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アッシュ

1 :室井蓉 :2006/08/21(月) 20:31
室井蓉と申します。
はじめて、スレたてさせていただきます。
基本は村斉と考えておりますが、どうなることやら。
よろしくお願いします。
283 :mountain mountain :2008/03/30(日) 22:46
「あのさ。突然なんだけどね・・・。いや、突然でもないか・・・。う〜ん」

「なによ、早く言いなさいよ」

ひとみんは、いつの間にか、こちらに近付いてきて、カウンターの外側、えーっと、こっち側へ出ようと手をかけていた。

「あのさ。ひとみんのこと、好きなんだけど」

「へっ!?」

バタンと大きな音をたてて、ひとみんの後ろで、カウンターの台がしまる。

「そういうことだから」

うわっちゃ〜、何言ったんだ、私。
ひとみん、すげー困った顔してんじゃん。
何、自己満足押しつけてんだよ。
284 :mountain mountain :2008/03/30(日) 22:56
「いつから?」

「はい!?」

「いつから、そうだったの?」

「えーっと、いつからと言われましても・・・」

そんなこと聞かれるなんて、考えてもみなかったぞ。
なんだ、なんだ。

「えーっと、1年の途中くらいからかな」

正直に答えてしまった・・・。

「そんな前から・・・。全然知らなかった」

あー、あー、そんな困った顔しないで。
ごめん、ほんとずっと、言うつもりなかったんだよ。
知らせるつもりなかったんだよ。

「あー、ごめん、ひとみん、忘れて。嘘だから、冗談だから。全部、嘘。
 ほら、村田先輩がいなくなって、元気なくなるかなーって思ってさ」

「嘘・・・」

ひとみんの目許を水分が覆ったと思う間に大きな粒になり、一筋の線になり流れ出した。
285 :室井蓉 :2008/03/30(日) 22:57
大変申し訳ないのですが、今日の更新はここまでにさせていただきます。
286 :室井蓉 :2008/04/04(金) 21:36
更新します。
287 :mountain mountain :2008/04/04(金) 21:40
「えっ、えっ」

「嘘なの?」

ひとみんの眉間に、軽くしわがよってる・・・。

「えっ、えっ」

どうすりゃいいんだ、私。

「嘘!いや、嘘が嘘」

「へっ!?」

えーい、もう、勝負だぁーーー!
288 :mountain mountain :2008/04/04(金) 21:46
「ワタクシ オオタニマサエハ サイトウヒトミサンノコトガ スキナンデス!」

「バカー!」

そのままひとみんが、私の衿元へ顔をうずめて抱きついてきたもんだから、頭が真っ白になった。

「バカー!」「バカー!」「バカー!」

泣きながら、何回バカ!バカ!言われたか分からないくらいだったけど、髪を撫でても怒られないみたいだったので、撫でながらそのたびに「ごめんね」と言った。
289 :mountain mountain :2008/04/04(金) 21:47


290 :mountain mountain :2008/04/04(金) 21:54
「つけちゃった・・・」

「ん?」

「マサの制服に、鼻水・・・。つけちゃったみたい」

しばらくたったころ、ひとみんがそんなことを言い出す。

「あ、いいよ、いいよ。鼻水もひとみんの一部です。鼻水もどんどんつけてこ!」

「アタシだったら、やだ」

「へっ!?」

涙声で笑ってるよ、このお姫様は。

「あのさ、ひとみん」

軽く頭を撫でると、ひとみんは顔をあげた。
涙に濡れた頬が上気して、ほんのり赤くなっている。
思わず親指の腹で、ひとみんの頬の涙をぬぐう。

「こうやって、ひとみんの涙をいつでもふける場所にいるから」
291 :mountain mountain :2008/04/04(金) 21:58
「うん。でもね、アタシもう泣かないよ」

「ん!?」

「マサ、またアタシを泣かすのか?」

「泣かさない!泣かさない!」

大きく手を振って、大否定した。

「だろっ。だから、アタシもう泣かない」

そう言って、ニカって笑ったひとみんに、大谷雅恵17歳、また惚れたのでありました。
292 :mountain mountain :2008/04/04(金) 22:01

293 :mountain mountain :2008/04/04(金) 22:02
終わり。
294 :室井蓉 :2008/04/04(金) 22:07
今回の更新は、ここまでにさせていただきます。
295 :名無飼育さん :2008/04/06(日) 03:23
もしかして、それでも片想いなんでしょうか?
それともやっぱり…??
296 :名無飼育さん :2008/04/06(日) 20:55
改めて始めから読んで、すごく好きな空気感に心がホワッとしました。

村田さん視点も楽しみに待ってます。
297 :室井蓉 :2008/09/15(月) 17:04
遅レス申し訳ありません。

>295さま
どうなんでしょう。まだしばらく大谷さんの苦難は続くかも(?)しれません。
機会があれば、この話の続きも書いてみようと思います。

>296さま
ありがとうございます。
お待たせいたしました。ようやく、はじまります。
298 :montage :2008/09/15(月) 17:06
montage
299 :montage :2008/09/15(月) 17:10
「ごめんね、村っち。私、留学するんだ…」

え!?何言ってんの柴っちゃん…。
柴っちゃん…。

あれ、声が出ない。

学校帰り、一緒に歩いていたはずなのに、柴っちゃんの背中が遠のいていく。
足がすくんで、歩け、な、い…。

柴っちゃん、柴っちゃん。
300 :montage :2008/09/15(月) 17:11


301 :montage :2008/09/15(月) 17:13
気がつくと、見慣れた天井に、見慣れたカーテン。

夢か…。
久しぶりに見たな…。

目をふさぐと、もう1度あの光景を見てしまいそうだったので、ノロノロと身体を起して、軽く服を着替えた。
302 :montage :2008/09/15(月) 17:30
「あら、今朝は早いこと。起こさないでも起きてくるなんて、昨日まじめに聞いてたのね」

キッチンの横を通り抜けると、母が私に向って声をかけてくる。

昨日…!?
ああ、そういえば、

「推薦決まっているっていっても、サボったりしたら取り消されるかもしれないでしょ!」
高校の文化祭に初日しか行かず、残りの2日は家でダラダラしていた私に、昨夜、母上からお小言が降ってきたんだった。
文化祭に行かないからって、推薦取り消されたなんて話は聞いたことがない。

部活をやっていない私は、行く必要もなければ、クラスの展示当番もとりたてて人手を必要としなかったので、はじめからこの2日は休日くらいにしか思ってなかった。

しかし、運の悪いことに昨日は日曜日。
その上いつもの日曜よりさらに多く「うどん屋(仮)」の間違い電話がかかってきて、母上の機嫌の悪さもいつもの日曜以上であった(当社比)。
寝転がってTVを見ていた私に、そのイライラが向かったようだ。

さらに兄者が私を慰めようとして、結果すべることになる「おこられ音頭」を歌ったもんだから、「ふんっ!」と兄者に吐き捨てて自室に引っ込んだ私は、早々に寝た。

そんな気分で寝たのが良くなかったんだろうか。
あんな夢を見るなんて。

覚えているもんだな、柴っちゃんの顔。
そして、声…。

303 :montage :2008/09/15(月) 17:38
「もう出かけるの?」

弁当の包みに手をかけた私に、母が少し驚くように聞いてきた。

「う、うん」

多少の歯切れの悪さを感じながらも肯定した私は、そのままそれをカバンにしまい、玄関に向かう。

「玄関に出しといたから、傘持って行きなさいよ」

キッチンから、私の背中に声がかかる。

「傘!?」

「そう。今日は降るんだって」

「ふーん」

何も考えず、玄関に置いてあった1本の傘を手に持って歩き出す。
その傘が東京のある有名な都市名が、でかでかと書かれた傘だと思いだしたのは、駅にかなり近くなってからのことだった。

「降りませんように…」

今にも降り出しそうなグレーの空に向かってつぶやいた。
304 :室井蓉 :2008/09/15(月) 17:39
本日の更新はここまでにさせていただきます。
305 :名無飼育さん :2009/01/07(水) 21:09
何回も読み直してもいい作品ですね。更新待ってます
306 :名無飼育さん :2009/05/27(水) 17:56
待ちます
307 :室井蓉 :2010/08/06(金) 22:28
大変ご無沙汰しております。
2年ぶりに復活です(多分)。
レスも長らく放置していまい、申し訳ありませんでした。

>305さま
何回も読んでいただいて、ありがとうございます。
こんなにあきましたが、また続きも読んでいただけると嬉しいです。

>306さま
ありがとうございます。
308 :室井蓉 :2010/08/06(金) 22:30
更新します。
309 :montage :2010/08/06(金) 22:31



310 :montage :2010/08/06(金) 22:33
改札を抜け、階段を降りると快速急行が滑り込んできた。
早い時に限って、こんなもんだよね、
心の中で苦笑いを作って、車内へ乗り込む。
311 :montage :2010/08/06(金) 22:37
名論駅方向の電車は、通勤通学の波とは基本的に逆方向なので、毎朝すいてはいるけれど、今朝はいつもより早いせいか、ガラガラだった。
座席に深く腰をおろし、目を閉じると


「ごめんね、村っち。私、留学するんだ…」


夢で聞いた声がよみがえる。
312 :montage :2010/08/06(金) 22:40
「あ、そっそっ、そうなんだー。
 へー、よかったねー。
 柴っちゃん英語できるもんねー。
 留学いいんじゃないのー。
 すごいね、どこ行くの?
 え、イギリス!
 そりゃまた、すごいやぁねぇー」


実際の私は、声が出ないどころか、饒舌だった。
313 :montage :2010/08/06(金) 22:48
2月の中旬、学校の帰り道のことだった。
中等部の卒業式が、約1カ月後になってはきたけれど、同じ学校の高等部に進むだけだから、クラス替えとあんま変わんないねえ、みたいな話を2人でしていた時、柴っちゃんが口を開いたのだった。

それから柴っちゃんがどんな顔をしていたのか、全く思い出せない。
思い出せないというより、柴っちゃんの顔を見れなかったというのが、本当のところだと思う。
314 :montage :2010/08/06(金) 22:55
ショックを受けたことすら分からないままに、ましてやそれがどんなショックなのかも分からないまま、その日帰ってすぐ、これからでも願書の間に合う高校を調べた。

その中から、今と遜色のない学校を選び、「行きたい」と両親に申し出た。

母親は、すぐに反対した。
昨日まで、上に進むつもりでいたじゃないのとか、せっかく大学まで行ける中学にがんばって入ったのにとか、そんな遠くの高校に朝早く起きて行けるわけがないとか色々言われた。

どれもこれもその通りだ。
315 :室井蓉 :2010/08/06(金) 22:58
本日の更新はここまでにさせていただきます。
316 :室井蓉 :2010/08/11(水) 21:09
更新します。
317 :montage :2010/08/11(水) 21:10

318 :montage :2010/08/11(水) 21:13
しかしここで

「わざわざそんな大変なことまでして、めぐみが行きたいって言うんだから、受けさせてやったら」

なんとなく同じ部屋にいた兄者がナイスフォロー、ナイスアシスト、ナイス助け船を出してくれた。
それを聞いて

「そうだな。だけどそこだけだぞ。
 それでもいいのか」

父から事実上のお許しが出た。
319 :montage :2010/08/11(水) 21:19
そんなに行きたいのなら、同じ高等部に上がるという退路を断って、そこ1本で臨むことが父の条件だった。

後に母から聞いたところによると、万一のことも考えて、高等部に入れるようにもしておいてくれたらしいのだが、そんなことを知るはずのない私は、がむしゃらに勉強した。
受験勉強している間は、あまり柴っちゃんのことを考えなくて済んだのも好都合だった。

留学の準備をする柴っちゃんと、いきなり受験勉強を始めた私との間に、卒業まで共有する時間は、ほとんどなかった。
320 :montage :2010/08/11(水) 21:23
そして、そのまま卒業。

めでたく合格した私は、今の学校に通うことになる。

あまりに勉強したために、入学試験で首席をとってしまい、新入生代表の言葉を述べるハメになったのだけは、計算外だった。
あろうことか、自分の名前を噛んでしまうという、かかなくてもいい恥をかいてしまったのだから。
321 :室井蓉 :2010/08/11(水) 21:23
本日の更新はここまでにさせていただきます。
322 :室井蓉 :2010/09/26(日) 21:27
更新します。
323 :montage :2010/09/26(日) 21:28

324 :montage :2010/09/26(日) 21:34
新しい学校に入って初めて分かったことは、
柴っちゃんがいなくなったことをみんなが知っている学校ではなく、
柴っちゃんがいなくなったことを誰も知らない学校に行きたかったのだと。

そうでなければ耐えられなかった、と今になれば分かる。

柴っちゃんがいたことを知らない人たちに囲まれていると、柴っちゃんが本当に存在していたのか、分からなくなってきた。
反対にそこまで意識をするのは、自分の中に強く柴っちゃんがいるからに他ならないのだけど。
とにもかくにも柴っちゃんが初めから存在していない世界に身を置くことは、ラクだった。
325 :montage :2010/09/26(日) 21:35

326 :montage :2010/09/26(日) 21:39
ふーっと、息を深くして、目を開けると、電車の窓に水滴がついていることに気がついた。

やっぱり雨が降ってきたようだ。
あの傘をささなければいけないのかと少し憂鬱になるけれど、これだけ早ければ、ほとんど誰にも会わずに学校に辿り着けるだろう。

1時間ほどかかる下車駅までは、まだ半分も来ていなかった。

再び、目を閉じる。
327 :montage :2010/09/26(日) 21:40

328 :montage :2010/09/26(日) 21:45
「なあ、そこのあんた。あんたや、あんた」

そう言っていきなり腕をつかまれたのは、入学して1週間ほどたった頃のこと。
午後一の授業が移動教室だったので、昼休み終盤、1階の渡り廊下を一人のんびり歩いていた時のことだった。

「はい?」

つかまれた方に振り向くと、眼光鋭い3年生が私の腕をつかんだまま立っていた。
329 :montage :2010/09/26(日) 21:48
カツアゲ?
恐喝?
監禁される?

この学校のルールを知らずに、なにか生意気なことでもしたとか・・・?

ひー、何も知らない1年生がやったことです、なにとぞご勘弁を〜。
330 :montage :2010/09/26(日) 21:50
到底、今日無事で帰れないと覚悟を決めていると

「そんなビビらんでも大丈夫やから」

その人はすまなさそうに、くしゃっと笑った。

「村田めぐみ、だったよな?」

確認をされたが、うなずくだけで精いっぱいだった。
331 :室井蓉 :2010/09/26(日) 21:52
今回の更新はここまでにさせていただきます。
332 :待ってます :2012/12/05(水) 21:22
更新されるのをずっと待ってます。

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