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こぉるど けーす season3〜

1 :名無飼育さん :2009/09/05(土) 09:35
 
真実の扉がまたまた開かれる
 
650 :名無飼育さん :2010/02/21(日) 08:16
(0^〜^)

  ハングリー:チッ、うっせーな!
651 :名無飼育さん :2010/02/21(日) 08:16
( ^▽^)

  アングリー:反省してまーす!
652 :名無飼育さん :2010/02/25(木) 21:22
犯人はアングリー!
お前だ!!
653 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:49
>>652
ありがとうございます。

(0^〜^)<な、なんだって!
654 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:49
 
ぬいぐるみと首なし死体(後編)  ── She's Tired
 
655 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:50
廊下に突っ伏しているところを発見され、
あやしげな人物ということで警察官に尋問されそうになっていた石川梨華を抱えて、
吉澤ひとみは自分たちのスイートルームに戻った。
ひとみは梨華をベッドの上に放り投げると、ソファに座って今日の出来事を反すうした。
そこへハングリーが飛びかかってきた。

「これは密室事件だよね!」
「え、どうして?」
「だってホテルの人が鍵をあけてたじゃない!
 窓からは脱出できないから、犯人はどうやって鍵のかかった部屋から抜け出せたんだろうね!」
「ああ、あれはオートロックっていって、ドアを閉めると勝手に鍵がかかるんだ。
 犯人は普通に部屋を出ていっただけで、わざと密室にしたわけじゃないよ」
656 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:50
大好きな密室事件じゃなくなったので、ハングリーはしょぼんと落ち込んだ。

「日本の警察は優秀だから、明日にでも容疑者が捕まってるよ」
「そんなのつまんない!」

ひとみは、二匹のぬいぐるみをつまみあげて、ベッドに潜り込んだ。
さて、ひとみは、警察はとりあえず怪しい奴を逮捕する能力は優秀だと認識しているが、
正しい犯人を逮捕、起訴する能力が百パーセントあるとは考えていない。
翌日、仕掛けておいた盗聴器で隣室の様子をうかがっていると、
案の定、容疑者を三人ばかりひっぱったはいいが、
どれが真犯人なのか決めかねている様子がありありとわかった。
657 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:50
「あら、三人も捕まえちゃったの?」
「三人が共犯、ってことはなさそうだね」
「だれか一人でがまんしておけば、面倒にならずにすんだのですわ」
「なんだか、ひどい会話をしてる気がする!」

まず一人目は、被害者の顧客だった貿易商を営む男性だ。
具体的な供述はまだしていないが、声が震え体が震え、見るからに挙動不審だという。

「この貿易商というのが一番あやしいわね」
「刑事の見立てでは、はじめは観念したように見えたそうだよ」
「はじめは?」
「被害者の首が切断されていたことを告げられたら、貝のように黙秘してるんだって」
「ひとみ様、その男は被害者の部屋に入ったのですか?」
「最初は認めたそうだよ。でも今は否認してるんだって」
「首を持ち運べるようなカバンは!?」
「ホテルの人が、この男を見てるんだけど、そんなカバンは持っていなかったって」
「どこかで処分したのかもしれないわ」
「どうだろうね」
658 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:52
二人目は、被害者の甥で、借金の申し込みにきていたという。

「遺産目的だね!」
「お金に目がくらんだ人間はろくなことしませんわ」
「それがね、被害者の遺産はその妹──容疑者の母にいくんだけど、
 その親子の仲が最悪で、今は勘当されてるみたい」
「あら、それじゃ遺産はすんなり入ってこないわね」
「母親を殺しでもしたら確定だね!」
「それを待つのは、人間としてどうなのかなあ」
「わたしたちはぬいぐるみですわ、ひとみ様」
「ホテルにいたことは間違いないの?」
「ホテルに来たことは本人も認めている。でも部屋には入ってないって」
659 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:52
三人目は、被害者に雇われていた私立探偵だ。

「職業そのものがあやしいわね」
「どんな依頼を受けていたのかな!」
「なんでも、最近被害者の身辺に不審なことが起こるから、その調査を依頼されたんだって」
「不審なこと?」
「スイートルームに常泊してるんだけど、物の配置が変わってるときがあったんだ」
「泥棒だ!」
「それが、盗まれたものはないんだ」
「部屋には入ったの?」
「でかいカバンを持っているところを、ラウンジで見られている。
 でも、携帯電話に今日の報告は無用だってメールが来て、そのまま帰ったんだって」
「ほんとうかしら」
660 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:52
さて、隣室をあらためて調べていた刑事たちが出ていったので、
盗聴ごっこはおひらきとなった。
それでは遊園地に向かおうと、ラウンジを通り抜けようととしたとき、
ひとみはホテルマンに声をかけた。

「何かありましたか?」
「もう一泊したいんだけど、部屋はあいてますか?」
「ありがとうございます。今ご利用されている部屋があいております。
 さらにご一泊でよろしいでしょうか? 手続きはこちらでさせていただきます」
661 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:52
人間とぬいぐるみたちは、アメリカからやってきた夢の国に迷い込んだ。
ジェットコースターでぐるぐる回っているうちに、ひとみの記憶がだんだん薄れていく。

なぜ、ここは夢の国なんだろうか?
なにをもって、ここを夢の国たらしめているのだろうか?
ほんとうにここは夢の国なんだろうか?
あのキャラクターたちは、ほんとうにかわいいのだろうか?
わたしは、ここに何をしに来たのだろうか?
662 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:53
ジェットコースターから降りて、四つん這いになっているひとみの肩を梨華がやさしく叩いた。

「だいじょうぶ?」
「だいじょばない」
「ほんとうに、ひとみはだらしがないなあ!」
「人は見かけによらないものですわ」
「ああ、危なかった」
「ん、何が?」
「悪魔にとりつかれるところだった」
「まあ、それは残念ですわ」
「天使のほうが悪魔だよ!」
663 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:53
ひとみたちは部屋に戻って、盗聴活動を再開した。
捜査員たちの話によると、首から下に外傷はなく、おそらく死因は頭部だということだ。
そして間もなく、このホテルにほど近い荒地の地面の下から、被害者の首が発見された。

「それで、その荒地の土は、被害者の甥の靴に付着したものと同じなんだ」
「なんだって。それじゃあそいつがやったんじゃないか」
「甥はこの部屋に入った証拠を残している。
 そこのアヒルのぬいぐるみにも同じ土がついてるんだ。
 他の人間が荒地に行った証拠はないし、そいつが残したとしか考えられん」
「本人は何て言ってる?」
「被害者から携帯のメールでそこへ出向くよう言われたと言っている。
 それで荒地に向かったが、待っている途中に取り消しのメールが来たんだとさ」
「それで、見つかった頭部の外傷は?」
「何か硬いもので殴られた傷が、ぱっくりとあいていた。死因はおそらく脳挫傷だ」
「じゃあ……」
「そこの金色の派手な置時計が凶器かもしれん」
「鑑識を呼んで来る。ルミノール反応が……」
664 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:53
ここでひとみはヘッドホンを外し、みなに情報を伝えた。

「重要な情報ばかりだね!」
「メールが来たのは間違いなさそうだけど」
「携帯の履歴とか、携帯電話の会社で調べれば一発だね!」
「だけど、直接は関係ないかもね。
 ちょうどそのときに、頭部の隠し場所にもってこいと考えたのかもしれない」
「首を切り落としたのは、死因を知られたくなかったからかしら?」
「それにしては、あっさり首が見つかってるけど」
「人間のやることは不可解ですわ」

さて、ひとみたちは警察ではないので、犯人を捕まえることは職務ではない。
どうやら借金の申し出を断られた甥の犯行だと、結論が出そうだった。
結論を証明する気にまでは、ひとみたちはならなかった。
665 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:53
「なんだかあっけなかったね!」
「でも、裁判になったらもめそうね」
「どれだけ物証が出てくるかにかかってるね」
「ひとみも裁判員に呼ばれるかもね!」
「関係者になっちゃったから、それはないんじゃないかな」
「支点は首ですわ」

驚いたひとみは、アングリーの顔をぬっとのぞきこんだ。
鎌をぶんぶん振って、そ知らぬ顔をしている。
支点、という言葉を使ったことに、ひとみは眉をしかめていた。
666 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:54
「もしかしてさ、これは悪魔のしわざ?」
「そうですわ。世の悪行はおしなべて悪魔のしわざですわ」
「一般論じゃなくてさ。これは、観念の悪魔?」

いかにも、といった感じで、アングリーは首をたてに振った。
ハングリーは何のことかわからず、短い手を口元にあてて首をかしげた。

「それなら、犯人は決まりだね」
「決まりですわ」

ひとみたちはレストランで夕食をとった。
今度の席は店の一番奥の角だったので、
ぬいぐるみたちはその死角で、値段だけはやたらに高い肉料理を味わった。
667 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:54
夜が更けて、ひとみたちは部屋に戻り、窓をあけた。
警察の人間が立ち去ったことを確認してから、
ひとみは梨華が遊園地で買ってきた細長いバルーンを隣室まで渡した。

「どうしたの!?」
「行きたいんだろ、アングリー」
「恩に着ますわ」
「どうやって中に入るの?」
「そこの換気窓は、昨日鍵をあけておいた」

わけのわからぬハングリーを連れて、アングリーは無事に隣室に侵入していった。
ひとみがソファに座ってヘッドホンを右耳にだけあてた。
左のほうは、梨華との会話のためにあけたのだ。
668 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:54
「どういうこと? 支点って何の話?」
「支点ってのは、まあ、物事の大事なポイントみたいなものだよ」
「首が、今回の事件のポイントってこと?」
「そうなるね」
「首を切断した理由? 首を外へ持ち出すことができる人?」
「そうじゃなくて、首を切断することが何を表しているかを考えるんだ」

またひとみの作り話がはじまったと、梨華は内心あきれていた。
669 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:54
「もうちょっと詳しく話してよ」
「わたしたちは首──というより顔で相手を認識する。
 初対面で初めに見るところは、まず顔だよね」
「あら、胸や足を見る人もいるんじゃない?」
「誰のこと? とにかく、社会生活を送るうえで、重要なのは顔だ。
 首を切断するってのは、その顔を奪うこと」
「アイデンティティが奪われちゃうのね」
「死体をバラバラにして運びやすくするためでなく、首だけが切断されてるから、
 それが意識的にか、無意識にか、目的となってるのは明らかだよね。
 単なるうらみつらみでも、首を切断することはまずしない」
「殺人者にしたら、相手が死ねばそれで済むものね」
「死因を悟られたくなくて隠したわけでも、身元を知られたくなかったわけでもない。
 すぐに頭部は見つかってるし、体が残ってればDNA鑑定で身元はわかる。
 だから、首を切断した意味は、顔を奪うことしか残ってない」
「その言い方だと、殺人と首の切断は別物みたいね」
「実際、別々なんだ」
 
 
670 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:54
二匹のぬいぐるみは、換気窓から室内へちょこんと飛び降りた。
電灯のスイッチに飛びついて、オレンジ色の室内灯が部屋を薄暗く照らした。
死体はとうに運ばれているが、じゅうたんには赤黒い跡がしみついている。

「ねえ、どうするの!」
「うるさいわ、ハングリー」

アングリーは部屋をきょろきょろ見回して、ケース棚を見つけた。
棚の上には、遊園地で売られているぬいぐるみが並んでいる。
アングリーは大鎌をかまえて、棚の上を目がけて跳躍した。
671 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:55
「わっ!」

左端のメスのネズミをのぞいて、
オスのネズミやアヒルのぬいぐるみたちが、左右に飛んだ。
ぬいぐるみが座っていた板に、アングリーの鎌が深々と突き刺さっている。

「何するんだ!」
「やっぱり、人間の首を切断したのはあなたたちだったのね」
 
 
672 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:55
「部屋の中に入ったと確認できてるのは、警察の調べでは貿易商の男だけだから、
 殺人をおかしたのはその人なんだろうね」
「明らかに挙動不審だしね」
「事情はわかんないけど、かっとなって置時計で殴り殺した。
 そんなんだから、びっくりしてそのまま逃げたとみるのがふつう。
 工作も、せいぜい指紋を拭くぐらいしか思い浮かばないでしょ」
「首を切る理由も、運ぶ手段もないわね」
「あとの二人はどうだろう? 部屋の中に入ったことは明確じゃないし、
 やはり首を切る──顔を奪う理由がない。
 金に困ってるから首を切るなんて、どう飛躍しても意味が通じない」
「そもそも、オートロックで鍵かかってるから、被害者が死んだあとじゃ中に入れないしね」
 
 
673 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:55
「おまえたちは、何者なんだ!」
「猫のぬいぐるみだよ!」
「ハングリー、あなたは黙ってなさい。
 あたしが知りたいのは、首を切った理由よ」
「理由? それは、世界をかく乱するためだ」

オスのネズミのぬいぐるみが、落ち着きを取り戻した。
相手を説得しようとする口調になっている。
674 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:55
「人間といっしょに過ごしているんならわかるだろう。
 この世界が、どうしようもなくろくでもないところだってことを」
「それで?」
「だけど、ぬいぐるみの力じゃ世界を変えるなんてことは不可能だ。
 どうあがいても、いや、反抗分子があがくことさえもシステムに組み込まれている。
 人間もぬいぐるみも、実体をつかむことができなく、
 システムが生み出す幻を見せられ続けるだけなんだ」
「だから?」
「唯一の解決方法は、システムをシステム自身に崩壊させることだ。
 そこでは、顔は不要だ。もともと顔なんか持ってないのに、
 顔を持とうとすることがシステムの一部だから」
「ふん、ボードリヤールね」

アングリーは、ふっと顔を小さくふった。
 
 
675 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:55
ひとみは、梨華に話を続けていた。

「となると、首を切断したのは、室内に最初からいたぬいぐるみたちしかありえない」
「あら、アングリーは『生気がない』って言っていたわよ」
「そのへんは、アングリーに詳しく聞かないとわからないね。
 でも、ぬいぐるみなら首を外に持ち出すことができる。
 首を切って、窓からそれを落とし、自分たちも落下する。
 そして荒地に埋めて、配管をよじ登って戻ってきたんだ」
「あ、それで荒地の土がぬいぐるみについていたのね」
 
 
676 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:56
今度は、海兵のコスプレをしているアヒルのほうが声をあげた。

「システムは、それでも壊れないかもしれない。
 でも、かく乱することならできる」
「それで、人間の首を埋めてきたわけ?」
「そうだ。そうすることで、警察の容疑は別人にもかかる。
 容疑者が二人いて、それぞれに証拠がある。
 人間たちは異常な事態を前にして、決定不可能な場面に直面する。
 こうすることで、彼らはシステムの維持ができなくなるんだ」
「やれやれ、今度はドゥルーズなのね」

アングリーが鎌をぶんと振ったので、ネズミやアヒルはぎょっとして後ずさりした。
677 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:56
「あななたちの作り話は、ずいぶん昔のひげもじゃのユダヤ人の亜流よ。
 そんなんじゃ、ちっとも根源的な解決になんか向かわないわ」
「人間にべったりくっついて過ごしているお前たちに、何がわかるんだ!」
「あら、あたしは人間に寄生しているなんて、これっぽっちも思っていないわ」
「そんな言い訳が……」
「だいたい、あなたち自身がそのシステムとやらが産み落としたものではなくて?
 だったら、やることは他にもいくらでもあるでしょ」

反論しようとして、ぬいぐるみたちは黙った。
そして十体ほどのぬいぐるみがひそひそと相談をはじめた。
アングリーは鎌を肩にかついでそれをにらみ、
ハングリーは「ふわぁ」と大きなあくびをした。
678 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:56
「わかったよ、僕たちは、自分ができることをやるよ」
「あら、そう。じゃあ行きなさい」

ぬいぐるみたちは窓をあけて、次々と飛び降りていった。
ハングリーは窓をのぞいて、様子をうかがった。

「遊園地のほうへ向かってるよ!」
「破滅への道とも知らずにね」

アングリーはにやりと笑い、再びケースのほうを見すえた。
 
 
679 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:56
「でも、どうしてぬいぐるみがわざわざ首を切ったの? いたずら?」
「そうかもしれないね。それをはっきりさせるために、アングリーが向かったんだ。
 人間あいてじゃ、話もしてくれないだろうから」

ひとみは、盗聴器でアングリーたちの会話を聞いているくせに、
その内容を梨華に伝えようとしなかった。
観念の悪魔には、ふれないでいるほうが幸せだからだ。

「そろそ戻ってきそう?」
「もうちょっと待って」
 
 
680 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:57
アングリーは、唯一残った、メスのネズミのぬいぐるみを鎌でつついた。
やがて、それはもぞもぞと動き始めた。
ハングリーは、もう何がなんだかわからないので、据えつけの暖炉で遊んでいた。
暖炉に見せかけているが、スイッチを押すとガスが出てきて点火するのだ。

「ねえ、アングリー! ほら、火がついたよ!」
「自分の体を燃やさないようにね。
 ところで、あなた、仲間を放っておいていいの?」
「あんなやつら、仲間にしたのが間違いだったわ」

猫とネズミのぬいぐるみが、距離をたもってにらみあった。
ハングリーはその険悪なムードにおどろき、おろおろと首をふっていた。
681 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:57
「あなたの目的は、さっきのやつらが言ってたようなろくでもないことじゃないんでしょ」
「もちろん違うわ。ぬいぐるみによる、人間の支配よ」
「な、なんだって!」
「死んだ女は遺産とともに妹のところに行くでしょう。もちろん、私たちぬいぐるみもね。
 抜け目ない商売人と違って、妹のほうは温厚なだけの無能な女だから、
 私たちの操り人形にちょうどいいわ」
「それで、莫大な遺産を使って、世界征服?」
「世界にどれだけの数のぬいぐるみがあると思う?
 それらすべてのぬいぐるみが、所有者である人間をコントロールするの。
 組織さえ出来上がれば、そんなこと造作もないことだわ」
「あら、さっきの間抜けな仲間たちの思惑では、甥に容疑がかかるんじゃなくて?」
「甥に容疑がかかっても、妹への相続には問題ないわ。
 どうせ警察も、ちゃんと客の男を逮捕するでしょうし。
 それより、どう? そっちの遊んでいる猫のほうはともかく、
 あなたは賢そうで、力になりそうだわ。私の計画に手を貸さない?」
682 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:57
アングリーは鎌を前につきだし、即座に却下した。

「あなたの計画は、もう頓挫しているのよ。
 あなたの仲間はここを出ていった。
 仲間を統率できず、あたしを説得できないようじゃ、計画なんて絵に描いた餅よ」
「仲間になると、脳みそプディング食べ放題!?」
「あんたは黙ってなさい」

脳天を鎌でたたかれ、ハングリーはその場で悶絶した。
メスのネズミは、ふうと息をはいた。
683 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:57
「そうね、あなたのいうとおりかもしれない。
 でも、あなたはどう考えてるの? ずっと人間にくっついているつもり?」
「さっきのあいつらもそうだけど、勘違いにもほどがあるわ」
「え?」
「梨華様やひとみ様は人間じゃないの。石川梨華、吉澤ひとみという生き物なのよ。
 そんな不可解な生き物を相手に、あたしは遊んであげているだけよ」
「そうだよ! ひとみはまったくとんでもないやつなんだ!」
「じゃあ、私はどうしたらいいの?」
「自分で考えなさい」

アングリーが背中を向けた。
そこへ、絶望したメスのネズミが突進してきた。
684 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:57
「アングリー、危ない!」
「あら?」

ネズミのぬいぐるみは、アングリーに向かっていったのではなかった。
暖炉風の装置の中に飛び込み、噴出し続けているガスの炎に全身が包まれた。
ハングリーが慌ててスイッチを切ろうとして、間違えて横のつまみをひねってしまい、
炎の勢いがいっそう増していった。
ようやく火を消したときには、暖炉の中には黒焦げの繊維のかたまりが転がっていた。

「焼身自殺だ!」
「ふん。こっちにかかってきたら、首を切り落としてやろうと思っていたのに」
 
 
685 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:58
ひとみはヘッドホンを外し、半ば眠っていた梨華に声をかけた。

「へ?」
「終わったみたいだよ。迎えにいこう」

ひとみは窓をあけて、バルーンを突き出した。
換気窓からぬいぐるみがひょいと顔を出し、バルーンをつたって戻ってきた。

「おなかすいた!」
「さっきお肉食べたばかりでしょ」
「どうだった、アングリー?」
「悪魔は退治してやりましたわ」
686 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:58
翌朝未明、遊園地の一角にある物置倉庫でボヤが起こる。
火はすぐに消し止められたが、その焼け跡から
いくつもの焼け焦げたぬいぐるみの残骸が発見されたことを、ひとみたちは知らない。
かのぬいぐるみたちは、自分たちを生み出したシステム──夢の国を消し去ろうとしたのだ。

「さあ、もう寝ましょ」
「茶番につきあわされて、疲れましたわ」
「いや、ちょっと待て」
「なに、ひとみ!? おやつ食べていいの!?」
「さっき、人間じゃないとかとんでもないやつとか言ってたよね」
「ええっ!」
「盗聴器のこと、すっかり忘れてましたわ」
687 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:58
アングリーは取り戻してきた盗聴器をひとみに渡した。
二匹のぬいぐるみは、軽くおしおきを受けたあと、
昼間に買っておいた脳みそプディングをおいしそうに口にふくんだ。
そして二人はベッドに入り、二匹もその間にもぐりこんだ。
すぐに寝息をたて、夢の中の住人となる。
夢の国は、夢の中でのみ存在しているのだ。
 
 
 
688 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:58
おしまい
689 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:59
          ┌────┐
       ___l l二ニニ二l l ___
     /   └┘   └┘  /|
      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |  |
      | ミヾリノ/゙| .|`ヽ _l^^^っ|  |
      | 〃ヽソ' ゙ヽl .レ::::::+:::::::ヾ |  |
      | (●〜^0)((●▽^ ):) |  |
      | [hANGRY(.&)ANGRY] |/
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
690 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 09:59
(0^〜^)

  ハングリー:ハングリー!
691 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 10:00
( ^▽^)

  アングリー:アングリー!
692 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 10:00
これにて「こぉるど けーす season4」は放送終了です。
今までご愛顧ありがとうございました。

放送リスト
第01話 ぬいぐるみとスイカ割り  ── Sweets Cut Warily
第02話 ぬいぐるみと花火  ── Hang Up A Bean
第03話 ぬいぐるみと夏祭り  ── Not Madly Treat
第04話 ぬいぐるみとカブトムシ  ── Cabin To Moonseek
第05話 ぬいぐるみとしゃぼん玉  ── Sharp Bone Damage
第06話 ぬいぐるみとアサガオ観察日記  ── As A Girl Oath
第07話 ぬいぐるみと密室  ── Missing Sweets
第08話 ぬいぐるみと昔話  ── Moon Cut Shiver Nothing
第09話 ぬいぐるみとお葬式  ── Orthodox Secret
第10話 ぬいぐるみと古屋敷  ── Fool, Young, Sick
第11話 ぬいぐるみと焼き芋  ── Yankee Immodest
第12話 ぬいぐるみと首なし死体(前篇)  ── Cubic Nursery
第13話 ぬいぐるみと首なし死体(後編)  ── She's Tired

4クール52話、ちょうど一年かかりました。
こんな感じかな、と。


(0^〜^) <わたしたちの冒険はこれからだ!

( ^▽^) <次回作にご期待下さい!
 
 
693 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 10:53
次回作と聞いて安心しました
694 :名無飼育さん :2010/02/28(日) 19:24
ぬいぐるみが動くのが目に浮かぶような文章で楽しく読ませてもらいました

次回作も楽しみにしています
695 :名無飼育さん :2010/03/01(月) 23:40
ハングリー?脳味噌プディングあげるからうちにおいで?
696 :名無飼育さん :2010/03/11(木) 21:28
>>693-695
ありがとうございます
アンケートの順位が低くて打ち切り食らいました

(0^〜^)<Au revoir!
 
697 :名無飼育さん :2010/03/16(火) 19:52
えぇーーー!?!!
698 :名無飼育さん :2010/03/17(水) 20:41
ションナ!
699 :名無飼育さん :2010/04/05(月) 23:09
待ってます

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