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Growing
- 1 :信長 :2003年07月31日(木)19時52分18秒
- なちまりアンリアルです。
その他の娘。さんも多数登場予定。
基本はsage進行、更新時はageでお願い致します。 - 351 :名無し読者 :2005/10/09(日) 05:43
- 待ってました!楽しみ楽しみ
- 352 :名無飼育さん :2005/10/09(日) 21:32
- かおよし!!待ってました〜(≧∀≦)
俺、待ってました(謎
かおよし、期待しちゃいます♪
無理せず頑張って下さい! - 353 :名無飼育さん :2005/11/03(木) 14:05
- 待ってます
- 354 :ONE DAY :2005/11/12(土) 19:21
-
『吉澤、ひとみさんやね』
名前を呼ばれ、ひとみはこっくりと頷く。それから、慌てて「はい」と続けた。
本日は私立桜学園の入寮日。まだ同学年の生徒達は到着していないらしい。
そう教えてくれた自分より10センチは背の低いだろう寮の管理人は、こちらを見上げてにこにこと笑う。
スポーツ特待生の為、遠方から入学してきたひとみは、時間配分を間違ってしまい、
こんなに早く到着してしまったのだ。
『ええと、自分の同室は………ああ、矢口やな。あいつなら安心やろ』
手元のリストを眺めながら続ける口調は関西弁。耳慣れない言葉に、ひとみは首を傾げる。
『なん?』
『いえ………』
『そんなにおかしいか、関西弁?』
まぁ、慣れてもらうしかないんやけどな、こればっかは。
くしゃりと頭をかく相手に、ひとみは首を横に振る。
『ちょっと聴き慣れなかったから………。別に、おかしいとかそういうんじゃなくて』
しどろもどろと弁解をするひとみに、寮監は再度笑った。
『ええよええよ、吉澤はええ子みたいやなぁ』
ぽんぽんと背中を叩くと、先導するように前を歩き出す。それにひとみは慌ててついていくのだった。 - 355 :ONE DAY :2005/11/12(土) 19:22
-
『1階は食堂や洗濯室、風呂や集会室とかあるから後で同室の先輩に案内してもらい?』
階段を上りながら、説明される。
『はい』
『2階は3年生の個室部屋。3階と4階があんたら1年と2年の2人部屋になってる。
で、吉澤の部屋はここや。309号』
こんこんと軽くノックしても返事は無い。『なんや、またどっかいったんか』と呟くと、
寮監はおもむろにドアを開けた。言葉通りに、そこには誰も居なかった。
『じゃ、後はご自由に。送ってきた荷物は全部部屋に入れてるから。外出したかったら、1階の
寮監室に顔出して。そんとき説明する』
『あ、はい。どうもありがとうございます』
『いつまでそんな可愛い事言ってくれるかなぁ………』
しみじみと呟きながら、寮監は部屋を出て行ったのだった。
『さて、と』
あれから黙々と部屋を片付けていたのだが、あんまり荷物を送らなかったのが功を奏して
あっという間に片付けは終わってしまった。同室の先輩は、未だ帰ってくる気配は無い。
『もう2時かぁ………』
そう呟いた瞬間、お腹が盛大に鳴り出した。よくよく考えてみると、昼食も取らずに必死に片付けていたのである。
ドアの外では自分と同じ到着した入寮生の声が時折聞こえたが、自分と同じ様に部屋の片付けに
いそしんでいるのだろう、あまり人の気配は感じられなかった。
『何か買ってくるかぁ』
ジャージに着替えて窓の外を見ると、こちらに付いた頃降っていた雨は既に止んでいるようだった。
周囲の散策を兼ねて、ランニングしたいとぼんやりと思う。
『よし、行くか』
小銭入れをジャージのポケットに入れると、ひとみはトレーニング用の靴を持って部屋を後にしたのだった。 - 356 :ONE DAY :2005/11/12(土) 19:23
-
『けったいやなぁ、ほんまに』
寮監の部屋を訪れて、外出したい旨を告げるとそう返された。しかし、直ぐに背後にある
札を指差しながら説明してくれる。
『門限は、一応17時半。他にもあるんやけども、今のところはパス。そこにある札は、寮内に居る時は
白で、学校行く時や出かける時はひっくり返して黄色にしてってや。そうじゃないと、100名近くいるから、把握するの大変なんよ』
『はい』
部屋ごとになっている札を、ひとみは素直に返す。自分の隣にある札は、黄色になっていた。
『じゃ、気ぃつけてな。こっから2キロ程度走れば、ジョギングするのに丁度いい公園があるで』
標識に出てるから、方向は直ぐ判ると思うけど。
『はい、ありがとうございます。いってきます』
そう告げると、ひとみは一礼して出て行ったのだった。 - 357 :ONE DAY :2005/11/12(土) 19:25
-
『ああ、こっちか』
大通りに向かって標識に目を走らせると、公園の名とおおよそのキロ数が出ていた。
それを確認すると、ひとみ足取り軽く走り出す。雨の後のせいか、空気が澄んでいる気がした。
走る事十数分、公園の入り口に辿り着いたひとみはその周囲にあるコンビニで食べる物を買う。
まず腹ごしらえとばかりに、ベンチでそれを食べることに決めた。
『結構、広い公園だなぁ』
辺りを見回しながら、ひとみは呟いた。雨が止んだおかげで、同じ様にジョギングしている人やら
犬の散歩をしている人があちこちに見受けられる。
『さーてと』
走るから軽い食事にしたけれども、それでも直ぐに走るのは胃に悪い。なので、周囲を軽く散策することにした。
大きく伸びをして歩き出したひとみの背後から、『こらーーー』という声が響いたのだった。 - 358 :信長 :2005/11/12(土) 19:29
-
>351−353
お待たせ致しました。レスありがとうございます。
いつも言ってますが、本当に励みになります。
短くて申し訳ないのですが、ちょっとだけ更新しました。
今回はちょっとだけ昔に戻ってます。
寮監は、多分皆さんご想像通りの方だと………(笑)。
では、また次回に。 - 359 :名無飼育さん :2005/11/12(土) 21:18
- 352でした!!
交信、待ってました〜〜〜〜〜(≧▽≦)
これからが楽しみです♪
寮監さんは…きっとあの方ですね?ww
次回、待ってます。 - 360 :名無飼育さん :2005/12/07(水) 14:37
- 待ってます!作者さんがんばってください!
- 361 :ONE DAY :2005/12/10(土) 14:57
-
『え?』
振り返ると、茶色い物体がこちらに向かって真っ直ぐに走ってきて、そのまま通り過ぎて行く。
視線を声のした方へと向けると、飼い主はまだまだ追いつきそうも無い。
『………ダックス、だよなぁ』
雨上がりの地面の上を縦横無尽に走り回っている。まるでスイッチが入ったおもちゃのように。
こう見えても犬は嫌いじゃない。むしろ大好きだ。と、いうことでひとみは捕まえるのに一役買うことにした。
犬の方に駆け寄ると追いかけっこだと思ったのか、ダッシュでその場を離れる。
しかし、一定の距離を保つとくるくるとした目をこちらに向けて『まだ?』という表情をするのだった。
『ちくしょー』
何だかバカにされてる気がするぞ!
本気モードになってしまったひとみを止めるものは、この場にはいない。ぐっと拳を握り締めると、
猛ダッシュで犬に向かって走っていくのだった。 - 362 :ONE DAY :2005/12/10(土) 14:58
-
そして、数分後。何度目かのトライの末、ようやく犬を捕獲できて。
『………ったく、もぅ』
随分と手間かけさせたね、お前は。
汚れてるのなんて気にしないで、ひとみは犬を抱き上げて顔を覗き込む。愛嬌のある瞳をきらきらと
輝かせながら、犬はひとみの口元をべろべろと舐めた。
『こーら、くすぐったいってば』
こしょこしょと犬の顎の下を指先でくすぐっていたひとみの耳に、
『あの………』
小さな声が届いた。
『あ………はい』
ゆっくりと振り返ると、その人と目が合った。その瞬間、身動きが出来なくなる。
すらりとした長身に、艶やかな長い髪。柔らかい笑みを浮かべているその顔は、どこかの
モデルといっても良いぐらい整っていて。
すっげー、綺麗。
それしか頭に浮かばなかった。我ながら、ボキャブラリーの少なさに寂しくなるぐらい。
ずどん、と胸を大砲で撃たれたそんな感じ。
そんな事など知らない相手は、ひとみの胸元で大人しくしている犬を指差し、言葉を続ける。
- 363 :ONE DAY :2005/12/10(土) 14:59
-
『その子、捕まえてくれてありがとう』
『あ、はい』
『ちょっと油断してたら逃げちゃって………最近、無かったのに』
そう呟きながら、相手はサイドの髪を耳にかけながら、犬に―――――すなわち、ひとみの
胸元に―――――顔を近付ける。
うわうわうわうわっ!
思わず身を引きそうになるが、それをしたらただの怪しい人なので懸命に踏み止まる。
『こーら、駄目でしょ、かもも』
『………かもも?』
その響きが余りにも不思議だったので、ひとみは思わず言葉に出してしまう。それは言われ慣れてるのか、
相手は罰悪そうに身を起こすと、答えた。
『うん、この子の名前』
ちょっと変ってよく言われるけども。
どこか寂しげに言う表情が気になって、そんなつもりじゃなかったひとみは首を横に振る。
それから、目の高さまで犬を持ち上げると笑顔で告げた。
『そっか、お前、かももって言うんだ』
いい名前だね、可愛いよ。
ぅわん!と鳴いて尻尾をぱたぱたと振るかももの鼻先に、ひとみは軽くキスをする。
それから、ハッと気付いた。
『す、すみません!勝手に』
『………ううん。気にしないで』
嬉しげに微笑む相手に、ひとみは犬を差し出す。しかし、受け取ったのはいいけれども、
余りの汚れ具合に飼い主も抱くのを躊躇してしまっていた。
『あ、そうだ』
ひとみはジャージの上着を脱ぐと、それで犬を包んだ。そして、満足げに頷いて相手に返す。 - 364 :ONE DAY :2005/12/10(土) 15:00
-
『これなら大丈夫ですよ』
『でも………』
『あたし、これから走って帰るし。どうせ暑くなって脱いじゃいますし』
『でも、これいつ返せばいいの?』
もっともな質問に、ひとみはうーんと空を見上げる。
寮の規則も判らないので、今度ここに何時来るかは判らないし、着たばっかりで送ってもらうにも
住所も判らない。
そうなると答えはひとつしかない。
『いいっすよ、どうせ古いジャージですし』
そのまま捨てちゃって下さい。
『でも!』
『あたし、ここにまた何時これるかわかんないんですよ。だから、気にしないで下さい』
『じゃあ、うちの住所とあたしの名前………って、書くものないや』
がっくりと肩を落とす相手に、ひとみはふわりと笑う。
『あたしも持ってないですよ』
だから、良いです。久々に、犬触れて楽しかったし。
『じゃあ、今度は逃げるなよ、かもも』
犬の鼻先を一撫ですると、ひとみは一礼してその場から走って去る。何だか、落ち着かなくて
そうでもしないと変なことを言い出しそうになって困った。
走りながら、思うのは何故か彼女の事ばかり。
―――――その気持ちを何て呼ぶのか、その時のひとみは知る由もなかったのだった。 - 365 :信長 :2005/12/10(土) 15:05
-
どうしよう、全然進みません………_| ̄|○
とりあえず、短いですが少しずつでも前に進みたいと思っておりますので。
>359
いつもありがとうございます。
寮監さんは、いつも元気一杯の小さな彼女ですよw
>360
待ってて下さってありがとうございます。
何とか頑張りたいと思いますので、長い目で見守って頂ければ………。
では、今年中に何とかもう1回更新を………と、どうなるか判らない願望を
言いつつ。 - 366 :名無飼育さん :2005/12/10(土) 23:10
- 359でした!
交信お疲れ様です〜。
キタ――――(゚∀゚)―――――!!!キタ――――(゚∀゚)―――――!!!
ドー⊂⌒~⊃。Д。)⊃ーン。
作者さん…駄目です(爆)やられました(笑)
あれ…??官僚さん、小さい方??(´д`;)…ハズれたかもしれません(謎)
次回、待ってます♪無理せずに^^ずっと待ってますので! - 367 :名無飼育さん :2005/12/12(月) 05:19
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 368 :ONE DAY :2006/03/12(日) 11:31
- * *
『おう、随分と早かったなぁ』
札を返しに入った寮監室の主が、のんびりと告げる。それにひとみは『ええ、まぁ………』とか
呟きながら、先程と同じ様に札を返す。そこで、隣にある札が、違う色になっていることに気付いた。
『同室の奴帰ってきてるから、色々と詳しいことは訊いてみ?』
ひとみの視線の先に気付いたのか、にこやかに寮監は続ける。
『あ………はい』
『それにしてもわっかいなぁー、Tシャツ一枚で寒くないん?』
『いや、普通に寒いですけども』
でも、そんなことなど考えられなかった、あの時は。
ひとみは小さく首を振ると、『失礼します』ときちんと一礼してから部屋を出て行くのだった。
『ええと………』
自室のドアを開けようと手を伸ばした姿勢のまま、ひとみは動きを止める。
こういう時はノックとか必要なのかなぁ?自分の部屋だけれども、他の人も居る部屋。
そんな状況は今までになかったから、正直戸惑う。
『一応、ノックしてみるか』
ひとみがおもむろにノックしようとしたその瞬間、いきなり目の前の扉が開いた。
はきはきとして鈴を転がすような高い声が、ひとみの耳に届いた。
『おー、君が同室の子?』
『ええと………』
辺りをちょっとだけ見回すと、下の視界に茶色の何かが目に入る。
『何だよ、失礼だなー』
視線を落とすと、そこには上にはパーカー、下はジャージという姿の小さな少女がむっとした
表情で立っていた。
『あ、すみません!』
『どーせ、おいらはちっさいですよ!』
『や………ええと、すみません』
何を言っても言い訳になりそうだったので、ひとみは素直に謝った。その態度に、
少女は目を丸くする。それから、ニッと微笑った。
『名前は?』
『吉澤ひとみ、です』
『おいらは矢口真里。一応、ここで君と1年間同室って事になりました。
至らぬ事もあるだろうけれども、よろしく』
『は、い』
頷くひとみが部屋に入ってベッドに腰掛けると、真里も同じ様に自分のベッドに腰掛ける。
- 369 :ONE DAY :2006/03/12(日) 11:32
- 『しかしなぁ………吉澤ひとみ、かぁ………』
ぶつぶつと呟きが漏れるのは、明らかに自分の名前で。
どこかおかしい名前かなぁ、とひとみがこっそりと考えていると、おもむろに真里は立ち上がって
ひとみをびしりと指差した。
『よし、今日から君はよっすぃーだ』
『………はぁ?』
思わず間抜け声を出してしまう後輩に、先輩は満足げに頷く。
『吉澤とか言い辛いしさ、名前はちょっと可愛らし過ぎるしさ。うん、いいじゃん、
おいらって、センスいいなぁ』
『よっすぃー………ですか』
『嫌?』
『………いえ、そうじゃないですけども』
それはちゃんと根付くのだろうか?と自分の事ながら思う。別に、どう呼ばれようとは構わないのだけれども。
『じゃあ、いいよね、よっすぃー』
にかっと笑う真里は、何だか太陽みたいな人だなとぼんやりとひとみは思ったのだった。
- 370 :ONE DAY :2006/03/12(日) 11:32
-
『部屋は見ての通り、そっちがよっすぃーの机とベッドね』
あと、ここが共用のロッカー。お風呂セットとかドライヤーとか置くようにしてるから。
『あ、はい』
机の上に置いていたそれらを、ひとみは慌ててその場所に移動させる。
『寮の門限は3つあって、第1門限の17時半。これは一応部活とかやってない人用ね。
これまでに帰ってくればいいから、特に申請は無し。
1回帰ってきても、それまでにだったら私服で外出は可能だから。
申請しなきゃならないのは、第2門限と第3門限。第2が19時で第3が20時まで。
部活やっている人は大抵こっちだから、1週間毎に申請した方が言いと思うよ』
『はい………。でも、急に予定等が変わったらどうするんですか?』
『そんな時は、その日の朝にあっちゃんに言っとけば大丈夫だから』
『あっちゃん?』
ひとみの言葉に、真里は小さく頷く。
『ああ、寮監。会ったでしょ?関西弁でちっこい元気一杯な人。フルネームは稲葉貴子』
『ハイ』
『寮監って言われるより、そっちの方が喜ぶからさ。呼んであげて』
年甲斐もなくとか言っちゃ駄目だよ。
『言いませんよ』
くすくす笑いながらひとみは言葉を返す。
その笑顔を見て、真里はちょっと目を瞬かせたけれども、直ぐに立ち上がってひとみの前に立つ。
『じゃあ、次は寮内を案内するよ』
『はい、お願いします』
ひとみは小さく頷くと、同じ様に立ち上がったのだった。
- 371 :ONE DAY :2006/03/12(日) 11:34
- 一通り説明が終わって部屋に戻ろうとした2人だが、急に先を歩いていた真里が足を止めた。
『先輩?』
どうかしたんですか?と言う前に、真里は大声を出す。
『おーい、ごっつぁーん』
その声にひとみ達の隣の部屋に入ろうとしていた少女が、ゆっくりとこちらに向き直った。
すらりとした立ち姿。ゆるりと動くにつれてさらさらな長い髪が揺れる。はっきりと「美少女」とは
言い難いけれども、やっぱりとても可愛いと称されてもおかしくない顔立ちだった。
どこか冷たそうにこちらを眺めていたのが数秒。しかし、次の瞬間、柔らかい笑顔がこちらに向けられる。
その印象の変わり様に、流石のひとみも思わず面食らった。
『やぐっつぁん!どしたの、何か用事?』
ぱたぱたとこちらに駆け寄ってくる少女の声は、どこか幼い。
『用事っていうか………ごっつぁんこそ』
『ごとーの部屋、あそこだもん』
その言葉に、真里は『えええー!』と派手なリアクションを返す。
『だって、あそこ圭ちゃんの部屋………っていうか、おいらの部屋、隣なんだけど』
『へぇー、そうだったんだ』
のんびりと頷いた少女だったが、不意に視線をひとみに向ける。
『じゃあ、後ろのこの人がやぐっつぁんと同室の人?』
『そう。よっすぃーだよ』
『よっすぃー?』
きょとんと言葉を返す少女に、真里は誇らしげに胸を張る。
『おいらが付けたの、ごっつぁんもそう呼んで?』
いやいやいや、人の意見は無視ですか、先輩。っていうか、犬に名前付けた
ような言い方なんですけども、とひとみは心の中で思わず突っ込む。
しかし、それに気付いているのかいないのか『ごっつぁん』と呼ばれた少女はひとつ頷く。
『よろしくね、よっすぃー』
『あ………はい。よろしく』
思わず丁寧に返したひとみに、少女は軽く笑う。
『大丈夫、ごとーとよっすぃーは同じ学年だよ?中等部からの持ち上がり組の後藤真希です、
改めてよろしく』
『あ………うん。こっちこそ、よろしく』
外見と反して彼女は結構人懐っこいタイプらしい。それにちょっと安心して、ひとみはようやく笑顔
を見せる。
『それよりごっつぁん、ほんとに圭ちゃんと同室なんだ………』
『うん、言ったでしょ?ごとー、そーゆー運は強いんだって』
どこか不敵に笑う真希に、真里はやれやれと息をつく。
『それにしたってなぁ………』
『別に何も細工なんてしてないよ?言っとくけど』
『それも判ってるって』
まぁ、圭ちゃんがご愁傷様って感じだな………と呟く真里の言葉に、訳の判らないひとみは思わず首を傾げるしかなかったのだった。
- 372 :信長 :2006/03/12(日) 11:39
- ………久々過ぎて、もうどうしようかと(涙)。
板統合も知っていたのに、色々とあってこんな時期に更新と相成りました。
待って下さっていた方に、こんなに間が空いて申し訳ないと平伏する次第です。
これからはこんなに間を空けないようにはしたいと思ってますので、よろしくお願いします。
>360
寮監さんは、ちいさな彼女でした(笑)。
いつもいつもレスありがとうございます。ほんと励みになります。
では、また次回………。 - 373 :名無飼育さん :2006/03/12(日) 13:49
- 交信すごーく待ってました!!
366です。
小さい寮監さん、分かりませんでした・゜・(ノД`)・゜・。
悔しいです(笑)
これからが楽しみです^^次回も待ってます!! - 374 :Growing :2006/05/28(日) 16:38
-
入学して1週間経った。授業も終わり、帰る準備をしていたひとみに、
『ねー、よしこー。今日、一緒に帰らない?』
蓋を開けてみれば実は同じクラスだった真希が、のんびりと告げる。
『今日は無理』
『どして?』
部活、休みの日じゃん。今朝そう言ってたでしょ?
不思議そうな表情で問いかけてくる相手に、ひとみは肩を竦めた。
『部長がさ、練習試合の打ち合わせに学院行くからお供に付いて来いって』
『相変わらず可愛がられてるねぇ』
目を細めて真希は続ける。それにひとみは唇を尖らせた。
『そんなんじゃないよ、勘弁してよ、ごっちん』
黙っていると結構とっつきにくく見える風貌のひとみだが、
持ち前の性格の素直さと外見に反した明るい性格で、まるでずっと前からこの学園に
いるかのようだった。
『まー、よしこは人当たりがいいからねぇ』
あたしと違って。
『誰もそんなこと思ってないと思うけど?』
『そうかなぁ?』
『そうだよ』
きっぱりと答えるひとみに、真希はふわりと微笑った。その笑顔は物凄く
珍しいモノなのだということは、ひとみはもちろん知らない。 - 375 :Growing :2006/05/28(日) 16:42
-
『よしこはいいこだねぇ』
しみじみと続ける真希に、ひとみは手を横に振る。
『いや、同い年だし。っていうか、ウチの方が誕生日先だし』
子供扱いされたひとみは、流石に反論する。それに真希は肩を竦めた。
『はいはい、判りましたー』
じゃ、お先にー、と手を振る友人に同じ様に手を振り返しながら、ひとみは小さく息を吐いた。
『全く、ごっちんって良くわかんねーよなぁ』
物凄いマイペースなのんびり屋。だけども、それだけではないってのは、ちゃんと判ってるけども。
『まぁ、いっか』
新しい事ばかりで慣れるのに精一杯だけれども、それらも何とか上手く言ってる、と思う。
でも、やっぱりちょっと疲れるかも………。
『さーて、と』
気持ちを切り替えるようにひとみは首を横に振ると、鞄を手に教室を出て行ったのだった。 - 376 :Growing :2006/05/28(日) 16:42
-
『おーい、吉澤』
上級生同士の会話を聞くともなしに聞いていたひとみは、その言葉にハッと我に返る。
『あ、はい』
『寝てたの?』
『いや、その………ちょっとぼーっとしてました』
素直に答えると、その場にいた人達に笑われてしまった。恥ずかしさに耳まで真っ赤になりながら、
ひとみは思わず俯く。
『いやー、今年の学園の新人は可愛いねぇ』
しかも、特待生だって、ますますうちが敵わなくなるなぁ。
『何言ってるんだか。うちは頭では敵わないからお互い様だよ、お互い様』
『はいはい』
それを聞くともなしに聞きながら、ふと視線を廊下へと向けた瞬間、
周囲の音が聞こえなくなった。
そこには、公園で出会った彼女がいた。この1週間、すっかり忘れていたけれども
顔を見た瞬間、あの時のどうしようもなく落ち着かない想いが蘇って身体中を支配する。
どうしよう、やばい。どうしようどうしよう。
ぐるぐる考えてるのに、身体は全く動く気配がない。ああ、あたし、何をしたいんだ?
そんなひとみは、思わずびくりと身を強張らす。急に相手がこちらを振り返ったからだ。
『………え?』
あたし、何も声出してないよな。
びっくりした猫の様にまん丸な目をしていただろうひとみと、相手の視線が合う。
相手も、とても驚いた表情をしたけれども、直ぐに柔らかな笑みを浮かべてくれた。
『うわぁ』
余りにも艶やかな笑みに、ひとみは間抜けにもそんなリアクションしか出来なかった。
今にして思えば、ほんと間抜けな話だ。
- 377 :信長 :2006/05/28(日) 16:44
-
保全程度ですが、ちょこっと更新致しました。
何ていうかまだまだ続くのにここで足踏みしてる場合かという
状態なのですが、如何せん色々とありまして。
マイペース過ぎるのも程々に、頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします。
では、また次回で………。 - 378 :名無飼育さん :2006/05/28(日) 18:27
- 期待して待ってますよ〜
よっちゃんアホだ…w - 379 :名無飼育さん(373 :2006/06/02(金) 05:52
- 本当楽しみです!!
良いところで切れてるし…(・∀・)ニヤニヤ
次回期待して待ってます!!! - 380 :名無飼育さん :2006/07/21(金) 10:35
- 待ってます
- 381 :名無飼育さん :2006/08/11(金) 09:52
- 俺も待ってます!
- 382 :名無飼育さん :2006/08/24(木) 22:00
- 待ってますよ〜!
- 383 :名無飼育さん :2006/09/16(土) 03:34
- まってますよぉ
- 384 :信長 :2006/09/29(金) 20:25
- 保全致します。
待っててくださってありがとうございます。
必ず更新いたしますので、もう少しだけお待ち下さい。 - 385 :名無飼育さん :2007/01/08(月) 20:37
- 待ってます!
作者さん頑張って〜!! - 386 :ONE DAY :2007/02/25(日) 19:05
- 『よっすぃー、夕飯、外で食べてきた?』
部活をしているよりは早く帰って来た同室の後輩に、真里は声をかける。
『いいえ、今日は学院から直行してきたからそんな時間無かったですし』
自分の机に鞄を置きながら、ひとみは答えた。
『そっか、じゃあ久々に一緒に行かない?』
『いいっすねー、あ、今から着替えるんでちょっと待って貰えます?』
『いいよ、そんな急がないし』
ベッドの上でごろごろとしながら答える真里を、横目でちらりと見ながら
ひとみは部屋着のジャージに着替える。
『そういやさー』
『はい?』
『よっすぃー、それ、下しかないの?』
『え?』
そう言われて、ひとみは自分の部屋着を眺めた。上はトレーナーに下はジャージ。
他の寮生も似たような格好をしているのだが。
『何でですか?』
『いや、それ、普通、上下セットのジャージっぽいじゃんか。
だから、不思議に思ってただけだから』
『あー………そうっすね』
上着はあるにはあったのだ。ただ、それは彼女にあげてしまったから無いという事で。
思い出しただけで、何だか胸がざわざわしだす。どうしようもなく落ち着かない気持ちに
なって、ひとみはわたわたと慌ててしまった。
『あの、その、どっかおかしいですか?』
『いや、別に』
そう答えて、真里はベッドから降りてひとみの元へと近付いてくる。
そのまま、ぽんと背中を叩いた。
『ほら、食堂行くよ?』
『はい』
それ以上は追求しない先輩は、やっぱり人の心が読めるのかもしれない、なんて
ぼんやりとひとみは思ったのだった。
- 387 :ONE DAY :2007/02/25(日) 19:06
- 『お、珍しいねー、2人一緒なんて』
人のピークが過ぎた食堂に行くと、隣室の真希と生徒会長の保田圭が食事中だった。
ひとみ達を見つけると、こいこいと手招きをする。
『そっちこそ』
帰宅部の真希はともかく、普段は忙しい圭がこの時間にいるのは珍しい事なのだった。
『生徒会の方はどうよ?』
『まぁ、ようやくひと段落って感じってとこね』
引継ぎだったりなんだったり、ぱたぱたしていたから。
隣の腰掛けた真里の言葉に、圭は軽く肩を竦める。
『そうだよー、圭ちゃん、全然、ごとーのこと構ってくれないしー』
尻尾があったらぶんぶんと振ってるだろう真希は、ちょっと拗ねた口調で口を挟む。
『それは全然関係ないし』
『えー、ひっどー』
そう言いながらも、真希はどこかにこにことして嬉しそうだ。
こんな真希、正直、初めて見た気がする。
『ん、何かごとーについてる?』
視線を感じたのか、真希は隣のひとみに顔を向ける。それに慌てて、ひとみは首を振った。
『いや、何でもないよ』
『そう?』
だったら、別にいいや、という感じで視線を圭に戻す。
ただひたむきに圭だけを見ている視線は、飼い犬が主人を見る視線と似ている気がした。
『………?』
困った様に首を捻っているひとみとそれを全く気にしないでいる真希を、
真里はどこか笑いを堪えているような表情で見ているのだった。 - 388 :信長 :2007/02/25(日) 19:08
- ほんの少しですが更新しました。
去年からずっと閲覧も書き込みも出来ない状態だったのですが、
ようやく規制が解除されたみたいです。
これからバシバシ………というわけには行きませんが、
頑張りたいと思いますので、気が向いたときにでも
読んでいただければと思っています。
- 389 :名無飼育さん :2007/02/27(火) 14:05
- 更新とってもうれしいです!
次の更新も楽しみにしてますよ。 - 390 :名無飼育さん :2007/05/12(土) 23:26
- 379でした!
出遅れましたが、今後も楽しみにしてます!! - 391 :名無飼育さん :2007/06/18(月) 16:52
- 作者さーん!楽しみに待ってます!
- 392 :名無飼育さん :2007/09/30(日) 01:10
- ずっと待ってますね!!
- 393 :Growing :2007/11/02(金) 21:09
- 『おー、よしこ、もてもてだねー』
靴箱をあけると、少なくとも1通は入っている封筒がひとみを出迎えた。
横に居た真希が、どこかおかしそうに声をかける。
『……もてもてって言われても』
封筒を手に取りながら、ひとみは小さく溜息をついた。
正直、もらってもあんまり嬉しくない。かといって、無下には出来ない、というジレンマがある。
『女子高なんだからさ、ゲームみたいに思ってればいいんじゃない?』
そんな態度のひとみに、真希は続ける。
『まぁ、そうなんだけどね』
何となく煮え切らないひとみの態度に、真希は軽く笑った。
『よしこは、そういうのは苦手な方?』
『そういうのって?』
『好きになったり好かれたりってこと』
『……うーん』
あんまり得意とか苦手とか考えたことが無かったので、答えられなくなって
思わず唸る。
その肩をぽんと叩いて、真希は教室に行こうと促した。歩きながら、のんびりと続ける。
- 394 :Growing :2007/11/02(金) 21:10
-
『真面目だねぇ』
『そういうんじゃないけどさ……』
『それとも、同性からってのが駄目?』
『ああ、言われてみれば確かに』
言われてようやく気付くひとみに、真希は笑った。しかし、不意に真顔になると、独り言のように呟いた。
『好きになってしまったら、どうしようもないよね』
相手が同性だろうと異性だろうと。
ただ胸の真ん中にその人が、どっかりと居座ってしまって、どうやったって消すことが出来なくなっちゃうんだ。
『ああ……そう、かもね』
真希の言葉にぼんやりと答えたひとみの頭にぽん!と飛び出してきたのは、何故だか学院で再会した『彼女』の笑顔だった。
え?何で、あの人の顔が浮かぶわけ?
思いっきり動揺してしまったひとみは、何も無いところで転びそうになる。
それを真希に何とか支えられて、転ぶことは回避したのだが、
一度浮かんだその顔は、なかなか消えてくれそうに無かったのだった。
- 395 :Growing :2007/11/02(金) 21:11
- 『……疲れた』
自室に戻ってベッドにダイブする。
同室の小さな先輩は、何処かに行っているらしく部屋にはいなかった。
今日は、さんざんな一日だった。
授業では、毎時間当てられるし、昼練では顔面でボールをレシーブするし、
放課後の練習ではコーチ指導の集中攻撃を浴びた。
それもこれも、見て判るほどぼんやりしていたからだと言われるのだが、
困ったことにひとみにはそんな自覚が無かった。
ただ、ふとした時に彼女の笑顔が思い出されて、それに心でじたじたして
いただけなのだが、それを説明する気にはなれない。
『……ご飯、食べにいこ』
のろのろと起き上がり、制服を着替えていると軽いノックと共に扉が開いた。
『よしこー』
『んー?』
なに、ごっちん。
『ご飯食べた?』
『まだだけど?』
そろそろ食堂も閉まる時間だから、早めに行かないと夕食にありつけなくなる。
『良かった、一緒にいこ?』
『……食べてないの?』
『んー、寝てたし』
それにさ、ちょっとよしこに話しておきたいことがあって。
『話したいこと?』
部屋じゃ駄目なの?というひとみの呟きは、『お腹空いたー』という真希の訴えによってかき消されたのだった。
- 396 :信長 :2007/11/02(金) 21:14
- 久々過ぎて、本当に申し訳ございません。
更新しない間、色々ありましたねぇ………_| ̄|○
>>389-390
楽しみにしているとかずっと待っているとか、そんな言葉
もったいない気持ちで一杯です。
本当にありがとうございました。
短いですが、次回も近いうちに更新したいと思っています。
のんびりとお待ちください。 - 397 :名無飼育さん :2007/11/04(日) 23:47
- ここのやすごま大好きです
- 398 :名無飼育さん :2008/11/13(木) 03:22
- 待ってます
- 399 :名無飼育さん :2010/12/06(月) 11:11
- 待ってます
- 400 :なっち& ◆9uC/9sChEI :2015/09/26(土) 20:21
- 待ってます←
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