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恋人一年生

1 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:38
bluff内「奇妙なあいつ」の続編です。
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/mirage/1133879814/752

一部、登場人物の性別が変わっています。
苦手な方はスルーして下さい。
2 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:39

下町の定食屋にハスキーな少年の声が響き渡る。

「3番テーブル、キスエグ二丁!」
「ハル、1番拭いたらこれ運んで!」

彼、工藤遥は中学2年生。
ここは彼の自宅であり、遥が店の手伝いをしているのには大きな理由がある。

「それ終わったら、次は出前ね」
「ったく、人使い荒…」
「はあ?なんか言った?お小遣い抜きでもいいんだよ」
「…わーったよ!」

中学生の遥は外でバイトは出来ない。
だからこうして冬休み中に家の手伝いをして、小遣いを稼いでいるのだ。
年明けに纏まったお金を手に入れるために。


3 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:40

遥が二つ年上の彼女・石田亜佑美と付き合い始めてから2ヶ月が経った。
その間、二人の仲は特に進展していない。
恋人たちのメインイベントであるクリスマスも、亜佑美が仙台の実家に帰って
しまったため、一緒に過ごせなかった。
年末年始はそのまま仙台にいるので、今はプチ遠距離恋愛状態だ。

遥としてはそろそろ次のステップに進みたい。
メールや電話だけでなく、もっと恋人らしいこともしてみたい。
1月7日の彼女の誕生日はその絶好のチャンスなのだ。
生まれて初めての好きな子の誕生日は自分で稼いだお金で祝いたい。

プレゼントを渡したときの彼女の笑顔を想像してみる。
それだけで胸が高鳴る。
そして、願わくば触れるだけでなく抱きしめたい。
抱きしめるだけでなく、もっともっと、その先も。
今まで女の子に対してそんな想いを抱いたことがなかったのに、亜佑美のことを
考えるとどうしようもなく心も体もざわつく。


4 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:40

「えーっと、この辺だよな。生田、生田…と」

配達先の家を探していると、ある家の前にポツンと立ち尽くしている女の子の姿を
見かけた。
大きな荷物を抱え、何やら家の中を伺っている。
見るからに怪しい。

関わらないように見ないふりをしようとした遥だが、その子の前にある表札を確認
して思わずため息をついた。
表札には『生田』の文字。
まさに遥の目的地だ。
どうも自分はこういう怪しい人と縁があるらしい。
亜佑美との出会いはもちろん遥にとって幸運だったけれど。

「あの、出前なんすけど」
「え?あ、ご、ごめんなさいっ」

女の子は慌てて後ずさりをした。
遥と同じ年くらいだろうか。
長い黒髪で切れ長の目が印象的な少女だった。


5 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:40

インターフォンを押すと、間の抜けた返事と共に中から少年が現れた。
茶髪に豹柄のジャージを身にまとった、見るからにチャラいタイプだ。

「出前ってあんたがしとうと?中坊やろ?」

「はあ?まあ、そうっすけど」

初対面の相手にいきなりわけのわからないタメ口をききれ、遥はやや切れ気味に
答える。

「家の手伝い?」
「まあ」
「へー、偉いやん!」

少年はニッと笑う。
人懐っこい笑顔で、
服装さえまともならばなかなかのイケメンだ。

「あの、お金…」
「俺、生田衣梨奈、高1。おまえは?」
「工藤遥。中2っすけど、それより金…」
「中2かあ。どこの中学…って、り、里保!?」

遥の言うことをことごとくスルーした少年が突然叫び出す。
遥が振り向くと、後ろにはさっきの怪しい女の子が立っている。

「里保、会いに来てくれたと!?」
「…べ、別に、えりぽんに会いに来たわけじゃっ!」

里保と呼ばれた女の子はなぜか突然走り去った。

「ちょっと待って、里保!!!」

衣梨奈も慌てて追いかける。

「ちょっ、金!」

その場に残された遥も二人の後を追うしかなかった。


6 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:41

辿り着いたのは遥が亜佑美に告白した公園だった。
そこには、ベンチで項垂れる衣梨奈がいた。
里保の姿は見当たらない。

「昔から逃げ足だけは速かったっちゃん」

あまりの衣梨奈の落ち込み様に、遥はお金のことは言い出せず隣に静かに座った。

「あいつ、幼馴染なんやけどさ」

衣梨奈はポツリポツリと里保とのことを話し出した。

逃げた女の子・鞘師里保は衣梨奈の一つ年下の中学3年生。
小さい頃からずっと一緒だった二人だが、昨年衣梨奈たち一家が引っ越すことに
なり、離れ離れになってしまった。
引っ越し前に衣梨奈は里保に告白をしたが、彼女は全く信じてくれなかったそうだ。

「なんで信じてもらえなかったんすか?」
「里保が言うには、えりぽんは誰にでも好きって言うからって」
「はあ…」
「結構マジだったんだけどなあ」
「でも、今日はわざわざ会いに来てくれたんじゃないんすか?」
「里保、こっちの高校に推薦入学が決まってて、今日は下見で親戚の家に泊まるって。
 別に俺に会いに来たわけじゃないって、はっきり言ってたし」


7 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:41

再び衣梨奈がうつむいた瞬間、彼の携帯がけたたましく鳴り響いた。

「もしもし?あー、聖。なん?俺、今、めっちゃ落ちてるんだけど…。え?明日?
 あー、いいっちゃけど。うん、わかった。じゃ、10時に。…はあ」

電話の相手は女の子らしい。

「彼女っすか?」
「は?違うと!俺、里保以外の女とは付き合わん!」
「じゃあ、友達?」
「うん、バイト仲間。明日、映画付き合ってって」
「…二人で?」
「そうやけど?」

遥は軽くため息をついた。
どうやら衣梨奈にとって女の子と二人きりで映画に行くという行為は、大して特別な
意味を持っていないようだ。
しかし、遥にしてみればそれは特別な相手だし、恐らく里保にとってもそうなのだろう。

「どうしたら信じてくれるんかなあ」
「とりあえず、女と二人で出かけるの、止めたらどうっすか?」
「え?なんで?それ関係あると?」
「だって、好きな相手が他の奴と一緒だったら、なんか嫌じゃないっすか」
「だって友達やし」

やっぱり全くわかっていない。


8 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:41

「さっきの子、鞘師さん、でしたっけ?あの子のこと、女として好きなんすよね?」
「もちろん、好きっちゃん!」
「じゃあ、電話の相手の子は?」
「友達として好きっちゃん!」

両者の『好き』に大きな違いは感じられない。
これでは、里保が信じられないのも無理がない。

「なあ、どうすればいいと思う?」
「うーん、ひとまず…」
「ひとまず?」
「金、払ってもらっていいっすか?」

しかし、その後結局、衣梨奈に捕まり、数時間に渡り里保に対する熱い思いを
聞かされた。
店に戻った遥は当然の如くこっぴどく叱られ、散々な一日だった。


9 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:41

翌日。
遥はお皿を回収するために、再び生田家を訪れた。
昨日の話通り、衣梨奈は映画に行っていて不在で、遥はホッと胸を撫で下ろす。
今日はすぐに帰れそうだ。

帰り道、例の公園の前を通ったとき、遥はベンチに座り込んでいる女の子を発見
した。
ものすごく嫌な予感がする中、よく目をこらして見てみると、それは昨日の少女、
衣梨奈の幼馴染であり片思いの相手・里保だった。
なんだか思いつめた表情をしている。

遥は思わず頭を抱えた。
昨日の今日だし、さすがにちゃんと帰らないとどんな仕打ちが待っているかわからない。
そもそも大して知りもしない相手だし、リスクを冒してまでも声をかける義理はない。
このまま素通りしても何の問題もない。

ないはずなのだが、どうしてもその場を動けずにいた。
衣梨奈から聞かされた里保への思い、目の前にいる俯いている里保の姿。
よりにもよって、亜佑美との思い出深いこの公園での出来事に、数か月前の自分
たちの姿が重なる。
好きな人に気持ちを伝えることのせつなさ、苦しさ。
それはきっと衣梨奈も同じだろう。
それなのに、信じてもらえなかったとしたら、それはとても辛いに違いない。


10 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:42

そんなことを考えているうちに、気付けば遥は里保の前に立っていた。

「あ、昨日の…」
「どうも。隣、いいっすか?」
「え?あ…」

里保の返事を待たず強引に隣に座ったものの、全くのノープランだ。
これではまるで、あの佐藤優樹のようだ。
自分らしくないなと苦笑しつつ、隣の里保の様子を伺う。
かなり警戒しているようだ。
人懐っこい衣梨奈とは正反対のタイプで、これでは誤解されてしまうのも無理
はないと感じた。

「あの…」
「あ、俺、工藤遥、中2っす」
「…えりぽんの、友達?」
「あ、いや、友達ってわけじゃないっすけど」

里保はまだ不審そうに遥を見て、そして再び下を向いた。
小動物みたいでなんだかかわいい。

『里保は自分のかわいさに気付いとらん!』

昨日、衣梨奈が力説していたことを思い出す。


11 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:42

「あの、なんで生田さんのこと、信じてあげないんすか?」
「え?」
「いや、俺なんかが聞くことじゃないと思いますけど。でも、昨日、すごく落ち
 込んでたんで」
「えりぽんが?」
「はい」

里保の表情は硬く、何を考えているのかわからない。

「でも、今日はきっと女の子と出かけてるんでしょ?」
「え?なんで知って…」
「えりぽんは昔からそうだから。落ち込んだ日は外で遊ぶ。相手は大抵女の子。
 誰にでも好きって言う。言葉が軽い。格好はチャラい。ああ見えて頭はまあ
 まあいいけど。運動神経は抜群でゴルフが得意だったり、ハンドスプリングとか
 出来ちゃったり、足も速いけど。顔は悪くないし、黙ってればイケメンだと思う
 けど。意外と思いやりもあるし、子供にもおじいちゃんおばあちゃんにも動物にも
 優しいし、学校一の人気者だけど…って聞いてる?」
「てか、鞘師さん、普通に生田さんのこと好きなんじゃないすか」

遥の指摘に里保は顔を真っ赤にして反論する。

「だ、誰があんな浮かれ男…」
「素直じゃないなあ」
「好きなんかじゃない。好きなんかじゃ…」
「あのね、鞘師さん。俺、昨日初めて生田さんに会ったんすよ。しかも、キスエグ
 定食の配達で。そんな俺に対して、あの人、何時間もずっと鞘師さんのどこが好き
 かって語ってました。まあ、おかげで俺は母ちゃんにすっげー叱られたんすけど」
「え、えりぽんが…。なんて言ってた?」
「それは直接本人に聞いた方がいいんじゃないすか?あの人、軽いかもしれないけど、
 きっと本気だと思いますよ」


12 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:42

長い沈黙が続く。
衣梨奈も里保もきっと思いは同じだ。
素直過ぎて伝わらない衣梨奈と、素直になれない里保。
もし、誰かの少しの後押しで上手くいくのであれば、なんとかしてあげたいと思う。
優樹と春菜が背中を押してくれたように。

遥は里保には気付かれないように、そっと携帯を手に取った。
中には昨日、無理やり衣梨奈に教えられたアドレスが入っている。

―――――気付いてくれよ。

遥は願いを込めてメールを送った。


13 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:42

数十分の沈黙のあと、里保が静かに口を開いた。

「えりぽんのこと、信じてないわけじゃない」
「え?」
「嘘がつけるような人じゃないってわかってる。わかってるけど…」

里保はギュッと自分のコートの裾を掴む。
その手はとても小さくて、彼女の心細さが伝わってくる。

「けど?」
「怖い…んだと思う」
「怖いって、生田さんのことが?」

遥の問いに里保は黙って首を振った。

「…えりぽんがどっか行っちゃうのが。えりぽんすごくモテるから、きっと周り
 にはかわいい子たくさんいるだろうし。ウチなんてかわいくもないし暗いし、
 一緒にいても面白くないんじゃないかって。どうせ離れていくなら、最初から
 そばにいない方がいい」
「鞘師さん、かわいいっすよ?」
「え?」
「いや、普通に。もっと自信持った方がいいっすよ」
「え、あ、そ、そうかな?」

里保の顔がみるみるうちに真っ赤になる。
素直にかわいいと思うと同時に、思いを告げた瞬間の亜佑美の赤い顔が重なる。
無性に彼女に会いたくなった。


14 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:43

「里保!」

静かな公園に大きな声が響き渡る。
その場の空気を一気に変えてしまうような独特なオーラ。
衣梨奈が猛ダッシュでベンチに向かって走ってくる。

「え、えりぽん?」
「ま、間に合ったあ…」
「遅いっすよ、生田さん」
「わりー、どぅ。メール、サンキュ」
「な、なんで?今日、遊びに行ってたんじゃ…」

汗だくの衣梨奈はすっと息を整えて里保に向き合う。

「里保がここにいるって聞いて、飛んで来た」
「飛んで来たって…」
「俺、魔法が使えるけんね。里保が呼んでたらすぐ来るし」
「よ、呼んでないし!魔法って…バカみたい」

里保の憎まれ口にも衣梨奈は表情一つ変えない。
これが二人のいつもの会話なのだろう。


15 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:43

「いっつもそうやって調子のいいことばっかり言って、えりぽんの言うこと
 なんか信じらんない」
「うん、魔法を使えるっていうのは嘘。やけど、里保が呼んだらすぐ来るのは
 本当っちゃん」
「…どこにいても?」
「もちろん、どこにいても」
「…ウチが家に帰っても?」
「余裕。まあ、ちょっと時間はかかるかも知れんけど」
「…他の女の子と一緒にいても?」
「うん」

ベンチに座る里保の前に、衣梨奈はそっと跪く。
コートの裾を掴む小さな彼女の手を取り、にっこりと微笑む。
まるで舞台の一場面のようにキザな行為だが、衣梨奈がやると様になるから
不思議だ。
里保はさっきよりもさらに赤い顔で恐る恐る衣梨奈の顔を見た。

「一番大切なのは里保やけん」
「…バッカみたい」

優しく微笑む衣梨奈とそんな彼を見つめる里保。
遥の目にはとてもお似合いの二人に見えた。

「じゃ、俺、帰りますね」
「おー、どぅ、ありがとね!」
「…ありがと」

遥に向けられた里保の顔はとても穏やかで優しかった。
衣梨奈は嘘だと言っていたけど、一瞬で里保を笑顔に出来る彼はある意味魔法
使いだと遥は思った。


16 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:43

その夜もまた母親から叱られた遥だが、なんだかとても晴れ晴れとした気分
だった。
大量の皿洗いと掃除から解放され、部屋に戻り携帯を見る。
いつも通り、亜佑美からメッセージが入っている。
今日あったことが書かれているだけだが、たったそれだけのことがすごく嬉しい。

遥もこの二日間のことを伝えようと画面を押したが、ふと思い直してベッドに
腰を掛けた。
衣梨奈と里保に刺激されたのか、無性に亜佑美の声が聞きたい。

「もしもし?どうしたの、なんかあった?」

亜佑美はワンコールで出てくれた。
思いが通じていたようで胸が熱くなった。

「あー、いや、なんでもないんだけど、なんかさ」
「ん?」
「なんか、電話、したくなって」
「ツ…、どうしたの?くどぅーがそんなこと言うなんて、珍しいじゃん。もしかして、
 寂しくなっちゃった?」

亜佑美が茶化すように問いかける。


17 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:43

「…うん」
「え?」
「すっげー、会いたい」
「…なんか、今日のくどぅー、すっごい素直」
「ダメ?」
「ううん。すごく嬉しい」

亜佑美の言葉にますます会いたい気持ちが募る。
離れていることがこんなに辛いなんて思わなかった。
亜佑美といると今まで知らなかった自分に気付かされる。
その戸惑いや違和感がなぜかとても心地よい。

「私も、早く会いたい」

亜佑美の寂しそうな声が遥の心を揺さぶる。
もしも、自分が魔法使いだったら、今すぐ亜佑美の元へ飛んで行って抱きしめたい。
そんなこと、恥ずかしくて口にすら出来ないけど。

明日も朝から店の手伝いが待っている。
亜佑美の笑顔を思い浮かべながら、遥は静かに眠りについた。

18 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 01:44
本日は以上です。
19 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 23:26
作者さんのだーどぅー大好きでした!
また書いてくれて嬉しいです
惹かれあってるピンポンダッシュが目に浮かぶようだw
20 :名無飼育さん :2014/01/04(土) 23:27
すみません、あげてしまいましたorz
ごめんなさい
21 :名無飼育さん :2014/01/05(日) 02:16
物語がつづくのですね!ありがとうございます><
登場人物も増えたし…楽しみにしています。
22 :名無飼育さん :2014/01/19(日) 19:44
前スレに引き続き期待してます。
大人の階段登る二人の今後が楽しみです。
23 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:39
レスありがとうございます。

>>19
生田さんも鞘師さんも書くのが楽しいです。
二人の今後がどうなるのか、自分でもわかりませんがw

>>21
まったりペースですが、もう少し物語は続く予定です。
最後まで楽しんで頂ければ幸いです。

>>22
タイトル通り、“恋人一年生”の二人の今後を描いていければと思っています。
期待に応えられるよう頑張ります。

だいぶ過ぎてしまいましたが、石田さん誕生日のお話です。
24 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:40

新年最初の日曜日。
定食屋は定休日のため、遥にとっては久々の休みだ。

そこそこの金額は貯まったが、まだ亜佑美へのプレゼントを何にするかは決めて
いない。
彼女の誕生日である1月7日に二人で過ごす約束はしている。
ちょうど二人とも冬休み最終日なので、一日中一緒にいれる。
考えてみれば、まともなデートは初めてかもしれない。
遥なりにプランは立てている。
あとはプレゼントだけなのだ。

昨夜もずっと悩んでいたため、夜中まで眠れなかった。
だから今、遥は熟睡中である。

「ハルー!」

階下から母の声が聞こえるが、遥はびくともしない。
数秒後、ドタバタと階段をかけ上がる音が聞こえ、ドアが乱暴に開き、遥の上に
何者かが乗っかってきた。

「ぐ、ぐえ」

さすがにこの状況で起きない人間はいない。

「…んだよ、誰だよ、…って、い、生田さん?」
「よ!」

寝ぼけた遥の目に映ったのは衣梨奈だった。

25 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:40

「で、何の用っすか?まだ7時なんすけど…」
「こないだのお礼に来たっちゃん」

悪びれもせず笑顔を見せる衣梨奈に、遥は大きなため息をついた。
彼と会うのはまだ二回目だ。
なぜ遥の家を知っているのか、なぜこんな早朝なのか、いろいろな疑問はあるが、
とりあえず今は一刻も早く眠りたい。
遥は素直に衣梨奈の話の流れに乗っかることにした。

「こないだって、鞘師さんのことっすか?」
「そうそう」
「上手くいったんすか?」
「とりあえず、信じてはもらえたと。まあ、里保の気持ちはわからんけど、
 スタートラインには立てたみたいやね」
「そうっすか。良かったっすね」

あの日の里保の言葉を思い出すと、素直に嬉しい。
しかし、今はそれどころではないのだ。

「お礼なんていいんで、早く帰って下さい。俺、久々の休みで、まだ眠…」
「やけん、今日は一日どぅに付き合ってやると」

相変わらず、人の話を全く聞かない人だ。
そもそも衣梨奈に付き合ってもらっても嬉しくもなんともない。

26 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:40

「申し訳ないんすけど、遠慮し…」
「なんか欲しいもんとか、食いたいもんとかないと?」
「ないっす。それに俺、今日は大事な用事が…」
「大事な用事ってなん?デート?」
「違いますけど。まあ、似たようなもんというか…。買いに行くんすよ、彼女の
 誕生日プレゼントを」

その瞬間、衣梨奈の顔がわかりやすくパーっと輝いた。
遥は瞬時に話したことを後悔したが、もう遅かった。

「ちょうどいいっちゃん!俺が手伝ってやる!」
「いや、いいっす!」
「遠慮すんなって、お礼やけん」
「いや、遠慮とかじゃなくて…」

かなり独特の衣梨奈のセンスに任せたら、どんなプレゼントになるのか想像
するだけで恐ろしい。

「こんな時間に店空いてないし、生田さんだって女子高生の欲しいもんなんて
 わからないじゃないっすか」

遥の主張は華麗にスルーされ、衣梨奈は誰かに電話をかけ始める。

「あ、聖?今日、暇?ちょっと買い物付き合って。うん、じゃあ、11時に駅で」

電話の相手は、どうやらこの前一緒に映画へ行ったバイト仲間のようだ。

「聖はセンスいいし、きっといいもん見つかるとよ」
「はあ…」

どうやら、もう逃れようがないらしい。
しかし、女の子にアドバイスを貰えるのは心強い。
11時に待ち合わせならば、もう少し寝ることも出来るだろう。
再びベッドに潜り込んだ遥の掛け布団を衣梨奈が剥ぎ取る。

「ちょ!何するんすか!」
「何って、出かけるっちゃん。用意せんと」
「だって、駅に11時って…」
「あれは聖とやけん。俺らはこれからカラオケ」
「俺、眠…」
「今からならたっぷり3時間コースっちゃね」

結局、それから3時間たっぷり衣梨奈に付き合わされ、駅に着く頃には遥は心身
共に疲れきっていた。

27 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:40

二人が駅に着くと、衣梨奈のバイト仲間である譜久村聖は静かにそこに立っていた。
静かにという表現がぴったりの上品な佇まいだ。
衣梨奈の話では亜佑美と同じ高校2年生とのことだが、とても同じ年には見えない。

「君がどぅ?よろしくね」
「あ、ど、どうも」

聖に優しく微笑まれ、遥は真っ赤な顔で返事した。

「じゃあ、聖、よろしくね」
「よろしくねって生田さん、どこ行くんすか?」
「え?だって俺が行っても意味ないっちゃろ?ゲーセンで遊んでくる。じゃ!」
「は?ちょっと!」

引き止める間もなく、衣梨奈の姿はみるみるうちに遠ざかっていく。

「もう、いっつも勝手なんだから、えりぽんは」
「…なんか、すいません」
「ん?どぅのせいじゃないよ」

その言葉と笑顔だけで優しい人だとわかるような、聖はそんな雰囲気の持ち主
だった。

「じゃあ、行こっか?」
「あ、じゃあ、お願いします」

聖の笑顔に遥は素直に頷いた。


28 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:41

その後、二人は何軒もお店を回った。
聖は決して急かさず、嫌な顔の一つも見せず、じっくりと買い物に付き合って
くれた。
そのおかげで、納得のいくプレゼントを買うことが出来た。

「今日はどうもありがとうございました」
「ううん。聖も選ぶの楽しかったし。喜んでくれるといいね、亜佑美ちゃん」
「はい」

遥の脳裏に亜佑美の笑顔が浮かぶ。
彼女はきっと、どんなプレゼントでも喜んでくれるだろう。
だけど、どうせならば本当に心から喜んでくれるものをあげたい。
今自分の手元にあるものが笑顔の素になれればいい。

「どぅ、顔にやけ過ぎ」

聖に指摘され、遥は顔を赤らめる。

「ホントに好きなんだね。いいなあ、聖も彼氏欲しい」
「え?譜久村さん、彼氏いないんすか?」
「いたら、えりぽんに呼び出されてすぐ来たりしないよ」
「…あー、確かに」

聖の笑顔はどこか寂しげだった。
衣梨奈の呼び出しに応じる理由、それはただのバイト仲間というだけじゃない
のだろうか。
もし、そうだとしたら、彼女はもしかして…。

―――――俺、里保以外の女とは付き合わん!

あの日の衣梨奈の言葉が頭を巡る。
公園のベンチで俯く里保の姿と、目の前で寂しそうに笑う聖の笑顔。
二人が抱いているのは同じ思いのような気がして、胸が痛くなった。


29 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:41

「聖ー!どぅー!」

遠くから手を振りながら衣梨奈が駆けてくる。
その姿を確認した聖の顔からすっと寂しさが消え、バイト仲間の顔に戻る。

「ちゃんと買えた?」
「うん。きっと喜んでくれると思うよ。ね?どぅ」
「あ、はい」
「おー、良かったやん、どぅ!あ、聖、これ」

衣梨奈はいつもと変わらぬ笑顔を見せ、手に持っていたものを聖に手渡した。

「え?何、これ?」
「可愛いストラップ見つけたっちゃん。聖に似合うと思って」
「…いいの?」
「今日のお礼」
「お礼なんていいのに…」

そう言いながらも、聖はストラップを大事に握り締めた。
遥は彼女の顔がうっすらと赤くなっていることに気付いたが、何も言わずに
その光景を見守っていた。


30 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:41

聖(と一応、衣梨奈)のおかげでようやくプレゼントを買うことが出来た。
生まれて初めて自分で稼いだお金で買ったプレゼントだ。
そんなに高価なものではないけれど、少しだけ大人に近付いたような気分になった。

頭の中で十分なシミュレーションを重ねながら、遂に1月7日を迎えた。


31 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:41

亜佑美の誕生日当日。
二人は郊外のとある駅で待ち合わせをした。
ここは、遊園地と動物園が合体したテーマパークの最寄駅で、遥にとっては
小さい頃から何度も来ている馴染みの場所だった。
どこへ行くかは亜佑美には話していない。
自分のよく知っている場所で、彼女をきちんとエスコートしたいと思う。

遥は待ち合わせのかなり前に駅に到着し、亜佑美のことを待っていた。
鞄の中にはこの前買ったプレゼントが入っている。
すぐにでも渡して反応を見たいところだが、とりあえずは遊ぶのが先だ。

電車が駅に到着し、たくさんの家族連れやカップルと共に亜佑美の姿が見えた。

「くどぅー!」

遥の姿を確認した亜佑美が小走りに駆けてくる。
久々に会う彼女は髪を巻いていることもあって、すごく大人っぽくてドキッと
する。

「久しぶりだね」
「お、おう」

なんとなく、まともに顔を見ることが出来ない。
会ったら最初に言おうと思っていた言葉を飲み込んで、遥はぶっきらぼうに
亜佑美を促した。

「…行こ」
「うん!」

彼女はわかりやすいくらい笑顔満開のご機嫌で、それだけで遥も嬉しかった。

32 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:41

テーマパークに着くと亜佑美のテンションは更に高くなった。
動物園なんて子供っぽいかと思っていたが、亜佑美は遥の予想の斜め上を行く
勢いで全力で楽しんでいる。
案内役の遥が逆に振り回されている感じだ。

「あ、くどぅー、あそこ入る!」
「はいはい。…って走んな、おい!」

一通り動物を見たあと、亜佑美はお土産屋さんへと駆け込む。
遅れて入った遥が店内を見回すと、亜佑美はぬいぐるみ売り場の前で立っていた。
真剣に売り物を見る姿はまるで子供だ。
遥は苦笑しながら近付く。

「欲しいの?」
「うーん、どうしようかなあ。このぬいぐるみ、かわいくない?」

亜佑美が手に持っているのはホワイトタイガーのぬいぐるみ。
このテーマパークの看板的な動物だ。

「ねえ、くどぅー?」
「ん?」
「これ、ライオン?」
「はあ?」
「え、違うの?」
「いや、これどう見たってトラじゃん。さっき見ただろ、ホワイトタイガー」
「あ、そ、そうだと思った」
「プ…」
「笑わなくたっていいじゃん。くどぅーのバカ」

膨れっ面の亜佑美の前で、遥はそのぬいぐるみを手に取る。
自分でも驚くくらい、迷いのない行動だった。
レジで会計を済ませたぬいぐるみを手渡すと、亜佑美はキョトンとした顔で
遥を見つめた。
上目遣いで見つめられた遥は、思わず目をそらす。

「くどぅー?」
「やる」
「え、でも…」
「…誕生日じゃん、今日」
「あ、うん」
「次、遊園地行くぞ」

自分の行動があまりにも恥ずかしくて、遥はすぐにお店を出た。
あとからトコトコとついて来た亜佑美が遥の隣に並ぶ。

「ありがとう。大事にするね」
「…うん。かわいがってくれよな、ホワイト『ライオン』」
「ツ…、しつこいし!」

二人はじゃれ合いながら遊園地へと移動した。
遊園地では絶叫マシンに乗りまくり、更に楽しい時間を過ごした。


33 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:42

ほとんどの乗り物を制覇した二人だが、唯一入っていない場所があった。
遥はその前を通らないように上手く亜佑美を誘導していたのだが、どうやら
彼女はその意図に気付いていたらしい。
そして今、その建物の前で激論が交わされている。

「入ろうよー、せっかくだもん」
「ヤだよ。絶対無理」
「怖いの?」
「…うっせーなあ。煽ってもムダだかんな。絶対に入らないから」
「誕生日なのに…」

亜佑美は寂しそうに俯く。
しかし、いかに彼女の頼みといえど、ここだけはどうしても無理なのだ。
昔からお化け屋敷というものが大の苦手なのである。
彼女の前で情けない抵抗だが、中に入って失神でもしようものなら余計に情け
ないことになる。

「…他の頼みならなんでも聞くからさ」
「ホントに?」
「うん」
「なんでも?」
「まあ、出来ることなら」
「わかった。じゃあ、いいよ」
「…お手柔らかに」
「さあ、どうでしょう」

亜佑美は不敵に笑ったあと、「行きたいところがあるんだ」と言った。


34 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:42

そして今、二人はあの公園にいる。
二人が結ばれた場所であり、最近では衣梨奈や里保と過ごした場所でもある。
10月末に比べるとさすがに寒く、風が遮断されているとはいえ、オブジェの中も
冷え切っていた。

「さすがに1月は寒いなあ」
「うん」
「下、冷たくね?平気?」
「うん、平気」

こうして並んで座っていると、あの日のことを思い出す。
自分の気持ちを伝えたあの日のことを。

ずっとはしゃいでいた亜佑美だが、公園に着いてからは無口だ。
遥もプレゼントを渡すタイミングを伺い、緊張している。


35 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:42

沈黙が続く中、ようやく遥が鞄からそれを取り出した。

「ん」
「え?」
「誕生日プレゼント」
「だって、さっき、ぬいぐるみ…」
「あれはおまけ。こっちが本物」

亜佑美は静かにプレゼントを開ける。
遥が選んだのはシルバーのブレスレットだった。
一般的にはそれほど高価なものではないが、それでも中学生の遥にしてはかなり
奮発したほうだ。

喜んでもらえるだろうか。
そっと彼女の表情を伺うが、暗闇でよくわからない。

「かわいい。…嬉しい」
「…誕生日おめでとう」

朝の待ち合わせから数時間、ようやく今日一番伝えたい言葉を言うことが出来た。

「ありがとう」

亜佑美は早速ブレスレットを身に付け、ずっと眺めている。


36 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:42

「私ね」
「ん?」
「ホントはね、誕生日来るの、ちょっと嫌だったんだ」
「え?なんで?」
「だって、また年離れちゃうし…」

俯く亜佑美に遥は言葉を失う。
年の差なんて大したことじゃないし、すぐに追い越してやろうと思っている。
だけど現実には、今日で二人の年の差は再び離れてしまった。

もしかしたら、女の子で年上の亜佑美の方が、遥以上に年の差を気にしている
のかもしれない。

「でも、今日こうやってお祝いしてもらって、すっごく嬉しかった。やっぱり、
 誕生日っていいね」
「うん」

そう言って笑う彼女に、遥も笑顔で答えた。


37 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:43

「そうだ、くどぅー、毎年、お互いの誕生日はここでお祝いしようよ」

毎年ということは来年も再来年もその先も、ずっと一緒にいたいと思ってくれて
いるということだ。
ものすごく嬉しい一言だったけれど、素直になれない遥は軽口を叩く。

「えー、さみーよ」
「ひどーい!そんなこと言う口はこうしてやる!」

亜佑美は遥の頬をつねる。

「いて!…って、おまえ、手すげー冷たい」
「だって、冷え性なんだもん。しょうがないじゃん!」
「それにしたってさあ」

亜佑美は一瞬すねたように横を向いたあと、ふと何かを思いついたように遥を
見つめた。
目が暗闇に慣れてきて亜佑美の表情がよくわかる。

「な、なんだよ?怒ってんの?」
「ううん」
「…どうかした?」
「あのね…」
「ん?」
「も一個、お願いしてもいい?」

亜佑美の表情は真剣で、遥もなんとなく目をそらせなかった。


38 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:43

「な、なに?」
「手、あっためてほしいなあ、なんて…」
「…え?」
「ダ、ダメ?」
「あ、いや、いいけど。…どうやって?」
「わ、わかんない!自分で考えてよっ!」

突然の無茶ぶりに遥はしばし考え込む。
頼みをなんでも聞くという約束をした限り、その希望には出来るだけ応えたい。

「ごめんごめん。今のお願い取り消…」

痺れを切らした亜佑美の言葉を打ち消すように、遥はそっと彼女の手をとり、
自分の両手で亜佑美の手を包み込んだ。

そして、冷え切っている彼女の手に優しく息を吹きかけた。

とても華奢な亜佑美だけれど手は意外とすっと長くて、まだ数えるぐらいしか
触れたことのない彼女の手が、遥はとても好きだった。

その手をまるで宝物のように、大切に優しく温めていく。


39 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:43

何度か無言でその行為を繰り返したあと、遥はそっと手を離した。
恥ずかしさのあまり、目をそらしながら問いかける。

「…あったまった?」
「うん…。顔まで熱くなっちゃった」
「…俺も」

亜佑美はあの告白の日と同じように、顔の前で手をパタパタとさせている。
そんな姿を見て、これからもずっとこの手を温めるのは自分でありたいと、
心からそう思った。


40 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 00:44
本日は以上です。
41 :名無飼育さん :2014/01/29(水) 19:03
えりぽん罪なヤツだなぁw
そしてだーどぅーの初々しさが可愛い!
42 :名無飼育さん :2014/02/02(日) 21:54
作者さんのどぅーいしとても好きです
更新ありがとうございますm(_ _)m
43 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:56
レスありがとうございます!

>>41
あくまでも『恋人一年生』な感じの初々しさを描いていければと思っています。

>>42
こちらこそ、読んで下さりありがとうございます。

ホワイトデーも過ぎてしまいましたが、バレンタインデーのお話です。
44 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:57
2月14日、バレンタインデー。
年頃の男女が浮き足立つ日だ。
もちろん、遥も例外ではない。

元々整った顔立ちで注目されていた遥だが、先日水泳の大会で優勝してからは
更に人気が増し、学校でも一、二を争うモテ男となった。
彼女がのいる遥にとっては、他の女子からのチョコレートはあまり興味はないが、
貰える分には悪い気はしない。

ところで、遥の中学では校内にお菓子を持ち込むことは禁止されている。
教師の中には「バレンタインくらいは…」という寛容派もいるようだが、この
学校には教師よりももっと厄介な存在がいる。
それが、生活福祉常任委員だ。

風紀委員のような役割で、校内の規律を破る生徒に対してはとにかく厳しい。
各クラス1名ずつ選出されるのだが、毎年なりたい生徒がおらず、仕方なくくじ
引きで決めるくらい疎まれている。
特に今年の委員長はかなり堅物で、チョコレートが見つかろうものならどんな
処罰が待っているかわからない。

45 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:58
しかし、そこはやはり年頃の女の子。
常任委員の目を盗んでチョコレートがあちこちで飛び交っている。
そんなこんなで、放課後には遥の鞄はチョコレートでいっぱいになっていた。

「やべー、鞄に入らねーし」

先程も1年生からチョコレートを受け取り、遂に閉まらなくなった鞄を手に途方に
暮れる遥。

「どぅー、相変わらずモッテモテだね」

そんな遥をニヤニヤしながらからかっているのは、もちろん優樹だ。

「まーちゃんだって、人のこと言えないだろ」

遥ほどではないが、優樹もかなりの数のチョコレートを貰っていた。
特に3年生から人気があるようだ。

「これ、見つかったら俺が怒られるのかなあ」
「んー、どうだろうねー?」
「そういや、うちのクラスの生活福祉常任委員って誰だっけ?」
「え?どぅー、知らないの?」
「まーちゃん、知ってんの?」
「もちろん」
「へー、誰?」
「マサだよ」
「へ!?」

そういえば、4月の委員決めのとき、誰もなりたがらないはずのこの委員に意気
揚々と挙手をした風変わりな生徒がいたことを思い出した。
あとのきはこんなに仲良くなっていなかったから覚えていなかったが、それが
優樹だったとは。

「おまえ、生活福祉常任委員って何するかわかってんの?」
「そんなの知るわけないじゃん」
「じゃあ、なんで立候補したんだよ?」
「だって、名前が格好いいじゃん!」

優樹の言葉に深くため息をつく遥だが、考えようによっては都合が良い。
どうやら怒られずに無事に帰宅できそうだ。

「それにしても、やべーな、この雪」

窓の外にはまるで北国のような雪景色が広がっている。
この街にとっては数十年ぶりの大雪の予報で、学校も全ての部活が中止となり
早く帰るように指示が出ているくらいだ。

二人は足早に校門へと向かった。

46 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:58
ちなみに、亜佑美とは特に会う約束をしていない。
学校が違うので平日はなかなか会うことが出来ない上に、この大雪である。
昨日のメールでは何も言ってなかったし、貰えるとしてもたぶん週末だろう。

既に雪が積もっている校庭でハシャギまくる優樹を引きずるように学校を出る。
一つ目の角を曲がった電信柱の影に、紫色の傘をさした女の子が立っていた。

「小田ちゃん!」

『小田ちゃん』と呼ばれたその少女は静かに顔を上げ、無言でこちらへ近づいて
くる。
その名前とその顔に、遥は先程とは違う恐怖を感じた。
なぜなら、彼女こそ生活福祉常任委員会の委員長・小田さくらだったからだ。

常々、「家に帰るまでが学校です」が口癖の彼女なだけに、きっとここを通る
生徒たちの抜き打ちチェックでもしていたのだろう。
なぜ私服姿なのかはわからないが、もしかしたら寄り道禁止という校則を律儀に
守るため、一度家に帰り着替えてきたのかもしれない。

そのくらいのことは余裕でするくらい、さくらの仕事っぷりはすごいと噂なのだ。

47 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:58
さくらは静かに優樹の前に立ち、じっと彼の顔を見る。

「どうしたの?小田ちゃんも雪遊び?」

先輩にも平気でタメ口をきく優樹。
さくらもそれが当たり前のように無言のまま、すっと鞄から何かを取り出した。

「これ、佐藤さんに」
「え?」

かわいらしくラッピングされている四角い箱。
それはどこからどう見ても、バレンタイン用のチョコレートにしか見えない。

「マサにくれるの?やったー!」
「はい。…佐藤さんにはいつも、委員会でお世話になっているので」

さくらは誰に対しても敬語で話すと聞いていたが、その噂は本当らしい。
いや、重要なのはそんなことではない。

色恋沙汰とは全く無縁の、超堅物で有名の、昨年のバレンタインデーには先輩
だろうが友達だろうが容赦なく摘発したことで学校中から恐れられている、あの
小田さくらが、なんと目の前でチョコレートを渡しているのだ。

しかも、その相手がこの優樹とは。

48 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:59
「わーい!チョコだー!雪だー!」

雪とチョコで無邪気にはしゃぐ優樹をさくらは眩しそうに見つめている。
その表情はまるで子供を見る母のように優しく、いつもの生活福祉常任委員長の
さくらとは別人のようだった。
遥は思わず見とれてしまう。
そんな遥の視線に気付いたのか、さくらはふっと遥の方を向いて近付いてくる。
鞄やポケットにチョコを忍ばせている遥は、ギクッとして後ずさりした。

「工藤さん」
「あ、はい…って、なんで俺の名前…」
「学校内の全生徒の名前は把握しています。私は生活福祉常任委員長ですから」

さくらは少し寂しそうにそう言った。

「あの、なんで、まーちゃんにチョコを?」
「…工藤さん、私のことどう思っていますか?」
「へ?」

逆にさくらに問いかけられ、遥は焦る。
まるで怯えている心の中を見透かされているようで、思わず目を逸らした。

49 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:59
「怖いですよね、私」
「あ、いや、そんな…」
「いいんです。みなさんにどう思われているか、わかっていますから。私に
 近付いてくる子なんて一人もいないし。でも…」

さくらの目は真っ直ぐに優樹を捉えている。

「佐藤さんだけは違ったんです」
「まーちゃんが?」
「小田ちゃん小田ちゃんって、ずっとひっついてきて…。いつの日か私は、佐藤
 さんと過ごす時間が楽しみになっていました」

何かを思い出したかのように微笑むさくら。
こんなふうに優しく笑う人だと初めて知った。

「まーちゃんにそのこと言わないんすか?」
「佐藤さんはまだきっとそういうの早いから。それに…」
「ん?」
「私自身が縛りたくないとおもっているんです、佐藤さんのこと。あのまま自由
 でいてほしい」

優樹に対するさくらの思いは、もしかしたら恋よりももっと深いものなのかも
しれない。

「どぅー!小田ちゃん!雪合戦しよーよ!」

一人で遊ぶことに飽きたのか、優樹が雪をぶつけてくる。

「駄目ですよ、佐藤さん。さっき言ったじゃないですか。寄り道せずにちゃんと
 帰って下さい。家に帰るまでが、学校ですから。では」

さくらは微笑みながら優樹を優しく窘め、足早に去って行った。

50 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:59
「ありがとねー!小田ちゃーん!」

その『小田ちゃん』という響きで、遥はふと少し前のあるシーンを思い出した。
あれは確か、亜佑美と付き合い始めて数日後のことだ。
亜佑美とのことを報告した遥に、もうキスはしたのかと訪ねる優樹。
そして、あのとき遥はこう聞いた。

―――――まーちゃんはあんのかよ?
―――――あるよー。昨日。3年の小田ちゃん。

あのときは気が動転していて詳しく聞かなかったが、あのとき確かに優樹は
『小田ちゃんとチューをした』と言っていた。

「あ、あのさ、まーちゃん。チュ、チューの相手って、あの…小田先輩?」
「ん?そうだよ?」
「ど、どういうシチュエーションで、チュ、チューしたんだよ?」
「委員会で二人で残ってたとき、急にシーンとなったの。で、小田ちゃん見たら、
 なんとなくビビーってなって、スーって感じで、チュって」
「なにそれ、ぜんっぜん意味わかんねーし!」
「どぅもそのときがくればわかるんじゃん?」

顔色一つ変えずに答える優樹が妙に大人に思えて、遥は少しだけ寂しくなった。


51 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 01:59
優樹と別れて家路を急ぐ。
雪はますます激しく降ってきた。
ふとポケットの中の携帯が震えて、遥は画面を覗き込む。
母からのメールだ。

『お父さんとおじさんのところへ来てるけど、電車が止まって帰れない。遅く
 なるから適当に夜ご飯食べなさい』

どうやらこの雪で交通機関は麻痺しているようだ。
歩く人影もまばらで、見慣れない真っ白な光景に急に心細さが込み上げてくる。

―――――あいつ、何してるかな。

彼女を好きになってから、彼女と付き合い始めたから、こういうときに一番に
思い浮かぶのは亜佑美の顔だ。
こんな寒い日には、冷え性の亜佑美の手はきっと冷たくなっているに違いない。
あの日のように温めてあげたい。

そんなことを考えながら、ようやく自宅へと辿り着いた遥の目に、青い傘の少女が
飛び込んできた。
先程のさくらの姿と、今まで自分が頭に思い浮かべていた笑顔が重なる。
まさか、そんなわけないと否定しながらも、遥の鼓動はどんどん高鳴っていく。

青い傘の少女が遥の方を見た。

「…遅いよ、くどぅー」

今一番会いたい彼女、亜佑美の姿がそこにあった。

52 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 02:00
まるで吸い込まれるように彼女に近付く遥。

「な、なんでここに?」
「はい、これ」

遥の前に差し出されたそれは、明らかにバレンタインのチョコレートだった。

「…これのために、わざわざ?」
「だって、今日渡したかったから」

この雪の中、どのくらい待っていたのだろう。
チョコレートを持つ彼女の手は真っ赤だ。
受け取る瞬間に少しだけ触れると、その手は氷のように冷たくて、遥は思わず
握りしめた。

「…また冷たくなってる」
「うん」
「手袋、ないの?」
「あるけど」
「しろよ」
「だって、ちゃんと手で渡したかったし、それに…」
「ん?」

亜佑美は困ったように俯いて、遥に包まれている自らの手を見つめた。

「…また、あっためてくれるかなって」

その言葉と真っ赤な亜佑美の顔に、息が止まりそうなくらい胸が苦しくなる。

53 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 02:00
「…あがってく?」

少しの沈黙のあと、ようやく言葉を絞り出す。
ふっと顔を上げた亜佑美は笑顔で答える。

「うん、おばさんたちにも会いたいし」
「…今、出かけてる」
「え?」
「雪で電車止まって、遅くなるって」

何も答えない亜佑美の手を引いて、遥は家の中へ入った。
雪はまだまだ止みそうにない。

54 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 02:00
本日は以上です。
55 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 21:52
うおおおお!!!!!!期待!
新登場メンもいい味出してますねw
56 :名無飼育さん :2014/03/19(水) 22:02
更新待ってました!
この二人は初々しくって読んでて(*´Д`)ポワワします
前から気になっていた まーさく もきた^^


57 :名無飼育さん :2014/03/20(木) 22:08
ご両親がお留守なのに女の子を連れ込むなんて///
どぅーいしもいいけどまーどぅーもさくまーもいいね!
58 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:06
レスありがとうございます!

>>55
彼女は何気に自分でもお気に入りのキャラですw

>>56
お待たせしました!
今回もポワワとしてもらえたら嬉しいです。

>>57
ヘタレな遥にしては頑張りましたw


では、前回の続きです。
59 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:06
勢いで誘ったもののここから先どうすればいいのか、遥は途方に暮れていた。

誰もいない家に彼女と二人きり。
このシチュエーションで平静でいられる男なんていないだろう。
当然のことながら遥もそのうちの一人で、さっきからずっとソワソワしている。
妄想だけがどんどん膨らんでいく。

どうも自分は、亜佑美のことになると冷静さを失ってしまうらしい。
いつかの文化祭で彼女が足を捻挫したときもそうだった。
日頃は年齢の割には落ち着いている方だと言われているのに。

二人はベッドを背にして隣に座っている。
その距離は狭い部屋にしては不自然に離れていて、亜佑美はその気まずさを
埋めるかのように話し続けている。

60 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:07
優樹に対する対抗心のようなものがないといえば嘘になる。
付き合ってもいない、それも恋愛とはまるで縁のないような優樹がキスを経験
しているのに、自分はまだ手を繋ぐのが精一杯だ。
優樹に負けたくない、置いていかれたくない。

その一方で、こんな気持ちでそういうことをしていいのかどうか、そんな戸惑い
もあった。
亜佑美のことが好きだから、大切にしたい。

もちろん純粋に彼女とキスがしたいという気持ちもあり、遥の頭の中はパニック
状態だった。

61 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:07
「くどぅー、どうかした?」

亜佑美の問いに黙り込む遥。

「…勝手に来て、怒ってる?」
「え?あ、いや、全然…。そんなふうに見える?」
「うん。すっごい難しい顔してた」

確かに遥が抱えている問題は難解で厄介だ。
亜佑美に説明しようにも、上手く伝えられそうにない。

「ごめん、私、帰るね」
「え、な、なんで?」
「だって、くどぅー、なんかつまんなそうだし」
「つ、つまんなくなんかねーよ」
「じゃあ、なんなの?さっきから黙ってばかりで、なんか変だよ」

亜佑美に追及されて言葉に詰まる。

「…また、メールするね」
「待てって!」

立ち上がる亜佑美の腕を咄嗟に掴む。
驚いて振り向いた彼女の顔は酷く怯えていて、遥はすぐにその手を離した。
こんな顔が見たいわけじゃないのに、スマートに振る舞えない自分に腹が立ち、
苛立ちが増していく。

62 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:07
「ちゃんと言うから、座って」

亜佑美は黙って座ってくれた。
遥はスーッと深呼吸をし、少しずつ言葉を絞り出す。

「…まーちゃんがさ」
「マサ?」

優樹の名前が出たのが意外だったのか、亜佑美は遥を振り返り、興味深そうに
聞き返す。

「チュ、チューしたって言ってて」
「え、ええ!?誰と?」
「うちの中学の3年」
「あのマサが、意外…」
「だろ?しかも、付き合ってるわけじゃねーのに、だぞ。ありえねーし」
「それがショックで、変だったの?」
「いや、ショックというか…、ショックじゃないわけじゃねーけど、そうじゃ
なくて…」

再び言い淀む遥を亜佑美は心配そうに覗き込んだ。
皮肉にも縮まった距離に、遥は激しく動揺する。
自分の顔が赤くなっていることがよくわかって、乱暴に髪をかき乱した。

こうなったらもう、正直にぶちまけるしかない。

63 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:07
「…お、俺もしたいなって、そう思って」

亜佑美の動きが止まる。
そっと隣を見ると真っ赤な顔で俯いていた。

「で、でもさ」
「…う、うん」
「そんな、対抗するみたいにするもんじゃないっていうか。も、もちろん、
あいつのことがなくても、そういう気持ちはないわけじゃないんだけど…」

もはや何を伝えたいのかわからないけれど、遥は話を続ける。

「こんな気持ちのまましたら、あんたのこと、傷つけちゃうんじゃないかって」

好きだから、すごく大切だから、少しでも不純な気持ちがあるままでしたくない。
不器用ながらも遥は懸命に思いを伝えた。

64 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:08
長い沈黙を破ったのは亜佑美だった。

「ツ…」
「…って、何笑ってんだよ」
「ごめんごめん。だって、くどぅー、かわいいんだもん」
「か、かわいいって…」

バカにされたようでなんだか腹が立つ。
その一方で笑ってくれて良かったとも思う。
亜佑美の笑顔で、重苦しい雰囲気が一気に吹き飛んでいく。

「別に焦んなくてもいーじゃん。人は人、うちはうち。よく言うでしょ?」
「よく言うけどさあ。あんたってなんか昭和臭いよな」
「ひっどーい!」

今度は遥が笑う番だった。

「あー、笑ったらなんか腹減ったわ。ね、これ、食っていい!?」

遥は亜佑美から貰ったチョコレートを手に取る。

「ダ、ダメ!」
「え、なんで?」
「…あんまり上手く出来なかったし」
「そんなん、いいよ」
「ダメ。恥ずかしいから、私が帰ってから食べて」
「ん、わかった」

かわいい亜佑美の懇願に遥は苦笑しながら頷いた。

65 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:08
お腹の空いた二人は一階に下り、冷蔵庫の中を確認した。
といっても、料理なんかしたことのない遥に残り物で何かを作れるような
スキルは持っていない。

亜佑美はいかにも料理得意ですみたいな顔で冷蔵庫を見ていたが、寮生活で
日頃作る機会がないらしく、「卵焼きなら…」という一言でメニューが決まった。

「ホントに作れんの?」

遥の問いかけに亜佑美はムキになって答える。

「私、やれば出来る子だし!」
「なんだよ、それ」

いちいちリアクションが大きい亜佑美をからかうのは楽しい。

「くどぅーこそ、卵焼きも作れないんじゃない?」
「はあ?あんなん焼くだけだろ。余裕だよ」

今度は遥がムキになる番だ。
結局、二人とも各々の卵焼きを作ることになった。

66 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:08
二人並んで台所に立ち、それぞれ作業を開始した。
卵とボウルを前に真剣そうに立つ遥を見て、亜佑美がニヤケながら声をかける。

「卵割れる?大丈夫?」
「静かに…あ!」

遥の割った卵は殻と共にボウルに落ちていく。

「あははは!うそー、卵も割れないの?」
「割れるよ!卵ぐらい!」

遥は四苦八苦して卵の殻を取り除き、なんとなく味付けをしようやく焼く段階に
入った。
一方の亜佑美は青ネギを刻んでいく。

「ねえ、どんぐらい入れたらいいかなあ」
「んー」
「ねえ、聞いてよー」

しかし、フライパンに卵を流し入れる遥の耳には入らない。

「やべー、炒り卵になっちゃう、炒り卵になっちゃう。おーい、炒り卵になっちゃ
 ったよ」
「あれじゃない?スクランブルエッグでいいんじゃない?それか、頑張って巻くか」
「あ、巻けるかも」

苦労した甲斐があって、遥の卵焼きは見た目だけは上出来だ。

67 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:09
続く亜佑美も少しずつ丁寧に卵を焼いていく。
その姿を見ながら空腹を抑えきれない遥は、背後から亜佑美を覗き込んだ。

「味見させて」
「え?熱いよ、たぶん」
「いいよ、平気」
「言ったからね、熱いよ?」
「あー」
「もう。あーん」

まるで子供のようにねだる遥の口に、亜佑美が出来立ての卵焼きを放り込む。

「あ、おいしー!」
「やったー!」

それほど広くない台所なので、二人の距離は自然に近くなる。
しかし、料理に夢中の二人はその距離間に気付いていないようだ。

こうしてなんとか料理が完成し、一緒に食卓へ運んだ。
ご飯と卵焼きというとても質素な食事だったけど、自分たちで作った料理は
格別だった。

68 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:09
洗い物を済まし、再び遥の部屋へと戻る。
料理を始めた時は夕方だったのに、もう8時を回っていた。
亜佑美といると時間が進むのが早い気がする。

「…そろそろ帰らなきゃ。バスなくなっちゃうし」

さっきまですごく楽しかった反面、急激に寂しさが襲ってきた。
このままずっと一緒にいたいけど、まだ子供の遥に引き留める術はなく、黙って
俯くことしか出来なかった。

「帰ったらメールするね」
「あ、バス停まで送ってく」
「え?いいよ。寒いし暗いし、雪で危ないし」
「そんなの、あんただって危ないじゃん」
「でも私、雪道は慣れてるからさ。なんたって、東北出身ですから!」

なぜかドヤ顔で答える亜佑美に苦笑しつつ、遥はコートを手に取る。

「ねえ、ホントにいいよ。くどぅ―が風邪ひいたらヤだもん」
「ヤだ、絶対送る」
「でも…」
「送らなくて何かあったら、絶対後悔するし」

その言葉はもちろん本音だけれど、少しでも長く一緒にいたいというのが一番の
理由なのかもしれない。

バス停までの短い時間。
ほんの数分間でもそばにいたい。

69 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:09
部屋中に静けさが広まる。
その沈黙は先程のような気まずいものではなく、穏やかで優しいものだった。

亜佑美の様子を伺うと向こうも同じタイミングで遥を見ていて、二人の視線が
ぶつかり合う。

高鳴る気持ちの一方て、遥は昼間の優樹の言葉を思い出していた。

―――――なんとなくビビーってなって、スーって感じで、チュって。

あのときは全くわからなかったけど、今ならなんとなくその意味が理解できる
ような気がした。

70 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:10
二人はどちらからともなく顔を近付けていく。
亜佑美が静かに目を閉じる。

その今まで見たことのないような大人びた表情に吸い寄せられるように、遥は
ゆっくりと唇を重ねた。

それは本当に触れるだけの、不器用で優しいキスだった。

71 :名無飼育さん :2014/03/30(日) 21:10
本日は以上です。
72 :名無飼育さん :2014/03/31(月) 03:32
ニヤニヤ(*´Д`)ゴチソウサマー
73 :名無飼育さん :2014/03/31(月) 19:09
かわいい二人だなぁ
ちょっとずつ進んでるのがまたいいね
74 :名無飼育さん :2014/03/31(月) 22:56
ところどころ実際のエピソードを捩って入ってるのが素敵です^^
読んでてキュンキュンしました
75 :名無飼育さん :2014/04/04(金) 23:42
(*´Д`)

あーん!!どぅ!!

そして、マサのなんとなくビビーってなって、スーって感じで、チュって。
で、うんうんと頷いてしまいましたWW

続き待ってます
76 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:28
レスありがとうございます。


>>72
どういたいましてw 

>>73
そうですね。一歩ずつ進んでいく姿を書ければと思っています。

>>74
現実の彼女たちから妄想させてもらってるので、今後も実際のエピソードは
ちょこちょこ入れていければと思います。

>>75
その表現は実は結構時間をかけて練ったのでw
共感して頂けて嬉しいです。


今回はちょっと番外編。
モーニング娘。の歌姫さんが主役です。
77 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:29
学校に着くと満開の桜が迎えてくれた。
一昔前は桜といえば入学式のイメージだったが、最近では卒業式のこの時期に
ピークを迎えることが多い。
今年も例外ではなかった。

小田さくらは今日、中学校を卒業する。

78 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:29
卒業式では代表して答辞を述べた。
生活福祉常任委員長として先生からの信頼も厚いさくらは、もちろんそつなく
大役をこなした。

式が終わると卒業生たちはグラウンドに集まり、友との最後の別れを惜しむのが
この学校の伝統だ。
そこには式に出席した在校生も姿を見せ、部活の先輩や憧れの先輩に感謝を告げて
いる。

クラスメイトと形式ばかりの写真撮影を終えたさくらは、足早に学校を後にする。
校門を出た後に一度だけ振り返り彼の姿がないことを確認し、小さくため息をつく。

―――――やっぱり、いるわけないか。

さくらが彼・佐藤優樹と初めて出会ったのも、確かこんな暖かい春の日だった。

79 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:29



80 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:30
中学最高学年を迎え、当たり前のように生活福祉常任委員に選出されたあの日。
さくらは最初の委員会に参加するために、会議室へ向かっていた。
なり手のいないこの委員に3年連続で所属する生徒は、さくらが初めてらしい。

校則違反の生徒を見つけたら、友達でも容赦なく摘発してきた。
徐々にさくらの周りには人が寄らなくなり、そのことで悩んだ時期もあった。
しかし、今はもう一人でいることに抵抗はない。

いつしかさくらは学校で笑顔を見せることがなくなっていた。

81 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:30
会議室に入ると先客がいた。
委員会が始まる時間にはまだ早い。
一番乗りだと思っていたさくらは驚き、その生徒に近付いた。
彼は一番後ろの机に突っ伏し、気持ち良さそうに眠っている。

その寝顔はまるで子犬のようで、思わず見とれてしまう。
このままずっと見ていたい、そう思った。
さくらにとってそれは初めての感情で、その戸惑いを振り払うように彼に声を
かけた。

「あの…、起きて下さい」

男の子は気持ち良さそうに眠っていて、全く起きる気配がない。
何回か声をかけたところでさくらは一旦諦めた。
時計を見るとあと30分は時間がある。

―――――もう少しだけ寝かせておいてあげよう。

委員会中はいつも一番前の席に座るさくらだが、この日初めて一番後ろの席に
腰をかけた。
彼の寝顔をもう少しだけ見るために。

これが、優樹との出会いだった。

82 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:30
周囲の期待通り、委員長に就任したさくらは、ますます取り締まりを強化した。
それと比例して彼女への反感も強くなり、委員の間でも不満が広がっていった。

毎週の委員会に集まる生徒は少しずつ減っていき、参加している生徒たちもさくらの
話は殆ど聞いていない。
そんな中、優樹だけは違った。

「小田ちゃーん!一緒に帰ろ!」

第一印象通り、まるで子犬のように人懐っこい彼は、先輩のさくらを「小田ちゃん」
と呼び、平気でタメ口をきく。

「佐藤さん。私は一応3年生なんですよ。その呼び方は止めて下さい」
「んー?だって、小田ちゃんだって佐藤さんって呼ぶじゃん?」
「それは…」

さくらは校内の全生徒を「さん」付けで呼び敬語で話す。
そのことを疎ましく思う生徒は少なくない。
わかってはいるが、それはさくらのポリシーであり、変えるつもりもない。

「小田ちゃんはそうしたいんでしょ?だから、マサも小田ちゃんって呼ぶ」

そう言うと優樹は「にひひー」と笑い、さくらの手を取り走り出した。

「ちょ、ちょっと、佐藤さん!廊下は走ら…」

人が疎らな校舎を全速力で駆け抜ける。
その日、さくらは生まれて初めて校則を破った。

83 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:31
それ以来、委員会の日は必ず優樹と帰るようになっていた。
週に一度だけ、それもわずかな時間だけれど、さくらにとってはとても心地の
良い空間だった。
常に周りに目を光らせ、自身も手本となるように心がけている彼女だが、優樹と
いるときだけは何も考えず、自然体のままでいることが出来る。

「小田ちゃん」

彼にそう呼ばれる度に胸が震える自分がいる。

この感情が恋だと気付くのに時間はかからなかった。

84 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:31
それは、暑い暑い夏の日の出来事だった。
もうすぐ期末テストが始まるため、夏休み前の委員会はこの日で最後となる。
そのせいか、生徒たちはみんなどこか浮ついていた。

「…えー、なので、夏休みの間の…」

相変わらず、殆どの生徒が話を聞いていない。
普段ならばそれ程気にならないさくらだが、彼女自身、今日でしばらく優樹と
会えなくなることに苛立ちを感じていた。

だから、思わず声を荒げてしまった。

「ちゃんと聞いて下さい!」

一瞬、静けさが広まった。
しかし、すぐに溜まっていた不満が爆発する。

「てかさー、こんな話し合い、意味ねーじゃん」
「だよな。小田の好きなように決めれば?その方が点数稼げるだろ」
「言えてるー」

3年生は口々に文句を言い始める。
わかってはいたことだけど、はっきりと向けられる悪意にさくらは何も言えず
ただ俯くことしか出来ない。

85 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:31
ガタン!

そのとき、教室の一番後ろから大きな物音が響いた。
驚いたみんなが振り返ったその先には、倒れた机と無言で立っている優樹がいた。

優樹はすごい形相で睨みつけながら、教室全体をゆっくりと見回す。
その表情は普段のヘラヘラ顔とは違い、その場にいる全員が言葉を失う。
静かになったことを確認すると、ようやくいつものように笑顔を見せ、

「机、倒しちゃいましたー。すんません」

とおどけた。

そして、茫然と立ち尽くすさくらに向かってこう言った。

「小田先輩。続き、どぞー」

それ以降は私語をする者はおらず、休み前最後の委員会は円滑に終わった。

86 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:31
みんなが帰り、教室にはさくらと優樹だけが残った。
優樹はなぜか窓の外をボーっと眺めている。
その横顔はとても綺麗で、初めて会ったあの日の寝顔と重なった。

さくらは静かに優樹に近付く。
聞きたいことがある。
さっき、机を倒したのは偶然なのか、それとも―――――。

「あの…」
「小田ちゃんってさー、好きな木は何?」
「へ?」

突然の意味不明の質問に思わず間抜けな声を出すさくら。

「…好きな木…ですか?」
「うん」
「うーん、なんだろ。梅、ですかね?」
「へー、なんで?」
「え、んー、なんでだろ。なんか、かわいそうじゃないですか?桜ばっかり
 目立って」

さくらは自分と同じ名前のその木があまり好きではなった。
桜は春の主役だ。
華やかで誰からも好かれ、圧倒的な存在感を放っている。
だけど、自分はそんな木とはまるで正反対だったから。
地味で目立たなくて誰にも好かれない。

そんな自分があの木と同じ名前なのが嫌だった。

87 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:31
「…私、桜は嫌いなんです」

はっきりと声に出して呟いた瞬間、ずっと心に秘めていたコンプレックスが
広がって、さくらの目から涙が溢れ出した。
泣きたいわけじゃないのに止めることが出来ない。
そんな姿を優樹に見られたくなくて、さくらはその場から逃げようとした。

しかし、次の瞬間、腕を強く引っ張られ、さくらの体は優しい温もりに包まれた。

「さ、佐藤さ…」

優樹は無言のまま、さくらを抱きしめる手にグッと力を込めてくる。
二人の身長差は殆どなく、自然と顔が接近している。
自分の涙とか顔の熱さとか、そういうもの全てが優樹に伝わりそうで恥ずかしい。
だけど、その恥ずかしさと同じくらい、いやそれ以上に離れたくないと思った。

「だーいじょーぶだよ、小田ちゃん」
「…佐藤さん」
「今が辛くても将来ハッピーだから」

何の根拠もないはずの優樹の言葉にさくらは黙って頷いて、彼の背中に手を回す。
すごく細い優樹の体がとても頼もしく感じた。

88 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:32
そんな事件があってからも二人の関係は特に変わらず、あっという間に夏が過ぎた。
受験生のさくらにとっては正念場であり、恋に現を抜かしている余裕などない。
しかし、勉強の合間にふと思い浮かぶのは優樹の笑顔だった。

相変わらず、週に一度一緒に帰るだけの二人。
卒業したらきっと終わる関係。

優樹が人懐っこい子だということはよくわかっている。
そして、とても優しい子だということも。
だから自分に向けられた優しさが特別なものなのかどうか、わからない。

それを確かめることなんて怖くて出来なかった。

89 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:32
10月のとある日。
いつものように委員会のあと、二人だけが残された教室。
優樹の様子はいつもと違う。
どこか元気がない。

「佐藤さん、何かありました?」
「え?なんで?」
「なんか、元気ないから」

さくらの問いに優樹は軽く頭を掻きながら答えた。

「昨日メールがきたの。どぅーがさ、あゆみんと付き合うことになったって」

遥と亜佑美の話は散々優樹から聞かされて、さくらも密かに応援をしていた。
優樹自身も二人が上手くいくことを願っていたのに、なぜか冴えない顔をして
いる。

「…寂しい、ですか?」
「んー。よくわかんない。嬉しいんだけど、なんか嬉しくない。なんでだろ。
 なんか、どぅーが遠くなっちゃう気がして」

優樹は泣きそうな顔でさくらを見る。

90 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:33
「変だよね。こんなふうに思うの」
「そんなことないですよ」
「…マサ、変じゃない?」
「うん」

さくらはそっと優樹の手をとり、優しく包み込んだ。
不安がっている優樹が安心できるように、ありったけの思いを込めて。

「それに、二人が付き合っても、佐藤さんと工藤さんの関係は変わらないと
 思いますよ」
「そうかな」
「うん。きっと変わらないです。だから大丈夫」

そう断言すると、優樹はようやく笑顔を見せてくれた。

「ありがと。小田ちゃん」

その笑顔は思わず見とれてしまうくらいかわいかった。

91 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:33
目を逸らせないさくらと目を逸らさない優樹。
見つめ合う二人の間の空気が少しずつ変わっていく。
優樹がさくらの手をそっと握りしめる。

どちらが先に動いたのかはわからない。
ただ、頭の中で何かが弾けて、気付いたら二人はキスをしていた。

92 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:33




93 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:34
強い風が吹き、さくらの頭上で桜が舞う。
さくらは自身に舞い落ちるピンクの花びらを眩しそうに見上げる。

こんなときにまで、圧倒的な存在感を見せつける自分と同じ名前の木。
やはり、桜は嫌いだ。

「小田ちゃん、見ーっけ!」

ふいに耳に飛び込んできた聞き慣れた声と呼び方。
見慣れたシルエット。
いるはずがないと思いながら、本当は心のどこかで期待をしていた。
だけど、本当に会えるとは思っていなかった。

「…佐藤さん」

94 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:34
「ヤッホータイ」

優樹はいつも通り無邪気な笑顔を見せる。
一度家に帰ったらしく、私服姿だ。

「な、なんでここに。帰ったんじゃ…」
「うん、ちゃんと一回家に帰ったよ。学校にこれ持ってくわけにいかないし」

戸惑うさくらの掌に、ポンと置かれたのはキャンディの包みだった。

「これ…」
「ホワイトデー!」
「もうだいぶ過ぎてますけど?」
「渡すの忘れちゃってさ。ニヒヒー」

再び風が吹き、さらに桜が舞い落ちる。

95 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:34
「小田ちゃん、好きな木なんだっけ?」

優樹の会話は相変わらず唐突だ。
しかし、これで最後だと思うとそれすらも愛おしく感じる。

「…梅、だったと思いますけど。佐藤さんは、キンモクセイでしたっけ?」
「んー、マサね、好きな木変わったんだ」
「え?そうなんですか?何になったんですか?」
「マサが好きなのはー」

優樹はニッと笑うと、黙って頭上を指さした。
その先では満開の桜が二人を見下ろしている。

「マサが好きなのは、『さくら』」

さくらの胸がトクンと音を立てる。
そのイントネーションは木の『桜』ではなく、彼女の名前の『さくら』だった。

96 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:34
「だから、小田ちゃんも好き」

優樹は相変わらず笑顔で、その真意は全くわからない。
わからないけど、いやわからないからこそ、さくらの鼓動は高鳴る一方だった。
何か言わなければと口を開こうとした瞬間、優樹がすっとその距離を縮めてきた。

「さ、佐藤さ…」

まるでそれが当たり前のように自然に、優樹はさくらを抱きしめた。
あの夏の日のように強く強く。

97 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:35
「卒業してもさ、一緒に遊ぼ?」
「…私でいいんですか?」
「うん」

成長期の優樹はこの半年でグッと身長が伸びて、さくらの体はすっぽりと包み
込まれている。

「小田ちゃんがいい」
「私も、佐藤さんがいい…です」

さくらも優樹の腰に手を回す。
こんな道の真ん中で抱き合うなんて、誰かに見られるかもしれない。
だけど、それでも構わないと思った。
この温もりと優しさを逃さないように、さくらはありったけの力を込めて優樹を
抱きしめた。

98 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:35
「…佐藤さん」
「んー?」
「ちょっと太りました?」
「えー!?マジで?」
「うん。なんか肉付きが良くなったような…」
「ヤバい!マサ、ダイエットする!5月7日までに39kgまで目標に頑張る!」
「え?痩せすぎですって、それ」

99 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:35




100 :名無飼育さん :2014/04/26(土) 17:35
「ということで、佐藤さんと付き合うことになりました」

さくらの長い独白に、亜佑美と春菜、二人の女性陣は深いため息をつく。

「まさか、マサにそんな一面があるとはねえ。ロマンティックー」
「まーちゃん、やるじゃん。漫画の王子様みたい」

もう一人の観客である遥は不貞腐れながらその話を聞いている。
遥の知らない優樹の一面があることも、亜佑美が優樹を褒めたことも全てが
面白くない。

当の本人である優樹は携帯アプリのパズルゲームに夢中で、全く話を聞いて
いない。


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