 さゆの背中に遮られどういう状況なのか見えなかった。でも、聞き間違えることはない。いつもの声だった。
35 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:05

 ◇ ◇ ◇

 
36 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:06

 オリンピックの聖火リレーみたいに、手持ち花火に次から次へと火が渡されていく。
 「高橋さーん、早くー」
 愛佳は満面の笑みでオレンジ色の火花が出る花火で大きく円を描いてみせた。
 バケツはちゃんと用意したのだろうか。
 愛佳に手を振り返しつつそんなつまらないことが頭を掠めた。
 仮にも私は、モーニング娘。のリーダーだ。多分、ここで花火をすること自体無断だろうし。その花火で不祥事だなんて、前代未聞。責任問題は免れないとつまらない思考がぐるぐる回る。
 「ガキさん、バケツ」
 「バケツは、ない」
 あまりにきっぱりと里沙ちゃんが言い切ったからああそうかと頷きそうになった。
 「ちょっと。火事になったらどうするの」
 「だーいじょうぶ。ちゃんと、ねーカメ」
 絵里がビクついた様子でこちらを見た。どうやら突然振られたらしい。
 「そう、そうそう! 」
 そうでした、そうでしたとおどけて絵里はコンビニで貰ったビニル袋を持って走りだした。何かと思えば、その袋に水を溜めて持ち帰ってきた。
37 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:06

 「重たい。ガキさんこれめちゃくちゃ重いです」
 ビニル袋から水が撥ねてあちこち水溜りを作っていた。きっと絵里の足も濡れているに違いない。夏だから、丁度いいか。
 「ほらねバッチリです」
 何がほらね、だ。と思ったけど絵里の必死の形相を見たら頷くしかなかった。どこに水道があったのかは深く追求しないでおいた。
 「一緒にやろうよ、花火」
 私が座っていて、相手より視線が低いはずなのに、上目遣いみたいな表情で里沙ちゃんがこちらをみてくる。
 「愛ちゃんなにしとぅー」
 私を誘ったかと思えば、れいなはまた悲鳴を上げた。ジュンジュンがれいなを花火で追いかけ出した。
 「なんで逃げる」
 暗くて表情は分からないけれどジュンジュンは真顔で、逃げるれいなに迫っているようだ。
 「ガキさん重いんだってば」
 絵里限界だよぅ。泣きそうな声を出すと、もう絵里しっかりしてよ、と全然悪くない彼女を責めながらさゆが袋の持ち手を引っ掛けるのに丁度良いモニュメントまで運ぶのを手伝った。誰かが下見でもしたのかってくらい手持ち花火をするには穴場スポットだった。
 「水ここに置いたからねー」
 さゆの話をメンバーは誰も聞いていない。
38 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:06

 * * *

 
39 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:07

 まず、メンバーが揃っていることを確認し。それからメンバーの様子を見る。
 元気そうか、体調が悪いのか、眠そうなだけか、いつの間にか癖になっていた。
 私は見ているだけで、何ができるわけじゃない。
 リーダーは万能ではない。

 「ガキさん」

 助けられているいつも。
 この手を頼っていたのはリーダーである私の方だ。
 里沙ちゃんの手を掴んで私は腰を上げた。
40 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:07

 東京の夏はとても暑い。辛うじて風が吹いていて煙はその場に溜まらず流れていく。白煙に気付いた近所の住民が通報したら大事だけど。その時はその時で、きっとサブリーダーが上手く取り繕ってくれる。私は神妙な面持ちで反省した態度を取ればいい。
 座っていたから、膝の裏に汗を掻いていた。乾燥したパチパチという火花の音が湿度の高い夜に小気味好い。

 
41 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:07

 里沙ちゃんは彼女にしかできない間合いで、突っ走る私も立ち止まる私も繋ぎ留めていてくれる。付き合い切れないような我がままにだって寛容だった。お仕事の為だって思うと見境がなくなりがちの私に広い視界を持たせてくれるのは里沙ちゃんで、私は一人で立っているように見えるかもしれないけど。そうじゃない。
 「持ち手が紙のヤツはやりたくない」
 渡された花火を相手に付き返す。
 「リーダーの癖になんでそう、我がままなの」
 「だって持つとこ短くてひっでぇ熱いんやが」
 「そこを熱い熱いって言いながら最後までやり遂げるのが醍醐味なの」
 いいから、と全然良くないけど私は無理やり花火を持たされた。
 「誰かー、愛ちゃんにも火ちょうだい」
 「新垣さん、これ」
 自分の手にあった花火を何本か愛佳が里沙ちゃんに渡した。
 「ありがとう」
 「ジュンジュン! 」
 愛佳は、両手に燃え盛る花火を持つジュンジュンを呼んだ。ジュンジュンは3本一気に燃やしてれいなを追いかけていたらしい。れいなは半泣きで、その場に崩れ落ちた。
 「次はドコ? 」
 「鬼ごっことちゃうねんから」
 自ら鬼になって小さい子どもを追い詰める趣味はアイドルとして間違っているような気がした。今度、リーダーとしてジュンジュンには厳重注意をする必要がある。その時は里沙ちゃんにも隣にいてもらおう。こっちが追い掛けられたら勝ち目がない。
 ジュンジュンから火のついた花火3本の内、1本を譲って貰い里沙ちゃんとそれぞれお互いの花火に火をつけ合った。
42 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:08

 「ぅおー。あっちぃっこれ。あっつっ」
 「ちょっと、熱いからってこっち向けないの。危ないでしょーが」
 「熱っ」
 火花がサンダル履きの素足や手にかかる。痛いほどではないけど、音と光に興奮して声を腹から出してしまった。
 「愛ちゃん声大きいって」
 ご近所迷惑。
 醍醐味を体感しているのに苦言を呈された。
 もうそろそろ火薬が尽きそうになると、里沙ちゃんから次の花火を渡された。
 「何でこればっかり」
 また持ち手の短い花火だった。
 「好きなんでしょ? 」
 「…… 」
 黙って次の花火に火を移した。
 「おお、高橋さんは新垣さんに頭が上がりません」
 リンリンはメンバーが散らかした花火のゴミを拾っては水の入ったビニル袋に片付けていた。
 「でも、新垣さんは亀井さんに頭が上がりません」
 「難しい日本語知ってるね」
 「はい、覚えました」
 リンリンは自然な所作で私から終わった花火を受け取る。盛んに飛び散る火花には全然動じなかった。花火の醍醐味を感じられないタイプかもしれない。
 「ガキさんが絵里に頭が上がらないとしたら」
 絵里は誰に頭が上がらないと思う?
 リンリンに尋ねると明るい表情で「亀井さんはあまり他人の話を聞いていません」と答えた。
 「それはアカンやろ」
 と、思わず突っ込みを入れたけれど当の絵里はせっかく自分で水を汲んできた袋に火花で穴を開け、またさゆに怒られていた。
43 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:08

 どうやら里沙ちゃんの用意した花火は早々と底を尽きたらしく。私の花火が一人寂しくパチパチと白い光を放っていた。
 何故か全員が無言で、可笑しかった。
 なのに笑えなかった。
 一人だけスポットライトが当たっているように注目を浴びている。
 大袈裟かもしれないけど、I WISHとか恋INGとかの曲終わりみたいだと思った。
 この花火、持ち手は短いのに火薬はたくさん詰まっていてなかなか火花が弱まらない。
 注目されるのはなんだか苦手だ。歌ったり演じたりしている時は意識している余裕がなくて感じない。静かな中でこんなに注目されるのは背中がむずむずしてくる。早くこの手持ち花火が終わって欲しい。
 終わって欲しい。けど。

 「きれい」

 静寂を破ったのは、絵里の一言だった。
 「愛ちゃん花火を持ってるだけでも様になる」
 さゆがはやし立てて、いつもの賑やかしいモーニング娘。に戻った。
 花火から顔を上げ、絵里の方へ視線を向けた。
 私なんかより、よっぽど「きれい」な様子でそこにいた。
 パチパチという音と火花の光が弱まり、煙を残して花火が終わった。
44 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:09

 愛佳とジュンジュンは誰がゴミを持ち帰るかで言い争いをしている。ゴミは私が持ち帰ると決めていたから、争う必要はなかったけど、いつものことでケンカがしたいだけだから仲裁には入らなかった。
 「れいな、ドラマに間に合わなくなるけん、先帰る」
 「待ってれいな、さゆみも」
 ゴミ争いに巻き込まれたくない二人の慌てぶりには思わず笑ってしまった。
 最後の花火を穴の空いたビニル袋に突っ込む。袋はべたべたに濡れていてまだ少し水が残っていた。これを放置して帰るわけにはいかない。
 「楽しかったね、花火」
 里沙ちゃんにそう言うと得意げな様子になり、一緒にやってよかったでしょって表情だけでお喋りしている。
 「ゴミは私が始末するから、愛佳もジュンジュンもリンリンも帰っていいよ」
 「また花火やりましょう」
 リンリンの言葉に、来年の夏、3人は側にいないと気付いた。
 花火なんていつでもできる。でも、毎日やるものでもない。
 やるなら次の夏、みんなでやりたい。でも、次の夏には絵里もジュンジュンもリンリンも娘。を卒業してしまっている。
 里沙ちゃんは薄っすらと笑い、下を向いた。
 花火なんていつだってできる。なのにどうしてリンリンに返事ができないのか分からない。
 「来年」
 言いたくなかったフレーズに絵里が先手を打った。
 「花火やるときは絵里にも連絡してください」
 畏まった様子に違和感を覚えずにはいられなかった。
 「あったりまえじゃん」
 里沙ちゃんが変な動きで頷く。分かり易過ぎるサブリーダーに胸が潰れるみたいだった。
45 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:09

 「ほやな、また花火したいね」
 「今度はもっと広い場所でやりたいけど」
 「いやだっ」
 里沙ちゃんのもっともな提案にジュンジュンが怖い顔で抗った。
 「場所が広いと田中が逃げる」
 「別に、れいなを追いかけなくてもいいんだよ、ジュンジュン」
 「そうなのか。田中が逃げるから悪い」
 「まず、田中さんのこと呼び捨にしたらアカンって何回も注意してるやろ」
 「れいなは一番チビだしね、田中でも仕方ないんじゃない」
 「亀井さん無責任に同調しないでください」
 これはきりがない。
 明日もお仕事早いんだから、さっさと切り上げなきゃ。
 「ガキさん」
 ゴミの入った袋を丸めて手に持った。
 「今度はバケツ忘れんようにせんとな」
 「うん。バケツ忘れないでね、リンリン」
 「バケツ、分かる? 」
 「OK、OK! バッチリです」
 「……なんか、不安だ」
 「そうして、不安になった愛佳がバケツをちゃんと用意するパターン」
 「さすが、サブリーダー」
 「ちょっと、リーダーは? 」
 早くこのぐだぐの会話を終わらせな。
 終わらせなアカン。けど。
 もう少しこのままでいたいのが本音だった。
 愛佳の携帯電話が鳴り、呆気なくそれぞれ帰路に就くことができた。
46 :燃え尽きるまで :2010/08/16(月) 23:10

 「また明日ね」
 手を振って別れた。きっと明日も同じことが繰り返される。

 
47 :_ :2010/08/16(月) 23:11

 
48 :_ :2010/08/16(月) 23:11

 
49 :寺井 :2010/08/16(月) 23:15
レスです
>>25 :名無し飼育さん
コメントありがとうございます。
私は菅谷さんの貫禄に骨抜き状態です。
お言葉本当に嬉しいです。

>>26 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
すんません笑
寺井と申すものです。こちらでもお付き合い頂けたら幸いです。

以上、やっつけです。
50 :名無飼育さん :2010/08/29(日) 19:32
れいなとジュンジュンがw

娘。たちから見るリーダーとか、リーダーから見た絵里とか
画が鮮やかに浮かびました
花火に行くまでといいなんですかねえこの人たちは…うまく言えないですが、良かったです
51 :寺井 :2010/10/18(月) 08:00
レスです
>>50 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
もったいないお言葉!嬉しいです。
ほんとうに励みになります。
れいなとジュンジュンって普段からねこと飼い主みたいな状況だって
わたし、勝手に思いこんでます
ありがとうございます。
52 :寺井 :2010/10/18(月) 08:04
更新しまーす
Berryz工房レインボー主演「三億円少女」全公演終了おめでとうございます。

 
53 :10KB未満劇場_その1。 :2010/10/18(月) 08:04

 
 ◇ ◇ ◇


 
54 :10KB未満劇場_その1。 :2010/10/18(月) 08:05

 そういえば、こないだ熊井ちゃんとお出掛けしたんですよ。って、なんで私敬語なんだろう。普通に喋ってもいいですか? て、だから。誰に許可もらえばいいのか分からないんで。そのへん臨機応変にやっていきます。
 話戻します。熊井ちゃんって、Berryz工房の熊井友理奈ちゃんのことなんですけど。私より一つ年下で、ベリーズでは一番背が高いんです。ハローの中でも身長はトップですね。すごいモデルさんみたいな体型で美人だし、恰好良いし、憧れる部分も多いんですよ、見た目は。中身はやっぱり熊井ちゃんなんですけど。熊井ちゃんって見た目あんなに大人っぽいのに、普段はそんなことないんです。食べ物の好き嫌い多いし、妙に細かい突っ込みするクセに他人任せにすることあるし。ベリーズの中で、外見で結構得してますよね。あ、全然それが悪いっていうんじゃないんです。見た目と中身にギャップがあるなぁっていうだけで。熊井ちゃんはあのままでいいと思います。

 
55 :10KB未満劇場_その1。 :2010/10/18(月) 08:05

 何の話しようとしてたか忘れちゃったじゃないですか。熊井ちゃんですよね。そうそう、熊井ちゃんとリハーサルの後遊んだってこと言おうと思ってたんだ。その時は約束とかしてなくて、なんとなく、行く?行こっか。みたいなノリになって何にも考えてなかったんですけど。とりあえず、原宿行こうってことになって。でも、途中で熊井ちゃんがやっぱり渋谷に行きたいって言い出して。人多いし私嫌だったんですけど、一回言い出すと熊井ちゃんなかなか頑固者だから。ま、いっかって渋谷に行ったんです。
 熊井ちゃんに何か渋谷に用事あったの?って聞いたら。最近、渋谷の空気吸ってないとかワケ分かんない理由言ってきて。渋谷の空気も原宿の空気もそんなに変わんないっていうか渋谷の方がなんとなく排気ガスとか多そうだし空気悪いんじゃないかって思ったんです。わざわざ渋谷に空気吸いにいく人なんて熊井ちゃん以外絶対存在しない。しかも今度、コンサートで回らしてもらうし。別に用事も無いのにわざわざ行くとか意味分かんなくないですか? そういうのベリーズでは多いんですけど。みんな理屈とか関係ないみたいなんです。

 
56 :10KB未満劇場_その1。 :2010/10/18(月) 08:05

 渋谷に来て、また何する?って話になって。渋谷行きたいって熊井ちゃん言ったから詳しいのかと思ったらそんなことなくて。もう、「ちぃ考えてよ」ってやっぱり他人任せにしてきて。はぁ?ってちょっと思ったんですけどせっかく来たからすぐ帰るのはもったいないなぁってとりあえずプリクラでも撮ろうって提案したらはしゃいでました、熊井ちゃん。めっちゃ子どもっぽい。そういう素直な部分がかわいいんですよね、多分。多分です。

 
57 :10KB未満劇場_その1。 :2010/10/18(月) 08:05

 * * *


 
58 :10KB未満劇場_その1。 :2010/10/18(月) 08:06

 その後、お店入ったんですよ。熊井ちゃん家遠いから早めにご飯食べておこうと思って。イタリアンのファミレスっぽいお店にして。熊井ちゃんお家でご飯食べるからドリンクだけ頼んでました。私の頼んだペンネグラタンつまみ食いしてましたけど。
 なんかリハーサル上手くいかないねって話になったんです、その時。先生に怒られてばっかだし、結構ベリーズの息も合ってないっていうか、ホントにばらばらで。まだリハーサル始まったばっかりだったんですけど。これはマジでヤバいんじゃないのってみんなそれぞれ思ってるっぽくて。リハーサル終わってからあんまり話しもしなかったし。みたいなこと、熊井ちゃんも同じように言ってて。それは私がさっき言ったからって思ったんですけど、溜め息だけ吐きました。熊井ちゃんも同じように溜め息吐いてて。とりあえず、「熊井ちゃーん」って責めておきました。全然気付いてなかったっぽいけど。
 結局こういう場合のオチって、これから頑張ろうって方向にもってくしかなくて。時間も限られてるし。やるだけやろうって。それは分かってるんだけど。でも、一人で思うのと他のメンバーと言い合うのとではちょっと違うかな。なんか明日は上手く行きそうな気がしたし。頑張ろうって改めて思いました。
 熊井ちゃんがそろそろ電車乗るって言ったんで、私も同じ方向だし途中まで一緒に帰ったんです。
 乗り換えで先に熊井ちゃんが電車降りる時、突然「ちぃ」って名前呼ばれて。何かと思ったら、握手、みたいな顔してたんです。電車の中、普通に人たくさん乗ってたし、恥ずかしかったんですけど、拒否したら熊井ちゃん悲しむかなって一瞬思ったら咄嗟に自分の手が出て、なんか自分のことなのに超びっくりしました。
 特別なことは言わずに、熊井ちゃんは「じゃあね」って笑ってました。なんもないのかよって内心がっかりしましたけど。そこも熊井ちゃんらしいと思います。

 
59 :10KB未満劇場_その1。 :2010/10/18(月) 08:06

 * * *


 
60 :10KB未満劇場_その1。 :2010/10/18(月) 08:06

 あれですよね。私の意見も言わなきゃいけないんですよね、これ。こう見えて何にも考えてないワケじゃないんですよ、ホントに。ももの方が絶対適当ですからね。だから、私は梨沙子の気持ち分かります。梨沙子はベリーズで一番年下だし。梨沙子の発言が一番効き目あったりするんですよね。梨沙子、幽霊とかそっち系にも強いみたいですけど。感受性が豊かっていうか。熊井ちゃんとは逆です。あの子色んなこと感じやすいから。一番傷付いたのかもしれないです。なんか気付いてあげれなくてごめんってホント思いますけど。だからって私も一緒に責めるのは違うかなっては思います。で、熊井ちゃんがどう考えてるのかよく分かんないけど。次は熊井ちゃんの番です。

 
61 :_ :2010/10/18(月) 08:06



 
62 :_ :2010/10/18(月) 08:07



 
63 :寺井 :2010/10/18(月) 08:08
10KB未満劇場その1。以上です

なんだかんだやっつけです。
続きます

 
64 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:57
 
 ◇ ◇ ◇


 
65 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:57

 あー、オホン。Berryz工房、熊井友理奈です。最近は寒くなってきたので、温かいスープにはまってます。だけど、まだ寒くなりかけのお天気なのでこないだ行ったモスでクラムチャウダーを飲んだだけなんですよ、実は。だからこれからもっと詳しくなりたいなって思ってます。あ、クラムチャウダーのスープが美味しかったです。具のほとんどは、一緒に行ったみやが食べてくれました。私、あんまり魚介類が食べられないというか、苦手で。一人では絶対クラムチャウダーは頼めないんですけど。その時はなんかどうしてもクリーム系がよくて。みやがいたし、お魚とか貝とか全然食べれないのに頼みました。いや、でもみやもクラムチャウダーめっちゃ美味しいって言ってました。本当ですよ。

 
66 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:57

 今日は須藤茉麻ちゃんについてお話させて頂くんですけれども。みなさん、須藤茉麻ちゃんをご存知でしょうか。私と同じBerryz工房というグループに所属していて、高校3年生です。ちなみに私は高校2年生で、まぁさんより1個、歳下です。あ、まぁさんっていうのは、須藤茉麻ちゃんのことなんですけど。ベリーズのメンバーみんなはまぁとか茉麻って呼んでるですが、私はまぁさんって呼んでます。すごくないですか? あだ名で呼ぶだけでさん付けなんですよ。すごーい。でも、さん付けでも違和感ないくらいまぁさんはまぁさんっぽいんです。
 なんていうか、ファンの皆さんのイメージではベリーズの母ってくらいしっかりしていて。Berryz工房のメンバーで一番年下の菅谷梨沙子ちゃんはまぁさんのことママって呼んでるくらいホントしっかりしてるんです。メンバーの面倒をよく見てるし、顔色とかも見てるし、知らない人がそこら辺にぽいってゴミを捨てても後から拾うし。よく見てるなぁって思います。
 1日のスケジュールとかもきちんと自分なりに立ててて。これ終わったから、次これやる。とか。こっち先にできそうだから今やっとく、とか。私そういうのあんまできないから、書き物とかいっつもぎりぎりになることが多くて。まぁさんにはスケジュール管理のコツを教えて欲しいですね。

 
67 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:58

 後は、まぁさんってしっかりしてるのもあるけど。頼りにもなるんですよ。ベリーズで一番力持ちだし。守ってくれる、みたいな感じで。女の子なんですけど、恰好いい頼りになる部分もあるっていうか。腕相撲マジで強いですから。秒殺? 瞬殺?勝てないですね。しかも、顔もマジなんです。めっちゃ怖いんです。顔で笑ってても目は笑ってないから。他にもまぁの頼りになる部分があって。えーと。そうですね。何かなぁ。たくさんあるんですけど、すぐに出てこない。けど、まぁ。まぁさんは頼りになるっていうことです。

 
68 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:58

 * * *


 
69 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:58

 まぁってベリーズのイベントとかで司会? 進行する役割が多くて。キャプテンもMCとかやるんですけど。あ、キャプテンっていうのはBerryz工房の清水佐紀ちゃんのことで、Berryz工房は他のグループとは違って、モーニング娘。さんだったら高橋さんがリーダー、℃-uteだったら矢島舞美ちゃんがリーダー、だと思うんですけど。グループのリーダーがBerryz工房ではキャプテンって呼ばれてるんです。で、Berryz工房キャプテンの清水佐紀ちゃんもMCとか司会をするけど、やっぱりまぁの方がMC担当ってイメージです。キャプテンは最後、締めの言葉を言う、みたいな感じですよね。まとめるのもすごいと思います。やっぱりキャプテンにしかできないなぁって思うし。キャプテンはベリーズのこともすごい考えてて。これから、どうして行きたいとかはっきり言えたりするんです。恰好良いですよね。私も徐々にそういう、しっかりした内容をはっきり言えるようになりたいです。

 
70 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:59

 まぁも、あ。まぁさんも結構はっきり意見を言えるタイプで。しかも、その内容がうんうんって納得できるんですよねいつも。正しいっていうか。熊井ちゃんさぁ、今こう言ったけど、ホントはこういうこと言いたかったんじゃないの? みたいな諭す感じで。あー、例えば。どうだったかな。例えばー。
 えー。あ、最近なんですけど。梨沙子、Berryz工房の菅谷梨沙子ちゃんなんですけど。その菅谷梨沙子ちゃんが泣いちゃった時があって。結構その時梨沙子感情的になってしまって。びっくりしたんですけど。その時もまぁさんは落ち着いてて。梨沙子のフォローをしてあげてたんですよ。梨沙子ってきちんと名前を呼んで、落ち着かせるように、まっすぐ目を見て聞いてあげてました。ごまかしたり楽な方に流すとかしないで。最後まで梨沙子がどういうことを言いたかったのかって聞いてあげようとしてて。その時梨沙子やっぱり上手く言葉にできてなかったんですけど。まぁは、分かるよって言いながら自分まで泣きそうになってました。まぁさんはコンサートとか、舞台の千秋楽でもいつも笑顔で、人前では泣かないイメージが強かったからそっちにも驚きましたけど。咄嗟の時も年下のメンバーの立場になって話を聞けるのはすごいなぁって思ったし。自分以外にメンバーが他6人もいるのに、みんなのことちゃんと見ることができてるんだなぁって改めてまぁのすごい部分を知ることができました。

 
71 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:59

 * * *


 
72 :10KB未満劇場_その2。 :2010/10/20(水) 07:59

 このことですよね、最後に自分の意見を言わなきゃいけないやつって。えーっと、そうですね。グループでやってる以上しょうがないって部分もたくさんあるんですけど。それをしょうがないって簡単に流しちゃうんじゃなくて。やっぱり気になったこととか。アレって思ったことは、誰かに一回聞いてみたり、ちょっと時間作ってメンバーみんなで話し合ったりすることが必要だったんじゃないかなって思います。以上、熊井友理奈でした。次は須藤茉麻ちゃんです。

 
73 :_ :2010/10/20(水) 07:59



 
74 :_ :2010/10/20(水) 07:59



 
75 :寺井 :2010/10/20(水) 08:00
10KB未満劇場その2。以上です


続きます
76 :名無し飼育さん :2010/10/21(木) 02:11
新しい話きてたんですね
続きお待ちしています
77 :寺井 :2010/10/23(土) 07:53
レスです
>>76 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
おお、レスがついた!ちょっとびっくりしました。
嬉しいです。続きです。よろしければお読みください。
わーいわーい。
ありがとうございます。
78 :寺井 :2010/10/23(土) 07:54
と、いうことで。更新します。
その3。です。

 
79 :10KB未満劇場_その3。 :2010/10/23(土) 07:55
 
 ◇ ◇ ◇


 
80 :10KB未満劇場_その3。 :2010/10/23(土) 07:55

 こんばんわ。須藤茉麻です。ご覧になられてる方は夜じゃないかもしれないですよね、今はこっちは夜なんですけど、事務所のどこか、会議室みたいな場所にいます。
 どーもー、改めまして、Berryz工房の須藤茉麻です。そうですね、最近は。だんだんね、寒くなってきて、若干今まぁは鼻声なんですけど。みなさんも風邪とかね、インフルエンザ怖いですからね。お家帰ったら、うがい手洗い忘れずにしましょう。まぁはですね、なんですか、あの、うがいする時、お茶でするんですけど。お家で普通にいれた緑茶でただのお茶なんですよ。それで、うがいを必ずします。なんか、お茶には殺菌作用があるみたいで、メンバーの熊井ちゃんが言ってたんですけど言ってた本人は別に家でやってるワケじゃないみたいでした。熊井ちゃん今のところ元気そうなんでま、いいんじゃないかな。はい、ぜひ、みなさんも試してみてください。
 では。今日はBerryz工房の菅谷梨沙子ちゃんについてお話させて頂くということで。前回は熊井ちゃんがまぁについてお話してくれたんですよね。何喋ったんだろう。あー、でも想像できますよ。ふふふ。多分、たくさん褒めてくれたんだと思います。でも熊井ちゃん真面目だからなー、変なこと暴露されてたら嫌だな。ふふ。

 
81 :10KB未満劇場_その3。 :2010/10/23(土) 07:55

 * * *


 
82 :10KB未満劇場_その3。 :2010/10/23(土) 07:55

 あー、と。菅谷梨沙子です。そう、Berryz工房菅谷梨沙子ちゃんはですね、見た目は。そうですね、言っていいのかなぁ。ちょっと恥ずかしいですね、こんなことあんまり言わないですから。ねー、でもすごいかわいですよ。肌も白いし髪型とかもふわふわしてていかにも女の子、みたいな。男性の方だったら、思わず守ってあげたくなっちゃうような雰囲気なんですけど。梨沙子は、今年で高校1年生でベリーズでは一番年下なんです。若っ。まだ高校1年生なんですよね。ホント若いな。なので、わがままっていうか、甘えてくるような態度もこれが似合うんですよ。上目遣いでお願いされたら、誰も断れません。
 モーニング娘。の、道重さゆみさんいらっしゃるじゃないですか。道重さんは梨沙子のことが大好きらしくて、CDとかわざわざ自分で買って下さるんですけど、ベリーズの楽屋とか来てくれて。サイン下さいって、もも使ってベリーズのサインCD勝手に作ったりしてるんです。特に梨沙子が大好きだから、梨沙子の写真集とかDVDとか発売前から手に入れてるらしくて。すごいですよね。同じハローの先輩がそこまで大好きになっちゃうくらいヤバイです、梨沙子のかわいさ。

 
83 :10KB未満劇場_その3。 :2010/10/23(土) 07:56

 まぁだけが知ってる梨沙子のかわいい部分か。なんだろう。普通にかわいいですよ。普通にかわいいとか言っちゃったし。メンバーがこれを見ることはないからま、いいか。女の子のまぁからしても憧れるくらいかわいいです。別に何にもしなくてもかわいいし。でも、動くと結構男らしいというか、無茶なことするから。じっとしていた方がどっちかといえば、かわいいかもしれないです。
 歌ってる時はまた別のかわいさかな。梨沙子が歌ってる時の表情とか、雰囲気いいですよね。なんて言ったらいいか難しいな。表現足りなくて申し訳ないんですけど。でも、歌ってる梨沙子はいいんですよ。
 コンサートみたいに振りがあったり表情付けたりしてる梨沙子もやっぱりアイドルだからかわいいし。レコーディングとか、歌だけに集中してる姿はファンの方は見れないと思うので、貴重だし。同じベリーズでも一緒に録音することがあんまりないので、実際他のメンバーのレコーディング姿は貴重なんです。歌う曲によって、表情をわざわざ付けてなくても、すごく幼かったり、すごく大人っぽく見えたりして面白いですよ。お芝居が好きって言ってる理由がなんとなく分かります。
 あと、鼻歌? 空き時間とかメイクしてる時とか無意識に口ずさむ梨沙子はめちゃくちゃかわいい。あれはヤバイですよ。いつも一緒にいると聞き流してること多いんですけど。ハローの歌とかベリーズが多いっちゃ多いかもしれない。だいたい、その前の日の夜とか聴いてた曲を歌っちゃうみたいで。月曜日とかだと、聴いたことあるけどなんだろう、この歌なんだろうって思ったら。普通にサザエさんの歌だったりします。ああ、昨日の夜たまたま見てたんだって。ドラマにはまってたりすると、その主題歌ですからね。分かり易いですよ、梨沙子。

 
84 :10KB未満劇場_その3。 :2010/10/23(土) 07:56

 * * *


 
85 :10KB未満劇場_その3。 :2010/10/23(土) 07:56

 で、最後になんか言わなきゃいけないんですよね。
 梨沙子は分かり易いですけど。ももは逆です。なんも考えてないのか何を考えてるのか分かんない時あります。メンバーが何を考えてるか全部分かるわけじゃないんです。でも、ももは周りを不安にさせるような感じで。本気で何も考えてなかったりするし。ももだから仕方ないかぁって半分諦めてますけど。

 
86 :10KB未満劇場_その3。 :2010/10/23(土) 07:56

 梨沙子はもものことが好きだからあの時怒ったのかな。ももだけを怒ったんじゃなくて。色んなことが積み重なってスイッチ入れちゃったのが偶然ももだっただけなんです、多分。
 怒るっていうか、悲しませたっていうか。それをみんなの前で言うのってかなりキツイし。そういう役目を梨沙子にさせてしまったのは後悔してます。
 自分に何ができるんだろうって考えますけど。難しいですよね。ただ、梨沙子とか、メンバーに対して。不安にさせたり悲しませたりするようなことはまぁ絶対したくないから。何ができるっていうより、これからも変わらずやっていくしかないし。なので、頑張ります。
 はい、では以上須藤茉麻でした。次は菅谷梨沙子ちゃんが登場します。

 
87 :_ :2010/10/23(土) 07:57



 
88 :_ :2010/10/23(土) 07:57



 
89 :_ :2010/10/23(土) 07:57
10KB未満劇場その3。以上です


続きます
90 :名無飼育さん :2010/11/24(水) 21:01
続くのね
期待してます
91 :寺井 :2010/12/29(水) 14:48
レスです
>>90 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
続きます!
ご期待に応えられるよう拙いながらも精進いたします。
ありがとうございます。
92 :寺井 :2010/12/29(水) 14:49
と、いうことで。更新します。
その4。です。
93 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:49
 
 ◇ ◇ ◇


 
94 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:50

 Berryz工房、菅谷梨沙子です。はい、みなさん、お元気でしょうか。私はまぁ、元気っていうか普通ですね。秋は、読書の秋とかスポーツの秋とか言いますけど。食欲の秋にならないように気をつけています。スポーツは、コンサートとかダンスレッスン以外ではあんまり積極的に身体動かしたりしないんですけど。読書は好きで季節にかかわらず、結構読んでいますね。最近読んでいるのは、ミステリー系で。同じBerryz工房の須藤茉麻ちゃんが読んでいたのを貸してもらっているんですけど。はまっています。ミステリーだから次が気になってしまうので夜は読まないようにしていて、寝られないから。電車中とか、待ち時間とか。強制的に、絶対読むのをやめなきゃいけないって決まっている時間に読むようにしています。超面白いですよ。
 
95 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:50

 はい、今日はBerryz工房キャプテン、清水佐紀ちゃんについてお話させていただく、ということで。まったく台本とかないんですよ。大丈夫かなぁ。お題はBerryz工房のキャプテン清水佐紀ちゃんについてっていうだけであとはフリートークなんです。纏まるかな。はい、ごめんなさい。不安もありますけどできるだけ纏められるように、うん、まあ、やるだけやります。
 
96 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:51

 * * *


 
97 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:51

 キャプテンですよね。Berryz工房の清水佐紀ちゃん、は……。泣き虫ですよ。すぐ泣くもん、だって。嬉しくても、悲しくても、感動すると泣くし。この間、移動中の車の中でも泣いていて。びっくりしました。ただの移動ですよ? コンサートとか、映画観ている時とか、何かしている時なら分かります。でも、移動の車で座って、一人で泣いてて。驚きましたね。何かにすごく悩んでいるとかっていうワケじゃなかったらしくて。たくさん、なんか色んなこと考えてて、気持ちが昂ぶって涙が出ていたらしいですけど。泣きすぎですよね。本当に心配なったりしますもん。
 
98 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:52

 キャプテンは普段から泣き虫ですけど、ふざけることもあるし、バカみたいなことみやとかちぃとやってるし。面白いキャプテンっていう一面もあるんです。楽屋で逆立ちとかやり始めてて。運動神経いいのは分かるんですけど。何したいんだろうって。逆立ちですよね。逆立ちは分かるんですけど、今? って思いました。突然、床に手を付いて、足を壁に向かって蹴り上げるし。ポケットに入っていた携帯とか、リップとか、ばらばら落とすし。まぁがとりあえず何しているのかって聞いたら、逆立ちってキャプテンが答えていて。どうするのかなぁって見てたら。まぁはそれっきりキャプテンのこと放っておくんですよ。みやとか熊井ちゃん爆笑していて。笑ってる場合じゃないじゃん。って思ってもキャプテンずっと逆立ちしてるし。頭に血が昇ったら大変じゃないですか。だから心配になってきて。声掛けようとしたら、いつの間にか隣でみやが逆立ちに悪戦苦闘していました。やらなくていいからって。そこまで真似しなくていいって思いません?もう、ホントに。 変な二人でした。怪我したらヤバいし、その時は危ないからやめなって一応止めましたけど。ってか、私が言うまで誰も止めなかったんですよ。他にもメンバーがいたのに。まぁは、あの時どうして放置したんだろう。人のこと全然言えないんですけど、ベリーズのメンバー自由すぎるんです。それが良いと思えば、良いんでけどね。
 
99 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:52

 * * *


 
100 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:52

 面白いキャプテンなんですけど。でもキャプテンには、感謝です。ほんっとに感謝してもしてもし足りないくらいです。ありがとうございます。キャプテンはほんと、ベリーズの、グループのことを考えていてくれて。メンバーの誰よりもやっぱり色んなこと考えているんですよね。メンバーのことも一人ひとり見てくれているし。自由過ぎるメンバーにもあんまりイライラしているとことか見たことないし。キャプテンだから、いっぱい我慢していることとかあると思うのに、そういうとこ一切見せないから。ああ、大変なんだろうなってちょっと申し訳ないとか思うんですけど。なかなか、助けてあげられないっていうか。引っ張ってくところは引っ張ってくし。自由な部分は自由で楽しくて。締めるところは締める、みたいなそれがもう自然にできていて真似できないですよ。キャプテンは、やっぱりキャプテンなんだなぁって尊敬しています。
 
101 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:53

 舞台の稽古もそうだったんです。台本が完璧頭に入っているんですよ。相手の俳優さんのセリフまで完璧で。私が分からなかったり、納得いかなかったり、お芝居について悩んでいる時も最後まで付き合ってくれて。こう、申し訳ないなって思ったりもするんですけど。キャプテンだって自分のお稽古したいじゃないですか。だけど、私のちょっとした変化に気付いてくれて。楽屋とかでも突然お芝居のきっかけをキャプテンの方からセリフを言ってきて。練習に付き合ってくれるんです。どうして分かるんだろうって。後から思いました。やっぱりメンバーのことをちゃんと見てくれているからなんですけど。ホントに真似できないですね。
 
102 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:53

 昔から泣き虫で。感情移入してしまってすぐ気持ちが何にでも入っちゃう人なんだと思うんです。そんな人がBerryz工房のキャプテンとしてデビューからずっとグループを引っ張ってくれて。人一倍苦労も多い上に、泣き虫の所為で7人分泣くから。体持ちませんよね、普通。メンバーが悲しいと自分も悲しくなっちゃうし。嬉しかったら自分のことみたいに喜ぶし。そこまで他人のことで泣いたりできないです、体力的にも、気持ち的にも。ももとかまぁとかあんまり泣かないけど。キャプテンがその分泣いてあげているのかもしれない。私にはできないから、本当に感謝しています。これからも、よろしくお願いします。
 
103 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:53

 ◇ ◇ ◇


 
104 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:53

 ももに、言いたいことは、あの時全部言ったから、もうないんですよ。言ったからってどうしたいのかっていうと困りますよね。でも、ももには知っていて欲しかった。付き合い長いし。言わなくても分かっているのかもしれない。でも、ももは分かってないんですよ。
 もも自分で、みんなもものことが好きなんでしょ、とか冗談みたいに言うけど。……んー。やっぱ分かってるのかな。うーん。ももは分かってるのかなぁ。メンバーのこと好きとか嫌いとか、一緒にいる時間が長すぎてよく分かんなくなっちゃったけど。メンバーはやっぱり大切ですし、好きなんですよ。好きだけど。ただ好きっていうだけでもなくて。直接言わなくても伝わってしまう部分がたくさんあると思うんです。色々な方と一緒にお仕事させて頂いていても、やっぱりメンバーにしか理解できない部分っていうか。勝手に分かってしまう部分みたいな。特別な関係なのかもしれないですけど。
 
105 :10KB未満劇場_その4。 :2010/12/29(水) 14:54
 でも、不安になる時だってあるし。もものこと好きだってももが分かってくれているのかなって。ももはベリーズのことどう思っているのか。分かっているつもりになっちゃってて。本当の気持ちなんてやっぱり言ってもらわないと分からないんですよね。

 こういうところが私子どもなんですよ。相手の気持ち考えないで感情をぶつけてしまったり。傷付けちゃったかもだよね。ごめんね、もも。

 こんな感じでいいですかね。
 以上、菅谷梨沙子でした。
 次回は、キャプテン。清水佐紀ちゃんが登場します。バイバイ。

 
106 :_ :2010/12/29(水) 14:54



 
107 :_ :2010/12/29(水) 14:54



 
108 :寺井 :2010/12/29(水) 14:55
10KB未満劇場その4。以上です

続きます
109 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:05
 
 ◇ ◇ ◇


 
110 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:06

 こんにちわ、Berryz工房、清水佐紀です。ふふ、緊張する。まだ始まったばかりだけどこういうの一人だと何を喋っていいのか分からなくなりますね。やばーい。普段はみやとかちぃとか盛り上げてくれますから。頼りっきりなんですよ。いつも。どうしよう。本当に一人だ。台本もないですし。これ、スタッフさんもいないんですよ。すごい寂しい。一人で喋っているんです。でも、この向こう側には皆さんがいるって思って、今お話させてもらっています。やっほー。ふふ、手を振っても見えませんよね。
 
111 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:06
 今、Berryz工房は2010秋、ベリ高フェス!という11月から始まるコンサートに向けてリハーサル真っ最中なんですけど。タイトルでお分かり頂ける通り、高校の文化祭がテーマになっていて今回もBerryz工房らしい、盛り上がれる曲がそろっています。皆さんと一緒に楽しめたらと思いますので、ぜひ遊びに来てください。よろしくお願いします。懐かしい曲も結構あるので、一人ひとり成長を実感しながらリハーサルをしています。嗣永桃子ちゃんと私は高校を卒業しましたし、小学生だった梨沙子も高校生ですからね。大人っぽくなったBerryz工房をお見せできたらいいな、と思います。
 そして、今日はこれからが本番です。今日は夏焼雅ちゃんについてお話させて頂くんですが。みやかぁ。いっぱいありますよ、みやはメンバーの中でも話題の絶えないムードメーカーなんです。……みやですよね。何か改めて話そうと思うと照れますね。
 
112 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:06

 * * *


 
113 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:06

 夏焼雅ちゃん、メンバーからはみやって呼ばれていて、私もみやって呼ぶことが多いです。ベリーズの中ではオシャレ番長という位置なんですけど。服装ももちろんオシャレですし。もうなんていうか、性格? 明るい性格で、見た目もオシャレで目を惹くし、みやから出ているオーラがきらきらしてますよね。女子からも男子からも好かれるクラスの人気者、みたいなオシャレ番長です、夏焼雅ちゃんは。
 
114 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:07

 みやは、明るいし元気だし、Berryz工房とは別のユニットBuono!の活動ではバンドの生演奏にも負けないくらい本当に恰好良かったりするし、歌とかダンスでいつもグループを引っ張っていってもらっているなぁと思うんです。みやに憧れている子も多いし、先輩から褒めてもらうことも多いんですよ。人懐っこいという表現が正しいかはちょっと分からないけど、みやが人懐っこいから、自然と周囲に人が集まってくるのかな。だからその分、プレッシャーも多いはずなんです。すごい、すごいって他の人から言ってもらえることは嬉しいんです。嬉しいし頑張ろうって思うじゃないですか。みやは、色んな人から注目を浴びちゃう分、見えないプレッシャーがキツい時ありますよ。本人がそういう愚痴みたいなことは口にしないんですけど、キツいんじゃないかなって心配になる時があるんですよね。
 
115 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:07

 出来ないって泣いちゃっている時があるから。もう、こっちまで苦しくなっちゃって。十分出来ているのに、そんなに自分を追い詰めなくていいのに。泣いているのに自主練やめないし。どうしようってこっちが辛くなっても仕方ないんですけど。みやの壁はみやにしか越えられないし。結局私は何にもできないから、この前の夏のハロコンでは、「夢見る 15歳」を頑張って踊りました。みやが笑ってくれてよかったです。スマイレージの和田彩花ちゃんお墨付きです、私の「夢見る 15歳」は。いつか、どこかでももに負けずに披露させてもらっちゃおうかな。
 
116 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:07

 昔から変わっていないですね。自分の中で戦って泣いている姿が、一瞬ちっちゃい頃のみやと重なる時があります。ずっとずっと泣きながら強くなってきたんですよ、Berryz工房は。
 みやが自主練する時に付き合うことが多かったから、私はそういう心細い様子のみやを見ることが多かったのかなぁ。その分、プレッシャーを乗り越えたみやの笑顔を見るとこっちが泣きたくなるから、困るんですよね。たまには私だって笑って締め括りたいって思うのに。みやの笑顔はマジ反則ですから。ファンの皆さんならお分かり頂けると思います。超最っ高の笑顔ですよ。嬉しいとかほっとするとか、色んな気持ちがごちゃ混ぜになってしまって、泣いてしまうんです。本当に、申し訳ございません。
 
117 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:08

 知らないんですよ、多分メンバーも。私がよく泣くって思われているのは仕方ないんです。映像で残っている中では私がたくさん泣いてしまっているから。でも、みやも結構泣いてるから。映像に残っていないだけで、泣いているんです。
 あ、年下? 千奈美とかまぁとかは見ているかもしれないですけど。多分、年下メンバーには泣いている姿見せないようにしてますよ、みや。嬉しい時とかめっちゃ感動した時とかワケ分かんなくなってわあわあ泣いていますけど。梨沙子にも熊井ちゃんに対しても、不安にさせちゃうような、心細い、みたいなそういう雰囲気は出さないんじゃないかなぁ。
 
118 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:08

 オシャレでかわいくて、頑張り屋さんで。明るくて、恰好良くて、優しくて。こんな子が側にいたら、みんなみやを好きになっちゃいますよね。はい、私も、夏焼雅ちゃんのこと、大好きです。
 
119 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:08

 * * *


 
120 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:09

 で、最後に。梨沙子とももについて自分の思ったことをお話させて頂いて締める。いい感じでここまで来たんじゃないですかね。最後びしっと締めて終わりたいと思います。
 どっちが悪いっていうのは100%ないんです。グループでやっていくには、自分も悪かったっていう反省がないと成り立っていかないから。理由をきちんと述べてお互い分かり合っていかないと、無理だから。相手を信じてぶつかっていくことが必要だったりするんですよね。
 梨沙子のぶつかり方はちょっと激しかったけど。ももを信じていることは分かるっていうか伝わってくるっていうか。ももも、多分分かっていて。ちょっと、もも自身に何かあるんでしょうね。梨沙子、そういうのに過敏だから我慢できなかったっていうか。悲しかったのかもしれないし。
 
121 :10KB未満劇場_その5。 :2010/12/30(木) 19:09

 ももは何を不安になってしまったのか、今はちょっと分からないけど。何があっても、ベリーズはベリーズですから。大丈夫です。ももも、どうしたらいいのか自分で気付いていると思います。大丈夫です。

 ということで、次は夏焼雅ちゃんの登場です、と言いたいところですが。
 あとは任せたよ、もも!
 
122 :_ :2010/12/30(木) 19:09



 
123 :_ :2010/12/30(木) 19:09



 
124 :寺井 :2010/12/30(木) 19:10
10KB未満劇場その5。以上です

続きます
125 :名無し読者 :2011/01/02(日) 23:47
あけましておめでとうございます。
続き待ってます
126 :名無し読者 :2011/01/15(土) 01:44
あけおめでございます。
今年も楽しみに更新を待っています。
127 :寺井 :2011/08/03(水) 21:34
内容:
あけましておめでとうございます。
そして、熊井ちゃんハッピーバースデー!
更新しまーす
登場人物はBerryz工房です。

10KB未満劇場ではなくてごめんなさい。
128 :寺井 :2011/08/03(水) 21:35

 ◇ ◇ ◇

 
129 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:38

 時は2011年。夏。
 ハロー!プロジェクトに所属するBerryz工房の7人は窮地に立たされ危機に直面していた。
 熊井友理奈が8月3日に誕生日を迎え、平均年齢がまた微妙に吊り上がる。
 平均年齢は上がっていくが、売上に関していえばなかなかそうもいかず。毎回試行錯誤を繰り返し、そろそろ策も尽きてきた。何しろ、デビュー7年目を向え。メンバーの入れ替えも無い。
 "マンネリ化"
 その言葉を避けたいが為にここ数年、奇抜と表現されてもおかしくない賭けを繰り返している。メンバーの本意ではなくとも、プロデューサーや周囲のスタッフは普通では考えられない試練を10代そこそこのBerryz工房へ仕向けては、彼女達は果敢にそれらを乗り越えて来た。
 今回の試練はサルの着ぐるみでも鯛の着ぐるみでもない。 
 そして、からあげ弁当の歌でもなかった。
 
130 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:38

 * * *

 
131 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:39

 「セクシー路線ってさぁ」
 夏の野外イベントの本番前。控え室と間違えて蒸し風呂に入ってしまったかと勘違いする程、温度と湿度の高まった部屋で自称身長176cmの熊井が口を開いた。
 このクソ暑い部屋の中で心頭滅却していた他6人は無言だった。元祖KY(KUMAI YURINA)が発言したかと思えば窮地の上に地雷を踏むスレスレの切り出し方だった。

 狭い密室で鼻息荒く、滲む汗と戦っているうら若き女子の姿は想像の仕方によって、セクシー路線なのかもしれない。セクシーへの虎の門。既に控え室からBerryz工房7人の戦いは始まっているとすれば。アイドル業はまったく楽ではない。もはや苦、でしかない。

 「今年は大人っぽいセクシー路線でグループの色を出していくっていうことは分かったんだ」
 もう、2011年は7ヶ月を終え8月を迎えたところだった。
 熊井は、車磨きのスポンジのような新素材でできた、汗拭き用タオルで首回りを拭いながら発言を続けた。
 「でも、セクシー路線って具体的にどういうの? 」
 答えが明確に分かっていたら、こんな蒸し風呂みたいな控え室で苦に耐える必要はない。華やかな共演者とのゴールデンタイム。メジャーなアーティストのコラボレーション。人生バラ色お喋り七色だ。

 「ねぇ、ちぃ。セクシー路線ってどういうこと言うの? 」
 まさか、そこで振られるとは思っていなかった徳永千奈美(19歳)は驚きのあまり、先月接待で行かされ見学した大相撲の関取たちを思い浮かべていた。徳永は賢い子だった。あれは、露出の多い姿でぶつかり合っているだけで、自分たちが目指すべきセクシーとは無関係だとすぐに悟る。
 「はるな愛さんとかクリス松村さんとか、そっち系じゃない? 」
 徳永の発言は完全にものいが付くレベルだった。
 どちらのタレントも、女性性を強調したキャラクターの演出であることは確実だが。Berryz工房、という曲がりなりにもアイドルとして7年キャリアを積んだ女子達が参考にするには根底が違いすぎる。彼らは男だ。
 
132 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:39

 熊井がふーん、と頷き掛けたその時。
 「ちょっと」
 まったがかかった。
 「千奈美は、適当なこと言って。ちゃんと考えなよ。そこんとこもっと深く」
 本人の自覚はともかくBerryz工房7人の中で、もしかしたら一番セクシーに近い場所にいる須藤茉麻の登場だった。
 「じゃあ、茉麻はどういうのがセクシー路線だと思うの? 」
 熊井と徳永の会話に横槍を入れ己の身を滅ぼす。Berryz工房では割とこういうバカを見る機会は珍しくなかった。
 徳永の切り替えしは当然の発言だ。
 他人の案を否定する場合は、自分に代替案がある時。大人の世界はそういうものと7人は身体で知っていた。
 「え、っと」
 須藤は言葉に詰まり、部屋の暑さで上気していた頬をさらに赤く染めた。徐々にその赤が耳の辺りまで広がっていく。
 視線は徳永から逸らされ、俯き加減でまつ毛が揺れている。
 そういうところがセクシーなんじゃないか、と部屋の隅から嗣永桃子(19歳)は須藤を見つめていたが、不用意な発言を彼女は避けた。どうせ自分の色気皆無の無垢さをオチに使われるなら、最後の方がオイシイに決まっている。と根っからのバラエティー体質の思考はオフモードの嗣永を無口にさせることが多かった。

 「うん。まぁさんは、どういうのがセクシー路線って思う? 」
 首を傾げ、下から覗き込むように熊井は須藤を見た。
 「……歌ってる時の梨沙子」
 須藤の梨沙子愛は筋金入りである。
 「えー」
 思わず、熊井が不平の声を漏らしていた。
 どっちかっていうとはるな愛やクリス松村より、菅谷の方がセクシーなのではないか、と夏焼雅(18歳)は内心熊井に突っ込みを入れたが。やはり夏焼も黙っていた。この暑い部屋の中で面倒臭い会話に巻き込まれるのは誰だって勘弁願いたい状況だろう。
 「ええー、梨沙子ぉ? 」
 熊井は存分に不満がっていた。どうやらお気に召さなかったらしい。
 「じゃあさ。梨沙子は? 」
 須藤のお蔭で話題を振られた菅谷梨沙子(17歳)は寝たふりをしてその場を凌ごうとしたが、手遅れだった。
 隣にいた徳永に背中を叩かれた。場所が悪かった。面倒臭いから適当に答えておこうと思った矢先。
 「踊ってる時のみや、は。ナシだから」
 何故か隣にいた徳永が得意気な表情で菅谷を見て言った。
 はるな愛やクリス松村発言のヤツにそんなドヤ顔される覚えはなかった。
 「そう、もっと参考になるようなセクシー路線が知りたいから」
 同じグループのメンバーは参考にならない、とでも言いた気な熊井こそ、どういうセクシー路線をイメージしているのだろうか。熊井以外の6人は理不尽な気持ちを味わった。
 「じゃあ、マリリン・モンロー」
 「そんなの、歴史上の人物じゃん。真似できないよ」
 セクシーな女優の代名詞ではあるかもしれないが、教科書にマリリンの名前が掲載されることは稀である。学生に説明するのも容易でない。
 
133 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:40
 
 「口元のホクロとか。やっぱセクシーじゃん」
 でも、熊井ちゃんが口元に今からニセホクロを付けたとしても。黒ゴマでも付いてるのかと思われるだけだ、とBerryz工房のキャプテン清水佐紀(19歳)は笑いを堪えるのに人知れず涙を流していた。

 いくらトップアイドルでスーパーかわいい魅力を持っていたとしても、セクシー女優の代名詞の真似をしたところで。素質がない限り10代そこそこでセクシーを表現するのはやはり難儀に違いなかった。
 
134 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:40

 * * *

 
135 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:41

 「一応、まとめるけどさ」
 熊井はBerryz工房7人の中でも、几帳面な性格だ。ペンを取り出しメモに残す。
 「まず、はるな愛さん、クリス松村さんでしょ」
 セクシー路線を目指す時その二人を具体例に混ぜると後でややこしいことになる。
 「で、梨沙子とマリリン・モンロー」
 熊井はわざわざ自分の手帳をカバンから出して書き込んでいた。後から読んでもきっと謎が深まるばかりのメモ書きだ。
 熊井は自分で書いたメモを見つめる。
 何かが足りない。何が足りないのか。しばらく無言で考える。
 
 "マリリン菅谷"

 と、一度文字にして熊井はすぐに打ち消し線を引いて誤魔化した。

136 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:41

 「他人の意見を聞くのはいいけどさー」
 熊井ちゃんはどう思ってるの、セクシー路線。
 徳永が、文句なしの晴天空高く響き渡るような清々しい声で熊井に質問した。そして熊井は質問に即答した。
 「ももには、まず無理」
 「そこかよっ」
 嗣永は思わず声に出して部屋の隅からここぞとばかりに自己主張を試みた。
 「だって、ももが今更、露出してビキニみたいな衣装着てさ。口元にホクロ付けてくねくね歌ったところでももはももじゃん」
 「今更とか言う」
 「いつもくねくねしてるしね」
 「ももは無理だよね。ももは」
 「コラー! ドサクサに紛れて千奈美ーっ」
 嗣永は徳永の名前を口にし、注意を引いてから頬を膨らませ「プンプン(怒)」というような表情を作ってみたが。相手から反応はなかった。いつもだったら、キモイとか、ウザイとか。何かしら構ってくれる相手だったが部屋の暑さと湿度が徳永から若干の余裕を奪っていた。
 「だから、普通のことしてても。もものセクシーさっていうのが伝わんないと思うんだ」
 Berryz工房の方向性、セクシー路線の話から、何故か嗣永のセクシーな見せ方の話に趣旨が変わっていた。どうやらBerryz工房は熊井の先導でイベントの控え室ではなくいつの間にか迷宮に迷い込んでいたらしい。
 
137 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:41
 
 「いやさ、熊井ちょー、もものセクシーさじゃなくて」
 「いいから、聞いてよもも。大事なことだから」
 「そうだね、みんな。熊井ちゃんの話聞こうよ」
 最年長の清水が時計を気にしながら熊井に同調し場を諌めた。本番まで時間が無い。大人の事情でそろそろまとめに入ったようだ。
 
138 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:42

 * * *

 
139 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:42

 熊井の提案は、どうでもいいことだとその場にいた熊井以外全員は承知の上だった。しかし、彼女の真っ直ぐな視線と迷いの無い声に蒸し風呂内が静まり、みんな真剣な様子になる。こめかみから、首筋から、滝のような汗を掻きながら。

 「見えない部分を想像させるのも、セクシー路線の一つだと思うの」
 的を射ってるのか焦点が合ってないのか誰も分からない、熊井ワールドが始まった。もう、迷宮からは逃げ出せない。
 「ももは、全部を見せ過ぎなんだよね。喋り過ぎだし」
 確かに、お喋り過ぎるのはセクシーとは違うような気がしてきた。と、いうことは、はるな愛もクリス松村もセクシー路線とは無関係となる。
 「だから、今日のももは歌割り無し」
 熊井の瞳は真剣そのものだった。
 言っていることはフザけていたが、誰も口を挟むことは不可能だった。彼女の身長は176cm。ガタイの迫力に、メンバーで勝てる者はいなかった。
 「そして、直立不動で横顔のみ」
 「ブッ」
 夏焼が吹き出した。
 「よし、それでいこう」
 先ほど行われ、時間をかけて入念にチェックしたリハーサルが台無しだ。
 暑さの所為で清水の判断力が鈍っていた以外原因が見つからない。
 「じゃあ、ももは歌割りなしでずっとステージと平行に立ってて。動かなくていいから」
 清水に言われた嗣永本人は、きょろきょろと周囲を見渡し他のメンバーの顔色を伺った。
 
140 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:42
 
 イエスと了承すべきか、ノーと逆らうべきか。
 夏焼は、嗣永の横顔のみの演出を想像してツボに入ったらしい。腹を抱えて笑っていた。
 他のメンバーはどっちでもいいや、というような様子でそれぞれ水分を補給したりメイクを直したりMCの流れを確認したり、嗣永の動きにはあまり興味がないようだった。

 「あ、ちょっと待って」
 熊井は自分の顎に手を添え、何か考える仕草をみせた。
 「やっぱりギャップも大事だから」
 時々お客さんの方みて、挑発的にウィンクとかどう?
 「分かった」
 嗣永が厳かに頷き二人と視線を合わせる。
 「キャップ、くまいちょー。そして、みんな聞いて」
 振り向き様、そう嗣永がみんなの視線を集めたところで誰も言うことを聞くはずがなかった。暑さで気持ちがだれている。
 「今日、ももはセクシーに決めるから」
 野外で暑いし、それもいいかな。という軽い気持ちで嗣永は熊井の想像するセクシー路線に乗ることにした。

141 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:43

 * * *

 
142 :熊の子 :2011/08/03(水) 21:43

 かくして始まった夏の醍醐味。野外イベント。
 嗣永は客と視線を合わせることなく。ずっと舞台袖を見つめるように横を向いて動かなかった。
 はっきり言って、邪魔だった。
 動かない。
 そして、歌わない。
 ただ、時々首だけが動いて片目を閉じる。
 恐怖だった。
 始めのうちは、嗣永を気にかける温かいももちコールが会場から聞こえていたが。そのうち無情にもブーイングに変わっていった。
 嗣永から、喋りと動きを取ってしまったら。こんなにも邪魔なものだった。招き猫の置物でも置いておいた方がましだ。そして嗣永は夏の間、替わりにお化け屋敷でバイトをすればいい。なんだか似合う気がする。
 しかし、楽だと侮っていた束の間。嗣永が立っていた位置も悪く、イベントの中盤で彼女は熱中症になり色白の肌がさらに蒼白になり途中退場を余儀なくされた。
 嗣永が退場した後のMCで熊井は一生懸命Berryz工房が目指すこれからのセクシー路線について熱く語ったものの。どうして嗣永が直立不動でステージにいたのか客は誰一人理解できなかった。おそらくメンバーもよく分かっていなかったことだろう。
 
143 :_ :2011/08/03(水) 21:43



 
144 :_ :2011/08/03(水) 21:43



 
145 :寺井 :2011/08/03(水) 21:47
以上です。

やっつけです。
熊井ちゃんの18歳の1年がとっても素敵に輝きますように!
セクシー番長は、須藤さんだと思っています。
146 :名無飼育さん :2011/08/05(金) 23:43
前スレからの流れから見ると、桃子は邪魔だって言いたいのね。
147 :寺井 :2011/08/25(木) 00:47
レスです
>>146 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
おっとっと!桃子が邪魔かどうかの結果は
もう少し見守りくださるとありがたいです。
完結まで尽力いたします。
148 :寺井 :2011/08/25(木) 00:48
と、いうことで。更新します。
その6。です。
149 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:50

 ◇ ◇ ◇

 
150 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:51

 Berryz工房の、嗣永桃子です。今日はなんと、ロケに出てるんです。おー、パチパチパチ。初ですかねー。外に出ちゃダメ、とは言われなかったので。勝手に出て来ちゃったんですけどはっきり言って寒いです。都内某所、っていうか。リハーサルスタジオの側にある公園にいます。歩いている人もまばらで余計寒さが増す気がします。でも、まぁここでラブラブなカップル? そういうお熱いお二人がももの側にいたら一人でしゃべり難いし、お邪魔虫だし。一人ぼっちのお蔭で公園のベンチは占領できるし。いいんじゃないかな。
 
151 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:52

 そんなももですが。今日は、この公園のアスファルトみたいな濃いグレーのジャージ上下を着て、公園のベンチに座ってお喋りしています。公園には銀杏の木かな、葉っぱも色付いて秋まっさかりです。色付くっていうか枯れてるだけですよね。それでは皆さん想像しながらお付き合いください。
 秋のコンサートツアーに向けて、Berryz工房は絶賛リハーサル中です。毎回毎回覚えることがたくさんで、ももたち結構大変なんですけど。でも、コンサート会場へ駆け付けて下さるファンの方って、リハーサルなしであれだけ踊って歌って下さってるワケですからね。すごいですよね、本当に。いつもありがとうございます。覚えるコツがあったらぜひ教えて欲しいです。
 ツアーの内容はまだ秘密なんですけれど。曲だけじゃなくて、トークでも新しいことをしようと企画中ですのでぜひ遊びに来てください。
 
152 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:52

 さて、今日はですね。これからBerryz工房の徳永千奈美ちゃんについてお話させて頂くんです。
 これって、自分のこと話しちゃダメなんですか。フリートークできるせっかくの機会だから、もも自分のことについて色々お話させてもらいたいなって思ったんです。いっぱいお話したいことあるのに。ファンの皆さんも色々ももについて聞きたいことがあると思うんです。これは需要と供給が一致している、はずです。一致しているはずなんですけど。残念。
 ここで、ももがルールを無視してしまうと、多分後で色々面倒なことが起きるって分かっているので、ちゃんと千奈美についてお話しますけどね。もも、大人ですから。あーぁ、あんなことやこんなこと、皆さんに聞いて欲しかったなぁ。
 
153 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:52

 * * *

 
154 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:53

 徳永千奈美ちゃんですか。千奈美は、すごい良く食べます。徳永千奈美ちゃんって。すごいスタイルがいいんですよ。腰の位置? あの、千奈美ちゃんの腰の位置が高くて足も長いし。見た目スラっとしていて、細いんですよ。なのに。食べるよね、千奈美は。こないだは、B級グルメで有名になった、富士宮やきそばがあったんですけど。それが美味しくてはまっちゃったらしくて。殆ど全部千奈美が食べちゃったんです。ももは、まいっかって感じだったんですけど。すーちゃんとみやから文句言われてました。今度作って差し入れするって言ってたけど。期待せずに待ちましょう。千奈美が焼きそば作ってきたら、その時はご報告します。
 
155 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:53

 もも、もともとそんな食べる方ではないんですけど。ちょっと食べると身長の成長ではなくて、幅? お肉の方に栄養が付き易いし。同じ運動しているように見えてなんか、ももだけ筋肉鍛えられるし。神様って意地悪だなぁって思います。不公平ですよね。あの、千奈美の細くてスラっとしていて華奢な感じ? ツアーのリハーサルとか始まると、ケータリングとか差し入れとか。大体似たような食生活になると思うんです。もも、多分、食欲は普通です。大食いでもないし小食でもないと思うし。ももは普通なんです。ただ、千奈美はよく食べる。
 なんなんですかね。千奈美の栄養、どこ行っちゃうんだろう。声かなぁ。千奈美、地声大きいから。
 千奈美、声も大きいんですけど。ビッグマウスですよね。分かります?大きいねずみじゃないですよ。ビッグマウスって、分かります?分かります?
 千奈美って発言のスケールもちょっと大きいんじゃないかなって。今年の目標はカラフルって言ってたし。あれ?レインボーだったかな。カラフルでもレインボーでもどっちでも似たようなものですよね。でも千奈美のスケールの大きさって場を盛り上げることも多くて。人の気持ちを明るくしたり前向きにさせてくれるし。行動力がついてくるかどうかは、置いておくとしても。人を傷付けたりするような発言とかよりは、多少大袈裟でもね。全然いいかなって思います。
 
156 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:54

 * * *

 
157 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:54

 それにしても、ちょっと本気で寒くなってきたんですけど。暗くなるのもはーやーいー。自分で勝手に外でたのに。もう、戻りたくなってきたので巻きで行きたいと思います。

 千奈美とは昔、よくケンカしました。原因はちっちゃいことなんですけど。肩がぶつかったとか、悪口言ったとか、差し入れのアイスを選ぶ順番が違うとか、もう、ホントに今考えればどうでもいいことです。ももも、千奈美も折れるっていうことができなくて。なんか、もも。特に千奈美だと素直にごめんなさいができなかったんです。中学生の頃、大人な態度? 自分の気持ちを見せない、みたいな。無視ではないけど、こう、意見とか色々ぶつからないように引く、みたいな態度とかとったりして多分感じ悪かったと思うんですけど。千奈美は変わらなかったですね。同じグループなのに、ももと千奈美は性格合わないんじゃないかとか考えたりして。でも、今はそんなこと思いません。
 なんか、真剣に。千奈美にはなんでごめんなさい、みたいな。他のメンバーだったら、普通にごめんなさいもありがとうも言えるのに。なんで千奈美だけもも素直に言えないのかなって考えたことがあって。深刻に仲が悪かったっていうワケじゃないですよ。素直になれない時期があったっていうだけで。さっきも言いましたけど。千奈美は変わらないんですよね。別にもも相手でもくまいちょー相手でも千奈美は千奈美で。
 
158 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:54

 千奈美に、ワーとかアーとか言われて。いや、ホントに千奈美がワーとかアーとか言うワケではないけど。ちょっと注意されたり、からかわれたりした場合です。そこで、そっかー、と素直に頷くのがくまいちょーで。ももは、聞かなかったフリとか、はいはいとか生返事をしちゃうわけです。なんでかなって昔、もも真剣に考えて。
 悔しいからかなって。千奈美には、ももが持っていない部分がたくさんあって。本当は羨ましいっていうかすごいなぁって思ってるけど。ももが子どもだから素直に返事できないのかもしれないとか。思ったことがありました。千奈美の言い方がキツい時だってあるんですよ、梨沙子とかくまいちょーにはそんな言い方しないよねーみたいな。
 千奈美が、明るくはっちゃけているお蔭でベリーズの今があるのかな。ただ、明るくはっちゃけちゃっているだけじゃないから。千奈美がみんなをちゃんと見ていたり、気遣ったり、グループのことを考えていたり。みんなそれぞれ考えてるけど。千奈美の明るさは、イメージが笑顔っていうのもダテじゃなくて。千奈美にしかないから。すごいなぁって今は素直に思えます。
 
159 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:55

 これぐらいで大丈夫ですかねー。ほんっとに寒いから。もも、ジャージの上に着るようなの持ってきてないし。そろそろリハーサルスタジオがある暖かい建物の中へ移動したいと思います。

 
160 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:55

 * * *

 
161 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:55

 え、この一人収録シリーズは。ももで最後? まさかまさか。締めるのかな、え? 締めるのかな。締めとかまとめるとかは、キャプテンの清水佐紀ちゃんのお仕事なんですけど。まぁ、ももも。Buono!というグループではリーダーやっていますからね。寒いけど。最後までお仕事しますよ、仕方ないなぁ!

 自分撮りで、ユーチューブかユーストリームか忘れちゃったんですけど。新しい番組? が始まるらしくて。それのテスト収録? もしかしたら、制作のスタッフさん以外にも、ファンの皆さんにも披露するかもしれないよー的な。なんか曖昧な収録だったんです。何を撮ろうか、っていう話になった時。とりあえず、もっとベリーズについて知ってもらいたいっていうことで。一人ひとりをクローズアップしていくことになって。録音マイク一人で持たされたんです。音だけでテストになるんですかね。そこは、ももたちが考える部分ではないので気にしません。
 一人でも多くの人に、Berryz工房ってどんなグループなんだろうとか。もっと知りたくなったとか。意外な一面を知っちゃったとか。そういう風に思ってもらえたら嬉しいです。
 これからも、Berryz工房7人。進化し続けるので、応援よろしくお願いします。

 
162 :10KB未満劇場_その6。 :2011/08/25(木) 00:56

 はい。それでは最後までお付き合いありがとうございました。Berryz工房の、嗣永桃子でした。バイバ……。
 あ、れ。
 ちょちょっと、待ってください。びっくりですね。
 あ、あれ。
 なんか、今日はゲストが登場するみたいです。
 ももも打ち合わせしてなかったので驚いちゃったんですけど。

 「あ、あ、えと、どうした? みや」

 
163 :_ :2011/08/25(木) 00:56



 
164 :_ :2011/08/25(木) 00:56



 
165 :寺井 :2011/08/25(木) 00:59
10KB未満劇場その6。以上です

続きます

夏焼さん、ハッピーバースデイ♪
 
166 :名無飼育さん :2011/09/16(金) 12:22
嗣永さんの話している姿が目に浮かびますね。
そろそろクライマックスですか。
事の全容は一体どうなっているのか、気になります。
167 :寺井 :2011/09/21(水) 22:31
レスです
>>166 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
ありがたいお言葉恐縮です。
一体どうなるのか、自分で書いていて分からないのが
Berryz工房を書く一番の楽しみです。
168 :寺井 :2011/09/21(水) 22:32
と、いうことで更新します!
その7。です。
169 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:33

 ◇ ◇ ◇

 
170 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:33

 ももは、実際頼りになる。
 ベリーズの中では物知りの方だし、運動は苦手そうだけど目立ってダンスに難があるワケでもない。バンドの生演奏の時とか、もものハスキーな歌声は普段のブリっ子っぽい声と違う感じがしてちょっと憧れている。
 頼りになるけど、ももはまともではないと思う。だってまともだったら、こんな場所で一人公開録音なんてするワケがない。
 うすら寒い公園でベンチに座り、人知れず自録するアイドル。普通ではあんまり考えられないシチュエーションだ。他人に見つからないように、隠れるとか、多分だけど多くのアイドルは屋内で録音すると思う。彼女は人の意表を突くのが好きなのかもしれない。
 いつだってももには振り回されるから。
 今日はそうならないように、決意して声を掛けた。
 
171 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:33

 * * *


 
172 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:34

 「もも」
 メンバーの名前を呼びながら自分の家で飼っている犬が逃げた時を思い出した。
 私が現れるとを予想していなかったももが咄嗟に公園から出て行こうとしていた。走り去ろうとするももの後ろ姿と、うちで飼っているトイプードルのピースがちょっと被って見えて面白かった。
 室内で飼っている小型犬が家人の隙をついて、私が開けた玄関のドアから外へ出て行ってしまった時がある。出掛けなきゃなんないし、犬は逃げるし。焦ったんだけど、ピースがとことこ逃げていく姿はどこか間が抜けていてかなり癒された。逃げているのに、ふりふりお尻を振って愛想を振り撒いているように見えるからかもしれない。
 そして、ピースも、ももも。すぐに捕まる。
173 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:34

 「どこへ行くの? 」
 腕を掴んだら、ももが立ち止まった。
 ピースは抱きかかえて家へ連れて帰ることができるけど、ももはそうはいかない。
 「リハスタジオに戻りまーす」
 なんか、敬語だし、もも。何しに来たの?って感じで彼女の顔から表情が消えうせた。それ以上自分に構うなっていういつものももの合図に私は思わず溜め息を漏らした。
 「ダメだよ」
 イベントのMCやライブのMCでは口が達者なももに追い詰められたりたじたじさせたれたりすることもよくある。でも今日は、そうはいかない。
 「録り直しだから」
 「聞いてたの? 」
 シリアス風なのかはこちらからするとよく分かんないけど、慌てたももってコミカルに見えるから間合いに戸惑う。語尾上がりの口調が「お昼の休憩時間」っていうベリーズの曲のセリフを思い出してしまった。
 「あ、聞こえちゃって」
 「どっから、みや。どこから聞いてたの」
 「いや、小指の鍛錬毎日してます、辺りから、だったかな」
 「そんなこと言ってないけど」
 訝し気な様子で下からももがじとりと見上げてきた。
 「うそ、もも。台本無視して喋ったの? 」
 「台本なんてないでしょ」
 うそ。何だろう。ちょっと様子がおかしい。おかしいっていうか、噛み合ってない。ももと噛み合わないことなんていつもだけど。アイドル界の風雲児のももだってお仕事で決められたことはきちんとこなすし、プラスアルファがあったとしても、無視してやらないっていうことは今まで一回もない。どういうことだろう。
174 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:35

 私がスタッフさんから聞いていた段取りは、大筋の台本に沿って一人芝居のような感じで進めていく。それから途中シチュエーションだけ書いてあって、セリフが空欄の箇所をアドリブでこなす、だったと思う。
 千奈美から始まって、熊井ちゃん、茉麻、梨沙子、キャプテン、私、ももの順番で進むって聞いた。メンバーのアドリブを受けて台本の展開が変わるから誰も結末が分からないお話だって説明された時めっちゃ面白そうってわくわくした。
 なのに、勝手にももがうちより先に収録始めてスタッフさんなんでももに機材渡しちゃったんだろう、ヘンだなって思った。でも、ももの様子からすると私だけが知らなかったことがあるみたいだ。
 「みや? 」
 なんか、おかしい。
 「もも」
 掴んでいた腕を放して、もう一度ももの顔を見てみる。
 「なんでうちここにいるの? 」
 「は? ももが知るわけないし、こっちが聞きたいんだけど」
 「ももがさー、勝手に外出て行ったから」
 「ももがどこで何してもみやにはあんま関係なくない? 」
 「関係ないけど」
 また、ももペースだ。そうじゃなくて、と。心の中で仕切り直ししても頭の回転の速い相手は簡単にペースを乱さないし。そもそも私は自分がどうしたのか上手く表現できずにいた。
175 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:35

 「ももがさ、外へ行っちゃったじゃん」
 私が持ち直そうと繋いだ言葉と同時にももがくしゃみをした。
 ももはレッスン着のままでかなり寒そうだ。私は出てくる時にジャケットを着て出てきた。ジャージとは合いそうも無いコーディネートだったけど背に腹は変えられない。寒いよりはマシだと思った。
 「え? 」
 くしゃみの後にももは律儀に聞き返してくれた。
 「だから、ももが勝手にリハスタジオから外へ出てったでしょ」
 「あー、はい。それはさっき聞いたよね」
 自分の鼻をつまみながらももが間の抜けた声を出した。
 ほんとにこういう所が腹立つ。こっちはマジで話そうって思っているのに。わざとなのかそうじゃないのかきわどいタイミングでももは肩透かしを繰り出してくる。
 「この一人で喋る収録あるじゃん」
 ちゃんと聞けとももに訴えるように語気を強めた。
 「うん、そう。ももこれ一人で録る為に外出ただけ」
 「そうだよね。それは分かったんだ。でもさ、これ順番があったじゃん、千奈美、熊井ちゃん、茉麻、梨沙子、キャプテン、うち。そしてもも」
 「えー、そうなの? ももは、千奈美についてお話するって聞いただけで順番とかは知らない」
 「台本に書いてあったでしょ」
 「だから、さっきから言うけど。台本なんて貰ってないから」
 多分、みんな貰ってないんじゃないかな、とももはあっさりした表情で私に教えてくれた。
 「キャプテンから収録機材渡されて。ももが最後だから、恰好良く締めてねってただそれだけ言われた」
 「ちょっと待って」
 このまま、ももペースだと結局いつもと同じで言いたいことの半分も言えないで終わってしまう。それじゃ変わらない。スタジオから出て行くももを追い掛けた理由は、分かっているつもりだ。
176 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:36

 「寒いし、休憩終わるし、スタジオ戻ろう」
 待てと言っているのに、ももは私の隣をすり抜けてさっさと公園から出て行こうとしていた。
 「逃げるの? 」
 咄嗟に出た言葉は挑発だった。
 ももの奥の奥にある見え難い心を追い詰めるような言い方だった。次のももの行動だって予想がつく。人をバカにするように笑って、こちらを諭すように、スタジオに戻ってからだって話しはいくらでもできると余裕の態度を見せるんだ。

 「逃げていいの? 」

 彼女の腕を掴まずして、ももが立ち止まった。
 振り返ったももの表情は笑っていたけれど。今まで見たことの無い大人びた顔付きに私は息を飲んだ。
 私は、人と違うことをしてダンスでも衣装やアクセサリーでも目立とう精神は誰にも負けたくないって思う負けず嫌いだ。でも。
 ももは、人の意表を突くのが好きなんだ。
177 :10KB未満劇場_その7。 :2011/09/21(水) 22:36

 「うち、待ってって。言ったんだけど」

 私の子どもみたいな拗ねた口調に内心がっかりしていた。ももごときに差をつけられた感じがした。
 「遅刻して怒られても、ももの所為じゃないからね」
 公園の出入り口にある、鉄製の車止めにももはすとんと腰を掛けた。
 私はその前に立った。逃げないのはこちらも同じだ。
 今日の決意は固いって、自分で自分に言い聞かせていた。
178 :_ :2011/09/21(水) 22:36



 
179 :_ :2011/09/21(水) 22:37



 
180 :寺井 :2011/09/21(水) 22:37
10KB未満劇場その7。以上です

なんだかんだで続きます。

181 :名無し飼育さん。。。 :2011/09/24(土) 01:40
続きお待ちしています
182 :名無飼育さん :2011/09/24(土) 23:06
10KB未満劇場が面白過ぎる
183 :名無飼育さん :2011/10/24(月) 11:46
ベリーズいいですね
一人語りでそれぞれ特徴が出ていて面白いです
184 :名無飼育さん :2011/11/14(月) 23:09
10KB未満劇場最高に面白いです
続き楽しみに待ってます
185 :寺井 :2012/01/27(金) 19:05
レスです
>>181 名前:名無し飼育さん。。。
コメントありがとうございます。
率直なコメント嬉しかったです。頑張れました!

>>182 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
そうおっしゃって頂けて本当に光栄です。

>>183 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
特徴が伝わっていると嬉しいです。

>>184 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
続きました。コメントが力になりました!
186 :寺井 :2012/01/27(金) 19:06
と、いうことで更新します!
終幕です。
187 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:07

 ◇ ◇ ◇


 
188 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:07

 Berryz工房の夏焼雅です。今、同じBerryz工房のメンバー嗣永桃子ちゃんと一緒に公園にいます。今日は天気もよく昼間は暖かかったんですけど。最近は秋も徐々に深まってきてだいぶ寒くなってきましたね。みなさん体調崩してないでしょうか。元気ですかー? 私は結構寒い時期も好きだったりするんです。厚着する時の重ね着でかわいい配色に自分なりの工夫をするとか、小物の使い方とかもバリエーションが増えるのでオシャレをするのが楽しくて。だから、寒いのは苦手なんですけど、冬もいいんじゃないかなって思います。
 
189 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:08

 で、も。今の私はダサさ極まりない恰好をしてジャージ姿のももと一緒にいるんですよね。最悪なコンビネーションです。ふと我に返ったら笑いが込み上げてきちゃいました。紺のジャケット、ピンクのジャージに黒のピンヒールって個性を追求しているとしても。なんか統一性とかポイントがないとオシャレとは言わないです。嗣永桃子ちゃんも幸薄そうな顔に拍車がかかるグレーの装い。今の私とももが並んだ様子はこれがアイドル?って感じです。私が突然爆笑したから、目の前のももが眉間に皺を寄せちゃってますよ。世界一かわいいみんなのアイドルももちがこんな顔しちゃってますよ。
 
190 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:08

 * * *


 
191 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:08

 この一人語りが何かって簡単に説明させて頂きますと、私がももについてお話をする当番なんです。ラジオ番組とかの、一つのコーナーみたいなものでしょうか。私の前にももが勝手にBerryz工房の徳永千奈美ちゃんについて語っちゃっていて本当は、っていうか何が本当なのかよく分かってないけど。私がももについてお話させて頂く番だったみたいなんですよ。
 千奈美から始まって、熊井ちゃん、茉麻、梨沙子、キャプテン、ももまで、ベリーズ全員がそれぞれメンバーについて喋っていて私だけやらないってワケにもいかないと思うんです。なのでBerryz工房夏焼雅が、今回は嗣永桃子ちゃんについてお話させて頂きます。今日はちゃんと話すから。聞いててね、もも。
 
192 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:08

 * * *


 
193 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:09

 Berryz工房の嗣永桃子ちゃんは……他人の話を聞きません。今も上の空って感じで多分、公園の銀杏の木とか見てますよ。ちょっと、聞けって言ったのに。ほら、そんな顔膨らませてると大福に間違えられるよ。はいはい、分かった分かった。でも、こういうの気にしてると話が進まないのでももはあまり気にしないでお話させて頂きます。

 
194 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:09

 なんて言ったらいいんですか。難しいですね、ももについて話すっていっても。ちっちゃい頃から一緒にいて。兄弟よりも長い時間過ごしてるし。家族みたいな感じなのかもしれないけど。やっぱり家族とはちょっと違うし。うーん、ももに対して何か思うっていうよりBerryz工房でよかったって思います。
 
195 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:10

 もともと8人グループだったんですけど、途中、一人が卒業してBerryz工房は7人になって。でも解散することなく今もグループが続いていて。自分もその中にいて、ももも同じグループでお仕事を一緒にしてきました。今では誰が欠けたとしても、やっぱりベリーズじゃなくなる気がするんです。なってみないと分からないんですけど。
 ももも、そういった意味で大事な存在だし。メンバーとして助けて貰う部分もあるしすごいなって思う部分もあるんですよ。この芸能界でお仕事をこれからも続けていくのに、見習いたいこともあるし。一緒にやっていて楽しいこともあります。
 ももは誰よりも先頭切ってお喋りしたり、自分なりの表現を出していこうって思ってそれを行動に移せる部分がやっぱりすごいって思います。
 
196 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:10

 ベリーズ結成当時はももに対してなんだコイツって思ってました。いっつも小指立ってるし、走り方変だし、声うるさいし。学年が一つ上だからってお姉さんぶってウザかったし。でも、私が体調不良とかでお仕事に穴を開けることがあって。みんなに、ベリーズだけじゃなくてスタッフさん、ファンのみなさん、色んな人に迷惑掛けちゃうじゃないですか。そういう時、文句も言わずに私の抜けた部分をカバーしてくれたのがももでした。私は自分のことで精一杯で誰かの抜けた穴を埋めるなんて無理って感じの時でも、ももはやっちゃうんですよね。しかも、無理とか、嫌だとか全然言わなかった、っていうのを覚えています。普段の自分勝手な部分は直した方がいいとは思いますけど。最後までやり遂げるもものお仕事に対する責任感は恰好良いなって思います。

 
197 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:10

 * * *


 
198 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:10

 今のベリーズって誰が欠けても今みたいな感じにはならないから。そこだけは、みんな同じ思いでいて欲しいとか思っちゃいますけど。ずっと一緒にいると分からなくなるというか鈍感になっちゃうみたいで。今度のことではっとしました。
 梨沙子が、ももにどうしてって聞いて。どうしてそんなに勝手な行動するのかを問い質したことがあって。ももは千奈美だって勝手してるとか、色々はぐらかそうとしたけど梨沙子はごまかされなかった。
 あの時、梨沙子はももを責めたけど。梨沙子の気持ちは分かるんです。苦しいのに苦しいって言わないももにムカつくっていうか。自分勝手なんですけど何もしてあげられなくて寂しい気持ちになるっていうか。同じグループなんだから言えよって私も思ったし。でも、ももが弱音とか言わない性格だって分かるから、引いちゃうところもありました。
 梨沙子が怒ったのは、ももに対してだけじゃない。そうやって引いちゃってる自分にも、うちらに対しても腹が立って。でも、どうすればいいのか方法が分からなくて爆発しちゃったんじゃないかって今は思います。

 
199 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:11

 こういうことをちゃんと言葉にして伝えるのが本当に大人になるっていうのかな。昔は子どもだったから何にも考えないで言いたい事を結構言い合ってて。言い過ぎて仲直りにすごい時間かかっちゃう時だって結局、仲直りはしていて。幼いながらも自分の気持ちを言葉にしていたんですよね。
 あの頃に戻るじゃないけど。言わなきゃいけないことはちゃんと言わなきゃって改めて思った。
 Berryz工房でよかったって思うから。ここで逃げたら後悔するもん。だから、ちゃんと言うよ。

 「ごめんねもも、仲直りしよう」

 
200 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:11

 ◇ ◇ ◇


 
201 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:11

 一瞬、ももは視線を下に向けた。それから情けない表情でこちらを見た。

 「ももも、ごめん。梨沙子にちゃんと謝る」
 これくらい素直だったらかわいくて扱い易いんだけどな、と思えるほどももがいつに無くしおらしい。
 私の気持ちがももにちょっとは伝わったのかもしれない。決意を固めた甲斐があった。

 「っていうか。ぶっちゃけ過ぎた」
 喋っている時は一気に言い切ったからよかったけど。今、後から後から込みあがってくる恥ずかしい気持ちで気分が悪くなってきた。本人目の前にして何言っちゃってるんだろう、私。うわー、恥ずかし過ぎる。
 「もう、スタジオ戻るね」
 「ちょっと、今更置いて行かないでよ。みや」
 ももの横をすり抜け足早でこの場から立ち退こうとした。一緒に帰ろう、とももが纏わり付いてきたけど断った。こんなヘンテコな恰好した二人が並んで歩いていたらかなり目立つじゃん。嫌だよ。

 
202 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:12

 少しでも早くスタジオに戻ろうとして自然と早足になる。ついには走り出していた。余計に悪目立ちしてしまったかもしれない。アイドルとしても女の子としても、もっとかわいい恰好の時に見てもらいたい気持ちは山々だったけど。ももの後ろ姿を見掛けた時、じっとしていられなかった。恰好に気を遣える程余裕がなかった。数十分前の自分は我ながらなかなか熱血だったと思う。
 それにしても、あの時ベリーズの誰一人私を止めなかった。そういえば、ももが勝手にスタジオから外出する時だって止めてなかったよね。
 そもそも、私がスタッフさんから説明を受けていた順番だとキャプテンの次は私だったはずなのに。なんでキャプテンはももに録音機材を渡したの? どこから企画が変更されていたの?
 あれ? これってもしかしたら。もしかしなくても。
 
203 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:12

 「キャプテンっ」
 ベリーズが控えているスタジオの扉を開けると同時に私はキャプテンを探した。
 「おつ〜」
 梨沙子の隣でキャプテンは嬉しそうに手を振っていた。
 そして、私の後ろから現れたももが。
 「みんな、聞いて。今日ももはみやから愛を感じました」
 などと、テンション高らかに宣言し出した。余計なことを言うな、とあのチビを止めようとして振り返った。
 でも、久しぶりに見た絶好調のももの笑顔を見て私は何にも言えなくなったただ、はぁっと溜め息が漏れた。
 仕方がない。私はももを放って置くことにしキャプテンの側へ行った。私が手を振りかざすと、キャプテンも手を上げてハイタッチみたいにパチンとお互いの手を合わせた。
 「お疲れ。みや」
 「キャプテンにまさかハメられるとはね。信じられない」
 「私は信じてたもん」
 「え? 何を」
 私の脱いだジャケットをまあがスタジオのロッカーへ片づけてくれた。熊井ちゃんがももの話を聞いてあげているけど、ももは説明に悪戦苦闘している。ついには「くまいちょーはももに対して愛が足りない」などとわめきだした。
 
204 :10KB未満劇場_終幕 :2012/01/27(金) 19:13

 「Berryz工房を」
 キャプテンの答えには全然納得できない。意味わかんない。私はめっちゃ恥ずかしかったんだけど。でも今、楽しく仕事ができるのはBerryz工房があるから。
 「舞台の次はコンサート。ベリ高フェスも絶対成功させるよ」
 「遅刻しておいて恰好良いこと言ってもねー」
 キャプテンが茶化すように隣の梨沙子に話を振った。
 梨沙子はなんだか困ったような表情をしていた。
 「今回は、ベリーズ全員揃って全公演できるといいね」
 私とキャプテンが返事をする間も無く、先生がスタジオに入ってきた。
 「嗣永と夏焼帰ってきた? 」
 先生の側まで進み出て、遅刻してしまった謝罪を二人ですると、容赦なくペナルティの腕立て伏せと腹筋運動が課された。他のメンバーのレッスンが進んでいく中、私とももはスタジオの隅で腕立てを始める。恥ずかしい思いをして、更にペナルティを受けるハメになった。場が丸く収まるにしても、私って何か呪い的な。何かっていうか全部ももの所為だ。
 「ももとペアで筋トレ出来て嬉しいクセに」
 ももに付き合うとロクなことがない。
 「はいはい、嬉しい嬉しい」
 「やっぱりー。みやったらもものこと大好き過ぎー」
 「嗣永、夏焼、腕立てプラス50」
 ももの上ずったテンションの所為でまた先生から愛の鞭が飛んできた。
 「えー!なんで私まで」
 私の不平にメンバーから笑いが起こった。
 Berryz工房でよかった、のか。結論を出すのはまだ早いのかもしれない。

 
205 :_ :2012/01/27(金) 19:13




 
206 :_ :2012/01/27(金) 19:14




 
207 :寺井 :2012/01/27(金) 19:15
以上で10KB未満劇場を終わります。


 
208 :名無飼育さん :2012/01/28(土) 21:23
お見事
軽く感動しました
209 :寺井 :2012/01/28(土) 22:35
>>208 名前:名無飼育さん
コメントありがとうございます。
お早い反応、嬉しいです。
こんな感じでおつきあい頂けるとありがいです。
210 :とりあえず名無し :2012/01/29(日) 00:08
7人の言葉から浮かび上がってくる世界が、上手く言えないんですが、
立体感があるというか、
奥行きが深いというか、
じわじわっと暖かい気持ちになれる作品でした!
これこそベリーズの良さですね。
ありがとうございました!
211 :寺井 :2012/01/29(日) 17:52
>>210 :とりあえず名無しさん
コメントありがとうございます。
ベリーズの良さを共感して頂けるとは嬉しいです。
同期ではあるけれど、℃-uteとも違うBerryz工房だからこそ、という
面白さを文字にできたらいいな、と思っております。
212 :名無飼育さん :2012/01/29(日) 20:32
最後の結末の恰好良さに思わず唸りました。
213 :寺井 :2012/01/30(月) 18:43
>>212 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
夏焼さんと嗣永さんは格好良いアイドルだと思います。
格好良さが少しでも伝わっていればかなり嬉しいです!
214 :名無飼育さん :2012/02/01(水) 23:19
読んでいて不自然さを微塵も感じさせない程どれも実に彼女たちらしくて、
上手く言い表せないのがもどかしいですが、とてもベリーズらしい小説だったと思います。
それぞれ突っ込んでくる角度が全く違っていて面白かったです!
215 :寺井 :2012/02/16(木) 20:47
>>214 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
面白かったと仰って頂けてとっても嬉しいです。
まだまだ魅力たっぷりの彼女たちですから。これからも
ベリーズの魅力が少しでもお伝えできるように頑張ります。
216 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:48

 ◇ ◇ ◇


 
217 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:49

 愛理は梨沙子と同い年で、二人はとても仲が良い。私が所属するBerryz工房は去年、℃-uteと舞台で共演したり、コンサートも3年ぶりに合同で行ったりした。他にも同じ楽曲をBerryz工房と℃-uteで一緒に歌い、そのシングルCDが主題歌になっている映画も年末に公開された。2011年はBerryz工房と℃-uteで仕事をする機会が極端に多かった。

 
218 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:49

 物販の撮影やプロモーションなど℃-uteと一緒にいる時間が増え、愛理と梨沙子が二人でいるところをよく見かけた。二人は同い年で仲が良いけど見た目も性格も全然違う。彼女たちには一見、共通点なんて無いように見える。

 
219 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:49

 「茉麻」
 好きな漫画のノベライズ本を読んでいると、上の方から声がした。
 本から顔を上げると、コートを脇に抱えた愛理がニコニコとこちらに手を振っている。思わずいい子いい子と頭を撫でてあげたくなるような愛らしい様子だった。
 彼女は学校帰りに会社へ来たのか鞄を二つ抱えている。一つの鞄が重たそうな様子で愛理の肩に掛かっていた。鞄がパンパンに膨らんでいる。彼女は頑張り屋さんだ。そこは、梨沙子も愛理も共通しているな、と思った。
 「帰らないの? 」
 本にしおりを挟んで自分の鞄にしまった。
 「ももとラーメン食べに行こうって話してたんだけど」
 「あ、ももも来てるんだ」
 愛理は少し驚いた様子を見せて何故か困ったような表情になった。
 「なんか、打ち合わせ長引いてるみたい」
 「もも、忙しそうだねー。パリでも学校のレポートとかやってたし」
 「マジで? また体調崩さないといいけど」
 ももも、頑張り屋さんは頑張り屋さんなのだけど。梨沙子や愛理より一癖ある努力家の方だなと思う。癖があるのはなんでだろう、顔立ちの所為かな。
 愛理と梨沙子は子犬とか子猫みたいな母性本能をくすぐりまくりの無垢な愛らしい顔立ちと雰囲気が共通していると思う。本当に、思わず撫でたくなる。二人とも漫画みたいに目がきらきら輝いているからマジでアイドルなんだなって同期ながらすっかり感心していた。

 
220 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:50

 「愛理は帰り? 」
 「まだ」
 おどけた様子だったけれど、「ちょっとだけレコーディングがあるみたい」と答えた時の愛理の目は真剣だった。
 「愛理も体調崩さないように。ゆっくりする時はちゃんとゆっくりするんだよ」
 すると、愛理は何も言わずに口角を上げて目を細めた。それから、私の横に座って、「はーい」と言いながらこちらの肩に頭を乗せてきた。
 「いや別に、今ゆっくりする必要はないと思うんだけど」
 口では冷静に突っ込みながらも内心は照れるなと思った。
 素直に反応されるとやっぱり照れくさい。しかも、相手はももじゃなくて愛理だ。
 甘える愛理って結構貴重な場面だと思う。のほほんとした朗らかな様子はいつもだけど、℃-uteの甘えん坊キャラは舞の専売特許だった。℃-uteの中で愛理は歌もダンスも中心メンバーだ。その所為かどっちかというと、頼れる存在って感じでわがままを言うとか、甘えてお願いをするとかそういったイメージがあまりなかった。
 Berryz工房の中で歌もダンスも主力だけど、うちの梨沙子は視線だけで訴える、という高等技術だって使いこなせるかなりの甘え上手だ。同じ年齢だけどやっぱりグループ内で一番年が下なのと、そうではないのとでは差が出ても当然かもしれない。

 
221 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:50

 「いーよ」
 私の悪い癖だ。甘えられると、つい、甘やかしてしまう。
 「レコーディングまで、ここで休んで行きなよ」
 鞄にしまった本を取り出してしばらくじっとしていることにした。
 「ありがとう」
 ふう、と溜息を吐いた後に愛理が言った。
 邪気がまるで感じられない瞼を閉じた愛理の様子。疲れているのか。眠いだけなのか。ただ誰かに引っ付いていたいだけなのか。
 愛理ってホントは何を考えている子なのかよく分からない。そんなに勉強頑張る必要あるの? とか、愚痴を言いたくなる時は聞いてあげるのに。とか。頑張り屋さんの愛理を見ていると大きなお世話みたいな気持ちが湧いてくる。
 こんなにかわいいのに、本人はそこまで自覚もないみたいだし。

 
222 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:51

 「愛理はかわいいね」
 本なんてそっちのけで結局私は愛理の頭を撫でていた。かわいいから仕方ない。
 愛理は口をむにむに動かしていたけど何も言わなかった。
 「コーラー! 」
 愛理じゃない方から聞きなれた声がした。
 「すーちゃんっももに隠れて浮気なんて信じられない」
 嗣永桃子が現れた。どこから湧いて出たのか。ゲームの中のモンスターみたいな人だ。
 「ちょっと、もも。静かにしてあげて」
 シッと、人差し指を口に当ててももを咎めると、相手はしゅんとした様子を見せた。
 「じゃあ、もももー」
 そうももが言うと愛理と反対隣に座ってこてんと頭を私の肩に乗せてきた。
 はっきり言って重い。体重のかけかたに容赦がなかった。
 でも仕方がない。ももから逃れようとすると愛理を起こすことになる。覚悟を決めて今度こそ本を読むことに集中しようとすると、何やらももがもぞもぞと合図を送ってくる。手をぱたぱたさせて「ほら」みたいなニュアンスが伝わってくる。
 「すーちゃん、ほら」
 手だけじゃなく、今度はももが呟いた。
 「何? 」
 「ももにも、ほら」
 「は? 」
 「もうっ」
 何故かももがしびれを切らしたように起き上がりむっとした様子でこちらを見つめた。

223 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:51

 「あいりんにはかわいいとか言ってたじゃん」
 「ああ。まあ」
 「だから、ね」
 「うん、愛理はかわいいね」
 「ちがーう」
 くすくすと、愛理が肩で笑っている。
 「ももは? 」
 「もも? 」
 「ももも、かわいいでしょ」
 「うん、そうだね」
 「だから、ほら」
 さあどうぞと言わんばかりにももが手を差し出した。そこまでして「かわいい」と長年同じグループに所属する私に言わせる必要があるのか、理解できなかった。
 「あー、分かった。こないだももから借りたかわいいかわいいBuono!のDVD返そうと思って」
 「もーっすーちゃんわざとでしょ」
 ももは口をとがらせ、愛理の方を覗き込んだ。絶対ももの方がかわいいと思うんだけどな、とでも言いたげだった。
 「愛理はかわいいね」
 「すーちゃんは、まだまだあいりんを知り尽くしてないからね」
 「どんな愛理だってかわいいでしょ」
 「夜のあいりんはすごいよ」
 「夜の、愛理か」
 「本人、本人ここにいますから」
 ももの勝手な発言に愛理が待ったを掛ける為に起き上がった。

 
224 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:52

 「もう、変なこと言わないでよー。ってか。茉麻もいい過ぎだし。やめてよ」
 あ、愛理の耳が赤い。
 「別に、ももは夜のあいりんもすごいかわいいんだよって教えてあげようと思っただけで。変なことなんて言ってないけど」
 「屁理屈」
 「やだ、あいりん何想像してたの」
 ダメだこりゃ。ももがそばにいると休める時間も体力削られる。
 私は立ち上がってももの腕をつかんだ。
 「ラーメン食べに行くよ」
 「わーい、すーちゃんの奢りだー」
 「分かった。奢るから大人しくしてるんだよ」
 「ももはいつだって大人だから大丈夫」
 「大人だったらももが奢ってよ。ってかアナタの方が年上でしょ」
 「じゃあね、あいりん。また明日」
 愛理は明日もももに会うのか。ご愁傷様としか言葉がなかった。

 
225 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:52

 「茉麻」
 愛理はももではなく、私を呼んだ。
 「さっき、茉麻が読んでた本」
 相手は座っているので自然と上目使いで愛理に見つめられる。
 「借りてもいい? 」
 私が読んでいたのは漫画が原作で、今度映画化される作品のノベライズ本だった。
 「うん」
 愛理がこういう本を読むとは知らなかった。鞄から出して愛理に手渡す。
 「すーちゃん読み途中じゃないの」
 横から口を挟むももを無視して、愛理に向かって笑いかけた。
 「返すのいつでもいいよ」
 愛理だって学校の試験やBuono!のコンサートもあって忙しいはず。娯楽小説を読んでいる暇なんてあるのか不思議だった。気分転換だって必要なのかもしれない。私は深い詮索は不要と思い愛理のお願いを引き受けたまで。
 「じゃあね」
 手を振ると、愛理も手を振りかえした。
 「ありがとう」
 丁寧にお礼を言う愛理は律儀な性格だ。
 「気を付けてね」
 たかが一冊の小説なのに満面の笑みでお礼を口にする愛理をみて違和感を覚えた。
 ベリーズとは違うな。ももなんかとは全然違う。
 違和感っていうのは、いつもと違うよそよそしさを愛理から感じた。
 満面の笑みは変わらないのに。かわいいに微塵も嘘がないのに。何故か気になる愛理だった。

 
226 :赤と嘘 :2012/02/16(木) 20:52

 外へ出るまでの廊下でBuono!のリーダーが意味深な発言をした。
 「あれは何か企んでいる時のあいりんだ」
 ももの言うことは気にせず。
 今度は愛理とラーメン食べに行きたいな、と正直なところ私はそんなことを思っていた。

 
227 :_ :2012/02/16(木) 20:53




 
228 :_ :2012/02/16(木) 20:53




 
229 :寺井 :2012/02/16(木) 20:53
以上です。


やっつけです。
230 :名無飼育さん :2012/02/17(金) 19:08
形ははっきりしていないけど味がある。素敵です。
231 :寺井 :2012/03/26(月) 19:45
>>230 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
>形ははっきりしていないけど
ずばっとご指摘頂きドキっとしちゃいました。
お読み頂き本当にありがとうございます。励みになります。
232 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:46

 ◇ ◇ ◇

 
233 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:47

 愛理と梨沙子、二人は見た目も性格も全然違う。着る服の趣味も、メイクの仕方も、アクセサリーの好みも全然違うし共通点なんて無いように見える。けれど、二人は同い年の中でも気が合うらしく、とても仲が良い。
 頻繁にメールや電話で連絡を取り合っているわけではないみたいだけどシンクロ率が高い。二人が並んで側にいる様子は、年上の私でもほっと安心できる居心地の良さを感じた。なんだか、オーラとオーラでおしゃべりしているみたいだ。スピリチュアルの世界に近く、私みたいな一般人じゃ分からないコミュニケーションがあるのかもしれない。

 
234 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:48

 他愛もないお絵かきをして笑い合っている二人の姿は他人の心を和ませる力があると思う。愛理も梨沙子も、二人の描く絵はほのぼのとした印象で、見ているだけで優しい気持ちになった。お正月のコンサートのリハーサルではなっきぃの鼻を、どれだけリアルに描くかで競い合っていた。その時描かれたなっきぃの「鼻」にはほのぼのとした印象が一切消えていた。どうせだったらちゃんと似顔絵を描いてあげたらいいのに。なっきぃ本人は愛理と梨沙子どちらが上手だったのか判定を求められて自分の鼻をじっくり研究する羽目になっていた。

 
235 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:48

 ◇ ◇ ◇

 
236 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:49

 ももとラーメンを食べに行った日。愛理に小説を貸したあの時から少しずつ異変が起こっていった。
 靴が無くなるなんて考えられない。すぐには信じ難かった。でも家からスタジオまで履いてきた靴が無くなった。何度もロッカーの中をくまなく探したけれど見当たらない。大きいものだからどこかへ転がっていくものでもないし、隠れて見えなくなるものでもない。10年近くリハーサルスタジオに通い、ダンスレッスンを繰り返してきたけど、靴が消えるなんて初めてだった。

 
237 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:49

 思えばこれが始まりだった。
 始めは深く考えず、他の誰かが履き間違えたのだろうと思っていた。特徴もあまりない、黒のブーツだ。メンバーではなくても他の用事でスタジオへ来た人が間違えたのかもしれないと半ば無理やりそう思い込んだ。もしかしたら、次の日自分の靴でないことに気づき、履き間違えた人がまたスタジオに靴を返しに来てくれるかもしれない。予想はやっぱり甘かった。靴はいつまでたっても私の元へ戻らなかった。

 
238 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:49

 靴が無くなった数日後。次は、ストールが無くなった。確かに、家を出る時に首にストールを巻いて出掛けた。イベントのリハーサルを終えた時には既に見当たらず帰宅する時にメンバーにも手伝って貰って探したけれど。見つからなかった。

 
239 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:49

 そして、今日、珍しく身に着けていたガラス製のイヤリングが無くなった。

 
240 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:50

 ◇ ◇ ◇

 
241 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:50

 テーブルを挟んで向かい合って座った正面で沙子がみそラーメンを食べている。
 食事をする時には邪魔になる髪を梨沙子は後ろで一つに束ねていた。梨沙子の耳にイギリスの国旗をモチーフにしたピアスが光った。梨沙子の地肌の白さに、ピアスのブルーが良く映えていた。

 
242 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:51

 いつ、失くしたのか私は全然覚えていない。いつだろう、どこだろう。イヤリングを外した覚えがないから何かの弾みで外れてしまったのかもしれない。
 「食べないの? 」
 ずるずる音を立てて麺を啜っていた梨沙子が箸を止めた。
 この前、ももと立ち寄った中華屋さんのラーメンが美味しかったという話で盛り上がり、予定の無かった梨沙子と二人で仕事帰りにラーメンを食べることになった。梨沙子はみそラーメン、私はみそタンメン、2人で1人前の野菜餃子を注文した。
 今日一番行きたがっていたのは千奈美だったが、熊井ちゃんとラジオ収録の予定があったらしくラーメンはお預けだ。
 「食べる食べる」
 注文したラーメンがテーブルに運ばれてから時間が経っていた。梨沙子が変に思うのも無理ない。
 割り箸が入っているケースから一膳箸を取り出して両手で割った。
 「割れたのかな? 」
 「割り箸だから割れるんでしょ」
 私の独り言に梨沙子が答えた。彼女は怪訝な表情をしてこちらを見ている。
 「違う、独り言」
 「今日のまあ変だよ」
 訝しがる梨沙子に、私は何でもないと言うつもりで笑顔を作って見せた。それから一つ目の餃子にお醤油に付けた時だ。
 「イヤリング」
 と、梨沙子が呟いた。
 私は驚いて、箸でつまみ上げた餃子をまたお醤油に落としてしまった。
 お醤油が弾いてテーブルを汚した。
 前にストールをみんなで探して貰った時に結局探し物は出てこなかったから、今日イヤリングが無くなったことは誰にも言わなかった。
 身の回りの物を紛失する度にメンバーに迷惑を掛けていたらきりがない。
 「まあ、今日、イヤリングしてなかった?」
 何気ない様子だったけれど、真正面に座った梨沙子がじっとこちらを見ていた。
 食事をする時、長い髪が邪魔になる。無意識で顔にかかった髪を掻き分けて耳にかけた時だろう。梨沙子が私のちょっとした変化に気づいてしまった。梨沙子は勘が鋭いと思う。
 ごまかすか、正直に言うか少しの間迷ってしまった。醤油の滴を紙ナプキンで拭きながらどうしようか思案した。でも、ごまかすには言葉を口にする間が長過ぎた。ここは正直に言うしかない。

 
243 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:51

 「うん」
 「無くなったの? 」
 「分かんない」
 「でも、今、イヤリングしてないじゃん」
 今のところ、最近失くし物が多い須藤、だけで済んでいる。
 ただ、気になることがあった。
 「いつからイヤリングが無いのか覚えてないんだよね」
 「言ってくれたら一緒に探したよ」
 きれいな形だったのに。
 自分のことのように梨沙子が分かりやすく落ち込んでいた。これだから言えない。些細なことでもあまり他のメンバーに余計な心配を掛けたくなかった。
 お醤油に付け込まれた一つ目の餃子を再び箸で持ち上げて口の中へ放り込んだ。
 皮のもっちり感の後、キャベツのシャキシャキ感がきた。歯応えも楽しく、味も上々だ。
 「美味しい」
 思わず出た餃子の感想に梨沙子は溜息を吐いた。
 私は溜息に気づかないふりをしてラーメンのどんぶりへ箸をつけた。
 「梨沙子のラーメン冷めちゃうよ」
 私はラーメンを一口啜ってから早く食べるように相手を急かした。
 「冷めたらちょうど食べやすいし」
 面白くない、といった態度が分かりやすかった。
 イヤリングについて事情を話さない私が気に入らなかったのだろう。
 「ありがとう、梨沙子」
 家に帰ってから、鞄の中を隅々まで探すと梨沙子に伝えた。
 「優しい梨沙子に、餃子あげちゃう」
 と言って、ラーメンどんぶりの中に餃子を放り込んだら怒られた。
 そんなことではごまかされない、と暗に言われたみたいな気がした。

 
244 :赤と嘘 :2012/03/26(月) 19:51

 愛理と梨沙子は似ている。他人の懐にひょいと踏み込むかわいらしさが共通するだけではない。
 言葉にして指摘をしなかったとしても、ごまかしを見抜いてしまう音のない視線は上辺を取り繕ったとしても本質を見抜いている。年下だからといって愛理も、梨沙子も、昔から何も気が付いていないわけではなかった。

 
245 :_ :2012/03/26(月) 19:52



 
246 :_ :2012/03/26(月) 19:53



 
247 :寺井 :2012/03/26(月) 19:53
続きます。


やっつけじゃないです。
248 :名無飼育さん :2012/03/27(火) 14:50
続き物だったのか。予想外のムードにどきどき。
249 :名無飼育さん :2012/03/28(水) 19:51
読んでいて全体像が見えてこない。引き込まれるなぁ。
続きを楽しみにしてます。
250 :寺井 :2012/05/13(日) 20:19
>>248 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
続きました。ムードが続くように頑張ります!

>>249 :名無飼育さん
コメントありがとうございます
>読んでいて全体像が見えてこない。
ずばっとご指摘頂きドキっとしちゃいました。続き頑張ります。
251 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:20

 ◇ ◇ ◇

 
252 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:20

 空気が乾燥する冬は、髪の手入れを怠ることができない。
 冬でなくても、長い髪を維持するのは手間がかかった。シャンプーを使う量はかなり多いし、ドライヤーも時間がかかる。
 肌と同じように空気の乾燥は髪にも良くない。長髪は髪先に栄養が届きにくいのに、乾燥するとさらにごわごわしてくる。この黒髪は自分でも結構気に入っている。ごわつくとブラシも通りにくくて途中で髪の毛が切れたりするとテンションは下がった。つやつやの髪を維持するには出掛ける前と、帰宅後と、念入りにケアする必要があった。普段から手間がかかるのに、冬は特に髪に気を遣った。
 コートを脱ぐときに、静電気でパチパチっと刺激が走った。髪も静電気の所為で数本がふわふわ跳ね上がっている。鏡に映った自分を見つめ、思わずため息が漏れていた。

 
253 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:21

 梨沙子に宣言した通り、帰宅してから鞄の中身を全部出して探したけれどイヤリングは見つからなかった。どこかに落としてしまったのだろう。
 靴、ストール、そしてイヤリング。1週間も経たない期間で誤って紛失するには失くし物が多い。
 私がうっかりしてるだけならそれでいい。むしろそうあって欲しかった。私が考え過ぎちゃう性格なのかもしれない。

 靴。
 ストール。
 イヤリング。
 3つの失くし物を繋げる物語を私は知っていた。
 どうやら、ある物語になぞらえているみたいだ。
 この前ももとラーメンを食べに行った日に私が、愛理に貸した小説の話とそっくりだった。
 ノベライズの原作は探偵物の漫画だった。小説の中では、舞台となる高校で運動靴と、マフラーと、ピアスが盗まれる事件が起こった。
 私が立て続けに失くしている、靴、ストール、イヤリングと似ている。ほとんど一緒のものだ。
 こんなに偶然が重なるのだろうか。愛理に、小説を貸してから起こった。
 考え過ぎだ。そんな話はあり得ないと愛理と失くし物を繋ぐ妄想を掻き消そうとした。忘れることができればよかった。妄想はなかなか消えてくれず、愛理を疑っている自分に自己嫌悪に陥った。

254 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:21

 どうして愛理が?

 小説の中でピアスの次に消えたのは、髪だ。
 鞄の中身を部屋でひっくり返して探したせいで散らかしてしまった。
 鏡に映る自分の部屋がいつもと違って見える。思わず溜息が漏れた。
 読んでいる途中で愛理に渡してしまったから、事件の結末が分からなかった。
 インターネットで検索すれば結末は分かるのかもしれない。でも、なんだか怖くて調べることができなかった。

 でも、でも、だけど。愛理が私の失くし物に関係しているとは考えにくい。
 仕事が超多忙である彼女が物語になぞらえる事件を起こすなんてあるだろうか。何か目的があるなら、物語になぞられるなんて遠回りなことをせずストレートに遂行する方が考えられる。
 目的がなくて私を驚かせたいだけならもっと考えにくい。そんな暇はないはずだから。
 偶然小説と重なってしまっただけで失くし物が続いたのは私の物忘れの所為なんだろうけれど。
 愛理が気になって仕方がなかった。
 これからベリーズはツアーリハーサルが毎日続く。誰かに言うか言わないでおくか。今の状況では打ち明けた所で笑われるだけかもしれない。
 私は変に考え過ぎている。ただ、それだけなんだ。
 散らかった部屋をそのままに、立ち上がる。お風呂に入る仕度を始めることにした。

 
255 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:21

 * * *

 
256 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:22

 会社の中にある、フリースペースにいることが多くなった。
 打ち合わせをしたり、空き時間に書き物をしたり、色んな人が立ち寄る場所だ。用事がなければ会社で時間を潰したりすることなくすぐ帰宅する。なんとなく、フリースペースで愛理に会えるかもしれない、そう期待して時間を潰していた。直接彼女へ電話でも、メールでもすれば真相が早く明らかになるのに。何故かできなかった。

 配布されたばかりのアンケートに記入している時だ、隣に座る人影が現れた。同じBerryz工房に所属する夏焼雅だった。

 「まぁさん真面目だねー」
 そんなことを口にしながらみやは、私の記入していた紙を覗き込んできた。
 「お疲れ、みや」
 「うちの分も書いてくれる? 」
 甘えるように、こちらへすり寄ってきた。寄りかかられてもみやの軽さに驚くほどだった。
 「書いてもいいけど、字でマネージャーさんに代筆だってばれちゃうよ」
 あー、と低い声で唸りながら、みやは机の上に突っ伏した。
 「コンサート写真の書き物も終わってない」
 「Buono!の? 」
 私の問いにみやは突っ伏したまま、うなずいていた。
 ベリーズのリハーサルと、Buono!のコンサート、5月から舞台も決まって、みやのスケジュールは相変わらず慌ただしい。

 
257 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:22

 「今日が締切の日」
 「時差ボケしてる暇もないね」
 「時差ボケは治ったし」
 みやは机の上に寝そべったまま、こちらを見上げてきた。
 「茉麻は、ここで何してるの? 」
 何気ない質問に一瞬どきりとした。
 「アンケート、書いてる途中だけど」
 「ここで? 急ぎじゃないのに? 」
 相手は目をぱちぱちさせてこちらを見ている。それから梨沙子が気にしていたと、みやは意外な発言をした。
 「梨沙子が? 」
 思わず、聞き返してしまった。心配させないように気を付けたつもりでいたが梨沙子をごまかすことはできなかったみたいだ。
 「茉麻の様子がちょっとヘンって言ってたよ」
 私はそれほどヘンとも思わないけどね、とみやは付けたして笑った。

 「愛理がどうかしたの? 」
 更にみやは核心に迫る人物の名前を挙げた。と、大げさに言うほど何も起きていないのだが。
 なんだか気が抜けて笑いがこぼれてしまった。
 私につられて、みやも笑っている。
 「別に大したことじゃないんだけど」
 「でも、愛理を待ってるんでしょ? 」
 そう聞かれると答え難かった。
 「んー、まあ、愛理がどうしてるかなって」
 「気になるワケだ」
 みやは自分の指を見ながらおしゃべりしていた。どうやら、ネイルを変えたららしい。初めて見るカラーだった。オレンジ色でグラデーションが柔らかくほどこされていてみやに似合っていた。
258 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:23
 
 「愛理、茉麻にね」
 みやが何を言い出すのかさっぱり予想できなかった。
 そして、全然期待していない言葉が続いた。
 「パリのお土産買ってなかったよ」
 私は愛理からフランスのお土産が欲しくてこんなところで待ち伏せしているワケじゃなかった。
 「そっか……残念だな」
 「でも、うちパリで買ったお菓子が家に少し残ってるから今度まぁさんに持ってきてあげるし」
 「うん、ありがとう」
 お礼を口にしつつ、愛理からお土産が欲しかったのではないと弁解しようか迷った。でも、じゃあどうして愛理を待っているのかみやに尋ねられたら答えられない。
 「愛理は元気? 」
 聞きたいことはそれだった。何気ない流れでその言葉を口にできたことに、私は内心ガッツポーズをしていた。
 「愛理より」
 横顔だったけど、真剣な表情でみやが呟いた。
 「ももの方が元気だよ」
 ももが元気なのは、さっきまで一緒にリハーサルをしていた私も十分に知っていることだった。
 「ももって何であんなに元気なんだろうね」
 私は愛理が元気なのか知りたかったのに。ももの話は今はこの際関係ないことだった。
 「もも、この後も仕事みたいだし、午前中は大学のテストとかもあったのに」
 みやが溜息を吐いた。
 「ウザイくらい元気なんだよね」
 「元気ないよりは、いいじゃん」
 不要なフォローをしている自分に呆れてしまった。やんわりと愛理がどうしてるかなんて探りを入れようなんて、どうかしていた。聞きたいことがあるなら、直接自分で聞かなきゃ前に進めない。
259 :赤と嘘 :2012/05/13(日) 20:23

 「違うの」
 隣に座っていたみやが、頬杖をついてこちらに顔を向けた。
 「無理に元気でいなくてもいいのにって。気を遣われてるみたいで嫌なの」
 みやは少し怒ってるみたいだった。私や他のベリーズメンバーよりも、Buono!のお仕事で一緒に過ごすことが多いみやだけが知るももの一面があるのだと思う。ももは強がりな部分がある。
 「逆に、みやがももに甘えてみたら? 」
 「はぁ?!」
 私の発言にみやは眉間にしわを寄せた。
 「甘えて欲しいなら、みやがまず先にももに甘えてみたら? 」
 「別にうちはももに甘えて欲しいとかそんなんじゃなくて」
 「本音で言って欲しいんでしょ」
 自分の言葉にはっとした。愛理の本音を知りたいなら、まず自分から本音で愛理に話をしなきゃいけない。
 「ももに、無理しないでいいよって、みやが本音を伝えてみればいいじゃん」

 愛理は無理してない?
 そんなに頑張って、どこへ行くの?
 辛くないの?苦しくないの?私は愛理の心が知りたい。

 みやはその後、無言になってしまった。
 ももに「ツンデレ」とからかわれるみやだった。でも、素直な性格は隠しきれていない。きっとももは、みやに助けられている。強がって、疲れていても元気な素振りを見せるももだけど、みやがいるからそうやって元気に笑っていられる。だからももも、ちょっとはみやに素直に感謝した方がいいと思った。

260 :_ :2012/05/13(日) 20:23



 
261 :_ :2012/05/13(日) 20:23



 
262 :寺井 :2012/05/13(日) 20:25
続きます。次で完結です。


やっつけじゃないです。
263 :名無し飼育さん :2012/05/17(木) 00:29
どう着地するのか楽しみです。
264 :名無飼育さん :2012/05/19(土) 00:02
不穏なようなそうでもないような、曖昧だけれど、少し怖さを感じるのが魅力的。
265 :名無飼育さん :2012/05/21(月) 08:23
だんだん見えてきた…かな?
面白いなぁ。愛理ちゃんはこういう不思議な(?)雰囲気が似合う女の子ですね。
266 :寺井 :2012/08/03(金) 07:19
更新します。
続きものでなくて、ごめんなサイ。(嗣永桃子のももちモチモチ許してニャン!)
熊井ちゃんハッピーバースデイ!!

 
267 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:20


 ◇ ◇ ◇

 
268 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:20

 ぺたぺたと素足で歩く音が近づくとともに、カラカラと氷とグラスがぶつかる涼しげな音も聞こえてきた。
 茉麻の部屋にエアコンはない。幼馴染の部屋では見慣れた扇風機が今年も活躍していた。ちょっと古い扇風機だけど、よく手入れされている所為か風をたくさん運んでくれる気がした。
 「熊井ちゃん、お茶で良かったよね」
 開けっ放しのドアから茉麻の顔が見えると、私は嬉しくなって思いきり頷いた。
 「ここ、暑いし。リビング行こうか? 」
 茉麻は持って来たグラスを部屋のテーブルへ置きながら特別汗っかきの私を気遣ってくれた。
 「ありがと。でもここがいい。マンガもいっぱいあるし」
 「そう」
 茉麻の癖である片眉を下げる表情をして目を細めた。
 私はベッドを背にして床に座った。茉麻は自分のパソコンラックの椅子に横座りしてこちらに向いている。
269 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:21

 突然、茉麻を訪ねた理由は彼女に相談したいことがあったからだ。勢いでここまで来たけれど、面と向かうと何故か言葉が出てこなかった。何気ない様子を装って、マンガを探しているふりをした。
 立ち上がり、部屋の壁一面を埋め尽くしている本棚と向かい合う。几帳面な茉麻の性格が表れている本棚だった。出版社と作家で整理されているのはもちろん。出版された年代順で並んでいるらしい。
 お茶が注がれたグラスは大粒の汗をかいている。カランと音を立てて氷が一つ浮いた。
 「熊井ちゃん、テストどうだった? 」
 大学に進学して初めてのテストは一昨日やっと終了した。高校までのテストとは勝手が違うから、てんてこ舞いだった。結果がどうなるかは休み明けにならないと分からない。初めてのことだと手応えもいまいち分からずテストが良かったのか悪かったのかピンと来ないというのが正直な感想だった。
 「分かんない」
 「大丈夫なの? 」
 「分かんないよ。結果出るの休み明けだし」
 「まぁね、終わっちゃったことどうこう言ってもやり直せないからね」
 「全然慰めになってないけど」
 私がふて腐れた表情を見せても、茉麻は平然として水滴だらけのグラスを持ち上げこちらへ向けた。
 「熊井ちゃん。テストお疲れ様」
 それから一人で乾杯と言ってグラスを傾けた。
 私も始めに座っていた位置へ戻りグラスに口を付けた。
 「遊び行こっか。テスト終わったし」
 「え、ほんと? 」
 暑さとテスト結果のことで沈みかかった気持ちがいとも簡単に浮上し、声が上ずった。
 私の受験勉強が本格化してからは、茉麻と二人で遊びに出掛けることがなくなった。志望大学に合格してからは、茉麻の仕事が忙しくて時間が合わず、学校が始まると私がばたばたして今日までゆっくりする時間がなかった。幼馴染ではあるけど、毎日会っていたわけではない。でも、こんなに慌ただしかったのは初めてかもしれない。学生と社会人では時間の使い方が全然違った。茉麻は夜遅く帰ってくることもあるみたいだし。一つしか年は違わないけど、雰囲気もなんだか大人びて見えた。
270 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:22

 久しぶりに来た茉麻の部屋はやっぱり落ち着く。ここは少し暑いけど二人きりで会いたかった。
 だから、茉麻から遊びの誘いを受けるとテンションが上がっても仕方のないこと。夏休みは始まったばかりだしこれからたくさん楽しいイベントが目白押しだ。テストの結果は新学期まで忘れようと思った。

 「海? プールでもいいな。夏って感じのことしたい 」
 「あー、海行きたい! 」
 「遠出する前に、お買いもの行きたいね」
 「うん。テスト前でセールにも行けなかったし」
 「熊井ちゃん、真面目に大学生やってるんだ」
 「ちょっとまあさん、どういう意味」
 ごめんごめんと茉麻は笑って謝っていた。いったいどんな学生生活を想像していたのだろう。
 「じゃあさ今日、熊井ちゃん夜時間あるならこれからお買いもの行ってご飯食べよう」
 うん、と頷こうとしてちょっと迷ってしまった。
 今日、ここへ来たのは茉麻に聞いて欲しいことがあったからで。遊びの約束をしに来たわけではなかった。持っていたグラスをテーブルに置いて、座り直す。でも、いざ口にしようとすると心臓がどきどきしてきて言葉が出てこない。なんでだろう。こんなこと今までなかった。受験の時より緊張しているみたいだ。
 「あのね。まあさん」
 「どうした? 」
 「聞いて欲しいことがあるんだけどさ」
 茉麻は黙ったまま瞬きをした。
 「今日ね、さっきなんだけど。私」
 「うん」
 茉麻の目力すごいなとやや気圧され気味で次の言葉を口にしようとした瞬間に。

 !!!

 茉麻のスマートフォンが音を立てた。
 相手はあっさりと私から注意をそらし、その携帯端末を確認して一言呟いた。
 「みやだ。何かヤな予感する」
 顔にかかる前髪を横へ掻き分けながら、通話を始めた。
271 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:22

 電話をかけてきた相手のみや、とは夏焼雅のことで、茉麻の中学高校の同級生だ。学校は違ったけれど、私もみやとは何度か会ったことがある。きれいな顔立ちの所為もあるけれど、印象的な雰囲気を纏っていた。場の雰囲気を明るくする華やかなオーラを感じた。一緒にいるだけでこっちまで根拠のない自信を持つ、みたいな特別な女の子だと思った。

 「えー、今から? 」
 突然、茉麻が声を大きくした。
 「今、熊井ちゃんとご飯食べに行こうって。いや、だから」
 ちらりと茉麻がこちらを見た。雰囲気を伺っている茉麻に私は笑って答える。いいよ、みやのところ、行きなよ。強引なところがあるみやと、押しには弱い茉麻の勝負の行方はおバカな私にだってわかる。
 「ごめん、熊井ちゃん。これからホントに時間ある? 」
 携帯を顔から話して、茉麻がこちらに向かって尋ねた。
 「私? 時間は大丈夫だけど、茉麻が呼び出されてるんだよね」
 「お願い。一緒に来て」
 申し訳なさそうに茉麻が上目使いみたいな表情をした。私は、うんとしか言えなかった。

272 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:22

 * * *


 
273 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:23

 茉麻に付いて行き、着いた場所はファミレスだった。涼しい場所へ移動して、ちょっとほっとした。
 押しに弱いのは私の方かもしれない。今日は茉麻に話を聞いてもらおうって思っていた。
 それが何故か、みやの話を二人で聞いているのだから。
 肩を出した露出度高めの恰好でみやは憮然として野菜ジュースを飲んでいた。恰好だけ見れば夏を満喫してますって感じで、私も買い物へ行きたくなった。サンダルも、バッグも夏物を買いに行けていなかった。

 「みやが何かしたんでしょ」
 「私が何かしたのかもしれないけどさ。それが何なのか言ってくれなきゃこっちだって謝りようがないワケ」
 「自分の胸に手を当てて、よーく考えてみなさい」
 「助けてよ、まあ〜」
 「そこがダメなんだよ、みや」
 向かい合わせ座っていたみやが茉麻の手を握ろうと前のめりに倒れてきた。その手をぺしっと叩いて茉麻は一瞥くれた。
 「私より、まあの方が梨沙子の気持ち分かるかなって思って相談してるのにひどーい」
 いじけた様子でみやは椅子の上に体育座りを始めた。私は二人の遣り取りを眺めながら、時々フライドポテトを食べていた。なんで私までみやと梨沙子の痴話ゲンカのとばっちりを受けているんだろう。ファミレスは涼しくて居心地もまんざらじゃない。夏のメニューも充実してるけど。やっぱりもっと、なんか、かき氷とかマンゴー系とか、夏って感じを味わいたいのに。みやはエビフライとかからあげとかなんか揚げ物ばっかり注文していた。
 「ダメだし聞きたくなーいー。優しく慰めて」
 「あーもーっ」
 茉麻にしては珍しく、苛立ったような声を出した。みやは茉麻相手だとわがまま放題だ。昔からそうだった。多分、普段はリーダー気質というか、頼れるお姉さんって感じなんだろうけど。私が知っているみやはこうやって茉麻に絡んで呆れられていのがいつもだった。
 「怒った梨沙子がどんだけ怖いか。二人とも分かんないでしょ? 」
 「だから、それはみやが悪いんだから仕方ないし」
 みやは自分の人さし指をを頭の上で二つ並べて、「鬼だよ、鬼のような形相で」といいながらこちらに迫ってきた。
 梨沙子は鬼というより、怒ったら魔女っぽい気がしたけど口にはしなかった。
274 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:23

 「誰が鬼だって? 」
 寒気がするような、優しい声だった。みやの後ろに梨沙子が立っていて、私が驚いて悲鳴を上げていた。よかった、余計なこと口にしなくて正解だった。
 「熊井ちゃんが驚く必要なくない? 」
 笑って、梨沙子はみやの隣に座った。すると、みやは椅子の上で正座をして小さくなった。
 みやが言う、鬼のようなとは欠片も結びつかないほど三蔵法師のような徳の高さを伺えるほど梨沙子の立ち振る舞いはきれいだった。
 「梨沙子、来てくれてありがとう」
 その声にはっとして茉麻をまじまじと見てみる。三蔵法師は梨沙子じゃなくて茉麻かもしれない。どっちにしてもみやは掌で転がされている孫悟空で間違いない。椅子の上で正座していたみやは、梨沙子を避けるにどんどん壁側に寄っていった。
 「こっちこそ、ありがとう。茉麻まで巻き込んじゃって。熊井ちゃんも、ごめんね」
 みやと梨沙子は確か、2つ年が離れていてみやの方が年上なのだけど、ごめんと口にした梨沙子はとても大人に見えた。
 「みや、ちょっとみや」
 茉麻が手を伸ばしてみやを揺すった。みやは座ったまま、目をつぶって寝たふりを始めた。ホントにどっちが大人なのか分からない。
 「あのね、みや。今回のケンカの原因は知らないけどさ。それは後から二人で話し合ってくれればいいんだけど。自分でちゃんと梨沙子の気持ち考える前に、私とか愛理に相談するとこが一番良くないからね」
 そこまで言われて、みやが目を開けた。
 口を尖らせて、反省している素振りを見せない。でもこれは、多分。みやの照れ隠しだ。
 茉麻もそれが分かったらしく、こちらに目配せしてきた。ここらへんで私たちは退散する頃合い。
 「分かんないじゃなくて、考えて、自分なりの答え出さないと。最初から諦められてるみたいで寂しいよ。ちょっと悲しいって、私なら思う」
275 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:23

 茉麻の言葉が、私の胸に刺さった。
 今日は茉麻に聞いて欲しいことがあったんだよ。でも、多分、私もちゃんと考える前に、自分の答えを出す前に茉麻に聞いて欲しいって思っちゃった。茉麻に甘えてるんだ、私。

276 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:23

 * * *


 
277 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:24

 ファミレスを二人で出た時は、丁度お夕飯の時間帯だった。買い物袋を手に持った女の人や、コンビニ帰りの学生たちとすれ違う。日の長い夏だから辺りはまだ明るい。ただ、少し太陽は力を弱めて気温が下がり、私の汗は相変わらずだけど風が吹くと心地よかった。

 「お買い物はまた今度にしようね」
 「私は夏休みになったから、まあさんの都合の良い日教えて」
 そう私が言うと、早速スケジュールを確認するために茉麻は携帯端末を鞄から取り出した。
 「みやからメールだ」
 斜め上から茉麻のスマートフォンの画面を覗くと、孫悟空らしい文面が見えた。

 『この借りは必ず返す』

 「おー、楽しみだ」
 「そうだね」
 「あ、でも。なんで私までみやと梨沙子の仲裁に連れてかれたの? 」
 「無理にごめん。でも、梨沙子がキレると手が付けられない時あるから」
 言いながら、茉麻はみやに短いメールを返信していた。
 「熊井ちゃんがいれば暴れないかなって。梨沙子の防御策」
 「梨沙子って落ち着いてるイメージしかないけど。そんなに怒ったりするんだ」
 「みやに関しては理性より感情的になっちゃうみたい。それがいいんだけどね」
 「ふーん」
 「ご飯食べて帰る? 」
 せっかくの茉麻のお誘いに、私は首を振ってお断りをした。
 「なんか、話したいことあって家に来たんでしょ」
 茉麻がもし三蔵法師だとしたら、私が孫悟空ってことになるのかな。
 何も言ってないのに、茉麻はお見通しって感じで表情だけで私を諭しているみたいに見えた。
 無理しないで打ち明けてしまいなさい、と言われているみだいたっだ。
278 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:24

 「今日は帰る」
 そして、自分で考えて、自分なりの答えを出してからまた茉麻に相談しよう。
 「大丈夫? 」
 まだ心配そうに茉麻が私を気遣っている。甘えっぱなしの私も悪いけど。こうやって甘やかしてる茉麻にも、ちょっとは非があると思った。
 「ホントはね、聞いて欲しかったんだけど。今日ね、私」
 言葉を口にしようと思うと、時間が巻き戻しされるみたいにあの時の場面が頭に浮かぶ。ちょっと胸が苦しい。
 「好きだって、告られて。サークルの先輩から付き合って欲しいって言われたの」
 「はあ?!」
 素っ頓狂な声を上げて、茉麻が立ち止った。
 「何それ。そんなの聞いてないけど」
 「今、初めて言ったもん」
 「なんでそんな大事なこと早く言わないの」
 「えー」
 「えー、じゃないよバカ」
 茉麻が、怖い。なんか分かんないけど、めっちゃ怒ってるっぽい。
 「バカ、熊井ちゃん。呑気にみやと梨沙子の痴話ゲンカ聞いてる場合じゃないじゃん。熊井ちゃん天然過ぎる」
 みやが梨沙子のこと鬼の形相って言ってたけど、今の茉麻とどっちが迫力あるかな。こんなに暑いのに、冷や汗を背中に感じてきたし。
279 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:24

 「もう、信じられない。どこのどいつ。何それ。まさか熊井ちゃん、OKしたとかないよね? 」
 「いや、うち、なんて答えていいのか分かんなかったから。まあさんに相談乗ってもらおうと思ったけど」
 真剣に告白してくれた先輩の気持ち考えたら、やっぱり自分で考えて、答えを出すつもり、と茉麻に伝えきれなかった。
 「はあ?! バカじゃないの。ダメに決まってるでしょ。ダメダメ、熊井ちゃんダメだからね絶対」
 下から睨みつけられるように、茉麻に念押しされた。
 「お断りしなさい」
 捨て犬を拾ってきて、お母さんに怒られて、元の場所に戻してきなさいって言われた子供みたいな気持ちになった。ただただ茉麻が怖い。
 「はい」
 いつもの、茉麻じゃない。
 考える余地なく、断ることを約束してしまった私の押しの弱さは茉麻以上だと思い知った本日。
 「まだ早いよ、熊井ちゃんが誰かと付き合うなんて」
 気が付いたら19歳。
 茉麻にとって私はいつまでたっても見た目は大人、中身は子供の頼りない熊井ちゃんなんだろうか。
 つまらない気持ちがこみ上げてきて自然と口を尖らせてしまっていた。
 「熊井ちゃん? 」
 茉麻の目力はやっぱりハンパない。
 どうやってこの茉麻を宥めるか、みやに相談した方がいいのかな。
 だって、茉麻がなんで怒ってるのか理由が全然分かんないんだもん。
 「まあさん、ひょっとして怒ってるの? 」
 「別に」
 「私、なんで怒ってるかちゃんと言ってくれないと、バカだから分かんないよ」
 「それくらいバカでも自分で考えて」
 せっかくテストが終わってゆっくりできると思ったのはつかの間。
 頭を悩ませる問題が新たに出現し、眠れない日が続くかもしれない。

280 :ワクワク!夏のサマーデイズ :2012/08/03(金) 07:25



 
281 :_ :2012/08/03(金) 07:25



 
282 :寺井 :2012/08/03(金) 07:28
以上です。半分以上やっつけです。
いかがでしたでしょうか。
感想やアドバイス、ヒントとか頂けるとありがたいです。
283 :名無飼育さん :2012/08/04(土) 16:09
ちょっと鈍い熊井ちゃんが可愛いです( ̄∇ ̄#)
284 :名無飼育さん :2012/08/07(火) 21:07
面白かったです。寺井さんの描くベリメンは、どうしてこうも違和感がなくすっぽりと日常風景に溶け込んでしまえるのか、毎度のことながら感服します。
275ではこちらまではっとさせられました。
そして、タイトルがいいですね。くまくましてる雰囲気が出てて。私は好きです。
285 :寺井 :2012/08/25(土) 07:22
更新します。
続き物じゃないけど、どうか許してください。

雅ちゃんハッピーバースデー!

 
286 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:24

 ◇ ◇ ◇

 
287 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:24

 なんとなく、心配だった。それも正直な気持ち。時間が経ち、心配なだけならムカついたりしないって今は分かる。あの時は不意打ちで理性を保つことができなかった。気が付いたら、私は苛立ちをそのまま言葉にして熊井ちゃんにぶつけていた。

 幼馴染の熊井ちゃんが大学の先輩から告白された。

 『好きだって、告られて。サークルの先輩から付き合って欲しいって言われたの』

 「のほほん」と頭の上に説明書きが浮かんで見えるぐらいのゆるさで熊井ちゃんはそう私に告げた。のほほんとした態度が気に障ったし、告白された事実を黙っていたことにも腹が立った。いつの間に?!って感じだ。いつの間に、熊井ちゃんは私の身長を越して、どんどん成長して、大学進学も決めていて、告白なんかも一丁前にされちゃって。かなり鈍感そうな様子でそれを私に打ち明けて。
 告白って、告白だよ?
 熊井ちゃん。熊井ちゃんのことが好きだって言われてるんだよ。分かってるの?
 熊井ちゃんは相手の気持ち分かってるの?
 
288 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:24

 初めてだったり分からなかったり困ったことがあると、熊井ちゃんはなんでも私に話してくれていた。私が高校を卒業してからは、それも少なくなってきた気がしていた。

 心配も正直な気持ち。
 そして、大人になっていく熊井ちゃんと私の距離がどんどん離れていくみたいでとても寂しかった。

289 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:24

 * * *

 
290 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:25

 朝、高校の同級生、夏焼雅から苦情のメールが来ていた。そして、二次被害に遭った後輩の菅谷梨沙子から昼休み中に電話が掛かってきた。

 「みやの機嫌が悪いの」

 まだ現役高校生なのに。梨沙子は余裕の態度だと分かる大人びた声だった。まるでみやが自分の妹であるかのようだ。楽しそうに不機嫌な彼女の様子を教えてくれた。
 熊井ちゃんは私が連絡を絶った原因が何なのかみやに相談を持ちかけていた。
 要領の得ない熊井ちゃんの相談内容に手を焼いてみやは結局梨沙子に八つ当たりしているみたいだった。みやは熊井ちゃんがどう困っているのかがさっぱり理解できず、茉麻に聞けとしかアドバイスできなかったらしい。
291 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:25

 10年以上幼馴染を過ごしてきて熊井ちゃんと仲がこじれたことは今までなかった。
 お互いのんびりした性格のお蔭なのか、ケンカになるような緊張感とは無縁だった。
 今回は一方的に怒った私が悪かった。こんなことは初めてだ。
 私が素直に謝れば済むこと。こないだは態度悪くてごめんってメールでも会ってでも一言謝罪すれば済むのに、それがなかなかできなかった。

 「ごめん梨沙子。私が悪いんだよ」
 「ううん。茉麻は困ってる? 大丈夫? 」

 12:50を知らせるチャイムが社内に響いた。
 梨沙子も学校に来ていたのだろうか。同じように電話越しから予鈴が聞こえてきた。
 
292 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:25

 「ちょっと、梨沙子に話。聞いて欲しい」
 「分かった」

 通話を終えると、メールボックスに新着メールが来ていた。
 送信者は熊井ちゃんだった。私が風邪をひいたのか病気なのか心配している。
 ケンカがなかったのは熊井ちゃんのこのおおらかな性格のお蔭だ。良い加減逆切れしたって仕方ない期間、私は返事をしていなかった。

 仕事を終えて、梨沙子の家へ向かった。途中、コンビニでお土産のデザートを買うのと一緒に花火を持ってレジへ向かった。子どもっぽいけど。夏だし。たまには思い切りはしゃぐことだってしたい。

 
293 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:26

 * * *

 
294 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:26

 「何それ」
 コンビニの袋からはみ出ていた花火のパッケージを梨沙子はめざとく見つけて笑った。
 「花火。帰る前に一緒にやろうよ」
 何も言わずに梨沙子はまた笑った。

 買ってきたあんみつを二人で食べながら、最近観た映画とか読んだ本とか雑談ばかりしていた。
 
295 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:27

 高校3年生である梨沙子の進路は決まっていた。去年の熊井ちゃんのように参考書とにらめっこを繰り返したり、課外の受験対策を受講したり、気分転換と言って突然マラソンを始めたり。いわゆる受験勉強というものをせず、梨沙子は進級してからも絵を描いていたり、本を読んでいたり、普段と変わらない様子だった。

 親戚の伯父さんが所長をしているデザイン事務所に勤めながら、夜は専門学校で美術系の勉強をしていくという。高校に進学した頃から決めていたみたいで、「早く現場に出て、第一線の空気に触れてみたい」と夢を語る梨沙子は年相応の幼い表情になる。

 「茉麻は仕事楽しい? 」
 「まだ分かんない」
 就職して2年目だけど、正直、慣れないことが多くて必死だった。楽しめるほど余裕が今はない。
 「社会人って大変だね」
 「まあね」
 「何が一番大変なの? 」
 「一番大変なのは・・・」
 うーん、といいながらあんみつのあんこをスプーンでつついてほぐしてみる。
 シロップがさっぱりしていてあんこのしつこさが気にならない。
 コンビニで買ったあんみつにしてはまた食べたくなる美味しさだった。

 
296 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:28

 「自分が失敗すると周りに迷惑がかかるっていうか。ミスして自分が怒られて済むって問題じゃないとこ? 」
 「あー。プレッシャー半端ないね」
 「半端ないことはないけど」
 「どっちなの」
 歯切れ悪くなった私に梨沙子が一瞬眉間に皺を寄せた。
 「半端ないことはないけど、大変」
 「大変なんだ」
 「大変なんだよ」
 あんみつを食べ終えた梨沙子は音楽プレーヤーのスイッチをオンにして好きな音楽を流し始めた。
 話すことを無理強いしないところが大人だな、と思った。このまま花火をして帰っても梨沙子は問いただしたりしない気がした。
 
297 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:28

 「ねえ」
 パソコンで天気予報を調べていた梨沙子がこちらに振り向いた。
 「みやのどこが好きなの? 」
 唐突な質問に梨沙子は一度目を丸くして、それからゆっくり笑みを作った。
 「分かんない」
 分からないと言う割に態度は迷いがなかった。
 「みやって、見た目はきれいだけど、中身はジャイアンなのに」
 「美しいジャイアンだよね」
 某アニメの印象と美しいというフレーズがあまりに似合わなくて思わず吹き出して笑ってしまった。
 「ホントにどこがいいんだろ。みやのどこが好きかって言えば。顔はきれいだなって思うし。あとは何だろう。優しいし。でも実はよく分かんない」
 照れているのか、梨沙子は少し早口になっていた。例え、みやが今の内容を梨沙子の口から聞いたとしても腑に落ちないだろうけど。
 梨沙子は眉を八の字にしてこちらを見ていた。
 
298 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:28

 「私の話じゃなくて」
 顔にかかっていた髪を手櫛で脇になでつけながら、梨沙子が表情を整えた。
 「熊井ちゃん。わけ分かんないまま茉麻から無視されててかわいそうだよ」
 「・・・ごめん」
 「どうしたの? 」
 まっすぐこちらを見つめられて、堪らなかった。
 私の方から視線をそらしてしまった。
 「何て、言ったらいいか分かんなくて」
 「茉麻」
 床に置きっぱなしになっている自分の鞄からスマートフォンが少し見えた。
 熊井ちゃんから、メールが来ても電話が掛かってきても返事ができなかった。
 どうして怒ってるのって聞かれて何て答えていいのか言葉が見つからなかった。
 梨沙子はパソコンから離れ、私の隣に座った。

 
299 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:29

 「熊井ちゃんに彼氏ができてもいいと思うし。私の知らないところで楽しくしてるのも良かったなって思ってる」
 良かったって思ってるはずなのに成長して大きくなって、一丁前になっていく熊井ちゃんも素敵だなってそう思うのに。
 私の知らない熊井ちゃんがいるみたいで寂しい。寂しいって気持ちが嬉しいより大きくて困った。
 「でも嫌なの。嫌だなって思ってる自分最悪」
 最悪って言葉に気分が一層落ち込んだ。
 「熊井ちゃんにそう言ったらいいじゃん」
 「そんなこと言ったら混乱するよ」
 「そうかな。茉麻の気持ちは分かると私は思うけど」
 「私の気持ち? 」
 「熊井ちゃんなりに茉麻のこと考えてるじゃん。熊井ちゃんは茉麻が本当に嫌がるようなことはしないよ」
 お付き合いを断れって勢いで口にしたら、熊井ちゃんは頷いていた。
 そういえば、どうして私が不機嫌になったのかは聞いてきたけど。
 なんで告白を断らなきゃいけないのかは聞かれなかった。
 これじゃ、私が熊井ちゃんを全然信じてなかったみたいじゃん。
 みやがジャイアンだなんて全然笑えない。私だって勝手な態度で熊井ちゃんを振り回していた。

 
300 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:29

 「みやは平気で私の嫌がること結構やるけどね」
 おどけるように梨沙子が言った。
 「最後は結局許しちゃうから。それをみやに見透かされてるみたいでムカつく」
 「おおらか過ぎるのも面倒くさいよ」
 「だよね。熊井ちゃんのどこがいいのか全然理解できない」
 「ちょっと」

 
301 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:29

 * * *

 
302 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:30

 コンビニで買ってきた花火は熊井ちゃんと仲直りして二人でしなさい、と梨沙子から指令を出された。
 今日の楽しみの一つだったから少し残念だった。
 「茉麻とみやで休み合わせておいてね。4人でプール行くって。茉麻のおごりで遊ぶってみやが言ってたよ」
 「ジャイアン言い出したら聞かないからな」
 玄関先で挨拶をして梨沙子と別れた。一軒家の菅谷家の前庭を通って、外灯のある通りへ出る寸前だった。
 菅谷家の門構えの側に季節外れの門松があった。しゃがんでちょっと丸まってる見慣れた背中。見誤ることはない。Tシャツを着た門松なんかじゃない。熊井ちゃんだった。

 「ここで何してるの? 」
 「まあさん待ってた」

 暗くて顔がよく見えない。怒ってるのか、笑ってるのか。熊井ちゃん、どうしてここにいるの?
 心臓がドキドキしてきた。
 「あのね」
 熊井ちゃんは黙ってこちらを見上げていた。
 目をこらして一生懸命熊井ちゃんの表情を探った。
 怒っているでも笑っているでもなくちょっと困ったような顔に見えた。
 「メール返事しなくてごめん。電話も無視してごめんね」
 やだな。なんか泣きそうになってきた。
 私が悪いのに今泣いたら、熊井ちゃん余計立場無い。

303 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:30

 熊井ちゃん。
 告白って、告白だよ。
 相手の人だってすっごい緊張したり、前の日眠れなかったり。きっとドキドキしながら思いを伝えてくれたんだよ。
 軽い気持ちだったら断って当然だけど。そうじゃないんだよね。
 本当は分かってるの?
 熊井ちゃん。
 自分の気持ちを分かってないのは私なのかな。

304 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:30

 「もう怒ってないの? 」
 熊井ちゃんは上目遣いをしたらしく、こちらの機嫌を伺った。
 何度も頷いた。怒ってない。怒ってるんじゃなくて。どうしていいか分からなくて子どもみたいな態度をとってしまった。
 熊井ちゃんに彼氏ができてもいいとか嘘だ。
 知らないところで楽しくしてるのだって、ちょっと嫉妬する。
 なんでだろう。分かんないけど。

 「ま」
 「ちょっと待って」
 熊井ちゃんが何か言おうとするのをオーバーアクションで遮った。
 先に言われたら、きっと言えなくなっちゃう。ごめん熊井ちゃん。混乱しちゃうかもしれないけど。
 最後まで言わせて。

305 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:32

 「熊井ちゃんの時間を貰えない? 」
 待っていて欲しい。もう少し。今のこの時間を過ごしていたい。
 「熊井ちゃんの時間を私に下さい」
 ちゃんとするから。今回みたいに困らせたりしないようにちゃんとできるように私も大きくなるから。鈍感なままちょっと待ってて。
 「え? 」
 「とりあえず、熊井ちゃんの時間ちょうだい」
 「どれくらい? 」
 そうきたか。それはごもっともな質問だった。
 「・・・来年、半年後。いや、2年ぐらい。でもそれだと」
 私がぶつぶつ言いながら答えあぐねていると。
 「いいよ、私。まあさんにいつでも時間あげる」
 そう言って熊井ちゃんは立ち上がった。外灯に照らされて熊井ちゃんの表情が浮かび上がる。
 「だから、私にはメール返して欲しいし。電話もちゃんと出て」
306 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:32


 熊井ちゃん。
 その笑顔は、反則だよ。


307 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:32

 精一杯笑おうと思ったけど無理だった。
 「私、熊井ちゃんに彼氏とかできるの嫌かも」
 「まあさんに心配かけないようにもっとしっかりしないとだね、私」
 違うよ、熊井ちゃん。そうじゃなくて。
 「あんまり遠くへ行かないで」
 涙が零れた。口にしたらホントに熊井ちゃんが遠くへ行ってしまうんじゃないかって、バカみたいに不安になる。
 手を伸ばして、熊井ちゃんに触れる。握り返してくれた手に子供みたいな気持ちを味わった。
 ただ、これだけで安心する。

308 :ワクワク!茉麻のマイエンジェル :2012/08/25(土) 07:32

 「会社でなんか嫌なことあったの? 」
 相変わらずの鈍感さで熊井ちゃんは泣いている私を心配してくれていた。
 「梨沙子から迎えに来いってメールが入ってて。何、まあさん具合悪いの? 病院? 病院行く? 」
 首を左右に振っていらないことを伝えた。
 「熊井ちゃんが来てくれたから大丈夫」
 私の熱を確かめるように、額に手を当ててきたけどそれを避けるように手をつないだまま強引に歩き出した。
 他人様の家の前で突っ立っているわけにもいかない。
 梨沙子と、熊井ちゃんと、ついでにみやにもプール代をおごるのは確実だな、と我ながらのんきな杞憂にくすぐったさを覚えた。

 もうちょっと、鈍感な振りして待ってて。
 熊井ちゃん。
309 :_ :2012/08/25(土) 07:33



310 :寺井 :2012/08/25(土) 07:34
以上です。
恐れながら、やっつけです。

 
311 :寺井 :2012/08/25(土) 07:38
>>283 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
熊井ちゃん、多分、ちょっとじゃなくて。ものすごい鈍いんじゃないかな、と思ってます。でも可愛いです!
>>284 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
嬉しいです。ベリメンのお話がもっとたくさん増えて欲しいなと思っております。くまくましてるタイトルは凡ミスでした。夏がしつこかったです。とほほ
 
312 :名無飼育さん :2012/08/29(水) 13:55
茉麻を筆頭にみんながまさに思春期真っ只中の大人と子供の丁度狭間にいるようで、読んでいて楽しい。
眩しくて、輝いてて、可愛くて、嬉しい。
313 :名無飼育さん :2012/08/30(木) 23:50
まあさん、切ない(´;ω;`)
自分が置かれている環境の変化や年月の経過で、それまでの人間関係のままじゃいられないことを思い知るときが誰しもあるもんなんだよな。
314 :寺井 :2012/09/03(月) 07:41
コメントを頂きありがとうございます。
とても励みになっております。ありがとうございます!!

>>263 :名無し飼育さん
コメントありがとうございます。
裏切ってしまいごめんなさい。ちょっとまだ続きます!

>>264 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
嬉しいです。「怖さ」がどのへんに出ていたのかが気になるところです。

>>265 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
ありがとうございます。メイキングやDVDマガジンで動いている愛理ちゃんはあまりミステリアスな雰囲気は感じないのですが。(ごめんなさい)
歌っている姿、写真集などいざっていう作品となると奥行の分からない不思議な魅力を感じます。
315 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:43

 ◇ ◇ ◇

 
316 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:44

 春ツアーのリハーサルでみやとキャプテンが振付の確認をしていた。今は休憩の時間だ。普段、笑ってばかりいるベリーズメンバーと雰囲気が違う。それぞれ別で確認をしていたり、黙って体力回復に専念していたり緊張感の高い空気だった。
 キャプテンとみや。双子みたいな息の合ったダンス。着ているTシャツも色違いでお揃いだった。見慣れた二人の姿なのに、丁寧に振りを確認する動きに視線が奪われた。きれいだな、と思った。猫の尻尾とかチーターの尻尾みたいに、無駄のない形で意思を持ってしなやかに動く二人にいつの間にか釘付けになっていた。同じ曲を踊ったとしても、私とはまるで違うものみたいに感じた。
 釘付けになってしまったのは私だけじゃなく、座って休んでいた梨沙子も同じみたいだ。
 踊りを止めて、キャプテンとみやが相談を始めても二人をじっと彼女は見つめていた。

 別のお仕事を終え、リハーサルに遅れてやってきたももが休憩中に合流した。
 ももは、振付を確認していたみやとキャプテンにすり寄っていき、甘えた態度で今までのリハーサル内容を教えて貰おうとしているみたいだ。ももだって仕事疲れがあるだろうに。なんであんなに無駄にぷりぷりした動きをするんだろう、といつも思う。
317 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:45

 二人は真面目に教え、ももも真剣に振りを繰り返す。でもなんだかみややキャプテンと、ももとではやっぱり違う。みやはもものダンスで爆笑していた。みやは笑っていたけど、キャプテンは眉間に皺を寄せ、仕切りに首をひねる仕草をしていた。表情から不安がにじみ出ている。キャプテンの心境を私は分かる気がした。ただでさえ時間のないリハーサルなのに、ももはメンバーの中で一番リハーサルに割ける時間が少なかった。その状況下で爆笑ダンスを披露された時には、どうしようって思う。自分が代わって踊れるものではないから、尚更どうしよう、だ。

 「もう一回、一緒にやろう」
 キャプテンが低い声でももに提案した。
 みやはももの背中をパシンと叩いて、「ごめん」と謝った。ももは頷き、位置を確認して初めのポーズに体を戻した。みやがカウントを口にする。
 いつの間にか梨沙子はももの隣で同じように踊り始めた。梨沙子は、ももの振付を覚えていたらしい。振りが入るタイミングを声に出してももをフォローしていた。成長した梨沙子の頼もしい姿に、今度は私や千奈美、熊井ちゃんが釘付けになる番だった。 
318 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:45

 * * *

 
319 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:45

 リハーサルを終えて、帰り仕度をしていた。ダンスシューズをケースに仕舞って靴に履きかえる。リハーサルの後、ロッカーの中や周囲を探すことが癖になっていた。探してもやっぱり失くしたブーツは返ってきていなかった。失くしたものがひょっこり現れるんじゃないかと期待してしまう自分の素直さに、一人で恥ずかしさを覚えるのも毎度のこと。
 どこへいっちゃったんだろうと、考えるものの全然見当さえつかない。ストールも消えたままだ。私の物忘れが激しいだけなのかもしれない。でも、失くし物を諦めるにはなんだか未練が残っていた。

 帰り仕度を整え、あとは帰宅するだけの状態で時間は21時を過ぎていた。メンバーはそれぞれ帰路につきロッカールームに残ったのは私だけだと油断した瞬間、名前を呼ばれた。
 「すーちゃん」
 ももだ。髪を下ろして、ピンク色のマフラーを首に巻いている。
 グレーのニットダッフルを着ていたももはおとぎ話に出てくる外国の子供に見えた。
 「もも。まだいたの」
 「すーちゃんに渡すものがあったの思い出して」
 どきりとした。
 帰ろうとして戻ってきちゃった、と言いつつ、何故かももは一回ターンをしてみせた。
 まさか、失くしものがももの持ち物に交じっていたんだろうか。
 「はい、これ。あいりんから」
 予想とは別に、手渡されたのは本だった。
 「まだ読んでないらしいけど、あいりんの弟くんが同じ小説持ってたんだって」
 先週、私が愛理に貸した、探偵物の漫画が原作の小説をももから返却された。
 「わざわざありがとう」
 お礼を口にしながら小説とももを交互に見る。3往復するぐらい視線を送ると、ももが不思議そうに首を傾げた。
 「これ、いつ愛理から渡された? 」
 「えー、そんなの覚えてないよー」
 にゃんにゃん、と猫の手を真似て顔の横でももの決め台詞のポーズを取っていた。
320 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:46

 愛理は、小説を読んでいない。これではっきりした。
 靴、ストール、イヤリング。私の一連の失くし物と愛理は無関係だ。私の考え過ぎだったことに、なんだかほっとした。

 「すーちゃん、すーちゃん」
 コートの袖を引っ張って注意を引かれた。
 「こないだももね。キャラメルカスタードまんっていう中華まんを見つけたの」
 上目遣いは不要です、と思わず注意したくなるキラキラオーラをももが仕掛けてきた。
 「夜9時過ぎて、中華まんは危険でしょ」
 「だからね。半分こしない? 」
 「分かった。それぞれ1個ずつ食べよう」
 「やったー! すーちゃんのおごりだー」
 よっしゃ、とももはキラキラオーラを瞬時に引っ込め、ガッツポーズを決めていた。
 おごるなんて私、一言も言ってないのに。でもまあ、愛理から小説を橋渡ししてくれたわけだし。わざわざ届けてくれたのもももだし。こうして、無意識に自分を納得させようとしている素直な性格はももの思うつぼなんだろう。

321 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:46

 * * *

 
322 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:46

  寝る前に、ベッドの上で寝転がりながらキャプテンのブログをチェックしていた。
 Berryz工房のメンバーではキャプテン一人だけがブログの更新を行っていた。毎日更新していて偉いなとも思う。
 ℃-uteのメンバーは全員で毎日ブログを更新している。
 直接メールや電話をしなくても、ブログを読めば大体何をしているのか分かった。ハロー!チャンネルの撮影が始まったとか、真野ちゃん舞台のお稽古始まったんだ、とか。スマイレージの2期メンバーもテストか、とか。かかわりの少ないハローのメンバーの様子まで分かった。ブログって便利だなと思う。
 ℃-uteのブログをチェックしていると、愛理はテストも控え、アコースティックライブのリハーサルもあり、雑誌の撮影もあるみたい。かなり多忙だということが分かった。文字から伝わってくる忙しさより、現実の愛理はともっと大変なんだろうと同じ仕事をしているから苦労が想像できる。
 その愛理のブログに掲載されていた画像で驚くことがあった。
 愛理が、私の紛失したストールと同じものを身に着けていた。
 しかも、撮影の時に使ったみたいだ。衣装のオフショット画像でそのストールが写っていた。
 良く似た違うもの? 偶然が重なっただけなの?
323 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:47

 タイミングよく、メールが愛理から届く。心臓を打つ音が早くなる。
 ドキドキしてメールを開くまでに時間が必要だった。
 本当に驚いた。

324 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:47

 愛理からのメールでは、私から借りていたものをももに託して返却した経緯、そしてお礼が書かれていた。お蔭で助かった、みたいなことも書いてあったけれど。何についてのことなのか分からなかった。思い当たる節がない。
 ももから渡されたのは小説だ。結局は読まれなかった小説。どういう助けになるのか全然分からなかった。
 私と愛理の間はどうやら混線状態で、何か今一つ通じていないみたいだ。
 しばらくメールのやり取りをしながら私と愛理の間で何が起こっているのか考えていた。
 助かったお礼に撮影で訪れた場所でお土産を買ったという。そこで愛理の明日の予定を知った。
 私は午後からライブリハーサルの時間までは割と余裕のあるスケジュールだ。インフォメーションのメールをマネージャーさんから受け取っていた。
325 :赤と嘘 :2012/09/03(月) 07:47

 最近、愛理のことが気になるの。
 ゆっくり話しがしたいんだ。

 愛理は無理してない?
 そんなに頑張って、どこへ行くの?
 辛くないの?苦しくないの?私は愛理の心が知りたい。

 混線状態のままでは埒が明かない。
 明日、時間が空いたらお互い連絡し合おうと約束を取り付けた。
326 :_ :2012/09/03(月) 07:48



 
327 :_ :2012/09/03(月) 07:48



 
328 :寺井 :2012/09/03(月) 07:49
ごめんなさいもう少し続きます。きっと次で完結です。


やっつけじゃないです。
329 :名無飼育さん :2012/09/05(水) 11:14
相変わらずなかなか掴ませてくれない物語だ。惚れ惚れします。
須藤さんの歳相応な常識人っぽさ、普通っぽさってとてもいい魅力の一つなんだなぁ
330 :名無飼育さん :2012/09/05(水) 18:46
日常の中で不可解なことが起こった時に感じる不安感がよく伝わってくる。
ただ、話が冗長な印象を受けるので、削れるところは思い切って削ってみては。

作品と関係なくて申し訳ないのですが、いつも「やっつけ」かどうかを気にしているのはどうしてですか? 考えて考えて書いているのは、読んだ人なら分かっていると思いますよ。
331 :名無飼育さん :2013/04/24(水) 18:36
続き、首をながーーくしてまってます
332 :寺井 :2013/04/30(火) 21:30

>>329 :名無し飼育さん
コメントありがとうございます。
常識もあり、年相応に大人びているにもかかわらず、ナチュラルにアイドルなところも魅力的です。以前、竹達彩奈さん(ライトノベルの楽しい書き方で共演)のブログでアイドルってすごい、と言わしめる茉麻に驚いたことがあります。

>>330 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
丁寧な感想をありがとうございます!わお
>話が冗長な印象を受ける
そうなんです。文章だけでなく。色々な意味で私の性質が出ちゃってるなぁというご指摘でございました。推敲をできるところまでやってみます。いやん
そして、「やっつけ」についてです。これは、自己主張といいますか。「やっつけ」であるか「やっつけ」でないかというより。
昔、m-seekさんに初めて投稿する時に、自分の決め台詞が欲しかったんです。今もなお、恰好付けたいんですよね。「やっつけ」の他にいい決め台詞があれば、考えてみようと思います!

>>331 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
励みになりました。頑張ります〜。

キャプテンが決意を新たにし、Berryz工房の副キャプテンに夏焼雅ちゃんが就任。
と、いうことで。ちょっとだけ更新させて頂きます。
333 :赤と嘘 :2013/04/30(火) 21:30

 ◇ ◇ ◇

 
 
334 :赤と嘘 :2013/04/30(火) 21:31
 その場所に座ってから、思わず苦笑いがこぼれた。私の定番の位置となりつつある会社のフリースペースの一角だ。愛理と待ち合わせする場所は、何も会社じゃなくてもよかった。

 「女子力低下してるかな」
 呟いてから、溜息が出た。もっと他にカフェでも、気になっているお店でもよかったのに。次のお仕事を考えて自然と無難な選択肢を選んでいる自分にがっかりした気分になってしまった。

 5月に本番を迎える舞台用の撮影はお昼一杯かかったけれど無事に終了し予定通りリハーサルまで時間が空いた。同じグループの夏焼雅も一緒に撮影をして同じようにリハーサルまで時間が空いていた。しかし、彼女はベリーズのリハーサルまでに用事があるらしく撮影の後はお互い別行動を取った。少しの空き時間も無駄にしないみやはかなり女子力高目だと思った。

 硬い椅子に深く座って背中を丸める。観葉植物に隠れるようにして、出入り口の方へ視線を向けた。まだまだ寒いけれど、今日は晴れた。その所為か社内も明るい様子に感じられた。鞄からスマートフォンを取り出して念のために愛理へメールを送る。今は難なく送信するメールも昨日以前は何故かそれができなかった。愛理の仕事が忙しそうだから?違う。

 愛理を疑った自分がいる。それは事実で変えられないことだった。
 愛理からの返信よりも先に本人の姿が視界に映った。立ち上がって手を振る。
 愛理は私に気が付くとにこっと笑った。私と同じように手を振り近づいてくる彼女を見て私の胸がチクリと痛んだ気がした。

 ももとラーメンを食べた日に見た時の愛理とは変わって重装備から解放された様子だった。学校のテスト期間が終わったのだろう。いつも穏やかな愛理だけど、表情もどことなく晴れやかな印象だ。春の兆しのような今日の柔らかい陽の光みたいだった。

 「まーさー」
 愛理はこちらへ駆け寄り抱き付いてきた。
 両腕で抱き止めた感触にほっとした気持ちになった。愛理の名前を呼ぶ時、表情がほころんでしまった。

335 :_ :2013/04/30(火) 21:32



 
336 :寺井 :2013/04/30(火) 21:33

ごめんなさい。まだ、続きます。




 
337 :名無し飼育。 :2013/05/31(金) 01:04
お待ちしていました
そして、引き続きお待ちしています
338 :名無飼育さん :2013/08/13(火) 23:49
まってます。
339 :寺井 :2014/03/28(金) 21:29

>>337 :名無し飼育。さん
コメントありがとうございます。
お待ち頂き恐縮です!励みになります。頑張ります。

>>338 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
お待たせしましたーー!!更新が遅くて本当にごめんなサイ。

2013/11/29にまさかのBerryz工房武道館公演が行われるとは!前回更新した時は思ってもみなかったことです。
嬉しいですねー。

更新します。
340 :赤と嘘 :2014/03/28(金) 21:30

 ◇ ◇ ◇

 
341 :赤と嘘 :2014/03/28(金) 21:31

 アコースティックライブを控えてリハーサル最中の愛理は、練習曲のスコアと歌詞カードを机の上に広げて楽しそうな様子だった。
 「舞美ちゃんのピアノはやっぱり舞美ちゃんって感じなんだよ」
 「舞美っぽい? 」
 「茉麻も聴いたら多分、分かると思う」
 鼻歌を歌いながら愛理は目を細めて紙の束を愛おしそうに見つめた。
 アコースティックライブのリハーサルが充実していることが伝わってくる。抑えきれない興奮が表情に見え隠れしていて、愛理の横顔を見ているとこちらまでわくわくした気持ちになっていた。
 「この曲はさ、このね。ここの」
 無造作に捲っていた紙の束から愛理が一枚またスコアを見せて歌い出した。
 「これが格好良くって」
 もう一度歌い愛理は、私に同意を求めるように上目遣いで目配せをする。
 このまま続けたら本番前に全曲歌ってしまいそうな勢いだった。

342 :赤と嘘 :2014/03/28(金) 21:31

 「聴きに行きたいなぁ」
 愛理の一ファンとしての本音がついこぼれてしまった。
 「え、来てくれる? 」
 何気なくこぼした一言に、愛理は即座に反応した。覗いた瞳が少女漫画の絵みたいにきらきら輝いている。
 そんなに目を輝かせて聞き返されるとは思ってもみず、無言で相手を見つめてしまった。
 「3月の3日。茉麻お仕事は? 」
 ここ一番の早口で愛理から尋ねられた言葉をかろうじて聞き取ることができたが。
 愛理は舞美とアコースティックライブのリハーサル中で、私はBerryz工房の春ツアーのリハーサル中。
 「3月3日はツアー初日だ」
 ぴったり重なった日程を自分で答えつつ恨めしく思った。
 「そっか」
 私から視線を逸らせながら、愛理の口先が徐々に尖っていく。
 「残念だ」
 スコアと歌詞カードの束をテーブルの上でとんとんと端を整えて、書類を綴じるファイルに仕舞い込んだ。愛理は残念と、繰り返し呟いて持ち込んでいたスタバのカップに口を付けた。
 「去年は一緒にコンサートとかやってたけどさぁ。でも観に行きたいよ。ベリーズのコンサートめっちゃ楽しいもん」
 同期に対する発言としては、嬉しいものだった。愛理もBerryz工房のコンサートを楽しいって思ってくれているんだと思うとちょっと誇らしい気持ちになる。
 「週末は殆どお互いお仕事だもん。仕方ないけど」
 そう何度もある機会ではない愛理と舞美のアコースティックライブを見に行くことができないのは仕方がないと分かっていてもやっぱり私も残念だった。
 「私が二人いたらいいのに」
 真っ直ぐ前を見つめて愛理が言った。
 やりたいことがたくさんある、愛理らしい発言だ。しかも、やりたいことをとことん極めるまでやり抜きたい愛理だからこその思いなのかもしれない。
 「愛理は二人いても、あんまり意味ないと思うな」
 少し驚いた表情で愛理がこちらを見た。
 「えー? 」
 「二人になったとしても、二人分以上のやりたいことが次々出てきちゃうから、次は四人、八人ってどんどん愛理が増えていっちゃうんじゃない」
 「世界が愛理で溢れちゃうね」
 「みんな何喋ってるか分かんなくなっちゃう」
 「そこまでじゃないでしょー」
 反論する割に本日一番の滑舌の悪さを発揮した愛理だった。

343 :赤と嘘 :2014/03/28(金) 21:31

 ◇ ◇ ◇

 
344 :赤と嘘 :2014/03/28(金) 21:32

 「愛理は無理してない? 」
 私の質問に愛理は目を細め彼女が描くキャラクターの「すーさん。」のように捉え所のない様子で椅子の背にもたれた。
 「無理はしてないよ。ちゃんと寝てるしご飯もしっかり食べてる」
 それから、お昼に食べたというサンドイッチの話を幸せそうな表情で語ってくれた。本当に美味しそうに説明してくれるから私も昼ご飯を済ませたばかりなのにサーモンバジルチーズサンドが気になってしまった。
 サーモンバジルチーズが絶品だったというお店を手書き地図で説明してくれている最中にポツリと愛理がお礼を述べた。
 「心配してくれてありがとう」
 「心配っていうか。こないだ会ったときからなんか愛理が気になってて」
 ブーツもストールもイヤリングも、私の手元には返ってきていない。
 偶然にしては妙な失くし物たちなのだが、他人を疑うほどの事件ではなかった。根拠なく私は愛理を疑った。疑ってしまったことを私は謝らなければならない。だから、お礼を言われると心が苦しくなった。
 「愛理は……」
 地図を書き終えた愛理が視線を上げてこちらを見た。
 「そんなに頑張って、どこへ行くの? 」
 「茉麻? 」

 辛くないの?苦しくないの?私は愛理の心が知りたい。

 「どうしたどうした」
 「ごめん違う。あの、間違えた」
 間違えてはいないけれど、こんな聞き方じゃ愛理に伝わるわけがない。
 「愛理の夢は何? 」
 「夢? 今の? 」
 唐突な質問なのに愛理は真面目に答えようとしてくれているようだった。
 「うーん。今」
 「℃-uteがもっと有名になること」
 きっぱりとした答えだった。
345 :赤と嘘 :2014/03/28(金) 21:33

 年齢に似つかわしくない潔さで座っている愛理は隣にいるのに遠くに感じるみたいだ。夢を見失わずに頑張っている同期に対して、同情染みた気持ちを抱いた自分が恥ずかしくなった。

 「もっともっとたくさんの人たちに知ってもらって、チーム℃-uteはすごいんだぞって思いたいし。思ってもらえたら嬉しい」
 かな、と付け加えて愛理はくすぐったそうに表情をほころばせた。屈託なく笑う様子に疑う余地がなかった。愛理は℃-uteとしてもっと有名になりたいんだ。その為に頑張っていただけだ。疲れているとか辛いのかもとか、愛理を心配していたのは嘘じゃないけど。愛理の心を知りたいって思ったのは、自分の弱さを愛理にも探したかったからなのかもしれない。
 「まずはね、やっぱり武道館でコンサートがしたいって℃-uteみんなでずっと前から言ってるんだ」
 「うん」
 「まだまだ頑張んなくちゃ」
 「愛理の夢は有名になることか」
 「℃-uteが、だよ」
 「℃-uteが有名になったら愛理も有名になると思う」
 自分でそう口にしてから、内心焦りを感じていた。負けたくないと思った。愛理も℃-uteも大好きだけど。置いていかれたくない。同じステージに立っていたい。Berryz工房だってすごいんだ。

 
346 :赤と嘘 :2014/03/28(金) 21:34

 「ありがとう、愛理。突然ヘンな質問したのに。答えてくれて」
 「ヘンじゃないけど。でも、なんかヘンな感じだね。恥ずかしい」
 「愛理の気持ち、知ることができて嬉しいな」
 「え、ちょっと、ホントに恥ずかしい」
 潔さを纏った様子から、愛理は姿勢を崩してふにゃふにゃとテーブルの上におでこをくっ付けた。
 愛理の髪を撫でてみる。疑ったりしてごめん。愛理を応援しているよ。応援させてね。私も頑張るから。

347 :_ :2014/03/28(金) 21:35




 
348 :_ :2014/03/28(金) 21:37


 
 
349 :寺井 :2014/03/28(金) 21:39
2012年の2月設定のお話です!

まだ、終わらないです。 
もう少しお付き合い頂けると嬉しいです。
350 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:34

 ◇ ◇ ◇

 
351 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:35

 しばらくおでこをテーブルにくっ付けて顔を伏せていた愛理だったが、目を閉じたまま姿勢を戻して「んー」と低い声で唸り出した。どうやら彼女なりの気持ちをリセットする方法らしい。機材をチューニングしているみたいでおかしかった。

 「そうだ」
 ぱっと目を開けたかと思うと愛理は、自分の鞄を引き寄せ。
 「茉麻にお礼の気持ちを込めたお土産が。思い出した時に渡しておかないと」
 ぶつぶつ独り言のように呟きながら鞄を探りはじめた。
 「どこで撮影していたの」
 「電車で2時間くらい? 畑とか田んぼも多くてなんか、のーんびりしたところだった」
 「ロケいいなー。でも寒そう」
 「寒かったけど」
 と、言いかけこちらを見る。
 「寒くなかったよ」
 ドヤ顔のような作った笑顔で愛理は答えた。何かを匂わすドヤ顔がどういったことを意味しているのか私は全然理解できていなかった。
352 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:36

 「ベリーズみんなで食べてねー」
 鞄の中身ほとんどを占めていたのではなかろうか。かなり大きいご当地限定プリッツの箱が出てきた。
 「ありがとうございました」
 律儀にお礼を述べた愛理だけど、読まれなかった小説を貸し出したことにここまでしてもらうことこちらも恐縮してしまう。
 「どういたしまして」
 箱を受け取って愛理を見つめる。裏があるとは到底思えないまっすぐな視線。
 私と愛理の間に起きていた混線状態は顔を合わせ、会話をすれば障害なく通じていると思う。変なこと聞くけどさ、と前置きをしてから思い切って口にした。
 「愛理、お礼ってさ。何のお礼なの? 」
 「ストール」
 即答した愛理はドヤ顔のような笑みで、「お蔭で寒くなかったよ」と、少し前に聞いたセリフをもう一度繰り返した。
353 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:36

 「スタイリストさんもOK出してくれたし。茉麻のストールがミュージックビデオに映るからね」
 私にも一緒に喜んで欲しそうな、にこにこした愛理を視界に収めていたけれど。返事に困った。
 色々なことが同時に頭の中を駆け巡り全然整理できず茫然としてしまった。
 私が失くしたと思っていたストールはやはり、何故か愛理の手に渡っていた。そしてミュージックビデオの撮影にまで使われ、そのお礼がこのお菓子ということまで理解した。
 「そっか、って。えーっ」
 ℃-uteの新曲のMV撮影に使ったの?
 静かな会社の中だったのに、素っ頓狂な声を上げてしまった。
 「楽しそうだね」
 状況を把握できていない私の背後に第二の容疑者が現れた。
 大きい紙袋を抱えた夏焼雅だった。舞台用の撮影をして別れる前はこんな大きな袋を持っていなかった。愛理はひらひらとみやに手を振っていた。
 ピンクベージュの春コートを着たみやはなんでもない様子なのに、その堂々とした姿が女優さんとかモデルさんみたいだ。
 「うちは、共犯」
 ごめんね茉麻。とみやは謝罪の言葉を口にした。整理できていないのに、展開がどんどん進む。
354 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:37

 台本があるかと思うようなドラマチックな状況に私は少なからず動揺し、みやは申し訳なさそうな様子だ。
 そして私と愛理の間に起きていた混線状態の元凶の名前を告げた。
 「主犯はももだよ」
 無造作に紙袋をテーブルの上に置く。
 「茉麻のブーツ、ホントはみやが持ってた」
 髪袋から出てきたのは失くしていたと思った私のブーツだった。
 「でもね、全部ももが仕組んだの」

 靴。
 ストール。
 イヤリング。
 3つの失くし物を繋げる新事実。嗣永桃子が黒幕だったらしい。
 思いがけない展開で全然状況が飲み込めない。今はドラマの撮影中ではなくて。全部、私の身に降りかかった出来事だ。

 おっちょこちょいの共犯者による自白をもとに事件はこの後解決に向かった。

355 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:37

 ◇ ◇ ◇ 


356 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:37

 物語になぞらえて、私の持ち物を一つずつ隠していく。
 そもそも、こんなことができるのはももだけだった。
 私が愛理へ小説を貸した事実を知っているのはももしかいなかったのだから。
 小説のタイトルさえ記憶していれば、内容を知るのは簡単だ。ラーメンを食べに行った時の「何か企んでいる時のあいりんだ」なんて思わせぶりな発言も、無意識の計算だったのかもしれない。
 別の仕事で会社にいたももは、打ち合わせを終えて私たちと合流した。

 仕事の時間がきてしまい、ももと入れ違いで愛理は席を外した。私が状況を飲み込めていないのだから、愛理はもっとちんぷんかんぷんだったみたい。また、ももが何かやったんだね程度で軽く理解し、爽やかに去っていった。

 「ばれちゃった? 」
 悪びれもせず、ももがみやと示し合わせたように笑った。
 イェーイとノリ良くももとみやがハイタッチをしている。
 「もも、茉麻にちゃんと謝りなよ。真剣に悩んでたみたいだから」
 みやの余計な振りのせいで殆ど聞き飽きてしまったお決まりのセリフを聞かされた。
 番組か何かの企画なのかと思う程、ももの仕組んだいたずらは絶妙に私を翻弄させた。
 とても思いつきだとは思えないけれど、思いつきではなかったらこんないたずら成功しなかった。
357 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:38

 「初めは、みやがすーちゃんのブーツを間違って履いてきちゃったのが悪いんだから」
 みやもちゃんとすーちゃんに謝って。と、ももが無茶振りをする。どこかにカメラがあってWEBで中継されているのだろうか。きょろきょろあたりを見回してしまった。
 ももに言われた時はホントになんとも思わなかったセリフでも。
 「許してにゃん」
 みやが口にすると胸にぐっとくるものがあって、呆れていた気持ちも浄化されるみたいだった。
 「タイミングといい、ニュアンスといい絶妙なんだもん」
 「あいりんが心配で堪らなかったでしょー」
 「そうだよ。どうして愛理を巻き込むのかなぁ」
 「すーちゃんがあいりんにめろめろになってたから。悔しくて」
 「意味わかんない」
 ももの言い訳はまったく理解できないものだった。

 ももは、私が愛理へ貸した小説の内容をなんとなく知っていたのだという。友達が読んでいたか、家族が読んでいたか忘れたらしいが。そこで、みやが迂闊にブーツを履き間違えていることを見た時に、ピンと小指が何かを受信したらしい。(本人談)。みやが履いてきたブーツを回収し、何食わぬ顔をしてBuono!の仕事場で靴を渡してあげたももは、おっちょこちょいでノリのいいBuono!副リーダーを悪巧みの仲間にしてしまう。ストールは二人で共謀して持ち帰ったという。ベリーズメンバーみんなで探してもらったと記憶していたけれど。よくよく考えてみれば、Buono!の二人は先に別の現場へ出ていた。
358 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:38

 「愛理が、茉麻のストールをご所望しててさ」
 「普通に一言断ってくれたら良かったのに」
 「それじゃ、せっかくの本格ミステリーが台無しじゃん」
 「全然本格じゃないでしょ。詰めが甘過ぎる」
 「みやがボロを出さなかったら完全犯罪だった」
 「うち? 」
 「ちょっと待って。イヤリングは? 」
 私の失くし物一つはいまだ行方知れず。
 「みやがブーツを履き間違えたこと黙ってたし、ストールを勝手にあいりんに渡したのも、もも。そこはきっちり認めるけど」
 ももがみやを見た。みやは首を振っていた。
 「うちも知らない」
 「でも、イヤリングはももじゃないよ? 」 
 「嘘」
 「ちが、すーちゃん。ホント、もも知らないって。イヤリングは神様に誓ってももたちじゃないから」
 二人のへっぽこ怪盗たちがやったことは穴があり過ぎて、私の推理力では無駄に迷宮入りしそうだった。
 
 愛理やみやを巻き込んでおいて自分を守ろうとするももに溜息をつきそうになったが。
  「私だよ」
 声を聞いて溜息を飲み込んだ。
 今日は突然姿を現す人物が多い。
 さすが、解決編って感じだ。
359 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:39

 ◇ ◇ ◇ 


360 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:39

 梨沙子だった。
 「まあのイヤリングは私が持ってる」
 私もももも、みやも。梨沙子の登場は予想してなかった。
 ふて腐れたような、恥ずかしがっているような、俯いた梨沙子は口をへの字にして私の前の椅子に荒々しく座った。
 「梨沙子? 」
 突然現れたのに、状況をすべて理解しているのだろうか。もしかすると、梨沙子もももたちの共犯者なのかもしれない。
 黙ったままの梨沙子に私たち三人は首をかしげてしばらく見守っていた。驚いている様子からすると、もももみやも梨沙子が何故イヤリングを持っているのかを知らなかったようだ。
 「えっと」
 ももが何か梨沙子に質問を試みたけれど、顔を上げた態度だけで去なされていた。
 悪くもないのに、ももが何か、すみませんと謝罪する。つられるように、梨沙子も「ごめん」と口にした。
 「まあはイヤリング失くしてない」
 梨沙子と二人でラーメンを食べた日。あの時は何も言っていなかった。
 「ももとみやが、何をしたのかは分かんないけど」
 どうやら私のイヤリングを密かに持っていた事は梨沙子の単独犯だったようだ。
 「まあが何か隠し事してるみたいだったから」
 私にカマをかけた言い訳をするように梨沙子がぽつぽつ言葉を紡いていた。
 「頼って欲しかったのに。何にも言ってくれなかった」
 Berryz工房内で梨沙子は一番年下で、わがままを言って甘えるかわいい一面をしっかり備えている。でも、彼女は親身になってメンバーを支えてくれる頼もしい末っ子でもあった。
 「ごめん」
 思わず私が謝ってしまった。
361 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:39

 「まあは私だけのママだから」
 一番年下なのに大人っぽくて、頼りになる梨沙子だった。けれど、この時の様子は年齢より随分幼く見えた。
 「まあが愛理を心配してることに、ちょっとだけ焼きもちやいたの」
 みやが「かわいい」と小声で漏らし、ももだってりーちゃんのお姉ちゃんだからね!と、ももは声を大にしていた。しかしものの申し出に梨沙子は遠慮しておくと素っ気無く断った。
 「ありがとう。梨沙子」
 梨沙子がかわいくて思わず表情が緩んでしまうのは不可抗力。
 急に照れくさくなってしまい、私は愛理のようにテーブルの上へ崩れ落ちた。

362 :赤と嘘 :2014/03/31(月) 22:40

 愛理も梨沙子も、少しの言動で人を翻弄してしまう魅力が共通している。放って置くことができない愛らしさが、年を重ねるごとに増している。このまま成長を続けたらどれだけの人間が振り回されることになるのか先が心配なくらいだ。

 無駄に勘ぐったり、落ち込んだり、ももとみやにはしてやられたけれど。こんなにかわいい梨沙子を知ることができたから、もももみやも怒ることなんてできない。

 ももが思いつきで企てた須藤茉麻と三つの失くし物事件で分かったことが1つだけある。

 私、梨沙子がお嫁にいく時、絶対泣いちゃう。
二人のへっぽこ怪盗のお蔭で20歳前からそんな杞憂を抱えることになった。
363 :_ :2014/03/31(月) 22:40


 

364 :_ :2014/03/31(月) 22:41


 

365 :寺井 :2014/03/31(月) 22:41
以上で赤と嘘の更新を終わります。

 
366 :寺井 :2014/04/04(金) 23:58
更新しまーす
夏焼さん視点
登場人物は、夏焼さん、菅谷さんです。

りーちゃんハッピーバースデー!

367 :子供のままで :2014/04/04(金) 23:59
 
 ◇ ◇ ◇ 


368 :子供のままで :2014/04/04(金) 23:59

 ちょっとしたことでももと言い合いになり険悪な空気を作ってしまった。ヤバいと思ったももがへらへらした態度で謝ろうとしたのは分かったけどそれを見届ける前に私は控室から出てしまった。立ち上がった瞬間から後悔していたのに止められなかった。

 あー。頭冷やさなきゃ。

 廊下の突き当たりまで歩いて、非常階段に続くドアを開けた。自分の額を軽く鉄のドアに当てて溜息をつく。ももにムカつく気持ちがあるのは本当。ももに、腹が立ったんだ。バカにされているというか、蔑ろになれているというか。誤魔化されている。しかも、こっちが本音で喋る時を見計らってはぐらかすからなおのこと腹が立ってしまう。
 コツンとまた、額をドアに充てて文字通り頭を冷やした。
 しかも、そのあとのフザけた態度が気に食わない。謝る時は神妙に謝れって、思う。本当は謝りたくないけど、周囲に気遣って雰囲気を和ませようとかももはそこまで計算ができているんだ。私の気持ちがどうとか関係なく、その場しのぎの態度と分かってしまうから嫌なんだ。感情でぶつかるなら最後までぶつかってくれた方がこっちとしては気持ちがすっきりとする。
369 :子供のままで :2014/04/05(土) 00:03

 頭を冷やしていたはずなのに、また頭に血が上ってきてしまった。
 控室に戻って謝らなきゃ。分かっているのに、体は思うように動かず。そのまま階段に腰を下ろして。頬杖をついた。
 ケンカの理由はいつも取るに足りないことだった。
 今日は、ももの髪型について。「ももち結び」をするかしないか、が原因だから余計に謝る気持ちがそがれてしまう。どちらでもいいことだった。なんであんなにムキになってしまったのか自分でもよくわからない。Berryz工房全体の感じが、とかなんか。それらしい理由を述べて今日は髪型を変えたらどうかと、ももに余計なお世話を焼いたことがことの発端だ。心底どうでもいい、と自分で理解してまた、溜息をつく。
 「ももち結び」をしていようが、違う髪型だろうが、何があってもももはももなのに。私が悪かった。

 「はぁ」

 私が悪かったのに、ももが先に謝ろうとしたのも嫌だったんだ。自分が子供っぽくて恥ずかしいような気持ちになったから咄嗟に立ち上がって逃げ出した。バカなのは私だよ。ごめん。

370 :子供のままで :2014/04/05(土) 06:54

 頬杖が外れて、がっくり頭を垂れて目を閉じる。すると、人の気配を感じて一瞬だけ警戒するように体が強張った。でも誰が現れたのか察知できてしまい内心安堵していた。
 黙ったまま、視線だけを上げて相手を見る。思った通り。梨沙子だった。
 「なに」
 かわいくない突っ張った態度が崩せない。
 梨沙子は笑っているだけで何も言わなかった。付け入るようだけど今は甘えさせてもらおう。
 梨沙子は私の隣に座って肩をくっ付けて詰め寄ってくる。反対の方へ顔を背けて抵抗を試みた。すると、梨沙子は私の髪を自分の指に巻きつけているみたいで頭皮が引っ張られて痛かった。
 「キャプテンもしてたし」
 独り言のように梨沙子が言った。会話の主語が抜けていて何をキャプテンがしていたのか分からない。
 「みやも似合うと思うよ」
 梨沙子の、髪の触れ方が大胆になってくる。私の髪は後頭部の半分か思い切り左右に分けられがっつり二つの手で握られた。
 「下の方で結ぶと。ちょっと雰囲気変わって、みやにも似合うと思う」
 「ももとお揃いになるじゃん」
 二つ結びにされていた髪を解くように、梨沙子の手を取った。
 「お揃いになったらBerryz工房全体に、統一感出てくるんじゃない? 」
 澄まして口にする梨沙子がとても大人に見えた。
371 :子供のままで :2014/04/05(土) 06:54

 * * *



 
372 :子供のままで :2014/04/05(土) 06:54

 個性を発揮する時と、みんなで気持ちを一つにする時と、メリハリが大事だってわかってはいるものの。それが何時なのかは7人みんな感じる時差があった。それをもどかしく思うときもある。
 でも、全部が一緒じゃないからこそ、Berryz工房なんだと理解している。髪型一つ、衣装の露出一つ、妥協する部分がたくさん出てきて。妥協した結果、悪かったことも良かったこともある。だから、どの決定が正しいなんて決まっていない。

 「お揃いもいいかもね」
 グループらしさ、という正解が決まっていないから今がある。当たり前のようにしてきたことは、7人の挑戦の連続だった。

 「私もお揃いにしたい」
 「梨沙子はダメ」
 私が断ると、ショックを受けたような表情をした。
 「梨沙子はダメだよ。結局梨沙子が一番かわいいんだから」
 「何それ」
 眉間に皺を寄せて梨沙子は首を傾げた。
 かわいくないし、と口をとがらせて呟いている様子がかわいらしさそのものだった。
 「もも、怒ってた? 」
 なんか、ドラマで優柔不断なパパが、ママのご機嫌を伺って今も怒っているかどうかを子供に聞いている時みたいな場面だ。そんなにママが気になるなら自分で様子を確かめなさいって子供はパパを諭す。そこまで想像できてしまう。
373 :子供のままで :2014/04/05(土) 06:55

 「ももは怒ってないよ。怒っていたのはみやだったと思う」
 控室を勝手に飛び出したのは自分だった。
 振り上げたこぶしの落としどころを決められずに非常階段へ逃げてきた。
 「みやがいないと始まらないから、帰ろうよ」
 梨沙子の言葉は多少大げさだ。実際はトラブルがあっても始められるところから始めて作業をどんどんこなしていかなくてはならない。待っている時間なんて現場にはないと、10年グループ活動をしていたら知っていて当然だ。
 黙ったままの私に目配せをして、梨沙子は立ち上がった。私は座ったまま、少し視線を上げる。
 見つめていたけれど、梨沙子はしばらくして困った様子になった。
 「みやが戻りたい時に戻ってね」
 背を向けようとする梨沙子の手を掴んで引き留めていた。きっとこのタイミングを逃せばどんどん帰りにくくなるし、ももに謝るタイミングも同時に逃してしまう。
 「ありがとう」
 梨沙子は手を握り返してくれた。手に力を込めて、私も立ち上がる。
 「ごめん。ご面倒おかけしました」
 「帰るよ」
 呆れたようにため息交じりで梨沙子が笑った。
374 :子供のままで :2014/04/05(土) 06:56

 手をつないだまま廊下を歩いた。自分の格好の付かなさは情けなくて笑えた。
 10年という節目の年だと、昔を思い出したりする。
 そういえば、何度もこうして梨沙子が迎えに来てくれた。格好悪くて情けない姿もずっと見せてきた相手に今更どうしようもない。

 「梨沙子ー」
 ちょっと声を上げて名前を呼ぶと呼ばれた相手は驚いたようにこちらを見た。
 「迎えにきてくれてありがとう」
 大人になってもこうして後先考えず飛び出してしまうのは、梨沙子が迎えに来てくれるからなのかもしれない。
 
375 :_ :2014/04/05(土) 06:59





376 :_ :2014/04/05(土) 06:59





377 :寺井 :2014/04/05(土) 07:02
以上です。



大人になっても、幼いころからの魅力を7人それぞれ備えていてとてもかわいいなぁ!
と、思います。りーちゃんお誕生日おめでとうございます。よい1年になりますように。
378 :寺井 :2014/04/23(水) 21:22
更新しまーす

登場人物は、ももち、熊井ちゃん、ちょっとだけキャプテンです。

Berryz工房 DVD MAGAZINE Vol.15の時からももちと熊井ちゃんの関係が好きです。プラス夏焼さんもいると黄金の三角形だと思ってます!おもろい
 
379 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:27

 ◇ ◇ ◇


 
 
380 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:27

 桃子は友理奈の横顔を盗み見していた。
 7人揃って仕事だ。収録を前に打ち合わせを終え、あとは本番を迎えるだけ。準備に手間取っているようで思っていた以上に空き時間ができた。
 視線の先の友理奈は溜息を吐いたり、眉間に皺を寄せたり時々自分の手帳に何かメモをしている。細かい文字が印刷されたコピー用紙とにらめっこをしながら考え事をしているのだとすぐに分かるが、相手が真剣であれば真剣であるほど桃子はいたずらをしたくてうずうずしてくる。
 "ぼ〜っとしててもセクシー"、とまではいかないが俯き加減の真顔の友理奈は近寄りがたいほど様になっていて、あの整った様子が如何に崩れていくかを想像するだけで桃子はにやけてしまった。

 千奈美を誘おうかと思ったが、とりあえずは自分一人を相手してもらおう。マイペースな友理奈を独り占めすることにはちょっと優越感を感じることができる。千奈美のことだから面白がるタイミングを逃さず乱入してくるに違いない。
 
381 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:27

 桃子はもう使わない紙を探してきて簡単な飛行機を折った。離れた場所から友理奈めがけて紙飛行機を飛ばしてみたが方向が定まらない。大真面目な相手の後頭部に紙飛行機の先端が突き刺さるのを想像していただけに不甲斐ない紙切れに対して残念な気持ちで胸がいっぱいになった。しかし落ち込んではいられない。

 音楽を聴いていた佐紀のイヤホンを引っこ抜き怪訝そうにしているのをおかまいなしに紙をねだった。持っていないと突っぱねられたが食い下がって佐紀を巻き込み手分けして二人で不要な紙を探す。呆れながらもこうして桃子の些細な思いつきに付き合ってくれる佐紀の地位はグループ内で絶対なのだった。
 
382 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:28

 「ティッシュじゃダメなの?」
 「ティッシュは柔らかすぎて刺さらない」
 「刺す? 」
 佐紀の眉間に皺が寄る。桃子は上目遣いをして紙が欲しいと訴えた。相手がのけ反るくらい顔を近づけて訴えた。真っ直ぐな眼差しに根負けして佐紀は身の回りの持ち物の中に桃子が所望している紙を探す。

 今度はチョコレートを包んであった紙を渡された。掌サイズの正方形の紙を桃子は一応受け取ってみるが、手先がそれほど器用じゃない自覚はあるので紙飛行機を折れるか不安がよぎる。打ち合わせに使った台本は束になって手元にあるが収録を終えてない今、台本を紙飛行機にしてしまうのはさすがに気が引けた。
 「熊井ちゃん、紙持ってるんじゃない。貰えば? 」
 部屋の片隅、桃子が散らかしたテーブルの向こう側で友理奈は頬杖をついて難しい顔をしていた。ドラ○もんのポケットのように、何となく友理奈なら何か持っていそうな気がする。
 「えー。佐紀ちゃん貰ってきてよ」
 「ももが欲しいんでしょ。自分でしなさい」
 口を尖らせて反抗してみたが、佐紀は友理奈に貰えと頑として態度を崩さなかった。それもそうだ、持っていそうな人が側にいるのだから声を掛けて尋ねてみればいい。ただ、今、真剣に考え事をしている友理奈の気を散らしてしまうのは実に惜しいことだった。気づかれないように近づいて、不意をつくから面白いのだ。

 気持ちの切り替えは早い桃子、初めに飛ばした紙飛行機を拾い上げて友理奈の側まで歩いていった。あっさり紙を諦めた桃子に理不尽な思いをしながらも、佐紀はもとの場所へ戻り再びイヤホンを耳に収めた。
 肉を切らせて骨を守る。重要なことは興味の対象が自分へ向かないこと。いたずらっ子と過ごす処世術を身につけなければBerryz工房のキャプテンは務まらない。
 桃子の相手をいくらかすれば次の興味へ移っていくとキャプテンはメンバーの性格をちゃんと把握していた。
 
383 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:28

 * * *


 
384 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:29

 友理奈は真剣に頭を悩ませながら何をしているかといえば大学の時間割を決めているのだろうと、桃子はなんとなく察しがついていた。
 新学期になると優柔不断な彼女が迷いに迷ってとんでもない時間割を組み上げ、履修登録の事務手続きで職員を困らせるのも3年目だ。
 自分の学生生活もそれなりにあっという間だったと今になって思うけれど、2学年違う友理奈が大学に入学して3年経つのかと思うと時の速さに驚かされる。去年二十歳の誕生日を迎えた友理奈は見た目と年齢が一致するぐらい成長していた。二十歳にしては大人っぽいともいえるし、世の中にはもっと幼い二十歳もいる。
 小学生の時は小学生らしく、中学生の時は中学生らしく。高校生の時は高校生らしく。友理奈は環境に素直に順応していた。優れた容姿のお蔭で小さい頃から大人びた印象を与える彼女だったが年相応に幼いところが桃子は好きだった。

 「おりゃー」
 桃子は言いながら友理奈の髪に飛行機を刺した。しかし反応がなかった。飛行機を刺したまま友理奈の様子を窺っていた桃子だったが。「くまいちょー。何か頭に追突してるよ」と声を掛けた。片方の手は口元を覆ったまま、こちらを見向きもせずもう片方の手で友理奈は自分の後頭部を探った。桃子の手に気づいてからやっと顔を上げて。
 「飛行機? 」
 クイズの答えを確かめるように友理奈が答えた。
 「ピンポーン」
 桃子は正解を知らせる音を口で鳴らした。
 「やった。正解した」
 無邪気に喜んだ友理奈に桃子は拍子抜けしてしまい反応が遅れた。驚かそうとしていたのはこちらだった。それが失敗に終わった。クイズやなぞなぞをしたかったわけではない。友理奈の興味を引きたかっただけだ。
 そして、頼ってくれたらいいのに。
 困っているなら、力になりたかった。
 友理奈はあまり自分のことを話さない。それは桃子もお互い様なのだが。桃子はあえて話さないだけ。でも友理奈は無自覚に自分のことを話さない。そこの決定的な違いは友理奈以外のメンバーは気が付いていた。
 「正解したくまいちょーにはご褒美としてチョコレート」
 が、包まれていた紙を授与された友理奈は一応礼を述べ苦笑いをしていた。

 
385 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:29

 * * *


 
386 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:30

 自分で散らかしたテーブルの上を力技で腕を一振り。ガっと物を寄せた。場所を作り桃子は友理奈の隣に座って肩をくっ付けた。トレードマークの二つ結びが邪魔らしく友理奈は少し居住まいを正し、何事かと桃子を見ている。
 「忙しそうだね」
 科目名と教室の番号が曜日と時間で表に分けられ印刷されたコピー用紙へ目配せしながら桃子は言った。
 「これ? 」
 桃子が頷くと、持っていた履修科目の表を友理奈は目の前に差し出して渡そうとしてきた。それを桃子が受け取ると友理奈はリラックスする態度で椅子の背もたれに体重をかけた。
 「去年までは履修登録考えるのすっごい大変だったけど、今年は」
 手だけを伸ばして友理奈は手帳のページを捲っていた。桃子との会話も頭半分で聞いているらしく、まだ悩んでいる最中のようだ。
 「必修が少なくなったから楽になったと思う」
 おおよそ楽になったような表情ではない言い方だった。
 専攻が違うと、科目名も知らないものばかりで馴染みのないカタカナの名前も多い。ぱっと見ただけではちんぷんかんぷんだ。これを理解して自分で科目を選んでいるのかと思うと友理奈の成長をしみじみと実感する桃子だった。
 「くまいちょーも大学生なんだね」
 「そうだよ。3年生」
 言いながら、3つ指を立ててアピールしてくる様子は、自分の年齢を教えてくれる子どもみたいだった。
 桃子や他のベリーズメンバーが知らない知識を身につけて興味の範囲を広げていた友理奈の成長を感慨深く思っていた矢先に急に子どもっぽくなる。このギャップは彼女にしかできない芸当だと思った。

 
387 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:30

 「ももは偉いよ」
 桃子から返却された履修科目の表を受け取りながら友理奈は言った。
 「ちゃんと4年で大学卒業したし。先生の免許も取ったんでしょ? 」
 「ぎりぎりだったんだよ」
 桃子の学生生活が模範的だったかは疑問だが友理奈の言う通りこの春無事に大学を卒業することができた。
 「ほんとスゴイと思う。ももは偉いね」
 友理奈の大きな手が桃子の頭をなでる。
 いつもは触れることを許さない髪なのに、桃子は油断し不意を突かれた。
 褒められることに不慣れでどうしていいのか桃子は戸惑った。子どもにするように頭をなでる友理奈に他意はなさそうでくすぐったい気持ちになった。嬉しいのに素直になれない。 
 こんなはずではなかったと思う一方、やはりあの時千奈美を誘わなくて正解だったとも思えた。
 「照れるじゃん、どうしたのくまいちょー。もっと褒めてもっと褒めて」
 どんどん褒めてと、桃子が図に乗ったところで友理奈はなでるのを止めた。それから、「頑張ったご褒美」といって、チョコレートが包んであった紙を桃子に渡した。
 「あ、どーも」
 いらなかったから友理奈にあげたのに、思わず桃子も受け取ってしまった。
 褒められたし、ご褒美を捨てるだけではもったいない気がした。そこで、チョコレートの包み紙で飛行機が折れないか挑戦してみる。
 「飛行機だ」
 得意げに友理奈は呟いた。
 「佐紀ちゃんにいらない紙ちょうだいって言ったら、こんなちっちゃいの渡されたんだよ」
 「ももも、ちっちゃいからちょうどいいじゃん」
 「いや、なんかちょっと違うと思う。紙っていうか、これゴミだよ」
 「いらない紙だもんゴミだよね」
 桃子は手を止めて友理奈を見つめたが。この視線の意味には気が付いてもらえなかった。佐紀がもうちょっとましな紙を持っていたらよかったのに、って。そんなことが桃子は言いたかっただけだった。
 「はい、くまいちょー。続き折ってみて」
 悔しかったので、手の大きい友理奈に意地悪をして小さい飛行機を折ることを強要した。
 桃子が何について悔しかったのか、いろいろあって非常に微妙な気持ちだった。
 無理だと、さんざん抵抗しながらも友理奈は小さい紙飛行機を折ってくれた。皺だらけで、翼の大きさが左右ばらばら。しかし、飛ばしてみると思ったより遠くまで飛んだ。
 「おおー」
 二人同時に声を出したので、どちらともなく笑い出した。
 「意外に飛ぶねー。キャプテン号」
 「キャプテン号はやっぱりすごいね」
 「佐紀ちゃん、キャプテン号すごい飛ぶよ」
 全然関係ない佐紀に桃子は声を掛けたが音楽を聴いていた相手は、二度目は取り合ってくれなかった。

 
388 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:30

 * * *


 
389 :魔法にかけられて :2014/04/23(水) 21:30

 「くまいちょーの手は魔法の手だ」
 テーブルの下に落ちたキャプテン号を拾い戻ってきた友理奈の手を無理やり掴んで桃子が言った。
 「どこが? 」
 二人の手のひらを合わせてみると随分サイズが違う。
 「ももが掴めないものも、くまいちょーはいっぱい掴めるじゃん」
 「魔法と関係なくない? 」
 揚げ足を取る友理奈の手のひらにむかって桃子はこぶしを作ってパンチをする。
 「違うよ。くまいちょーにしかできないんだから。まあ、魔法じゃないかもしれないけどでも」
 明らかに小さい桃子のこぶしはすっかり友理奈の手のひらに収まってしまう。
 「ももにとっては、魔法みたい」
 スタイルの良さも、きれいな顔立ちも。友理奈にとっては当たり前のことも他人からすれば羨望の的だ。
 「ありがとう」
 掴んだ桃子のこぶしを優しく叩くようにして友理奈が何故かお礼を述べた。
 「よく分かんないけど。褒めてくれてるんでしょ? 」
 気の利かない言葉なのに、友理奈が言うと格好よく聞こえるからやっぱり魔法のお蔭なんだと桃子は確信した。

 頼って欲しかったり、視線だけで理解して欲しかったり、その手でいっぱい掴んで欲しかったり。桃子が勝手に望むことをもし、友理奈が自覚してしまったら。なんだかつまらないなと、魔法がとける瞬間を味わうようだった。
 桃子が一番望むことは、友理奈がそのまま友理奈でいてくれることだ。
 「くまいちょーがよく分からないのは魔法の所為だ。そうだそうだ」
 表情は、ふーん、という納得した風な様子だったがきっと友理奈は分かっていない。
 「魔法が使えるなら、テーブルの上きれいに片付けてよ」
 友理奈が不平を言い出したので桃子はキャプテン号をつまみ上げてその場から離れる準備を整えた。
 「飛行機、誰かの頭に刺したらダメだよ」
 とんちんかんな注意を受けながら桃子は小さい飛行機を次の着陸地点へ向けて勢いよく飛ばした。

 
390 :_ :2014/04/23(水) 21:31




 
391 :_ :2014/04/23(水) 21:31




 
392 :寺井 :2014/04/23(水) 21:31

以上です。

 
393 :名無飼育さん :2014/04/24(木) 21:58
メンバーの言動がすごくリアルで、やり取りの光景が目に浮かんできます。すごい!!
熊井ちゃんと接しているときの嗣…ももちのこころの中を覗いている気持ちになってどきどきし、>>389でぐっとこころに迫るものがありました。
394 :寺井 :2014/06/11(水) 23:06
>>393 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
ももちはどうしても熊井ちゃんを子供扱いしたいのかなって思いながら書きました。
お読み頂き本当にありがとうございます。励みになります。
395 :寺井 :2014/06/11(水) 23:09
更新しまーす
須藤さん視点
登場人物は、須藤さん、熊井ちゃん、徳永さんです。

そして、想像上の福田花音ちゃん。現実はいつも想像の上をいく。
396 :妹幻想 :2014/06/11(水) 23:10


 ◇ ◇ ◇

 
397 :妹幻想 :2014/06/11(水) 23:11

 熊井ちゃんは意外にへらへらする。
 でも、ベリーズのメンバーには一切へらへらなんてしない。家族みたいに毎日会って、良い所も悪い所も色んな素顔を見てきたからそれも仕方ないのかもしれない。研修生にへらへらしていたり、他のアイドルグループと共演してへらへらしている姿をみると、ずるいなと思う。

 「熊井、これ福田から預かってた」
 そう言って、マネージャーさんが熊井ちゃんに紙袋を渡していた。その時彼女の口元が緩んだことを見逃さない。10年以上一緒に過ごしてきたのだから愛想笑いなのか、心の底から喜んでいるのかくらい分かる。受け取る時に少し困ったような目をしたのも、申し訳なさ気を演出しているだけで、この熊井ちゃんはすごく嬉しい時の熊井ちゃんだ。
 
 ごくたまに、スマイレージの福田花音ちゃんから熊井ちゃんへ置き土産が渡される時がある。さっき熊井ちゃんが受け取った紙袋にはお菓子が入っていて、Berryz工房のみなさんで食べて下さい的なメモも付いているけど明らかに熊井ちゃんに食べてもらいたい抹茶系の品々だ。
 熊井ちゃんが抹茶好きを公言してからというもの健気な花音は、お店へ行くとどこででも無意識に抹茶の品物を探してしまう。抹茶スイーツの知識は熊井ちゃんよりも彼女の方が豊富に蓄えている気がする。そして、熊井ちゃんが負担に思わないくらいの程度で花音の抹茶セレクションがマネージャーさんを介して熊井ちゃんの元へ届けられていた。

 
398 :妹幻想 :2014/06/11(水) 23:11

 「うふふ」なんて、普段聞かないような浮かれた独り言をつぶやきながら、花音へメールを送る熊井ちゃん。ただ単に抹茶のお菓子が嬉しいだけなのかもしれない。しかし、ベリーズのメンバーが抹茶のお菓子を買ってきた所で喜ぶことは喜ぶだろうけど、こんなにへらへらしたりしない。

 「嬉しそうだね」
 熊井ちゃんと花音のメールは長く続くことはない。花音がタイミングを見計らいそれとなくやり取りを終了させるのだ。気遣いがハンパない。
 「まあさんも食べていいよ」
 花音から貰ったんだー、とお菓子を見せてくれる熊井ちゃんのへらへらした嬉しそうな様子。喜ぶ瞬間を花音は見ることができないっていうのだから何か彼女は損をしているような気がしてならない。「これ食べてみたかったヤツだ」と、テンションが高くなって幼い様子になる熊井ちゃん。こんな熊井ちゃんホントになかなかお目にかかることができない。熊井ちゃんに喜んでもらう、という花音の目論見は大成功だ。

 見返りを求めない、ただ相手に喜んで欲しいだけ。何よりも熊井ちゃんの幸せを願っている花音の姿勢は一貫されていて、濃いファンというよりは再放送のアニメで見た、あしながおじさんみたいだと思った。花音が熊井ちゃんに思いを寄せていることは周知の事実。まだ10代なのに、あしながおじさんレベルの包容力を感じさせる愛の深さ。一方熊井ちゃんは。
 「妹みたいな感じ」
 バカ言え、と、私が言う前に隣でお菓子をチェックしていた千奈美が叫んだ。
 「違う」
 思いつめた表情で千奈美が「とっておきのお土産を勝手に食べちゃうことはあっても、お菓子をくれるなんて、グミ一粒もないんだから」熊井ちゃんに食ってかかった。自分の妹に対するうらみを熊井ちゃんに言っても何も解決はしないが、その気持ちはよく分かる。
 「本当の妹は、CD出る度に、MV見る度に千奈美のあの瞬間キモいとか、もっとまじめに歌えとかダメ出しするけど。褒めないよ。絶対褒めない」
 「他のメンバーはかわいいって褒めるけど、まあもそんなに妹から褒められたことないわ」
 
399 :妹幻想 :2014/06/11(水) 23:12

 「そうなの? 」
 きょとんとした様子の熊井ちゃんは弟二人の兄弟だから、実際の妹について幻想を持ってしまっている。姉妹のあり方は様々だろうけど普通、妹が姉に頬を染めて照れるわけないでしょ。
 年下の女子は好意的に接してくれると思ったら大間違いだ。後輩から慕われまくっている熊井ちゃんには想像は難しいかもしれないが、ハロプロから一歩外の世界へ出たら現実は甘くない。
 私も、妹からはお尻ランキングとか恥ずかしいから二度とするなとか、アニメの話してる時は顔がキモいから画面に映るなとか、言葉で指摘してくれるならまだマシな方で。鼻息一つであしらわれることが殆どだった。

 「そうなの?じゃないよ。花音は妹って感じじゃない。千奈美は納得できない」
 「でも、年下だし、なんかかわいいしうちにとって花音は妹って感じ」
 「分かった」
 何が分かったのか私も熊井ちゃんも全然予想がつかなかった。千奈美は立ち上がって熊井ちゃんの肩を叩く。
 「ホントの妹がどういうものか熊井ちゃんに教える。千奈美が今日から熊井ちゃんの妹になる」

 千奈美の突然の宣言に、熊井ちゃんは「えー」と、驚きながらも片眉を下げて苦笑してしまった。
 「千奈美はずっと妹みたいな感じだよ」
 意外な熊井ちゃんの気持ちだった。それから、千奈美は抹茶苦手だから、こっちのチョコサンドクッキーあげる、といって花音抹茶セレクションから千奈美用のお菓子を選んであげていた。
 妹といっても色んなタイプが存在する。千奈美だって徳永4姉妹の長女からすれば妹だ。現実的かどうかは謎だけど、姉を溺愛する妹が存在しないことはないはず。
 千奈美は違うと反抗していたけど、空腹で機嫌を損ねたり10分とじっとしていられなかったり。子供っぽい部分をかなり兼ね備えているのだから年下の熊井ちゃんに妹と思われても仕方ない。
 お菓子を貰って心なしか千奈美の反論も鈍る。
 「茉麻っ」
 と、突然私に同調を求めてきた。熊井ちゃんも千奈美も、子供みたいに聞き分けの無い部分もあるし。私から見ても大人だなって思える他人を思い遣れる部分もあるし。姉か、妹かで分けられるものでもないけれど。姉として、妹にへらへらする時はあまりないので。やっぱり熊井ちゃんと花音は姉妹っぽくないと思った。
 
400 :妹幻想 :2014/06/11(水) 23:12

 「でも、どっちかっていうと、熊井ちゃんが花音にお世話になってるよね」
 「ほら」
 と、何がほら、なのか全然分からないが私の意見で千奈美がドヤ顔になった。
 「そっか。去年の舞台でもたくさんお世話になったし。じゃあ花音はうちにとってお姉ちゃんみたいな感じかな」
 手放しで応援してくれているのが、家族だっていうことは分かる。それはファンとは違う安心感があって、厳しい指摘もされるけど聞き流せない重みがあるのも事実だ。熊井ちゃんにとって、花音はファンとも違うし、後輩だけどそれよりは近く感じている。家族の中でも未知のポジションの妹か姉かという選択肢になっただけなのかもしれない。

 「今度から、花音はお姉ちゃんみたいな存在って言うようにしたら? 」
 私は冗談で唆したつもりだったが、熊井ちゃんは真剣に受け取ったみたいだ。千奈美は花音が妹ではない、という認識に改まったので姉かどうかまでは興味がないらしい。また、抹茶セレクションのお菓子をチェックし始めた。
 「そうだね。花音に聞いてみていいよってOKもらったらそうする」
 いたずらっぽい表情で笑った熊井ちゃんに、なかなか妹キャラも似合うと確信できる瞬間だった。
 

 
401 :_ :2014/06/11(水) 23:12



 
402 :_ :2014/06/11(水) 23:12



 
403 :寺井 :2014/06/11(水) 23:13


以上です。
 
 
404 :名無飼育さん :2014/06/30(月) 19:46
一気に読んでしまいました。
ベリーズそれぞれの性格が再現されていてすごいです。
405 :寺井 :2014/08/25(月) 23:07
>>404 :名無飼育さん
お読み頂きありがとうございます!
コメントまで頂きとても嬉しいです。
もっともっとかわいい7人だぞ!と思いながら文字にしておりますが。それぞれの性格が再現されていて、とおっしゃって頂けて励みになりました。
406 :寺井 :2014/08/25(月) 23:10
更新しまーす
須藤さん視点
登場人物は、熊井ちゃん、嗣永さん。
やっつけなのですが。一生懸命考えました。
Berryz工房の未来がとても楽しみず。
407 :寺井 :2014/08/25(月) 23:12
間違えた。熊井ちゃん視点です。
408 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:15

 ◇ ◇ ◇


 
409 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:16


 「まーちゃーん」
 人通りの多い廊下でモーニング娘。'14の佐藤優樹ちゃんを呼ぶ声が響いた。10期メンバーの誰かの声だろう。ぶっきらぼうに響いた声は少々怒りを含んでいるみたいだ。
 廊下と違い、私が身を隠している室内はひっそりと静かだった。ハロー!プロジェクトのコンサート中野サンプラザ公演の初日の今日、本番前の慌ただしい時間にももと二人きりで倉庫代わりされている楽屋にいた。
 空調の電源は切られ窓も開いていない楽屋はとんでもなく暑い。衣装や機材が所狭しと置かれて他の部屋よりも窮屈に感じられた。暑さの所為だけじゃなくて息苦しい。一つ、息を吐いてから黙ったままのももの横顔を見つめた。
 衣装に着替えメイクも済ませ、髪型もばっちりというかカッチカチに固めてあとは本番を迎えるだけの状態のももは汗ひとつ額に浮かべず涼しげな様子に見えた。

 「はーやーくー」
 まーちゃんを急かしている声がまた廊下に響き渡った。別の声で「何してるの」と「行くよ」が続けて聞こえた。集合する時間が迫っていた。じっとしているだけなのに、汗が滲んできてしまう。ステージへ出れば汗をかくのは同じことだけど。息がつまりそうなこの場所から解放されたい。本番まで時間もない。ここでじっとしている場合じゃないのは重々承知だったけれどももの側を離れることができなかった。

 
410 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:16

◇ ◇ ◇


 
411 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:17

 ベリーズの楽屋は変にそわそわしていた。本番前は誰だって緊張するし、テンションも高くなる。でも、10年も毎年コンサートをしてくると緊張だってベリーズらしいた空気があった。
 今日のそわそわ感は今までに経験してきたのとは違うような気がした。
 Berryz工房のグループ活動に区切りを付けることを伝えるのが今日だった。活動停止の発表をいつするかは、前もって決めていたから覚悟する時間は十分にあったグループにとって初めて経験する重大な発表だったから10年活動していたとしてもいつも通りとはいかなかったのかもしれない。
 
 本当に大事な発表なのだから切り出しを述べるキャプテンはきちんと伝えるべきだとプレッシャーを与えたり、一生残る瞬間は最高にかわいい表情でいなければならないと梨沙子に諭していたり、ももは比較的落ち着いているみたいだった。

 会場にはすでにファンの人たちが集まっていた。ホールへ近づくと盛り上がっている声が聞こえてくる。本当に、これからコンサートが始まる。私も、ももも出番がある。ファンの人たちが待ってくれていた。
 「逃げよう」
 と、ももは言った。私は緊張で頭の中が真っ白になりそうなのをこらえるのに自分のセリフを確認していた。「くまいちょー」と、ももだけが呼ぶその呼び名に反応した時は既に腕をがっつり組まれていた。
 お手洗いだったら一人で行ってぐらいの軽い気持ちで断ろうと思っていたのに。小さい体に似合わない怪力に驚いて隙を見せてしまい私はももにあっけなく連れ去られた。
 「どこ行くの? 」
 「逃げるの」
 「え?! 」
 「やっぱり、Berryz工房辞めたくないもん」

 コンサートから逃げ出して、Berryz工房の活動停止発表の時にメンバーが揃っていなければ発表が取りやめになると子どもみたいな発想から衝動的にももは行動を起こしてその巻き添えを食らっていた。

412 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:17

◇ ◇ ◇


 
413 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:21

 20歳も越えて、学生ではあるものの。責任を負うことも周囲から徐々に求められてきた。ももの強引さに驚きはしたものの。楽屋に隠れているのは自分の判断で行った事実。本番に間に合わず迷惑をかけてしまったら自分の責任だ。
 大学の友達に言われて気が付いたのは、これまで疑うことをあまりしてこなかったということ。自分は騙されやすいのかもしれない。でも、それがどういうことなのかはよく分かっていなかった。
 誰もいない倉庫のような場所まで来ていたけれどまさか、本番をドタキャンするはずがないと疑っていなかった。これをどう説明すれば分かってもらえるのか。癖みたいなものかもしれない。ももが、仕事に穴をあけるはずがないという思い込みでしかないけれど。モーニング娘。の10期メンバーが佐藤優樹ちゃんを探している焦りみたいな気持ちは全然なかった。

 廊下は徐々に人の気配が少なくなり静かになってきた。コンサート開始まで刻一刻と時が迫っている。
 こめかみから首まで一筋の汗が流れた。
 「あっつい」
 もう、行こうよと心の中で念じて隣を見たけれどももは顔色一つ変えずに無言のままだ。「行こう」と口にする瞬間にももがこちらを見上げた。
 「明日、くまいちょーのお誕生日だね」
 今日は8月2日。そして、明日8月3日は私の誕生日だ。明日もここでコンサートをする予定だから大勢の人に自分の誕生日を祝ってもらえる特別な日になる。この時期はコンサートをしていたり秋からの舞台リハーサルが始まっていたりすることが多く、毎年多くの人たちにおめでとうと言ってもらえていた。
 「発表、くまいちょーの誕生日の後にすればいいのに」
 「そんなこと言ったら、次はみやの誕生日がくるし」
 「だったら、活動停止なんて発表しなければいい」
 やだやだやだー、と駄々をこねる聞き分けの無い子どもが現れた。その様子がももに似合っていて思わず笑ってしまった。
 「なんで笑うのくまいちょー。もも、本気で嫌だって言ってるのに」
 「やだやだやだー」
 私はももの真似をして体をじたばたさせてみて、すぐに後悔した。やるんじゃなかった。余計に暑くなってきてしまった。隣のわがままな子どもは真似をされるとは思っていなかったようで驚いていた。
 「ももが本気で嫌だったらこんなトコでじっとしてなさそう」
 何年一緒にやってきたと思っているのだろう。ももは、ちょっと私のことを甘くみている。詰めが甘いと自覚する部分があるからももの上から目線も仕方ないと思う部分もある。
414 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:21

 風なんて全然起きないけれど、手ぱたぱたさせて顔あたりを煽ってみた。涼し気な様子のままのももを恨めしく思う。巻き添えを食ったこっちの方が本番に影響が出そうだった。
 「今までだって、ももは自分で決めたことは何がなんでもやってきたから」
 誰になんと言われようとこだわりを曲げず完成度を高めていったももち結びも、大学へ進学して先生の資格を取ったことも。自分を持っていてそれを貫く強さはちょっとだけ憧れる。
 「もし、本気でBerryz工房を続けるって決めたらもも一人でもやってるんじゃない」
 「嫌だよ」
 今日のももはやたら嫌だという。珍しいと思った。生きていれば嫌なこともたくさんあるだろうけどあからさまに嫌がったり態度を悪くしたりすることはなかなかないことだ。なんだかんだいっても、キャプテンとももは年長者のおおらかさがある。
 「一人でベリーズやってもつまんないもん」
 口を尖らせて不意に私の腕と自分の腕を絡めてきた。暑がっている私を苦しめるのが面白いのかもしれない。腕を組まれないように体を捩ったら下から睨まれた。責められる筋合いは全くなく、こっちが文句を言いたい立場だっていうのに。自分勝手な人だ。
 くっ付かれることはなんとか逃れて衣装のジャケットを脱いだ。暑い。マジ暑すぎる。
 つまらないことが嫌なら、答えは出ていた。

 「ここでじっとしててもつまんない」
 「くまいちょーと二人でいるから楽しいし」
 「私はコンサート出たいからもう、行くね」
 「ちょっと待ってちょっと待って」
 「まーちゃんじゃないんだから。いくら待っても誰も探しに来てくれないよ」

415 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:22

 モーニング娘。10期やハロプロ研修生みたいにかまったりかまわれたりの関係はBerryz工房も通った道だ。いつからか個人が尊重される関係になっていた。ケンカしたり仲直りしたりそういう関係に懐かしさを覚えるけど昔に戻りたいとは思わない。だって、今の方がカッコイイって思うから。
 私たち二人が本番前に姿を見せなくても心配されないのは興味がないとかじゃなくて。やるときはやってきたから信頼されていると思っていいんじゃないかな。

 ももは、私のジャケットを力づくで奪った。私とももの体格差はハロプロの中でも開いている方なのに。小さいももに何故こんなに力があるのか不思議だ。
 「もも」
 「花火するって約束してくれたらこれ返す」
 「花火? やったー。やろうよ花火」
 よく分からない交換条件だとは思ったけど。花火なんてなかなかできないことだったから嬉しくなってしまった。
 「ベリーズで花火するの? 」
 Berryz工房7人で花火をしたらどんな風になるのか少しだけ想像してみても面白かった。
 千奈美が変わった花火を用意してきそうだ。梨沙子は線香花火にハンパない集中力を発揮してそれを茶化してももが怒られて許してにゃん、の流れまで一気に思い浮かんできた。

416 :ゆびきりをした後 :2014/08/25(月) 23:22

 「約束」
 そう言って、ももが小指を突き出してきた。
 ゆびきりをした後、ももが雑にジャケットを返してくれた。畳んで返すとか、着せてくれるとかももに期待したところでなんか違うのだろう。
 暑苦しい楽屋のドアを開けると廊下には誰もいない状況だった。
 ああ、ちゃんと発表のコメントを間違わずに言えるか不安になってきてしまった。
 本番前から汗だくだし。色々落ち着かせる為に風に当たりたい。
 しかし、そんな時間はないと分かっているからまた汗をかくのに急いでももと廊下を走る羽目になった。
 ケータリング場所を横切る時、横目に見慣れた姿を2人確認してはっとした。
 「千奈美、まあさん」
 「熊井ちゃんの分もアイス確保しておく? 」
 疑う余地がないほどのんき過ぎる。大学の友達たちはこういう人たちが身近に存在しないのだろうか。
 「ちょっと、ちーちゃんももの分も取っておいてよ」
 カッコイイって思いたかったBerryz工房の実態はアイス一つでケンカが始まるグループだった。
 これでもやるときはやるのだから、未来もきっとなんとかなる。先の未来よりも。近くの本番。
 「アイスは7人分取っておこう」
 「さすが熊井ちゃん」

417 :_ :2014/08/25(月) 23:22



 
418 :_ :2014/08/25(月) 23:22



 
419 :寺井 :2014/08/25(月) 23:28
以上です。
夏焼さん、お誕生日おめでとうございます!
今回更新分で登場しなかった痛恨のミス。
Berryz工房の姫君は夏焼さんだと思っています。
420 :名無飼育さん :2014/09/02(火) 16:03
雰囲気が素敵です!
熊井ちゃんの「花火? やったー。やろうよ花火」に和みましたw
桃熊いいなあ
421 :寺井 :2014/09/04(木) 22:43
>>420 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
どんな雰囲気なんだろうーーー?と気になりつつ。お褒め頂き嬉しいです。
Berryz工房は、和むんです。
422 :寺井 :2014/09/04(木) 22:55
更新しまーす
熊井ちゃん視点
登場人物は、熊井ちゃん、嗣永さん。

自分の体重は自分で支える派の熊井ちゃんと人にくっつきたくなっちゃう派のももちです。
Berryz工房 DVD MAGAZINE Vol.35 参照
423 :寺井 :2014/09/04(木) 22:56

 ◇ ◇ ◇


 
424 :Momo take it all :2014/09/04(木) 23:00
 両手でスマートフォンを支えて、撮影ボタンに触れる直前だった。
 私の右腕と左腕の間から黒い頭がぬっと現れ、思わず「おっ」と声が漏れた。二つ結びがトレードマーク。そのおじゃま虫が振り向かなくても誰なのかすぐに分かった。

 「じゃまだよ」

 被写体のブレスレットを私から隠して明後日の方へ視線を向けていた。
 ブレスレットは今日の撮影用に衣装さんが手作りで用意してくれた一点ものだ。ゴールドのバングルにラインストーンが等間隔でちりばめられていてシンプルだけどとてもかわいくて自分好みだと思った。
 残念ながら、梨沙子の為に用意されたブレスレットだったので私は身に着けることができなかった。せめて、画像を保存しておこうと休憩中の梨沙子から借りたのに。邪魔が入った。

 「もも。写真撮らせて」
 私はももが隠しているブレスレットの写真を撮らせて欲しいと伝えたつもりだったのだが、相手は唇を鳥みたいにつぼめ、瞬きを繰り返している。どうやら自分のことを撮影するように促しているみたいだ。
 仕方ないので、ももをスマートフォンで撮影してみる。何枚か撮ってみたけれどこれといって手応えはなかった。
 ご機嫌な様子のももは、いつの間にか私の膝の上に座り我が物顔でスマートフォンを覗きこんでいる。さっき撮ったばかりの自分の画像を見比べどれが一番好きか聞かれたが正直どれも同じに思えた。
425 :Momo take it all :2014/09/04(木) 23:00

 「ブレスレット返してってば」
 写真撮りたいの。
 「返して欲しい? 」
 私の膝の上に乗り同じくらいの目線なのに、上目遣いのようにももはこちらを見る。わざとらしく、どうしようかなとかでもももの方がかわいいと思うとか冗談ばかり言ってなかなかブレスレットを返してくれなかった。
 「梨沙子から借りたから、すぐ返さなきゃなんないのに」
 ブレスレットの画像を今残すことは諦めた。それより、重たい。
 「もも、降りてよ」
 観念しました、と態度で示すようにスマートフォンを側の机に置いて背中を叩く。
 「い・や」
 と、強く区切ってももは降りることを拒否した。そればかりか、背中に体重をかけて寄りかかってきた。
 夕べはたくさん眠ることができたのだろう。今日のももは元気だと思った。
 
 「熊井マッサージ機、スイッチオン」
 何かと思えば、私のことをマッサージチェアに見立てたようだ。スイッチオンと、言いながらももは手の甲を小指で連打してくる。地味に痛かった。
 「えー、何で」
 「スイッチ」
 「分かった。分かったから。ももの小指マジで痛いんだって」
 ももは振り返りこちらへ小指をかざした。ふぅっと息でピストルの白煙を吹くドヤ顔を見せている。
 本当に本当に仕方なく、ももの肩を揉みはじめた。
 いつも知らない間にもものペースに乗せられていてそんなつもりはなくても度々茶番に付き合わされた。真面目に淡々と過ぎていくよりは面白いけれど。割を食っているのは自分なんじゃないかと思うときもある。

 
426 :Momo take it all :2014/09/04(木) 23:01

 「力加減はこのくらいですか? 」
 半ばヤケクソになりながら御用を聞く。
 「いい感じだよ。熊井マッサージ機さすがですね」
 いいですねー。もうちょっと左右全体的に動くかな。あー、そうそう。いやー気持ちいいなぁ。
 全部棒読みでももがマッサージの感想を述べている。
 
 「はい。終わりー」
 両手でももの背中を押して、膝の上から降ろそうとした。
 私が力を込めれば込めるほど、ももは脱力して抵抗してくる。
 「背中のマッサージもいい感じですねー」
 いつまでマッサージ機ごっこをしなければならないのか、溜息が漏れる。
 ももにはいつも敵わない。
 「もーもー」
 不満の気持ちを込めて呼んだのに。
 「はーい」
 愉快そうにももが返事をした。まともにやりあってももに勝ったことなんてなかった。力も負ける、口数でも負ける。頭の回転が速い相手はいつだって一枚上手だった。

427 :Momo take it all :2014/09/04(木) 23:01

 しかし私は今、マッサージ機なのだ。
 意地悪かもしれないと、ひらめきをちょっだけためらった。
 もしかしたら今回は勝てるかもしれない。と、脳裏をかすめると実行せずにはいられなかった。
 「次は、腕のマッサージをします」
 私の膝の上でだらけていた隙を逃さず、ベリーズで最近評判のももの二の腕を掴んでみた。
 「待った、待った」
 「お客さん、凝ってますね」
 「違う、二の腕凝る人なんていないから」
 「でも大分固いですよ。すっごい凝ってますね」
 「やめてよ。凝ってないから筋肉だからって。何を言わせて」
 「はい。じゃあ、次は左腕のマッサージ」
 「やだって。腕のマッサージはいーらーなーいー」
 降参寸前のももに心打ちでにんまりしていると。

 「くまいちょーセクハラだ」
 手を掴まれて心外な言葉を浴びせられた。
 もも相手にセクハラだなんて、ショックだ。
 「先にももがマッサージ機って言い出したのに」
 「ももの所為にするなんて最低だね」
 容赦ないももの言いがかりに腹を立てても良いのだけれど。性格柄、うやむやにしてしまうことが多かった。
 今回こそももに勝てるかと思ったが、こちらが傷を負って結局理不尽な目に遭った。こんなことなら大人しくしていればよかった。あーあ。セクハラするのだって、相手を選びたいよ。
428 :Momo take it all :2014/09/04(木) 23:02

 拗ねた気持ちでされるがままにしていたら。突然頭を撫でられた。
 「しゅんとしてるくまいちょーってかわいい」
 らしい。そんなことはどうでもいい。ブレスレットを返して欲しかったし。膝の上からどいて欲しい。
 そして、許してニャンはマジでいらない。
 膝の上に乗ったまま、首にまで絡み付いてきて重いったらない。
 かわいい、かわいいと、繰り返されるものだから。

 「ももが一番かわいいよ」
 と、真顔で言ってみたら相手は黙ってしまった。心なしか耳が赤くなっている気がしないでもない。
 「どうしたの? 」
 尋ねたところで返事はなく。膝の上から大人しく降りてくれた。顔を背けて隣の椅子に座って動かなくなった。もしかしたらももの弱点は・・・。
 ここぞという時はコレが一番ももにきくのかもしれない。何か手ごたえを感じた今日。少し大人になった気分を味わえたのだった。

429 :_ :2014/09/04(木) 23:02




 
430 :_ :2014/09/04(木) 23:02




 
431 :寺井 :2014/09/04(木) 23:02
以上です。
432 :名無飼育さん :2014/09/25(木) 01:18

いつも素敵な文章ありがとうございます。
嗣永さんの熊井ちゃんいじりが、自分の欲求満たしてる感強くてにやにやしました。

熊井ちゃんで遊びつつ癒されてる嗣永さんかわいい。
嗣永さんに翻弄されつつ、真顔でキザなセリフ言っちゃう熊井さんかわいい。

つまり桃熊はかわいい!

433 :寺井 :2014/11/28(金) 21:51
>>432 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
桃熊かわいい!おっしゃって頂けてうれしいです。
10年経っても初々しいかわいさがあって熊井ちゃんズルい。って思っております。
嗣永さんの不意をついて欲しいなって思って書きました!
434 :寺井 :2014/11/28(金) 22:01
更新しまーす
清水キャプテン視点
登場人物は、キャプテン、夏焼さん。

9/20,21に開催されたトラベリーズ.com3がすっごい羨ましかったです。
2015年2月のトラベリーズ.com FINAL!も楽しみですね。
435 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:02

 ◇ ◇ ◇


 
436 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:03
 スペジェネのイントロが始まる。照明が一瞬で落とされスポットライトでベリーズのメンバーがステージ上に浮かび上がる。私はこの場面で会場全体を煽る役割だった。ステージも客席も同じタイミングで空気が一瞬で変わる感覚に鳥肌が立った。
 その大事な場面で顔の中心がむずむずしてきた。どうしてもくしゃみがしたくなって集中力が途切れてしまう。どうしよう。後ろの大きなビジョンにも私のアップが抜かれるのに。こらえられない。たまらず、思い切りくしゃみが出てしまった。
 瞬く間、歓声もBGMも聞こえなくなり辺りは真っ暗になった。今までの熱気が嘘みたいに静かだ。しかし、誰かの気配がある。よく目をこらして何者かを判別しようとする。
 真っ暗闇の中ワープするみたいに、ピンクの物体が近づいてくる。これは、鯛だ。
 鯛の着ぐるみを着た千奈美がお抹茶をすすっている。千奈美、あんなに抹茶が苦手だって言っていたのに。いつの間にそんなみやびやかな趣味を持つようになったのだろう。
 千奈美は、鯛の格好のままお抹茶をズズっと音を立てて啜っていた。そして、私に気が付くと。キャプテン、と嬉しそうに目を細め。

 「ぉぱよ! 」

 ぉ、ぱ、よ? 一体これは何が起こっているのだろう。何が起こっているも、何もないのだ。これは、夢だ。

437 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:03

 覚醒までには少しだけ時間が必要だった。
 ここはどこ?
 ゆっくりと瞼を持ち上げまた閉じる。何度か繰り返してやっと思い出す。ホテルの1室だった。
 今何時?
 布団にもぐったまま手を伸ばして携帯電話を引き寄せた。画面が眩しくて眉間に皺が寄る。午前5時前だ。起床するにはまだ早い。

 このまま大人しくしていればまた夢の中へ戻れそうだったが。間が悪くも喉が渇いた。変な夢を見た所為でどうやら汗もかいている。思わず溜息がもれて意識もはっきりしてくる。
 夢かうつつか曖昧なまま、再び眠りにつけばよかったと後悔しても遅かった。

438 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:03

 ◇ ◇ ◇


 
439 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:04

 昨日から、ファンクラブのバスツアーが始まっていた。バスツアーの前にベリーズのメンバー7人で遊んだこともあり浮遊感に拍車がかかっていた。今日もこれからファンの人たちと一緒に過ごす時間がたっぷり用意されている。高揚感と緊張感が入り混じったバスツアーだけど、今回は今までで一番メンバー自身が楽しんでいた。

 掛け布団を捲って上半身だけ起き上がる。喉がからからでこのままでは眠れそうもなかった。
 立ち上がるのは本当に億劫な気持ちだったが観念して水を買いに部屋から出ることを決めた。
 お財布はキャリーバッグの側に置いていたから、廊下へ出る時にすぐ持ち出せる。昨日のうちに水を買っておけばよかった。こんな時間に目を覚ますのは想定外だった。

 ゆっくりと首を回して深く静かに息を吐いた。
 立ち上がろうと手のひらを布団についた途端、手首を掴まれて小さく悲鳴が漏れてしまった。
 隣で眠っていたはずの雅が私の手首をしっかり掴んでいる。
 「佐紀? 」
 「ごめん。起こしちゃった」
 もごもごと何か言葉を口にしたみたいだが、雅が何を言っていたのか聞き取ることができなかった。

440 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:04

 「どうしたの? 」
 「喉渇いたから、お水買ってくる」
 「どっか行く? 」
 「廊下に自動販売機あったから。そこまで」
 「うちのお水、あるから。それ飲みな」
 朝になって今の会話の内容を尋ねたとしても殆ど忘れてしまっている他愛もない時間でも、雅はお姉さんのように部屋から出ることを少し心配しているみたいだった。

 「ありがとう」
 1度飲み始めると一気に大量の水を欲してしまうのできっと足りなくなってしまう。
 結局は水を買いに出ることになるだろうから雅の好意だけは受けて、お財布を持ち明るい廊下へ出た。
 光が室内に入り込み他のメンバーの眠りを妨げるかと危惧したが、みんなぐっすりと眠りこけていた。
 鍵をかけてから廊下を歩く。自分のスリッパの音が妙に大きく聞こえた。

441 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:05

 ◇ ◇ ◇


 
442 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:05

 数え切れない程ベリーズのメンバーで宿泊はしてきたけれど、7人全員が1つの部屋で一晩過ごすのは10年で初めてだった。
 熊井ちゃんが眼鏡をかけたまま眠ってしまったり、梨沙子が熱を出して冷えピタをおでこに貼って眠っていたり。昔のことが昨日のことのように浮かんできた。
 お化けが出るといっては大騒ぎになってマネージャーさんたちにこっぴどく叱られたり、寝坊して怒られたり。周囲の大人から怒られてきたことばかりがすぐに浮かんで1人でちょっと笑ってしまった。
 7人でいる時は怖いものがなくて、今思えばどうしてあんな無茶ができたのだろうと自分たちのことが不思議で仕方がない。
 それが10年も続くとは思っていなかったし、終わりがやってくることも分かっていなかった。

 ペットボトルの水を1本買ってその場で口を付ける。
 1口で済めば雅から水を分けてもらえばよかったけれど、飲み始めると半分近くペットボトルの中身が減ってしまった。
 ふと視線を上げると窓が一つあった。ホテルの白い壁に夜明け前の薄ら暗い空が見える。星も見えた。他の寝ている6人はどんな夢を見ているのだろうか。

443 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:06

 Berryz工房7人が離れ離れになることがうまく想像できないでいた。美味しいものをたくさん食べて、いっぱい笑って、そんな未来がいいなと思うけれど。今までだって楽しいことも大変なことも両方あった。
 楽しいことばかりではないこれから先、何かあった時だってきっと大丈夫。ももがいる、千奈美がいる、茉麻がいる、熊井ちゃんがいる、梨沙子がいる。そして雅がいる。一人じゃない。
 思い耽るとすぐ泣き出しそうになるから深呼吸をして明日のことを考えた。
 今日のライブ楽しかったな。
 ステージの上では夢中になっていてリハーサル通りに本番が進まないこともある。終わってみんなで楽屋へ戻る時はいつも変なテンションになっていて現実感がなかった。
 それから家に帰って、ほっと一息ついたときに思い出して一人で笑っちゃう。今日も楽しかったなって。
 きっと、明日もそんな日になる。っていうか、してみせる。

444 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:06

 朝ご飯は何かな。お水飲んでいたら、アイス食べたくなってきちゃったなんてのんきに部屋へ戻ろうと進行方向へ体を向けると人影がありドキっとした。髪の毛ぼさぼさの雅が、目の前にいた。

 「遅い」

 雅は不機嫌そうに一言呟いた。
 別に私が悪いことをしたワケでもないけどごめんと一応謝った。
 雅が突然現れて本当に驚いた。けれど迎えに来てくれたことが嬉しくて。誰が来てくれても嬉しいとは思うけど雅が来てくれたことは特別に感じた。他のメンバーだったら申し訳ないと思ってしまうこんな時、雅だと甘えたい気持ちが込み上げてきてしまう。年は私の方が上だけど、雅からの些細な甘やかしが嬉しくて嬉しくて。緩む表情が抑えられなかった。

 「お水飲む? 」
 どうせ断られると分かっていたけど雅に尋ねる。
 「ありがとう」
 相手は私からペットボトルを受け取ったが飲む様子はなく、戻ろうとそのまま私の手を握った。

445 :希望の夜 :2014/11/28(金) 22:07

 「一人でお酒でも飲んでるかと思った」
 あくびをしながら雅が言った。
 「飲んでいく? 」
 目が合った。眠そうな雅は普段よりも幼く見える。
 「また、今度ね」

 雅は覚えているだろうか。
 夢の続きだったと、勘違いしないで欲しい。
 密やかに願いながら5人が眠っている部屋へと歩いた。
446 :_ :2014/11/28(金) 22:07




 
447 :_ :2014/11/28(金) 22:08




 



 
448 :寺井 :2014/11/28(金) 22:09




以上です。
449 :寺井 :2015/01/19(月) 23:51
更新しまーす
梨沙子視点
登場人物は、梨沙子、夏焼さん。

夏焼さんが嬉唄ちゃんファンになったと聞いて。
 
450 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:52

 ◇ ◇ ◇


 
451 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:53

 たった1年なのに、景色が変わったな、と思った。
 ハロー!プロジェクトが毎年夏と冬に開催するコンサートへ参加するようになって10年以上。毎回変化があるけれど、今年の冬は若いメンバーが急増した所為なのかハローのコンサートではない違う現場にいるみたいだ。

 パタパタと軽やかな足音や、ポップコーンがはじけるみたいな笑い声があちこちから聞こえてくる。
 大人数で盛り上がる子たちもいれば、一人で音楽を聞いている子やダンスの振りを黙々と確認する子もいる。不意に視界に入ったのは、モーニング娘。の10期メンバーだった。

 佐藤優樹ちゃんが、体の小さい石田亜佑美ちゃんの背中にぴったりくっついて離れず、どうやら亜佑美ちゃんがまーちゃんをなだめているみたいだった。二人が何を話しているかはさっぱり分からない。まーちゃんが何か言う度に、亜佑美ちゃんが、「大丈夫」と慰めているように笑ってみせたり、頭を撫でてあげたりしている。
 ケンカが多いと聞いていた10期だけど、なんだかんだで一番頼るのも、気を許して甘えられるのも同期のメンバーなのだろう。

 それにしてもあんなにきつく抱き付かれていて、亜佑美ちゃんは苦しくないのだろうか。まーちゃんの頑なな様子に、昔の自分を見ているみたいで、微笑ましいはずの後輩たちの姿になんだか胸が苦しくなった。

452 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:54

 ◇ ◇ ◇


 
453 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:54

 Berryz工房の楽屋の扉を開けて室内へ入ると誰の姿も目に入らなかった。桃と千奈美は本当に不在で、きょろきょろと辺りを見渡してみればみや、キャプテン、茉麻と熊井ちゃんがいた。それぞれ静かに時間を過ごしコンサート本番前だけどリラックスした雰囲気が漂っていた。

 給水コーナーから取ってきた飲み物に口を付けてから、鏡台にコップを置く。メイクはほぼ済ませていたけれど、衣装に着替えるにはまだ早い。どうしよう、と思う。
 飲み物が入っているコップをもう一度手にしようかと一瞬迷った。でも、体は心以上に素直だった。どうしよう、と躊躇したところで方法は一つしかないと分かっていた。

 自分では相応に大人になったつもりでいても、メンバー6人からすれば私はいつまでも末っ子の梨沙子のままだ。周囲からの子ども扱いに不満を覚えることもある。でも、こういう場合って便利だなって思う。
 楽屋のソファに座っていたみやの背後から肩辺りに両腕を回して匂いを嗅ぐわけでもないのに自分の鼻先を相手の髪に触れさせる。みやは驚くこともなく、咎めることもなく、ただ「お帰りー」とのん気そうに迎えてくれた。
 私も「ただいま」と、返事をした。かまって欲しいという主張だったはずだが。みやは手に持っている携帯から視線をこちらに向けることはなかった。誰かとメッセージのやり取りをしている最中らしい。
454 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:54

 くっ付きたい、と思うが早いかするが早いか。許可を得なくても拒まれることがないのは末っ子の特権だと思う。

 この私を差し置いて、末っ子扱いされる人物は今まで現れなかった。後輩はたくさんいたけど、自分たちが幼い頃からハロー!プロジェクトに在籍していたお蔭でなかなか先輩風を吹かせることが身に付かなかったからかもしれない。すっかり年下扱いに慣れっこモードでいたけれど、ここ最近は様子が変わってきた。

 道重さゆみさんがモーニング娘。から卒業し、Berryz工房は名実ともにハロー!プロジェクトで一番お姉さんグループになった。周囲の大人の態度も変わり、ハロー!プロジェクト内にこれだけ若いメンバーが増えると、自然と意識も変化していった。自分が年の下の若いメンバーを甘やかしたりからかったり振る舞いが変化していくと。おのずと、末っ子として他のメンバー甘やかされる地位も揺らいでいった。

 
455 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:54

 ◇ ◇ ◇


 
456 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:55

 「梨沙子、見て」
 宝物を見せてくれる少年のような笑みでみやが振り返った。それから、隣へ来なさいという指示なのか、ソファを叩いて座る場所を知らせた。
 「じゃーん」
 ソファに深く腰を下ろすや否や、さっそくみやが携帯の画面を見せてくれた。
 「寝顔」
 興奮気味にみやが自慢しているが、見れば分かる。カントリーガールズ島村嬉唄ちゃんのあどけない様子が写されていた。14歳とは思えない赤ちゃんみたいな寝顔はちょっとヤバいくらいだ。

 「超かわいい」
 と、私が思わず呟くと、変なタメを作って「でっしょう。めっちゃめっちゃめーっちゃ、かわいいの」とみやが泣き出しそうな表情で「ヤバいヤバい」と訴えてくる、ヤバいのはみやの方だった。

 「もう、超かわいい」
 「その画像どうしたの? 」
 みやが嬉唄ちゃんを撮ったのではなさそうだったので聞いてみた。カントリーガールズでプレイングマネージャーを務める桃が嬉唄ちゃんの寝顔を撮影して画像をみやへ送るとは考えにくいし。まさか、マジで盗撮とかだったら、嫉妬を通り越して心配になる。

 「ちぃちゃんがね」
 「ちーが撮ったの? 」
 「ちぃちゃんって、千奈美じゃないよ。カントリーガールズのちぃちゃんだからね」
 そんなかわいい声で言ってもごまかされない。危ない。みやは森戸知沙希ちゃんにまで手を出していたんだ。いつの間に。
 「ちぃちゃんのLINEもめっちゃヤバいんだって」
 メッセージのやり取りを見せたいらしく、携帯の画面をスクロールして流れの説明をみやは早口でまくしたてた。「ね、ヤバくない? 」と同意を求められたけど。素直に頷くことができないのは、みやを心配しているからだけではなかった。

457 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:55

 その子と私。どっちがかわいいの?

 なんて、口にすることはできない。相手は本当に子どもだし。みやが質問に答えたとして若い子を選んだら冗談にならない気がした。かなり落ち込む。

 ねえ。その場所、私の場所なのに。

 本当に嬉唄ちゃんも、知沙希ちゃんもかわいいから。私なんかよりもずっとかわいいと思うし。何の落ち度もない彼女たちに後ろ暗い気持ちを向けるのは間違っている。間違っていると分かっているのにむくむくと膨れ上がる嫉妬染みた感情は抑えることができなかった。

458 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:55

 だらしない表情だったみやの表情が一瞬固まった。
 携帯の画面をわざと遮るように腕を伸ばし、Tシャツから露わになっていた相手の首筋に手を掛けて力を込めた。こちらに引き寄せそのまま勢いにまかせてみやの白い肌に歯を立てる。
 「った」
 なんでもないように澄ました様子を取り繕ったけど、すぐに笑いが込み上げてきた。
 「ちょっと、梨沙子。痛いよ」
 「嬉唄ちゃんにでも、ちぃちゃんにでもお薬塗ってもらえば」
 「はぁ? 何それ」

 みやは鏡で自分の首の状態を確認して「痕ついてるし」と、慌てていた。
 いい気味だと、思ったらなんとなく気分もすっきりして私はソファから立ち上がり、本番に向けて準備を始めることにした。

459 :Flowerwall :2015/01/19(月) 23:56

 ◇ ◇ ◇

 一方、同じ楽屋にいた他の4人は。
 (噛んだ)
 (噛んだ)
 (噛んだよね)
 (噛んだ噛んだ)

 (痕できてるよ)
 (噛み痕)
 (痕できてるの)
 (みやに噛み痕って)

 言葉を口にしないで会話が成立していた。


460 :_ :2015/01/19(月) 23:56




 
461 :_ :2015/01/19(月) 23:56




 
462 :寺井 :2015/01/19(月) 23:57




以上です。
463 :寺井 :2015/01/20(火) 00:04
>>459
1人多く会話に参加する状況になってしまいました。すみません。
3人ですね。
大変失礼いたしました。
464 :寺井 :2015/01/22(木) 23:49
更新しまーす
熊井ちゃん視点
登場人物は、熊井ちゃん、夏焼さん。

完熟Berryz工房 The Final Completion Boxのアルバムジャケット撮影メイキング映像が素晴らしかったので。
465 :熊井ちゃんの仕業 :2015/01/22(木) 23:51

 ◇ ◇ ◇


 
466 :熊井ちゃんの仕業 :2015/01/22(木) 23:51

 仕事の集合時間が夕方以降に設定されることにも当たり前になっていた。
 大人が付いてなくてもタクシーだって自分一人で乗ることができるし、家の人に迎えを頼まなくても帰宅できるようになった。深夜に及ぶ仕事も珍しいことではない。
 小学生や中学生の時は仕事現場へ母親がついてきてくれていたが高校生にもなれば一人で行動することも平気になっていた。10年の年月で年齢はもちろん、行動も心配されないほどには成長し、今ではすっかり大人扱いされている。
 一人で時間を過ごすことにも飽きてきて携帯電話で時間を確認する。いい時間だった。そろそろ駅へ向かおうと気持ちを切り替える。午前中から学校があったので今日は長い一日になりそうだと思った。

 集合まで時間を潰すのにお買い物をしていたけれど、あいにく目ぼしい品物には巡り会えず休憩の時みんなで食べようとチョコレートのお菓子だけ買った。ピーカンナッツがチョコでコーティングされていて最近はまっているお菓子だ。新しい味に宇治抹茶があってちょっとテンションが上がってしまった。

467 :熊井ちゃんの仕業 :2015/01/22(木) 23:52

 ◇ ◇ ◇


 
468 :熊井ちゃんの仕業 :2015/01/22(木) 23:52

 夕方のラッシュに巻き込まれたらしく駅へ到着するとたくさんの人で溢れかえっていた。インフルエンザが流行している所為か、いつもよりもマスクをしている人が多い。寒い時は防寒の役割もはたしてくれてマスクって便利だと思う。そのマスクだらけの駅のホームで一際目を引く女の子がいた。オーラがあるというか、目立つ髪の色と華奢な体型は景色に溶け込むことなくはっきり主張しているように見えた。半分以上マスクで覆われて顔は隠れているけどまぎれもない、雅がいた。
 混雑している駅でよく見つけられたと思う。人波をかき分けて雅の近くへたどり着く。一瞬だけ警戒した表情を見せたけれど私だと分かると雅は目を細めて笑ったみたいだった。

 今日はこれからBerryz工房7人での仕事だった。お買い物をする場所が似ている所為か、この駅では雅とばったり会うことが2、3度あった。
 「お疲れ」
 「ふふふ」
 雅が目立つからか、視線を多く感じる気がして笑ってしまった。他人から注目を集める彼女らしいと思った。
 「みや、すごい見られてる」
 「いや、熊井ちゃんだから」
 確かに、自分も雅とは違う意味で目立つ。でも、今日は特別振り返る人が多い。雅はそういうことに慣れっこなのかもしれない。
 電車が間もなく到着し、半ば押されるように車内へ乗り込んだ。大勢の人が次から次と車内へ流れてくる。その流れに乗って見えなくなりそうな雅の腕を思わず掴んでしまった。
 はぐれても目的地は同じだから、別に側にいる必要はなかった。咄嗟に掴んだ雅を離さないように自分の方へ引き寄せ、ドア横の袖仕切り付近に居場所を確保できた。
 自分と同い年くらいの女の人が顔をしかめて苦しそうにしている。場所は確保できたとはいえかなり窮屈な車内状況だった。満員電車に乗っていてもあまり息苦しさを感じないのはこの身長のお蔭だと思った。

 しばらく黙ったまま電車に揺られていた。これだけ人と密着しているとなんとなく声を出すことが憚れる。肩の下に雅がいて私と同じように彼女も俯いて黙っていた。髪の分け目が私の視界から見える。理由は説明できないけど、分け目までアイドルっぽいと至近距離で雅を見ているとそんな感想が浮かんだ。
469 :熊井ちゃんの仕業 :2015/01/22(木) 23:53

 持っていたバッグを引かれて一緒に意識もそちらへ向く。すると雅と目が合った。
 「今日、学校だったの? 」
 「もうすぐテスト」
 頷きながら答えた。「お疲れ様」と雅が労いの言葉をかけてくれた。
 「みやは? 」
 「テストの予定はないよ」
 「テストじゃなくて」
 今日、雅が何をしていたのか質問したつもりだったけれど冗談で返されてしまった。
 「さっきまではお買い物してたけど、朝は撮影があったんだ」
 真面目に質問をし直そうとする前に、雅はちゃんと答えてくれた。そんな他愛もない会話をしている間にも電車は加速と減速を繰り返して着々と目的地へと進んでいく。
 一旦、車内の人波が落ち着いたと思ったけれど私たちが降車する駅の1つ手前でどっとお客さんが乗り込んできた。
 できれば、ドア付近から車内中ほどへ移動を避けたかった。両足で踏ん張っただけでは奥に押されてしまう。このままでは雅を押し潰しかねない。
 ドアが閉まる直前の勢いで居場所を確保しきれなくなり、袖仕切りの支柱を掴む。空間を作って雅をその間に収めた。発車すると私の背中を人が代わる代わる押してくる。
 「苦しくない? 」
 私が聞くと雅は「平気」だと何故か笑いを堪える様な声で言った。
470 :熊井ちゃんの仕業 :2015/01/22(木) 23:53

 学校に行ってから買い物をし、そのまま仕事の現場へ移動する電車に乗っているので、ただ仕事だけに出掛ける時より少し荷物が多かった。
 周囲に当たらないようにバッグの持ち手を肩にかけ直す。
 目下の雅と視線が合った。バッグを当ててしまったのかと思い少し慌てた。
 「ゴメン、大丈夫? 」
 と、尋ねてみたが雅は無言だった。上目遣いをしたまま軽く頭を振って当たっていなかったことを伝えてくれた。マスクで隠れていて雅の表情を確認しようとも目元しか見ることができない。
 バッグが当たったのではないのなら、一体何が気になっているのだろう。こちらをじっと見つめている。どうしたのかと思い、顔だけ少し近づけ「みや? 」と名前を呼んでみた。
 今度は視線を逸らされ、胸あたりに雅が頭突きをしてきた。
 これはちょっと苦しかった。背中は相変わらずたくさんの人の圧力がかかっていたし、支柱を掴んでせっかく作った息継ぎの場所を塞がれたら腕に込めている力が無駄になる。
 「え、具合悪い? 」
 立ちくらみか何かがが起こって具合が悪くなったのかと思い一瞬心配したが。雅はお礼を口にした。
 「ありがとう」
 周囲では何度かうめき声が上がっていた。加速していた電車がブレーキを掛けると一方へ圧力がかかってくる。次で降りるから、この窮屈さからもあと少しで解放される。図らずも溜息が出てしまった。ドアが開くまで雅は私の胸に額を押し当てたままじっとしていた。時々、私の服を噛むみたいに笑いを堪えていた。

471 :熊井ちゃんの仕業 :2015/01/22(木) 23:53

 ◇ ◇ ◇


 
472 :熊井ちゃんの仕業 :2015/01/22(木) 23:54

 電車から降りると人ごみから逃げ出すようにホームを速足で移動した。二人とも息がぴったり合う歩幅で改札へ向かう。
 普通に歩くことができるようになっても雅は私の腕と自分の腕を組み、離れなかった。
 「熊井ちゃん、カッコ良すぎるんだよ」
 雅は酔っ払いみたいに顔を赤くしながら私の肩を叩いてくる。お仕事の前なのに夕ご飯にお酒でも飲んだのだろうか。
 「ヤバイ、めっちゃ照れた」
 飲酒の所為で赤ら顔になっているのではなかったらしい。マスクを少しずらして自分の手の甲を頬に当てて雅が熱を冷まそうとしている。
 「壁ドンじゃん」
 「壁ドン? 」
 壁ドン、といえば。映画とかマンガで有名なあのシーンだと頭では分かっているが。そんなシチュエーションがいつ起こったのか心当たりはなかった。
 「いつ? 」
 「さっき、満員電車でみやを守ってくれたでしょ」
 そう言われると、雅を守った形になるのかもしれない。でもあれは、次の駅で降りるのに人の波に押されて降車できなくなるのが嫌だっただけだ。しようと思ってしたのではなく不意の行動だったが。された当人がそう言うのだからあれは壁ドンだったのだ。
 「あぁ」
 私の間の悪い返事に雅は「もう、熊井ちゃん。かわい過ぎる」と届かない手を伸ばして頭を撫でようとしてきた。
 大人しく少し頭を下げて撫でられると、雅は「よしよし」と満足げな様子だった。
 カッコいいと言ったり、かわいいと言ったり。雅はちょっとしたことでも人を褒める。今の自分の身長も誇らしいと思ってはいるが。本当は雅ぐらいの女の子にずっと憧れていた。カッコイイと褒められれば嬉しいし自信にもなる。ただ、憧れはまた別の話で。明るい性格も含め、雅みたいな女の子になりたかった。
 「壁ドンいいなぁ」
 と、なんとなく口にしてみた。
 「分かった、みやがしてあげる」
 張り切って雅は言ってくれたが、私と雅では大分高さのある踏み台を用意しないと無理だろう。踏み台に乗って格好つけている雅を想像したらちょっとダサくて思わず笑ってしまった。
 「なんで笑うの。熊井ちゃーん」
 「期待してるよ。みやの壁ドン」

473 :_ :2015/01/22(木) 23:54




 
474 :_ :2015/01/22(木) 23:54




 
475 :寺井 :2015/01/22(木) 23:55




以上です。
476 :名無飼育さん :2015/05/03(日) 00:59
更新お疲れ様です

ポンコツ構成員や謎のれいれいルー大柴口調に笑いましたが続きを読みたくなります
ぜひ続編を…
477 :寺井 :2015/07/03(金) 23:52
更新しまーす
須藤茉麻ちゃん視点
登場人物は、須藤さん、ちょっとだけモーニング娘。'15。

お誕生日おめでとうございます!
須藤さんも23歳かぁ。
 
 
478 :GREEN_ROOM :2015/07/03(金) 23:53

 ◇ ◇ ◇


479 :GREEN_ROOM :2015/07/03(金) 23:53

 同じようでまったく違うこと。10年以上、通い慣れた稽古場も顔ぶれが違うと部屋の大きさが広く感じられた。出演者の人数でいえばこれまでよりも大勢だ。いつもの壁、いつもの天井、いつもの床。改装工事をしたわけでもないのに知らない場所へ来た時のようにほんの少し不安を覚えた。
 稽古場の中央ではモーニング娘。'15の子たちがレッスン着姿でセリフを言い合っている。出演しない場面なので私は壁に寄りかかってお稽古の様子を眺めていた。
 台本を持ちながらお稽古をしている出演者はほとんどいなかった。お守りみたいに側には置いてあるものの演出家さんや他のスタッフさんが厳しい視線を送る中、セリフは全部頭に入っているみたいだ。みんなすごいなぁ、と後輩たちを素直に尊敬する。自分たちの出来が悪かった、などと比べるわけではない。ただ、一緒に演じている後輩達の飲み込みの速さは素晴らしいと思った。

480 :GREEN_ROOM :2015/07/03(金) 23:54

 * * *

 「まーちゃん」
 無意識だった。その呼び名に返事をしていた。おそらく佐藤優樹ちゃんを呼んでいたであろう相手は石田亜佑美ちゃん。返事をした私を見て目を丸くしている。
 「はーい」
 わざともう一度返事をして亜佑美ちゃんを見つめる。
 須藤茉麻。20年以上前から私はずっとまあちゃんだ。亜佑美ちゃんが何か言うよりも早く、佐藤優樹ちゃんが後ろからタックルをしてきた。
 「須藤さんはまーちゃんじゃなーい」
 まーちゃんは、まーちゃんだ、と叫びながら優樹ちゃんがけらけら笑っている。
 「まーちゃん」
 と、優樹ちゃんが呼ぶので「はーい」と返事をすると呼んだ相手が大笑いする。くっ付いたまま笑うので、優樹ちゃんの笑いの振動が伝わってくきてくすぐったい。2、3回それを繰り返していると「すみません」と、何故か亜佑美ちゃんが謝った。
 「どーしてあゆみんが謝るの? 」
 優樹ちゃんは思ったことを口にするのが素早い。
 だって、と亜佑美ちゃんが言葉を繋ごうとするも答えあぐねている。「須藤さんがまーちゃんじゃないのにはーいってまさが返事する前に言っちゃうから須藤さんが悪いんですよ」。と、何がそんなにおかしいのかさっぱり分からないが笑いながらおしゃべりするので何を言っているのか判断つかない部分もあったけれど。優樹ちゃんはそんなこと伝えたかったんだと思った。
 「まあちゃんもまあちゃんだから。まあちゃんも悪くないと思う」
 「何言ってるのか意味分かりません」
 本当に、優樹ちゃんは素直に思ったことを口にする。
 「まーちゃんがまーちゃんなの」
 「まあちゃんもまあちゃんだもん」
 「あゆみーん。まさがまーちゃんなのにー」
 私から離れたかと思うと、優樹ちゃんは亜佑美ちゃんに泣きついていた。
 「あゆみんのまーちゃんまさだよね」
 二人の仲を窺い知るには十分のセリフだった。
 後輩もできて、優樹ちゃんも随分大人びたと感心していた。しかし、体の小さい亜佑美ちゃんにすがるように尋ねる優樹ちゃんは胸がきゅんとしてしまうほどかわいらしかった。
 「もー、まーちゃん」
 呆れたように、亜佑美ちゃんは優樹ちゃんを呼んだ。その言葉に甘さはなく、「ロッカーから物が出てるからきれいに片付けて」と要件を伝えていた。

481 :GREEN_ROOM :2015/07/03(金) 23:54

 * * *

 お稽古中の真剣な様子と、そうではない時のギャップに安堵するような気持ちになった。この子たちも普通なんだ。この子たちも、ということは私たちのことも含まれる。飲み込みの速さは比べ物にならないかもしれないけれど。ベリーズのメンバーも、お仕事を真剣に取り組んだり、メンバー同士でふざけ合ったり目の前の後輩達と同じようにうちらにとっては普通の毎日を過ごしていたんだった。

 今はまだ一人でいることに慣れなくて、不安を感じるのも本音だけれど。寂しいとは違う感じだった。これまで過ごしてきた普通の毎日を無駄にしたくないという気持ちと。今を頑張ろうっていう必死な気持ち。こぶしファクトリーのメンバーと作った作品も、今回の作品もきっと。Berryz工房として出演した作品と同じくらい思い入れの強いものになる。
 千秋楽を迎えてもないのにベリーズメンバーにも思ったことのない"ありがとう"って気持ちがお稽古中から込み上がってきていた。こうして同じ舞台に立てることへ感謝の気持ちが溢れてくる。年の所為かもしれない。

 「どぅーがいなーぃ」
 控室でマンガを読んでいたら、そんな声が聞こえてきた。
 通り過ぎるかと思いきや、「どぅー! 」と、返事をしてくれるまで何度も叫び続けるようだ。
 「はーい、どぅーはここにいますよー! 」
 また怒るんだろうなぁと予測しながら私はマンガを読むのを中断して"どぅー"こと工藤遥ちゃんを探している優樹ちゃんへ向けて大きな声を張り上げた。
 私に気が付いた優樹ちゃんは向こう側でニヤりと含み笑いをして「いたーっ」と、こちらに突進してきた。
482 :_ :2015/07/03(金) 23:54




483 :_ :2015/07/03(金) 23:55




484 :寺井 :2015/07/03(金) 23:58


以上です!
演劇女子部 ミュージカル「TRIANGLE -トライアングル-」での須藤の茉麻ちゃんと、まーちゃんとどぅーが仲良しでとってもかわいかったです。
485 :名無飼育さん :2015/07/08(水) 13:31
トライアングル、観に行けなかったんですが
ブログやツイッターを見ていてもすどぅーさんがモーニング娘。の子たちに愛されてるのが伝わって
そんな素晴らしい世界を須藤さん視点で読むことができて
名無し、嬉しいです
486 :寺井 :2015/07/10(金) 23:20
>>485 :名無飼育さん
コメントありがとうございます。
寺井、とっても嬉しいです。
は!自分もトライアングルを観劇することが叶っておりませんが。見たくて見たくてシュミレーションしていた結果。このような文章ができあがったのでした。
487 :寺井 :2015/07/10(金) 23:22
更新しまーす
清水佐紀ちゃん視点
登場人物は、清水さん、熊井ちゃん、ちょっとだけ徳永さん

こちらのスレッドを立てさせて頂いて5年経過しましたよ。びっくり
488 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:23

 ◇ ◇ ◇


 
489 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:24

 パソコンに向かうと独り言が多くなる気がする。無意識なのに鼻歌を歌っている時もあり、最近は"こぶしファクトリー"の「念には念」がお気に入りだった。
 「わーすれんなあんぶれーらー」
 作成していたテキストを保存して顔を上げると待ってましたと言わんばかりに熊井ちゃんがこちらに近寄ってきた。
 「キャプテンも行こうよ」
 ね、と小首を傾げて熊井ちゃんがにこにこしている。アイドルってすごいな、と言いたくなる満面の笑みに思わず誘いに乗りそうになってしまった。熊井ちゃんはこの後、徳永千奈美ちゃんとお出掛けをする予定らしい。
 会社での用事を済ませた彼女は徳永千奈美ちゃんと私、いわゆるアドバイザーズが仕事をしているフロアにやってきた。黙って、雑誌を読んでいる様子は私よりも千奈美よりも仕事をばりばりこなす出来る女のオーラが漂っている。
 それからスタバの差し入れを持参してきた出来る子に成長していて感動しそうになったが。マイペースな性格だったけれど、もともと周囲に気を配ることが出来る子だったと思いなおした。
490 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:24

 「そうだね」
 と、一度は熊井ちゃんのお誘いに肯定的な態度を取りながらも内心遠慮をしていた。
 「また、今度ね」
 机の上で書類の端を揃え、クリアファイルに綴じながら熊井ちゃんに告げると彼女は口先を尖らせ一変して不満をあらわにした。
 もう少し仕事をこなしたかったのと、今日はお家でご飯を食べると母親に伝えてあったのと。お誘いを断る理由はそれなりにあるけれど、それが熊井ちゃんの納得のいくものかは分からない。
 「キャプテンとも久しぶりにご飯行きたかったのに」
 ℃-uteの横浜アリーナ公演の時も行ったし、その前のアンジュルム武道館公演の時も熊井ちゃんとは一緒にご飯を食べに行った。結構一緒に出掛けている方だと思う。そこまで一緒にご飯を食べに行きたいと言って貰えるのはとても光栄なこと。なんだかくすぐったいような嬉しい気持ちになった。
491 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:25

 * * *


 
492 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:25

 千奈美は7月から始まるハロー!プロジェクトのコンサートについてケータリングの打ち合わせに出ていた。今日はその打ち合わせが終われば帰宅する予定だそうだ。熊井ちゃんは学校を終えた足で会社へやってきた。モノトーンの装いだったけれど、小さめの襟がつているシャツが女の子らしくとてもかわいらしい。社会人の畏まった雰囲気はなくて、抱えている大きな鞄の所為か学生っぽさが新鮮に思えた。
 千奈美を待つ間、熊井ちゃんは私のところへやってきて時間を潰している。しばらくの間は、パソコンとにらめっこをしている私に話しかけることなく大人しくしていたのだが。2、3度視線が合うと空気が和んで熊井ちゃんは取り留めのない会話をし始めた。
 主に、須藤茉麻ちゃんが出演している舞台作品についてのことだった。2パターンある作品の1パターンを見たらしい。私も見に行く予定だったから、内容を話されてしまうとネタバレになる。熊井ちゃんも気を遣って内容について触れないようにおしゃべりしてくれる。中でも力説してくれたのは、「アサダ」を男装で演じるモーニング娘。'15の工藤遥ちゃんについてだった。
 「"くどぅー"がほんとにだんだん男の子にしか思えなくなってきちゃうんだけど。でも、歌うとめっちゃかわいいんだよね」
493 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:25

 そんなこと言われたら、"くどぅー"に注目して舞台を見たくなってしまう。12期の子たちはどうなのだろう。鞘師里保ちゃんも物語の中心人物演じているけどどんな感じなのだろうか。
 「うちのまーちゃんはどうだったの? 」
 いろいろ聞いてみたかったが。まず、須藤茉麻ちゃんについて熊井ちゃんに尋ねると。
 「パパって感じだった」
 そのあとにも、何か説明したかったみたいだけど。ネタバレを恐れて説明に苦慮していた。熊井ちゃんの表情がころころ変化する。ひらめいたような明るい表情をしたかと思えば、あっと何かに気が付いたように口をつぐむ。それから少し難しい表情になり「パパって感じだった」ともう同じ言葉を繰り返した。これは、自分で舞台を観劇するしかないと悟ったところでスマートフォンの液晶画面が明るくなり会社の人から電話がかかってきた。
494 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:26

 * * *


 
495 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:26

 通話を終えてフロアに戻ると、一面だけ窓になっている壁側に熊井ちゃんが立っていた。手には自分のスマートフォンを持っていて外の様子を撮影しているみたいだった。先ほどまで座っていた自分の場所へ戻ったものの熊井ちゃんが何をしているのか気になってしまいもう一度、立ち上がって背の高い彼女の隣へ並んで外を見遣った。
 最近は、夜の7時を過ぎても外が明るい。今の時間帯でも外の様子ははっきり見てとれた。いつもと変わらない風景の何を気に入って熊井ちゃんが撮影しているのか首を伸ばしてきょろきょろ見回してもこれといって目ぼしいものは思い当たらない。しかも、動画を撮影しているらしい。
 「面白いもの撮れた? 」
 熊井ちゃんの横顔は真剣そのものだった。
 「キャプテン」
 見て、と言って熊井ちゃんはとれたての動画を見せてくれた。セピア色に加工された画面を注意深く見続けたけれど15秒ほど外の様子が映っただけだった。
 「ね」
 熊井ちゃんは満足気な様子だった。しかし、私は何を見たのかさっぱり分からなかった。
496 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:27

 「え、もう1回見ていい? 」
 私はもう一度同じ動画を見た。やっぱり何が映っていたのか分からない。
 「これ、何撮ったの? 」
 「屋根」
 ああ、屋根か。納得したかった。屋根が映っていたのは分かった。でも、何故それを撮影したのか理由が分からなかった。
 「そう、ね。屋根だね」
 鈍い返事をすると、熊井ちゃんが驚いたように「分かんないの? 」ともう一度動画を見せてくれる。
 「板チョコみたいに見える」
 屋根の模様が面白いなって思って、こうやって加工すると古いフィルム映画の映像みたいになるでしょ。ハワイの海やパリのエッフェル塔、海外で見る絶景と同じように会社から見えるいつもの景色を熊井ちゃんは説明してくれた。
 夕暮れでセンチメンタルな気分になってしまったようだ。なんだか懐かしい気持ちが込み上がってきた。
 ああ、これが熊井ちゃんだ。
 腰を折って視線を合わせてくれる、この距離感。普通は見過ごしてしまうなんでもないようなことを大事にするちょっと面倒くさい所。Berryz工房として過ごしていた時間がなんだかずっと前のことのように思えた。懐かしむには早すぎる。全然分かんないとか、そうだね、板チョコみたいだねとか。返事をしようとしたけど言葉が出てこなかった。
497 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:27

 * * *


 
498 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:27

 「キャプテーン」
 私と熊井ちゃんの後ろから能天気な声が聞こえてきた。
 「熊井ちゃーん。運ぶの手伝って」
 声がした方へ振り向くと千奈美が業務用の寸胴鍋を抱えてやってきた。
 「まだたくさんあるの! 」
 アイドルってすごいな、と言いたくなる屈託のない笑みで千奈美が鍋をずいっとこちらに差し出した。
 「どうしたの」
 「どうしたもこうしたも。予定変更だよ」
 キャプテンも休憩しよう、休憩。鍋を机に置きながら千奈美はなんだかはしゃいでいた。打ち合わせが終わったみたいだ。けれど、これは一体。
 「ケータリングで出したいものを用意したら予想よりもお店のサービスがよくて。たくさん試食を頂いたから一緒に食べよう」
 だから、熊井ちゃんお出掛けはまた今度。というのが千奈美の予定変更の内容だった。熊井ちゃんはお出掛けキャンセルにさぞがっかりするかと思いきや、隣で万歳をしていた。
 「すごい。千奈美。ちゃんとお仕事してるんだね」
 「もちろん」
 千奈美は力こぶを作って自分の二の腕を叩いてみせた。
 「まだ、あっちにお箸とかいろいろあるから。こっちに持って来よう」
 「他のスタッフさんはもういいの? 」
 「うん、お腹一杯みたい。私はまだ食べられるよ」
 きりっとした表情で千奈美は答えてくれた。千奈美のてきぱきとした指示に従い私と熊井ちゃんは様々な大きさのランチボックスを運んで、ソース類や器など首尾よく机に揃えた。
 現役のハロー!プロジェクトメンバーよりも一足早くケータリングを食べることに後ろめたい気持ちがあるものの美味しそうなお料理を目の前にして食欲を抑えることができそうもない。
499 :GREEN_ROOMその2 :2015/07/10(金) 23:28
 
 「大人はずるいね」
 熊井ちゃんが食前の合掌の時に呟いた。
 「いいんだよ。ちょっとくらい大人だって得をしないと。アイドルはわがままなんだから」
 「千奈美はわがままなスタッフにならないでね」
 真顔で千奈美が私を見た。「よろしく頼むぜ、相棒」とハイタッチを求めてきたので軽く手を合わせると。
 「いただきまーす」
 誤魔化すように千奈美はさっさと食べ始めた。
 「誰か呼ぼうか? 」
 たくさんのご馳走を前にして、3人で食べることに気が引けるのは熊井ちゃんも同じみたいだった。いつも7人で過ごしていたから癖みたいなものだ。7人揃っているか気になるし、ちゃんとみんなに行き渡っているかどうか気になる。もう、その必要はないと確認してから気が付く。この癖が抜けないのは自分だけじゃない、と思うと安心する気持ちになった。
 「今日は、3人で食べよう」
 そう熊井ちゃんに促すと頷いてお箸を取った。
 「残っても大丈夫だから。お持ち帰り用にパック買ってきたし」
 ケータリングについて有能なスタッフとなりつつある徳永千奈美ちゃんにBerryz工房のキャプテンとして私は人知れず安心感を覚えたのだった。
500 :_ :2015/07/10(金) 23:29





 
501 :_ :2015/07/10(金) 23:29





 
502 :寺井 :2015/07/10(金) 23:31

以上です!
キャプテンと熊井ちゃんの身長差と、力関係のギャップがギャグマンガみたいで面白いなって思っております。
503 :名無飼育さん :2015/07/14(火) 23:23
近くにいなくても、でも常にいる、そういう存在なんだと前作・今作を読ませて頂いて改めて感じました。
それぞれの道を歩んでいるBerryz工房メンバーの「今」を描いて下さり、ありがとうございます。
504 :寺井 :2015/07/18(土) 00:28
>>503 :名無飼育さん
こちらこそコメントを頂きありがとうございます。
なかよしこよしだけじゃない、Berryz工房の不思議な(?)関係がちょっとでも文字にできて伝わっていればいいな、と思います。感想は励みになります!
505 :寺井 :2015/07/18(土) 00:29
更新しまーす
カントリー・ガールズ森戸知沙希ちゃん視点
登場人物は、森戸知沙希ちゃん、ちょっとだけももち

カントリー・ガールズを初めて書きました。
506 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:31

 ◇ ◇ ◇


507 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:31

 モーニング娘。12期メンバーオーディションに応募する前からダンスは好きだった。注目されることもなんとなく嬉しいと思っていた。でも、MC中の受け答えや歌うことはダンスと違った。どちらかというとあんまり好きじゃない。普通にわいわい大勢でおしゃべりするのは好きだけど、注目されてましてやマイクを通して話したり、歌ったり、会場で響く音は自分の声じゃないみたいでへんてこりんに聞こえてくる。みんなスピーカーから響いてくる私の声を聞いて変だなって思わないか心臓がドキドキして胸が苦しくなるから苦手意識がずっとあった。

 カントリー・ガールズのメンバーに選んでもらえて、レッスンが始まって、声が小さい、聞こえない、届かないってたくさん怒られた。それでいいじゃん。届かなくていいよって気持ちだった。レッスン中、大きい声を出す努力をしたのも本当。届かなくていいよって気持ちも本当だった。
508 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:31

* * *


509 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:32

 私と、嬉唄と、舞ちゃんの3人は梨沙ちゃんや愛香ちゃんみたいに研修生経験がなかった。ハロー!プロジェクトの中で下積み、みたいな期間がなくて苦労することもある。知っている前提で進めるダンスや歌の先生に教えてもらう時、常に緊張してレッスンを受けていた。研修生で頑張っている子たちよりも出来ないことだらけなのにカントリー・ガールズとして特別な経験は増えていく。めまぐるしい状況の変化についていくのがやっとで自分の不甲斐なさをこれでもかっていうくらいに感じた。

 真剣な表情をするももち先輩にドキっとしたり、休憩時間も全然休憩しない愛香ちゃんと梨沙ちゃんにびっくりしたり。隣を見れば嬉唄も舞ちゃんも一生懸命だった。カントリー・ガールズのみんなに置いて行かれたくないって初めて思った。出来ないことだらけだけど、今日頑張ろう、今は頑張ろう。そんなレッスンが続いた。徐々に褒められることもあって緊張も少しずつほどけて「本番」が楽しみだな、早くカントリー・ガールズを見てもらいたいなって気持ちの変化があった。でも、「本番」は当たり前だけどレッスンとは全然違った。マイクが重たかった。
510 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:32

* * *


511 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:32

 ももち先輩の手にあるマイクはとっても軽そうに見えた。
 「ももち先輩のマイク、ちょっと貸してください」
 勇気を出してお願いしてみたら、軽い返事でマイクを持たせてくれた。さっきまで自分が持っていたマイクと重さはあまり変わらない。すべり止めがついているわけでもない。マイクに秘密があるのではなくて、ももち先輩が力ももちなのかもしれない。
 「握手、してもらってもいいですか? 」
 「1回千円」
 こちらも見ずに大先輩は答えた。今日、千円使うのはちょっと困る。来月まで待ってもらおうかどうしようか迷っている間に。
 「大人なんだから、握手くらいいいじゃないっスか」
 舞ちゃんがケチ!ケチ!とはやし立てて大先輩にちょっかいを出し始めた。
 「舞ちゃん」
 ももち先輩は側にいた舞ちゃんの肩を両手で掴んで向き合うと真剣な表情をした。
 「アイドルは距離を大事にするものなの」
 ももち先輩の言っている意味が分からなかった。ただ、千円で縮まる距離はちょっと安っぽい気がした。
 舞ちゃんは、ももち先輩の顔が近いとのけ反って渋い表情をしていた。
 マイクをスタッフさんへ返す時、自分のマイクとももち先輩のマイクの重さをもう一度比べてみた。やっぱり重さに違いはなかった。
 「ちぃちゃん」
 さっきまで、舞ちゃんとじゃれ合っていたももち先輩が私を呼んだ。
 「マイクを大切にするの、どうしてか分かる? 」
 「壊したりすると大変だからですか? 」
 「そう、大正解。落として壊したら怒られるよ〜 」
 にやにやした様子でももち先輩が脅してくる。大正解じゃないみたいな言い方だった。
512 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:33

* * *


513 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:33

 カントリー・ガールズにとっては2回目のハロー!プロジェクトコンサートが始まる。そして、嬉唄がグループを脱退してからファンの皆さんの前で初めてパフォーマンスをする。
 相変わらずももち先輩のマイクはとっても軽そうに見える。真似をして小指を立てて持ってみたけれど指が攣りそうになったので続けられなかった。

 嬉唄がいなくなって、新曲のセリフは舞ちゃんと私が担当することになった。レコーディングの時から散々棒読みだとダメ出しされ。何が棒読みなのか分からなくて何度も練習したけれど、これでいいのかいまいち手応えが分からない。
 嬉唄は優しいから、辞めないでってお願いしたらグループを続けてくれるんじゃないかなって思ったんだけど電話でもメールでも嬉唄に直接お願いすることは出来なかった。
 嬉唄は優しいから、みんなのお願いを叶えようとしてしまう。
 舞ちゃんは今度、みんなで夢の国へ遊びに行きたいって言っていた。梨沙ちゃんはハワイでファンクラブツアーがしたいらしい。愛香ちゃんはみんなを稲場家に招いてお泊り会をしたいって言ってくれたし。ももち先輩は公園で鬼ごっこがしたいんだって。でも自分は捕まえられたくないってわがままなことを言っていた。

 私は夢の国にも、ハワイにも北海道にもみんなで行きたいし、公園はあまり興味ないけど、みんなで鬼ごっこをするなら楽しいと思う。

 嬉唄のお願いは何だったんだろう。今度、ちゃんと聞いてみよう。

 嬉唄がいなくても、大きな声でワー!ってファンの人たちは言ってくれるのかな。私のお願いは、ワーって大きい声で叫んで、なのかもしれない。
514 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:34

 ももち先輩が歌ったり、しゃべったりするとファンの人たちがフーって言ったり、「ももちかわいい」って言ったり、時にはブーイングが返ってきたり自在に会場を操っているように見えた。マイクを観客席へ向けるとももち先輩のお願いをファンの人たちが叶えてくれる。これってすごいことじゃん。本当にももち先輩は魔法が使えるんだ。


515 :Microphone_of_Love :2015/07/18(土) 00:34

 * * *

 「マイクは魔法の杖なんですね」
 いつかももち先輩から質問されたマイクはどうして大切に扱うのか。その答えを私は見つけた。
 「なかなかいいセン行ってるよ」
 新曲を披露し終えて本当にほっとした。心からよかったと思えた。観客席から聞こえてくる歓声が嬉しかった。
 ももち先輩はマイクを持った手の小指でぐいっと私の肩あたりを突いてきた。
 マイクがなかったら、届かない。
 届かなくていいよって気持ちの自分は知らなかった。歓声を浴びると嬉しい気持ちになるんだって知らなかった。
 「マイクを大切にして、たくさん魔法を使えるようになってね」
 やっぱり、ももち先輩の言っていることはよく分からない。でも、マイクを持ち続ける限り、私の使える魔法は少しずつ増えるのかもしれない。

516 :寺井 :2015/07/18(土) 00:37
以上です。


やっつけです。やっつけたら、タイトルを間違えておりました。マイクの魔法って意味に・・・
517 :寺井 :2015/07/25(土) 00:50
更新しまーす
Berryz工房のお姉さんズです。

お姉さんズを初めて書きました。
518 :あなたのためにできること :2015/07/25(土) 00:51

 ◇ ◇ ◇


 
519 :あなたのためにできること :2015/07/25(土) 00:51

 始めは違和感だらけだった、というのが正直な感想だった。
 2015年3月3日に日本武道館で行われたコンサートをもってBerryz工房の活動は終わった。メンバーだった7人はそれぞれ自分の道を歩き出した。
 私は徳永千奈美ちゃんとともにハロー!プロジェクト・アドバイザーという肩書を得、今もハロプロとかかわりを持っている。グループで活動することに一旦区切りを付けて、7人がどんな新しいことをしていくのかファンの方だけじゃなく家族も友達も、周囲の人たちもたくさんの方が気にかけてくれていた。そんな中、一番初めに進路を明らかにしたのは嗣永桃子だった。
 カントリー娘。を母体としたカントリー・ガールズという新しいグループへ加入し、新人の女の子たちとアイドル活動を継続させている。

 「佐紀ちゃん、どう? 」
 ももの眼差しは真剣そのもので、Berryz工房で活動していた時よりも若干、不安の色が覗いているような気がしている。
 どう、と聞かれてもすぐに言葉が出てこなかった。
 カントリー・ガールズとして歌とダンスを披露する嗣永桃子。アイドルグループを客観的に見ることは割とできている方だと自分では思っていたけれどこのパターンは想像していなかった。ももが、新人の子たちとグループを組んで活動していく。マジか。

 みんな、本当に一生懸命でかわいかった。アンジュルムや℃-uteのようなグループの一体感を出すのはまだまだだろう。モーニング娘。のような高いスキルを要するパフォーマンスではないし、Juice=Juiceのように個々のスキルで勝負してくるのとも違う。かわいくて、守ってあげたくなるような、アイドルらしいパフォーマンスだったと思う。
 白の衣装も、まだ何色にも染まっていない新人らしい初々しさを演出している。
 そこで、うちの嗣永が一緒に歌って踊っている事実は、見ていて背中がむずむずするようなコントを見せられているような、まさに夢のような出来事だった。現実として受け止めるには私にも時間が必要だと悟った。

 「みんな、一生懸命でかわいかったよ」
 「どう、売れそう? 」
 プレイング・マネージャーであるももはパフォーマンスの良し悪しではなく、数字的な戦略についてアドバイスを欲しがっているようだった。
 「売れるといいね」
 「売れるといいね、って。佐紀ちゃんの願望じゃなくて。どんな手段を使ってでも売れなきゃなんないんだから」

 
520 :あなたのためにできること :2015/07/25(土) 00:52

 ももの声のトーンは落ち着き払っていて冗談を言っている風はない。私の逃げ場はなかった。
 確かに、新人の女の子たちだけでは、パンチがない。かわいくて守ってあげたくなるようなアイドルはメジャーインディーズ問わず星の数ほど存在する。ももがいることで話題性はぐっと高くなる。しかし、この強烈なパンチが吉と出るか凶と出るか。願望しか言葉にならなかった。
 「私が、落ち着いたダンスをしちゃうと、他の子がそのくらいでいいやみたいに、手を抜いていいって勘違いしちゃったら困るし」
 ももは本当に真剣で、私もそれに答えたい気持ちは本当で。
 「でも、研修生のような元気いっぱいのダンスをしてもカントリーの色が出ないし」
 Berryz工房として、グループのパフォーマンスについて語り合った時と同じももだけど、もう私は同じ立場ではなくなった。
 「ももの思った通りにすればいいと思う」
 「ちょっと、佐紀ちゃん冷たいー」
 肩を掴まれ、ぐらぐら揺らされた。アドバイザーなのだからアドバイスをしろと、ももが言うのはごもっともだ。
 そして、ももが他人の指図を受けないのも10年以上同じグループに所属していたから身に染みて分かっていた。
 ももの不安を共有してあげられないことに、キャプテンとしての癖で妙に気にかかってしまうけど。できることは少なかった。
 「どう?って、漠然ときかれても答えられるワケないじゃん」
 「率直な、佐紀ちゃんの率直な感想を答えてくれればいいんだって」
 「だから、言ったじゃん。みんな一生懸命でかわいかったって」
 「いや、そういうんじゃなくてだよ。10年以上アイドルグループのキャプテンやってきて」

 ももの新しいアイドル活動に対して、客観的に意見を述べられるようになるのはもう少し時間がかかりそうなので。今、私にできることはももの話を聞いてあげることぐらいしか思いつかなかった。

 
521 :あなたのためにできること :2015/07/25(土) 00:52

 ◇ ◇ ◇

 
522 :あなたのためにできること :2015/07/25(土) 00:53

 自由ってなんだろう。10歳も年の離れた子と一緒にアイドルグループとして新たにデビューしてそんなことを初めて考えた。
 Berryz工房の時は自由だった気がする。何かあれば、茉麻がフォローしてくれた。分からなくなったら佐紀ちゃんに聞けばよかった。どうオチを付けて欲しいか説明しなくてもみやが突っ込みを入れてくれたし、困った時はくまいちょーか梨沙子に振れば場を繋ぐことができた。千奈美とは何も考えずにファンの人たちの前でもケンカをしていたし。今思えば、あれが自由だったのかもしれない。

 カントリー・ガールズのセカンドシングル発売が決定した。レコーディングも終え、ダンスレッスンも終えた。これからはプロモーション期間に入り、夏のハロー!プロジェクトコンサートの合間にカントリーの単独ツアーと発売イベントをこなしていく。
 今回の新曲も、ストーリー性の高いもので私にも重要な役が与えられた。少年少女の恋物語の舞台となる学校へ住み着いたおばあちゃん役だ。やってやれないことはない。しかし手応えがイマイチ分からない。分からない時に頼るのは佐紀ちゃんと決まっていた。

 「佐紀ちゃん、どう思う? 」
 ハロー!のコンサートのゲネプロの時にアドバイザーズの一人である元Berryz工房キャプテンの清水佐紀ちゃんに率直な感想を尋ねた。
 「もも、演技上手くなったね」
 満面の笑みで佐紀ちゃんは答えてくれた。褒められれば嬉しくて浮かれそうになったけどそうじゃない。コンサートを見に来てくれた人たちへどんな影響があるのか聞きたかった。
 「良かった? 悪かった? 」
 悪影響があれば、本番までに修正したかった。
 「よかったよー。みんなかわいかったー」
 昭和時代の怪しいプロデューサーみたいなコメントを貰って、疑いたくなるのは自信のない証拠なのだろうか。佐紀ちゃんなら本当のことを言ってくれると信じていた。悪かったら悪いって言ってくれるだろうし。間違っていたら間違っているって教えてくれる。と、思うのに。最近はどうも様子がおかしい。
 褒めちぎるのだ。嘘を言っているとも思えないけれど。褒められ慣れていない所為で調子が狂って仕方がなかった。

 「良かったって言ってるのに」
 不満そうな私の様子を察してか、佐紀ちゃんは呆れたように笑っていた。
 大きいスタジオでゲネプロを行ったけれど、たくさんの人数が集まると居場所を確保するのもままならない。学校の体育館で全校集会が行われた後、みたいにスタジオ内はざわめいていた。
 今までは気が付いたら、Berryz工房7人で固まって何をするでもないけれど待ち時間を過ごしていたっけ。
 「お正月の時よりは、やりやすくなったかな」
 「うん、見てて分かるよ」
 スタッフ用に用意された長机とパイプ椅子に衣装のまま腰を掛けた。佐紀ちゃんはTシャツにジーンズ姿で他のスタッフさんと同じようにスタッフパスを首から提げていた。いたずらをしてストラップを引っ張ってみたけど相手の反応は鈍かった。

 
523 :あなたのためにできること :2015/07/25(土) 00:53

 「ももがカントリーの子たちを信頼してるんだなっていうのがなんか伝わってくる」
 「ふーん」
 見る人が見ると、そう映って見えるんだ。
 「ベリーズの時は自由だったなぁってやっと分かってきた」
 私が言うと、佐紀ちゃんが鋭い視線をこちらに向けた。
 「お蔭で大変だったんだからね」
 あははって笑ってごまかそうとした。高笑いもむなしく、不覚にも溜息が出てしまった。
 キャプテンの苦労はなんとなく想像していた。私だけではなくマイペースなメンバーが揃っていたBerryz工房と大人たちの橋渡し役はさぞ大変だったろう。それを一人で10年以上背負ってきたプレッシャーはきっとまだ私にも分からない。

 「でも、それがももの味だから」
 呟いた佐紀ちゃんの素っ気無い表情の横顔を見つめていた。
 あれ? これは「ハロー!プロジェクト・アドバイザー」様からのアドバイスなのだろうか。メンバーの誰かから視線を貰ったらしく、表情を崩して軽く手を振ったりしている。
 「ももが緊張してるっぽい時は、他のカントリーの子も余計緊張してるみたいだし」
 ももが楽しそうな時は、他の子もリラックスして歌ってるよ。
 
 緊張は滅多にしていないと自覚していた。心配することがなかったから。なんとかなるって根拠なく思っていた。新しいグループ活動を通してして少し分かったのは、みんなだから大丈夫って無自覚に思っていたんだということ。Berryz工房の7人がいればなんとかなってきた経験が自信になっていた。
 新人の子を大丈夫だって思い込もうとしても、当たり前だけど今までとは違う。失敗してしまったり、私がミスをしてしまったり。落ち込んでないかな、とか。出来るようになったかな、とか。私でも心配することが知らず知らずに増えていた。

 「今年の夏もエンジョイしますよ」
 「負けるな嗣永桃子」
 佐紀ちゃんは私の肩を掴んでぐらぐら揺らしてきた。ゲネプロ終えた疲れた体にはちょっと堪えたけれど、アイドルはファンの人たちが帰宅しおやすみなさいをして夢の中に出てきてもアイドルでいなきゃならない。だからこそ、ゆっくり休むことは大切。「重い」と嫌がる佐紀ちゃんの肩にもたれて目を閉じ、私は暫く休憩することにした。

 
524 :_ :2015/07/25(土) 00:54



 
525 :_ :2015/07/25(土) 00:54



 
526 :寺井 :2015/07/25(土) 00:59
以上です。


キャプテンって偉大だなって思います。ももちはももちなのよ!
527 :寺井 :2015/08/03(月) 23:50
更新しまーす
熊井さん視点。
Berryz工房です。
熊井友理奈さん、お誕生日おめでとうございます!!
528 :Overlap :2015/08/03(月) 23:51

 ◇ ◇ ◇


 
529 :Overlap :2015/08/03(月) 23:51

 まるで、毎年こんな風に過ごしていたみたいに何もない夏がすんなりと馴染んでいた。
 去年までは夏休みになる前からコンサートのリハーサルをしていて、気が付くと夏が終わっている。学校の始業式もおぼろげな記憶しか残っていないし。始業式の前は宿題を終わらせるのに必死で夏と言えば焦る気持ちがいまだに心のどこかでひっかかっている。
 リハーサルに追われることなく、舞台の稽古に苦戦することもなくのびのびと毎日過ごしていると、本当に、まだ2、3cm身長が伸びるかもしれない、と真剣に思った。

 
530 :Overlap :2015/08/03(月) 23:51

 * * *


 
531 :Overlap :2015/08/03(月) 23:52

 『ちょっと、熊井ちゃん! 』
 いつだったか忘れたけれど、キャプテンから突然怒られたことを思い出した。
 『私の身長返してよ』
 私はいつものようにキャプテンを20cm以上の高さから見おろしていた。怒られているのに、しょんぼりとした態度が出しにくくて困る。
 『勝手に佐紀から身長取らないでよー』
 と、胸を張って、背伸びをして顎をこちらに向けるように私を睨んでいた。
 背伸びだけじゃ足りずに、ジャンプもしていた。それでも目線は私に届かず、私の腕を支えにして更に飛び上がってきた。キャプテンは身軽だ。運動神経が良くて羨ましい。
 『ダメだ、届かない』
 頑張って、ジャンプを続けていたけれど息切れをし出したキャプテンが私におんぶをせがんできた。確か、イベント前の待ち時間だったと思う。衣装も着て、メイクもばっちり済ませていた。形が崩れてしまうからおんぶすることを少し躊躇ったのだけど。運動神経の良さでキャプテンはするりと私の背中に乗ってしまった。

 
532 :Overlap :2015/08/03(月) 23:52

 『かっる』
 背中に乗ったキャプテンがとても軽かった感じは今でも覚えている。
 『たっか』
 キャプテンは驚いた声を出していた。
 『熊井ちゃんこんな風にお客さん見下ろしてるんだね』
 せっかくなので、キャプテンをおんぶしたままあちこち移動してみた。廊下へ出て、スタッフさんとすれ違ったり、自動販売機と背比べをしてみたり。キャプテンが楽しそうにしてくれたのでおんぶしてよかったな、と思った。
 『会場の上の方の人も、近くに見えるよ』
 お客さんには気が付かれない、ぎりぎりの場所から開演前の会場の様子を見ていた。
 『そこはあんま変わんないでしょ』
 キャプテンは冷静にツッコミを入れたけれど、私は本気でお客さんとの距離が誰より近いと感じていた。
 
 
533 :Overlap :2015/08/03(月) 23:53
 
 遊び疲れたのでそのまま楽屋へ戻ると。
 『ちょっと、私の身長取ったでしょ』
 今度はみやが言い出した。
 『ちょっとはいいよって言っただけなんだけど』
 『私も取られた』
 『私も』
 みやは普段身長で困っているようには見えなかったし。千奈美と茉麻はどちらかと言えば大きい方のはずだ。
 『私は、自分らくまいちょーにあげたんだよね』
 『は?!』
 ももの、上から目線の発言にみや、千奈美、茉麻が一斉にそちらを見た。息がぴったりだったからちょっと面白かった。
 『やっぱり、アイドルっていってもかわいいだけじゃ今の時代厳しいと思うんだ』
 みんなかわいいよ、千奈美も茉麻も、もちろんみやも。みんなかわいいけど、やっぱりももが一番かわいいじゃん。と、ももが言い出したところで三人は集中力を切らしてしまったようだ。
 ももに飽きた三人が私にむかって、身長を返せと取り囲んできた。
 『ほら最後まで、聞きなさい。聞いてください。お願いします』
 そこへももが割って入ってくるからキャプテンを背中から降ろすタイミングを見失ってしまった。
 『Berryz工房から、一人くらいスーパーモデルがいてもいいじゃんって思わない? 』
 歌って、踊れるスーパーモデルなんて、日本にはまだいないよ、とももがドヤ顔で発言していた。
 『だから、ももはくまいちょーに断腸の思いで身長を託したの』
 かわいさだけは譲れなかったらしい。誰もそこまで話を聞いていなかった。かわいさにも種類があるし、ももからかわいさをあげる、と譲られても受け取るか迷ってしまうのが私の本音だと思った。

 
534 :Overlap :2015/08/03(月) 23:53

 『なんかごめんね、みんなの身長とっちゃって』
 私が謝ると、キャプテンが背中で笑っていた。とても軽かったのでおんぶしていることを一瞬忘れていた。
 『そうだね』
 みやが突然何かに賛同した。
 『やっぱり、一人くらいはスーパーモデルがいないと、お笑い芸人がいるアイドルグループって思われたら癪だし』
 『芸人? 芸人? 』
 誰、誰、とももがわざとらしくきょろきょろ辺りを探していた。
 『千奈美、熊井ちゃんに身長あげる!』
 『みやもあげる』
 『まあも』
 『ありがとう。でももういいよ、これ以上いらないよ』
 『熊井ちゃーん』
 キャプテンがまた、背中で笑っていた。身長を、返してあげられるものなら返してあげたい気持ちだった。キャプテンなんて、ホントにちっちゃくて細くて女の子ーって感じがとても羨ましいといつも思っていた。衣装もかわいらしいものが似合うし、一番年上でも若く見られるし。私とは正反対だ。
 『キャプテン私と代わって』
 私も熊井ちゃんにおんぶして欲しい。
 ヘアメイクを終えたばかりの梨沙子が手を挙げていた。
 『順番だよ、順番。千奈美が次だって』
 おんぶしてあげる、なんて誰も許可していない。
 『はーい。ぶっぶー。重量制限がありまーす』
 ももが梨沙子の次に並ぼうとしたらみやが突然、仕切りだした。
 私はおんぶすると、一切言っていない。
 ぽんぽん、と肩を叩かれキャプテンが自分を降ろすよう私に合図を送った。
 私の背中から離れる時、キャプテンはごめんね、と何故か謝って。それから。
 『熊井ちゃんのカッコイイところ、羨ましい』
 と、意外な言葉を伝えてくれた。
 
 『残念だけど、本番が始まるので移動するよ』
 キャプテンがみんなを誘導してくれてなんとか場が収まりそうだった。
 面白がり出すと、ベリーズは面倒なことも多い。ほっとしていた束の間。
 『あとは、本番が終わってからね』
 だから、キャプテン。私は、おんぶするって言ってないよ。

 
535 :_ :2015/08/03(月) 23:54



 
536 :_ :2015/08/03(月) 23:54



 
537 :寺井 :2015/08/03(月) 23:56
以上です。

ほんとに、のびのびしている熊井ちゃんの身長があと1cmくらい伸びるんじゃないかと期待しております!
22歳もENJOY!
 
538 :寺井 :2016/04/12(火) 00:02
更新しまーす
鈴木愛理さん視点。
℃-uteです。
鈴木愛理さん、お誕生日おめでとうございます!!
539 :One_Day :2016/04/12(火) 00:03




540 :One_Day :2016/04/12(火) 00:03

 通い慣れた学校の風景もこの時期だけはいつもと様子が違う。ここで迎える最後の春が訪れた。このまま、無事に卒業できればの話だけど。
 大学に入ってから4回目の春も穏やかな陽気の中で新入生を迎え、にわかに人口密度が濃くなる。彼ら、彼女らがそわそわと落ち着かない空気を纏って過ごすのもしばらくのこと。1週間も過ぎれば空気が混じり合って誰が新入生で誰が先輩かなんて分からなくなる。順応することが悪いとは思わないけど、もったいないと思ってしまう。他人の目なんて気にせず、自分らしく過ごせればいいのに。

 4年目の4月。就職活動の準備をしない私は大学でしなければならない用事は少なく、それも少し寂しいと感じながらも予定通りお仕事の場所へ向かった。
541 :One_Day :2016/04/12(火) 00:04

 ◇ ◇ ◇


542 :One_Day :2016/04/12(火) 00:04

 マネージャーさんと一緒に控室へ入ると、すぐに舞美ちゃんの姿が確認できた。なっきぃがいるかと勝手に思っていたけど彼女は不在で千聖が誰かと電話でおしゃべりしていた。どうやら家族が電話の相手らしく、呆れて、怒って、爆笑して。一人でやたらと騒がしかった。

543 :One_Day :2016/04/12(火) 00:04
 一緒に来たマネージャーさんが舞ちゃんとなっきぃはラジオ番組の収録をしてからこちらへ向かうと教えてくれた。二人がここへ到着するまで待ち時間があるという意味だった。その間にマネージャーさんが差し入れを買ってきてくれるという。聞いてもないのに、千聖は電話をしながら器用に欲しい飲み物をリクエストしていた。これでマネージャーさんは5人分購入することを余儀なくされたワケで、私と舞美ちゃんにも何が欲しいか尋ねてくれた。なっきぃが好きそうなものと自分でも飲みたいものを頼んで、舞美ちゃんはいつもの飲み物を頼んでいた。舞ちゃんには千聖と同じ物を買ってくることにしてマネージャーさんは席を外した。

544 :One_Day :2016/04/12(火) 00:04

 するべきことは身支度を整えること。でも、慌てて済ませる必要もなさそうなので気になる人の側に寄って行った。舞美ちゃんが、珍しく携帯電話で動画を見ているみたいだった。しかも、ずっとにやけた表情で画面を見つめている。イヤホンをしているので音は聞こえてこない。動物の赤ちゃんの動画でも見ているのかと思うほどの嬉しそうな表情は無視できるものではなかった。

 黙って、画面を横から覗こうとしたけれど舞美ちゃんは近寄っていった私にすぐ気が付いた。動物並みの反射神経で自分のテリトリーへ踏み込んだ者に反応する。ぷちぷちとイヤホンを耳から外して、どうかしたのか舞美ちゃんが私に尋ねる。尋ねたいのは私の方だったのに。

 「何見てるの? 」
 素直に質問をした。
 めちゃくちゃにやけているよ、と指摘はしなかった。

545 :One_Day :2016/04/12(火) 00:05

 「愛理、これ見た? 」
 そして、舞美ちゃんは質問に質問で返事をする。覗き込んだ画面に映っていたのはみやだった。
 「みやの新しいグループの子、決まったんだよ」
 「そうなんだ! 」
 思わず声を上げて驚いてしまった。Berryz工房の活動が停止してから夏焼雅新グループ結成のために、オーディションを去年から行っていたことは知っていた。Buono!のライブも夏に決定していたし、どうなったのか気になっていたけど。詳細は知らなかった。
 「どんな子? どんなの子? 」
 一緒に見よう、と舞美ちゃんが携帯電話からイヤホンを外して自分の隣へ座るように促した。千聖も電話を終えてこちらに来た。私の上げた声に「どうしたどうした」とやってきた。そして画面を見た千聖が開口一番に「みやびちゃんかわいい」と興奮していて、私は千聖がみやを大好きだったことを思い出した。

546 :One_Day :2016/04/12(火) 00:05


 ◇ ◇ ◇



547 :One_Day :2016/04/12(火) 00:06

 私にだって思いがある。
 みやとは、一番最初にデビューした仲なんだから。みやとグループが離れた時の思いは私しか経験していない。Berryz工房が結成された時、私は選ばれなかった。

 田中れいなちゃんと、みやと私とで結成されたあぁ!のグループ活動は継続されなかった。今でも残る、くっきりとした傷跡のようなもの。どうして、私はBerryz工房に選ばれなかったんだろうと何度も考えた。幼かった自分を今では愛しく思えるけれど、当時は自分がダメなんだと思うしか選ばれなかった理由を受け入れる方法がなかった。それでも、あの子よりもわたしの方が、と思った。私の方がふさわしいのに。

548 :One_Day :2016/04/12(火) 00:06

 「かわいい仲間が増えたね」
 舞美ちゃんはそれはそれは嬉しそうな様子だった。
 二瓶有加ちゃんと小林ひかるちゃん。厳密に言えば、ハロー!プロジェクトのメンバーではない二人も、舞美ちゃんからすればみやの仲間は自分の仲間、の感覚なのだ。
 「千聖、この子と同い年」
 「めっちゃ初々しい」
 「超、かわいい。超かわいい。ねぇ。ヤバいって。だって、ヤバくない? 」
 と、千聖が連呼してとにかくヤバいということが伝わった。
 大学の後輩たちと同じように、この二人もいつの間にか初々しさが消えてしまうのだろうか。
 「みやと一緒に歌うのかぁ 」
 「ヤバいよね。みやびちゃんが他の子たちと歌ってる姿、想像できないもん」
 私の呟きに、千聖がまたヤバいと伝えてくる。確かに、今はみやがハロー!のメンバー以外の子たちと歌う姿が全然想像できなかった。

 「楽しみー」
 と、舞美ちゃんがこぼれんばかりの笑みで言う。
 「えー、ヤダー。千聖もみやびちゃんと歌いたい」
 「みやが千聖とはイヤだって断るよ」
 女神の微笑みでひどいことを舞美ちゃんが千聖に告げている。彼女に悪気がこれっぽっちもないのだから言われた千聖は真っ向反論しても軽くいなされるだけだった。
 この時ばかりは、私も千聖の意見と同じだった。あぁ!でも、Buono!でもみやと一緒に歌ってきた。子供の私が駄々をこねている。みやと歌うなら、私の方がふさわしいのに。

549 :One_Day :2016/04/12(火) 00:06

 くっきりと残る傷跡に触れたみたいにハッとした。
 痛みはもうないけど、確かに残っている感覚だ。どうして私は選ばれなかったんだろう。理由を教えられたとしても到底納得できそうもないのに考えてしまう。
 けれど、時間は私をちゃんと成長させてくれていた。選ばれなかったのなら、私が選ぶ。その答えはずっと前に見つけていた。ハロー!プロジェクト・キッズオーディションを選んだのが始まりで、私はそれからずっと℃-uteを選び続けている。それが確かな答えだ。

550 :One_Day :2016/04/12(火) 00:07

 「ちっさーには、おすずがいるじゃない」
 んふっと、最後に鼻息が漏れてしまったのはご愛嬌。
 決める時に、どうしてビシっと決められないんだろう。時間が経っても締まりのない性格は成長できていなかった。
 「はいはいありがとう」
 天然なリーダーに散々からかわれて拗ねていたいた千聖。私の思わぬセリフに少し照れたことが分かった。
 「っていうかさー。愛理はBuono!があるじゃん。みやびちゃんとフツーに歌えるし。ずるい」
 「あー。申し訳ない」
 「ちっさー」
 舞美ちゃんが、言う前から笑っちゃって全然決められなかった。きっと、私の真似をして言いたかったんだと思う。
 ちっさーにはまいみーがいるじゃない。
 私にも同じことだ。私には、千聖もいるし、舞美ちゃんもいる。なっきぃも、舞ちゃんも。もう、この4人は誰にも譲れないと思った。

551 :_ :2016/04/12(火) 00:07





552 :_ :2016/04/12(火) 00:07





553 :寺井 :2016/04/12(火) 00:09
以上です。

Buono!の中で、末っ子になれるのが嬉しそうな鈴木さんがかわいいなーって思っております。
鈴木愛理さん、22歳もエンジョーイ♪
 
 
554 :名無飼育さん :2016/04/12(火) 21:06
更新ありがとうございます。
この視点で触れる、ということにハッとしながら読ませて頂きました。
未来を見つめる眼差しの強さを感じて胸がいっぱいです。
555 :寺井 :2016/08/03(水) 01:39
>>554 :名無飼育さん
コメントを頂きありがとうございます!
普段はツッコミどころ満載の鈴木愛理ちゃんだけど
℃-uteに対しては芯の強さを感じずにはいられません!愛理ちゃん素敵!!
556 :寺井 :2016/08/03(水) 01:41
更新しまーす
嗣永桃子さん視点
登場人物は、清水さん、熊井ちゃん、ももち!

熊井友理奈さん、お誕生日おめでとうございます!!

 
557 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:41


 ◇ ◇ ◇


 
558 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:42

 すべてが思い通りになるからつまんないって思っていた。
 ちょっと語弊がある。次の瞬間がどうなるのかだいたい予測がついてその通りに事が運ぶことがつまらないと思っていた。小学校の教室で自分の発言に投げかけられる容赦ない批判と、それを分かっていても止められない自分の言動。
 その後、引き潮のように一斉に引いていく教室の空気。
 なんとなく、分かっていた。大勢対自分一人になることが。どのような落ち度でこんなにも孤独を感じなくてはならないのか原因は分からない。ただ、一人になることを予想はできていた。

559 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:42

 思えば、弟が生まれてからお家でもそうだったかもしれない。いつもつまらなかった。
 嗣永家の一番のお姫様としてずっと暮らしてきたのに。突然世界が一変した。同じお家の中にいるのにパパ、ママ、そして弟の三人は透明の壁の内側、私だけが外側にいるみたいに感じていた。寂しくて自分を主張すればするほど孤独を味わうはめになった。小さい弟を愛おしく思うと同じくらい憎らしかったのに。透明の壁の中に入れてもらうには小さい弟中心の振る舞いをしなくてはならなかった。
 今でも気が強いことに自負はするものの、年齢を重ねただけ処世術も否応なく身についてきた。年下の面倒を見るのは苦にならない。苦どころか、先生の免許を取得するぐらい得手になっていた。
560 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:42

 あんなに小さかったのにいつの間にか身長もとっくに追い越された弟を、憎らしく思う幼い感情はどこにも見当たらない。少しずつ頼れる存在になってきた彼の成長を姉として誇らしかった。

561 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:43

 人生、何が起きるか分からない。そう思わせてくれたのはハロー!プロジェクトキッズオーディションだ。
 まさか、合格するとは思っていなかった。合格して、次の瞬間から自分が、その場が、どうなるのか予測なんてつけられなかった。

562 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:43

◇ ◇ ◇


 
563 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:43

 夏のコンサートのリハーサルで佐紀ちゃんの姿を見かけるのはいつものことだったけど。佐紀ちゃんの隣にいるくまいちょーの来訪は予想外だった。
 「お疲れ〜」
 と、へらへらした表情でこちらに手を振っている。
 「くまいちょー! どうしたの? また身長伸びたんじゃない? 」
 久しぶりに見る彼女はこんなに大きかったのかと改めて驚いてしまうほど、相変わらずの抜群のスタイルだ。
 「そうなの。もうちょっとで東京タワーに勝てる」
 アイドル界のスカイツリーと自称していたのに、まだ東京タワーに勝っていなかったようだ。
 「ももは相変わらず、アイドルしてるじゃん」
 メイクもしてないし、今はレッスン着姿だ。これのどこがアイドルしてるのか理解できなかったけれど、にじみ出るアイドル感は天性のものなんだと思う。
 「メンバーの若いエキスをたくさんもらってるもんね」
 佐紀ちゃんが意地悪を言うので「あなたも同じでしょう」という意味を込めた視線を送った。
 自称、アイドル界のスカイツリーはお土産を持ってきてくれたらしく「フジヤマクッキー」を手渡された。河口湖へ遊びに行ってきたそうだ。くまいちょーと富士山の組み合わせはギャグみたいだけど計算なのか天然なのか14年付き合っていてもくまいちょーの行動は予測できない。
 14年前の6月30日にハロー!プロジェクトキッズになり、それから8人が選抜されてBerryz工房が結成された。Berryz工房に選ばれてからは特に予測できない場面に数多く出くわしてきた気がする。
564 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:44

 「カントリーの子にもあげて」
 くまいちょーは言いながらクッキーを一箱分私に預けた。カントリー・ガールズにはグループのルールでお菓子禁止令が敷かれている。彼女達なりに真面目に取り組んでいるのでプレイング・マネージャーが率先して禁を犯すわけにもいかない。ただ、くまいちょーの厚意を無下ににするのは憚れる。熊井友理奈からの「フジヤマクッキー」なんて有り難い感じがするのは自分だけだろうか。これを食べたらカントリー・ガールズの平均身長も伸びるかもしれないし。
 「ありがとう」
 Berryz工房のメンバーからカントリーの子たちをかわいがって貰える感覚はなんか変だった。自分が褒められたりするよりもっと、むずむずして身の置き場がないような不思議なくすぐったさがある。
 「一人で全部食べちゃダメだよ」
 分かり切ったことを得意げな様子で注意するくまいちょーには懐かしさを感じた。普段、私が赤ちゃん扱いすることを不満に思う彼女がここぞとばかりにやり返してくる時の表情だ。

565 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:44

 「でも、ももちゃん。ほんと痩せた」
 佐紀ちゃんが私のTシャツの袖を引っ張りながら下から上まで舐めるようにまじまじ見てくる。
 「でも」、ってなんだ。「でも」って。カントリーのメンバーで、なんならマネージャーさんにもくまいちょーからの「フジヤマクッキー」はちゃんと渡しますよ。一人で食べると思われたことが心外だ。

566 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:45

 昔からくまいちょーも佐紀ちゃんも、どちらかといえば体型の変動があまりない二人だった。
 佐紀ちゃんの手を払いのけながら「若いメンバーには気苦労が絶えないからね」と反抗してみせた。
 「それ逆じゃない? 」
 若い子の方が大先輩に気遣っていてかわいそうだとずけずけ言ってくる。佐紀ちゃんはにこやかな表情で私を軽く凹ませようとする。なんだろう、Berryz工房時代の逆襲なのか。
 それをいいことに凹んだ振りをして私はくまいちょーの腰に抱き付く。
 「くまいちょー」
 「おお、ホントだ! 」
 驚いた声を上げて、くまいちょーが私を見る。
 「もも、痩せたね」
 何を言うのか少しだけ期待したのは私だけじゃないと思う。だけどがっかりした分だけお腹の底から笑いが込み上げてくるからくまいちょーの癒しの存在感って唯一無二だと思った。
 「気苦労で痩せたんだって」
 くまいちょーもその場にずっと居たのに佐紀ちゃんはわざとらしく説明してくれている。
 都合の悪いことは私の耳には届かない。
 「髪も伸びたし」
 肩よりも伸びた私の毛先をくまいちょーが指先でくるくる遊ぶ。
 「髪、なんで伸ばしてるの? 」
 「Berryz工房再始動まで切らないって願掛けしてるから」
 口から出まかせってよく言ったものだ。頭で考えるよりも早く言葉が出ていた。
 「えー」
 くまいちょーは変わらない調子で笑っているみたいだった。佐紀ちゃんの方を見ることはできなかった。
 「ずっと動いてるのに」

567 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:45

 くまいちょーは、私の髪を大雑把に二つに分けてツインテールもどきを作ってふざけている。
 「この髪の量でツインテールにしたらホントに隣の人の邪魔になるね」
 ねえ、キャプテン、と同意を求めてくまいちょーがくしゃくしゃの表情で笑っている。
 「本当だね」
 佐紀ちゃんが一体何に本当だと答えたのかは分からない。
 手櫛でくまいちょーが私の髪を整えてくれている。
 「ももも、髪の色変えても似合うと思うけどな」
 「ももちゃん、美容院行くのサボるから無理だよ」
 図星だったので言い返すのに言葉がよどんだ。髪がここまで伸びたのも自分の事になるとものぐさな性質が発揮されるからだった。願掛けなんて大仰だ。
568 :笑いの彗星 :2016/08/03(水) 01:45
 
 「今度ね。カントリー・ガールズで7月の終わりに富士山に登るんだ」
 「そうなの!?」
 くまいちょーも佐紀ちゃんも驚いてくれた。「フジヤマクッキー」はちゃんと頂上に辿り着けるように思いを込めてみんなで食べるのにちょうどよかった。
 「じゃあ、もも」
 真剣な表情でくまいちょーが言った。
 「みんなが頂上に着く頃、富士山に向かって『オーイ』って手、振るからちゃんと振りかえしてね」
 次の瞬間がどうなるのかだいたい予測がついてその通りに事が運ぶことがつまらないと思っていた。それはくまいちょーと出会う前の話だ。
 くまいちょーはつまんないところが面白い。
 佐紀ちゃんと二人でお腹が痛くなるほど笑い合った。

569 :_ :2016/08/03(水) 01:46





 
570 :_ :2016/08/03(水) 01:46





 
571 :寺井 :2016/08/03(水) 01:48
以上です。

熊井ちゃん、大好き。
23歳もENJOY!

 

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