■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 最新50

Maybe

1 :名無飼育さん :2012/08/13(月) 01:01
鞘石とか。
短めのお話ばかりで更新のんびり。
144 :名無飼育さん :2013/02/20(水) 00:30

145 :あかいしるし :2013/02/20(水) 00:30
「もうちょっとごろごろしてようよー」

なんて甘えた声で言う年下の先輩の手をやんわりほどいてベッドを降り、脱ぎ散らかしてある衣服を手に取る。

「だーめ。いくら今日の集合が遅めでも、いつまでもベッドの中ってのはダメですよ」
「ちぇー」

ぶー、と聞こえそうな唇のカタチを横目で見ながら、石田は意識してゆっくり衣服を身につける。
本当は自分もゆっくりしていたいのだと、相手にも伝わるように。

ベッドの端に腰を降ろし、下着を身につけ、ブラをつけようとしたところで背後からの視線に気づいて振り向くと、
枕を抱えながらニヤニヤ笑ってこちらを見ている鞘師と目が合った。

「? なんで笑ってるんです?」
「なんでだろーねえ?」

思わせぶりな口調と綻ぶ口元が何やら意味ありげだ。

「え、なに? 私、なんか変なことしてます?」
「さあ?」

ニヤニヤ笑う口元の緩みは少しも変わらない。
何かある、というのはわかるが、自分の衣類や手足を確認しても、おかしなところは見当たらない。
146 :あかいしるし :2013/02/20(水) 00:30
なんとなく面白くなくて唇の形を歪めながら再度顔だけで鞘師に向きなおると、手を伸ばしてきた鞘師が石田の背骨を腰から上になぞった。

「ちょ…っ」

石田が身を捩ると、その指は肩甲骨の少し下辺りでぴたりと止まって。

「……ここに、ウチのいろ、あるよ」

ツ、と、指先が石田の背中を撫で、軽く押す。
痛くない程度の強さだったが、それで事態を悟る。

「……さては、跡、つけましたね?」
「いひひ」
「もう!」

ベッドから飛び降り、鏡の前に背中を向けて立ってから肩越しに見ると、
鞘師が示した場所に、鮮やかな朱色がその存在を誇示していた。

「うーわぁ…」
「いひひひ」

悪戯っぽく笑った声が聞こえて、石田はくるりと振り返った。
その勢いに、石田が怒ったと思ったのだろう、それまでうつ伏せで寝転んでいた鞘師が抱えていた枕と一緒に上体を起こす。

「もうっ、ダメじゃないですか!」
「だ、だいじょーぶだよう、ちゃんと隠れるとこだよう」

言い訳する声が弱弱しい。

唇をへの字にしたまま、石田は手早く下着をつけ、ふたりでベッドに入る前に着ていた衣服を身に付けた。
そのあとで鞘師のもとへ歩幅も広く歩み寄ると、鞘師はまた少し姿勢を正し、ベッドの上で正座になる。
147 :あかいしるし :2013/02/20(水) 00:31
「……わざとですね?」
「う…」
「ダメってわかってて、つけましたね?」

叱られる子供のように、鞘師の肩と頭が下がる。

「……そういう悪い子にはお仕置きです」
「ふぇっ?」

油断していたらしいその肩を強く押し、重力に逆らえずにベッドに倒れた鞘師に膝からベッドに上がって馬乗りになる。

「あ、あ、亜佑美ちゃん…っ?」
「はーい、そのまま背中向いてくださーい」

石田が言うと、拒むことは得策ではないと感じたか、それともそうすることも嫌ではなかったか、
さほど大きな反抗も強い反論もないままに、鞘師は枕を抱えたままくるりとカラダ半回転させて石田に背中を向けた。

さらりと、黒髪が鞘師の肩先で揺れる。
その肩越しに顔だけで振り向いた鞘師が困ったような顔で石田を見つめた。

「…つ、つけるの?」
「ダメってわかってて、鞘師さんもつけたでしょ?」

言い訳できないことを悟ってか、目線を落とした鞘師が観念したようにカラダからチカラを抜いたのがわかった。
その鞘師の背中に、石田はゆっくり顔を近づける。

息がかかるほど近づいて、肩甲骨の少し下、自分と同じ場所にそっと唇を押しつけると、僅かに鞘師のカラダが震えた。

「…痛くても、我慢してくださいね」

こく、と僅かに頭が動いたのを視界の端に見届けて、
石田は啄むようなキスを何度か繰り返したあと、わざと噛みつくように強く吸い上げた。
148 :あかいしるし :2013/02/20(水) 00:31
「ん…っ」

短くて、けれど熱い吐息が石田の耳に届く。
冷えた自分の指先が体温の高い鞘師の腰に触れたとき、びくりと全身が震えてベッドの上で跳ねた。

見つかるか見つからないか、ギリギリの場所を探して、跡をつける。
それは朱色の所有印だ。

カラダに跡を残す行為は、自分たちの立場上、許されることではない。
そうと知っていて、それでも残したくなるし、残してほしいと願うのだから、恋ってやつは面倒だ。

それでも、その面倒なことすら、受け入れてしまう自分がいる。

「…見つかりそうなとこ?」
「ちゃんと、ブラで隠れるとこにしました」

唾液で艶めく場所を指先でなぞる。
そのすぐ隣にも、鞘師の知らない、石田が残した跡がある。

「確認しますか?」

見つけたときに鞘師は自分を責めるだろうか。
跡を残したのは鞘師だけでなく、石田もだったと知ったなら。

「……ううん、いい。亜佑美ちゃんがヘマするとも思えないし」

鞘師がどういう反応を見せるか期待半分でいた石田だったが、細く息を吐き出した鞘師を見て、
なんとなく肩すかしを喰らったような気持ちになったけれど、そのままゆっくり鞘師から離れてベッドを降りた。
149 :あかいしるし :2013/02/20(水) 00:31
「…ていうか、お揃いだね、これで」

いひひ、と、顔を赤くしながら笑う鞘師に石田は言葉を見失う。

もしも自分たち以外の誰か(たとえばスタッフとか)に見つかったらきっと叱られるだけでは済まないのに、
そんな杞憂すら吹き飛ぶ程の、魔法の呪文をもらった気がして。

「…こ、こんなこと、今回だけですからね」
「はぁーい」

反省の色が見えない軽い返事を聞いてから石田は鞘師に背を向けた。

好きなのは自分のほうだ。
きっときっと、自分のほうが鞘師のことが好きだ。

そしてたぶんきっと、これからもっと鞘師のことを好きになる。

背後で動く気配がして、鞘師も服を着始めたことがわかる。
そっと振り向き、こちらを向いていないことを確認して、石田はその背中から抱きついた。

「ど、どした?」
「…やっぱり、もうちょっとだけ、ごろごろしません?」

石田の言葉の意味をほんの数秒考えたあと、鞘師はにこりと笑って、石田の腕を引き寄せた。





END
150 :名無飼育さん :2013/02/20(水) 00:31

151 :名無飼育さん :2013/02/20(水) 00:32

思いつきで書いたらやっぱ着地点弱くて駄目ですね…。
えっちぃ雰囲気出したかったのに、私にはやはり無理のようです。
ヘタレですいません。



レスありがとうございます! 

>>142
ヤキモチ焼くのは鞘師さん、というイメージはちょっとありがちかなー、と思ってて、
意外と石田さんのヤキモチもすごいんじゃないかしら…という妄想からこんな話になりましたw
とか言って実はれいなのニヤニヤするとこが書きたかっただけ、っていうのは、どうかご内密に…w
152 :名無飼育さん :2013/02/20(水) 22:54
いつ感想を書こうかと迷っていたのですが、やはりいてもたってもいられず書き込ませて頂きました。

素敵な雰囲気にこちらの脳が転がされっぱなしですw
空気感と距離感がたまりません!
鞘石の不思議な距離感をうまいこと書き上げてらっしゃるというか…w

これからも楽しみにしてます!
153 :名無飼育さん :2013/03/09(土) 01:51
萌キュン(*´Д`)ニヤニヤ
154 :名無飼育さん :2013/03/21(木) 21:56
更新します
155 :名無飼育さん :2013/03/21(木) 21:56

156 :深爪 :2013/03/21(木) 21:56
「…った…」

ぱちん、ぱちん、と、ちょっとしたリズムになっていた音が不意に耳障りの良くない音に変わって、その直後に呻くような不満声。

何か起きたらしいことがわかった石田が振り向くと、
Tシャツにハーフパンツというラフな格好をして床に座っていた鞘師が、広げられていたティッシュの上で足の爪を撫でているところだった。

「どうしました?」
「うー、ちょっと失敗した」
「え、もしかして、深爪しちゃった?」
「うん…」

風呂上がりだと爪も柔らかくなってて切りやすいから、と鞘師がティッシュを数枚広げたのは数分前。
鞘師は笑っていたけれど、石田自身は、入浴後の爪切りはあまり好きではなかった。
何故って、切りやすさに気を取られてしまうことがあるからだ。

今日のレッスンの復習がてらもらっていた資料に目を通していた石田は、そのファイルを閉じてから鞘師に近づいて同じように床に手をつく。
撫でている箇所を見ると、確かに、他よりも少し爪の形が違っていた。

「ちょっと見せてください」
「へっ?」

鞘師からの返答を待たずに手を伸ばして爪先に触れる。

「…思ったよりは深くないかな、大丈夫そう」
「平気だよー」

ほんの少し、答える声に戸惑いを含みながらも鞘師が笑う。
157 :深爪 :2013/03/21(木) 21:56
「亜佑美ちゃん、ちょっとオーバーだよ」
「だってもし傷になってたらって思うじゃないですか」
「たかが爪じゃん」

こちらとしては心配しての言葉だったのに、それを茶化す彼女が憎らしくなって、石田の中に少し困った感情が湧き起こる。

「…そうですね」

むっとしたことを隠すように呟いて、無造作に、無防備に投げ出されている鞘師の足首を掴む。
そのチカラに不穏さを感じ取ったらしい鞘師のカラダがびくりと大きく震えた。

「え、なに」

怯えの窺えた声に曖昧に笑って見せてから、石田はゆっくり上体を屈めて鞘師の足先に顔を近づける。

足の甲に届く直前、吐息が漏れたからか、掴んだ足が僅かに跳ねた。

「ちょ…っ」

悲鳴のような声が聞こえても無視して、足を掴む手のチカラを強くして、石田はそのまま深く削がれた爪に唇を落とした。

軽く触れ、啄ばむように口づける。
けれど決して足の指には触れない。

それを数度繰り返したあとで目だけを鞘師に向けると、手が口元を覆い隠していて、赤らんでいるはずの彼女の顔は半分しか確認できなかった。
158 :深爪 :2013/03/21(木) 21:57
「どうしました? 顔、赤いですよ?」

ふふっ、と鼻先で小さく笑って上体を起こすと、鞘師は唇をへの字に歪めながら、そばにあった風呂上がりに使っていたタオルを投げて寄こした。
難なくそれを避けてかわして、掴んでいた足首から手を離し、膝で歩いて鞘師の顔がよく見える隣まで近づく。

「…な、なんてことするんだよぅ…」

目が合うのを嫌うように顔ごと背けた鞘師の耳が、まだ半乾きの髪の隙間から見えた。
それが赤くなっていることに石田は満足する。

「たかが爪、なんでしょ?」

さっきの彼女の言葉を真似てみる。
すぐに気付いた鞘師の肩がぴくりと揺れて、それから口惜しそうに石田に振り向いた。

「…亜佑美ちゃん、最近ちょっと、意地悪じゃない?」
「ありがとうございます」
「ほ、褒めたんじゃないよ…」

尖らせた唇が可愛くて自然と口元が緩む。

「…ね、もっかいしてあげましょうか?」
「な、なに言って…」

強気で迫る石田の雰囲気に引き腰になって距離を取ろうとする鞘師の声が上ずった。

「じゃあ、こっちにならいいですか?」

どこ、と、眉根を寄せた鞘師に、石田は笑いながら顔を近づける。
また近づいた物理的な距離に僅かに身じろいだ鞘師のカラダをゆっくりと抱きしめて、反射的に顎を引いたせいで見えた額に、石田はそっと唇を押しつけた。





END
159 :名無飼育さん :2013/03/21(木) 21:57

160 :名無飼育さん :2013/03/21(木) 21:58



短くってスイマセン。

ここんとこちょっとイケイケな石田さんに対して押され気味な鞘師さんですがw
鞘石でも石鞘でも、作者はどちらも大好物でありますっ!




レスありがとうございます!

>>152
フィジカル面やメンタル面、仲間にしろ恋人にしろ、関係性の距離感については永遠のテーマなので、
そう言っていただけると本当に嬉しいです。ありがとうございます! 頑張ります!

>>153
(´∀`*)ウフフ
161 :名無飼育さん :2013/04/08(月) 08:07
(*´Д`) にやにやハァーン
162 :名無飼育さん :2013/05/06(月) 21:32
更新します
163 :名無飼育さん :2013/05/06(月) 21:33

164 :kissing you :2013/05/06(月) 21:33
――― 明日休みだしさ、よかったら、うち、こない?


ちょっと俯きながら言った鞘師に、断る理由のなかった石田はふたつ返事で頷いた。

改まって誘ってくるってことは、つまり、そういうことなのかな、なんて期待なんかもしつつ、
お先にどうぞ、と言われた入浴も済ませて鞘師の部屋に戻ると、学校の宿題だろうか、勉強机に向かって何やらノートに書きこんでいて。

「お風呂、いただきましたー」
「はーい」

答えはしてくれたけど、こちらに振り向かないのがなんだか淋しくなって。

「宿題ですか?」

背後から覗きこむようにノートの中身を見たら英単語がびっしり並んでいた。

「…わお」
「ちょ、覗かないでよー」

腕でノートを隠し、ちょっと唇を尖らせる。

「ダイジョブ、ちんぷんかんぷんデース」

カタコトの日本語を話す外国人のように告げてホールドアップして見せると、石田の仕草にきょとんとしたあと、小さく吹き出した。

「ウケルー」
「英語はホント、ダメなんですよぅ」
「ごめんね、もうちょっとで終わるからさ、そしたらパパッとお風呂も入ってくるから」
「いやいや、ゆっくりでいいですって。明日おやすみだから、朝寝坊したって平気ですし」
「ホントにあとちょっとだから」
165 :kissing you :2013/05/06(月) 21:34
石田の気遣いを遠慮と捉えたか、ちょっとムキになったように真一文字に結ばれた唇のカタチを見て石田はそっと息を吐く。

宿題に向きなおったその横顔をこっそり眺めているのも実は楽しい、だなんて言ってしまうのは簡単だったが、
気になることを終えて、気兼ねなく過ごす自分との時間をなるべく早く作ろうとしていることもわかるだけに、鞘師の言動をそれ以上強く制限することは憚られた。

テレビをつけようとして、音が宿題に邪魔になるかも、と思い留まり、
なんとなく手持無沙汰になって首に巻いたままだったタオルを外してくるくる腕に巻いてみる。

そのまま鞘師の横顔を盗み見て、左腕で頬杖をつくようにしている姿勢を眺めて、その腕のすぐそばにあるマグカップが目に留まる。
運んで来たときは熱いコーヒーだったはずだが、湯気が見えないことで中身はもうぬるくなってしまっているんだろう。

何かの拍子でそれに当たって倒して中身を零してしまいそうな構図が思い浮かんで、
そのマグカップの場所を変えようと石田が手を伸ばしたのと、
一段落ついたらしい鞘師がホッとしたように上半身を軽く起こして曲げていた左腕を下ろしたのが同時になった。

石田が伸ばした右手がマグカップを掴んで浮かしたら、鞘師が下ろした左腕がそれに直撃して中身が波打つ。

「ぅわ」

石田の短い悲鳴と腕に当たった小さな衝撃に気づいて鞘師は反射的に腕を戻したが、
思うよりぶつかった衝撃は強かったようで、中身が石田の腕に巻かれていたタオルの上と、床と、鞘師が着ていたパーカーの袖へと零れた。

淡いピンク色のパーカーに、コーヒーの独特な色がじわりと滲む。
166 :kissing you :2013/05/06(月) 21:34
「鞘師さんっ」

事態を悟った鞘師より、カップを持った石田のほうが反応は早かった。

持ったカップを置き、腕に巻いたタオルをほどき、零れたほうの鞘師の腕を掴んで持ち上げる。

「大丈夫ですかっ?」
「あ、ぅん、もうぬるくなってたから、へーき…、でも、あゆ」
「ちょっとすいません、脱いでください」
「ふぇっ?」
「コーヒー、染みになっちゃいますから、早く脱いで」
「えっ、いや、だ、だいじょうぶ、すぐお風呂入るから、そのとき洗濯に」
「ダメです、早くしないと」
「ちょ、ま…っ」

戸惑う鞘師に焦れったくなって、鞘師が制そうとするのを遮るように、石田は膝立ちで鞘師の首元に手を伸ばす。
鞘師が着ていたのはフルジップのパーカーだったので、少し強引だとは思ったが、それを下ろしてしまえば渋々でも脱いで渡してくれると思ったからだ。

しかし。
鞘師が石田のその行動を予測できなかったのをいいことに、勢い込んでファスナーを下ろした瞬間、目にした光景に石田は硬直する。

首元ギリギリまであげてあったとはいえ、てっきり中にもTシャツかタンクトップを着ていると思っていたのに、
石田の目が捉えたのは、パーカーの色と似た薄いピンクの下着だったからだ。

動きが止まったその一瞬、鞘師が石田の手を強く払って開かれた胸元を両手で引き寄せる。
その一連の動きにハッとして、石田は慌てて鞘師から手を引いて顔を逸らした。
167 :kissing you :2013/05/06(月) 21:34
「ご、ごめんなさいっ」

別に、下着姿など今初めて見たわけではない。
舞台衣装なんかはもっと肌の露出もあるし、下着よりキワドいタイプのものもある。
それは鞘師に限らず他の先輩メンバーのものも飽きるほど見てきている。

プライベートにしたって、深い意味で「抱き合った」ことはまだ数えるほどしかなくても、
手で、唇で、互いの肌に触れたり触れられたりしたことは何度もある。

それでも。
無防備なそれを、こんな経緯で目にすることに酷く罪悪感が生まれた。
鞘師にしても、不本意だからこそ隠したのだろう。

「ごめ、ごめんなさい。あの、ホントに、あの…、ごめんなさい、私…」
「……いいよ、わざとじゃないのは、わかるし」

顔を逸らしていたので動作は見えなかったが、ファスナーの音がしたのでそろりと目線を戻すと、
椅子に座ったままの鞘師は衣服を先ほどと変わらない程度に整えていて、石田と目が合ってから、石田の傍らにあるタオルを指差した。

「それももらっとく。一緒に洗濯するよ」
「あ、はい…」
「…お風呂、入ってくるね」

タオルを受け取ってから鞘師が立ち上がる。
何を言えばいいか思い浮かばず、ただ見上げることしか出来ない石田に、
鞘師は苦笑いを浮かべながらも、何も言わずにマグカップも一緒に持って部屋を出て行った。
168 :kissing you :2013/05/06(月) 21:35
室内が静かになって、石田はそのままテーブルに突っ伏した。

自分の失態が恥ずかしくて、申し訳なくて。
だけど、ほんの一瞬見えただけの、見慣れたはずの鞘師の肌と下着に、あっという間に高ぶる自分が情けなくて。

触れたいだとか触れてほしいだとか、自分にもこんな感情があったんだと、鞘師といるときはいつも思い知らされる。
触りたがるのはいつも鞘師のほうで、石田はそんな鞘師を甘やかす立場でも充分満たされていたのだけれど。

たぶんきっと、鞘師は石田の考えたことがわかったんだろう。
でなければもっと強く石田に文句を言ったはずだ。
部屋を出ていくときの曖昧な笑い方がそれと確信させる。

こんなことで自分たちの関係が変わるとは思ってはいないが、
このあと、入浴を済ませて戻ってくる鞘師をどんな顔で迎え入れるべきかに悩まされる。

ほー、と長く溜め息をついて、床に残っている、先ほど零したコーヒーの染みを見つける。
幸いにもカーペットの上には落ちなかったようで、ざっとみても他に目立つ染みは見られない。
机の上の教材などにも零れなかったようで、石田はホッとしながら、とりあえず、テーブル周辺を片付けた。
169 :kissing you :2013/05/06(月) 21:35


鞘師が部屋に戻ってきたとき、その髪がまだ濡れていたのは石田には意外だった。

やはり気まずさは鞘師も感じていたようで神妙そうな顔つきはしていたが、
地方公演などでホテルの部屋が一緒になったりしたときでも、髪を乾かさずにいたことはない。

不思議に思った石田が首を傾げると、鞘師の手にはドライヤーがあった。

「……亜佑美ちゃん、やってくれる?」

言いながら鞘師は持っていたドライヤーを石田に差しだす。
ほんの少し上目遣いで強請られ、先ほどの罪悪感もあった石田は、声もなく首を縦に振るしか出来なかった。

椅子に座らせ、背後に立つ。

「…熱かったら言ってくださいね」
「うん」

ドライヤーの音はそれほどうるさくはなかったが、温風を当てている間、鞘師からはなにも言葉を発しなかった。
170 :kissing you :2013/05/06(月) 21:35
櫛は使わず指で梳いて乾かす。
何度かこの髪に指を絡めたり撫で梳いたことはあったが、濡れている髪を乾かすのはもちろん初めてだ。

「…なんか、緊張します」
「? なんで?」
「だって、鞘師さんの髪乾かすのとか、初めてだし」

わざと軽い口調で言った石田だったが、背後からでも、鞘師の肩先が僅かに緊張したのが伝わる。

「……ウチも」
「へ?」
「…ウチも初めて。…誰かに、乾かしてもらうの」

とん、と、胸の奥のほうを押された感覚がして、一瞬石田の手が止まった。

「あ…、え、そ、そうなん、だ?」
「うん」
「そ、そんなこと聞いちゃったら、ますます緊張しちゃいますよぉ」

なんでもないフリを装ったが、鞘師は石田の動揺に気づいただろう。
そっと振り向いて石田を見たあと、照れくさそうに笑った口元にまた石田の胸が鳴る。

「ちょ…、反則…」

思わず漏れた声は鞘師の耳には届かなかったようだけれど。
171 :kissing you :2013/05/06(月) 21:35
平常心でいなければ、と思うのに、触れている髪の柔らかさに気持ちが揺らぐ。
時折石田の指が当たってしまう肩先や、撫で梳いているせいで見えるうなじを直視することも難しくなってくる。

それでもなんとか堪えていたけれど、
撫で梳く髪に湿った部分が感じられなくなり、そろそろ終わらせてもいいかと思った直後、
まるでそれを待っていたみたいに、鞘師はぽつりと、つぶやいた。

「……そういうウチの初めては、全部、亜佑美ちゃんだといいなあ…」

聞かせる気だったのか、それともそんなつもりはなかったのか。
まだ温風を吐き出す音にまぎれた鞘師の言葉は、もう少し離れた場所にいたらきっと聞きとれなかっただろう。

石田はまだ作動しているドライヤーを右手に持ったまま、たまらなくなって左手で自身の顔を覆った。

鞘師の発した言葉は、石田にしかその威力がない。
その威力は他を寄せ付けないほど絶大なのに、それを鞘師は理解しているのだろうか。

無言のまま離れてしまった石田に少し不安になったのか、鞘師がそっと振り向く。
そして、顔を赤らめている石田を見たあと少しだけ目を丸くして、悟ったようにまた前を向いた。

「……聞こえました、から」

スイッチを切ったドライヤーを机に置いて、椅子に座ったままの鞘師の髪を後ろから撫でる。
指に絡め、その毛先を口元に運ぶ。
鞘師がどこまで感じとれているかは不明だけれど、まだ少し温風の熱が残る後ろ髪をひとまとめにして肩越しに顔の横に流したら、
このあと石田の起こす行動を予測出来たらしい鞘師の肩先がぴくりと揺れた。
172 :kissing you :2013/05/06(月) 21:36
「……私で、いいんですか?」

見えているうなじに顔を近づける。
吐息がかかったのか、また少しカラダが震えたのがわかった。

否定の返事はされないとわかってて質問をするのは卑怯な気もしたけれど、目の前で首を小さく縦に振ったのを見てから、ゆっくりうなじに唇を寄せる。

触れた瞬間、弾かれたように揺れたカラダを背後から二の腕を掴んで身動きを制限する。
もちろん、本気で嫌がれば離すつもりではいたが、強い抵抗などと言うには不似合いなまでの小さな反発にすら遭うことはなくて。

ちゅ、とわざと音を起てて吸いあげる。
跡を残すわけにはいかないので舌先で付け根まで辿ったら、二の腕を掴んでいた手をそっと撫でられた。

「……鞘師さん?」

顔を上げると、鞘師が頬の色を少し赤くして振り向いた。
石田と目が合い、一瞬だけ目を逸らしたけれどすぐにまた見つめて、それから静かに椅子から立ち上がる。

戸惑う石田の手を引き、そのままベッドまで歩いて引き寄せるように石田を抱きしめてから、一緒にベッドに沈んだ。
173 :kissing you :2013/05/06(月) 21:36
「鞘師さん」

正面から抱きしめられたことで近い距離になった鞘師の耳に呼びかける。
返事の代わりに、ぎゅっと強くしがみつかれた。

「…私にできることで、鞘師さんがしてほしいこと、ありますか?」

恥ずかしさもあるんだろう、見えている顔はどんどん赤くなっていくのに、石田の背中にまわされている腕のチカラは弱まるどころか強くなるだけで。

「……い、いっぱい、…ちゅー、して、くれる?」

甘えたような鼻にかかる声が石田の胸を鳴らす。
堪えていた感情に火をつける。
抱きつかれていることで感じている少しの息苦しさも、沸き上がる愛情と熱で気にならなくなる。

「…かしこまりました」

わざとそんなふうに言ったら一瞬きょとんとしたあとで鞘師は吹き出して、緊張気味に歪んでいた唇が綻んだ。
それを見て、石田はどこよりも一番最初に、そこに触れた。





END
174 :名無飼育さん :2013/05/06(月) 21:37

175 :名無飼育さん :2013/05/06(月) 21:37




えーとえーと。
なんかすいません、としか言葉が出ません。
この先は期待されてもありません今の私にはとても書けません…。



レスありがとうございます!

>>163
(*´д`)イヤァ-ン!!
176 :おるぷち :2013/05/07(火) 20:54
か、かわいい!!!!
177 :名無飼育さん :2013/06/18(火) 06:02
(*´Д`)きゃわー
チューSSが大好物だからもっとチューしてくれw
178 :名無飼育さん :2014/02/28(金) 00:30
更新します
179 :名無飼育さん :2014/02/28(金) 00:30

180 :all over :2014/02/28(金) 00:31
髪を乾かし終えたタイミングを待っていたように、
ドライヤーを片付け、ベッドの端に座ってホッと息をついた途端、背中からゆっくり抱きしめられてドキリとした。

近くにいることはわかっていたし、さっきから視線も感じてはいた。
こちらの手が空くのを待ってることもわかってたので、出来得る限り、手早く済ませたつもりだった。

それでも戸惑ったのは、自分が思うより、抱きしめてきた腕のチカラが強く、どこか切なげだったからだ。

「さやしさん?」

ひそりと肩越しに呼びかけたら、また更に腕のチカラが強くなった気がした。
息苦しさや痛さはなかったけれど、縋るようでいながら、それを言うつもりはないのが感じとれて石田の気持ちを揺らす。

「どうかしました?」

答えないだろうと思いつつ、まずは聞いてみる。
石田が思ったとおり、鞘師は答えず、ただぎゅっと石田を抱きしめるだけで。

ふ、と小さく息を吐き、石田はそっと、自分の胸辺りにある鞘師の腕を叩いた。

「…ちょっと、離してくれます?」

軽く撫でるように叩いただけなのに、石田の言葉が拒絶だったことにギクリとしたように鞘師のカラダが揺れる。

「離してください」

少し口調を強くすると、拒まれるとは思いもしなかったという雰囲気を纏って、鞘師はそろりそろりと石田から離れた。
181 :all over :2014/02/28(金) 00:31
拘束のようだった一方的な抱擁から解放されて石田はまた細く息を吐き出し、それからくるりと背後に振り向く。

気まずそうに反射的に顎を引いた鞘師が上目遣いで見つめている。
その瞳に傷ついたいろが見えて、石田は結んでいた口元を緩めて口角を上げてから、
まだ石田の心中を読み切れていない鞘師に向けて両腕を広げた。

「どうぞ」
「え…?」
「…こっちのがいいでしょ?」

僅かに首を傾げて見せたら、鞘師はハッとしたように目を見開いた。
石田の言おうとしたことをようやく理解して、けれどまた少し顎を引いて、おそるおそる、正面から抱きしめた。

「…ほら、やっぱりこっちのがいい」

近くになった鞘師の耳元で囁くと、掠れるような声で、うん、と返事が返ってきた。

「ね?」

耳元で笑ったせいか、くすぐったそうに身を捩られる。
抱きしめてくる腕のチカラがまた強くなって、その強さを心地好く思う心を読んだように、鞘師の重心がゆっくり石田のほうへ移る。
抵抗する気などなかったぶん、石田のカラダは何の躊躇も障害もなく鞘師と一緒にベッドへと沈んだ。
182 :all over :2014/02/28(金) 00:32
鞘師のカラダの重みを自身のカラダで感じながら、うっとりと目を閉じて肩先に頬ずりをしたら、
石田を抱きしめていた鞘師が溜め息をついたのが伝わった。
それがなんだか自分の思う熱と違うように感じられて、少しだけカラダを離して鞘師の顔を見ると、何故だか苦笑いを浮かべていて。

「? どうしました?」
「……やっぱ、亜佑美ちゃんには敵わないなって」
「え?」
「ウチばっかり、好きみたい」
「はぃ?」
「…亜佑美ちゃんがウチのこと想ってくれてるのより、絶対、ウチのほうが亜佑美ちゃんのこと好きだと思う」

それまで特に遮ることなく黙って聞いていた石田だったが、
見るからに不服だとわかるほど唇のカタチを歪めると、鞘師の肩を押し返すようにしながら勢いづけて起き上がった。

抱きしめていた鞘師の腕を解くように自分から離し、じっと、上目遣いで鞘師の顔を見つめる。

不機嫌、というほど機嫌が悪いようではないが、それでも数秒前とは違う雰囲気を纏っている石田に見つめられ、
自分の気づかないところで、何か石田の気分を害するようなことをしてしまったということは察した。

「違いますよ」
「…え、と…、なにが?」
「鞘師さんが、じゃなくて、あたしが、です」
「…ぅん?」
「あたしのほうが、鞘師さんのこと、好きなんですよ」
「ふぇっ?」

鞘師の反応に満足したように、肩を竦め、石田が愉快気に笑う。
183 :all over :2014/02/28(金) 00:32
「鞘師さんがあたしのこと想ってくれてる以上に、あたしのほうが鞘師さんのこと好きってことです」
「な、なに、何言って…、そんなの、そんなわけ…」
「そんなわけあるんですって」
「違うよ、ウチだよ、ウチのほうが亜佑美ちゃんのこと好きなんだよ」
「違いますぅ」

普段、年下扱いされても少しも気にもならないのに、今は何故だか軽く見られている気がして、鞘師の中で反抗心が強くなる。

「違わないよ、ウチだよ。ウチのほうが先に好きになったんだから」

そう言うと、それまで少し強気だった石田が僅かに怯んだのがわかった。

「…順番は、関係ないですよ」
「ある」

声を強くしたら、石田はさりげなく鞘師から目を逸らした。
怯んでいるのは明白で、そしてそれは鞘師の言葉に間違いがないことを認めたことにもなる。
やはり自分のほうが気持ちは強いという自信に後押しされて、追い打ちをかけることにも躊躇はなかった。

「ウチが先に亜佑美ちゃんのこと好きになったんだよ」

しかし、繰り返されて逆に開き直ったのか、不本意そうに口元を歪めながらも、石田の視線が戻ってくる。
184 :all over :2014/02/28(金) 00:33
「……先に好きになったほうが気持ちが強いっていうのは根拠として弱いと思いますけど」
「あと、好きって言ったのもウチからだった」
「…っ、そ、れは、そうですけど…」
「ほら! ウチのほうが亜佑美ちゃんのこと好きじゃん!」
「や、だから、それが基準っておかしいでしょ。そもそも鞘師さん、あたしがいつから鞘師さんのこと好きだったか知らないじゃないですか」

言われて、確かにそのあたりの確認はしたことがなかったと思い至る。

「でも、ウチよりあとでしょ」
「なんなんですか、その根拠のない自信…」
「根拠ならあるよ。だって今、亜佑美ちゃん、ウチに言い返すことで言い訳探してるもん。それってウチの言うことが正しいからでしょ」

また図星を指されたのだろう、今度こそはっきりわかるほど表情に困惑を滲ませて息を飲んだ石田に、鞘師は得意満面に胸を反らして見せた。

「ほら、ウチのほうが亜佑美ちゃんのこと好きってことじゃん」

言い返す言葉が見つからないのが本当に悔しいのか、唇を噛んで上目遣いで見つめられて、それがますます鞘師の気分を高揚させた。

「……順番は、関係ないって、言ってるじゃないですか」
「あるね」
「ないですよ」
「あるって」
「ないです」
「ある」
185 :all over :2014/02/28(金) 00:33
次第にお互いがムキになっているのも気づいていたけれど、どうにも引き際がうまく見つけられない。
出口のない押し問答になってきて、同じ言葉を繰り返しているうちに、苛立ったように石田が眉をしかめた。

「…っ、気持ちなんて見えないんだからどっちが強いとかわかんないでしょ!」

そしてとうとう、語気を荒げて石田が怒鳴った。
その勢いに顎を引いてしまった鞘師に、ハッとしたように口を覆って気まずそうに首を振る。

お互いのこういった言い合いに関して、石田のほうが食い下がるのは珍しいことだと少し冷静になってからふと思う。
それは石田のほうにも自覚があるのだろう、ちいさく、ごめんなさい、と呟かれて、鞘師も石田と同じように首を振った。

「…珍しいね、亜佑美ちゃんが怒鳴るの」
「すいません…」

口元を押さえたまま目を合わそうとしない石田の視界に入ろうと覗きこむと、僅かに身を引いた石田が鞘師から逃げるように顔ごと逸らす。

「…ていうか、ウチら、なんでこんな言い合いしてんだろね?」

鞘師の声色に柔らかさを感じとった石田がゆるゆると視線を戻す。
竦ませるように張っていた肩からもチカラが抜けていくのが鞘師の目にも見て取れた。

「…だって、鞘師さんが」
「うん、言いだしたウチから言うのもあれだけど」

気まずくなりそうな雰囲気にならないようにか、石田の言葉尻を鞘師は静かに奪う。

「…どっちも同じ、じゃ、ダメ?」

鞘師から投げられた提案に石田は一瞬息を飲んだあと、細い息を吐き出しながらゆるりと首を振った。

「ダメ? なんでダメ?」
「……どうしても譲れないこと、って、あるんです」
186 :all over :2014/02/28(金) 00:33
鞘師から微妙に目を逸らしてはいたが、石田の纏う空気と声の強さから、
石田自身の持つ負けず嫌いの性格が高じての意地からくる反論や反抗心ではない、ということがわかる。

同時に、今まで感じていたものより更に強く、石田から想われている、という自信が膨らんだ。

なんとなく、拒まれそうな気もしたけれど、鞘師はゆっくり、石田に手を伸ばした。
視界に入った鞘師の手に気づいた石田が反射的に顔を上げるのを待って、
もう一方の手も伸ばして、そっとそっと、石田の細いカラダを抱きしめる。

「さやしさん?」

耳元に届く不安気な声すら愛おしく感じて、抱きしめる腕のチカラを少し強める。

石田のいう「譲れないこと」は他の誰でもなく鞘師のことだ。
石田は石田なりに、鞘師のことを強く意識して、想ってくれているのだろう。

「…あのね」
「はぃ…」

鞘師の声が自信に満ちていたからだろうか、応える石田の声が僅かに怯んだように感じられて、
逸る気持ちを抑えながら、鞘師はゆっくり息を吸い込んだ。

「どっちの気持ちが強いとかはっきりさせるより、どれだけ相手を想ってるかを伝える、ってのは、どうでしょう」
187 :all over :2014/02/28(金) 00:34
鞘師の言おうとしたことがすぐには理解できなかったのか、鞘師の腕の中で石田が考え込んだのが空気で伝わる。
綻びそうになる口元を堪えつつ、少し上体を離して石田の顔を覗きこむと、噛み砕いた説明を求める視線が向けられた。

「伝える方法はなんでもいいからさ」
「…方法?」
「そう。…たとえば、こんなふうに」

言いながら、僅かに首を傾げている石田の額に口づけを落とす。
ほんの一瞬触れただけだったが、再び石田の顔を覗きこんだら、鞘師の意図を理解したのか、頬を微かに染めていて。

「言い合ったり張りあったりするより、こっちのほうが、お互い、有意義な気がしない?」

正直、鞘師にも気障ったらしい言い回しをした自覚はある。
見つめてくる石田の口元が次第に笑いを堪えるように震え出して、
吹き出される前にその唇を自らのそれで塞いで見せたら、僅かにカラダを揺らしたあとで、石田の手が鞘師の服の裾を掴んだ。

唇の端をぺろりと舐めて離れると、上目遣いの石田が意味ありげに微笑んでいるのが鞘師の目に映る。

「…なんで笑ってるの?」
「えー? 鞘師さんのむっつりさが可笑しくて」
「ちょ、むっつりって、ひどいな!」
「違いましたっけ?」
「……悔しいことに否定できない」

への字に唇を歪ませた鞘師に堪え切れず、石田が盛大に吹き出す。
先ほどまでのどこか気まずい空気は既になく、笑っている石田を見て鞘師もホッとする。
188 :all over :2014/02/28(金) 00:34
笑いのツボの浅い石田がばしばしと鞘師の肩を叩く。
痛みはないけれど、笑われ続けるのはさすがに面白くない。

石田の手を捕まえると笑いが止んで、でもやはりどこか可笑しそうに鞘師を見上げる少し色素の薄い瞳と唇に目だけでなく気持ちごと奪われる。

「…じゃあ、今から、やってみます?」

誘うように笑った石田に導かれるように。
さっきよりまた少しだけチカラを込めて、鞘師は石田のカラダを抱きしめた。

「…結構、激しいかもよ?」
「受けて立ちましょう?」

自信ありげな石田の声は、鞘師のカラダに甘い痺れを呼び起こして。
急激に湧きあがってきた感情に心ごと身を任せるように、鞘師は石田の耳の奥へと、囁いた。

「…覚悟してね」

時間をかけてゆっくりと、だけど誰よりも何よりも誠実に。
どれほどキミを好きか、思い知らせてあげる。





END
189 :名無飼育さん :2014/02/28(金) 00:34

190 :名無飼育さん :2014/02/28(金) 00:35



久しぶり過ぎて書きこむのになんだか時間がかかってしまいました。
着地点が相変わらず弱くてすいません。


今回更新分にて、このスレでの更新は終了とさせていただきます。
読んでくださった皆さま、レスを下さった方々、たくさくたくさん、ありがとうございました。
191 :名無飼育さん :2014/02/28(金) 23:31
言い争う姿すらもイチャついてるとしか思えないw
作者さんお疲れ様でした
素敵な鞘石をありがとう
192 :名無飼育さん :2014/03/01(土) 16:28
お疲れ様でした。
作者さんの小説でより鞘石が好きになった身としては、終わるのは寂しく思いますが久々に読めて嬉しかったです。
今回の作品を読んで改めて好きだなと実感しました。ありがとうございました。
193 :名無飼育さん :2015/11/02(月) 22:58
>>195
あれもアンチがヲタクに私信してるとは言ってたが
あんな高価なマフラーだったら自分で買わないだろうし私信だろうが道重だろってなってただろ

新着レスの表示


掲示板に戻る 全部 次100 最新50

現在のスレッドサイズ:147137 byte

名前:

read.cgi ver5.27 + 0.02 (04/08/03)