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伴走者

1 : :2012/04/14(土) 10:55
初めまして。電と申します。
まだまだ新参者ですが、いしよし2人があまりにも素敵すぎて
妄想を形にして書き起こしたくなってしまいました。
定期的な更新は難しいかもしれませんが、精進しますので
どうぞ宜しくお願いいたしますm(__)m
112 :横浜たそがれ(前編) :2012/07/07(土) 02:08
「よしざーさん、消してあげたらいいじゃないっすか。」

どーせ1枚や2枚消したって、そのスマホの中には同じような写真がわんさかあるんでしょ?
……っていう言葉は言わないでおく。

「ダメダメ! これはほら、今日の記念だからね。」

キャラに似合わずキラッキラにデコられたケースを付けたスマホを
大事そうに握りながら、よしざーさんはかぶりを振った。
何それ、変顔が記念っておかしくないですか?

「今日の変顔は今日しか撮れないじゃん?」

真剣な顔でそういうよしざーさん。
って、まさかその中の莫大な枚数のいしかーさんの写真……
どれがいつの写真だか整理してあったりするんですか……?

いくら親びんでも、それは引きますよ……。

「いっつもそうやって撮って、コソコソ見ながら笑ってるの知ってるんだからね〜!」

いしかーさんいしかーさん、怒ってる割に、すんごい笑顔になっちゃってますから。
113 :横浜たそがれ(前編) :2012/07/07(土) 02:09
あー、めんどくさい……。
かと言って姐さんは先に帰っちゃったし。
こんなにうさい人達、まともに相手できる人間、そうそういないわけですし。

「いいもーん。じゃあ私、真琴に可愛い写真撮ってもらうもんっ!」

そう言っていしかーさんは、ニコニコしながら私のほうへずんずんと近づいてくる。

「まことぉ、可愛く撮ってねっ。」

なんだかすごいプレッシャー……。

と、ニコニコしながらピースサインを作るいしかーさんの後ろには
ニヤニヤしながらうろちょろしている親びんが映っている。
全く、どんだけ構ってちゃんなんですか。
終いには、人差し指をいしかーさんの頭の上から出るようにして『鬼』にしたてて
『こ・じゅ・う・と!』と唇の動きだけでサインを送ってくる。
小学生じゃないんだから……。
と思いつつ、そんな親びんが面白くて、私もつい笑ってしまいそうになる。
いしかーさんが不思議そうにしていたので、慌ててシャッターを切る。

「なにこれ、ちょっとぉ〜〜〜!」

いしかーさん、もう怒ってるっていうより思い切り喜んでるじゃないですか。
はぁ〜〜〜〜〜、めんどく(略)。
114 : :2012/07/07(土) 02:11
短くて申し訳ありません……(汗)
どうしても今日中に上げたかったんですが、さすがに眠気が限界です…orz
オチは固まっているので、明日、明後日には後編もアップします。
115 :名無飼育さん :2012/07/07(土) 07:06
またもやネタが早くてニヤニヤします
116 : :2012/07/09(月) 00:13
>115様
こちらこそ、早速のレス有難うございますm(__)m
文章力はイマイチなので(汗)、せめて食いつきのスピードは頑張りたいところなのです。

それでは、後編アップしたいと思います。
117 :横浜たそがれ(後編) :2012/07/09(月) 00:15

いしかーさんは頬を膨らませて、ちょっと時代遅れのマンガみたいなリアクションをしてる。
その横でよしざーさんはおかしそうに、でもすっごく優しい目でいしかーさんを見ているんだ。
なんだかなー。当てられちゃうっていうか。

打ち合わせがあるとかで、よしざーさんも先に部屋を出ていくと、
いしかーさんはフフフと笑った。

「よっすぃ〜、テンション高かったねぇ。何かイイコトあったのかな?」

その笑顔は何百回と見てきた私ですら、『やっぱり可愛いな〜』なんて思っちゃう。

「あっ、そうだ! さっき真琴もよっすぃ〜の写真撮ってたでしょ? 見せて見せてー!」
「いいっすよ。」

さっきイベントが始まる前に撮った、乙女なよしざーさんを見せると
いしかーさんは頬に手を当ててクネクネしながら

「やだも〜っ、かわいい〜!」

なんて言っている。
う〜ん、さすがというか何というか、裏切らないリアクションだ。
118 :横浜たそがれ(後編) :2012/07/09(月) 00:17
「私にはこういう写真、絶対撮らせてくれないくせに〜。ずるいよ〜〜〜。
 ね〜まことぉ、私にもこれ転送して〜!」
「はいはい。」

写真なんかなくたって、私よりも一緒に居る時間が長いはずなんじゃないか?
でも……この人達には何を言ってもきっと無駄なんだろな。
本人達が自覚していないだけで、お2人から出ている幸せそうなオーラは尋常じゃない。

「本文なしで、今送っちゃいますね。」
「うんっ、ありがと! 真琴だーい好きっ!」

無事に届いたらしいメールをさっそく開いて、
いしかーさんは愛おしそうに目を細めた。

「男の子みたいなカッコしてあんな喋り方するくせに、
 ホントは私なんかよりもずぅ〜っと女の子らしいのよ。あのひと。」
「いしかーさんだって十分可愛いじゃないですかぁ。」
「そう?フフフッ。」

あ、やっぱり否定はしないんですね……。分かってましたけど。


ちょっとだけ悔しいな。
写真では捉えられないようなよしざーさんの意外な一面。
リーダーとして引っ張ってくれていた頃の、カッコイイ親びんの弱さや辛さとか。
先輩達の前で見せる、ふにゃっとしたカワイイところだって。
いつでも隣で見てきたんだもんなぁ。
119 :横浜たそがれ(後編) :2012/07/09(月) 00:19
長くてふんわりパーマのかかった髪。
見慣れた仲間ですら惚れ惚れするような、とびっきりの笑顔。
男女問わず憧れる、抜群のプロポーション。
そんでそんな甘さと裏腹に、びっくりするぐらいの努力家で、意外と男前な性格だったりもして。
でも、きっと誰よりも一途でまっすぐ。


いしかーさんも羨ましいけど、よしざーさんのことも羨ましいよ。
こんだけ可愛い人に、こんだけ好かれてるって、相当ゼータクだと思う。

「さーて、私達もそろそろあがろっか?」
「そーですね。」

にこにこしながら、いしかーさんは席を立つ。
めんどくさくてうざったいけど、やっぱり私の大好きな先輩たち。

「今日は早く帰らなきゃいけないから、またゆっくりゴハン行こうねっ。」
「ぜひぜひー!」

そうして別のタクシーに乗って、家路につく。
と、メールの着信がある。
開いてみると……あれ、よしざーさんからだ。

『さっきの梨華ちゃんのワンショット、持ってたらこっちにも転送してくんない?』

…………。
ほんっと、似た者同士というか、何ていうか。
呆れちゃうけど、まぁいいや。
楽しそうなお2人を特等席で眺めてるのも、けっこう楽しいし、ねっ!


  END
120 : :2012/07/09(月) 00:25
本日の更新、および『横浜たそがれ』はこれで終了です。

思わぬタイミングで久し振りにドリムス。なお2人を見られて眼福。
しかしあれですね、やっぱり日光のアレはプライベートだったんですね。
ますます妄想が止まらないです(w
121 :名無飼育さん :2012/07/09(月) 23:55
脱稿お疲れ様です。
しいて言うなら麻琴でございます
122 :名無飼育さん :2012/07/10(火) 00:12
堪能させていただきました!次は日光のアレでよろしくお願いします!
123 : :2012/07/26(木) 10:20
お久し振り?でございます。

>121様
ご指摘ありがとうございますm(__)m
あぁあああ……やっちまった!!orz
幾らネタへのスピード重視といってもコレはマズいですね……うぅ。
ごめんよ、まこちゃん……。
修行の旅に出ようかとも思ったのですが
このスレを使いきってからでも遅くないと信じたい…。暫くお付き合い下さい。

>122様
有難うございますm(__)m
おぉう、日光のアレですね。了解しました。
露天風呂編とはまた違うパターンで何かしら書き次第、持ち込みますっ。


それでは、本日の更新に参ります。
124 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:21
アタシと梨華ちゃんで、新しくユニットをやることになった。
娘。の頃は同じユニットで活動したことってあまりなかったけど、
今は音楽ガッタスで一緒に活動してるし、
コンサートなんかでも同じステージに上がる機会はけっこうある。

でも、2人きりのユニットとなるとまた違うだろう。どうなるのかが楽しみだ。
しかも今回は、今までと全然違う方向性でやるみたい。
何回か打ち合わせにも参加させてもらってるんだけど
アイドルっていうよりは、ビジュアル系みたいな感じなのかな。
こないだ聞いたばかりの仮歌もロックな曲で、すっげーカッコよかった。
これをアタシ達2人で歌えるんだと思ったら、期待でゾクゾクした。
何でも、アタシと梨華ちゃんが組んでこういうのをやったら面白いんじゃないかって言われて選ばれたらしい。
そうやって気にかけてもらえたのは、嬉しい半面ちょっとくすぐったい。

お互いキャラは全然違うけど、一番付き合いの長い間柄の梨華ちゃん。
何だかんだ言って気の置けない人でもあるし、仕事の面でも一番信頼できる人。
いちいちウルセーし喜怒哀楽が激しくてメンドクセーし、
ベラベラ喋る割には人の話聞かねーし、前のめりに突っ走りがちだけど
空回りしがちでオモシロイ梨華ちゃんを隣で見ているのは楽しいなぁ、と思う。

いつも2人で一緒の現場にいるわけじゃない。
でもふとしたときに思い出して、用事がなくてもメールをしてみたり
時間があれば2人で遊んだり、飲みに行ったりするようになった。
125 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:22
そんな梨華ちゃんだけど、最近どうも様子がおかしい。
どこがって聞かれると困るんだけど、何となくおかしい。
なんだろな。今更アタシには言えないことなんて、そうそうないと思うんだけど。
梨華ちゃんってすぐ何でも人に相談するタイプだし。
そりゃまぁ、圭ちゃんみたく何でもズバズバ相談に乗ってあげてアドバイスしたり
悩みを聞いてあげたりとかって、アタシには向いてないのかもしんないけどさ。
でもなんつーか、ね。
ちょっとは頼りにしてほしいっつーかさ。
昔みたいにピーピー泣きながらアタシんとこに寄ってくるなんて、
今の梨華ちゃんからじゃ想像も出来ないけど。

「梨華ちゃん、何かあったの?」
「え、なぁに、突然?」
「いや、何か最近たまにボーッとしてる時あんじゃん。」

新ユニットの打ち合わせが終わって、今日の仕事はもう終わり。
2人きりになったタイミングを狙って、ちょっとだけ聞いてみる。

「あぁ、うん。別に何でもないよぉ。」

目を逸らしながら、梨華ちゃんはそう言った。
分かりやすいんだから。

「ま、言いにくいんだったら、無理して言わなくてもいいけどさ。」
「……うん。」
「何かあんだったら、話ぐれー聞いてやってもいいよ、っていうか。」
「うん、ありがとう、よっすぃ〜。」

梨華ちゃんはちょっとだけ眉を寄せて、でも笑って言った。
こりゃあ言わねーな。この人意外と頑固だからな。

「じゃ、ね。」
「……うん。ありがとね。」
「……べっつに、そんな大したこと言ってねーし。」
「ううん。そんなことないよ。……私このあと約束あるから、もう行くね。」
「おう。」

梨華ちゃんはようやくニッコリと笑うと、アタシの横をすり抜けていった。
まぁ、本人があの調子じゃあアタシに出来ることはないだろう。
ああなったらテコでも動かないのが梨華ちゃんだ。
126 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:23
どうすっかなー、誰か誘って飲みにでも行くかなー……と
携帯を手にしたところで、圭ちゃんからの着信がきた。
どんだけタイミングいいんだよ圭ちゃん。怖いくらいだったよ。

『もしもし、よっちゃん? 仕事もう終わってるでしょ〜?』
「そうだけど……なに?」
『なぁによその言い方! 可愛くないわね〜〜〜。』
「圭ちゃんに可愛いなんて思われたくないもーん。」
『ったく、たまには私のほうから誘ってあげようと思ったのに!
 どうせアンタ達まだ一緒にいるんでしょ? 私も今日は時間あるからさっ。』
「梨華ちゃんならさっき帰っちゃいましたけどー。」
『あら、そうなの? どおりで携帯繋がらないと思った。じゃあまぁ、よっちゃんだけでもいいよー。』
「あんだよその言い方〜。」
『あったりまえでしょー。よっちゃんだけじゃ華が足りないじゃないっ。』
「うわ〜〜〜圭ちゃんにだけは言われたくね〜〜〜!」

圭ちゃんのこと、どうして怖いだなんて思ってたのかなー、昔。
まぁ確かに眼力とかオバちゃんっぽい言動とかがたまーにアレだけど、
喋ってみるとおもしれーんだよね。
ああだこうだ言いながら、結局珍しくサシで飲みに行くことになった。
127 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:24
…‥それにしても。
圭ちゃんってホント、人脈とか行動範囲が謎なんだよね。
何でこんな高そうなバーに顔パスで入れんだろ……。
タクシーで拾われてついてきてみたら、天井は高いのに、照明がやたらムーディーで。
通されたカウンターの奥では、口ひげをたくわえたダンディーな人がシェイカーを振っていた。
フツーにその辺の居酒屋に行く気だったアタシは、何だかオドオドしてしまう。

「で、あんた達最近どうなのよ?」

出た〜〜〜。伝家の宝刀!

「いや別に、どうって。何もないよ。」
「まぁいいけどさー。よっちゃんがそう言うならさ〜。」

飴色の液体を揺らしながら(それがまた妙にサマになっているんだけど、ちょっと笑えたのは内緒)
圭ちゃんはアタシを覗き込んだ。

「あっ、そういやー最近、梨華ちゃん様子がおかしいときあるんだよね。」
「あー、色々大変みたいだもんねー。」
「え、何が?」

アタシが聞き返すと、圭ちゃんもアタシに聞き返してくる。

「って、よっちゃん何も聞いてないの?」
「何もって……何を?」

圭ちゃんは視線を外すと、大袈裟なほどに首を振った。

「梨華ちゃんが何も言ってないなら、私からは言えないわよ。」
「なにその言い方、すっげー引っかかんだけど。何かあんの?」
「ないない。例えあっても絶対言わないわよ。私こう見えて口堅いんだからねっ。」

梨華ちゃん、アタシには言えないのに、圭ちゃんには相談してるんだ……。
そりゃあ何でもかんでも共有してるわけじゃないけどさ。
でも、自分でもびっくりするほどにショックが大きい。
梨華ちゃんが一番頼りにしてるのは、アタシだって思ってたから。

「梨華ちゃんもさ、色々思うところがあるわけよ。察してやんなさいよ。」
そう言ってアタシの肩をぽんぽんと叩く。

「アタシもそれとなく聞いてみたんだけどさ、ごまかされちゃって。」
「……じゃあよっちゃんには言いたくないんだよ。」
「でも」
「でもじゃないの。あの子がそう決めたんだから、そうなんだよ。」

最近は柔らかくなってきた、でもいざとなると光を宿す強い眼力でそう言った。
圭ちゃんにとっての梨華ちゃんは、きっと今でも一番可愛い後輩なんだろう。

「私はさ。梨華ちゃんの気持ちも、よっちゃんの気持ちも何となーく分かるんだよ。
 でもいま私がよっちゃんに橋渡しをするのは、違うと思う。
 だってよっちゃん、何も言わないじゃない。
 いつも相手の出方次第で、どうにでも動ける姿勢でしか待たないでしょ?」

アタシと視線を合わせたまま、はっきりとそう言った。

「よっちゃんのそういう性格、長所でもあるんだよ。
 優しくて、でもクールで、いつでも客観的に、俯瞰で物事を見られるでしょ。
 そうやって私達が卒業しちゃってからの娘。を引っ張ってくれた、立派なリーダーだったもの。」

圭ちゃんは強いお酒のせいか、いつもよりも饒舌だ。

「梨華ちゃんはさ。あの通りじゃない?
 あんなに可愛くてスタイルも良いのにさ、そこまでやるかっていうぐらい
 全力で突っ込んでって、案の定空回りしては落ち込んで。
 あの子のああいう性格もさ、長所であって短所なんだよね。」
「……そうだね。アタシもそう思うよ。」

アタシが相槌を打つと、圭ちゃんはふいに寂しそうな顔をした。

「ねぇ、そこまで分かってて、どうして気付けないの?
 もしかしてよっちゃん、私が思ってるよりも本気でバカなの?」

今なにげにサラッと酷いこと言われたよね、アタシ。
ツッコミを入れたいけど、それは言えなかった。

奢ってもらったブランデーはさすがに高いだけあって、するすると喉元を通り過ぎていく。
今まであまり口にする機会がなかった味は、やけに頭をぼうっとさせる。
舌にじんわりと、ほろ苦い余韻を残す。

圭ちゃんはそれ以上、梨華ちゃんについても、アタシについても何も言わなかった。
128 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:25
う〜〜〜ん。
二日酔いではないんだけど、いまいちスッキリしない。
モヤモヤと霧がかかったままの視界が晴れない。
この状態で打ち合わせなんかやって大丈夫かな、アタシ。

「はよーございまーす。」

いつものドアを開けると、梨華ちゃんがソファの端っこに座っていた。
規則正しい呼吸だけが聞こえる。どうやら居眠りしているようだった。

メイクはしているものの、完全に夢の中にいる梨華ちゃんの横顔を眺める。

(寝顔だけなら、今でも子供みたいなのになぁ。)

幸か不幸か、会議やら何やらが押しているみたいで打ち合わせは少し遅れるようだ。
アタシは梨華ちゃんの隣に腰掛けて、携帯をいじり始めた。


「……よっすぃ〜……。」

小さな小さな声で呼ばれる。
返事をしようと振り返って、梨華ちゃんがまだ眠っているのだと気付いた。

「あんだよ、寝言かよ。」

アタシの夢でも見てんのかな。名前を呼んだってことは、きっとそうだよな。
どんな夢見てんだろ。楽しい夢だといいな。

「…………ごめんね、よっすぃ〜……。」

それはまるで出逢った頃のような、大人しい声色で、彼女はそう呟いた。

「ごめんね、さよなら……。」

…………んん?
『さよなら』?

どうも雲行きが怪しいような気がするのは、多分気のせいじゃない。
129 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:26
もしかして、もしかして。

アタシが居るこのポジションに、誰かアタシの知らないヤツが立候補していたりするのだろうか。
今までも、そういう事が全くなかったワケじゃないし。
梨華ちゃんは否定するけど、それでもやっぱりこの人はモテるのだ。

閃いてしまうと、ピースがぱちぱちと嵌められていく。
時折、誘いに乗らずに先約があると困り顔で俯いた梨華ちゃん。
メール不精のくせに、ちらちら気にしていた着信ランプ。
何てこった。ちょ、ちょっと待ってよ。
いつもだったら、アタシにだって何かしら言ってくるよね。
『カッコイイ人に誘われちゃったんだぁ、どうしよ〜』なんて、お酒飲みながらクネクネしながら。
どうもこうもしないくせにメンドクセーことばっか言って堂々巡りでさぁ。
アタシは別にそういうの聞くのもまぁイヤじゃないから、テキトーに聞き流していたけど。
もしかすると、今回ちょっと本気でなびきそうだったりするワケ?
突然の結論に、自分でも驚くほどにおろおろしてしまう。

「さよなら、よっすぃ〜。」

柔らかそうな頬に一筋、涙が伝った。

あぁ。
梨華ちゃんがこんなにも強くしなやかに、眩しいぐらいにキレイになったのは。
単純にたくさん季節が過ぎたというだけではなかったんだね。

『ごめんね』なんて言わせちゃって、ごめん。
これ、アタシのセリフだよね。

ずっとアタシのことを好きでいてくれてるって、分かってたんだよ。
いつもアタシのことを一番に見てくれてたって、ちゃんと気付いてたよ。

素直に言えなくて、ごめん。
からかったりして、ごめん。
寂しい思いさせて、ごめん。
疲れさせちゃって、ごめん。
気付かないフリしていて、ごめん。
130 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:27
長い睫毛に溜まっていた雫を、そっと指の腹ですくう。
頬は想像していた通り、とても柔らかくてさらさらしていた。

「梨華ちゃん、起きて。」
「……ふぇ? ……あれぇ、よっすぃ〜来てたんだ?」
「うん。」
「えへへ。今朝は早くて眠かったから、ちょっと寝てたんだぁ。」
「アタシが出てくる夢、見てたの?」
「えっ? ……うーん、どうだったかな。忘れちゃったっ。」

そう言って梨華ちゃんは、八の字眉を作って笑った。

自分の気持ちをまっすぐ見てもらえないのって、こんなに苦しかったんだね。
長い間、ほんとうに長い間。こんなに辛い想いをさせてたんだね。

たくさん伝えたいことがあるのに、アタシはやっぱり恥ずかしくて、
こんなときですら言葉を喉に押し込んでしまいそうになる。
アタシは意気地無しだ。
でもきっと、今言わなかったら梨華ちゃんの隣は誰かの指定席になってしまう。
それだけは……譲れない。譲れるわけがない。

「梨華ちゃん、泣いてたんだよ。」
「え、そっかなぁ。気のせいだよ〜。」

負けず嫌いでもいい。

「そうだよ、あと寝言でアタシのこと呼んでたから、夢に出てきてたんでしょ。」
「覚えてないよぉ。」

嘘をつくと目がキョロキョロしちゃうんだよね。

「『さよなら』なんて言わないでよ。」
「言ってないってばぁ。」
「すげー寂しいじゃん。どうしてくれんの。」
「だから覚えてないんだって。」

ずいぶん回り道しちゃった気がするけど、間に合ったかな。

「ずっと待っててくれて、ごめんね。ありがとね。」
「へっ?」

「梨華ちゃんのことが好きです。アタシと付き合って下さい。」
131 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:29
梨華ちゃんはぽかーんと口を開けたまま、しばらく固まっていた。
アタシはあまりにも恥ずかしくてどこかに隠れてしまいたかったけど、
梨華ちゃんが微動だにしなさすぎるので、仕方なく声をかけた。

「あの〜、梨華ちゃん? 聞こえてるよね?」

「よ……よっすぃ〜のばかぁ〜〜〜〜〜!」

途端に顔をくしゃっとさせて、梨華ちゃんが泣き始めた。

「なっ、バカってあんだよ、バカって。」
「私……私、待ってなんか、いなかったんだからぁ〜〜〜。」
「あ〜もう、それ以上泣くと化粧落ちちゃうでしょ。」
「お化粧なんかいいんだもん〜〜〜。よっすぃ〜のバカァ〜〜〜。」
「バカって言うほうがバカなんだよ、梨華ちゃん。」
「そうよぉ。こんなバカのことずっと好きだったんだからバカに決まってるじゃないよぉ〜〜〜。」
「……うん。ありがと。」
「しかもこんな、会社のくたびれたソファの上でなんてヒドい〜〜〜。」
「し、仕方ねーじゃん。アタシだってテンパってたんだよ。そんなん考えてる余裕なかったし。」

アタシがそう言うと、梨華ちゃんはやっと笑った。

「は〜。言いたいこと言ったら、何かすっきりしちゃったっ。」
「そ?」
「うん。久し振りに泣いたかも。」
「目、腫れちゃうと困るよね。ハンカチ濡らしてくるよ。」
「うん。ありがと、よっすぃ〜。」
「おう。」

尋常じゃない恥ずかしさに言い訳をして、部屋を飛び出した。
気味が悪いくらい、心臓がバクバクいってる。
笑った梨華ちゃんがあまりにも可愛くて、どうにかなるかと思った。
蛇口から流れる水の冷たさが、火照ったアタシの体温も冷やしていく。
梨華ちゃんの顔も真っ赤だったけど、ヘタすりゃそれ以上にアタシも真っ赤なんだろう。

梨華ちゃんの寝顔を見るたびに、アタシはきっと今日のことを思い出す。
ずっとアタシに縛り付けてしまった梨華ちゃんへの、懺悔にも似た気持ちと。
それを軽々と上回る感謝の気持ちと、カラダじゅうを駆け巡るような喜びの感情を。

梨華ちゃん、梨華ちゃん。
可愛い可愛い、アタシの梨華ちゃん。
泣いてる梨華ちゃんだって可愛かったけど、やっぱ笑ってる梨華ちゃんが一番可愛いな。
だからこれからは、寝顔に涙が浮かぶようなときは、
アタシが気付かないうちに拭ってあげる。
まだ恥ずかしくて口には出せないかもしんないけどさ。
にやけてしまいそうになる頬に冷たい掌を当ててから、アタシは梨華ちゃんの元へと戻る。
これからも隣で歩いてく、心強い相方のもとへ。
132 :「さよなら、よっすぃ〜。」 :2012/07/26(木) 10:30

 E N D

133 : :2012/07/26(木) 10:34
本日の更新は以上です。
思いついたタイトルをどうしても使ってみたかったのと、
石川さんの涙を書いてみたかったので、今更ながらこんな内容に。
ド新参なので、当時はヲタではなかったんですが……違和感とかあったらご教授いただけると幸いです。
それにしても本スレの過去ログは何という時間泥棒なんでしょう(w
134 :名無飼育さん :2012/07/27(金) 01:16
うん!素直がいちばん!

過去ログはまさに迷宮です。よーくわかります!
135 : :2012/08/26(日) 04:17
気が付いたら一ヶ月も更新していなかったのですね……スミマセン。
ぽつぽつとマイペースに次のモノを書いていたのですが
例の巨大な爆弾にまんまと釣られて、のこのこやってきました(w

>134様
有難うございますm(__)m
過去ログの迷宮も去ることながら、現実が妄想を追い越し始めましたね(w


それでは、本日の更新に参ります。
136 :限界破裂 :2012/08/26(日) 04:18
さすがに「おかえり」とは言ってくれないけれど
私がドアを開けると、一目散に駆け寄ってきてくれる。
私の可愛い可愛い娘ちゃん。

「ひめ〜、ただいまっ。今日もイイコにしてた?」

私がそう言いながら抱きかかえてキスをすると、嬉しそうに顔を舐めてくれる。

「そっかぁ。ひめはおりこうさんだもんねぇ〜。」

あぁ、ウチの子ってば何でこんなに可愛いのかなっ。
カラダはぐんぐん大きくなって、実は抱えるのもけっこう大変になってきたんだけど
まだまだ甘えんぼさんで、帰宅してから暫くは私から離れてくれないんだ。

「あの〜、もしもーし、石川さーん? アタシの存在を忘れないで欲しいんですけどー?」

っと、いっけない。

「忘れてなんかないってばぁ〜。っていうか、勝手に上がっちゃっていいよぉ。」
「……いやもう上がってるけどさ。うん。」

ちょっぴりふてくされたように頬を膨らませて、ひとみちゃんはソファに腰掛けた。
私はひめを下ろしてあげてから、その背中に抱きついた。
137 :限界破裂 :2012/08/26(日) 04:18
「お酒、飲み直す? それとも他のものが良い?」

さらさらした髪が気持ちよくって、鼻をくぐらせたら

「くすぐってー。」

と苦笑いされた。だって気持ちいいんだもん。

「梨華ちゃんまだ飲みたい?」
「んー、どっちでもいいよ。飲むなら付き合うし。」
「じゃ、あったかいコーヒーにしよっかなぁ。」
「オッケー。」

ひめが私の足元をくるくる回りながらついてくる。かーわいいなぁ。
でも、キッチンに居るときはやっぱりちょっと危ないんだよね。
今日は料理するわけじゃないけど、万が一お湯がかかっちゃったりしたら困るしさ。

「ひめ、イイコだからひとみちゃんと一緒に待っててね。」
「ひめ、こっちおいで。」

ひとみちゃんがソファからひめを呼ぶ。
最近お気に入りのおもちゃを持って、優しい声で手招きしたら
ひめは嬉しそうに駆け寄って、ひとみちゃんの膝に飛び乗った。

「アハハ。素直だねーひめは。」
「何よー、その言い方ァ。」
「かーわいいー。ほらほら、アタシが遊んであげる。」

ケトルにお湯を入れて、火にかける。
買い置きのコーヒーまだあったかなぁ。だいぶ少なくなってたっけ。
棚を探ってみたら、何とか足りそうでほっとする。
138 :限界破裂 :2012/08/26(日) 04:19
「おー、重たくなったなーひめ。」

ひとみちゃんの声に振り返ると、ひめがひとみちゃんに抱えられてシッポを振っていた。
なによぅ、嬉しそうにしちゃって。
ひとみちゃんはひとみちゃんでデレデレしちゃってさ。
……でもこれって、すっごくシアワセな眺めかも。

私はダイニングテーブルに置き去りになっていたバッグからアイフォンを取り出すと、
大好きな2人のツーショットにカメラを向けて、シャッターを切った。

「なーに撮ってんの?」
「だって可愛いんだもん。」
「ってかどんだけ写真撮ってんのよ。ほんっと梨華ちゃん親バカだよね。」
「ひめも可愛いけど、ひとみちゃんも可愛いっ。」

私がニヤッとしながらそう言ったら、ひとみちゃんはブツブツと小さな声で

「バーカ。」

なんて呟いた。フフフ。照れちゃってさー。
ひめはひとみちゃんのことがだいぶ好きみたいで、
膝に乗ったりオモチャを転がしてもらったり、細くて綺麗な指を舐めてみたりしている。
ひとみちゃんは目を細めて、頭をや背中撫でてあげたり、大人しく手を差し出してあげている。
私は、そんな2人の光景を何ショットかカメラに収めた。

「梨華ちゃん?」
「えっ?」
「ヤカン、お湯沸いたっぽいけど?」
「あぁ、うんうんっ。ちょっとボーッとしちゃった。」
「あーもしかしてー。」
「な、なによ。」
「アタシとひめが仲良しになっちゃったから、妬いてたんでしょ?」

ひとみちゃんてば意地悪そうにニヤニヤしながら、そう言った。
うっ。そんなに分かりやすかったかな。
だってさぁ、ひめったら私がママなのに、ひとみちゃんにあんなに尻尾振っちゃってさっ。
ひとみちゃんもひとみちゃんよ。
可愛がってくれるのは嬉しいけどさ、あんな風に好きにさせて、ちょっと甘すぎじゃない?

って、私これじゃどっちに妬いてんのか分からないな……。
139 :限界破裂 :2012/08/26(日) 04:21
「梨華ちゃんにソックリだもんねぇ、ひめは。」
「違うってば。」
「まだ言うかー。こんなに似てんのに。ねぇ、ひめ?」
「もー。」

マグカップを手にリビングへ戻ったら、ひとみちゃんがまだニヤニヤしている。
恥ずかしくって、手渡しせずにテーブルへとマグを置いて、フローリングへ座った。

「可愛いなー。」

ひとみちゃんはそう言うと、ふいに私にキスをした。

「やっぱ梨華ちゃんは可愛いなー。」

……はぁ。どうして一言だけで、こんなに操られちゃうんだろ。
悔しいけど、これはきっと先に好きになった私の弱みなんだ。

ひとみちゃんの膝へ頬を乗せたら、ひめが私を覗き込んで首を傾げる。
そんなしぐさが可愛くって、私はすぐに機嫌が直っちゃうんだ。

「梨華ちゃんの髪、つやつやで気持ちいいなぁ。」

ひとみちゃんはそう言って、私の頭をふわっと抱え込んだ。
ちょっとだけ残るお酒の香り、嗅ぎなれた彼女の匂い、私の淹れたコーヒーもそれに混ざる。
蛍光灯の光が遮られて、今度は唇を重ねる。
触れるだけでカラダが浮つくぐらい、好きなキモチが駆け巡る。
ひめが一声、キャンと鳴く。

「ひめには悪いけど。」

口元をゆるゆるにしたひとみちゃんが、私の頬をその手で包む。

「ひめのママは、アタシのお姫様だからね。」
「……やだ、ちょっと。」

いつもはそんなコト言ってくれないから、急に言われると私のほうがどうしていいか分かんないじゃない。
口をパクパクさせてたら、ひとみちゃんが顔よりもちょっと下のほうに目線を落としてて。
あぁ、なるほどね。

「んー、イイ眺め。」

今日は私、緩めのカットソーだから、多分ひとみちゃんの位置からだと……。
ほんっと何て言うか……何このだらしない顔。
140 :限界破裂 :2012/08/26(日) 04:21
それでもやっぱり、この人が私の好きな人。
オジサンみたいなトコもあるけれど、うっとりするくらい綺麗な、私だけのお姫様。
その指を口に含んで、チュッと音を立てる。
ほんの少しだけ歯を立ててみたら、ひとみちゃんはおかしそうにクックッと喉を鳴らした。

「やっぱソックリじゃん。」

湧き上がってくる感情に従って、もう一度キスを重ねる。
ひめが不思議そうに、私とひとみちゃんをキョロキョロと交互に見ている。
だんだんと深くなるキスに、スイッチが切り替わる。
ソファの上に引っ張り上げられて、私はひとみちゃんの膝に乗る。
すぐにひめが構ってほしそうに間に割り込んでくる。

「……ひめも混ざりたいの?」
「あのねぇ。」
「ってかジャマさせねーけどね?」

腰を抱き寄せられたら、ひめが窮屈そうに弾かれる。
抱っこしてキスをしてから、ひめのおうちでもあるゲージに移動させる。

「ごめんね、ひめ。おやすみ。」

私もひとみちゃんも、限界みたいなの。




 END
141 : :2012/08/26(日) 04:26
本日の更新は以上です。おそまつさまでした。
久し振りに釣られて気付けば夜明け間近ですが、後悔は微塵もございません(w

余談ですが、当スレのひめちゃん初登場の回は
>>79->>84
となっております。
併せてご覧いただければ、嬉しく思います。
142 :名無飼育さん :2012/08/27(月) 01:13
あのブログの裏話をありがとうございます。おそらく真実です(断定)。

いつかひめちゃん視点のお話しが読みたいです。でもひめちゃんはまだまだ子供だからなぁ…
143 : :2012/09/07(金) 03:04
>142様
有難うございますm(__)m
事実かどうかはさて置き(w
ごくごくフツーのありふれた、仲良しさんな3人の日常があればいいなと思います。
ひめちゃん視点、面白そうですね〜。私も読みたい…(w

現実が妄想を越え過ぎて、書きたい書きたいとうずうずしつつも
ひどすぎる事態にキャパシティーが追いつきません…(w
でも、せっかくなので夏っぽい雰囲気のモノを仕上げてみました。


それでは、本日の更新に参ります。
144 :遠い星を数えて :2012/09/07(金) 03:05
「……どしたの、そのカッコ。」

吹き抜ける風すらも生ぬるい真夏の宵口を辿って石川の家を訪ねたら、
何故か浴衣姿で出迎えられた吉澤が、開口一番突っ込んだ。
肩から下げたトートバッグが、心なしかずれ落ちた。

「こないだ仕事で使ったの、もらってきたんだぁ〜。どう? かわいい?」

上機嫌の石川は、くるっと回ってポーズを取る。

「あー、はいはい。かわいいかわいい。」

勝手知ったる家に上がり、冷蔵庫からミネラルウォーターを拝借して、火照った体に流し込む。

「なによぅ、もうちょっと感情込めて言ってよ〜。」
「いつも言ってんじゃん。」
「そうだけどぉ、ほら、ね、浴衣だよ?」

淡い桃色に藍色で朝顔が描かれたそれは、確かに石川によく似合っている。
地黒に加えて日に焼けたトースト色の肌と、アップに纏めた長い髪に、鼓動が僅かに高なった。

「……自分で着付けしたの?」

面と向かって褒めることも、だいぶ慣れてきたけれど。
2人きりの空間で、しかも素面で言うのは照れ臭い。
きらきらした瞳でそれを期待されてしまうと尚更である。
ついごまかしてしまうのは、吉澤の悪い癖だ。
145 :遠い星を数えて :2012/09/07(金) 03:06
「うん! それでさ、よっすぃ〜?」

嫌な予感がして、吉澤は振り返るのをためらう。
ごそごそと音がして、吉澤の予感は当たりそうな気配がした。

「じゃーーーんっ! よっすぃ〜の分もあるんだよっ!」
「は〜、やっぱり。」

溜め息をついて、首を振った。

「言っとくけど、アタシは着付けなんて出来ねーよ。」
「私がやったげるから〜。ねっ?」
「はぁっ? ってか何で浴衣なんて着てんの? 意味わかんねーし!」
「たまにはいいじゃーん。夏だしぃ、日本人だしぃ。」
「梨華ちゃん仕事で着たんなら、それでいいじゃん。」
「だってー、よっすぃ〜の浴衣姿も見たいんだもーんっ。」
「り、梨華ちゃんが着付けって言ったって、そんなのおかしいっしょ!?」
「やだ、なに照れてんの、よっすぃ〜?」
「べっつに照れてなんかねーっしっ!」

押し問答をすること数分。

結局は石川に負けて、しぶしぶ付き合うことになった吉澤なのだった。

「ほ、ホントに着るの?」
「諦め悪いよ〜? ほらぁ、早く脱がないと、私が脱がすよ?」
「ンなっ!?」

ニヤニヤと吉澤を覗き込む石川は、何だか楽しんでいるようだ。
半ばやけになって、カットソーとスキニージーンズを一気に脱いだ。
互いの下着姿なんか見慣れてるわけだしね、などと心中で言い訳をするのも忘れない。

「よっすぃ〜は色白だから、きっとこういうのが似合うなぁって思ってね。
 ちゃあんと選んできたんだよ?」
「そこに気を遣うなら、もっと他んトコに気ぃ遣ってよ……。」

吉澤の肌を、紺地の浴衣が滑ってゆく。
前を合わせて、手際良く帯を付けていく。
からかってくるかと思いきや、石川の顔は真剣そのものだった。
146 :遠い星を数えて :2012/09/07(金) 03:08
「うん。やっぱり私の見立ては間違ってなかったねぇ。」

そう言って帯をパンッと叩くと、石川は再び弾けるような笑顔を向けた。
頬を染めた白い肌と対照的な濃紺の浴衣は、まるで吉澤にあつらえたようだった。
芥子色の髪が、薄紫の菖蒲柄にこぼれ落ちる。
石川はほうっと溜め息をつくと、吉澤のうなじに手を回す。

「やっぱりよっすぃ〜はキレイだなぁ。」
「それはどうも。」
「も〜っ。そういう言い方しないの。」
「…………梨華ちゃんのが、可愛いよ。」

吉澤がぼそぼそと歯切れ悪く反論すると、目を細めた石川に唇を奪われた。

「キレイだけど可愛いよね。ひとみちゃんは。」
「しつこいなぁ。」
「褒めてるんじゃない。」

蕩けるような石川の視線にどきどきしながら
それに全力で目を背けながら、なんでもない声色を装って尋ねる。

「そーいや、ひめは?」
「さっきもうおねんねしちゃった。やっぱりまだまだ子供ねぇ。」
「そっか。」
「ねぇねぇ、ひとみちゃん?」
「ん?」
「このままコンビニ行ってさぁ、花火でも買ってこよっか?」
「……やだよ、恥ずかしいじゃん。」

キレイなのになァ〜、とブツブツ言いながら、ソファに腰掛ける石川は
やはり普段と違う装いのせいか、少し大人びて見える。

「夜になったら、ちょっとだけ涼しくなったね。」

窓から見える東京の夜景は、まだ夏色だけれど。
石川の隣に腰掛けて、その視線の先を共に眺めた。
147 :遠い星を数えて :2012/09/07(金) 03:11
「来年の夏は、これ着て一緒に花火見に行きたいねぇ。」
「おー。そだね。」
「ひとみちゃん、汗かいてた? ……もしかして早くお風呂入りたい?」
「ん? どして?」
「だってもうちょっと見てたいんだもん。」

どうしてこんなに真っ直ぐに、こういう言葉を言えるのだろう。
吉澤は再び自分の顔に血が集まるのを感じながら、頭を掻いた。

「……せっかく着付けてもらったから、もちょっと着てよっかな。」
「うんっ。」

肩にかかる重みが心地よくて、吉澤はそのまま目を瞑る。

「缶チューハイなら冷蔵庫にあったかも。飲む?」
「おー、いいね。」

薄く色の付いた発泡酒が、僅かに甘く香る。
ガラスのコップがカチンと小気味よい音を鳴らした。

「横須賀の海で上がる花火はね、水面にも一面に映ってキレイなんだよぉ。」
「そうなんだ。」
「うん。」
「……一緒に行けるといいね。」
「うん!」

きっと来年も、こうして隣に居られる。
共に歩み、時には猛スピードで駆け抜け、どちらかが止まればそれを補う。
ソファの上でそっと手を繋ぐ。
暖かくて小さな手、サラリとした大きな手。
この手とならば未来も伴に走っていけると、遠い星を数えながらぼんやり考えた。



  END
148 : :2012/09/07(金) 03:15
本日の更新分は以上です。

新鮮なネタで書けなくて、自分で自分にガッカリですorz
スレの残りが少なくなってきているので、締めの一本のつもりだったのですが
まだ若干余裕がありそうなので、もう少しココを遣わせていただく所存ですm(__)m
149 :名無飼育さん :2012/09/08(土) 01:42
きっとこの二人の夏の思い出はたくさんあるんだろうなあ。
続きは遊園地かなあ〜(期待)

150 : :2012/09/21(金) 21:58
>149様
有難うございますm(__)m
多感な12年を一緒に過ごしてきた2人だから、思い出もきっと多いんでしょうね。
個人的に晩夏の雰囲気が好きなので、このテの話が書けて良かったです。
遊園地は……ほかの作者様が書かれていらっしゃったのを拝見して
けっこー満足しちゃいました。
やっぱり書き手である前に読者なので(w


それでは、本日の更新に参ります。
151 :今すぐ kiss me :2012/09/21(金) 21:59
休憩の合図を受けて、石川はパイプ椅子に腰掛けた。
アイフォンを手に取ると、メールが届いている。
撮影続きで凝った首を左右に捻りながら、メールを開く。

(やだ何これ……かぁっこいい〜〜〜ッ!!)

吉澤から送られてきたメールには、
イベント用に撮り下ろしたらしいショットが添付されていた。

『どれにしようか迷ってるんだけど、梨華ちゃんならどれがいい?』

(そ、そんなコト言われたって選べないよ……!)

きりっとした涼やかなショットは格好よくて捨てがたい。
それをクシャッと崩して、歯を見せて笑う笑顔も可愛くて捨てがたい。
白い肌と対照的な黒い革ジャンに指を引っ掛けて撮られたショットの数々が、
どんなモデルよりも石川の胸を釘付けにする。
152 :今すぐ kiss me :2012/09/21(金) 22:00
(いいなぁ、こういうカッコが似合って。カッコイイなぁ……。)

この世界に身を置いて、そこそこ長い年月を過ごしているから、
自分に似合う服装や、自分に求められているものを多少は解っているつもりだ。
それは石川にとって自信が持てる部分でもある。

でも吉澤は、きっとどんなものを与えられても着こなして、魅せる。
私服はパンツスタイルばかりで、マニッシュな服装が多い。
それこそ革ジャンやスタッズのついたジャケットといったメンズアイテムも着る。
いっぽうでアイドルとして活動するときは、フリルがついていたり、肩や背中が出ていたりするような
“いかにもアイドル”な衣装だって、当然ながら似合うのだ。
……本人はだいぶ違和感があると言っているが。

(はぁ。やっぱり私、ひとみちゃんには弱いわ。)

こんな写真を見ただけでも腰が砕けそうになる。
随分と一緒に居るのに、動悸がおさまらないほど胸が高鳴る。
いい加減、自分に呆れてしまう。

男前だけど女の子らしくて、繊細で、でも大雑把なところもある。
いろんな顔を持った人だから、ドキドキが止められない。
153 :今すぐ kiss me :2012/09/21(金) 22:00
「おー、お疲れ。」
「ごめーん、待った?」
「んーん。そうでもない。」

カラオケボックスで落ち合うと、吉澤が顔を上げた。

「飲みもの何頼む?」
「えっ……あ、じゃあミルクティー。」
「オッケー。」

手際よく電話を取って注文を済ませ、再び長い足を組む。

「ひとみちゃん。」
「んー?」
「大好き。」
「はっ?」

突然の言葉に、吉澤はぽかんと口を開けた。

「だってさ〜、あの写真。」
「あー、あれどうだった? どれがいいかなって言ってんのに、返事くれないんだもんよ。」
「……分かってて言ってるでしょ。」
「フハハハ。」

肩を揺らして笑うと、吉澤は石川の肩をぽんぽんと叩く。

「梨華ちゃんがそう言ってくれるなら、ファンのみんなも喜んでくれるね。」
「もー。」

数日前に会った時よりも少し短くカットされた、明るい色の髪がサラリと流れた。
154 :今すぐ kiss me :2012/09/21(金) 22:01
「今回アタシ、仕事入っちゃってるんだよね。」
「うん。」
「ごめん。」
「謝ることじゃないじゃん。」
「そーだけど、さ。」

無造作にソファに投げ出された白い手に、石川の指が触れて、愛おしそうに辿る。

「店員さん来るから。」
「分かってるよ〜。」

吉澤は照れたようにパッと手を離すと、そのままパラパラと歌本をめくり始める。
こういうシャイなところも、石川は嫌いじゃない。
ダテメガネをテーブルの上に置くと、石川は何気ないふりをしてそのページを覗く。

「私もよっすぃ〜の東京の日、スケジュールがビミョーなんだよねぇ。」
「あー、ドラマの撮影入ったんだっけ。」
「うん。」
「そっかー。」
「よっすぃ〜が歌ってるところ見るの、好きなのになぁ。」

そう言って今度は吉澤の目を覗くと、視線を彷徨わせてから、片眉を上げてからふぅっと息を漏らした。
タイミングよくドアが開き、淡々と飲みものを置いていく。
すると吉澤は石川に向き直り、にやりとしながら言った。

「ね、梨華ちゃん。せっかくだから今日も歌ってよ。」
「えー、練習付き合ってくれたときあんなに聞いたのに?」
「いーからいーから。」
「私リハーサルでも歌ってるんだけどなー。」
「お願いしますよ〜石川さーん。」

例えふざけた口調でも、手を合わせてお願いされると悪い気はしない。
しょうがないなーなどと言いながら、石川はコードを入力した。
155 :今すぐ kiss me :2012/09/21(金) 22:02
ギターとドラムが鳴る、心地よいテンポの前奏。
吉澤が大袈裟に拍手を送ると、石川は笑顔でマイクを握り歌い始める。

♪歩道橋の上から 見かけた革ジャンに 息切らし駆け寄った 人混みの中……♪

嬉しそうに聴き入っている吉澤を時折見やりながら、石川は丁寧に歌いこなした。

「やっぱこの曲、梨華ちゃんにすげー合ってるね。」
「そ、そうかな?」

吉澤がストレートな賛辞を口にするので、石川は思わず顔が緩んでしまう。

「意外とこういうロックな曲、似合うんだよね。梨華ちゃんって。」
「ロックって言ったら、よっすぃ〜のほうがこういうイメージなんじゃない?」
「んー、でも何つーか、歌詞も梨華ちゃんっぽいしさ。」

そこまで言うと、ふと言葉を切らして石川から目を逸らした。

「何つーか、梨華ちゃんっぽいんだよ。」
「よっすぃ〜?」
「わっかんないかなー。」
「なにが?」

長い指で頬を掻く吉澤は、何故か赤く染まっている。
きょとんとした石川に急に向き直り、その頬に素早くキスをした。

「…………。」
「…………。」
「やだっ、よっすぃ〜ってば超キザ!」
「ンだよ、おめーそういうコト言うなっつーの!」

お互い顔を真っ赤にしながら言い合う。
ドキドキが止められないのは、どうやら一人ではないようだ。
156 : :2012/09/21(金) 22:08
本日の更新は以上です。
そして、このスレでの文章アップはラストになりました。
駄文にレスを下さった方々、本当に有難うございましたm(__)m
いつも本当に励みになりましたし、読んで下さっている方が居ると思うと
『また書きに来よう』という原動力になりました!

只今、駄文の修正版を掲載できるようなウェブサイトを製作中です。
準備が整い次第、こちらにてお知らせしたいと思います。
(って、準備期間に爆弾が来たら先に新スレ作っちゃうかもですがw)
157 :名無飼育さん :2012/09/22(土) 00:47
タイトルを見て興奮。読了後は幸せな気持ちでいっぱいです!

作者様のウェブサイト!!!
首を長くして待っております!
158 :名無飼育さん :2012/09/23(日) 22:40
ウェブサイト&新スレ楽しみにしてます!
159 : :2012/09/25(火) 00:53
えー、せっかくなので開設はこの日にしたくてw
ということで、突貫工事ですが開設しました。
サイトといってもこちらのスレの駄文をまとめてある倉庫のようなところなので、
特に新しいものはございません……何だか期待させてしまってスミマセン。

『となりで晩ごはん』
ttp://tonaridebangohan.xxxxxxxx.jp/


>157様
有難うございますm(__)m
あの生写真を見てこういう風景が浮かんでしまってですね。
ついカッとなって書きました。反省はしていません(w
お待たせした割に大層なものではなく申し訳ない限りです。

>158様
有難うございますm(__)m
ウェブサイト、誤字脱字を修正してあったりと
駄文倉庫としては見やすい…はずですので、
気が向いたら足を運んでやって下さいませ。

次スレも草板でお世話になる所存です。
いつになるかは未定なのですが、またよろしくお願いいたします。
160 :名無飼育さん :2012/09/25(火) 23:15
乙です
ブックマークしました
161 :名無飼育さん :2012/09/26(水) 01:44
私もブックマークしました!本当にありがとうございます!
次回作も楽しみにお待ちしております。

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