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好意と敬意

1 :名無飼育さん :2012/06/22(金) 23:39
2012年6月以降の娘。をメインにしたCP短編集になる予定です。

前の短編スレ
情状
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/grass/1271076840/
174 :名無飼育さん :2012/10/10(水) 22:46
「おおだまミルキー! 食べてくださーい!」
「……まーちゃんありがと。一個だけもらうね」
「二個でも三個でも四個でも食べてくださいっ!」

悪気のない押し売りを笑顔でかわしつつ、鞘師は飴をひとつだけ口に入れた。
口内に優しい甘みが広がっていく。

「……んまい」

思わず呟いてしまった。
そして、ひとつだけ、というのが急に惜しくなった。

「あ、やっぱ二個くらい持って帰ってもいい?」

左上を向いて尋ねると、そこから鞘師を見下ろしていた佐藤は、
大袈裟に両手をスッと前に差し出しながら

「どーぞ!」

と答えてくれた。
でも、礼を述べたらどこかに行ってしまった。
175 :名無飼育さん :2012/10/10(水) 22:48
「……おいおい、余りはどうすんだよ」

独り言を言いながら飴をひとつ摘み上げて、なんとなくその包み紙を開いて見る。
直径二センチ程度の乳白色のアメには、よく見ると手で丸めたような皺があった。
この大きさといい……
いろんな角度から観察しているうちに、脳裏に蘇る苦い記憶。

ホテルが同室になった日の朝に、着替えていた石田の、ちょっと個性的だった臍の形に
目を奪われてしまった鞘師は、好奇心に負けてそれに触れようとしたことがある。

すると、その手を強く叩かれた。
驚いて手を引っ込め、思わず石田の表情を窺う。
無表情で、目が合ってもこちらを睨むわけでもなく、艶やかな唇が言葉を発することもない。
母親から躾けられたような気持ちになると同時に、さあっと血の気が引いていくのを感じた。
ごめんなさい、と一言謝って、すぐに全く関係のない話題をこちらから振った。
石田はその話題には乗ってくれたものの、直前の出来事に関しては一切触れてこなかった。

以来それはタブーのひとつとして、鞘師の心に深く刻まれた……
176 :名無飼育さん :2012/10/10(水) 22:50
コンプレックスだったのかもしれない。弱いところだったのかもしれない。
本当のところはわからない。

純粋に、どんな感触なのかを知りたかっただけ。
石田のことなら何でも知りたかっただけ。
けれど、彼女にとっては、知ってほしくないことのひとつだったみたいだ。



しょうがない。しょうがない。
でも。でもでも。



気が付くと鞘師は、飴を人差し指と親指の腹で転がしていた。
いったん包みから出したものを戻すのも気が引けてしまって、
まだ口の中に飴が残っているにもかかわらず、えいっとそれを口の中に放り込んだ。
……甘すぎてちょっと吐き気がした。
177 :名無飼育さん :2012/10/10(水) 22:51
>>171-176 若きサヤシリホの悩み
178 :名無飼育さん :2012/10/10(水) 22:54
ちょうど書ききった頃にちょっとした偶然が起こりまして。べっこう飴……
このワクテカチャンス逃すかーい!
179 :名無飼育さん :2012/10/10(水) 22:54

180 :名無飼育さん :2012/10/11(木) 21:50
ノリ*´ー´リ<だーへそとだーびるは究極と至高!
181 :名無飼育さん :2012/10/17(水) 13:28
二作品続けて読みました やっぱし鞘石好きだー
クレアバよけい見たくなりました!DVDに入らないかな…
しかしだーちゃんはどんだけ萌ポイントを持ってるんだー!
182 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:19
でっかい宇宙に愛がある(Saya Ishi Ver.)
183 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:21
いいなー海外いいなー行きたいなー
ていうかとーくに行きたいなーいいなー亜佑美ちゃんはーズー↓ルー↑イー→

グッズにコメントを書きながら、隣の鞘師が聞こえるように独り言を言っている。
石田は最初苦笑いしていたが、いい加減しつこく感じるようになってきた。
何か言わないと喋り続けられるだろう、という確信もあった。
けれど、お土産を買ってくる、なんて当たり前すぎて、かえってこっちが言いたくない。

何か特別な、鞘師の心を捉えられそうなこと……

「……あ、じゃあ、帰ってきたらどっか遠いところに連れてってあげましょうか?」
「遠いとこって? どこ?」
「それはこれから考えます。けど、そんなに言うならちゃんと決めますよ」
「っうん! 連れてってくれるならどこでもいい!」

石田の提案に、鞘師はパッと表情を輝かせてこちらを見た。
思わず心の中で拳を突き上げる石田。

「アハハ! わかりました。考えときますね」

と言いつつも、“考え”は半分くらいかたまっていた。
184 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:23
そんなことがあって、出国前のある日、石田はまた自室に鞘師を招いた。

年下の先輩は、ある時から部屋に来ると真っ先にベッドサイドに腰をおろすようになった。
もう定位置になっていて、時間が経つと更に奥の壁に背をもたれて両足を投げ出すのだ。

石田は幸い、鈴木ほど自分のベッドに執着がない。
何せリホックマが初めて来室した時も、そのまま一緒に昼寝をしたくらいだ(ちなみに、
寝起きのリホックマは頬にゴムの跡が付いていた)。
だから着替えずに上にあがって寝転がろうと壁にもたれようと、相手は鞘師だし一向に
構わないのだが、ある時その壁に長い髪の毛が張り付いているのを発見して、
思わず壁を叩いて笑ってしまった、と石田が告白すると、鞘師は無言で背筋を伸ばした。

「あ、別に構いませんから」
「でも、気をつける。だらしないよね」

行儀の悪さを指摘したつもりではなかったのだが、本人がこう言っている以上、
こちらが他に何か言う必要もないだろう、と思った。
ただ、こういう切り替えができるなら部屋の掃除もできそうなのにな、
とはちょっとだけ思った。
185 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:25
それから、目ざとい彼女(そうまるで“彼女”みたい)に、机の本立てにあった
タイ語のハンドブックを発見されて。
すると、前にも見た“拗ね鞘師”が徐々に顔を出してくる。
いいないいな、と唇を尖らせて言う鞘師を見て、ここぞとばかりに問いかけた。

「この前、何て言ったか憶えてます?」
「……ウチなんか言ったっけ」
「帰国したら、遠くに行きたいから連れて行けって」
「……あー」

ちょっと発言を脚色したにもかかわらず、言ったねえ、と鞘師は大きく頷いていた。
石田は笑いを堪えながら続ける。

「それでね、ちゃんと考えたんですよ?」
「え、ほんとに連れてってくれんの?」
「もちろん」

そして自分の定位置だった勉強机用の椅子から立ち上がり、鞘師の隣に腰をおろした。

「それも今から」
「いまから?」
「今から連れてってあげます」
「ど」

どこに、と言いかけたところで、石田はその鞘師の太腿に手を添える。
186 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:29
「…………」
「あ、あの」
「遠いところに」

目を見て言うと、真意に気付いてしまった鞘師はみるみる顔を紅くさせて、
石田からも視線を逸らした。

「そ、そういうことだったん……だ……」
「……すいません、騙すつもりじゃなかったんですけど。
 結構会えなくなるから、と思って」
「いやっ、んなこと思ってないよ!? ただ、び、びっくりしちゃって」

鞘師はまだ自分を見てくれない。

「じゃあ、こっち向いてください?」
「ぅ……」

すると、時間をかけてゆっくりと視線を戻す鞘師。
それをじっと見守っていた。

多少抵抗されても押し切るつもりだ。
そう思って、次に何が起こっても迫る体勢でいたら、手元にぬくもりがおりてきた。
腿に触れていた手の上から、相手が自分の手を添えてきたのだ。
軽く握られて、次の瞬間、その力が強くなる。
段階をもって気持ちを訴えかけられ、ものの見事に石田の心も掴まれてしまった。
誰が呼んだか、策師里保。
187 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:31
「……どのくらい遠いとこまで行けんの」
「え? っと……空の上、いや! それよりもっと上に」
「ほんと? 話盛ってない?」
「……前はどうでした?」

少し冷静になって、ちょっと意地悪な質問を投げかけてみる。
鞘師はまた唇を突き出して、憶えてない、と突っぱねた。

「だって、結構前の話じゃん」
「でしたね。あの時はすいませんでした」
「だから! 悪いなんて思ってないって。あ、でも」
「で、でも?」
「あん時キスしてくれなかったのは、超寂しかった」

石田は慌てて、強引に鞘師の唇を奪った。
離れると甲高い声で笑われて、しまった、と悔やむがすでに遅い。
鞘師の笑いがおさまるまでにひどく汗をかいて、手元もじっとりと湿ってくるのが
わかったので、やっぱりちょっと強引にそれを引いた。
それからベッドの上に跳びのって、

「あの! ……これからは、できるだけ寂しい思いさせませんから」

と、真剣に訴える。
年下の先輩は自分の真似をして、同じようにぴょんとベッドの上に跳んだ。
……気が付くと、どういうわけかお互い正座した状態で向かい合っていた。

「ねえ、なんかあれみたいだね。お嬢さんを僕にください! みたいな」
「うーん、ちょっと違うかな」
「ぶー、ものの例えじゃんか。ノリ悪いよっ」
「だってそんなこと言いませんもん。…………里保さんを、“連れて行きます”」

そして、その、行き先は……
きっと宇宙くらい遠くまで。
188 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:33


「……寂しい」
「えっ!?」
「臍に触らせてくれなかった」
「そ、そっちか……!」
「期待してたのに」
「鞘師さん、お願いですから聞いてください」
「……なに。てかもう里保でいいのに」
「さっきのはノリで言っちゃったんで。
 あのね、痛いんです。ここいじられると」
「えっ、そうなの!? もっと早く言ってよぉ」
「前もって言うことじゃないじゃないですかっ」
「でもそういうことなら、触んなくて良かったんだ。
 危うく嫌われちゃうとこだった」
「そんな、それくらいじゃ嫌いになんてなりませんよ」
「じゃあ、どれくらいじゃ嫌われるのか教えてよ。憶えておくから」
「えー……?
 教えないから、いろいろ試してみたらいいんじゃないですかぁ?」
「な、何てことを言うんだ……」
「…………へへっ」
189 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:34
>>182-188 でっかい宇宙に愛がある(Saya Ishi Ver.)
190 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:34
レスありがとうございます。

>>180
ノリ*´ー´リ<だーeyeとだー筋は崇高と芸術!

>>181
私もクレアバ観たいです……
萌えポイントはきっと鞘師が一番詳しいはず、と思います。
更新した直後のラジオで筋肉萌え披露されて笑うしかない。
いいぞもっとやれ。そして触れ。
191 :名無飼育さん :2012/10/18(木) 20:34

192 :名無飼育さん :2012/10/19(金) 10:23
( *´Д`)( *´Д`)( *´Д`)
193 :名無飼育さん :2012/10/20(土) 00:55
「◇」………「◇」!!!
194 :名無飼育さん :2012/10/22(月) 14:31
更新きてた!!
ニコ動の一件は本当ヒヤヒヤしましたね。
そっちの鞘石もこっちの鞘石も、胸が詰まる感じにキュンとさせて頂きました。
195 :名無飼育さん :2012/10/29(月) 08:43
ほほう「里保」呼びとな
現実で聞ける日は来るだろうか
196 :名無飼育さん :2012/11/03(土) 13:56
余熱
197 :名無飼育さん :2012/11/03(土) 13:57
『そういうの……これから増えるかもしれないですよ』

石田の言葉が脳裏に甦る。
あの時とそっくりなこの感覚の正体を、今は知っている。

鞘師は枕を抱きかかえて必死に堪えていた。
とにかく火照りが引いてくれるのを待った。
助けて欲しくても、石田はここにいないどころか、日本から飛び立ってしまっている。
寂しいからこんなことになってしまったんだろうか。

不意に、最初の旅立ちから帰ってきた彼女が、自分に教えてくれたことを思い出す。

「鞘師さんが入れてくれた曲、移動中にずっと聴いてたんですよ。すごく良く眠れた」

飛行機の中でも車の中でも、空腹でイライラしている時も。

「だから、フランス行く時も絶対持って行こう! って」

……今、石田はフランスのどのあたりで何をしているのだろう。
時差のことも聞いたが、すぐに思い出せなかった。
でも、きっと宣言通りに、向こうでも聴いてくれているに違いない。
イタズラで入れたイージーリスニングを。

自分も聴かなきゃ、と急に責任感のようなものがわいてきて、鞘師はベッドサイドの
iPodを手探りで掴み、イヤホンをつけて、曲を再生した。

すると。
例えるならグツグツ煮えたぎる熱湯のようだった身体の熱も、ぬるま湯程度に
落ち着いてくれた。
やがてそれは最も心地いいあたたかさに変わり、鞘師はいつの間にか眠りに落ちていた。
198 :名無飼育さん :2012/11/03(土) 13:59
「いやー音楽って偉大だわぁ」
「精神を落ち着かせてくれるからねー」

隣で飯窪が相槌を打つ。
石田も、初めのうちは物珍しさから車窓の外を眺めていたが、それも次第に飽きてきて。

日本での宣言通り、鞘師が勝手に入れたイージーリスニングを律儀に聴いていると、
あっという間に睡魔に襲われて、たった今目覚めたところだ。
頭がすっきりと冴え、次の仕事も難なくこなせる自信を持てた。

ただ……
海外遠征で酷使し続けてきたせいか、最近ちょっとプレイヤーの本体が熱を持ってきたのが
気にかかる。
フランスは気温が低いので、今に限ってはカイロがわりになってありがたいのだが、
タイに行った時は壊れるんじゃないかと心配だった。

なるべく長く使いたいから、がんばって持って欲しい。
もし壊れたりしたら……
SDカードを入れ替えるイタズラができなくて、あの娘が拗ねちゃいそうだから。
199 :名無飼育さん :2012/11/03(土) 14:00
>>196-198 余熱
200 :名無飼育さん :2012/11/03(土) 14:01
ノリ*´ー´リ<200! イヒヒ
201 :名無飼育さん :2012/11/03(土) 14:01
レスありがとうございます。

>>192
ノリ*´Д´リノリ*´Д´リノリ*´Д´リ

>>193
そ、そこだけ抜きdああああああああああ

>>194
罪を憎んでシュンスケを憎まず。
でも、放送終了後に石田さん壁殴ってそうだなって思ったりはしました。

>>195
川c ’∀´)<違います! 「里保さん」ですよ!
川c ’∀´)<まあ「ノリ」で! 「ノリ」で言っちゃっただけですけど!
202 :名無飼育さん :2012/11/03(土) 17:12
熱を持て余す鞘師と熱を持ったプレーヤー
粋な対比で素敵です
203 :& ◆xX14F2N4nU :2012/11/05(月) 20:32
純粋ですねえ〜〜。鞘師が悶々とした感じを味わってるのが可愛いです。
204 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 20:25
寒さ知らず
205 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 20:27
部屋の中も冷え込む季節になってきた。
二人はひとつのベッドで暖を取っていたが、退屈に耐えかねてそこから
抜け出したのは石田だった。
鞘師は空いてしまった一人分の隙間を即座に埋めて、冷たい空気を遮断しつつ、

「どーしたの」

と石田の背中に尋ねる。

「えー、じっとしてるのに飽きちゃって」
「そっかー」
「飽きません?」
「ぜんぜん」

そうですかあ、なんとなく残念そうに石田は言って、部屋の隅に置いてあった
フローリングワイパーを取って床を拭き始めた。

「掃除好き?」
「好きってほどじゃないけど、人並みにやりますよ」
「今度ウチの部屋も掃除しに来てよ」
「それは自分でやってください」
「ぶー」

見ていなくても、不満を漏らす鞘師の顔は想像に難くない。
石田は笑みを漏らしながらも掃除を続けた。

「……寒くなーい?」
「動いてればそんなでもないですよー」
「ふーん」
206 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 20:29
ふーん、ふーん、ふんふん、ふふーん。
鞘師の相槌にのっかって、石田は鼻歌を歌い始める。
だんだんと気分も良くなって、ワイパーを持ったままちょっとジャンプしてみたり。
とても楽しそうだ。

「踊っちゃってんの」
「なんかノッてきちゃってっ」
「イヒヒ、ライブより楽しそうだよ亜佑美ちゃん」
「楽しいですよー鞘師さんも踊りません?」
「えー」

ちゃっ、ワイパーの部品のどこかが音を立てて、石田はベッドの鞘師に向けて
手を差し伸べてくる。

「ぜひ、お相手を」

……そんな言葉、自分に向けちゃっていいんだろうか。
鞘師は急に照れくさくなって、いいよぉ、と拒否して布団に潜り込んでしまう。

「あっ、フラれた……悲しすぎる」
『いや、そういうんじゃ』
「じゃ出てきてくださいよ」
『寒いんだもん』
「だから踊りましょって」
『終わったら汗が引いて風邪引くじゃん』
「もー屁理屈ばっかりだなぁ。どうしたら出てきます?」
『……コーヒー飲みたい』
「はいはい」

母親みたいな相槌を打って、石田は部屋を出て行った。
207 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 20:31
一人になった鞘師は、あれだけ愛していたベッドから起き上がり、更にそこから降りて、
勉強机と壁の隙間から小さな折り畳みのテーブルを引き出す。

「スマートフォンが便利すぎて!」

思わずネットショッピングで衝動買いです、と彼女が言っていた。
けれど、きっと自分のために違いない、と鞘師は思った。
いつかお返ししなければ、とも。

そうだ、ストーブとか買っちゃおうかな。
小さいのならそんなに高くない、はず。
そしたら一緒に踊れるし。

テーブルの足を広げながら、そんなことを思いつく。



仕事で出会った二人だけど。
仕事で踊っている二人だけど。
そうじゃなく純粋に、ただ相手のためだけに。
そういうダンスを、まだしたことがなかった。


208 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 20:34
そう思うと、照れくさくて石田の申し出を断ったのは失敗だった。
座布団をセッティングしながら強く決心。買おう、ストーブ絶対買おう!
と拳を固めたところに、石田が戻ってくる。

「あ、ありがとうございます」

目の前にテーブルが据えられていることに礼を述べつつ、おぼんごとカップをその上へ。
お互い座布団に座って石田はさっそくカップを持つが、鞘師はその彼女に

「ねえねえ、電気のストーブ欲しくない?」

と尋ねる。
今まさに飲もうとしていた動作をぴたりと止め、石田は

「すとーぶ」

と繰り返した。

「やっぱ寒いもん。ウチお金出すから置こうよ」
「えっ、本気で言ってるんですか?」
「もちろんだ」
「いやいや、ありますよちゃんと」
「えっ」
「まだ出してないだけで、ちゃんとありますから」
「あ、そーなの?」
「はい、実家から持ってきたやつが」
「な、なんだぁ、イヒ、恥ずかしい」
「もうちょっとしたら出すつもりで」
「うんわかった、もういい!」

あっという間に寒さ知らずになってしまった。主に顔が。
鞘師は慌てて、両手で頬をぴたぴた叩いてなんとか熱を散らそうとする。
それを見た石田は、咄嗟にカップを置いて両肩を震わせた。
209 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 20:36
>>204-208 寒さ知らず
210 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 20:37
レスありがとうございます。

>>202
前スレからの成り行きで熱に関することを扱うようになりましたが、
考えるのも楽しく、またそれがうまく嵌ると更に嬉しいものです。

>>203
鞘師さんには常に戸惑っていて欲しいなーと勝手に思っています。
(ただし、実際はドヤッていることが多い)
211 :名無飼育さん :2012/11/06(火) 20:37

212 :名無飼育さん :2012/11/09(金) 11:29
冒頭の振りだけでもおなかいっぱいでした><
213 :名無飼育さん :2012/11/13(火) 22:56
「み」
214 :名無飼育さん :2012/11/13(火) 22:58
石田が握手会にネコミミカチューシャをつけていくと知った鞘師は、
自分も何か一捻りした出で立ちでその場に臨もうと案を練っていた。

そうは言ってもバランスというものがある。
ちょっと目立つヘアアクセサリーをつけたりしたら、せっかくのネコミミがかすんで、

「鞘師さんがそんなのつけてくるから目立てなかったんですよっ!?」

なんて後輩に責められかねない。
基本、先輩をたてる石田でも、目立つことに関しては手厳しい気がする。

「あーどうする、うーどうする」

散らかった部屋のど真ん中をぐるぐる歩き回りながら鞘師は考えた。
もういっそ尻尾でもつけようかコスプレみたいだけど、と発想が斜め上にいってしまう。

「いやダメだ駄目だ」

ネコミミでギリギリなのに、尻尾なんかつけるのは、どちらかというと握手する
ファンの心理に近いじゃないか。

だから、それは置いておいて……
ひとまず髪に何かつけるのは諦めよう。

アクセサリーなら他にもある。と、鏡の前で持っているネックレスを片っ端から
胸元にあててみた。
残念ながらネコミミに対抗できそうな主張の強いものは見つからなかった。
215 :名無飼育さん :2012/11/13(火) 23:01
思い通りにならなかったことが悔しくて

「ネコミミネコミミ……み……み、みみ、みーっ!」

子猫っぽく鳴きながら髪をわしゃわしゃしていると、

「みー……あ、“三つ編み”」

天啓がおりてきた。

ただ下ろしているよりは目立つし、それでいてアクセサリーよりナチュラルでいい。
これだ、と思わず手を叩き、鞘師はすぐさま石田にメールを送ることにする。
この上髪型がかぶったら台無しなので、先回りしておこうと考えたのだ。
三つ編みで行くとだけ書いてみて、素っ気無い気がして絵文字をつけて送った。

石田からは、三つ編みいいですよね! とこちらを持ち上げる言葉が返ってくる。
まさかきっかけがネコミミカチューシャだなんて思いもよらないだろう。
もし聞かれたら理由を話すつもりだが、基本的には内緒にしておこうと思った。
石田のことだから、最初から話すと調子に乗っていじられる。
意識してるんですね、なんて含み笑いで自分を小突いてくるのが容易に想像できてしまった。

……正直、見てみたいし小突かれてみたい、気もする。
やっぱり、まったく気付かれないのも寂しいものだ。
当日になったら、それとなくヒントになりそうなことを言ってみようか……
216 :名無飼育さん :2012/11/13(火) 23:03
同期みたいに単純にお揃いにして思いを共有できないのは歯痒いけれど、
いっぱい考えて真相はこうだった、みたいな連想ゲーム。
気付かれたら嬉しいけれど恥ずかしい、連想ゲーム。

それを駆け引きというのだ、ということを、鞘師はまだ知らない。
217 :名無飼育さん :2012/11/13(火) 23:03
>>213-216 「み」
218 :名無飼育さん :2012/11/13(火) 23:04
>>212
レスありがとうございます。
念のため言っておきますが、ただ暖を取っていただけですからね><
でも手段や方法については言及しません><
219 :名無飼育さん :2012/11/13(火) 23:06
お知らせです。
今更新をもって、このスレでの投稿を終了したいと思います。

>>1に「予定」と書いたものの、蓋を開けてみればほぼ特定CPメインになってしまいました。
興味のある関係は他にもあるのですが、リアルな出来事に即して思いついたものを
ガンガン投下していったら、こういう結果になりました。

ちょっとした思い出。
>>75-80を書いた直後に顔面流血したり、>>107-117の後に階段踏み外して捻挫したりしました。
怪我に関する話は書くべきじゃないな、と思わせてくれました。

今後も草板で短編スレをたてたいなーという願望はありますので、その際にはこちらにも
アナウンスしようと考えております。
例によって何かひゃっっほーい♪( ´θ`)ノなことが起きたら、割と早いうちに
お会いできるかもしれません。



それでは……
お付き合いいただきありがとうございました。
220 :名無飼育さん :2012/11/14(水) 02:07
お疲れ様でした。とても楽しく拝見させて頂きました。
いろんな石鞘が見れて楽しかったです。
これからもいろいろな作品でseekを盛り上げていって下さい!
期待しています!!ありがとうございました。
221 :名無飼育さん :2012/11/18(日) 13:08
更新されてるかな?と何度も足を運ぶスレでした
作者さんの鞘石作品の大ファンなので
更新情報や新スレ待ってます!!!
222 :名無飼育さん :2012/11/23(金) 15:44
脱稿お疲れ様でした

楽しみにしていた更新が止まるのは寂しいですが
また別スレで拝読出来るのを楽しみにしてます!
223 :名無飼育さん :2012/11/29(木) 21:09
レスありがとうございます。

新スレをたてました。
流動マーブル
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