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幽閉(飼育)

1 :ELS :2010/05/06(木) 21:17
BQ中心です。
カプはりしゃ中心
りしゃみや、りしゃももなど

更新は基本週に1回でいきたいです。
よろしければどうぞ。
568 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:42
「あたし、夜は毎日抱き枕にされてたんだ」
 
梨沙子は何でもないことのように言った。
 
「ひどいこと・・・するよね」
 
愛理は思わずぽつりと言った。
 
「先生から検査結果聞いてきた」
 
舞美が梨沙子の傍に座って言った。
569 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:43
「不治の病とか言われた?」
 
梨沙子は朗らかな表情で言った。
 
「りーちゃん、そんな言葉よく出てくるね」
 
愛理はもってきた花束を花瓶に入れながらあきれたように言う。
 
「精神状態は至って良好。特に異常な兆候もないからPTSDの心配もないだろうって」
 
舞美はベッドの傍の椅子に腰掛けて言った。
570 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:44
「何?P・・とか」
 
「PTSD、監禁中の恐怖体験を思い出して夜、眠れなくなったり
 日常生活に支障をきたしたりすること。要するにトラウマになるってことかな」
 
舞美は梨沙子に向かって出来るだけ優しく言った。
愛理は口をへの字に曲げて心配そうに梨沙子を見ている。
 
「あたし・・・別に怖くなかったな。悔しいと思ったことはあったけど」
 
梨沙子は舞美達の話を聞きながら少し雅のことを思い出した。
571 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:45
梨沙子の脳裏には「私からは逃げられない」と言った雅の言葉が
今でも刻み込まれたかのようにずしりと残っている。

雅はきっと梨沙子を怖がらせようとして言ったに違いない。
でも梨沙子は雅のことを今でも全く怖いとは思えなかった。
 
梨沙子は雅の考えていることはものすごく単純に思えていた。
572 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:46
いつまでたっても雅は梨沙子を子ども扱いして支配しようとする。
雅は最初からずっとそうだった。
梨沙子は梨沙子で雅に惹かれて近づいて行ったのにそれを雅は全く分かっていない。

今度のこともいくら監禁されたからって雅を怖いなんて思わない。
何をしようとも雅は雅だ。
雅は梨沙子を監禁する前から何も変わっていない。

それこそ、元々雅はそういうことをやりかねない人だったと梨沙子は思う。

梨沙子はそれを全て分かっていてなお雅のグループと一緒にいることを選んだのだ。
573 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:47
「ナイフで脅されたりして怖くなかったの?」
 
舞美が不思議そうに尋ねた。
 
「実はあれ、偽物だって最初から教えられてたんだ。
 それらしく振舞うように言われてはいたけど」
 
「そっか。それで梨沙子はあんなに冷静だったんだ。
 あたし梨沙子がどうかしちゃったのかと思った」
 
舞美があたまをかきながら笑った。
 
「おかげで梨沙子に後遺症が残らなかったんならいいけど」
 
愛理がそう言って病室の窓のところまで歩いて行った。
574 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:48
「でも、あたしはやっぱり許せないな」
 
愛理がぽつりと言った。
 
窓からは整地された中庭に家々が立ち並び、さらにその向こうに鬱蒼とした森が見える。
森の向こうには西成高校があり、それが自然に出来た結界のように桜花学園と西成高校を隔てている。
 
「あたし、花瓶の水やりかえてくるね」
 
愛理が花瓶と花を持って病室を出て行った。
575 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:49
梨沙子は愛理の後姿を見送った後、ふと舞美の方を向いた。
 
舞美は何かまだ話す事があるような浮かない表情をしていた。
 
「もしかして、あたしがみや達への訴えも取り下げちゃったことも知ってるの?」
「もちろん」
 
舞美は微笑を浮かべて言った。
 
「やっぱ怒ってるよね?」
「まさか」
 
顔を伺うようにして心配そうに言う梨沙子に舞美は笑って答えた。
576 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:51
「怒ってないよ」
 
ほっとした梨沙子の表情が舞美の瞳に映る。
 
「でもそのおかげで雅達、みんな釈放されちゃったよ。本当によかったの?」
 
舞美は梨沙子が傷つかないように出来るだけ優しく言った。
 
「そう」
 
梨沙子は舞美からは目をそらして窓の方角を眺めた。
 
「あたし、今でもどうしてもみんなを憎むことなんてできないんだ」
 
舞美は梨沙子の言葉をしっかりと受け止めるようにゆっくりとうなずいた。
 
「うん。梨沙子らしいと思うよ」
577 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:51
「ちぃはあたしをずっとかばってくれたし、熊井ちゃんは、毎日あたしの髪をセットしてくれたんだよ。
 佐紀ちゃんはご飯作ってくれたりお洋服持ってきてくれたし」
 
梨沙子は舞美を納得させようとしてか少し興奮気味に言った。
 
「梨沙子の言いたいこと分かるよ。私もあの3人は梨沙子の言うとおり悪い人じゃないと思う」
 
舞美がそう言うと梨沙子は安心したような顔になった。
 
「でも、雅と桃子はどうなの?」
 
思わず舞美の口から出た言葉で梨沙子は一瞬で固まってしまった。
舞美はまずかったかなと梨沙子を見て言った。
でもこれを聞かなければ何も始まらないような気がした。
578 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:53
「梨沙子は一番仲がよかったあの二人に裏切られたんじゃないの?」
 
梨沙子はうつむいて白い布団をじっと見ている。
 
「一番信頼してる人達に騙されて欲望のはけ口にされて本当は傷ついてるんじゃないの?」
 
それでも梨沙子はまだ下を見たままだ。
 
「我慢しなくていいんだよ」
 
梨沙子の顔の表情が強張っているのが、横からでも分かった。
舞美は梨沙子を泣かせてしまったかもしれないと思った。
 
「梨沙子、あたしこれでも梨沙子の力に」
 
「舞美、あたし大丈夫」
 
舞美を静止して言った梨沙子は、屋上で助け起こしたときと同じ表情だった。
579 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:54
「あたし、確かにみやと桃にひどいことされた。でもね。
 舞美だから言うけどあたしは監禁されてたときのほうが楽だって思ったこともあったんだ」
 
梨沙子から出てきた意外な言葉に舞美は目をむいた。
 
「みやと桃ってね、三人でいるとずっとあたしのことばっかり見てるの。
 だからあたし、正直二人との距離のとり方が分かんなかった。
 それで遊びに行くときは絶対どちらかと二人で出かけてた。
 でもそうしたらますますひどくなっちゃって。
 みやと一緒にいたら桃が、桃といるときはみやがどこかであたしをじっと見てるの。
 怒ってるんでもなくて冷たいんでもない。
 ただずっとあたしを観察してるって感じ。
 でもその後話しても全然普通で。
 だからあたし、ずっと悩んでた。
 二人が何考えてるのか分からなかったから」
580 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:55
「そうだったんだ」
 
舞美は気づけなかった。
梨沙子に危険が迫っているような感覚はあっても楽しそうにおしゃべりしてる梨沙子の様子しか目に入らなくて、
考えてみればそのすぐ傍に危険は常に存在していたのだ。
 
「でもね。監禁されてからはその悩みがなくなったんだ」
 
梨沙子ははっきりとした口調で言った。
 
「あたしはずっととらわれの身だったわけでしょ。
 だからどんなにいやらしいことされても無理やりHさせられても
 あたしの意志なんて全然関係ない。
 二人への態度とか距離感、考える必要がなくって。
 逆にすごく楽だった。
 だから途中から別に何されてもいいやって思った」
581 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:56
「それで、警察には何もされてないって言ったの?」
 
舞美の質問に梨沙子はうなずいた。
 
「でも、愛理と舞美が助けにきてくれたときは本当にうれしかったよ。
 ずっと信じてた甲斐があったなあってすごく思った。
 これだけは嘘ついてないよ」
 
梨沙子が無邪気に笑った。
それは穢れのない真っ白な笑顔だった。
舞美は梨沙子を心底美しいと感じた。
雅は、梨沙子の体を傷物にできても梨沙子の心までは傷物にはできなかったのだと思った。
舞美が梨沙子の頭をゆっくりと撫でた。
582 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:57
「それより梨沙子に報告があるんだ」
舞美は立ち上がって窓のカーテンを全開に開けた。
まぶしいほどの陽光が部屋の中に注ぎ込んでくる。
 
「ほら。こっちに白と茶色の建物が見えるでしょ」
 
舞美が指し示す方角にはチャペルや教会が備わった西洋式の建物群からなる桜花学園だった。
 
「退院したら、梨沙子が通う学校だよ」
 
「え?」
 
梨沙子は意味が分からないでいる。
583 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:58
「あたしって職権乱用得意だから。修道会の力でさ」
 
舞美は振り返って言った。
舞美の姿は後ろの陽光に照らされてまるで天使のように映った。
 
「梨沙子の桜花への編入、勝手に決めちゃった」
 
舞美が舌を出して微笑んだ。 
 
「あたしって桜花に入れるの?」
 
「そう。転校生扱いでね」
 
その時、愛理が戻ってきた。
手には真黄色に燃えるように輝いている鮮やかな花々を抱えている
584 :幽閉(飼育) :2010/10/28(木) 21:59
「愛理、遅いよ」
 
すぐに梨沙子が口を尖らせて言った。
 
「ごめんごめん。洗面所すごい遠いんだね。迷っちゃった。で、何の話してたの?」
 
「超重要な話!」
 
梨沙子がそう言った後白い歯を見せて笑った。
585 :ELS :2010/10/28(木) 21:59


今回の更新を終わります。
次回が最終回になります。
586 :名無し飼育さん :2010/10/29(金) 00:27
とうとう終わってしまうんですね……
587 :名無飼育さん :2010/10/29(金) 00:45
いよいよラストですか
平穏に終わるのかな?
588 :名無し飼育さん :2010/10/30(土) 23:12
次でラストか、淋しいなぁー。
589 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:18
「梨沙子、喜んでくれてよかったね」
 
愛理は病院のほうを振り返りながら梨沙子の転校について言った。
真っ白な病院は二人がしばらく通いつめたところだったが、
それも明日の梨沙子の退院で終わりとなる。
 
「愛理はすごい心配してたもんね。梨沙子のこと」
 
舞美はしみじみと言った。
590 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:20
そのまま二人は元来た道を並んで歩いた。
愛理は梨沙子と一緒の高校生活を楽しみにしていて、
梨沙子の修道着を選んであげないといけないとか
最初に修道会室を案内しようという話をきらきらとした表情で話した。

舞美はそれをにっこりとうなずきながら聞いている。
 
途中のケヤキ並木にさしかかると、蝉の音があまりにかしましく
思わず二人は無言になった。

舞美は二人で交換学生プログラムで西成高校を初めて訪れた日のことを思い出していた。
あの日は全てが雪に埋め尽くされた静寂な日だった。
591 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:21
舞美は今でも自問自答している。
自分が行くことによって果たして梨沙子を守ることができたのだろうか。
舞美には簡単にはそうは思えない。
責めて愛理の笑顔を見ながら梨沙子もこれからの高校生活を笑ってすごしてくれればいいと思った。
 
「雅達、今頃何考えてんだろうね。りーちゃんはいまだに病院にいるのに。謝りにも来ないし」
 
「来ないほうがいいと思ってるのかも」
 
舞美は上の方を向きながら淡々と答えた。
 
「まあ来たところで絶対梨沙子にはもう近づけさせないし。あいつらりーちゃんにあんなにひどいことして。
 絶対に絶対に許せない」
 
愛理は少し声を大きくして言った。
592 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:22
その時、あれだけ鳴いていた蝉が一斉に泣き止んだ。
その瞬間、山から駆け下りてきたような強い風が後ろから勢いよく流れた。
舞美はその風を目をつむって受け止めた。
その風はざわざわとした自分の心の中を再現しているように感じられた。
 
「愛理の気持ち、すごくよく分かるよ。あたしもそう思う。
 でも梨沙子が退院したらもうこの事件のことを話すのはやめよう」
 
「そんなこと」
 
しばらく愛理は黙りこくって歩いた。
 
「分かってるよ」
 
そして小さな声でぽつりと言った。
593 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:23
「でもあともう一つだけ舞美に聞きたいことがあるんだ」
 
愛理は舞美を見つめて言った。
 
「舞美自身のこと」
 
愛理の人のよさそうな目が一瞬だけ鋭く光った。
こんな視線を愛理が舞美に送ってくるのは初めてのことだった。
愛理と舞美は向かい合って立ち止まった。
 
「舞美は、梨沙子が誘拐された日誰かに階段から突き落とされた。
 あれは事故なんかじゃない。そうでしょ?」
 
再び鳴き始めた蝉の声がまるでリングの上にいるような二人を包む。
594 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:24
「あれは、もういいの。済んだことだし」
 
舞美はわざと愛理から顔をそらした。
 
「そういうことだけカッコよく自分だけで終わらせないでよ。
 どんなに心配したと思ってんの?」
 
愛理が突然表情を変えると強い口調で言った。
あまりの剣幕に舞美は顔からさっと血がひいていくような感覚になった。

心を見透かされて怒られてる。
舞美はまるで自分は悪戯を先生に見抜かれた小学生みたいだなと思った。

それでもその強い口調からは愛理の温かい愛情がこれでもかというぐらい感じられた。
595 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:25
「ごめんなさい」
 
舞美はそう言って頭を下げた。
 
そしてゆっくりと視線を愛理に戻すと愛理のほうが急にそわそわとしだした。
 
「もういいよ。じゃ、なくてあたしは舞美を責めようとしたんじゃないんだけどなあ。
 ああ、あたし何言ってるんだろ」
 
愛理は視線をそらして歩き始めた。
その言葉だけで舞美には愛理が言いたいことが分かりすぎるくらいよく分かった。
596 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:26
「千奈美から聞いたの?」
 
舞美がそう尋ねると愛理はゆっくりとうなずいた。
 
「最初千奈美から直接聞いたとき、ほんとびっくりした。
 千奈美が舞美を階段から突き落とした犯人だったなんて」
 
愛理は梨沙子が解放されてから数日後、突然千奈美に呼び出された。
そして舞美の事件について自分がやったことを話した。

全て雅が考えた計画だったと千奈美は言った。
梨沙子を拉致するにあたって一番厄介な舞美を消しておこうと思ったらしい。
597 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:27
 
「あたしが聞いたときは警察に自首する直前だったみたいだけど。
 それからもういちど千奈美から連絡があってさ。
 舞美が頑として被害届を出さなかったから結局そのまま帰ってきたって」
 
舞美は愛理の言葉を目を閉じて聞いていた。
 
「そっか。それで愛理に本当のことを言ったんですね」
 
舞美は深くうなずいて言った。
 
「あたしのところへ来たとき、あの子はもう十分に罰を受けてました」
 
「でも・・・舞美は全身打撲で・・」
 
「ごめんなさい。愛理には本当に心配かけたし。
 でも私はあの子からは罰するに値する邪悪さは感じませんでした。
 だから警察に被害届を出す必要もありません」
 
毅然と舞美は言った。
愛理は舞美がこんな言い方をする時はてこでも自分の意見を変えないことをよく知っている。
598 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:28
「このこと梨沙子には?」
 
「言ってません。雅が仕組んだこと、分かったら梨沙子も傷つくから」
 
「じゃあ、あの時修道会室の備品が壊されたのも?」
 
舞美はうなずいた。
 
「おそらく、雅が私をおびきよせるために対立する清教徒派をけしかけてやったのでしょう」
 
舞美は淡々と言った。
 
「やっぱり。そうじゃないかと思ってた」
 
愛理は憤慨して言った。
599 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:29
あたりは人影はまばらだった。
歩道の両端にひしと並んだ樹木からの蝉声はいよいよ激しさを増して響き渡っていた。
まぶしいほどだった陽光は木々に遮られて愛理の顔に斑点を作っている。
 
「ただ、私にはまだ気がかりなことがまだ一つだけあるんです」
 
舞美は数歩先に進んでから振り返って言った。
 
「何?」
 
「梨沙子のこと」
 
愛理は首をかしげた。
梨沙子のことについては事件の後遺症を含めてもう散々舞美とは話してきた。
もうこれ以上に何が気になるというのだろう。
600 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:31
「雅はもし、あのまま監禁場所が見つからなかったら梨沙子をどうするつもりだったんでしょう。
 もしかしたら彼女はいずれあの場所が見つかって捕まることまで想定していたかもしれない」
 
「え?どういうこと?」
 
愛理の表情が一転して不安になった。
 
「夏焼雅は梨沙子の体に何か元には戻せない不可逆的な変化を刻み付けるのが目的だったのかもしれない。
 それは体の純潔とかそういうものではなく」
 
「何なの?その変化って?」
 
「多分、それは人の心に関係するものだと思います。
 感情を麻痺させたり価値観や感覚をおかしくさせるもの。
 そうでないと梨沙子の心に後遺症は残ってない説明がつかないのです」
601 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:32
「でも、今のりーちゃんだって明るくて優しくて思いやりもちゃんとあって。
 前と全然変わんないよ。何かが変わっているようには思えないけど」
 
「それは私もそう思います」
 
でも、梨沙子の心には何かの仕掛けが施されているに違いない。
でも舞美はそのことを愛理に言うのははばかられた。

もう愛理には梨沙子のことにせよ自分のことにせよ心配はかけたくない
602 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:32
舞美は、ゆっくりと頭上を見上げた。
空からはケヤキの葉の隙間から幾重にも光線が重なって降りてきている。
舞美は自分の体を浄化するようにゆっくりと手を広げた。
愛理は舞美が一瞬どこか遠くへ行ってしまっているような感じがしてただ舞美を見つめるしかなかった。
 
「今度こそ私の力で何とかしないと」
 
舞美はつぶやくように言った。
603 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:33
もし、舞美が梨沙子の自転車にたどり着いて監禁場所も特定して
梨沙子の救出することまで雅の計算のうちに入っているとしたら。さらに、もし梨沙子を桜花学園に編入させることまでも雅の考えの内のことであったら。舞美は今でも単に雅の手のひらで転がされているだけなのかもしれない。だとしたら今、梨沙子の心の中にはきっと雅の作戦の一つがすでに埋め込まれているのだろう。
 
舞美は、近い未来で自分に襲いかかろうとしている漆黒の姿をした悪魔を体全体で感じた。
それは一瞬ごとに膨張し、無限に膨れ上がりこれまで出会ったことのないような
すさまじい巨悪の力に変化していくのかもしれない。

自分はそれを全身全霊で受け止めることになるだろう。
 
ただ、今のこのときだけは少しでも長い平安が舞美は欲しいと思った。
604 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:34



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翌日、梨沙子は退院の予定時間よりもだいぶ早く自分一人で退院の手続きを終えてしまっていた。
荷物をまとめるころになっても誰も梨沙子の病室には入ってこない。

梨沙子は長袖のパーカーを羽織ると颯爽と病室を出た。
 
家族の人は?心配する看護婦さん達を尻目に早く帰って驚かせてみようって思ってと梨沙子は無邪気な笑顔を大人に向けた。
605 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:35
病院の玄関で梨沙子は久しぶりに直射日光を浴びて思わず顔をよけた。
左手にもっている携帯電話の画面が光が反射して見えにくい。
それでも梨沙子は器用に電話帳をスクロールさせて目的の人物の番号を表示させた。
 
歩きながら呼び出し音を聞く。
 
もしもし。
 
一瞬にして強張ったような恐怖の入り混じった声を聞いた。
梨沙子はそれが少しうれしかった。
 
「もも?」
 
優しく包むような声で言う。
606 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:36
「元気にしてる?あたし、今日やっと退院したよ」
 
桃子はずっと黙ったままだ。
 
「あたし、ずっと桃の絵描いてたでしょ?実はまだあの絵、完成してないんだ。
家に置きっぱなしなんだけどね」
 
「・・・そう・・・なんだ」
 
やっと桃子の応答が戻ってきた。
 
「もも、モデルやってくれるよね?完成するまで」
 
「うん・・」
 
半ば強引な口調の梨沙子に桃子はぽつりと答えた。
607 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:37
病院の前の横断歩道の信号が青に変わった。
かごめかごめの音楽がなって、携帯を耳につけたまま梨沙子は再び歩き始める。
 
「早く、ももに会いたいな」
 
「あたしも梨沙子に会いたいよ」
 
やっといつもの桃の話し方に近づいてきたと梨沙子は思った。
もう頃合だろう。
 
「あの、桃にもう一つお願いがあるんだけど」
 
「何?梨沙子のお願いって」
 
少し桃子の口調が明るくなってきている。

やっぱりこの人は変わらない。

無意識のうちに梨沙子を付け回し、
ことあるごとに梨沙子の全てに関わろうとするこの人の習性。
608 :幽閉(飼育) :2010/11/04(木) 20:38
「みやを閉じ込めてさ。飼育してやろうと思うんだけど」
 
桃子の動きが固まった。
電話を通してだったが梨沙子にはそう確信できた。
 
「協力してくれるよね?もちろん」
 
梨沙子は言った。
 
信号を通った先はもうケヤキ並木だ。
高くそびえる木々は上空からの熱射を防いでわずかに残ったひんやりとした
朝の空気を必死に守っているようだ。

梨沙子の通る場所は真夏と言うのに軽やかな風が流れた。

まるで神の祝福を受けたかのように。
609 :ELS :2010/11/04(木) 20:42

以上で幽閉(飼育)完結です。
年初から書き始めた小説でしたが、完結したときにはもう
今年も終わりに近づいてるんですね。
今まで読んだいただいた皆様。
レスを下さった皆様に感謝です。

今後は、年明けにはなると思いますが、この話の続編とか全然別のりしゃあいりを構想していたり。
どうなるか分かりませんがまた戻ってこようと思います。
610 :ELS :2010/11/04(木) 20:46
>>586
レスありがとうございます。
こんな小説ですがそのように言っていただけるとうれしい限りでした。

>>587
レスありがとうございました。
最終回は少し未来への希望?もこめて書きました。

>>588
レスありがとうございます。
鬼畜な小説ですが、そう言って頂けると名残惜しい感じもして不思議ですね。
また小説でお会いすることがあればよろしくお願いします。
611 :ELS :2010/11/04(木) 20:47


レス流し
612 :名無飼育さん :2010/11/04(木) 22:59
完結お疲れ様でした。
最初からど〜なるかとずっと思って読んでました。毎週の更新楽しみでしたが、また次回があるのを待ってます。
おもしろかったです。
613 :名無飼育さん :2010/11/05(金) 23:28
大好きなお話でした。
完結ありがとうござます!
614 :名無飼育さん :2010/11/06(土) 00:03
すごい面白かったです
最後もどうなるんだろうと思ってましたけど感動しました
615 :名無飼育さん :2010/11/06(土) 23:05
設定がすごい好きでした!!!
またすばらしい小説を読ませてください!!
616 :名無し飼育さん :2011/01/29(土) 18:53
最低だな話も作者も
617 :名無し飼育さん :2011/03/08(火) 23:05
完結お疲れ様でした
お話が始まった当初から読ませていただいていましたが毎更新とても面白かったです
また作者様の作品をお目にかかれるよう祈っています

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