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Growing

1 :信長 :2003年07月31日(木)19時52分18秒
なちまりアンリアルです。
その他の娘。さんも多数登場予定。

基本はsage進行、更新時はageでお願い致します。
2 :信長 :2003年07月31日(木)19時58分34秒
―――――見ているだけで、満足している。

高校の寮から最寄の駅まで徒歩5分。そこから5分乗って、乗り換える。
その乗換駅のホームは、同じ制服の女の子だらけで。それらに軽く挨拶をしながら、
それでも視線は向かいのホームから逸らされる事はない。

「せんぱーい」

そんな少女は後ろから大柄な少女にのしっと乗りかかられて、
むぅーとした表情で振り仰いだ。

「よっすぃー………」
重いよ、あんた。

寮で同室の吉澤ひとみは、そんな事を言われて『ひどーい』と喚いた。そう言いながらも、腕は少女の事を抱きしめ続けていて。
「どうして吉澤を置いて、先いっちゃうんですかー?」
 酷いですよー、と訴える後輩に、先輩である矢口真里は深々と息を吐いた。

3 :信長 :2003年07月31日(木)19時59分55秒
「矢口は起こしてるよ」
 それを無視して、寝続けてるのはそっちの方。

「寝汚いよね、よっすぃーは」
「………へ?いぎたない?」
 意味がわからず首を傾げるひとみの頭をぺしっと叩くと、真里はびしりと告げた。

「あんたはちょっと勉強しなさい」
「部活で精一杯でーす」

 そう訴えながら、目の前を次々と通っていく同じ制服に向かって
『おはよー』とか『おはようございます!』とか色々忙しいヤツである。
4 :信長 :2003年07月31日(木)20時01分43秒
「それにしても」
 先輩、どうして電車通学なんですか?

「んーーー?」
 はぐらかすようにひとみの腕を外す真里に、ひとみは腕組みをしながら続ける。

「だって、寮の前のバス停から40分かかりますけれど、直通バス出てるのに」
 吉澤はー、そっちの方が楽だと思うんですよー。

 のんびりとした口調で告げるひとみに、真里は『うっさいなぁ』と呟く。そのまま前を向くと、向かいのホームには反対方向にある進学校の制服の群れで混雑していて。
5 :信長 :2003年07月31日(木)20時04分34秒
 それでも、判る。

 なんだか、その人の周りだけスポットライトが当たってる感じで輝いて見える。
 そこまで考えて、何だか自分がバカらしくなって、真里は頬を掻いた。

 その瞬間、視界を列車が遮る。

「そう思いませんか、矢口先輩?」
 何気なく、通り過ぎるそれを目で追いながら、ひとみは続けた。

「矢口はバス酔いするんだよ」

 そう答えると、唇を尖らせながら続けた。
「それに、なんか、閉じ込められてる感じがしてイヤなんだ」

 その答えに、ひとみは『へー』と感心した様に頷いて。
「なーんか、矢口先輩って………可愛いっすねぇ」

 へらへらとした笑いを浮かべた後輩の脇腹に、手刀を『てぃ!』とお見舞いすると、
のたうちまわる後輩を無視して真里は視線を三度、反対側のホームに向けた。。

6 :信長 :2003年07月31日(木)20時06分01秒
 さらさらとした少し茶色がかった髪。
少し俯き加減な視線は、いつも手元にある本に向いていて。その本は新書だったり文庫だったり色々である。
その本に向けられている瞳は、眼鏡の下に隠れている。

 だけども、その目がどれだけ綺麗なのか真里は知っている。

―――――偶然に、それを見てしまった日からずっと、恋に堕ちている。

7 :信長 :2003年07月31日(木)20時08分02秒
 先に電車が来るのは、向かいのホームの方。ほんの数分の逢瀬の時間は、それで終わり。

駅員のアナウンスにぱたんと本を閉じて、少女は立ち上がる。
そんな相手に、近くにいた知り合いなのだろう同じ制服を身に着けた少女達が声をかける。
その時に見せる笑みに、心臓がどくんと跳ね上がって。

「………ぐち、せんぱい?」
 低めの心地良い声が真里の耳に届く。それにようやっと我に返り、真里は隣にいる後輩を見上げた。

「あ………?」
「なんですかー、吉澤の話、聞いてなかったんですかー?」

 どこかふてくされたように唇を尖らせる後輩に、真里は気まずい感じの表情をする。

 この恋心は、自分の胸の内だけのモノであって。
誰にも言わないし、言う気もない。そう、決めているのだ。
8 :信長 :2003年07月31日(木)20時09分04秒
 真里は出来るだけ穏やかな笑みを作り、後輩の背を叩く。

「ごめんごめん、ちょっと考え事してたんだ」
 謝るからさ、許してよ。

素直にそう言われて、許さない訳にはいかない。
そう思ったのか、ひとみは尖らせた唇を戻し、普段どおりの笑みを浮かべた。

「仕方ないっすねー」
「調子に乗るな!」

へらへらと微笑う後輩の頭をジャンプしながら、叩く。そうしないと届かない事が、無性に悔しいが、
如何せん約20センチの身長差を埋めることは今は出来ない。

 そんないつもの朝の風景に、電車が到着するアナウンスが届く。
9 :信長 :2003年07月31日(木)20時13分27秒
「あー、そうだ、先輩」
「んー」

 朝の通勤・通学ラッシュの電車の中、もちろん座れるはずも無く、手すりに届かない真里は、
席の端の方にある棒に捕まりながら、ひとみを見上げた。

「あのですねー」
「………何だよ?」

 なにやらもじもじとしているひとみを、真里は胡乱げに見た。それに気付いたひとみは、がしがしと前髪をかき上げると、ちょっとだけ身を屈めて、誰にも聞こえない様な声で囁く。

「ウチ、あの人と付き合うことになりました」
「へぇ………………………って、マジで?」

 一瞬、話を流しかけた真里は、我に返り思わず突っ込む。それに、ひとみはへらへらと笑った。

「やー、ダメ元で告白したんですけども………オッケーもらっちゃいました」
 照れたように鼻の頭を掻くひとみに、真里はぱちぱちと拍手をした。
10 :信長 :2003年07月31日(木)20時14分47秒
 目の前の後輩は、他校の2つ上の先輩に一目惚れしていて。
その悩みや相談を受け止めていたのが、同室の真里なのであった。

「そっか〜〜〜、良かったねぇ、よっすぃー」
「はい」

 こっくりと深く頷くと、ひとみは真っ直ぐな視線のまま、徐に告げた。

「それで、ですね」
「ん?」
「その人が、一度、矢口先輩に逢いたいって言ってるんで………逢ってもらえますか?」
「………はぁ?」

 なんで、オイラがーーーーー?
『どっひゃー!』と喚いてしまった真里は、
周囲の咎める様な視線に思わず首を竦めたのだった。

11 :信長 :2003年07月31日(木)20時17分18秒
「お願いしますってば!」

すたすたと前を歩く真里に纏わり付く様に、ひとみは頼み込む。
しかし、それに聞く耳を持ってくれる訳が無く。

「矢口先輩〜〜〜〜」
 吉澤の一生のお願いです〜〜〜〜。

元々下がっている眉を更に下げて、ひとみは情けなさそうな声をあげる。
そこで、真里は深々と息を吐き、ぴたりと足を止めた。

「あのねぇー」
 だからって、何でオイラなんだよ?
「や………ほら、良く寮の事、話してて」
 そしたら、興味持ったみたいで。『一度、逢ってみたい』って言うんですよー。

すっかり年上の彼女に主導権を握られているらしい男前の後輩の顔を見上げると、
真里はきっぱりと『イ・ヤ』と告げた。

「ひっでーーーー!」
 酷いっすよ、矢口先輩!これでウチの恋路が上手く行かなかったらどうするつもりなんですか?

 ぎゃーぎゃーと喚き散らす声を尻目に、耳を大げさに塞ぐ仕草をしてみせて。

「………そんなんでダメになる恋路なんて、知らないね」
ふん、と鼻をひとつ鳴らすと、真里は校門へと足を向ける。
それに、ひとみは『待って下さい、矢口せんぱーい!』と声を張り上げながら追いかけて行くのだった。
12 :信長 :2003年07月31日(木)20時19分20秒
「ていうか………なんで、オイラはここにいるんだ」

普段、通学に使う最寄りの駅前にあるファミレスで、
チョコパフェを前にしながら真里は思わず呟いた。

「やっぱり、矢口先輩って優しいっすね」
体育会系の口調をしつつ、にこにこ顔のひとみは、
メニューを真里の前に差し出しながら続けた。

「どんどん好きなの選んで下さい。おごりますから!」
「………当たり前だろうが」
 必死に頼む姿にほだされたのと、後輩が一目ぼれをしたという『彼女』を見てみたいという好奇心も手伝って、
結局、折れてしまった真里なのである。

「あ、駅に着いたみたいです」
 震える携帯を手に取ると、ひとみは画面を見ながら告げる。
「ふーん」
 パフェをスプーンで突付きながら、真里は興味なさげに言葉を返して。

「友達も連れてくるみたいです。―――――気ぃ、遣ってくれたのかなぁ」
 でれでれとした表情で呟く後輩に『あー、もー勝手にしてくれ』と心で呟いた真里は、ふっと表通りに視線を向ける。
13 :信長 :2003年07月31日(木)20時21分18秒
「………あ」
 反射的に立ち上がってしまう。そのまま、エントランスに向かおうとする真里の手を、ひとみは掴んだ。

「ちょっと、矢口先輩、どうしちゃったんですか?」
 もう直ぐ来るんですよ?逢ってくれるんじゃなかったんですか?
「ごめん、ヤボ用」

だって、目の前を通っていくのだ。背の高いモデルのような少女と連れ立って歩いているあの彼女が。
声をかけるとかそうゆうのじゃなくって、身体が勝手に反応してしまう。

 しかし、ひとみはきっぱりと言葉を返した。
「ダメです!」
 それに、もう、来ちゃいましたし。

「………へ?」
真里が追いかけようとした二人組は、あろう事か、今まさに真里が向かおうとしているエントランスの扉を開いていて。
入り口できょろきょろと誰かを探しているらしい背の高い少女は、こちらに視線を向けると、真っ直ぐ向かってくる。
もちろん、『彼女』もその後ろを着いてきていて。
 一体………どういうこと?
今にも勢い込んで飛び出そうとしている真里と、その腕を掴んでいるひとみ。

モデル張りの少女は、ひとみに向かって柔らかく微笑むと、
「待った?吉澤」
 そう問いかけたのだった。
14 :信長 :2003年07月31日(木)20時23分36秒
「あ、飯田さん」
 思ったより、全然、早かったですね。

 ひとみの問いかけに、『飯田』と呼ばれた少女は軽く頷くと、
『メール送った時は、もう直ぐそこまで来てたし』と答えた。

「で、一体、何してるの?」
 小首を傾げながら、ひとみに問いかける。

「や、いきなり『用がある』って出て行こうとしてたんで、引き止めていたトコです」

そう告げてから真里に視線を向けると、
相手はどこか冷たい目でひとみを見返していて。

「何言ってるの?」
 そんなこと、ひとっことも言ってないよ、矢口は。

 『ハッ』とひとみをバカにしたように鼻で笑うと、とっとと元の位置に戻って。そんな先輩の態度に、ひとみは唖然とした。
しかし、直ぐに、机に手を付き立ち上がる。

「ひっでー、矢口先輩!ウチを騙したんですねーーー!」
「騙してなんか無いよ!ただ………」

 そこで、一旦言葉を切り、ちらりと不思議そうな表情をしている二人を見てから、
「用が、済んだだけ」
 ぽつりと答える。
15 :信長 :2003年07月31日(木)20時26分44秒
「………へ?」
 不意に大人しくなってしまった真里に気勢を削がれたひとみの肩を、恋人は軽く叩く。

「話は終わった?」
「あ………ああ、はい」
『すみません、立たせてしまって』と呟きながら、ひとみは席を真里の隣に移動して。
向かいのソファに、遅れてきた少女達が腰掛ける。

「えーと………なんていうか、ですね」
かりかりと頬を掻きながら、ひとみはどこか照れくさそうに
目の前に座るゴージャスな美人さんに視線を向けて。

「矢口先輩、この人が飯田圭織さんです。えーと、飯田さん、この人が」
「はじめまして、飯田です。話は良く、吉澤から」

ふんわりと木漏れ日の様に微笑む圭織に、真里は、
一瞬、目をぱちぱちとさせたが、直ぐに普段通りに『ニッ』と微笑んで。

「こちらこそ、よろしく。矢口って呼んで下さい」
そう言いながらも、真里の神経は圭織の隣に座る、小柄な少女に集中していて。
『気にしちゃダメ、気にしちゃダメ』と呪文の様に心で唱えながらも、
やっぱりそれは難しい事だった。
16 :信長 :2003年07月31日(木)20時28分12秒
「飯田さん、お隣の方がメールで言ってたお友達ですか?」
えらいぞ、よっすぃー!良くやった!寮に戻ったら、褒めて遣わす!

なんて、心でガッツポーズをしている真里を知ってか知らずか、
ひとみの問いかけに圭織は頷く。

「そうだよ。これから予備校だしさ、ちょっと付き合ってもらったんだー」
予備校ってことは………同学年じゃないのか?てっきり同じかと………
なんて、ぐるぐると考えている真里の横で、ひとみはのんびりと問いかける。

「飯田さんと同級生なんですか?」
 ひとみの問いかけに、小柄な少女は小さく頷いた。
「圭織とは、クラスも一緒なんだ。………良く、話聞かせて貰ったよ?吉澤さん」

どこか含むような笑みを浮かべる相手に、
圭織は『何か言いたげだねぇ、なっち』なんて肘で突付いて。

「まぁまぁ、それはともかく………あたしは、安倍なつみって言います」
初めて聞いた彼女の声は、思ったより低くって。
それでも、心地良く真里の胸に響いたのだった。
17 :信長 :2003年07月31日(木)20時30分01秒
「矢口と吉澤って寮で同室なんだってね」

いきなり、圭織が話題を変えてきて。それに、真里はこくりと頷く。
なつみと談笑していたひとみも、それに気付いたのか首を傾げた。

「普通、同学年同士じゃないの?珍しくない?」
「あー、うん。そう、かもしれないねぇ」
 紅茶を啜りながら、真里は続ける。

「でも、3年になると個室だし。後輩に、先輩から教えて貰ったことを伝えるって感じで………いわゆる伝統かなぁ?」
 勉強になるよ、いろいろと。よっすぃー、素直ないい子だしね。

 その言葉に、ひとみはにっこりと微笑んだ。
「ウチも、矢口先輩と同室でよかったって思いますよ?」
 ほら、ウマがあうとか合わないとかあるじゃないですか?

そういう部屋もあるらしい。一応、そのことも考慮して、
1ヶ月経ったぐらいに、微妙な部屋替えはあるのだった。

「仲良いんだねぇ」
 しみじみと呟く圭織に、ひとみは目をぱちぱちとさせた。それから、慌てて口を開く。
18 :Growing :2003年07月31日(木)20時32分04秒
「でも、そういうんじゃないですから!」
 ウチが、好きなのは!
「はーい、ストップー」
「ふが!」

口元を手で覆われ、ひとみは思わず変な声を出す。
恨みがましげな視線を口を押さえて下さった先輩に向けた。

「こんな公共の場面で『好きだ』とか大声で言うんじゃないの」
もうちょっと考えなさい、このバカたれが。

ひとみは言い返そうと真里の手を外したが、
目の前に座る恋人が『うんうん』と頷くモノだから。

「………やっぱ、迷惑ですかね?」
 恐る恐る問いかけてみる。
「う〜〜〜ん」
 ちょっと考えてから、圭織は罰悪そうに微笑んだ。
「そんなんじゃないけど………やっぱり………」
 恥ずかしい、かな?
「―――――判り、ました」

反省したように俯いた相手に、圭織は何かを言おうとする。
しかし、そんな時、なつみが不意に口を開いた。
19 :Growing :2003年07月31日(木)20時35分26秒
「圭織、そろそろ講義始まっちゃうよ?」
「え………?」
その言葉に、反射的に時計を見た圭織は、
何とも言えない不思議な表情でなつみを見つめた。だが、直ぐに小さく頷くと、
「そう、だね………」
 じゃあ、矢口、あたし、そろそろ。
「うん、気にしないでー」
 それから、ふと思い出したように、手帳に走り書きをすると圭織に手渡す。

「何?」
「オイラのケータイとメルアド。圭織の知らない吉澤情報流したげるから」
 そう言って軽くウィンクをすると、圭織は『うん』と頷いて。
「後で返事するから、待ってて」

『吉澤を無視してなんですかー!』と喚く後輩を無視して、二人は友情を成立させていたりして。
それに対抗してか、ひとみは同じ様にメモに何かを走り書きをして、あろうことかなつみにそれを差し出した。

「………どしたんだい?」
 いきなり水を向けられたなつみは、びっくりした表情でひとみを見つめる。
20 :Growing :2003年07月31日(木)20時36分38秒
「あたしにも飯田さん情報、教えて下さい!」

それに、なつみはくすっと微笑うと『じゃあ、あたしのも教えないとね』と呟いて、
さらさらと丸っこい字で同じようにペンを走らせた。

「ありがとうございます!」
 それを一度眺めてから、ひとみは手帳に丁寧に挟んだ。

―――――ううううう、羨ましい。
心で『きぃ!』となってしまった真里の事に気付いたのかいないのか、
ひとみは立ち上がり、圭織に声をかける。

「行きましょう、飯田さん」
「え?」
「予備校、授業始まるんでしょう?送りますよ、予備校まで」
 その申し出に、圭織はじぃっとひとみを見つめていて。

『………何をしてるんだろう?』と思って真里が見ていると、こっくりと頷いた。
どうやら、彼女には独特な『間』が存在するらしい。

「ありがとう」
 その言葉に、ひとみは満足げに微笑った。あんな表情、今まで見たこと無いと、真里は思う。
21 :Growing :2003年07月31日(木)20時37分38秒
「じゃあ、お先に失礼します。安倍さん、後でメールしますね?」
「うん、わかった」
 浮かれた様子の後輩に、真里は釘を刺すことも忘れない。

「門限までには帰ってくるんだぞー」
「はーい」
ひらひらと伝票を振りながら―――ここにいる全員分をおごってくれるらしい。リッチな奴だ―――
ひとみは、圭織と連れ立って、出て行ったのだった。


「………………」
「………………」

っていうか、何でいきなり二人っきりになっちゃうんだーーーーー?
と、ハタと真里が気付いたのは、これから数秒後の話である。

22 :Growing :2003年07月31日(木)20時39分53秒
ヤバイヤバイ、どうすりゃいいんだよぉ〜〜!

心でじたじたと暴れまわるけれども、それを態度に表すことなど出来ず。真里は、手元に合ったカップの中身を意味もなくスプーンでかき回した。

「………あの」
声をかけると、黒目がちな瞳が自分に向けられていて。
そんな至近距離で見つめられて、真里の心臓はどくん!と跳ね上がる。

「えと………その………」
「良く、駅のホームで見かけるよね?」
 不意に話題を振られて、真里は目をぱちぱちとさせる。
 今………この人、何て言いました?
『良く、駅のホームで見かけるよね』って………っつーことは。
「気付いて、たんですか?」
 その問いかけに、なつみは小さく頷いた。

「圭織から、吉澤さんの写真、見せて貰ってたから」
 その言葉に、真里の肩の力はがくーーっと抜ける。
 そっか………そう、だよな。『あの時』のこと、覚えてる訳なんてないか。
 一気に身体から力が抜けてしまった真里を見て、なつみは小首を傾げた。
23 :Growing :2003年07月31日(木)20時41分20秒
「どうかした?」
「や………何でもないっす。それより、よっすぃーの写真って?」

真里の問いかけに、今度はなつみが驚いた表情をした。
それから、少し考える素振りを見せて。

「これ、吉澤さんには内緒ね」
片目を閉じて、人差し指を口許に当てる。
そんな仕草が物凄く可愛くて、真里は思わずこくこくと頷いていた。

「圭織ね、吉澤さんに一目惚れだったの」
「………へぇー」
「矢口さん達の学校と、ウチの学校って文化交流盛んじゃない?部活とかでも良く練習試合やってるし」
 その繋がりで写真手に入れて、それ、見せてもらったんだ。

「そう、だったんですか」
腕組みをしつつ、真里はソファに背を預ける。
そんな真里を意味ありげな視線で見つめると、
「でも、ね」
 なつみは言葉を続けた。

「最初、駅の向かいのホームであなた達見た時、『ああ、圭織、勝ち目ないな』って思っちゃったの」
「………はぁ?」
思わず真里はぽかーんと口を開けた。バカみたいに見えるだろうけれども、
それ以外のリアクションが思い浮かばなかった。
24 :Growing :2003年07月31日(木)20時43分51秒
「だって、凄く仲が良くて」
 見てるこっちも楽しくなってしまう感じ。
大型犬と小型犬がきゃっきゃっとじゃれあってる様は、見ているだけで柔らかい気持ちになってしまう。
「結構ね、ウチの学校でも人気あるんだよ、矢口さんと吉澤さんのコンビ」
「………………はぁ」
 何とも言えない表情で、返事をするしか術がない。

「あ………気ぃ悪くした?」
真里の反応を勘違いしたらしいなつみは、小首を傾げて顔を覗き込んだ。
それには、ふるふると首を横に振って。
「や、ちょっとびっくりしただけです。そっか………そんな風に見られてるのか………」
 ぶつぶつと呟く真里に、なつみは慌てて続ける。
「でもでも気にすること無いからね?」
「あー、はい」
 気のなさそうに答えてから、真里はハタと気付く。
25 :Growing :2003年07月31日(木)20時44分22秒
「っつーか、オイラ、よっすぃーとそんなんじゃないですから!」
『圭織に勝ち目がない』と思った、ということは………即ち『よっすぃーと矢口が付き合っている』
って勘違いしてたってことだよ!と、言うことに。

それは困る。非常に困る。困るったら困る。

両手をぶんぶん振りながら、真里は懸命に訴えた。
それに、なつみは『うんうん』と頷く。

「うん、ごめんね」
だから、今日、会えてよかった。

そう呟いて微笑むなつみの表情は、真里をメロメロにするのに十分すぎるぐらい魅力的だった。
26 :Growing :2003年07月31日(木)20時47分59秒
「まだ、時間大丈夫ですか?」
 のんびりとした口調でひとみが問いかける。それに圭織は小さく頷いた。
予備校近くの小さな公園。時々、近道として通り抜けをする人が通るぐらいで。
「うん、大丈夫」
その言葉にへにゃっと微笑うと、ひとみは圭織の手をきゅっと握り締める。思わず、圭織は身体をびくんと強張らせた。
それを勘違いしたのか、ひとみは『すみません』と呟き手を離す。

「ちが………」
「あたし、結構考えなしなんで」
 飯田さんがイヤだって思うこと、しちゃうかもしれませんけども。
「吉澤、違う」
 ひとみの袖口を圭織は引っ張った。ひとみは足を止め、きょとんと小首を傾げる。
27 :Growing :2003年07月31日(木)20時48分29秒
「イヤなんかじゃ、ない」
「飯田、さん」
「ただ………急でびっくりしただけ」
 それだけ、だから。
ぼそぼそとぶっきら棒な感じで告げる圭織に、ひとみは目を数度瞬かせてから、そぉっと目を細めた。

「………かわいー」
 飯田さん、物凄く可愛い事言ってるの、自分で気付いてます?
「え?」
 そのまま、ぎゅっと抱き寄せられる。
「吉澤?」
周囲の目を気にしないその行動に、圭織は少しだけうろたえる。
だけども、その腕の中はどうしようもないぐらい心地よくって。
「もぉ、大好きです」
微かな声でそう告げてから、その綺麗な長い髪に口付ける。
それから、そぉっとその身体を手放した。
28 :Growing :2003年07月31日(木)20時51分42秒
「これぐらい、許してくださいね?」
 ぺろりと舌を出してひとみは言った。その子供の様な仕草に、圭織の胸がドキリと鳴った。
 ああ、こういう仕草も凄く似合うなぁ。
 そう考えながら、じぃっと自分を見つめて来る視線に、ひとみはがしがしと髪をかきあげて。
29 :Growing :2003年07月31日(木)20時52分37秒
「えーと………」
 きょろきょろと辺りを見回して誰もいないことを確認すると、その頬にちゅっと唇を当てた。
「!!」
 目を見開いて驚いた表情をする圭織に、ひとみはへらっと微笑った。
「飯田さん、すっげーかわいー」
 先程から何度も言われる言葉。くすぐったいような感覚が心を撫でてゆく。
 だって、今までそんな風に言ってくれる人なんていなかったから。
「―――――ありがとう」
「お礼言われる事なんて、してないっすよ?」
「でも、なんかそれしか思い浮かばない感じ」
 ぽつんと落とすように答える言葉に、ひとみは圭織の心が少しだけ覗き見えた様な気がした。
 無意識に、ひとみは圭織の頬を手のひらで触れた。その行動に、圭織は小首を傾げる。
「吉澤?」
「何でもないっす」
 それでも、手を離すことは出来なかった。
ずっとずっと触れていれば、彼女の『寂しさ』が溶かせるようなそんな気がしてた。
30 :Growing :2003年07月31日(木)20時53分47秒
「あー、いいお湯でしたー」
 首にかけたタオルでがしがしと頭を拭きながら、ひとみは自室の扉を開ける。
そこには『むぅ〜〜〜』っとした表情の小さな先輩が目に入って。

「矢口、先輩?」
 恐る恐る問いかけた後輩に、机に置いた携帯を睨み付けたまま、『ああ?』と声を出した。
「あんだよ、よっすぃー?」
「や………だって、携帯とにらめっこしてるから」
 その言葉が引き金になったのか、真里は『うがーーー!』と叫んで立ち上がる。

「よしざわ〜〜〜〜〜」
 携帯、貸しやがれ〜〜〜〜〜!
「ちょ………ちょっと待ってくださいよ〜〜〜」
 いきなり何、言うんですか〜〜〜?

携帯を頭上に持ち上げると、ひとみはベッドの上に飛び乗った。
それを追い掛ける様に、真里もベッドに足をかける。
31 :Growing :2003年07月31日(木)20時55分31秒
「矢口先輩ってば〜〜〜!」
「いいから、黙って寄こせ!」

あの後、結局、あれ以上会話が弾むことも無く。
『時間だから』『あ、はい』なんて味気ない会話で別れてしまった。
ちっくしょ〜〜〜、どうして、もっとスマートに連絡先とか聞き出せなかったんだろう?
ああ、それより、自分の携帯とかメルアドとか教えられなかったんだろう?

後悔してもし足りない。だから、こうして、後輩に迫ってるのであって。
解ってる、これが八つ当たりだってこと。
でも、そうでもしないとひょんなことで繋がった、彼女との糸が、切れそうで怖かった。
32 :Growing :2003年07月31日(木)20時57分48秒
腕を一杯に伸ばしたひとみにぴょんぴょん飛び跳ねる。届くわけがないのに。

「あぶっ、危ないですってば、そんな跳ねたら」
「おわっ!」

案の定、言ってる傍からバランスを崩した真里の身体を抱き寄せて。
しかし、格好良く決まるわけもなく。

 バッタ〜〜〜〜ン!
 そのまま、床へと転がり落ちた2人なのであった。
33 :Growing :2003年07月31日(木)20時58分46秒
「あいたたたた………」
「ひどいっす、矢口先輩」

真里の下から、恨めしげな声が届く。
ハッとして顔を下に向けると、そこにはしかめっつらをした後輩が睨み付けていて。

「あら、よっすぃー、折角の男前が、だ・い・な・し」
「可愛こぶってもダメっす」
 っつーか、とっとと退けてください。

 にべもなく告げるひとみの頭を、べしっと叩くと、
「そーれーがー先輩に対する態度かい?」
 頬を引っ張りながら声をかける。

「いひゃいっすー!」
足をばたばたさせるけれども、
マウントポジションを取ってしまった真里に敵う訳が無く。

「や〜〜〜、何か、よっすぃー見下ろすのって新鮮だねぇ」
「謝りまふから、どいてくだひゃーい」
「ん〜〜〜、どうしよっかなぁ〜?」

 と、楽しげに呟く真里の耳に、
勢いよく扉が開く音と、『矢口、五月蠅い!』という声が届いた。
34 :Growing :2003年07月31日(木)21時00分53秒
扉を開けてきた相手が目にしたのは、
ちっちゃな同級生が大柄な後輩の上で馬乗りになっている光景で。

眼鏡の奥のきつく見える目をぱちぱちとさせると、小首を傾げながら問いかけた。

「………お邪魔だった?」

その言葉に、ひとみはぶんぶんぶんと力一杯首を横に振る。
それから懸命に訴えた。

「たすけてくださーい」
 矢口先輩がウチのこといじめるんですー!
「何だよ、コイツ!人聞きわりーなぁ」
 そう告げると、真里はひとみの頭をパコッと殴る。
「だから、痛いっすー」
 そんな時、扉の所で立っている少女の肩に不意に重みが圧し掛かってくる。

「あ〜〜〜、やぐっつぁんがよしこ襲ってる〜〜〜〜!」

 その声に真里は、『げっ!』という表情になる。
35 :Growing :2003年07月31日(木)21時03分12秒
「ちょ………ちょっと後藤!人聞きが悪い事言わないでよね!」
やっとひとみから離れると、真里は『ぎゃわん!』と吼えた。
それに『後藤』と呼ばれた少女は、先輩を背中から抱きしめながら、へらへらと笑って明るく問いかける。

「だってさぁ、今のどうみてもそうだよねぇ、圭ちゃん」
「ん〜〜〜〜」
『圭ちゃん』と呼ばれた少女は、後輩の行動に頓着する素振りもなく軽く肩を竦めて。
倒れたままのひとみに手を差し伸べる。

「………助かったぁ」
 その手を借りて起き上がったひとみは、やれやれと息をつき、先輩にぺこりと一礼をした。

「で?一体、何でこうなったの?」
 真里の同級生である保田圭は腕組みをしながら、不思議そうに問いかける。
「や………別に………そんな、深い意味は」
「酷いんですよぉー、矢口先輩ってば、ウチの携帯取り上げようとしたんですよ!」

 ここぞとばかりに圭に訴えるひとみを、真里は
『余計な事は言うなっちゅーの!』とばかりにぎろりと睨み付ける。
36 :Growing :2003年07月31日(木)21時04分52秒
「………へぇ」
 何でまた、そんなけったいなことを?
「う………まぁ、色々と………あってさ」
 思わず口篭る真里に、圭は軽く息をつくと、『ま、いいけどね』なんて話を終わりにしてくれて。

「とりあえず、静かにしてよね、うるさいったらありゃしない」
「ちがうよー、圭ちゃん、凄い心配してたもん。『何かあったんじゃないか?』って」
ひとみの同級生である後藤真希は、黙っていればクールと見える表情を崩して微笑う。

それに、圭は唇を尖らせて、
「言うなってば!ったく」
なんて反論をする。

実はこの二人は、真里の部屋の隣で同室であり、
また真里の中学時代からの友人でもあった。

「へへ、圭ちゃん、だいしゅきー」
 この真面目で心配性な同級生の照れぶりに、真里は思わず圭に抱きつく。それには『うっさいなぁ、もぉ!』
と振りほどく態度をするけれども、本気ではない事は一目瞭然である。

「あー、やぐっつぁん、ずるいー」
後藤だって、圭ちゃん大好きだもんねー、と言うなり、突進してきた真希を受け止めきれずに、
先程のひとみの様に情けなく床に寝転がった圭の姿があったのだった。
37 :Growing :2003年07月31日(木)21時06分09秒
「………何、緊張してるんですか?」
 翌朝、いつも通りの電車に乗ろうとしていた真里に、ひとみはのんびりと声をかける。
「べべべべ、別に?」
 オイラ、緊張なんてしてないよ。
がちがちに強張った笑顔に、ひとみは目をぱちぱちとさせて。
それから、同じ様にぎこちなく笑みを返した。そのまま、所在なさげにきょろきょろt辺りを見回す。次の瞬間、ぱっと表情を輝かせた。

「あ、安倍さんだ」
 ほらほら、矢口先輩。ねぇってば。

そう言いながら、小さい先輩の肩を軽く揺さぶる。あまりの反応の無さに視線を下に向けると、
先程よりも更に硬直している真里と目があった。

「―――――あの………」
 矢口先輩………ウチ、なんか変なことを………。

 不安げなひとみを横目に、真里は両手で気合を入れるように頬を叩く。
それから、心で『うし!』と気合を入れて。視線を向かいのホームに向けると、
言われた通り、なつみがそこにいた。
38 :Growing :2003年07月31日(木)21時07分58秒
昨日まで見る事が出来なかった柔らかい微笑みが自分達に向けられていて。
それに、『ほぇー』となってしまう自分がいた。

ひらひらと手を振ってくるなつみに、真里は目をぱちぱちとさせる。
それに答えようと右手を上げかけた真里の隣で、ひとみが大きく両手を振った。

「おはよーございまーす」
 元気良く挨拶をするひとみに、なつみは驚いた様に身を引いたが、直ぐに笑みを浮かべて小さく頷く。

 ちくしょー、よっすぃーばっか目立ちやがってー。
だけども、いざ、なつみを目の前にすると身体が硬直したように動かなくなる。そんな自分が、どうしようもなく情けなく思えて。

真里は所在無さげにホームにある時計に目を向けた。
あと2分程でなつみの乗る電車が来る。―――――迷うのは一瞬だった。

「よっすぃー、これ、ちょっと持ってて」
「え………え?あれ、先輩?」
 荷物を押し付けられたひとみが真里を振り返った時、制服を翻して連絡通路に繋がる階段を駆け上っている真里の背が見えた。
39 :Growing :2003年07月31日(木)21時09分21秒
「安倍さん!」
 自分の学校の制服の中に混じる他の学校の制服の少女が目の前に立つ。茶色の髪を揺らし、息を切らせながら。
 その理由が判らなくて、なつみはちょっとだけ小首を傾げた。そんな相手に、真里は大きく深呼吸すると告げた。

「―――――あの!」
 昨日、言えなかったんですけれども。
「はい?」
 ああ、そんな小首傾げてこっちを見つめないで欲しい。

走ったせいか、それともなつみの前に立っているせいか、
高まる鼓動を懸命に押さえつけながら、真里は口を開く。

「あたしと、友達になってくれませんか?」
 ………………………。

微妙な間があった。きょとんとしているなつみが口を開こうとしたその瞬間、
後ろをなつみが乗る電車が到着してしまう。

あああ〜〜〜〜、タイミング、悪すぎるぅ〜〜〜。

思わず座り込みたくなる勢いの真里の横を通り過ぎて、なつみは車両に乗り込む。
奥まで行かず、扉の所で立ち止まり真里に向き直った。
40 :Growing :2003年07月31日(木)21時10分28秒
「もう、友達だって思ってたんだけど?」
「………え?」
 思わずなつみを見つめてしまう真里に、なつみは柔らかい笑みを浮かべたままで続けた。
「矢口さんは、違う?」
 ふるふるふると首を横に振る真里に、なつみは右手を差し出した。

「あの………」
右手をなつみの手を見比べながら、真里は戸惑う様に口を開く。
それににっこりと微笑みながら、なつみは答えた。 

「握手」
「………あ………はい」
 
きゅっと握り締めた手は、ひんやりと冷たかったけれども、物凄く柔らかかった。
41 :Growing :2003年07月31日(木)21時12分07秒
「いきなりあっち行くから、びっくりしちゃいましたよー」

自分達の乗る電車にぎりぎり間に合った真里に、ひとみは言う。
それに、未だぼーっとしている真里は『うんうん』と頷いて。

「もー、聴いてますか、矢口先輩?」
「あー、うん」

見ているだけで良かったと思っていた相手が、目の前で微笑んでくれたのだ。
それで、浮かれない訳がない。

見ているだけじゃ、物足りない。
ゆっくりでもいいから、君に近付きたい。そう、願う。

真里はなつみに触れた手を確認するかのように、きゅっと握り締めるのだった。

42 :Growing :2003年07月31日(木)21時12分57秒
今回はここでおしまいです。
まだまだ序章………。
43 :名無しさん :2003年07月31日(木)22時17分21秒
なちまりサイコ〜
44 :名無し読者 :2003年07月31日(木)23時46分39秒
なんだか面白そう^^
これからさらにどんなメンバーが出てきて、どんな風に話が向かっていくのか楽しみです。
頑張って下さい〜
45 :∬´◇`∬<ダメダモン… :∬´◇`∬<ダメダモン…
∬´◇`∬<ダメダモン…
46 :信長 :2003年08月01日(金)08時14分00秒
>43
サイコ〜ですか(笑)。読んで頂いて、そう思って下されば
嬉しいです。

>44
ありがとうございます(笑)。
書いてる本人、正直どのような話になるのかは判りません。
生暖かく見守ってください

>45
………
>1〜>6のメール欄を読んで下さい。
お願いします。
47 :読んでる人@ヤグヲタ :2003年08月01日(金)15時15分40秒
強烈に素晴らしいなちまりを発見した予感・・・。
続きも期待してます!!
48 :くり :2003年08月02日(土)10時12分49秒
更新おつかれさまです!
最近『なちまり』減ってきていたので
すごくうれしいです!
それに、ほかの小説ではみれないような
矢口さんもみれてかなりいいっス!
次の更新もがんばってください!
49 :赤鼻の家政婦 :2003年08月05日(火)23時32分15秒
>>45
削除依頼してください。


作者さんの文、本当に好きです。
生温く(殴)、更新、楽しみにしてます。
50 :名無しさん :2003年08月10日(日)02時45分16秒
おおっ、赤鼻さん発見。。。
51 :信長 :2003年08月10日(日)17時44分02秒
「おはよー、矢口」

 普段通りに駅のホームで電車を待っていた矢口真里は、聞き覚えのある声に振り返った。
 そこには同級生で親友の保田圭が立っていて。

「あれー、圭ちゃん、電車なんてめずらしー」

 真里の言葉に、圭は『そぉ?』と呟きながら真里の隣へと歩みを進めてきた。

「矢口こそ、いっつもこの時間なの?」
 結構、早いじゃない。八時前に学校に着いちゃうよ?

「………いいじゃんよー」
 そんなん矢口の自由じゃんか。

 わざとふて腐れた口調で答える真里の事を、ちゃんと知っている圭はひょいと肩を竦めた。
52 :Growing :2003年08月10日(日)17時44分46秒
「はいはい、そうでしたねー」
 あたしには関係ないことでした。

 そう返す圭に、真里はぐっと言葉に詰まると、

「そーゆー意味で言ったんじゃないよ………」

 ぽそりと続ける。そんな親友の頭を圭はくしゃりと撫でて、

「ごめんごめん、あたしもちょっと言い過ぎたわ」

 ちゃんと謝った。

「………いや、こっちこそ、ごめん」

 圭の目を真っ直ぐに見つめながら、真里も謝る。それから、ハッと我に返って。

「って、何で、矢口達、朝からこんな事しなきゃなんないんだよー」

 いつもの口調で訴える真里の頭を、がっしとロックすると、

「素直じゃない矢口さんのせいですー」

 どこか楽しんでいる口調で、圭は答えたのだった。

53 :Growing :2003年08月10日(日)17時45分32秒

「く………苦しい」

 ギブギブ、と腕をぱしぱしと叩いてくる小さい親友の頭を離すと、
 恨みがましい視線が圭に向けられる。

「―――――ったく、もぉ」
 髪、乱れちゃったじゃんかよぅ、と毛繕いをするように両手で髪を整える真里は、どこか小動物の様で。

「まぁまぁ、それより今日は吉澤は一緒じゃないの?」

 その言葉に、真里は小さく頷く。

「練習試合が近いからって。先の電車に乗ってった」
 そーゆー時だけは、早起き出来るんだから。ほんと、バレー馬鹿だよねぇ。

 言葉は悪いけれども、口調は優しい。それを知っているからこそ、
 あの大柄な後輩はこの小さな同級生に懐いているのだ。

「まぁ、吉澤はバレー推薦で来たからねぇ」
 バレー馬鹿っていうのは、あながち間違ってないよ、うん。
 
 真面目な顔でうんうんと頷く圭を見て、今度は真里が問うた。
54 :Growing :2003年08月10日(日)17時46分28秒
「それよりごっつぁんは?」

「さぁ………まだ寝てるかもね」
 何で、あたしが起こさなきゃならない訳?

 真顔でそう問い返されて、真里はうっと言葉に詰まる。

「や………ほら、同室だし、先輩だし………」

「矢口だって知ってるでしょ?」
 中学の時から、あいつが遅刻魔って事ぐらい。出席日数足りなくて、ぴーぴー泣いてたのだってさ。

「あー、まぁ、そうだけども」
 ある意味、問題児って言えば問題児だけれども。それを補って有り余る魅力を、その後輩は持っているのだ。

「だからこそ、寮監は圭ちゃんと一緒の部屋にしたんじゃないの?」
 何てったって、生徒会長だもんねー。

 きゃはは、と微笑う真里に圭はやれやれと息をつく。

「いい迷惑だよ、ほんと」

 そう言いながらも、目は優しい。彼女の不器用なまでの優しさと気遣いを、真里達はちゃんと知っている。
55 :Growing :2003年08月10日(日)17時47分27秒
 圭と話していながらも、意識はやっぱり向かいのホームに向かっている自分に、真里は心で苦笑する。

 そして、その姿が視界の隅に入った瞬間、心がそっちに持っていかれるのだった。

「………矢口?」

 勘の良い圭のこと、ばれてしまうかもしれないとも思ったけれども、それでも気持ちは止められなくって。

 視線が合う。隣にいるのがいつもの後輩じゃないことに、一瞬、不思議そうな表情をしたけれども、
 直ぐにあの天使の様な微笑みを向けられて。

『お・は・よ・う』と口が動くのが判った。それに、真里も同じように返す。

 それ以上、言葉を交わす事はない。あっちはにこにこと微笑んで、こっちはもじもじとしているだけで。

 そうこうしているうちに、電車が来て。それで終わってしまうのだ。
56 :Growing :2003年08月10日(日)17時48分18秒
「………ふーん」
 
 名残惜しそうに出て行った電車を見送っている真里に、圭の呟きが届いた。

「………なんだよぅ」

 言いたいことあったら、言えよ!

 照れ隠しに喧嘩を売る感じで睨み付けてくる真里に、圭は何とも言えない表情をしていて。

「まぁ………人の恋路に口出しはしませんけどね」

 なっちに惚れるとは、なかなか面食いだったんだね、矢口。

「―――――え?」

 いきなりの言葉に、真里はぴきん!と身動きが取れなくなってしまったのだった。
57 :Growing :2003年08月10日(日)17時49分25秒

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
58 :信長 :2003年08月10日(日)18時00分32秒
>>45
あ………あんまり期待されても。
程ほどに生温くお願い致します(笑)。
でも、今回、ほとんどなちまりありませんが………大丈夫でしょうか?

>>48
ありがとうございます、その言葉で頑張れます(笑)
でも、今回からはこのペースで行かせて下さい。
の………のんびりと、お待ち頂ければと思ってます

>>49

あらー、家政婦さんでしたかー(苦笑)。
ぜんっぜん気にしてませんよ<大嘘

家政婦さんトコ、実はひっそりこっそり覗かせて頂いてます。
今度、ご挨拶行きます………。
59 :赤鼻の家政婦 :2003年08月10日(日)22時27分43秒
私のレスの仕方が悪かったみたいです(^^;)

>>45は私じゃないです。
で、>>49は、作者さんに向けたのではなく、>>45を投稿された方に対しての依頼です。
紛らわしいレスしちゃって、ゴメンナサイm(_ _)m

>家政婦さんトコ、実はひっそりこっそり覗かせて頂いてます。
>今度、ご挨拶行きます………。

更新、止まっててすいません………<逃走。
60 :LOVE :2003年08月11日(月)13時02分13秒
なちまりマンセー!!!
続きに期待してます!!

なんか、ここの矢口さん・・・めっちゃ可愛い・・・(笑
61 :タケ :2003年08月12日(火)11時55分22秒
勢いで全部見てしまいました。
これからも読んでいきたいと思います
ってことで続きを期待してます。
62 :Growing :2003年08月23日(土)22時42分34秒
「なんだよ、なんだよ!」
 昼休み、食堂へと向かいながら真里はぶつぶつと呟いている。

 結局、あの後、『どういうことだよ?』と圭を問い詰めても、思った通り、飄々とはぐらかされて。

「あー、もぉ。訳わかんない」
 しかも、圭ちゃん、彼女の事『なっち』って呼んだ。オイラなんて『安倍さん』って呼ぶのが精一杯なのに。

 さらさらの茶色の髪をがしがしとかきあげると、小さく息をつく。

「バカみたい、ほんと」
 ぽつんと落とすように呟くと、込み合い始めた学食の中へと足を踏み入れるのだった。
63 :Gro :2003年08月23日(土)22時44分23秒
「あ〜〜〜、矢口せんぱーい」
 足を踏み入れると、恐ろしいまでに器を載せているトレイを持っているひとみと鉢合わせる。

「お、よっすぃー」
 相変わらずいい食欲してるねぇ。
 
 感心したように声をかける真里に、『育ち盛りですから』と満面の笑みでひとみは答える。それから、首を傾げて言葉を続けた。

「一人ですか?」

「あー、うん。今日、みんな忙しいらしくってさ」
 コンビニ行くのもめんどいし、だったら学食でいいかなって。

「一緒にどうです?ごっちんもいますけど」

 一人で食べるのは慣れているとはいえ、やっぱり淋しい。だから、真里はその申し出に甘んじて受けた。

「じゃあ、お言葉に甘えて」
「はい!じゃあ、あっちに席とってるんで、来て下さい」

 にっこりと微笑むと、ひとみはぺこりと頭を下げて、その場を去ったのだった。
64 : :2003年08月23日(土)22時46分32秒
「あー、やぐっつぁんだー」
 真希がのんびりした口調で、手をひらひらと振る。

「なんだよ、悪かったな」
 トレイを持っているので、肘で真希の頭を押すと、『いったーい』とふざけた口調が返ってきた。
 それにけらけらと笑い返しながら、真希のトレイに目をやる。

「ごっつぁんも、相変わらず食欲旺盛だね」

 ランチセットに付け足して、麺類の器が乗っている。運動しているひとみはともかく、何もしていない真希がそれだけ食べられるのは正直、感心に値する。

「えー、これでも抑えた方だけどなぁ」
 よしこなんて、2時間目の終わりに、早弁してるのに、これだよ?

 親友のチクリに、ひとみはむぅっと膨れる。

「朝、6時過ぎに朝ご飯なんだよ?朝練したら、カロリーも消費するっつーの」
「はいはい」
 
そんな会話を交わしながらも、手は休むことなく食事を摂っていて。ある意味、凄い二人である。
65 :Growing :2003年08月23日(土)22時48分05秒
「そうだ、矢口先輩」
「んー?」

 ご飯をまくまくと食べていた真里は、ひとみの声にチラッと視線を上げる。

「あのですね、今度の週末って、学院との対抗戦じゃないですか」
「ああ、そうだねぇ」

 真里達が通っているのは、私立桜学園。近所である私立乙女学院とは文武ともに交流が盛んで、春は体育会系での対抗戦、秋には文化祭等で
お互いに助け合ったりしているのだ。

「それで忙しいんでしょ?よっすぃーは」
「ええ。だから、そのかわいーい、同室の後輩のお願い、聴いてくれます?」
「………聴くだけな」
「ひっでー!」

 よよよ、と泣き崩れる後輩の足を、テーブルの下で蹴り飛ばすと、本気でひとみはテーブルの上に突っ伏して痛がっている。
66 :Growing :2003年08月23日(土)22時50分07秒
「で、何よ?」
「先輩、バレー部の応援団に入ってくれません?」
「えーーー」

 ヤダ。絶対ヤダ。そんな目立つこと。

 きっぱりと答える真里に、ひとみは眉を下げて、しゅーんとした表情になる。

「あー、やぐっつぁん、よしこ、泣かしたー」
「や、泣いてないし」
 あっさりと答えるひとみに、真希は『あれー?』と呟く。

「―――――しかも、学ランじゃん。応援団って」
 ダボダボで、笑いものだよ、そんなん着たら。

「や、可愛いと思うんですけど………ってぇー!」

 再び、向こう脛を蹴られて、今度も本気で痛がるひとみ。

「とにかく、お断り」
 そうきっぱりと答える真里に、ひとみは情けない表情をしながらも頷く。
「―――――はい」

 あー、先輩に怒られちゃうなぁ。
 そう呟きながら、ひとみは天井を見上げるのだった。

67 :Growing :2003年08月23日(土)22時51分21秒


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
68 :信長 :2003年08月23日(土)22時59分46秒
>>59
こちらこそ、すみません(苦笑)
お互いにのんびりまったり行きましょう。

>>60
なんか、モジモジしてる様が目に浮かびます(苦笑)<矢口さん
可愛いといってもらえて光栄です!

>>61
えーとえーと、のんびりまったりと進んで行きますので、
同じ様についてこられると嬉しいです(^ ^)


タイトル、チョコチョコ間違えてるんですが
気にせずに………(苦笑)
69 :名無しさん :2003年08月24日(日)13時58分40秒
いい!
なちまり&よしめし最高。
70 :Growing :2003/09/20(土) 21:57
「なんて言われようと、矢口はしないからね」
 言い出したらそれを貫き通す強さを持つ真里の性格を良く知っている同室の後輩は、諦めたように頷いた。その隣でまくまくとご飯を食べていた真希に、真里は視線を向ける。

「ごっつぁんに頼めばいいじゃん。これでも人気あるんだし」
「ああ、それも手ですねぇ」
「んぁ?」
 いきなり話を振られて、真希は顔を上げる。そして、真里とひとみを見比べると、ほわんと微笑んだ。

「ごとーは無理」
「何でよ?」
「何で?」
 ウチを助けると思ってさぁー、お願い!学ランがイヤなら、なんとかするから。

 自由応援という制度のせいで、人気のある部とない部の応援人数の差が激しいのだ。だからこそ、人気のある生徒を応援団として迎え入れる事により、観客動員を増やすという手が使われているのだった。
 過度に期待されるのはプレッシャーになるけれども、やっぱり応援という名の後押しは必要なのだ。
71 :Growing :2003/09/20(土) 21:59
 両手を合わせて拝むひとみに、真希は困ったように長い髪をくるくると指で弄びながら続けた。

「別に学ランとか着るのは平気なんだけどさ」
 生徒会の手伝いしろって言われてるんだ、圭ちゃんに。

「………え、何で?」
 ごっつぁん、別に何もしてないじゃんかよ。

 真里の言葉に、真希はへらっと笑って答える。

「『こーゆー時に先生方にアピールしておかないと、あんた、内申下がっちゃうんだからね!』って」
「ああ、そういうことね」
 なんだかんだいって、圭ちゃん、優しいもんね。

 目を細めて呟いた真里の言葉に、真希は大きく『うん!』と頷いた。そして続ける。

「だから、ごとー、よしこの頼みきけないんだ、ごめんね」
「それだったらしょうがないや」

 ひとみも微苦笑しながら肩を竦める。そのまま、頬杖をつくと誰ともなしに呟いた。

「折角、飯田さんも応援に来てくれるって言ってたのになぁ」
 ごっちんも先輩もいないんじゃ、ちょっと張り合いないかも。

 その言葉に、真里の肩がぴくっと動く。
72 :Growing :2003/09/20(土) 22:00
「ちょっと、よっすぃー」
「あい?」
「今、なんて言った?」
「や………ごっちんも先輩もいないんじゃ張り合いないかもって」
「違う、その前」
「ええと………『飯田さんも応援に来るのに』って」

 余りの真里の勢いに、ひとみは大きく目を開いて、続けた。

「それを先に言えっつーの!」

 圭織がくるってことは、『彼女』も一緒に来るって確率が高い。そういうことに興味がなく受験モードの3年生は、応援に来ない事の方が多いのだ。

「よし、よっすぃー、その話乗った!」

 びしぃ!と親指を立てながら、真里は告げた。いきなりの言葉に、ひとみも真希も呆然としていて。

「ふぇ?」
「応援団だよ!学ランでも何でも着ちゃる!」

 あの人ともうちょっとお近付きになりたいと、心のそこから願っている真里にとって、ある意味『渡りに船』なのだった。
 例えそれが下らない話題だとしても、少しでも興味を持って貰えれば、真里はそれだけで嬉しくなる。

「ホントっすか?」
「ホントっすよ!」
 立ち上がってがっしりと握手を交わす凸凹コンビの横で、真希はのんびりとお茶を啜っているのだった。
73 :信長 :2003/09/20(土) 22:03
み………短くて申し訳ないっす<平謝り
しかし、アホアホ師弟だなぁ………(苦笑)


>>69
よしめしはともかくなちまりはまだまだ絡む気配すらございません。
それでもそう言って頂けると嬉しいです。
ありがとうございます

74 :名無し読者 :2003/09/22(月) 01:02
更新うれしいです。
先が楽しみ。
75 :名無し読者 :2003/09/25(木) 15:37
ほんのりやすごまにも萌え…
続き楽しみに待ってます
76 :名無し読者 :2003/10/13(月) 11:09
保全
77 :名無し読者 :2003/10/16(木) 22:18
そろそろ一ヶ月だよ、作者
78 :Growing :2003/10/17(金) 20:00


         ■■■■■
79 :Growing :2003/10/17(金) 20:01
「一体、どーゆー風の吹き回し?」
 目の前で夕飯を食しながら、圭が不思議そうに問い掛ける。

「あにが?」
 大きな口でメインディッシュのエビフライに噛み付いた真里は、口をもごもごとさせながら言葉を返した。

「応援団にはいるだなんて。中学ん時も去年も、あんた、イヤがって逃げてたでしょうが」
 すばしっこいあんた、追っかけまわすの大変だったわ……と、遠い目をしながら圭は呟く。

「いいじゃんか、別に」
 以前の事は思い出したくもないという感じに不機嫌な表情になった真里に、圭は『はいはい』と肩を竦めて。

「まぁ、今週末まで大変だろうけど頑張って」

「……ホント、思ったより、大変なんだよねぇ」
 学校を挙げてのお祭りみたいなものだから、ちゃんと真里みたいな臨時の応援団も統制を取らなければならない。 もともと委員会というレベルで本家本元の『応援団』も存在する高校なのである。女子高なんだけれども。

 と、いうことで本日より居残り練習が始まっている真里なのであった。

「たまには真面目に学校行事に参加してくれたっていいんじゃない?」
 生徒会長らしく発言をする圭に、

「うっさい、もぉ」
 真里は大仰に膨れてみせたのだった。
80 :Growing :2003/10/17(金) 20:03
「矢口ー、応援団やるんだってー?」

「学ラン着るんじゃなくって、着られるんじゃないのー?」
 トレイを持って圭や真里の脇を通り過ぎていく面々が、からかいの言葉をかけていく。

「うっさいなー」
 おいらの勇姿を見て、惚れんなよーー、とこちらも冗談混じりで返していく。

 何だかんだ言って、目の前に座るこの小さな友人は学校内でも寮内でも、人気者なのだ。
 目の前で、凄い勢いで食事をしている真里を見ながら、圭はぼんやりと考えた。

「そういやさ、圭ちゃん」

「んー?」

「おいら、部活とか入ってないけれども、そーゆー時は、どんな風に申請すればいいんだろ?」

 部活等入っていない生徒の門限は17時30分。これが第1門限である。
 学校内の用事でどうしても遅くなると判っている場合には19時の第2門限。
 部活等に入っていて、尚且つ、大会が近い場合には20時に第3門限と、段階が踏まれているのだ。

 しかし、常勤している寮監が学校及び寮のOGであることから、例え直前であっても事前であれば、
了承してもらえるという不文律が成り立っていた。

 ただし、嘘がバレた時には、風呂&トイレ掃除半月という厳罰が待っている。

「や、正直に言えば大丈夫だって」
 第2か第3になると思うけれども、それは言い方次第。

 さらりと答える圭に、真里はにっこりと微笑んで『ありがと』と礼を述べたのだった。
81 :Growing :2003/10/17(金) 20:05
「それよりもさ、圭ちゃん」
 矢口、ちょっと訊きたい事あるんだけども。

 食堂を後にして、廊下を歩いていた真里が圭を見上げた。

「んー?」
 一体、何よ。そんな怖い表情して。

「や……怖いのは圭ちゃんの方じゃ……」

「あ?なんか言った?」
 即座に返されて、その迫力に真里はふるふると首を横に振るしか術がない。

 『よろしい』と頷く圭に、真里はホッと胸を撫で下ろして。

「っていうか、何?」

「あー………うん、あの、さぁ」

 珍しく言葉を選んでいるのか、言いよどんでいる友人に圭は足を止める。それから、不思議そうに小首を傾げた。

「あの、さ………朝の話、なんだけども」

「朝の話?」

 圭は怪訝な表情で、眉を寄せた。そして、次の瞬間、ぽんと手を叩く。

「ああ、『なっち』のコトね」

「そうそう………って、だから、何で『なっち』なんて親しげに呼ぶんだよ!」
 むっきーっとなってしまった真里は、圭に右拳を繰り出す。それを平手で受け止めながら叫び返す。

「ちょ………、何よ、あんた」
 いきなり、その態度はっ!

「そーゆー事言うと、教えないわよ?」

 圭の言葉に、真里は神妙な表情になった。しかし、直ぐに首をぶんぶんと横に振る。

「あー、いい。やっぱいい」
 聴いたらショックかもしれないし。

 そんな気弱な態度の真里に、珍しく圭の悪戯心が湧きあがって来て。

「いーや、説明してあげるから」

「ヤダヤダヤダ」
 うっさい、黙れ、圭ちゃん。

 両手で耳を塞ぎながら、真里はふるふると首を振る。

「あのねー、実はねー」

「あー、もー、わざとだ、絶対、わざとだ!」
 耳に手を当てながら駆け出す真里を、にやにや笑いながら圭は追いかけるのだった。
82 :信長 :2003/10/17(金) 20:10

>74
お待たせ致しましたm(_ _)m。
これからも気長にお待ち頂ければ嬉しいです

>75
ほんのり具合が好きな作者です(^ ^)。
今回は出す機会がなかったですが、後藤さんはきっと大物です。


>76
すみません、保全ありがとうございました。
放置じゃないですので。


>77
気長にお待ち下さい。


83 :信長 :2003/10/17(金) 20:12
月1更新になりつつありますが、
のんびりと見守っていただければ嬉しいです。

それでは………
84 :名無し読者 :2003/11/03(月) 22:59
矢口と圭ちゃんの掛け合いがいいっすねえ
85 :信長 :2003/11/08(土) 17:18

■■■■■■■■■■■■■■■■
86 :Growing :2003/11/08(土) 17:19
「ただーいま」
 風呂から上がってきた真希は、こちらに背を向けてなにやら熱心にノートを取っている圭に声をかけた。
「ああ、おかえり」
 お風呂、混んでた?
 振り返らずに問いかけてくる圭に、真希は首を横に振る。しかし、直ぐにそれだとこちらに背を向けてる圭に判らないと気付き、
 言葉にして答えた。

「んーん」
 ガラガラだったし、それにこんな時間だから、掃除当番の子達に追い出された。
 入浴が好きな真希は、少しだけ残念そうに告げる。そんな相手に圭は椅子ごと振り返ると、おかしそうに微笑った。
「そりゃそうだ」
 あんた、お風呂入ってないのに、学校から帰ってくるなり爆睡してるんだもの。
「………だってぇ」
 春だから眠いんだもん。
 子供の様に唇を尖らせる真希に、圭は少しだけ肩を竦める。
「―――――あんたは、年がら年中睡眠不足でしょうが」
 どっかのアニメの主題歌の様に、さ。
「………うん、そうかも」
 真面目な表情で頷く真希に、圭は『バーカ』とだけ呟くと、
「とっとと髪乾かしなさいよ、まだ冷えるんだから」
 再び、机に向かったのだった。
87 :Growing :2003/11/08(土) 17:20
 ドライヤーの音が止む。次の瞬間、椅子ごと圭の身体は真希の腕に包み込まれた。

「こぉら、邪魔するな」
 まだ、勉強してるんだってば。  

 少しだけ身動ぎをする圭に、真希はあっさりと答える。

「うーん」
 ちょっとぐらい休憩してもいいじゃん。

 真希のさらさらの髪が圭の頬をくすぐる。ふわりとシャンプーのいい香りがした。しかも、風呂上りのあったかいその身体。
 心地悪い訳がない。

 圭は、ひとつ息を吐き出すと、その提案に乗ることにした。
88 :Growing :2003/11/08(土) 17:21
「………そういやさっき誰かが話してたんだけれども」
 場所はベッドの上に移ったけれども、未だ背後から圭を抱きしめたままである真希が、ふと思い出したように口を開いた。

「ん?」
「やぐっつぁんと派手に追いかけっこしてたんだって?」
 しかも、逃げるやぐっつぁんを圭ちゃんが意地悪く追い回してたって聞いたけれども。
「………人聞きが悪いわね」
 誰よ、そんな事言ってたの?

 圭の言葉に、『まぁまぁ、落ち着いて』と真希は呟いて、その頬に唇を当てる。

「こら」
 圭の訴えはさらりと流されて、真希は不思議そうに小首を傾げた。

「珍しいね、圭ちゃんがそんな風にするなんて」
「ん〜〜」

 圭は視線をちょっとだけ上げると、思い出したように口元を綻ばせた。
 そんな圭の気配を感じて、真希は顔を後ろから覗き込もうとする。

「や、だってさ」
 矢口、どうやら好きな人いるみたいでさ。その表情見てたら、なーんか、からかいたくなってね。
 楽しそうに続ける圭に、真希は口を開く。
89 :Growing :2003/11/08(土) 17:22
「………へぇ」
 そんな言い方するってことは、その人、圭ちゃんの知り合い?

 その言葉に、圭はちょっと動きを止めた。ゆっくりと身を捩り、向かい合う形になる。

「―――――あんた、時々、鋭いわね」
「そう?」
 思うままに口にしてるだけなんだけどなぁ。

 困った様に呟く真希の頬に、指をそぉっとなぞらせると、圭は柔らかく笑んだ。

「でも、あたしは」
 あんたのそーゆートコ、嫌いじゃない。

 圭の言葉に、真希も同じ様に微笑むと、
「圭ちゃんが、そういうんだったら、いっか」
 頬を撫ぜる圭の手を取り、素早く唇を奪うのだった。

 もちろん、その後、『いい加減にしなさい!』と叩かれるのだけれども、それはそれ。
90 :信長 :2003/11/08(土) 17:26
と、いうことで、この2人はこんな仲でした。

………久々にCP絡みの更新だよ。・゚・(ノД`)・゚・。

>84
2期メンは大好きなので(^ ^)。
ふざける事も真面目なことも出来る2人に乾杯です<ヲイ

次回は、もうちょっと早めに更新したいと思います。
長い目で見守ってくれれば、と思います。
91 :名無し読者 :2003/11/08(土) 23:28
やすごまブラボーーーー!(w
92 :センリ :2003/11/16(日) 20:13
矢口さんと保田さんのかけあいがおもしろいv
93 :名無し読者 :2003/11/21(金) 01:51
ごっちんのマイペースさが可愛い
なんとなく主導権握られちゃってる圭ちゃんもw
94 :信長 :2003/12/05(金) 21:08
>>91
やすごまは初挑戦なので、そういって頂けるとホッとします。
こんな感じでいいんでしょうかね(^^)?

>>92
2期メンヲタなもので………。
お互いがお互いを認め合ってる二人は、見てて微笑ましいですものね

>>93
私の書く後藤さんは、どうもこうなってしまいます<マイペース
圭ちゃんは………うーん、ヘタレ(^^)ですかね?


更新が滞ってて申し訳ございません
放置はしないので、気長にお待ちください

次回更新は未定ですm(_ _)m
95 :名無し読者。。。 :2003/12/20(土) 13:01
待ってるよん
96 :信長 :2004/01/09(金) 19:26
更新します
97 :Growing :2004/01/09(金) 19:27
「随分と大騒ぎだったらしいじゃないですか」

 濡れた髪をタオルでがしがしと拭きながら部屋に入ってきながら
ひとみは問うた。

「ああん?」
 ベッドの上で寝転がり雑誌を読んでいた真里は、胡乱げな表情で
視線をひとみに向けた。

………ヤバイ、また、馬鹿な事言ったか?

 ひとみの本能がそう囁く。だけども、逃げ場所なんてなかった。
だって、ここは自分の部屋でもあるんだし。

 ぐるぐると考えている間に、ちっさな先輩はひとみの目の前に立っていて。

「………生意気な事を言う口はこれか?」

 慌てて両手で防御しようとしたが、一瞬だけ遅かった。
 ひとみの唇は、しっかりとその小さな手にひねり上げられてしまう。

「い………いひゃいれす」
 この俊敏さ、放置しておくのは勿体無い、とひとみは心から思った。
場違いとは判っていたけれども。

「あー、何かなー?」
 ぜんっぜん聴こえないなぁ、と意地悪く笑いながら力を強める真里に、
ひとみは懸命に訴える。

「すみまひぇん、吉澤がひゃるかったです」

 その訴えが届いたのか、真里はようやっと手を放してくれた。
98 :Growing :2004/01/09(金) 19:28

「ったく、誰から聞いたんだか」
 確かに目立つ行動をとった自分がいて。それを後悔しているから、こんなにまでも
些細な言葉に反応してしまう。

 ベッドに戻りちょこんと腰掛けると、ひとみも向かいにある自分のベッドに同じように
腰掛けて、小首を傾げる。

「どうしちゃったんですか?」
 普段の事じゃないですか、保田先輩と矢口先輩がじゃれあうのって。

 ひとみの言葉に、真里は不機嫌そうに唇を尖らせた。しかし、すぐに息を吐き出す。

「………まぁ、色々あるんだよ」

 まさか『彼女』のことを知ってる知らないで、どたばた騒ぎを起こしただなんて、
格好悪くて言える訳がない。

 どこか憂い顔の先輩を、困った表情で後輩は見つめていたのだが、おずおずと口を開いた。
99 :Growing :2004/01/09(金) 19:28
「そう、ですよね」
 誰でも、言いたくない事はありますよね。

 その言葉に、真里はひとみに視線を向けた。

「ウチはですね」
 元気で笑ってる矢口先輩が好きなんです。

「だから、そんな表情させたの申し訳ないです」

 へにゃっと眉を下げて、ひとみはぺこっと頭を下げた。その潔い態度に、真里は首を横に振る。

「こっちこそごめん」
 変に反応し過ぎちゃったね、オイラ。普段だったら流せるんだけどさー。

 明るく告げる真里に、ひとみはあからさまにホッとした表情になって。

「―――――まー、色々あるっすね」

「そうっすね」

 真里の言葉に、ひとみも同じ様に軽く返すのだった。
100 :信長 :2004/01/09(金) 19:32
短いながらも、更新終了

新年明けましておめでとうございます。
のんびりまったりと進めて行く予定なので
呆れずについて来て頂ければ、と思っております

>>95
待ってて頂いて感謝です。
ちょっとだけですが更新致しました。
101 :名無飼育さん :2004/02/21(土) 00:01
待ってます
102 :信長 :2004/02/26(木) 19:17
更新します
103 :Growing :2004/02/26(木) 19:18
「おーい、やぐちー、こっちこっちー!」
 制服から応援団の衣装に着替えた真里に、聞き覚えのある声が届く。

「あれ、圭ちゃん?」
 何でこっちにいるの?生徒会って、ウチの方に残ってるんじゃなかったっけ?

 とてててて、と駆け寄ってくる真里に圭はあっさりと答えた。

「今年は実行本部が学院なの、あんた、ほんとに何も聴いてないのね」

 溜め息をつきながら、首を横に振る圭に真里は頬を膨らませて。

「うっさいなぁ、もぉ!」
「それより、矢口、その格好………」
「な………なんだよ」

 『ふーん』とおもむろに上から下までじろじろと見られて、真里は思わず身構える。
 ある意味『文句があるなら、かかって来い!』という威嚇モード突入で。

 しかし、圭はあっさりと続ける。

「結構、似合ってるじゃん」
 もっとダブダブで、服に着られてるって感じだと思ってたんだけども。

「………お、おう」
 拍子抜けした真里は、間の抜けた声を上げて。そんな同級生の頭を、圭はたしたしと叩く。

「頑張れ」
「うん」
 くすぐったそうに首を竦めながら、真里は嬉しそうに頷くのだった。
104 :Growing :2004/02/26(木) 19:19
「お、格好いいじゃん、矢口」
「矢口先輩、かわいーー」

 そのまま圭と連れ立って歩いていると、あちらこちらから声がかかる。
 そんな女子高的な反応には、十分に慣れている真里はソツない笑顔で、受け流して。

「それより圭ちゃん、本部に戻らなくていいの?」
「うん、とりあえず、こっちの生徒会のメンバーがメインだからさ。
 吉澤の勇姿でも見に行こうって思って」
「ごっつぁんは?」
「後で来るでしょ」
 気の無い返事に、真里は肩を竦める。そんな時、背後から聞き覚えのある声が届いた。
105 :Growing :2004/02/26(木) 19:20
「おーーい、やぐちー」

 真里はその声に、足を止め振り返る。体育館へと向かう渡り廊下に、黒髪のすらりとした
美人が、こちらに向かって手を振っていた。

「おーー、圭織ー!」
 ぱたぱたと近付いてくる真里に、飯田圭織は嬉しげに微笑む。

「やっぱ、矢口だ」
 その小ささは間違いないって思ったんだけどもね。

 年上の友人は、言い難い事をあっさりと告げて下さる。

「なんだとー、こら」
 言葉は乱暴だけれども、笑顔で返しているので険悪な雰囲気にはならない。

 同じように笑顔のままでいた圭織は、隣にいる圭にも微笑みかける。

「久し振りだね、圭ちゃん」
「そっちは4月で世代交代だからねぇ」
 いいの、生徒会の方に顔出さなくて?後輩達、てんぱってるよ?

 穏やかに会話する2人の顔を、きょろきょろと真里は見比べて。
106 :Growing :2004/02/26(木) 19:21
「―――――何、矢口?」
「どしたの?」

 不思議そうに問い掛けてくる友人達に、真里はおずおずと口を開いた。

「えーと………もしかして、知り合い?」
「「うん」」
 ステレオ放送で返ってくる言葉に、真里はがっくりと肩を落とす。

「そう………だったんだ………」
「圭織は今年の3月まで生徒会長だったんだよ」
 あんた、学院との合同行事に興味なかったから知らなかっただろうけどさ。

 さらりと答える圭の言葉を受けて、圭織が続けた。

「カオがね、生徒会長で、なっちが書記だったの」
 その言葉に、真里はぴん!と思い当たる。
 そっか………そういう事か………。だからか。

「けーいーちゃーん」
 真里の言いたい事が判った圭は、にやにやと笑いながら『あったりー!』と言う。
107 :Growing :2004/02/26(木) 19:22
「まぁまぁ、いいじゃないの」
 自分に詰め寄ってくる真里を『待て待て』と両手で押し止めて、圭は圭織に顔を向ける。

「そういや、なっちは?」
「だーかーらー、気安く『なっち』って言うな!」
 小声で告げる真里の訴えを無視して、圭は続ける。

「久々だから、逢いたいんだけど」
「うーーん」
 腕組みをしながら、圭織は困った声を出す。

「今ね、ちょっと用あっていないんだよねぇ」
「………そっかぁ」
 圭から離れて、あからさまに落ち込む様子を見せる真里に、圭織は目を何度か瞬かせた。
 そして、何故だか満面の笑みを浮かべる。

「圭織?」
 いきなりのその態度に、圭も真里も小首を傾げた。それには、小さく首を横に振って。

「吉澤の試合には間に合うと思うからさ」
 先に、体育館入って待ってることにしよ?

 その提案に断る理由が無かったから、2人でこくりと頷いたのだった。
108 :信長 :2004/02/26(木) 19:23
>101
遅くなって申し訳ございません。
次回からはもう少しペースアップしたいと思っておりますので………。

気長にお待ち下さいm(_ _)m
109 :名無飼育さん :2004/03/01(月) 23:31
更新お疲れ様です

圭ちゃんとなっちの関係はそういうことだったんですね
満面の笑みの圭織の動向を気にしつつ続き楽しみにしてます
110 :信長 :2004/03/23(火) 18:33
更新します
111 :Growing :2004/03/23(火) 18:34
 体育館に入ると、コートは2つに分けられて、既に練習が始まっている。
 応援は両校とも自由参加なのだが、思った以上に人が集まっていた。

「こらー、矢口!着替えたら、とっととこっち来ーーーい!」
 バレー部の応援団の長が、2階のギャラリーから身を乗り出して叫ぶ。

「やば、見つかっちゃった」
 首を竦めながら、そう呟くと、圭と圭織を振り返る。

「じゃ、また、後でね」
 手を振りながら、慌ててギャラリーへと続く階段を上って行く。
112 :Growing :2004/03/23(火) 18:35
「忙しそうだねぇ」
 のんびりと呟く圭織は、ふと、視線を感じてコートの方を振り返った。

 そこには、今にもこちらに向かって駆け出してきそうな勢いの年下の恋人がいて。

 とくん、と早まった鼓動を隠しながら、そちらに向かって小さく手を振る。

 すると、ご褒美を貰った犬の様に目をきらきらと輝かせて、満面の笑みを浮かべる。

 きりっと引き締まった表情が、崩れるその瞬間が、好き。

 柔らかく微笑んだ圭織の耳に、『ううん』と小さな咳払いが届いた。
113 :Growing :2004/03/23(火) 18:36
 視線をそちらに向けると、圭が微苦笑しながら問い掛ける。

「………あのさ、もしかして」
 吉澤と、付き合ってるの?

「うん」

 あっさりと頷く圭織に、圭は大きく息を吐き出しながら、がっくりと肩を落とした。

「圭ちゃん?」
 カオ、また、何か変な事言った?

 目をぱちぱちとさせながら問い掛けてくる相手を、圭は見上げる。

「や………そんなんじゃないけどさ」
 あんまりにも素直過ぎる答えに、力抜けただけ。

 前髪をかきあげながら答える圭に、圭織は首を傾げた。

「え?否定した方が良かったの?」

「や、だから、そんなんじゃなくって」

 自分より背の高い相手の頭をよしよしと撫でる。そんな時、背後から『あーーー!』と声がかかった。
114 :Growing :2004/03/23(火) 18:37
 聞き覚えのある声に、圭はやれやれと思いながら振り返る。案の定、そこには頬を膨らませた真希が立っていて。

「ずるい、圭ちゃん」
 あたしにばっか仕事押し付けて、自分は遊んでるだなんてー。 

 そう言いながら、圭の背中からぎゅっと抱きついてきて。

「こら、後藤」
 離れろって。

「やだ」

 そして、圭を腕の中に閉じ込めたまま、圭織を見上げる。そのまま、不思議そうに首を傾けた。

「はじめまして」

 ふんわりと笑いながら声をかけてくる圭織に、へらっと笑うと同じように『はじめまして』と返す。

 頭の上で交わされているのんびりとした挨拶に、圭は大仰に息を吐き出した。

「ええと………」

「あなたが、後藤真希さん?」
 吉澤から、よく名前を聴くけれども。逢うのは初めてだよね?

 その言葉に、ぴん!と頭の上に電球が点いた感じの表情になった真希は、小さく頷く。

「飯田さんですね?よっすぃーのこい………」

「こーら」
 そういう事を、おおっぴらに言うんじゃないの。

 開きかけた口を塞がれた真希は、『なんだよぉー』と小さく呟いたけれども、
圭の言うことは正論だと気付いて、口を閉ざす。

「いいよ、圭ちゃん」
 気にしないで、ね?

 真希に視線を向けながら、圭織は続ける。
115 :Growing :2004/03/23(火) 18:38
 そんな時、練習が終わったひとみが、圭織達の元に駆けて来た。

「飯田さん!」
 来てくれたんですね、ありがとうございます!

 尻尾があったらぱたぱたと振っているだろう相手に、圭織は小さく頷く。

「お礼なんていいってば」
 それより、試合頑張ってね?

 どこか照れくさそうに告げる相手に、ひとみは『うんうん』と頷く。その表情は、物凄く幸せそうに見えた。

 気付かれないように2人から距離を置いた圭と真希は、こそこそと囁きあう。

「うわー、よしこの表情、無茶苦茶緩んでるー」
 すっげーだらしない表情。しまりなーーい。

「あれはファンが見たら嘆くわねぇ」
 って、後藤、あんた、いつまで抱きついてる訳?

 はっと気付いた圭の裏拳が、真希の額にこつんとヒットした。
116 :信長 :2004/03/23(火) 18:42
1ヶ月もあって、これだけか、という声が聞こえるようですが
色々あって、このペースが精一杯です。
申し訳ございません

>109
飯田さんは、何に勘付いたのか………それは、まだまだ先のお話です。
ちょっとずつですが、進んでいってます。
のんびりまったりと進んでいきますので、
気長にお待ち下さいm(_ _)m
117 :名無飼育さん :2004/03/29(月) 08:19
マイペースごちんとデレデレよしこがなんとも言えず可愛いっすね
118 :信長 :2004/05/02(日) 20:36
更新します。
119 :Growing :2004/05/02(日) 20:38
「ごめんね、遅れちゃった」
 ぱたぱたと体育館に駆け込んで来たなつみは、出入り口の近くで立ち話をしている親友を見つけて声をかける。
「おー、間に合ったね」
 用事は済んだ?

 圭織の言葉に、なつみは肩を竦める。

「なかなか捕まらなくって、さ。試合終わったら、もう一回探しに行こうと思って」
「りょーかい」

 圭織との会話が終わり、改めて近くを見る余裕が生まれる。そこに見知った顔がなつみを見つめて、微笑んでいた。
120 :Growing :2004/05/02(日) 20:38
「やー、圭ちゃん」
「久し振り、なっち」

 歩み寄ってくる相手の二の腕を、ぽんぽんと気安く叩いて。

「元気だったかい?」
「なっちこそ、元気そうだね」
「そう?」

 にこにこと笑いながらのんびりと会話を交わす2人の後ろでは、ひとみが真希を宥めていて。

「圭ちゃんのあんな表情、ごとー、見たこと無い………」
「ま………まぁまぁ、落ち着いて。生徒会の仕事とかで知り合いだったんだろうしさ」
 参ったなぁ、結構、こういうの気にするタイプだったんだ、ごっちん。
「むーー」

 そんなひとみに気付いたのか、なつみはちょこちょこと近付いてくる。
121 :Growing :2004/05/02(日) 20:39
「久し振り、吉澤さん」
「あ………はい、お久し振りです」
「レギュラーなんでしょ?凄いよね」
「や………そんな事は、ない、です、けど」
 ううう、ごっちんの視線が痛い。保田先輩、何とかして下さい、これ。

 ひとみの心中を知ってか知らずか、圭はのんびりと圭織と話している。

「で、その後ろにいる子は?」
「あ………あの、ウチの親友の」

 説明をしようと口を開きかけたひとみの言葉を奪う様に、圭はその名を呼んだ。
122 :Growing :2004/05/02(日) 20:40
「後藤」
「………何?」
「あたし、先に本部に帰るから」
 あんたは、バレーの試合の結果報告、よろしく。

「え!見てってくれないんですかっ?」
 思わずひとみの方が返事をする。それに、圭は目を丸くするが、直ぐに微笑んで。

「色々とやる事もあるの、生徒会主催なんだから。じゃ、後は頼んだわよ」

 そう告げて、真希の頬をさらりと撫でる。それだけで、強張った真希の表情がへにゃりと緩んでいって。

「うん、判った」
 こっくりと頷く真希に『よろしい』と呟くと、圭は『じゃ、また後で』と圭織となつみに告げて、その場を去って行った。
123 :Growing :2004/05/02(日) 20:42
■ ■ ■ ■ ■

「遅い!着替えに何分掛かってる!」

 この会場の応援団の長が腕組みをしながら、真里を待っていた。怒らせたら怖いと有名な上級生である。

「すみません」
 ぺこりと頭を下げると、不意にその頭をくしゃりと撫でられる。

「………?」

 恐る恐る視線を上げると、どこか微苦笑している相手がいて。

「まっ、まだ試合までは時間あるしね」
 少しぐらいの遅刻は多めに見ましょう。
「あ………はい」
 ありがとうございます、と素直に口にする真里を、先輩は再度腕組みをして、頭のてっぺんからつま先まで不躾に見遣る。

「な………何でしょうか?」
「結構、いい感じだね」
 学ラン似合ってるよ。

「―――――ど、どうも」
 思わず身を引いた真里の肩を、先輩はがっしと掴むと、生徒達が集まりつつあるギャラリーをくるりと振り返った。
124 :Growing :2004/05/02(日) 20:43
「せ………先輩?」
「誰かー、カメラあるー?」
 矢口との2ショット撮ってくれないー?

 その良く通る声に、十数人の少女達の動きがぴたりと止まった。しかし、次の瞬間、『はい!はい!』という声があちらこちらから届く。

「矢口先輩、あたしもお願いします!」
「こっち応援来てない奴にも、見せとかないとね、その格好」
「やー、可愛いよ、それ」
 各学年の少女達の声をまとめると、上記の通りである。

「………え、えとえと」
 だ………誰か、助けてくれ。

 余りにも周囲の盛り上がり様に、真里は思わず視線を先程居た場所に向けた。そのまま、動きが止まる。

「いつの間に………」

 彼女がそこに居た。周囲のざわめきももう耳に入らない。―――――思わず、身体が動いていた。
125 :信長 :2004/05/02(日) 20:47
お待たせいたしました。
<待っていて下さった方はいるのかどうか………(苦笑)
ようやっと、進んだ気がします………。


>117
マイペースな男前とへたれな男前はこれからも
どんどんと出張ってくると思います(笑)。

両方とも大型犬だけれども、飼い主にはとてもとても従順です。
そんな感じで。

126 :名無し読者 :2004/05/05(水) 02:41
待ってました!

ヤキモチごっちん可愛い
圭ちゃんのフォローの仕方がツボです
127 :名無飼育さん :2004/05/13(木) 23:08
私も更新楽しみに待っています。
ここのごちんとよしこの忠犬っぷりが可愛くて可愛くて…
なちまり目当てで読み始めたのに、登場人物みんな気に入ってます。
128 :名無飼育さん :2004/05/30(日) 01:04
待ってるよ〜
129 :信長 :2004/05/30(日) 15:48
更新します
130 :Growing :2004/05/30(日) 15:49
 ててててと駆け寄ってきた先輩を見つけたのは、真希だった。

「あれー、やぐっつぁん、どうしたの?」
 のんびりと問うて来る真希の声に、真里はゆっくりと足を止める。

「や………応援席の皆がさ、この姿見て、写真撮りたいなんて言うから」
 思わず、逃げてきちゃったんだよ。

 口を尖らせて言い訳をする。だけども、本当は別のことで頭が一杯だった。どうやったら、不自然じゃなく彼女に声をかけられるのだろう?なんて、ことで。

「………って、ごっつぁんこそ、いつの間にここに」
 しかも、圭ちゃん、いないし!

「んー、さっき。やぐっつぁん、かわいーねー、その格好」

 いきなりの話題の飛び方に、真里はちょっとがくっとして見せて。そんな時、柔らかい声が耳に届く。

「うん、似合ってるよ」
 矢口さん、可愛い。

 その声に油の切れたロボットみたいに、真里はぎこちなく振り返る。当たり前だが、そこにはにこにこと微笑んでいるなつみがいた。

「………そ………そかな?」
 うわうわ、『可愛い』って言われちゃったよぅ。可愛いのは、安倍さんですってば!

 心の声なので、届く訳がないのだが。

「やっぱ、似合ってますよねー………って、いってー!」

 『お前には聞いてない』とばかりに、思い切り足を踏まれたひとみはぴょんぴょんとそこらを跳ね回っている。
131 :Growing :2004/05/30(日) 15:50
「みんなが写真撮りたいって言うの、判るなー」
 矢口さん、結構、もてるんじゃないの?学園で。

 話を続けるなつみに、

「そそそそそそ、そんな事、ないっすよ」

 顔と両手をぶるぶると振って否定する。そんな真里を見ていた真希は、制服のポケットからおもむろに携帯を出した。

「はーい、やぐっつぁーん、こっち向いてー」
「え?………って、何、写メ撮ってるんだよ、ごっつぁん!」

 『ぴろりーん』と間抜けな音が真里の耳に届いた。そんな真里に、真希はにっこりと微笑う。

「撮影会しよー。あ、飯田さんとよっすぃー、やぐっつぁんの両手持ってー」
「いいよー」
「ほーい」
「なんだよ!これじゃまるで『捕われた宇宙人』じゃないかよ!」

 ぎゃーぎゃー言いながらも、両手を捕まれて吊るされてはどうしようもならない。そのまま、真里は真希達の犠牲になってしまうのだった。
132 :Growing :2004/05/30(日) 15:51
「じゃあ、次、あたしとねー」

 圭織の腕の中に抱き込まれ、真里はじたじたと暴れる。しかし、直ぐに大人しくするしか無かった。

「はーい、目線こっちねー」

 『ぴろりーん』というシャッター音が聴こえて、圭織の腕が離れる。

「もー………矢口はおもちゃじゃないっつーの」
 ぶつぶつと呟く真里に、圭織はにこにこと微笑む。

「まぁまぁ………あ、なっちも一緒に撮ったら?」
 は?今、圭織さん、何て仰いましたか?

「あー………うん、じゃあ、お願いしよっかな」
 え?安倍さんも、今なんて?

 真里の心は『?』だらけになる。しかし、直ぐにわたわたと心の中で暴れだした。

 ちょ………ちょっと待って。っつーことは、ああああ、安倍さんと2ショット写真って事かーー?困る、いや、嬉しいけども、物凄く困る。

 だって………だってさ。どんな表情したらいいのか、判らないじゃんかよー!

「―――――やぐっつぁーん、戻ってきてー」

 気付くと真希が携帯を片手に手をひらひらと振っていて。もちろん隣には、なつみが立っていた。

「あ………あのあの」
「もうちょっとくっついてー」
 そんな事、出来ないっつーの!

 真里の心の声も虚しく、なつみはぎゅっと真里の腕に腕を絡めてきた。

 うわぁ………良い匂いがするよぅ。髪なんかさらさらで、肌、真っ白なんですけども。

 こんなになつみを近くで見たこと無かったので、言葉通り夢見心地の真里の耳に『ぴろりーん』と言う音が届いた。―――――ある意味、無常にも。
133 :Growing :2004/05/30(日) 15:51
「さて、と」
 2人のメルアド知らないけど、どうしましょうか?

 携帯片手に、真希は問う。それに、ひとみが答えた。
「ごっちん、ウチに送って」
 飯田さんのも、なっちさんのも知ってるからさ。

「ほーい、やぐっつぁんにも送っとくね」

「………うん」
 なんかもー………どうでもいいや。死んでもいいって、こういう気持ちの事、言うんだろうなぁ。

 未だ夢を見ているふわふわ感の中、真里は気のない返事をした。それを見て、首を傾げてるのはなつみとひとみで。真希と圭織は、どこかおかしそうに微笑んでいる。

「吉澤ー、もう時間ー!」
「矢口ー、そろそろ遊びは終わりー!」

 遠くでひとみと真里を呼ぶ声が届く。それに、2人はハッと我に帰る。

「じゃ、行ってきます」
「矢口も」

 そう言うなり走り出した2人の背に、『頑張ってー!』と三重奏が届いたのだった。
134 :信長 :2004/05/30(日) 15:58
レスをつけてくださった皆さん、ありがとうございます。

>126
大型犬後藤さんの扱いは、
多少なりとも慣れてる保田さんですので(笑)。

>127
今回、なんとかなちまりを絡ませる事が出来ました。
もうちょっと………もうちょっと積極的になってくれ、矢口さん。

忠犬’sは、これからもどんどん出てきますよー(笑)

>128
お待たせしましたー。
ご希望に添えるお話でしたでしょうか?

はてさて、矢口さんのヘタレぶりに、書いてるこっちが泣けてきます。
じれったくもなりますが、長い目で見守ってくれればと思っています
135 :名無し読者 :2004/07/03(土) 23:22
おもちゃ状態の矢口が可愛い…
136 :信長 :2004/07/10(土) 11:33
更新します。
137 :Growing :2004/07/10(土) 11:34
 結局、試合は真里達の学園の圧勝で。応援団はやんややんやと大騒ぎであった。

「さーてと」
 応援団長は、ぐるりと自校の生徒を見回すと、口を開いた。

 他の部の試合結果も学院の方へと報告され、昼過ぎの閉会式で発表される。
 学園で試合をしていた面々や応援していた生徒達もこちらに集まるようになっていて。
 そこで応援団に出欠を取られ、きちんと先生達に報告されるので、サボる訳にはいかないのだった。

「ここで閉会式だから、それまで自由。でも、1時には始まるからね。ちゃんと戻ってくること」

 では、解散!と言う声に、少女達はわらわらと出口へと移動し始めた。
 真里と真希はその波に逆らって、コート脇で片づけをしているひとみの元へと向かう。
138 :Growing :2004/07/10(土) 11:35
「よっすぃー、おめでとう」
「かっこよかったよー」
 先輩と親友の声に、ひとみは片付けの手を止めて、二人の所へ駆け寄ってくる。

「ありがとう、矢口先輩、ごっちん」
 応援の声、ちゃーんと聴こえてましたよ。

 満面の笑みで礼を述べる。それはどこか誇らしげで、満足げだった。

「ほんとかー?」
 からかう様な真里の声も、どこか嬉しげだ。やっぱり親善試合でも、自分の学校が負けるのを見るよりも
勝って喜ぶ方が嬉しい。

「圭織には悪いけどさ」
 よっすぃーがモテるの、なんとなーく判った気がしたよ。

「なんとなくって、それどういう意味なんですかー?」
 その軽口に、ひとみはむぅっと頬を膨らませるが、慌てて表情を戻した。

「や、もてたいって意味じゃないっすから!飯田さん」

 真里達の背後に、いつのまにやら圭織が立っていて。
 それを目敏く見つけたひとみは、弁解するように叫ぶ。
139 :Growing :2004/07/10(土) 11:35
「ほんとに?」
 小首を傾げる圭織に、ひとみはこくこくと頷く。首が取れてしまうんじゃないかと思う位の勢いで。
「よろしい」
 その態度に満足したのか、圭織は艶やかに微笑んで、持っていた紙袋を差し出す。

「え?」
「お昼、買ってあるなら別だけど」
「………あの、その」
 もしかして、もしかしなくても。

「手作り弁当ってヤツですか?」
「ひゅー、いいねぇ、よしこー」
「だーーーー!邪魔しないでくださーい!」

 答える前に茶々を入れる真里と真希に、ひとみは思わず『しゃー!』っと威嚇する。

 その光景を見ていた圭織は、思わずくすくすと笑ってしまって。

「飯田さぁん」
 笑うなんて酷いっすよぉ。

「ごめんごめん」
 
 訴えに直ぐに笑いを止めると、圭織は問いかけた。

「良かったら、一緒に食べない?」
「………はい!」

 力いっぱい答えるひとみを、圭織は嬉しそうに見つめるのだった。
140 :Growing :2004/07/10(土) 11:36
 『矢口達も一緒にどう?』と誘われたけれども、ひとみの視線が痛かったから、
辞退した二人は、校舎へと向かいのんびりと歩いていく。

「ごっつぁんはどうするの?」
「圭ちゃんとこ、一回戻らなきゃなぁって思って。あっちにお昼置いてあるし」
 真希の言葉に、真里は『そっかー』と息を吐き出す。

「やぐっつぁん、お昼買ってないの?」
「うん………ここらへん、あんま地理判らなかったから」
 遅刻しないで来るのが精一杯なのだった。

 真里の言葉に、真希は校舎脇の通路を指差す。
「あのね、あそこから裏門に出れるから。道なりに行けば、コンビニとかパン屋さんとか一杯あったよ?」
「おっ!ごっつぁん、気がきくねー。サンキュ!」
 今にも駆け出しそうな真里の腕を、真希は掴んで。反対の手で、校舎の2階を指差した。

「理科室の隣が生徒会室だから。ごとーと圭ちゃん、そこにいるから」
「………ありがと」

 どこまでも気が付く友人である。苦笑しながら、真里は大きく頷いたのだった。
141 :信長 :2004/07/10(土) 11:39
>135

是非見たいものです<捕われた宇宙人状態矢口
絶対に可愛いと思うのですが………歪んでる愛情でしょうか(笑)?


約一月振りの更新が、これだけかよ!とお叱りを受けそうで怖いですが
マイペースで進みたいと思います。

では、また。
142 :名無し読者 :2004/07/12(月) 06:44
意外とヘタレなヤグが可愛い!
捕われた宇宙人状態のヤグも見たいです(笑)
143 :名無飼育さん :2004/07/25(日) 08:30
よしこの飯田さんスキスキな態度が可愛い
144 :名無飼育さん :2004/07/29(木) 23:37
今日発見して、一気に全部読みました!
意外と奥手なマスコット矢口が新鮮で可愛い
ごっちんの忠犬ぶりもw
145 :名無し読者。 :2004/08/11(水) 16:49
一気に読ませてもらいました。
圭ちゃんに甘えまくりなごっちんが可愛い。
やすごまのこれからの展開に期待してます。
信長様、これからも頑張ってください。
146 :信長 :2004/08/12(木) 10:45
更新します。
147 :信長 :2004/08/12(木) 10:47
 時間がずれているせいか、コンビニは空いていた。
 適当に買い物をして、急いで学校へと戻る。
 応援団の格好をしているせいで、周囲の視線が妙に痛かった。

「さて、と」
 一人で食べるのも寂しいし、圭ちゃん達のとこにでも行くか。

 『ふむ』と頷きながら校舎に向かうと、視界の端に見覚えのある後姿が目に入った。
 条件反射で、鼓動が早まるのが判る。

 そんな自分に、思わず真里は苦笑した。

「あっちは………中庭?」

 訝しげに呟くと、真里は首を傾げた。

 好奇心が芽生えてくるのが判ったけれども、
 両手でぱしん!と頬を叩いて自分を戒める。

「駄目だっつーの、おいらってば」
 人にはプライバシーってもんがあるんだから。絶対に、駄目!

 だけども、それに逆らう事は、とても難しい事なのだった………。
148 :信長 :2004/08/12(木) 10:50
「――――どしたの、矢口?」
「んー」
 食事を目の前にしても、一向に食べる気配のない友人に圭は声をかけた。

 昼休みもそろそろ終わる、そんな時に、ふらふらと真里は現れた。
 不思議に思いながらも、圭と真希は空いている席を勧めて………今に至る。

「もう、時間ないよ?閉会式参加するんでしょ?」
「あー」
 返ってくる言葉は、全く持って惚けている感じで。

「ねぇねぇ、やぐっつぁん、食べないの?」
 だったら、ごとーが、と手を出してくる後輩も、真里の表情を見て思わず手を止める。

「………けーちゃん、やぐっつぁん、おかしい」

「それは、見れば判るけども………」

 真希は、ひらひらと真里の顔の前で手を動かしてみる。しかし、それも反応はない。

「ちょっと、矢口」
 肩を揺さぶられ、真里はハッと我に返る。それから、圭と真希を同じだけ見つめて。

「あ………ああ、そっか」
 ご飯食べに来たんだっけ。

 まるで、夢から覚めたかのように呟く。
それに圭はがくりと肩を落として見せた。

「あんたねぇ………」
 こっちがどれだけ心配したと思ってるの?
 いきなり幽霊の見たかの様な顔で、ここにきたの覚えてる?
 何聞いても、生返事しかしないしさー。

 くどくどと説教のするかのように動く圭の口元を見ながら、真里はぽつりと呟いた。

「圭ちゃん、顔怖い」

「……いきなりそれかー!」
 今にもちゃぶ台をひっくり返しそうな勢いの相手の腕を、真希は掴む。

「落ち着いて、けーちゃん」
「落ち着いてるってば」
「そうは見えないよー」

 ごちゃごちゃと目の前で繰り広げられる二人の会話をぼんやりと聞きながら、

「幽霊………うん、そうだね」
 そっちの方が、ずっと、良かった。

 真里は、ぎゅっと胸元の服を握り締めたのだった。
149 :Growing :2004/08/12(木) 10:52
 あの後、結局、好奇心に勝てなくて、彼女の後を尾行してしまった。

 中庭を通り抜けた校舎の裏。その端の窓を、彼女は何度か叩く。

『おー、なっち』
 そこから顔を出したのは、金に近い栗色で艶のある髪の女性だった。
 険しそうに見えた表情が、相手を確認した途端、柔らかく変化する。

『もー、これ。忘れてったでしょ?』
 手に下げた袋を、なつみは差し出した。それを受け取ると、嬉しそうに中を覗き込む。

『ごめんごめん。今朝、ちょぉ、急いでたんよ。ありがとな』
 もー、買いに行くのもめんどいなーって思ってたん。外は暑いし、日焼けするのも嫌やし。

 その言葉に、なつみは『やっぱりねぇ』としみじみと返した。

『下手すると、食べないんじゃないかって思ったからさ』
 だから、届けに来ました。ありがたく思ってよ?

『うん、ありがたいありがたい』
『んもぉ!真実味が足りないよ?』
 持って帰っちゃおうかなー、と呟くなつみに、相手は慌てた顔になる。

『あー、ごめんごめん。ちゃんと感謝してます』

 怖そうな印象を受ける相手が、ぺこりと頭を下げる。それに、なつみは満足したように頷いた。
『よろしい………じゃあ、なっち、行くね?』

『えー、一緒に食べよ?』

『だーめ。誰かに見られた困るのは、そっちなんだからね?』

『………判った』
 渋々と頷きながらも、相手は行きかけるなつみの肩を掴んだ。

『え?』
 そのまま、頬にキスをする。

『!!』
『ごちそーさん』
 まだまだ隙だらけやよ?安倍さん。
 
 にやにや顔のまま、窓を閉める。その窓を悔しそうににらみつけながら、

『………んもぅ』
 
 なつみは、唇を当てられた頬を手の甲で拭って、その場を去ったのだった。
150 :Growing :2004/08/12(木) 10:53
「ばっかみたいだ」
 ちゃんと、いるんじゃんか。恋人が。

 可能性をこれっぽっちも考えなかった自分が悪い。
 あれだけ可愛いんだ。付き合ってる相手がいるに決まってる。

 そこまで判っていても。胸の痛みは、治まることを知らない。

「ほんと、馬鹿みたい」

 大声で喚きたいけれども、それは出来ない。出来る訳がない。

「………ってぇ」

 もぉ、死にそう。

 失恋で、死ぬことなど無いと判っていても。

 真里は、その場で蹲って身を縮める事しか出来なかった。
 
151 :信長 :2004/08/12(木) 11:13
>142
ヘタレ言われてます………(苦笑)
でも、言われても仕方がないですね、これじゃ。

>143
ウチの吉澤さんは、飯田さん一筋ですから。
か………可愛いですか?嬉しいです

>144
奥手どころか、前にも進めずにいますけどね………<ウチの矢口
悩む矢口さんも大好きでーす

忠犬ごっちんは、一匹ほすぃ………いや、マジで

>145

やすごまは、高い頻度で現れます。
何だかんだいって、フォロー魔なので、二人とも


はてさて、色々とあって久々の更新です。

これからもマイペースで進んでいきますので、
思い出した時に覗いて下されば、と
152 :名無し :2004/08/12(木) 14:25
今日発見!一気読みしました。
ごっつぁんと圭ちゃんが何かものすごくほんわかしていていいですね。
とかいいつつ矢口と同様に、ごっつぁんにもライバルが(石○さんとか、ア○カとか)出てきたらいいなあとも思ってもいます。
なっちと圭ちゃんの楽しげな会話にやきもちやいてるごっつぁんが可愛いかったので。
最後に。信長殿、これからも信長殿のペースで頑張ってください。素晴らしい作品になることを期待してます。
153 :名無飼育さん :2004/08/13(金) 14:20
ヌケガラ矢口…せつないですねえ
これからもゆっくり楽しませてもらいます
154 :名無し :2004/08/15(日) 05:41
やすごまいいっすね〜
作者様、やすごま書くの初めてということらしいですが、ほのぼのしていていいっすね。
155 :名無し飼育 :2004/08/19(木) 00:37
おもしろいです。
私も152さんと同様にライバル期待!
かおよしは甘甘すぎて、ライバルが入る余地がなさそうだし。
あと矢口もガンバレ〜
156 :カテナチヲ :2004/08/27(金) 18:00
今日見つけました。
とても良かったです。
私も、矢口さんにはがんばってもらいたいです
157 :信長 :2004/08/29(日) 21:28
更新します
158 :Intermission〜Lunch Time〜 :2004/08/29(日) 21:31

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「いっただっきまーす!」
「はい、どうぞ」
 口に合うかどうか、判らないけれども。

そう呟きながら、圭織は不安げにひとみに視線を向けた。
しかし、そんなのにも気付かず、目の前にある食べ物を凄い勢いで食べ始めていて。

「飯田さん、これ、すっげー美味しい」

ベーコンのアスパラ巻きを口にしながら、ひとみは満面の笑みで告げる。
それに圭織は、安堵の表情をした。

「良かった」
 吉澤の好きなもの判らなかったから、ちょっと心配だったんだ。

その表情があんまりにも可愛かったから、ひとみは食べる手を思わず止めてしまう。
159 :Intermission〜Lunch Time〜 :2004/08/29(日) 21:31
「吉澤?」
「あ、いえ、なんでもないっす」
 ええと、ウチの好きな物は。
ちょっとだけ考えてみて、口を開く。
「毎食食べても飽きないのは、ベーグルとかですけれども………」
「………ん?」
「きっと、飯田さんが作ってくれたものだったら、何でも好きになれるって思います」

いきなりの言葉に、圭織は耳まで真っ赤になる。そういうひとみも、同じ様な感じなのだが。

「………馬鹿」
「すみません」

そのまま黙々と食べていた二人だったが、不意にひとみが口を開く。
160 :Intermission〜Lunch Time〜 :2004/08/29(日) 21:32
「そう言えば、ここって何処なんですか?」

体育館の2階のギャラリーの奥にある教室のような所。1クラス分の人数が収容されるぐらいの広さである。
周囲を気にせずに食べられるから、願ったりなのだが。

「ああ、視聴覚室」
保健体育の授業の時に使うんだけどね、滅多にそんな事はないけれども。

「鍵はね、生徒会の特権で借りれたし。ほんとは、生徒は使っちゃ駄目なんだけれども」
まぁ、これぐらいなら罰はあたらないだろうし。

軽い口調で答える圭織に、ひとみは怪訝そうに訊いた。

「………校舎の方にもあるんですよね?」
「だから、滅多に使わないの」

無駄にお金遣ってるよね、ほんと。

微苦笑しながら、圭織は答えた。そのまま、ぽつりと呟く。
161 :Intermission〜Lunch Time〜 :2004/08/29(日) 21:32
「ギャラリーでも良かったんだけどね」
 何か、周囲の目が気になっちゃって。
「え?」

 圭織の言葉に、ひとみは首を傾げた。その態度に曖昧に微笑みながら、続ける。

「気付いてないならいいんだけども」

 正直に言えば、ひとみの学校の生徒達の視線が痛かった、という事に尽きる。

恋人とかそんな贔屓目を抜きにして、ひとみは格好良かった。
ボールを追う真剣な表情。スパイクが決まった時の無邪気な表情。思い出している今ですら、全部が全部、胸をときめかせる。

たったひとりの1年生レギュラーなのに、驕ることもなく、他の同級生と後片付けもこなしていて。

そんな彼女がもてないわけがない。

そこまで考えて、圭織は小さく溜息をついた。
162 :Intermission〜Lunch Time〜 :2004/08/29(日) 21:33
「まぁ、うちもこっちの方が気楽ですし」
「気楽?」
「や………だって………」

飯田さんの学校の人達が怖かった、だなんて言えやしない。

美人で頭も良くて、しかも、前生徒会長。
きっと人気があったんだろうなぁ、と思わせる。

圭織の後ろで『何よ、あれ』とか『学園の生徒じゃない。飯田さんの事、知らないんじゃないの?』とか
聞こえよがしに呟く生徒もいた。

まるで、自分は彼女と不釣合いだと言われてる気がして、ちょっとへこみ気味になってしまった。

「まー、いいじゃないですか」
それを振り払う様に、明るく告げるひとみの頬を、圭織はそっと撫でる。
163 :Intermission〜Lunch Time〜 :2004/08/29(日) 21:33

「飯田さん?」
「試合で疲れた?」
ちょっと、元気ないみたい。

人の気持ちに敏感なこの人が、本当に好きだ。
だけども、自分はこの人の気持ちを、本当に判ってあげてるのだろうか?

ひとみの心に、不意に疑問が溢れてくる。思わず、その肩に寄りかかってしまった。

「吉澤?」
「………うち、やっぱり飯田さんが好きです」
いきなりの言葉だけれども、圭織はそれをちゃんと受け止めて。
「圭織も、好きだよ」

その言葉に、ゆっくりと身体を元に戻して。ひとみは真っ直ぐに、圭織を見つめた。

「吉澤?」
「あー、やっべー」
もうちょっとで、ちゅーしちゃいそうになった。

胸を押さえながら、ひとみは呟く。その言葉に、圭織は口をへの字にする。

「もー、そういうのは言葉にするもんじゃないでしょ?」
「すみません」

反射的に謝って顔を上げたその瞬間、圭織の顔が目の前に迫っていて。

柔らかい唇が、ひとみのそれを塞いだ。

「………え?」
「ちょっとぐらいは、強引でもいいんだよ」

唇が離れると、艶やかな微笑みと共にそう囁かれ。

初めてのキスは、デザートのオレンジの味がした。
164 :信長 :2004/08/29(日) 21:44
いつのまにやらたくさんのレスが………
皆様、ありがとうございます。

>152
ライバル、ですか(笑)?
でも、圭ちゃんは天然だから、もててる自分に気付いてなさそうな気が
しないでもないです(苦笑)。

>153
ヌケガラは未だヌケガラのままです………<ひでぇ
じ………次回こそは、矢口さんを

>154
初やすごまなので、手探りしながら書いています
少しでも気に入っていただけてるみたいなので、ホッとしてます、はい

>155
ああ、ここにもライバル登場を待ってる方が(笑)。
確かに、石○さんとか木○さんとかは、ちょっと出してみたい気が………

>156
矢口さんは、もうちょっとヌケガラモードです。
が………頑張れ<作者が言うな


ちょこっとだけ寄り道をして、吉飯話を書いてみました。

本当に、皆様の暖かいレスが励みになります。
ありがとうございました。

では、またのんびりまったりお待ちくださいませ
165 :名無飼育さん :2004/08/29(日) 22:28
寄り道大歓迎!
吉飯好きです。
166 :名無飼育さん :2004/08/29(日) 23:16
このお話のカップルはみんなほのぼのですが
吉澤さん・飯田さんの関係の微笑ましさは格別ですね
優秀な美人とやんちゃな男前と
よかったっす
167 :155 :2004/08/30(月) 04:19
やはり吉飯には、誰も入り込む余地がなさそうですね。
圭ちゃんだと簡単に入り込ませそうな気が・・・せつない、甘い、ほんわかといろいろな展開があるので、本当におもしろいです。
次の更新も期待してます。
168 :名無し読者。 :2004/08/30(月) 12:32
今日、全部読みました。矢口さんはこれから、一波乱も二波乱もありそうだし、飯田さんと吉澤さんは、ささいなことすらおこりそうもないくらい甘甘で、保田さんと後藤さんは、ほのぼのしていて(石〇さんが登場したら修羅場になりそうですが…)それぞれによっていろいろな場面がみれてとてもおもしろいです。次も楽しみにまっています。
169 :信長 :2004/09/05(日) 15:31
更新します
170 :Growing :2004/09/05(日) 15:32
「会長、そろそろ………」
その声に時計を見遣ると、既に閉会式の始まる10分前だった。

学院の生徒会のメンバーは会場のセッティングで居ない。
ここに残っていたのは学園の生徒会役員プラスアルファだった。

「判った、すぐ行く」
そう答えると、圭は真里に視線を向けた。
相変わらず、今にも泣きそうな表情で胸を押さえている。
真希は、その隣で心配そうに見つめている。―――――まるで、犬の様に。

「矢口」
時間だよ。応援団で点呼取るんでしょ?いいの?

「………圭ちゃん」
やぐっつぁん、こんなに辛そうなのにぃ。

真希の不満げな声をあえて無視して、圭は続けた。
171 :Growing :2004/09/05(日) 15:32
「応援団をやるって決めたのは矢口でしょ?それ中途半端に投げ出すの?」
やるからには最後までやるヤツなんだけども、あたしの知ってる矢口真里ってヤツは。

その言葉に、真里はゆるゆると顔を上げた。そのまま、ゆっくりと椅子から立ち上がる。

「やぐっつぁん?」
「………行く」
「でも、顔色悪いよ?」
心配そうな真希の問いかけに、
「自分で決めた事だから。最後までやる」
圭を見つめながら、きっぱりと真里は答える。

それに、圭は胸ポケットに入れていた眼鏡をかけ、微笑みながら答えた。

「それでこそ、矢口真里だよ」

その口調に、真里はひょいと肩を竦めて苦笑しながら答える。
「………なんか、のせられた気もするけども、まいっか」

時間無いから、先行ってる。じゃね、ごっつぁん。

大分、覇気のある表情になった真里は、足早に出て行った。
172 :Growing :2004/09/05(日) 15:33
その背が消えた扉を見つめながら、真希はぽつりと呟く。

「訳、判んない」
圭ちゃん、どういうこと?

手にしたファイルに視線を落としながら、圭は事も無げに答えた。
「どうもこうも………後藤の見た通りだけども?」
あたしの煽りに矢口が乗ったって感じ?

「それは判るけれども………」
もうちょっと、こう、フォローするとか。原因訊いて見るとかさぁ………。

「あのねぇ、後藤」
中学の時から知ってるでしょ?矢口の事。

「知ってるけども、同じ学年じゃないし」
何よりも、真希の中では圭が最優先事項なのだ。言い方は悪いけれども、真里はその次の順位であって。

それを言ったら、間違いなく2人に怒られるので言わないでおくのだが。

思わず口篭る真希に、圭はやれやれと息を吐いた。
173 :Growing :2004/09/05(日) 15:33
「矢口はね、本当に辛い時程、助けを求めないの」
それが、見ての通りの今。―――――でも、あたし達がいるここに来ただけ、まだマシかな。

最後の方は独り言の様になっていた。だけども、それをきちんと拾って、真希は問う。

「でも………今、笑ってたよ?」
「笑うことなんて、辛くたって出来るわよ」
でも、今は時間がないから騙されておいただけ。

「ま、寮に戻ったら、タイミング見計らって、声かけてみるつもりだけども」

とりあえずは、動く気力があるみたいだから放っておこうと思って。


「………そう、なんだ」
ここまで真里の事を判っている彼女。きっと、反対の事もあるのだろう。
何だか、ちょっと面白くない。

「こら、後藤」
これから、閉会式なんですけど?

後ろから抱きしめられた圭は、真希に訴える。

「知ってる」
でも、ちょっとだけ、こうさせて。

あなたの事を、一番に知ってるのは自分でありたい。
そう思うのは、おこがましい事なのだろうか?

柔らかい髪にそっと口付けながら、真希はぼんやりと思う。
そんな真希の耳に『30秒だけだからね』と言う、甘い声が帰って来た。
174 :信長 :2004/09/05(日) 15:34
更新終了
175 :信長 :2004/09/05(日) 15:45
寄り道に反応があって、ちょっと嬉しいです(笑)
これからもちょこちょことやるかもしれませんので<寄り道

>165
吉飯は、見ててじれったくなる様な感じですが
見守っていて下さいませ。

>166
格別、ですか。ありがとうございます(笑)
やんちゃな男前でもあり、忠実な大型犬でもある吉澤さんでした。

>167(155)
そんな………(笑)<隙がありそうな圭ちゃん
でも、完全否定できないところが、保田さんの保田さんたる所かと思います

>168
そう言って頂いて、本当に嬉しいです<色々な場面が見れる
少しでも楽しんで頂ければ、と思っております。


すっかり涼しくなって、秋らしい気配が感じられる様になって参りました。
ちょっとづつ更新ペースを上げて行ければな、と思ってますので
よろしくお願いします。

では、また、次の更新で………
176 :名無飼育さん :2004/09/06(月) 00:30
矢口も圭ちゃんもカコイイ!
そしてごちんは相変わらず可愛い・・・
ここのごちんにはやられっぱなしです
177 :名無し読者。 :2004/09/06(月) 05:42
矢口さんと保田さんの、お互いのことをよくわかりあった関係が、とてもいいですね。
また、それに嫉妬する後藤さんが、可愛いですね。
矢口さんも気になりますが、保田さんと後藤さんの今後も、非常に気になります。

次の更新も楽しみにしています。
178 :名無し飼育。 :2004/09/07(火) 13:44
矢口さんはと保田さんの信頼関係、とても良い感じですね。
実際の二人も、こんな感じなんだろうなあと思いました。
179 :167 :2004/09/08(水) 01:58
更新まってました。

二人の関係にちょっぴりヤキモチなごっちんが、可愛いですね。

やぐなち・やすごまの、これからの展開に期待しつつ、次の更新楽しみにしています。
180 :名無飼育さん :2004/09/27(月) 17:08
矢口さっぱりしてて格好良いっすねぇ
続き楽しみにしてます
181 :信長 :2004/10/03(日) 14:59
更新します
182 :Growing :2004/10/03(日) 15:00
「矢口、この後どうする?」

閉会式も終わり、出欠も取った。それでも、普段よりは少しだけ早く帰れそうな感じで。
何処かに何かを食べに行こうとか、買い物に行こうとか、周囲はちょっとだけ浮かれてる。

声をかけてくれた応援団の上級生は、小首を傾げる真里に続けた。

「頑張ってくれてたしさ、皆も是非って言ってる。どう?」

その言葉に、真里は小さく首を横に振った。
183 :Growing :2004/10/03(日) 15:14
「いや、いいっす。今日は………」
「矢口が良ければ応援団入らない?結構、いい感じだと思うけどな」
「えと………オイラが、ですか?」
「うん」

真面目な表情で頷く上級生に、真里は慌てて手を横に振った。

「や、ちょっと無理………かな、オイラじゃ」
そんなに買いかぶらないで下さいよ。
「………そんなんじゃないと思うけどなぁ」

でも、ま、いっか。仕方ない。

さばさばした性格と爽やかな外見で人気のある彼女は、どこか残念そうな表情をしたけれども
直ぐに肩を竦めて微笑んだ。

「じゃ、気をつけて」
「はい、ありがとうございます」

そう告げて、彼女はその場を去って行った。
184 :Growing :2004/10/03(日) 15:15
「帰ろっと………」

立っているだけでも、正直辛い。
普段の行為をする事に、多大なる精神力が必要になっている。

真里は着替えた制服の胸元を、ぎゅっと掴んだ。そしてちょっとだけ表情をしかめる。

「ってぇ………」

どうしようもない痛みを胸に抱きながら、真里はゆっくりと生徒でにぎわう門へと足を向けた。
185 :Growing :2004/10/03(日) 15:16
「ん?」

不意にポケットの中に入れていた携帯が震えた。
何も考えずに開いて画面を見ると、真希からメールが届いていて。

「………ああ」

数時間前に撮った写真だった。
お互い照れた表情で写っているツーショット画像。

ちょっと身を引いた真里にくっついてくるなつみ。
この時までは、独りよがりだけれども、かなり幸せだったのに。

まだその温もりを覚えてるけれども………今は、逆にそれが辛い。

「………ごっつぁん、タイミング良過ぎ」

真里は立ち止まり、思わず携帯を額に当てた。

判っている、誰も悪くない。だからこそ、行き場の無い想いを何処にぶつければいいのか判らない。


大きく溜息をついた真里の肩が、軽く叩かれたのはその時だった。
186 :Growing :2004/10/03(日) 15:16
「え?」
「どしたの、具合でも悪い?」

振り返ると、そこには今一番逢いたくない相手が立っていた。

「ちょっと顔色悪いみたいだけども………」
「い………や、大丈夫、です」
「本当に?」

なつみの手が伸びて、真里の額に触れそうになった瞬間、思わず身を引いていた。
その行為に、なつみはちょっとだけ不審な表情になる。

「あ………すみま、せん」
声を絞り出す真里に、なつみは慌てて首を振って見せて。

「―――――ううん、ごめんね。あたしこそ」
「オイラ、ちょっと頭触られるの苦手で、ははははは」

渇いた笑いと共に言うけれども、その場の雰囲気の悪さは否めない。

「ええと………」
こりこりと頬を掻きながら、真里はぐるぐると考える。

どーしよー、話しかける言葉が見つからないよー。

「あの、ですね」
「ねぇ、矢口さん」
「はい?」
「駅まで、一緒に帰らない?」

その誘いを断れる程、真里は意志の強い人間ではなかった。
187 :信長 :2004/10/03(日) 15:27
更新終了

>176
>ここのごちんにはやられっぱなしです

すみません、今回は出る幕が無かったです<後藤さん
いずればーんと主役を張ってくれる………かもしれません

>177
>矢口さんも気になりますが、保田さんと後藤さんの今後も、非常に気になります。

大人気なやすごま………(苦笑)。
頑張って、矢口!主人公よ、一応(笑)!


>178
2期メンは大好物です(笑)。
支えあってるんだかそうじゃないんだか良く判らない関係ですが。

>179
ヤキモチごっちんは、とりあえず置いておいて。
やぐなちが進むように、作者自ら祈っております。

>180
いえいえ、結構、弱いのですよ。
次回以降で、情けなさ炸裂………かもしれません。


とりあえず主役二人が、ようやく二人きりで話す場面が出てきました。
うわー、久々<ひどい

頑張って欲しいものです、主役さんには………

それでは、またいずれ。
のんびりとお待ち下さいませ
続き楽しみにしてます

188 :信長 :2004/10/03(日) 16:27
上のレスの最後の一行はお気になさらないで下さい。
コピペをしたのを消すのを忘れてました………orz
189 :カテナチヲ :2004/10/05(火) 22:46
更新お疲れ様です。

なちまりの関係が今後どういう方向に進んでいくのか、とても気になります。
次の更新も楽しみに待たせてもらいます。
190 :名無飼育さん :2004/10/10(日) 17:47
作者さん、更新お疲れ様です。
いいところで切られましたね(笑)。
続きを楽しみに待ってます。
頑張って下さい。
191 :名無飼育さん :2004/10/16(土) 14:03
なちまり期待してます
矢口がんばれ矢口
192 :信長 :2004/10/17(日) 15:45
更新します
193 :Growing :2004/10/17(日) 15:46
何で、こうなるんだ………。

心で呟いたって、誰も聞いてくれる訳がないのだが、そうじゃなくても独り言を言いたい心境だった。
だけど、今言ったらダメだ。それはダメだ。
っていうか、怪しすぎだから、自分。

「矢口さん?」
その声に、真里はハッと我に返った。その目には、訝しげにこちらを見てくる片想いのお相手が映る。

「何か考え込んでたようだったけども………用事でもあった?」
だったら、声かけちゃ悪かったかなぁ?

そう呟くなつみに、真里はぶんぶんと首を横に振った。ついでに手も。

「んなことないっす。全然、ホントに!」
「ほんとに?」
「ホントに!」

吠える様に答える真里に、なつみはくすくすと笑い出す。
その笑顔は、まるで華が綻んでいくようで、一瞬、真里は見とれる。
冷えた心が、ほんわかとあったかくなっていくような、そんな気分にさせられる笑顔だった。
194 :Growing :2004/10/17(日) 15:46
駅に向かって歩きながら、話す事は先程のひとみが出場していた試合の事だった。
それ以外、共通する話題が無い。悲しいぐらい、無いのである。

「ねぇ、矢口さん」
「はい?」

その話題がちょっと途切れた時、ふと思い出したようになつみが言う。

「そういえばさ、試合始まる前に、矢口さんの友達が携帯で写真撮ってくれたじゃない。
あれ、もう送ってもらった?」
「………あー、はい」
鞄の中から携帯を取り出すと、真里は先程送られた画像を呼び出す。
それから、なつみに見えるように画面の角度を変えた。

「うわー、結構、綺麗に撮れてるねぇ」
なっちの携帯、ここまで綺麗に撮れないよぉ、やっぱ古いからかなぁ。
矢口さんのも、結構新しいヤツだよねぇ?

真里の手元の携帯を見つめながら、なつみは問う。

「先月、機種変したばっかなんですよ。安倍さんのは?」
「これこれ」
そう言いながら出したなつみ携帯は、今から1年近く前のタイプで。


「もうねー、いい加減変えたいんだけども、着メロとか画像とか色々入ってるからさー」
愛着もあって、なかなか変えられないんだー。

プリクラやシールも、所狭しと貼ってあるそれは、確かに持ち主に愛されてるように見えた。
195 :Growing :2004/10/17(日) 15:47
「なんか、安倍さんらしいっすね」
微笑みながら、真里は素直な感想を述べる。

「そお?カオなんか、『貧乏性だねー』って馬鹿にするんだけど」

そう呟きながらも、柔らかい笑顔で携帯を閉じたなつみは、

「そう言えば、矢口さんにメルアド教えてなかったよね?」
教えるからさ、その画像、送ってくれないかなぁ?

再度、それを開く。

いきなりのその言葉に、真里は目をぱちぱちとさせた。その言葉が、脳に到達するまでの
数秒、ぽかーんとした状態になる。

え、と………今の話の流れだと………オイラにも、メルアド教えてくれるって、こと?
196 :Growing :2004/10/17(日) 15:48
「えええええーー!」
「ひっ!」

いきなり大声を上げた真里に、なつみはびくっとなる。しかし、それに真里は気付かなかった。
「や………矢口、さん?」
「あ、えと………すみません」
ちょっとびっくりしたもので、と心で付け加えておく。

そして、びっくりした表情のままこちらを見ているなつみに、冷静なふりをして問いかけた。

「あの、それでメアド………は?」
「あ、ああ、うん。ごめん。矢口さんがいきなり叫ぶから、ちょっとびっくりした。忘れちゃってた」
「ひでぇ………」

思わず呟いた真里の言葉に、なつみは目を丸くする。しかし、直ぐに嬉しげに微笑んだ。
「あのさ、今度からそれでいいよ?」
「え?」
いきなりの言葉に、真里は小首を傾げる。
197 :Growing :2004/10/17(日) 15:48
「今、初めて丁寧語じゃなくなったから。なっちさ、あんまり『です』とか好きじゃないんだよね」
「や………でも、安倍さん、学年いっこ上ですし」
「いーから!それに『安倍さん』も禁止」
真里の訴えは、ばっさりと切り捨てられる。しかも、新たな条件まで加わる。

「えー!」
じゃあ、何て呼べば………。

「『なっち』でいいよ」
「………………」

呼べる訳ないじゃないですか!
心で叫ぶ。叫ぶけれども、どうしようもない。―――――逆らう事なんて、出来っこないのだ。

「圭織のことだって、『圭織』って言ってるじゃん?ほら、言ってみ?」
その言葉に、真里は耳まで真っ赤になりながら、口を開いた。

「あ………えと、あのその………っち」
くそー、スマートに言いたいのに、喉がからからで上手く声が出ないよぅ。

心でしくしくと泣きながら、真里は救いを求めるようになつみを見上げた。

「んー?聴こえないなぁ?」
しかし、そこにはテレビの画面のお姉さんのように、わざとらしく耳に手を当てて
言葉を待っているなつみがいて。

知らなかった………こんな人だったんだ。
っていうか、そんなアクション、今時誰もしないから。

突っ込みどころ満載の相手に、自分が持っていたイメージは合わないけれども。

でも、どうしよう、楽しい。自然に笑顔になっている自分が判る。

真里は意を決して、口を開いた。
そして、言葉を紡ぐ。

「なっち」

思ったより、声が大きくなった。ちょっと恥ずかしいけれども、ちゃんと言えた、と思う。

そのまま視線を上げると、『よく出来ました………矢口』と、はにかんだ笑顔で
微笑んでいるなつみがいて。

その瞬間、この恋を諦めたくないと、心底願っている自分に苦笑してしまった。
198 :信長 :2004/10/17(日) 15:57
>189
す………少し進みましたーーー!

でも、まだまだ問題は山積みです。
ちっさい人に頑張ってもらいたいものです、はい。

>190
多少なりとも満足いく続きだったでしょうか?
続きをちょっとでも気にしていただければ、幸いです………

>191
矢口、良くやった、頑張った

と、作者自らが言ってどうするんだという感じですが。

偉い偉い、だから次も頑張って、矢口<褒めて育てる


とりあえず、まだまだじれったい展開が、マイペースで続いていくと思いますが
のんびりと見守っていて下さい。

では、また次回に………
199 :名無飼育さん :2004/10/18(月) 22:10
作者さん、更新お疲れ様です。
「耳に手をあてて言葉を待つなっち」って、ホントに
しそうですぐにその姿が目に浮かびました。
なちまり大好きなんで続きが楽しみです。
200 :名無飼育さん :2004/10/26(火) 00:16
やり取りが可愛いよこの二人は
微笑ましいです
201 :信長 :2004/10/28(木) 19:53
更新します
202 :Growing :2004/10/28(木) 19:54

しかし、『諦めたくない』と思ってみても、一体、何をどうしたらいいのかさっぱり判らない。

ひとり寮に戻って来た真里は、部屋着に着替えるとベッドに寝転がった。

「………どうしよっかなぁ」

自室の天井を見つめながら、真里はひとり呟く。それから、大きく溜息をついた。

さっきはあんな風に思ったけれども、たった一つだけ判っている事がある。
それは『このままじゃ、何の進展も無い』という事だ。

勢いに任せて告白したって、なつみにとってはきっと迷惑この上ない。
もっともっと彼女の事を知りたいし、自分の事だって知ってもらいたいと思うのだ。

彼女は『友達』だって言ってくれたけれども、まだそのスタートラインに立っただけなのだと、
真里はちゃんと判っていた。
203 :Growing :2004/10/28(木) 19:54
「あーもー!どうすりゃいいんだ」

真里は、枕を抱えてごろごろとベッドの上で転がり回る。そんな時、控えめなノックの音が耳に届いた。

「?」

同室のひとみだったらノックなんかするわけないし、隣室の圭や真希だとしても、
こんなに大人しいノックなんてするわけが無い。

「誰だろ、一体………」

不思議に思ったけれども、真里はよいせっとベッドから降りてドアを開いた。
そこにいたのは、意外な事に真希であった。

「………ごっつぁん?」
「―――――えと、あの」
「どしたの?珍しくノックなんかするから、オイラ、誰かと思ったじゃんか」

からりと笑う真里に、真希はそわそわと落ち着きなく身体を動かす。
204 :Growing :2004/10/28(木) 19:55
「ええと………あのさ、やぐっつぁん」
「ん?」
「これ!」

後ろ手に持っていたコンビニの袋を、真里の目の前に突きつける。
余りの勢いの良さに、思わず真里はのけぞった。

「わっ!」

しかし、何とか堪えてそれを受け取る。そのまま袋の口を開けてみると、
真里が好きだと言っていたお菓子類が山と入っていた。

「あ………ありがと」

律儀に礼を告げてから、真里は首を傾げてふと思う。

何でごっつぁんにお菓子貰わなきゃならないんだ?

それを言いかける真里の言葉を遮る様に、真希は続ける。

「なんか、ごとー、こーゆーのしか思いつかなくって………だから、あのさ」
「………ごっつぁん?」
「やっぱ、やぐっつぁんが元気ないの見ると、ごとー、凄く悲しくなるからさ」
「………」
「ほら、やぐっつぁんはいつも笑っててさ。元気一杯で。それ見てるだけで、ごとー、凄く元気になるし。
きっとよしこも圭ちゃんもそうだと思うんだ」
「あの………さ」
「だから………それ食べて、元気出してほしーなーって………あはは」

頬を指でこりこりと掻きながら、真希はそう言った。どこか照れ臭そうに。
205 :Growing :2004/10/28(木) 19:55
「えと―――――ごめんね。ごとー、何か、変なこと言った?」

黙り込んだ真里を、どう思ったのか真希は顔を覗き込んでくる。
近付いてきた首筋に、真里はぎゅっと抱きついた。

「ややややや………やぐっつぁん?」
「ありがとね、ごっつぁん」

今更気付いた。
昼間の自分を見て、真希は心配してきてくれたのだ。慰めようとしてくれたのだ。
クールとか覇気が無いとか色々言われているけれども、人の気持ちをきちんと察してくれる優しい娘なのだ。
その気持ちが、本当に本当に嬉しい。

だから、真里は今の気持ちを素直に告げた。

「オイラ、もう大丈夫だから」
「………ほんとに?」

ゆっくりと離れていく真里の顔を真っ直ぐに見返しながら、真希は問う。
ちょっとだけ不安げな感じを隠せないまま。
もし真里が強がりを言ってるのだったら、ちゃんと見極めてやる。そんな意志を秘めた目で。

「ほんとほんと」

そのまま、真里はニッと笑う。その笑顔は、確かに普段通りの真里の笑顔だった。
それに納得したのか、真希は小さく頷く。それから、同じ様にニッと笑った。

「やっぱり、やぐっつぁんは笑顔が一番いいと思うよ?」
「何だよ、ごっつぁん、オイラを嬉しがらせてどうするんだよ」

照れ隠しにばしばしと互いの二の腕を叩きあっていた二人の耳に、
『そろそろお邪魔してもよろしいですかねー』という圭の声が届いたのだった。
206 :信長 :2004/10/28(木) 20:03
>199

>「耳に手をあてて言葉を待つなっち」
やっぱり安倍さんはこんな感じでw。
なちまりは、ちょっとお休みですが、
見捨てずにいていただければ、と思っております


>200

気付いたら、勝手に動いていました<なちまり
矢口さんがじれったいと思いますが、
温かい目で見守っていて下さい。



なちまり話と銘打っているのに、全く持って絡まないので
読んでいる皆様に申し訳ないです。

もっともっとペースアップして精進したいと思いますので
よろしくお願い致します。

207 :名無飼育さん :2004/11/05(金) 01:42
更新お疲れ様です。
なんとなく年下属性のごっちんがかわいかったです。
まったり待ってますのであまりあせらず作者サンの
ペースで頑張って下さい。続きを楽しみにしてます。
208 :名無し読者 :2004/11/06(土) 20:28
いいですねぇ、面白いです。
やぐがじれったいけどカワイイ。
209 :信長 :2004/11/21(日) 16:47
更新します
210 :Growing :2004/11/21(日) 16:48
「じゃあ、ごとー帰るね」
「え?いいじゃん、一緒に食べようよ、これ」

真里の言葉に、真希は首を横に振る。

「ごっつぁん」
「だって、それ、やぐっつぁんへの差し入れだもん」
ごとーが食べる訳にはいかないよ。

「だから、それ食べて元気だして。ね?」

にっこりと笑って、真希はその場を去って行く。
圭はそれをちらりと見たけれども、直ぐに真里に視線を戻した。

「入っていい?」
「あ、うん」

部屋に招き入れると、圭はまだ戻って来ていない後輩のベッドに腰掛ける。
そのまま、猫の様にじぃっと探るような目で真里を見つめている。
211 :Growing :2004/11/21(日) 16:49
「………圭ちゃん」
「んー?」
「―――――怖い表情が、ますます怖いんだけども」
「言うに事欠いて、いきなりそれか!」

思わずツッコミを入れてしまう圭に、真里はどこかおかしそうに笑った。

「だってさー、さっきから険しい表情だよ、こんな感じで」

目を大げさに吊り上げてみる。その仕草に、圭はがっくりと肩を落とした。

「もー、いい。心配して損した」
「心配?」

小首を傾げた真里に、圭は足元を見ながら答える。

「昼、有り得ないぐらいに落ち込んでたから来てみれば………。
そう簡単に復活できるんだったら、あんな風に落ち込むんじゃないわよ!」

圭も真希と同じ想いで来てくれたらしい。
口は悪いけれども、心から心配してくれたのが判る。

どうしよう、嬉しい。

「何よ、にやにやして」
気持ち悪いったらありゃしない。

「キショい言うな!」

そう言いながら、真里は圭に突進した。そのまま、ぎゅっと抱きつく。

「ちょっ!矢口!」

何とか受け止めた圭の耳に、小さな声が届く。

「………ありがと」
「何の事やら」

そっぽを向きながら、呟くように答える圭なのだった。
212 :Growing :2004/11/21(日) 16:49
「なっちに付き合ってる人ぉ?」
「うん………」

なつみの事が好きだとは、真っ先に白状した。
そうしないと話が進まない。

詳しくは説明はしなかったけれども、少しだけ落ち込んでいた事情を話すと、
圭は驚いた様に声を上げた。

「―――――や、それはきいた事ないなぁ」
「でも、おいら、見たんだ」

なっちがほっぺにキスされてたとこ。
何か、一緒に暮らしてるっぽかったし。

それらは心で真里は呟く。

そのまましゅーんと項垂れてしまった真里に、圭は顎を擦りながら『うーん』と唸る。


自分が知っている限り、圭織となつみはいわゆる乙女学院の『高嶺の花』で
誰にも手が出せない、出されたとしても、その手をするりとすり抜ける二人で有名だった。

それが『恋人』ですと?有り得ないったら、有り得ない。
213 :Growing :2004/11/21(日) 16:50
「それってさ………矢口の見間違いって訳じゃ」

ぎっ!

強い視線で睨まれて、圭は肩を竦めた。

「じゃあさ、矢口はどうしたいの?」

その問題はひとまず置いておいて、圭は根本的な質問をした。
それに、真里は表情を引き締めて答える。

「まだ、始まってもいないのに、終わりにするの、やだ」

だから、おいらのことをなっちに知って貰うんだ。

「―――――ふーん」

そこまで決めてるんだったら、あたしは口出ししないけども。

「でもさ………」

どうすりゃいいのか、わかんなくって。

へにゃっと眉を下げて、真里はがっくりと項垂れた。そのまま、深々と息を吐き出す。

「このままじゃ駄目って判ってるんだ。変わりたいんだ。胸張って『これが矢口真里です』って
言えるようになりたいんだよ」


「………まぁねぇ」

そのままでも、十分可愛いし勝負できると思うけれどもねぇ、という言葉は心に閉まっておく。
こいつを図に乗らせるわけには行かない。
214 :Growing :2004/11/21(日) 16:51
「とりあえず、部活か何か始めてみたら?」
吉澤のように、アホだけどもひたむきに打ち込んでたらかっこよく見えるって実例もあるし。

「うーん」
2年の今から運動部やってもさ………。

「じゃあ、文化部でもいいじゃん」
「性に合わない」
「じゃあ、どうするっていうのよ?」
「だから、悩んでるんじゃないかよ!」

『ふー!』『うゎん!』と猫と犬の喧嘩の様に睨み合ってみるけれども、長くは続かない。
真里はごろんとベッドに横たわると、大きく溜息をついた。

そんな親友の隣に腰掛けたまま、圭は優しく告げる。


「ねぇ、矢口」
「うん?」
「………そんなに焦らなくてもいいじゃない」
先走る気持ちは判るけれども、もうちょっと落ち着いて考えようよ?

「こうして、話を聞いてあげるぐらいは出来るからさ」

そう告げて、真里の頭をぽんと叩いて笑う。それに釣られた様に、真里も笑った。

「頑張れ」
応援してるよ。

「おぅ」
ありがとね、圭ちゃん。

眩しいぐらいの笑顔が、圭の目に映った。
215 :信長 :2004/11/21(日) 16:57
>207

ありがとうございます。 <マイペースで
その言葉に甘えてはいられないと思いつつ………以下略

年下属性ごっちんは可愛いですよねぇ
書いてて楽しいです、作者も


>208

じれったいっていうか、うじうじしてるっていうか
誰か後ろから蹴り飛ばして欲しいと思ってるとかいないとか………(苦笑)


もー、マイペースにも程があると思いますが、
少しずつでも進んでおりますので、気が向いたときに読んで頂ければと
思っております。

それでは、また………
216 :名無飼育さん :2004/11/21(日) 22:19
はじめて読ませていただきました!
こんなにカワイイ年上メンバーの話が読めてうれしいです。
HPASの衣装のせいか、イメージしやすかったですw
2期の友情に萌え〜!

どの組み合わせもあたたかい雰囲気で、大好きです。
続きを楽しみにしてますので、マターリとがんばってください。
217 :信長 :2004/12/18(土) 15:41

更新します
218 :Growing :2004/12/18(土) 15:43
「………あらま」
真里の部屋を辞して自室に戻ってみると、同室者はうつ伏せの状態でベッドに転がっていた。

「ったく、良く寝るヤツね」
そう呟きながらも、表情は優しい。静かに近付いていくと、その髪をさらりと撫でた。

「んー」
ころりと寝返りを打つと、真希はゆるゆると目を開いた。どこかぼんやりとした表情のまま、
圭を見上げる。

「あー、おかえりー」
ふにゃりと微笑う邪気の無い表情に、圭は苦笑しながら返事をする。

「ただいま」
「………待ってるつもりだったんだけどなぁ」

身を起こしながら、真希はぽつりと呟く。
『うーん』と大きく伸びをしてから、圭に向き直った。
219 :Growing :2004/12/18(土) 15:43
「やぐっつぁん、大丈夫そう?」
「あー、うん」
思ったより平気そう。昼みたいに真っ暗だったら、正直手に負えなかったけれども。

その言葉に、真希は安心したかのように目を細めた。しかし、直ぐに圭の手にある
コンビニの袋に気付く。

「それって………」
「矢口がね、『食べきれないから』って。こんなに買って、小遣いなくなっちゃったんじゃないかって
心配してた」
「………そう、でもないよ」

一瞬、口篭る真希の頭を、圭はこつんと小突く。

「嘘ばっか」
「嘘じゃないもん」
「だったら財布見せてみなさい」
「圭ちゃんに見せる義務なんてないじゃんか」

ああ言えばこう言う真希に、圭は肩を竦めた。
こうなってしまったら、真希は頑固だ。決して折れることは無い。
220 :Growing :2004/12/18(土) 15:44
「ま、いいけども」
「………?」
「その代わり、泣き付いてきたって1円だって貸さないからね」
仕送り日まで、後2週間近くあるけどねー。
朝夜は寮で食べるとして、昼はどうするつもりでしょうねー、後藤さんは。


「う………」

意地悪い圭の言葉に真希はぐっと詰まったが、直ぐに真面目な表情で答えた。

「―――――大丈夫だよ」
「?」

不思議そうな表情をする圭に、真希は続ける。

「だってさ、やぐっつぁん、元気になったんでしょ?だったら、ごとー、お小遣い無くなったって
別に気にしないよ」
お昼抜きってのは、ちょっと厳しいけどさ。でも、大丈夫。

晴れやかに笑いながら告げる真希の言葉に、圭は困った様に髪をがしがしとかきあげた。
そのまま大きく息を吐き出して。

「圭ちゃん?」
小首を傾げて見上げてくる真希の頭を、今度はよしよしと撫でる。
221 :Growing :2004/12/18(土) 15:44
「??」
「ごめん」

そこまで、真里の事を思っていた真希の気持ちを茶化す様な事を言って。
そう告げようとした圭の唇が、不意に塞がれる。

「………って、あんたねぇ」

立ち上がった真希が、圭を抱きしめながら呟く。

「だって、圭ちゃんがそんな目で見るから」
「そんな目って………どんな目よ」
「―――――誘うような目」
「誰が。ちょっと、あたしの話も聞きなさい」

顔のあちこちに唇で触れてくる真希の顔を両手で押さえながら、
訴える圭に真希はあっさりと答える。

「後で」

そのままベッドに二人で倒れこむ。

「そろそろ夕飯の時間なんですけども?」

覆い被さってくる真希の肩に手を当て、圭は訴えてみる。
しかし、ベッド脇の時計をちらりと見遣った真希は、ふるふると首を横に振った。

「まだ30分以上あるじゃん」
「あたし、帰って来て直ぐ矢口のとこいって、全然休んでないんですけど?」
「………だーめ」

圭ちゃん、ここ最近、対抗戦の準備とかで忙しくて全然構ってくれなかったじゃんか。

「だから、今から埋め合わせをしてもらいまーす」
「………そんなに軽く言わないでよ」

諦めたように呟く圭の唇を舌でぺろりと舐めると、

「好きだよ、圭ちゃん」
優しく甘く真希は囁いた。
222 :信長 :2004/12/18(土) 15:48
>216
暖かい言葉、ありがとうございます。

2期メンの友情は大好物なので、そう言って頂けると
頑張れる気がしてきます。


はてさて、色々と思うところがあって、間が空いてしまいました。
いつも通りの気がしてなりませんが、それはそれw

これが今年最後の更新にならないよう、何とかペースアップしたいと
思ってますのでよろしくです。
223 :179 :2004/12/18(土) 19:31
あらあら、3組のCPで姉妹みたいな感じがしたやすごまが一番進んでいたんですね。

後藤さんのお願いには、何だかんだ言って聞き入れてしまう保田さん。

やすごま初書きとは思えないほどイイです!!

224 :カテナチヲ :2004/12/19(日) 00:04
更新お疲れ様です。

「だってさ、やぐっつぁん、元気になったんでしょ?
 だったら、ごとー、お小遣い無くなったって 別に気にしないよ」
お昼抜きってのは、ちょっと厳しいけどさ。でも、大丈夫。

このセリフにグッときました。
愛されまくりの矢口さんがうらやましいです。。。

225 :名無し :2004/12/19(日) 01:08
隣の部屋のやぐよしに聞こえてしまうのでは…
らぶらぶですね〜
226 :信長 :2004/12/29(水) 15:10
更新します
227 :Growing :2004/12/29(水) 15:11
「1年、この後どうするー?」

閉会式の後、バレー部は学院のバレー部と共に校内で打ち上げをしていたのだった。
後片付けが終った後輩達に、上級生達が声をかける。

「どこか行くんですか?」

「まだ時間あるしね、どっかファミレスでもって言ってるんだけど」
どっちでもいいよ、家遠い子は帰っても構わないからね。

そう優しく告げたキャプテンはひとみの腕をがっしと掴んだ。

「吉澤は、勿論来なきゃ駄目」
っていうか、義務。いや、命令。

「ちょ………ちょっと先輩!」

「そうそう今日のMVPなんだから」
「あんたが来なきゃ、反省会も出来ないし」

盛り上がっている先輩達に、ひとみは申し訳なさそうに告げる。

「や………それはそうなんですけどもー」

あたし、寮に19時までに帰らないと………って、先輩、聞いてますかー?

「だいじょぶだいじょぶ」
6時半ぐらいまで付き合ってくれれば。

「それじゃぎりぎりっすよー!」
只今の時刻は、5時45分。ここから、寮に帰るのには1時間ぐらいはかかるのだ。
228 :Growing :2004/12/29(水) 15:11
「申請してこなかったのかー?」
試合なのに。

同じ寮生の2年生が呆れたように問うてくる。それにひとみは、申し訳なさそうに返した。

「いや、早く終るって聞いてたんで………じゃあ、第3まで申請しなくていいかな………と」

「馬鹿たれ」

こつりとキャプテンに頭を殴られた。ひとみはちょっとだけ身を縮こませる。

「すみません」
以後、気をつけます。

ひとみの態度に、上級生は肩を竦める。それから、くるりとメンバーの方に向き直った。

「まー、仕方ない、ここで解放してあげますか」

その代わり、ここの教室の鍵、吉澤が返してくる事。職員室までね。それから帰りなさい。

ぽとりと鍵がひとみの手の平に落とされる。それをぎゅっと握り締めながら、ひとみは頭を下げた。
229 :Growing :2004/12/29(水) 15:12
「はい、お疲れ様でした」

「お疲れ」
「また明日ー」
「明日は、午前だけだからね。遅れないように」

口々に告げて出て行った部活の仲間達を見送って、ひとみは『やれやれ』と息をついた。

「さーてと」
一応、忘れ物のチェックしてから帰ろっと。

与えられた教室の一室は、ひとみ達の学園の教室と余り変わらなかった。
床に落ちていたごみ等を拾い、机を真っ直ぐにしてから『うん』と頷く。

「これで、よしっと」
後は鍵を職員室まで持って行って………。

「お疲れさま」

「うひゃぁ!」

肩にかけたボール入りのバックを思わず落としそうになった。

「何、変な声だして?」

振り向いたひとみの目に映ったのは、綺麗な綺麗な恋人だった。
230 :Growing :2004/12/29(水) 15:12
「―――――飯田さん」

ほっと胸を撫で下ろしながらも、ひとみは間抜けた声を出してしまった事が照れ臭くなる。

「もう誰もいないって思ってたんで」

「うん、だから来たの」

「………………?」

その言葉に、ひとみは一瞬、考える。しかし、直ぐにその理由が思い当たった。
尻尾があったらぶんぶんと振り回しているだろう。それぐらい喜びを全身に表しながら、圭織の手を取る。

「もしかして、ウチのこと、待っててくれたんですか?」

「そ………そういう訳じゃ、ないけど」

視線を逸らしながらも、圭織の顔は真っ赤になっている。
そのことに、ひとみは思わずへらりと笑ってしまうのだった。

その表情を見た圭織は、唇を尖らせながら呟く。

「吉澤」
「はい?」
「表情、だらしない」
「えー?」

きりっと引き締めてみるけれども、それが続くのは一瞬。直ぐに、元の緩みきった表情になってしまう。

「だって、嬉しいんですもん」

飯田さん、忙しいの判ってるし。だから、『待ってて欲しい』なんて、あえて言わなかったですけども。

「こうやって、待って貰えるの、めっちゃ嬉しいです」
「もぉ………」

どうして、そんなにストレートに言うかなぁと心で呟きながら、圭織は抱き寄せられるまま、ひとみの腕の中に納まる。
231 :Growing :2004/12/29(水) 15:13
「じゃあ、今日は一緒に帰れるんですか?」
「―――――そうじゃなきゃ、待ってなんかないよ」
「やったー」

右手だけで小さくガッツポーズをすると、自分よりほんの少しだけ背の高い恋人の目を見上げた。

「吉澤?」
余りにも真っ直ぐな視線に、圭織はちょっとだけ小首を傾げた。

「待っててくれて、ありがとうございます」
一緒に帰れるなんて、夢見たいっす。

「………ばか」
「知ってます」

そう答えながら、ひとみは圭織の唇にちゅっとキスをした。それから、ぎゅーっと抱きしめる。

「大好きです、飯田さん」
「………うん」

照れ臭そうに頷く圭織の髪に、ひとみはそっと唇を当てる。
それだけで、互いに心から幸せになれた。
232 :信長 :2004/12/29(水) 15:19
なんとか嘘つきにならずに、ホッとしております。

>223
保田さんはヘタレですからw
甘いのを書こうと思わずとも、甘くなってしまう保田さん。

どうしてだろう………(苦笑)?


>224

でも、後藤さんの愛しているのは保(ry

まぁ、それはさておき、愛情いっぱいに受けてすくすくと育って欲しいですw
<矢口さん


>225

ぼ………防音設備は完璧です!
ということにしといて下さい………(苦笑)


さて、今回が今年最後の更新となります。
今年最後が主人公達ではなく、サブカップルという事は気にしない!(泣笑)

まだまだ書きたいことの半分も書いていない気がして、愕然としておりますが
来年もマイペースに進めればなぁと思っております。

では、皆様、良いお年を………
233 :カテナチヲ :2004/12/30(木) 01:09
更新お疲れ様です。

後藤さんと保田さん、飯田さんと吉澤さん、共にいい感じですね〜。
あとは…

来年も期待しておりますm(_ _)m
234 :名無飼育さん :2004/12/31(金) 11:39
作者サン、更新ありがとうございます。
書きたいことの半分も書いてないという
ことは、まだまだこの物語が続くということ
ですよね?読者としては楽しみです。
来年も更新待ってますのでよろしく
お願いします。
235 :信長 :2005/01/16(日) 15:00
更新します
236 :Growing :2005/01/16(日) 15:01
「おはよ、矢口」
「あ、圭ちゃん、おはよー」

昨日の対抗戦のお陰で本日は休校なのである。
朝の9時を過ぎても、寮の食堂はそれ程込んではいなかった。

「吉澤は?」
「午前中だけ部活あるんだって。もうとっくに出て行った。ごっつぁんは?」
「寝てる」

休みとなったら昼まで起きてこない。それを知っている真里は、それ以上は訊かなかった。
その代わり、話題を変える。

「圭ちゃん、今日の予定は?」
「学校行って、昨日の残務処理」
「つっまんねー」

思わず口走った真里を、圭はぎろりと睨みつける。

「仕方ないでしょ、やる事は山積みなんだから」
「えー、折角の平日休校なんだよ?遊ぼうよー。っていうか、構え」
どっか行こうよー。映画とか、カラオケとかさー。
「だーめ、忙しいの」
「えー、構え構え構えーーー!」

わんこの様にぎゃんぎゃんと吠え立てる相手に、圭はやれやれと息を吐き出す。
そして、真里に向き直って口を開こうとした瞬間、不意に背後から誰かが覆い被さってきた。
237 :Growing :2005/01/16(日) 15:02
「なーに、喚いてるのさ、2人で」

圭の頭越しに声をかけてきたのは、応援団長の市井紗耶香だった。
最上級生なのに、人懐っこく、どの学年からも人気がある有名人の1人である。


「紗耶香」
呆れたようにその名を呟くと、紗耶香は嬉しそうに微笑った。

「久し振りだね、圭ちゃん」
もー、個室になると全然つまらないよ。

この2人は前年度同室だったのである。元々知り合いだったせいもあるから
気安く呼び捨てに出来る間柄なのであった。

「仕方ないでしょ、勉強しなきゃならないんだから」
「そりゃそうだけどさー」
圭ちゃんもさーっぱり遊びに来てくれないしー。

どこか拗ねた様な口調で言う相手を無視して、圭は食事を黙々と採り始める。

それすら気にならないのか、今度は真里の方に話を振ってくる。

「そういや、矢口、昨日は大活躍だったね」
バレーの応援の奴から聞いたよ、矢口の勇姿。

「そんなことないっすよ」
首をぶんぶんと横に振りながら答える真里に、
「そぉかー?スカウトしたいって言ってたよ、そいつ」

からからと笑いながら、紗耶香は続ける。圭を腕の中に閉じ込めたまま。
238 :Growing :2005/01/16(日) 15:03
「ところで………いつまでくっついてるつもり?」
物凄く食べづらいんですけども。

「んー、圭ちゃんが怒るまで?」

その言葉に、圭はがっくりと肩を落とした。その頬を突付きながら、
嬉しそうに紗耶香は続ける。

「ほんと、圭ちゃんは真面目だなー」
だから、うちら3年に押し付けられちゃうんだよ、生徒会長。

「―――――それは言うなっての」
思い出したくない出来事になっているのか、圭は唇を尖らせた。
そんな子供っぽい仕草をするのは、珍しい。

「まー、いいじゃんいいじゃん。『モノより想い出』ってことわざもあるし」
「ないわよ、そんなことわざ」
それでも本当に受験生?

圭のツッコミに、紗耶香は『あはは』と笑って圭を解放した。
そして、トレイからマグカップを持ち上げ口に含み、表情をちょっとだけしかめた。
239 :Growing :2005/01/16(日) 15:03
「相変わらずミルク砂糖入りなんだね」
「だったら飲まなきゃいいじゃない」
「息抜きだしね、甘いものでもとろうと思って」
受験生は、大変なのだよ、これでも。

前からだけれども、2人の会話には入り込めない何かがある。
独特の間というか、テンポというか。

まるで、恋人同士の会話の様にも聴こえるのは、気のせいだろうか?

そう思う真里の視線に気付いた相手はくすりと微笑んで、
『お邪魔虫は退散しますか』と呟いて、その場を去ってゆく。

「あ、矢口」

しかし、思い出したようにくるりと振り返った。それに、真里は首を傾げてみせる。

「はい?」
「さっきのさ、本気だから」
「え?」
「応援団の話。気が向いたら来て」
「えええ?」

驚いたままの真里に手をひらひらと振ると、今度こそ紗耶香は食堂を去っていった。
240 :信長 :2005/01/16(日) 15:08
あけましておめでとうございます。もう2週間経ちましたが………

>233
あとは…、あとは…………誰でしょうねぇ、アハハウフフ………ハァ
どうなることやらという感じですが、見守って頂ければ。

>234
無駄に長くなりそうなので、キリの良い終わりを目指して頑張ります!
それがいつなのかは、作者自身も判っておりませんが<ダメジャン


出そう出そうと思っていた新しい方が登場致しました。
何やら過去話がありそうですぞ………

では、また近いうちに………
241 :名無し読者。 :2005/01/16(日) 16:34
二期メン大好物です。

二人の過去が気になります。
242 :名無飼育さん :2005/01/16(日) 20:26
同じく二期メン大好物です。

今後の二人に大注目です。
243 :なちのまご :2005/01/17(月) 16:55
作者サン、更新お疲れさまです。
懐かしい方が登場しましたね。
ますます目が離せなくなってき
ました。次回楽しみに待ってます。
244 :名無し。 :2005/01/26(水) 01:02
矢・保・市・後・吉の五人は、学園の生徒達の憧れの存在なんでは?

バレンタインとか凄そう…

245 :信長 :2005/01/31(月) 13:48
更新します


246 :Growing :2005/01/31(月) 13:49
「………」

じぃーっと見つめて来る真里を気にせず、圭は黙々と食事を採っていたが、
大きく溜息をつくと、真里に視線を向けた。

「何か言いたそうね?」
「うーーん」

湯飲みの中身にちょっとだけ口を付けると、真里はようやく口を開いた。

「あのさー圭ちゃんと先輩ってどういう関係なの?」
「どういう?」

圭は一瞬、訳が判らないという表情をしたが、直ぐに小さく頷いた。

「去年の部屋が一緒………って答えは」
「却下」
それぐらい、オイラだって知ってらい。バカにしてる?

むーっとした表情の真里に、圭はくすっと微笑んで、そして続けた。

「そういや言ってなかったっけ」
「ん?」
「あたしと紗耶香と後藤はね、小学校、一緒だったの」
いわば、幼馴染みね。

「………へー」

我ながら間の抜けた返事だと思ったけれども、それ以外に上手く表す言葉が見つからなかった。
247 :Growing :2005/01/31(月) 13:49
「紗耶香がここに入ったから、あたしもここに来たし。後藤もそう」
「そうだったんだ」
「これで、矢口の疑問も解けた?」
「解けました」
と、言う事で、これ以上は何も訊きません、はい。

口を開く前にそう返されて、圭は苦笑を浮かべる。それから『あーあ』と息を吐き出した。

「まぁ、色々とある訳よ」
幼馴染みって言ってもね。
「そうだね」

頷く真里に圭は肩を竦めてみせてから、気持ちを切り替える様に口を開いた。

「なーんか、今日は制服着て学校行く気分じゃなくなったな………」
「………?」

いきなりの方向転換に、真里は不思議そうに小首を傾げる。
そんな真里にびしぃ!と指を突きつけると、徐に圭は宣言した。

「と、いうことで矢口。出かけるわよ」
「ええええ!何だよ、いきなり!」
「さっきは『構え』言ってたじゃない。感謝しなさいよ、
この忙しいあたしが付き合ってあげるんだから」
「えー」
「えー、とか言うな!そうと決まったら、とっとと出かける準備するわよ」

朝食のトレイを手に圭は立ち上がる。その迫力に圧されながらも、真里は嬉しそうに
頷いたのだった。

248 :Growing :2005/01/31(月) 13:50
***********




「くわわあああああ」

大きく伸びをしながら、真希はベッドから起き上がった。未だ寝惚けた表情で、
首をこきこきと鳴らす。

「何時だ?」

枕元に置いた携帯を見ると、11時半過ぎ。
昨日は色々と夜遅くまで致してたので、こんな時間まで目が醒めなかったらしい。
まぁ、普段の休日と殆ど変わりはない起床時間だったのだが。

「あれ?」

机の上にラップがかけられたサンドウィッチと紅茶の缶が置いてある。
どうやら圭が食堂の調理師さん達に頼んで、昼食はお弁当コースにしてくれたらしい。
ここの食堂は、そういう融通が利くのであった。

缶の下にあったメモを手にすると、見覚えのある圭の伝言が書いてあった。
それに目を通しながら、真希は唇を尖らせる。

「ちぇーっ」
やぐっつぁんと2人で出かけるんだったら、誘ってくれてもいいじゃんよー。

「あ、でも、あたし、今お金ないんだった」
じゃあ、仕方ないかな、うん。

あっさりと納得した真希は、パジャマのまま椅子に腰掛ける。それから両手をぱちんと合わせてから、

「いただきまーす」

と、美味しそうなサンドウィッチに齧り付いたのだった。
249 :Growing :2005/01/31(月) 13:50
食事を終えた真希は、パジャマを着替えると皿を食堂に戻しに行く事にした。

「ごちそーさまでしたー」
「はい、わざわざどうもね。夕飯の時でもいいのに」

食堂の調理師達も休憩に入っていたらしい。奥の方から声が届いた。

「夕飯は何ですかー?」
「今日はオムライスだよ」
「わーい、大盛り予約しときます」
「はいはい」

屈託なく声をかけてきて、その上気持ちいいぐらいの食べっぷりの真希は、
調理師達にとっても可愛い存在らしい。
こうやってちょっとだけサービスをしてくれる事が、多々あるのだ。
ちなみにひとみもそうである。

「じゃあ、またー」

そう告げてくるりと振り返ったその時、食堂に入ってきた少女が真希を見た。
それを認めた瞬間、真希はふにゃっと相好を崩す。

「いちーちゃん」
「よー、ごとー」
久し振りっていうか、お前、またでっかくなったんじゃないか?

笑いながら、紗耶香はそう告げたのだった。
250 :信長 :2005/01/31(月) 13:59
珍しく1月に2回も更新してしまいました、どうした私w


>241
過去と言う程のモノじゃないかもしれませんが………。
もう少々お待ち下さいませ。


二期メン大好物ですか。私もですw


>242
ここにも二期メン大好物なお方が!
そう言って貰えると、嬉しいです。ありがとうございます。


>243
懐かしいんですが、私の話の中では、まだまだ現役で頑張ってもらいます


>244
でも、それぞれに(市はわかりませんが)想い人がいるので
きっと玉砕かと………<バレンタイン

っていうか、まだ時系列ではこの話5月から6月にかけてです。
バレンタインの頃なんて、遠い遠い先の話かと………ウフフアハハ



まだまだ続くよ、1stプッチ。話という感じです。
のんびりとお待ち頂ければ、と思ってます。

では、また………
251 :Growing :2005/02/06(日) 17:59

******
252 :Growing :2005/02/06(日) 17:59
「3年生の部屋ってこうなってるんだー」
個室ってどう?やっぱり気楽?

物珍しそうに、きょろきょろと部屋を見回す真希に紗耶香は苦笑しながら
引き出しからお菓子を取り出して、中央にあるテーブルに置いた。

「入学してから1ヶ月以上も経つのに、顔見せにすら来ないんだもんなー、後藤は」
「………違うもん」

その言葉に、真希はくるりと紗耶香に向き直った。唇を尖らせながら続ける。

「圭ちゃんが、いちーちゃんは受験だから邪魔しちゃ駄目って言うんだもん」
そうじゃなかったら、遊びに来たかったよ、ごとーだって。

その言葉に、紗耶香は『そっか』と呟いた。ゆっくりとベッドに腰掛けると、ちょいちょいと
真希を手招きをして。

「?」

大人しく隣に腰掛けると、その頭をわしわしと撫でられた。

「真希は良い子だなー」
「………へへ」

くすぐったそうに首を竦めながら、真希は照れ臭そうに笑う。その表情は、幼い頃から
全く変わっていない。
253 :Growing :2005/02/06(日) 18:01
「高等部はどう?」
「んー、楽しいよ」
「苛められてない?」
「まさかー」

お菓子を摘みながら、ぽつりぽつりと久々に再会した親子の様な会話を交わす。
だけど、元々、真希は紗耶香や圭には甘えた属性なので、全く気にならなかった。


「あー、そういえばさ」

紗耶香は、ふと思いついた様に口を開いた。それに真希は首を傾げる。

「んー?」
「………圭ちゃんと付き合ってるんだって?」

その言葉に、真希はお菓子に伸びていた手を止めた。それから、じぃっと紗耶香を見つめて。

「圭ちゃんから?」
「いや………何となくね」
そんな気がしたんだ。違ったら、ごめん。

その言葉に、真希はふるふると首を横に振った。再度、紗耶香の目をじっと見つめる。

「真希?」
「―――――ごめん」
「何で謝るんだ?」

真希が何に謝っているのか、紗耶香は判らなかった。

「………だって、いちーちゃん」
圭ちゃんのこと、好きだったんでしょ?

「………へ?」

真希の言葉が紗耶香の耳に入って、それから心にすとんと落ちてきた。

ああ、そうか………。そうだったんだ。

今更ながら、自分の鈍感さに頭を抱えたくなってしまう紗耶香なのだった。
254 :Growing :2005/02/06(日) 18:01
「気付いてなかったの………?」

流石の真希もちょっと呆れた口調になってしまう。
さっきの謝罪の言葉を言うのに、ものすごーく緊張していた自分が、何だか滑稽に思えた。

「うーあー………そう、みたい」

頭を抱えながら、紗耶香は横目で真希をちらりと見る。
そんな幼馴染の頭を、真希はそっと撫でた。

「いちーちゃん、頭いいのに、そういうところは鈍感だったよねぇ」

どこかおかしそうに呟く真希に、紗耶香は肩をがっくりと落として見せた。

「―――――改めて言うなよ、そんな事」

そう言えばこいつは、こういうヤツだった。普段は、どこかぼーっとして何を考えてるのか判らない
感じなのに、変な所で妙に鋭い。

だから、自分より先に判っていたんだ。紗耶香自身気付いてない、本当の気持ちに。

「お前、ちっちゃい時から、圭ちゃん大好きだったからなぁ………」
「いちーちゃんも好きだよ」

さらりと返されて、思わず言葉に詰まる。だけども、何だか笑いがこみあげて来て、
ベッドにばたりと倒れながら笑い出してしまった。
255 :Growing :2005/02/06(日) 18:02
「いちーちゃん?」

不安げに覗き込んでくる真希の頬を、手を伸ばし優しくなぜる。

「―――――ありがとな、真希」
でも、謝らなくていいんだよ。

途端に曇る表情。情けなさそうに下がる眉。―――――凛々しい表情が、台無しだ。

「言われなきゃ気付かない想いなんて、本気じゃない」
「そんなこと、ないよ」
「あたしにとっては、そうだよ」
だから、いいんだ。

「いちーちゃん………」
「圭ちゃん、幸せそうだし」
真希だって、幸せでしょ?
「うん」
「だったら、それで良し」

素直に頷く真希の頬を軽く叩いてから、紗耶香はよっこいせと起き上がる。

「いたいー、何で叩くのー?」
「お前は素直過ぎ」

からりと笑うと、紗耶香は続けた。
256 :Growing :2005/02/06(日) 18:02
「圭ちゃんも幸せで真希も幸せだったら、あたしだって幸せだよ?」
「いちーちゃん………」

ふにゃーと相好を崩して、真希は紗耶香の首筋へと抱きついてくる。
それを何とか受け止めながら、紗耶香はふと思う。

きっと無意識に避けていたのかもしれない。圭への想いを自覚するのを。
真希の様に、ひたむきに圭を追っかけることなんてプライドの高い自分には無理だから。

でも、もし追っかけていたら?

そこまで考えて、紗耶香は『いかんいかん』と小さく首を横に振る。
過ぎた事を考えたって、時間の無駄ってヤツだ。目の前の現実を、きちんと見つめなければ。

「―――――応援団ってヤツは天職なのかねぇ」

しみじみと呟く言葉は、幸いにして真希には届かなかったようだ。

257 :信長 :2005/02/06(日) 18:05

主役は誰だ?という感じですが、ほんと申し訳ないです(苦笑)。

次回はお出かけ組かなーと思いつつ、この辺で。
258 :名無し読者。 :2005/02/07(月) 16:14
やすごまの甘さにやられ気味の私としては、寄り道はおおいに結構でございます。
259 :信長 :2005/03/19(土) 14:37
更新します。

260 :Growing :2005/03/19(土) 14:37
「ひどいよ、圭ちゃん」

目の前に座る小さな友人が、ストローを咥えながらぶちぶちと呟く。

目当ての映画も見終わって、ちょっと喉が渇いたからということで
軽い食事を兼ねて、コーヒーショップへと落ち着いたのだけれども。

「だから、言う必要もないって思ってたし」
圭はあさっての方を向きながら、つまらなそうに答える。

「確かに今はあんなんだけれども、中等部の頃って紗耶香、あんなじゃなかったでしょ?」

その言葉に、真里は頷く。彼女があんな風に『人気者』になったのは、高等部で
応援団に入ってからだと記憶していた。
それまでの彼女は、どちらかというと地味目でおとなしい印象を持つ少女だった。
261 :Growing :2005/03/19(土) 14:37
「まぁ、そうだね………」

その言葉に、圭はようやく真里に視線を戻した。更に説明をする。

「寮で逢えば普通に話してたわよ?ただ、それを矢口が見てなかっただけで」
「あー、はいはい」

もう良いです、ごめんなさい。筋違いでした。

これ以上この話題を振ったら、延々と理詰めで説明されて終ってしまう。
折角の休日を圭の説教で潰したくなかった。

「判ればよろしい」

満足げに頷くと、圭はようやく目の前にあるカップに口を付ける。しかし、ふと思い出した様に、
再度、真里を見た。
262 :Growing :2005/03/19(土) 14:38
「ん?」
「さっき紗耶香が言ってた事だけども」
「………はい?」

いきなりの話題転換に、真里はちょっとついていけなくなる。それに気付いたのか、
圭は肩をちょっとだけ竦めた。

「寮でね、紗耶香言ってたじゃない。『応援団に入らないか?』って」
「ああ、そのことね」
冗談に決まってるじゃん。おいら、そんな面倒なことしたくないし。

笑いながら返す真里に、圭は『そういうとは思ったけどね』と呟く。

「でもね、矢口」
「なに?」
「友人の贔屓目もあるかもしれないけれども」
一生懸命応援の練習をしている矢口の姿は、かっこいいって思ったよ?
本番は見れなかったけれども、その姿をあたしは知ってるよ。

「………」
茶化して返そうと思ったのに、どうしてだか言葉が出ない。
263 :Growing :2005/03/19(土) 14:38
ちくしょー、こういうところがずるいんだ。
普段は説教くさい事ばっかり言うくせに、あんまりにも素直に気持ちを
言葉にするもんだから、こんなにも自分を嬉しくさせる。


「矢口?」
心の中でじたじたとのたうち回ってる真里の気持ちを全く判っていない圭は、
黙り込んだ友人の顔を下から覗き込む。

「うっさい、圭ちゃん」
照れ隠しに圭のコップを奪い取ると、中身をぐぃっと飲み干してしまう。

「あー、何すんだよー、やぐちぃー」
「別なの奢る、待ってろ!」

勢い良く立ち上がると、真里は足早にレジカウンターに向かうのだった。
その顔は、どこか拗ねている様で。

「………変な矢口」

取り残された圭は、子供の様にぽつりと呟いたのだった。
264 :信長 :2005/03/19(土) 14:42
気付いたら1ヶ月以上も………申し訳ございません。

>258
寄り道にオッケーが出てしまいました(苦笑)。
じゃあ、これからも………冗談ですが、はい。

相変わらずどじでのろまな亀ですが、思い出した頃に
ちょろっと覗いて頂ければ、と思ってます。

では、次回はこんなに間を空けない様に、と自分で釘をさしてみます。
265 :名無し読者。 :2005/03/20(日) 02:37
待ってました!!

やぐとやすの空気がサイコーです。

次回も楽しみです。
266 :Growing :2005/03/27(日) 16:29
「ただいまー」
 圭が自室のドアを開けると、2人の後輩が返事をする。
「あー、おかえりー」
「お邪魔してまーす」
 その声に、圭の影に隠れて見えなかった真里がひょこんと顔を覗かせる。
「あれ、よっすぃー、こっち来てたんだ」
「あ、矢口先輩」
 
 へらりと笑うと立ち上がって、部屋の主に席を譲る。それをやんわりと止めてから、
圭は自分のベッドへと腰掛けた。

「結構、早かったねー」

 時間はまだ19時過ぎである。休日の門限は、翌日が休みの時は22時で、
それ以外は21時となっていた。
 そうなると寮の食事との兼ね合いがあるので、休日の食事は休前日の夕方までに
申請を出す事になっている。

「まぁ、明日も学校だしね。あんた達はもうご飯は?」

 圭の問いかけに、ひとみと真希は大きく頷く。
267 :Growing :2005/03/27(日) 16:30
「済ませました」
「今日はね、オムライスだったんだよー」
 大盛りにしてもらっちゃった、よっすぃーと一緒に。

 嬉しげに笑う真希に、『じゃあ、丁度いいかな』と圭の隣に腰掛けていた真里が
鞄から袋を出した。

「はい、これ」
 デザートにでも食べてよ。
「んん?」
 きょんと小首を傾げて、袋を覗き込むとプラスチックの器に入ったプリンが2個入っていた。
 コンビニのプリンじゃなくって、ちゃんとした洋菓子店の品物である。

「え?何で?」
 お土産だったら気にしなくていいのに。

 不思議そうに真里を見る真希に、どこかむっとした表情で真里は答える。
そのまま素早く手を伸ばした。

「いらないんだったら、別にいいけど?オイラと圭ちゃんで食べるから」
「いや、いる」
「じゃあ、文句言うな」
「文句言ってないもん」

 袋を奪おうとする真里の頭を押さえながら、真希は返す。悲しいかな、リーチの差で
真里は反対側の手にある袋に届く事すら出来やしない。

「ちっくしょー、ごっつぁん、オイラのことバカにしてるだろー?」
「してないってば」
 取られたら嫌だから、つい………。

 どこか申し訳なさそうに呟く真希に、真里はようやく戦闘態勢を解除した。
268 :Growing :2005/03/27(日) 16:30
「まっ!良いけどさ」
 ニッといつもの様に笑いかけるが、不意にその身体が拘束される。

「やぐちせんぱーい」
「あんだよ、よっすぃー?」

 首を真上に向けると、目をきらきらさせた同室の後輩が後ろから抱き付いてきていた。

「うちにはお土産はないんですかー?」
「ないよ」
 っていうか、何で、よっすぃーにお土産買ってこなきゃならないわけ?

「ひっでーーー!」
 うち、あんなに昨日の試合頑張ったのに!勝ったのに!

 真里をブンブン振り回しながら、ひとみは喚く。

「それはオイラが応援団に入った事でチャラ」
「チャラじゃないです」
「じゃあ、他に何のメリットがあったんだよ?」
「………ええと」

 ぴたりと動きを止めて黙り込む後輩の眉がみるみる下がって行く。どうやら思いつかないらしい。

「………と、言う事でよっすぃーには無しね」
「はぁい」
 
 おあずけを食らわされた犬の様に、見ているこっちが罪悪感を感じる程に落ち込んでいる
ひとみに、真里はがしがしと頭をかいた。
269 :Growing :2005/03/27(日) 16:34
「もーーー!判ったよ!」
「え?」

 いきなりの言葉に、ひとみは驚いた表情で真里を見る。力が緩んだその隙を
突いて、真里は身体を半回転させると、ひとみの鼻をきゅっと捻り上げた。

「ふぇんぱい………」
 一体、何を………と言いかけるひとみに、真里はびしっと告げた。

「机の上に置いてあるからさ、食べなさい!」
 よっすぃーがこっち来てるって知ってたら、持ってきてたのに。風呂にでも行ってるって思ったから
置いてきたんだよ。

「………はいっ!」

 先程の情けない顔はどこへやら、満面な微笑みをひとみは浮かべる。
 再度、ぎゅぅっとちっさな先輩を抱きしめて、直ぐにひとみは猛ダッシュで部屋を出て行った。

「………何だかんだで、吉澤には甘いわねぇ」
「よっすぃーも、物凄い懐いてるよねぇ」

 黙って事の成り行きを見守っていた圭と真希の呟きには、

「ほっとけ」

 と、素っ気無く答える真里なのであった。 
270 :信長 :2005/03/27(日) 16:38

ちょっと時間があったので更新です。

>265
2期メンの会話は書いてて、とてもとても楽しいのですw
でも、今回はやすやぐじゃないですけれども。

愛されまくる矢口さんということで(苦笑)。


しかし、いつになったら矢口さんと本命は絡むのだろう………(涙)

では、また次回で………。
271 :nanashi- :2005/04/01(金) 22:05
なちまり・かおよし…全部好きなカップリングで(爆)
楽しみにしてますよ〜〜^^
272 :Growing :2005/04/03(日) 17:02


「じゃあ、おいら、そろそろ戻るわ」
 風呂行かなきゃだし、明日の準備もあるしさ。

 暫くだべっていたのだが、真里は圭のベッドから立ち上がった。確かにそんな時間だったので
圭も真希も引き止めることはしない。

「おー、今日はお疲れねー」
「おみやげありがとー」
「あいよー、じゃ、おやすみー」

 そう挨拶を交わして部屋を出て行く。隣の自室に戻ろうとドアに手を伸ばしたが、
不意に真剣な表情になる。

 変わりたいんだ。これが『矢口真里です』って胸張っていえるようになりたいんだ。

 その言葉が、昨日からずっと胸に燻っている。

 真里はぎゅっと自らの胸元を掴んだ。それから、大きく深呼吸する。
273 :Growing :2005/04/03(日) 17:03
「よしっ!」

 気合を入れる様にそう呟くと、真里はその場から足早に立ち去っていく。
 向かう先は、もう決まっていた。


「………本気?」

 いきなり飛び込んできた小さな後輩を快く部屋に招きいれた先輩は、真里の言葉に
首を傾げながら問い返した。

「市井先輩が、言ってくれたんじゃないですかー」
 それとも冗談だったんですか?あれ。

 がっくりとなりながら、真里は言葉を返した。そんな相手に、紗耶香は頬を掻きながら
答える。

「いや、本気だったけれどもさ………矢口、乗り気じゃなさそうに見えたから」
「そう、だったんですけれども………」
「結構、大変だよ?休日は対校試合あったら潰れるし、放課後も練習とかハードだし」
 体力勝負よ、何気に。

「―――――判ってます」
 臨時で入ったここ数日。冗談抜きにハードな毎日だったから。

「だったら………」
「でも、頑張りたいんです」
 今のままじゃ、嫌だから。打ち込めるモノを見つけたい、そう思った時に目の前に現れた
『応援団』というものとの出会いは、きっと偶然じゃない。
274 :Growing :2005/04/03(日) 17:04
 きりっとした表情で自分を見上げてくる真里の目を、紗耶香はじぃっと見返した。
それから、小さく『うん』と頷く。

「本気みたいだね」
 目を柔らかく細めて、その頭を撫でる。

「市井先輩?」
「今の自分から、変わりたいって目ぇしてる、矢口」
「………………」
「そういうヤツは、嫌いじゃないよ。いや、むしろ好きかな?」

 くすくす笑いながら、紗耶香は真里に右手を差し出した。

「歓迎するよ、矢口」
「………ありがとうございます」

 その手を握り返しながら、真里はぺこりと頭を下げたのだった。
275 :Growing :2005/04/03(日) 17:04

「応援団、ですか?」

 消灯後、ベッドに入っていたひとみは真里の言葉にむっくりと起き上がった。

「うん、やっぱ、変かな?」
 急だし、皆に何か言われるかなぁ?
「いえ、そんなことないです」
 誰がなんて言おうと気にしなければいいんですよ。

 きっぱりと答えてくれる後輩に、真里もゆっくりと起き上がった。

「矢口先輩、似合ってましたもん。この間の対抗戦の時」
「そう?」
「はい」

 その言葉に、真里はどこか照れ臭そうに微笑う。

「そんなこと言ったって、何も出ないよ?」
「別にそんなの期待してませんよ」
 うちは素直に思ったままを言っただけですし。

「これから大変でしょうけれども」
 2年の今頃から入るのだ。同学年と比較すれば1年以上の開きがある。
276 :Growing :2005/04/03(日) 17:05
「でも、先輩なら大丈夫ですよ」
 うちが保障します。

「………変なの」
 よっすぃーに保障してもらっても、何もならないよ。

 そう返すけれども、それは真里の照れ隠しだとひとみはちゃんと知っている。

「総体では、バレー部の応援に来て下さいね」
「何だよ、予約かよ」
「はい」
 先輩が来たら、多分、一般の応援も増えると思いますから。
「ばーか」

 真顔で答える後輩にそう告げると、真里はベッドの中に潜り込む。そして、そっと囁いた。

「―――――ありがとね」
 笑わないで聴いてくれて。

 その呟きには『おやすみなさい』という言葉が帰って来たのだった。
277 :信長 :2005/04/03(日) 17:08

>271

………なちまり、ウフフアハハ<現実逃避したいらしい

いえいえ頑張りますよ、辿り付くまで!―――――付けるのかなぁ(弱気)


ちょっとペースアップをしないとどうしようもない、ということに
ようやく気付いた作者です。

とりあえず、牛の歩みですがのんびりと見守ってくれれば、と思います。
278 :信長 :2005/04/10(日) 10:46

「うぁー」
 
 応援団に入部して早半月。今まで帰宅部だった真里にとっては、ハードな日々が続いていた。
 そろそろ6月にも入り、高校総体の地区予選が始まる時期なので、応援の練習にも熱が入る。
それは、他の運動部にも共通する事ではあるのだが。

「………お疲れっすねぇ」
「そっちこそ」

 寮の第3門限のは20時前に帰って来た真里とひとみは、部屋で着替えつつ溜息をつく。

「少しは慣れましたか?」
「まぁ、なんとかね………よっすぃーこそ、今回レギュラーとれたの?」
「スタメン発表は予選前日なんで」

 他愛の無いことを話しつつ、真里はベッドに横になる。
279 :信長 :2005/04/10(日) 10:47

「ねみぃー」
「少し寝ます?」
 延灯届出してますから、点呼まで寝てても大丈夫じゃないっすか?

 寮というのは団体生活である。タイムテーブルに通りに、1日は過ぎていくのだ。
 消灯は23時。それ以降も起きていたい時は、延長灯火申請、通常『延灯届』と言われてる物を、
点呼までに寮監に申請するようになっている。
 もちろん『勉学の為』という決まりなので、ベッドに入って本を読むとかではなく、きちんと机に向かってなければならないのだが。

「………そうだね、予選終わったら実力テストだしなー」
 勉強しとかないと、後が怖いよな。
「ですよねぇ」

 そう言いながらも、互いに机に向かう気力が湧かない事が判っていた。

「うち、風呂行ってきます」
 先輩はどうします?
 風呂セットを棚から出して、ひとみは告げる。それに真里はひらひらと手を振った。

「もうちょっと休んでから行くや。今、混んでるだろうし」
 戻ってきた時に寝てたら起こして。

「りょうかーい」という返事を残して、後輩は部屋を出て行くのだった。
280 :Growing :2005/04/10(日) 10:47
「あーあ」

 疲れてはいるけれども、それは心地よい疲れで。溜息の理由は、他に原因がある。
 真里はベッドの横にある可動式のキャビネットの上から、携帯を手に取った。
 器用に片手で開くと、フォルダに入れてある画像を呼び出す。

 どこかぎこちない笑みを浮かべる自分と、それすら気付いて無いのか自然に微笑んでいるなつみとの画像。

「………逢いたいなぁ」
 小さく小さく呟いて、溜息をつく。
 
 応援団に入ってから、時間の都合で直通のバスで行くことが多くなった。朝練が無い日でも、自主練を
しなければならない立場の真里は、列車もいつものより1本早いので行くようになっていた。
 だから、あれからなつみには1回も逢っていない。

「―――――メルアド貰ったけどもさ」
 送れる訳ないじゃんよ。そもそも共通の話題っていうものがないんだから。

 ジタジタと足をばたつかせてもどうしようもない。 

「なんか、こう………話のネタになるものは………」

 懸命に考えを巡らせるけれども、思いつくわけが無い。とうとう真里は諦めて起き上がると、
携帯をベッドの上に放り投げた。

「風呂行ってこよ………」
 21時半で浴室は閉まってしまう。このままだと、入り損ねてしまうのは目に見えていた。

「あーあ」
 自分の不甲斐なさに、真里の唇からは溜息しか出なくなっていた。
281 :Growing :2005/04/10(日) 10:48
 風呂上りに買ったジュースで喉を潤しながら自室の扉を開けると、既にひとみはベッドに入っていた。

「まだ十時前だぞー。しかも、延灯出したって言ってたじゃんか、お前」
 勉強しろ、勉強。
「眠いんですよぅ」
 朝練も昼練も夕方も厳しいし、寝て体力回復するしかないんですー。

 その答えに真里は肩を竦める。それから、ベッドの上に放置していた携帯を手に取った。
留守にしていた短い間にも、メールは数通届いている。

「そういやさっき鳴ってましたよー」
「………………」

 返事が無い事を不思議に思ったひとみは、もぞもぞと布団から顔を出した。その目に映るのは、
携帯を開いたままどこか驚いた表情をした小さな先輩で。

「矢口先輩?」
「や………ああ、うん」
 やばい、どうしよう………と呟く真里に、ひとみは更に怪訝な表情をする。
「何かあったんですか?」
「あ、まぁ………うん。地元の友達からさ、ちょっと久々だったからびっくりしただけだよ」
 気にしないで、お前は寝ろ!と続ける相手に、『変なの………』と言いながらも、その言葉に甘えるひとみなのであった。
282 :Growing :2005/04/10(日) 10:48
 瞬く間に眠りの世界に落ちていったひとみを確認すると、真里は携帯を片手に机に向かう。
「うそ、だぁ………」
 そう言いながらも、届いたメールに視線を落とす。そうしないと、何だか落ち着かなかった。

『件名:届くかな?
 内容:矢口へ
     最近、駅で見かけないけれども、元気ですか?
     吉澤さんもいないし、何だか心配です。
     特に用件はないんだけれども、
     折角だからメールしてみました。
     じゃあね
                  from なっち』


 ありえない、ありえないよ。彼女の方からメールをくれるだなんて。

 真里はじたじたと足をばたつかせた。さっきも同じ事をしたけれども、それとは全然意味合いが違う。
 しかし、はたと我に返ると、思わず呟く。

「返事………何て書こう」

 直ぐに返信したほうがいいかな?それとも間を置いてからが………。ああ、でも、うまく言葉が見つからないし、
第一『部活始めましたー』とか打ったら、今更だって思われそうだしなぁ。それでも、嘘はつけないし………。

 ぐるぐると考えが止まらなくなってしまった真里が、なつみに返事を打てたのはそれから1時間も経っての事だった。
 
283 :信長 :2005/04/10(日) 10:50

しまった、最初の方『信長』になってる!
ちょっとずつでも更新しないと忘れてしまいそうになるので………。

では、また次の機会に。
284 :nanashi- :2005/04/10(日) 22:16
なちまりキタ―(゚∀゚)―!!!
待ってます待ってます待ってます待ってますwwwww
ゆっくりでいいんで^^
待 っ て ま す 。
交信乙ですた(´∀`)
285 :名無飼育さん :2005/05/13(金) 21:01
待ってるっすよ!
286 :名無し待ち :2005/05/27(金) 17:48
待 っ て ま す 。
287 :名無飼育さん :2005/06/10(金) 17:18
待ってる!
288 :Growing :2005/06/11(土) 21:01
「大分、慣れてきたんじゃないの?」
 地区予選応援の帰り道、団長である紗耶香が声をかけてきた。最寄りの駅まで皆で移動して、
そこで解散ということになっていた。

「そうですかねぇ」
 これでも、いっぱいいっぱいですよ、ほんとに。
 そう答える真里の頭を、紗耶香はぽんと叩く。

「矢口は真面目だねぇ」
 外見とは違って。
「………そうでもないですよ」
 『はい』と答えるのもなんだか変だと思ったので、真里は苦笑いしながら返す。 
「そーゆーとこが真面目だって言ってるの」
 あはは、と笑いながら真里の背中をばんと叩く。備品等で手が塞がっている真里は、
それに反撃する事も出来なかった。

「………痛いです」
 目一杯表情をしかめながら訴える真里に、
「やだなぁ、これも愛だよ愛」
 軽く言葉を返してくれる団長なのであった。
289 :Growing :2005/06/11(土) 21:02
「じゃ、明日は朝練は無し。気をつけて帰るように。以上、終わり」
 『お疲れ様でした!』とびしっと声を合わせて挨拶をしてから、各々家路に着く。
「矢口ぃ、何か食べてかない?」
 どうせ門限、遅くにしてるんでしょー、という紗耶香に、真里は『そうですけど』と言葉を返す。

 周囲の仲間達には真里は『団長が直々にスカウトしてきた2年生』と思われているらしく、
こうやって軽い口調で話していても何も思われないらしい。
 それに入部してみると、確かに体育会系の委員会なのだが、活動が終れば上下の縛りは想像していた以上に
緩い。 今の団長の代からそうなってきたのだと、同級生が話していた。

「じゃあ、いいじゃん」
「先輩、受験生でしょう?」
「きこえませーん」
 両手で耳を押さえながら、紗耶香は答える。
「勉強しましょうよー」
「まぁまぁ、息抜き息抜き」
 マックかモスにでも行く?奢るからさ。
「じゃあ、モスで」
 速攻で返事をする真里の頭に『調子にのんな』という声と共にチョップが下されるのだった。

「ごちそうさまでした」
「どういたしまして」
 結局本当に奢ってもらった真里は、外に出てから再度礼を言った。
 にこやかに返した紗耶香は、腕時計を覗いて呟く。

「そろそろ帰った方がいいね」
 まだ余裕で間に合うけれども、一応ね。
「ですね」
 そうやって駅に向かって歩き始めたのだが、不意に紗耶香が足を止める。つられて真里も歩みを止めた。
「どうしたんですか?」
「あれって………学院の生徒会の子じゃない?」
 その言葉に導かれる様に、真里は紗耶香の視線の先を追う。その目に映るのは、なつみと見覚えのある女性が
仲良さげに話している光景だった。
 ご丁寧に手なんか繋いじゃって、らぶらぶモード全開である。
290 :Growing :2005/06/11(土) 21:03
「………あの時の」
 間違いない。っていうか、あの派手な金色に近い茶色の髪をした整った顔立ちの女性を見間違える訳がない。

「知ってるんですか………?」
 何となく紗耶香の背に隠れる様になりながら、真里は問うた。

「あー、まぁ、応援団関連でね。ちょっとしか話したことないけども………って、こっち見た」
「えっ!」

 真里がひょこっと顔を覗かせると、なつみとその女性とばっちり目が合う。逃げられるものならば、全てを投げ出したい気持ちで一杯な真里だった。
 目が合った瞬間にはとても驚いた表情だったのが、直ぐに華が綻ぶ様に微笑まれる。
その笑顔に、ぎゅうっと胸を掴まれる気がした。

「矢口?」
 何、知り合いなの?
「はい………一応」
「ふーん」
 顎を撫でながら、紗耶香はなにやら考えている。それから『うん』と頷くと、
「じゃ、市井、先に帰ってるわ」
「えええ!」
 おいらだって帰りますよ!っていうか、1人にしないで下さいよ!
「だってさぁ………」
「同じ寮なのになんでそんなこと言うんですか?」
「うーん、まぁ、ねぇ」
 と、何だか煮え切らない言葉が帰って来る。
 そうやってこしょこしょと話しているうちに、なつみ達は傍にまで近付いて来ていた。
 
291 :信長 :2005/06/11(土) 21:07
気付けばもう2ヶ月………本当にお待たせしました。

>284−287

書き込み&見守って頂きありがとうございました。
短いですが、更新しました。

次回はこんなに間が空かないようにしますので、
のんびりとですが、頑張っていきたいと思っております。

では、また次回に………。
292 :名無飼育さん :2005/06/11(土) 22:10
き、キタ――――!
更新乙ですー

いちーちゃんナイスッ!
めっちゃ裕ちゃん気になります
293 :名無飼育さん :2005/06/11(土) 22:50
286です(ヴぁく)
ヤター!!交信GJ!!
ワクワクしてきますた(´∀`)
焦らせてしまい申し訳_| ̄|○
無理の無い交信でいいので、次回も期待してます>( ゜皿゜ )
294 :名無飼育さん :2005/07/10(日) 22:09
ずっと待ってるよ
295 :名無飼育さん :2005/07/19(火) 23:21
気になりますー待ってます
296 :Growing :2005/08/03(水) 19:37

 どうしよう。
 満面の笑みで近付いてくるなつみの視線から、
目を逸らす事が出来ない状態の真里は、懸命にその場から逃げる事を考える。
 しかし、それは当然叶えられる訳も無く。

「………久し振り」
「あ、はい。お久し振り、です」
 真里の返事に、なつみはちょっと唇を尖らせる。
「敬語、止めるって言ったよね?」
「は………、あ、うん。ごめん」
 どこか落ち着かない気持ちで、真里は口調を変える。
それに、なつみは満足げに頷いた。
「今日は、部活?」
「うん………安倍さん………じゃなかった、なっちは?」
 先程から妙に突き刺さる視線を感じる方をちらりと見ながら、真里は答える。
 邪魔をしちゃ悪いと思ってるのか、先程の女性は話が聞こえない程度の距離でこちらを見ていて。
 見ているっていうか、なんていうか………気のせいじゃない。絶対に、矢口、睨まれてるよ。
 心で思わず呟く。
297 :Growing :2005/08/03(水) 19:39
「あー、ちょっと人を迎えに行くとこなんだ。そうだっ!矢口も来ない?」
 出たついでに、今からどっか食べに行こうって話してたし。

 名案を思い付いたかのように告げるなつみに、真里は小さく返す。

「いや、あの………もうさ、食べちゃったし」
 部活の先輩もいるしさ、申し訳ないけれども。

「そっかぁ………」
 心底残念そうに呟くなつみに背後から声がかかる。

「なっち」
「ん、何?」
「………紹介してくれへんの?」

 その言葉に、真里は思わず後ずさる。

 冗談じゃない。何で、好きな人の恋人だろう人に紹介されなきゃならないのだ。

 救いを求める様に周囲を見回すと、こちらも同じ様に邪魔にならない距離にいる紗耶香と目が合う。
『助けて下さい』と口パクで訴えるけれども、どこか楽しそうな表情で手で『×』を作られて拒否られた。

 酷いよ、市井先輩!と心で叫んでも、どうしようもない。

 そんな風にじたばたとしている真里を尻目に、『そうだね』なんて無邪気に頷くと、
なつみは不意に真里の腕に腕をかけた。

 そのまま、ずるずると相手の目の前に引き摺られていく。

「ええとね、裕ちゃん、この人が学園の矢口真里さん。で、こっちの人が………」
「中澤裕子です。裕ちゃんって呼んでな」

 いきなりそんなことを言って握手を求めてくる相手に、どんなリアクションを取ればいいのかさっぱり判らない。

「や………あの、矢口、真里です」
「なんや、つまらんなぁ」

 そう答えながらも、真里の頭から爪先までしげしげと見つめると、なつみの肩をちょいちょいとつっつく。

「なに?」
「いいやぁ」
「その表情、ぜーったい何か言いたげなんだけども」
「気のせいよ、なっち」
「んもぅ」

 そっぽを向いてしまうなつみをどこかおかしそうに眺める裕子。

 その光景はまるで恋人同士がじゃれあってるように見える。
298 :Growing :2005/08/03(水) 19:41

 なんだよ、何したいんだよ、矢口の前で。

 胸がつきつきと痛む。この場にこうして間抜け面でたっている自分が、本当にバカみたいだと思った。

「………あ、ごめんね。矢口」
 真里の視線に気付いたのか、なつみがこちらの方を向く。

「あのさ、ご飯が駄目だったら、ちょっとお茶でもどうかなぁ………って思うんだけど」
 そう呟くように告げながら、なつみは再度真里の腕を取ろうとした。しかし、それはかなわない。

「や、ぐち?」
 逃げるように身体を引いた真里に、なつみは不思議そうに首を傾げた。
 その表情から目を逸らしながら、真里は口を開く。

「門限、あるから」
 思った以上に冷たい声が出た。咽の奥に何か塊が詰まっている様で、うまく声が出せない。

 しかし、なつみは真里のその状態に気付かないのか、照れ臭そうに笑う。 
 
「あ………うん、そう、だよね」
 ごめんね、なっち、気がきかないよね。

 しかし、不意に真剣な表情になると小さく続ける。

「―――――総体の予選終ったら、また駅で逢える、かな?」
「それはちょっと………判らない、と思う」
 思った以上に忙しい部活だし。まだ、矢口、下っ端だし。
「そっかぁ………」
 残念そうに俯くなつみを見てると、何も知らない彼女に腹を立てている自分に、
胸がむかついてきて仕方が無かった。

 判ってる、これは自業自得だ。何も言ってない自分の気持ちを察しろだなんて、虫が良すぎる。

 大声で叫んでこの場から逃げ出したいけれども、流石にそれは出来なかった。

 黙り込んでしまった真里をどう思ったのか、なつみはゆっくりと口を開いた。

「えと………じゃあ、また、メールするね」
「―――――はい」

 『ばいばい』と手を振って去って行く―――――何故だか裕子もこちらに向かって満面な笑みを浮かべて
手を振っていったのだが―――――なつみの背を見送る。

 それが視界から消えた後、真里は思わずその場にしゃがみ込んだ。
299 :Growing :2005/08/03(水) 19:41
「おーい、大丈夫かー?」
 能天気な声が耳に届く。それには首をぶんぶんと横に振って。

「何か………死にそう」
「失恋ぐらいじゃ死なないって」
「失恋だなんて、一言も言ってないじゃないっすか!」 
 思わず立ち上がって反論する真里に、『そんだけ元気あれば大丈夫だな』と明るく返される。

「市井先輩!」
「見てりゃ判るよ」
 矢口、あの子のこと好きなんでしょ?
「………っ」
 思わず答えを返せずにいる真里の背を、紗耶香は軽く叩いた。
「何落ち込んでる?」
「………落ち込むに決まってるじゃないですか」
 好きな人に、恋人がいるって判って落ち込まない人間なんていませんよ!

 吠える真里に、紗耶香は『ふむ』と頷きながら腕を組む。それから、「ま、いっか」と呟いて。

「なー、矢口、ほんっとに気付いてないの?」
「何をですか!?」
 どこかけんか腰に答える真里に、『なーんで人の事は判っちゃうんだろうなぁ』と
心の中で紗耶香が呟いたのは、もちろん本人以外知るわけが無いのだった。
300 :信長 :2005/08/03(水) 19:46

大変お待たせいたしました(平伏)。

色々としている間に、アッというまに2ヶ月経ってました。
本当に申し訳ございません。


>292-295

もったいないお言葉ありがとうございました。
レス、本当に励みになります。


ようやく接触するもヘタレな矢口さん。
一体、どうなってしまうんでしょう………(苦笑)。

次回こそ!こんなにも間が空かないようにしたいと(今度こそは本気で)
思っております。

では、また次回に。
301 :名無飼育さん :2005/08/03(水) 20:00
リアルタイムで読みました!
やー、やっぱいいっすね・・・
市井さんかっけー!
302 :名無飼育さん :2005/08/04(木) 09:17
待ってましたよ☆
303 :名無飼育さん :2005/08/04(木) 09:54
293でしたww
待ってましたぁーーーーー!!!
今後…どうなっていくのか凄くワクワクしてますw
いい方向にいけばいいな…いや、いくはず!
かおよしの方も楽しみにしてますね☆
304 :名無飼育さん :2005/09/02(金) 18:06
もうすぐ1ヶ月。
頑張れ作者、ずっと待ってるから
305 :Growing :2005/09/04(日) 17:38
「辛気臭いなぁ」
 最寄バス停から寮へと向かう帰り道、紗耶香が呟く。それに力無い視線を向けると、
真里は盛大な溜息をついた。
 
 あれから既に1週間経っていた。なつみからは他愛も無いメールは何通かきていたけれども、
返信する事が出来ないでいる。
 
 どうせ告白するつもりは無かったんだし、これでいいじゃないかとも思うのだけれども
どうにもこうにも吹っ切れない自分がここにいる。

「矢口でも悩むんだねぇ」
「先輩は悩みなんてなさそうですよねぇ」
「なんだよ、その返し」
 あたしだってなぁ、これでも悩みぐらいあるんですよー、と言いながら小さな後輩の頭を軽く小突くと、
静かに続けた。

「矢口はさ、元気一杯にうるさい位の甲高い声で笑ってるのが一番似合ってるよ」
 
 彼女は真里が元気がない理由を知っている。だけども、それを口にしないのが本当にありがたかった。
 気が利かないように見えて、本当は誰よりも気を遣っている。

 目の前の先輩とはひとつしか違わないのに、何だかずっと大人のように見えた。
306 :Growing :2005/09/04(日) 17:39
「………うるさい位って、先輩は一言多いっすよ」

 真面目に答えるのは照れ臭いから、ちょっとだけ拗ねたように返事をすると、
真里はさっきのお返しとばかりに、肘で紗耶香の脇腹を突付く。
ちょっと力が入り過ぎたそれが綺麗に決まった。

「………いってぇ」
 矢口………お前って奴は。

 不意打ちに思わずしゃがみ込んでしまった紗耶香はちょっとだけ涙目になりながらも、口元は笑っていて。

「馬鹿力だなぁ、お前」
「だから、そういうのが余計だって言うんですよ」

 くすくす笑いながら、真里は手を紗耶香に差し出す。それを掴んで立ち上がろうとするが、
いきなりぐいっと逆に手を引かれて。

「え………?」
 不意をつかれて真里は紗耶香の腕の中に転がり込む。
「思った通り。矢口は抱き心地がいいなぁ」
 ぎゅぅぅっと抱きしめながら、しみじみと紗耶香は呟く。
「い………市井先輩!」

 寮の敷地内とはいえ、人目が無い訳じゃないのだ。こんな目立った行動をしたら、どんな風に言い触らされることか。
ただでさえ、女子高生は話題に餓えている。それに目の前のこの人は、かなりの人気者だったりするのだ。

 そんな真里の胸の内も知らずに、紗耶香はますます調子に乗りだしてしまう。

「ついでにちゅーもしとく?ん?」
 なんて唇を突き出してくる相手に、真里は思い切り握り拳でその頬を殴り付けたのであった………。
307 :Growing :2005/09/04(日) 17:40
                 *       *



「………調子に乗り過ぎた」

 丁度、部屋を留守にしている真希の椅子に逆さ座りしながら、紗耶香は湿布を張った頬をそっとさする。

「自業自得でしょ?」
 机に向かったまま呆れた様に圭は返す。そんな幼馴染に、紗耶香は唇を尖らせて反論した。

「だってさー、矢口ちっさいし、抱きしめたらどんな感じかなーって思ったら」
 "Make hay while the sun shines"ってことわざもあるぐらいだし。

「なんか違う気がするんだけども………」
「まぁまぁ気にしない」

 そう告げて、にっと笑うと紗耶香は明るく続けた。

「まぁ、ちょっとは気が紛れたでしょ。最近、アイツ元気なかったからさ」
 役得だったしねー。あいつ、何気に上級生に人気あるんだよ?これで、矢口ファンに自慢出来るよ。
 
 その言葉に、圭は少し目を見開いた。かけていた眼鏡を外すと、紗耶香の傍へと歩み寄る。

「圭ちゃん?」
「紗耶香の愛情表現は判りにくいんだってば」
 そんなに矢口が気に入ったの?

「………まぁね」
 そう答えながら、紗耶香は苦笑する。心の中で『ほんと判ってないなぁ』と呟きながら。
308 :Growing :2005/09/04(日) 17:43
 ねぇ、判ってるの?矢口が元気ないと、圭ちゃんまで元気ないように見えるんだよ?
 矢口の事は確かに気に入ってるけれども、それだけじゃあんな事まではしないよ。

 もちろん、目の前の鈍感な君にそれを言う気は更々ないのだけれども。

「紗耶香?」
 じぃっとこちらを見上げてたまま何も言わない紗耶香に、圭は小首を傾げた。

しかし、紗耶香はそれにはゆっくりと首を振り、頬を指差す。

「あいつ、グーで殴ってきやがった」
 普通、平手だよねぇ、女の子だったら。

 軽い口調で話題を変えるのだった。
309 :Growing :2005/09/04(日) 17:43
 同じ頃、隣の部屋では。



「せーんぱい」
 妙に甘えた声を出すひとみに、真里は雑誌に視線を落としたままあっさりと答えた。

「教えない」
「えー、酷いっすよーー!」
 じたじたする後輩に、真里はやれやれと思いながらベッドから起き上がった。

「っていうか、矢口だって知らないんだよ」

 今度の土曜日には、ひとみが所属するバレー部の地区予選が開催される。しかし、この時期は
あちこちで予選が繰り広げられてるので応援団も分散されてしまう。

 それが心配になったひとみは、真里に単刀直入に訊いたのだった。

「今週はただでさえ予選多いんだからさ。よっすぃーのとこ行けなくても勘弁してよ」
「………約束したじゃないっすか」
「してねーよ!」
 行けたらいいとは、確かに思ってるけどさ。

 真里の言葉に、ひとみは渋々と頷く。それから、真里と一緒に雑誌を覗き込んでいた真希に視線を向けた。

「ごっちんは?」
「んー?」

 真希はのんびりと返事をすると言葉を続ける。

「特に用は無いから、行くよ」
 圭ちゃんも行くって言ってたし。

 その答えに、ようやくひとみは安心したらしい。不満げな表情が笑顔に変わった。
310 :Growing :2005/09/04(日) 17:45
「よっし!これで頑張れる」
 飯田さんも来てくれるって言ってたし。

 ひとみのその言葉に、真里はぴくりと反応した。

 そうだよ、圭織が応援に来るって事は………彼女も一緒に来るって可能性も高い。
 正直、顔を合わせたく無いから、ここはバレー部の応援に選ばれない事を祈ろう………って。

 逃げてる自分を棚に上げて、何を言ってるんだろうなぁ、おいらは。

「先輩?」
 いきなり顔を覗き込んでくるひとみに、真里はハッと我に返る。
「なななな何?」

「いや、ぼーっとしてたから」
 ね、ごっちん。

「うん」
 最近、やぐっつぁん、元気ないから心配。

 じぃっとこちらを見てくる真希とひとみに、真里はくしゃくしゃと自分の髪をかきむしる。
 それから『はぁぁぁ』っと盛大に息を吐き出して。

「矢口先輩?」
「やぐっつぁん?」

 いきなりの真里の行動に、二人はきょとんとしている。そんな後輩達に真里は財布を持ち上げて問うた。

「何飲みたい?」
「「え?」」
「君達の優しい心に感動した先輩が、何かおごったげるって言ってるんだよ」
 遠慮なんてするなよ。

 そう告げた真里の表情は、どこか照れ臭そうに見えた。しかし、それを口にせずに二人は勢い良く立ち上がる。

「うち、ブリックのコーヒー牛乳」
「ごとーは、いちご牛乳」
「っていうか、矢口が牛乳飲めないって知っててその選択かよ!」

 そう文句を言いながら、真里は部屋を出て行く。もちろん真希とひとみも嬉しげに小さな先輩を追いかけて行くのだった。

311 :信長 :2005/09/04(日) 17:50

>301−304

レスありがとうございます。
こんなに遅いペースなのに、待って頂けるだけで本当に嬉しいです。

レス返しが下手なので、こうしてまとめてしまって申し訳ないぐらいなのですが、
ご了承頂ければと思います。


はてさて、ちょっと調子に乗り過ぎた人がいますがそれはそれでw
主人公よりも脇役を書いている方が楽なのはなぜなんだ………_| ̄|○


少しでも楽しんで頂ければ光栄です。

では、また次の機会に………。

312 :名無飼育さん :2005/09/04(日) 19:36
待ってましたーーーーー(≧▽≦)
かおよしにも期待ですww
次回も楽しみに待ってます!!
無理の無い交信で構いませんので、頑張って下さいね!!
313 :名無飼育さん :2005/09/22(木) 17:56
待ってるにょー・゜・(ノД`)・゜・。
314 :Growing :2005/09/24(土) 15:18

「以上、明日の応援担当先の組分けを終わります。バレー、ハンドボール、ソフトと3校に分かれてるから、
間違って自分の担当じゃない方に行くんじゃないぞ」

「団長こそ−」
 結構、方向音痴ですよねー、という軽いツッコミに「うるさいなぁ」と拗ねた様に返す。

それには、その場にいたみんなが大笑いして。

 その中で、一人恨みがましい視線を送ってくる後輩がいるけれども、それをきれいに無視して紗耶香は続ける。

「あと、ご意見ご感想は個別に市井までよろしく。じゃ、これで解散」

 その言葉に、20人近くいた団員達はわらわらと部室から去っていく。
しかし、一人残って紗耶香を睨み付けている後輩がいた。

 その後輩の真正面に座っていた紗耶香は、小首を傾げる。

「なんだよ、矢口。その不満げな表情は」
「不満げじゃなくって、不満なんです」
 どーしておいらがバレーなんですか?

「へ?だって、矢口の同室、吉澤じゃん」
 あいつ、バレー部だよね。だから、なんだけども。

 机の上の書類をとんとんと整えながら、紗耶香は答える。
315 :Growing :2005/09/24(土) 15:19

「そんな気遣ってくれなくても結構です」
「何、吉澤と喧嘩でもしたのかー?」
「そんなんじゃないです」
「変な矢口」
「………先輩に言われたくないです」

 判っている、これは八つ当たりだ。
 どこか刺々しい感じになっている自覚はあるのだが、どうしても止められない。

 胸の中に巣くっている苛立ちやらやるせなさやらがごちゃ混ぜになっていて、
判っていても相手を思いやる心の余裕が無くなっていた。

 そんな真里の心中を知ってか知らずか、紗耶香は「うーん」と天井を見上げながら唸った。
それから勢い良く立ち上がると、真里の元へと歩み寄ってくる。

「なぁ、矢口」
「………はい」
 
 あんな態度をとった自分を注意されるだろうと思っていた真里は、俯いたまま神妙に返事をした。
316 :Growing :2005/09/24(土) 15:19

「お前は、何の為に応援団に入ったんだっけ?」
「………え?」
 いきなりの問いかけに、真里は顔を上げて相手を見返す。

「応援団に入りたいって言った時の目、今でもあたしは覚えてるよ」

 変わりたいと全身で叫んでいた。些細な事だけれども、小さな一歩を踏み出そうとしていた君。

 それが、昔の自分にダブった。―――――それこそが、この小さな後輩を気にかける理由のひとつ。
 
「市井、先輩」
 目を丸くさせて自分を見上げてくる後輩の頭をくしゃりと撫でる。

「………頑張れ」
「すみません」
「謝る理由が判んないよ」

 苦笑しながら、紗耶香は部室から去って行く。その背がドアの向こうに消えた時、真里は大きく息を吐き出したのだった。
317 :Growing :2005/09/24(土) 15:23
◇◇                     ◇◇

「おー、やぐちぃー」
 直通のバスを待っていると、名前を呼ばれる。振り返ると、圭がひらひらと手を振っていた。

「圭ちゃん」
「………どしたの?」
 真里の表情を見るなり、圭はそう問うてきた。それに真里は首を傾げる。

「何が?」
「何がって………」
 前髪をがしがしとかきあげながら、圭は困った表情になる。

 どっか泣き出しそうな表情をしていたからだなんて、口が裂けても言えやしない。

「圭ちゃん?」
「なーんか元気ないなって思っただけ」
 そんなにお腹でも空いてるの?

 軽口を叩く圭の言葉に、「ごっつぁんじゃあるまいし」なんてくすくすとひとしきり笑うと、
真里はふっと真剣な表情に戻る。

「ねぇ、圭ちゃん」
「んー?」
「………おいらさ、少しは変われたかな」
 ぽつりと呟く。

「矢口?」
 いきなりの言葉に、圭もうまく返せない。真里も返事を求めている訳ではなかった。
318 :Growing :2005/09/24(土) 15:24

「さーてと、明日は地区大会ラッシュだー!」
 大きく伸びをしてから、スイッチを切り替えるように真里は声を出した。

「圭ちゃんは?どこか応援に行くの?」
 地区大会の応援は自由参加だ。対抗戦の様に、出席を取る訳ではない。

「吉澤の応援にでも行こうと思ってるけど」
「ってことは、ごっつぁんも一緒だな」
 うんうん、と頷きながら真里は続ける。

「おいらの応援姿見て、惚れるなよー」
 本番の姿、圭ちゃんに見られるの初めてだし。

「―――――どういう風の吹き回し?」

 あれ程、どこに応援に行くかを知られるの、嫌がってたのに。
 真希から情報を得ていた圭は、その手を晒す。どうせ、互いに知ってることはばれていたのだけれども。

「ま、心境の変化って事かな」

 どこかさっぱりした表情で真里は答えた。圭の目を見返しながら。
 その目には力があった。何かを決心したような、そんな瞳。

「あっそ」
 だったら、それ以上訊かないでおくわ。

 あっさりとした会話が終わったその時、時間ぴったりに直通バスが到着したのだった。
319 :名無し読者 :2005/09/25(日) 07:22
更新待ってました。
ヤグがやっと前を向いてくれましたね。
これからが楽しみです。
320 :Growing :2005/09/25(日) 20:37
                 ◇     ◇


「矢口がおかしい」
 
 どこかむすっとした表情で帰って来たと思ったら、いきなりの圭の言葉に真希は目を瞬かせた。

「………やぐっつぁんが?」
 そりゃ、最近元気ないなーとかは思ってたけど。

 くるりと椅子を回転させると、圭を見上げたまま続ける。

「そういうのじゃなくって」

 制服から私服に着替えながら、圭は何か言いたげに口を開く。しかし、諦めたように息を吐き出した。

「なんだよー、圭ちゃん」
 言いたくないんだったら、口にしなければいいのに。
「違うって」
 苦笑しながら圭はベッドに腰掛けた。そのまま腕を組み、歯切れ悪く続ける。

「矢口はさ」
 決めるまでもの凄く悩むんだけれども、最終的に決めたら揺るがないんだ。怖いぐらいに、真っ直ぐで。

「………ふぅん」
「そんなの何回も見た訳じゃないけれども、その時と同じ目してたから」
 だから、なーんか気になって。

 真希は椅子から立ち上がると、そのまま黙り込んでしまった相手の顔を覗き込む。
321 :Growing :2005/09/25(日) 20:39

「結局さ、圭ちゃんはやぐっつぁんが『何を』しようとしてるか知ってるの?」
「知ってるっていうか………まぁ、あたしの勘が当たってればだけど、ね」
「それは成功しそうなの?」
「………正直、わかんない」

 そうなのだ。それが一番の心配事なのである。
 人の恋路を邪魔する気は更々無いけれども、やっぱり真里が傷つくのを見るのは嫌だ。
 いや、真里がふられると決まった訳ではないのだけれども。

 その答えに、真希は柔らかく微笑む。そのまま、圭の頬に指で触れると言葉を続けた。

「やぐっつぁんが、成功したら一緒に喜んであげて、失敗したら慰めてあげればいいんじゃないの?」
「………そういうもん?」
「そーゆーもんでしょ、友達って」
 圭ちゃん、やぐっつぁんの事になると何気に気弱になるよねぇ。

 くすくす笑いながら、真希は頬に軽く口付ける。

「ほっとけ」
 それぐらい、自覚してるよ。

 そっぽを向く愛しい相手を腕の中に閉じ込めながら、『やっぱりちょっと嫉妬しちゃうかなぁ』
なんて真希は心で呟くのだった。
322 :Growing :2005/09/25(日) 20:40


「矢口先輩?」

 その声と同時に暗かった部屋に、煌々と電気が点る。

「うぉ!びっくりしたーー!」

 ベッドの上で寝転がっていた真里が眩しさに目をぱちぱちさせてると、ひとみも驚いたように目を丸くしている。

「びっくりしたのはこっちっすよ。誰もいないと思ったけど、一応声かけてよかったー」

 わざとらしく胸を撫で下ろした仕草をするひとみは、椅子へと腰掛けた。

「具合でも悪いんですか?だったら、吉澤、別のとこ行きますけど」

「いや、そんなんじゃないよ」
 ちょっと考え事してただけ。

 よっこいせ、と勢いをつけて起き上がると真里はひとみに視線を向ける。

「よっすぃー」
「はい?」
「矢口、明日、バレーになったから」
「………………!」
 一瞬、意味が飲み込めなかったのか怪訝な表情をしたが、すぐに目を輝かせて真里のベッドへと
走り寄って来る。まるで犬のように。
323 :Growing :2005/09/25(日) 20:41

「ほんとっすか!」
 フローリングの床に膝を付き、上半身を真里のベッドの上に乗せると真里を見上げた。
「ホントだよ」
 微苦笑気味に答える真里にいつもと違う雰囲気を感じ取ったのか、ひとみは思わずまじまじと
その顔を見つめてしまう。

「よっすぃー?」
「………いえ、何でもないっす」
 吉澤、張り切ってアタック打ちますよー!

「頼もしいなぁ」
「へへ、先輩の前で見っとも無いプレーしたくないっすから」
「圭織の前で、の間違いだろ?」
「………まぁ、それもありますけども」

 頬をちょっとだけ赤らめたけれども、ひとみはすぐに真剣な表情で真里に告げる。

「矢口先輩に『あれがおいらの自慢の後輩だ』って言って貰える様なプレーしますから」

「………ばーか」

 そう言いながらも柔らかい笑顔で、真里はひとみの頭をくしゃりと撫でる。

「へへへ」

 照れ臭そうに笑いながら、ひとみも笑顔を返すのだった。
324 :Growing :2005/09/25(日) 20:44
              ◇         ◇

「おはよー」
「おはようございます」

寮の入り口で、紗耶香とばったり出会う。行き先が一緒なので、当然と言えば当然なのだが。

「忘れ物はない?」
「ありません」

 下っ端で荷物もちでもある真里は、大きめなバッグを叩きながら答える。
 そんな真里の顔を、紗耶香はしげしげと見つめるとニッと笑った。

「何ですか?気持ち悪い」
「失礼だな、お前」

 そう答えながら、紗耶香は寮の玄関の扉を押さえてくれる。どうやら、両手が塞がっている
後輩の為らしい。

「ありがとうございます」
「………なんか、すっきりした表情してるよ」
「先輩の気のせいですよ」
 まだ何も始まっていないのに。

「そっかなー?」

 首を傾げながら、紗耶香はのんびりと真里の隣を歩きだす。真っ直ぐ前を向いたまま、
真里は口を開いた。

「市井先輩」
「ん、何?」
「矢口が落ち込んだら、慰めてくれますか?」
「………んー、時と場合による」
「ひっどいなぁ」

 くすくす笑いながら答える真里に、紗耶香は続けた。

「まー、今度はモスでデザートもつけてやるよ」
 それぐらいかなぁ、サービスは。

 そんな返事に、真里は『あはは』と笑うと「それで十分っすよ」と明るく答えた。
325 :Growing :2005/09/25(日) 20:45

「矢口せんぱーい」

 予選大会会場のギャラリーの一角を陣取った応援団の一行に、コートの方から声がかかる。
 手摺から上半身を出して下を覗くと、ひとみが笑顔で手を振っていた。

「おー、よっすぃー。今からアップ?」
「はい。今日は第一試合なんで」
「お、期待の新人。頑張れよー」
 同じ寮生の紗耶香が声をかけると、ぺこりと礼をする。そういう生真面目さが、ひとみの良い所のひとつだった。

「ごっちんと保田先輩も来るって言ってたんですけど………」
「ごっつぁんが間に合うわけ無いって。諦めな」

 けらけらと笑う真里に、ひとみも「そうですね」と相槌を打つ。しかし、次の瞬間、何かを見つけた
かのように視線が外された。何気なくそれを追うと、思った通りの人がいて。

「………圭織」
「久しぶりだね」

 艶やかに微笑むと、まずは階下にいる恋人の方が優先だとばかりに手を振った。

「飯田さん!」
 良かった、間に合ったんですね!

 尻尾があったらぶんぶん振れてるだろうひとみに、圭織は微笑う。

「うん、頑張って」
「試合終わったらメールします………って、はーい!」

 『集合だよーーー!』と声をかけられて、ひとみは残念な表情になる。しかし、直ぐに頭を
切り替えたのかきりっとした表情になってチームメイトの方へと走っていった。
326 :Growing :2005/09/25(日) 20:47

「わっかりやすいなぁ………」
 苦笑気味の真里の言葉に、圭織も頷く。だけども、その表情はとても幸せそうに見えた。

「ええと、さ。圭織」
 コートでアップをするひとみに視線を向けたままの圭織に、真里は神妙に声をかけた。
 その問いをまるで知っているかのように、圭織はこちらを見ることもせずさらっと答える。

「なっちなら来ないよ」
「………え」
「誘ったけど、来ないってさ」
 講習もそうそうさぼれないしね。判ってるでしょ、うちらこれでも受験生だから。

「そう、だよね………」

 その言葉に、傷付いている自分がいた。折角の決意が、無駄になってしまった事への失望。
 でも、それは自分の中で決めた事であって、彼女には全く関係無い。

 だけども、どこか気が抜けてしまったのも事実。

 やっべぇなぁ、じゃあ、次、いつ逢えるかわっかんないなぁ。

 大きく溜息をついた真里のそれを聞きとがめて、圭織は真里に視線を向けた。
目が合った瞬間、唇を尖らせる。


327 :Growing :2005/09/25(日) 20:49

「圭織?」
「ずるいよ、矢口」
「え………?」
「そんな表情してたら、『嘘だよ』なんて続けられないじゃない」
「え………って、嘘なのかよ!」

 『ぎゃーす!』と叫んで殴る振りをした真里に、圭織は「ごめんごめん」と謝罪する。
しかし、不意に真面目な表情になると静かに問いかけた。

「なっちに逢いたいの?」
「………うん」
 謝んなきゃいけない事が、あるんだ。

「そっか………」
 その言葉に、圭織は小さく頷いた。そして、続ける。
「多分、昼過ぎには来ると思うけども」
 はっきりとした時間は、ちょっと判んないや。

 「ごめんね」と呟く圭織に、真里は「ううん」と首を横に振る。

「教えてくれて、ありがとう」
 じゃ、おいらもそろそろ集合だからさ。
「うん、矢口も頑張って」
「何を頑張るか判んないけどね」
 からりと告げて真里は手を振って去って行く。その姿を少しだけ目で追ってから、
圭織は小さく呟いた。

「うん、安心した」

 その口元は、自分でも知らないうちに綻んでいる。

328 :名無飼育さん :2005/09/25(日) 20:50
312でした!!
交信お疲れ様です^^これからだー!!これから…(爆)
頑張って下さい!待ってまつ(´・ω・)ノシ
329 :Growing :2005/09/25(日) 20:52

 もちろんひとみ達のチームは、1回戦は当然の様に勝利する。スポーツ推薦枠がある真里達の
学校は、スポーツが盛んな学校なのであった。


「次は何時から?」
「ええと、昼休み挟んで14時過ぎぐらいまでは時間があると思います」

 プログラムを見ていた1年生が、素早く答える。それに紗耶香は軽く頷くと、団員をぐるりと見渡した。

「今は12時過ぎか………じゃあ、13時半まで休憩。各々どこにいってもいいけど、他校の人もいるから迷惑かけないように」
 あと、ちゃんとお昼食べときなよー。うちらも体力勝負なんだからねー。

 それには「はーい」という元気な声が返ってくる。真里ももちろんその一人だった。

「さーてと、お昼でも買ってくるかー」
 財布を片手に周囲を見回すと、見知った顔が1ブロック程離れた場所に並んでいた。
そこに真里はとことこと近づいて行く。

330 :Growing :2005/09/25(日) 20:52

「ごっつぁん、間に合ったんだ」
 真希を見て意地悪く問いかけると、「む、失礼な」という返事が返ってきた。
 その隣に座る圭に視線を向けると、肩を竦めてあっさりと告げる。

「ほんと、間に合わないかと思ったわよ」
 いつまで寝てるんだってぐらい熟睡しててさー、置いて行こうって100回ぐらい思ったわよ。

「えー、酷いよぉ、圭ちゃん」
「でも、結局一緒に来たんでしょ?優しいよね、圭ちゃん」

 柔らかい圭織の声に、膨れっ面だった真希が「えへへ」と機嫌を直す。
いつの間にやら仲良くなってしまったらしい。

「………圭織、これ、あんまり甘やかさなくていいから」

 腕を組みながら圭が、ぶっきら棒に呟く。それから、真里に問いかけた。

「矢口、何時まで休憩なの?」
「13時半まで。だから、お昼一緒にしないかなって思ってさ」
「それは構わないけど。うちら、もう買ってきちゃったよ」
 圭は鞄の中からコンビニの袋を取り出して見せた。

「うん、別にいいよ。今から買ってくるし」
 とりあえず席だけ取って置いてもらえればなって思っただけだから。

「りょーかい」
 ついでに、お茶か何か買ってきてくんないかな。後でお金払うから。

 圭の言葉に「あいよー」と振り向かずに返事をすると、真里は軽快な足取りでギャラリーの出入り口に
走って行ったのだった。
331 :Growing :2005/09/25(日) 20:54

 市内の中心部にある会場周辺は、食べる場所が事欠かない。しかし、応援団の制服である
学ランを着ている真里は、流石に一人ではそこらのファーストフードに飛び込む勇気は無かった。

「コンビニは………」
 きょろきょろと周囲を見回しながら歩いていると、目の前で突然車が急停止する。

「え、と」
 おいら、ちゃんと歩道歩いてたよな。何も悪いことしてないよな、とぐるぐると思考を巡らせている
真里の目の前の助手席側のドアが開いて、中の人間が降りてきた。

 凄く逢いたくて、でも、凄く逢いたくない相手が目の前でぎこちなく微笑む。

 その表情が何だか切なそうに見えて、真里は思わず胸元をぎゅっと掴んだ。

「………な、っち」
「ごめんね、びっくりしたでしょ」
 運転手が運転手だからさ………と、なつみがぼそぼそと呟いた次の瞬間、いきなり誰かに抱きつかれた。

「やーぐーちーーーー」
 うわ、なに、その格好。超可愛い。てか似合いすぎ。

「え、えと………中澤、さん」
 ぎゅうぎゅうと抱きしめられながら、真里は目を白黒させる。

 その呼び方に、裕子は不満げに頬を膨らませた。

「いややなー、裕ちゃんって呼んでって頼んだやんかー」
「いや、でも………そんな」
「呼ばないと放さんへんよー」

 更に抱く腕を強くしようとした裕子の体が、ぐぃっと引っ張られる。

「んもぅ!裕ちゃん」

 そのまま真里と裕子をべりっと引き剥がすと、なつみは裕子に向かってびしりと指を突きつける。

「矢口、びっくりしてるでしょ!いい加減にしなさい」
「えー………でも、ちょー可愛いし」
 裕ちゃん、可愛い子大好きやから!

 握り拳と共にきっぱりと宣言する裕子の背をなつみは車の方に押し戻す。
332 :Growing :2005/09/25(日) 20:56

「あ、ちょっと、なっち」
 酷い、裕ちゃんの話、もうちょっと聞いて。

「いーから、もう帰って」
 それにここ駐停車禁止だし。

「えー、そんな、なっちずるい。あ、矢口、今度、うちに遊びに来てな」
 待ってるからなーーと、いう言葉を残し、渋々車に乗って去っていった裕子を、真里は呆然と見送る。

「ごめんね………」
 裕ちゃん、いつもあんなだから。びっくり、したよね?

 その声に真里はようやく我に返り、なつみに視線を向けた。制服以外の格好を見たことが無かったので、
ちょっとだけ知らない人の様に見える。

「あ………まぁ、うん」
 いきなりで確かにびっくりしたけども、何ていうかどうにも憎めない気がした。

「ええと、どっか行くの?」
「うん、ちょっとお昼買いに………」
「そっかぁ」

 そこで会話が途切れる。ちょっと気まずい雰囲気が2人の間を通り抜けていくのが判った。

 ああ、どうして上手く話せないんだろう、おいら。これじゃ、絶対に誤解される。

 真里は心で地団駄を踏むけれども、この事態はどうしようもない。
333 :Growing :2005/09/25(日) 20:57

 先に口を開いたのは、なつみの方だった。

「あのさ、なっち、先に中に入ってるよ。圭織も来てるっしょ?」
「うん、ギャラリーに」
「じゃ、またね」

 そう告げると、なつみは会場入り口へと向かっていった。その背を見送るしか出来ない自分。


 いいのか?ちゃんとしたいんだろう?この状態をはっきりさせたいんだろう?

 そう囁く自分が居る。でも、実際になつみを目の前にするとこうして動けない自分が居るのも事実だった。


 真里はぎゅっと拳を握り締めた。それを胸元に当てながら、目を閉じて思う。


 強くなりたい。傷付いてもいいから、一歩前に進める強さが欲しい。うじうじと考えている後ろ向きな自分を、変えていきたい。

 そう思えるようになったのは、君を好きになったおかげ。だから、ちゃんとこの恋にけじめをつけないといけない。
 そうじゃなきゃ、失礼な気がする。―――――例え、最初から勝ち目の無い恋だとしても。

 ゆっくりと目を開くと、真里は人込みに紛れたなつみの背中を追いかける。もう、迷いは無かった。

334 :Growing :2005/09/25(日) 20:58
「なっち!」
 
 会場の入り口でなつみに追いつくと、その手を掴む。驚いた表情で振り向いたなつみに、
真里は小さく問いかけた。

「ちょっと、話あるんだけどいいかな?」
「でも………お昼は?」
「後でも買えるし」

 真里の真剣な表情に何を感じたのか判らないが、なつみはこくりと頷いてくれた。
それにほっと息をつくと、真里は先立って歩き出したのだった。


        ◇      ◇


「はい、紅茶で良かった?」

 会場脇にある駐車場。8割方埋まっているけれども、端の方にはまだ余裕があった。
その近くにある植え込みに腰掛けたなつみに、真里は冷えた缶ジュースを差し出した。

「うん、ありがと」
 小さく礼を述べると、なつみは隣に座ろうとしない真里を見上げ小首を傾げる。

「矢口?」
「ええと………ごめんなさい!」
 まずはぺこりと頭を下げる。いきなりの行動に、なつみは慌てた声を上げた。
「や、矢口?どしたんだい?」
 何か、謝ることなっちにしたっけ?

 そんななつみに、真里は小さな声で告げる。

「メール、返事しなくて」
「ああ………」
 そんな事かぁ、となつみは胸に手を当て、大きく息を吐き出す。
「いいよ。部活、忙しかったんでしょ?ほら、なっち、空気読めないからさ」
 ごめんね、馬鹿みたいなメール送っちゃって。

 へへへと照れ臭そうに微笑うと、肩を竦める。
 その仕草があんまりにも「らしく」って、真里は目を細めた。
335 :Growing :2005/09/25(日) 21:00

 やっぱり、好きだなぁ、この人の事。何も知らないけれども、心からそう思った。

「やっと、笑ってくれた」
「え?」

 なつみの言葉に、今度は真里が首を傾げた。

「この前逢った時も、今日もさ………矢口、笑ってくれなかったから」
 だから、機嫌悪いのかなって思っちゃって。

「そんな事………」
 ないよ、とまでは言い切れなかった。思い当たる節が、確かにあったから。

「でも、いいや。こうして話せたしさ」
 視線を下に向けながら、ぽつりと落とす様に呟く。

「なっち………」
「へへ、何か湿っぽくなっちゃったね。で、話って何?」
「あ………うん」

 やべぇ、いきなりそう来るか。いや、『話がある』と言って誘ったのは自分の方だから
全く持って、責める気はないのだけれども。
336 :Growing :2005/09/25(日) 21:02

「あのさ、ええと」
 がしがしと髪をかきあげながら、真里はあちこちに視線を向ける。

 ええい!もう決めた事だろう、矢口。振られたら、モスバーガーにデザート付きだ!しかも、奢りだぞ!


 訳の判らない理由で気持ちに勢いを付けると、大きく深呼吸をしてから、なつみに視線を戻した。
 真剣な面持ちの真里につられるように、なつみも真剣な表情になる。

「………矢口?」
「あのさ、おいら、ずっと前から」
「うん?」
「―――――多分、なっちは覚えてないだろうけれども。初めて駅で逢った時から、ずっと」
「………」
「ずっと………好きでした」

 緊張の余り、喉がからからで掠れた声になってしまったけれども、はっきりと告げることが出来た
気がする。

 真里は大きく息を吐き出すと、なつみのリアクションを待った。
 どうせ、振られる事が判ってるんだ。潔く振ってくれー!という想いのまま。

 しばらくじぃっと見つめあって、やっぱり先に口を開いたのはなつみの方だった。

「えと、あの、さ。矢口」
 で、その続きは?

 そのリアクションは、真里の想像の範疇を当然だけども超えていたのだった………。
337 :Growing :2005/09/25(日) 21:04

「つ………続きって、言われても」
 好きだ、だけで足りないって言うのか?それとも、自分を徹底的に打ちのめしたいのか?

「だって、普通、『付き合ってくれ』とかあると思うんだけど」
 それとも、付き合わなくてもいいの?

 ああ、もう!何言ってるか判んないよ、なっち!

 半ば自棄になってしまった真里は、思わず口を開く。

「いや、そうじゃなくって………っていうか、なっち」
 付き合ってる人、いるよね?

「ええー!いないってば!」

 両手をぶんぶん振りながら、なつみは顔を真っ赤にして答える。

「だってさ………ほら、さっきの裕ちゃんとキ………キスしてるの、おいら見ちゃったんだけども」
「ど、どこでぇ?」
「なっちの学校。対抗戦の応援で行った時………。お弁当、届けてたじゃん、その時に」
「あ………あれは、さ」
 裕ちゃん、誰にでもするので有名なんだよ。うちの学院では。

 それに拍子抜けしながら、真里は更に続けた。

「それに、一緒に暮らしてるっぽい感じだったじゃんか!」

 その言葉には、なつみはちょっと考えるのかの様に、空を見上げる。
「うーんとね………」
 裕ちゃんの恋人、一緒に暮らしてるあたしの従姉なんだ。
「はぁ?」
 何それ、何のネタ?と思わず心で突っ込む真里の心中を知ってか知らずか、なつみは続ける。

「だから、良く泊まってくんだけど。そーゆー時に限って忘れ物するんだよねぇ。………その時の、見られちゃったみたいだね」
 学院のみんなには内緒なんだけどね、これは。

「見られちゃったみたいだね」って………それって、ありなの?
 なつみの余りといえば余りの答えに、真里はがっくりと肩を落とす。
338 :Growing :2005/09/25(日) 21:05

「な………なんだよぅ」
 おいら、物凄い悩んだのにぃ。あれは、全部『無駄』だったってこと?

 思わず頭を抱えてしゃがみ込んでしまった真里の隣に、なつみが同じようにしゃがみこむ気配を感じた。

「………矢口」
 顔上げて?
「―――――やだ」
 一人でぐるぐる思い悩んで、結局は自分の勘違いでしたってオチ、笑われるに決まってる。

 拗ねた子供の様に膝に顔を埋めながら、真里は思う。しかし、心地よい声が真里を促すのだ。

「ね、矢口」
 もう1回、言って?

 恐る恐る顔を上げると、そこには真剣な表情のなつみがいて。笑われてるだろうと思った真里は、
ちょっと拍子抜けしてしまう。

 だからこそ、格好悪いけれどももう一度、ちゃんと告げようと思った。
 
「………なっち」
「ん、何だい?」
「―――――好き」

 頭の中でシュミレーションした時みたいに格好良く言えなかったけれども、
ありったけの想いを込めて囁く。

 その言葉に、なつみは頬を赤らめて頷く。それから、消え入りそうな声で続けた。

「………なっちも、好き」
 ずっと、ずっとね好きだったんだよ?

「嘘だぁ………」
 思いがけない言葉に、真里は自分の耳を疑う。だけども、なつみの目は「嘘じゃないよ」と告げていて。

 ヤバイ、なんか泣きそうだ。

 思わず俯いた真里の耳に、なつみの声が届く。

「矢口、泣いてる?」
「泣いてない!」

 勢い良く顔を上げると、なつみの顔が目の前にあった。

「なっ………ち」

 余りのアップにどぎまぎしてると、ふんわりと微笑まれて。

「嘘なんかじゃないからね」

 柔らかい唇が、そっと真里の頬に触れたのだった。
339 :Growing :2005/09/25(日) 21:06
 
 ねぇ、なっち。 これからもっともっと君の事、知りたいって思うよ。

 それにさ、おいらの事も、知って欲しいな。

 でも、とりあえず………手を繋ごう?そして、そこから始めようよ。

 2人の最初の一歩をさ。
340 :Growing :2005/09/25(日) 21:08
『Growing』   


                        end           
341 :信長 :2005/09/25(日) 21:13

これにて『Growing』は終わりです。

タイトルは、矢口さんに「成長」して欲しいという想いを込めて付けたのですが、
果たしてそうなったのかは、皆様の判断にお任せいたします。

約2年のお付き合い、本当にありがとうございました。

亀のように遅い更新進度だったのに、皆様の暖かい励ましのおかげで
何とか終わらせることが出来ました。

心より感謝しています。


続き………続きはあるような無いような(苦笑)。

もしどこかでお会い出来たら、その時はよろしくお願い致します。
342 :名無し読者 :2005/09/26(月) 08:53
素敵なお話をありがとうございました。
毎回、今日は更新されてるかな、とドキドキしながら見ていたので、
楽しみがひとつ減ってしまうのはとても残念です。
でも完結おつかれさまでした。
ぜひ幸せな二人のお話も書いてもらえたら嬉しいです。
343 :名無飼育さん :2005/09/26(月) 09:03
更新お疲れ様でした。
最初から、楽しんで読ませていただきました。

途中、やきもきしたりドキドキしたりと、
zyんすいに作品に入れました。
作者様の作品の雰囲気が好きです。
また、作者様の作品が読める日を心からお待ちしております。
344 :名無飼育さん :2005/09/26(月) 21:19
作者さん、ありがとうございましたorz
以前以上になちまりが好きになれたのも、この小説のおかげですw
2人の周りの人物の書き方も凄く自然で、全て大好きです(爆)

また、作者さんの小説読みたいです(≧Д≦)ノシ 待ってますww
345 :名無し飼育 :2005/09/27(火) 23:32
完結お疲れ様でした
ふんわりした感じとかがなちまりらしくてすごくマッチしてました
素敵な小説ありがとうございました
346 :ONE DAY :2005/10/08(土) 17:57

 今でも良く覚えている。あの時の、どこか驚いた様な表情を。
 でも、直ぐに『ありがとう』と言って笑ってくれたあの瞬間に。

 あたしは、恋に落ちた。そりゃあもう、転がり落ちる様に。


             ◇◇◇    ◇◇◇
347 :ONE DAY :2005/10/08(土) 17:58

 雨の音で目が覚めた。見知らぬ天井が目に入り、思わず飛び起きる。

「………ええと」
 身体の上にかけられたタオルケットを握り締めながら、吉澤ひとみはきょろきょろと
辺りを見回す。

 自分が住んでいる高校の寮の部屋ではない。寝惚けた頭でそれだけを確認すると、
太ももの上に暖かい重みのあるモノが飛び乗ってきた。

「んん?」
 視線を下に向けると、くりくりとしたアーモンド型の目がこちらを覗き込んでる。
そのままひとみの口元をぺろぺろと舐めだした。

「こーら、かもも」
 それから逃げようと、ひとみが再度横になったのをいいことに茶色の犬は顔全体を
嬉しげに舐めまわす。

「くすぐったいって、こら」
 あはは、と笑いながら犬を抱き上げながら起き上がると、部屋のドアが静かに開いた。
348 :ONE DAY :2005/10/08(土) 17:59

「あれ、起きたんだ」
 手に持ったトレイには、マグカップが2つ。

「飯田さん」
 起こしてくれてもいいんじゃないっすか?

 かももの前脚を後ろから操作しながら、ひとみは訴える。それを嫌がったかももは、
ひとみの腕から逃げ出して、飼い主の飯田圭織の元へと走って行った。

「いやー、だってねぇ」
 静かだなぁって思ったら、熟睡してるし。気持ちよさそうに寝てたからさ。

 くすくす微笑いながら、ローテーブルを挟んでひとみの正面に座る。その横に、当然の様に
犬は横たわった。

「折角、飯田さん家に招待してもらったのに」
 あたしって、ほんと馬鹿だなぁ。

 ひとみはしみじみと呟いて溜息をつく。
349 :ONE DAY :2005/10/08(土) 18:00

 ただでさえ、こうやって逢う時間は少なくなってきているというのに。
 自分は県大会優勝を目指している部活動で忙しく、圭織は受験で以下同文。

「―――――吉澤?」
 視線をちょっとだけ上げると、圭織がどこか心配そうな表情をしている。

「やっぱり疲れてる?もうちょっと寝ててもいいよ?」
「大丈夫ですよ」

 そう答えて、目の前に置かれたカップを手に取る。ホットミルクに砂糖がちょっと入っていて
どこかほんのりと甘い。

 思わず口元を緩めたひとみは、カップをテーブルの上に置くと窓に向けた。

「雨、降ってきたんですね」
「そうみたいだね」
 同じ様に視線を向ける圭織に視線を戻すと、ゆっくりと口を開く。

「さっき、夢見てました」
「どんな夢?」
「飯田さんと、初めて逢った時の夢」

 その言葉に、どこか照れた様に圭織は微笑った。ひとみが大好きな表情で。
350 :信長 :2005/10/08(土) 18:06

お久し振り………でもないですね(苦笑)。

>342-345
心温まるレス、本当にありがとうございました。
一人一人にお返ししたいのですが、ほんと、レスが下手なもので………。



まだまだ書きたいエピソードやら、脇の2カップル、そして主役達のその後が
ありますので、このお話の世界をもうちょっと続けたいと思っています。

まずは、短いですが主役達よりも甘い2人のお話から。

ペース的には毎度毎度同じ様になってしまいますが、
よろしくお願い致します。
351 :名無し読者 :2005/10/09(日) 05:43
待ってました!楽しみ楽しみ
352 :名無飼育さん :2005/10/09(日) 21:32
かおよし!!待ってました〜(≧∀≦)
俺、待ってました(謎
かおよし、期待しちゃいます♪
無理せず頑張って下さい!
353 :名無飼育さん :2005/11/03(木) 14:05
待ってます
354 :ONE DAY :2005/11/12(土) 19:21

『吉澤、ひとみさんやね』

 名前を呼ばれ、ひとみはこっくりと頷く。それから、慌てて「はい」と続けた。

 本日は私立桜学園の入寮日。まだ同学年の生徒達は到着していないらしい。
 そう教えてくれた自分より10センチは背の低いだろう寮の管理人は、こちらを見上げてにこにこと笑う。

 スポーツ特待生の為、遠方から入学してきたひとみは、時間配分を間違ってしまい、
こんなに早く到着してしまったのだ。
 
『ええと、自分の同室は………ああ、矢口やな。あいつなら安心やろ』
 手元のリストを眺めながら続ける口調は関西弁。耳慣れない言葉に、ひとみは首を傾げる。

『なん?』
『いえ………』
『そんなにおかしいか、関西弁?』
 まぁ、慣れてもらうしかないんやけどな、こればっかは。

 くしゃりと頭をかく相手に、ひとみは首を横に振る。

『ちょっと聴き慣れなかったから………。別に、おかしいとかそういうんじゃなくて』

 しどろもどろと弁解をするひとみに、寮監は再度笑った。

『ええよええよ、吉澤はええ子みたいやなぁ』
 ぽんぽんと背中を叩くと、先導するように前を歩き出す。それにひとみは慌ててついていくのだった。
355 :ONE DAY :2005/11/12(土) 19:22

『1階は食堂や洗濯室、風呂や集会室とかあるから後で同室の先輩に案内してもらい?』
 階段を上りながら、説明される。

『はい』
『2階は3年生の個室部屋。3階と4階があんたら1年と2年の2人部屋になってる。
で、吉澤の部屋はここや。309号』

 こんこんと軽くノックしても返事は無い。『なんや、またどっかいったんか』と呟くと、
寮監はおもむろにドアを開けた。言葉通りに、そこには誰も居なかった。

『じゃ、後はご自由に。送ってきた荷物は全部部屋に入れてるから。外出したかったら、1階の
寮監室に顔出して。そんとき説明する』

『あ、はい。どうもありがとうございます』
『いつまでそんな可愛い事言ってくれるかなぁ………』

 しみじみと呟きながら、寮監は部屋を出て行ったのだった。



『さて、と』

 あれから黙々と部屋を片付けていたのだが、あんまり荷物を送らなかったのが功を奏して
あっという間に片付けは終わってしまった。同室の先輩は、未だ帰ってくる気配は無い。

『もう2時かぁ………』

 そう呟いた瞬間、お腹が盛大に鳴り出した。よくよく考えてみると、昼食も取らずに必死に片付けていたのである。
ドアの外では自分と同じ到着した入寮生の声が時折聞こえたが、自分と同じ様に部屋の片付けに
いそしんでいるのだろう、あまり人の気配は感じられなかった。

『何か買ってくるかぁ』
 ジャージに着替えて窓の外を見ると、こちらに付いた頃降っていた雨は既に止んでいるようだった。
周囲の散策を兼ねて、ランニングしたいとぼんやりと思う。

『よし、行くか』
 小銭入れをジャージのポケットに入れると、ひとみはトレーニング用の靴を持って部屋を後にしたのだった。
356 :ONE DAY :2005/11/12(土) 19:23

『けったいやなぁ、ほんまに』

 寮監の部屋を訪れて、外出したい旨を告げるとそう返された。しかし、直ぐに背後にある
札を指差しながら説明してくれる。

『門限は、一応17時半。他にもあるんやけども、今のところはパス。そこにある札は、寮内に居る時は
白で、学校行く時や出かける時はひっくり返して黄色にしてってや。そうじゃないと、100名近くいるから、把握するの大変なんよ』

『はい』
 部屋ごとになっている札を、ひとみは素直に返す。自分の隣にある札は、黄色になっていた。

『じゃ、気ぃつけてな。こっから2キロ程度走れば、ジョギングするのに丁度いい公園があるで』
 標識に出てるから、方向は直ぐ判ると思うけど。

『はい、ありがとうございます。いってきます』

 そう告げると、ひとみは一礼して出て行ったのだった。
357 :ONE DAY :2005/11/12(土) 19:25

『ああ、こっちか』

 大通りに向かって標識に目を走らせると、公園の名とおおよそのキロ数が出ていた。
それを確認すると、ひとみ足取り軽く走り出す。雨の後のせいか、空気が澄んでいる気がした。

 走る事十数分、公園の入り口に辿り着いたひとみはその周囲にあるコンビニで食べる物を買う。
まず腹ごしらえとばかりに、ベンチでそれを食べることに決めた。



『結構、広い公園だなぁ』
 辺りを見回しながら、ひとみは呟いた。雨が止んだおかげで、同じ様にジョギングしている人やら
犬の散歩をしている人があちこちに見受けられる。

『さーてと』
 走るから軽い食事にしたけれども、それでも直ぐに走るのは胃に悪い。なので、周囲を軽く散策することにした。

 大きく伸びをして歩き出したひとみの背後から、『こらーーー』という声が響いたのだった。
358 :信長 :2005/11/12(土) 19:29

>351−353
お待たせ致しました。レスありがとうございます。
いつも言ってますが、本当に励みになります。



短くて申し訳ないのですが、ちょっとだけ更新しました。

今回はちょっとだけ昔に戻ってます。
寮監は、多分皆さんご想像通りの方だと………(笑)。

では、また次回に。
359 :名無飼育さん :2005/11/12(土) 21:18
352でした!!
交信、待ってました〜〜〜〜〜(≧▽≦)
これからが楽しみです♪
寮監さんは…きっとあの方ですね?ww

次回、待ってます。
360 :名無飼育さん :2005/12/07(水) 14:37
待ってます!作者さんがんばってください!
361 :ONE DAY :2005/12/10(土) 14:57

『え?』
 振り返ると、茶色い物体がこちらに向かって真っ直ぐに走ってきて、そのまま通り過ぎて行く。

 視線を声のした方へと向けると、飼い主はまだまだ追いつきそうも無い。

『………ダックス、だよなぁ』
 雨上がりの地面の上を縦横無尽に走り回っている。まるでスイッチが入ったおもちゃのように。

 こう見えても犬は嫌いじゃない。むしろ大好きだ。と、いうことでひとみは捕まえるのに一役買うことにした。

 犬の方に駆け寄ると追いかけっこだと思ったのか、ダッシュでその場を離れる。
 しかし、一定の距離を保つとくるくるとした目をこちらに向けて『まだ?』という表情をするのだった。

『ちくしょー』
 何だかバカにされてる気がするぞ!

 本気モードになってしまったひとみを止めるものは、この場にはいない。ぐっと拳を握り締めると、
猛ダッシュで犬に向かって走っていくのだった。
362 :ONE DAY :2005/12/10(土) 14:58

 そして、数分後。何度目かのトライの末、ようやく犬を捕獲できて。

『………ったく、もぅ』
 随分と手間かけさせたね、お前は。

 汚れてるのなんて気にしないで、ひとみは犬を抱き上げて顔を覗き込む。愛嬌のある瞳をきらきらと
輝かせながら、犬はひとみの口元をべろべろと舐めた。

『こーら、くすぐったいってば』
 こしょこしょと犬の顎の下を指先でくすぐっていたひとみの耳に、
『あの………』
 小さな声が届いた。

『あ………はい』
 ゆっくりと振り返ると、その人と目が合った。その瞬間、身動きが出来なくなる。

 すらりとした長身に、艶やかな長い髪。柔らかい笑みを浮かべているその顔は、どこかの
モデルといっても良いぐらい整っていて。

 すっげー、綺麗。

 それしか頭に浮かばなかった。我ながら、ボキャブラリーの少なさに寂しくなるぐらい。
 ずどん、と胸を大砲で撃たれたそんな感じ。

 そんな事など知らない相手は、ひとみの胸元で大人しくしている犬を指差し、言葉を続ける。
363 :ONE DAY :2005/12/10(土) 14:59


『その子、捕まえてくれてありがとう』
『あ、はい』
『ちょっと油断してたら逃げちゃって………最近、無かったのに』
 そう呟きながら、相手はサイドの髪を耳にかけながら、犬に―――――すなわち、ひとみの
胸元に―――――顔を近付ける。


 うわうわうわうわっ!

 思わず身を引きそうになるが、それをしたらただの怪しい人なので懸命に踏み止まる。

『こーら、駄目でしょ、かもも』
『………かもも?』

 その響きが余りにも不思議だったので、ひとみは思わず言葉に出してしまう。それは言われ慣れてるのか、
相手は罰悪そうに身を起こすと、答えた。

『うん、この子の名前』
 ちょっと変ってよく言われるけども。

 どこか寂しげに言う表情が気になって、そんなつもりじゃなかったひとみは首を横に振る。
それから、目の高さまで犬を持ち上げると笑顔で告げた。

『そっか、お前、かももって言うんだ』
 いい名前だね、可愛いよ。

 ぅわん!と鳴いて尻尾をぱたぱたと振るかももの鼻先に、ひとみは軽くキスをする。
それから、ハッと気付いた。

『す、すみません!勝手に』
『………ううん。気にしないで』
 嬉しげに微笑む相手に、ひとみは犬を差し出す。しかし、受け取ったのはいいけれども、
余りの汚れ具合に飼い主も抱くのを躊躇してしまっていた。

『あ、そうだ』
 ひとみはジャージの上着を脱ぐと、それで犬を包んだ。そして、満足げに頷いて相手に返す。
364 :ONE DAY :2005/12/10(土) 15:00

『これなら大丈夫ですよ』
『でも………』
『あたし、これから走って帰るし。どうせ暑くなって脱いじゃいますし』
『でも、これいつ返せばいいの?』
 もっともな質問に、ひとみはうーんと空を見上げる。
 寮の規則も判らないので、今度ここに何時来るかは判らないし、着たばっかりで送ってもらうにも
住所も判らない。

 そうなると答えはひとつしかない。

『いいっすよ、どうせ古いジャージですし』
 そのまま捨てちゃって下さい。
『でも!』
『あたし、ここにまた何時これるかわかんないんですよ。だから、気にしないで下さい』
『じゃあ、うちの住所とあたしの名前………って、書くものないや』
 がっくりと肩を落とす相手に、ひとみはふわりと笑う。
『あたしも持ってないですよ』
 だから、良いです。久々に、犬触れて楽しかったし。 

『じゃあ、今度は逃げるなよ、かもも』
 犬の鼻先を一撫ですると、ひとみは一礼してその場から走って去る。何だか、落ち着かなくて
そうでもしないと変なことを言い出しそうになって困った。


 走りながら、思うのは何故か彼女の事ばかり。

―――――その気持ちを何て呼ぶのか、その時のひとみは知る由もなかったのだった。
365 :信長 :2005/12/10(土) 15:05
 
どうしよう、全然進みません………_| ̄|○
とりあえず、短いですが少しずつでも前に進みたいと思っておりますので。

>359

いつもありがとうございます。
寮監さんは、いつも元気一杯の小さな彼女ですよw


>360

待ってて下さってありがとうございます。
何とか頑張りたいと思いますので、長い目で見守って頂ければ………。


では、今年中に何とかもう1回更新を………と、どうなるか判らない願望を
言いつつ。
366 :名無飼育さん :2005/12/10(土) 23:10
359でした!
交信お疲れ様です〜。
キタ――――(゚∀゚)―――――!!!キタ――――(゚∀゚)―――――!!!
          ドー⊂⌒~⊃。Д。)⊃ーン。
作者さん…駄目です(爆)やられました(笑)
あれ…??官僚さん、小さい方??(´д`;)…ハズれたかもしれません(謎)

次回、待ってます♪無理せずに^^ずっと待ってますので!
367 :名無飼育さん :2005/12/12(月) 05:19
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
368 :ONE DAY :2006/03/12(日) 11:31
*       *

『おう、随分と早かったなぁ』
 札を返しに入った寮監室の主が、のんびりと告げる。それにひとみは『ええ、まぁ………』とか
呟きながら、先程と同じ様に札を返す。そこで、隣にある札が、違う色になっていることに気付いた。
『同室の奴帰ってきてるから、色々と詳しいことは訊いてみ?』
 ひとみの視線の先に気付いたのか、にこやかに寮監は続ける。
『あ………はい』
『それにしてもわっかいなぁー、Tシャツ一枚で寒くないん?』
『いや、普通に寒いですけども』
 でも、そんなことなど考えられなかった、あの時は。
 
 ひとみは小さく首を振ると、『失礼します』ときちんと一礼してから部屋を出て行くのだった。


『ええと………』
 自室のドアを開けようと手を伸ばした姿勢のまま、ひとみは動きを止める。

 こういう時はノックとか必要なのかなぁ?自分の部屋だけれども、他の人も居る部屋。
 そんな状況は今までになかったから、正直戸惑う。

『一応、ノックしてみるか』

 ひとみがおもむろにノックしようとしたその瞬間、いきなり目の前の扉が開いた。
 はきはきとして鈴を転がすような高い声が、ひとみの耳に届いた。

『おー、君が同室の子?』
『ええと………』
 辺りをちょっとだけ見回すと、下の視界に茶色の何かが目に入る。
『何だよ、失礼だなー』
 視線を落とすと、そこには上にはパーカー、下はジャージという姿の小さな少女がむっとした
表情で立っていた。

『あ、すみません!』
『どーせ、おいらはちっさいですよ!』
『や………ええと、すみません』

 何を言っても言い訳になりそうだったので、ひとみは素直に謝った。その態度に、
少女は目を丸くする。それから、ニッと微笑った。

『名前は?』
『吉澤ひとみ、です』
『おいらは矢口真里。一応、ここで君と1年間同室って事になりました。
至らぬ事もあるだろうけれども、よろしく』
『は、い』
 頷くひとみが部屋に入ってベッドに腰掛けると、真里も同じ様に自分のベッドに腰掛ける。
369 :ONE DAY :2006/03/12(日) 11:32
『しかしなぁ………吉澤ひとみ、かぁ………』
 ぶつぶつと呟きが漏れるのは、明らかに自分の名前で。
 どこかおかしい名前かなぁ、とひとみがこっそりと考えていると、おもむろに真里は立ち上がって
ひとみをびしりと指差した。

『よし、今日から君はよっすぃーだ』
『………はぁ?』
 思わず間抜け声を出してしまう後輩に、先輩は満足げに頷く。

『吉澤とか言い辛いしさ、名前はちょっと可愛らし過ぎるしさ。うん、いいじゃん、
おいらって、センスいいなぁ』
『よっすぃー………ですか』
『嫌?』
『………いえ、そうじゃないですけども』
 それはちゃんと根付くのだろうか?と自分の事ながら思う。別に、どう呼ばれようとは構わないのだけれども。

『じゃあ、いいよね、よっすぃー』
 にかっと笑う真里は、何だか太陽みたいな人だなとぼんやりとひとみは思ったのだった。

370 :ONE DAY :2006/03/12(日) 11:32

『部屋は見ての通り、そっちがよっすぃーの机とベッドね』
 あと、ここが共用のロッカー。お風呂セットとかドライヤーとか置くようにしてるから。
『あ、はい』
 机の上に置いていたそれらを、ひとみは慌ててその場所に移動させる。
『寮の門限は3つあって、第1門限の17時半。これは一応部活とかやってない人用ね。
これまでに帰ってくればいいから、特に申請は無し。
1回帰ってきても、それまでにだったら私服で外出は可能だから。
申請しなきゃならないのは、第2門限と第3門限。第2が19時で第3が20時まで。
部活やっている人は大抵こっちだから、1週間毎に申請した方が言いと思うよ』
『はい………。でも、急に予定等が変わったらどうするんですか?』
『そんな時は、その日の朝にあっちゃんに言っとけば大丈夫だから』
『あっちゃん?』

 ひとみの言葉に、真里は小さく頷く。

『ああ、寮監。会ったでしょ?関西弁でちっこい元気一杯な人。フルネームは稲葉貴子』
『ハイ』
『寮監って言われるより、そっちの方が喜ぶからさ。呼んであげて』
 年甲斐もなくとか言っちゃ駄目だよ。

『言いませんよ』
 くすくす笑いながらひとみは言葉を返す。
 その笑顔を見て、真里はちょっと目を瞬かせたけれども、直ぐに立ち上がってひとみの前に立つ。
『じゃあ、次は寮内を案内するよ』
『はい、お願いします』
 ひとみは小さく頷くと、同じ様に立ち上がったのだった。



371 :ONE DAY :2006/03/12(日) 11:34
 一通り説明が終わって部屋に戻ろうとした2人だが、急に先を歩いていた真里が足を止めた。
『先輩?』
 どうかしたんですか?と言う前に、真里は大声を出す。
『おーい、ごっつぁーん』
 その声にひとみ達の隣の部屋に入ろうとしていた少女が、ゆっくりとこちらに向き直った。
 すらりとした立ち姿。ゆるりと動くにつれてさらさらな長い髪が揺れる。はっきりと「美少女」とは
言い難いけれども、やっぱりとても可愛いと称されてもおかしくない顔立ちだった。

 どこか冷たそうにこちらを眺めていたのが数秒。しかし、次の瞬間、柔らかい笑顔がこちらに向けられる。
 その印象の変わり様に、流石のひとみも思わず面食らった。

『やぐっつぁん!どしたの、何か用事?』
 ぱたぱたとこちらに駆け寄ってくる少女の声は、どこか幼い。
『用事っていうか………ごっつぁんこそ』
『ごとーの部屋、あそこだもん』
 その言葉に、真里は『えええー!』と派手なリアクションを返す。

『だって、あそこ圭ちゃんの部屋………っていうか、おいらの部屋、隣なんだけど』
『へぇー、そうだったんだ』
 のんびりと頷いた少女だったが、不意に視線をひとみに向ける。

『じゃあ、後ろのこの人がやぐっつぁんと同室の人?』
『そう。よっすぃーだよ』
『よっすぃー?』

 きょとんと言葉を返す少女に、真里は誇らしげに胸を張る。
『おいらが付けたの、ごっつぁんもそう呼んで?』

 いやいやいや、人の意見は無視ですか、先輩。っていうか、犬に名前付けた
ような言い方なんですけども、とひとみは心の中で思わず突っ込む。

 しかし、それに気付いているのかいないのか『ごっつぁん』と呼ばれた少女はひとつ頷く。

『よろしくね、よっすぃー』
『あ………はい。よろしく』
 思わず丁寧に返したひとみに、少女は軽く笑う。

『大丈夫、ごとーとよっすぃーは同じ学年だよ?中等部からの持ち上がり組の後藤真希です、
改めてよろしく』
『あ………うん。こっちこそ、よろしく』
 外見と反して彼女は結構人懐っこいタイプらしい。それにちょっと安心して、ひとみはようやく笑顔
を見せる。

『それよりごっつぁん、ほんとに圭ちゃんと同室なんだ………』
『うん、言ったでしょ?ごとー、そーゆー運は強いんだって』
 どこか不敵に笑う真希に、真里はやれやれと息をつく。
『それにしたってなぁ………』
『別に何も細工なんてしてないよ?言っとくけど』
『それも判ってるって』
 まぁ、圭ちゃんがご愁傷様って感じだな………と呟く真里の言葉に、訳の判らないひとみは思わず首を傾げるしかなかったのだった。
372 :信長 :2006/03/12(日) 11:39
………久々過ぎて、もうどうしようかと(涙)。

板統合も知っていたのに、色々とあってこんな時期に更新と相成りました。
待って下さっていた方に、こんなに間が空いて申し訳ないと平伏する次第です。

これからはこんなに間を空けないようにはしたいと思ってますので、よろしくお願いします。



>360
寮監さんは、ちいさな彼女でした(笑)。
いつもいつもレスありがとうございます。ほんと励みになります。


では、また次回………。
373 :名無飼育さん :2006/03/12(日) 13:49
交信すごーく待ってました!!
366です。

小さい寮監さん、分かりませんでした・゜・(ノД`)・゜・。
悔しいです(笑)

これからが楽しみです^^次回も待ってます!!
374 :Growing :2006/05/28(日) 16:38

 入学して1週間経った。授業も終わり、帰る準備をしていたひとみに、

『ねー、よしこー。今日、一緒に帰らない?』

 蓋を開けてみれば実は同じクラスだった真希が、のんびりと告げる。
『今日は無理』
『どして?』
 部活、休みの日じゃん。今朝そう言ってたでしょ?

 不思議そうな表情で問いかけてくる相手に、ひとみは肩を竦めた。

『部長がさ、練習試合の打ち合わせに学院行くからお供に付いて来いって』
『相変わらず可愛がられてるねぇ』

 目を細めて真希は続ける。それにひとみは唇を尖らせた。

『そんなんじゃないよ、勘弁してよ、ごっちん』

 黙っていると結構とっつきにくく見える風貌のひとみだが、
持ち前の性格の素直さと外見に反した明るい性格で、まるでずっと前からこの学園に
いるかのようだった。

『まー、よしこは人当たりがいいからねぇ』
 あたしと違って。
『誰もそんなこと思ってないと思うけど?』
『そうかなぁ?』
『そうだよ』

 きっぱりと答えるひとみに、真希はふわりと微笑った。その笑顔は物凄く
珍しいモノなのだということは、ひとみはもちろん知らない。
375 :Growing :2006/05/28(日) 16:42

『よしこはいいこだねぇ』
 しみじみと続ける真希に、ひとみは手を横に振る。

『いや、同い年だし。っていうか、ウチの方が誕生日先だし』

 子供扱いされたひとみは、流石に反論する。それに真希は肩を竦めた。

『はいはい、判りましたー』
 じゃ、お先にー、と手を振る友人に同じ様に手を振り返しながら、ひとみは小さく息を吐いた。

『全く、ごっちんって良くわかんねーよなぁ』

 物凄いマイペースなのんびり屋。だけども、それだけではないってのは、ちゃんと判ってるけども。

『まぁ、いっか』

 新しい事ばかりで慣れるのに精一杯だけれども、それらも何とか上手く言ってる、と思う。
 でも、やっぱりちょっと疲れるかも………。

『さーて、と』
 
 気持ちを切り替えるようにひとみは首を横に振ると、鞄を手に教室を出て行ったのだった。
376 :Growing :2006/05/28(日) 16:42

『おーい、吉澤』
 上級生同士の会話を聞くともなしに聞いていたひとみは、その言葉にハッと我に返る。

『あ、はい』
『寝てたの?』
『いや、その………ちょっとぼーっとしてました』

 素直に答えると、その場にいた人達に笑われてしまった。恥ずかしさに耳まで真っ赤になりながら、
ひとみは思わず俯く。

『いやー、今年の学園の新人は可愛いねぇ』
 しかも、特待生だって、ますますうちが敵わなくなるなぁ。
『何言ってるんだか。うちは頭では敵わないからお互い様だよ、お互い様』
『はいはい』

 それを聞くともなしに聞きながら、ふと視線を廊下へと向けた瞬間、
周囲の音が聞こえなくなった。

 そこには、公園で出会った彼女がいた。この1週間、すっかり忘れていたけれども
顔を見た瞬間、あの時のどうしようもなく落ち着かない想いが蘇って身体中を支配する。

 どうしよう、やばい。どうしようどうしよう。

 ぐるぐる考えてるのに、身体は全く動く気配がない。ああ、あたし、何をしたいんだ?

 そんなひとみは、思わずびくりと身を強張らす。急に相手がこちらを振り返ったからだ。

『………え?』
 あたし、何も声出してないよな。

 びっくりした猫の様にまん丸な目をしていただろうひとみと、相手の視線が合う。
 相手も、とても驚いた表情をしたけれども、直ぐに柔らかな笑みを浮かべてくれた。

『うわぁ』
 余りにも艶やかな笑みに、ひとみは間抜けにもそんなリアクションしか出来なかった。

 今にして思えば、ほんと間抜けな話だ。
377 :信長 :2006/05/28(日) 16:44

保全程度ですが、ちょこっと更新致しました。

何ていうかまだまだ続くのにここで足踏みしてる場合かという
状態なのですが、如何せん色々とありまして。


マイペース過ぎるのも程々に、頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします。


では、また次回で………。
378 :名無飼育さん :2006/05/28(日) 18:27
期待して待ってますよ〜
よっちゃんアホだ…w
379 :名無飼育さん(373 :2006/06/02(金) 05:52
本当楽しみです!!
良いところで切れてるし…(・∀・)ニヤニヤ

次回期待して待ってます!!!
380 :名無飼育さん :2006/07/21(金) 10:35
待ってます
381 :名無飼育さん :2006/08/11(金) 09:52
俺も待ってます!
382 :名無飼育さん :2006/08/24(木) 22:00
待ってますよ〜!
383 :名無飼育さん :2006/09/16(土) 03:34
まってますよぉ
384 :信長 :2006/09/29(金) 20:25
保全致します。

待っててくださってありがとうございます。
必ず更新いたしますので、もう少しだけお待ち下さい。
385 :名無飼育さん :2007/01/08(月) 20:37
待ってます!
作者さん頑張って〜!!
386 :ONE DAY :2007/02/25(日) 19:05
『よっすぃー、夕飯、外で食べてきた?』

 部活をしているよりは早く帰って来た同室の後輩に、真里は声をかける。

『いいえ、今日は学院から直行してきたからそんな時間無かったですし』

 自分の机に鞄を置きながら、ひとみは答えた。

『そっか、じゃあ久々に一緒に行かない?』
『いいっすねー、あ、今から着替えるんでちょっと待って貰えます?』
『いいよ、そんな急がないし』

 ベッドの上でごろごろとしながら答える真里を、横目でちらりと見ながら
ひとみは部屋着のジャージに着替える。

『そういやさー』
『はい?』
『よっすぃー、それ、下しかないの?』
『え?』

 そう言われて、ひとみは自分の部屋着を眺めた。上はトレーナーに下はジャージ。
他の寮生も似たような格好をしているのだが。

『何でですか?』
『いや、それ、普通、上下セットのジャージっぽいじゃんか。
 だから、不思議に思ってただけだから』
『あー………そうっすね』

 上着はあるにはあったのだ。ただ、それは彼女にあげてしまったから無いという事で。

 思い出しただけで、何だか胸がざわざわしだす。どうしようもなく落ち着かない気持ちに
なって、ひとみはわたわたと慌ててしまった。

『あの、その、どっかおかしいですか?』
『いや、別に』
 そう答えて、真里はベッドから降りてひとみの元へと近付いてくる。
 そのまま、ぽんと背中を叩いた。

『ほら、食堂行くよ?』
『はい』

 それ以上は追求しない先輩は、やっぱり人の心が読めるのかもしれない、なんて
ぼんやりとひとみは思ったのだった。
387 :ONE DAY :2007/02/25(日) 19:06
『お、珍しいねー、2人一緒なんて』
 人のピークが過ぎた食堂に行くと、隣室の真希と生徒会長の保田圭が食事中だった。
ひとみ達を見つけると、こいこいと手招きをする。

『そっちこそ』
 帰宅部の真希はともかく、普段は忙しい圭がこの時間にいるのは珍しい事なのだった。

『生徒会の方はどうよ?』
『まぁ、ようやくひと段落って感じってとこね』
 引継ぎだったりなんだったり、ぱたぱたしていたから。
 
 隣の腰掛けた真里の言葉に、圭は軽く肩を竦める。

『そうだよー、圭ちゃん、全然、ごとーのこと構ってくれないしー』
 尻尾があったらぶんぶんと振ってるだろう真希は、ちょっと拗ねた口調で口を挟む。
『それは全然関係ないし』
『えー、ひっどー』

 そう言いながらも、真希はどこかにこにことして嬉しそうだ。
 こんな真希、正直、初めて見た気がする。

『ん、何かごとーについてる?』

 視線を感じたのか、真希は隣のひとみに顔を向ける。それに慌てて、ひとみは首を振った。

『いや、何でもないよ』
『そう?』

 だったら、別にいいや、という感じで視線を圭に戻す。
ただひたむきに圭だけを見ている視線は、飼い犬が主人を見る視線と似ている気がした。

『………?』
 困った様に首を捻っているひとみとそれを全く気にしないでいる真希を、
真里はどこか笑いを堪えているような表情で見ているのだった。  
388 :信長 :2007/02/25(日) 19:08
ほんの少しですが更新しました。


去年からずっと閲覧も書き込みも出来ない状態だったのですが、
ようやく規制が解除されたみたいです。

これからバシバシ………というわけには行きませんが、
頑張りたいと思いますので、気が向いたときにでも
読んでいただければと思っています。

389 :名無飼育さん :2007/02/27(火) 14:05
更新とってもうれしいです!
次の更新も楽しみにしてますよ。
390 :名無飼育さん :2007/05/12(土) 23:26
379でした!
出遅れましたが、今後も楽しみにしてます!!
391 :名無飼育さん :2007/06/18(月) 16:52
作者さーん!楽しみに待ってます!
392 :名無飼育さん :2007/09/30(日) 01:10
ずっと待ってますね!!
393 :Growing :2007/11/02(金) 21:09
『おー、よしこ、もてもてだねー』

 靴箱をあけると、少なくとも1通は入っている封筒がひとみを出迎えた。
 横に居た真希が、どこかおかしそうに声をかける。

『……もてもてって言われても』
 封筒を手に取りながら、ひとみは小さく溜息をついた。

 正直、もらってもあんまり嬉しくない。かといって、無下には出来ない、というジレンマがある。

『女子高なんだからさ、ゲームみたいに思ってればいいんじゃない?』
 そんな態度のひとみに、真希は続ける。
『まぁ、そうなんだけどね』

 何となく煮え切らないひとみの態度に、真希は軽く笑った。

『よしこは、そういうのは苦手な方?』
『そういうのって?』
『好きになったり好かれたりってこと』
『……うーん』
 あんまり得意とか苦手とか考えたことが無かったので、答えられなくなって
思わず唸る。
 その肩をぽんと叩いて、真希は教室に行こうと促した。歩きながら、のんびりと続ける。
394 :Growing :2007/11/02(金) 21:10

『真面目だねぇ』

『そういうんじゃないけどさ……』

『それとも、同性からってのが駄目?』

『ああ、言われてみれば確かに』

 言われてようやく気付くひとみに、真希は笑った。しかし、不意に真顔になると、独り言のように呟いた。

『好きになってしまったら、どうしようもないよね』

 相手が同性だろうと異性だろうと。

 ただ胸の真ん中にその人が、どっかりと居座ってしまって、どうやったって消すことが出来なくなっちゃうんだ。

『ああ……そう、かもね』

 真希の言葉にぼんやりと答えたひとみの頭にぽん!と飛び出してきたのは、何故だか学院で再会した『彼女』の笑顔だった。

 え?何で、あの人の顔が浮かぶわけ?

 思いっきり動揺してしまったひとみは、何も無いところで転びそうになる。

 それを真希に何とか支えられて、転ぶことは回避したのだが、

一度浮かんだその顔は、なかなか消えてくれそうに無かったのだった。
395 :Growing :2007/11/02(金) 21:11
『……疲れた』

 自室に戻ってベッドにダイブする。

 同室の小さな先輩は、何処かに行っているらしく部屋にはいなかった。


 今日は、さんざんな一日だった。

 授業では、毎時間当てられるし、昼練では顔面でボールをレシーブするし、

放課後の練習ではコーチ指導の集中攻撃を浴びた。

 それもこれも、見て判るほどぼんやりしていたからだと言われるのだが、

困ったことにひとみにはそんな自覚が無かった。

 ただ、ふとした時に彼女の笑顔が思い出されて、それに心でじたじたして

いただけなのだが、それを説明する気にはなれない。


『……ご飯、食べにいこ』

 のろのろと起き上がり、制服を着替えていると軽いノックと共に扉が開いた。

『よしこー』

『んー?』
 なに、ごっちん。

『ご飯食べた?』

『まだだけど?』

 そろそろ食堂も閉まる時間だから、早めに行かないと夕食にありつけなくなる。

『良かった、一緒にいこ?』

『……食べてないの?』

『んー、寝てたし』
 それにさ、ちょっとよしこに話しておきたいことがあって。

『話したいこと?』

 部屋じゃ駄目なの?というひとみの呟きは、『お腹空いたー』という真希の訴えによってかき消されたのだった。
396 :信長 :2007/11/02(金) 21:14
久々過ぎて、本当に申し訳ございません。
更新しない間、色々ありましたねぇ………_| ̄|○


>>389-390

楽しみにしているとかずっと待っているとか、そんな言葉
もったいない気持ちで一杯です。

本当にありがとうございました。

短いですが、次回も近いうちに更新したいと思っています。
のんびりとお待ちください。
397 :名無飼育さん :2007/11/04(日) 23:47
ここのやすごま大好きです
398 :名無飼育さん :2008/11/13(木) 03:22
待ってます
399 :名無飼育さん :2010/12/06(月) 11:11
待ってます
400 :なっち& ◆9uC/9sChEI :2015/09/26(土) 20:21
待ってます←

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