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(仮)

1 :名無飼育さん :2012/04/05(木) 00:51
色々。
29 :名無飼育さん :2012/05/12(土) 08:59
ナカジマさん一人称でこその空気感。
セリフも彼女たちらしくていい。面白かったです。
30 :たら :2012/07/30(月) 01:55


「桃が男の子だったら良かったのに」

ドライヤーの音が止んだと思ったら聞こえてきた言葉に、桃子は目を開いた。
ごろんと横になったベッドの上、桃子の足元に近い部分に腰掛けていた舞美が、身体ごと振り返る。

「こんなにかわいい女の子つかまえて、なんてこと言うの」
「だって……」

少し拗ねたように、舞美が口をとがらせた。
スポーツ万能、身長も高くて容姿端麗、誰にでも優しくて、でもちょっと抜けてて。
そんな舞美の方が、男の子だったら、と桃子は思う。

「舞美の方がさ、背も高いし。絶対、イケメンじゃん」
「背はそうだけどぉ」

指を組んで頭の後ろにおいて、桃子はうとうとと、また目を閉じる。
約束していた本を借りて、もう部屋に帰らなければと思う。
けれど、コンサート後ですでにシャワーも浴びていて、ベッドの上にいたら眠くもなる。
31 :たら :2012/07/30(月) 01:55
「……桃は、私が女の子だったらだめ?」
「なに言ってんの。いいに決まってるじゃん」
「ほんとっ?」

ぐえ、といきなり全身に衝撃がきて、思わず声が漏れる。

「ちょ、苦しい」

上から抱きついてきた背中を強めに叩くと、舞美が顔を上げた。
ひょっとしてこれは、決して公にすることのできない乙女チックシミュレーションのひとつ。
押し倒されている、という状態だろうか。

「……舞美?」

ちょっと顔をしかめた桃子に不安になったのか、困ったように眉を下げる。
落ちてきた髪の毛がまだ湿っていて、少し冷たかった。

シャワー後。ベッドの上。上に舞美。だめ。いいに決まってる。
32 :たら :2012/07/30(月) 01:55
「……ちょっと落ち着こう舞美。桃は」
「いいって言った」
「それは舞美が男じゃなくて女でも好きってことで! いや、そういうことじゃなく!」
「どういうこと? 好きじゃない?」
「好きだけどあのぉ、こーゆー関係ではないじゃないですか、桃たち」

時が止まったかのように、しんとした。
けれど、だんだんと舞美の顔がにやにやしだして、桃子は眉根を寄せる。

「……舞美、桃のこと、からかってるの?」

頬にかかっていた髪が離れた。
舞美が身体を起こして、桃子の手も引く。

「そーだよ、からかってるの」
「ひどい。桃の純情をもてあそぶなんて」
「なに言ってんの。ほら、早く部屋戻って寝なよ」
「ヤダ。もうここで寝る」
「そしたら私、寝る場所ないんだけど」
「一緒に寝ればいいじゃん」
33 :たら :2012/07/30(月) 01:56

人と一緒だとよく眠れない、と主張する舞美をなだめて、横になるように促す。
寝かしつけるように背中をぽんぽんと叩くと、すぐに寝息が聞こえてきて呆れた。

「いや、桃より先に寝てるんですけど」

ふざけんなよやじまぁ。
おどけた声は届いているのかいないのか、寝顔に変化はない。

「どーゆーことなの?」

頬をつついても返事はない。
桃子から言い出した以上、いまさら部屋に帰るのも気が引けた。
それに、眠気だってもうすぐそこに迫っている。

枕元のスイッチを操作して照明を落とす。
真っ暗になった部屋の中で、眠っているとは思えない鼓動を感じながら、桃子も目を閉じた。







34 :たら :2012/07/30(月) 01:56

35 :たら :2012/07/30(月) 01:56

36 :名無飼育さん :2012/07/30(月) 02:01
>>30-33 たら
まいみちゃんとつぐさんのおはなしがよみたいというがんぼうがあります。

>>28 >>29
レスありがとうございます。
すごく嬉しいです。すてきなお言葉ありがとう。
37 :名無飼育さん :2012/08/07(火) 21:52
珍しい組み合わせ…かな?
矢島さんが最初の発言をした真意が気になる。
面白かったです。短編集なんですね。次の話も楽しみにしてます。
38 :名無飼育さん :2012/10/24(水) 07:04
舞美ちゃんも桃子も可愛いですね!次回更新も期待です。
39 :名無飼育さん :2013/07/18(木) 18:51
作者さんの書く自然体のメンバーとリアルさがとても好きです。
更新気長にお待ちしております。
40 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:39


メジャーデビューしてから、学校が終わった後にはほとんど毎日、仕事があった。
そうなると、メンバーでハロウィンパーティーしよう、だなんて話にもなる。

仕事の合間にお菓子を交換したりしていたら、あっという間に窓の外が暗くなっていた。
佳林はノートから目線を上げる。
約束した迎えの時間に遅れる、と親から連絡があって、諦めて宿題をして待っていた。

迎えがない由加とあかりも一緒に会社に残っていてくれて、
嬉しいけれど申し訳ないな、と佳林は思う。

由加はマネージャと一緒に席を離れてしまった。
会議室めいた部屋にいるのは佳林とあかりだけで、けれど会話はない。
41 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:40
「……重い」

左肩にかかる重みに、思わずひとり言が漏れる。
ゆらゆらと眠そうに揺れていたあかりが、完全に寝入って頭をあずけてきたのは
いいけれど、少しでも身動きしたら倒れてしまいそうなのが気になる。

宿題なんか手につかない。
けれど、他のことをするにも、動けないのではどうしようもなかった。

「うえむー、おーい」

控えめに声をかけて、肩に乗せられた頭が落ちないように
気をつけながら頬を指でつつく。

同じ学年なのに、と佳林は思う。
あかりは大人っぽい顔立ちで、どうしても佳林の方が幼く見られがちだった。
中身はこんなに子供なのに、と悔しく思いながら、
それでも、整った顔には見とれてしまう。
42 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:41
ぱちり、とあかりの目が開いた。
あわてて佳林は指先を引っ込めたけれど、あかりは微動だにしない。

「……おはよ」

佳林が声をかけると、へにゃりとさらに体重をかけられた。

「かりんちゃん、お膝」

とんとん、と膝をたたかれて、佳林は椅子を引く。
当然のようにあかりは佳林の太ももの上に頭をあずけて、目を閉じる。

「うぉーい」
「……かりんちゃん細いからあんまり柔らかくない」
「じゃーどいてよ」
「やだよー」

ぐしぐしと髪を乱してやると、あかりが暴れる。
危ないかな、と佳林が思ったのもつかの間。
がつんと一度、頭をテーブルの下にぶつけてあかりはおとなしくなった。
43 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:41
「わ、わ、ごめん」
「……」

あかりは無言で立ち上がって、部屋の隅の洗面台に向かう。
いちいち行動の読めない子だ、と思いつつ見ていると、口をゆすいでいた。

「うえむー、ごめん」

頭をさすりながら戻ってきたあかりが首をかしげ、
にこりと笑って、言う。

「許さないですよー」
44 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:42
そのまま宙を見つめて、難しい顔をする。

「えーと、ハロウィンだから、トリックオアトリック?
 トリートオアトリート?」
「……トリックオアトリートのこと?」
「うん、まあどっちでもいいや」

一人で納得したように、あかりはうんうんと頷く。

「お菓子くれなきゃいたずらしますよー」
「さっきたくさん交換したじゃん」
「頭ぶつけたから覚えてなーい」

メンバー同士でさんざん交換したばかりだから、
鞄の中にお菓子はたくさんあった。
テーブルの上の荷物を引き寄せようと佳林が動くより先に、
隣の椅子にすとんと腰掛けたあかりが顔を近づけてくる。

「いたずら、していいよね?」
45 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:43
甘えてくるのも、抱きついてくるのもいつものことだった。
顔を近づけ合うのもよくするし、撮影で頬をくっつけることもよくある。

……しかし。

「う、わぁ!?」

佳林はあわてて身体を引いて、手の甲で口を押さえた。

「なになになになに!」
「……やっぱりかりんちゃん、動き、はやい」

とつとつとあかりは言って、椅子から落ちそうになっていた
佳林の腕を引っ張る。

「失敗したから、もう一回」
「ちょ、ちょちょちょっと待って待って」

腕を取られたまま硬直している佳林を引き寄せて、
あかりはにこりと笑う。
46 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:43
どうしようもない。
そう思ったときに、ドアががちゃりと開いた。

「すっかり暗くなっちゃったねえ」

マネージャとの話も終わったのか、戻ってきた由加がのんびりと言って、
壁の時計を見上げる。
不自然に寄せられていた身体を離しつつ、佳林はあかりから目をそらした。

「かりんちゃん、顔真っ赤」

ぐい、と耳元に顔を寄せてきたあかりに、そう言われてさらに顔が熱くなる。
うつむくと、腕を離された。
なんでもないように立ち上がったあかりが伸びをして、窓際に歩いていく。
47 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:44
その背中をぼんやりと見ていると、テーブルに置いていたスマートフォンが震えた。
がたがたと音を立ててうるさいそれを、あわてて取る。

「迎え、来たみたい」

立ち上がると、がたんと椅子が鳴った。
落ち着かない様子の佳林を不思議そうに見て、由加も荷物を取りに部屋の隅に向かう。
入れ替わりに、帰り支度を終えたあかりが佳林に歩み寄った。

上着を着て、鞄を肩にかけたあかりが佳林に近づき、指を一本立てる。
由加に背を向けてあかりが立てば、その身長に佳林は隠れる。
つまり、由加からはなにも見えないはずだ。

身構えた佳林の唇に、あかりは立てた人差し指を触れさせる。

「いたずら、また今度ね?」

にやり、とあかりにしてはめずらしい笑い方をして、
佳林が返事をする前に指は離された。

「由加、先に行ってるよー?」
「待ってよー」

部屋の奥にいる由加に声をかけて、あかりはまた佳林に向き直る。

「また明日ね」

そのままドアに向かったあかりを、振り返ることができなかった。
頬が熱くてどうしたらいいかわからなくて、もっと熱い唇を手の甲で押さえる。

いたずらって、なに。
明日それを聞くことができるのか、佳林にはわからなかった。



48 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:45

49 :いたずら、もしくはいたずら :2013/11/01(金) 01:45

50 :名無飼育さん :2013/11/01(金) 01:50
>>40-47 いたずら、もしくはいたずら
じゅーすじゅーすかわいいのでごぞんじないかたもぜひいろいろみてください。
いちどべたべたなはろうぃんものかきたかったのでたのしかったです。

>>37 >>38 >>39
レスありがとうございます。
とても嬉しいです。私にはもったいないお言葉ばかりありがとう。
51 :名無飼育さん :2013/11/21(木) 02:28
ニヤニヤさせてもらいました
翻弄される佳林ちゃんさん可愛い
52 :リボン :2014/03/14(金) 21:54
 
53 :リボン :2014/03/14(金) 21:55
卒業式だというのに、あいにくの雨。
水たまりに足を入れないよう、佳林はゆっくりと歩いている。

隣では、あかりも歩調をあわせている。
くるくると回した傘は、天から降る雨水をはじいている。

中身の少ない鞄と卒業証書を入れた筒と傘。
最後の帰り道、家に到るまでの道筋。ここから先は、他のクラスメイトと一緒に
なることもなく、二人きりだった。

「卒業しちゃったねー」

あかりが、気の抜けた声で言う。佳林は隣で静かに頷く。
雨はしとしとと、勢いは弱いながらも続いている。

「早かったね」
「……うえむーは、一年ちょっとしかいなかったから」
「そうかもだけど」

少しだけ、佳林は傘を上げる。
そうしないと、あかりは傘に隠れてしまって見ることができない。
54 :リボン :2014/03/14(金) 21:57
二年生の中途半端な時期にやってきた、関西からの転校生。
かわいい、と評判になるのも仕方なかった。隣のクラスから違う学年から
よりどりみどり見物人がくるほどには、あかりは見目麗しい。

うらはらに、どこか抜けているのだけれど。

「うえむー、最初は道、ぜんぜん憶えてなかったよね」
「今はもう憶えたよ」
「うん、知ってる」

たまたま近所だったから、慣れてないんだから面倒を見てあげなさいね、と
親に言われていただけだった。

転校で見知らぬ地にきたとはいえ、中学生なのにおおげさな、と佳林も初めは
思っていた。それが、はじめましての挨拶からその後、佳林はあかりのことを
気にしてばかりいる。
55 :リボン :2014/03/14(金) 21:57
一人でも道に迷わなくなっても、佳林はあかりと一緒に帰るために、待った。
委員会や行事の準備が長引いたとき、先に帰ってもいいよ、と気遣う言葉をかけられても、
佳林は首を横に振った。

けれど、あかりも同じように佳林が帰れるようになるまで待っていたのだから、
似たものどうしだ。どちらとしても、いつものことで、慣れきっていた。

「一緒に帰るのも最後だね」

とくに感慨深さも感じさせずに、あかりは言う。

「……そうだね」

佳林が返した声は湿っていて、それに気づいたあかりが笑った。
心細さを感じているのがばかみたいだと、佳林は思う。

この帰り道を一緒に歩くのは、今日で最後。
佳林は知っているし、あかりもわかっている。
56 :リボン :2014/03/14(金) 21:58
 
57 :リボン :2014/03/14(金) 21:58
紅葉が道の端にはらはらと落ちる夕暮れどき。
帰らなきゃいけないんだ、と聞かされ、「どこに?」なんて間の抜けたことを
訊いた日のことを、佳林は憶えている。

受験の話をしていて、さらりと言われたことを憶えている。
もともと関西に戻ることが前提の転校だったこと、卒業まではこちらにいられること。
そうなんだ、と返した声は、たぶん、湿っていた。
58 :リボン :2014/03/14(金) 21:58
 
59 :リボン :2014/03/14(金) 21:59
わざとゆっくりと、佳林は歩く。隣で、あかりも歩調をあわせる。
あかりの手でくるくると回されていた傘がぴたりととまり、足もとまった。

「かりんちゃん」

あわせて歩みをとめた佳林に、あかりが呼びかける。
声だけでなく佳林は目許も湿っていて、それに気づかれたくはなかった。

「泣き虫」

からかうように、あかりが言う。
それには返さずに、今度は佳林がくるりと傘を回す。
60 :リボン :2014/03/14(金) 22:01
「……うえむーのせいだからね」
「あかりのせい?」
「そうだよ」

傘をかたむけて、あかりは佳林を覗き込む。
長い髪が揺れ、制服の肩が雨で濡れていく。

「悲しい?」
「……悲しいよ」
「あかりが引っ越しちゃうから?」
「そうだよ」

だから、あかりが悪い、と佳林は思う。
いつもと同じように話して笑って、ちっとも寂しさを感じていなさそうで。
61 :リボン :2014/03/14(金) 22:01
「一生の別れってわけじゃないし」
「……そうだけど。でも、もう一緒に帰れないじゃん」
「うーん、それはまあ、そうだね」

二人で足をとめたまま、傘は穏やかに降り続ける雨を受け止めている。
顔を隠すように傘をかたむけて、佳林はうつむく。

あかりは佳林を待っているのか、歩き出さない。
下を向いたら、濡れたアスファルトだけが目に入る。

「かりんちゃん」

呼ばれて、顔をあげると、あかりが制服のリボンをするりと外し、
それを指に絡めたままで、佳林に手を伸ばす。

あかりの長い指が、佳林のブラウスからもリボンを抜き取った。
それを顔の前にかかげて、あかりは言う。
62 :リボン :2014/03/14(金) 22:02
「交換しよ」

あかりがつけていたリボンを片手に握らされる。
赤いリボンは雨に濡れて色が濃くなり、湿り気をおびていた。

「第二ボタンじゃ、ちいさいから」

ブラウスの襟を引っ張りながら、あかりが言う。

しとしと降り続ける雨音が耳に優しい。
息をふくんだようなあかりの声も、優しかった。
63 :リボン :2014/03/14(金) 22:03
「帰ろう」

二人とも赤いリボンを指に絡ませたままで、濡れるのも気にせずに手を繋ぐ。
ずっとこの時間が続けばいいのにと、佳林は思わずにはいられなかった。

この帰り道を一緒に歩くのは、今日で最後。
佳林は知っているし、あかりもわかっている。

佳林を寂しがらせないためにあかりが笑っていることも、
交換されたリボンの意味も、わかっている。

それでも、もう、一緒に帰るために待つことはない。







64 :リボン :2014/03/14(金) 22:04
 
65 :リボン :2014/03/14(金) 22:04
 
66 :名無飼育さん :2014/03/14(金) 22:05
>>53-63 リボン
ご卒業おめでとうございます。

>>51
レスありがとうございます。
植村さんには自由に振る舞ってもらって、周りをどんどん翻弄してもらいたいですね。
ニヤニヤしていただけて嬉しいです。私にとって、素敵な褒め言葉です。
67 :名無飼育さん :2014/04/20(日) 20:38
切ない・・・佳林ちゃん
そして、大人うえむー好きです
68 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:51
 
69 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:52
「ほら、とも、真っ直ぐ歩いて」
「んん〜?」

酔っぱらいに肩を貸して歩くのは大変なことだと、由加はこのとき初めて知った。
吐く息が白い。マンションのエレベーターに乗り込んで階数ボタンを押すとほっと一息
つけたけれど、眠たげにしている朋子の処遇を考えると頭を抱えたくなってしまう。

同じ大学の先輩後輩としての付き合いが始まってから、どれくらいが経つのだろう。
友達の友達、という他人同士からのスタートだった。朋子はインドアを自称するわりには
交友関係が広く、自分も数多い知人のうちの一人なのだろうと由加も始めは思っていた。

学内ですれ違えばちょっかいを出され、時々は遊びに誘われ。決して気が合うタイプ
だとは思わないのだけれど、なぜか気に入られたようだということがわかるようになり、
二人はそれなりに親密さを増した。それこそ今では飲み会後の朋子を部屋に迎え
入れることができるくらいには親しく、ただの知り合い、という表現は似合わなく
なっている。

部屋の前にたどり着いて由加は鞄から鍵を取り出す。開錠している間にも朋子は
しなだれかかってきて邪魔なことこのうえない。左肩にかかる重みを感じながら
ドアを開け、玄関に朋子を押し込んだ。
70 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:52
「……ゆかちゃーん」
「どうしたの?」
「おみず、ください」
「はいはい」

ひとまずソファに座らせて、帰宅途中のコンビニで買ったミネラルウォーターを
袋から出して、渡す。受け取ってキャップをひねろうとする手つきすら覚束ない
ものだから、由加は溜息をつきたくなってしまった。

「開けてあげるから。貸して」
「自分でできるよぅ」
「できてないでしょー?」

拗ねたような声を出す朋子を無視してボトルを奪い、蓋を外してやる。もう一度
手渡すと冷えたままの水が朋子の喉を通り、ふは、と彼女は一息つく。

「ねえ、泊まっていい?」
「……だめって言ったら帰るの?」
「もう帰れなーい」

へらへらと朋子は笑っているけれど、終電を逃しておいてどうしてこうも気楽に
いられるのだろう。ノリと勢いで生きている、と以前に朋子は嘯いていたけれど、
今となっては納得だ。
71 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:53
「とも、お風呂入って」
「んー? もうねよーよ」
「だめ。汚い」
「ひどいなあ」

潔癖、と朋子はつぶやく。「ここ由加の家だからね?」従わないのならばどうなるかと
暗に込めて言うと、朋子は仕方なさそうにうなずいた。

「一緒にはいろ」
「嫌です」

提案を却下すると、ええ、と朋子はまた拗ねたような声を出す。ペットボトルが朋子の
手からこぼれ落ちそうになっているのを慌てて支えると、そのまま手首を握られた。

「溺れるかも」
「ドアのとこで見張っててあげる」
「やだー、ゆかちゃんのえっちー」
「ふざけないで」

自分はほとんど飲んでいないものだから応対が冷たくなってしまうのも許してほしいと
由加は思う。朋子が拗ねたような顔をするのは何度目だろう。「わかったよ」彼女は
言って、こてんと由加の肩に頭をあずけてきた。
72 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:54
「……わかってないでしょ?」
「んー。ちょっと休憩するだけ」
「寝るなー」

つかまれた手首が熱いのは、酔いのせいだろうか。朋子が目を閉じたのが気配だけで
わかる。ゆさゆさと身体を揺らしてもしなだれかかってきている姿勢はそのままで、
由加はあからさまに溜息をついてみせた。

「とも、しっかりして」
「……あー、やばい」
「え、なに、吐きそう?」

とっさに背中をさすってやると、違う、と朋子がつぶやく。つかまれていた手首が
離されて、今度は背中に腕を回された。

「……あのね、ゆかちゃん」
「うん?」
「……酔っ払った勢いでキスしていい?」

なぜか気に入られている、というのはあまり正確ではなくて。もぞりと身体を
揺らして朋子は由加の首に顔をうめる。首筋にかかる息が熱くて思わず身じろぎ
すると、それを押さえ込むようにさらに力を込められた。
73 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:54
「……なんで家にあげちゃうかな。わかってるでしょ?」
「だって、終電、ないし」

気に入られているのは、好意があるからで。そのベクトルは恋に向いているのは
由加にもわかっていた。しばらく抱きすくめられたままでいると朋子が深く息を吐き、
身体が離される。

「……あんまり期待させないでよ」

少し俯いて言うその姿はまた拗ねているようで、微笑ましくさえ思える。酔った勢いが
ないと素直になれないのはそういう性格なのか。由加が思わず吹き出すと、恨めしげに
朋子が目だけを上げる。寒風のせいで乱れた茶髪を手で撫でつけてやると、
気持ちよさそうに目が細められた。

「とりあえず今日はなにもしちゃだめ。ほら、お風呂」
「……じゃあ、明日は?」

縋るように言う姿は可笑しいほどに子供じみている。酔っぱらいの首筋に触れると
ひどく熱くて、やけどしそうなほどだった。
74 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:55
「それは明日考えよう?」

だから早く、と追い立てるように肩を叩けば朋子ははっきりと溜息をつき、
唸るように言った。

「……ぜったいだからね?」

向けられる視線は熱を帯びていて、受けとめるだけで精一杯だった。朋子は
由加の手を借りながら立ち上がり、ふらふらとバスルームに向かう。

繋がれた手があたたかく、強く握るとおそるおそる握り返される。
肝心なところで勢いが足りない朋子に呆れながら、由加はその身体を支えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
75 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:55
 
76 :コドモじゃない :2015/12/05(土) 23:55
 
77 :名無飼育さん :2015/12/05(土) 23:58
>>69-74 コドモじゃない
ゆかともが好きです。

>>67
レスありがとうございます。
うえむーって意外と、といったらわるいですけど、大人ですよね。
そしてありかりんもラブなのですよ。
78 :名無飼育さん :2016/02/27(土) 23:37
ともちゃんキャワワ

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