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オーバー

1 :名無飼育さん :2014/09/06(土) 14:44
気が向いたときに色々と。
ジュースが多めになるかもしれません。
2 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:46
 
 
夏休みも残すところはあと一ヶ月。
大学の図書館は、試験シーズンとは打って変わって空いている。

書棚の間を縫うようにして歩いてもすれ違う人はなく、
遠慮せずに立ち止まっては本を抜き出し、ぱらりとめくる。

水曜日の晴れた午後。
ほどよく冷房の効いた館内を周回するのが、宮崎由加の習慣だった。

学生の本分は勉学だ。
だから、受ける講義がわかっているなら予習をする。
それに専攻とは接点がなさそうな分野でも、惹かれるものには触れてみたかった。
3 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:46
図書館の中でも、お気に入りの棚がある。
自然科学の本がぎっしりと詰められたその棚には、先客がいた。

『先客』はしゃがみ込んで背表紙の列を睨んでいたが、
近づいてくる気配を察したのか、顔を上げる。
その拍子に艶のある黒髪が揺れて、まぶしいな、と由加は思った。

「せんせー、なにしてんの?」

立ち上がりながら、金澤朋子は茶目っ気まじりに笑う。
それはまるで悪戯をたくらむ子どものようでいて、やけに大人びても見えた。

「もう。先生じゃないって言ってるでしょ?」
「はは、ごめんごめん」

まったく申し訳なさそうでもない上に、もはや背表紙にはなんの未練もなさそうだった。
不真面目な学生が夏休み真っ盛りの図書館に、なにをしに来ているというのだろう。
4 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:48
先生、とふざけて呼ばれるのにはもちろん理由がある。
同じ大学受験予備校に、由加はアルバイトとして、朋子は生徒として通っていた。

一年経って、その関係は大学の先輩後輩というものに移り変わり、
今ではこうやって軽口をたたき合える仲になっている。

朋子にはかまわずに、由加は緑色の背表紙をした本を棚から抜き取る。
目次をなぞった後でぱらぱらと目的のページを探していると、隣から声がした。

「ちょっと旅行にでも行きません?」
「どこに?」
「えーっとね、ハワイ」
「無理」

ページからは目を逸らさずに由加が答えると、「そんなあ」と朋子はおおげさに
なげいてみせる。

大学生の長期休みに旅行はつきものだ。
とはいえ、無計画なままに海外に行こうだなんていうのは絵空事にしか思えない。
5 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:48
小声で話していたつもりが、本の整理に来た職員に睨まれた。
由加は、ため息をついて本を閉じる。

そのまま出口へと歩いて行くと、慌てたように朋子もあとをついてきた。
一歩外に出ると焼き付けるような日差しにさらされ、由加はたまらず目を細める。

蝉が鳴いていた。
そのうるさい音にかぶせるようにして、朋子が言う。

「それじゃあさ」

もったいぶるような声に由加が振り向くと、
朋子は名案を思いついた、とでも言いたげな顔をしていた。

「一緒に花火しようよ」
6 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:49
 
 
 
 
「……最初っから、花火したかっただけでしょ?」
「へへ、ばれてた?」

夕暮れ時の広い公園には人はまばらだった。
水飲み場で、照れ笑いをしながら朋子がバケツに水を張る。

由加は花火の包装を取り、ろうそくを用意する。
ふと目に入った看板は、園内でのボール遊び禁止、騒ぐの禁止、等々、
あらゆるものを禁止していた。
バケツを地面に下ろしながら、朋子はつぶやく。

「今どきなんでも禁止だよね。つまんないの」

いったい公園でなにをすればいいのか、というほどの注意書きだった。
書かれてはいないが、きっと花火も禁止なのだろうなと由加は思う。
7 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:50
「怒られるかな」
「静かにすればへーきへーき」

あっけらかんと言って、朋子は100円ライターでろうそくに火をつける。
少し風があるせいでうまくいかず、何度目かのチャレンジで成功した。

準備が整ったところで、ふたりはそれぞれ花火を手に取る。
朋子が先にろうそくから炎をもらい、その花火の先端から、
由加は火を分けてもらう。

ぱちぱちと炎を吹き、手持ち花火は燃えていく。煙が立ち、少しむせた。
立っているのに疲れたのか、朋子はしゃがみ込んで地面を照らしだす。
8 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:50
すっかりあたりは暗くなった。
わずかな街灯と、ふたりの手元だけが煌々としている。
右手で花火を揺らしながら、由加はつぶやくように訊いた。

「なんで、誘ってくれたの?」

一度大きなお願いを断ったあとで小さなお願いをされると、断りにくくなる。
その手口は心理学なのか、それとも生活の知恵なのか。

うーん、と首をひねってから、朋子は言った。

「友達少ないからさ。気軽に誘えるのゆかちゃんくらいしかいなくて」
「他の子はみんなつかまらなかったんだ?」
「そういうんじゃないよ」

苦笑して、地面を焼くのにも飽きたのか朋子は立ち上がる。
ふたりして燃え尽きた花火をバケツに放り込むと、じゅっと火種が尽きる音がした。
9 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:51
花火も残り少なくなり、最後になにをしようかと悩むまでもなかった。

「線香花火」

朋子はそう言って、束ねられたそれを手に取る。
一本ずつにばらす手つきと横顔は、真剣そのものだった。

消えていたろうそくをつけなおす。
ふたりで並んでしゃがみ込み、花火をはじめる前に朋子が言った。

「負けた方が勝った方のお願いをなんでもひとつ聞く、ってどう?」

早く落ちた方が負けね、と朋子はつけたす。
由加がうなずくと、ろうそくの火が揺れて朋子の楽しげな顔を照らした。
10 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:52
「じゃ、ゆかちゃんの好きな人おしえてもらおーっと」
「そんなの言うわけないじゃん」
「あ、いることはいるんだ?」
「…………」

由加がだまりこむと、悪戯が成功した子どものように朋子は笑む。
静かにしていたおかげか注意しに来る人もなく、公園にはふたりきりだった。

せーの、と朋子の声を合図に、ろうそくから線香花火へと火をうつす。
ぱちぱちと爆ぜる炎の玉は、今にも落ちてしまいそうだった。

「……ゆかが勝ったらともの好きな人おしえてもらうからね」
「いいですよ?」

風で消えてしまわないように、手をかざす。
じりじりと火は根元に近づくけれど、どちらが勝つかはまだわからなかった。
11 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:52
 
 
12 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:53
 
13 :せんこう花火 :2014/09/06(土) 14:53
 
14 :名無飼育さん :2014/09/08(月) 00:10
ゆかにゃんとうえむーがお互いの腕を甘噛みしているらしいので
(20140907 生タマゴ名古屋公演情報)
それ前提の、ゆかにゃんとかなともさん。
15 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:11
 
 
ドライヤーで髪を乾かしていると、隣のベッドに座った朋子の口が動いた気がした。
けど、風のやかましさのせいで、なにを言ったのかは聞き取れない。

ん? と首を傾げて見せても二度言ってはくれないから、
仕方なく私はドライヤーのスイッチを切った。

「なにか言った?」

朋子は頷き、私は指先でコードをいじる。
洗面所で乾かせばいいのに、うるさかったかな、と心配になった。

けど、私の心配は杞憂だったみたいだ。
由加ちゃんさ、と朋子は前置きのように言ってから、続ける。

「なんで噛むの?」

……なんで噛むの、とは。

ご飯を食べるときは、もちろん噛む。
けど、朋子が言いたいのはそんなことではないらしい。
腕組みした朋子に、不思議そうに首を傾げられる。
16 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:12
「うえむーのこと、噛むじゃん」
「うん。ときどきね」
「なんでなのかなあ、って思って」

……なんでなのかなあ、とは。

あーりーはときどき私の二の腕を噛んでくる。
初めはもちろん驚いたけど、次第に慣れた。
もともとが規格外の、なにをしだすかわからない子だから。

「噛まれるから、やり返してるだけ」

あれがあの子の愛情表現らしい、と気付いたから。
だから同じように愛情表現をしてあげている、としか言えない。
17 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:12
「噛まれたら、噛むの?」
「うーん。そういうことになるのかな?」

噛んでくるのなんてあーりーしかいないから、噛まれたら噛むか、
という質問に答えるのは難しかった。

「そっち行ってもいい?」
「え、いいけど」

唐突な問いかけに答えると、朋子が私のベッドに移ってきて、対面するように座る。
なにか大事な話でもあるのだろうかと思って、
私は手に持ったままだったドライヤーを置いた。
朋子がやけに真面目な顔をするから、私まで緊張してくる。
18 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:12
「じゃ、うちが由加ちゃんを噛んだらさ。噛んでくれる?」
「へ?」

思わぬ言葉に、素っ頓狂な声が出てしまった。
冗談で言っているふうでもなく、いかにも朋子は真剣だ。

「……噛まれたいの?」
「興味はある」

好奇心旺盛だなあ、なんて感心している場合ではない。
朋子は半袖のTシャツの袖を捲って、二の腕をあらわにする。

どうやら本気で噛まれたがっているみたいだ。
あーりーを噛むのは、ただやり返しているだけという理由でも済むけど、
噛んでくれと言われてするのは、しかも朋子にするのは、ちょっと抵抗がある。
19 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:13
「……頼まれるとやりにくいなあ」

私が渋ると、朋子は腕を前に突き出す。
ほら、と顎でしゃくられて、さらに私はひるんだ。

「ほんとに噛まれたいの?」
「うん」

断ってもいい。いや、断るべきだ。
こんなことは、いい大人がするものじゃあ、ない。

私の決断を、朋子は待ってくれている。
冗談だよ、と言ってくれるのを待ったけど、言ってはくれないみたいだ。

ふう、とため息をひとつ漏らす。
気は進まないけど、叶えられるお願いごとなら、叶えてあげてもいいだろう。
20 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:14
「……ちゃんと後で洗ってね?」

頷いた朋子の腕を取る。
あーりーと同じくらいにさらさらした肌を、指先で感じた。

じっと視線を注がれていると、やりにくいことこの上ない。
私からは朋子を見ないようにして、二の腕に顔を近づける。

暑くもないのに汗がにじむ。
朋子の腕を噛むなんて、とんでもなく非日常なのだから当たり前だと思った。

一度恥ずかしさを自覚すると、どんどん増してくる。
それには気付かなかったふりをして、目を閉じてそっと甘噛みした。

歯を当てるくらいのことだから、痕がついたりすることはない。
触れたときと同じくらいそっと口を離し、ふうと再び息をつく。
21 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:15
「……噛んだよ。満足?」
「うん、ありがと。じゃあ今度はうちの番ね」
「えっ! き、聞いてないよ!」
「今初めて言ったからね」

予想外の言葉に思わず後ずさると、壁際に追い詰められる。
真面目だった顔はどこへいったのか、朋子は含みのある笑みを浮かべた。

両腕を両手でつかまれて、壁に押しつけられる。
それだけで身動きできなくなり、あがいても無駄だと悟った。

今からされることを思って私は顔をそらし、ぎゅっと目を閉じる。
見えなくても朋子が近づいてくるのがわかり、息づかいを感じた。

二の腕を、噛まれる。
その感触が優しくてくすぐったくて、思わず身を捩ってしまう。
22 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:19
そっと腕を解放されて目を開けると、目の前の朋子は不満そうに唸った。

「……これ、なにが楽しいの?」
「し、知らないよ!」

後ずさろうとしたら壁に背中がぶつかった。
逃げようとした私を察したのか、苦笑いをして朋子から距離を取ってくれる。
自分のベッドに帰るのかと思ったら、ふと思いついたかのように朋子は言った。

「あ、これMCとかで言わないでね」

ふたりの秘密ね、と付け加えて、朋子は目を細める。
こくりと私は頷いて、噛まれた二の腕をさすった。

……いい大人が互いに腕を噛み合っているなんて、誰にも言えるわけがない。

だから誰かに言う代わりに、ため息をついて朋子を睨んだ。
23 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:19
 
24 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:19
 
25 :甘噛み :2014/09/08(月) 00:19
 
26 :名無飼育さん :2014/11/20(木) 00:46
ムズムズ・・・
イチャコラの一歩手前感がたまりません
27 :名無飼育さん :2015/04/16(木) 19:30
良いねー(*´∀`)

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