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ミス・インディペンデント〜MISS INDEPENDENT〜

1 :ほうれん僧 :2008/09/24(水) 21:33
初めて小説書きます。
ふつつか者ですが、よろしくお願いします。

いしよしです。
852 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:13
こんなことしてる場合じゃないのにっ。
他に誰かいないだろうか?
そうだ、まいちんがダメなら保田さんだっ。
保田さんにお願いしよう!

あたしは急いで保田さんのケータイにかけた。

「もしもし!?」
「ちょっと、よっすぃ、急に誰と電話してんのよ?」
「あっ、保田さん?あたし、吉澤です!今大丈夫ですか?」
「もうっ!よっすぃ〜!?」

まいちんには悪いが今はかまってられない。
ゴメン、許せ!
853 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:14
「どうしたの?向こうでいたら二人の声がしたから…」
「あっ、梨華ちゃ〜ん。ちょっと聞いてよ〜、よっすぃってばさぁ〜」
「え!?ダメ?その日はダメ?ちょ、保田さんっ、まだ切らないでっ!」
「ってなわけなの〜。よっすぃ、どんだけ私の事が好きなんだっつーの♪」
「…へ〜」
「保田さ―――ん!!(泣)」

あたしの願いも空しく、保田さんはあっけなく「その日は無理」の一言で
一方的にブツリと電波を遮断しやがった。
あたしは思わずその場にガクッと膝をついた。
854 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:14
「よっすぃ、保田さんと電話してたの?」

聞き慣れたその声にハッとして後ろを振り返った。

「り、梨華ちゃん!?」
「保田さんと何かあった?」
「い、いや。そういうんじゃあ…って、梨華ちゃんこそ、帰ったんじゃなかったの?」
「忘れ物」
「あぁ…そう」

何を忘れたんだろう…
家の鍵?ケータイ?
そう思っていたのに、口から出た言葉は
全然違ったものだった。
855 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:14

「梨華ちゃんって、かわいいよね」

あたしは思わず手で口を押さえる。

あれ?あたし何言ってんだ?
あたしは梨華ちゃんの忘れ物について考えていたはずなのに…
やっぱり、もう限界なのかもしれない。

そして、あたしの思いがけず出た言葉に、梨華ちゃんがどんな顔をして聞いていたのかが気になった。
目の前にいた二人は、目を丸くして顔を見合わせていた。

856 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:15
「ちょっと、よっすぃ〜。なに梨華ちゃん口説いてんのよ」
「え?いや、あの」
「数分前に私のこと誘っておいて、どういうつもり〜?」
「アハハ。よっすぃ〜に口説かれたぁ〜」

まいちんにヘッドロックかけられてるあたしを見ながら、梨華ちゃんが笑う。


857 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:15


かわいいよ。

うん。

かわいくってしかたないよ。

だから

あたしは

笑う梨華ちゃんに見惚れてた―――




858 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:15
「じゃ〜ねー」
「え!?」

あたしは、梨華ちゃんの声で現実に引き戻される。
まいちんが帰ろうとする梨華ちゃんを引きとめるが…

「な〜に?梨華ちゃん帰っちゃうの?飲みにいこうよぅ」
「忘れ物取りにきただけだから。明日も早いしね」
「せっかく久しぶりに三人揃ったのにさー」
「まぁまぁ。よっすぃと二人で楽しんできてよ」
「う〜ん、残念だけどわかったぁ」

なんだよ。
帰えんのかよ。
最近ノリ悪くね?
ホントにちゃんと家に帰ってるわけ?
859 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:16
そんなことを思いながら
手を振り帰ろうとする梨華ちゃんの姿を見てたら、
そのままどこか遠いところへ行ってしまうような気がした。

「バイバ〜イ」

あたしとは違い、まいちんは隣で呑気に梨華ちゃんに手を振り返していた。

860 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:17
「バイバイ…」
「おい、コラ。あからさまにガッカリって顔しないでよ」
「してねーし」
「してるよ〜。なによ、私と二人じゃ不満なのぉ?」

ここは正直に「不満です」と言ってやろうかと思ったけど
それ以上に、その時は一人になりたくなかった。
だから、その後は調子のいいことを言って
まいちんの機嫌を取り、飲みに行った。
どんな話をしたっけな?思い出せないな。

当たり前だ。

あたしは、梨華ちゃんのことばかり考えていたんだから。




861 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:17



七夕まであと二日―――


朝から保田さんの電話で起こされた。
それは、昨日まいちんと飲んだお酒がまだ残っていて
非常に気分の悪い目覚めに拍車をかけた。

862 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:18

「…おはようございます……」

どんなに気分が悪かろうがなんだろうが、先輩である人に
挨拶をしないわけにはいかない。あたしがこの業界に入って学んだことだ。
いや、社会に出れば当たり前のこと。
あたしは酒やけした声を無理矢理でも絞り出す。

「どっから声出してんのよ?あんたホントに吉澤?」
「……ええ。こんな声ですが紛れもなく吉澤本人です…」
「これ以上低い声になってどうすんのよ?あんた一応アイドルなのよ?」
「はぁ…すみません…」
863 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:18
一体、何の用で電話をかけてきたのか?
あたしの声について話があったわけじゃなかろうに。
無駄話に付き合うほど調子がいいわけではなかったので、とりあえず謝っておいた。

「じゃあ…」
「コラコラコラコラ。なに勝手に切ろうとしてんのよ!?」
「…何なんすか?用件は手短に……」
「あんたねぇ〜。人がせっかく心配してかけてやったってのに、どういう扱いよ?」

864 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:18
心配?
なんの心配だというんだろう?
泥酔して帰ってきたことか?
まいちんが呆れて保田さんに連絡でもしたのだろうか…

「あんた、昨日わたしに電話してきたこと忘れたの?」
「あっ」
「その日になにがあんのか知らないけど、あんたから誘ってくるなんて珍しいし」
「あの〜」
「なによ?」

865 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:19

夜に保田さんと会うことになった。
あたしは、詳しいことはまだ言えないが、聞いてほしい話があると言った。
保田さんはそれを聞いて、なぜか少し間が空いた後に「わかった」とだけ言った。
もっと、「なんなのよ、もったいぶってないで今言いなさいよ」なんて
言われるんじゃなかろうか?と思っていたので、保田さんの反応は意外だった。


866 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:19


東京。午前12時の町にあたしはいた。
保田さんに指定された店へと向かう。

どう切り出そうか。
とにかく梨華ちゃんと七夕の日に会えるようになんとかしたい。
果たして、協力してくれるだろうか。
諦めろと言われるだろうか。

あたしは、店に向かう途中であれこれ考えた。
気付けばもう、今日は七夕の前日だった。


867 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:20
「わたしを待たせるなんていい度胸してるわねぇ」
「すいませーん、仕事がちょっと押しちゃって」
「まぁいいわよ。とりあえず座れば?」

あたしより先に着いていた保田さんの向かい側に座る。
さて、どうしよう。

「とりあえず、生でいい?」
「はい」

保田さんが店員をつかまえて生ビールを一つ注文した。
ここは、まず喉を潤しておこう。
あたしは今から重大な発表をするのだ。
868 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:20
「で?なんなの?話しって」
「はい。率直に言います。あたし、梨華ちゃんが好きです」

ブッと、保田さんは飲んでいたビールを吐きだした。
あぁ、人は驚くと本当にこんな反応をするんだ。
あたしは飛んできたビールの泡をおしぼりで拭いた。

「……」
「ビックリしますよね、そりゃ」

ドでかい目をこれでもかっってくらい開けて保田さんはあたしを見据えている。
石にでもなりそうだ。固まってしまう前に全てを話してしまおうと思っていたら
保田さんの方から先に口を開いた。
869 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:20
「わかってたわよ、そんなこと」
「えっ!?」
「わかってたけど……っていうか、なんとなく石川のことで話があるんだろうとも思って
今日は来たつもりだったから。それにしても、なんで今さら、わたしに言うのよ?そんなこと」
「それは…」
「…石川にはもう言ったの?」
「いえ…まだ…」
「でしょうねぇ」
「っていうかっなんで、あたしが梨華ちゃんを好きだってわかったんですか?」
「わかるわよ。あんたの態度見てれば。他のみんなだって、好きだろう、とは思ってなかったとしても
 あんたが石川のこと、すごく大事にしてることは気付いてるわよ」
「はぁ…そうですか」
「…気付いてないのは石川本人だけなんじゃないの?」
「やっぱり!?」
870 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:21
そうか。本人はやっぱり気付いてないのか。
あたしだけかと思ってたけど、他の人が見てもそうなんだ……

「やっぱりって、なにか思いあたる節でもあるの?」
「えぇ…。昔こそよっすぃ、よっすぃって、何かちょっとこう……甘えてくるようなこともあったのに
 今なんて、ぜんっぜんだし。ここ何年かはホントあっさりしたもんですよ、あたしたち」
「まぁ、それなりに石川だってもう25で大人なわけだしね。あんたに甘えてばかりはいられないんじゃない?」
「それはわかるんですけど…」
「で、石川に言うの?あんたの気持ち」
「はい…だから七夕の日に言おうと思ってたんですが…あの人、七夕がキライだということが
つい最近発覚いたしまして」

保田さんは「あぁ、それでこの前電話してきたのか」って顔で
大きなため息をつき、俯きこう言った。


「…石川のこと、大事にしてるから言わないでいるんだと思ってた」



871 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:21

その一言はあまりにも的中していた。

そう。普通に結婚し、子供を産んで家庭を築くことを
彼女が望んでいることは、あたしも知っている。
何度も聞いたから。
あたしだって、梨華ちゃんがそうなって幸せになってほしいと願ってる。
あたしを友人として大切思っていてくれてることだってわかる。
だから、あたしの一方的な思いを告げたらきっと梨華ちゃんは傷つくんじゃないかって思って。
友情として、この築き上げてきた10年という歳月を、あたしの自分勝手な気持ちで
壊すなんてバカげてるとさえ思ってた。
872 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:22
「なんで、今になって言う気になったの?正直、あんたが報われる確率はゼロに近いわよ?」
「わかってます。でも、もう好きで好きでどうしようもないんです。頭から離れないんです」
「…あんたたちの場合、友情が成立してるんだから、それを壊してまであの子に言うわけ?」
「それも考えました。あたしが本当のことを言えば梨華ちゃんはきっと傷つくって。
 でも、それは自分に言い訳してただけなんです。結局は自分が傷つきたくなかったからだって」
「そう…」
「自分が振られるのが怖かっただけなんだって…今は、それよりも正直に自分の気持ちを伝えたい。
 そうじゃなきゃ、ずっと梨華ちゃんにウソついてる自分でしかない……」

頬が冷たい。さっき、保田さんが飛ばしたビールの泡がまだ残っているのか?
いや、違う。頬を伝うのは自分の涙だった。
あたしは、自分が泣いていることにようやく気が付いた。
873 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:22

「わかった。で、わたしは何をすればいいの?」

泣いてる場合じゃない。
保田さんは、あたしの話を聞いて引くこともなく協力してくれようとしている。
石になりそうとか思ってゴメンナサイ。今は菩薩様のように後光が指して見えます。ははぁ〜。

「ちょっと、なに人のこと拝みだしてんのよ。んなことしてないで、わたしに頼みがあったんでしょ?」
「あぁっ!そうですっ!だから、七夕の日、梨華ちゃんと会えるようにしてほしいんですっ」
「はぁ?そんなの自分で言えばいいじゃない?飲みに行こうとかなんとか適当なこと言って
 とりあえず約束取りつけば済むこでしょうが?」
「それが出来ないからお願いしてるんでしょうが。最近、梨華ちゃんあたしが誘っても全然付き合ってくんないんすよぉ」
「それでわたしが誘って石川が乗ってきても、あんた、それはそれでショックなんじゃないの?」
「ゲッ!…そうかも……」
874 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:23
あんたって、ホント馬鹿ね」
「そんな…身も蓋もない…でも、ホントここんとこノリ悪くて。だから七夕を理由にしたら少しは乗ってくるかな〜?とか思ってたんですけどね、当の本人は七夕がキライだときた」
「じゃあ、七夕の日に告白なんて止めたらいいのに」
「もうこの日にするって決めてたんです!決意をこれ以上先延ばしにしたくないんですっ!」
「なんかもう無茶苦茶だなぁ〜」

あきれた様子の保田さんではあったが、最終的には七夕の日に保田さんが梨華ちゃんを
誘い出してくれるということになった。夜の梨華ちゃんのスケジュールは空いているはずだということも
伝えておいた。あたしの誘いは断っても、保田さんの誘いならそう簡単には断らないだろう。
少し悲しい気もするが。いや、大いにショックだが…
この、持つべきものは頼れる先輩、保田さんに感謝しながら
あたしは告白の日に向けて、準備を始めた。


七夕まであと一日―――


875 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:23
あたしは山にいた。
笹を受け取りに行ったのだ。
なにも、こんな山奥まで来なくても良かったな、と思ったのは
近所のスーパーでいとも簡単に笹を手に入れる事が出来るとは昨日まで知らなかったのだ。
でも、せっかく予約までしたし、スーパーで売ってるやつなんかよりも
上等な笹なんだから、と自分に言い聞かせた。
876 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:24

うん。相当立派な笹だよ。
あたしは満足げに繁々と笹を見上げた。
七夕がキライな梨華ちゃんでも、この笹にはちょっとビックリするんじゃないかな?
驚いた梨華ちゃんを想像して顔がニヤついた。

「ねぇちゃん、しまりのねぇ顔してねぇで足元気をつけろよ。泥るんでるからな」
「はいはい、わかってますってぇ〜……って、あれ?」



笹を譲ってくれたおじさんの姿が逆さまになったのを最後に、あたしの記憶は途切れた。




877 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:24



んん…

ここはどこだ?

シクシク…

誰か泣いてる?

ちょっと、待ってよ

泣きたいのはこっちだよ

さっきから全然体が言うこときかないんだから

あたし、寝てる場合じゃないんだよ

梨華ちゃんに会いにいかなきゃ…

梨華ちゃん

逢いたい…逢いたい…





878 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:25
「…ヴヴ…」

わずかに発した声と共に
ぼやけた視界から天井らしきものが目の中に入ってきた。
体を起こそうとするがやっぱり動かない。
かろうじて首だけ動かしたらズキリと鈍い痛みが走った。

「いってぇ……」
「よっすぃ!?」
879 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:25
薄暗い辺りから、聞き慣れた甲高い声が聞こえた。
その声のする方に顔を向けたら、そこには梨華ちゃんがいた。
あぁ、梨華ちゃんだ。すごく逢いたかったんだよ。
でも、なんで泣いてるのさ?どうして?

「バカバカバカバカバカ!!」
「バカになる呪いでもかけにきたの?」
「バカッ!!」

目に涙を溜めながら、あたしにそう吐き捨てた梨華ちゃんはベットの端でうっつぶしてしまった。
あたしはというと、ようやく視界がハッキリしてきたので周りを見渡した。
880 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:26


ん?ちょっと、なによ?

ここ病院じゃね?どゆこと!?




881 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:26
「っていうかっ、今日、何日だよ!?」

あたしはガバっとベットから起き上った。
なんだ、動くんじゃねぇかっ
と思った矢先、全身に激しく痛みが響いた。

「ヴゴーっ!…い、いてぇよぉぉ」
「ダメだよっ、まだ起きたりしたら。安静にしてなきゃだめ!」

ベットにうずくまるあたしの背中を優しく撫でながら
「お願いだから無理しないで」と梨華ちゃんはあたしを宥める。
それでもあたしはまだ梨華ちゃんに詰め寄った。
882 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:26
「ねぇっ、今日は何日?あたしの笹は!?」
「…今日は…もう7月8日だよ…」
「えぇ!?そんなぁぁぁ〜……」

あたしは項垂れながら、またベットにうずくまってしまった。

883 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:27

あぁ…そうだ、思い出した。

七夕の前日、あたしは山に笹を取りに行ったんだ。
そこで、おっさんの忠告を適当にあしらっていたら
本当に足をすくわれて、すっ転んだんだ。
で、意識を失って今日まで眠りこけてたってわけか。
ああ、梨華ちゃんの言うとおり、あたしって底抜けの大バカ。


884 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:27

「ゴメンね…」

梨華ちゃんがそう言いながら、酷く落胆して丸まった背中のあたしの後ろから
そっと優しく抱きしめる。
なんで、梨華ちゃんが謝るのだ?
ホントにバカなんだよ?あたしなんて。

885 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:28
「よっすぃが、そんなに七夕が好きだったなんて知らなかったよ」
「ん?」
「一人であんな遠くの山奥にまで行って、笹を取ってきてまで七夕したかったなんて…」
「へ?」
「そんなに七夕が好きなのに、よっすぃが一生懸命七夕の話ししてる時、ちゃんと聞いてあげれば良かった。
 それなのに、わたしはあんな風に水を差すようなことばかり言って」
「ちょ、っちょっと、梨華ちゃん?」
「ホントにごめんね……」

886 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:28

梨華ちゃんの涙が、あたしの首筋を伝う。


そうじゃない、

そうじゃないよっ

梨華ちゃん!




887 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:29
「違うよ、梨華ちゃん」
「え?」

あたしは振り返って、梨華ちゃんの手を取った。
そして、まっすぐに目を見つめる。


「あたしが好きなのは七夕なんかじゃない」

「…」

「あたしが好きなのは、梨華ちゃんだよ」



暗くて顔がよく見えないから、梨華ちゃんが今どんな表情なのかわからなかった。
でも、ビックリしてるんだろう。
その証拠に、梨華ちゃんは何も言い返してはこない。
7月8日になっちゃったけど、伝えたかった気持ちをあたしは全て言うことにした。
888 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:29
「ずっと、ずっと好きだった。同期として今の仕事を始めてから、この気持ちに気付くまで
 そんなに時間はかからなかったよ」
「よっ…」
「わかってる。まだ何も言わないで。梨華ちゃんが王子様みたいな人と結婚してお嫁さんになりたいって
 ことも全部承知の上で、あたしは自分の今まで思ってたことを梨華ちゃんに伝えたいんだ」
「…」
「冗談なんかじゃないよ、ホントに、ホントに梨華ちゃんが好きなんだ。忘れようって思っても
 考えないようにしようって思ってもダメなんだよ」
「…」
「梨華ちゃんのことばかり考えてしまう…」

自分でそこまで言って、我ながら気持ち悪いなぁって思った。
そんなキモイことを言われている梨華ちゃん本人は尚の事だろう。
889 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:30
「何も言わず、このまま梨華ちゃんの幸せを願って生きていこうと思ったりもした。でも、友達としてあたしを
思ってくれてる梨華ちゃんと、この気持ちを隠したまま傍にいることが辛くなった。だから、七夕の日に全部
告白しようって思ってたんだ」
「…そう…だったんだ」
「うん…。ごめんね?気持ちわりーよね…。こんな風に思ってたヤツが隣に居たなんて」

梨華ちゃんは俯いてしまった。

あぁ…やっぱり傷つけてしまった。
そりゃそうだよね、ずっと友達だって思って奴が自分のことをそんな風に見てたなんて知ったら
裏切られたって思って当然だ。
やっぱり、こんな自分の気持ちなんて墓場まで一緒に持っていくべきだった。

890 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:31

あたしは、梨華ちゃんの手に重ねていた自分の手を外した。

そして、自嘲気味に少し笑いを交えてこう言った。

「へへっ…もう、友達としても無理…だよね……」
「…なんで、なんで七夕の日に言おうと思ったの?」
「あぁ…どう考えてもフラれるだろうなぁ〜って思ったから、フラれた後に願い事しようって思ってたんだぁ」
「なんて?」

891 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:31
そう。

あたしは、一人で七夕祭りをするつもりでいた。

その願いですら、自分勝手なものだけど
神さまだってそのくらいは許してくれるような気がしたんだ。


「生まれ変わったら、梨華ちゃんがあたしのことを好きになって、って。ハハっ、バカみたいでしょ?
 さっき、梨華ちゃんが言ったとおり、あたしはバカなんだよ」

892 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:32

「…ほんと、よっすぃってバカだよね……」


グサっときた。
わかってはいるけど、やっぱり本人から言われると相当こたえる。
あ〜あ、マジでこのまま頭打って死んどけば良かったかな?

「あっ、でもさっ、あたしが用意しようとしてた笹、マジですっげ〜のよ?その辺の安物と違ってさ…
 ……梨華ちゃんにも見せたかったなぁ…」

893 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:33
し〜ん、と静まり返る病室。
相変わらず梨華ちゃんは下を向いたままで
あたしは、もう、これ以上なにも話しかけることなんて出来なかった。
すると、急に梨華ちゃんが話し始めた。

「どうして?どうしてそんなにバカなの?」
「…もう、あんまりバカバカ言わないでよ。わかってるよ、自分がバカだって十分すぎるくらいわかってるって」
「ううん。よっすぃは全然わかってない」
「なに?なんでさ?それこそ梨華ちゃんの方がわかってないんじゃないの!?」


売り言葉に買い言葉。

なんでケンカしちゃうんだろう?

それとも、消えゆく友情の前なんてこんなものなのかも。
なんて思っていた。

894 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:33

「生まれ変わる必要なんてないよ」
「…」
「なんでそうやって、自分の中で勝手にわたしの気持ち決めつけちゃうの?」
「り、梨華ちゃん?」

カーテンの隙間から、月の明かりが差し込んだ。
あたしと、梨華ちゃんの視線が互いを捉える。

895 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:33


「よっすぃが好き」



梨華ちゃんがそう言ったと同時にあたしの胸に飛び込んできた。
あたしは何が起こったのか、全く理解出来ないでいた。
しがみつくようにして、梨華ちゃんはあたしを抱きしめる。

896 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:34

「好き、大好き。わたしだってずっと好きだった」
「う…うそ……」
「うそなんかじゃないよっ。」
「マジ…で?」
「マジ…だよ」

互いに顔を見合わせる。
でも、あたしはまだ信じられない。
こりゃー、やっぱりまだあたしは頭打って昏睡状態なんじゃないのか?

897 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:34

「大丈夫だよ。夢なんかじゃないよ」

梨華ちゃんがそう言って、あたしの首筋に顔をうずめた。
梨華ちゃんの優しい香りが、あたしを包む。
あぁ…これは夢なんかじゃない。

898 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:35


「好きだ…」



今度はあたしが力を込めて梨華ちゃんを抱きしめた。

柔らかい、そして温かい。

ずっと感じたかった温度が、今自分の中にいる。


「ずっとこうしたかった…」
「わたしも…好きよ…よっすぃ」


899 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:36

そして


月明かりの中で


あたしたちは


長い長い


キスをした








Fin

900 :7月7日、その夜に :2010/07/12(月) 19:36



(おまけ)




「ねぇ、前に言ってたよっすぃしか知らない秘密ってこのこと?」
「うん。そう」
「わたし、知ってたよ」
「うそっ!?」
「ほんと〜。フフッ」
「え?え?いつから?いつから気付いてたの?」
「教えなぁ〜い」






ホントにFin

901 :名無飼育さん :2010/07/16(金) 22:50
わっ!更新きてた!

よっすぃ〜ヨカッタね☆

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