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ルーズボール2

1 :clover :2007/09/16(日) 21:39
容量がいっぱいになってしまいましたので新スレ立てます。

前スレ 
「ルーズボール」
ttp://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1171380256

422 :LOVE :2009/04/01(水) 00:49

3.エロス
423 :LOVE :2009/04/01(水) 00:50
横浜での仕事が早く終わりそうだったので僕は彼女に電話をした。

「学校終わった?」
「うん。終わった。吉澤さんも仕事終わったの?会えるの?」
「まだ、でも早く終わりそうだから。」
「どこ行けばいい?」
「こないだ、言ってただろ。横浜行きたいって。」
「うん。言った言った。じゃ、今から行く。」
「中華街よるか?」
「いいの?」
「いいよ。じゃぁ。関内の南口で待ってて。」
「うん。わかった。」

残った仕事を終えた僕は車を関内へと走らせた。
車に乗る前にメールを確認すると彼女から既に着いているという
内容のメールが届いていた。
424 :LOVE :2009/04/01(水) 00:50
彼女と出会ったのは2年くらい前だっただろうか。

渋谷でプラプラ歩いている僕に彼女は「お兄さん。暇、ですか?」と声をかけてきた。
それが彼女と出会った最初だった。

暇だった僕は彼女を連れてまたプラプラ歩いた。

「君、いくつ?」
「18。」
「僕、23だよ。君くらいの子って同世代と遊ぶのが楽しいんじゃないの?」
「そういうの特にないけど。」

彼女はそう言って僕と腕を組んで歩きだした。

「どうして僕?」
「んー。なんかすごくセクシーだったから?」
「なんだそれ。」
「ほら、抱かれたい男ランキングとかあるじゃん。あんな感じ。」
「僕が凄い悪い人だったどうするの?危ないじゃんか。」
「そういうの心配してくれる時点で悪い人じゃないよね。」
「お兄さん、なんていう名前。」
「吉澤。」
「吉澤さんか。私は亀井絵里。」
「亀井さんは、そういうのが目的で声をかけたってこと?」
「絵里でいいよ。」

彼女、亀井絵里は「相性、いい気がする。そんな気がするの。」と微笑んだ。
425 :LOVE :2009/04/01(水) 00:50
彼女は僕をホテル街へと誘導した。
細い路地を彼女は迷いもせずに僕の腕を引っ張るように歩いて行く。
ホテルの前にくるとそれまで積極的だった彼女は僕の後ろへと回り
緊張した様子だった。

フロントで鍵を受け取り彼女を連れて部屋へと向かう途中
彼女は言葉を発しなかった。

彼女は部屋に入ると室内を見渡し「へー。」と言葉を漏らした。

「やっぱり。」
「ん?」
「君、慣れてるように僕に振舞ってるけど、初めてでしょ。」
「そんなこと・・・。」
「ホテルくるのも、こうやって声かけるのも。」

彼女は「バレちゃったかぁ。」と残念そうにベッドに腰をおろした。

「エッチに興味があったの。友達とかみんな経験してるし。」
「男も女も思春期になればみんなそういうもんだよ。」
「彼氏とか作ればいいんだろうけど。絵里、そういうの向かないみたい。」
「付き合うってことが?」
「うん。何人か付き合ってみたけど1週間もたない。」
「原因は絵里?」
「そう。絵里が悪いらしい。疲れるの。束縛っていう、所有物みたいになるの。」
「だから、経験だけしたいってことか。で、僕が選ばれたわけだ。」
「そういうの嫌い?彼女じゃないと無理とか?」
「殆どの男がおいしい話だって思うんじゃない。絵里は可愛いし、スタイルもいい。若いし。」

彼女は「褒めてくれてありがとう。」と照れたように笑った。


彼女は最初、少しだけ照れていたけれど、どんどんと大胆になっていった。
426 :LOVE :2009/04/01(水) 00:51
初めて彼女を抱いてから2年。
僕はこの2年、彼女以外の女性を抱いていない。
彼女が僕だけか、それはどうかわからない。
彼女と僕の体の相性がとてもよかったのは事実だ。


交差点の端で邪魔にならないように立っている彼女を見つけた。
車を止めると彼女は急いで車に乗った。

「中華街、ホントにいいの?」
「いいよ。行きたいって言ってじゃんか。」
「行ったことないからね。」

中華街まで僅かな距離を車で移動し石川町駅の近くのパーキングに車を止めた。
平日でも賑わう場所で彼女は嬉しそうに
あれが食べたい、あれも美味しそうだとはしゃいでいた。

手を繋いで石川町の駅へと向かう。
線路を越えてちょっと路地に入ったところで彼女は笑った。

「渋谷の円山町と同じところってどこにでもあるんだね。」
「動物と違って人間がその辺でやってたら犯罪だからな。」
「おっかしいね。やること一緒なのに。」
「人間には羞恥心があるだろ。絵里だって、知らない男に下着見られたら?」
「嫌だよぉー。」
「それと同じだよ。」


明日は僕の仕事は夕方からだというと、彼女は大学を休むと言った。
だったら、広い部屋でゆっくりしようと露天風呂から夜景が見える部屋を選んだ。

歯磨きしてから。という彼女を置いて僕は先に露天風呂に入った。
空がオレンジ色に染まっている。
遠くの方にはクイーンズスクウェアとランドマークタワーが見える。
427 :LOVE :2009/04/01(水) 00:52
「おっ、いい景色だねぇ。」

外に出てきた彼女は風呂に入らず僕に背中を向けて景色を見に行った。

僕は湯の中を移動して彼女の脹脛へと手を伸ばす。
彼女の体を欲求する僕の体。
顔だけ振り返った彼女を見上げると艶めかしく微笑んだ。

「時間、いっぱいあるよ。」
「知ってる。」

僕は湯から出て彼女を後ろから包み込む。
張りのある胸を包み込み彼女の首筋に舌を這わす。

僕は「僕の、舐めて。」と耳元で囁くと彼女は振り返って僕の唇を奪う。

吸いつくように僕の舌を絡め取り唾液を吸い取った。
跪いて僕のそれに手を添えながら僕を見上げて舌をだした。

僕は彼女に色んな要求をする。
そして彼女もまた同じく要求をする。
お互い、要求に応えてるんだからそんな思いがあるのだろう。

彼女は僕の出した物をゴクッと飲み込んだ。
体の力が一瞬抜けた僕は湯船の淵に座り込んだ。

湯船に入った彼女は「吉澤さん、凄いセクシーな顔してる。」と笑って僕の手を引いた。
僕が入ると彼女は僕の上に乗ってまた口づけを交わす。

「吉澤さんとキスしてるだけで凄い気持ちいいの。何でだろう。」
「僕も気持ちいい。」

彼女は彼女の腰にあった僕の手を胸へと持ってくると
僕の手を包み込むように胸を揉む。
428 :LOVE :2009/04/01(水) 00:52
「吉澤さんで、よかった。」
「何が?」
「声、かけたの。」
「どうして?」
「だって、こんなに、気持ちいい。」

それは僕だって同じだ。
彼女に触れるだけで、僕の体は反応する。
仕事がら一般的に美しい、可愛いといわれる女性に触れることが多い。
それでも彼女に触れたときのような反応はしない。

彼女は僕の上で淫らに腰を揺らす。
絵里に処理してもらったばかりなのにまた僕のが先に限界を迎えてしまう。

「絵里、僕、もう直ぐ。」
「絵里も、逝く。中、大丈夫だよ。生理終わった後だから。」

彼女は艶めかしく微笑んで言った。

「絵里、妊娠したら、どうする?」

彼女の中が僕を思い切り締め付けると彼女の体が僕に凭れかかった。
繋がったまま僕は彼女を抱きしめる。

「ね、どうする?」
「絵里が妊娠したらって?」
「うん。」

僕は何も答えず腰を揺らし始めた。
ゆっくりと動いて彼女の中を堪能する。

「ちょ、もうちょっと休もうよ。おかしくなっちゃうっ。」

僕にしがみつき言う彼女の言葉を無視して僕は彼女の胸にも舌を這わした。
429 :LOVE :2009/04/01(水) 00:54
この2年で僕は気がついたことがある。
彼女に安全日、危険日なんて存在しない。
女性がもつ子供を宿す機能が彼女には備わっていないんだ。

きっと、だからかもしれない。

僕も同じだから。

体がお互いを惹きつけているのかもしれない。

夜空が真っ暗になる前に部屋に入った。
運動した後はお腹が空くという彼女の意見に同意して
ルームサービスを頼んた。

ソファで僕は彼女の膝に頭を乗せて寝ころんだ。

「さっきの話。答え聞かせて。」と彼女は僕の前髪を弄りながら言う。

「妊娠したら、責任とって欲しい?」
「さぁ。どうだろう。」
「絵里はきっと責任とってなんて言わないな。」
「どうして?」
「初めて会ったとき言ってただろ。所有物になりたくないって。」
「言ったっけ。」
「言ったよ。責任って結婚だろ?そんなのお互いが所有物ですっていう契約するだけだから。」

「絵里は言わない。」僕はそう言って、彼女を抱きあげた。

「吉澤さんも所有物になりたくないの?」
「なりたくない。」
「だから、絵里とこういう関係なの?」
「そうだね。」

「それに・・・。」彼女をキングサイズのベッドに下ろし口づけをする。

子供が出来たからって責任を取らなければいけないなら・・・。
僕はきっと一生、責任をとる場面には出くわすことはないだろう。

「パパとかママって呼び合う夫婦より僕はずっと絵里と男と女の関係で居たいな。」
「絵里もそれに賛成。」
430 :LOVE :2009/04/01(水) 00:55
僕が知っていること、僕もそうであることはきっとこれからも伝えることはないだろう。
彼女がそれを知ったら、きっと。
変わってしまうから。

僕が彼女に対する愛情はエロス。
彼女が僕に対する愛情はエロス。

僕と彼女の関係はこれでいい。
お互いの欲求を満たすだけの愛。
眠る間を惜しんで、体だけを求めあう。

431 :LOVE :2009/04/01(水) 00:55

4.アガペー
432 :LOVE :2009/04/01(水) 00:56
僕には時間が出来れば会いに行く人がいる。
画家の彼女。
出会って8年くらいだろうか、僕がまだ中学生で彼女が小学生だった。

中学の課外授業で障害者と触れ合うというのがあった。
訪問した障害者の中に彼女が居た。

車椅子にのり、仔犬を抱きあげ微笑んだ彼女を僕は天使だと思った。


障害者。
彼女にとってそれがコンプレックスなのだろう。
健常者の僕にはわからない、彼女の気持ち、思考。

それでもわかることだってある。

彼女は本当の気持ちを口にはしない。
いつだって、逆の言葉を口にする。

寂しい時には一人にして。
行きたいところには行きたくない。

だから、本当はとってもわかりやすい。

僕は彼女の笑顔をいつだって見たいと思うんだ。
そのためだった僕は何だってする。

彼女があの時みたいに、天使のような微笑みを見せてくれるなら。
433 :LOVE :2009/04/01(水) 00:56
道重、と書かれた表札を確認してインターホンを押す。
住宅街の一軒家。
裕福でも貧しくもない一般の家。

彼女の母親が顔を出し嬉しそうに招き入れてくれるのはいつものことだ。

「昨日からこもりっきりなの。」

母親は「困ったわ。」と言いながらバリアフリーになっている廊下の一番奥の扉を見つめた。

「何か大作でも描いてるのかな?」
「私のことは中には入れてくれないから。」

僕は「じゃ、僕が。」と微笑んでその扉へ歩みよった。

「いつもありがとうね。」と母親は言い残しリビングへと入って行った。

この扉の向こう側に道重さゆみがいる。
僕の大切な子。

コンコンコンと3回、ノックをする。
もちろん、部屋から返事が聞こえてきたことなんて一度だってない。
ゆっくりとノブを回して扉を開けるとそこにはいつもの光景。
もう、何百回、何千回、何万回と見てきた光景。

キャンバスと向き合う車椅子の少女の後姿。
真っ黒で腰まである長い髪が印象的だ。
434 :LOVE :2009/04/01(水) 00:57
「さゆ。僕だけど。」
「別にボランティア頼んでないの。」

今日はいつもよりもご機嫌斜めな彼女。

「今日はさゆの髪、クルクルに可愛くさせてもらおうかなって、それに合わせてメイクも。」
「別にしなくていいの。どこに出かけるわけでもないから。」
「描くの忙しい?」
「忙しい。」

「そっか。」と言って僕は彼女の背後に立った。
彼女はとってもわかりやすい。

お洒落をしたい年ごろはどんな女の子だって一緒なんだ。
特に彼女は人一倍、お姫様を夢見ている。
白馬に乗った王子様が迎えに来てくれることを願って。

「さゆの髪は相変わらず綺麗だね。」
「触らないでいいって言ってるの。」

彼女の言葉を無視して僕は髪をいくつかの束にまとめていく。

「今日さ、仕事休みなんだ。さゆも暇なら買い物付き合ってよ。」
「忙しいの。」
「もちろん、お昼もさゆの好きな店でいいし、疲れてなかったら夕飯も。」

彼女は高校を卒業したころから僕以外と外に出なくなった。
学校に通うことがなくなったから。

だから、彼女の母親は僕が来ると喜んでくれる。

「よし、アイロンするね。」と言って僕は彼女の髪を傷まないように気をつけながらカールさせていく。

「今日はね。さゆにワンピースも持ってきたんだ。」
「膝かけするからスカートだってパンツだって変わらないの。」

本当は誰よりも気にしている。
自分に似合う形の服か、色の服か。

「さゆは身長があるからロングが似合うと思うんだ。」
「立てないから身長なんて関係ないの。」
「それに、黒の基調が似合うね。」
「黒は誰にだって合うの。」
「さゆには特に似合う。」

カールを終えた髪を整え彼女の車椅子をクルッと180度回す。
思った通り、巻き髪にしただけでずいぶんと大人っぽく見える。

僕は思わず微笑んだ。

「実はね夜は僕が行きたいところあるんだ。ちょっと一人じゃ行きづらいから付き合って欲しい。」
「一人で行けばいいの。さゆみは暇じゃないの。」
435 :LOVE :2009/04/01(水) 00:58
彼女が笑った顔を見たのは1度だけ。
怒った顔も見たことがない。
彼女には表情がない、いや感情を表情に出さないんだ。
だから、あの微笑みを見ることができた僕はラッキーだったんだろう。

「目、閉じて。」
「いや。」
「じゃ、目、開いて。」

彼女は困ったように「いや。」と言って目を閉じた。

本当はとっても素直な子。
まっ白い肌に僕はまるで絵を描くように彼女に合った色を乗せていく。

「出来たよ。目、閉じて。」

ゆっくりと瞼を開ける彼女を見て僕は一度、頷いた。

「凄く、綺麗。」と彼女の頭をそっと撫でて用意してきたワンピースを彼女に差し出した。

「これに、着替えて。一人でできるよね。外で待ってるから。」


扉に寄りかかり彼女が着替えるのを待った。
たとえ、着替え終わっても彼女から声をかけてくることはない。
でも、もう何年もこうしてきた。
部屋の中を見なくても微かに聞こえてくる物音で彼女が何をしているか想像がつく。


「さゆ、入るよ。」と声をかけて扉を開けると
黒いワンピースに身を包んだ彼女が居た。

僕はポケットから最後のアクセントをとりだした。

「これ。さゆの可愛らしさを引き出すアイテム。」

ピンクサファイアでハートの形になっているトップのペンダント。
大人びすぎないように可愛らしいものを1つ身につけさせた。

「うん。完璧。じゃ、行こうか。」

返事をしない彼女を部屋から連れ出す。
リビングにいる母親が僕らの姿を見て出てきた。

「夕飯たべてから送り届けますから。」と母親に告げて彼女を太陽の下へ連れ出した。
436 :LOVE :2009/04/01(水) 00:59
眩しそうに眼を細めた彼女を抱きあげて助手席に座らせた。
車いすを畳んでトランクに入れた。
18歳で中古で買った軽の車から仕事をしだしたVOXYに変えた。
彼女の車椅子が積めて、彼女が乗っているのに疲れないように。

「キャンバスは足りてる?」
「足りてる。」

その言葉を聞いて僕は行先を決める。
前に買いに行ってから大分時間がたっていたから本当に無いのだろう。

彼女が中学の頃から行っている画材店へと車を走らせる。
見慣れた景色に彼女も行先がわかったのだろう。
僕の顔を一瞥した。

画材店で彼女はいつも決まったものを買う。
余所見なんてしない。
試してみようなんてことはしないんだ。
彼女は自分に合ったもの、必要なもの全部知ってるんだ。


「お昼にしようか。それともどこか行きたいところある?」
「さゆみは絵を描く道具以外、必要なものなんてないの。」

そう言いながら彼女は巻いた髪をクルクルと指で回していた。

「そういえば、こないだ仕事で女の子たちが髪飾りの話をしてたっけ。
 青山だからちょっと寄って行こうか。可愛い小物もあるってよ。」
「髪なんて吉澤さんが勝手にやってるだけじゃない。いらないの。」

僕があげたものを彼女は必ず次に会うと身につけている。
あげたもの、と言うより彼女が欲しがったもの。
欲しがったという表現自体、違うかもしれない。
彼女が望んでいるものを僕が勝手に持ってきているだけだ。

車椅子を押しながら雑貨屋に入ると彼女は自分で移動しはじめた。
興味のあるものを手にとって眺めて戻す。
僕はその中から彼女が欲しいだろう、似合うだろうものを手にとっていった。

女子高生が食べ歩きしている姿を彼女がじっと見ていたから。
結局、お昼はクレープになった。

彼女は外を眺めるのが好きだ。
どこか降りて見たいというより。
景色を記憶している。

その景色や人が混ざりったものが彼女の絵の材料。
437 :LOVE :2009/04/01(水) 01:00
日が暮れ出して僕は目的地へと向かった。
青山霊園を突っ切って交差点を右折。
国立美術館の前を通り六本木ヒルズが見えてくる。
テレ朝の前を通って左前方には東京タワーが見えてくる。
赤羽橋を右折してずっと走っていくと辻の札の交差点。
国道15号線を突っ切って、橋を渡るともうそこは海が近い。
旧湾岸通りを大井に向かって走っていく。
ソニーの本社が見えて少し行くと東洋海洋大学が右手に見える。
天王洲橋を渡り、左手に見えてきたテレビ東京スタジオを左折する。
新東海橋を渡ればそこはちょっとしたアイル、島だ。
天王洲アイル。ショッピングモールとオフィスビル、そして海。
ドラマのロケで見たことのある景色。
ちょうど、島の真ん中を突っ切るように走っていく。
品川埠頭橋を渡りすぐに左折するとそこが僕の目的地。

20分程度のドライブ。
何も話さず、ずっと外を眺めていた彼女はきっと楽しんでくれたのだろう。

駐車場に車を止めて彼女を車椅子に乗せてクラブハウスへと入って行った。

スタッフたちが僕らを見て手を貸してくれる。
彼女が少しだけ戸惑ったように見えた。
438 :LOVE :2009/04/01(水) 01:00
予約していた個室に入りスタッフが去った後のことだ。
「海は、すごく好き。ありがとう。」と彼女は言った。
表情を変えないはずの彼女が強張った表情で。

「ディナークルーズ。気に入らない?」
「気に入ったよ。言ったでしょ、海は好きって。」
「嫌なら出る?」

ギュッと車椅子を握りめる彼女。
僕は本当は知ってる。
彼女が海を嫌いだってこと。
でも彼女は間違えてる。自分の気持ちのとらえ方を。

彼女が返事をする前に船が動きだした。

「動いちゃったね。」
「どうして?」
「なにが?」
「いつも、さゆみが嘘ついても見抜いてくれるのに。」
「海が嫌いって?」

彼女は頷いた。

「違うだろ、海は好きだろ。」
「吉澤さんにはさゆみの気持ち、分からない。歩けるんだから。」
「そうだね、歩ける。だから歩けないさゆの気持ち、全部分からないな。」
「車椅子がさゆみの足なの。海じゃ使えないの。どれだけ怖いかわかる?」
「それが正解だよ。嫌いじゃない。怖いんだよ。」
「同じだもん。」
「違う。さゆが描く海はいつだってキラキラしてて青くて綺麗だよ。」
「嫌いなの。」

僕は彼女の前に跪き今にも泣き出しそうな顔を見上げた。
439 :LOVE :2009/04/01(水) 01:01
「海が怖いのは、さゆが車椅子だからでしょ。泳げないから。
 もしもね、タイタニックみたいにこの船が沈んじゃったら。
 それでもさゆは助かるんだ。絶対に。」
「どうして。車椅子がないとさゆみは生きていけないの。」
「僕がいるから。僕は絶対にさゆを助ける。自分が死にそうでもね。」
「ねぇ。どうして?どうして吉澤さんはさゆみにそこまでしてくれるの?
 いつも、文句ばっかりなのに、いつも嘘つくのに。
 吉澤さんにさゆみは何もしてあげられないのに。」
「何かしてもらおうなんて思ってない。いいんだ。さゆが幸せでいてくれれば。
 幸せになるためなら何だってしてあげる。何だって言うこときく。
 だから、もっと世界を広げよう。あの部屋なら安全かもしれない。
 傷つかないでいられるかも知れない。でも、楽しい?」
「楽しい・・・わけない。時計を見ないと朝なのか夜なのかもわからない。
 さゆみの存在を世間に知らせるのは絵を見せる時だけ。
 吉澤さんだけが、ずっとさゆみのこと忘れずに来てくれる。」
「うん。僕は忘れたりなんてしないから。さゆが来ないで、会いたくないって言わない限り、行くよ。」
「いつも言ってるのに、来てる。」
「さゆの本心が、そう言ったら行かないよ。」

僕は立ち上がり、彼女の車椅子をテーブルに向けた。

「料理が来るから、夜景を楽しもう。」と言って僕も横の席に着いた。

「怖がることなんてない。僕が側にいる。」
「吉澤さんはさゆみが好きなの?」
「嫌いな子の側にはいないかな。」
「さゆみと何を望んでいるの?エッチなことしたいとかそういうこと?」
「僕はさゆの幸せだけを願ってる。さゆがそういうことして欲しいならすけどね。」

彼女は顔を真赤にして「して欲しくないもん。」と呟き
ごまかす様に出てきた料理を食べた。

「ねぇ。さゆ。知っててほしいんだ。」
「なにを?」
「僕はいつだってさゆのこと考えてるってこと。」

彼女は大きな黒い眼で僕をじっと見つめた。
440 :LOVE :2009/04/01(水) 01:02
「さゆみが、歩けないから同情してるんだ。」
「違う。」
「こんな体で、閉じこもって、結婚もできなくて、ずっと一人で生きていかないと行けないさゆみに。」
「さゆが望めば結婚だってできる。一人になんてならない。」
「吉澤さんは知らないから。さゆみがお風呂にはいるのもトイレに入るのも大変なの。
 年をとったら、もっともっと大変になる着替えだって一人でできなくなる。
 お母さんだっていつまでも私の面倒見てられない。それがどういうことかわかる?
 絵を描く理由わかる?ちょっと上手いくらいで車椅子に乗ってるから高く買ってくれる。
 結局、さゆみは同情で生きていくしかないの。同情を売ってお金をもらって、それで今度は、
 今度はそのお金で施設に入って世話をしてもらうの。そして、寂しく死んでいく。」

彼女は無表情だった。
いつだって彼女はそうだ、何でも諦めてしまう。

「そんな顔、しないで。」
「僕、どんな顔してる。」
「同情してる顔。」
「じゃ、さゆはまた間違えてる。僕はさゆに同情なんてしない。」
「嘘。」
「嘘じゃないさ。むしろ、うらやましいと思うよ。」
「さゆみのどこが?羨ましがられるところなんて一つもないのに。」
「あるよ。さゆには僕がいるってこと。さゆは、愛されてるってこと。」
「愛されてる?」
「そう、無償の愛にね。」
「無償の・・・。」
「多くの人は与えられない愛だよ。」
「どういうこと?」
「普通、みんな要求するんだよ。
 自分を愛して、自分も愛すから・・・。
 結婚して、子どもできたから。
 たいていの人は要求したり、条件がないと愛してもらえない。」
441 :LOVE :2009/04/01(水) 01:03
僕は彼女のグラスに「もう、二十歳だもんね。」とワインを注いだ。

「さゆが望むなら、僕がしてあげる。お風呂だってトイレだって着替えだって。」
「そんな恥ずかしいこと吉澤さんにしてもらえないにきまってるでしょ。」
「見られることが?してもらわないと出来ないことが?どっちが恥ずかしいの?」
「どっちも。」
「親にしてもらうのもお金はってしてもらうのも僕にしてもらうのも同じじゃない?」
「違う、お母さんは親だもん。子供を育てる義務がある。お金もらうなら仕事としての義務がある。」
「親だからやって、お金払うからやって。それって要求と条件だろ。」

僕は彼女のもとへ歩み寄り目線を合わせた。

「言ったろ、さゆには僕がいるって。要らないんだよ。さゆには、要求も条件も。」
「吉澤さん。」
「さゆは特別なんだ。無条件に愛される、選ばれた女の子。何でもしてあげる。さゆが望むなら。」
「だから、どうして?」
「さゆを愛してるから。」
「さゆは何も・・・。」

僕は彼女の唇に人差し指をそっと近付けた。

「さゆから何かしてもらおうなんて望んでないってば。」
「でも・・・。」
「いいんだよ。さゆは。」

僕は席に戻りながら「望んだことは何だってしてあげる。」と言った。
442 :LOVE :2009/04/01(水) 01:04
「恋人になって。って言っても?」
「出来る限り、応じるさ。」
「さゆみ、たぶん、本は人より読んでると思うの。」
「うん。」
「どの恋愛小説も吉澤さんの言う、要求とか条件を相手にしてる。」
「そうだね。そして、嫉妬とか憎悪とか、そういうのが生まれてくる。」
「そうれが普通じゃないの?」
「一般的に、それが恋愛、そういうのが愛って言うのかもね。」
「でも吉澤さんはそれをしない。」
「うん。しない。僕には今ね。愛してる人が4人いるんだ。」
「なにそれ。」
「まず、姉さん。それから友達のごっちん。それと肉体関係を持ってる絵里。
 そして、ただ愛してる相手がさゆ。」
「ちょっと待って、全然、分からない。肉体関係を持ってる人が恋人でしょ。
 どうして?それなのにさゆみを愛してるとかいうの?」
「きっとそうだね。一般的に恋人と肉体関係を持つのが普通かもね。」
「当たり前じゃん。」
「でも、僕と絵里は恋人ではない。だから、嫉妬とか憎悪はない。」
「それは吉澤さんがそう思ってるだけかもしれない。」
「それはない。どっちかが違う愛情を持った時、僕らの関係は成り立たないから。」
「成り立たないって?」
「その時は別れが待ってる。でも、さゆと僕は違う。」
「どうして?」
「僕とさゆは違う愛情でも成り立つんだ。」
「吉澤さんが何も要求しないから。」
「そう、僕のさゆへの愛は無償の愛、アガペーだから。
 さゆの愛がどんなものでも受け入れられる。」
「友達っていう人は?女の人?」
「うん。彼女との関係が今、一番もろいかもしれない。」
「どうして?」
「彼女のフィーリアからエロスへと変化しようとしてるから。」
「さっきからアガペーとかフィーリアってなに?」
「ストルゲーは親子関係の愛とか、フィーリアが友情愛、エロスが肉体的な愛。
 アガペーが無条件な愛。」
「無条件の愛。」
「そう、さゆがどんな子でも僕はさゆを愛してるんだ。」
「さゆみが、その絵里って子ともう会わないでって言ったら?」
「会わないさ。」
「さゆみ以外を愛さないでって言っても?」
「ああ。さゆだけを、愛すよ。」
「結婚してって言ったら?」
「僕でいいなら。」
「さゆみを、抱いてって言ったら?」
「抱くよ。」
「こんな体の子でいいの?同情して抱くの?」
「そんなことない、さゆがそれを望むなら僕は喜んでさゆを抱くさ。」
「他の子と比べたりしない?」
「比べるなんてことしないよ。ただ、ひとつだけ、さゆが望んでも出来ないことがある。」
「なに?どんなことだってしてくれるんでしょ。」
「出来ることならね、でも、子供は作れない。」
「さゆみが育てられないから?」
「育てられるさ。きっととってもいい子に育てると思うよ。」
「じゃ、どうして?」
「さゆに歩く機能がないように、僕にもないんだ。子供を作る機能がね。」

彼女は驚いたように「それって・・・」と言葉を漏らした。
443 :LOVE :2009/04/01(水) 01:05
「そんな顔すんなよ。」と僕は笑って見せた。

「どんな顔?」
「かわいそうって同情してる顔。」
「同情なんてしてない。」
「うん。わかってるよ。さゆがいつも言うから言ってみた。」
「意地悪。」
「ごめん。それでも僕でいいっていうなら結婚だってなんだって。僕は受け止めるさ。」
「ねぇ。吉澤さん。」
「ん?」
「吉澤さんってさゆみよりもコンプレックス持ってるね。」
「そう、かもね。」

彼女はコクっとグラスのワインを飲んで「さゆみの王子様になって。」と言った。

444 :LOVE :2009/04/01(水) 01:05
帰りの車の中、彼女は窓の外を見ながら「帰りたくないって言ったら困る?」と言った。

「うち、泊まる?」
「いいの?」
「僕はさゆにノーなんて言わないさ。」

窓ガラスに映った彼女顔は1度だけ見たことのある天使の笑顔だった。



僕のベッドの上に座った彼女はキャンバスに向かっている彼女と全く別人だった。

「吉澤さんが好き。」
「男として?友達として?」
「男としてに決まってる。」
「男として、か。」
「問題ある?」
「いいや、ないさ。さゆがそれで幸せなら。」
「幸せよ。吉澤さんはさゆみを無償で愛してくれるんでしょ。」
「あぁ。」
「なら、こんなにも幸せなこと、ないよね。愛してくれる人のものになる。」

きっと、一般的にはきっとそれを恋愛と呼ぶのだろう。
そして、両思いになれたと言うのだろう。

天使の笑顔を見れるなら
僕はずっといつまでも彼女の側にいる。
445 :LOVE :2009/04/01(水) 01:06

5.エピローグ
446 :LOVE :2009/04/01(水) 01:08
「最近、付き合い悪くなったよね。」

彼女の髪をセットしながら僕は「そうかもね。」と返した。
鏡越しに僕の様子を窺う彼女。

「なんかあった?」
「一緒に暮らしてる子がいるんだ。だから早く帰らないと。」
「彼女?」
「うん。」
「へー。会ってみたい。」
「今度ね。」
「どんな子?」
「天使。」

彼女は「天使って。」っと笑った。

「だから、ごっちんの気持ちには答えられない。」

彼女は鏡越しに「そんな気持ちないですから。」と苦笑した。
447 :LOVE :2009/04/01(水) 01:08
仕事を終えて、駐車場に向かうと僕の車に寄りかかっている子がいた。

「絵里?どうしたの?」
「だって、電話しても出てくれないから。」
「仕事、してたから。」
「ホテル、行こう。」

彼女は僕の腕に絡みついてくる。

「絵里。」
「ん?」
「彼女が出来た。」
「マジ?おめでとー。」
「だから・・・。」
「ん。わかった。言わないでいいから。」

絡まった腕を解いた彼女は僕の向いに立ちなおし笑顔を見せる。

もしも、僕が天使の存在を知らなかったら
きっと彼女と僕は上手く付き合って行けただろう。
普通の恋人として恋愛ってものをしていたのだろう。

最後に彼女は「今までありがとう。」と手を振った。
448 :LOVE :2009/04/01(水) 01:10
家に帰れば車椅子の彼女が玄関まで出迎えてくれる。
「おかえりなさい。」と微笑む天使に僕はそっとキスをする。
それが僕の日課。

今、自分のことを説明しろ。
そう言われたらきっとこう答える。

一人の天使のためだけに存在してる。
449 :clover :2009/04/01(水) 01:14
以上でLOVE終わりです。

>>422-430 LOVE 3.エロス
>>431-444 LOVE 4.アガペー
>>445-448 LOVE 5.エピローグ

また、書き始めたらよろしくお願いします。
450 :名無し飼育さん :2009/04/12(日) 02:14
意味がよく解らないんですけど
何の話だったんすか?
451 :名無飼育さん :2009/04/19(日) 15:22
うーん・・・

なんだかな〜
452 :名無飼育さん :2009/04/20(月) 19:42
別にわからなくないよ
面白かったと思います
453 :名無飼育さん :2009/04/22(水) 01:08
愛にも色々な種類があるんですねぇ。
こういうタイプの話も好きです。
次の話も楽しみにしてます。
454 :名無飼育さん :2009/04/22(水) 01:13
sage忘れた...orz
ごめんなさい:(T-T):
455 :七氏 :2009/04/22(水) 23:09
色んな角度から見れて面白いです
456 :名無飼育さん :2009/11/24(火) 10:06
cloverさんの作品が大好きです。心で繋がってる話が多いので読んでて羨ましくなっちゃうんです。作中の人が。

また新しい物語が出来ることを楽しみに待ってます!
457 :clover :2010/02/16(火) 02:55
お久しぶりです。
ちょっと時間が出来そうなのでまた書いていこうと思います。
カメ更新になるかもしれませんがよろしくお願いします。

★♂化してるので嫌いな方は避けてください。

>>450 :名無し飼育さん さま
レス有難うございます。
色んな愛の話だったんですが・・・
言葉が足りなかったかもしれないですね。
すみません。

>>451 :名無飼育さん さま
レス有難うございます。
なんか、すみませんw

>>452 :名無飼育さん さま
レス有難うございます。
有難うございます。

>>453 :名無飼育さん さま
レス有難うございます。
有難うございます。

>>455 :七氏 さま
レス有難うございます。
有難うございます。

>>456 :名無飼育さん さま
レス有難うございます。
有難うございます。
458 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:55
■恋愛は面倒なもの
459 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:55
日々の色んなことが面倒になる、
特に、人間関係。
それぞれのペースがあるのにそれを乱される。

好きな人と一緒に笑ったり、泣いたり、怒ったり。
何が楽しいのだろうと思う。
一緒に何かを共感するにはその相手のことを知らないといけない。
そして自分のことも相手に知ってもらわなければならない。
そんなことにたくさんの時間を使っても・・・
ずっと一緒にいられるなんて保障はどこにもない。
別れてしまったらまた別の人と一からその作業のやり直し。
無駄な時間を使うなら一人で気楽に過ごしたほうがいいんじゃないだろうか。
460 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:56
中学のころから友達との会話がかみ合わなかった。
周りの友達はみんな恋愛の話ばかりだから。
そんなことに時間を使うなら勉強とか趣味とかもっと他にやることあるのに。
そんな風に思ってしまう。

東京に出れば私と同じ考えの人がたくさんいるんじゃないかと思って東京の大学に入りたかったから。
過保護な親を納得されるにはそれなりの有名大学でなければならなかった。
だからみんなが恋愛に呆けている間、私は勉強した。


大学に受かった私はそれなりにセキュリティがしっかりしているマンションに入居した。
角部屋でいい条件だったのに、唯一の隣の住人は私が一番苦手なタイプだったのが残念で仕方ない。
461 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:57
その人は吉澤ひとみ。
隣に引っ越してきたと挨拶に行った時から苦手だった。
吉澤さんの変わりに出てきたのは彼女の石川梨華という人だった。
人前だというのにベタベタ、イチャイチャ。
あまり関わらないようにしようとと思っていたのに・・・
東京に出てきたばかりで友達がいなくて寂しいでしょうと勘違いした石川さんは迷惑なことに私を誘ってくれた。
友達があまりいなかった私は強引に誘われるとどうしてよいかわからず結局、吉澤さんの部屋で夕食を頂いたりする羽目になり
見たくもない二人のイチャイチャぶりを見なければいけないという状況に持っていかれてしまう。
462 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:57
463 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:57
「重さん?」

大学の講義が休講になってしまい、空いた時間に本屋で読みたかった小説を買おうかと向かっていると呼びとめられた。
私をそう呼ぶのは吉澤さんだけ。
道重さゆみという私の名前から中途半端に重という文字だけを使って呼ぶ意味がよくわからない。
重と呼ぶなら道も付けて欲しいと常々思う。

「お仕事、ですか?」
「前の打ち合わせが早く終わっちゃってさ、時間潰してたら重さんの姿見えたから。」
「私も休講になっちゃって。」
「お茶、しない?」
「本、買いに来たんで。」
「そっか、僕は邪魔?」
「別に、そんなことないですけど。」
「じゃ、一緒に本みよっかな。」


私は先に本屋に入っていく吉澤さんの後ろ姿を見ながら気がつかれないように溜息をついた。
464 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:57
「小説?マンガ?それとも雑誌?」
「小説です。」
「恋愛?」
「いいえ。歴史小説を。」
「重さんってさ、僕と梨華のこと見てひいてるよね。」

気が付いていたのかと吉澤さんの横顔を見ると苦笑していた。

「ごめんね、梨華が強引に連れてきてるでしょ。」
「まぁ。あの勢いで来られると断れなくて。」
「声高いし、人の話あまり聞かないしね。」
「良く、一緒にいられますね。」
「好きだからね。高校のころからだから慣れてるのもあるかな。」
「昔からあのテンションなんですか?」
「初めて会った時は凄いおとなしい子だったんだよ。恥ずかしがり屋でね。」
「想像できなですね。」
「まぁ、そうだね。重さんは好きな人とか彼氏いないの?」
「いないですね。」
「かわいいし、モテルでしょ。」
「モテないですよ。それに、恋愛に興味ないですから。」

私は欲しかった本を手にとってレジへと向かった。
465 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:58
店を出ると吉澤さんが小さな公園を指さし「座ろうっか。」と言ったので私は腕時計を見てから頷いた。

「来月あたりにはもう、梨華が重さんを強引に誘うことはないと思うよ。」

空いていたベンチに座ると吉澤さんは突然そういった。

「どういう、意味でしょうか?」
「来週、梨華と別れるんだ。」
「そうなんですか?」
「なんか、リアクションが普通と違うね。」
「そうですか?普通どういうリアクションなんですか?」
「えっ、嘘。とか、あんなに仲がいいのに何で?とかどうして来週?とかかな。」
「じゃぁ・・・なんで?」

吉澤さんは苦笑する。
この人は、意見を押し付けたり私を注意したり、褒めたり、そういう、感情を乱す行為をあまりしない。
だから、かも知れない。一緒にいて疲れない。

「梨華ね、結婚するんだ。」
「そうなんですか。」
「そう、言うと思った。」
「普通なら、誰と?なんで?とかあたりですか?」
「そうだね。」
「じゃぁ・・・」
「いいよ。無理に言わなくても。」
「そうですか。じゃぁ。やめておきます。」
「重さんは干渉しないね。」
「はい、されたくもないですから。」
「そっか。」
466 :リフレーミング :2010/02/16(火) 02:58
吉澤さんがまた苦笑する。
私の言葉に対してなのか、石川さんとのことに対してなのか私にはわからない。
別に、考えなくてもいいことだと思う。自分には関係ないことだから。
でも・・・なぜか吉澤さんの苦笑の意味はいつも探りたくなる。
面倒だとは思わないのが自分でも不思議だった。
きっと吉澤さんと石川さんとセットでいるとき、私にとって二人は苦手なタイプになる。
石川さんは一人でも苦手。
でも吉澤さん一人のときは苦手なタイプではないのだろう。

「ふったんですか?ふられたんですか?」
「珍しいね、重さんから聞いてくるって。」
「だって、吉澤さん、黙るから。」
「沈黙に耐えられない人じゃないよね?」
「まぁ、でも結婚するんだ。で終わられるとなんていうか。私には関係ないことでも・・・。」
「そっか。」

吉澤さんはまた、苦笑した。

「重さんはさぁ。恋愛に興味ないんでしょ。」
「はい、面倒の何物でもないと思います。」
「何が、面倒なの?」
「相手のことを知ったり、相手に知ってもらったり、何かしてあげたり、してもらったり。気遣ったり、遣われたり。」
「楽しいのにな。」
「そうですか?」
「そうだよ。好きな人に何かしてあげて、笑顔が見れただけで心が幸せになるじゃん。」
「そうなんですか。」
「そうだよ。好きな人の笑顔見てキュンってなったことない?」
「ないです。」
「そっか。」
「はい。」
「僕はさ、梨華の笑顔見たくてね。いつも下向いて歩いてた梨華が笑ったら凄い可愛くて。
いつも、一緒にいて梨華を笑顔にしてあげたいって思って付き合いだしたんだ。」
「そうだったんですか。」
467 :リフレーミング :2010/02/16(火) 03:00
吉澤さんはそれから、別れる原因、石川さんが結婚する理由を教えてくれた。

石川さんは25歳で結婚して30歳までに子供は3人欲しいらしい。
だから、タイムリミットが今。
吉澤さんはそれに応えようと頑張ってみたけれど経済的にも今直ぐ結婚ってわけにはいかないらしい。
「結婚式くらいはやってあげたいじゃん。」と苦笑していた。
だから、石川さんはお見合いして、結婚を決めた。
吉澤さんもそれを受け入れた。
でも、お互い愛し合ってる。

私にはわけのわからないことだらけな話だった。

「高校からずっと付き合って9年とか10年、ですよね?」
「そうだね。出会ったのは15だったから。」
「その時間が、無駄だったとは思いませんか?」
「なんで?」
「だって、石川さんはまた新しい相手のことを知って、自分のことを知ってもらってってしないといけない。
吉澤さんとの時間は何の未来も生み出さない。」

吉澤さんは「なるほどね。」と苦笑した。

「よくわからないんですけど、結婚すれば良いだけの話、じゃないんですか?」
「傍から見たらそうかもね。でもね、想像できるんだよ。今、結婚してもダメになるって。」
「どうして?」
「梨華に応えてあげられない、そのことに僕は苛立つでしょ。それを見てる梨華も我慢する。それって楽しくないじゃん。」
「だから、恋愛なんてしなければいい。やっぱり、面倒なことしかない。」
「でもさ、好きになったらどうしようもないんだよね。」
468 :リフレーミング :2010/02/16(火) 03:00
私は胸にそっと手を当てた。
不思議な感覚だった、呼吸が詰まるような感じ。
これが、キュンという感覚なのだろうか?

でも、私にはきっと恋愛なんて出来ないと思う。
469 :clover :2010/02/16(火) 03:02
本日の更新は以上です。

>>458-468 フレーミング:恋愛は面倒なもの

今後ともよろしくお願いします。
470 :名無飼育 :2010/02/17(水) 12:04
お久しぶりです
独特の雰囲気に毎回楽しませて頂いてます^^
更新ありがとうございます
471 :名無飼育さん :2010/02/18(木) 22:01
更新お疲れ様です
久しぶりにcloverさんのお話が読めて嬉しいです
続き楽しみにしてます

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