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長めのお話

1 :CPヲタ :2006/05/22(月) 22:37

注意
・りしゃみや痛い系
・全編通して甘さ控えめ
・りしゃみやが主役、桃キャプが準主役。
・ももちが勝手に目立つ。
・ゆりちなその他は登場未定。



そんな話を載せるので生暖かく見守ってやってください。
2 :CPヲタ :2006/05/22(月) 22:37





3 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:39


「あ、たしはみやが、居るだけで、良かったのに……。」
「ごめん、ごめんね。梨沙子。」

雅の涙が梨沙子の頬に落ちた。
梨沙子の目にはもう雅の顔と薄暗く光る街頭しか見えない。
どくん、どくんと熱を伴って鼓動するわき腹に手をやり、そのまま雅の頬へと手を伸ばす。
赤い指先が雅の頬に線を作った。
今の梨沙子にも見えるほど鮮やかに紅く雅の頬に自分の色が移る。
だがそれも直ぐに雅の涙によって流されてしまい、梨沙子はそれを残念に思った。
手を上げていることさえ億劫になってきて梨沙子は傷に構わず雅を引き寄る。
すとんと落ちてくるように目の前に広がった雅の顔。
梨沙子の大好きな雅の顔。


「――――――――――。」


眠いなかで呟く。
暗くなる中で梨沙子は雅に囁いた。
熱い、痛い、嬉しい。
梨沙子の中で感情が混ざり合い極彩色を作り出す。
それが頭の中を塗りつぶし、梨沙子の意識はそこで途切れた。


++++

4 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:41


あたしは―――。


あたしはどうしたの?
あの夜、ううん夕方?
あたしは道を歩いていて、歩いてて、どうしたんだっけ?
いきなり後ろからなんか当たって、気づいたらみやが居て……。
みや?そうだ、みやと遊ぶ約束しててその途中であたし刺された?
そう、そうだよ。わき腹が痛くて、熱くて。
たまたま前から歩いて来たみやがあたしの後ろを見て叫んで。
その瞬間にあたしは前に思いっきり突き飛ばされて、でもみやが支えてくれて。



それで―――――。
それで、あたしどうしたんだっけ?


5 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:42


「……み、や?」

眩しい。
白の光が反射して梨沙子はまともに目を開けることが出来ない。
うっすらと細めで見た景色は、それでも天国なんかではなく。
普通の病室だった。

―ここ、どこ?

梨沙子は道に居たはずだ。
雅の家へと向かう道の途中。
だがここは見慣れない白の空間。
と慣れてきた目に見慣れたものが入ってきた。

「みや?」

6 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:44


身体を起こそうとしてベッドが軋む、それと同時に梨沙子も声が漏れた。

―痛い。痛い、痛い、痛い。

涙が出そうだ。
あの時は痛くなかったのに、なんで今こんなに痛みが走るのか。
それでも梨沙子は身体を起こした。
痛くても、死にそうでも確認したい。
そっと手を伸ばし、身体を揺する。

「みや?起きてよ、みや。」

右手で雅の身体を動かすたびに右のわき腹が痛む。
連続的に来る痛みに梨沙子が半泣きになったところでやっと雅は目を覚ました。

ごしごしと目を擦り、前髪を払う。
雅の長い髪が後ろに流れ梨沙子は久しぶりに雅の顔を見た気がした。
その頬には残念ながらあの紅はない。
みやともう一度呟いた梨沙子の声に雅はやっと意識を覚醒させる。

7 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:45


「……梨、沙子?よかったぁ、やっと意識戻ったんだ。梨沙子ずっと眠りっぱなしで……。」

ぼろぼろと梨沙子の前で雅が泣き出した。
梨沙子は何も出来ずに見ていることしか出来ない。
せめて涙ぐらい拭いてあげようと手を伸ばす。
するとさっきよりさらに強い痛みが梨沙子の襲い、梨沙子は硬直してしまった。
自然半泣きで止まっていた涙も溢れ、雅に負けないくらいの泣きっぷりとなった。

「いっつぅー。みやぁ、なんか痛いんだけど。」
「って梨沙子、起きてちゃ駄目だよ!梨沙子は絶対安静なんだって言ってたよ。」

雅が出来る限り優しく梨沙子をベッドに寝かせる。
白い世界に一つだけ見慣れたもの。
それだけでも梨沙子はとても安心することが出来る。
雅の涙もいつの間にか止まっていた。

8 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:47


「ね、あたしってどうしたの?」
「どうしたのって、梨沙子覚えてないの?」
「うーんとね、みやの家に行こうとして刺されて、みやに支えてもらったとこまでは覚えてる。」

梨沙子がベッドの上から雅を見つめた。
宙をさまよう視線は何かを必死に思い出そうとしている。
雅はそんな梨沙子の肩を押さえ、言い聞かせるように言った。

「それが全部だよ。梨沙子は襲われて、そこに梨沙子を迎えにいったあたしがたまたま居た。
梨沙子を刺した犯人の人はあたしを見て逃げてったよ。今捜査中。」



―違う、ちがうチガウチガウ。


雅の声が梨沙子の頭の中で反響する。
それはやがて誰のものかも分からない声になり、梨沙子は頭を振った。
あの時あの現場に居たのは雅と梨沙子と犯人。
それであっているはずなのに梨沙子は間違っているような気がしてならなかった。

9 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:49

「あたしっ、……あたし、何か言ってなかった?」
「何を?梨沙子は直ぐに気を失って今まで一回も起きてないよ。」


雅がいつもの調子で軽く梨沙子に返した。
ベッドの上の梨沙子を見て変なのと首を傾げる。
だがその目は鋭く梨沙子のことを見つめていた。
思考に没頭している梨沙子はそんな雅に気づかない。


10 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:50


「…………の?」
「え?」

梨沙子が視線を雅に移す。

――――ドクン。


「みや?何か言った?」


―――――ドクン。

視界に極彩色が混じり始める。
それはまるで二つの全く違うぱらぱら漫画を見ているような感じだ。
朝の光と夜の街頭。
白い部屋と自分の赤い指先。
そして雅の顔と雅の涙。
あの時自分はなんと言ったのだろう。
梨沙子は自問自答する。

11 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:51


「……みや?」

すっと音も無く雅がベッドへと近づく。
元から無かった距離はそれにより三十センチも無くなる。

―――――――ドクン。

雅に顔を覗き込まれた刹那、極彩色が梨沙子の視界を埋め尽くす。
雅の髪が動きにあわせて揺れる。
熱い、痛い、嬉しい。

「覚えてるの?」

雅の目と梨沙子の目がかち合った。
熱い、熱い、熱い。
痛い、痛い、痛い。
けど嬉しい。
梨沙子は無意識のうちに胸元を握り締めていた。

12 :痛みの向こうで :2006/05/22(月) 22:53



「―――――――――――――。」


するりとこぼれ出た言葉は梨沙子が自覚しないまま雅へと伝わる。
効果は劇的だった。
梨沙子が漏らした一言は雅の表情を瓦解させた。
くしゃっと泣き笑い。
雅はそれを見せまいと直ぐに後ろを向いてしまったが、梨沙子には見えていた。
初めて見る雅の顔だった。

「あたし、桃に電話してくる。皆心配してたから。起きたって連絡しないと。」

雅が一度もこっちを見ない。
それだけで妙に梨沙子は悲しくなった。
でも連絡してくると言う雅を止めることなどできるわけもなくて、
梨沙子は雅をそのままの状態で見送った。


++++

13 :CPヲタ :2006/05/22(月) 22:53





14 :CPヲタ :2006/05/22(月) 22:54







15 :CPヲタ :2006/05/22(月) 22:57

とここまでで一段落。

痛いのか?これは果たして痛い系と言っていいいのか?

と疑問を持ちながらのうぷでした。


続きは二週間後くらい?
16 :イケメン ◆IKEMENyusE :2006/05/24(水) 16:58
犯人がわかった
17 :CPヲタ :2006/06/14(水) 19:25

久しぶりで、ごめんなさい!
二週間後とか言っていたのは誰だよって感じです。
これからも不定期な感じですが、適当に見てやってください。


16<<イケメン ◆IKEMENyusEさん
感想ありがとっす。
分かったとしても心の中にとめておいてくださいw
謎な感じでいきたかったんすが、稚拙な文章力のせいでむりっした。


では続き。

18 :CPヲタ :2006/06/14(水) 19:26







19 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:27


「りーちゃん、傷大丈夫?」
「うん、もう大分良くなったんだよ。結構寝てる間に良くなってたみたい。」

桃子がそっかと言いながら梨沙子に笑いかける。
今日雅は来ていなくて、病室には桃子と梨沙子だけ。
他のメンバーも都合が付かなかったのかいない。
部屋は夕日で赤く染まり始めた所だった。
赤と言うよりはオレンジの光が桃子の顔を染め上げていく。
それはそれで綺麗だったけれど梨沙子にはすこし物足りなかった。

「そういえばさ、みーやんに聞いたんだけどりーちゃん記憶が混乱してるんだって?」
「んー、混乱って言うか、…忘れてるんだよね、何かを。」


20 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:28


桃子が調整してくれた背もたれに凭れ掛かりながら梨沙子はそう呟いた。
眉はしかめられていて、そこにはいつもの天然気味な梨沙子は居ない。
桃子はそんな梨沙子を不思議そうに見る。
梨沙子が物を忘れることは多々あったがこんな表情をするのは見たことがない。
ふーんと軽い相槌を打ながら桃子は梨沙子と雅について考えていた。

梨沙子が刺されたのを見たのは事実雅だけだ。
梨沙子本人さえも後ろから刺されたため自分が刺されるところを見ていない。
雅が梨沙子を助け、救急車を呼んだ。
それは至って普通のことであるしそのおかげで梨沙子は助かったのである。
だが桃子は違和感も覚えていた。
なんで雅はその場に居たのだろう。
おかしい。
迎えにいくなら迎えにいくと一言断るのが普通である。
でないとすれ違う可能性のほうが圧倒的に高くなってしまう。
まさかと桃子は思った。
雅がそんなことするはずがないと。
しかし桃子は自分の中に生まれた思いを消すことも出来ず、部屋は一時沈黙に包まれた。

21 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:28


「……みやね、あたしが起きてから来てくれてない。」
「そうなの?」
「うん。」

まるで無人島に漂着してしまったような表情。
途方にくれているような、悲観にくれているようなそんな表情。
まだ半月もたっていないというのに。

―相変わらずみーやんのことになると敏感だなぁ。

たった一人のことでこんなに落ち込むなんて。
桃子は俯いてしまった梨沙子の頭に手を乗せなだめるように撫でる。
雅は梨沙子を大切にしている。
桃子はそれを知っていたし、だからこそ気づいてない梨沙子に苦笑した。
梨沙子は間違いなく雅の心を占めている。

22 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:29


「もう少ししたら、来るんじゃない?みやのことだし。」
「……そうかな。」
「来る、来る!絶対来るよ。みやがりーちゃんのこと放っておくわけないじゃん。」

―よっぽどのことがない限り。

桃子は心の中でそう続けた。
雅が梨沙子に会いに来ない。
それは梨沙子が雅に何かした事を表している。
雅に大きな影響を与えられるもの―しかも梨沙子に関して―など僅かだ。
つまり梨沙子本人と、後は桃子たちも多少は何か出来るかもしれない。
その中で桃子たちは何もしていない。
むしろこの件に関して桃子たちは完全なる部外者であった。
となると残るのは梨沙子である。
23 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:30

桃子は静かに梨沙子を見た。
ベッドの上で顔をしかめて雅が来ない理由を考えている。
何か忘れていると梨沙子は言った。
桃子は絶対的な直感でそこに理由があるんだろうなと考える。
雅に、下手すると梨沙子にも大きな影響を及ぼした何かが。

夢と現の狭間で見たもの。
それが現実なのか幻なのか梨沙子には分からないのだ。
だから梨沙子は忘れているのか、覚えているのか、忘れたいのかが判断できない。
梨沙子を刺したのが誰なのか梨沙子は知っているのかもしれなかったし、知らないのかもしれなかった。


++++
24 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:31


「ねぇ、佐紀ー?」
「何、桃?」

桃子が寝そべって天井を見ながら言う。
佐紀はいつもと違う桃子の様子に違和感を覚えつつもあえて普通に返す。
そうすると桃子はゴロンと一回転し、佐紀に目を向ける。
滅多にない暗さを佐紀は桃子の目に見た。

「あの二人、どうなるんだろうね。」
「……何も変わらないでしょ。」

25 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:32


雅が梨沙子を助ける。
それは常であったし、だからこそあの二人の関係は成り立っているともいえる。
梨沙子が雅から離れていくことなんてないように感じられたし、
雅も雅で放っておくことはあっても梨沙子を離すことはないように思われた。

「りーちゃんは何があってもみやから離れないと思う。」

佐紀の言葉に桃子は少し首を傾げると、先を促すような視線を向けてきた。
その視線を受け止め、頭の中を整理するかのように暫し沈黙する。
俯いた顔が真剣になるのを桃子は見た。

26 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:33


「りーちゃんって、頑固なとこあるじゃん。しかも一箇所だけ。」

すっと顔を上げて佐紀が言う。
その疑問文なのか肯定文なのか分からない呼びかけを桃子は怪訝に思いながらも聞いていた。

「みやのことだけ。みやのことだけ、りーちゃんって凄く頑固になると思わない?」
「あー。」

確かにと桃子は頷いた。
梨沙子は雅のことだけは譲らない。
というか雅を否定するようなことは微塵も言わないし、言わせない。
それが唯一我を張る場面である。
27 :痛みの向こうで :2006/06/14(水) 19:34


「だから、絶対りーちゃんがみやから離れることだけはないって。」

何されても、何してても最後には雅のとこに行き着く梨沙子だから。

「あえて私は断言する。あの二人は何があっても一緒。」

桃子はその言葉にふわっと嬉しそうに笑うとそっかと相槌を打った。
その笑顔は作られた笑顔ではなく、本当に素の桃子からでた微笑だった。


++++

28 :CPヲタ :2006/06/14(水) 19:34








29 :CPヲタ :2006/06/14(水) 19:34








30 :CPヲタ :2006/06/14(水) 19:41

こんな感じで続きでした。

ストックがどんどん減っていく〜。

これからはせめて二週間で更新できるようにがんがりやす。


31 :ななしいくさん :2006/06/18(日) 18:34
楽しみです
32 :CPヲタ :2006/08/10(木) 00:53

31>>ななしいくさん
ありがとうございます。
のろいペースなスレですが覗いてやってください。



ではいつの間にか八月で、焦っての更新です。
遅くなってしまいすみません。

亀な速さでやっていくのでのんびり見てくださると良いかと…。

では今日の分更新。
33 :痛みの向こうで :2006/08/10(木) 00:54



++++




34 :痛みの向こうで :2006/08/10(木) 00:55


血が跳ねて広がる。
それは見たこともない映像だった。
それは見たことがないくらい綺麗だった。
白と赤とのコントラスト。

雅は一瞬、何もかも忘れてそれに見入っていた。



梨沙子に刺さったナイフは本当に深々と彼女のわき腹を貫いていた。
夜というにはまだ早い黄昏時。
町は夕焼けに染まり、赤の光が横行する。
雅はその中に別の紅を見つけてしまった。

―みやが好き。

そう言って笑っていた梨沙子の顔をハッキリと思い出せる。
だけど雅と梨沙子の想いは似ているようで違った。
だからすれ違って、だからこんなことが起こっているのだと雅は思う。

「………梨沙子。」

滲む血は服を染め、刃を伝う。
地に落ちる雫は夕日の色で嫌に光った。

35 :痛みの向こうで :2006/08/10(木) 00:56


「梨沙子?」

梨沙子の力が抜け、雅に梨沙子の重みがかかる。
自身にかかった重みはいつもより重い気がして。
それが梨沙子の意識がないことを証明しているようで嫌だった。
まるで自分が二人いるような感覚に雅は囚われる。
冷静に救急車を呼ばなくてはとか梨沙子を助けなければと考える自分。
そして何も見えず、何も聞こえず、何も考えられない自分。
手に滑り過ぎる液体が付着する。
だがそれでも雅は動けなくて、完全に止まってしまっていた。

「みや…?」
「り、さこ。しゃべっちゃ駄目だよ。」

声にまで力が入らない。
自分は電話をしただろうか。まだしていないのだろうか。
梨沙子を助けなければならない。死なないで欲しい。
だがこのままだと梨沙子は確実に死んでしまう。
ドラマでしか見たことのなかったような場面。
ドラマでよく聞くセリフ。


「――――――――――――――-。」

36 :痛みの向こうで :2006/08/10(木) 00:57


何故そんな事を言うのだろう。
今、この場面で。

「あたしもだし。」

ポツリと漏れた言葉だけが雅の真実であった。
何処か遠くから救急車のお馴染みの音が聞こえてくる。
それにより段々と頭の中で冷静な自分が勝ってきて、雅は自分を半分取り戻す。
梨沙子の面倒を見るのは自分。
その思いが妙に雅を奮い立たせたのであった。
そして誰が呼んだのかさえ分からない救急車に乗って雅は梨沙子の命を守っていたのだ。


37 :痛みの向こうで :2006/08/10(木) 00:58


「みや。」

自分にかけられた声にはっとして顔を上げる。
そこにいたのは見慣れた仲間。
桃子であった。
後ろには佐紀や友理奈、千奈美といつものメンバーが揃っている。
一瞬自分が何処にいるのか把握できなくなって雅は寝ぼけたように周りを見渡した。

「…もも?」

桃子は頷いた。
その目には何だかいろいろなものが込められていて、雅は泣きそうになる。
肩に置かれた手とその感触がここは間違いなく現実であることを雅に知らせる。
カチコチと時計の秒針が静かに音を立てる。
桃子が隣に座り、何人も座れる横長の椅子が少し軋んだ気がした。
目を上げると赤いランプ。
異様に静かな廊下。
自分達以外全てが無機物であるかの様な感覚。
それのどれもが雅には気に食わなかった。
嫌で、嫌で、仕方がなかった。
次にあの扉が開いたとき梨沙子の運命は決まってしまっている。
それはとても理不尽な気がしたし、何も出来ない自分が悲しかった。
何も出来ない。
それはとてつもなく深い絶望だった。

38 :痛みの向こうで :2006/08/10(木) 00:59


「……梨沙子が、あの中にいる。」
「うん。」
「そう考えただけで、凄く怖い。あたしには手の届かない場所で梨沙子がいなくなるのが怖い。」
「………うん。」

するりと桃子の左手が雅の右手を握った。
泣きそうなはずなのに涙が出ない。
泣きたいはずなのに泣きたいなんて思わない。
雅の涙はあの忌々しい赤いランプに吸い取られてしまったかのようだった。
今はただ梨沙子が生きてくれることを願って。
雅は扉の前でひたすらに祈った。

39 :痛みの向こうで :2006/08/10(木) 00:59




40 :CPヲタ :2006/08/10(木) 00:59





41 :CPヲタ :2006/08/10(木) 01:02

ありえないくらい少なくて、すんません。

どんよりと暗い話ですがそのうち明るくなる……かな?

本当は明るくてラブってるのが好きなんですけどねー。
書けばこうなる。
自分でも不思議です。

では次こそ速く更新するぞと自分に気合を入れて。
またの日まで。

42 :CPヲタ :2006/09/17(日) 20:45







43 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:46

++++


―彼女が自分以外に微笑むのはいやだ。

なんて子供じみた想いに囚われるようになったのは何時からだろう。
笑いかけてくれるだけでよかったのに。
それだけじゃ物足りなくなってしまっていた。

「どうかしたぁ?」
「……桃ち。」

肩に手が置かれその手をなぞるように視線を上げる。
そこには得意の笑顔を浮かべた桃子が立っていた。
座っているためいつもは少し下に見える桃子の顔を自分のはるか上に見る。

44 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:47


「見すぎだよ?いくらなんでも。」

そう?と首を傾げるとそうだよと苦笑と共に返された。
そんな意識は少しもしていなかったし、桃子が気づくとも思わなかった。

「あのさ。」

ここは相談してみるのがいいかもしれない。
桃子は自分より年上だ。
それに桃子はこういう類の感情について自分よりはるかに詳しそうだと思ったから。
実際今も聞く準備ができている。

「うん、何?」
「独占欲って、大人?子供?」

「………うん?」

桃子は聞き返すようにもう一度首をかしげた。
その姿に少し後悔する。

45 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:47


「独占欲を持つって事は子供じみたことなのかな?」

桃子は納得したかのように頷く。

やはり子供じみた思いなのだろうか。

「あー、違うよ。別に子供じみてるとか言う気はないよ。」
「じゃあ……?」

表情で分かったのか桃子は即座に否定してきた。
ざわざわとしている中で二人だけが違う。
まるで別の世界にいるようだ。

違う。

実際に別の世界になってしまったのだ。
彼女を好きになったときから、自分と桃子たちは隔てられてしまった。

46 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:48


「桃はね、好きになったんならしょうがないと思う。」
「大人でも、子供でもないってこと?」
「っていうか、大人でも子供でもすることなんて変わんないよ。」

付き合って、嫉妬して、でも好きで。
それが好きって感情なんだと思うと桃子は言う。
好きになったらずっと見ていたいのは当然で、独占欲が沸くのも当たり前。
桃子はそう言う。

「桃もそうなの?」

すると桃子は驚いたような顔をして、困ったように笑うのだ。
聞いてはいけなかったかもしれないと思いながらも聞かずにはいれない。
やはり自分より大人だった桃子。
彼女のことを聞いてみたかった。

47 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:49


「あたし?……どう思う?」
「え、そうなんじゃないの?」

自分の経験から出た言葉だと思っていた。
だから酷く桃子の反応に困惑する。
聞き返してみても桃子ははぐらかすだけだ。

「桃もね、嫉妬できるような人ができればいいんだけど。」

ぽつんと最後に呟かれた言葉に謝りたくなった。
その時の桃子の顔は見た事がないくらい悲しそうで。
踏み込んでは駄目だった。
そういう後悔を胸に抱きながら、桃子の言葉に確かに救われていた。


それはいつのことだったろうか。


++++

48 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:50


―みやが好き。

そう言ってくれたのは確かにあなただったのに。
覚えていないなんて悲しすぎる。


「……みや、元気ないね。やっぱり、梨沙子が気になる?」

まるで、今目が覚めたように起き上がり佐紀を見る。
雅の様子に佐紀は心配そうに眉を顰める。

「佐紀ちゃん……。そりゃあ、気になるよ。」

だって、半分あたしのせいだし。
と雅は苦笑しながら微笑んだ。
佐紀はその顔を見て、自分も苦笑し前に回りこむと雅の隣に座った。

49 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:51


「みやの家に行く途中に、刺されたんだっけか?」

その言葉に雅は俯き、そのせいで佐紀から雅の顔は見えなくなる。
元が陽気な性格の雅だから、ますます今の暗さが目立つ。

―梨沙子のこと、本当に大切にしてるんだなぁ。

雅は照れ屋で、恥ずかしがり屋だ。
年下の梨沙子からからかわれるほどの。
だから目に見えて何かするという事は少なかったが、梨沙子のことを大切にしていた。
それは佐紀も桃子も誰でも知っていることだ。
いや、見ればわかってしまうと言ったほうが良い。
本人達以外は誰もが分かっていた。

梨沙子がからかい、雅は顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
梨沙子はそれが見たくて何回もからかう。
佐紀も桃子もそれを微笑ましく見ていた。
そんな平和な時間が確かに流れていたのに。
今はその痕跡すら残っていない。
佐紀はそれを悲しく思った。

50 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:53


「ねぇ、顔は見えなかったの?梨沙子を刺した相手の。」

そうだ。
雅は見ているはずだ。
梨沙子を後ろから刺したその人物を。
雅は梨沙子の前に立っていたはずだし、犯人は梨沙子を後ろから刺したはずである。
少しの期待をこめて佐紀は雅を見つめた。
雅はその言葉に少しびくっと肩をすくめたかと思うと、顔を挙げ佐紀を見る。
弱弱しく首を振ると泣きそうな顔で佐紀に言った。

「あたしは、見なかった。逆光だったし、それに……梨沙子にばかり目がいったてたから。」
「そっかぁ。ごめんね、変なこと聞いて。」
「ううん、警察の人にも同じこと聞かれたし。誰だって思うことだから。」

51 :痛みの向こうで :2006/09/17(日) 20:54


謝る佐紀を見つめる目はやはり力がなかった。
梨沙子のことがよっぽどショックだったのだろう。
佐紀はそう思い、もう一度雅の肩をぽんと叩くと元気出してねと小声で伝えた。
うんと小さいながらも返してくれた雅は、しかしどこかぼうっとしていた。
俯いたままの体勢で、うわ言を言うときのように微かに雅の口が動く。
佐紀が読み取ったそれは余りに意味深で、決定的なものだった。


『梨沙子、ごめんね。』


見てしまった佐紀は何もできなかった。
佐紀は悲しいことだが、今回の事件においてなにも関われないからである。
桃子が梨沙子の様子を気にしていることや、二人の心配をしていることは知っていた。
佐紀も何回かそういう類のことをしていったし、桃子からも相談を受けていた。
もちろん雅と梨沙子のことについてであるが。

佐紀はこの間桃子に相談されたことを思い出し、嘆息する。
あの時はああも自信たっぷり言い切ったが今そうできる自信はほとんどない。
佐紀は桃子のことを思い出しながら、静かに目を瞑った。


++++

52 :CPヲタ :2006/09/17(日) 20:55





53 :CPヲタ :2006/09/17(日) 20:55







54 :CPヲタ :2006/09/17(日) 20:57

自分的には多めの更新。
思ってたよりも長くなりそうで心配。

いつになったら、自分はラブラブの短編がかけるのだろうか。

55 :ななしいくさん :2006/09/18(月) 01:07
作者さんのラブラブの短編も読んでみたくて仕方がない自分はどうすれば・・・。
56 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:00

55>>ななしいくさん
しばらくお待ち下さい、としか言えない自分。
ベリーズの夏夏DVDが発売されたら何とかなるかも、かも?
長編と同じように気長にお待ち下さい。

57 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:00




58 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:01


++++


「ももち、聞いてー。あたし、やっと退院できるんだよ!」
「良かったじゃん、梨沙子。おめでとう。」
「ありがとう。」

病室に入って開口一番に、桃子は梨沙子からそう言われた。
少し面食らったものの、その内容は桃子にとって嬉しいものでしかなく素直に喜んであげることが出来た。
そして出来た定型文的な会話。
桃子は何故かそれがおかしかった。

59 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:02


「みやがね、あ、みやから連絡があったんだけど。
あたしが退院したら今度はあたしの家で遊ぼうって。」

その勢いのまま桃子に告げられた喜びが多分に含まれた言葉。
桃子はそれを聞き、最初の勢いもこれが原因なのだろうと少し苦笑した。
とりあえず、梨沙子の側まで歩くと椅子を引っ張り出してそこに座る。
頬を赤くして桃子に報告する梨沙子の姿はとても可愛かったが、
余り興奮しては傷に触るのではないかと桃子は少し心配した。

「はいはい、りーちゃん。少し落ち着いてね。傷が開いたら、退院延期決定だよ。」

それは困ると梨沙子は小さく呟き、ゆっくりとベッドに寄りかかった。
桃子が来るまでよっぽど暇だったのか梨沙子の周りには雑誌が散乱している。
ここは病院であるから携帯電話は使えない。
となると出来ることはテレビと雑誌を読むことくらいだった。

60 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:03


「で、みやから連絡があったの?」
「うん!!家に電話がかかってきたんだってお母さんが言ってた。」

椅子に座る桃子とベッドに上半身を起こしている状態の梨沙子ではかすかに梨沙子のほうが視線が高く、
桃子は首を傾げると梨沙子を少し覗き込むようにして見た。
先ほどよりは落ち着いたものの梨沙子が桃子に注意されたくらいで大人しくなるはずはない。
余り見ないくらいに全ての動作に力が入っていた。
桃子の言葉に頷くにしても、話すにしても。


61 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:04


「そっかぁ〜。……お見舞いには?」

梨沙子は一瞬言葉に詰まると俯き顔をふるふると横に振る。
しょんぼりとした梨沙子に桃子は少し慌て、
もう少し考えてから聞けばよかったと少なからず後悔した。

梨沙子が入院して一ヶ月と少し。

梨沙子の言葉が本当なら、その間雅は一回もお見舞いに来ていないということになる。
真面目な性格の雅にしてはおかしいし、ましてや梨沙子のことだ。
一回も来ないなんて天変地異の前触れだと桃子は思った。


62 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:05


桃子は梨沙子が運ばれたときのことを回想する。
梨沙子は知らないがあの時の雅は見ていられなかった。
励ますことさえためらう様な雰囲気。
あの時の雅は何かの弾みで壊れてしまいそうだった。


―みやの様子からして絶対に最低週一ペースで来ると思ったんだけどなぁ。


だからこそ桃子は不思議がる。
もしかしたらと雅に疑問を持つ桃子だが、
基本的に雅が梨沙子を傷つけるなんて塵ほどにも思っていない。
目を瞑り自然と浮かんでくるのは、
雅が心配そうに病室に入ってくるところや
少々照れながらも病室を訪れる所。
どちらも来るのがデフォルトだ。
来ない雅などありえなかった。

63 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:06


桃子はそう思いながら、梨沙子に目を向ける。
雅のことになると騒がしい梨沙子。
桃子はそんな梨沙子を見つめながら、どうしても心配でならなかった。


―そのまま、済めばいいのに。



そう思いながらも、桃子はそのままでは終わらない気がどこかでしていた。



++++

64 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:06






65 :CPヲタ :2006/10/02(月) 00:09

名前の欄を間違ったことに今気づく……。
大したことはないですけど皆さん頭の中で変換願います…。

メッチャ短いけどきりがいいんでここまで。
次から微妙に話が展開する予感。

66 :ななしいくさん :2006/10/08(日) 13:09
雅ちゃんの真相がわからなくて気になります。
話が展開するのを楽しみにしています。
67 :吉よしメン後 :2006/10/29(日) 15:15

この頃変に忙しいっす……。

夏夏のDVDが見たくてしょうがないのに、金がない。
悲しいことです(爆


66>>ななしいくさん
実を言うと自分にも余り分かってなかったり・・・・。
でも現実よりはりーちゃんのことを表面的に気遣っています。
たぶんそういう子です。
変化に乏しい連載ですので、ゆっくり読んでください。


では遅くなりましたが更新します。
68 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:16




雨が降った。
ついこの間まで五月晴れの模様を表していた空はどんよりと曇り、雫を落としている。
いつの間にか梅雨に入っていた。

地面を小さな水流となり、雨が流れていく。
ぽつぽつと傘を叩く音はしかしそのような勢いではなく、ザーザーと言った方が良いくらいだ。
なかなかに激しい雨の中、一人雅は傘を差し歩いていた。
目的地はそんなに遠いわけではない。
だがたどり着いたことは一度もなかった。


69 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:17


雅は俯き加減に歩く。
すると自分の足元を流れていく水が少しうっとおしかった。
ここは坂道で、雅は今登っている。
ちょっとした山のような場所に建てられた目的地は登りきったことはあっても,
辿りついたことはない。
できるはずもない。
雅はまだ迷っていた。

―……どうしよう。

今日も着いてしまった。
雅は少し傘を傾けその白い建物を見上げる。
遠めに見ても部屋に廊下に人が沢山動いていることが分かった。
活動的な場所、であるが、消極的な場所。
傘の取っ手を握り締め、何度目か分からないが病院に足を踏み入れた。

70 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:18


梨沙子の部屋番号は分かっていた。
何度も着ているのだから間違えるはずもない。
雅は迷わずエレベーターに乗り梨沙子のいる階のボタンを押す。
少しの音と共に重力が雅の身体に圧し掛かった。
一人で乗るエレベーターを雅は余り好きになれない。

余り大きい病院でもない。
ここに梨沙子が運ばれたのはただ雅の家から近かっただけなのだが、今となっては幸いだった。
町に必ず一つはあるような総合病院。
目立つわけもなく梨沙子がここにいることもばれていない。
だからこそ雅がこうも頻繁に通うことが出来た。

71 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:19


高めの電子音がなり、着いたことを雅に知らせる。
目の前で扉がスムーズに開いた。
俯いていた雅に乗り込む誰かの足が見える。
その人が乗り込んできてから降りようと雅は顔を挙げタイミングを計ろうとした。
一人の自分と同い年くらいの少女と目が合う。
時が止まった。

「みーやん、お見舞い?」

にっこりと笑いかけてくる桃子を見ながら今日こそ梨沙子の病室に入れるような気がした。




72 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:20



雨の屋上。
そこは思っていたよりも綺麗で、見通しが良くて、でも空に近い場所だった。


桃子に促され屋上へと足を踏み入れた雅はちょっとした庇の下に傘も差さずに立っていた。
隣には桃子がいて雨が降る空を見つめている。
コンクリートを跳ねる雨は人工物のようで好きになれない。
土の上の水溜りは好きでも塗られた壁の水溜りは嫌いだった。

「みーやんさぁ、……ずっと来てたでしょ?」
「………。」

その鋭い問いに少しどきりとした。
だが雅はただ側に傘を置き、空を眺めているだけだ。
桃子はこういう時とても鋭い。
だから雅がここで一番会いたくなかったのは桃子だった。
ずっと沈黙を保っていると桃子が呆れたようにため息をつき、しかし雅のほうは見ずに続ける。

73 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:20

「みーやんが来ないはずないもん。病院までは来るのに梨沙子には会わなかったんでしょう?」
「何で…。」
「目立つってこと自覚したほうがいいよ?看護師さんに聞けばすぐだよ。」

尤もなことを言われ雅は言葉に詰まる。
確かに病室までは行けなくても病院に入ったことは何回かあった。
その時、誰かに見られていたとしても何も不思議ではない。

「あのさぁ、もう何があったかは聞かない。」
「え?」
「あの時何があったかはもう聞かない。りーちゃんを刺したのが誰とか、もういい。」

もう直ぐ退院だしと桃子が小声で付け足すのを雅は聞いた。
ちらりと盗み見るようにして桃子の横顔を見つめる。
そこにあるのはほぼ無表情に近い顔。
桃子が時々する顔ではあるが雅はそこから何かを読み取れたことはない。

74 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:21

あの時のことを知っているのは今では雅だけだ。
誰もが何があったか知りたがったし、
マスコミなどは各々予想を勝手に垂れ流している。
そんな中での桃子の宣言は不思議で仕方なかった。


「ただ、桃は……ただね、笑っていて欲しいだけ。二人に。」


激しく落ちていく雨粒が雅と桃子を世界から遮断した。
桃子が無表情を崩し、寂しそうな影を浮かべたとき確かに雅の世界には二人しか存在しなかった。
桃子の作る異質な空気に取り込まれてしまっていたのだから。


++++



75 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:22








76 :CPヲタ :2006/10/29(日) 15:25


ありえないミスをしてしまいましたが、さらっと流しましょう。
気づいた方は(笑


書くたび思うんだけど桃子って本当に良いキャラしてますよねー。
自分りしゃみやヲタなのに話動かしてるの桃子ですもん。
いやー、書きやすい。

ではんなどうでも良いことを書いて、またの日まで。

77 :ななしいくさん :2006/11/26(日) 23:18
一気に読んでしまいました!!
面白いです〜!次の更新、待ってます。
78 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:19


更新しまーす。

長時間の放置すんませんでした(汗

レス返しは後で。


79 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:20


その日の夜、友理奈は千奈美の家に泊まりに来ていた。
結局止むことのなかった雨は、今も友理奈の耳に雨音を響かせている。

むくりと起き上がり友理奈は隣のベッドを見つめる。
一段高い所にあるベッドに寝ている千奈美と布団に座る友理奈の目線はほぼ同じくらいだ。
若干友理奈のほうが高いが、いつもの差に比べたらないに等しいものだった。

「ちー?」

そっと呼んでみる。
寝ているなら起きないだろうし、起きているなら辛うじて聞こえるくらいの大きさだった。

「ん〜、何?熊井ちゃん。」
「ちーは、今回の事件どう考えてるの?」

布が擦れる音がして千奈美がこちらに振り返った。
その顔は少し寝かけていたようであった。
友理奈はまだ起きていた事に安堵しながら問いかけた。
目が覚めてきた千奈美が悪戯に笑う。


80 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:21


「どうって?」

わかってるくせに。
友理奈は微かに顔をしかめた。
千奈美は時々意地悪になる。
何故だかは友理奈にはわからないが。

「りーちゃんのことはうちには分からないよ。」

千奈美が体を起こした。
自然と目線が少し高くなる。
見上げるという行動が新鮮に感じた。
千奈美の身体から掛け布団が滑り落ちていく。
暗がりの中で千奈美が苦笑したのが友理奈には分かった。

81 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:23


「みやはショック受けてるみたいだし、キャプテンはそんな二人の子と心配してる。
桃のことはわかんないけど、多分うちが出来ることなんてないよ。」

すらすらと千奈美の口から出てきたセリフに友理奈は少し驚く。
事件の後梨沙子を除いた全員で会うこと事態減っていて、
千奈美がその少ない時間の中でそこまで人を見ていたことに友理奈は驚いたのだった。

「そう、なのかなぁ……。」
「そうだよ。もう寝よ?明日も一杯遊ばないといけないんだから。」

お姉さんっぽい表情を浮かべた千奈美が諭すように言う。
千奈美の目も声音も優しくて友理奈は反論することが出来なくなる。

「ほら、早く。」

再度千奈美に促される。
それでも友理奈は布団に入って寝る気になれず、座ったまま黙っていた。
かちこちと何処からか時計の音が聞こえてくる。
無言だが感じる視線。
それらは確かに友理奈に寝ることを強制していた。
嫌な時間が過ぎる。
しかし友理奈にはどうすることも出来なくてただ彫刻のように固まっていた。

82 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:23


「しょうがないなぁ〜………。」

ふうーと千奈美が嘆息したかのように息を吐き出した。
千奈美はするりと自分のベッドを抜け出すと友理奈の隣に座る。
そしてそのまま、まだ下のほうに綺麗にたたまれていた掛け布団を両手で握ると一気に友理奈を押し倒した。
ただ千奈美の行動を目で追っていただけの友理奈は抵抗などできずに布団に寝転がる。
ひどく驚いたはずだが、驚きすぎて落ち着いてしまった。
それに千奈美ならいいかという思いも確かにあった。

「これで寝れるでしょ。」
「ちー?」

あたし一人で寝られるんだけど。
出て行こうとした言葉は千奈美の視線に閉じ込められて胸の中に戻っていく。
心地いい体温に友理奈は眠りの国へと急速に落ちていった。



++++

83 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:25


「うん……うん。うん、そうだね。……わかった、伝えておく。」

がちゃっと重そうに受話器が降りる。
ピーピーという甲高い音と一緒にテレホンカードが排出された。
佐紀は重いため息をつきつつ、それを受けとる。
今の電話は茉麻からであった。
元々佐紀が、用事があって病院の公衆電話から電話したのだが結局有耶無耶になってしまった。

梨沙子が怪我してからどうにもごたごたしていた。
犯人が捕まっていないことがその原因の一つだったのかもしれない。
しかしそれだけではない何かもやもやしたものがグループを覆っているように感じられた。

84 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:26


「どうしよう、かな……。」

どうもできないというのが素直な気持ちだった。
桃子は元より佐紀がどうにかできる人ではないし、雅も我を曲げるような人ではない。
千奈美と友理奈は千奈美が首を突っ込もうとしなければ大丈夫だろう。
で茉麻と舞波だ。
茉麻はとにかく梨沙子が可愛いらしい。
それが面倒くさいことを引き起こす気が佐紀にはした。
忘れがちだが茉麻と雅は同い年である。
同じという事は上に見せるような遠慮も下に見せるような寛容もなくなる。
衝突が激しくなるのは避けられない。

「舞波は……大丈夫かな?」

85 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:26


わざわざこの世界を抜けた舞波を連れ戻す必要もないだろう。
桃子が連れて来るようであればまた別であるが。
佐紀はそこまで考えてから梨沙子の病室に帰る道を辿る。
そう佐紀は梨沙子のお見舞いに来ていたのだ。
梨沙子はさびしいのが苦手な子であるからなるべく多く来るようにしている。
もっとも一人で来るという事は少なく、また一人で来たとしても病室で鉢合わせになることは結構あった。

―雅の姿を一度も見ていないことは異常だと思うが。

時々通る看護師さんなどに目礼をしつつ進む。
すると、同じ階なのから当然だが、すぐに部屋へと着いた。
扉の前で一度止まり、息を吸う。
難しい顔など見せたらお見舞いに来た意味がない。
パッと表情を切り替える。
こういう時、この世界に入ってよかったなと佐紀は思う。
でなければこんなに気持ちの切り替えや、笑顔が作れるようにはならなかっただろうから。

86 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:27


「りーちゃん、お見舞いに来たよ〜。」

さほど音もしない引き戸を開き、明るい声で佐紀は言い放った。
普通ならここで梨沙子の声か、または別の誰かの声で迎えられる。
しかし、誰の声も、音さえも佐紀を迎えてはくれなかった。
ここだけおかしいほどの静寂に包まれていたのだ。
佐紀は少し首を傾げると僅かな不安と大幅な疑問を胸にベッドへと近寄る。

「……りーちゃん?」

カーテンを開けてみれば確かに梨沙子はそこにいた。
ベッドの上でぼーっとカーテンの引かれていない外のほうを見ている。
佐紀に気づいて様子はない。
とりあえず倒れたりしていないことには安心したが、どうにも様子が変である。
目の焦点が、合っていない。
そして無表情すぎる。

87 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:27


「……梨沙子?」

ゆっくりと近づき、そっと梨沙子の肩に触れる。
小さく梨沙子の肩がゆれ、スローモーションのようにこちらに振り向く。
佐紀にはコマ送りのようにその顔の全てが見えていた。
喜びと落胆の変化を。

「なんだ、佐紀ちゃんか……。」

吐き出された言葉に佐紀は唐突に全てを理解し、苦笑を浮かべる。
つまり梨沙子は彼女を待っていて。
佐紀が“梨沙子”と呼んだから間違えたのだ。
彼女と。

88 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:28


ここでごめんと謝るのは違うように思われた。
謝った所で雅は来ないのだから。
その結果、黙ってしまった佐紀に梨沙子はしっとりと笑いかける。
無邪気ないつもの笑顔ではない微笑みというような笑み。

「ねえ、佐紀ちゃん。みやはいつになったら来てくれるのかな。」
「……ちょっと、わからないな。」

佐紀は困ったような笑みを浮かべ答えた。
この梨沙子を佐紀は知らない。
だから対応に困る。

89 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:29


―こんなに待ってるのに。

そう小声で言う梨沙子を佐紀はただ見ているしか出来なかった。
雅が何時来るかは知らなかったし、来るなんて適当なことは言える雰囲気ではなかった。
二人とも静かになり、また音がなくなる。
梨沙子は再び窓の外を見つめ始めた。

さて、どうしよう。
することがない。

佐紀は梨沙子の様子から話しかけても無駄だと思い、近くにあった椅子に腰掛ける。
くるりと部屋を見回してみても、特に面白いものがあるわけでもない。
病室であるからそれは仕方ないのであるが。
手持ち無沙汰になった佐紀は梨沙子の観察をすることにする。
この事態に対応するために。
この状況の見極めをするために。

結局、当事者は二人なのだから。


++++

90 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:29




91 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:29






92 :CPヲタ :2007/02/09(金) 11:34


77>>ななしいくさん
かなーり久しぶりの更新になってしまい申しわけありません(汗
気に入ってもらえたなら良かったです!!
キッズでこの内容ってどうなのかと自問自答していましたから……w


ではまたの日まで。
これからはもう少し早く更新します(汗

93 :CPヲタ :2007/04/14(土) 16:59






94 :CPヲタ :2007/04/14(土) 17:00


帰る道すがら、桃子の言ったことを考える。
やはり雅には理解できない。
あそこまできっぱりと割り切れることが。
割り切れたように見せられることが。
未だに降り続ける雨を見上げ、雅は唐突にここに来た目的を思い出した。

―あ、梨沙子の病室結局行ってない。

今日こそは入れると思った。
他のメンバーがいないときを狙って来るのにも疲れていた。
だが最初は二人きりで会わないといけないだろう。
雅はそう決めていた。
自分のためにも、梨沙子のためにも。

95 :CPヲタ :2007/04/14(土) 17:00


足を止めて思わず振り返る。
白い建物はいやに威圧的に見えた。
戻ろうかとも思ったが、そろそろ面会時間も終わりなはずだ。
戻った所で会えないかも知ない。

ふうと一つため息をついて雅は前を向く。

―今度にしよう。

どっちみち梨沙子が退院したら最初に会う約束は取り付けた。
確実に会うことは出来る。
問題は梨沙子が拗ねることくらいだ。
雅は雨の中を歩き出す。
そしてまた桃子のことに思考は飛んだ。

96 :CPヲタ :2007/04/14(土) 17:01


―桃はああ言ったけど……。

他のメンバーはそうは思っていない。
ましてや他の人たちだって思うはずがない。
自分の仲間を刺した人物が誰か知りたいはずだし、捕まることを願っている。
事件において一番注目されるのは傷つけた犯人だ。
なぜなら自分も傷つけられる可能性があるから。
その可能性が消えない限り、事件は収まらない。

―でも。

この事件の犯人は捕まらないだろう。
雅はそのことを知っていた。
犯人は捕まらない。
だが事件には終わってもらわなければならい。
雅は頭を抱えたい気分になった。
誰も彼もが桃子のように割り切れるわけではない。
むしろあれこそが特殊な例だ。

97 :CPヲタ :2007/04/14(土) 17:02


―それに。

桃子の中では犯人が誰かなんてもう分かってしまっているのかもしれない。
そうでなくても、自分に危険が及ばないことが分かっているのかもしれない。
人の機微に聡い子だから。
そのうえで、桃子はこの事件にはもう触れないことを宣言した。
大人の対応だと雅は思った。
好奇心に駆られるまま何もかも暴くことが正義ではないと知っている、そんな大人の。
1個しか違わないのに感じる圧倒的な差。
それは一年で埋まるとも思えなかった。
普段は差があるとは思えない、だがこういう時に見え隠れする桃子は少し怖かった。
何が桃子をそうさせたのか分からないことが怖かった。
大人の怖さだと雅は思った。
そして梨沙子の一途さは小さい子供の怖さだと思った。
一途だからこそ残酷になる怖さ。


雅にはどちらも分からない。


何もかも分かっているように対応する大人も一つのことだけを見続けられる子供も。
雅はその狭間に今いるのだから。
桃子のようには振舞えない。
かといって梨沙子のような真っ直ぐさも雅には持てない。

98 :CPヲタ :2007/04/14(土) 17:02


―こんがらがる。

何をすべきか、何をしたいか。
そして何が一番梨沙子のためになるか。
雅の頭の中でそれぞれが混ざって絡まった。
今もまだ鬱陶しく降る雨が更に雅の気持ちを重くする。

さて覚悟を決めなければならない。
真実を知っているのは雅だけ。
梨沙子でさえ覚えていない。
なら雅だけで乗り越える覚悟を。

雅は傘の柄を強く握った。




99 :CPヲタ :2007/04/14(土) 17:03


++++


100 :CPヲタ :2007/04/14(土) 17:03






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