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砂糖をあなたに

1 :名無飼育さん :2018/08/06(月) 21:05
砂糖は麻薬だそうだ。
ゆっくりゆっくり効いていく遅効性の毒。

最初の印象が悪いなら、ゆっくり私の存在をあの人に貯めていく。
時間をかければ、人への想いは変わる。
変わったその時に毒が貯まっていればいるほど、あの人は私から逃げられなくなると信じて。
26 :七話 :2018/08/21(火) 00:56


小田が休んだ。

昨日、ちょっと調子が悪そうだなと思ってたら本当に悪かったようだ。

今日は、全員でのダンスレッスン。
小田とはなにかと絡んだりすることが多いから、小田がいない状態だとなにか変な感じがする。


「小田ぁ……あ、いないんだった。」


シンメになる小田と打ち合わせしようと思って呼んでしまったけれど、当然返事はない。
けれど、メンバーにはしっかり聞こえてしまって、何人かにニヤリとされる。


「小田氏がいなくて寂しい?」

「別に寂しいとかじゃないって。」


はるなんがにやにやしながら来る。


「本当に〜?」

「もう、譜久村さんまで!」


譜久村さんは、小田と私の関係を弄るのが好きだ。


「メンバーが休むくらい体調崩したら誰だって心配しますって。」

「小田だと特に?」

「もう!譜久村さん!」



27 :七話 :2018/08/21(火) 00:57


仕事が終わり、携帯を見ると小田からメンバーに謝罪のメッセージが着ていた。
どうやら、明後日には復帰できるらしい。

『お詫びにアイスクリーム買っていきます。ご希望ありますか?』

なんて書いてたから、

『アイスクリームで許されると思うなよー!』

と返した。
ちょっときつかったかなと思って

『余計な気を使わなくていいから、ゆっくり休んでしっかり治しなさい。小田が元気な、顔を見せてくれたら十分だから。』

小田に追加で送ると、すぐに既読になった。

『石田さんの優しさで、小田もう元気になりました!明日にでも復帰できそうな気がします!』

『なにバカなこと言ってんの。ちゃんと治せって言ったでしょ。お医者さんの言うことちゃんと聞きなさい。』

『はーい。しっかり、治します。』

結構、元気そうな感じだったので安心した。





ずっとずっと後になって知ったことだけれど、小田はこのなんてことない言葉が本当に嬉しかったらしくスクリーンショットを撮って大事にしていたらしい。

28 :七話 :2018/08/21(火) 00:58
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                            七話 終

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29 :八話 :2018/08/22(水) 23:23


「石田さん?」


返事はない。
人気のない階段で、石田さんは膝を抱えてうつむいたままだ。


今日は、彼女の同期の卒業が発表される。


卒業を告げられたときは大丈夫だったけど、別れ際に泣いたと聞いた。
私だって、一緒にやってきた仲間の卒業は寂しい。
でも同期ならばもっと思うこともあるのだろう。
同期のいない私にはわからないことが。
30 :八話 :2018/08/22(水) 23:25


誰かの卒業が発表されるたび、石田さんはこっそりこうやって一人で悲しんで皆の前では明るく振る舞っていた。
私たちにはいつだって別れがつきまとう。
卒業と加入を繰り返して紡がれた歴史。
ここが最終地点ではないと言われても、ここより大切な場所ができるとはまだ思えなかった。
今生の別れでもないから会おうと思えばいつでも会える。
でも、今まで分かち合ってきた喜びも辛さも共有はできない。
離れて新しくできる絆もあったけれど、寂しいものは寂しいのだ。



「石田さん。」


ゆっくり石田さんに近づいて、そっと包み込む。
ちょっとでも石田さんの寂しさがマシになれば。

ピクリとも動かなかった石田さんが、ゆっくりと手を伸ばしてくる。
ぎゅっと抱きついて、また動かなくなる。
31 :八話 :2018/08/22(水) 23:26


工藤さんの卒業を聞いて、自分そして石田さんの卒業を強く意識するようになった。
10期さんの最年少。並べば私の前で、石田さんの二つ後ろ。
意識するなというほうが無理だ。

今、やりたいことを叶えても次から次へとここで達成したい目標が出てくる。
それがなくなれば、卒業になるのだろうか。
それとも、いつかここでは叶えられない目標が出来てしまうのだろうか。
できればその時は石田さんの後であって欲しい。
こうやって石田さんが一人になってしまわないように。


32 :八話 :2018/08/22(水) 23:27


どれくらいたったのか、ふと気づくと石田さんは寝ていた。
楽な体勢にかえて、彼女を心配している人たちにメールを送る。


『石田さんと一緒にいます。もう少ししたら戻ります。』


次々に返ってくる返事、全てに石田さんをよろしくって書かれていて少し笑ってしまう。
本当にこの人は愛されている。


さて。そろそろ、戻りますか。


「石田さん、起きて下さい。そろそろ時間です。」

「んぅ。ごめん、寝てた?」

「いえ。行けますか?」

「うん。ありがとう。小田は大丈夫なの?」

「私は、石田さんをハグできましたから。」

「なに言ってんの。」

鼻で笑った石田さんは、最後にぎゅっとして立ち上がる。
立ち上がった石田さんはもう、いつもの石田さんだった。

「さーて!今日のライブも、頑張ろう!いつだって、最高の私たちで行かないとね!」


そうだ。いつでも最高の私たちでいよう。
卒業していく、メンバーが心配しないように、胸を張ってこの先も歩いて行けるように。
まだまだ私にはやらないといけないこともやりたいこともある。


33 :名無飼育さん :2018/08/23(木) 16:09
ヤバい!!
だーさく!


34 :九話 :2018/08/27(月) 21:30


「うわぁ、いい雰囲気のお店ですね!カレーのいい匂い!」


今日は、石田さんと二人でのお仕事。
結構時間もあってお昼ご飯をどうしようかとなったら、石田さんがいいお店知ってるんだと連れてきてくれた。


あの時から、石田さんとよくご飯を食べに行くようになった。
なにかと、気にかけてくれるようになったように思う。
いや気にかけているというより、知ろうとしてくれてるが近いかもしれない。

35 :九話 :2018/08/27(月) 21:31

「石田さん、よくこんないいお店ご存知でしたね。」

「あぁ、梨沙ちゃんが以前連れてきてくれて……。ってそうだ、小田!!あんた、ハロコンで何言ってくれてんの!!」

「へ?なんのことですか?」


申し訳ないけど、石田さんに怒られる心当たりがない。


「うっ。なんか、私のこと色々と話してたって梨沙ちゃんから聞いたんだけど。」


そんな、石田さんが顔を赤くするようなことを言ったかなぁ。
梨沙ちゃんに?あ、もしかして。

36 :九話 :2018/08/27(月) 21:32

「もしかして、石田さんが美味しいもの食べたらテンション上がるって話ですか?」

「それ!なんか恥ずかしかったんだけど!!」

「今さらじゃないですか?たしか、何かのDVDでも言った記憶ありますよ。」


でもなんか恥ずかしいじゃんかと石田さんは膨れる。
膨れる石田さんは可愛いんだけど、ここで可愛いと言ったら怒られるのは目に見えてる。


「あ、石田さん。デザートきましたよ!美味しそう!」


いいタイミングでデザートがきた。


「デザートも美味しいんだよ!」


さっきまで膨れてたのにデザートを見たらすぐにご機嫌になる石田さん。
目がキラキラして嬉しそう。
37 :九話 :2018/08/27(月) 21:34



「美味しかったですね!石田さん、ありがとうございました。」

「ん。小田の好みに合ってよかったよ。」


あのあとも、色々とお話をしてたくさん笑った。

さすがに二人で遊びに行くことはないけれど、こういう日が多くなった。
石田さんと二人でこんなに話せるようになるにはもっと時間がかかるかと思ってた。
正直なところ、私か石田さんが卒業してからと考えてたから嬉しいけど少し戸惑っている。
これからどうしよう・・・


38 :九話 :2018/08/27(月) 21:35
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                            九話 終

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39 :九話 :2018/08/27(月) 21:36
>>33
だーさくです。
よろしくお願いします。


八話に終つけるの忘れてしまいました。
40 :十話 :2018/09/06(木) 00:19


「小田ぁ。今日、この後ヒマ?ご飯食べに行かない?」

「はぁい。大丈夫ですよ。行きましょう♪」


鏡越しに会話している二人を眺める。
OKが出て少し嬉しそうな亜佑実ちゃんと、ニコニコしている小田。
最近のだーさくさんは仲良しだ。


「聖、楽しそうっちゃね。」


隣にいたえりぽんに突っ込まれる。
口元が緩んでいたらしい。


「う〜ん。あの二人がようやくここまでって思うとね。」

「あぁ、亜佑実ちゃんと小田ね。」


41 :十話 :2018/09/06(木) 00:21


本当に、あの二人はじれったかった。
小田ちゃんが亜佑実ちゃんのことを好きなのは、みんな気づいていた。
なのに気づかない亜佑実ちゃん。

亜佑実ちゃんは亜佑実ちゃんで、『小田、小田』ってすっごく気にしてるのに自覚がない。
小田ちゃんはそのことに気づいているのかはわからない。
だけど、亜佑実ちゃんの気に障ることはわざとやっているとこもあるみたいだった。
お互いとても気にしてるのになんかズレていて、だーさく観察は面白かったけどやっぱりもどかしかった。

42 :十話 :2018/09/06(木) 00:21


『小田ちゃんはあゆみんの事好きだけどね 』

『そうなんですかね?』
『私あんまり好きじゃない』

あまりに『小田と合わない』を強調するから見かねて直球を投げても、ピンときてないようだったし、他の人に突っ込まれたらすぐこんなことを言っていたのに。


亜佑実ちゃん次第だった、二人。
小田ちゃんが告ったわけじゃなさそうだけど、なにかが亜佑実ちゃんの心を変えたんだろうな。
グループ内恋愛は禁止って先輩が作ったルールがあるけど、あの二人は早くくっつけばいいのになぁと思う。

43 :十話 :2018/09/06(木) 00:22


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                            十話 終

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44 :十一話 :2018/09/11(火) 23:20


小田は気が多すぎる!
なんだあいつは、あっちこっちにベタベタして!


とでも言いたげな顔で横に立っている先輩に声をかける。


「石田さん、そんなに小田が気になります?」

「はぁ!?なんっ……。いや、あの別に。そんなことよりさ……」


勢いよく否定する途中で横にいるのが後輩でさらに小田の親友だと気づいたのか、石田さんは話をそらそうとした。


「おーだは、小さくて可愛い子が大好きですからねぇ。私にも最初はあんな感じでしたよ。」

「はまちゃん大佐!浜浦ちゃん、小さかったよね〜!それがこんなに大きくてスタイルよくなって。しかも可愛いままで。」

「あはは。ありがとうございます。石田さんは、可愛らしいままでどんどん格好よくなってますね。」

「そうかなぁ。そう思ってもらえたら嬉しいな。」


「そろそろ、みんな集合してー!」


開演前、全員での気合い入れに向かう。

45 :十一話 :2018/09/11(火) 23:33


ふと、なんで今回はこんなに石田さんとお話してるんだろうと考えてみた。

答え。石田さんがおーだと一緒にいるからだ!
だからハロコンになると、よくおーだと一緒にいる私と石田さんが一緒にいることになる。

おーだと石田さんが一緒にいるのはよく見かける光景だ。
でもそれは、おーだが石田さんの側にいるからで、おーだが違う人のところへ行けば、バラバラ。
それが今回のハロコンでは、おーだが他の人の所に行っても石田さんもなんやかんやと一緒に移動している。


あれ?おーだは気づいていないわけないよね。
二人の仲が進展したとかまだ聞いてないんだけど。
ま、また今度教えてくれるかな。


46 :十一話 :2018/09/11(火) 23:34

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                            十一話 終

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47 :十二話 :2018/09/16(日) 23:38


「小田氏は、健気だよねぇ」


しみじみと言いながら、飯窪は小田の斜め前の席に座った。


「なんですか、いきなり?」


書き物をしていた小田は手を止めて顔を上げる。


「それ。」


飯窪の指差した先には、小田の充電器に繋がれた携帯があった。携帯の持ち主は、小田の横で机に伏して寝ている石田だ。


「わざわざ、あゆみんの為にケーブル持ち歩いてるって言ってたじゃん。あのあと、横山が悔しがってたよ。小田さんの愛が深すぎて勝てないー!って」


飯窪は、石田さんが大好きなんですと公言している後輩のマネをする。


「ふふふ。」


小田は、あまり似てない物真似に苦笑する。
そして、横で寝ている石田をチラッと見る。


「ま、ご本人は気づいてないかったみたいですけどね。」

「そうね。この間、『野中のためじゃないの?』とか言ってたわ。」

「ちぇるちゃんも石田さんと同じやつですからねぇ。あの子は充電器忘れるなんてほとんどしないですけど。」

「だよね。あゆみんってこういうの鈍感だよね。小田氏があゆみんにやってることに全然気づいてないもん。わざとかってくらい。小田氏が、こんなにもあゆみんを甘やかしてんのに。」


ハァと息をついて飯窪は背もたれにもたれた。
48 :十二話 :2018/09/16(日) 23:39


「甘やかすって……。もともと、気づかれないようにしてたからいいんです。でも最近、石田さんが変わってきたんでどうしましょうかねぇ。」


バカみたいに優しい顔でサラリと石田の髪を撫でる小田。
隠しきれない気持ちを見てしまったようで、うわぁと言いそうになる。


「小田氏って本当にあゆみんのこと好きだね。」

「そうですね。」

「否定しないんだ?言わないの?」

「今さらな質問ですね。まだまだ言いませんよ。もっともっと、小田なしでは生きていけないぐらいになってもらわないと。」


小田は静かな声で答える。
どうしましょうと言ったのに、揺らぐこともなく決めているようだ。
49 :十二話 :2018/09/16(日) 23:40


「飯窪さんとしては、さっさとくっついて欲しいんだけどなぁ。」

「飯窪さん、知ってます?即効性の毒って、その効果が薄れるのも早いんですよ。」

「ほう?」

「即効は瞬間的で遅効は持続的に置き換えられるなら?私は、長く続けたいんですよ。だから、じっくり攻めていくんです。」

「小田の一目惚れは即効性のものじゃないの?」

「そうですけど、一目惚れとはちょっと違いますね。ずっと探していたのが石田さんだったんです。それに石田さんも麻薬みたいな人だから、私もやられちゃってますよ。」

「怖い女だなぁ。」

「ふふ。内緒にしといて下さいね。」

「なんで、教えてくれたの?」

「んー。あのお二人を見守っていらっしゃったからですかね。」


そうこうしているうちに、順番がきて小田は撮影に行った。

50 :十二話 :2018/09/16(日) 23:41


「見守っていたからねぇ。見守るもなにも同期に壊れて欲しくなかっただけなんだけどなぁ。」


やれやれとため息をついて飯窪は、まだぐっすり寝ている同期を見る。


「ほんと、早く気づきなよ。小田氏の気持ちにも自分の気持ちにもさ。」


軽く石田の頭を撫でて立ち上がる。


「さてと。飯窪さんも色々と頑張りますかね。」


飯窪が出て行った楽屋には、一人残された石田。


51 :十二話 :2018/09/16(日) 23:43




「自分の気持ちって、なにさ……」


しっかり聞いてしまって、頭を抱えていた。



52 :十二話 :2018/09/16(日) 23:43
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                            十二話 終

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53 :名無飼育さん :2018/09/17(月) 21:36
こ、こんなところに素敵だーさくさん。
ありがとうございます。続き、楽しみにしてます!
小田ちゃんの、いかにも小田ちゃんっぽい考え方、好きですねぇ。
亜佑美ちゃんがんばれ。
54 :十三話 :2018/09/25(火) 22:53


「おまたせー。」

「どぅー、ごめんね。呼び出したりして。」


「ぜんぜん。あゆみんに久しぶりに会えてうれしいよ。」


と言いながら、工藤は石田の前に座る。

化粧や服装が知っている工藤とは少し違っていて微かな違和感を覚える。
久しぶりに会う工藤は、一緒にいたころよりお姉さんらしくなっていた。


55 :十三話 :2018/09/25(火) 22:54





56 :十三話 :2018/09/25(火) 22:55


「で、本題はなに?」


ひとしきり、お互いの近況報告で盛り上がったあと工藤が尋ねた。


「あ〜、うん。あのね、聞きたいことがあるんだ。」

「うん。」

「どぅーって、まーちゃんと付き合ってるでしょ?なんでまーちゃんと付き合うことにしたのか聞いてみたくて。」

「へ?」


工藤は不思議そうな顔になった。
それはそうだ。
二人が付き合うまで、話を聞いたり、時にはお節介を焼いていたのは石田と飯窪だったからだ。


57 :十三話 :2018/09/25(火) 23:06


「えーと。いきさつはあゆみんが見てきたまんまなんだけど、そういうことじゃないこと?」

「そう!好きってなんで思ったの?まーちゃんと他の人への、好きってなにが違うの!?」

「ちょっと。あゆみん、落ち着いて!」


工藤は近くにあった水を石田に飲ませる。


「うー、ごめん。落ち着いた。」

「そういう話なら、場所変えようか。ハルん家来る?」


カフェを出て、工藤の家に向かう。
工藤の実家に向かうのかとおもいきや、駅と反対に歩いていく。
しばらく前に都内に部屋を借りて、のちのちには一人暮らしをする予定だという。
知らない間に、知らない成長をしている工藤に寂しく感じる石田だった。



58 :十三話 :2018/09/25(火) 23:08


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59 :十三話 :2018/09/25(火) 23:16
>>53 

ありがとうございます!
小田さん、こんなこと考えそうだなぁってとこからはじまりました。
石田さん、パンクしかけですw


気にならないかもしれませんが、時系列がちょっとごちゃってます。
完結したら整理したいなと思います。

読んでいただいてありがとうございます。 
60 :十三話 :2018/10/02(火) 01:16



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61 :十三話 :2018/10/02(火) 01:17


「どーぞ。何もないけど、上がって。」


工藤がドアを押さえて、中に入れてくれる。
本当にこちらにはあまり帰っていないらしく、物は少なく綺麗な部屋だ。


「あゆみん、奥の部屋行ってて。ハル、これ片付けてから行くし。」


ワンルームかと思ったらもう一部屋あるらしい。
奥の部屋は、工藤らしい居心地の良さそうな部屋だった。
石田は、部屋の真ん中にあるローテーブルの前に座った。


「玄関入ってすぐって、落ち着かなくてさ。ほとんどこっちの部屋で過ごしてるんだよね。向こうはほぼ物置。」


あちこち見たら悪いかなと思いつつ部屋を眺めていると、両手にコップを持って工藤がやってきた。


「いい部屋だね。」

「どうも。はい、お茶。」


コップ二つをローテーブルに置いて、石田の向かいに工藤は座る。

62 :十三話 :2018/10/02(火) 01:17


「さて。さっきの話の続きだけど、その前に聞いていい?好きな人でもできたか告られたの?」


コップに手を伸ばしたままの姿でガチンっと固まる石田。


「小田?」


じっと石田を見つめてさらに追い討ちをかける。


「な、な、な、なんでそうなんの!?」

「なんでそうならないと思うんだよ。」

「そんなに、私と小田ってそういうふうに見えんの?」


石田は工藤の冷静な返事に、真っ赤になって頭を抱えた。

63 :十三話 :2018/10/02(火) 01:18


「もうさ、好きとかわかんなくて、わけわかんなくなってて。」

「ほー。んで、ハルがどうだったのか参考にしようってこと?」

「うん。どぅーもまーちゃんとずっと一緒にいてたけど、最初から好きとかじゃなかったでしょ?なんで好きって気づいたのかなとか、親友じゃダメだった理由とか改めて聞きたくて。」

「うーん。あゆみんの期待してるようなもんじゃないよ。多分、あゆみんには理解できないと思うよ。それに、ハルがそうだったからって、あゆみんもってわけじゃないでしょ?てかあゆみん、舞台で結構経験してるでしょ?」

「舞台と現実じゃ違うんだよぉ。お願いします。」


へたれた声にすがるような目で見られたら、工藤には冷たくあしらうことなどできない。

64 :十三話 :2018/10/02(火) 01:19


「先に言っておくけど、これはまさも知ってるからね。ハルがまさと付き合うことにしたのは、まさの束縛がしんどくなったからなんだ。」

「は?」


目と口がポカンと開く。


「ハルね、みんなといる時はみんなと仲良くしたいんだ。でも、まさはそうじゃなかった。いつでもどこでもハルを独占したがってた。あゆみんも覚えあるでしょ?」


たしかに、今はそんなことないが佐藤には工藤を独占したがるところが合った。
飯窪がそんな佐藤に注意をしたこともある。
しかし、それがなぜ付き合うことにつながるのか石田にはよくわからない。


「まさにハルの時間をあげるかわりに、みんなといる時はハルを自由にしてってことで付き合うことにしたんだ。」

「……。それは付き合うって言うの?」

「好きなのかどうかって聞かれたら正直まだわからない。でも、ハルにとってまさは大事な人だよ。始まりはこんな理由だったけど。」


穏やかな顔で工藤は続ける。

65 :十三話 :2018/10/02(火) 01:20


「ハルはさ、人に合わせちゃうところがあるじゃん?だから、時々自分を見失いそうになっちゃうんだ。そんなハルをまさはしっかり捕まえていてくれるんだ。」


頬杖をついて 、穏やかなまま石田を見る。
石田には、その姿が自分より大人に見えた。
真っ直ぐ、ちょっと中二病だけどひねくれたところのない可愛い妹と思っていた工藤がこんなことを考えていたとは。


何か言わなければと思うが、何を言ったらいいのかわからない。
ただ、そういう形もあるのだとは心にストンと落ちた。


「こんな形もあるからさ、そんなに悩まなくてもいいんだと思うよ。」

「んー。」

「付き合ってから好きかどうか考えてもいいんじゃない?」

「でもそれってなんか失礼じゃない?」

「言うと思った。でもさ、悩むくらい好きで相手もそれで良いって言うなら甘えてもいいんじゃない?」


工藤の言葉に石田は「でもなぁ」と渋る。


66 :十三話 :2018/10/02(火) 01:20


「なんやかんやと話したけど、その辺りはあゆみんが決めることだからね。こんな考え方もあるんだって聞き流してもいいよ。」


工藤は、考え込んでいる石田に声をかける。


「うん。どぅー、ありがとう。まだ直接言われたわけでもないから、それまで考えてみるよ。」

「え!?言われたんじゃないの!?」

「うん。はるなんと小田が喋ってんの聞いちゃって。」


それを聞いた工藤は「なにやってんだよ。」と頭に手をやる。


「あー、うん。あんまり悩み過ぎないようにね。」


苦笑いする工藤は、なんだか昔の工藤だった。

67 :十三話 :2018/10/02(火) 01:21


そのままいつもの空気になった。
あのあと、二人でゲラゲラ笑っているところに佐藤が帰ってきたり、どうせならと飯窪を呼び出したり色々とあった。

いつものような騒がしさの中で、工藤と話せて良かったなと思う石田だった。



68 :十三話 :2018/10/02(火) 01:22


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                            十三話 終

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69 :十四話 :2018/10/07(日) 21:39


収録前の楽屋。
集合時間にはまだまだ時間がある為、それぞれが好きなことをしている。
そんな楽屋の片隅で、石田はスケジュール帳を前に考え込んでいた。


「この日は仕事とかぶってるしなぁ。…」


ぶつぶつ言いながら真剣に考えている。
他のグループの公演や舞台のチケットを前もって申し込みするために頭を悩ましているのだ。
フッと石田の手もとに影が落ちた。


「石田さん、ここの時間が空いてるならこの日に行きません?」


小田が、スケジュール帳を覗き込んでいた。

70 :十四話 :2018/10/07(日) 21:39



「でも、撮影場所が離れてるから間に合うか微妙なんだよ。」

「ここ、意外と近いんで間に合いますよ。小田と一緒に行きましょう。」

「えー、小田と一緒かぁ。」

「可愛い可愛いちぃちゃんもいますよ!だから、一緒に行きましょう!」

「ふっ。なんでそんな必死なの。しょうがないなぁ、一緒に行くか。」


なぜか必死に誘う小田に笑ってしまう。
石田は誘われた日の他にも何点か申込書に書き込んで、ボールペンを机に置いた。


「よし!じゃあこれスタッフさんに出してくるわ!ありがとう、小田。」

71 :十四話 :2018/10/07(日) 21:40


申込書を出しに楽屋を出ようとしたところで、入ってこようとしていた譜久村とぶつかりそうになった。


「わわっ!すみません、譜久村さん!大丈夫ですか!?」

「いや、こっちこそごめんね。あゆみちゃんも大丈夫?」

「あたしは大丈夫ですよ!丈夫なのが取り柄ですし!」


譜久村は、元気に答える石田の頭をついつい撫でてしまう。
石田は、「なんですか〜」と言いながら嬉しそうにしている。


「あれ?あゆみちゃん、それ…」

「あぁ!すみません、これ早く出さないといけないんで行ってきます!」


石田は、指摘されて慌ててスタッフを探しに行った。
残された譜久村が複雑な表情をしたことにも気づかずに。

72 :十四話 :2018/10/07(日) 21:40






73 :十四話 :2018/10/07(日) 21:41


「遅くなってすみません。チケットの申し込み、これでお願いします。」

「はい。じゃあ、これで調整しておきます。」

「では、失礼します。」

「あ、石田ちょっと待って。」


無事に申込書を渡せたので、楽屋に戻ろうとすると引き止められた。


「石田、したいことあるか?そろそろ、考えておけよ。」

「え?」

「時間なんて、あっという間だな。もう、そういう年齢になるなんてな。どういう形になるかはまだわからないが、考えておいてくれ。」

「……わかりました。」

74 :十四話 :2018/10/07(日) 21:42



まことしやかに囁かれる定年説。
年下の先輩、年下の同期に後輩。
もうすぐ半分になる同期。
自分もそろそろなのかなとは思っていた。


舞台が面白いと思ったから、色々な舞台を見に行った。
好きなダンスを続けるなら、どうしたらいいのか先輩に聞いたりもした。

でも、娘。より大切なことも、したいと思うこともなかった。





あたまがぐるぐるしている中でふと浮かんだのは、なぜか小田の顔だった。




75 :十四話 :2018/10/07(日) 21:42


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                            十四話 終

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